殲神封神大戦⑰~不定の未来に輪郭を
●仙界・渾沌の地
その日、仙界から多くの猟兵へと投げかけられた声があった。
己こそ骸の海。お前達が生きるために踏みしめてきた、全ての過去である、と。
胎動がごとく、常に変動し形定まらぬ渾沌の地の只中で。
これまで静かに積み上げてきたものが、現在へと牙を剥く。
無差別に発生する、渾沌の諸相。翼、触手、刃、牛の頭。
ましろのそれらの中、ただひとつ定まった『左眼』。
それだけが、ただひとつ変わらぬまま、炎の破滅を見届ける為に、かたちを定め続けている……。
●グリモアベース
大戦も佳境に入ったグリモアベースにて、コルネリア・ツィヌア(人間の竜騎士・f00948)は、ひどく難しい顔で猟兵たちを見つめた。
「渾沌の地への突入が可能になったわ。それに伴って、鴻鈞道人の出現位置を予知したのだけれど」
これまでとは勝手が違うことがある、と前置きしてから、コルネリアは説明をはじめた。
「鴻鈞道人は、『自分はオブリビオンではなく、骸の海そのもの』と自称しているわ。その真偽や意味は一旦置いて、この戦場でどういう意味があるかをまず伝えます」
かのものの自称に沿って、渾沌の地ごとその性質が変化する。
他の場所に出現したオブリビオンを再現する『再孵化』を行うこともあれば、鴻鈞道人そのものが現れる場合もある。
今回は鴻鈞道人本人のかたちで現れる箇所を予知した、のだが。
「前提として、現時点で鴻鈞道人を完全に滅ぼす方法は、わからない。ただ、戦闘で殺す事そのものは可能。渾沌の地での戦闘を続ければ、撤退するわ」
今回の戦の総大将である大賢良師張角に挑むには、戦闘を続けて撤退に追い込むことは絶対に必要なことだ。
「これから向かうケースでは、鴻鈞道人は、自らの肉体を渾沌の地と一体化。不定形の怪物に変異して、強力な攻撃を、絶対に先制で仕掛けてくると予想されるわ。この『先制して発動』は覆せないものと考えて」
これらは、ここまで戦ってきた数々の強敵相手でもあったことだ。
「問題なのはここから。――相手のユーベルコードの詳細が、判明しない」
恐らくは発動するまで詳細はわからないだろう、とコルネリアが苦い顔で言う。
「骸の海を自称することに関係しているのかもしれない。ともかく、辛うじて絞り込めた範囲で、伝えておくわね」
まず、何らかの炎で『燃やす』攻撃があるようだ。
それは、少なくとも鴻鈞道人の意思で延焼や消去が可能なものであるらしい。
「トリガーになる何かの命中で燃えることはわかるけど、その肝心のトリガーの中身がわからないし、炎の性質もわからない」
これまでの戦で対策の材料としてきた部分が、かなりの割合で封じられている。
「次は、『何か』の放出によって、自身を中心に相当の広範囲内の全員を高威力で無差別攻撃する」
シンプルな高威力と広範囲とわかっているだけましかもしれない、と、コルネリアが遠い目をしている。
尚、範囲については、戦場全体と思っていた方が良いだろう。何しろ、戦場自体が相手の懐の中と言っても良い。
「あとは、やっぱり広範囲内にいる相手全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する『何か』で包囲攻撃してくるわ」
やはり詳細は不明だが、包囲攻撃に使われる『何か』の本数は、100本より下という事は絶対にないだろうという。
本数でくくれる何かが飛んで来る――わかるといえばそれだけだが、それとて、言葉遊びでどうとでもなってしまう。
とどめとして、『何か』の中身は、挑む相手が変われば都度変わってくる可能性が、とても、高い。
「…………説明してて自分でも、参考になるのかわからなくなってきたんだけど」
頭痛を堪えるようにこめかみを押していたコルネリアが、ひとつ深呼吸をして顔を上げる。
「この通り、常に初見殺しの攻撃になんらかの形で対処して、その上で、一太刀浴びせてやって」
先も言った通り、戦闘で殺すことは可能である。先制内容の不確定さ、変幻自在さこそが最も厄介なのだ。
そこまで説明したところで、コルネリアは少しの沈黙を挟み、口を開いた。
