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殲神封神大戦⑰〜He's gone?

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』 #プレイング受付中 #26日(水)21時受付終了

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#渾沌氏『鴻鈞道人』
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●幸福な王子は何を願うか
「皆さん、お集まり頂き有難うございます。仙界の最深部…渾沌の地への道が開きました」

 『渾沌の地』未だ形定まらぬ仙界の最深部。
 その地にて、『骸の海』を自称する鴻鈞道人は猟兵を待ち構えている。

 そこまで話して、アンリ・ボードリエ(幸福な王子・f29255)は数秒の間、口を閉ざした。次の言葉を口にする事を躊躇っているように見える。

 酷く困ったような、全てを諦めてしまったような、そんな風に彼は微笑み猟兵達を見た。

「…どうやら、鴻鈞道人の力はかなり強力らしく…渾沌の地へ皆様を転送した瞬間に、その転送を担当する『グリモア猟兵』と融合するようです」

 転送を担当するグリモア猟兵。猟兵達の目の前にいるその人。

 言葉の意味を理解した猟兵達に、アンリは頷いた。
「はい、皆様には鴻鈞道人と融合したボクを倒してほしい、という事です」

 鴻鈞道人と融合した後、アンリは猟兵へと襲いかかる。
 例え何らかの「心のつながり」があったとしても、猟兵達の言葉は決してアンリには届かない。
 鴻鈞道人の持つ力は凄まじく、アンリを思い少しでも手加減をした猟兵は間違いなく命を落とすことになるだろう。

 つまり、アンリにはどうすることもできないことなのである。

「…どんな相手でも皆さんはきっと負けることはないと、ボクは信じています」

 猟兵達の強さを、彼は知っている。
 力だけではなく、芯の強さも。

 白濁とした双眸が一瞬猟兵達から逸らされる。
 次にそれが猟兵達へと向けられた時、その瞳には覚悟が宿っていた。

「どうかお願いします、鴻鈞道人を倒してください」

 例えその結果、ボクが死ぬことになっても、世界を、未来を守ってください。
 これがボクの最後の願いです。

●融合、そして過去となる
 渾沌の地はその形を止めることない。

 曲がり、積み重なり、広がり、混ざり、泡立ち、陥没し、覆い被さり、ひび割れる。

 しかし猟兵達が転送されたその瞬間から目の前が、遥か先が、足元が、まるでパズルのピースが抜けるように少しずつ『消滅』していく。

 そんな場所にアンリ・ボードリエ───否、鴻鈞道人は立っていた。

「…初めまして、とでも言った方がいいだろうか」
 その声は、明らかにアンリのものだった。
 しかし、口元の冷ややかな笑みは彼のそれではない。

「私は渾沌氏…すなわち骸の海である。お前達が生きるために踏みしめてきた、全ての過去である」

 皮膚を刺すような視線を猟兵達に向けると、アンリがいつも彼のUDCにするように、胸に手を当て祈るような体勢をとった。

 ピシリ、UDCの中に浮かぶ鉛の心臓にヒビが入った。
 それは歪な祈りに対するUDCの怒りなのか。
 それとも、普段アンリが無意識に抑えていた全力を解き放とうとしてるが所以の破損なのか。

 いずれにせよ、彼のレイピアに力は宿り、数えきれぬほどの燕の霊が召喚された。
 つまり、戦いの準備は相なったということだ。

「罪深き刃を刻まれし者達よ。相争い、私の左目に炎の破滅を見せてくれ」


ミヒツ・ウランバナ
 オープニングをご覧いただき有難うございます。
 皆さん初めましてミヒツ・ウランバナです。こういうのがとても好きです。

 なお、これが初シナリオとなります。どうぞよろしく申し上げます。

●補足
 本シナリオは一章で完結する戦争シナリオです。

 グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人は必ず先制攻撃をしてきます。また、「心のつながり」がある事による弱体化などは一切ございません。
 現時点で鴻鈞道人を完全に滅ぼす方法は無いようですが、戦闘で殺す事は可能であり、戦力を0にすれば撤退します。戦闘後グリモア猟兵が生きているという確証はありませんが、全力でグリモア猟兵と融合した鴻鈞道人を撃退してください。

