殲神封神大戦⑰〜蒼白・独白・白紙の明日
●グリモアベース
白い人狼の少年が、佇んでいる。
不健康そうな顔つきに無気力そうな目つきで、猟兵達を眺めている。
「呼ばれている気がしたんだ。多分、そういう事だと思う――力を、貸してほしい」
皆城・白露(モノクローム・f00355)は何かを弄ぶように手を動かして、少しばかり困惑したように呟いた。
向かうは『渾沌の地』、敵は『鴻鈞道人』。自らを『骸の海』と称する者。
今は、完全に滅ぼす事はできない。だが、相手が力尽きるまで攻撃すれば、その場では倒せる。そうやって力を削っていけば、撤退させる事も可能だろう。
敵は、猟兵が動くより前に攻撃してくる。攻撃する術、己を強化する術に長けている。能力には代償を必要とするものも多いが、現状完全には滅ぼせない存在にとっては、それは大した問題ではないのかもしれない。
見たものを説明する白露の思考に、ノイズが走る。
猟兵を導く、白露にとっては初めての力だ。
しかしそれは、こんなに不吉な感じがするものなのだろうか。
ざわつく胸の内を、短い言葉にして、猟兵達に投げかける。
「――『迷うな』。それだけは、頼む」
●それは白き『 』
黒い、塗り潰されたような場所だった。
浮き上がるように、白い人影が現れる。
それは、先程猟兵達を送り出したばかりの、人狼の少年。
しかし、何かが違う。進み出る足運び、猟兵達を見つめる表情、何よりも、溢れんばかりの禍々しい力。
私は渾沌氏……すなわち【骸の海】である。
お前達が生きるために踏みしめてきた、全ての過去である。
それは猟兵達の頭に直接響く、思念の声だ。
目の前の細身の人狼から発せられたものだという事は、直感でわかる。
随分とひ弱な躰だ。既に半ば骸のようなものではないか。
まあ、いいだろう。
白き人狼――の姿をした『鴻鈞道人』は、口の端を吊り上げる。
笑ったのだ、と理解するのに時間がかかるような、歪んだ笑みだった。
関根鶏助
関根と申します。やっぱり大体ノリと勢いです。
衝動に駆られて戦争シナリオ3本目をお送りします。
注意事項は以下。
敵はグリモア猟兵となった皆城・白露の身体に入り込み、融合してしまいました。ユーベルコードの詳細は敵の情報参照ですが、姿は白露のものです。所持武器は左右一対の黒剣、爪状に変形可能です。
相手の強力さ故に、戦闘で手加減する事はできず、担当の猟兵との心のつながりに訴えても、その戦闘力に影響を及ぼす事は特にありません(=知り合いかどうか等は一切気にせず参加して頂いてOKです)。
鴻鈞道人が力尽きるまで全力で殴り、猟兵については生き残る事を祈るしかありません。
敵は先制攻撃をしてきます。「グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する」事で、プレイングボーナスがつきます。
プレイングに利用可能な省略記号についてはMSページに記載してありますので、必要に応じご利用ください。
複数での参加は、【同行者の名前or呼び方(ID)、或いはグループ名:グループ人数】という形でプレイング冒頭に記載して頂き、できるだけ同日内(8:31~翌8:29)に送っていただければ検討致します。
※MSページの方では、プレイングの受付を「断章公開以降いつでも」としていますが、戦争シナリオに限り「オープニング公開次第いつでも受付」と致します。〆は基本的に、「🔵が必要数集まりシステム的に〆になるまで」です。
それでは、良き死闘を。
第1章 ボス戦
『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』
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POW : 肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : 肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : 流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
