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殲神封神大戦⑱〜入相の鐘

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑱ #プレイング受付:1月25日〜1月30日23時

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#プレイング受付:1月25日〜1月30日23時


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●三皇『伏羲』の祠
 伏羲——それは、封神武侠界の文化の祖とされる神であった。オブリビオンとして蘇ってこそいないがその祠は既に『異常』を抱えていた。

●入相の鐘
「お集まり頂き感謝致します」
 常と変わらぬ様子で、そう告げたセイレーンの青年は、面倒な行き先になるのだと猟兵達に告げた。
「三皇『伏羲』の祠。伏羲がオブリビオンとして蘇っていない話は、既に届いているかと思います」
 問題は、その伏羲の祠にある。
「この祠は「無限の書架」と「さまざまな世界の言語や呪文」で満たされ、恐ろしい魔力が充満しています」
 ハイネ・アーラス(海華の契約・f26238)はそう言って、集まった猟兵達を見た。
「えぇ、分かりやすく言えば——えぇ、つよい、と単純に言った方が分かりやすいかと」
 祠の内部には、伏羲の発明した「陰陽を示す図像」が刻まれているのだ。
「それは、踏み入る者に未来を教えるとされていました。……ですが、祠は今やオブリビオンによって汚染されています」
 即ち、満ちていた力の在り方も変わっている。
「それは『あり得るかも知れない破滅の未来』そのものが具現化するというものです」
 襲いかかってくる『モノ』が何であるかは、足を踏み入れた猟兵にしか分からないだろう。そして具現化している以上、それらは正しく命を狙ってくる。
「心の臓へとナイフを突き刺すか、首を切り裂くか。仔細は俺には知り得ませんが……えぇ、思い描く人によれば、〆切りが近いやら、大切な日に寝坊したなどというものの可能性もありますとも」
 ですが、とハイネは告げる。そのどれもが、猟兵に襲いかかる命を奪わんとしてくることを忘れないで欲しいと。
「では、参りましょう。我らが航路へと」
 乗り越えるために向かうのだと。
 微笑んで告げて、ハイネはグリモアの光を灯した。


秋月諒
秋月諒です。どうぞよろしくお願い致します。

このシナリオは戦争シナリオです。一章で完結致します。

●プレイング受付について
 1月25日8:35〜

 プレイングボーナスに対応している方、ソロ参加を比較的優先するかと。
 書きやすいものを書いていく形です。

 0時を過ぎる場合は翌日の8:31〜だと締め切り的にハッピーです。

 状況にもよりますが全員の描写はお約束できません。
 予めご了承ください。

●プレイングボーナス
=============================
あなたの「破滅」の予感を描写し、絶望を乗り越える。
=============================


●同行について
 戦争という形式上、複数の参加はお二人までとさせて頂きます。
 プレイングに【名前+ID】若しくは【グループ名】を明記してください。

 プレイングの送信日は統一をお願い致します。
 失効日がバラバラだと、採用が難しい場合がございます。

 それでは皆様、ご武運を。
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第1章 冒険 『八卦天命陣』

POW   :    腕力、もしくは胆力で破滅の未来を捻じ伏せる。

SPD   :    恐るべき絶望に耐えながら、一瞬の勝機を探す。

WIZ   :    破滅の予感すら布石にして、望む未来をその先に描く。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 わたしの死なんて、あんまり考えたこと無かったわ。考えちゃったら、現実になっちゃいそうで。でも、いつかは向き合わなきゃいけないわね。

 入った途端、周りが一気に燃え出す。故郷が滅んだ日にも見た悍ましい緑がかった炎、何度振り払っても熱が纏わりつく。怖い、怖い!

 炎の痛みを〈激痛耐性〉で耐えて、〈落ち着き〉を取り戻してパニックから立ち直るわ。そうしたら【UC:裁きの冬、来たれり】(WIZ)を発動、永久凍土の冷気で炎を鎮めるわね。

 怖いけど、逃げたくない。逃げて何もできなくなる方がもっと怖い。だから、先に進んでみせるわ。泣き虫で何も出来なかった、昔のわたしとは、もう違うんだから!