 グループ参加は2名まで。難易度はやや難。採用は少人数となると思います。

●戦場
 景色や形を常に変化させつつ、ランダムな場所から消失する場所です。

●プレイングボーナス
『グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する』

 グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人は聖なる力を持ったレイピアや燕の霊とユーベルコードにて先制攻撃を行います。それに対する対処をお願いします。
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

瞳ヶ丘・だたら
アドリブ等歓迎だ。

……何も言うまい。
言葉にすると、この感情が濁ってしまう。

渾沌の諸相に加え、燕の霊魂までも避けきることは当機では不可能。ゆえに〈防具改造〉を信じ、損傷が最低限で済むようあえて吶喊する。
〈破魔〉を込めた呪符装甲がどれだけ保つか分からんがね。
衝撃に奥歯をぎりりと軋ませながらも〈操縦〉桿は手離さん。

先制を凌いだならば、即座に〈メカニック〉技術の〈早業〉で装甲を修繕。〈視力〉と〈瞬間思考力〉で次に襲い来る攻撃を見切り、的確に〈砲撃〉で撃ち落とそう。
無論〈悪路走破〉の推進力を緩めはしない。
その細身に戦車の質量をぶちあててくれる。

やれやれ、瞬きの暇もない。目薬代はきみに払ってもらうからな。



●この戦場に言葉はいらない
 瞳ヶ丘・だたら(ギークでフリークな単眼少女・f28543)は眼前に立つアンリに対して──何か言葉をかける事はなかった。

それは無関心や無慈悲故の沈黙ではない。

『言葉にすると、この感情が濁ってしまう。』

鴻鈞道人と融合する前のアンリのことを知っているからこそ。
その彼に願いを託されたからこそ。
『濁り』は許容できるものではない。

この無言は彼女の誠意そのものなのだ。
故に、この戦場に言葉は不要だ。

アンリの肉を破り現れる渾沌の諸相。幾多もの燕の霊。
純白にして惨憺たる触手はぬらりと、
燕の霊は羽を打ち、一斉にだたらへと狙いをつける。

渾沌の諸相、燕の霊。
そのどちらかであれば高機動を誇るだたらの戦車に避けられないものではないが、その両方を避け切る事は不可能。
この戦車を作り改造し、幾多もの戦いにこの戦車と共に挑んだ彼女だからこそ、瞬時にそれが理解出来た。

ならば、とあえて彼女は手の中の操縦桿を前に。
戦車は渾沌の地を駆り、燕の群れに、触手に、吶喊する。

早いだけが取り柄ならまだ改造の余地がありすぎる。
彼女の戦車は重くて硬くて速い、だからこそ強いのだ。

先手を打ったアンリの攻撃と魔を打ち破る呪符装甲を搭載した四脚戦車が衝突する。
装甲に激突した瞬間、燕は1匹また1匹と溶けるように消滅していく。
しかし、これが渾沌の諸相の力か。
数千にも思えた燕の群れを激しく凌ぐ衝撃で触手は、その装甲ごと戦車をを破壊せんとその一本一本では細い触手を絡ませ身を固め、正面から車体にぶつかる。

火花が散る。車体が激しく揺れる。操縦しているだたらの身にも強い負荷がかかる。
それでも、彼女は決して操縦桿を手放さない。
ぎりり、と奥歯が軋む音が脳に響く。

戦車と渾沌、その鍔迫り合いは戦車に軍配が上がった。
触手はその純白を赤黒く染め醜怪に弾け飛ぶ。

触手の血肉が地に落ちる頃、既にだたらはスパナを手にしていた。その肉塊の先に見えるのは次の攻撃を繰り出さんとする敵の姿だ。
自身の知識、技術を詰め込み装甲を修繕していく。その速度はまさに神業。
アンリがこちらに狙いを定める数秒間。作業時間はそれで十分過ぎるほどだ。

その動き、次の攻撃、全て見えている。ならばそれを撃ち落として仕舞えばいい。
二連主砲から放たれた砲弾は的確に燕を、触手を、一つも残さず撃ち落としていく。

その間も彼女はタンクの推進力を落とさない。
景色や形を常に変化させるのが何だ。ランダムな場所から消失する場所だからどうした。
生憎、その程度の悪路なら走り慣れている。

