7
殲神封神大戦⑰〜切っ先を違えることは許さじ

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』 #プレイング受付締め切りました

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#封神武侠界
🔒
#殲神封神大戦
🔒
#殲神封神大戦⑰
🔒
#渾沌氏『鴻鈞道人』
#プレイング受付締め切りました


0




●刃を以って
「鴻鈞道人への道が開いた」
 そう言って、女は仲間を戦場へと送り出した筈だった。あとは彼らの無事を祈り、満足な情報を得られなかった己に苛立ち、時が来たら再び迎えにいくだけ。その筈だった。
 しかし、そんな彼女の意識は今、どことも分からぬ場所へと浮かんでいた。
 どこだ、此処は。そう疑問に思うも、考えた端から思考が溶けて崩れていく。
 まるで、海の中にいるようだ。
(然り、私は【骸の海】。お前達が生きるために踏みしてめてきた、全ての過去である)
 頭の中に、直接声が響いた。同時に、頭の中に“何か”が流れ込んでくる。
 濁流の様なそれに忽ち意識は押し流されそうになる。辛うじて己を保とうとするも、果たしてどこまで持つか。
 手足は既に動かない。気付けば頭の中だけでなく、それは体の奥底まで満ちて締まっている。
(罪深き刃を刻まれし者達よ)
 声が、響く。
(相争い、私の“左目”に炎の破滅を見せてくれ)
 異様な、力が身体を、思考を燃やす。
(お前は刃だろう。――ならば、戦いの中、その本分を全うしろ)

 さぁ、戦え。殺し合え。
「――そうだな」

●貫き、穿ち、喰らい合え

 女の姿が、立っていた。
 戦場の真ん中で、その髪と同じ色を宿した太刀を手に引っ提げ、女は静かに此方を睨んでいた。
 銀髪に透明な角。頬と、手と、身体のいたるところに龍の鱗を宿した、小柄な躰。同じ色であった筈の銀の瞳は、何故か左目だけが不気味な色を宿し光っている。
 それはつい今しがた、猟兵達を戦場へと送り届けた筈の四辻・鏡(ウツセミ・f15406)の姿であった。
 彼女はまるで感情を失ったかの表情でこちらを睥睨し、刃を構えている。
 その身体から滲み出るのは、純粋たる殺意と、異様な“気配”。
 そこで猟兵達は気付くだろう。彼女の中に、自分達が相手取る筈だった敵が宿っていることに。鴻鈞道人は、非道にもグリモア猟兵の体内に潜り込み、融合したのだ。
 今、鏡の中には『渾沌の諸相』としての膨大な力が流れ込んでいる。鴻鈞道人に意識を呑まれた彼女は、どんな言葉をもってしても止めることは不可能だろう。
 そして逆を言えば言葉以外でなら、彼女を力づくで倒し、鴻鈞道人が力尽きるまで戦えば止めることが出来る、ということだ。

「――違えるな。斬れ」

 鏡の唇が動き、そう、言葉が漏れる。何かを抑えるように震えた、いつになく真剣な低い声であった。
 何を、とまでは聞くまでもない。
 気配だけで理解してしまう。鴻鈞道人の力は強大だ。鏡のことばかり気にして手加減して戦っては、殺されるのは猟兵達の方だろう。そして、そうしてしまえば鴻鈞道人を撤退させることは出来ない。
 猟兵達に許された道は、鏡と殺し合うことだけなのだ。

「殺し、殺され――上等だ」

 鏡の口元が不敵につり上がる。果たしてそれは、彼女と敵、どちらの言葉か。
 その言葉を最後に、鏡は箍が外れたように、猟兵達を殺す為に、刃を振り上げた。


天雨酒
 戦闘欲に従いました、天雨酒です。
 あるあるですが初めての封神武侠界のシナリオにて、戦争シナリオとなりました。
 敵と融合してしまったグリモア猟兵、鏡と存分に戦って下さい。

 プレイングボーナス……グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する。

 プレイングボーナスに基づく行動をすると、有利となります。
 特に先制攻撃への対策は必須です。力技で受ける、強引に耐えるといった程度では必ず押し負ける結果となりますのでご了承下さい。

●鏡
 太刀を主武器として装備しています。近距離では匕首を使うこともあるでしょう。
 OPにある通り、意識は完全に鴻鈞道人に奪われています。よって、何らかの「心のつながり」があったとしても、一切有利には働きません。問答無用で近づく者を切り捨てる辻斬り状態ですので、手加減はできません。全力で戦って下さい。それこそが彼女の望みでしょう。
 ちなみに、面識ないけど刀相手にバトルしたいよ、という方も大歓迎です。

●プレイング受付について
 今回は断章を挟まず受付開始いたします。人数によっては一部不採用を出してしまったり、再送をお願いすることになるかもしれません。ご了承お願いします。
87




第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜刀神・鏡介
これでも修羅場を潜り抜けてきた身。相対すれば相手の実力はなんとなく感じ取れるさ。それが剣士ともなれば尚更な
……手加減できる相手じゃない。全力で行くぞ

神刀の封印を解放、神気によって身体能力を強化しつつ接近
異形化した部位に注意しつつ、それを十分に振り回せないように部位の反対側に回り込む形で動く
異形の攻撃に合わせて太刀に向けて一撃、刀を受け流すか弾き飛ばしで体勢を崩す事で、攻撃を逸しながら回避
この間合いで匕首を抜かせるつもりはないので、基本は太刀に気を付けつつ、奥義【無想】の構え

――彼女が正気ならば届かなかったかもしれないが
鴻鈞道人に操られた、正気ではない剣士に負けてやる程、ぬるい剣じゃないんだよ



●過去の先より
 女の剃刀色の瞳が、こちらを射抜いていた。
 触れれば文字通り切れてしまいそうな眼光に夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)の背中に冷たい汗が流れる。
 ――違えられる筈など、無い。
「これでも修羅場を潜り抜けてきた身。相対すれば相手の実力はなんとなく感じ取れるさ。それが剣士相手となれば尚更な」
 鴻鈞道人と融合した鏡の力は常よりも遥かに膨れ、猟兵としての規格から大きく逸脱している。手加減など、出来る様な相手ではない。
 瞑目し、深く息を吸う。腰に佩いていた神刀【無仭】の封である鎖を解く。
 溢れる神気が己の生命を喰らい、その対価に鏡介の身体に力を与えてくれる。
 体の隅々まで力が満ちるのを確認して、今度は静かに息を吐く。
 そして、ゆっくりと目を開けて、

