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殲神封神大戦⑰〜おくすまポジクラ撲滅計画

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』

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#渾沌氏『鴻鈞道人』


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●立ち位置はグリモア猟兵
「遅れてすまない。状況は理解した。俺の立ち位置は破壊者……いや、グリモア猟兵だ」
 黒い鎧に黒兜。オックスマン・ポジクラーシャ(遅れてきた破壊者・f12872)が猟兵達に向けて告げた。
「今回の敵は渾沌氏『鴻鈞道人』。自らを【骸の海】と自称する謎の敵だ」
 戦場は仙界の最深部にある、いまだ形定まらぬ「渾沌の地」。
 これまでに倒した筈のオブリビオン、或いはまだ戦場にいるオブリビオンさえも、「再孵化」という能力で容易く作り出し、猟兵を攻撃して来るという。
「だが、俺の予知ではその詳細まではわからなかった。君たちには実際に相対してその能力を突破してもらうしかない。すまない」
 状況は理解したとはなんだったのか。
 ともあれ、猟兵達もこういった戦いは初めてではない。多少の不利は被るだろうが、あとは出たとこ勝負という奴だ。
「では、転送を開始する……君たちの勝利を俺は信じよう」
 グリモアによって猟兵達をテレポート。あとは勝利を信じて待つのみ。
 普段ならばそれだけの話だ。だが。
「なんだと! グオオオオオーッ!!!」
 今回は少し違う。

●立ち位置は鴻鈞道人
(罪深き刃を刻まれし者達よ。相争い、私の左目に炎の破滅カタストロフを見せてくれ)
 戦場へと降り立った猟兵達が目にしたもの。黒鎧に黒兜。オックスマン・ポジクラーシャ(遅れてきた破壊者・f12872)が猟兵達に向けて告げた。
 だが、猟兵達より先に戦場に現われているなど、オックスマンであるはずがない。
(この者の流儀に倣って告げよう。驚かせてすまない、状況を理解せよ。私は鴻鈞道人。立ち位置は骸の海だ)
 なんということか。鴻鈞道人は転送を終えたオックスマンを自らの元に呼び寄せ、瞬時に体内に潜り込み、融合したというのだ。
(絶えず時は運び、全ては土へと還る。仮にお前達がこのオックスマンと何らかの「心のつながり」があったとしても、一切有利には働かぬ)
 鴻鈞道人は強敵であり、手加減など一切できない。
 言葉を投げかけたとしても、何も効果は為さない。
 融合した鴻鈞道人が力尽きるまで戦うしか方法はない。
 戦いの後、オックスマンが生きていてくれる事を祈る事しかできない。
 その事実を、猟兵達は受け入れるしかないのだ。
(私は渾沌氏……お前達が生きるために踏みしめてきた、全ての過去である)

 だが、オックスマンはかつて一シナリオで🔴を9個得ながらも生き抜いた男である。
 勝利条件は🔵11個である。2個分くらいなら耐えられるのではないだろうか。
 きっとたぶん大丈夫だろう。そう信じて戦うしかない。
 猟兵達よ、渾沌の諸相を打破し、オックスマンと融合した鴻鈞道人を倒せ!
 覚悟ヨイカ! ヨシ!


納斗河 蔵人
 お世話になっております。納斗河蔵人です。
 遅れてすまない。状況は理解した。
 今回、下記のようにプレイングボーナスがあります。

 プレイングボーナス……グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する。

 OPでは茶化した書き方をしましたが、バトル自体はガチです。
 オックスマンと融合した鴻鈞道人の先制ユーベルコードを切り抜けて、戦い抜いてください。
 残念ながら現時点で鴻鈞道人を完全に滅ぼす方法は無いようですが、ひとまず戦闘で殺す事は可能ですし、戦力を0にすれば撤退します。
 それでは、プレイングをお待ちしています。よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ライカ・ネーベルラーベ
【OX】
あれ、なにやってんのさオックスマン?
……敵?そう……
「ぶっ壊す、とは言わないよ。助けてあげる。……荒っぽくしかできないけどね」

