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殲神封神大戦⑮〜藤甲纏いし三皇

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑮ #神農兀突骨

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●農耕と医療の祖と魔獣
 封神武侠界の仙界、三皇神農の塒にてその存在は動き始めた。
『ほほう、今の世はこうなっておるか……』
 奇妙な巨大植物が蠢く祠の中で呟いたそれは封神武侠界の農耕と医療の祖とされる神のもの。
 けれどその声を発した者の下半身は魔獣、例えるならば四足の動物の頭部に人型の上半身を融合させたような異形であった。
『我が顕現する依代となったこの南蛮の魔獣兀突骨を退け南蛮を平定した者が居るというのも興味深い』
 人型と魔獣の融合部分近く、魔獣本来の口から青い炎が吹き出す。それは強者の存在に悦ぶ武者震いのようで。
『輝かしき未来を収穫するは、農耕を司る我の何事にも換え難き喜びである』
 それは当たり前のことを言っているようだ。
 けれどその言葉は酷く邪悪で、よりよい果実を得るために文明という手入れを行っていたかのような口ぶりでもあった。
 魔獣の四肢が巨大食肉植物を踏みしめ立ち上がる。
『――猟兵は今の我より強い。なれば全力を以て相対し、出来得る限りの収穫を、骸の海に持ち帰ろうぞ』
 三皇神農――今や南蛮の魔獣と融合し神農兀突骨として骸の海より蘇った存在は、来る猟兵に備え手にした剣を解き、藤甲としてその全身に纏うのであった。

「殲神封神大戦も後半戦ね! ヤバい相手はまだまだいるけど気を引き締めてかないと!」
 グリモアベース、大声で白象の猟兵、祓戸・多喜(白象の射手・f21878)が猟兵達に呼びかけ、彼女の得た予知についての説明を開始する。
「今回見えたのは三皇神農の塒にいる神農兀突骨ね。そこは神農を祀る祠で中はとても広いんだけども、今は神農兀突骨の力で巨大な食肉植物が大量に生えて蠢いていて取っても足場は悪いみたい」
 それで倒さなきゃいけない神農兀突骨なんだけど、と白象の猟兵は続ける。
「何でも南蛮の魔獣兀突骨を依り代に復活した神農で、本来持ってる無敵の一撃必殺の剣を藤甲……仙界の藤の蔓で編んだ鎧に変形させて魔獣の力で只管突進してくるみたいなの。単純な突進なら猟兵の皆ならどうにかできると思うけど、問題は藤甲ね。精神攻撃含め物理魔法問わずあらゆる攻撃を受け付けないからとっても厄介なの。だから鎧に覆われてない部分を狙ってそこを突くしかないけども、魔獣の力で暴れてくるから見切るのも難しい……強敵ね」
 当然のように先制攻撃もやってくるからそれを凌ぐ手段も考えておく必要がある、と多喜は説明する。
「一応関節部分とか、相当細い武器じゃないと難しいけど編まれた蔓の隙間とか、粘りつつ探れば攻撃を通せるところは多分見つけられると思う。とにかく粘り強く足場の悪い中攻撃を躱して強烈な一撃を叩き込めばきっと倒せるわ! 皆なら大丈夫!」
 そう説明を締めくくると、多喜はグリモアを取り出し転移の準備を開始する。
 討つべきはオブリビオンとして蘇りし三皇と南蛮の強大な魔獣の融合体。
 オブリビオン・フォーミュラへの道を切り開く為に、猟兵達は仙界へと向かうのであった。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 こんな悪魔合体があったのか。

 このシナリオは封神武侠界の仙界・三皇神農の塒で『『神農兀突骨』藤甲態』と戦うシナリオとなります。
 神農兀突骨が全身に纏う藤甲は精神攻撃を含めたあらゆる攻撃を通さず、それを利用し神農兀突骨は只管先制攻撃で突撃してきます。
 よくよく観察すれば関節部分などに藤甲の隙間がありますが、そこをどうにか狙わないとダメージを無効にされてしまうので注意が必要です。
 戦場は広いですが足場は巨大食肉植物が生え狂い蠢き回っており非常に不安定です。
 また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……「先制突撃」に対処しつつ、藤甲の隙間を狙う。
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 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『神農兀突骨』藤甲態』

POW   :    魔獣兀突骨・超加速形態
【超加速形態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    魔獣兀突骨・暴走捕食形態
【兀突骨の飢餓が限界を越える】事で【暴走捕食形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    魔獣兀突骨・植操形態
【祠内に生え狂う巨大食肉植物】と合体し、攻撃力を増加する【植物宝貝】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【誘導藤甲突撃】が使用可能になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎!

