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殲神封神大戦⑱〜勉強嫌いの挽歌!

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●無限書架の犠牲者たち
 並の人間なら、立ち入ることも不可能だろう。
 仙道を修めた者でも、立ち入れはしても命は落とすだろう。
 獣であれば、あるいはかえって生き延びるだろうか。
 見渡す限り果てなく広がる書棚。空間を満たす濃密な魔力。
 英知を追い求める者にとって垂涎の対象であると同時、実際にそこに入って英知を求めたなら、最期。飽和を遥かに超える知識を流し込まれ、精神が灼きつくされて死に至るのみ。
 そんな無限の書架の中で、隻眼の女たちが、元より死んだ魚のようだった目をさらに濁らせつつ彷徨していた。

●真面目に不真面目
 攻略対象は、三皇の一柱、伏羲の祠。
 その構造は、いってみれば無限に広がる図書館である。碁盤の目状の廊下が設えられており、それに沿って本棚がある。収納されているのは様々な世界の仙術、呪術、魔術、その他超常の何かに関する書物ばかりで、その影響もあってか祠内部は性質の良くない魔力が充満しているという。
 祠に立ち入った者は、充満した魔力によって強制的に書架にある書物の知識を頭に流し込まれる。それだけ聞けば何やらお得なようにも聞こえるが、人間の限界量――猟兵やオブリビオンといった超常存在でさえ許容量をオーバーする知識を詰め込まれ、脳を破壊されて廃人になるか、死に至る。
 そんなわけで、祠内にはキョンシー型のオブリビオンが徘徊しているわけだが、それらもまた本来持っていたはずの知性がなくなっている、と大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)は語る。
「目標はそのオブリビオンの殲滅だが、知性が死んでる分弱体化してるから、脅威の度合いでいえばオマケみたいなもんさ。本当に注意すべきは、無限の書架という空間そのものだ」
 強制的な知識の流入は、魔術的防壁によって対抗するのはほぼ不可能である。ゆえに、そもそも書架の標的にならないような立ち回りをする必要がある。
 どうやら標的の選定に当たっては識字能力を基準としているらしく、言葉を使わずにいれば『だます』ことは可能らしい。
「考え得る対策は二つ。一つは、文字や言葉を使わないこと。つまり、本を読まないこと、しゃべらないことだ。まあ、言語に該当しないような、単なる悲鳴とか吼える声とかには反応しないみたいだが」
 情報伝達が必要な際には、あらかじめ身振りや手振りを決めておき、それを使えばよいだろう。
「もう一つは……バカになること」
 何のこっちゃ感が半端ない台詞ではあるが、朱毘の顔は至って真面目であった。
「バカって表現だと、ちとわかりづらいか。要は、無理矢理流し込まれる知識を『理解しない』ことだ。ええと……例えば学校で授業受けたことある人だったら覚えがあると思うけど、先生が一生懸命説明してるのにそれを聞き流して、一つも理解しないで終わる、みたいなの、あるじゃん? あんな感じで、万が一頭に情報が流れ込むようなことがあっても、理解しようって気を起こさずスルーしちまうわけさ」
 単なる気の持ちようといってしまえばそれまでではある。まあ、知的好奇心が旺盛なタイプだと知識の誘惑に抗うのはいささか厳しいだろうし、戦闘中にその精神状態を保てるかどうかというのも、鍵にはなる。
「ま、ボスクラスの連中を相手にするよりゃ、いくらか楽な方だろ。戦争も終盤。ささっと攻略してきてくれ」


大神登良
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良(おおかみとら)です。

 これは「殲神封神大戦」の戦況に影響を与える戦争シナリオで、1章で完結する特殊な形式になります。

 戦場は祠の内部、巨大図書館です。

 このシナリオには下記の特別な「プレイングボーナス」があります。
『プレイングボーナス……「言葉と文字」を使用せず戦う。もしくはものすごいバカになる』
 具体的なバカのなり方については、オープニングで一例を挙げています。
 プレイングボーナスに該当する行動のみならず、それを敵との戦闘といかに両立さているのかも考え合わせてプレイングを組み立ててみてください。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『隻眼女僵屍』

POW   :    幻獣拳術『檮杌爪』
【拳や爪】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    幻獣拳術『鳳凰翔』
レベル×5km/hで飛翔しながら、【両足】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ   :    幻獣拳術『禍躯鱗』
自身の【衣類】を捨て【麒麟憑依状態】に変身する。防御力10倍と欠損部位再生力を得るが、太陽光でダメージを受ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

さいしょから がらんどう
さいしょから がらくた

地形を利用し魔力を増幅
先制UC発動
炎光風空属性
攻撃力、防御力、状態異常力に付与

残像迷彩物を隠す
己の姿を陽炎に隠す

残像忍び足でゆるゆると接敵

射程に入り次第念動怪力衝撃波四属性UC範囲攻撃
フェイント二回攻撃を交えすてぜにでなぎ払う

敵の攻撃は落ち着いて見切り
残像忍び足フェイントなどで躱す
さもなくば念動怪力衝撃波オーラ防御UC等で受け流す

敵がWIZ特技を使ってきたら攻撃に破魔を加え
小さなサンストーン(すてぜに)を広範囲に撃ち込む

さいしょから がらんどう
さいしょから なにもない
ただまりょくをながし
ただうごくだけ

さようなら さようなら


朱鷺透・小枝子
進め!壊せ!!進め!!!壊せぇえええええええ!!!!