向坂・要
こりゃまた面白い事になってますねぇ。
見知った顔のらしくない様子に珍しいものを見た、とでもいいたげに、面白そうだと笑み浮かべ
後でそれ(融合とかグリモアとか)の感想、聞かせてくだせぇよ
なんて軽口叩きつつも遠慮も油断もなく
相手の攻撃を【見切り】なるべくこちらの出血を増やす様に受け、UC発動
【覚悟】決めちまえば【激痛耐性】もありますし片腕くらい吹っ飛んでも【継戦能力】に問題はねぇでしょ
ま、文句も後で聞きますぜ
と、【カウンター】の要領で【念動力】の加速も併せて全力で、お返しさせて貰いまさぁ
アドリブ
絡み
歓迎
●暁暗に、白獣舞う
(こりゃまた面白い事になってますねぇ)
向坂・要(黄昏通り雨・f08973)は、白い人狼『皆城・白露』を見つめる。
見知った相手の、『らしくない』様子――そもそもその前、白露が要を呼び、ここに導いた事からして、要にとっては予想外で――興味深い。
白露の曇天のような灰色の目が、左側だけぎょろりと動いている。
「後でそれの感想、聞かせてくだせぇよ」
要の呼びかけに、人狼の少年はどこか慣れぬ様子で口元を動かしている。
(悪くは、ない)
頭に響く思念の後、ようやくやり方がわかった、という様子で、声を出す。
「半ば骸のような躰だが、存外よく馴染む」
「お前さんには聞いてねぇんですが」
白露の姿をした鴻鈞道人が、一対の黒剣を抜いて一振りし、禍々しい爪の形に変化させる。
真っ黒な、地とも思えぬ地を蹴って、白い人狼が飛び掛かる。要も剣を抜くが、動きがわずかに遅れて、金属の爪が、要の腕を浅く裂いた。
見知った者と戦う迷いや、恐れではない。遠慮も油断も、する気はない。もう少しばかり観察したいという気持ちは、あったかもしれないが。
自在に形状を変えられる剣『Lücke』を短刀のサイズに抑えて、白露の十の指の黒い刃を受け止め、弾く。
要の銀色の髪が、シャツが、ベストが、黒い刃に切り裂かれる。皮膚に幾筋も傷が刻まれ、血が、流れる。避けきれていないように見えるが、そうではない。要の紫の瞳は、冷静に抜かりなく、戦いの天秤の揺れを捉えて、来るべき時を窺っている。
煮え切らぬ戦いに苛立ったように、白露は白い髪を振り乱して吼えた。右手の刃が、要の左肩に深く突き刺さる。
「――お返ししますぜ」
要が解き放ったのは、『陰陽太極鏡』。相手の力を解析し、吸収し、借用するユーベルコードだ。
傷つきすぎず、さりとて避けすぎず。戦いが始まってからの要の動きは、相手より血を多く流せば力を増すという『渾沌の諸相』を、不完全な形に抑えていた。そして今、借用したその能力が、より血を多く流している要の身体に、力を注いでいく。
白露も、ようやく要の狙いに気付いたのだろう。彼の身体から刃を引き抜こうとするが、一度はだらりと下がったはずの要の左手が、白露の腕を掴み、離さない。
ならばその腕斬り落としてやろうかと、白露の左手の爪が動く。しかし、今度は要の方が速い。
右手の『Lücke』を強く握り、強化された腕の力に、念動力で更に速度を加え――相手の腹目掛けて押し込む。
刃は白い人狼の痩せた胴を貫いた。白い服と肌と、獣の尾を、赤色が染めていく。
「ま、文句も後で聞きますぜ」
白露の獣の耳に、要はそっと囁いた。
今はまだ、彼に届きはしないのだろうけれど。
成功
🔵🔵🔴
未不二・蛟羽
アドリブ歓迎◇
白露、さん…?
…やだ。その笑顔は、俺が見たいやつじゃない
……返せ。アンタなんかにやんないっす!
笹鉄のロープワーク機動と跳躍力を生かしての空中戦
武器改造でNo.40≒chiotを自分とよく似た影を作り、囮になってもらい敵を攪乱。相手の狙いを少しでも逸らすことで野生の勘で致命傷だけは避け、超近距離まで踏み込んで
負傷承知で怪力で剣を押し止めつつ、死角から伸ばした尻尾の蛇が相手の異形となった部位へ食いつき破壊、引きはがすように喰い捕食
蛇が生命力吸収できたなら、それは俺の身体と融合したってことっすよね
そして、俺だってグリモアが、ある筈
それなら、少しなら『俺』で代用できる…!
