17
殲神封神大戦⑱〜暗澹たる終焉

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑱

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#封神武侠界
🔒
#殲神封神大戦
🔒
#殲神封神大戦⑱


0




●破滅の未来
「俺は箱で在る為か、今が楽しければそれでいいという考えだが。己の身の振りや言の葉ひとつで、未来は大きく分岐するものなのだろうな」
 筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は、そう赤に青微か差す瞳を細めてから。話を聞きに来てくれた皆へと礼を告げ、予知の詳細を語り始める。

「封神武侠界の文化の祖とされる神、三皇『伏羲』の祠まで辿り着いたが。伏羲はオブリビオンとして蘇ってはいないようではあるものの、それでもこの祠は「無限の書架」と「さまざまな世界の言語や呪文」で満たされていて、恐ろしい魔力が充満している」
 そして祠の内部に刻まれている「陰陽を示す図像」。
 伏羲の発明したこれは、踏み入る者に未来を教えるとされていたが。
「だが今、祠はオブリビオンによって汚染され、「あり得るかも知れない破滅の未来」そのものが具現化し、踏み入る者を襲うのだという」
 あり得るかも知れない未来――踏み入ったものの心の中に密かに巣食う、破滅の予感。
 それが具現化され、そして襲い掛かってくるのだという。
 そんな「あり得るかも知れない破滅の未来」を乗り越える。
 これが今回、前へと進むために、猟兵がやるべきことである。
 力づくにねじ伏せぶち壊してでも、素直に受け入れてみても、全力で拒絶してもいい。
 泣き喚いても狂っても、逆に冷静に一度見つめなおしてでもいい。
 誰かに支えられ、誰かと声を掛け合ってでも構わない。
 最終的に、何らかの形で乗り越えて、先へと進んで欲しい。

「未来がどうなるかは、正直分からない。未来に待っているのは、希望か、もしかしたら絶望かもしれないが。今できることを、俺は成したいと思う」
 清史郎はそう柔く皆に微笑んでみせてから。
 掌に満開桜を咲かせ、伏羲の祠へと皆を送り届ける。


志稲愛海
 志稲愛海です。
 よろしくお願いいたします!

 こちらは1フラグメントで完結する「殲神封神大戦」の依頼です。
 確実に受付している期間は【1/25(火)朝8:31~1/27(木)朝8:30迄】です。
 追加冒頭はありません。

●プレイングボーナス
 あなたの「破滅」の予感を描写し、絶望を乗り越える。

●シナリオ概要等
 皆様の「あり得るかも知れない破滅の未来」が襲い掛かってきますので。
 それを乗り越え、先へと進んでいただく内容です。
 力づくに強引に否定してねじ伏せても、素直に受け入れてみても。
 全力で拒絶して泣き喚いても狂っても、逆に冷静に一度見つめ直してでも。
 誰かに支えられ、誰かと声を掛け合ってでも構いません。
 最終的に、何らかの形で、具現化した破滅の未来を乗り越えてください。
 シリアスでもカオスでもコメディでも血みどろでも、どんなノリでも大歓迎です!
 全年齢対象の内容であれば、皆様らしくご自由にどうぞ!
 お一人様ででも誰かと一緒でも、団体さんででも、お気軽にどうぞ!

●お願い
 同行者がいる場合は【相手の名前(呼称可)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入をお願いします。

 グループ参加の人数制限はありません、お一人様~何名様ででもご参加下さい。
 ですが、同行者が参加していない場合は返金となる可能性もあります。

 期間内に送っていただいた皆様は、可能な限り全員採用したく思っています。
 ご参加お待ちしております!
369




第1章 冒険 『八卦天命陣』

POW   :    腕力、もしくは胆力で破滅の未来を捻じ伏せる。

SPD   :    恐るべき絶望に耐えながら、一瞬の勝機を探す。

WIZ   :    破滅の予感すら布石にして、望む未来をその先に描く。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャオ・フィルナート
【虹星】

【破滅の未来】
争いで、或いは自分の氷の魔力の暴走のせいで周囲の人間が死ぬ未来
承知済で焦る事も無い

生まれた瞬間から化け物と呼ばれていた
俺を狙った奴らの争いに巻き込まれた者
無意識、或いは意識的に、自分で手にかけた者
俺に関わったら皆死ぬ
だから…仕事での付き合い以外、一切の関りを絶っていた
…双葉さん以外

ん……同じ

双葉さんの言葉は黙って聞き届け

…俺も…幸せには出来ない
いつか…双葉さんも殺してしまうかもしれない
それでも一緒に居たいなら
共に…地獄を歩む覚悟があるなら
俺に拒否する理由は無い

性格柄素直な伝え方は出来ないけど
親友として認めてるから
具現化した未来は二人分まとめて【蒼魔】で凍結

※恋愛知識無し


満月・双葉
【虹星】

【破滅の未来】
皆、僕のせいで不幸になる
死にかけた僕の身代わり
はたまた僕と共に追われて殺されていく

遠ざけなきゃ…でも出会いがあって
本音は語らず壁を作ってやばくなったら切り捨てて
そうやって生きてきたけど

シャオちゃんも同じ?

ねぇ…僕は残酷な奴だから
希望なんて語れない
君を幸せにするよ、一緒に幸せになろう、なんて僕の前では幻想でしかない
僕は不幸になっても構わない
そもそもきっと、僕は君を不幸にする
そばに居て、これから先もずっと
先は地獄しかなさそうだけど
一緒に居ようよ

やっぱり厭かなぁ…?



 汚染された三皇『伏羲』の祠を満たす恐ろしい魔力と、内部に刻まれている『陰陽を示す図像』。
 それらが視せる破滅の未来をただ、いつもと何ら変わらぬ様子で、シャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・f00507)は見つめていた。
 激しい戦火の中、暴走する氷の魔力。それにより、凍てつき死んでゆく周囲の人々。
 その中には知った人もいたかどうか、知らないひとだってきっといただろう。
 けれどもう、それすらも分からない。砕けて全部ただの氷片になってしまっているから。
 そしてそんな破滅の未来なんて承知済で、今更焦る事も無い。
「生まれた瞬間から化け物と呼ばれていた」
 ……俺を狙った奴らの争いに巻き込まれた者。
 ……無意識、或いは意識的に、自分で手にかけた者。
「俺に関わったら皆死ぬ」
 だからシャオは仕事での付き合い以外、一切の関りを絶ってきたのだ。
 けれど。
「……双葉さん以外」
 ちらりと藍の瞳を向けた、すぐ隣に在る満月・双葉(時に紡がれた忌むべき人喰星・f01681)以外は。
 それは多分、きっと――。
「皆、僕のせいで不幸になる。死にかけた僕の身代わり。はたまた僕と共に追われて殺されていく」
 ……またひとり、目の前で殺された。
 自分と関わったせいで不幸になる。眼前に人がるこれは絶望の未来だというけれど、過去にだって見た光景だ。
 双葉は目の前で具現化する己の絶望の未来を見つめながらも、さらに紡ぐ。
「遠ざけなきゃ……でも出会いがあって。本音は語らず壁を作ってやばくなったら切り捨てて。そうやって生きてきたけど」
 それからふと、隣にいる彼へと視線を移して訊ねる。
 ――シャオちゃんも同じ? って。
「ん……同じ」
 彼女の声に、こくりと小さく頷くシャオ。
 同じ。関わる人が不幸になって死ぬのも、だから人を遠ざけてきたことも。
 視ている絶望の未来だって、似た者同士。
 それに、分かっているのだ。
「ねぇ……僕は残酷な奴だから、希望なんて語れない。君を幸せにするよ、一緒に幸せになろう、なんて僕の前では幻想でしかない。僕は不幸になっても構わない」
 双葉はシャオへと向けた瞳をそっと細め、そして彼へと告げる。 
 ――そもそもきっと、僕は君を不幸にする、と。
 でも、それを分かっていたとしても……彼にだったら、不思議と言えるのだ。
「そばに居て、これから先もずっと。先は地獄しかなさそうだけど。一緒に居ようよ」
 そして小さく首を傾けてみせる。
 やっぱり厭かなぁ……? なんて。
 そんな彼女の言葉を、黙って聞いていたシャオだけれど。
 届いた声に、こう返す。
「……俺も……幸せには出来ない。いつか……双葉さんも殺してしまうかもしれない」
 目の前で具現化する未来で、自分のせいで死んでいく、この人たちと同じように。
 ……けれど。
「それでも一緒に居たいなら。共に……地獄を歩む覚悟があるなら。俺に拒否する理由は無い」
 シャオは、彼女の誘いを拒否しない。
 いや、性格柄素直な伝え方は出来ないけど……でも、認めているから。親友として。
 それにどのみちお互い、それぞれが視ている破滅の未来へと歩むのならば。
 地獄でも何でも、一緒に居てもいいかもしれないし。希望だの幸せだのを下手に口にするよりも、きっとずっと楽だ。
 だから、シャオは二人分まとめて、眼前の絶望の未来を凍結させる。
 だって、いずれ迎える未来だとしても――それはまだ多分、今ではないから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
破滅とは穏やかではない
動揺して泣きじゃくるかもしれん
じゃがそんな姿みるのも虚だけじゃから
ふふ、友には見せたくない姿じゃね