敵のUCは血を流す量が鍵…
自己強化で先手を使ってくれるなら、こっちは回避専念しながら自分のUCの準備をすればいい
「ボスと追いかけっこしたことはなかったね」
UC撃つまでは相手の強化を発動させないことを優先して牽制も控えめに
いざとなれば隠しナイフで自分を切り裂いて血を流せばいいや

で、【"E"の光禍】を発動
ボスの人徳か何か知らないけど、顔を知ってる味方が何人かいるし、こういうので行こう
「雷撃なら『血は出ない』からね。あちこち焼け焦げるけどいつも真っ黒な格好だし良いでしょ」

ああ、うん、遅れて悪いね。
オックスリターナー、立ち位置は『殴ってでも連れて帰る』だよ。


ミルラ・フラン
【OX】
状況は把握した。オックスマンの中の人を破壊すればいいんだね!
おーいオックスマーン、殺す気で行くけど死ぬなよー……って、まあ聞こえないか
あたし達のファビュラスで圧倒してやろうじゃないかい!
(大鎌、Convinzioneをぶんぶんと振り回し)

なあ、ライカ、玲頼。一つ考えたんだけどさ
あのオックスマンの意識は敵さんなんだろ?
ってことは、普段はギャグ補正であたしに見惚れないあいつにAttraente Cremisi、効くんじゃ無いか?

そうとなれば血を流させずに攻めかかるよ!
大鎌を振るのはフェイント。長い柄を使ってポールダンス風ポーズと共にウインク

よーし、ライカ!玲頼!ヤッチマイナー!


梟別・玲頼
【OX】
嘘だろ…まさかリーダーが…
オックスマンがオレ達より早く行動するだなんて!
――いや、中身が違うのか、それなら納得だ
つまりぶちのめせば良いんだな?

うわ、何か生えてきやがった
向こうの攻撃は鳥としての勘と視力で動き捉え、太刀で受け勢いを受け流す
直撃受けたらヤバいのは破壊者の攻撃知ってるから解る
とは言え…憑かれて強化されても肉体がリーダーのモノならば動きのクセは読みやすい、と思いてぇ
皆が攻撃する間も連続して風の矢をぶつけながら、鎧の金属に覆われてない箇所を確認

んじゃま決めようか
オレ達は骸の海をも破壊する!
弓に矢を番え、風の神力を集中させて鎧の隙間目掛けて射貫く
リーダーは死んでも死なねぇよ、うん


朝倉・くしな
【OX】
オックマンさん……敵に融合され、そのような無残な姿にされてしまうなんて……
(乗っ取られても見た目は変わらない)

・先制攻撃
オックスマンさんの身体なら、動きは既に見切っています!
あとは相手の攻撃に合わせてオーラ防御で受け止める!

・UC
「今その顔、直しましょう!回復ユーベルコード、生まれながらの光!
HPは殆ど回復させず、出血だけ止める程度に皮膚だけ治療
流血がなくなれば、UCの強化も消えるはず

戦闘力強化…?
ああ、ちゃんと肉体改造効果で元の顔に戻しておきますね……ン?間違ったかな?
(血が追加で流れないように皮膚を分厚して脂肪を増やしにいく耐流血を強化!)

あとは、くしなん卍固め!


