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殲神封神大戦⑰〜混沌の音色

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#渾沌氏『鴻鈞道人』


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「……皆さん、集まっていただきありがとうございます。
 今回倒していただきたいのは、自らを【骸の海】と名乗る、渾沌氏『鴻鈞道人』と呼ばれるモノです。」
 挨拶もそこそこに、アトは作戦について話し始めた。
「彼がどれだけの強さを持つのか、私の予知では分かりませんでしたが、一つだけ確かなことがあります。
 これから私は、皆さんを鴻鈞道人のいる場へと送りますが……そこで私は鴻鈞道人に身体を乗っ取られ、皆さんと戦う事になります。」
 ……え? どういうこと? と問い返す猟兵たちへと返されるのは、光の篭もらぬ目といつもと変わらぬ笑み。
 そのままアトは、ミレナリィドールである自身を指さし、
「皆さんは、鴻鈞道人である私を、倒してください。
 私の意思も残っていませんので、鴻鈞道人に乗っ取られた私に対して言葉を掛けるのも、あまり意味は無いでしょう。
 知った相手を倒す、という気持ちは分からなくはありませんが、遠慮は要りません……私の身体は元より、入れ物でしかありません。
 とにかく、倒せば終わりです。
 彼が自身を【骸の海】などと言っても、現世に現れられるのはごく一部のオブリビオンでしかないということです。
 それでは、よろしくお願いしますね。」
 そう言って一礼したアトの手の上のグリモアが輝き、仙界・渾沌の地へとゲートが開かれる時、思い出したように呟く言葉が耳に響いた。
「……私の中にあるモノが『視える』、かもしれませんね。」

 ゲートの先、引きずり出されるように外に出ていたアトが猟兵たちへと振り返る。
 そして、心の中に言葉が響いた。
(絶えず時は運び、全ては土へと還る)
(罪深き刃ユーベルコードを刻まれし者達よ)
(相争い、私の左目に炎の破滅カタストロフを見せてくれ)


ヨグ
 ヨグです、殲神封神大戦の五本目をお送りします。

 この物語の中ではアト・タウィルの身体は鴻鈞道人のものとなっており、過去の出来事などを言い聞かせても一切良い反応を返さないでしょう。

 そして、アトの中にあるモノが、解けて視えるでしょう。
 銀の鍵の先にある、なにかが……。
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

刹羅沢・サクラ
故あって、斬りに参上仕った。
その影、後腐りなく斬ってみよう
貴方が何者か、いかなる目的で以て猟兵の身を借りるか、知る由もなし
その手管、その在り様も興味なし
いざ仔細なく、斬り結ばん

しかし、相手の出方がわからぬ以上、出た所を見切るや、この眼に宿りし矢避けの鱗尖紋による護りを頼り、表に立つはあくまで足音を忍ばせた残像なり
然れども、虚仮威しがいつまで通ずるとも限るまい
お互いに死力を尽くすならば、こちらも一刀にて活路とすべし
かの御仁に至る術なし
ただ未熟なれど、雲耀に届くまで、一刀に賭けるもの也
雷鳴、颶風の如し
死ねよ、渾沌
今度こそ迷い無く



「……故あって、斬りに参上仕った。」
 歩み出る刹羅沢・サクラ(灰鬼・f01965)を見返すのは、元と変わらぬ感情のこもらない人形の虚ろな瞳。
 内にいるという渾沌氏『鴻鈞道人』のほんの少しの動きでも見出そうと、サクラは鱗尖紋の浮かび上がる瞳を凝らしながら刀を抜き、その刀身を肩に担いだ。
「貴方が何者か、いかなる目的で以て猟兵の身を借りるか、知る由もなし。その手管、その在り様も興味なし……いざ仔細なく、斬り結ばん。」
(興味は今起こる事のみ……良き心がけだ。)
 眼前で、貧弱な人形の身体がゆらりと揺れ……無造作に伸ばされた左腕が木片となって弾け、沸き出す異界の粘液が槍となってサクラの身体を貫いた。

