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殲神封神大戦⑰〜それでも世界はうつくしく

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』

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#渾沌氏『鴻鈞道人』


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●そこに光はなく
 仙界の最深部にある、いまだ形定まらぬ混沌の地。薄暗い雲が天を覆い、時折雷鳴が走っているのが見えるだろう。
 その地に、一人の男が立っていた。
 空を見上げるでもなく、この地にやってきた猟兵達を見るでもなく。
 ただ、白く濁った左目だけを開いて。
『私の左目に、カタストロフを見せてくれ』
 そう、告げた。

●グリモアベースにて
「さっそくだがね、『鴻鈞道人』の元に向かう道が開いたよ」
 少しばかり難しい顔をして、深山・鴇(黒花鳥・f22925)が猟兵達に話し出す。
「居場所は世界の深層部、『混沌の地』だ」
 左目を得て具現化したという鴻鈞道人は自身をオブリビオンではなく、『骸の海』そのものだと言う。
「厄介極まりない相手だが、もうひとつ厄介なところがあってね」
 困ったような顔をして、それでも言わない訳にもいかないと口を開く。
「転送を担当した『グリモア猟兵』を呼び寄せ、体内に潜り込み瞬時に融合するらしい」
 きょとん、とした猟兵達を前に小さく微笑んで、わかりやすくもう一度。
「つまりは、だ。転送が完了すれば、どうやら俺は混沌の地に呼ばれ鴻鈞道人に取り込まれてしまうってことさ」
 こうなってしまえば個人としての意識はなく、『渾沌の諸相』を身につけたグリモア猟兵が、他の猟兵達に襲いかかるのだ。
「それはもう俺ではなく、鴻鈞道人だ」
 こちらに干渉するほどの力を持つ相手だ、仮にそのグリモア猟兵と猟兵達の間に何らかの心のつながりがあったとしても、一切有利には働かない。
「融合した鴻鈞道人が力尽きるまで戦う他に、手はないんだ」
 そして、敵は強力すぎるが故に、君たちは手加減をすることもできないだろう。
「現状、鴻鈞道人を完全に滅ぼす方法は無いんだが、この戦闘で殺す事は可能だよ」
 その時にグリモア猟兵が生きていれば――。
「ま、そう簡単にくたばるような鍛え方はしてないさ」
 だからね、と鴇が笑う。
「遠慮なく鴻鈞道人を倒しておくれよ」
 そう言って、グリモアに触れた。


波多蜜花
 閲覧ありがとうございます、波多蜜花です。
 鴻鈞道人と融合したグリモア猟兵との戦闘です、難易度はやや難となります。

●敵について
 グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人です、鴇の意識は一切ありません。
 鴻鈞道人の使用するユーベルコードと共に、刀での攻撃を行います。

●プレイングボーナス
 グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する。

●プレイング受付期間について
 01/24(月)08:31より受付を開始します。
 少人数で早めに書き上げるつもりです。〆切は設けませんが、目安としての日にちはタグに記載します。プレイングが送れる間は送ってくださって大丈夫ですが、戦争シナリオですので、全採用できるかはわかりません。
 オーバーロードをお考えの方はMSページを参照ください。

●同行者について
 同行者が三人以上の場合は【共通のグループ名か旅団名+人数】でお願いします。例:【戦3】同行者の人数制限は特にありません。
 プレイングの失効日を統一してください、失効日が同じであれば送信時刻は問いません。朝8:31~翌朝8:29迄は失効日が同じになります。
 公序良俗に反するプレイングなどは一律不採用となりますのでご理解よろしくお願いいたします。

 それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●混沌の地
 転送された先、そこは形定まらぬ混沌の地。
 空は厚い雲に覆われ、その中を遊ぶように迸る雷鳴が場違いなほど綺麗に思えた。
 その地に、一人の男が立っていた。
 轟く雷鳴に眉ひとつ動かさず、この地に訪れた猟兵達を見遣る。
 右目は閉じられ、白く濁った左目だけが開いて。
『罪深き刃ユーベルコードを刻まれし者達よ。相争い、私の左目に、炎の破滅を見せてくれ』
 そう告げた男の姿は、転送を担当したグリモア猟兵の姿をしていた。
 声も、立ち居振る舞いもそのままに。
 けれど、その気配が違うことはその場にいるすべての猟兵が感じ取っただろう。
 ――鴻鈞道人、今この時、何を差し置いても倒すべき敵である、と。
張・西嘉
まさかこのような毎になるとはな…自身の世界を守るだけのつもりが何かとんでもない根源にふれるようなことになろうとは何よりも同じ猟兵を攻撃せぬばならぬことが心苦しいな。
だが、同じ猟兵であればこそその強さは信じているさ。

【功夫】を用いて気を練る。
相手の部位の損失が不利になり得るならばこれが一番だろう?
【第六感】と【聞き耳】によりタイミングを測り【カウンター】で懐に入り込んでUC【力で解決】【怪力】にて攻撃!