戦車が、罪深き刃を刻まれし者が、まさか自分の元まで到達するとは。
この戦いが始まってから攻撃を続けていた鴻鈞道人は、初めて防御の構えを取った。
その白き翼で、殺戮の為の刃で、戦車の衝撃をいなそうと身を固める。

しかし、その翼は戦車の質量で、刃はスピードの蓄積された吶喊の勢いで、折れ、砕ける。
そして残るはその肉体のみ。
細身の人間の身体など戦車の衝突に耐えられるものではない。
その重さと速度を伴った衝撃に耐えることもできず、弾き飛ばされる。

永遠とも感じる、ほんの数分、数秒かもしれない時間だった。
瞬きの暇のないとは、まさにこの事。

「…目薬代はきみに払ってもらうからな」

果たして、その言葉は彼に届いたのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黄泉川・宿儺
POW ※アドリブ連携等歓迎

アンリ殿を、助けたい
されど、この身は壊すことしか、できない

だったら、小生はアンリ殿の強さを信じる!
アンリ殿は強い人でござる!こんなところでくたばるような御仁ではない!
祈りを拳に籠め、<覚悟>を決める

押し寄せる燕の群れを拳の<衝撃波>である程度<吹き飛ばし>つつ突き進む
渾沌の諸相による一撃は<激痛耐性>で耐え忍ぶ!

こんなの全ッ然痛くないでござる!
アンリ殿が受けた痛みに比べれば、こんなもの!

痛みで倒れ、心折れそうになったとしても、<根性>で<限界突破>!

壊すことしかできなくっても、アンリ殿を助けたい!
アンリ殿、どうか......生きて欲しいでござる!

【UC:絶壊拳撃】!



●666のジレンマ
身を粉にして皆を助ける王子様が彼ならば、そんな彼を助けるのは一体誰なのだろうか。

黄泉川・宿儺(両面宿儺・f29475)は思う。

アンリ殿を助けたい。
されど、この身は『壊すこと』しかできない。

ならば、やるべき事は一つだ。
拳を強く、強く握る。
祈りが、覚悟が、その拳の中に宿る。
決してそれを離さないように。

宿儺もまた、困っている人を見捨てられない質なのだ。

数百匹、いや数千匹だろうか。
カウントすることなど到底不可能なほどの燕の群れが彼女へ押し寄せる。

その先頭に、彼女は拳を叩き込む。
拳が当たるのは、数千の群れの中のたった1匹。しかし、その衝撃波が群れを吹き飛ばしていく。
拳を放つ度に、確実に群れはその数を減らしていき、宿儺の足は確実に前に、前に進んでいく。
 
渾沌の諸相が、アンリの片腕が異形化した白きおぞましい触手が燕の奥から姿を表す。触手は燕の群れの間を縫って宿儺の元へ迫る。
燕を叩いた衝撃波では、触手は撃ち落とせない。
触手は勢いを弱めることなく彼女の元へ辿り着き、その身体に確実に傷を、痛みを与えていく。

これが渾沌の諸相の、鴻鈞道人の力。
一撃一撃が確実に宿儺にダメージを与え、前に進む力を奪っていく。
前に進みたくても、身体が前に進まなくなる。
一瞬、意識が途切れて仕舞えば鴻鈞道人はその隙を見逃さず、頭部に、腹部に、脚部に、触手で致命的なダメージを与える。
 