(アドリブ等大歓迎)



●氷華舞う
 ——その気配を、どう表するのが正しかったのか。足先に感じる冷えた空気、凍てつく冬のそれとは違う不可解な冷気に娘は瞳を細めた。
「わたしの死なんて、あんまり考えたこと無かったわ」
 ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は、ほう、と息をつく。あの頃、万年雪と絶望に覆われた村にあって、少女は唯一の希望と言われ、そうして——……。
「……」
 一度だけゾーヤは瞳を伏せる。祈るように短く、十字をきる代わりに手を強く握る。
 村は領主によって滅ぼされた。希望の名を聞いたのか、将又気まぐれであったのか、滅ぼす程の意志を持ってか。村はその姿を失い——あの日、ゾーヤは行く当てもない旅に出た。
「考えちゃったら、現実になっちゃいそうで」
 吐息ひとつ、零すようにしてゾーヤは呟く。
 あの日からずっと、今日まで生きて、生き延びてきた。日々を過ごしてきたのだ。
「でも、いつかは向き合わなきゃいけないわね」
 三皇『伏羲』の祠は『あり得るかも知れない破滅の未来』を具現化させるという。
 いつまでも避けてはいられない。コン、とゾーヤは一度踵を鳴らす。すぅ、と息を吸う。真っ直ぐに前を見れば、そこに儚げな——憂いを帯びた娘の姿は無く、ほんわかとしたいつものゾーヤがあった。
「——行こう」
 自分にそう告げるようにして足を進める。一歩、二歩、踏み込んだ先、三皇『伏羲』の祠は足音を殺していく。
(「飲み込んでいってる……?」)
 違和は、あった。妙な力の蠢き。直感的に『何か』の存在を感じたのは聖女が故か。す、と瞳を細めた次の瞬間——熱が、視界を覆った。
「——!」
 火、だ。見渡す限り、全てが燃え上がる。パチパチと弱い火などではない、轟々と唸る炎は獣の咆吼にさえ似てゾーヤの足元を、見えていた筈の壁を燃やしていく。何もかも燃やし尽くしても足りないとばかりに。
「……ぁ」
 ひゅ、とゾーヤは息を飲む。燃え盛る炎が、頬に影を落とす。その色彩を、その熱をゾーヤは知っている。
(「あれは、あの炎は……」)
 故郷が滅んだ日にも見たもの。悍ましい、緑がかった炎。火の粉さえ淡く緑を帯び、頬に影を落とす。気がつけば足に、肩に炎が這い上がってきていた。
「やめ……ッ」
 痛い、と思う。痛い、熱い。何より——。
(「怖い、怖い!」)
 喉の焼けるような感覚に、声が掠れた。袖を払っても衣を叩いても火が消えない。あの日、故郷を焼き尽くしたように、緑の炎が肌を焼く。ぐらり、と揺れた体を——だが、ゾーヤは支えた。
「——おち、ついて。落ち着いて」
 踏み止まるように蹈鞴を踏む。地を叩く足で、自分を取り戻す。痛みに、熱に耐えるようにして顔を上げる。
「怖いけど、逃げたくない。逃げて何もできなくなる方がもっと怖い」
 心亡きものには痛みを、心清きものには癒しを。
「だから、先に進んでみせるわ」
 祈りを捧げる聖女の髪が揺れる。肌を撫でた炎が永久凍土の冷気に祓われていく。進む為の足を、掴むための手を奪おうとしていた緑の炎が消えていく。
 その冷気こそ、裁きの冬の証。
 永久凍土を招きし祈りは、今、あり得るかも知れない破滅の未来を完全に鎮めていく。
「泣き虫で何も出来なかった、昔のわたしとは、もう違うんだから!」
 真っ直ぐに前を見て、嘗ての自分に告げるように破滅の未来そのものに、ゾーヤはそう言った。キィン、と甲高く響いた音と共に、熱は消える。炎は散る。それこそ、三皇『伏羲』の祠に満ちた汚染された力を打ち払った証拠だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

阿夜訶志・サイカ
破滅?
俺様が怖れるもんなんぞ……ア?

こいつァ、締め切りの具現化か?
取り立て屋と雁首揃えやがって。
俺様を脅かそうなんぞ、百年早ェ。そもそも捕まりゃしねぇ……って。

まさか一瞬で取り囲まれるとはな。
俺様も年貢の納め時ってか、ア?原稿?借金?
ケッ、無い袖は振れねぇなぁ?