虚のおらんわし
いや、誰からも受け入れられずひとりのわし、か

汝がおらんなるのは確かにわしにとって絶望と言える
じゃが誰かが傍におってくれたら、汝がおらんなってもまともでおれるかもしれんと今は思える
ふたりきりじゃと思っておった頃とは違うよになってしもた

ひとりを耐えられるじゃろか
誰からも何からも見向きも心向けられもせぬあの頃のよになったら
あのわしは弱って死んでしまうようじゃな
うむ、そうなるじゃろな…

…いや、そうなってみんとわからんか
今は笑っていられるしの
あんなものすべて燃やしてしまお



 三皇『伏羲』の祠の内部に刻まれている『陰陽を示す図像』は、踏み入る者に教えるのだという。
 その者の未来を。
 そして汚染されても尚、伏羲の図像は未来を教える。
 踏み入る者の「あり得るかも知れない破滅の未来」そのものを具現化させて。
 ……破滅とは穏やかではない、と。
 終夜・嵐吾(灰青・f05366)は紡ぎつつも、祠へと踏み入る足を止める事はなく。
 右目の洞にて眠る愛し虚の主へと、戯れるように紡ぐ。
「動揺して泣きじゃくるかもしれん。じゃがそんな姿みるのも虚だけじゃから」
 ……ふふ、友には見せたくない姿じゃね、なんて。
 灰青の尻尾をゆうらり、虚は特別じゃよと言わんばかりに笑ってみせて。
 何も返らないけれど、でも虚もご満悦な気がして。泣きじゃくっても内緒じゃよ、なんて言っていれば。
 ふっと目の前を横切るのは、琥珀色の両目を湛えた灰青の妖狐。
 それが誰なのか、嵐吾にはすぐに分かった。
「……虚のおらんわし」
 けれどすぐに、こう続ける。
「いや、誰からも受け入れられずひとりのわし、か」
 右目が洞ではない自分。虚のいない自分。ひとりぼっちの自分であった。
 そして考えるまでもない。もしもここに、虚の主がいなければ。
「汝がおらんなるのは確かにわしにとって絶望と言える」
 右目の眼帯にそっと触れつつも、嵐吾はそう紡ぐけれど。
 でもその感情も、昔とは、ちょっと違っていて。
「じゃが誰かが傍におってくれたら、汝がおらんなってもまともでおれるかもしれんと今は思える」
 それを嵐吾自身も自覚しているのだ。
 ……ふたりきりじゃと思っておった頃とは違うよになってしもた、って。
 けれどそれは、ふたりきりではないと、今の自分が思えるようになったからで。
 眼前の灰青の狐を、破滅の未来に在る自分の姿を、嵐吾は見遣りつつも思う。
 ――ひとりを耐えられるじゃろか、って。
 でも始めてではない。知っている。本当のひとりぼっちを。
 けれど。
「誰からも何からも見向きも心向けられもせぬあの頃のよになったら、あのわしは弱って死んでしまうようじゃな」
 周囲には確かに人はいるのに、誰も灰青の狐のことなど気にも留めない。
 まるではじめから、そこに存在していないかのように。
 そして灰青の狐は人知れず、くるりとその身を小さく丸めて動かなくなる。
 それすらも、誰も気付きはしない。
 そんな破滅の未来を見つめ、嵐吾は呟きを零す。
 ――うむ、そうなるじゃろな……って。
 だって、知ってしまったから。ひとりぼっちじゃない、誰かと共に在る心地良さや楽しさを。
 だから昔のように、誰からも何からも、見向きも心向けられもされなくなったら、きっと――。
「……いや、そうなってみんとわからんか」
 嵐吾はそう左目の琥珀を細めてみせてから、掌に狐火を灯す。
 昔とも、眼前の破滅の未来とも、少なくとも今は違うから。
 虚だってちゃんとここにいるし、今は楽しいことや馬鹿なことをして笑っていられるから。
 ――あんなものすべて燃やしてしまお。
 だから……過去や未来がどうであれ。今が楽しければきっと、それでいい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コッペリウス・ソムヌス
眠りを司った夢見の神は
永遠に覚めない眠りについて
二度と未来ある現実を
観測することはありませんでした
めでたし、めでたし

……なんてね、
眠ってみる夢も
現実があるから描く夢も
表裏であるとオレは思うから
未だ永遠の眠りにつく気はないかなぁ
死とも呼ばれる其れを
厭う訳でもないけれど
もう少しだけ煌めくもの達を眺めていようか

だから、おやすみ
オレの描いた未来の夢物語よ
紅蓮に燃え尽き灰になったなら
次への糧となれたのだろうか



 帳の下りた夜のいろにふわりと揺れるのは、夢現のような砂色。
 そして、コッペリウス・ソムヌス(Sandmann・f30787)は綴る。
 眼前に現れた、絶望の未来の物語を。
 それはこの世界の文化の祖とされる神が告げる、あり得るかも知れない己の破滅の終焉。
 けれどコッペリウスは滔々と、その物語をかわりに言の葉で紡ぐ。
「眠りを司った夢見の神は、永遠に覚めない眠りについて。二度と未来ある現実を、観測することはありませんでした」
 めでたし、めでたし――。
「……なんてね」
 覚めぬ眠りについた眼前の夢見の神の時は、永遠のまま。
 当然戻りもしないし、そして進みもしない。
 夜の帳は下りたまま。
 過去も現実も未来もない時をいつまでも、ただゆらゆらと揺蕩うだけ。
 だけど、コッペリウスは思うから。
 眠ってみる夢も、現実があるから描く夢も、表裏であると。
 いや、眼前の未来を否定する気もないのだ。
「死とも呼ばれる其れを、厭う訳でもないけれど」
 いつか、眼前のような永遠が訪れるのだとしても。
 でもきっと今はまだ、その結末へと至るまでの、物語の途中だろうから。
「もう少しだけ煌めくもの達を眺めていようか」
 未来ある現実を観測するのもいいと、そう思うのだ。
 永遠の眠りへと夢見の神が身を委ねるのは、そのあとでも、きっといいだろうから。
 だから、夢見の神は、眼前の絶望の未來へと紡ぐ。
 おやすみ――オレの描いた未来の夢物語よ、と。
 はらりひらりと燃える頁が舞い落ちて、綴られし文字の炎で全てを紅蓮に染め上げながら。
 そしてコッペリウスは、砂塵の彼方に浮かぶ陽炎の如く揺らめき燃える、『あり得るかも知れない破滅の未来』を眺めつつも思うのだった。
 この未来の夢物語が、全て。
(「紅蓮に燃え尽き灰になったなら」)
 ――次への糧となれたのだろうか、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
破滅ね…。
まあいつか私にも来るかもしれないわね。

かつて呪いの言葉を吐いて死んでいった持ち主たちの怨念か。
それともその係累か。
そんなところじゃないかしら。

良いわよ。受けいれましょう?
何度砕かれようと、切り裂かれようと、それは私の背負った十字架。
黙って攻撃は受け入れる。

でもね。

「未確定な未来じゃ、足りないわ」

所詮仮想なのでしょう?
まがいものなのでしょう?
それじゃ足りないのよ。

だって私は。

「呪詛の宝珠なのだから」

私はたくさんの持ち主を今まで滅ぼしてきたのだから。
こんなのは絶望の名に値しないのよ。



 もう、何度だって過去に見た光景だ。
 三皇『伏羲』の祠の内部に刻まれている『陰陽を示す図像』。
 汚染されたそれが目の前につきつけてくる、眼前の破滅の未来は。
「破滅ね……。まあいつか私にも来るかもしれないわね」
 ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)はそう紡ぎながらも。
 改めて、藍と紫を湛える色の違う宝珠の瞳で、己の『あり得るかも知れない破滅の未来』を見遣ってみる。
 いや、ある程度、想像はできるのだ。
(「かつて呪いの言葉を吐いて死んでいった持ち主たちの怨念か。それともその係累か」)
 ……そんなところじゃないかしら、なんて。
 そしてたとえ、そうであったとしても。
 特に今更、驚くようなことでも動揺するようなことでもないから。
「良いわよ。受けいれましょう?」
 具現化して襲い掛かってくる破滅の未来の攻撃を、敢えてヴィオレッタは黙って受け入れる。
(「何度砕かれようと、切り裂かれようと、それは私の背負った十字架」)
 恨み言を言われるのは慣れているし。
 勝手に期待して願って祀り上げておいて、決して納得しているわけではないのだけれど、でも仕方ないと思うところもあるから。
 けれどヴィオレッタは、襲いくる破滅の未来へと紡ぐ。
 ……でもね、って。
「未確定な未来じゃ、足りないわ」
 そして眼前の光景を見ながら、大きく首を傾けてみせる。
 ――所詮仮想なのでしょう?
 ――まがいものなのでしょう?
「それじゃ足りないのよ」
 この未来はあくまでも所詮、『あり得るかも知れない』破滅の未来。
 そんな不確かなものでは全く足りないのだ。
 だって、ヴィオレッタは。
「呪詛の宝珠なのだから」
 破滅の未来を、むしろ自分は所有者達に与えてきた方で。
「私はたくさんの持ち主を今まで滅ぼしてきたのだから」
 だからこの程度の破滅の未来なんて、ヴィオレッタにとっては何てことない。
 ――こんなのは絶望の名に値しないのよ、って。
 ヴィオレッタは呪詛の宝珠であり、そして、人々にとっての希望の宝珠でもあるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尾守・夜野
■ワンダレイ
名前左側呼び捨て
除く凌牙
■破滅(ギャグ)
第X次俺大戦という主人格の押し付け勃発