OK、バトルの時間デース!
良いデショー! 存分に堪能しマショー、兀突骨!
陸海空対応型滑走靴の推進機能で滑空状態を維持し、空中戦に持ち込むことで足元の食肉植物をスルーして、参りマース!

まずは機動戦で注意深く観察デース。
超加速の突進を、闘牛士のようにヒラリと躱し、危ないところはファルシオンで受け流し、藤甲の隙間を探しマシテ……発見!
突撃の動きを見切って兀突骨の至近距離に潜り込み、火炎放射器を展開!
「六式武装展開、炎の番!」

見つけた隙間をファルシオンでこじ開けて火炎放射器の先端を突っ込み、御身にファイアーを注ぎマース!
原典由来の火計でありますが、火加減は如何でありますかな!


待鳥・鎬
オブリビオン化した時の人格の歪み具合って、人によって大分違うみたい
世界に弓引くのに支障がないようにだろうけど
我らが神農様は……うん、大っっっ分酷いほうかな!

接敵までの間に食肉植物の動きを把握し【足場を習熟】しておくよ
先制突撃はギリギリまで引き付け、大きく【ジャンプ】で躱す
自動追尾といっても慣性は無視できないでしょ
勢い余って【体勢を崩し】たところを反撃だ

【クイックドロー】で隙間を狙ってUCを撃ち込む
ただ、この一撃は必ずしも藤甲の中に通らなくてもいい
着弾すれば藤蔓が拘束してくれるから、直接「鋼切」で隙間に【貫通攻撃】する
上手く通れば、頑丈な藤甲の中で発芽して……うん、少々スプラッタな攻撃方法だけど


夜刀神・鏡介
相手が己より強いと考える事自体は間違っちゃいないと思うが
とんでもない装備を持った奴がそれを言うか……と、文句を言っても仕方ない。全力で乗り越える、今はそれだけだ

神刀の封印を解除し、神気によって身体能力を強化
足元の植物に向けて斬撃波を放って怯ませる事で足場を安定させた上で、攻撃を刀で受け止め、受け流しにかかる
少なくとも重傷だけは確実に避けよう

陸の秘剣【緋洸閃】を発動、無数の刀を降らせて神農兀突骨へと攻撃
藤甲の隙間以外は攻撃を無効化されると言っても、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる……が目的ではない。無論、命中すれば上等だが、主目的は目くらまし
すべるように近付いて、藤甲の隙間に神刀を突き立てよう


ヘザー・デストリュクシオン
あなた、イシャの神さまなのよね?
妹のいのちをのばしたいの。
だからその力、ちょうだい。

悪路走破で植物を踏みつぶしながらずっとダッシュやジャンプ、スライディングで動き続けて狙えないようにするの。
当たりそうな攻撃は野生の勘で避ける。
ケガは気にせず敵のかんせつを狙って爪のマヒ攻撃!
きくかわからないから何度もマヒ攻撃するの。
マヒしたら他の人も攻撃しやすくなるだろうしね。
速さ(早業)ならわたしもじしんあるのよ!
敵の動きがにぶくなったら防御を考えず(捨て身の一撃)、じぶんの頭を猫にしてヨロイのすきまから首にかみついて生命力吸収するの。

