殲神封神大戦⑱〜脳灼く知識の坩堝
●三皇伏羲の塒:脳を灼かれた邪仙
祠の内部は数多の書架に埋め尽くされ、無数の言語と呪文が空間を舞い踊る。
とてつもない濃度の知識で満たされた空間に、ピリピリとした電流が幾方向にも枝分かれするように駆け抜けていく。
少女の姿をした邪仙が一人、その中央に佇んでいる。
「ああ……ははっ。気分がいいやぁ。知識がたくさん入り込んできて……全部わかる、理解できる、この世界の、なにもかも……うっ、ぁ……ああああああアアアアアッ!!」
朦朧としていた少女がにわかに苦しみ、頭蓋から白い煙を噴き出し始めた。脳が焼ける苦痛への激しい抵抗は、強烈な雷撃となってスパークする。電撃の中に骸の海から新たに同じ少女達が再生され、同じように煙を上げて絶叫する。
膨大な電流が書架を埋め尽くし、一切の色彩が失われてしばし。突如動力が切れたかのように雷撃が消え失せた。
異常に首をのけぞらせてピクピクと痙攣していた少女達が、ぐりんっ、と気味の悪い仕草で一斉に首を戻した。両目は焦点を結ばずにぐるぐるとあべこべに泳ぎ、目尻や鼻、口から血と体液が幾筋も流れ落ちていく。
「「「歌イ、謳エ! お前モ、アタシも! アはハハはッ!」」」
同じ顔の、まったく同じ狂い方をした少女達の狂った笑い声が、雷撃の激しい点滅とともに伏義の塒に響き渡った。
●グリモアベース:ゲネ
「封神武侠界『殲神封神大戦』も大詰めだ。三皇伏羲の塒への道が開かれた!」
ゲネ・ストレイ(フリーダムダイバー・f14843)はホロモニターに、無限の書架に埋め尽くされた祠を映し出した。
封神武侠界の文化の祖とされる神、三皇『伏羲』はオブリビオンとして蘇ってはいないらしい。
が、伏義の残した祠は「無限の書架」と「さまざまな世界の言語や呪文」で満たされており、恐ろしい魔力が充満しているという。
「伏義の書架に収められた膨大な知識は、近づいただけで理性ある存在を「知識中毒」状態にして、脳を破壊してしまうようだ。実際ここには、知恵を破壊されたオブリビオンが大量に蠢いている」
『混沌霊珠・詩歌』もその一種。封神台から逃れた宝貝あがりの邪仙の一人だが、骸の海から一度に大量排出されたらしく、増殖した状態のようだ。もともとの殺戮を楽しむ凶暴な気質に加え、脳を灼かれて歯止めが効かなくなっている。凶悪な電撃で満たされた戦場となるだろう。
そして最大の問題は、この書架の特性は猟兵にも及ぶということ。
伏義の書庫は「会話や文字を操る者」を見つけると、瞬時に脳を破壊してくるのだ。
「裏を返せば、「言葉と文字」を使わなければ対象にはならない、ということになる。挑発や連携をしたいなら身振り手振りで。あるいは無心に、無意識に動けるならそれも有効だ。あとは……「ものすごいバカ」なら書架にロックオンされないかもな!」
元も子もない奇策を提案すると、ゲネはモニターを反転させて転送術式を輝かせた。
「さあ大賢良師『張角』まであと一歩! 脳を焼かれたオブリビオンを蹴散らして、この戦争に王手をかけてやろう!」
そらばる
封神武侠界『殲神封神大戦』、伏義の塒。
知識中毒で脳を破壊してくる塒をやり過ごし、オブリビオンの群れを掃討しましょう!
●プレイングボーナス
このシナリオでは、特別なプレイングボーナスが発生します。
=============================
プレイングボーナス……「言葉と文字」を使用せず戦う。もしくはものすごいバカになる。
=============================
上記に基づく行動をすると有利になります。
●集団戦『混沌霊珠・詩歌』
封神台から逃れた宝貝あがりの邪仙。殺戮を好む性格。
大量に現れ、群れとなって塒を占拠しています。
書架に脳を破壊された状態で、凶暴性を増しています。
執筆の進捗やプレイング締め切りなどは、マスターの自己紹介ページで呟いております。目安にどうぞ。
それでは、皆さんの自由なプレイングをお待ちしています!