「何で俺だけ表にでにゃならん!てめぇが表にでろよ!」
メンタルやられると起き、大体俺が負けてる
精神的にぶっ殺しまくり最後に残ってるのが貧乏籤
それが可視化した

「…は?」
女性人格の私とコミュ障・人嫌いの僕を旗頭に数人(格)でチーミングしてきた
「うわぁ!?畜生!」
あっちが勝ったらストレス性胃炎で破滅確定の為嫌だが勝ちにいく

なお誰も主人格になりたくないし見た目に違いない
差は言動だけ故俺がどれか判断つかないと思う
「は?バルタン?!って寝てるのもいるし!そして凌牙それは俺じゃねぇ」

最後纏めてリーゼロッテに吹っ飛ばされる


地籠・凌牙
【ワンダレイ】アドリブ歓迎
破滅?破滅なあ……
俺の根底が報讐者であるからいつどこで来るかわかんねえが……一つ言うならだ。

今のこの状況がまさに破滅なんだよなァァァ!!!!(圧倒的ツッコミ不足の破滅)
何この大量のバルタン!!!バルタンズじゃなくてバルタンなの!?
てかリリー先生さっき囚われてなかったっけ!?
アスカ待って俺が車線上にいるから轢き逃げ開始はちょっと待って!!!怖いのわかるけど落ち着け!!
あと夜野と夜野の人格たちは喧嘩すんな!収拾つかなくなるからやめなさい!!!!

ああもうここにはボケしかいねえのか畜生!!!!上等だ【指定UC】発動して破滅ごとツッコミ返してやらァ!!
その破滅をぶち転がす!!!


アスカ・ユークレース
【ワンダレイ】アドリブ連携歓迎
破滅(ギャグ)
大量発生した幽霊に追いかけられ半泣きに
だってお化けって物理的な防御とか全部すり抜けてどこまでも追いかけて来るのよ?!通常攻撃無効なのよ?!滅茶苦茶怖くないかしら?!

対策
概念等物理攻撃が効かないものを撃つことに特化した照手紅で清めの塩弾を撃ちまくって弾幕攻撃
挙句の果てにUCで強制睡眠、文字通りお眠り(成仏)していただく
バルタンやリリー先生の放った分身達とも交ざり人馬ならぬ人羊入り乱れて大混雑
てか夜野端から見たら一人で喧嘩してるみたいで愉快な絵面だし?凌牙のツッコミがあるから何とか収拾ついてるけど……なんか幽霊とかどうでも良くなるくらいのカオスだわ


バルタン・ノーヴェ
【ワンダレイ】POW
アドリブ連携歓迎

HAHAHA!×300
何ということデショー!
全平行世界のバルタンが集結するとは!
いわゆるアメリカンなコミックヒーローが終結するア●ンジャーズ映画のようなアレデス。
まさにバルタン・パンデミック!

制御不能のバルタンたちが、様々な奥義や権能や必殺技で、無差別級のバトルロイヤルに!
リリー先生の下僕になってるバルタン、凌牙殿を取り囲むバルタン!
夜野殿(どの人格!?)に加勢するバルタンに、アスカ殿の後ろにいるゴーストタイプのバルタンまで……!

ワタシが第六猟兵担当の、真のバルタンであることを証明しマース!
追い飯ならぬ追いバルタン。カモン、バルタンズ!
この破滅に対抗デース!


リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【ワンダレイ】【WIZ】
※アドリブ歓迎
※呼称:バルたん(f30809)

◆破滅?(深刻)
実家【N.S.I.】に捕縛
故郷はディストピア企業国家
幹部の娘も資材扱い

悪辣上層部&冷血身内に嘲笑され
改造・洗脳・拷問等で従順な人形に…

◆克服(カオス&コメディ)
出奔初期なら別だけど
今は手札や戦友が多くてね♪

【アゾット・ディヴィジョン】解放
カプセル大から増えた『ファン』2160万9体が
整然と【重量攻撃Lv100】で大暴れ♪

地下都市(幻)崩落後、皆の破滅も直進行軍で粉砕
凌牙さん、嫌な未来に付き合う事はないよ
今後も自由にイクだけさ♪

うーん…実に百鬼夜行だねえ、アスカさん
(下僕バルたんを撫でつつ夜野さんにテヘペロ♡)



 辿り着いたのは、封神武侠界の文化の祖とされる神、三皇『伏羲』の祠。
 その祠の内部に刻まれている伏羲の発明した『陰陽を示す図像』は、踏み入る者に未来を教えるとされていたが。
 オブリビオンによって汚染されてしまったことにより、祠に具現化するのだという――「あり得るかも知れない破滅の未来」そのものが。
「破滅? 破滅なあ……」
 地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)は足を踏み入れた祠の内部をぐるりと見回した後。
 ふっと溜息を落とし、そしてこう続ける。
「俺の根底が報讐者であるからいつどこで来るかわかんねえが……一つ言うならだ」
 今度は大きく息を吸って、そして目一杯力強く。
 ――今のこの状況がまさに破滅なんだよなァァァ!!!!
 全力で叫ぶ。それはもう、心の叫びのままに。
 そう……凌牙へと襲い掛かる具現化した未来。それは、圧倒的ツッコミ不足の破滅であった。
 いえ、だって、周囲を見回せば。
 まず、大量発生した幽霊に追いかけられ半泣きになっているアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)の姿が。
 そして何故か、×300になっているバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)。
 さらには、第X次俺大戦という主人格の押し付け合いが勃発している尾守・夜野(墓守・f05352)に。
 ひとり深刻な感じで捕縛されている、リーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)。
 それぞれの破滅の未来が展開されているその様こそ、まさに破滅なカオス以外のなにものでもない。
 ここはもう、自分が頑張るしかない。そう諦めた凌牙は腹を括ってひとり立ち向かう。
「ああもうここにはボケしかいねえのか畜生!!!! 上等だ、破滅ごとツッコミ返してやらァ!!」
 まさに『運命改竄』理不尽に抗いし怒れる者の糾弾を……えげつないほど容赦ないツッコミをもって。
 ――その破滅をぶち転がす!!!
 ということで!
 まずは、HAHAHA! と、めっちゃ響き渡っている×300のバルタンの声。
 これは一体どういうことなのか――。
「何ということデショー! 全平行世界のバルタンが集結するとは!」
 そう……全平行世界のバルタンが集結するという破滅の未来が具現化してしまったというのだ。
 というか。
「何この大量のバルタン!!!」
 早速、祠いっぱい溢れんほどの夥しいバルタンの数にツッコミを入れる凌牙であるが。
 そんな彼に、HAHAHA! と、どのバルタンか分からないけれど答えを返す。
「いわゆるアメリカンなコミックヒーローが終結する映画のようなアレデス」
 それは、人類を守るため最強ヒーローたちが集結した究極のチームのアレやソレやみたいな――まさに、バルタン・パンデミック!
「なるほど、バルタン・パンデミック……って、バルタンズじゃなくてバルタンなの!?」
 何となくバルタンの開設に頷きかけた凌牙は、すかさずノリツッコミ。
 いや、それよりも、何だか深刻な感じのリーゼロッテを救うのが先決かもしれない。
 なにせ、破滅の未来のリーゼロッテは、実家である【N.S.I.】に捕縛されているのだから。
 故郷はディストピア企業国家、幹部の娘も資材扱い、悪辣上層部や冷血身内に嘲笑されて。
 そして捕らわれたリーゼロッテは、改造・洗脳・拷問等で従順な人形に……。
「出奔初期なら別だけど、今は手札や戦友が多くてね♪」
 大人しく、全然なっていなかった。
『水銀騎・ファン、リーゼ様の仰せにより只今罷り越しました』
『はい、ご苦労さん。さて、今回は何処まで増やそうかね……?』
 刹那解放するのは、Op.NULL:AZOTH DIVISION.H――アゾット・ディヴィジョン。
 隠し持つ『増殖詠唱銀アマルガム・QSH』から召喚するのは、カプセル大から増えた『ファン』2160万9体!?
 そして整然と、重量攻撃Lv100で大暴れ!!
「てかリリー先生さっき囚われてなかったっけ!?」
「凌牙さん、嫌な未来に付き合う事はないよ。今後も自由にイクだけさ♪」
 何か深刻そうだったけれど自分さくっと克服した上に、また祠の密度が一気に高くなった展開の速さについていけないながらも、頑張ってリーゼロッテにツッこむ凌牙だが。
 いや、早く止めなければいけないのはむしろ、彼女であるかもしれない。
「お化け……!! こ、こないでーー!!」
「!?」
 半泣き状態な叫び声が聞こえたと同時に。
 祠にぶっ放されるのは、無数の清めの塩弾!?
 概念等物理攻撃が効かないものを撃つことに特化した照手紅で、清めの塩弾を撃って撃って撃ちまくって、弾幕攻撃をしまくっているアスカ。
 いいえ、それだけでは勿論ありません。
「癒したまえ赦したまえ祈りたまえ暗鬱たる過去の幻影よその眠り努めて覚めることなかれ」
 怖すぎて息継ぎなしで詠唱してアスカが召喚したのは、232体の羊の霊。
 そう……挙句の果てに強制睡眠、文字通りお眠りという名の成仏していただくべく『白羊の眠り』を発動させれば。
 300人のバルタンに、リーゼロッテの『ファン』2160万9体と交ざって、人馬ならぬ人羊入り乱れての大混雑に!
 いや、アスカが羊の霊さん232体を勢いよくお化けを蹂躙する勢いで放った方向には。
「アスカ待って俺が車線上にいるから轢き逃げ開始はちょっと待って!!!」
 まさに破滅!? 凌牙がいました。
「だってお化けって物理的な防御とか全部すり抜けてどこまでも追いかけて来るのよ!? 通常攻撃無効なのよ!? 滅茶苦茶怖くないかしら!?」
「怖いのわかるけど落ち着け!!」
 そしてアスカにツッコミつつも、彼女を宥めていた凌牙であるが。
 刹那、次に聞こえるのは、激しい言い合い……??
「何で俺だけ表にでにゃならん! てめぇが表にでろよ!」
「私は遠慮しておきたいわ」
「ボクも変わるの嫌だ」
「……は?」
 ひとりで激しく言い合っているのはそう、夜野である。
 いや、彼はひとりなんだけれど、ひとりではないのだ。
 メンタルやられると起き、大体俺人格が負けていて。
 精神的にぶっ殺しまくり最後に残っているのが貧乏籤――それが可視化した、彼の破滅の未来。
 さらに、女性人格の私とコミュ障・人嫌いの僕を旗頭に。
「うわぁ!? 畜生!」
 数人というか数人格? で結託し一致団結、チーミングしてきたのだ。
 でも、彼女らが勝ったらストレス性胃炎で破滅確定だから。
 嫌だけれど、勝ちにいく俺な夜野。
 そもそも、誰も主人格になりたくないし、見た目に違いはなく差は言動だけだから。
「あと夜野と夜野の人格たちは喧嘩すんな! 収拾つかなくなるからやめなさい!!!!」
「凌牙それは俺じゃねぇ」
「てか夜野端から見たら一人で喧嘩してるみたいで愉快な絵面だし?」
 俺人格の夜野がどれか、誰も全く判断つかないのであった。
 そして、判断はつかないのだけれど。
「HAHAHA! 表に出ろデース!」
 夜野殿の人格に加勢するバルタン。いや、どの人格に!?
「は? バルタン!? って寝てるのもいるし!」
 そこで夜野はようやく、300体のバルタンに気付く。
 もはや制御不能、様々な奥義や権能や必殺技で、無差別級のバトルロイヤルを繰り広げるバルタンたちに!
 リーゼロッテの下僕になっているバルタン。
 ひとりツッコミに奮闘する凌牙を取り囲むバルタン。
 夜野たちの喧嘩に首をつっこむバルタン。
 アスカ殿の後ろにいるゴーストタイプのバルタンまで……!?
 けれど、これは克服せねばならない破滅の未来。
 ということで!
「ワタシが第六猟兵担当の、真のバルタンであることを証明しマース!」
 刹那、この世界線担当の真のバルタンが展開するのは。
「追い飯ならぬ追いバルタン。カモン、バルタンズ! この破滅に対抗デース!」
『バルバルバルバル♪』
 そう、秘密のバルタンズ!!
「って、今度は120体のミニ・バルタン!? マジでいい加減にしやがれッつーのッ!!」
 アスカはさらにツッこむ凌牙の姿を見遣りつつも、傍に居るゴーストタイプのバルタンと思わず顔を見合わせて。
「凌牙のツッコミがあるから何とか収拾ついてるけど……なんか幽霊とかどうでも良くなるくらいのカオスだわ」
「うーん……実に百鬼夜行だねえ、アスカさん」
 そんな言葉に、下僕バルたんを撫でつつ、リーゼロッテも頷いてから。
 幻であった地下都市もすっかり崩落したから――皆の破滅も、直進行軍で粉砕!!
「え、ちょ……うわぁっ!?」
 最後纏めて吹っ飛ばされる(ひとりだけど)夜野たち。
 そしてそんな星になった彼に、リーゼロッテはテヘペロ♡
 物理で全て、夜野ごと大混雑なカオスを解消、皆の破滅を吹き飛ばしました!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千家・菊里
【わあ】
伊織の破滅といえば、やはりあれですかね