【闘争心】戦意戦心、即ち今目の前の敵と戦う事、オブリビオンを壊す事だけに意思と心を集中する事で脳に流れてくる情報を無視!
『戦塵突撃』で【オーラ防御】攻性障壁を武器と身に纏って高速飛翔【推力移動】で隻眼女僵屍目掛けて吶喊。
破魔の鉄大団扇を振り被ってー【重量攻撃】叩き潰す。

オブリビオンは敵だ!敵はどうする!?壊せ!!
朱鷺透小枝子!お前はそういう物だろう!!
敵は壊せ敵は壊せ敵は壊せ敵は壊せ壊して戦えぇええええ!!!!!

【念動力】黒鎖鉄杭で敵複数纏めて【なぎ払い】まだ残る敵を貫き引寄せて、団扇が作る風の暴風で【吹き飛ばし】遠隔の敵に叩きつける!



●隙間だらけ。隙間なし。
 伏羲の祠に入り込んだ御堂・伽藍(がらんどう・f33020)の体を、魔力に満ちた空気が包み込む。
「――……」
 嘔吐感。空腹のところに、急に肉汁たっぷりのステーキを突きつけられた時のような。
 濃密すぎる魔力に当てられたということだろう。が、伽藍は平静を保つ。
 がらんどう。がらくた。
 実態はどうあれ、自覚の上では伽藍とはそういう存在ということになっているらしい。がらんどうの器に注がれるのが水であれ酒であれ毒液であれ、彼女にとってはどうでもいいことだった。
 そして、魔力酔いを凌いでしまえば、むしろこの戦場は術を得手とする者に有利に働かないではない。空気中の魔力を逆に自分で利用することができる程度に魔力操作に長けていれば、かえってユーベルコードの威力に上乗せすることもできる。
(――まりょくをながし……)
 伽藍はまず、己の周囲の魔力に干渉してゆるゆるとした空気の対流を起こした。それはいわば熱なくして陽炎のような有様となり、彼女の輪郭を朧にした。
 その異変は、祠内を徘徊する隻眼女僵屍の集団も気付くところとなる。視界が歪むわけだからして、必然ではある。
 ただ、問題は気付いてから何ができるか、ということ。
「……ギ?」
「ウグー?」
 平常の彼女たちは優れた拳法使いであり、異変ありと見たならば連携して隙を少なく立ち回るなり周囲を探るなり、何かしら有用なアクションを起こしたことだろう。だが、伏羲の祠により脳を破壊された今は、怪訝そうに首を傾げるばかり。無為なうろつきぶりを改める様子もない。
 畢竟、ゆらめく視界に紛れて伽藍が忍び足で近寄っていることにさえ、気が付かない。
 じゃらん。ざらん。がらん。
 古ぼけた銅貨が床を跳ね、傷まみれの宝石同士がこすれ合い、被る者のいなくなった王冠が転がる。そんな音は、あるいは女僵屍の耳にも届いたかもしれないが。
 次の刹那、【トリニティ・エンハンス十二刻】によって巻き起こされた魔力の爆発が、周囲一帯の女僵屍らを纏めて薙ぎ倒した。