約束、したっすよね
一人でどこかに行かないで
もっと、きらきら見たいって
真の姿を解放し継戦
UCを使用し、相手の技をコピー
代償にこちらも異形化しようが、獣と化した姿では些細な問題
痛みも耐える、身体が化わるのも、違う手足が生えるのも、慣れてるから怖くない
咆哮を上げ、限界まで蛇から渾沌の諸相を撃ち出して
ダカラ
守らせ、ル…!
●夜の虚の、ダンス・ナンバー
赤く染まった白い影が、藍色の瞳に映った。
「白露、さん……?」
未不二・蛟羽(花散らで・f04322)の声が、震える。
声に反応したのか、呼んでも『白露』は応えはせぬと煽っているのか、白い人狼は赤色を零す唇を歪めて見せる。
(……やだ)
首筋がざわついて、蛟羽はかぶりを振る。
(その笑顔は、俺が見たいやつじゃない)
「……返せ。アンタなんかにやんないっす!」
迸るようなその言葉に、白露の顔と声を使って、鴻鈞道人が応える。
「『これ』は既に『私』だ。返す物など、疾うに何も無い」
蛟羽の中に、冬の嵐が巻き起こる。
寒い。冷たい稲妻が、思考を焼く。
違う。彼はここにいる。違う。アンタじゃない。嘘だ。違う。返して――言葉が、追いつかない。
蛟羽の叫びは虚空を震わせ、猛禽の翼が黒色を押し上げるように広げられた。
白露の顔が傾いで、口元から吐息の代わりに血が流れ出る。電気でも流されたように震えた両腕、白いジャケットの袖を裂いて突き出たのは、翼を模したような白く醜い肉塊だった。
距離を詰めようと地を蹴り跳ねた蛟羽を、黒い爪の凶暴な輝きが襲う。しかしそれは、ただの影――正確には、影の子犬『No.40≒chiot』を、蛟羽を模した姿に変えた、囮だ。蛟羽本人は、白露の予測よりも遥かに高く、彼の視界の外まで跳躍している。
飛翔は困難な翼でも、落下する速度を制御して、タイミングをずらす事はできる。隙は、影の子犬がこじ開けてくれた。
蛟羽は己の血で生成したワイヤー『笹鉄』を空中から伸ばし、白い異形の右腕に絡ませて、全身の重さを乗せた靴底を、叩き込んだ。攻撃を避けきれず、後方に倒れそうになった白露だが、仰け反った異様な体勢から、跳ね返るように身を起こす。
指に黒い刃をぬらりと光らせて迫る白い人狼の両手を、蛟羽は躊躇わず掴み、互いに手を組む形で正面から押し合う。
力は殆ど互角で、それゆえにどちらも下手には動けない。互いに次の出方を窺う中、白露の腹の刀傷が湿った音を立てて開き、傷口を囲むように、白い触手と牙が生えた。
視界を侵食するように膨れ上がる白に、蛍光色の流星が飛び込む。蛟羽の尾の、蛇だ。蛇は蛟羽を捕えようと伸びてきた触手に牙を突き立て、白い肉を食い千切る。それは異形にとってはわずかな傷であったが、別の意味を持っていた。
おぞましい肉片が、蛇を通じて自分の中に溶け込んだのを確かに感じる。喰らう事は、命を取り込む事。融合する事。『誰か』の命の一部を、『俺』にする事。
胸の奥に、熱を感じる。グリモアの光は、この中にもあるはずなのだ。
(だから少しなら、『俺』で代用できるはず……!)