ふらふら浮気し過ぎて、ぴよこさんVS亀さんVS恋人宣言した炬燵――から生まれた暑(苦し)いヤドリガミ氏による三股修羅場で身を滅ぼす的な…

おや、俺だって今、伊織の余波を受け辛い破滅を垣間見たんですよ?

具体的にはですね
楽しみにしていた限定高級甘味が、伊織の修羅場の煽りで不運にもぐしゃりと潰れてしまい、見るも無惨な破滅の道を辿ってしまったという…

ええ、それはもうがーんとなってしょんぼりしました
でもほら、俺はくよくよしない性分が取り柄ですので
犠牲になったおやつは手厚く弔い、新たな限定高級甘味を探す決意を固め――持ち前の精神で(秒で)立ち直りました(きりっ)


呉羽・伊織
【わあ】
日頃から憑き纏うモンは多々あるが――さて、鬼が出るか蛇が出るか
えっ?何か違う方向に嫌な予感が過っ…

(――嗚呼、狐だ!鬼より蛇より厄介なのは狐だ!)
(あまりに惨い最悪の破滅に絶望した顔)
(思わず全てを虚無に還した顔)

(オカシイ――心を無にして絶望ごと消すって、シリアス最終手段ヨ?)

ハハハ~…
いや違うし炬燵はほわほわ美人だし!
あとオレはその気になればたぶんきっと一途だし…
オレは…希望を捨てないからな…!
(儚い希望の炬燵チャンに縋り何とか心を取り戻した!)

てかお前平然と図太い面したままだケド、大丈夫なの?


ソレ破滅したの菓子だよネ?
自分以上に菓子が重要なの…
あと全く絶望を感じない効果音ヤメテ



 予知に聞いた通り、辿り着いた三皇『伏羲』の祠を満たしているのは、恐ろしい禍々しい魔力。
 そして伏羲の発明した「陰陽を示す図像」は、踏み入る者に容赦なく突きつけるという――「あり得るかも知れない破滅の未来」を。
「日頃から憑き纏うモンは多々あるが――さて、鬼が出るか蛇が出るか」
 そう無駄に整った容姿に浮かぶ表情をきりりと引き締めた呉羽・伊織(翳・f03578)であるが。
「えっ? 何か違う方向に嫌な予感が過っ……」
 それも案の定、3行程度で終了。
 ……ぴこぴこ、ぴこぴこっ。
 眼前で揺れるもふもふな耳と尻尾に、思わず大きく瞳を見開く。
 そう、伊織の目の前に現れたのは。
 ――嗚呼、狐だ! 鬼より蛇より厄介なのは狐だ!
 狐が一匹、狐が二匹……そう驚愕している隙に、あっという間に狐に囲まれてしまう。
 そして、あまりに惨い最悪の破滅に絶望した顔をした後。
 思わず全てを虚無に還した顔をすれば、同時に消え失せる狐たち。
(「オカシイ――心を無にして絶望ごと消すって、シリアス最終手段ヨ?」)
 いや、具現化した狐は、虚無の境地に達して何とか払えたけれど。 
「伊織の破滅といえば、やはりあれですかね」
 絶望の未来を視て遠い目をしている伊織の瞳に映ったのは、また狐さん!?
 そして本物(?)の千家・菊里(隠逸花・f02716)は、彼の絶望の未来を大予想。
「ふらふら浮気し過ぎて、ぴよこさんVS亀さんVS恋人宣言した炬燵――から生まれた暑いヤドリガミ氏による三股修羅場で身を滅ぼす的な……」
 ちなみに、暑いは暑いでも、暑苦しいヤドリガミ氏です。
 伊織は先程何を視たかは絶対菊里には内緒にしつつも、乾いた笑いと共に紡ぐ。
「ハハハ~……いや違うし炬燵はほわほわ美人だし! あとオレはその気になればたぶんきっと一途だし……」
 そして、何とか心を取り戻すのだった。
 ――オレは……希望を捨てないからな……!
 儚い希望のイマジナリ炬燵チャンに縋って。
 それから現実逃避で気を取り直した後、ふと伊織は菊里に訊ねる。
「てかお前平然と図太い面したままだケド、大丈夫なの?」
 自分も視たように、きっと菊里も何かを視ているはず。
 だが、普段と何ら変わらないその様子に首を傾けるけれど。
「おや、俺だって今、伊織の余波を受け辛い破滅を垣間見たんですよ?」
 ふっと大きく溜息をついてから、菊里は口にする。
「具体的にはですね。楽しみにしていた限定高級甘味が、伊織の修羅場の煽りで不運にもぐしゃりと潰れてしまい、見るも無惨な破滅の道を辿ってしまったという……」
 それはそれは、とてもかなしげなかおで。
 そんな、菊里の絶望の未来を聞いた伊織は。
「…………」
 ほんのちょっとだけ、考えてから。
「ソレ破滅したの菓子だよネ?」
 どう聞いても、見るも無惨な破滅の道を辿ってしまったのは、限定高級甘味な気しかしない。
 けれど、菊里はこくりと大きく頷いて紡ぐ。
「ええ、それはもうがーんとなってしょんぼりしました」
「自分以上に菓子が重要なの……」
 そんな、思い出してはまた、がーんとなってしょんぼりしている狐に遠い目になりながらも。
「あと全く絶望を感じない効果音ヤメテ」
 そうツッコまずにはいられない伊織であった。
 そして伊織の言葉は勿論、いつも通りさくっとスルーしつつも。
「でもほら、俺はくよくよしない性分が取り柄ですので」
 がーんとなってしょんぼりしてしまった菊里も、絶望の未来を乗り越えたのだ。
「犠牲になったおやつは手厚く弔い、新たな限定高級甘味を探す決意を固め――持ち前の精神で立ち直りました」
 この祠を出たら早速、限定高級甘味との新たな出逢いを求めるべく。
 そうきりっと、秒で!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サン・ダイヤモンド
空間が、世界が割れている
亀裂の向こうからは黒い液体―骸の海が溢れ出し
足元を、全てを呑み込もうとしている

僕が佇んでいる
背から翼のような亀裂を生やし
肌を黒く染めた僕(外見真の姿+BP蝕)
その足元には黒に沈んだ黒い塊―誰よりも、何よりも大切な
ブラッド

ああ、あ、あああアア!!!