「……全力で行くぞ」

 黒い衣の影を僅かに残し、鏡介は死合へと向かう。


 一足飛びに距離を詰め、踏み込みと同時に刃を振るう。
 神刀の加護を得た今、それだけでも既に神速の境地。しかし、ヒトの括りを外れた相手は当然のように刃を合わせ、剣先を逸らしてくる。そのままかちあげ、刀を弾かれそうになるのを、素早く刃を返すことで逃れた。
 まだだ。逃さぬように再び即座に次の攻撃を繰り出す。打ち込む、止まる、捌く、振るい、疾って。
 数瞬とも、無窮の時とも思える様な凄まじい数の打ち合い。
 その中で、奇妙な音がした。
 その出所は、刃とは反対の手。竜の鱗が浮かぶその肌が、泡立っていた。
 ぼこりと、内から何かが浮かび爆ぜるように肉片が散る。中から顕れたのは、真白の触手と悍ましい気配。
 鏡介は瞠目した。
 
 これは死か。否、過去だ。

 自分達が、世界が捨てて行ったものが、鎌首を持ち上げ此方へ引き込まんと襲ってくるのだ。

 足を踏み止め、神速の歩法にて反対側へ。少しでも距離を稼ぐように回り込んだ。
 標的の移動に合わせて触手の矛先がうねる。鏡自身も身体と右手を振り、振りかぶるように触手が、刀がこちらへと向かう。
(斬り返せると、思うな)
 真っ直ぐに前を見据え、鏡介は己に言い聞かせる。
 位置を変えたのは避ける為ではなく、受ける為だ。欲しかったのは距離と、時間。間合いを、死線の隙間を、読み掴むための機、今ここで掴む為に。

(――恐れるな)

 酷くゆっくりと、しかし確実にこちらに向かう明確な死を感じながら、考える。

(今はただ、一薙ぎで全てを呑み込む刃を逸らし、死線を掻い潜ることだけを考えろ)

 畏れるな。
 過去を。
 死を。
 此処を乗り越えなければどのみち、未来への道筋など存在しない。

 ――故に。

 銀と黒の間に鮮やかな赤が奔る。

 赤の飛沫は鏡介から噴き出していた。
 触手にざっくりと肩の肉をえぐり取られながら、それでも鏡介は立っていた。死が寄り添った刹那の間、触手の斬撃を耐え抜き、致命となる刀での一撃を受けきったのだ。
 明暗する視界の中で、鏡介は歯を食いしばる。
 血は止まらない。流れ出るそれは瞬く間に身体から熱を奪い去っていく。神気の加護を以ってしても、以って数分……いや、まともに打ち合えるのは十数秒だろう。
 それでも鏡介は、今、耐えきった。だからこそ、この技を放てる。
 相手は既に目前。もう一つの得物、匕首を抜かせるつもりは、ない。
「奥義――」
 鏡介の手の中で神刀が閃く。その速さは、先程よりもさらに上。次も、その次の斬撃も、鏡介の剣は止まることなく速度を上げていった。
 
 それは、無念の世界。
 何も感じず、何を思わず。ただ目の前の敵を斬る、その事象だけが定められた極地。
 現在の互いの位置、鏡の刃と、その技量。そして、融合した上での彼女の身体能力。その全てを含め、最も適した道筋を、鏡介は辿った。

「――彼女が本気ならば届かなかったかもしれないが」

 相手が自分と同じく、剣の道を問い求め続けるものならば或いは辿りついていただろう。
 しかし、鏡介が切り捨てた『彼女』は違う。これはただ、器を借りた過去の具現だ。故に、“それ”はこの場に立つ事は許されない。

「――ッ」

 幾度もの打ち合いの末、鏡の身体へと刻まれた赤い筋。
 漸く届いた一撃に、鏡介は目を細めて嗤う。

「鴻鈞道人に操られた、正気でない剣士に負けてやるほど、ぬるい剣じゃないんだよ」
 
 希望も絶望も、剣は囚われない。過去も未来でさえも、剣を縛ることはできない。
 無念の裡にこそ、解となる剣術は生まれるのだ。
 
 即ち其の剣の名は――【無想】。

成功 🔵​🔵​🔴​

皆城・白露
(アドリブ・連携歓迎)

…そういえば、あんたとは顔は合わせてるけど、手合わせはまだだったな
いや、「こんなのノーカウントだ!」って怒るだろうか
…この戦いが終わったら、改めて戦おうぜ…か?
いや、それはなんかちょっとおかしいか…?

左右一組の黒剣を抜く。最初は剣のまま
相手の攻撃は【武器受け】【受け流し】で耐え、【斬撃波】で牽制し隙を狙い
反撃のタイミングで黒剣を爪に変化させ、【狼の九爪】使用
【2回攻撃】も交え、繰り出せるだけの攻撃を繰り出す
弾かれても、届くまで、ねじ込むまで

味方を攻撃なんてしない、出せる攻撃は全部くれてやる
そっちが命を懸けてるんだ、こっちだって
搾りかすの命でよければ、使えるだけ使ってやるよ



●フェアじゃないだろ
 こんなに時何を、とは思うけれど。
「……そういえば、あんたとは顔は合わせてるけど、手合わせはまだだったな」
 普段顔を合わせている場所で、何度も戦うところを見ていた筈なのに不思議なものだと皆城・白露(モノクローム・f00355)は思った。
 普段顔を突き合わせている場所で、お互いあんなに戦いを繰り広げているのに、そういえば彼女を相手する機会には未だ巡り合っていない。
 その気になればいつでも出来ると思い込んでいたからか、単に時の運がなかったためか。とにかく、言うなら此れが初の手合わせとなるのだろう。
 いや、豪快な鏡の性格からしてそんなことをいえば『こんなのノーカンだ!』なんて怒るだろうか。戦うことだけ真面目な性格だから、きっと、そうに違いない。
「……この戦いが終わったら、改めて戦おうぜ……か?」
 自然と口をついて出てきた言葉の酷さに少しだけおかしさを感じる。戦闘を前にして、次の戦闘の約束をするのはおかしくないか、とか、大きな戦いの前に約束をする者の最後は大体決まっているだろうとか。これから死ぬかもしれない緊張した場面の筈なのに、ややずれたことがいくつも頭に過ってしまう。
 