第1章 集団戦
『混沌霊珠・詩歌』
|
POW : 電撃翔
全身を【自他ともに傷つける電撃 】で覆い、自身の【殺意】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 指雷矢
【指先 】を向けた対象に、【電撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 放天雷掌
【掲げた手のひら 】から、戦場全体に「敵味方を識別する【電撃】」を放ち、ダメージと【電撃による麻痺と火傷】の状態異常を与える。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
仰木・弥鶴
馬鹿の定義…
それは『自分の頭で考えない者』だと俺は思うよ
体内に寄生している白燐蟲に全てを任せ、自分は何もしない
共生関係にあるこいつは俺が嫌いな形をわざわざ取るくらいの自我はあるみたいでね
伸ばした手の甲から白燐蟲が蝶みたいに舞って攻撃力と装甲を強化
敵は電撃を放ってくるって? 知らない
無言で微笑み、相手に近づく
全身に纏わせた白燐蟲が羽のような装甲になって電撃を弱めてくれるだろう
狂った相手の顔を間近に覗き込み、自分からその頬に触れて敵にも白燐奏甲を
あとは白燐蟲が彼女の死に必要なだけの『不幸な事故』を齎してくれる
宿主に祝福を、周囲に不幸をばら撒くのが白燐蟲の本性だから
俺はただ、微笑んでそれを見守るだけ
●白燐蟲の思し召すまま
教師としての知性を持ってして、仰木・弥鶴(人間の白燐蟲使い・f35356)は思う。
(「馬鹿の定義……それは『自分の頭で考えない者』だと俺は思うよ」)
身体の力を抜けば、体内がざわめく。
弥鶴の体内に寄生する白燐蟲には自我がある。主が嫌いな形をわざわざ選ぶ、という知性を伴って。
全てを任せて身を委ねれば、自分ではない意思によって前方へと伸ばした手の甲から白燐蟲達が蝶のように舞い、全身に纏い付いていく。
「アハハはハ!! オマえモ歌エ!!」
蝶の羽搏きに釣られて『詩歌』達がやにわに放電の出力を上げた。
弥鶴は無言で微笑む。激しい電撃が幾筋も床伝いに迸るが、知ったことではない。あえて電撃の射線をたどるように敵へと近づいていく。幾度なく打ち付けられる電撃は、羽の如き装甲となった白燐蟲が直撃を防ぎ、エネルギーを後方にいなしてくれる。
「あハハはハハハハははハ!! 歌オう!! 謳オウ!! そして、踊り狂エ!!」
狂ったように指先から電撃を放っていた詩歌は、弥鶴が顔を覗き込むほどの間近に立っていても、その電撃が弾かれているのに気づいているのかいないのか、哄笑と放電をやめようとしない。
弥鶴の指が、血で汚れ笑いで引きつった詩歌の頬に触れる。
瞬間、弥鶴の身体から飛び立った白燐蟲達が、狂気の詩歌に纏い付
いていく。
宿主には祝福を、周囲には不幸を。それが白燐蟲の本性。
「歌イ、謡イ、唄イ、謳イ、詠イ、唱エェェェェェァァァァ──ッ!!」
なんの脈絡もなく、詩歌の雷撃が暴発した。「不幸な事故」として。
白い雷光の中で全身をのけぞらせ、もはや絶叫に等しい哄笑を上げる邪仙の姿を、弥鶴の微笑みがただ静かに見守った。
大成功
🔵🔵🔵
御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎
さいしょから がらんどう
さいしょから がらくた
先制UC発動
雷氷地空属性
攻撃力、防御力、状態異常力に付与
全身を雷で覆う
残像忍び足でゆるゆると接敵
射程に入り次第念動怪力四属性衝撃波UCにて範囲攻撃
フェイントや二回攻撃を交え三本の「しん」やすてぜにで吹き飛ばす
敵の攻撃を見切り武器受け念動怪力衝撃波オーラ防御UCで受け流す
地形?を利用し雷の魔力を増幅
カウンター念動怪力衝撃波四属性UCで範囲ごと薙ぎ払い
マヒ目潰し吹き飛ばし気絶
かみなり すう
の う ?