僕が世界の敵になっても
彼はきっと僕を見捨てない
そんな彼を僕は―、アイツハ

…赦さない
赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない
ユルサナイッ!!!!!

アイツの空っぽの瞳が
空間に浮かぶ眼が眼が眼がこちらを向いて

それがなんだ
大気切り裂く咆哮あげ全てを破壊(UC)

認めない
こんな未来は喰らってやる!!!


…ああ
これが起こり得る未来なら
僕は、一体



 辿り着いたそこは確かに、三皇『伏羲』の祠の内部であったはずなのに。
 ふと金の視線を巡らせた、サン・ダイヤモンド(黒陽・f01974)の瞳に映っている光景は。
 ――空間が、世界が割れている。
 そんな亀裂の向こうから溢れ出しているのは、黒い液体であった。
 足元を、全てを呑み込もうとしているそれは――骸の海。
 そしてその只中に佇んでいるのが誰か、サンにはすぐにわかったのだ。
 背から翼のような亀裂を生やし、その肌は黒く染まっているけれど。
 だって、それは……僕。
 間違いなく、サン自身であるのだから。
 そしてぽろりと、甘く熟れた果実がその掌から零れ落ちて。
 飲み込まれ跡形もなくなったその足元には――黒に沈んだ、黒い塊。
 そう……それは、何よりも大切な――。

 ――ブラッド。

「ああ、あ、ああ……あああああアアアアァァ!!!!」
 刹那、割れた世界に響き渡る絶望の音。
(「だって、彼はきっと僕を見捨てない」)
 たとえ己が世界の敵になっても、世界が敵になったとしても、どんな時だって絶対に、彼は。
 だから、サンは絶望に苛まれるのだ。
 それが分かっているからこそ。
(「そんな彼を僕は――、アイツハ」)
「……赦さない」
 刹那そうぽつりと、零れるように落とされた声。
 そしてサンは、大好きな黒を飲み込んだ、次々と溢れ出す厭わしい黒へと紡ぐ。
「赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない」
 ――ユルサナイッ!!!!!
 そんな自分を見ているのは、空間に浮かぶ、眼、眼、眼……アイツの空っぽの瞳。
 けれどそんな空っぽの瞳たちへとサンは吐き捨てる。
「それがなんだ」
 穢れ無き彼の心は、以前であれば、残酷な黒に飲み込まれていたかもしれない。
 でも、そんな眼前の破滅を、サンは破壊する。
「認めない。こんな未来は喰らってやる!!!!」
 Blood Soul――心の底から発した魂の叫びと共に生み出した衝撃波をもって、全部、全てを。
 そして、割れた世界も、亀裂から溢れる黒も、無数の空っぽの瞳も、目の前からは消え失せたけれど。
 確かめるように薬指に煌めく円環に触れながらも、サンはふるりと首を横に振る。
 祠に刻まれた「陰陽を示す図像」が具現化するのは、そう――「あり得るかも知れない」破滅の未来なのだから。
(「……ああ、これが起こり得る未来なら」)
 静寂が訪れた祠の中にひとり佇み、そしてサンは紡ぎ落とす。
 声にならない声で――僕は、一体、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベスティア・クローヴェル
シルヴィア(f00384)と同行

目の前に広がるのは凄惨な町並み
建物は崩れて火の手が上がり、逃げ惑う人々の悲鳴が聞こえる
そんな彼等を助けようと、見知った顔の猟兵達の姿が見える

そして次の瞬間、助けたかった友人達の、そして私が救うべきだった住人達の亡骸が積みあがる
一緒に転移してきたシルヴィアのことも忘れ、亡骸のそばにへたり込む

僅かでも普通のヒトのように生きてみたいと願ったから?

この場を彼等に任せてしまったから?

彼等の代わりに私が前に出てさえいれば、死なずに済んだのでは?

思い浮かぶ答えは自責の念ばかりで、それは違うと否定したいが否定しきれない
そうして見上げると、「私の為に生きれば良い」と言ってくれた友人の顔が見えた

あぁ、そうだった……
私にはまだ守るべき人がいる
それならば私のやるべきことはひとつだけ

そっとシルヴィアへと手を伸ばして立ち上がる

取り乱してごめんなさい。もう大丈夫
シルヴィアにも生きて欲しいなんて言っておきながら取り乱して、情けないね

それじゃ、行こう
そしてこの終焉は私達で覆そう


シルヴィア・ジェノス
ベスティア(f05323)と同行

転移の先は燃え盛る町
モノ言わぬ屍、響きわたる悲鳴
町並は私の故郷に似ていた
亡骸の中に、両親や故郷を出る時別れた恋人の姿がある

平和な時を暢気に生き続けた私にとってそれは恐ろしい光景
こんなの嫌、逃げたい何も見たくない
町を地獄絵図に変えた『敵』はとても強そうで私などでは太刀打ち出来るか分からない、そして目の前には座り込むベスティアさんの姿

このままじゃ彼女が死んでしまう
立って、戦って、そうしなければ…いえそうしたらそうしたで彼女は自らの命を削るような戦い方をするかもしれない
それも嫌

あんな敵を相手にするなんて怖い
この戦場の中に居続けるのだって怖い
怖い、逃げたい、嫌だ嫌だ
このままじゃ私も死んじゃう

あの子も死んじゃう
それはもっと嫌
私はあの子に生きてと言ったの、命を削り続けるようなことはしないでと言ったの

あの子を死なせない為にはどうすれば良い?
簡単よあの子と共に向かえば良い
一緒に立ち向かえばきっとやれるわ

一緒に戦いましょう、そして二人で生きましょう
未来を捨てちゃ駄目



 町が、燃えていた。
 脆くも崩れ落ちる建物からは火の手が上がり、ごうごうと炎が燃え盛り全てを飲み込まんとする中、逃げ惑う人々の悲鳴が聞こえる。
 凄惨――まさに眼前に広がるのは、絶望の光景であった。
 そしてこの街並みを、シルヴィア・ジェノス(月の雫・f00384)は知っている気がした。
 だって、自分の故郷によく似ていたから。
 それに……目の前に転がる、モノ言わぬ屍。
 その亡骸の中にシルヴィアは見つけていた。両親や故郷を出る時別れた恋人の姿を。
 けれど、まだ生きている者も存在する。
 そしてそんな彼等を助けようと立ち向かうのは、見知った顔の猟兵達の姿。
 だが刹那、ベスティア・クローヴェル(salida del sol・f05323)は赤い瞳を大きく見開く。
 容赦なくつきつけられたのは、未来を明るく照らす太陽のような生を望む彼女にとって、救いようがない絶望。
 瞬間――いとも呆気なく、さらに積み上がったのだから。
 助けたかった友人達の、そして自分が救うべきだった住人達の、亡骸が。
 ほんの数秒前までは、確かにいきていたのに。こんなにも簡単に、ただの肉塊でしかなくなる。
 そんな欠片の希望さえもない光景を前に、亡骸のそばにへたり込むベスティア。共にあるシルヴィアのことも忘れて。
 そして力なく膝をつきながらも、どうしても思ってしまうのだ。

 ――僅かでも普通のヒトのように生きてみたいと願ったから?
 ――この場を彼等に任せてしまったから?
 ――彼等の代わりに私が前に出てさえいれば、死なずに済んだのでは?