ついに、宿儺の身体は渾沌の地に沈む。
 
薄れゆく意識の中、宿儺は思う。
『小生達を送り出した時、アンリ殿はどのような思いだったのでござろう』
 
抵抗もできず、身体を乗っ取られ猟兵達に襲いかかる。
どのような結果になろうと、死ぬかもしれない。

『それでも小生達を送り出したアンリ殿は、何を思っていたのでござろう』

記憶を消しながら、アンリは戦う。どれだけ身体が傷つこうと、前へ進むのを決してやめない。
『その時、アンリ殿は何を思っていたのでござろう』

きっと、きっと

『心臓が張り裂けるほど痛かったのでござろうな』

「…思っていた以上に、呆気なかったな」
渾沌の諸相による一撃の前に倒れた宿儺を見て、鴻鈞道人は呟く。
罪深き刃を刻まれし者と言えど、この程度か。

そう思った時だった。
「…こんなの…全ッ然痛くないでござる!」
宿儺は手に、足に力を込め、立ち上がる。

鴻鈞道人は再び、触手を宿儺に叩き込む。
しかし、いくら攻撃を受けても宿儺は決して倒れない。

「アンリ殿が受けた痛みに比べれば、こんなもの!」

その身を囲む触手に拳を叩き込む。
その拳の中にある、祈りも、覚悟も、消えていない。
敵はもう目の前だ。

疲労も負傷も無視して、その拳を再び握り直す。
次の一撃で、勝敗が決まる。
「鴻鈞道人…これで、終わりでござるよ!」
宿儺は堂々と彼の眼前に立ち、笑顔でそう言ってみせた。

宿儺がやるべき事、それはアンリの強さを信じること。

「アンリ殿は強い人でござる!こんなところでくたばるような御仁ではない!」

例え己の拳で鴻鈞道人の全てが破壊されようと、アンリは絶対に死なない。
あの王子様の強さは、お前を超えるのだ。

そう心の底から信じる。

アンリの、鴻鈞道人の身体に鋭く、圧倒的で、全てを打ち壊すほどの、全力の魔拳が叩き込まれる。
その拳に込められた祈りが、彼の心臓に確実に届くように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 ……なんてことを。こんなこと、すぐにでも止めさせなきゃ。アンリくん、どうか耐えて!

 混沌の諸相で強化された燕さんもレイピアの斬撃も強力、でもきっと〈多重詠唱〉で強化した〈結界術〉なら一度は受けきれるはず。無傷ではいられないだろうけど〈激痛耐性〉で耐え抜くわ。
 次を受けたらきっと立っていられないから、ここで終わらせるしかない。攻撃が来る前に【UC:慈悲なき冬、来たれり】(WIZ)を発動よ。氷の槍による直接攻撃と環境変化による〈継続ダメージ〉で、一刻も早くアンリくんから出ていってもらうわ。

 その人を返してもらうわ、鴻鈞道人。これで終わりよ、咎人さん!

(アドリブ連携負傷等々全て歓迎)



●渾沌さえ凍る冬
目の前にいるのは、明らかにアンリ・ボードリエだ。
しかし、その中にあるのはもう彼ではない。

…なんてことを。

ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は思う。

骸の海は、過去とは、心優しき彼にここまで残酷なことができるのか。

猟兵として、こんなことは絶対に許せない。
仲間として、こんなこと絶対に許せるわけがない!

『こんなこと、すぐにでも止めさせなきゃ』

けれど皮肉なことに、鴻鈞道人への攻撃は、同時に心優しき彼への攻撃となる。
だからといって、攻撃の手を緩めればハッピーエンドは迎えられない。

「アンリくん、どうか耐えて!」
ゾーヤは吠える。敵を倒し、アンリを取り戻すために。
アンリの耳を通してこの叫びを聞いている鴻鈞道人にはどう聞こえただろうか。

混沌の諸相で強化された燕が、一瞬で目の前に飛来してゾーヤを襲う。
しかし、燕の羽ばたきよりも彼女の結界術の方が早かった。

結界が展開される。
燕の群れは衝突を恐れず、弾丸の如く結界にその身を特攻していく。

多重詠唱で強化された結界は薄氷のように脆くない。
その特攻虚しく結界に激突した実体なき燕の群れは、消滅するよりも早くその身を凍らせた。

だが、多少でも結界にダメージを与えられればそれで十分。
凍る燕の群れの背後から飛び上がり、勢いをつけアンリはその結界に先端の鋭く尖ったレイピアを突き立てる。そのひと突きで、彼女の結界は砕け散る。