「約束、したっすよね。『一人でどこかに行かないで』って」
藍色の瞳に、黄金が揺らめく。夜空に炎を掲げるように。
「言ったっすよね、『もっときらきら見たい』って」
きらきらを諦めて、終わっていこうとしないで。
その、きらきらで――
「――からっぽを、満たして」
蛟羽の瞳の色が金に塗り潰されると、一つに括っていた長い黒髪が解けて、闇に広がる。その間から小さな猛禽の翼と、樹木じみたねじくれた角が生え、左の頬から腕にかけて鱗が浮かび上がる。右腕と両脚は獣毛に覆われ、虎を思わせるものに変わる。
解き放たれたのは獣としての蛟羽の姿、しかしそれだけではない。尾の蛇が顎を開くと、蛟羽の身体は軋むような音を立てながら、更に変化していく。
異形の肉を取り込んだ事で、蛟羽の身体も相手と同じ力を得ている。背の翼が変形し、羽毛を生やした長い腕に変わる。
痛みは走るが、耐えられる。恐怖は、ない。
獣と化した身体がどう変わろうが、それが今までとどんなに違う形だろうが、些細な問題、『慣れた事』でしかない。
蛟羽の手の中で、白露の手の骨が砕ける音がした。両腕の紛い物の翼が、腹の白い触手が、蛟羽の身体に突き刺さる。思わず掴んでいた手を放したが、代わりに蛟羽の尾の蛇が、白い触手に喰らいつく。その姿もまた、角のような突起をいくつも生やし、龍を思わせる異形に変貌している。
砕けた白露の手も、その形状を変えていく。
それは最早、己が形を支払って互いを壊しあう、獣という枠すら超えた異形たちの喰らい合いだ。
蛟羽は牙の並んだ顎を開き、もどかしそうに動かす。
「ダカラ……守らせ、ル……!」
ようやく発したその言葉は、自分でも意味がわからぬまま、咆哮の中に消えていった。
成功
🔵🔵🔴
サンディ・ノックス
◇○
知った顔じゃないけど
このヒトのために懸命に戦うヒトの姿を見た
俺達を送り出す前に
これが初めての予知だとこのヒトは言った
初めてを最後になんてさせたくない
戦っていたヒト達の悲しい顔を見たくない
だから俺も全力を尽くす
胸鎧と同化
全身鎧の異形と化し
暗夜の剣を抜き大剣に変形させてダッシュ
敵があのヒトの身体をいじって俺を攻撃してくる
気分のいいものじゃない
生きている命を弄ぶな過去が!
大剣で攻撃を受け流す
凌ぎきれなくとも俺は痛みに鈍い
そう簡単に動きを止めてやらない
大剣から鎖鎌に変形させて投擲
敵を束縛狙い
最低でも腕とか脚に絡ませて動きを制限
指定UCを発動し背後からもうひとりの攻撃に敵を殴らせる
手加減は…しないよ
●暗夜に、剣は惑わず
サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、黒い地面を踏みしめる。
ずるり、ずるりと、ヒトが動くものとは到底思えぬ音がする。
白い異形に埋もれた、少年の顔が振り返る。
かの少年と、面識はなかった。
だが、猟兵を導くのは初めてだったらしい彼の、『初めて』を『最後』にはさせたくなかった。
彼の為に懸命に戦っていたヒトに、悲しい顔はさせたくなかった。
それゆえに、サンディは今、ここに立っている。
白露の身体を異形に変えて戦っている鴻鈞道人が、それでも頭は残しているのは、あの身体が猟兵のものであると忘れさせぬ為か、『破滅を見る』事への執着故か。
灰色の瞳はさながら、すりガラス越しの暗闇である。サンディを映してはいるが、見ているのかは定かでない。
血の跡を残す唇の代わりに、腹に大きく開いた穴が、牙を揺らして呻きのような声と吐息を漏らした。
サンディは息をひとつ吸い、気迫を短い声にする。胸鎧が変形して広がり、全身を覆っていく。鎧の色は周囲と同じ黒、装飾の赤色だけが浮かび上がって見える。