 思い浮かぶ答えはそんな自責の念ばかりで。それは違うと、否定したいが否定しきれない。
 平和な時を暢気に生き続けたシルヴィアにとっても、それは恐ろしい光景で。
(「こんなの嫌、逃げたい何も見たくない」)
 向けた視線の先を見ただけで、悟ってしまう。
 町を地獄絵図に変えた『敵』はとても強そうで、自分などでは太刀打ち出来るか分からない、と。
 同時に藍色の瞳に飛び込んできたのは、目の前で座り込むベスティアの姿。
 そして瞬間、シルヴィアは思う。
 ――このままじゃ彼女が死んでしまう。
 立って、戦って、そうしなければ……そう一瞬考えたけれど。
 でもすぐに、ふるりと小さく首を横に振る。
(「……いえそうしたらそうしたで彼女は自らの命を削るような戦い方をするかもしれない」)
 己を顧みず、万人の為に命を燃やし尽くす。戦うと立ち上がれば、ベスティアならばそうするだろう。
 けれど、シルヴィアは思うから――それも嫌、って。

 ――あんな敵を相手にするなんて怖い。
 ――この戦場の中に居続けるのだって怖い。
 ――怖い、逃げたい、嫌だ嫌だ。

(「このままじゃ私も死んじゃう」)
 どうしても思い描いてしまうのは、色濃く迫る絶望の終焉。
 そしてシルヴィアの口から、ぽろりと零れ落ちる声。
「あの子も死んじゃう」
 自分が死ぬことだって勿論、嫌だし怖いけれど。
 でも……目の前にいるベスティアが、死んでしまう。
(「それはもっと嫌」)
 それに、自分は彼女にこう言ったのだ。
 ……命を削り続けるようなことはしないで、と。
 だからシルヴィアは、一生懸命考える。
 ――あの子を死なせない為にはどうすれば良い?
 ベスティアも自分も、一緒に生きるためにはどうするべきか。
 そして……導き出された、答え。
(「簡単よあの子と共に向かえば良い」)
 ひとりでは到底敵いっこないし、ベスティアひとりでも命を削るような戦い方をするかもしれない。
 でも、自分達はひとりではないのだから、ふたりならば。
「一緒に立ち向かえばきっとやれるわ」
 紡いだ言葉が纏う響きはそう、希望。
 そして届いたその声に、ふとベスティアが視線を向ければ。
 ――「私の為に生きれば良い」。
 見上げた先、そう言ってくれた友人の顔があって。
「あぁ、そうだった……」
 ベスティアは思い出す。私にはまだ守るべき人がいる、と。
 だから、互いに伸ばしたその手をそっと取り合って。
「それならば私のやるべきことはひとつだけ」
 ベスティアは立ち上がる。やるべき事を成す為に。
「取り乱してごめんなさい。もう大丈夫」
 だって自分のすぐ傍には、一緒に生きたい、守りたい、大切な人がいるのだから。
「シルヴィアにも生きて欲しいなんて言っておきながら取り乱して、情けないね」
「一緒に戦いましょう、そして二人で生きましょう」
 そう続ける彼女に、シルヴィアもそう笑んで返してから。
 改めて確りと紡ぐ――未来を捨てちゃ駄目、って。
 諦めてしまったらそこで終わり。
 美味しいものだって食べられなくなるし、楽しいこと、綺麗なものを一緒に見ることだって、できなくなるのだ。
 でも、そんなのは嫌。
 これからもふたりで、色々なものをいっぱい食べて、沢山のものを見て、いっぱい笑い合って。
 ふたりで足掻いてもがいて、何としてでも、一緒に生きていきたいから。
「それじゃ、行こう」
 だからベスティアにも、もう迷いはない。
 轟き咲いては燃ゆる紅き光の刃を彩るように、太陽の如き白炎を左腕に纏わせる。
 手を取り合って一緒に――この終焉は私達で覆そう、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百海・胡麦
【焔硝】

刃交わしたせせらぎで、貴方はまじないをかけた
そのまんまオレを見てて。と
術はとうに解かれたけれど身も心も貴方に

護りの黒布
此処に貴方のくれた「紋章刺繍の袖飾り」が在る
宝物の片割れと
赤い実と白花は炎と己だと
「玉紅」貰うた彩…毎日嬉しゅうなる

イージー殿、貴方はこわいことがあると
それが今、己も襲う

硝子…常なら還り貴方を象り直す
もどらない
手足や刃となる呪いなのに
もどらない
怖がる貌が、透る硝子が
ヤだ…伸ばす手、腕と耳に何かが走り指が凍る
こわい胸裂かれ咽ぶ
一人に

ひとり貴方が——そんな最期許すものか
動け
全てを尽くせ

かつて幼い己は何も、触れる事も許されなかった
育ての親、薄灰と呼ぶ獣の妖
死んだ
アタシのいないところで
姿重なる

繰り返さない、目の前に貴方はいる

側に!!
走り、喉元、片割れの袖飾りを握れば
凍る指から炎
恵みを…UC使用

破魔の炎で本物の貴方を包む
己の熱を
愛しい香染、剣になど
生きて少しでも長く、真の望み
イージー殿、側に居て!!

門灯も護りの結界を

強く強く抱きしめる
形を思い出してくれまいか
砕けたは幻

近くに


イージー・ブロークンハート
【焔硝】
ぱき、と音が鳴る。
氷が割れる時の音に似ている。
硝子剣――この身に宿る硝子。呪い。心臓に宿り命を継がれて不老不死を得た祝い。
引き換えに、身体が全部硝子に変わっていく。
こわい。きっともうすぐ足から砕けるか溶けるかする。剣の一部になる。
顔を上げて、胡麦を見る。恐怖に満ちた顔で。
いちばんあり得る破滅の未来。
愛しい女を一人残して、硝子と成り果ててしまうこと。
彼女の顔が変わる。傷ついただけじゃない、焔の表情。
諦めのつかない、闘争の顔。
好きな表情。
笑いが、こぼれる。これは――かっこわるいとこ見せらんないよな。
駆け寄られて、焔がわけ与えられる。視界に入る門灯は、一緒に住んでる家のあいつら。
差し出す炎を貰うように、いや、彼女に貰ったコードで応える。失っていた体温を呼び戻しす彩雲の彩りは、目の前のひとの髪そっくりで。
飛び込むように、抱きつかれる。
近くに。
熱。
――ああ、自らの体を思い出す。
腕を動かして。回して。しっかりと抱きしめる。
あり得るだろう絶望を、振り払う。
うん。
側に居たい。



 燃え盛る焔と煌めく玻璃のいろが、まるで戯れ合うかのように。
 刃交わしたせせらぎで貴方にかけられた、まじない。
 ――そのまんまオレを見てて、と。
 術はとうに解かれたはずなのに、百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)の心はそれ以来、とらわれて熱く燃ゆるばかり……身も心も貴方に、と。
 護りの黒布、此処に在る小さな針子の手刺繍のワッペンだって、そう。
 袖を飾る貴方のくれた紋章刺繍には、美しき西洋七竈の白い花模様に実を象る赤のビーズ。
 これは宝物の片割れと、そして赤い実と白花は炎と己だと。
 それに、小さな白磁に入った彩りだって、いつも咲かせてくれるのだ。
 硝子のように輝く青を掬い取って纏えば、仄かに色づく紅。
(「「玉紅」貰うた彩……毎日嬉しゅうなる」)
 そしてつい先程女媧の祠で、負けじと互いの好きなところを語り合って。
 力強くも真っ正直な彼らしい想いの言の葉に頷いて、互いに頬を染めた……ばかりであるというのに。
 ぱき、と刹那鳴ったその音は――破滅のはじまり。
 それは、氷が割れる時の音に似ていて。
 イージー・ブロークンハート(硝子剣士・f24563)には、それが何を示すか、分かっていた。
(「硝子剣――この身に宿る硝子。呪い」)
 それにより、心臓に硝子宿り命を継がれて不老不死を得た、この身であるのだけれど。
 ぱきぱき、とさらに鳴る音。
 そして胡麦にとっても、分かったから。
(「イージー殿、貴方はこわいことがあると」)
 その音が彼にとって、何を意味するのか、どういう感情に陥るのか。
 そう――それは、恐怖。
 いや、何もイージーだけに限ったことではない。
 それが今、胡麦の心をも襲うのだ。

 ――もどらない。

 常なら還り、再びイージーを象り直すはずの硝子たちなのに。
 手足や刃となる呪いのはずなのに――もどらない。
 引き換えに、全部硝子へと変わっていく身体。
 そしてこれから自分がどうなってしまうのか、イージーは知っているから。
 顔を上げて、胡麦を見る。
 恐怖に満ちた顔で――こわい、って。
 きっともうすぐ足から砕けるか溶けるかして、剣の一部になるのだ。
 ――愛しい女を一人残して、硝子と成り果ててしまうこと。
 イージーにとって、いちばん「あり得る」破滅の未来である。
 そんな彼の、怖がる貌が、透る硝子が。
「ヤだ……」
 零れ落ちる声、伸ばす手。腕と耳に何かが走り指が凍る。
 けれど無情にも、ぱきぱきと鳴る音は止まらず。
 迫る絶望に、こわい胸裂かれ胡麦は咽ぶ。
 でも……一人に、と。
 上げた彼女の顔を、硝子に蝕まれながらも、イージーは確りと目にする。
 彼女の顔が変わる。それは傷ついただけのものじゃない、
「……ひとり貴方が――そんな最期許すものか」
 ――動け。
 ――全てを尽くせ。
 刹那、焔の如く宿り彩られるのは、イージーが大好きな表情。
(「かつて幼い己は何も、触れる事も許されなかった」)
 育ての親、薄灰と呼ぶ獣の妖。ふかふかで大きくて優しい父の如き存在。けれど、かれは。
(「死んだ。アタシのいないところで」)
 その姿が一瞬、ぱきりと音を立てる眼前の大切な人と重なるけれど。
 でも、違う。だって――。
「繰り返さない、目の前に貴方はいる」
 彼は今、自分のすぐ傍にいるから。
 だから胡麦は、繰り返しなどしない。
 ――側に!!
 動いて、抗って、全てを尽くすために。
 胡麦は走り、手を伸ばして握り締める。西洋七竈の赤と白寄り添う、もうひとつの、片割れの袖飾りを。
 そしてそんなすぐ目の前の彼女の表情を見れば、イージーに……笑いが、こぼれる。
 これは――かっこわるいとこ見せらんないよな、って。
 瞬間、凍る彼女の指から与えられる。炎と、そして恵みが。
 破魔の炎で胡麦が包むのは、本物の彼。
 己の熱を。愛しい香染、剣になど……生きて少しでも長く、真の望みをと。
「イージー殿、側に居て!!」
 その声と同時に視界に入る門灯は、一緒に住んでいる家のあいつら。それも護りの結界と成って。
 イージーも差し出される炎を貰うように、いや、それに応えるように。
 絶望の未来を染めかえ生み出すのは、彼女に貰った彩雲の彩り。
 体温を呼び戻すそれは、目の前のひとの髪そっくりで。
 彩雲のいろが目の前でふわりとたなびけば、飛び込むように、抱きつかれる。
 形を思い出してくれまいか、と……そう願う様に、強く強く。
 そしてイージーは感じる。近くに、熱を。
 じわりと溶かすかのように、彼女の体温が心が冷えた己のものと混ざり合って。
(「――ああ、」)
 イージーは思い出す。自らの体を。
 だから、腕を動かして、回して。そして……しっかりと、彼女を抱きしめる。
 形を、熱を、取り戻したその両腕で。強く強く、優しく。
 あり得るだろう絶望をイージーは振り払う。ひとりではない。愛しい彼女と、一緒に。
 そして、ぱきりと音を立てて砕け散ったのは、幻。
 胡麦の体中に宿っているのは地獄の炎だけれど。それは彼女にとって支えであり、離れられぬもので。
 ――近くに、と。
 ぎゅっと寄り添えば、その焔が身にも心にも、さらなる熱を互いに灯す。
 イージーも取り戻した熱と形を実感する様に、彼女をもっと己の胸に引き寄せて。
 うん、と頷いて紡ぎ返す――側に居たい、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