パウダースノーのようにキラキラと光るそれに微塵も心を動かす事もなく、アンリは次の標的に狙いを定める。
微笑みは無く、その目には突き刺すような殺意があった。

これほどまでに渾沌とは強力か。
鴻鈞道人の攻撃を防ぎきれない事は、無傷では済まない事は予想できていた。
防ぎきれないならば、その身を持って受け止めるしかない。

アンリはそのレイピアで突き、切り掛かり、彼女の白い肌に傷をつけていく。
赤黒い液体が肌の上を流れ、渾沌の地へ落ち、消滅する。

切っても突いても、彼女は未だ倒れない。
ならば、とアンリは再び歪な祈りをUDCに捧げる。
ツビー、ツビー。
鳴き声が聞こえる。渾沌を纏った燕の鳴き声が。

レイピアと燕の群れ。
次を受けたらきっと立っていられない。
次が来る前に、ここで終わらせるしかない。彼女の聖痕が光を放った。

慈悲の無い冬が来る。渾沌さえ凍らせる冬が来る。
姿を変え続ける渾沌の地が、極冬の冷気で固まっていく。
冷気が生まれれば当然吹雪く。冷気が雪を運び、彼女の領域へと渾沌の地を変えていく。

意思なき燕が冷気、吹雪に、怯えている。
春告鳥は春に飛んでくるものだ。極冬に適応できるわけがない。
いや、燕だけではない。この極冬に適応できているのはゾーヤしかいない。

身を刺す突風、それに運ばれる氷雪に鴻鈞道人は視界も体温も体力も奪われていく。

「その人を返してもらうわ、鴻鈞道人。これで終わりよ、咎人さん!」
分厚い豪雪のカーテンの奥から姿見えぬゾーヤの声が聞こえる。
見渡せど、彼女の姿は目視できない。

その時。
一瞬、影が揺れた。
雪を、氷を蹴り、氷の槍を構えたゾーヤが飛び出す。
鴻鈞道人がそれに反応する間もなく、その身体を貫く。

一刻も早く彼から出ていってもらわなければ。
この冬にはきっと、彼も寒いと言うから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
POWに挑む

「お前は死なせない。奴を追い返す。
両方やり遂げてこそのヒーローだ!」
光焔を全身に宿らせ、迫る燕の霊を[誘導弾]で撃ち落とす
幾らいたとしても、突破口は出来る
[オーラ防御]を展開して近接戦闘態勢
レイピアはレザーで受け止める
渾沌の諸相は遠距離から振るうなら
ディゾンネイターで叩き、更に[衝撃波]で弾き飛ばす
近距離なら[零距離射撃]で吹っ飛ばす

「あんな顔のこいつが最後の顔合わせなんざ真っ平ごめんだ!
必ず生きて帰らせる!そのために、力を貸せ!ブレイザイン!」
光焔が煌々と黄金に輝き、そのまま叩き込む
傷1つ付けず、鴻鈞道人とアンリの繋がりを焼き払う
飛び出した鴻鈞道人には全力の拳を叩き込んで決着だ!



●正義VS渾沌
生きている確証がない。
でも、確実に死ぬと決まったわけでもないだろ?

それならきっと助けられる。いや、絶対に助けてみせる。

「お前は死なせない。奴を追い返す。両方やり遂げてこそのヒーローだ!」

赤い鎧を纏った、灼熱の如き熱い魂を持つヒーロー。
空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は鴻鈞道人の中にいるはずのアンリに向かってそう叫んだ。