「これまでに予知した色々な事件で、私が確信出来たのは、猟兵の皆が居なければ大変な事になるということ。そして、皆が居ればきっと何とかなるだろうということだった」
未だにその確信は破られたことがない。
むしろ、予知や予想はいつも、思わぬかたちで飛び越えられてきて、今ここに居る、と。
「詳細が不明瞭なのが申し訳ないけれど、頼みたいことはいつもと同じ。あの敵を、倒して欲しい」
あなたたちの培ってきた全てで、と、言葉を繋げる。
「いつもとは勝手が違うけれど、その上で、いつもの貴方達らしさで、どうか道を切り開いて。――武運を祈ります」
いつもどおり締めくくって。コルネリアは、戦場への転送を開始した。
越行通
こんにちは。越行通(えつぎょう・とおる)です。
『殲神封神大戦』のシナリオをお送りします。
ラスボス手前、強敵『鴻鈞道人』との対決になります。
データで『undefined』となっている部分は、リプレイ執筆時まで『判明しません』。
ガチの不確定名称です。オールウェイズ初見殺し。
ですが、倒せない相手ではありません。
それに伴い、プレイングボーナスは以下となります。
『プレイングボーナス……鴻鈞道人の「詳細不明な先制攻撃」に対処する。』
蓋を開けるまで詳細不明、一発勝負となります。
文字通り未知の未来を、切り開いて下さい。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『渾沌氏『鴻鈞道人』undefined』
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POW : 渾沌災炎 undefined inferno
【undefined】が命中した対象を燃やす。放たれた【undefined】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 渾沌解放 undefined infinity
【undefined】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 渾沌収束 undefined gravity
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【undefined】で包囲攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夜刀神・鏡介
猟兵の優位性はグリモアによる事件の予知と敵の行動予測による所が大きいと言ってもいい
今回はその幾ばくかを封じられた形になるが……だが、それだけで勝てるとは思わない事だな
神刀を抜き、神気によって身体能力を強化しておく
とりあえず包囲攻撃してくるという事は分かっている
詳細は分からないし、常に移動することで集中攻撃を受けないようにしながら、攻撃がきた所に向けて斬撃波で迎撃
もし状態異常を与えてくるような攻撃でも、浄化と破魔の力で影響は抑えられる
初撃を凌いだら、壱の秘剣【銀流閃】を発動。初撃によって受けたダメージを回復すると共に、残りの飛翔体も迎撃しつつ、鴻鈞道人の元まで一気に接近して斬撃を叩き込む
●
(来たか)
仙界最深部、渾沌の地。
ひとときたりとも同じではない白色の上に、黒い外套を翻して、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)が降り立った。
靴音が聞こえるかというタイミングでその手は既に白鞘に添えられ、封じられた神刀が、抜き払われる。
(渾沌収束。私のたもとから、逃れることあたわず)
一瞬にして為す鏡介の技量を凌駕し、襲来する白色は、あらゆる武器のかたちをしていた。
ひとときたりとも止まらず、横へ跳びながら、刀を払う。
刀身から逃れたものか、そういう性質であるのか。長柄の槍であったものが、短槍、短刀、湾曲した刃と、かたちを変える。
前もって読むことが出来なかった一端を理解しながら、斬撃波によって複数の『武器』を巻き添えに吹き飛ばす。