すらりと抜いた暗夜の剣を大剣の姿に変えて、サンディは一歩踏み出す。黒い世界に浮かび上がる白い異形の後ろで、血に濡れた白い獣の尾が揺れて膨れ上がり、サンディに向かって一気に伸びた。
肉の形を無理矢理変える音が、サンディの耳に届く。その音も、歪んでいく様も、気分の良いものではない。
正面から迫る尾を大剣で受け止めて軌道を変え、サンディは声を荒らげる。
「生きている命を弄ぶな過去が!」
「絶えず時は運び、全ては土へと還る」
誰もが皆、過去になる。そう言って、白い人狼は口元を歪めた。
「――そう」
白い尾を跳ねのけて、サンディは息を整える。
怒っていたのだと、思う。でも、相手の言葉に、むしろ冷静になった。
胸の奥の炎を、『目の前の敵を倒す』という一つの方向に、束ねていく。
サンディは再び駆ける。彼を捕えようと伸びる白い触手を叩き斬り、更に大剣を一振りすれば、それは瞬時に鎖鎌に変化する。流れるような動きで投げつけた鎖は、白い異形の腕に絡まり、動きを封じる。
「これでは、そちらは動けまい」
こちらには、鎖を解く『手』も、このままお前を縊り殺す『手』も、まだこんなにあると言いたげに、白露の身体に生えた触手が動く。
「これでいいんだよ」
サンディは、笑って見せる。
「だって――単純な攻撃だけじゃ飽きるでしょ?」
彼が放っていたのは、鎖鎌だけではない。もう一人の自分――彼は『悪意』と呼ぶ、名もなき呪われた武器に宿る魂を、白露の背後に飛ばしていた。
「手加減は、しないよ」
黒い虚空から現れた拳が白露の身体に叩きこまれ、白い異形は黒い地に転がった。
大成功
🔵🔵🔵
ゴリラ・シャーク(サポート)
賢い動物の力持ち×鮫魔術士
ゴリラの身体にお腹にサメ(シャーク)が突き刺さってます
ゴリラは優しい「」で(おいら、~くん、~さん、うほ、だな)
例「よろしくうほ」「おいらが来たからにはもう安心だな」
シャークは荒々しい『』で(オレ、おめぇ、か、だろ、かよ、~か?)
例『よろしくたのむぜ!』
『なんだぁ、オレに喰われてえのか?』
シャークは元々UDCであり人やオブリビオンを食べていいかとゴリラによく聞きます。ゴリラは基本的に止めます。サメも大抵冗談で言ってます。
ゴリラは怪力を使い物事を解決します。基本的に戦術や行動方針もゴリラが決めます。
シャークは鋭い牙と水泳能力を使います。ゴリラに刺さったまま泳ぎます。
●薄明を目指し、渾沌を泳ぐ
暗闇に、彼は降り立つ。正確には、彼ら、だろうか。
直立した逞しいゴリラ、その腹に鮫の顔、背中側に鮫の尾――それが、ゴリラ・シャーク(森の賢者×海の支配者・f24959)の姿である。
渾沌の黒の中に立つ白い異形の表情が、ほんの少し困惑したように見えたのは、気のせいだろうか。
『おう! あいつなんだか、オレ達にちょっと似てねえか!』
喋りだしたのは、ゴリラの腹の鮫、シャークだ。白露の腹に開いた傷口、今は牙と触手が並ぶそれを見て、ほらお揃いだと自分の牙を鳴らす。
しかし、あちらは『骸の海』だという鴻鈞道人が、猟兵である白露を無理矢理飲み込んだのだ。互いにこの形を受け入れている自分達とは違う。ゴリラは白露に静かな、しかし強い眼差しを向ける。
『喰っていいか?』
シャークが再び牙を鳴らす。
「ほどほどに、だな」
いつもの軽口なのはわかっていたが、ゴリラは真顔でそう返す。
かの渾沌を、彼らを送り出した時の白露にはなかった、今も音を立てて増殖し続けている異形の肉を、食い千切るぐらいの覚悟は必要なのだろうが、『食べていい』とは、さすがに言いづらい。
『なんか、下手に喰ったら、腹壊しそうだがよ』
だな、とゴリラは頷いた。