構えやがって、無いなら俺様の中身でも持っていくつもりか?
ハハ、良い度胸だ――わざわい尽くしの神様の中身か。

いいぜ、即興で創ってやろうじゃねえか。
この言の刃で紡ぐは凶兆。
破滅の未来なんぞ、いつも渡ってきた。創ってきた。

破滅とやらの攻撃を受けながら、報復してやろう。
有刺鉄線で雁字搦めに、此所で縛り付けてやる。
後は逃げるが勝ち、ってな。



●ラスト・ライド
 そこは、正しく不可解な地であった。奥へ、奥へと続くように広くあるようで同時に上にばかり伸びている気もする。見上げたところで、この手の場所に真っ当な天井などありはしないのだろう。
「破滅?」
 曰く、三皇『伏羲』の祠には『あり得るかも知れない破滅の未来』を具現化する力があるという。本来あった魔力がオブリビオンに汚染されてのことだ。この場自体を正しく認識出来ないのはその所為だろう。尤も、阿夜訶志・サイカ(ひとでなし・f25924)にとってはどうでも良いことではあったが。
「俺様が怖れるもんなんぞ……ア?」
 不遜と言われたとて、神だ。知ったことか、と吐き出す息は『その音』に色を変える。
『……』
 そこにあったのは、複数の人影であった。否、正しくそれはひとであったのか。靄のような何かがゆっくりと形をつくり、言の葉を響かせる。
『先生!』
『あぁ!? そこにいんのは分かってるんすよねぇ』
『先生、最高です。天才です。原稿出来てますよね!』
 次々に響く言葉に、サイカはずり落ちかけた帽子を被り直す。火の消えた煙草を噛んだ。
「こいつァ、締め切りの具現化か? 取り立て屋と雁首揃えやがって」
 先生、先生、と響く声と共に『それ』は距離を詰めてくる。足音は無い。代わりに普段は見ないブツを――手錠やら縄やら、捕まえるに特化したブツを持っていた。
『先生! 締めきりですよ!』
「知るか」
 一刀両断言い切って、サイカは息を吐く。否定を重ねるほどに、締め切りを具現化した何かは――人の影は増えて行く。足音が重なり、た、と後に一度退いて距離を取り直せば、声が消えた。
「俺様を脅かそうなんぞ、百年早ェ。そもそも捕まりゃしねぇ……って」
『先生!』
「……」
 ――が、後ろに出た。生えたか。生えるのか編集は、湧き上がるのか締め切りは。
「俺様も年貢の納め時ってか、ア? 原稿? 借金?」
 一瞬にして取り囲んだ『者』達を見据え、サイカは口の端を上げた。
「ケッ、無い袖は振れねぇなぁ?」
 いっそ露悪的に神は笑う。災禍の神は、三皇の力溢れる地で、具現化した破滅が次々と構える武器に笑う。
「構えやがって、無いなら俺様の中身でも持っていくつもりか?」
『先生の原稿が必要ですから』
『いやぁやれますって先生なら中身だけでも!』
『いい加減利息だけでも貰わんとですわ』
 蠢き告げる影が肥大する。声は反響と共に獣のそれに変わり男とも女とも知れぬ悲鳴が、嘆きが祠に反響した。
『さぁ!』
「ハハ、良い度胸だ――わざわい尽くしの神様の中身か」
 キィイァアアア、と響き渡ったそれに、サイカはバタフライナイフを抜く。指先で遊ぶようにして、ぴん、と開いたそれが凶兆の呪いを纏っていく。
「いいぜ、即興で創ってやろうじゃねえか」
 先生、先生とやたら煩く響いていた声も、ドラを叩く音も獣の咆吼に変わっていく。影が、たんと地を蹴った。真上から襲いかかるように来るそれに、サイカは口の端を上げた。
「この言の刃で紡ぐは凶兆。破滅の未来なんぞ、いつも渡ってきた。創ってきた」
 叩き落とされる拳に、爪に似た何かをサイカは受け止める。ガウン、と重く落ちた音が一つ、手に返る衝撃と共に影が這って来る。――だが、何のために許した距離か。
「俺様からのささやかな贈りもんだ。喜べよ」
『――!』
 言の刃は、正しく影に触れていた。呪いハ毒を孕む有刺鉄線へと変わり一気に影へと向かう。形すら見失い獣に成り果てた狩人達が縛り付けられていく。
『――先生!』
 影は、破滅はその拘束の意味に気がついたか。ぐ、と伸ばした手は、だが有刺鉄線に食われて終わる。
「後は逃げるが勝ち、ってな」
 即ち、戦うばかりが勝利の道では無いからこそ。ひらりと手を振る事も無いままに、サイカは影に背を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルシェマリ・リブラ
アタシの破滅の予感なぁ…
有り得るとすれば、召喚した生物を制御出来ない事態とかな。

