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殲神封神大戦⑰〜混沌の海、揺蕩いし存在

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』

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#渾沌氏『鴻鈞道人』


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 渾沌。其れは混沌にも通ず。
 ――古代中国においては『四凶』と称される四柱の悪神と伝えられ、または目鼻耳口の七孔が無い怪物とも黄帝とも言われている。
 鴻鈞道人とは封神演義において渾沌が神格化された存在であり、道教の最高神たる三大仙人の更に上位にあるものとして登場している者である。

「と、まぁ……ここまでがアース世界の中国に伝わってとる話やな」
 蓮条・凪紗(魂喰の翡翠・f12887)は知人の司書に借りてきた資料片手にそう告げる。陰陽師の術は道教の影響を受けたような部分も多い為、深く知れば知る程面白いとも言えるのだが、今はそうは言ってられない。
「渾沌は混沌でもある――即ち、骸の海そのものの意思が浮かび上がってきた存在なんやとしても……過去に世界を飲み込ませる訳にはいかんやろ?」
 凪紗はそう告げてグリモアの光を指先に点し、神妙に告げる。

「行き先は、未だかたち定まらぬ渾沌の地。奴自身もまた、揺らぎ移ろい変わる存在」
 故に――その行動は読めず、そして定まらず。
 そしてその姿すら一つに非ず。
 ――だからこそ、不確定の未来を識るものを依り代にする事すらなすのかも知れず。
「全力で、殺る気満々で行き。相手が如何なる形をしているとしても」

 ……。
 ………。
 猟兵達が転送された先はただただ移ろい揺らぐ世界。
 そこに待ち受けたるは、白き姿をした左目のみの異形。

(――罪深き刃《ユーベルコード》を刻まれし者達よ)

 声が、響く。同時に、彼らを見送った筈の羅刹の青年が渾沌の地に突如現れる。
「やっぱ、どんな術施しても逃れられんか――」
 鴻鈞道人の姿が溶ける。白き存在が形を失い、凪紗の身体に飛び込み潜り込む……!
「さっき言うた事、忘れるんやあらへんよ……!」
 融合を受けると同時に、結っていた髪が解けて白濁し、角と爪が鋭く禍々しく変異する。鴻鈞道人の邪悪で強大な『渾沌の諸相』は、魔鬼たる真形をも呼び起こし。

『相争い、私の左目に炎の破滅を――』
(カタストロフを見せてくれ)

 悪鬼羅刹は嗤って翡翠の爪を猟兵達に手招きして見せた。


天宮朱那
 天宮です。
 折角だしこの波に乗りたかっただけだと自供しており。
 元々凪紗は一次創作では悪役で作ったキャラなんだと思い出した次第。

 プレイングボーナス→グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する。

 羅刹だし多分簡単に死なないと思うんで殺す気で構いません。
 本人も戦闘民族だし、気にしないし大丈夫大丈夫。
 意識は完全に鴻鈞道人に奪われてます。闇堕ちや洗脳系に良くある様な知り合いの呼びかけで弱体化とかそんな幸せな事は一切起きません。
 フレーバーとして。この羅刹、陰陽師のくせに物理攻撃多めで、素手で殴ったり生命力吸収する爪で攻撃したり。WIZだと雷の術もぶっ放すイメージ。バトる参考までに。

 有力敵戦と言う事で難易度も高め。無傷で帰す気は更々ありませんのでご了承を。
 負傷描写バッチ来いってくらいの気概でどうぞ。

 技能の『』【】等のカッコ書きは不要。しっかり読まれてる方優先します。
 どう使うか、どう動くか――技能の使用に具体的な記述有る方がプラス評価。
 技能名大量羅列は描写がシンプル、参加人数次第で採用率低めになります。

 複数合わせは迷子防止に相手の名前(ID)かグループ名記載のご協力を。
 全員採用は確約出来ません。オーバーロードはご自由に。採用不採用に変化は無いのでご了承を。

 公開と同時にプレイングは受付開始。
 マスターページやタグ、Twitter(@Amamiya_syuna)などでも随時告知をしますので確認頂けますと幸いです。
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

安心しろ…
私は処刑人…屠る事には慣れている…
桃源世界を救う為に…混沌の化身を討ち倒す為に…
そして…グリモア猟兵を助ける為に…
行くぞ…我が名はアンナ!処刑人が娘也ッ!

処刑人の覚悟を胸に鉄塊剣抜き振るい相手しよう
戦闘知識を発揮し攻撃を視力見切りつ回避
鉄塊剣を武器受けで盾代わりにして受け流し防御
攻撃を受けても激痛耐性で耐え抜こう

攻撃耐えたら鎖の鞭振るい敵の足に引っ掛け捕縛
力づくで引っ張り体勢を崩そう

この世界を救う為だ…
手加減なしで行くぞ…!覚悟しろッ!!!