 だから、声に出さず、自覚すらなく、白露は少しだけ口元を綻ばせて笑い。

 ――そして、疾風の如き斬撃をその身に受けた。
 

 視界が少しずつ、赤く染まっていく。
 それは飛び散る鮮血の為か、それともそれが己の身体から流れ出ている為か。
 目にも止まらぬ斬撃を、両の手に握った二振の黒剣で受け止める。流れるように返す刀で下ろされた斬撃は、半身を逸らすことで回避した。真っ向から立ち向かってどうにかなる力量差ではない、殺しきれなかった衝撃が、捌ききれなかった斬撃が既にいくつも白露の体を傷つけていた。
 防御の合間を塗って少しでも相手の猛攻を削ごうと反撃を試みるも、鏡の視線は僅かとも揺れずそれらをの切っ先を逸らしてしまう。
 手中の武器の全てを解放すれば或いは――剣の形ではなく、嘆きと復讐者の名を冠する禍々しい爪の形へと変え、全てを出し切れば何かが変わるかもしれないが、白露は敢えてその選択を選ばなかった。
 分の悪い賭けをするのでは駄目だ。その手を使うのは、それを確実に当てられて、敵を倒せる時。
 だから白露は鏡から繰り出される猛攻を必死に押し留め、食い下がるように距離を保ち続けていた。
(……脆弱な獣かと思えば、存外生き延びる)
 やがて、些か業を煮やしたような頭の中に鏡のものでない声が響き、しかし変化は彼女の躰に起きた。
 小柄なシルエットが一瞬膨れたかと思うと、鏡の腕から、背から白い翼が生えた。次に白い触手が、そして、禍々しい異形の刃物が。一つ生える度に彼女の血管を破き、肉を飛び散らすのはその対価故だろうか。
 鏡の躰を食い破った異形が、一斉に白露へと向かってくる。
 刀を振り、斬撃派を撃つ。迫ってくる何本かの触手の行く手を逸らす。叩きつけられた翼を剣で受け、威力を殺す。その速さも一撃の重さも先程までと比ではない。瞬く間に白露の白い服が、耳が、尻尾が赤く濡れそぼっていった。
 それでも僅かにこじ開けた一瞬。触手とt翼と、刃と、その隙間に覗いた肉体目掛けて飛び込んだ。
 ――ここしか、無い。
 強引にねじ込んだ先で両手の剣を爪状へと変化させる。そして、さらに手を伸ばして伸ばして。
 
 獣の爪が、輝き、閃いた。

 片手で九重、両手を重ねて、十八重。
 至近距離から、叩き込む。
 
 その凶器は仲間を傷つけねば己の命を削るものだけれど、白露にその意思は始めから無かった。
 
 斬れ、と彼女は言った。それは、命を懸ける言葉だ。
 自らの命ごと鴻鈞道人を斬ることになったとしても、それを躊躇うことはするなと。
「……そっちが命を懸てるんだ、こっちだって」
 狼の爪撃が、全て真っ直ぐに鴻鈞道人へと注がれる。
 
 斬る。どんなに硬くても、どんなに弾かれようと。全て斬る。
 斬って、斬って、斬って、届くまで何度も、なんども何度も。

 爪が罅割れようとも、振るう手が裂け、その骨が砕けようとも。
 決して白露は攻撃を止めるつもりは無かった。
 
「搾りかすの命で良ければ、使えるだけ使ってやるよ」

 だから、対価は払ってもらう。

 幾度目かの斬撃。叩き込まれることで白き異形に生まれた傷を、爪が貫いた。
 そして血まみれの狼は、それを強引に引き裂いたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リタ・キャバリエーレ
鏡さん……

見知った顔の見知らぬ様子に僅かに顔を曇らすも…

手加減する方が失礼よね!
とすぐに割り切って

叩けば治る、って言葉もあることだしね!うん!(治りません)

ハンマー状に巨大化させたカダルで相手の攻撃を【見切り】、【オーラ防御】を纏った【武器受け】を試みるわ。
上手くいけばそのまま【カウンター】の要領でUC発動
持ち前の【怪力】を生かして全力で、遠慮のかけらもなく、鴻鈞道人を鏡さんごとぶっ飛ばさせて貰うわ

ここで、手加減や躊躇なんてしたらそれこそ、あとで鏡さんにぶっ飛ばされちゃいそうだもの!

(戸惑いはありますがそれよりも、普段の彼女を知るからこそ全力で)
アドリブ
絡み歓迎



●一意専心
 それは、自分が良く知っている彼女の顔で。けれどその有様は、自分の知らないものだった。
「鏡さん……」
 戦いに悦ぶ訳でもなく、かといってこちらを憎むわけでもない。一切の感情を捨て去った人形かのような鏡の表情に、リタ・キャバリエーレ(空を夢見た翼・f22166)は顔を曇らせた。
 どうして、という戸惑いはある。友を攻撃する躊躇いも、苦しさだって無いと言えば嘘だろう。
 しかし、その感情が表情に浮かび上がったのはほんの一瞬のこと。直ぐに頭を振ってその表情を消し飛ばしてみせた。
「……うん、手加減する方が失礼よね!」
 幾ら悩んでも、起きてしまったことはもう戻せない。それに、自分がこうしていたって状況は何も良くはならない。いや、むしろ時間が立てばたつほど、悪くなる一方の筈だ。
 ならば、リタがやるべきことは一つ。
 彼女の中に居る鴻鈞道人が力尽きるまで、戦い抜くことだ。
「それに、叩けば治る、って言葉もあることだしね! うん!」
 いやそういうもんじゃねぇよ、ってか私は一昔前のテレビか、なんて鏡が素面ならば言いそうなものだが、生憎彼女はそれどころではないし、鴻鈞道人もリタのそんな言葉にわざわざ反応してくれる程寛容でもなかった。
 結果、閃いたリタの考えは誰にも訂正されることの無いまま、戦闘は開始されたのだった。
 