さいしょから がらんどう
さいしょから なにもない
ただまりょくをながし
ただうごくだけ
いれるだけ とおるだけ
さようなら さようなら
●がらんどう
「さいしょから がらんどう
さいしょから がらくた」
ぼんやりとした御堂・伽藍(がらんどう・f33020)のそのありさまは、まるで壊れたからくり人形のよう。唇から零れ落ちる言葉はかろうじて言語らしい響きを持っているものの、伏義の書架は彼女を知能ある者と認定するかどうか、逡巡しているような気配がある。
「かみなり すう」
人形めいた伽藍の手にユーベルコードが開花して、多種の属性を伴う雷がその全身を包み込んだ。
伽藍は一切の恐怖も警戒も緊張も窺わせず、残像を帯びた忍び足でゆるゆると敵群へと忍び寄っていく。まるで輪唱でもするように全身の雷撃を明滅させている詩歌達の、その無防備な背後から。
「唱イ詠イ謳イ謡イ唄イ……歌オウ!!」
「の う ?」
射程に入ると同時、たっぷりと属性を含んだ念動衝撃波が伽藍の手から放たれた。暴力的な衝撃が敵陣を襲うと同時、トリッキーな動きから繰り出されるふんしん、じしん、びょうしんの三本とすてぜにが、反射的に動き出した他の群れを吹き飛ばしていく。
「──オマエモ! オマエモ、歌ウんダ! アハハははハッ!!」
吹き飛ばされながらもなんとか踏ん張った詩歌達が、雷を纏った伽藍の姿に殺気と雷撃を一斉に迸らせた。
伽藍は敵の動作から雷撃の軌道を見切り、身に纏った雷やオーラ、念動力に怪力に衝撃波と、あらゆる手段をもって受け流していく。幾度となく打ち付ける電流のもたらす負担は決して軽いものではなかったが、その分、雷の魔力は増幅されていく。
「さいしょから がらんどう
さいしょから なにもない
ただまりょくをながし
ただうごくだけ」
童謡を口ずさむように言葉を転がせば、わずかに脳を酩酊させる感覚が流し込まれる気配。
それでもやはり、伽藍はがらんどうだ。
「いれるだけ とおるだけ
さようなら さようなら」
伽藍の全身から爆発したまばゆい雷が詩歌の雷撃を打ち消し呑み込み、周囲一帯を白い嵐で吹き飛ばした。
成功
🔵🔵🔴
フィロメーラ・アステール
ものすごいバカって何さ……。
まあ、あたしは違いますけどね!
ふふん♪
ぐ、ぐあああああ!?
しまった、つい独り言を!
知識が、頭に!
あ、ああ……全てが……わからん!
すいません、何いってるかわからないんですけど!
もうちょっとわかるように言って!
いや……うん、全然わからない……。
あ、待って! 諦めないで!
わからないと、ものすごいバカって事になるんだよ!?
お願いだから、わかる所まで付き合って!
たのむよー待ってよー!
ハッ敵!?(オーラ防御しつつ)
お前はアレがわかったのか!?
くそぉ……そうだ!
【内なる星海の羅針】発動!
理解した敵の思考を読めばアレの内容を理解……。
できませんでした。
怒りの全力魔法光線をぶっ放す。
ヴォルフガング・エアレーザー
脳を焼かれ、廃人と化した敵の末路
何とも悍ましい……
だが『言葉持たぬ狼』ならば
『野生の本能のままに戦う獣』ならば
膨大な知識の濁流に飲まれることもあるまい
咆哮を上げ【蒼き大神】に変身
約30mの巨体で仲間を守るように敵軍の前に立ちはだかる
誤って仲間を踏みつぶさないように序盤は動かず盾として守りに徹し
放たれる電撃は電撃&激痛耐性で抵抗
敵が上空に逃げたら、仲間に「乗れ」と促すように伏せ
仲間を乗せて翼飛行で浮上し空中戦を挑む
足場としての役目を果たしながら自らも巨体を生かし
巨大な腕(前足)でなぎ払い、叩き落し
鋭い爪で引き裂き蹂躙する
知性を凌駕する野生で
計略を覆す本能で
人の限界をも突破して見せよう
●無知と野生
「ものすごいバカって何さ……。まあ、あたしは違いますけどね! ふふん♪」
と、伏義の塒に入るや否や迂闊にも言葉を発してしまったフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は、さっそく頭を抱える羽目になった。
「ぐ、ぐあああああ!? しまった、つい独り言を! 知識が、頭に!」
なだれ込む大量の叡智がフィロメーラの脳を侵食してくる。