「…随分と威勢がいいな。」
面白い。
その大口に見合う炎の破滅を、私の左目に見せてくれ。
アンリの口から鴻鈞道人はそう言った。

燕の大群が飛び立つ。
清導へと進路を取り、何千羽もの燕が風をその翼で操り猛スピードで襲い来る。

清導の勇気と、強い意志がエネルギーとなり全身に循環していく。
光焔が、力強い正義の炎が、清導の全身に宿る。

砲撃用超兵器サンライザー。
太陽のように熱い炎がミサイルのように迫る燕の霊に向かって射出される。
その熱気で、渾沌の地に陽炎が浮かぶ。

南の国へ飛ぶ燕といえど、この炎は度を超えて熱すぎる。
太陽の熱に焼かれ次々と燕の霊が撃ち落とされていく。

だが、燕の霊の数は膨大。
群れが壊滅する様相は未だ見えない。
燕の羽ばたきは未だ合唱のように空に響く。

そんなことは想定内、むしろ計画通りだ。
元より、清導は燕の群れの壊滅を狙っていたわけではない。

「そこだ!」

一瞬、誘導弾が当たった燕の群れの隊列が崩れた。
その隊列の穴は鴻鈞道人へと続く突破口だ。

オーラ防御を展開。
燃え盛る炎のようなそれは燕の霊が近寄ることすら許さない。
レッド・レッグで地を蹴り、瞬きの隙すらない速度で鴻鈞道人の元へ攻め入る。

激しい金属音。正義と渾沌が衝突する。

鴻鈞道人が振るったレイピアと、清導のブレイジング・レザーが打ち当たり火花を散らす。

「やはりこれでは全力が出せぬか」
一度背後へ飛んだ鴻鈞道人はアンリのレイピアを渾沌の地へ投げ捨てる。

そして構えるは、渾沌の諸相、白き殺戮する刃。
渾沌の諸相を手に、再び清導の間合いに踏み込む。

そこで清導が構えていたのは、サンライザー。
鴻鈞道人が次の手を準備している間、その砲撃用超装備の中では太陽のように熱い炎が熱を蓄え続けていた。
零距離でその熱が渾沌の諸相へ、一気に放たれる。

白き刃は真っ赤に染まり融解し、鴻鈞道人は衝撃で後方へ吹き飛ばされる。

全て諦めて微笑む。
それが転送前にグリモアベースで見た、アンリの顔だった。

「あんな顔のこいつが最後の顔合わせなんざ真っ平ごめんだ!必ず生きて帰らせる!そのために、力を貸せ!ブレイザイン!」

機械鎧はその正義の誓いに応える。
清導の身体に宿っていた光焔が黄金に煌々と燃える。
勢いよく、どこまでも燃え上がるセイヴァーズ・フレイム。

その炎を全て、鴻鈞道人へ叩き込む。
願いと正義の誓いを込めた光焔はアンリの身体を燃やすことなく、鴻鈞道人との繋がりを焼き払っていく。

それによって徐々に現れるは鴻鈞道人の本体。
その本体に、清導は全力の拳を叩き込む。
善なる力を宿したその拳に、渾沌は致命的なダメージを受ける。

正義の誓いが、呼び戻す声が聞こえるか。
困っている人には必ずその手を差し伸べられる。あとはその手を掴めばいいのだ。
ヒーローは必ず君を助けてくれるから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリー・フォーゲル
アンリさんを倒さず、あなたを倒す、そう考えるのは「ごうまん」というものでしょうか…?
でもきっとそれは不可能な訳ありません!だってリリーがいっぱい頑張ればいいんですから…!

野生の勘をフルに働かせて、フェイントをかけながら攻撃を避けて。激痛耐性で攻撃が当たっても怯んでなんかやりません…!相手の攻撃をなるべく避けていきます!

そして鴻鈞道人にUCを発動、三体の白蛇人形を操り、攻撃します。締めて、噛みついて、手加減無用です!

…でも気持ちはぐるぐる。ごちゃごちゃ。
手加減しないってとても大変なんですね。



●“ごうまん”

リリー・フォーゲル(みんなの食材(仮)・f30316)は問う。

『アンリさんを倒さず、あなたを倒す』

果たして、そう考えてしまうことは“ごうまん”であるか。

“傲慢”
それは驕り高ぶること。
それは思い上がること。
それは見下すこと。

果たして、彼女の考えはそれに当てはまるか。

自分がいっぱい頑張れば決して不可能ではないと、希望を抱き身を尽くす。
それは、傲りであり自惚れとも捉えることはできる。

しかし

春の夜の夢のように儚い彼女の思いは。
漢字でさえ記すことができなかった少女の“ごうまん”は。

果たして“傲慢”なのだろうか。

野生の勘が危険を告げる。

慌てて飛び退けば、先程自分が立っている場所にレイピアが刺さっている。
深々と刺さったレイピアを引き抜く。

アンリの目は、狩人のものをしている。目の前のリリーを獲物として見ている。
さながらスポーツハンティング。
昔から、羊も、兎も、鶏も、牛も、人間に狩られ、支配される生き物だ。

しかし、リリーは獲物でもなければ家畜でも、食材でもない。
危機が迫った時の牛の素早さは侮れない。
蹄の音が渾沌の地に軽快に響く。牛の脚力の強さに渾沌の地が抉れる。
右へ、左へ、また右へ。
時に狩人をその動きで惑わしながら、レイピアの鋒を避けていく。