体勢崩したら地獄の炎を纏いて炎獄殺による
グラップルと功夫用いた拳と蹴りを放ち
怪力と鎧無視攻撃を浴びせて混沌の化身を討ち倒そう…!



 渾沌の諸相を宿した羅刹を目前にし、黒き女は静かに一歩進み出た。
「安心しろ……」
 仇死原・アンナ(処刑人 魔女 或いは焔の花嫁・f09978)の言葉は、これより戦う鴻鈞道人ではなく、それに憑かれた顔見知りの青年に向けられたもの。その手には既に使い慣れた鉄塊剣が握られていた。
「私は処刑人……屠る事には慣れている……」
『(ほう……)』
 鴻鈞道人の念話の声と凪紗の声が重なって聞こえる。だが惑わされはしない。
 この桃源世界を救う為、混沌の化身を討ち倒す為……そして、仲間たる猟兵を助ける為に、処刑人としてその胸に覚悟を宿しているのだから。
「行くぞ……我が名はアンナ! 処刑人が娘也ッ!」
『(その覚悟、矜持、何処まで持つかな?)』
 凪紗の爪が更に禍々しく鋭く伸び、刃となりて輝く。『渾沌の諸相』により異形の手と化したそれを得物に白き羅刹がアンナに向かって踏み出した。
「……!!」
 戦い慣れた彼女からすれば、大体の攻撃の予想は付く。一挙一動を確実に見極め、翡翠の爪による斬撃が飛んでくる方向に向けて鉄塊剣の側面を盾の様に向ける。
 がきぃっ、と五本の爪が当たると同時に強い衝撃が走る。重い鉄すらを引っ掻く音が耳障りに聞こえ、鴻鈞道人の初手一撃の力を完全に逃がして回避しきる事は出来ぬと悟る。
 その身を吹き飛ばされそうになるのを耐え、靴のかかとをすり減らしつつ立ったまま身が後退するのを感じる。
 全身に衝撃を逃がす事で感じる痛みはあるが、痛みには強い――耐えられぬ事は、ない。反撃の開始。痺れる腕を必死に、即座に動かして、鎖の鞭を振るう。
『(……何?)』
 目の前まで来てくれれば捕らえるのは容易。ぎゅるんと鎖を凪紗の片足に引っかけ捕縛した所で、一気に勢い良く引く――!
『(ぐっ……!)』
 文字通り足を掬われ、凪紗は体勢を崩しその身が地に投げ出される。
「この世界を救う為だ……手加減なしで行くぞ……!」
 剣を手放し、代わりに握られた拳には地獄の炎。身に着けた体術は、邪仙如きに避けられる物では無い。
「覚悟しろッ!!!」
 燃え盛る炎纏いし拳が彼女の全力と共に凪紗の胴に叩き込まれ、続け様に同じく炎纏った脚より強烈な蹴り上げを喰らわせる!!
『が、は……ッ!』
(――その容赦の無さ、それがお前の覚悟――と)
 炎に焼かれ、ゆるりと身を起こす羅刹は愉悦の笑みを浮かべており、響く声もまた淡々と観察を続けるが如きもの。
「混沌の化身を討ち倒す……! その為に、ワタシは此処に来たのだから」
 たとえそれがどんな姿で現れようと全力で行け、と。導いた青年がそう告げたからには、使命を果たす。それこそが処刑人としての己の生き様なのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

有州院・こりす
…凪紗ちゃん…わかった、こりすちゃんの全力でいくで
腰のツイン剣の鞘を握り『コリスリデル』召喚&搭乗!
ピンクゴールドな装甲輝くおひめさま専用機!(と、勝手に設定した謎の拾い巨大ロボ

凪紗ちゃんの得意技やしロボには雷仕掛けてくると予測
空中機動する四方に
電撃耐性宿したハートを飛ばしてガード
ハートや機体のダメージは別のハートでUC修理&姫パワー増強
本人の傷は癒さず根性や優しさで耐え続ける

反撃はまずピンクのオーラで物理防御を凪紗ちゃんの体へ
手加減ちゃう
全力の流血封じや
秩序属性をマジカルな星飴にかえてグレネード狙撃で渾沌の精神へダイレクト連射

凪紗ちゃん
またたびに帰ったら十段重ねのパンケーキおごってもらうで!