 
 本来は獣との意思を交わす為のオカリナを、ハンマーの形へと巨大化させる。リタはそれを華奢な体つきからは考えられないほどの膂力で操り、どんと正面に掲げてみせた。
 そうしてどんな動きにも対応できるように警戒してみせながら、リタはもう一度、そっと鏡の様子を伺う。
「――ふ」
 彼女は不気味に、嗤っていた。リタと同様に自身の得物を正眼に構えてみせ、その身体から異形を生やし、血にまみれていながら。
 彼女の躰はすでに、先程までの猟兵との戦闘により傷付いている。もっとも、その半分程は代償として支払われたものであるが、この場ではそれは大した差はないのだろう。
 要はリタよりも鏡の方が多く血を流し、赤に塗れていること。その中でこそ、骸の海より具現化せし異形は嘲笑う。より殺戮を、より激しく報復を。操られた鏡の刀は強制的に研がれ、その力を増していく。
 
 一瞬の無音。鏡の姿がふいに消えた。

 リタの感覚では風が動き、微かに影が映ったのみ。とても、全てを追いきれる速さではない。
 信じるのは掻き消えた際のタイミングと、己自身。
 ハンマーを持つ手に力が籠る。足は肩幅程で開き、大地をしっかりをおさえ腰は軽く落とした姿勢。
 殺意に、死の気配に背筋が泡立つ。それを無視して、魔力をオーラとして武器と己の肉体に纏い、防御を固める。

 直後、収束された砲撃の様な一撃がリタのハンマーへとぶち当たった。

「――なん、のッ!」
 折れてしまいそうになる膝を、自らの声で奮い立たせる。防ぎきれなかった衝撃波がリタの服を、肉体を切り刻んでいく。ハンマーを持つ腕はとっくに痺れている、少しでも気を抜けば、忽ち全身バラバラになってしまいそう。それほどに、巨大な一撃だった。

 それでも、耐える。腹の底から叫び、力を振り絞り、リタは真正面から強引に鏡の攻撃を受け止める。
 だって、このままになんてできないから。どうにかししたくてリタはこうして立ち向かっているのだから。
 
 それに――。
 
 リタを押し潰さんとしていた衝撃が止む。眼前の全てを両断せんと振り下ろされた鏡の一撃が、遂に終わりを見せたのだ。
 それをリタは受けきった。ボロボロな状態で、ハンマーを振り上げるのもやっとな状態だけれど、それでもリタは、防ぎ切ったのだ。
 ならば、今度は此方が『お礼』をする番だ。
「返礼は大事、よね!」
 身体を捻り、踏み込むと同時に水平に振り回す。ダメージが蓄積した身体にはハンマーは酷く重たく感じたが、彼女のユーべルコードがそれを支えてくれる。
 相手の攻撃を受け、ガードが成功した場合に発動する【RAGE Counter】。それにより今、リタの攻撃は鏡に対して3倍まで高められていた。
 攻撃の直後だ、鏡の肉体はリタの反撃に反応しきれない。
 
 だから、全力で。遠慮の欠片もなく、ありったけの力を込めて。
 
「ここで、手加減や躊躇なんてしたらそれこそ、後で鏡さんにぶっ飛ばされちゃいそうだもの!」

 思い切り振り回したリタの一撃が、強かにその身体を捉え、吹き飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
『為さねばならぬ』という状況は幾度もありました
終わった後の後悔は、為してこそ出来る物

…参ります

頭部、肩部格納銃器で脚を中心に身を削り
剣と盾にて防ぎ、切り結び
瞬間思考力にて本命…異形化した渾沌の一撃に反応
目潰し代わりに大盾投擲
怪力にて振るう電脳禁忌剣で狙いを逸らし

この巨躯ゆえに
懐に潜り込まれれば不利となる体躯の差
されど迎撃の業もあり

瞬時の手首の返しを可能とする機械関節
刃を伸ばす前腕部伸縮機構の騙し討ち

下段よりの切り上げにて迎え撃ち…!

…外してがら空きとなった胴
狙う敵に対しUC射出
“奥の手”のワイヤー制御鉄拳で殴り伏せ

…私は剣士でなく騎士
そして、ウォーマシンですので

容赦は致しません、『鴻鈞道人』



●選択は
 為すか、止めるか。
 これまでどれほど、選択を重ねてきたのだろうか。
「『為さねばならぬ』という状況は幾度もありました」
 一つ間違えば自分以外の命が喪われてしまう時、誰かの中に残りたいという身勝手で、それでいて純粋な祈りを突き付けられた時、そして、骸の海より戻りし創造主をこの手でもう一度送った時。全てはまだ、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)の記憶領域に鮮明に焼き付けられている。
「終わった後の後悔は、為してこそ出来る物」
 そしてこれから、トリテレイアはまた選ぶのだ。
 騎士として、己の為すべきことを果たすために、白い鎧を味方の朱に染めることを。
「……参ります」


 頭部、肩部に格納された銃器を展開。複数のセンサーから補足した鏡の位置情報、及び行動予測を送信し、一斉掃射を行う。
 狙いは、彼女の機動の要である脚。剣士である彼女にとって、速さを失うことは大きな痛手に繋がると考えての攻撃である。
 弾幕が戦場に無数の穴を作るが、肝心の彼女は大きく横に跳びこれを回避した。が、そこまでがトリテレイアの計算だ。残しておいた機銃の一つが空中の鏡を捕らえ、銃声を轟かす。左太腿から鮮血が跳んだ。
 しかし、鏡は止まらなかった。滑る様に地を駆け自身の間合いへと強引に引き摺りこみにかかる。正面から引き続き脚を狙うも、いくら傷付こうと勢いは止まない。これ以上は意味のない行為だと判断し、射撃体勢を解除。構えていた大楯と電脳禁忌剣を構える。
 転瞬、金属同士が激突する嫌な音が戦場を木霊した。
 鏡の刀とトリテレイアの武装。二つの鉄が目まぐるしくぶつかり合い、火花が散る。
 その中で、トリテレイアの感覚器が一つの事実を補足した。
 鏡の、先程弾丸で削った筈の負傷が治っている。機動を潰されるのは都合が悪いと戦いの合間に癒したのだろうか。
 ――いや、違う。瞬き一つの間を何倍にも引き延ばし、思考するトリテレイアの演算機構がその認識を否定した。赤い血が流れていた筈の怪我、今そこに宿る色は、不気味な白。
 治したのではない、造り替えたのだ。役立たずとなった部位を贄として、鴻鈞道人はさらに異形の部位を呼び出した。なら次に予測される攻撃は。
「――ッ!」
 結論に至った瞬間、躊躇いなく手の中の大盾を投げつける。巨躯を守るための金属の盾は、小柄な鏡にとっては壁も同然。それを利用して、彼女の視界から己を隠す。
 まだだ。一秒と持たず盾が跳ね上げられる。現れたのは振り上げた太刀にて盾を弾き上げた鏡。そして大きく横に振られた足は、醜く、白く、異形に覆われて。
 