万物の源流、生命の発祥、意思持つあらゆる種が織りなす幾多もの集合的無意識……
「あ、ああ……全てが……わからん! すいません、何いってるかわからないんですけど! もうちょっとわかるように言って!」
……世界がどこから発生したのか、命とはどのように誕生したのか、集団や民族ごとに共有される無意識の繋がり……
「いや……うん、全然わからない……」
………………。
「あ、待って! 諦めないで! わからないと、ものすごいバカって事になるんだよ!? お願いだから、わかる所まで付き合って! たのむよー待ってよー!」
さっきまで元気に波打っていた知識の奔流があっさり匙を投げ、ひゅるるるる……と音を立てる勢いで退散していく気配に、フィロメーラは大慌て。しかし残念ながら返ってくる気配はない。
そしてその声はいささか必死すぎた。詩歌達の注目を集めるほどに。
「ハッ敵!?」
爆ぜる雷撃と殺気に咄嗟にオーラの力場を展開しつつ、フィロメーラは詩歌達を見渡した。
ヘラヘラと不気味な笑みを浮かべる詩歌達は、およそ正気とは思えない。脳を破壊されているのならば当然か。……脳を破壊されたということは、それに足る知性があったということになる。
「お前らはアレがわかったのか!? くそぉ……そうだ!」
フィロメーラはユーベルコードを解放した。内なる星海の羅針が詩歌達の心の中を探ってくれるはず……
一方で、一言も発さないヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)の思考は思慮の海に沈んでいた。
(「脳を焼かれ、廃人と化した敵の末路。何とも悍ましい……」)
詩歌達の姿はそのまま書庫の脅威と危険性を映し出している。
(「だが『言葉持たぬ狼』ならば。『野生の本能のままに戦う獣』ならば。膨大な知識の濁流に飲まれることもあるまい」)
──グオォオォオオオォォォ──!!
ヴォルフガングの喉を割ったのは言葉ではない。獣の咆哮だった。その身はたちまち青い体毛に覆われた、見上げるほどに屈強な肉体へと膨張していく。その全長、およそ三十メートル。
隆起した背筋から翼を生やし、蒼き大神は敵群の前に立ちはだかった。
「アはハハハっ!! 獣モ歌エ!!」
「アオーん!!」
「ワンわーン!!」
詩歌達が下品な笑い声に嘲るような鳴き真似を重ねて電撃を迸らせた。
下手に動き回っては仲間を踏み潰しかねない。ヴォルフガングは動かず敵の雷撃を防ぐ盾となって護りに徹した。痛みはあるが、頑丈な大神の肉体にとっては虫に刺されたようなもの。
「アハハハッ!! モっと!! もットッッッ!!」
詩歌達の殺意がいっそう膨れ上がるとともに、その全身を雷撃が包み込んだ。詩歌自身をも傷つける雷撃は、一対の翼を広げた鳥の如く、詩歌の肉体を高々と舞い上がらせる。
「ふーむむ……って飛んでるぅ! あっ、乗っていいの!?」
敵の思考を掴むのに苦戦していたフィロメーラは、「乗れ」とばかりに伏せをした大神の背に急いで飛び乗った。
大神の巨大な翼が青いその巨躯を舞い上がらせる。巻き起こる突風に煽られ姿勢を崩す飛行詩歌達を、巨大な獣の前足が薙ぎ払い、叩き落としていく。
その背に跨り必死に羅針を操るフィロメーラは相変わらず苦心していた。尤も、その動機はちょっとばかり戦闘から脱線していたりしたのだが。
(「理解した敵の思考を読めばアレの内容を理解……り、りかい……」)
すでに脳を焼かれている詩歌達の思考はとりとめなく、とはいえ知識の残滓らしきものは残っているものの……
「……できませんでした」
諦悟の局地たる儚い笑みを浮かべたのち、
「──ものすごいバカって何さあああああああ!!!!」
フィロメーラ怒りの全力魔法光線が、大神の背から詩歌達を薙ぎ払った。
「歌ガ!! ウたガ!! 響イテる……!!」
光の中に消える仲間の姿を恍惚と狂い笑う詩歌達へ、青い巨体が影を落とす。
知性を凌駕する野生で。計略を覆す本能で。人の限界をも突破して。
何もかもを薙ぎ払うヴォルフガングの鋭い爪が雷撃ごと全てを引き裂き、狂いし詩歌の群れを蹂躙していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