(……避けるか。)
「貫いた残像は過去のもの。過去そのものである貴方にふさわしい。」
 横に立つ気配に人形が振り向けば、肩に担いだ刀を力一杯振り下ろすサクラの姿。
 振り向きざまにまき散らされる異界の粘液に映るのは、サクラ自身……いや、長大な斬馬刀を振り下ろす白い鬼。
「かの御仁に至る術なし。……ただ未熟なれど、雲耀に届くまで、一刀に賭けるもの也。雷鳴、颶風の如し。」
 数多の血の畔を築いたとされる鬼、その中でももっとも強いと言われた白い鬼。
 その血を継ぐサクラの刀は全く同じ軌道を取り、人形の身体を袈裟懸けに斬りつける。
「死ねよ、渾沌。今度こそ迷い無く。」
 振り抜いたサクラは即座に跳び退る……人形の傷から溢れる異界の粘液の音は、どこかで聞いた気の振れた微笑みに似ていた。
(中々やるな、娘よ。)
「……貴方に娘と言われる筋合いはない。」
 サクラへと追い打ちを掛けることなく、飛び散った異界の粘液が人形へと集まり、その姿を組み直す。
 しかし、吹き飛んだ左腕はそのままに、沸き立つ粘液から音符の泡を弾けさせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロバート・ブレイズ
全く――目覚めた数秒後に眠れと謂うのか
随分と身勝手な神格を得たのだな、副王(きさま)
兎に角、今の俺はひどく不機嫌なのだ
騒々しい音色を冒涜せねば治まらぬ

如何様な異形が来るのかは不明だが、奴が『変わる』刹那を情報収集(み)る。何処が脆いのか、何処が隙間になるのか、隅々まで暴いてやろう。その在り方で立ち去れ(う)けるか避けるか思惟しよう
対処した後、望み通り『罪深い刃』を魅せる――沸騰せよ我が脳漿――断章(アザトホース)ののたうつ儘に貴様を殺す
傷がついた? ならば修復だ。脳が潰された? ならば増殖だ。窮極の混沌の中心が『いずこ』か、理解するのは簡単だろうよ
俺は普遍だ、俺が無限量だ、俺が永久で在るべきだ



「クカカッ。……貴様、よくその様な脆弱なモノに入ろうと思ったものだな。」
 笑いとばし、嗤いながら言い放つ、ロバート・ブレイズ(冒涜王・f00135)。
 既に壊れた左腕からボタボタと異界の粘液が溢れる様に、それを全く気にせず見てくる虚ろな瞳に……内の者がどのように手を出してくるかを知るために、目を凝らしながら。
「もっとも、元より壊れたモノだ。貴様が壊すまでもなくな。」
(人としてなら、そうだろうな。)
 捻れたフルートを持つ右腕が揺れ、砕け散った腕から異界の粘液が噴き出す。
 ロバートの瞳を、脳髄を貫き……それでも構わず口が開く。
「全く……目覚めた数秒後に眠れと謂うのか。随分と身勝手な神格を得たのだな、副王(きさま)。」
 ごぽ……こぽ……重く沸き立つ音とともに、ロバートの顔を貫く粘液が押し出される。
 貫き、破壊されたロバートの脳髄が新たに現われ、その姿を異形の怪物……いや、完全なる邪神へと。
(身勝手というなら、お前もだろう。)
「クカカッ! ……兎に角、今の俺はひどく不機嫌なのだ。」
 嗤いとともにのたうつモノと化し、人とはなんだったかを忘れるほどの存在へ。
(ぐ、うお……。)
「騒々しい音色を冒涜せねば治まらぬ。」
 腕であった粘液は、慰撫すべきフルートを持つ手は潰され、消され、失われてしまった。
 人形の中身を噴き出し、刺し貫こうとも気にせず、断章(アザトホース)はただのたうち、人形を壊し続ける。
「傷がついた? ならば修復だ。脳が潰された? ならば増殖だ。窮極の混沌の中心が『いずこ』か、理解するのは簡単だろうよ。」
(き、さま……。)
「俺は普遍だ、俺が無限量だ、俺が永久で在るべきだ。」
 潰され、ひび割れる人形の胴体から溢れる異界の粘液。
 それらは音符の形をした泡となり、依然荒れ狂う肉と触手の固まりから離れ……滑り落ちたベルトが形を纏め、人の姿を取り戻す。
 両腕ともに、こぼれ落ちる粘液となっている以外は。
(お前も『これ』も、並みの人ではないな。)
「貴様が人を語るか。そして俺を、人でないと?」
(いや……どこまでも人らしい。人で無くなるほどにな。)
「……クカカッ!」
 一際大きく沸き立つ音が、辺りに響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
待て。
この感覚、なんだこの親和性はよ。
前に別の予知を聞いた時にはそんな気配もなかったのにアンタのその身体……いや、存在。
まさか……!?