――猟兵の優位性はグリモアによる事件の予知と敵の行動予測による所が大きいと言ってもいい。
「今回はその幾ばくかを封じられた形になるが……だが、それだけで勝てるとは思わない事だな」
(では、どうする)
白色の武器が、今も尚、空間を埋め尽くしている。
神刀から溢れたあらゆる力が、火花のように烈しい加護を与える。
無数の武器の集中を避け、それにより常に変わる軌道を超えて更なる迎撃の一手を放ち、描かれた幾何学模様を大きく乱して。
骸の海を名乗るに相応しい、無数の武器による最初の一撃を凌いだ。
「――ここからが、本番だ」
脈打つ混沌の白の中に、白銀色の輝きが生まれた。
目を惑わせるような白色のただ中を、黒い衣をはためかせて、鏡介が駆け抜ける。
彼を中心に広がる白銀から斬撃が生まれ、取り囲む武器の数々をやすやすと切り裂いてゆく。
白銀は内側へゆくごとに月白色へと色を変え、先ほどの凶刃による傷へと寄り添う。
(――……)
鴻鈞道人の左目が、僅かに細められる。
同時に動く、打ち残した白色の武器。
鏡介は、全体を見て、感じ取る。――ひとで言えば、左手を掲げる仕草。
解放した神気と、限界を超えた手足。切り開いた道と、寸分たりとも間違えない、己の間合い。
(その足が、踏みしめてきた)
最も効果的に『武器』を切り裂く。
(罪深き刃)
いつ踏み込み、構え、切り払うか。
ひとつでも間違えれば全てを失う、渾身の斬撃。
――ためらいは一切なく。
ただこうすると決めた通りに、白銀を大きく払った。
鴻鈞道人としてかたちを取ったもの。その存在への、最初の反撃。
(罪深き刃)
二度目の言葉に、返答はなく。当たり前のように靴が地を蹴り、白銀が閃き続ける。
既に鏡介は、二撃目、三撃目へと、思考を進めていた。
大成功
🔵🔵🔵
ミア・ミュラー
んー、なんだかすごいものみたい、ね。けど……ん、諦めなければきっと何とか、なる。
何がくるかわからないなら、得意なことで対抗、ね。射程外まで頑張って、逃げる。攻撃を避けるのは無理そうだから、広げた傘から「オーラ防御」で体を包むバリアを張って、ダッシュで駆け抜ける。
壊されたり動きを封じられたりで逃げきれないなら、杖から突風を起こして自分を吹き飛ばして一気に、離れる。ソリッドダイヤを盾に正面だけ防いで、あとは受けても、仕方ない。精神をおかしくするものは光風桃帯が防いでくれる、はず。
逃げ切ったら、敵が見えて詠唱できれば放てる【流れ星】で、一体化してる地面ごと、吹き飛ばす。未来はまだ終わらせない、よ。
●
ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)がその地に足を踏み入れた時、思わず息を呑んだ。
鴻鈞道人の肉体と一体化した渾沌の地は、あらゆる白で溢れていた。
純白とはいえない。様々なニュアンスの白が、でたらめに混ざり合い、あるいは押し合って、奇妙な迷彩を作り出している。
「んー、なんだかすごいものみたい、ね。けど……ん、諦めなければきっと何とか、なる」
自分に聞かせるように強く言い切り、魔法の傘を広げる。
ぽぉん、と、聞きなれた音を耳にしながら。あらゆる場所から形成されつつある白い『武器』を見据えた。
形は、剣だろうか。槍か。棒、かもしれない。原始的な、武器のかたち。
「頑張って、逃げる。得意」
何が来るかわからない、という前提を前に、ミアは心を決めて、地を蹴った。
頑張って逃げることはアリスのたしなみ。鍛えた健脚は、大抵のものには負けはしない。
レースのあしらわれた白い傘の護りが、全身を包む。
空中、地上、あらゆる場所から発生した『武器』からの、大逃亡の始まりだ。
(…………)
走る。走る。走る。
耳の真横を通り過ぎ、地面に突き立つ武器。
真正面から、フェイントを交えて襲いかかってくる武器。
白い景色の中で、唐突に生まれたように、姿を隠した武器。
安全な、逃げ場所など、何処にもないかもしれない。
武器の溢れるこの場所の何処かで、言葉を発しないまま、ミアを見ている存在を、否応なしに感じる。
「……っ」
取り出した杖で風を呼ぶ。反対の手を正面にかざして、ダイヤのかたちをした護りを浮かべる。