●信じる力
「まさかこのような毎になるとはな……」
 暗雲の立ち込める混沌の地へと転送された張・西嘉(人間の宿星武侠・f32676)が思わず呟く。視線の先には先程見たばかりであるグリモア猟兵、ただ気配だけが違っている。
 カタストロフを願う渾沌氏『鴻鈞道人』、骸の海と称するもの。
「自分の世界を守るだけのつもりが、何かとんでもない根源に触れるようなことになろうとは」
 そう言いつつ、油断なくいつでも戦える体勢を取るのは宿星武侠たる所以か。
「何よりも、同じ猟兵を攻撃せねばならぬことが心苦しいが――同じ猟兵であればこそその強さは信じているさ」
 そう言って、拳を構えた。その姿勢には隙が無い、けれどそれは彼と相対するグリモア猟兵……鴻鈞道人も同じこと。腰に佩いた太刀へと手を掛けている。
「俺も得意の獲物は長物だが」
 長物であれば何でも使いこなせるが、西嘉が愛用するのは青龍偃月刀、穂先に刃を付けた長柄の武器だ。
 けれどそれを手にしないのは、鴻鈞道人の力を忌避してのこと。それと共に、やはり覚悟の上だと言ったとて、同輩の腕を飛ばすのは忍びないというものだ。
「今回はこちらでお相手願おう」
 得意の獲物でなくとも、それで劣るような真似はしない。相手との間合いを上手くはかりつつ、神経を研ぎ澄ませ、気を練り上げる。
 先に動いたのは鴻鈞道人、閉じた右目に蜘蛛の巣が張ったようになっているのはおそらくその部位を犠牲にしているのだろう、その姿のまま腰の刀を抜き放ち西嘉に斬り掛かった。
「……ッ!」
 速い、勘だけで見切るには些か無理があったかと西嘉が眉を僅かに持ち上げ、けれどどの方向から刃が来るのかだけはその耳で聞きとめる。
 半歩下がり、剣先は西嘉の肉を斬るが致命傷ではない、下がった分その刃は己には届ききっていない。
「甘く見てもらっては困る」
 踏み出した足を軸にして、反転し次なる刃が届く前に相手の懐へと入り込む。
「とくと受けるがいい!」
 胸倉を掴み、腕に力を籠めるとそのまま鴻鈞道人を掴み上げ、振り回すと同時に地面へと叩き付ける――!
「受け身を取るか」
 転がりながらも立ち上がった鴻鈞道人に向け、息を整え構える。
「長丁場の戦い、制するのはどちらかな」
 その構えは清廉で美しく、西嘉のどこまでも真っ直ぐな性根のようでもあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

新山・陽
 骸の海が、現在を往く者を世界を脅かす手段にする。これを許す道理はありません。
 先に仕掛けてくるであろう刀の攻撃には『悪意ある助力』より出現した防刃布を構え【武器受け】、多少斬られても【激痛耐性】で耐え、【受け流し】を試みて深手は回避します。
(まぁ、刀を佩いてる武闘派の御仁に、私の細腕では持ちませんか)
 【咄嗟の一撃】を腕と脚にあて【体勢を崩す】 【ダッシュ】で距離をあけてUC『圧潰の更紗』を発動します。攻撃を当てた箇所、腕と脚の関節を捩じる継続効果による【部位破壊】を仕掛けます。
 貴方が嘯くほど、私は相争うなんて思いません。これは貴方が去るまで続く、世界のための共闘ですよ。