物凄く嫌な予感が拭えないけど、油断はしちゃいられないね。
どこまで通用するか分からねぇけど、狂気と呪詛への耐性を上乗せした『オーラ防御』のフィールドを張り、マヒを狙った電撃を放って迎え撃つ。
その裏で、あまりにも膨れ上がってるその神性を『情報収集』する為の思念を飛ばし、その根源を探る。
親和性が高いにしても、完全に同一でない筈。
その間にある「存在の綻び」を更に探り、解こうとダメ押しの思念を飛ばす!
そこまですれば直接ぶん殴れるだろうけど……アタシはそこまでに何を見る?



「待て。……この感覚、なんだこの親和性はよ。」
 ふらりと立つ、グリモア猟兵の姿をしたもの……それは、渾沌氏『鴻鈞道人』に操られた人形だ。
 しかし、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は目の前に立つそれに対し、もっと別の存在を感じ取っていた。
「前に別の予知を聞いた時には、そんな気配もなかったのに。」
(何をこれに見出したかわからないが、)
 鴻鈞道人の落ち着いた思念とともに、外れた腕の傷からどろりと零れ落ちていた異界の粘液が集まって白い翼となり、人形の傷口からはさらにおぞましい触手が生える。
 それがゾワりと蠢いたと見た瞬間、すでに目の前に白い刃が迫っていた。
(油断するなら、命を取られても文句を言うまい?)
「……ああ、そうだな。」
 数宮の周囲に張られたサイキックオーラに阻まれた刃へと手を向け、手のひらから放たれた電撃に刃が止まる。
「油断はしてないさ。だが、」
 力を籠め、さらに放たれる雷撃に刃が弾かれ……それを操る人形から放たれる、鴻鈞道人と違う気配。
 オブリビオンともUDCともまた違うそれは、
「アンタのその身体……いや、存在は。」
(これを、『副王』と呼ぶものもいたな。)
「まさか……!?」
 思念とともに薙ぎ払われる、白い刃。
 それを雷撃で吹き飛ばしつつ、数宮の思念波は鴻鈞道人と別の存在との境界を探る。
「副王ってヨグ=ソトースか!? いや、親和性が高いにしても、完全に同一でない筈。」
 幾度も幾度も……人形の振るう刃との応戦の間、垣間見えるのは数宮の知る人物たち。
 数宮の親、仲間、馴染みのバイク屋、数宮を魔法少女にしたがる生物……そして、失踪した友人。
 しかし、その中には数宮が知っているはずのないものが混ざっている……例えば、数宮が生まれてすぐの、それを喜ぶ親の姿など。
「始まりも終わりもなく、かつてあり、いまあり、将来あると人間が考えるものはすべて、同時に存在する……その中で、あたしにタグ付けされた記憶、か?」
 ならば……と意識を向けるのは、失踪した友人。
 なのに、見えるのは数宮と同じ時を過ごしていた頃のものばかり。
「違う、それじゃない……くそっ、なんで見えねえんだ!」
(所詮は紛い物だという事だろう。これも、本来の邪神ではないのだからな。)
「ちっ、そうかよ!」
 鴻鈞道人の思念と共に刺し込まれた刃をかいくぐり、人形の胸へと手を当てて電撃を最大出力で解き放つ。
(ぐっ……。)
 バチッ! と弾け飛んだ人形を背に、その場を一気に離れた数宮のつぶやきだけが残っていた。
「……だったら後は、ほかの人に任せるよ。」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