今は自分で扱う事が可能なレベルしか召喚出来ねぇけど。
いずれは神と称されるレベルのトンデモねぇ大物を召喚出来る様になりてぇ。
もしアタシの力が足りねぇまま邪神とか喚び出したら…うん、ヤベェわ。

目の前で蠢く名伏しものは見るだけで常人が正気を失うシロモノ。
コイツが暴れ出す前に…責任とってぶちのめす。
制御が出来ねぇってだけだ、うん。
UC発動、ネコさん達には聖属性付与。
言う事聞かねぇ邪神はお帰り頂くしかねぇ…ネコさん達頼むぜ!
全方向から総攻撃しつつアタシも鞭で攻撃。

幻影だから気合いで何とかなるけど、マジモンならヤバかったな…。



●Radiant
 冷えた風が頬を撫でていた。一歩、足を踏み入れれば背が閉ざされる。
「……」
 扉があるわけでも、壁が出来た訳でも無い。ただひどく単純に『閉ざされた』と娘は思った。黄色の瞳を細め、僅かに片足を引く。辺りの気配を辿るのは半ば癖だ。視線は無い、足音も無く、ただ——……。
「何かはある、ってねぇ」
 ハ、とエルシェマリ・リブラ(紫晶の閃鞭・f35044)は息をつく。2度目の風が切りそろえた髪を揺らせば、頬に触れるのも面倒で一度荒く掻き上げる。
(「三皇『伏羲』の祠って言われてもなぁ……」)
 陰陽を示す図像が刻まれ、魔力に包まれていたこの場所は、今やオブリビオンに汚染されているという。さっきからずっと感じている違和感が『それ』だろう。召喚士を目指す身だ、門に似た気配は感じられる。
「アタシの破滅の予感なぁ……。有り得るとすれば、召喚した生物を制御出来ない事態とかな」
 今は、自分で扱うことが可能なレベルしか召喚することは出来ないが——いつか、と思うことはあるのだ。
「いずれは神と称されるレベルのトンデモねぇ大物を召喚出来る様になりてぇ」
 ぽつり、とエルシェマリは呟く。進む一歩が、コツン、と響く。コツン、コツン、と歩いてもいないのに足音が増えて行く。大きくなっていく。コツン、カツン、と足音に尖った音が混じり出せば、靄の向こうに『何か』が形作られる。
「……」
 それは、凡そ人の世にあるべきでは無いもの。
 世に影を落とすことなど、あってはならないようなもの。
「もしアタシの力が足りねぇまま邪神とか喚び出したら……うん、ヤベェわ」
 それを『喚んだ』のだという感覚がエルシェマリの中に溢れた。
「キィッァアアアアアア」
 甲高く響く声は鳥に似たか、女の悲鳴に似ていたか。蠢くそれは二つの足と、6本の手を持つ異形だった。常人が見れば、まず間違い無く正気を失うであろうシロモノに、エルシェマリは短く息を吸う。
「コイツが暴れ出す前に……責任とってぶちのめす」
 鳥の羽に似た衣に、黒のヴェール。顔に当たるその場所は靄がかかったように見えはしない。見据えれば——まぁ、間違い無く禄でも無いモノが見えるのだろう。
「制御が出来ねぇってだけだ、うん」
 ペンダントに一度手を添え、エルシェマリは顔を上げる。ゆっくりと広げた掌から淡い光が零れる。
「ネコさん達、頼りにしてるぜ!」
『にゃぁーん』
『にゃー!』
 エルシェマリの呼びかけに、溢れる光の中から聖なる力を宿した翼持つ猫たちが姿を見せる。しゃきん、と見せられた爪にエルシェマリは笑った。
「言う事聞かねぇ邪神はお帰り頂くしかねぇ…ネコさん達頼むぜ!」
『にゃ!』
 ぴん、と尻尾を立ててウィングキャット達は空中を駆ける。全方位から囲むように向かったネコたちと共に、エルシェマリは床を蹴る。真っ直ぐに眼前の『何か』を見すえる。
「帰ってもらうぜ!」
 ひゅん、と強かに鞭を打つ。振り払う一撃が6本の腕を砕く。破砕の音はガラスに似たか。ガシャン、と響き渡る音の中を、駆け抜けたウィングキャット達の爪がかがやく。
『にゃー!』
「キィイイァアア!?」
 蠢く異形が、引き裂かれ崩れていく。泥のように崩れれば次の瞬間には、その姿さえ消えていた。
「幻影だから気合いで何とかなるけど、マジモンならヤバかったな……」
 にゃぁん? と首を傾ぐネコさんたちに、エルシェマリは小さく笑う。『あり得るかも知れない破滅の未来』を、打ち砕けば、閉じられていた空間に光が差し込んできていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クーナ・セラフィン
破滅の未来…私には何だろうね。
私のそっくりさんがいきなり殺しにかかってくるなら本気で勝てる気しないんだけども。
まあモノとか事象っぽいし、それならまあ何とか乗り越えてみせるかにゃー。