「……凪紗、ちゃん……」
 来る筈の無い彼が現れ、渾沌に呑まれ融合したその一部始終を目の前にし。有州院・こりす(まいごのまいごの・f24077)は思わず相手のその名を呼んだ。
 ――さっき言うた事、忘れるんやあらへんよ?
 寸前に凪紗が告げた一言に、こりすは腰に佩いた二剣の鞘をぎゅっと握りしめた。
「……わかった、こりすちゃんの全力でいくで」
 彼は言ったから。全力で行き、と。相手が如何なる形をしているとしても。
『(どうした、その二振りを抜くのでは無いのか)』
 挑発する様に凪紗と鴻鈞道人の声が重なる。だが、彼女が握っているのは剣の柄では無い――鞘なのだ。
「これがこりすちゃんの武器やーっ!」
 ツインソードに力を注げばそれが鍵となり! どこからともなく、上空からずどぉぉんと降りてきたのは、こりす専用のスーパーロボット――その名も『コリスリデル』!
『……は?』
 意識が奪われてる筈の凪紗の声だけが聞こえた気がした。愛と勇気と希望溢れるピンクゴールドな装甲が眩しいおひめさま専用機に、敵が一瞬呆けてる間に颯爽と乗り込むこりす。ちなみに拾いものらしい。どこで拾ったんだ。
『(はは、まさかキャバリアを持ち込むとはな)』
 面白い、と鼻では笑いながら凪紗の指の間にトルマリンが挟まれる。投げつけられた石は符の代わりとして術を帯び、空中にて砕けて一斉に放電し雷をロボに向けて落としに掛かる!
「そんなんお見通しや!」
 何せ、凪紗ちゃんの得意技やし――とコックピットに乗ったこりすはほくそ笑む。空中機動するその四方にキラキラと飛ぶハートはプリンセスの証。電撃も何のその、避雷針の如く雷を受け止めてガードし、それでも襲ってくる電撃は根性で耐えるのみ。
「凪紗ちゃんが痛い目負うとるのに、こりすちゃんだけ無傷ってワケいかんやん!」
 プリンセスハートが輝き、機体の損傷を一気に修繕、同時に姫パワー増強! ロボのパワーと可愛さが増した所で反撃開始!
 ロボの胸から炸裂したピンク色のビームが凪紗を襲う!も。
『(……これ、は……?)』
 ダメージの代わりにその身を覆ったのはピンクのオーラ。無表情のまま、凪紗はこりすの乗るロボに視線を向けた。
『(防御を纏わせるなどと……手加減した上で、この私を倒せるとでも?)』
「はん、手加減ちゃう。全力の流血封じや」
 血は一滴も流させない。表面上の防御だけを高めてやったオーラは、強い衝撃は防げず内部にたっぷりダメージを素通しする事だろう。
 そう、これから大量にぶっ放す星飴グレネードランチャーの攻撃とか。
「混沌に対抗するは秩序や! こりすちゃんの取って置き、喰らっとき!!」
 乱射される星形の飴玉ランチャー! 秩序の力を籠めたその一弾一弾が凪紗の――いや、その内に融合した渾沌氏の精神にダイレクトに突き刺さる!!
『(う、がぁぁっっ……!?)』
 血を流す事無く、衝撃のみでその身を仰け反らせ吹き飛んだ凪紗。その彼に向け、こりすはニッと笑みを向けながら大声で叫んだ。
「凪紗ちゃーん! またたびに帰ったら十段重ねのパンケーキおごってもらうで!!」
 それに対する本人自身の声はまだ聞こえない。彼も、その内に融合した渾沌氏も、まだまだこのくらいで撃破出来る程甘くはないのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

大豪傑・麗刃
とにかく初撃を全力回避。
覚悟を決め、気合と根性入れた全力ダッシュで可能な限り敵から離れる。たぶん追いつかれるが、逃げ切るより敵の動きを観察する余裕が欲しかった。敵の攻撃がヒットする瞬間を見切り、早業で早着替えを応用した早脱ぎ、かつ服に残像をまとわせ、服を犠牲にしてわたしは生きる。

ユベコ解禁後は……あ、こんな大事な場面なのに意識が(ぷっつん)

『きさまはこの大豪傑・冷刃の敵手足りうるかな』

人格切り替えて使うは妖刀の一刀流プラス随行大剣。
冷静に相手の動きを見切って回避に徹し、折を見て随行大剣を相手の後方から突っ込ませ、それが命中あるいは防御したタイミングで自らも斬りかかる。