●それは世界の為の
 まったく、とオーダーメイドであろう仕立てのスーツを着た女がヒールを鳴らして混沌の地に足を踏み入れる。
「骸の海が、現在を往く者を世界を脅かす手段にする」
 風で乱れた艶のある髪を撫で付け、新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)が太刀を手にした男の前に立つ。
「これを許す道理はありません」
『許さぬというなら、どうするつもりだ罪深き刃を刻まれし者……猟兵よ』
「どうするもこうするも」
 戦うに決まっている、そう言葉にすることもなく陽が『悪意ある助力』から出現した防刃布を手にし、構えた。
 陽の鋭い視線を受け、グリモア猟兵……否、鴻鈞道人が腰の位置を低くし、同じように構えた瞬間に地を蹴った。
「く……ッ」
 刀の冴えは鋭く、陽が体勢を崩しながらもその一撃を防刃布で受け流そうと試みる。
『真っ二つとはいかなかったか』
 真っ二つになどされてたまるか、と防刃布を構える陽のスーツの端は綺麗に切断されていた。いわんや、防刃布がなければ深手を負っていた所だ。
「その防刃布もこの有様ですが……」
 半分程すぱりと斬られている、けれど布で剣を受けるというのは理に適っていて、『悪意ある助力』の選択は間違いではない。これでなければ、上手くいったかどうか。
 まぁ、刀を佩いている武闘派の御仁に私の細腕ではどのみち持ちませんか、と頭の中で試算しながら陽が鴻鈞道人の腕と足を狙って攻撃の一手を放つ。それは左腕の一振りで退けられたが、その『左腕』にはきっちりと陽の一撃が当たっている。それを確認し相手が受け身に入った所で陽がバックステップを踏み、距離を取った。
「ひと捻り、と参りましょう」
 それは瞬きの間の出来事、陽が先程攻撃を当てた箇所――つまりは鴻鈞道人の左腕がまるで空のペットボトルを潰すかのように捻じれた。
『何……これがお前の罪深き刃……ユーベルコードの力か』
「ええ、凍結に至るまで、それは止まりませんよ」
 面白い、と鴻鈞道人が笑う。左腕が捻じれようとも、鴻鈞道人には相争いカタストロフをその濁った左目に映すのが望みなのだから。
「私は貴方が嘯くほど、相争うなんて思いません」
 互いに争う? 違う、と陽は凍結させるべく暗号の布を操る。
「これは貴方が去るまで続く、世界のための共闘ですよ」
 私と、その身を融合させられたグリモア猟兵との。
「さあ、もう少しお付き合いいただきますよ」
 耐えてくださいね、と唇を動かして陽が駆けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スティーナ・フキハル

スティーナ口調

あんた見捨てたらアタシのいるとこの団長が悲しむだろうからね……
本気でいくよ、助けるために

その刀は振らさせない
念動力で腕を振る勢いを遅らせ刀の辿る軌跡を見切ってその先に結界を張る

結界が破られる前に刀の根元を左手で食い込むくらい思いっきり握って武器受け
アタシの方がより血を流せば強化はされないんだろ?
生憎痛みには慣れてるんでね

そのまま氷属性の護符の誘導弾を右手で放ち刀ごと掴んでる左手と足に脇差しを凍らせる
もう動けないだろ、UCを使ってから右手を深山さんの体に当て全力で浄化の力を込めた衝撃波……さっさと出てけ、白いの