 どちらともない咆哮が上がる。
 怪力で電脳剣を突きだし、切っ先を逸らす。しかし、そうするまえに、必殺の一撃は自らその軌道を止めた。

 フェイント――。
 
 鴻鈞道人は学んでいるのだ。繰り返される戦いの中で、鏡の躰の使い方を。
 明確なまでの体躯の差。一見有利にも見えるそれは、盤面が変わればトリテレイアに取って絶望的なまでの不利となる。彼の体格では、一度懐に潜り込まれれば即座の反撃に繋げられない。

 空を切った切っ先とすれ違い、鏡がさらに踏み込む。ここからはトリテレイアの大剣の内側であり、鏡の二つめの得物の間合い。

「されど、迎撃の技もあるのです」

 ――だからこそ、“それ”に対して、対策をしていない筈がないのだ。

 人体ではおよそ不可能な域にまで手首が返す。ほぼ真逆へと向け、潜り込む彼女の背目掛けて、前腕部の伸縮機構にて無理やり刃を伸ばし、下段から切り上げる。
 その音を拾ったか、殺気に反応したか、ぐるりと鏡の眼が動いた。即座に異形の部位から刃が飛び今度こそ、騎士の手首ごと剣を飛ばす。
 対するトリテレイアは、武器を失い、全くの無防備。がら空きとなった胴に彼女が滑り込む。

 そのお蔭で。
 やっと――彼女の虚を取れた。

「この時を、待っておりました」

 言葉と共に、残しておいた“奥の手”を解放する。
 外見からでは判別がつかない、隠し腕。ワイヤーにより制御可能な切り札を至近距離から射出し、殴りつけた。
 不意打ちに体勢を崩したところでさらにもう一発。拳が異形化した躰を突き抜け、風穴を開ける。

「……私は剣士ではなく、騎士。そして、ウォーマシンですので」

 三重、四重にも作戦を張り巡らし、緻密な計算の上で生み出した必殺の一撃。

「容赦は致しません。『鴻鈞道人』」

 それを勝ち取ったトリテレイアは膝をつく鏡を――その先に潜む敵を見据え、そう、言い放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ

そいや鏡の姐さんの手のウチって見た事なかったな
大義は重いが死合いに張りも出る…鬼の務めは殺戮じゃなしに闘争だもん
…いーさ、やろうぜ

敵UC代償、呪縛なら動きに毒や流血なら匂いに変異があるだろし
【激痛耐性/情報取集/聞き耳/野生の勘】で鏡の初手(おそらく刀剣)への備えに
分割した七葉隠の一振りを構え
【武器受け】で幾らかは受け流しすが反撃の為正面から防御
鏡と切り結べば即刻七葉隠を鏡に投げ付けるか弾かれるまま放棄しダメージを流し

即【カウンター】UCで反撃
代償の殺戮の呪縛そのまま至近距離から黒曜石で鉤爪化させた右腕で下から【傷口をえぐる】様に裂き人一人分の距離を踏み込み詰め、横薙ぎ「櫛羅」で毒追加【毒使い】
強化した【念動力/投擲】手裏剣+追随してクナイで敵翼や触手ごと身も割き【串刺し】で更に流血狙う
自他の流血等で幾らか宥めた自身の殺戮呪詛を闘争欲にすり替え対峙意識へ
【軽業/ロープワーク】で布の猫目雲霧で手元、目、首に纏わせ撹乱し隙に黒曜の右手で斬り刺しながら抑え込み念動で撃ち込むクナイで【暗殺】



●血に滲み
「そういや、鏡の姐さんの手のウチって見たことなかったな」
 依頼の説明は何度も受けて、その度に送り届けて貰っては居たけれど。今更になって、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)はそんな事実に思い当たる。考えてみれば当たり前だ、彼の前に立つ時、グリモア猟兵の鏡は戦うことが出来ないのだから。
 しかしそうは言っても、既に何度も言葉を交わした身。鏡がどんな人物であるかは知っているつもりだ。
 特に、彼女もまた好んで戦禍に身を置く人間であるということは、充分に。
「大義は重いが、その分死合いに張りも出る……」
 元より、鬼の務めは殺戮ではなく闘争である。
 目の前にいるは、鬼か異形か、はたまたカミなるものか。言うまでもなく相手にとって不足無し。
 その号の通り七振りに分けた【七葉隠】を構え、トーゴは低く身構え、呟いた。
「……いーさ、やろうぜ」
 