 伏羲の祠に入り込んだ朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、その途端に駆けた。
「ぇええぇエエえぁアアアあァ!」
 人の喉から絞り出されたにしては、あまりにも洗練されていない絶叫。咆吼。
(敵はどうする? 壊せ! 朱鷺透小枝子、お前はそういう物だろう! 敵は壊せ敵は壊せ壊せ壊せ壊して戦えぇえええ!!)
 実態はどうあれ、自覚の上では小枝子とはそういう存在ということになっているらしい。小枝子の精神の器は、煮えたぎるマグマのような戦意で隙間なく満たされていた。新たに注がれるのが水であれ酒であれ毒液であれ、虚しく蒸発して消え去るのみ。ゆえに祠を満たす魔力は、彼女の闘争の妨げたり得なかった。
 猛獣のごとき小枝子の咆吼は、必然、祠の内にある女僵屍らの耳にも入る。さらに必然、彼女らは出現した脅威に対して戦闘態勢を取る。書架から強制的に叩き込まれた知識によって知性を失ったとはいえ、体で覚えた武技まで失ったわけではない。
 半秒で気付く。咆吼の主たる小枝子が、書架の並ぶ廊下を自分たち目がけて真っ直ぐに駆けてくる――否、宙に浮いて『翔てくる』のに。
 突進しながら小枝子が振るうのは、彼女自身の身丈ほどもあろうかという、芭蕉扇めいた形状の長柄扇。
 物理を越えた暴風を伴って襲い来るそれに対し、最前列にある女僵屍ら二人が、機を合わせたように同時に貫手を放った。幻獣檮杌の爪を模したという、獰猛なる威力を誇る拳技である。
 拮抗。轟音。四方八方にまき散らされる衝撃波。
 暴風が行き場を明後日へと逸らされつつも女僵屍らの爪を砕く。しかし、扇も渾身の貫手の猛威に圧され、小枝子の後方へと大きく弾かれた。
「ギィッ――」
「ガァ!」
 悲鳴を上げつつも、女僵屍らは即座に逆手で貫手を放つ。
 身を仰け反らせた小枝子にそれをかわす術はない――かに、見えた。
「ア、あァ!」
 だが、その寸前に小枝子は扇の柄尻に備えられた鉄杭付きの黒鎖を奔らせ、女僵屍らの腕を器用にも纏めて絡め取った。
 そのままハンマー投げよろしく振り回し、脇の書架へと叩きつける。
 派手な破砕音を伴って書物や竹簡の束がばらまかれ、衝撃の中で女僵屍らが目を回す。
 同時に大きく踏み込んだ小枝子は強く握りしめた扇を再び振るって爆圧を生み出す。
 今度こそ為す術なく張り飛ばされた女僵屍らは、艦砲から撃ち出されたような速度で吹っ飛び、後続にあった女僵屍らともみくちゃになりつつ、爆散した。

 空っぽの器。
 充ち満ちた器。
 相反するような、そうでもないような彼女たちは、いずれ劣らぬ勢いでもって祠内の敵を駆逐していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

津崎・要明
了解した・・・多分。つまりこういう事だろ?

アメーバ形態を取ったり、まんじゅうみたいに丸まったり、人間型を取ったり崩したり伸びたり縮んだりして方向を定めずうろうろする。
急に止まったり、その場ではずんでみたり、ぺしゃんこになったりしつつ
時々ピンボールの玉みたいに書架の間を高速で跳ねて、偶然当たったかのように敵を跳ね飛ばす。
時には数体まとめてぶっ飛ばしたり、書架に挟まったふりしたり・・・

ま、種族特性を利用しての【受け流し】【貫通攻撃】【鎧無視攻撃】くらいは入れておいても、そういう生き物だと思ってもらえそうかな?


フィロメーラ・アステール
うん?

……つまり、どういうことだ?

敵を倒す以外になんか注意点があるのか?
ちょっとよくわからなかった……。
敵を倒してから考えたらダメかしら?

知識? あーうるさいうるさい!
アレコレ邪魔しないでほしいね!
いま頑張って説明を思い返してる所なんだよ!

敵もなんか寄ってくるし!
もー、邪魔邪魔!

(【破魔】【属性攻撃】の聖なる炎の守護結界で、自身を守りながら邪魔な敵を【焼却】して【浄化】する)

ふははは、邪魔する者はみんなこうなる!
燃えろー、燃えろー!

……や。
……ヤバい、今ので完全に依頼の内容を忘れちゃった……。

ちょっともっかい説明きいてくるわ!
邪魔する敵は燃やす!