鍋島・小百合子
WIZ重視
連携絡み可

ぐりもあ猟兵を討たねばならぬ事態ではないのであればその身を乗っ取った彼奴の気の済むまで戦に興じるが筋
存分に楽しませてやろう

「肥前が女武者・鍋島小百合子。遅けれどいざ参る!」
可能な限りオックスマン殿に傷を入れず血を流させぬよう相対
敵の攻撃を薙刀の武器受け防御で捌くか残像込みでの回避に専心しつつ、この身を血で流しつつその太刀筋の見切りへと繋ぐ
先制攻撃を越えれば反撃に転じUC「勇焔心桜舞」発動
薙刀と弓を勇気の発現で生みせし焔の花びらへと変えて敵を包み込むように放つ
焔の花びらに纏わり付かれた敵に向かい小太刀で攻撃部位を串刺してはその戦闘能力を奪う(切り込み、鎧砕き、部位破壊併用)



 いまだ形定まらぬ渾沌の地。猟兵達は正体不明の敵、渾沌氏『鴻鈞道人』と戦うためグリモアによって戦場へと参上した。
 猟兵ならばいつものことだ。
 予知に従い、敵と戦ったり問題を解決したり……そうやって骸の海から染み出すオブリビオンの脅威から、世界を守る。
 しかし。
「嘘だろ……まさかリーダーが……」
 わなわなと手を震わせ、梟別・玲頼(風詠の琥珀・f28577)は驚愕の表情を浮かべていた。
「あれ、なにやってんのさ?」
 ライカ・ネーベルラーベ(りゅうせいのねがい・f27508)もまた首をかしげ、疑問符を浮かべる。
 他の面々も同様に。まさに信じられないものを見たと言わんばかりだ。
 それもそのはず。
 彼らの目の前にいたのはオックスマンだったのだから。
「オックスマンがオレ達より早く行動するだなんて!」
「ありえません!」
 ――いや、どうやら玲頼の驚きはオックスマンがいたこと自体ではなく、別のところにあったようだ。
 彼はいつだって始まりの時には現れない。彼はいつだって最後にやってくる――そんな男が、先回り。
 朝倉・くしな(鬼道羅刹僧・f06448)も何より先にその点が重要であるらしい。
 オックスマン――の姿をした何者かは、そんな言葉を気にもとめず脳内へと語りかける。
(この者の流儀に倣って告げよう。驚かせてすまない、状況を理解せよ。私は鴻鈞道人。立ち位置は骸の海だ)
 なんということか。鴻鈞道人はオックスマンと融合し、猟兵達と戦おうというのだ。
 彼は告げる。この戦いの理を。戦いの果てにあるものを。
「……敵? そう……」
「なるほど、中身が違うのか、それなら納得だ」
 ライカが何かを考え込むような仕草をすれば、玲頼は納得の表情。
「オックスマンさん……敵に融合され、そのような無残な姿にされてしまうなんて……」
 くしなはよよよ、と涙を拭う仕草。
 とはいえ、黒鎧に黒マント。黒兜の奥で光る赤い左目。少なくとも見た目はいつものオックスマンである。無残な姿になるのはこれからだ。
(さあ、相争い、私の左目に炎の破滅カタストロフを見せてくれ)
 ――と、そこで。
「気心の知れた仲であるようだが、それも信頼の証しということかのう」
 鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)が前へと進み出た。
「いずれにせよ、戦わぬ限りぐりもあ猟兵を救うことはできぬ」
 どれだけ呼びかけてもオックスマンが自我を取り戻すことはなく、鴻鈞道人を倒すには力尽きるまで戦うしか方法はない。
 そんな事をすれば勿論オックスマンもただでは済まない。だが、本気で戦わなければやられるのは猟兵達のほう。
 ならば取るべき手段は一つ。
「その身を乗っ取った彼奴の気の済むまで戦に興じるが筋」
「つまりぶちのめせば良いんだな?」
「状況は把握した。オックスマンの中の人を破壊すればいいんだね!」
 玲頼にミルラ・フラン(Incantata・f01082)が続く。
 なんだか物騒なことを言っているがこれもきっと信頼の現れだ。
「おーいオックスマーン、殺す気で行くけど死ぬなよー……って、まあ聞こえないか」
「オックスマンさんなら大丈夫だと信じてますからね!」
「リーダーは死んでも死なねぇよ、うん」
「ぶっ壊す、とは言わないよ。助けてあげる。……荒っぽくしかできないけどね」
 オックスメンが思い思いの言葉を口にするのを見届け、小百合子が薙刀を握りしめる。
「存分に楽しませてやろう」
(その意気はよし。だが仮に私を倒したとして、この男が無事でいられるとは思わないことだ)
 そんな猟兵達にオックスマン――鴻鈞道人は赤い左目を揺らし、不敵に笑うだけであった。