取り囲むように武器が飛んで来るのを感じる。――まだ、負けない、と、強く思う。
杖を後方に構え、突風を起こす。地を踏む足を離して、飛ばされるままに、前へ、前へ。
追いすがる武器、通り過ぎる武器の刃の幾つかが、ダイヤの護りをすり抜けて、掠める。
――黒い世界。茶色の世界。地下の世界。蒼天の世界。青空と緑の世界。鉄の塔の世界。
――大規模な悲しみ。ひとりぼっちの苦しみ。小さな集団の泥沼。逃げられなかった。
歯を食いしばる。目の前を、リボンの柔らかな色彩が過ぎり、あの武器が纏うものの正体を知る。
仮にあの中に自分がいたとしても、探し出すのが困難なほどの過去。
逃げて。逃げて。逃げて。
何処に『居る』かは、何故か、ずっと、わかっている。
傷を堪えて、ダイヤの護りと思い切った突進、最後まで信じた自分の足、すべてを使って、武器が途切れた場所まで辿り着く。
広い広いこの場所を逃げ続けた。それでも、振り返れば、見える――
「集え、天を揺蕩う不滅の理……闇を祓う、光となりて降り注げ」
あれほど走った距離が、ゼロと言っていいほど、よく見えた。
持ち前の視力のお陰だけではなく。白の中で、その左目だけがやけにはっきりと、かたちを備えていた。
だから。
この不可思議な土地であっても。願いの通り、星が降り注ぐ。
「未来はまだ終わらせない、よ」
白い武器たちを、巻き添えに撃ち落して。
白い世界の端と端で、互いを見た。
左目の持ち主へと、逃げ場なく流れ星が降り注ぐ。
ひとの輪郭と周りの地面を吹き飛ばし、白が視界を染める。
そして、ミアは感じ取る。
――いま砕けた武器、地面、すべてが、あのひとそのものだ、と。
大成功
🔵🔵🔵
御形・菘
そもそも相手方の戦法が分かっているという時点で、普段からこちらが有利なのだからのう
イーブンの状況というのも許す寛容さが妾にはある!
まずは道人に向かって全力で突っ込む!
防御のために邪神オーラを前面に集中させ、更に左腕でガードしつつな
全周から包囲攻撃されるのがマズいなら、攻撃の集中する方向をこちらから調整すればよい
ダメージは我慢、質より量寄りの攻撃なら、すぐには墜とされはせん!
はーっはっはっは! イイ感じにアガってきたぞ! 下準備の手伝いに感謝しよう!
左腕の届く距離からは決して離れはせん!
よく分からん形態だろうが、邪神の一撃の前には関係ない! エモくド派手にブッ飛ぶがよい!
●
「はーっはっはっはっはっ! 妾が! 来たぞ!!」
混沌とした白の中。高笑いと共に降り立った御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は、腕から湧き出す黒いオーラを場に撒き散らし、口の端を吊り上げた。
そのまま一瞬たりとも止まらず、降り注ぐ武器の雨の中、全力で走り出す。
「そもそも相手方の戦法が分かっているという時点で、普段からこちらが有利なのだからのう。イーブンの状況というのも許す寛容さが妾にはある!」
纏う黒で武器の幾つかを絡め取り、振るう左腕が致命傷を避ける。
禍々しくも輝く『腕』に傷が刻まれようと、その歩みは止まらない。
その傷が増すごとに結ばれる幻が、じわじわと菘の精神に爪を立てる。
たとえば、全力で挑んだ配信に関わる数字の減少であるとか。
たとえば、ひたすら映えを追及した動画のデータが壊れていただとか。
たとえば、……もう、誰も、ついてくるものがいなくなる、などといった事柄が、過ぎって。
「待て待て待てい。微妙に生々しい上に派手さに欠けておらぬか!?」
(何を見たのかは知らぬが。生々しさのない『生』の上に、時の運びがあろうものか)
ひときわ大振りで武器を払った後の感想に対し、鴻鈞道人の意識は至って真面目だった。
この精神攻撃は恐らく自動的なもの。菘本人から呼び覚まされる、反動である。菘本人もそれは薄々判っていた。
「はっ。ははっ」
大切なものを引っかくには、それをよく知っている必要があるのだ。
「はは。ははは。はーっはっはっは!!!」
鴻鈞道人が。ひいてはこの場所がすべて過去だというのなら。