 どちらかが倒れるまで終わらない、血で血を拭う戦いを。
 
 
 予想していた鏡の刀での一撃を半身をずらすことで紙一重で躱す。と、こちらの動きを予測していたかのように斬撃が軌道を変えた。これは咄嗟に手の中の七葉隱を滑り込ませ、真横から薙ぎ払われた受け止める。
 金属同士が擦れる耳障りな音が響き、トーゴの片腕に痺れが走る。小さな体の何処にあるのかという程尋常ではない力が骨を軋ませ、強引に太刀が押し込まれる。
「く……ッ」
 頬と耳に痛みが走り、間もなく熱い液体が頬を濡らす感触がする。迫った刃が触れ、トーゴの肉を斬ったのだ。
 このままでは押し負ける。痛みを堪え、己の五感と本能を信じ、トーゴは素早く相手の刃を滑らせると同時にその身を地面すれすれまで低く伏せた。
 髪数本と薄皮一枚を犠牲にし、鏡の一撃を辛うじて回避ししたトーゴは距離を詰める。
 今までの斬り合いで、相手の出方は大体把握した。
 そして前の猟兵達との戦いからして、鴻鈞道人はおそらく、異形を顕現する際鏡の血を代償としている様であった。
 ならば、それを――血の匂いを頼りに発現のタイミングを掴めるはずだ。
「ま、もうこっちやらあっちやら血塗れで今更って感じだけどな」
 それでも、鮮血とそれ以外の区別がつかないほど、トーゴの忍びとしての五感は鈍くは無い。
 今まさに、その気配を掴んだ様に。
「させねェよ」
 新たに湧いた鉄錆の気配に、トーゴは七葉隠を構え正面からぶつかり合う。
 トーゴの身を貫こうとする触手を刃で切り払う。異形の翼が起こす風圧が、トーゴの足を止める。歯を食いしばって踏み込めば、殺戮の刃が眼前を奔り――。
 トーゴは思案する。
 先程と同様に受け流せるか。いや、異形の力を用いたこれに、同じ手が通用するとは思えない。かといって、躱すのも論外。とてもでは無いが間に合わないし、そもそも此処まで距離を詰めた機を不意にしては意味が無い。
 故にトーゴは、七葉隠を、投げた。
 予想外の軌道を描いた刀に鏡の瞳が僅かに見開かれる。二つの刃がぶつかり合い、七葉隠が明後日の方向へと弾き飛ばされる。
 その隙に、トーゴはさらに前へ出た。刀を飛ばしたことで威力を落とした刃を掻い潜り、振るってくる触手に肉を削られながらも、止まらない。
 得物を取りにいくようなことはしない。その間が在ったら、さらに踏み込んでいく。
 血に連なる化生をその身に降ろし、右腕を黒曜の鉤爪へ。代償として湧き上がる衝動のまま下から振り上げる。躱される。しかし、その隙にさらに一歩。左に隠し持っていた櫛羅を横薙ぎに振るう。仕込んでいた毒に、鏡の顔が一瞬歪む。
 しかしまだ、鏡の動きを止めるまではいかない。無論、トーゴもここで終わるつもりはない。
 櫛羅を放す、鉤爪も一度解除する。両袖から無数の手裏剣をばら撒き、念動力で繰って四方から打ち込む。さらにクナイを構え飛び掛かった。手裏剣の対処に追われている触手を串刺し、斬り裂く。白かった筈の異形の躰が真っ赤に染まる。
「はは――」
 膨れ上がる殺戮の衝動に笑いが溢れる。両手を濡ら敵の血と、自身の流血でそれを宥めて、闘争本能へと挿げ替える。

 今求めているは殺戮ではない。戦いだ。
 より赤く、より研ぎ澄ました、本物の刃のような、闘争。

 刃が飛び掛かる前にその場を飛び退き、宙で身体を反転させる。両手は無手だ。クナイは異形の部位に突き刺さったまま、手裏剣はあの一撃で出し尽くした。
 だから、トーゴが次に取り出したのは猫柄の布だった。
 しなやかな布のまま鏡の手もとを絡め捕る。目、首に布を走らせ、その動きを戒める
 柔は剛を制す。絡め捕られた鏡の体勢が崩れる。
 その隙に再び右手に爪を呼び、渾身の力で腹へと突き入れた。
 鏡から吐き出される大量の血。それを浴びながら、トーゴは刺さっていたクナイを念力で引き抜き、動けない彼女の急所へ。
 
「……次は姐さんの手、見せてよ」

 クナイが再び彼女の肉体を貫くのを見届けて、トーゴは小さく呟いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロム・エルフェルト
アドリブ他◎、苦戦負傷上等

何時か、模擬戦を……と約束をしたけれど
実戦となってしまったね

▲結界術に▲催眠術織り交ぜ、自分よりずれた場所に陽炎の虚像を結ぶ
軸のずれた先制攻撃を▲受け流し、致命傷となるのを防ぎたい

「憑紅摸」を抜刀、刀身に猛り狂う▲焼却の劫火を纏わせる
――鏡さん、全力で戦ろ。
それとも。『荒咬』出さず、手抜きで終わらせるつもり?

「流水紫電」、最大励起
無軌道極まりない荒咬の斬撃を▲残像で撹乱しつつ掻い潜り接近
真っ向から打ち合わないように逸らし▲受け流す
荒咬は斬魔鉄
下手に打ち合えば憑紅摸ごと斬られてしまう
自分の寿命を少しずつ憑紅摸に▲生命力吸収させ
その分▲怪力と▲焼却の劫炎の熱量を増していく

化かすのは、狐の十八番
憑紅摸を撥ね上げられれば、虚を突かれた貌を見せ
敵のUCの発動を誘う
手の内に現れた「無銘左文字」を握り
肉を喰らわれ深手を負うのを承知の上で
▲カウンターとしてUC:抜刀術・椿を放ち
「匕首を弾き飛ばして」鏡さんを胴薙ぎに▲切断する

流石に。友の魂までは斬れないから、ね。



●変幻
 袖触れたのは、戦いとは縁遠い場所ではあったけれど。共に高みを求める、その接点を見つけ理解し合うことはできたから。
 だから、いつか、と言葉を結んでいた。
「何時か、模擬戦を……と約束をしたけれど。実戦となってしまったね」
 しかしこれは、一体誰が予想していただろうか。クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)はその青い瞳を細め、少しだけ苦い顔を浮かべた。
 憐れ、などとは思うまい。それは鏡の言葉に対して、無礼が過ぎる。
 戦場には剣士が二人。そして言葉で押し留めることは不可能。ならばもう、斬り合うだけだ。

 突き刺さる殺意に反応して五感が研ぎ澄まされていく中で、表情を消し、呼吸を整える。
 クロムの剣は、殺戮に非ず。人を活かす為、理不尽に呑まれる悲しみを祓うために振るうものだ。
 なれば、それを出し尽くす。クロムの持つ剣技を、矜持を、ありったけの全てを今、鏡に披露してみせよう。
「……参る」
 そうして、また一戦。修羅の戦は幕を開けたのだった。