(まずはこの者の力を試すとしよう)
 鴻鈞道人が腰の杖に手を伸ばす。
「大技が来ますよ!」
 だが、勝手知ったる戦い方。あの動きは破壊の嵐を発動させようとしているのだ。くしなにはそれがよく分かっている。
「直撃を受けたらヤベェ!」
 そして玲頼の言うとおり、オックスマンといえば破壊者、破壊者といえば破壊力だ。
 操られていても一番注意しなければいけないポイントは同じ。弱点も変わらない。
(砕け散れ)
「ハッ、そうくるのはバレバレだよ!」
 ミルラが素早く後退し、距離を取る。小百合子もそれに倣った。
 術者を中心に広がるあの魔法は威力も範囲も大きいが、発動中に動くことができない。範囲の外に出てしまえば無力なのだ。
「わたしたちと連携してればいろいろ使い道はあるんだけどね」
「如何に力が増しても、使い方を誤れば意味がないという事じゃな」
 眼前に迫りながらもライカの言葉に小百合子が満足げに頷く。
 それぞれの立ち位置を活かして戦うとは、そういうことなのだ。
「おっくすまん殿の変わりにはならぬだろうが、わらわも共に戦おうぞ」
「いや、むしろオックスマンより頼りになるね」
「リーダーはいつだって遅れてくるからな」
 
 そんな軽口を交す彼らだが、鴻鈞道人の次なる動きを見逃しはしない。
(ふむ、これでは足りぬか。ならば……)
 魔力の放出を続けながら、彼はオックスマンの大剣を振り上げる。
 一体何をしようというのか。嵐の向こうの姿から、ライカはその意図にいち早く気付く。
(渾沌の諸相の一端をみせよう)
「させないよ」
「……おい!?」
 オックスマンが剣を振り下ろすと同時、ライカの右手から隠したナイフが猛烈な勢いで飛び出し、辺りを紅く染めた。
 予想外の自傷行為。いや、流れる血に嗤う鴻鈞道人を抑えるためには最も有効な一手だ。
 何しろ、渾沌の諸相は相手より多くの血を流すことでその力を増していくのだから。 
「相手より血を流してなきゃ効果がないんでしょ。ボスがここに来る前に言ってたよ」
(融合の未来は察知できずとも、ユーベルコードの情報は知られていたか)
 ならば、と再び剣を振るうがライカは躊躇いもなく自分自身を傷つける。
「ボスと追いかけっこしたことはなかったね」
 兜の奥の瞳が揺らぐ。
 鴻鈞道人にとってオックスマンの体はどうでもいい存在だ。
 故に躊躇なく傷つけることができたが、彼にとってもそれ以上の傷を自ら負ってみせるライカは予想外だったらしい。
(お前が死ぬのを待ってもいいがそれではつまらない。この剣にて、より多くの血を流すこととしよう)
 そして、他の猟兵達もただこの状況を見ているだけではない。既に各々が動き始めている。
 魔力の放出をやめ、猟兵達へと接近を始めた鴻鈞道人へと風の矢が飛来した。
(……む)
 血で染まった小手で殴りつけると、あっけなく霧散する。
「やっぱりリーダーとはちがうな」
 玲頼がぽつりとつぶやいた。オックスマンも鴻鈞道人も傷を受けることを厭わないのは同じだが、動きが違う。
 その違いが有利になるのか、不利になるのかそれはまだわからないが――
「ライカも体を張ってるんだし、情報を引き出せるだけ引き出しておかないとな」
 生半可な攻撃では鴻鈞道人は止まらない。だが、オックスマンの体を傷つければライカの傷も増えていくことになる。
 誰かが限界を迎える前に、決着をつけなくては。
 