これで神さまの力が使えるようになったかな?
妹のためならなんでもするの。


楊・宵雪
「この植物たちも人のお腹を満たしたり病を癒やすのによかったりするのかしら? そんなお喋りをしている余裕はなさそうだけれど

[空中機動]で巨大食肉植物の隙間を縫って避けて逃げて、敵を植物に引っ掛けて自動追尾攻撃を少しでも遅らせるわ

そうして反撃の隙を作ったら水符で[破魔]の力を込めた水を生成する[属性攻撃]で藤甲の隙間から水を入り込ませる
十分濡れたら雷符で[気絶攻撃]
水に電気を通して痺れさせてUC攻撃の隙を作るわ

動きを止めた敵をUCの香りで包む
香りなら藤甲の隙間に入り込むはずね


ゲニウス・サガレン
古代の神そのものと戦うのは、私には荷が重い
だが、植物と一体化すれば付け入る隙もありそうだ

アイテム「潜水作業服」&「陸生珊瑚の浮遊卵」
浮遊卵を辺りにまいて、吹き飛ばされた時のクッションにしよう

私の運動神経では食肉植物から逃げきれないかもね
食肉植物の消化液はおそらく、酸性の液体か、消化酵素によるもの
潜水服を着ていればしばらくは大丈夫だろう
もし食われたら、植物の体内で浮遊卵の残りを一度にまく
あたりの水分を吸って膨張すれば内部から裂けるだろう