……ああ頭痛が痛いのだ。



 愛用の刀を手に、彼は目の前の羅刹を見据える。
 それは大豪傑・麗刃(23歳児・f01156)には見覚えのある――蓮条・凪紗の姿。だが普段の飄々とした笑みはそこには見えず。流石の麗刃もふざけている場合では無いと覚悟を決めた。
『(鬼神……いや、奇人の長よ。お前はどう出るつもりかな?)』
 渾沌が嗤いながら問う。青年の記憶にある麗刃の行動は基本読めぬと知っての上か。
「勿論、決まっているのだ」
 じり、と足を引く。一歩、二歩と後退し――。
 ダダダッ!!と、回れ右で全力で脱兎の如くそこから離れた!
 遠く離れていく麗刃の背中。……さしもの鴻鈞道人も度肝を抜かれたか。一瞬の間の後に小さく息を吐く。
『(はっ、逃げると言うのか? 成る程、命が惜しくば賢明な判断よ。だが――)』
 白き羅刹が駆ける。その足が渾沌の諸相により異形と化し、その踏み込みの力が増す。そして全力で逃げる麗刃の背中にあっという間に追いつくと、地を蹴り上げて跳躍、そのまま蹴りを叩き込む!
 ――が。
『(――!)』
 鋭い蹴りが穿ったのは衣服のみ。遠く離れる事で敵の動きを観察する余裕を得た麗刃は、その攻撃が放たれる瞬間を確実に見極めていた。
 早業早脱ぎによる、残像を伴った身代わりの術――服を犠牲にし褌一枚のあられもない姿になろうとも、これが彼の生存戦略であり生き様でもあった。
『(滑稽な真似を……いや、だからこその鬼神軍の将たるか)』
 感心した様に凪紗が笑む。衣服を失った以上、全く同じ身代わりの術は使えないだろう。そして布きれ数枚分とは言え防御力を失ったと言う事。
 今度こそ仕留める――羅刹は距離を詰める。麗刃に向けて鋭く伸ばした五爪を袈裟懸けに振り下ろす!
「……あ、こんな大事な場面なのに意識が……」
 凪紗が襲いかかるその瞬間、麗刃の意識は途絶えた。

 ガキィィン――!!

『(なに……?)』
 振り下ろした爪の先が妖刀の一太刀で叩き斬られた。鴻鈞道人は目の前の漢の様子が違う事に気が付き、大きく後ろに跳躍して体勢を整える。
「きさまはこの大豪傑・冷刃の敵手足りうるかな――」
 そこにはいつものギャグ顔は微塵も存在しなかった。その声色から纏う空気から、何もかもが普段の麗刃とは違っていた。そう、自我と記憶を代償にした事によって今の彼は冷静沈着な真の剣士へと覚醒しているのだ!
『(まさか……そんな真似が出来ようとは……!)』
 再び伸ばした爪で、異形化した足で続け様に凪紗は攻撃を加えるも、『冷刃』と化した彼は相手の動きを冷静に見切り、回避し、妖刀の一刀流にて受け流す。
 そしてただ受けるに非ず。冷刃は既に一振りの随行大剣を放っていた。
「隙だらけだ――!」
『(がァッ――!?)』
 凪紗の後ろより大剣が宙を滑り、彼の背に突っ込んできた。貫通こそせずとも突き刺さったその傷は彼の攻撃の手を確実に止める。
「我が刃の露となれ――!!」
 真正面より全力全霊の斬撃を浴びせかけ、返り血が散った。
『(ぐ……おのれ……!)』
 必死に凪紗が両手で突き放せば、剣士もまた慣れぬ力を出し切って地に伏せた。
「……ああ、頭痛が痛いのだ……」
 凪紗から受けた攻撃よりも、反動の頭痛のがキツいと天を仰ぐ麗刃なのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

儀水・芽亜
夜よりもなお深き存在 闇よりもなお暗き存在
そんな断片が頭の片隅に浮かんでくる。何だったかしら?
まあいいわ。渾沌氏、鴻鈞道人、推して参る!

翼や触手や刃を見切ってかわし、裁断鋏で叩き伏せ、オーラで護られた腕の一本くらいくれてやる覚悟で翼を破る!
『Gemeinde』の間合いに捕捉したら、戦場全域を包むとっておきのサイコフィールドを展開。受けた傷を癒やし、渾沌氏に耐えがたい睡魔を送る。
さあ、素敵な悪夢の世界に遊びなさいな。骸の海といえど、一欠片に過ぎなければ眠りに落ちることもあるでしょう?
鴻鈞道人の動きが鈍り頽れたら、裁断鋏で左目を潰しましょう。
ええ、ええ。受肉して顕現したならば、不滅などありえない。