白露の尾が槍の如く変形し、鋭く真っ直ぐに、ゴリラの身体を穿とうと伸びる。跳んで避ければ、その後を別の触手が追う。黒い世界に、白いラインが複雑な模様を描く。
『っとぉ!』
シャークが泳ぐように尾を振って、ゴリラの身体の向きを変えると、触手がそのすぐそばを通り過ぎていく。方向転換して更に追い縋る白色を、ゴリラが蹴って宙を駆ける。後方から伸びる触手は、鮫の尾が跳ねのけた。
一度は勢いを失い退いた触手だが、ゴリラが着地すると、そこを狙って再び伸びてくる。自分の胴をかばう様に伸ばしたゴリラの腕に、白い触手が絡みつく。
白露はそのままゴリラを引き倒そうとしたが、ゴリラは動かない。それどころか、白露の方が引っ張られていく。
森の賢者は優しくも強きもの。力勝負なら、ゴリラの領分だ。白露も抵抗してはいるが、引く力も耐える重量も足りない。
ゴリラが気迫を込めた声をあげ、触手を掴んで思い切り引けば、相手の身体が浮き上がる。
『よーし、やっちまえ!』
シャークが楽しげに叫ぶ。白い異形はゴリラを中心に幾度か振り回された後、黒い地面にびたんと音を立てて叩きつけられた。
成功
🔵🔵🔴
アトシュ・スカーレット(サポート)
性格
戦うことと悪戯が好きな悪ガキ
根は真面目で常識人なので実は常識の範囲内でしかやらない
目の前で助けられる人がいるなら積極的に救おうとする
口調は「〜だな。」など男性的
女顔がコンプレックスなので女性と間違えられたら殺気が溢れるタイプ。殲滅するのみ
戦闘
【呪詛(腐敗)】を何かしらの形で使用する。昔機械相手にやって痛い目を見たのでその場合は使わない
前衛も後衛もやれる万能型だが、前衛の方が好き
複数の武器を同時に操ることも可能
高速戦闘も力任せの戦闘も状況に応じて使い分ける
(装備していれば)キャバリアにも対応可
非戦闘
聞き耳などを駆使した情報収集を中心とする
化術で動物に化けて偵察することも
ギャレット・ディマージオ(サポート)
●設定等
ダークセイヴァー出身の冷静沈着な黒騎士です。
オブリビオンに滅ぼされた都市で自分だけが生き残った過去を悔い、人々を守ることを重視して行動します。
●戦闘において
「及ばずながら、手助けさせて貰おう」
「貴様の相手は、この私だ!」
「なんと強力なユーベルコードだ……! (解説) 直撃すれば一たまりも無いぞ!」
・牽制攻撃
・敵の攻撃から他の猟兵や一般人を守る
・敵の攻撃を回避してカウンター
・ついでに敵の強さを解説する
など、防御的・補助的な行動を得意とします。
メイン武器は「黒剣」です。
他は全てお任せします。
別の猟兵との交流や連携等も自由に行ってください。
どうぞよろしくお願いします。
●白白明け
――さて、目の前の白い異形、どうしてくれようか。
暗闇に立つのは、思案顔のアトシュ・スカーレット(狭間を歩く元放浪者・f00811)。
アトシュをここへ導いた白い人狼は今、ここに在って、ここにいない。
(意識が飛んでるなら、今はその方がいいかもしれない……けど)
戦うのは好きだ。楽しめそうだと、心が疼く。
その一方で、『彼を助けなければ』という思いもある。
しかし何よりも、白い異形の肉に埋もれた顔が、アトシュを一瞥して、怖気づいたかと言いたげに歪んだのが、気に食わなかった。
「及ばずながら、手助けさせて貰おう」
金属の擦れる音と共に姿を現したのは、ギャレット・ディマージオ(人間の黒騎士・f02429)だ。漆黒の鎧に身を包み、顔も兜で半ば隠れている彼の姿は、渾沌の地の黒に紛れて少々亡霊じみていたが、かの渾沌に与する者ではない事は、滲み出る『人を守る』という意志でわかる。
「助かるぜ」