菘の重ねてきた伝説も、喝采も、ここにあるということだ。
左腕として、共に。敵の一部として、そこら中に。
「はーっはっはっは! イイ感じにアガってきたぞ! 下準備の手伝いに感謝しよう!」
その身にはいくつもの傷があった。身を守るように掲げていた左腕は特に酷く、痛々しい。
である筈なのに、ひどく誇らしげにその腕を掲げて、最後の距離を詰める。
膨れ上がる禍々しきオーラを、直視出来たのは、かの左目だけ。
オーラにあてられたように軌跡を狂われた武器を踏み越え、踏み込んだ爪先が、破片が浮くほどに地面を削る。
「よく分からん形態だろうが、邪神の一撃の前には関係ない!」
羽根を生やし、それが腕に変じ、髪と混ざり、地と混ざり。膨らみ、収束する、おぞましき像へと。左腕が、届く。
防御から、攻撃に。最も禍々しさの際立つ軌跡を描いて。
「エモくド派手にブッ飛ぶがよい!」
空間に響いた声と同時。黒いオーラと菘の流した血に彩られ、『左目』を中心とした人型が、宙を舞った。
(……実に。罪深い)
声なき声に尚追いすがり、菘がにたりと笑う。
「妾に罪の深さを問うか。――ならば、この腕で教えてやらねばなァ!」
牙をむき出しにした、満面の笑み。
それはそれは邪神らしい、獰猛な笑みであった。
大成功
🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
骸の海が自我を持ち敵対してきた
迷惑な話だよ、骸の海はただでさえオブリビオンを自分の中に留めきれていない職務怠慢があるのに
事象が俺達に口を利くなんて余計だよ
さっさと倒されてあるべき場所に還れ
敵の攻撃のヒントは貰えたけどどれが来るかわからないから対応が難しいな
どれでも耐えれる手段をとり
その後はUCの特性を見切ってUC伴星・暴食の大剣で消していくか
腹から大剣を生み出し
それを振るい自分の身に降りかかる攻撃を相殺しつつ接近
敵に接敵したら斬りつけよう
問題は攻撃をどう耐えるか
魔力を高めオーラを作りできる限り軽減
それでも受けた攻撃は激痛耐性で痛みに耐え
攻撃されっぱなしにならないようにしよう
残るは精神力の勝負だ
●
事象が俺達に口を利くなんて余計だよ、と、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は断じた。
――まずは、見よう。
鴻鈞道人の攻撃のヒントから対処の糸口を考え、初手は耐えることを決め、魔力を高める。
高めて練り上げた魔力が身体を覆い、一秒とおかず『武器』が降り注ぐ。
魔力への手ごたえと反動、貫く強さで、飛来する無数の武器の仔細を見定めたサンディが、目を眇める。
――熱い。
初撃のほとんどは防ぎ、あるいは避けた。それでも全身を刺すような強い痛みがある。
その正体は、とてつもなく高温の熱。白い『武器』のかたちの物質ひとつひとつが、常人には致命的な高温を発している。
継続力的にも、守りの強度の面でも、ある程度以上耐え抜くのは厳しいだろう。
――やっぱり、長期戦は悪手だね。
元々、防御のみに徹するつもりはなかった。模様を描く『武器』の前、前方に見える左目への一歩を踏み出しながら、腹部に手を当てる。
「迷惑な話だよ、骸の海はただでさえオブリビオンを自分の中に留めきれていない職務怠慢があるのに」
腹より引き抜いた漆黒の大剣を横に構え、目を細める。
引くように、斬る。複雑な軌跡を描いていた『武器』がかたちを失い、地に溶け落ちる。
(それを職務と思うのは、生者ゆえと思わぬか)
空を切る『武器』に、相殺すべく振るった大剣が空を切る音。溶け落ちた音を置き去りに、サンディが走る。
冷静に軌跡を見極め、致命的な衝突を優先して、次々と白き無へ還してゆく。
『武器』はまだまだ宙を舞い、伴って熱と痛みがサンディの肌を刺す。
サンディは、止まらない。
その瞳は、冷え冷えとした色と、悪意や敵意と一言で括れぬ温度を孕んで、『左眼』を見据えている。
「事象が俺達に口を利くなんて余計だよ」
目の前の存在が何者であり、どのような摂理のもとにあり、オブリビオンとどういった関係であるのか。