 愚直な程に真正面から、しかしそれ故にあらゆる無駄を削ぎ落した上段からの打ち込みを、足捌きのみでクロムは回避する。すぐ横の空気が斬り裂かれ、衝撃が頬を打つ。怯むことなく、クロムが抜いた刀【紅憑摸】を横薙ぎに抜き放った。
 これに鏡は素早く反応。返す刀の軌道を変え、彼女の一撃を捌いてみえた。こちらの切っ先を跳ね上げ、逆に空いた腹に刃を向ける。
 しかし、腹を両断したはずの金色の影は、瞬き一つで揺らめく。
「こちら」
 掻き消えた彼女の姿を突き破るように、本物のクロムが刃に炎を纏わせ斬りかかった。
 先程までのクロムの姿は、相手の意識に影響する結界と、自身の炎から生み出す陽炎により生み出した虚像だ。自身の位置を少しだけ誤認させ、攻撃の軸をずらし致命の一撃を回避した。
 もっとも、それもただの誤魔化し程度。
 現に、彼女の着物は胴の部分が薄く裂け、赤い染みを作り始めていた。回避が叶わぬほど、鏡の攻撃は鋭かったのだ。同じ手はそう何度も通じはしないだろう。
 けれど、もっと。と、クロムの中で呼ぶ声がする。
 彼女は識っている。太刀と匕首を扱う鏡の、もう一つの戦い方を。修羅の戦場の中で振るわれた、あの変幻自在の太刀筋を、垣間見てしまっている。
 だから、クロムの中の修羅が求めてしまった。
 
「――鏡さん、全力で戦ろ」

 吐き出された声は甘く、深く、鬼を更なる血戦へといざなう。
「それとも。『荒咬』出さす、手抜きで終わらせるつもり?」
 
 そんなつまらない死合いを、所望するのか、と剣狐は囁いて。

(面白い。自ら、更なる破滅を望むか)

 その声に応えたのは彼女の中に棲む骸の海。

「ク、ハハッ――」

 しかし低い哂いを浮かべ、匕首の代わりに二振りの小太刀を握り直したのは、一体どちらのものだろう。

 猛る鉄は未だ熱く、醒めることは無い。


 【流水紫電】、最大決起。
 足に紫電と蒼い粒子を舞わせ、クロムが大地を駆ける。その後を追うように、鏡の小太刀が跳ねまわる。
 二刀流形式的にいうが、鏡の得物は形状として極めて異質だ。柄尻から伸びた細い撚線は、或る時は二刀を一つの武器に、またある時は首だけで飛び得物を喰らうような牙へと変幻自在に変えていく。
(……荒咬は斬魔鉄)
 目まぐるしく変化する彼女の間合いから逃れ続けながら、クロムは彼女の刀、その鉄の特性を思い出す。折れることも曲がることもない、しかししなやかで固いそれは、下手に打ち合えば、憑紅摸ごと斬るほどの鋭さを持つ。故に、今は回避に徹するしかない。
 息が切れる。鏡の速さがまた上がる。避けきれなかった攻撃が血を流させ、クロムの体力をじわじわと削っていく。それでも、たとえ両足が千切れたとしても、足を止める訳にはいかない。
 だから、躱しながら、クロムは零れる血を自身の太刀へと吸わせた。
 己の命を喰らい、さらにその劫火が猛る様に。次の打ち合いで、彼女の刃を全霊で受け止められるように。
 息を詰める。手の中で大きくなった炎が熱波を生み出す。それを認めて、クロムは踵を返す。そして、己の首を刈ろうとする十字の一撃を、受け止めて――。
 
 撥ね上げられたのは、劫火散るクロムの太刀だった。
 
「あ……」
 青い瞳が驚愕に見開かれた。
 敵の武器を弾き、勝利を確信した鴻鈞道人が鏡の躰を食い破る。その血を代償に一撃に渾沌の諸相を込められる。
 瞬き一つの後、それは此の身を貫き、四肢を斬り裂くだろう。

 しかしクロムの手の中には、
 
「化かすは、狐の十八番」

 ――脇差、【無銘左文字】が、在った。
 
 クロムが身を捻る。脇差を鞘に納めたまま掲げ、骸の海へと引き摺り込む一撃を強引に受け止めた。
 衝撃に骨が砕ける。彼女の囲む様にして生えた触手が肉を削ぐ。瞬く間に金色の毛並みが朱へと染まる。

 それでも、このひとたびを。
 この絶技を捧げ、この血戦を終いとす。
 
 気配も、殺気も。全てを無とし放たれる抜刀術。
 
 首落つ一閃が彼女を横切り、そしてその身体に、紅い赤い花を咲かせた。
 
「……流石に、友の魂まで斬れないから、ね」
 
 直後、斬らぬようにとすれ違った一瞬で弾き上げた匕首が彼女の直ぐそばに落ちる。
 うつくしい銀を湛えるその刃に傷一つないことを見届け、クロムはそっとその場に膝をつくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

早乙女・翼
不思議さね…正直脳味噌沸騰しそうな程、頭に来てるのにさ
妙に冷静に魔剣を喚んでる自分がいる
怒りを通り越すってこういう状態なのかな

意識が奪われてても肉体が鏡で、武器も彼女のものなら、その戦い方は普段と大きく変わらないだろう
とは言え、鏡の戦いっぷりを目の前で見たのは二回、か?
もうちょいしっかり見ておくべきだったなぁ
片刃剣と両刃剣じゃ剣技自体違うけどやるしかねぇんだよな、と腹括って

向こうの高威力の攻撃は出来うる限り見定め、剣にて受けとめ
多少食らっても仕方ない…腕は間違い無く向こうが上だ
俺の足りない技術を補うのは機動
羽にて飛び、舞い、立体的な動きにて戦おう

部位を代償にした攻撃、長くは持たないだろう?
手首の包帯解きUC発動、同時に黒変する髪と羽は真の姿の片鱗
鎖を伸ばし、楔を鏡の四肢に放つ
貫くか巻き付いて動きを止め、炎で中の悪しき者を浄化してやる

斬るか、失うか――二度目だ、主が残酷な選択肢を俺に与えるのは
今度は、斬る。ぶった斬る
もう二度と失わないと願い、誓った
鏡を返せと叫びながら最後の一太刀を放とう