「肥前が女武者・鍋島小百合子。遅けれどいざ参る!」
 がきん、と大剣と薙刀がぶつかり合った。
 オックスマンの一撃は重い。だが小百合子はうまくその威力を受け流し、力の流れを絡め取る。
「力任せの攻撃でわらわを止められるとは思わぬことじゃ」
「なっちゃいないね。オックスマンはもっと威力のでる動きをするんだ」
 オックスマンのマントが千切れ、宙を舞う。ミルラの大鎌が掠めたのだ。
(この者の動き……鋭さが足りん)
 彼女のいうとおり、鴻鈞道人はオックスマンの破壊力に全振りした身体をうまく扱えていないらしい。
 通常の猟兵を大きく上回る威力も当たらなければ意味がない。
 普段のオックスマンがどうやって結果を出しているのかは本人でなければわからないのだ。おそらくはオックスメンの面々であっても。
(どうせ使いこなせぬのならば、唯一の長所を貪るのみ)
 みし、と何かが破れる音がする。
 何事かとオックスマンを見れば、その背にはいつの間にか白き天使の翼。
「うわ、何か生えてきやがった」
 それだけではない。左腕からは白きおぞましき触手が。そして漆黒の長剣は白く染め上がり、白き殺戮する刃となる。
 肉を破り現れる渾沌の諸相がオックスマンの体を変質させていく。
「わお、こりゃグロいね」
「他者の体をそのように弄ぶとは……」
 ミルラはドン引き。小百合子も怒りを顔に滲ませる。いや、それよりも問題なのは。
「……追いつかれた」
 オックスマンの体から流れ出る血がライカのそれを越えてしまったことだ。
 ぐ、と重苦しい空気が辺りを包む。渾沌の諸相が。そのおぞましき力を発揮し始めたのだ。
(圧倒的な力は全てを凌駕する……こうなってしまえば、終わりだ)

 吹き荒れる破壊の風は猟兵達の接近を許さない。 
「オックスマンさん……敵に融合され、そのような無残な姿にされてしまうなんて……」
 そんな中、くしながよよよ、と顔を覆う。同じような台詞を最初に聞いたような気もするがきっと気のせいだろう。
 漆黒に染め上げられた鎧も兜も、いまは白の渾沌と赤い血に覆われ普段の彼の姿とは別のものへと化している。
 ぎり、と一歩を踏み出す。くしなの腹に赤くて丸いものが打ち付けられるがその歩みを止めることはない。
「今その顔、直しましょう!」
 彼女の全身が光に包まれる。吹き付ける破壊の嵐の中でも生まれながらの光は絶えることなくより光を増していく。
(なんだと)
 その光はくしなを守るだけではない。広がった光がオックスマンの体に触れたとき、血にまみれた体が白と黒へと回帰する。
 これぞ『(肉体改造効果付き)生まれながらの光(ン・マチガッタカナ)』――今回は間違っていない! これが正解だ!
「よし、力が弱まった」
「一気にたたみかけるよ! あたし達のファビュラスで圧倒してやろうじゃないかい!」
 玲頼の言葉にミルラが動く。Convinzioneを支えにくるりと回転、さながらポールダンスの如き動きで鴻鈞道人を翻弄する。
(見事なものだ。縁深きもの相手にこれほどの攻勢。賞賛に値する)
 と、そこでミルラは引っかかりを覚える。
 オックスマンがこういうことを言うとき、あの男は一切の他意を見せずに純粋に褒めるだけ。
 しかし鴻鈞道人の言葉にはもう一つの感情が含まれているように思えてならないのだ。
 相争い、私の左目に炎の破滅を見せてくれ――
 白きおぞましき触手の追撃をかわしつつ、ミルラは一つの可能性に思い当たった。