鶏の羽が舞う。
白いはずの羽。その数枚が赤く染まっている。

アンリの強さは知っている。それが更に鴻鈞道人の膨大な力で強化されているのだ。
リリーに全ては避けきれない。

痛い。けれど、絶対に泣いたり、怯んだりしてやるものか。
動きを止める事なく、次の攻撃を避ける。
しっかりと相手の動きを見て、なるべく多くの攻撃を避けていく。
鴻鈞道人には絶対に負けたくないから。
それに

『リリーが泣いたら、きっとアンリさんが悲しむから』

ゆるっと、ふわふわな女の子はここにいない。
そこにいるのは猟兵のリリー・フォーゲルだ。

野生の勘というのは、逃げる時に冴わたるばかりではない。
レイピアを振る腕、こちらに詰め寄る脚。
そして、動きの一瞬の隙。

その隙に野生が牙を剥く。

リリーが指を踊らせれば、白い3匹の蛇の人形が鴻鈞道人に飛びかかる。
瞬く間にその身体を滑るように絡まり、拘束して締め上げる。
その姿はまさに捕食者。
一瞬にして、狩るもの、狩られるものの立場が入れ替わった。

3匹の蛇の鋭利な牙が彼の肉体に突き刺さる。
手加減無用!一回だけじゃやめてあげない。何度も、何度も、繰り返す。
締め上げ、骨が折れようと、突き刺し血が流れようと。
何度も、何度も。

これで、本当に大丈夫なのかな?
彼女の気持ちはぐるぐる、ごちゃごちゃ。

鴻鈞道人は絶対に許せないけれど、蛇に襲われているその身体は明らかにアンリのもの。
レイピアを振る姿も、苦痛に歪む顔も、確かに彼のいつものそれとは違う。
もっと優雅で、もっと優しくて。
けれど、必ずその一部に面影を感じてしまう。

今こうしていることが、本当に正しいことなのか。
見れば見るほど、戦えば戦うほどわからなくなる。

手加減をしないこと、本気を出すことの難しさを目の前の光景は無垢な少女に生々しく突きつける。

大切な人を相手に手加減しないということは、特に難しいということを胸に刻みつける。

“ごうまん”
それは白く、純真で、無垢な少女に、一滴の黒を落とし込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

洞木・夏来
私に何ができるかはわからないけど、何もしないのはダメだと思う。

先制攻撃には小刀の封印を解いて自動防御と再生を発動させます。<武器受け>をしてれば少しは攻撃を耐えれるけど……耐えたところでいったいどうすれば
私の神器じゃ鴻鈞道人を引き剝がせないし、アンリさんを傷つける? でも、もしそれでアンリさんが死んでしまったら
私が、アンリさんを、殺すかもしれない?いや、何か他に方法があるはず。ただ、私の中で何かが膨れ上がるのを感じる。黒くて、おぞましい何かが
え?【UC:リアライズ・バロック】(WIZ)が、勝手に、発動してる……まってまって!! 止まって!!!
攻撃の対処で動けない。<呪詛耐性>でも呪いが止まらない。やめて、私は、アンリさんを傷つけたいわけじゃないのに

私は、見てることしかできない。この場にいるのも精一杯な私なんかが、ここに来ること自体が間違いだったのかな
ごめんなさい、ごめんなさいアンリさん
(アドリブ負傷連携等々全て歓迎です/使用UCはメインと演出でWIZとSPD二つです)



●バロックメイカー

『私に何ができるんだろう』

『でも、何もしないのはダメだと思う』

しかし、だからといって何をすれば良いのだろうか。

洞木・夏来(恐怖に怯える神器遣い・f29248)は悩む。

強大な力を持つ鴻鈞道人に手加減はできない。
けれど、鴻鈞道人を倒してしまったらアンリも死ぬかもしれない。

どうしたらいいんだろう。何をしたらいいんだろう。

悩んでいたって、答えが出るまで誰も待ってはくれない。
アンリは夏来に急接近し、圧倒的な渾沌の力をその刀身に込め、レイピアを振り下ろす。

レイピアがその身を切り裂く直前に、小刀の封印を解く。
神器の小刀は自動的にレイピアの攻撃を防ぎ、傷を受ければそれを治癒する。

幾度となく続く鴻鈞道人の攻撃。
夏来はそれを小刀で受け続ける。

金属のぶつかる音。擦れる音。

何度それが鳴り響いただろうか?