反撃だ!
UC「水魔アプサラー召喚」
アプサラーは水流を操る
藤甲も内部は守れまい
植物体内の水の流れを操り、その茎やつるを内部から動かして無茶苦茶に結んでやれ



『来たか』
 祠の中に現れた猟兵達を威厳ある声が迎える。
 奇怪な南蛮の魔獣を依り代に蘇りし農耕と医療の祖とされる神、神農。
 どこかの世界では魔獣が纏っていたとされる藤甲を纏い、そして放たれる気配は本物の神のもののように待鳥・鎬(草径の探究者・f25865)には思える。
 オブリビオンは出現した時点で世界に弓引く事になる存在、それに支障がないようにか性質は本来のものから歪んでいる事が多いと鎬は思う。
 その度合いには個体差があるが、この神農兀突骨については――、
「……うん、大っっっ分酷いほうかな!」
 少なくとも彼女の認識では神農という神はこのような存在ではない。 薬匙のヤドリガミだからこそ、そう歪められた神を止めねばならないと思い、輪胴式拳銃「花香」を構える。
(「この植物たちも人のお腹を満たしたり病を癒やすのによかったりするのかしら?」)
 周囲に生え狂う植物を見やりながら呟く妖狐は楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)。
 この地は神農の祠であり、医学の祖であるのならばそこにあるのもまた医に通じるものであるかもしれないだろう。
 ただ、この神農兀突骨にはそんなお喋りを聞いてくれるような余裕はなさそうだ。
「OK、バトルの時間デース!」
 そして神農の神気に満ちた空間にバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の底抜けに陽気な声が響く。
「良いデショー! 存分に堪能しマショー、兀突骨!」
 肉切り包丁のように分厚い刃のファルシオンを手にしたバルタンはこれから訪れるだろう激戦を楽しむかのよう。
「……相手が己より強いと考える事自体は間違っちゃいないと思うが……」
 魔獣と融合した神農の巨体を見ながら夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はぼやく。
 神農兀突骨の全身にはあらゆる攻撃を受け付けない無敵の藤甲の鎧が装着されている。そんなとんでもない装備をした上でそう言うのかと。
 こちらを強者としてみなしている――それはつまり油断や慢心が一切ないという事。藤甲の弱点を突くのは骨が折れそうだ。
 しかし、文句を言っても仕方ない。
「全力で乗り越える、今はそれだけだ」
 鏡介は神刀【無仭】を鞘から抜き、その封印を解除して集中する。
 そんな彼の横から一人、キマイラの猟兵が前に出て静かに問いかける。
「あなた、イシャの神さまなのよね?」
 そう神農兀突骨に問いかけるキマイラの少女はヘザー・デストリュクシオン(白猫兎の破壊者・f16748)。
 神農兀突骨の返答を待たず、ヘザーは続ける。
「妹のいのちをのばしたいの。だから」
 その力、ちょうだい。そう言い放った彼女は白猫の爪を伸ばし体勢を低くし構えた。
 戦意を高めていく猟兵達、その一方でやや距離を置いて潜水服を纏った猟兵がオブリビオンを観察していた。
 オブリビオンとして蘇ったとはいえ古代の神そのものとも言える存在に、彼、ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)は自分が相対するには少々荷が重いと感じていた。
 けれどもし、植物と一体化するのであれば付けこむ隙もあるとも同時に思う。
 密かに周囲にばら撒いた小型の球体が食肉植物繁茂する祠内の湿気を吸い風船のように膨張し浮遊する。
 陸生珊瑚の卵、弾力の高いそれを吹き飛ばされた時のクッションにする算段だ。
『……よかろう、猟兵よ。我の全力を以て相対し、収穫してくれようぞ』
 その言葉が神農より紡がれると同時、魔獣の脚が食肉植物を蹴り加速、突進を開始した。
 同時にその纏う気配が神の如き厳かなものから刺々しさに満ちた飢餓へと変化していく。
 暴走捕食形態と化した神農兀突骨の魔獣の口が吠え、前に出てきていたヘザーを食い千切らんと加速する。
 暴風のような勢いの魔獣に対し、ヘザーは暴れ狂う食肉植物をねじ伏せるように踏み潰しながら跳ね走り回避する。
 この不安定な足場で自在に動けるのは彼女自身の運動神経の賜物か。
 飢餓の衝動に任せ食らいつかんとしてくる兀突骨の動きを野生の勘で見切り、足場を蹴り翻弄するヘザー。
 彼女を喰らわんとする勢いに巻き込むかのように鏡介をその前足で引き裂かんとする。