そんな世界の謎の答えなど知らない。
ただ、事象や概念から一歩進み、明確な自我と意思をもって事をなし、敵対している。
その事実だけで、充分だ。
一度しっかりと目に焼き付けたこと、その後も対処し続けたことで、『武器』を相殺する精度は確実に上がっていた。
着実に形を溶かし、宙に描かれる模様は次第に模様の呈を為さず、再び無力な過去へと戻ってゆく。
(絶えず時は運び、全ては土へと還る)
混濁した白の中、辛うじて人の形をしたものが、変化を繰り返しながら、『武器』の舞う只中に立っている。
己自身とも言える大剣の構えを、斬るためのそれへと変える。
胸部を斬る。かたちが変わる。返す刀で腕を切る。部分的に変化し、一方で溶け落ちる。――存在を、削ってゆく。
「さっさと倒されてあるべき場所に還れ」
(――いつかお前もこうなる)
思念が終わりきらぬうちに、大剣の斬撃が、一層深く食い込んだ。
「いつか過去になっても、――お前にはならない」
大成功
🔵🔵🔵
楊・宵雪
「まあ、やれるだけやってみましょ
[ジャミング]と[残像]で敵命中率下げて、
[空中機動]と[受け流し]で回避
予備策として[オーラ防御]を発動しておく
敵UCの軌道は規則性があるみたいだからしっかり観察して回避に活かすわ
先制に対応できたらUCで反撃
形がなくて空間と一体化していようと、光と香りを避けるのは難しいはずよ
●
花の如き、麗かな美女が、ふわりと現れる。
艶のある長い髪、地を滑る九つの尾、二つ備わった狐耳、その全てが雪のごとき真白。
「あら……これほどに、毛を逆立てて」
脈打ち、剣呑な武器をいくつも生み出す渾沌の地を見やり、楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)は睫の奥の眠たげな目を揺らす。
「まあ、やれるだけやってみましょ」
花弁より軽くあえかな足取りで、衣を翻す。
幾何学模様を描き複雑に飛翔する、絶えず変化する『武器』の数々へと、ふう、っと手から飛び立った折鶴が羽ばたけば、武器の統制がほろりと解ける。
「うつくしいレース模様。それとも、魔法陣、というものかしら」
刺繍の先読みをするように、ふわりふわりと空を遊ぶ。羽衣と薄絹がたなびいて、宵雪という実像への接近を阻む。
「あら、危ない」
急速な変化を遂げた『武器』を羽衣の一振りでやり過ごして。
ただただ、舞うような回避と防御を繰り返す。
眠たげな眼の華人の舞台が、ひととき続いて。
「一段落ついたかしら。では次は、わたくしからの贈り物」
幾つもの『武器』に狙い続けられながら、甘く微笑んだ宵雪が、薄紅色の佩玉をそっと持ち上げる。
その玉から、ふわりと漂う香気と光が、宵雪を中心に、戦場へと満ち満ちてゆく。
攻撃性ではなく。うららかな春の、のどかな陽気。仕事と昼餉を終わらせた、豊かな午後。
「春の陽射しは誰にでも平等に享受できる贅沢なのよ。過去から、ずっと」
(――いかにも、天地の愛は)
『左眼』だけを残し、場に満ちた次なる『武器』が、弱く波打つ渾沌の地へ、かすかな震えと共に還ってゆく。
(愛される余裕の無い者にも、等しく、降り注いできた)
「あら、あら」
それじゃあ、と、宵雪が、あえかに見える指先で、差し出す。
「今少しの間だけ、味わって頂戴ね」
抗えない眠りの静謐が、ひととき、満ちる。
大成功
🔵🔵🔵
ミュー・ティフィア
骸の海、単なる概念だと思ってたけど敵だったんですね……
とりあえずスピリトーゾを使って空中戦です。
渾沌の地と一体化してるならそこに足を付けるのはまずい気がする。
もちろん空中だって安全ではないでしょうから戦闘知識と第六感で敵の攻撃を見切って、アドリビトゥムを常に敵へと向けて盾受け。更に何重にもオーラ防御と結界術を張ってなんとしてでも敵のユーベルコードを防ぎ切ります。
やっぱり強い……だけど怯んでる暇はない。ユーベルコードを凌ぎ切った直後の一瞬のインターバルに全てを賭けて!
因果を超える【歌姫】を歌いながらコンチェルトで限界突破、早業、スナイパー、浄化属性の矢を敵の左目を狙って放ち、一撃必殺を狙います!