 夜よりもなお深き存在(もの)、闇よりもなお暗き存在(もの)――。
 儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)はそんな言葉の断片が頭の片隅に浮かび上がってくるのを感じていた。
「何だったかしら。もしかしてあなたのこと?」
『(私こそが混沌の海であり、揺蕩いし存在。似た様な伝承は幾らでもあろう)』
 グリモア猟兵の肉体と融合した鴻鈞道人が静かに応えた。念話で脳に直接響く声と、羅刹の青年の肉声とが重なって聞こえてくる。
「まあいいわ。渾沌氏、鴻鈞道人、推して参る!」
『(勇ましい事だ。渾沌の諸相、その身に受けよ)』
 びき、びきびき……融合した羅刹の青年の肉を破って現れる白き翼に触手達。ばさりと翼が空気を叩いて宙に飛び上がり、幾重もの触手が芽亜に向かって突き刺しに行く。
「この、くらい……!」
 飛んでくるそれを出来うる限り見切り、かわし、手にした巨大な裁断鋏で叩き伏せて行く。だが全てを避けきるなど不可能。自分でもそれを解っている。
『(遅い)』
「うぐっ!?」
 オーラで護った筈の腕を触手で貫かれる。それでも手にした鋏はもう片方の腕でしかと握りしめ、取り落とす様な真似はしない。
「っ!!」
 跳躍し、距離を詰める。突然飛び込んだ先、触手の攻撃が入る前に鋏の先端を白翼に突き立てれば、渾沌氏は宙の制御を失い、地に足を着く。
「今……!」
 着地すると同時に地に手を付ければ、彼女を中心に戦場に鴇色が広がる。陽炎揺らめくドーム状の結界。その領域に捕らえられた鴻鈞道人の身が揺らいだ。
『(これ、は……)』
「さあ、素敵な悪夢の世界に遊びなさいな」
 結界は味方に癒やしをもたらし、敵には強烈な睡魔をもたらす。耐え難き眠気は、融合した肉体の脳神経に深く作用しその動きを鈍らせていく。
「骸の海といえど、一欠片に過ぎなければ眠りに落ちることもあるでしょう?」
 再び両腕で裁断鋏を握る芽亜。その閉じた尖端を以て――狙うは鴻鈞道人の左目。貫き潰すべく、真っ直ぐ目掛けて突き出した。
『(――お前――)』
 白き刃が咄嗟にその軌道を変える。左目を逸れ、鋏の先は羅刹の青年の目尻から側頭部を斬り裂くに留まった。
『(お前にはこの青年の姿が見えておらぬか。見えぬ筈の私の姿を見ておるのか)』
 でなければ目鼻口耳の全てが揃った相手の、敢えて左目のみを狙う理由など無い。
「さて、どうでしょうね?」
『(はは、容赦無きにも程がある女よ)』
 これではこの身を人質にした意味が無い、と溜息を吐く。
『(ではこの身体が滅するまで死合うとしよう)』
「ええ、ええ。受肉して顕現したならば、不滅などありえない」
 決して手は抜かぬ、と芽亜は左目のみの異形をそこに見据えるのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

黒蛇・宵蔭
おやおや凪紗さん楽しそうですね。
しかし過ぎた悪食はいけませんよ。
無論、冗談ですとも。

さて、道人よ。お相手しましょうか。
とはいえ私に出来ることは、受け止めることだけ。
ふふ、一撃で私を殺せますかね?

挑発し、心臓やら頭やらは庇いましょう。
外套の裏に備えた数々の武器や呪具が、巧く守ってくれると信じて。
ほんの一息、生きていればそれで充分。負傷にも意味がある。

乗り越えたならば、反撃とゆきましょう。
人智を超えたものが肉に収まるものではありませんよ、ほら窮屈なのでしょう?
貴方の攻撃で既に呪は成せり。

我が血をもって縛り、斬り裂く。

こちらを倒すために利用したのか。
こちらが斃すために利用したのか。
混沌としてますね?



 混沌の揺らめくその空間。渾沌に食われ白変した羅刹の前にゆらりと立つのは、対称的に深い深い黒を身に纏った男。
「おやおや凪紗さん――楽しそうですね」
 そんな言葉を唇に乗せ、黒蛇・宵蔭(聖釘・f02394)は知人たる相手に常より底が見えない薄笑いを向けた。
「しかし過ぎた悪食はいけませんよ」
『(――お前とこの男、心配する様な仲でもあるまい?)』
「無論、冗談ですとも」
 しれっと宵蔭は応える。成る程、凪紗の記憶を得ているのであれば此方の手の内もある程度はお見通しだろうか。
 だがそれは此方にも言える事。たとえその身より渾沌の諸相が肉を食い破って現れていようとも、軸となるその肉体は知った相手のものだ。動かす意思が違えど、身体に動きに遜色はあるまい。
「さて、道人よ。お相手しましょうか」
『(その笑みが何処まで持つのやら――楽しみだ)』
 口元より血を零れさせながらも白き翼が空気を叩き、宵蔭に向けて渾沌が飛びかかる。白き触手が貫きに、白き刃が切り裂きに、そして両手の翠の爪が引き裂きに。
 対し宵蔭がする事は、出来る事はただ受け止めるだけ。咎人殺しらしい風体の、その黒き外套や衣服の裏には数々の武器に呪具が潜んでいる。そう易々と倒される事は無い……筈だ。
「ふふ、一撃で私を殺せますかね?」
『(口先だけは達者なものだ)』
 ならば、と向かう連続攻撃の行き先は、心臓や頭部や頸部と言った箇所。無論、今の言葉は挑発だ。狙いを絞って貰う方が守りやすい。
 両の腕で次々に飛び交う触手の突きを受け、外套を翻して斬撃を抑え。急所を庇う代わりに黒き衣装に赤が混じる。
 そこに突然ざくりと言う感覚。掴まれた腕に翡翠の爪が食い込み、同時に軋む感覚。
『(悪食故に、友の血はさぞかし美味かろう)』
 生命力吸収の爪か、と宵蔭は腕を振りほどこうとすれば、凪紗もまたそれに合わせて力任せに引き釣り投げた。
 滑る様に叩き付けられれば、己の身から零れる血が地を染めるのが解る。一度深く息を吸い、吐く間に負傷の度合いを認識する。貫かれた箇所は四肢が主。心臓と肺は無事、首も繋がっている。
『(――何故まだお前は笑っている。いや――)』
 鴻鈞道人は近付きながら、起き上がろうとする宵蔭の表情を見て……立ち止まる。
 この男はただではやられぬ筈だ、と凪紗の記憶が告げる。無策な筈は断じて無い。
「ふふ、人智を超えたものが肉に収まるものではありませんよ」
 肉より溢れし白き渾沌を見やると、宵蔭の指先が血溜まりに触れた。
「ほら、窮屈なのでしょう? 貴方の攻撃で既に呪は成せり――」
 ――捉え、縛り、そして斬り裂け。
 宵蔭の全身より零れる血が鎖と化して一斉に凪紗に襲いかかる! 白き翼と触手を捕らえて根刮ぎ引き抜き、更にその傷に血鎖が貫いた……!
『(ぐああぁっっ……!?)』
「遠慮は要らないでしょう? いつまで凪紗さんの身に収まってるつもりですか」
 こちらを倒すために利用したのか。いや――こちらが斃すために利用したのか。
「はは……混沌としてますね?」
 己の血で紅く染まる相手を見据えながら、宵蔭はそう小さく笑ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リアム・ペンタス
【エイツア】
凪紗、皆で助けに来たわよ
今からとても痛いことをしてしまうけれど
あとで手当てするから辛抱して頂戴ね