●見届けよ
 自分の心が奇妙な程不気味にに凪いでいることを自覚しながら、早乙女・翼(彼岸の柘榴・f15830)はその光景を見ていた。
 腹を深く切られ、小太刀を取り落とし鏡が、足元に転がる己の本体を拾い上げていた。
 彼女の手の中で刃は冷たく、鋭利な鈍色を湛えている。しかしそれとは対称的に、鏡自身の躰は赤と白で歪に歪められている。幾度も負われた傷と、彼女の躰から生える白き異形の部位。特に、鴻鈞道人により支払われた代償により、既にその肉体は半分は異形となり果てていた。
 その姿に、ちり、と炎の如き感情が翼の脳裏を焦がすのを感じる。
「不思議さね……正直脳味噌沸騰しそうな程、頭に来てるのにさ」
 それでも心の中の様相は変わらず静かな湖面のまま。静かに、淡々と、しかし恐ろしい程激しい感情のままに、敵を倒す為の力を喚んでいる自分がいた。
「怒りを通り越すってこういう状態なのかな」
 翼の呼びかけに応え手の中に納まる魔剣を握り、静かに息を吐く。余分な力を抜き、五感を研ぎ澄ます。激情とは裏腹に身体は驚く程素早く戦闘状態へと切り替わっていく。
 構えは腰を低く落とし、剣を正面に。どんな動きにも対応できる、同じ剣士を相手取る時の基本の構え。
 意識が奪われていたとしても、肉体が鏡自身のもので、武器もまた彼女のものであるのなら、その戦い方は普段のものと大きくは変わらない筈だ。
(――とは言え、鏡の戦いっぷりを目の前で見たのは二回、か?」)
 一度は剣舞を織り交ぜて調べを刻みながら、もう一つは、彼女の背中から、鬼女と大立ち回りを演じて見せたもの。付き合いはそれなりのはずだが、思い返せばそれだけだ。
 ああ、こんなことならもうちょいしっかり見ておくべきだったな。なんて後悔しても、今更時を戻る事なぞ出来やしない。
 そもそも片手剣と両刃剣では剣技自体が根底から違うのだ。
 技術も、経験も、足りないのもは百も承知。
「けど、やるしかねぇんだよな」
 そう呟き腹を括る翼の眼に、迷いは欠片も無かった。
 
 
 稲妻が如き速さで鈍閃が眼前へと迫る。
 僅か一足でこちらとの距離を詰め、さらには己の懐に潜り込んできた鏡の速さに息を呑みながら、振るわれた匕首の刃を魔剣で受け止める。直後、腹部に衝撃と激痛が走り、空気の塊を吐き出した。見れば異形にその殆どを覆われつつある片足が己の腹にめり込んでいる。
「っのッ……!」
 折れそうになる膝を気力で奮い立たせ、赤い両翼を広げる。突風が彼女の身体を打ち、怯んだ隙に風を掴み、彼女の刃の届かない空中へと退いた。
 全うな剣術を使うかと思えば変幻自在の小太刀二刀を、さらには匕首、徒手までもを交えてくる。意識は無くても癖の強さは健在らしい。
「多少喰らっても仕方ない、か」
 腕は間違いなく相手の方が上だ。ならば翼は、彼女が持たざるものを、羽による立体的な機動を以って、足りない技術を補うしかない。
 魔剣を構え、遥か上空から翼が急降下する。その速さを捉え、鏡が上空を睨み匕首を構えた。
 彼女の肉体が軋み、異形化が進む。匕首の刃がぬらりと光り、渾沌の、全てを飲み込む白を宿しこちらを覗き込む。
 もはやそれ自体が一つの凶器となり果てた肉体が地を蹴りあげ、滑り落ちてくる翼との距離をぐんと縮めた、その時。
「そうは行くかよ」
 直前で動きを止め、向きを変えた。
 刃が触れる寸前で止まり、再び距離が離れる。しかし、追従してきた触手が跡を追い、逃れることを許さない。掠った両翼から羽根が散り、激痛。それでも、無数に迸るそれを掻い潜り、翼をより深い赤に染めながらも再び鏡との距離を詰めにかかった。
 彼女の異形化は未だ止まっていない。最後に残していた右腕が、白き羽を携えたばけものそれへと変わっていく。その先匕首を取り込んで、悍ましき様相のまま此方の心臓へと伸びて。
 己の剣を胸の前に翳す。刃と刃がかち合う。逸れた軌道が翼の胸から肩に突き刺さる。
 ――けれど、そこで終わりだ。
「部位を代償にした攻撃、長くは持たないだろう?」
 その口元を自身の血で朱に染め、刺さった刃を握りしめて、翼は手首の包帯へと指をかけた。
 度重なる戦闘で、彼女の肉体は限界まで損傷している。異形の能力はその代償に無限に使い続け、戦えるものではない。
 包帯を取り払い、傷痕から赤い血と共に炎と鎖を伸ばす。同時に黒く染まる髪と両翼は、自身のかつての姿の片鱗。それでも、まだ此の身は信仰を宿し、手の中の炎は清き力を宿したままであるから。
 放射状に鎖が放たれ、鏡の体を拘束した。楔が異形の四肢を貫き、内側で燃え上がった炎が中の悪きものだけを浄化する。
 片手で魔剣を構え、翼は思った。

 斬るか、失うか――二度目だ。主が残酷な選択肢を己に与えるのは。
 
 前は、失った。一瞬の躊躇いが全てを奪い、真っ赤な光景の後に『彼女』の首だけが残って。どんなに嘆いても悔やんでも、それが返ってくることはなかった。

 だが、今度は違う。

「今度は、斬る。ぶった斬る」

 もう二度と失わないと願い、誓った。その為の力もある。選ぶ覚悟も持った。

 だから――。

「鏡を返せ……!」
 
 叫びと共に突き出した剣が、動けぬ鏡を貫く。そのままもつれ合う様に大地に激突し、翼は地面へと投げ出された。

 鏡は、と視線だけを巡らせば、直ぐ側で倒れる彼女の体からは異形の部位が消え去っていて。
 そうして――骸の海より湧き出し鴻鈞道人はついに、その活動を止めたのだった。



「面倒かけたな」
 ぽつり、と。いつの間に意識を取り戻したのか、鏡がそう口にする。
 あちこちに残る戦いの残滓。自分も周りも傷だらけで、ろくに動くことも出来ないが、鏡は何故か気持ちの良い笑みを浮かべていた。
 聞けば、ずっと見ていたのだという。いうことの聞かない意識と鴻鈞道人に縛られた意識の中で、戦いの様を。
「良い戦いだったぜ」
 けれど、彼女は至極当然の様にこういって口の端を歪めるのだ。
「今度は、“私”もちゃあんと、混ぜてくれよ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月01日


挿絵イラスト