あり得るかも知れない破滅の未来?
そんな事思いもしなかった、嫌思わない様にしていた

真っ白な世界
誰も居ない、俺だけの世界に
色んな彩や入っていく、優しい子達…護りたいと思った子達

視界が白が紅へと染まっていく
溢れる真っ赤な血の海
目線の先に倒れてる子達
足元に居た小さな子、娘がこちらを哀しげに向けて
『パパ、どうして?』
僕の両手は紅く染まって
嫌だ嫌だ……また俺は同じ過ちを繰り返したのか?
この手でこの子達を娘を

ふっと手の温もりを感じる
嗚呼、この温もりはあの子だ
一緒に考えてくれる、一緒に居てくれる
大丈夫、大丈夫だ
えぇ、君のおかげで不安は消えました
ありがとうねぇと握り返して

こっちはルーシーちゃんの不安の世界
それは父親?
本物の父親では無い、そして君は喰べられる
ひょいと彼女を抱き上げて
にこり笑い大丈夫、大丈夫
そんな事はさせないよ
僕の大切な娘、あんな父親より君を愛してる

一緒に館に帰ろうねぇ


ルーシー・ブルーベル
【月光】

だいすきなひとができて
あたたかな場所があって
大事なものがふえていくと
同時に心のうちの怖さも増していくのね

世界が白から紅へ
倒れている人たち……これが
これがパパの恐れなの
けれどそれは皆の事を大切に想っている証でしょう?

ゆぇパパ!こっちを見て
大丈夫、わたしはここに居るよ
手をぎゅっと握る

ね、どうかあなたの怖いを無くすのに
ルーシーも関わらせて
いっしょに考えさせて
娘はだいすきなパパの事なら
百万力になれるのよ!

踏み出した先で
ブルーベル家の大人たちが居た
張り付けたような笑顔で言う

「いい子だね。」
「君の献身によって一族の神は次の代へ続いていく」
「さあ」「神様の食事の時間だ。その身を」

青い花蔓が絡まるブルーベルのお父さまが手招く
いえ、お父さまじゃない
青花の神様の仮の姿に過ぎないのでしょう
本物は、わたしが食べてしまったもの
それでも導かれるように爪先が向く
このあときっと食べられて、私は終わり
……いいえ
以前言って下さったもの
何かあったらパパが――わ!
ほら、来て下さった
わたしも愛してる、パパ

ええ
帰りましょう



 三皇『女媧』の祠からは、愛を語らなければ出られなかったが。
 三皇『伏羲』の祠の内部に刻まれている『陰陽を示す図像』は、踏み入る者達の未来を具現化させるのだという。
 未来は未来でも……「あり得るかも知れない破滅の未来」を。
 愛と破滅、それは一見、遠い存在同士に感じるけれど。
 愛というものを語って再認識したからこそ、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は思うのだ。
 ……だいすきなひとができて。
 ……あたたかな場所があって。
(「大事なものがふえていくと、同時に心のうちの怖さも増していくのね」)
 大好きな大事なものがたくさんになればなるほど、失う恐怖が付きまとい……時には、愛するが故に破滅への道を辿るかもしれない可能性を孕むのだと。
「あり得るかも知れない破滅の未来?」
 朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)はそう首を傾けてみせてから。
 ぐるりと、周囲を見回す――いつの間にか、真っ白になっている世界を。
(「そんな事思いもしなかった、嫌思わない様にしていた」)
 誰も居ない、自分だけの世界。
 そこにふと、色んな彩や子達が入ってきて、賑やかで鮮やかな世界と化してゆく。
 その子達は、優しい……護りたいと思った子達。
 けれど、彩られはじめていた白の世界が一変。刹那染まりゆくそのいろは、紅。
 溢れる真っ赤な血の海。
 ユェーは見開いた金の瞳で目線の先に倒れてる子達を見遣れば。
 ふいに耳に届く、声。
『パパ、どうして?』
 足元に居たのは、小さな子。向けられた青の瞳。
 そう……娘がこちらを哀しげに見上げていて。
 己の両手は、べとりと紅に染まっている。
 この紅は、そう――。
「嫌だ嫌だ……また俺は同じ過ちを繰り返したのか?」
 ユェーは血塗れの掌で顔を覆い、ふるふると首を大きく横に振る。
 また、同じ過ちを……この手で、この子達を娘を――。
(「世界が白から紅へ。倒れている人たち……これが。これがパパの恐れなの」)
 ルーシーが目にしているのは、ユェーも視ている、彼の有り得るかもしれない破滅の未来。
 彼の白の世界は今、残酷な紅のいろに染まっている。
 だがこれは、彼の心の現れ。
「けれどそれは皆の事を大切に想っている証でしょう?」
 大切だからこそ、愛しているからこそ、そしてその絶望を知っているからこそ。
 己の手で失くしてしまうかもしれないことを、失うことを恐れるのだ。
 それに、何よりも。
「ゆぇパパ! こっちを見て」
 ルーシーは紅に塗れた彼の手を、ぎゅっと確りと握り締める。
 ……大丈夫、わたしはここに居るよ、って。
 そしてユェーは、ふっと手の温もりを感じてその顔を上げる。
 だって、すぐにわかったから。
 ……嗚呼、この温もりはあの子だ、って。
 そんな顔を上げた彼の金の瞳を、真っ直ぐに見つめて。
 ルーシーは、想いを込めて紡ぐ。
「ね、どうかあなたの怖いを無くすのに、ルーシーも関わらせて。いっしょに考えさせて」
 ……娘はだいすきなパパの事なら、百万力になれるのよ! って。
 そう胸を張って、わらって。
(「一緒に考えてくれる、一緒に居てくれる」)
 小さくて温かいその手で握ってくれている己の掌を見れば、紅になんか染まっていなくて。
 ユェーは娘の姿を見つめ、そして口にする――大丈夫、大丈夫だ、って。
 それから、百万力で支えてくれた娘を見つめてから。
「えぇ、君のおかげで不安は消えました」
 ぎゅっと優しく確りと、小さなその手を握り返す。
 ありがとうねぇ、といつものように笑んで返しながら。
 そして白の世界も紅の世界もいつの間にか消え去り、先へと足を踏み出した……瞬間。
 ルーシーの目の前にいつの間にか居たのは、ブルーベル家の大人たち。
 それらは相変わらず張り付けたような笑顔で言う。
『いい子だね』
『君の献身によって一族の神は次の代へ続いていく』
『さあ』
『神様の食事の時間だ。その身を』
 そして――手招く、眼前の存在は。
「それは父親?」
 これは、ルーシーの不安の世界だとユェーは感じながらも、それを見遣る。
 青い花蔓が絡まるブルーベルのお父さま。
 けれど、ルーシーはふるりと首を横に振る。
「いえ、お父さまじゃない。青花の神様の仮の姿に過ぎないのでしょう」
 だって……本物は、わたしが食べてしまったもの、って。
 それでも導かれるように仮の青花の神様へと向く爪先。
 そしてルーシーは分かっていた。
 ――このあときっと食べられて、私は終わり、って。
 でも、それだけではなくて。
(「……いいえ、以前言って下さったもの。何かあったらパパが――」)
 刹那、ひょいっと抱き上げられる身体。
「――わ!」
「大丈夫、大丈夫。そんな事はさせないよ」
 ぱちくりと瞳を瞬かせれば、にこりと向けられる笑みが目の前に。
 本物の父親では無い、その青い花蔓が絡まる神様にルーシーが喰べられる、その前に。
 すかさずユェーはその腕を伸ばし、彼女をすかさず攫って。
 ルーシーも彼に確りと掴まりながら笑んで返す。
 ……ほら、来て下さった、って。
 言ってくれたから分かっていたけれど、でも、やっぱりとっても嬉しくて。
「僕の大切な娘、あんな父親より君を愛してる」
 告げられる言の葉に、こくりと頷いてお返しを。
「わたしも愛してる、パパ」
 そしてふたりは共に、祠を出るべく歩き出す。
 白や紅のひとりだけの世界でも、ブルーベル家の屋敷でもなく。
「一緒に館に帰ろうねぇ」
「ええ、帰りましょう」
 おかえりなさい、ただいま――大好きがいっぱい溢れる、彩夜の洋館へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
手の内にあるのは壊れたあの人の本体でもある花簪
目の前で、折れて砕けたそれを後生大事に持っているのに
それが『何』かも判らない