UCにはUCで
血を流させないよう火傷させて止めてしまいましょう
だから熱々の紅茶をご馳走するわ
あたしの方が多く流血していればUCの効果も薄れるでしょう
だから自分の腕を傷つけて血を流すわ
大丈夫、痛くてもあたしは止まらないわ

UC>呪詛を込めた槍での薙ぎ払いで攻撃するわ
防御は槍で受けて、運で回避しましょ

ジャスパーの炎も素敵だわ、紅茶で消さないように気をつけなきゃ
エリックの鮫ちゃんたちもお利口ね、手伝ってくれてありがとう
怜惺のパンチも強烈ね、思いっきりやってしまいましょう

皆で一緒に帰りましょうね


エリック・シェパルド
【エイツア】

あんま顔合わせてねぇから戻ったときに俺見て謝るんじゃねぇぞ…って心配はいらねぇか?

凪紗の先制攻撃は俺が引き受ける
雷の攻撃なら警棒を降って岩の盾を召喚
それ以外はUCの鮫達で仲間達を守る。拠点を守るのは得意だからな
こんなん掠り傷だ。ダチを助ける為に死ぬ気で守れよテメェら!!!

人数分の鮫は移動用にでも手伝わせてくれ、後は目潰しくらいのサポートは出来ると思う

攻撃が弱まったら攻撃に移行
防御しても棍棒に炎を纏わせて防御ごと叩き割るから覚悟しやがれ
さっさと俺達の仲間を返しやがれ!!


樹・怜惺
【エイツア】
凪紗がピンチ?マジじゃんヤバ
追い出せねェなら全力で行く
ついでに、知ってる顔とヤり合うなんて滅多にねェからな
初っ端の一撃はGuanto di luce solareにオーラ防御上乗せで逸らすかそのままカラダで受け止めるか
多少喰らっても問題ねェ、そのまま突っ込む
近距離で足止めついでに殴り合いだ
動かれたら面倒だからな、他も攻撃しやすいだろ
ダチの為だ、腕一本くらいはくれてやるさ
Fiamma fatta di sangue
代償の片腕に炎纏わせて、そのまま叩きつける
凪紗は耐えろよ、死ななきゃ後でどうにかしてやらァ
鴻鈞道人、テメェがなんだか知らねーが、ふざけたマネしてんじゃねェよ!


ジャスパー・ドゥルジー
【エイツア】
羽での飛翔を駆使し常に肉薄し続ける
身体の丈夫さなら自信あるんでね
俺の我慢強さ(【激痛耐性】)超えちゃうくらい痛ァいの頂戴?