これから何度鳴り響くのだろうか?

いつまでこれを続ければいい?

耐え続けたところで一体何になるのだろうか?

夏来は気づいている。このまま防戦一方ではいつまで経っても鴻鈞道人は倒せない。
彼女の神器に封じられた力は、自動防御と再生。
その二つではどう頑張っても鴻鈞道人を引き剥がす事はできない。

ならば傷つけて引き摺り出そうか。いや、その肉体はアンリ・ボードリエのものだ。

『もしそれでアンリさんが死んでしまったら』

『私が、アンリさんを、殺すかもしれない?』

嫌な想像ほど、嫌に明瞭に、グロテスクに考えてしまうものだ。

ナイフが、彼の首に刺さる。ナイフは動脈を切り裂き、引き抜くと傷口から血液が溢れ出る。止まらない。止まらない。彼が息をすれば、喉の穴から風音と血が跳ねて水音が聞こえる。苦しそうだ。喉に穴が空いて仕舞えば、空気なんてろくに肺に入らない。ナイフが、腕を、足を切断する。血が流れる。もはや死に至る出血だ。人間の肉は柔らかく、力を込めて何度も振り下ろせばナイフでだって骨を割ることができる。ナイフを刺すたびに彼は悲鳴をあげる。痛い、痛いと叫んでいる。肺からゴボゴボと音がする。血が溜まっている。か細い声で彼は、痛い、痛いと。彼の叫びを聞いているのも、彼の血を浴びているのも、私だ。

思考が現実に戻ってくる。息が荒い。嫌な汗が背中を伝っている。

いや、何か他に方法があるはず。
彼を傷つけず、鴻鈞道人だけを倒す方法が。

しかし、彼女の中で膨れ上がった、黒く、おぞましい何かは、既に彼女の中では押さえつけられないほどに大きく育っていた。

止めようと思って恐怖心は止められるものではない。
彼女の祈り虚しく、ユーベルコードの発動は止められない。

リアライズ・バロック。
おぞましき怪物が、鴻鈞道人を、アンリ・ボードリエを取り囲む。

夏来は呪詛耐性を、彼女自身が発動したユーベルコードに使用する。
止まらない。止まらない。

「待って待って!!!止まって!!!」

どれだけ叫べど、誰も待ってくれない。止まってくれない。

そちらへ行こうとしても、燕の霊の大群が立ち塞がる。
召喚したアンリのピンチに、ユーベルコードを使用した彼女を止めようとしているのだ。

リアライズ・バロックは止まらない。
鴻鈞道人は、アンリは、レイピアを突き立て、振るい、バロックレギオンを一体ずつ打ち破っていく。

しかし、数が悪い。

百に近いほどの怪物。
強いタナトフォビアにより生まれた怪物。
アンリの死を誰よりも恐れたが故に生まれた、恐怖の具現化。

「止まって!!!お願いだから止まって!!!」

アンリは、既に囲まれてしまっている。
バロックレギオンは、ナイフを持っている。

赤色が弾けた。

鉄臭い匂いが充満する。

水音を含んだ、肉を切る音。

白き渾沌の地が、アンリの血で赤く、赤く、染まっていく。
夏来は燕の群れの隙間から、見ていることしかできない。
燕も、彼の命が削られるに連れて、自然と姿を消していった。

「…ごめんなさい」

口から滑り落ちる言葉。
何度も、何度も、謝る。

謝ったって誰も聞いてはいない。

けれど、彼女はその言葉を、何度も何度も繰り返す。

最初から、この場にいるのも精一杯だった。
ならばここに来るのも間違いだったのだろうか。

誰も答えてはくれない。

誰も答えてはくれない。



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鴻鈞道人は撤退した。

アンリの中から、去った。

では、アンリは?

彼はいなくなったのか?

『無言の誠意』は

『拳の中の祈り』は

『冬のような思いやり』は

『黄金の誓い』は

『純白な“ごうまん”』は

『失う恐怖』は

彼に届いたのか?

誰も知らないその答えは

彼の目が覚めた時に、彼自身に語ってもらおう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月28日


挿絵イラスト