●
鴻鈞道人と一体となり、変動を続ける、渾沌の地。
猟兵たちによって存在の質量を削られたあらゆる白色は、それでもなお生命のような変動を繰り返す。
「骸の海、単なる概念だと思ってたけど敵だったんですね……」
その様を空中から俯瞰していたミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)は、ゆるやかな変動が徐々にひとところに集おうとしている兆候を、見た。
渾沌に直接足をつけることへの危険から空中戦を選んだことで、こちらへと先制の一手を撃とうとする戦場全体の動きを、はっきり感じ取れる。
この広い戦場が、ひとつの意思のもとに、凄まじい速度で牙を剥こうとしているのだ。
「集まっていく、収束の中心は……あの一点!」
ミューを護るべく浮遊していた大盾が滑るように動き、更に出来うる限りの防御と結界を和音のように重ねる。
術を最後まで紡ぎ終えた、ぎりぎりのタイミングで。
(――往くがよい)
戦場そのものすら崩れそうな質量の、膨大な『渾沌の諸相』が一斉に溢れ出した。
翼は肢に、触手が蔦に。武器は長く短く形を変え、異形の頭部が牙を鳴らす。
無差別な洪水は周囲の地形を抉って迸り、空中のミューへも容赦なく襲い来る。
「くっ……!」
大盾が受け止め、あらゆる守りを敷いて、それでも圧倒される。
広げた光翼で勢いを殺し後退を堪え、暴風雨の中、そこに留まり続けることに専念する。
――やっぱり強い……だけど怯んでる暇はない。
決して眼を閉じることなく、前方を見据え続ける。攻勢に出るべき瞬間を見逃さず、見誤らない為に。
この暴力を凌ぎ切った直後。一瞬のインターバル、その一度の機会に、全てを賭ける。
その為にも――決してこの嵐に傷つけられてはいけない。この無差別な嵐には、矢を取り落としかねない罠が潜んでいる。
それが何か、どうしてか、言葉では説明出来ない。
だが、直感があった。
――『生きるために踏みしめてきた』と、あの存在は言った。
重ねに重ねた守りの中、機を窺い続けるミューが、色違いの両目を見開く。
口を開き、最初の一音を発する。ハープを握り、矢を番える。後戻りの出来ない歌を、放つ。その動作に一切の無駄はなく。
途切れた渾沌の合間から覗いた『左眼』へ、狙いを、つける。
遠くから、『あの存在』の思念の切れ端が近づいて。――……。
……こぉ、ぉぅるぅ、ぁぅぁこぅぁ……。
最初に歪んだのは、音だった。
世界が静止し、左眼はぴくりとも動かない。呼吸を引き伸ばしたような渾沌の諸相の音が、絶え間なく、歪に、耳を打つ。
覚悟はあったが、それでも慄かずにはいられない。この矢を放つ代償がこの在り様であることに。
――数時間で済むなんて、思っていなかったけれど。
勝利の為、ミューが差し出した代償は『正常な体感時間という概念』。
その困難さに伴い、時間は引き延ばされる。それに耐えぬけなければ、『失敗』という結果が現れるだけ。
例えば。もう二度と正しい時間は動き出さないのではと、少しでも、そう考えてしまったなら。
「Lalala……」
声を張る。リズムを整えて。抑揚をきかせて。長い独奏も、最後まで美しく伸びやかであるように。
光翼が更に広がり、奏弓を構える手の安定を助ける。
『左眼』は動かない。何も告げない。
ならば、歌い、魔力を編み続けて――僅かでも動いたその瞬間、ときはなつだけ。
そうして、どれほど歌い続けたのか。
(……――た、え、ず、)
途切れ途切れの思念。その切れ端と共に、『左眼』が見開かれたとき。
ミューは既に矢から手を離していた。
ミュー以外のすべてからは、突然発生したように見える筈の、浄化の一矢が空を滑る。不可思議に、渾沌のすべてをかいくぐり、『左眼』へと吸い寄せられるように。
回避も防御も何もかも無意味と化して。『左眼』を、浄化の矢が、貫き通す。
白い天地が、一度大きく脈打った。
不規則な動きで、出鱈目に波打ち、波紋を広げ、それらもすぐに消えてゆく。
そうして、かすかな思念が響く。
(私は、死ぬだろう)
(幾度も、死ぬだろう)
(時の運びが如く、死ぬだろう――)
砂を洗う波のように近づいて、去っていった後。
ミューの目前に広がる渾沌の地は、完全なる沈黙に落ちた。
大成功
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