味方が刻んだ傷をなぞるように【ゲヘナの紅】の炎を込めたナイフを振るう
リアムの術と合わせて血が流れそうな傷口ぜんぶ焼き塞いでやるって寸法よ
あァ、噫、全身痛え、血が足りねえ、頭がぐらぐらする――最ッ高の気分だ
“これ”を呉れるのが凪紗本人じゃねェのが残念でならねえくらいだぜ
もっと呉れよ、足りねえんだ、なあ

基本的にゃ流血量をこっちが上回る為の的役として動き
その為の挑発を繰り返すが
攻撃できるタイミングじゃ一切遠慮はしねえぜ
なーに、死ぬ前に聖者様の光で癒してやりますよってね



 混沌が揺らめくその空間で、渾沌を抱えし白き羅刹がゆらりと立つ。
『(罪深き刃、そして振るいし者共の強き意思――面白い)』
 青年の内に潜む渾沌氏の念話による声と、青年自身の肉声が被る。そして白濁した瞳を向けた先、そこに在る者達を認めると、楽しそうに嗤って見せた。
『(お前達は――私に何を見せてくれる)』
 四人の猟兵達――彼らの戦い方は凪紗の記憶を辿るも読めぬが故、鴻鈞道人は問いかける様にそう告げた。
「凪紗ピンチじゃん……マジじゃん」
 ヤバ、と樹・怜惺(Guardiano della Dea Verde・f31737)は目の前の見知った青年の変貌を見て声を漏らした。常の飄々とした笑みと京言葉は消え去り、文字通り別人と化しているのは良く解る。
「凪紗――皆で助けるわよ」
 リアム・ペンタス(星屑の道標・f19621)は唇に微笑みを乗せて告げるも、その目は明らかに笑っていない。
「今からとても痛いことをしてしまうけれど、あとで手当てするから辛抱して頂戴ね」
『(あとで、か)』
 鴻鈞道人はククッと嗤いながら凪紗の手を掲げると、その翡翠の五爪を刃の如く伸ばして首を傾げた。
『(過去たるこの私に不確定の未来を語るか)』
「語るだけじゃねぇ。切り拓くんだよ」
 警棒を構えながら、エリック・シェパルド(狼のおまわりさん・f26560)は前に出る。相手が人の身体に収まりきらない強大な存在だと言うのは、全身の毛が逆立つ感覚からも解るが――だからと言って尻尾を巻いて逃げる訳にも行かない。
「さぁ、さっさと俺達の仲間を返しやがれ!!」
『(ああ、返そう――お前達が死して過去に成り果てたらな)』
 凪紗が地を蹴り、その爪を以て彼らを斬り裂かんと一気に距離を詰めてきた。その身には既におびただしい血。胴と側頭部には斬られた跡、背中には一度肉破って展開した翼と触手を千切られた跡。朱き羅刹紋同様に肌に映えるのが見て取れる。
「させねぇよ!!」
 エリックが警棒を振れば、地の力より岩の壁が盾の如く喚ばれた。凪紗の雷を纏った爪が岩に食らいつき、電気は四散するも威力を増していた力によって岩は粉砕される。
『(紙よりはマシらしいな)』
 攻撃を続けようとする凪紗。その前に立ち塞がる様に割り込んだのは、彼に負けず劣らずの異形角生やした青年。
「紙よりもボロボロにしてくれたって良いんだぜ?」
 ジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)は自分から爪の攻撃に飛び込む様に肉薄し――その表情は何故か歓喜に満ちていた。
「俺の我慢強さ超えちゃうくらい痛ァいの頂戴?」
 背の羽を大きく羽ばたかせ、ジャスパーは凪紗の攻撃しようとする先に追いすがる。まるでその攻撃を自分に寄越せと言わんばかりに。
『(……戯れ言では済まぬぞ)』
 他の三人への攻撃を試みるには邪魔な程に執拗に喰らい付くジャスパーの動きに流石の鴻鈞道人も苛立ちを覚えたか。凪紗の翡翠の爪がジャスパーの細身を斬り裂き、貫き、穿つ。
「ジャスパー!?」
 リアムがその様子に叫ぶも、気が付いた。彼があれだけ斬撃を受け続ければ――。
「――そうね。ならば」
 ザクッ。リアムは己の槍の穂先で自身の腕を切り裂く。紅い雫がぽたりぽたりと
地を染めていくその様子にエリックは目を見開き叫ぶ様に問うた。
「何やってんだリアム!?」
「あたしたちの方が多く流血していれば、渾沌の諸相による凪紗の強化も薄れる……でしょう? だから――大丈夫」
 自分の腕を傷付けて血を流したのだと彼は告げる。これくらいの痛みで止まらない、止まれない。だって彼らは――ジャスパーと凪紗はもっと傷付いている。
「あァ、噫、全身痛え、血が足りねえ、頭がぐらぐらする――」
 無論、急所に受ける真似はせずに身を捩りながらもジャスパーは凪紗の威力が増した攻撃を自分から受け続けていた。
「ははッ、最ッ高の気分だ」
『(…………成る程)』