 それを鏡介は刀で勢いを逸らすようにして受け流しにかかる。
 繊細な技術を要する技は食肉植物蠢く不安定な足場では難しい筈だが、鏡介は足元の植物に直前に斬撃波を放って怯ませ硬直させている。
 一撃を受け流し切るほんの短い時間でいい、そう思考する鏡介に突進の勢いを乗せた前脚が叩きつけられる。
 刀を通し感じる力強さ、けれど鏡介は神気により底上げされた身体能力で全力で受け流しつつ、自分からオブリビオンと反対側に飛ぶ形で完全にダメージを無効化し距離を取る事に成功した。
 その反撃にと兀突骨の伸ばされた前足の関節を真上から落下してきた白猫の爪が切り裂く。
 しかし高速で動く関節は藤甲が即座に覆い白猫の爪が立たない。
 反動でくるりと空中で回転し体勢を立て直し、そしてまた飛びかかり執拗に狙うヘザー。
 身軽さには自信があるとはいえ、一度でもミスをすれば即戦闘続行不可能に追い込まれてしまう紙一重。
 しかしその金の瞳は獲物を討つ一念に集中していて、隙を伺うようにして攻撃を重ねていく。
 埒が明かないと判断したか、神農兀突骨がめきめきと変形していく。
 理性を代償に速度に特化した形態に変形した魔獣の標的は空を滑空するバルタンに向けられていた。
 蠢きながら天井目指して伸びる食肉植物をジャンプ台に、滑空できるように改造した滑走靴で空を滑りながら隙を探っていた彼女。
 滑空で停止できず狙われたバルタン、けれどそれは想定内。
 滑走靴の出力を調整し空に向かって突進してくる魔獣にファルシオンを向けつつヒラリと受け流す。
 ファルシオン越しに伝わる衝撃に姿勢制御が僅かに乱れたが、その間も兀突骨から視線を切らさずに藤甲の隙を探る彼女。
 急に伸びてきた食肉植物を蹴って軌道変更して再度突進してきたオブリビオンを、なんのと受け流すようにしてダメージを殺しつつ距離を取る。
 その交錯でバルタンは兀突骨部分の前足の後ろ、青い炎に隠れたそこに藤甲の隙を見出す事が出来た。
 ただ動きが激しく狙うのは困難、どう狙うかを思考は冷静に考えるバルタンを前に、生え狂う巨大食肉植物が急速に生長し神農兀突骨を包み込んだ。
 食肉植物と融合した神農兀突骨は視線を地上の猟兵に向けると、潜水服姿のゲニウスに狙いを定め植物を足場に猛スピードで突撃する。
 その速度は非常に速く、ゲニウスでも反応しきれない。
 近くに浮かべた膨張した陸生珊瑚の卵を何とか間に挟む形で直撃を防ぐが、強烈な衝撃と共に弾き飛ばされてしまう。
 その上、神農兀突骨と合体した食肉植物が伸び、吹き飛ばされた彼の身体を大口で飲み込むようにして捕食する。
 ゲニウスを食肉植物に飲み込ませ食肉植物を戻しながら、更に神農兀突骨は突撃を継続。
 突撃する魔獣と共に周囲に食らいつく巨大植物の群れ。足場でもあるそれらの攻撃は非常に躱し辛い。
 しかし宵雪はその隙間を天女のように宙を舞い回避していく。自動追尾して突撃する神農兀突骨も食肉植物を盾のようにし距離を取り続ける彼女を微妙に攻めあぐねているようで、鎬へと標的を切り替える。
 祠内の食肉植物の動きを観察しパターンを把握した鎬はその突撃を真っ向から見据え、タイミングを計る。
 圧倒的な暴力が破壊をもたらすギリギリまで引きつけ、接触する直前に跳躍。オブリビオンの巨体を飛び越えその背後に回り込んだ。
 自動追尾の突進を継続しているオブリビオンの巨体は当然彼女の方を振り返ろうとするが、その巨体の重量に働く慣性を無視する事は出来ず、僅かに体勢を崩してしまう。
 その瞬間、空から無数の刀が降り注いだ。
「神刀解放。斬り穿て、千の刃――陸の秘剣【緋洸閃】」
 標的を外れた隙に空へ跳ねた鏡介がユーベルコードを発動、封印を解いた神刀【無仭】より緋色の刀を形成し、無数に降らせたのだ。
 神農兀突骨は降り注ぐ刃を意に介さず突進を継続。
 闇雲な攻撃は無敵の藤甲を貫けず、そして隙間を穿つほどに精密でもないと判断したから。
 ただ緋色の刃の数は神農の視界を染め上げる程に多く、その視界が一瞬塞がれたタイミングで食肉植物を蹴って落下速度を稼ぎ着地した鏡介が滑るように接近。
 彼の接近に合わせて宵雪の放ちし符が数枚飛来し、刃に当たり弾けて神農兀突骨に水をまき散らす。
 破魔の力を宿したその水は普通であれば降りかかるだけでダメージを与える事ができるものの、藤甲の守りに妨げられ大半がその鎧の表面で弾かれている。
 編まれた蔓の僅かな隙間からも浸透しているが、散漫に降りかかり致命打にはならない。しかし緋の刀と合わせ、注意を一瞬逸らす事には成功した。 至近に迫った鏡介の狙いは兀突骨部分の胴と尾の境目、空中から見出したその隙間に向けて神刀を思い切り突き立てた。