 くしなが傷を癒やすことで、渾沌の諸相は弱まったがまだ足りない。
 その肉体を変質させた翼や触手は絶えず血を流し続けているからだ。
「ライカ、いけるか?」
「わたしは大丈夫」
 玲頼が風の矢を放ちつつライカを気遣う。その流血も少ないものではない。この状態が続けば彼女だって危ない。
 そろそろ決着といきたいところだが……
「なあ、ライカ、玲頼。ひとつ考えたんだけどさ」
 そう考えていると、前線を小百合子とくしなに任せミルラが二人の元へ。
「あのオックスマンの意識は敵さんなんだろ?」
「ああ、動きから見てもそれは間違いねぇ」
 彼女の問いに、玲頼が『弓矢ノ記憶(アイ・チコイキプ・エパカシヌ)』によって確信を持って答える。
 融合したといってもオックスマン本人の意識はなく鴻鈞道人そのものであり、動きの選択や思考にオックスマンの影は見えない。
「ならさ……」
「……いけるかもしれねぇ」
 普段ならば通じない――あの技が通じるのではないだろうか。
「そうとなれば攻めかかるよ!」
「わかった、じゃあわたしはこういうので行こう」
 ミルラの不敵な笑みに、ライカはそう返した。
 
(私に流れる血を癒やす……お前達の手は確かに有効だ)
 鴻鈞道人は破壊の風を巻き起こし、剣を振るった。
 流れ落ちる血による強化は阻害され、力任せの一撃は小百合子にいなされる。
(だが忘れてはいないか。私にとってこの体に価値はないということに)
 あくまで相争う姿、その結末としてのカタストロフを望んでいるだけ。オックスマンの命は不要。
「……参りましたね」
「悪趣味なことよな……」
 くしなの光は傷を治すだけに留めている。体力まで回復させてしまえばいつまで経っても鴻鈞道人を倒すことはできないからだ。
 いくらオックスマンが死ななさそうだといっても限界はある。決着を急がなくては。
(渾沌の諸相よ、私にさらなる力を)
 白きおぞましき触手がくしなに絡みつく。白き殺戮する刃が小百合子へと襲いかかる。
 そして流れ落ちる血がその力を更に強化する。癒しの光が追いつかない。
「――エンハンス、エリミネイト……」
(……!?)
「エンディング!」
 だが、その時閃光がオックスマンを貫いた。
 声の主はライカであった。なんと破壊の嵐はいつしか渦巻き荒れ狂う雷に包まれ、その漆黒を青白い光へと変えていたのだ。
 周囲に『"E"の光禍(オウゴンノリュウノウタ)』が響き渡り、いくつもの雷が天からの柱を打ち立てる。
 そんな光の中をミルラは駆け抜け、巨大な大鎌に似合わぬ流麗な動きで鴻鈞道人の頭上を飛び越えた。
(……!)
 ほんの一瞬、目を奪われる。それと同時に彼の視界が赤に染まる。咲き誇る薔薇の花。『Attraente Cremisi(アットゥラエンテ・クレミージ)』。
「あたしに惚れたら怪我するよ!!」
 言葉の通り、薔薇の花弁は鎧の隙間に入り込み、渾沌の諸相を傷つけていく。
「普段はギャグ補正であたしに見惚れないあいつには効かないけど、アンタには効いたみたいだね!」
(だが、血が流れれば私は――)
「なんだと! グオオオオオーッ!!!」
 が、再度の雷光。鴻鈞道人の意思の外から、オックスマンの叫びが漏れる。
「雷撃なら『血は出ない』からね。あちこち焼け焦げるけどいつも真っ黒な格好だし良いでしょ」
 すぐさま傷は焼かれ、血は流れない。肉を破る傷だけならば、くしなの光で十分に間に合う。
「ならばわらわも続こうぞ。我の心に灯されし勇気の花よ……咲き誇れ!」
 小百合子が薙刀を頭上でくるくると回せば、吹き荒れるのは焔。
 オックスマンの体から流れようとする血は灼かれ、渾沌の諸相は発現しない。
「ナイス! これならいける!」
「これ以上の血は流れぬと、ここに示そうぞ!」
 暴れ回る白き触手が焼け焦げ、『勇焔心桜舞(ココロニサキシホムラノハナ)』の前に散るばかりだ。
 