 ようやく渾沌氏は気が付く。挑発や仲間を庇うだけでは無い。被虐こそがジャスパーの喜びなのだと。生を感じる手段(すべ)なのだと。
「“これ”を呉れるのが凪紗本人じゃねェのが残念でならねえくらいだぜ」
 熱帯びた血に塗れながら、更に歓喜の熱帯びた視線を彼は凪紗の奥にいる存在に向けた。
「もっと呉れよ……足りねえんだ、なあ!!」
『(哀れな奴め)』
 なれば望む様に、と心臓を貫こうと突き出した手刀が――大きく外れた。
「――は、追い付いたぜ!」
 口の近くを伝ってきた血を拭い、ペロリと舐めながらジャスパーは吼えた。凪紗の身を滴ると同じだけ、既に自分は流血しているのだと。
「行け!」
 二人の攻防が一瞬止まったその隙をエリックは見逃さない。喚び出した鮫の数体が一斉に凪紗に向かって飛びかかり、別動の鮫達がジャスパーの四肢を咥えて羅刹から一度引き離す。
「ダチを死ぬ気で守れよテメェら!」
 流れる血による渾沌の諸相の力を失えば、回避する力すら人並みに落ちる。そうなってからが反撃の時。エリックによる鮫達の連続攻撃に、凪紗の流血量がまた増えるかと思いきや――リアムが既に動いていた。
「鮫ちゃんたちもお利口ね、手伝ってくれてありがとう」
 鮫達が四散する。立ち上がる隙も強化する隙も与えない。リアムの手には既に巨大なティーポッドが注ぎ口より湯気を発していた。
「熱々の紅茶をご馳走するわ!」
 ざばぁ!と言う音と共に、茶葉の芳香が広がる。ティーポットの中の紅茶がぶち撒けられ、凪紗の血塗れの身体に沸騰温度の熱が浴びせられる!
(――っ!)
『熱ッ!!』
 意識奪われても身体が本能的に発したような声が聞こえた気がする。ダメージと共に流れる血が洗い流され、傷口が火傷によって萎縮し、流血が止められた。
 それでもまだ残る傷口に向け、炎が掠めた。傷を負って強くなるのはジャスパーも同様であり、得意技だ。
「その傷口、ぜーんぶ焼き塞いでやるぜ!!」
 容赦も戸惑いも無い。これは攻撃であると同時に荒療治でもあるのだ。超高熱を発したジャスパーより繰り出される斬撃は、超回避力を失った鴻鈞道人の動きを捉え、炎を籠められたナイフの刃が血の流れる傷をなぞって焼き塞ぐ。
「ジャスパーの炎も素敵だわ、紅茶で消さないように気をつけなきゃ」
『(ぐ……!!)』
 強制的に塞がれた傷口。流血が抑えられる以上に焼かれる痛みに苦悶の表情を浮かべる凪紗。もはや、血を流す事による強化は封じられた。
「さて、やっと同じ技量で殴り合えるかねェ?」
 怜惺は待ってましたとばかりに指の関節を鳴らして凪紗の前に立つ。
「簡単に追い出せねェなら全力で行く。ついでに――」
 身構え、そして怜惺は楽しそうにその唇に笑みを乗せた。
「知ってる顔とヤり合うなんて滅多にねェからな!」
『(なればこれを受け止められるか)』
 バキバキと音がすれば、凪紗のその白き腕が巨大な爪を有した鬼の腕へと異形化する。大きく一歩踏み出してから距離を詰めての渾身の一撃が怜惺に襲いかかる。
「っだぁッ!!」
 その一撃は太陽の如き後光を込めた籠手にて逸らし受け止める。強い衝撃だが、怜惺は必死で耐える。腕の一本がダメになった所で構わない。
『(こらえた、か)』
「はッ、こっからが本番だ!!」
 至近距離より連続して拳を叩き込む。向こうも拳で応じてくるのを互いに受け止め、流し、喰らわせる。
 凪紗の繰り出した拳が腕に当たった瞬間、痛烈な痛みが走ったのは多分折れたせい。だが構わない。
「ダチの為だ――」
 その腕に纏うは青き炎。彼の闘志を、想いを、全てこの一撃に。
「凪紗は耐えろよ、死ななきゃ後でどうにかしてやらァ!!」
 全力全霊の一撃が、白き渾沌の内を抉る――!!

(――見事、だ)

 凪紗の身体が宙を浮く。混沌の気配が薄れゆく。
 その言葉だけが彼らの脳裏に伝わり、地に崩れ伏した羅刹の髪は色を取り戻していた。

 ……。
 …………。
「――あ」
 薄らと目を開ければ、自分を見下ろす知った顔が見えた。
「俺ら見て謝るんじゃねぇぞ……って心配はいらねぇか?」
 エリックは安堵した様に息を吐くのが聞こえ。
「死ぬ前に聖者の光でしっかり癒してやりますよってな」
 ジャスパーの回復の力で生きているんだろうか、と彼は理解する。
「さぁ、凪紗」
 リアムの声が聞こえ、手に手が触れるのを感じた」
「皆で一緒に帰りましょうね」
「……おおきに」
 ただ一言。それだけを言えば、充分だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月05日


挿絵イラスト