リミッター解除、限界突破、オーバーロード!
体感時間を引き伸ばす程の深い集中(瞬間思考力)で才能(パフォーマンス)を最大限に引き出す神憑り(降霊)。
多重詠唱結界術で空間を詰め込み折り畳んでの空間ジャンプで空中機動、量子的可能性の選択、位相ずらし、で回避を試みましょう。
結界とは内と外を分ける力、即ち境界を操作する力だ。ならば、融合したアトさんと混沌氏の境界を再定義し引き剥がすことも可能であろう。だが、やはり外からでは難しいか。なら、化術肉体改造で私もアトさんと融合し内側から攻略しましょうか。寄生種(悪のカリスマ)たる私に寄生勝負で勝てると思うなよ?
ああ、そうそう、鴻鈞道人のそのさも自分が絶望でございってツラが気に入らないから、引き剥がすついでにふみつけてあげるわ。骸の海なら過去の化身だし私のユーベルコードの効果的にもちょうどいいしね。
それと、奪うのは私の気に入らない未来ね。私に都合のいい未来はそのまま残しておくわよ。齎される幸運で御都合主義を押し通す


中小路・楓椛
弓と矢の形態の【谺】と【ゆごす】を装備した【クロさん】に搭乗、周囲に蒐める第五元素(エーテル)密度を最大にベクトル制御。攻撃をエーテルと射出する非物質の矢と弓本体で打ち払い相殺しつつ相手まで最大戦速にて接近。

目標と【長い金属片?】を同調させた状態でUC【あるはざーど】起動。
アトさん経由でこちら側に「中にあるモノ」の存在情報を引っ張り出して乗っ取られた要素を上書きします。果たして存在強度が強いのはどちらになるか…賭けではありますが、一度は試す価値はあるかと。

今為すべきは敵性存在の強制退去(リジェクト)。苦情はダゴン焼き屋が後で如何様にもお受けしましょう。



「鴻鈞道人に乗っ取られたとしても、アトさんが中に残っているのは間違いないのよね。」
 珍しく真面目な顔で、ゆらりと立つグリモア猟兵だった人形を見つめる、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト艶魔少女・f05202)。
「だったら……境界を操る事さえ出来れば、融合したアトさんと混沌氏の境界を再定義し、引き剥がすことも可能よね?」
「ええ、その通りです。」
 その問いに答えたのは、【クロさん】と名付けられた実験用のキャバリアに搭乗した、中小路・楓椛(ダゴン焼き普及委員会会長・f29038)。
 キャバリアの持つ弓を引き絞っていると、2人に気が付いた人形が無表情な顔を上げ、腕の外れた箇所から零れる異界の粘液が白い翼へと変わっていく。
「ですが、まずはアトさんを止めませんと。あの内に入り込むためにも。」
「ええ、そうね。」
「……来ますよ。」
 構えることなく、まるで操り紐に引き摺られるようにふらりと近づいてきた人形が、腕のあるべき場所から生えた白い翼で2人へと迫る。
 楓椛が瞬時に撃ち込んだ矢は翼に払われ、第五元素(エーテル)密度を高めた弓で薙ぎ払われる白い翼を逆から打ち払い、同時にアリスが極度の集中からの多重詠唱結界術で空間を詰め込み折り畳んだ空間ジャンプで白い翼を避け……楓椛が人形と鍔迫り合った時、上に唐突に現れたアリスが精神体となって人形へと重なり、潜り込んで溶けて混ざっていく。
(私の中に来る、か。)
「ええ、アリスさんはそういうことが得意な方です。あとは、私があなたの意識を戦いに向けさせるだけ。」
(お前に出来るか?)
 白い翼を羽ばたかせ、後ろへと飛ぶ人形へと一気に距離を詰める楓椛。
「ええ……この後、ダゴン焼きを試していただく約束がありますので。」
(面白い、やってみるがいい。)
 射突概念を司る神器がキャバリアの手の中で槍へと変わり、貫く存在を白い触手が絡めとり……人形とキャバリア、サイズの違う2人がお互い斬りあっていた。