袖口に風のルーン記述した符を仕込んで向かう。
さてさてどんな未来が待って…待って?
これ火刑台だよねどうみても。民衆の罵倒付きの。
しかもご丁寧に縛り上げられてるし…いやいや素晴らしく性格悪いね!
つまりどう足掻こうとやっぱりこの未来は待ち続けてるってこと?
あ、火刑台丸ごと着火するんだ。
このまま火あぶりは流石に御免だ。
手は少し動く、袖口から符を取り風の魔法で縛る縄を切断。
炎の熱と煙はUCで防御重点的に強化しつつオーラ纏い防ぐ。
と、逃げようとするなら武装した暴徒っぽい何かが襲い掛かってくるか。
何ともまあ…醜い。
救おうとした人達に贄にされる、ならまだ落ち込むけどこんな奴らに襲われてもにゃー。
クーナらしく、身軽に攻撃躱しつつきっちり全員滅多切りにしてやるとするかな。
この可能性はもう識っているから、大丈夫。

※アドリブ等お任せ



●逝く者は斯くの如きか
 ――風が、止んだ。
 踏み込んだその地で、2歩足を進めた時のことだった。間合一つ取り直すには足らないか。愛用の武器を振るうには僅かに狭い、と騎士猫はゆるり、と尾を揺らす。
「……」
 上にひらけている感覚はある。何かを、空を見上げるような感覚に似てクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は瞳を細めた。
「これが、三皇『伏羲』の祠か……、陰陽を示す図像も大変なことになっているみたいだけど」
 ほう、と落とした息ひとつ。相変わらず感じる狭さに僅かに首を傾ぐ。感覚としては、広いと思うのに、身動きが取りにくい、と思うのだ。充満した魔力か、オブリビオンによる汚染が理由か。
「破滅の未来……私には何だろうね」
 一度だけ手を伸ばす。指は動く。足も動く。もしも、と思った先で、クーナは息をついた。
「私のそっくりさんがいきなり殺しにかかってくるなら本気で勝てる気しないんだけども」
 まあ、と視線を上げる。騎士帽子をつい、と上げてクーナは瞳を細めた。
「モノとか事象っぽいし、それならまあ何とか乗り越えてみせるかにゃー」
 袖口に風のルーンを記述した符を仕込む。小さく舞った風に頷いて、奥に向かう。一歩、二歩と足を進めていけばカツン、コツン、と聞こえていた自分の足音が消えた。
「さてさてどんな未来が待って……待って?」
 足が、動かない。否、動けない、だろうか。進めたはずの一歩が知覚できない。ただ、その光景だけがクーナの瞳に見えていた。
『……せ!』
『……にしろー……!』
『すな……を、許すな!』
 そこにあったのは火刑台だった。積み重ねられた木々、取り囲むように集まった民衆達の罵倒が次々に浴びせられる。
『火あぶりに……!』
『……には、火を……!』
 火を、火を。と響く怒声に、罵倒にクーナは息を吸う。僅かに手を引こうとした先、体が動かない理由が分かった。
「ご丁寧に縛り上げられてるし……いやいや素晴らしく性格悪いね!」
 火刑台の柱に体が縛り上げられていたのだ。後ろ手に回された手に、背にぶつかる柱。ずっと狭いと妙に感じていたのはこれが理由か。