無事剥がせたらアタシの手はいいから時間が許す限り聖痕で深山さんを癒す



●菊が為
 混沌の地、そこに立つのは羅刹の乙女たるスティーナ・フキハル(羅刹の正義の味方・f30415)。
 相対するはグリモア猟兵と融合した鴻鈞道人、ただ白く濁った左目だけを開き腰に佩いた太刀の柄に手を掛けていた。
「あんた見捨てたら、アタシのいるとこの団長が悲しむだろうからね……」
 瞳を燃えるように見開いて、スティーナが拳を握る。頭を過ぎるのは菊の名を持つ幼い少女の笑顔、その顔が憂いに満ちぬように、その為に今ここに彼女はいるのだ。
「本気で行くよ、助けるために」
 頭の中で、頑張れお姉ちゃん、と双子の妹の声が聞こえてスティーナが小さく笑う。
「そう、お姉ちゃんだからね!」
 あの子もアタシの妹みたいなもん……なんてね、と思いながら構えれば、鴻鈞道人が先手を仕掛けるべく駆け出しながら腰に佩いた太刀を抜いた。
「その刀は振らさせない!」
 前に突き出した手をぐっと握り、念動力で鴻鈞道人が腕を振るう勢いを遅らせる。
「……っの、速い!」
 遅らせてこれか、とスティーナが悪態を吐きながらもその軌跡を見切り、二歩下がった所で刀の先に結界を張った。
「お姉ちゃんは度胸ってね」
 に、と笑ってスティーナが右手で結界を維持したまま、刀の根元を左手で思いっきり握り、その武器を受け止める。
『何を』
「アタシの方がより血を流せば強化はされないんだろ?」
『愚かな』
「愚かでもなんでも、これがアタシの最善だよ」
 生憎、痛みには慣れてるんでね、とスティーナが笑ってさらに強く握り込む。鴻鈞道人が刃を引けぬ程に。
「そのまま凍れ!」
 胸元から引き抜いた氷の加護持つ護符を誘導弾に載せて放ち、スティーナが刀を掴む己の左手ごと凍らせる!
「まだまだ!」
 そのまま、鴻鈞道人の足と脇差も凍らせてスティーナが白濁した左目を見上げて笑う。
「もう動けないだろ」
『それはお前も同じことだろう』
「本当にそうかな?」
 ミエリ、力を貸して! そう願い、スティーナが叫ぶ。
「『アタシ』と『私』! 体も、心も! 今すべて一つに! あたし達に限界はない!!」
 限界など越えていくのが猟兵――!
 赤と青の目を煌めかせ、羅刹と聖者、二つの魂の重なりを増強していく。
「鴻鈞道人、アンタはお呼びじゃないってこと! ささっと出てけ、白いの!」
 浄化の力を籠めた右手を鴻鈞道人の――グリモア猟兵の身体に当て、スティーナが衝撃波を放つ。眩いほどの光の中、確かに分離したように見えた。
 けれど。
「嘘、アタシとミエリの全力だよ!?」
 鴻鈞道人が再びグリモア猟兵との融合を始めたのだ。
「ううん、一度でダメなら何度だって!」
 引き剥がすことは出来る、それは間違いないのだから。
 だったら諦めない、それがアタシだもの。
 スティーナの瞳が、爛々と燃えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
パフォーマンスで身体機能を上昇後に封印を解く。
次に限界突破して更に底上げし全力魔法で魔術行使。
呪の詠唱は高速詠唱で行う。魔術は【砕霊呪】だ。

これはある意味人質を取られているようなものだな。
やとにかく他のグリモア達と同じように戦おうと思う。
「…やれやれ、だ」

露の攻めに合わせ破魔を付与した【砕霊呪】を行使する。
戦況によって魔術を2回攻撃で二回連打してもいいな。
なんなら鎧防御無視を追加付与して行使してもいい。
とにかく全力で畳み掛けるように攻める。
先制攻撃対策は見切りと野生の勘と第六感でなんとか回避。

露ではないが深山のところに何か持参しないといけないな。


神坂・露
レーちゃん(f14377)
えぇー。ふーちゃんも敵になっちゃったの?!
むぅ。…もおー。前の戦争からグリモアさん達を…。
グーで泣くまで殴って髪おさげにするだけじゃ許さないわ!
(隣で何か言いたそうなシビラ無視で怒ってる)

リミッター解除してから限界突破でダッシュ【銀の舞】よ。
二本の剣の二刀流でふーちゃんを…迷わないで攻めるわ。
早業の2回攻撃で鎧防御無視と継続ダメージとつけるわね。
レーちゃんの魔法と連携して戦おうと思っているわ。
早めにケリつけたいわ。なるべく早めに…。
だってだってお世話になってるグリモアさんの一人だし!!
見切りと野生の勘に残像をつけて先制攻撃の回避をするわ。