 そしてそのまま尾を断ち切らんとする鏡介だが、神農兀突骨は再び魔獣の足に力を込め背に乗った男を振り落とさんとする。
 しかしこのタイミングで、突然神農兀突骨と融合していた食肉植物が弾け裂ける。
 中から現れたのは大量の球体――食肉植物の水分を吸収して膨張した陸生珊瑚の卵と、幾分か潜水服は溶けてしまっているが無事な様子のゲニウス。
 植物の特性から潜水服なら酸性の消化液にある程度は耐えられると踏んだ彼の読みが勝った形だ。
 至近距離、神農兀突骨と合体した植物と接触している状態の今こそが反撃のチャンス。
「さぁ目覚めよ、アプサラー! 君の力を、今、ここに!」
 叫び壺を取り出してユーベルコードを起動し、幼少時に拾った水魔を呼び出してその術を発動させる。
 ただの流水では藤甲に阻まれるだろう。しかしゲニウスの狙いは神農兀突骨と合体した食肉植物の方。
「内側から無茶苦茶に結んでやれ!」
 合体した食肉植物を構成し流れる水分の流れを操作、その自由を奪い藤甲の内側に潜り込ませその体を縛り付けるのだ。
 さらに水魔の術は宵雪の生成した水を受けた操り指向性を与えていて、食肉植物伝いに藤甲の内へと破魔の水を導いている。
 咄嗟に宵雪は食肉植物を狙い雷を宿せし符を放ち命中、破魔の水を通して藤甲の内に雷撃を喰らわせる。
 完全に気絶させるほどの威力はない。しかし、雷の衝撃に僅かに魔獣の肉体が硬直する。 その硬直を見計らい、空に浮かぶ珊瑚の卵を蹴って急加速した鎬が神農の上半身部分、その首筋に見出した藤甲の隙間に輪胴式拳銃で発砲。
「下手に動くと危ないよ」 
 神農の僅かな隙を見逃さず瞬時に放たれた弾丸は藤甲の守りをすり抜けて神農の首に着弾し、同時に弾丸に込められた魔法の銀藤が発芽する。
 兀突骨部分を拘束するゲニウスと同じように銀藤は藤甲と体の隙間で一気に伸び太く成長して締め上げる。
 二人の拘束により神農兀突骨の突進が停止する。しかしその巨体の怪力は非常に強力で、拘束は長時間は持たないだろう。
 しかしそれだけあれば十分だった。
 動きを止めた兀突骨の胴体目掛けバルタンが急接近、至近距離に潜り込み内蔵式の火炎放射器を展開。
 青い炎の内側に見える藤甲の隙間にファルシオンの先端を押し込みこじ開けそこに火炎放射器の先端を突っ込んで、
「六式武装展開、炎の番!」
 ユーベルコードを起動し火焔を藤甲の内側に流し込む。
 粘着性を持つその火焔は藤甲の内側――神農兀突骨の肉体を容赦なく焼いていき、兀突骨部分の口から絶叫する。
「原典由来の火計でありますが、火加減は如何でありますかな!」
 骨の髄からの戦闘民族であるかのようにテンション高く笑うバルタン、神農部分にもそのダメージは及んでいるらしく僅かに体勢が崩れる。
「フシャー!」
 その隙を見逃さず、ユーベルコードにより頭部を猫のそれに変えたヘザーが鎬の魔弾が着弾した位置を狙い、音もなく飛びかかる。
 守りを捨てた捨て身の彼女は藤甲の隙間を見切って、神農の首筋に猫の牙を突き立てた。
 ヘザーの牙は神農の生命力を吸い上げていきそれを厭うように神農が彼女の身体を腕で掴み引き剥がし投げ飛ばした。
 しかし投げ飛ばされたヘザーと入れ替わりにふわりと春が香る。
「春の陽射しは誰にでも平等に享受できる贅沢なのよ」
 宵雪のユーベルコード、彼女の纏う薄紅色の佩玉より漂う春めいたあたたかな光と花の香りはこじ開けられた藤甲の隙間より浸透し、その嗅覚を刺激する。
 睡眠を齎す香りに一瞬意識を奪われ、それが決定的な隙となった。
 神農の上半身に別の角度から鎬が飛びかかり、太く成長した銀藤にこじ開けられた隙間に打刀の切っ先を捻じ込んだ。
 鋼をも斬る刃はオブリビオンの肉体に深々と突き刺さり、それがトドメとなり神農兀突骨の巨体が繁茂する食肉植物へと崩れ落ちていく。

 姿を薄れさせ消滅していく神と魔獣の融合体を見下ろしながら、ふと、ヘザーが呟く。
「……これで神さまの力が使えるようになったかな?」
 生命力は吸えたけれどもその力まではどうか分からない。
 妹のためなら、その命を救う為ならなんでもすると決めている妹想いのキマイラの少女。
 それが結実するかどうかもわからないけれど、いつか実ると信じて彼女の奔走は続いていく。
 オブリビオンの消滅と共に巨大食肉植物も姿を消していく。
 静寂を取り戻した祠には、南蛮の魔獣も三皇も今はもう居ない。
 それを確認し、猟兵達は次なる戦いの為グリモアベースへと帰還するのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年01月27日


挿絵イラスト