相手は一人とはいえ、触手を何本も生やした異形だ。こちらの手も多いに越した事はない。アトシュはそう言って、黒い騎士に笑みを向けた。
「来るぞ」
ギャレットは低く告げる。
白露の唇が震え、言葉と血を零す。破滅を、炎の破滅を、と、呪詛のように繰り返す。その度に、肉が捻じれる。骨が軋む。
「身体を代償に異形化させる『渾沌の諸相』か」
兜の奥で、ギャレットは目を細めた。
既に何度も同じ力を行使している白い人狼の身体は歪みに歪んでいて、最早何を代償に差し出しているのかは定かでない。
白い尾と、翼のような肉塊の生えた腕が伸びる。腹に生えた触手も、二人を捕えようと、鳥籠のような形に広がっていく。
一つ目配せをした後、アトシュとギャレットは同時に動いた。
相手の人となりは知らずとも、戦う者としての呼吸は感じ取れる。左右に分かれてそれぞれ剣を抜き、まずは白い触手を薙ぎ払う。
「もう、ひとつ!」
アトシュを掴もうと伸びた手が、黒い地面に突き刺さる。その腕を足場に駆け、魔力で編まれた刃を長く伸ばして振るえば、偽の翼が湿った音を立てて地面に落ちた。
「我が黒剣の姿は一つではない」
ギャレットの声に応え、影の如き剣『漆影剣リグガガ』が音もなく伸びる。刃の鋭さは残したまま、鞭のしなやかさを得た剣が、襲い来る白を切り刻んだ。
そのまま更に前に出れば、黒い鞭剣は白い異形に絡みつく。本来ならばそのまま胴を真っ二つに断ち切る事もできたはずだが、異形の腹に開いた、牙の並んだ傷口が、黒い鞭剣を咥えこんで動きを止める。
黒剣の柄を掴んで、異形に引きずられぬように両脚に力を籠めるギャレットを、白露の左目がぎょろりと動いて眺めた。一度弾かれた腕と尾が、ゆっくりと黒い騎士に向けられる。
「――今だ!」
ギャレットは叫ぶ。
異形がこちらを潰せるとみて、意識を向けるのを待っていた。共に戦うアトシュもまた、黒い騎士にとっては守るべきものなのだから。
アトシュの方も、彼の意図は理解していた。ギャレットの後方から、白露に向かって、跳ぶ。
「巻き込んだらゴメンな!――原初の鼓動、我が手の内に!起源たる力にてこじ開けろ!」
アトシュの手から巻き起こったのは、嵐だ。それも、ただの嵐ではない。腐敗の呪詛を含んでいる。ここが空も地面も黒一色の渾沌の地でなければ、その禍々しい色がもっとよく見えただろう。
嵐に触れた白い異形が黒く染まり、ぼろぼろと崩れていく。
「破滅を――、破滅、を」
言葉を紡ぐ唇が、驚いたように見開かれた灰色の瞳が、嵐に飲まれた。
異形のシルエットが、小さくなっていく。
嵐の後、黒い地面に、白いものがひとつ残っていた。
それは、ひとの形をしていた。歪んだ肉は呪詛で腐り落ちて消え去っている。
ギャレットは地面に伸びたままだった鞭剣を元の姿に戻して鞘に納め、白い人狼に歩み寄る。
人狼の少年は全身に傷を負い、肌は青白く、目を閉じて動かない――が、微かに呼吸をしていた。
「大丈夫か?」
アトシュが、その様子を覗き込んで声をかける。
「ああ、大丈夫そうだ」
ギャレットは安堵したように、深く息を吐く。
「いや、お前もだよ」
アトシュが放った「暴走術式・気候学式」は、制御が難しい。暴走とまではいかなかったし、一応先に謝りはしたが、本当に巻き込んでいないかは、気にかかっていた。
「問題ない」
ギャレットは簡潔に答える。実際、負傷らしい負傷はしていない。彼の気遣いを察して、その表情がほんの僅かに柔らかくなる。
黒い世界に、微かな光が灯る。白露の中のグリモアが、動き出したのだ。
渾沌は祓われて、悪夢は破られて――真っ白な、朝が来る。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