●ならば良し!
 伏羲の祠の前、鳥居に相当するであろう、厳めしい瓦屋根の門に、津崎・要明(ブラックタールのUDCメカニック・f32793)とフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)の両名が至る。
「さて……ここからは例の、言葉の使えない領域だ。お互い注意しよう」
「おーっ!」
 要明の言葉に、フィロは背中の羽をぱたつかせつつ力強く首肯する。
 その様を微笑ましく見やってから、要明は祠の中へと足を踏み入れた。
 祠の書庫に満ちた魔力は、侵入者の脳に書庫に蓄えられた膨大な知識を流し込み、灼く。そのトリガーとなるのは、侵入者の識字能力だ。
 この魔力を『だます』には、まず言葉を使わないというのは基本。要明はそれに、さらに一手間を付け加えた。
(多分だけど……こうすれば)
 祠に入った途端、人型の擬態を解除する。
 黒き液状生物ブラックタールの本来の姿――と称して良いのかどうか、アメーバのような形状となった。
 あくまで常識に囚われた物の考え方に過ぎないが、人型でないどころか獣の姿でさえない、原生生物のような見た目の存在が文字を理解するなどとは普通は判断しない。言葉を解する瑞獣の闊歩する封神武侠界ではあれ、流石にアメーバが同様の真似をするという絵面は見られまい。ペテンとしてはまず妙手といえた。
 床を這って進むと程なく、隻眼女僵屍の徘徊する区画へと到着する。
「グ?」
 その中の一人が要明の姿を見咎めたのか、首を巡らせた。
 要明は素速く急角度で曲がり、ゲル状の体を書架の隙間へ滑り込ませる。
「……?」
 怪訝そうに首を傾げつつ、女僵屍は要明が隠れた書架へと顔を近付けていく。
 転瞬、ボール状になった要明の【バウンドボディ】が、女僵屍の顔面に突き刺さる。
 ぼき、と破滅の音を立てて女僵屍の首が真後ろに向かって圧し折れた。女僵屍はそのまま勢いよく反対側の書架に激突する。
「――ガ!?」
「ギャ!」
 異変に気付いた他の女僵屍らが駆け寄ってくる――いや、猛禽のように鋭く飛翔してくる。
 人型であればスマートな一七〇強の男性である要明、ボール状になったその大きさもそれなりである。その大きな的を目がけ、女僵屍らが超速度をそのまま乗せた跳び蹴りならぬ『飛び蹴り』を放つ。
 が、その蹴り足が届く寸前に要明はボンと書架を弾んで回避した。
「――ッ!?」
 女僵屍の蹴り足が空を切ったところで、要明は四次元殺法めいて周囲を弾みまくり、伸び上がった女僵屍の体に再び炸裂した。

 威勢の良い返事をしたフィロは、要明に続いて祠に入る――が。
「……あれ? えっと……なんか、敵を倒す以外に……なんだっけ?」
 急に顔の作画が変化し、線の量が減る。頭上に巨大な「?」が浮かび上がる。
 それのみならず、浮かんだ疑問を口にした。ばっちりと、言葉で。
 この場にグリモア猟兵がいたら「嘘だろ!?」と絶叫をもってツッコんだかもしれない。言葉を発してはならないという戒めを、その瞬間は自らも忘れて。
 とまれ、その瞬間にすっとぼけ絶頂のフィロの頭に知識が流れ込んでくる。伏羲の書庫に納められた、古今東西あらゆる魔術に関する知識、おぞましく冒涜的で、膨大な量のそれ。脳はたちまちパンクし、オーバーヒート……するはずだった。
「うるさーい!」
 怒号一発、わちゃわちゃとフィロの脳に詰め込まれかけていた知識とやらは彼女の両耳からすっぽん! と放り出された。馬耳東風だの右から左へ受け流すだのなんて目じゃない。
「今、説明を思い返してるんだよ! アレコレ邪魔しないで!」
 脳を侵食する無駄知識をちぎっては投げちぎっては投げ、フィロはグリモアベースで聞いたはずの説明の発掘に苦心する。
 まあ問題は、そうやって頭の片隅から説明の文言を拾い上げ、反芻してみても、どういう意味なのかちょっとよくわからなかったということであろうか。
「……うん?」
 再びボケ顔になっているところ、怒号の声を聞きつけたのであろう、女僵屍らがわらわらと寄ってくる。
「フシュー!」
「グォォ!」
 人間の女の姿だった彼女たちは、猟兵、即ち敵たるフィロの姿を認めると、四つん這いになったかと思ったらたちまちの内に有角の馬めいた姿へと変貌する。麒麟を模した恐るべき拳法、というより憑依魔術である。
 まあ、絶賛懊悩中のフィロからすれば、だから何だという話ではないのだが。
「もー、邪魔邪魔!」
 激昂したフィロの体が目映き白炎に包まれる。正しくは【日輪の帷帳(プロミネンスヴェール)】の守護結界が。
 破魔の浄炎はフィロの怒気を反映したかのように拡大し、スイカを越え、ビーチボールも越え、一トン爆弾ほどの巨大さとなる。その威容は勇んだ女僵屍らが揃って唖然とするほどだった。
「ふははは、燃えろ燃えろー! 邪魔する者はみんな浄化じゃー!」
 うねり狂う轟炎球が驀進し、居並ぶ女僵屍らを呑み込んだ端から瞬時にして灰へと還す。それでもなお勢い衰えずルンバよろしく周囲一帯を駆け回り、フィロいわく邪魔する全て綺麗さっぱり掃除された。
 そして元の場所、つまり祠の入り口付近に戻ったフィロは。
「……ダメだ、やっぱりわからん! 説明受け直してこなきゃ!」
 というわけでグリモアベースに帰還するのだった。
 が、「ええと、まあ、敵全部倒して無事に帰ってきたんなら、もういいや」とだけ言われ、改めての説明がなかったため、結局「?」を浮かべる羽目になったとか、ならなかったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月28日


挿絵イラスト