(見事だ、罪深き刃を刻まれし者達よ)
 猟兵達の熾烈な攻撃が徐々に鴻鈞道人を追い詰めていく。
 ことここに至ってはいかな渾沌氏といえど勝機は薄い。
(かくなる上はこの男を骸の海へと捧げるとしよう)
 白き翼を広げ、鴻鈞道人は告げた。オックスマンの命を連れて行くと。
 雷の中を舞い上がり、剣を掲げる。
 誰の手も、そこには届かないと思われたが――
「悪いが、オックスマンはそこにいくには早すぎるんだ」
 玲頼の風を受け、Convinzioneを支えにミルラが跳びあがる。大剣が大鎌に弾かれ、宙を舞った。
 それでも鴻鈞道人にはまだ白き刃が残されている。
「ライカ、ヤッチマイナー!」
 しかし、猟兵達の攻撃は止まらない。その事を彼女のウィンクは告げている。
「ああ、うん、遅れて悪いね。オックスリターナー、立ち位置は『殴ってでも連れて帰る』だよ」
 雷の如き勢いでライカがやってきた。
 拳が鴻鈞道人を殴りつける。衝撃で兜が何処かへ吹き飛び、その素顔が晒される。
(くッ……)
 兜の下のその顔は、激戦によって傷ついてはいたがいつものオックスマンだ。
 ただ、左目だけは渾沌の諸相に冒され別のモノへと変質している。
「逃がしはせぬぞ!」
 大地へと叩きつけられた彼を待ち受けていたのは小百合子だ。手にした小太刀が白き翼を貫く。
 これで空へは逃れられない。
「オックスマンさん……ちゃんとあとで元の顔に戻しておきますからね。くしなん卍固め!」
(グオオオオオーッ!!!)
 そうして動きが鈍ったところを、くしなが捕らえた。
「んじゃま決めようか」
 ぎり、と弓に矢を番え、玲頼がいう。
 風の神力が渦を巻き、収束する。狙うは一点。渾沌氏そのもの。
「オレ達は骸の海をも破壊する!」
 放たれた一矢がオックスマンの左目を撃ち抜く。
(忘れるな、私はお前達が生きるために踏みしめてきた、全ての過去である)
 その言葉を最期に、渾沌の諸相は今一時、骸の海へと送られる事となった。

「――む?」
 眩しさにオックスマンは目を細めた。
 どうにも全身が悲鳴をあげているようである。このような状況は初めてではないが、一体何があっただろうか。記憶がない。
「おっ、起きたかリーダー」
「無事で何よりじゃ」
 聞き覚えのある声。これは――玲頼か。もう一人は、たしか鍋島・小百合子といったはずだ。
「ボスの人徳か何か知らないけど、よかったね」
 これはライカの声。少しずつ状況は読めてきた。
「おーい、オックスマン。見えてるかーい?」
「大丈夫ですよ! 私は間違ってませんから!」
 ミルラに、くしな。鴻鈞道人との戦いに送り出した面々だ。
「……状況は理解した」
 いまだ視界ははっきりしないが、自分の身に何が起きたかはわかった。
 ならばいうべき言葉はこれだろう。
「遅れてすまない。君たちの助けに感謝する」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月30日


挿絵イラスト