簪が折れて砕けたその瞬間
多分、俺の理性も記憶も心も……
何もかもが簪と一緒に折れて砕けたんだろう
それでも、簪を手放せないまま……

約束を果たせずにあの人を喪ったのに
まだ、約束を果たそうとして
あの人の代わりになろうとして
無辜の命の為にと、悪人に刃を振るう
正気の沙汰なぞととっくに失せた……穢れを纏う人殺し
いずれは正義の名の下に討たれる、壊れた鬼

確かにこれは、破滅だな
でもこれは……確実のものじゃない

受け入れながらも、抗う
ずっと一緒に居ると約束した
あの人が刃を振るう時、盾として隣に居ると誓った
盾として生きる以上
簪を壊させて、この破滅を呼びこんだりしない
逆に、盾だからと先に逝って、あの人を独りに戻したりもしない

あの人を『至る可能性』の先に居る
彷徨う鬼神、夜叉にしないと誓ったように
俺も、彷徨う鬼になりはしない

誓いは、あの人は……
いつだって、俺を俺で居させる唯一無二
だから、越えていける



 時を経ても、その花は鮮やかで美しくて。
 眼前に現れた『あり得るかも知れない破滅の未来』の自分は、今と変わらず、その花を見つめている。
 目の前で、折れて砕けたそれを――手の内にある、壊れたあの人の本体でもある花簪を。
 後生大事にずっと持っているのに。
 でも――眼前の自分は、それが『何』かも判らない。
 きっと自分はその時、鬼に成り果てたのだ。
(「簪が折れて砕けたその瞬間、多分、俺の理性も記憶も心も……何もかもが簪と一緒に折れて砕けたんだろう」)
 それでも、簪を手放せないまま……と。
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、それが何かも判らなくなっているのに、尚も愛し気に咲く竜胆を見つめる鬼を見遣る。
 そして、これから辿るだろう彼の、眼前の己の破滅を思う。
(「約束を果たせずにあの人を喪ったのに。まだ、約束を果たそうとして……あの人の代わりになろうとして。無辜の命の為にと、悪人に刃を振るう」)
 正気の沙汰なぞととっくに失せた……穢れを纏う人殺し。
 いずれは正義の名の下に討たれる、壊れた鬼。
 竜胆の花簪とともに、とっくに己の心も折れて砕けて壊れたのに……それでも尚、大切なそれが何か判らなくなっても。
 討たれるその日まで約束を果たそうと、刃を振るい続けるのだろう。
 あの人の分までと、血と穢れをその身に浴び続けながら。
「確かにこれは、破滅だな」
 倫太郎はそう呟きつつも、小さくふるりと首を横に振る。
「でもこれは……確実のものじゃない」
 あくまでも、辿るかもしれない未来のひとつにすぎないのだ。
 そして未来は一本道ではないし、それに、決めているから。
 ――受け入れながらも、抗う、と。
 有り得るかも知れない未来を否定せず、孕む可能性を受け入れながらも。
 でも、必死に全力で抗ってみせると。
 それは眼前の未来の自分のようなひとりぼっちでは、今の自分は決してないから。
「ずっと一緒に居ると約束した。あの人が刃を振るう時、盾として隣に居ると誓った。盾として生きる以上、簪を壊させて、この破滅を呼びこんだりしない」
 彼は自分の刃であり、同時に自分は彼の盾であるのだから。
 けれど、自分が彼の盾でずっと在り続ける為にも。
「逆に、盾だからと先に逝って、あの人を独りに戻したりもしない」
 先に逝くわけにはいかないし……独りになんて、させやしない。
 だから倫太郎の心は、破滅の未来をつきつけられても尚、揺るぎはしないのだ。
(「あの人を『至る可能性』の先に居る彷徨う鬼神、夜叉にしないと誓ったように」)
 ――俺も、彷徨う鬼になりはしない、と。
 それに彼と共に在れず、手元で咲く竜胆が何なのか判らなくなるなんて……そんなの、絶対に嫌だから。
(「誓いは、あの人は……いつだって、俺を俺で居させる唯一無二」)
 倫太郎はこれからも受け入れ、そして全力で抗っていく。
 何より彼と、いつまでも共に在りたいから。
 ひとりぼっちの壊れた鬼が消え去っていくのを見届けながらも、はっきりと紡ぐ――だから、越えていける、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スティーナ・フキハル
スティーナ口調

『お前はお姉ちゃんなんかじゃない、化け物!』
『あなたは正義を気取る怪物ですよ、ヒーローなんかじゃない』
『自分の方が闇だと気づかれなかったのですか?』
ミエリが、生き別れの姉ちゃんが、従者の狸がアタシを拒絶してくる
言ってることは正しいのかもしれないし、そういう別世界があるのかも……アタシがミエリに巣くう闇の方だって世界が

「お前がどれだけ必死にヒーローを気取ろうが世界は争いを止めてはくれない。
お前を無視して憎しみ合って痛みを見せつけ苦しめてくるんだよ」
アタシそっくりな声が背後から聞こえる

「あたし達の仲間になると言え。あたし達は……骸の海はお前の味方だ。
無数の世界を全て滅ぼして痛みを消そう」
後ろの気配がどんどん増えていく……目の前の皆が怯えてる

ああ、わかった。アタシはアタシの望みを叶える。
UCを使い真の姿になって振り向き後ろの気配に掴みかかる
「は? お前正気か!?」
化け物上等なんだよ、どんな姿でも結末でもアタシは皆の為に全力で頑張るんだ。

後ろの皆が安心して笑ってくれてる、気がする



 先程、女媧の祠で愛を語ったばかりだった。
 従者の狸に親に友達、行方知れずの姉……そして何より、自慢の妹に。
 けれど今、スティーナ・フキハル(羅刹の正義の味方・f30415)の前にいる大好きな人たちは。
『お前はお姉ちゃんなんかじゃない、化け物!』
『あなたは正義を気取る怪物ですよ、ヒーローなんかじゃない』
『自分の方が闇だと気づかれなかったのですか?』
 ミエリも、生き別れの姉も、従者の狸もみんな――自分を拒絶してくる。
 これでもかと拒絶の言葉を投げかけられるこの光景は、『有り得るかも知れない』未来なのだという。
 それを、スティーナは否定はしない。
「言ってることは正しいのかもしれないし、そういう別世界があるのかも……」
 ……アタシがミエリに巣くう闇の方だって世界が、と。
 それに、自分自身が一番よく分かっているのだ。
「お前がどれだけ必死にヒーローを気取ろうが世界は争いを止めてはくれない。お前を無視して憎しみ合って痛みを見せつけ苦しめてくるんだよ」
 ふいに背後から聞こえてきた、自分そっくりな声に言われなくたって。
 他人の痛みを自分の痛みとして頭の中で再現してしまう強い共感性。だから、背後の声が言うような痛みも避けてしまいたくなる、弱いヒーローだということなんて。
 そして、囁く様に誘う声。 
「あたし達の仲間になると言え。あたし達は……骸の海はお前の味方だ。無数の世界を全て滅ぼして痛みを消そう」
 刹那、後ろの気配がどんどん増えていって……目の前の皆が、怯えている。
 やっぱりヒーローなんかじゃない、正義を気取る怪物だ、お前の方こそ闇だ、と。
 けれど――だから、なんだ。
「ああ、わかった。アタシはアタシの望みを叶える」
 刹那、スティーナは己の姿を変じさせる。
 妖狐を模した姿となり、燃焼するオーロラを宿して……狐の姿の最強ヒーローに。
 そしてくるりと振り向いた瞬間、ぐっと後ろの気配に掴みかかる。
「は? お前正気か!?」
 痛いのは、いやだ。自分の弱いところだって、分かっている。
 けれど、それでも――戦場からは決して逃げないって、スティーナは決めているから。
 幼い頃憧れた、英雄達のように。
 どんなに、守りたい人達に化け物だと指をさされて拒絶されようとも。
 たとえ未来が自分にとって、破滅であったとしても。
「化け物上等なんだよ」
 スティーナは己の望みを叶えるべく、唆してくる声になんて惑わされない。
 ――どんな姿でも結末でもアタシは皆の為に全力で頑張るんだ、って。
 それが、ヒーローというものだから。
 そして自分を拒絶していた従者の狸も姉も妹も、眼前に広がっていた破滅の未来も、みんな消え失せて。
 三皇『伏羲』の祠を後にし先へ進みながらも、スティーナはふと背後を振り返る。
 後ろの皆が安心して笑ってくれてる、気がして。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月01日


挿絵イラスト