「さて、まず第一段階は成功と。……それにしても、」
 人形の内へと潜り込んだアリスは、人形の意識の中へと溶け込んでいく。
 憑依し、操る鴻鈞道人の意識……表層に浮かぶそれに身を浸したアリスは、顔をしかめて呟く。
「辛気臭いったらありゃしない。あの、さも自分が絶望でございってツラが浮かぶわ、気に入らない。」
 さらに内へ、さらに中へ……アトの意識へと向かう。
 粘着くように侵入を拒否する鴻鈞道人とは違い、まるで水に飛び込んだようにあっさりと入り込めた。
「こちらが内側なら、難しいことはなさそうね。」
 波すら立たないほどに穏やかな、意識。
 その中に浮かんでは消える、様々なもの……本当に様々な『モノ』が視える。
「……壊れているといえば壊れてるのかもしれないけど、ね。」
『聞こ……え、ます、か?』
「ええ、問題ないわ。」
 途切れ途切れの楓椛の声にアリスは意識を向け、言葉を返しながら魔力を高めていく。
「私が合わせるから、いつでもいいわ。」
『分りまし、た。』
「……この手はあまりにも小さく、掬い取るよりも零すものの方が多い。」
 徐々にアリスの手に魔力が集まり、それが馴染んで染み込んでいく。
「取り零すそれを『罪』と呼ぶならば……その『罪』を未来を切り拓く刃に。」
 その時、楓椛の声が意識の中へと響いた。
『強制退去(リジェクト)』
 穏やかな意識の中、様々なモノが浮かぶ速度が上がり、まるで沸騰するように煌めきを重ねていく。
「さぁ、行くわよ!」
 同時にその勢いに押されながら、アリスは表層へと迫り……表面を覆う重い意識をしっかりと掴み取り、外へと飛び出た。

『む……ぐは!』
 人形の中から押し出されるように現れた鴻鈞道人を、そのすぐ後から現れたアリスが勢いよく踏みつける。
 絶望したように見返してくる右目へと、アリスはその足を勢いよくたたきつけ、
「あんたのその顔、その目が、本当に気に入らない、の!」
『ぐ、やめ、ぐあ!」
 鴻鈞道人の未来を奪い取り、御都合主義のままに蹴り倒すアリスだったが、
『……くっ、』
「あっと……さすがに終わったか。」
 足元から鴻鈞道人の存在が消えていた。
 ふと振り返れば、倒れた人形の横で楓椛がその身を確認していた。
「大丈夫そう、かしら?」
「多少の意識の混濁はあるでしょうけども、これなら問題はないでしょう。壊れた腕も、似た形のものさえ手に入れば。」
 鍵のように見える銀色の髪留めを持った楓椛が人形の目を閉じさせると、静かな寝息が聞こえてきた。
「そう、なら安心ね。」
「ええ、アトさんの存在強度が強くて助かりました。もっとも、」
 キャバリアの手に人形を乗せながら呟いていた。
「苦情があっても、ダゴン焼き屋が後で如何様にもお受けしましょう。」
「ふふ、何もないことを祈っているわ。」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月31日


挿絵イラスト