(「つまりどう足掻こうとやっぱりこの未来は待ち続けてるってこと?」)
 この未来。この日。
 藍色の瞳が僅かに揺れる。零す息は震えていたか、それとも――この光景を思ってのことか。何事か叫びながら、松明が次々に用意される。どうやら火刑台ごと火をつけるらしい。
(「このまま火あぶりは流石に御免だ」)
 ゆるり、と尾を動かす。耳を立てる。どうすれば良い、どう動く? 足は流石に無理か。それでも――手は、少し動く。
「……これだね」
 呟いてクーナは袖口に仕込んだ符を取り出す。指先で引っかけて、手の中に落とせば、ぴぃいい、と甲高い音と共に鋭い風が舞った。
『るぞ……!』
『逃げるぞ……が!』
 怒号と共に松明を持った人々が動く。早く、先にとかかった声が理由か、松明か火刑台に落ちた。
『火あぶりだ……!』
「それは、ちょっとな」
 踊る鋭い風と共にクーナは柱を崩す。ぶわり、と一気に上がった炎と煙を散らすように展開した魔力を使う。纏う水が毛先を濡らすが――今は、それどころじゃない。落ちかけた帽子を支えて、たん、とクーナは炎を飛び越える。着地の先、見えたのは駆け込んでくる民衆達だった。
『だ……あそこだ!』
『逃がすな! ……を、必ず!』
『火炙りだ!』
『……せ!』
 そこにあったのは、怨嗟か、怒号か。罵倒の果てに追いかけてくる人々の姿が黒く、歪む。武装した暴徒達は、クーナを逃がす気はないのだろう。
「何ともまあ……醜い」
 声が、静かに落ちる。両の脚で大地に立ち、炎を背にクーナ・セラフィンは彼らを見すえる。真っ直ぐに両の瞳を向けて、熱を帯びた風に灰色の滑らかな毛を揺らす。
「救おうとした人達に贄にされる、ならまだ落ち込むけどこんな奴らに襲われてもにゃー」
 これは、違う。これは『そうじゃない』のだ。
 影が、長く伸びていた。気がつけば空は太陽を得て、晴れ渡った青が僅かに見える。
「……」
 カツン、とクーナは踵を鳴らす。誇り高き騎士がそうであるように。
「クーナらしく」
 そうあろう。そうしよう。
 帽子の影に隠れ、呟く彼女の表情は見れぬまま――前に、出る。踏みこみに風の魔力が乗る。展開した符がクーナの速度を上げた。
『ろせ……止めろ!』
『火刑台に!』
 ぐ、と突き出されたナイフに身を逸らす。たん、と男の手を取るようにしてクーナは上に飛び上がる。
「肩を借りるよ」
 こちらに倒れてきた男の肩を踏んで、背を踏んで前に出る。着地の瞬間、向かってきた相手を切り刻めば、黒い靄のようになって消えていく。
「この可能性はもう識っているから、大丈夫」
 真横、向かってきた斧を剣で受け止める。払い上げた先、舞い踊る剣戟が暴徒達を斬り伏せ――散らす。黒い靄となって四散すれば、そこにはもう火刑台の姿は無い。ほんの一瞬、見えた街の景色と、空がきえていく。
「……」
 次の瞬間、見えていた空間は最初の祠へと戻っていた。オブリビオンに汚染されていた気配が消えていく。出口が、クーナの前に開かれていた。これから先へ、未来へと続く道が。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月02日


挿絵イラスト