●その心のままに
 混沌の地、いまだ形の定まらぬその地に転送された神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は、その薄暗さに空を見上げ、露と共に転送されたシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は真っ直ぐに視線の先に立つ男を見ていた。
「太陽、出ないのかしら……」
「露、油断するな」
「わ、わかったわレーちゃん! って……」
 シビラに促され、目の前の敵に視線を向けた露は目を瞬かせる。
「えぇー、ふーちゃんも敵になっちゃったの!?」
 ふーちゃん……露がそう呼んだのは転送を担当したグリモア猟兵の男、今は鴻鈞道人と言うべきか。
「……ふーちゃん」
「えっふーちゃんでしょ?」
「深山のどこに『ふ』があるんだ」
 きょとん、とした露がシビラの問いに返す。
「みーちゃんより、ふーちゃんのが可愛いでしょう?」
「ああ、うん、もういい」
 そうだった、露は独自の思考回路があるのだと、シビラは小さく息を吐いて身体能力を上げていく。
「それにしても……むぅ」
 露が唇を尖らせ、左目を白く濁らせた男を見遣る。
「もおー、前の戦争からグリモアさん達を……」
 露にとって彼らは自分達を依頼の現場に連れて行ってくれる、頼もしい人達だ。
「それなのに、どうこうしようだなんて……グーで泣くまで殴って、髪をおさげにするだけじゃ許さないわ!」
 髪をおさげにしてどうするんだ、という目でシビラが見ているが、なんなら鴻鈞道人も見ているがそんなことは露には関係ない。とにかく、彼女は彼らの為に怒っているのだから。
「露、先手は任せた」
「ええ!」
 レーちゃんの期待に応えてみせるわ、と露が己のリミッターを解除していく。それと同時に、鴻鈞道人もまた彼女達の動きを感じ取り腰に佩いた太刀へと手を掛けた。
「露、気を付けろ」
 来るぞ、とシビラが言った瞬間に鴻鈞道人が駆け――いや、背に生えた白き天使の翼で飛んだ。それと同時に刀を抜き、頭上より露に斬りかかる。
「速い……っでも、でも負けないわ!」
 辛うじて手にしていたクレスケンスルーナとグランドリオンを交差させ、鋭い白刃を受け止める。重い一撃を小さな身体で受け止め、押し負けぬようにと足に力を込めた。
 露が鴻鈞道人と刃を拮抗させている内に、シビラは己に掛けた封印を解く。それに次いで、己の限界を凌駕し底上げされた全魔力を練り上げていた。
「しかし……」
 これではある意味、人質を取られているようなものだな、と思う。いっそのこと、鴻鈞道人そのものの姿であったならば、視覚による無意識の手加減をせずに済むだろう。けれど、手加減など恐らくはどのグリモア猟兵も望んではいない、鴻鈞道人を退けるのが一番の方法と知覚しているからだ。
「だからこそ、遠慮なく鴻鈞道人を倒せと言ったのだろうな」
 そう望まれたからには、とにかく他のグリモア猟兵達と同じように戦おうとシビラは練り上げられた魔力と共に視線を上げる。
「……やれやれ、だ」
 猟兵となったからには仕方のない事だけれど、とシビラが呟いた。
「こ、のぉっ!」
 力押しに負けそうになるのを踏ん張り、露が二刀で切り裂くように刃を交差させて鴻鈞道人を弾くと、その動きのままに彼がシビラへと向かう。彼女の練り上げた魔力に反応したからだ。
 鴻鈞道人が代償としたのは左腕、既に他のグリモア猟兵より攻撃を受けていたその部位を硬質化した翼へと変えてシビラに襲い掛かる。
「く、本当に速いな」
 先程露に仕掛けた攻撃を見た時からと思ってはいたが、と思いつつ瞬間的にシビラがオーラ防御を展開する。けれどそれを抜くように仕掛けられる強力な攻撃に、露が割って入った。
「あたしのこと、忘れてもらっちゃ困るわ!」
 露が二刀流で攻め、その隙にシビラが破魔の力を重ねた砕霊呪――リヴェレイスを放つ。
 それは鴻鈞道人を包み込むように青白い光の柱となり、グリモア猟兵の肉体を傷付けることなく彼と融合している鴻鈞道人のみを攻撃した。
『く……っこれもお前達が持つユーベルコードの力か……』
 罪深き刃と呼ぶその力に、鴻鈞道人が飛び退く。
「露!」
「わかってるわ、レーちゃん!」
 白い翼を翻した相手に向けて、露が一切の迷いを捨てた連撃を見せる。それに合わせ、シビラが高速詠唱による魔術に防御を無視する効果や、有効だと思った効果を載せて放った。
「早めにケリをつけたいわ、なるべく、早めに……!」
 だってだって、お世話になってるグリモアさんの一人だし!!
 だから絶対に助けたいの、と彼女は思う。それはシビラも同じであっただろう。
「終わったら、お見舞いにいくから、だから」
 負けないから、と露が一層速度を上げて鴻鈞道人へと駆ける。
「ふ、露ではないが深山のところに何か持参しないといけないな」
 ふっと唇の端を僅かに持ち上げ、シビラが駆ける露に合わせて魔力を練りあげていく。
 それは彼が必ず生きて戻ると信じているからこその、迷いの無さであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジョヴァンニ・カフカ


人質を取る様な小悪党じみた手を使うんですか?あなたが
彼にはつい最近、桃源郷に連れていって貰ったばかりなんですよ
お礼がまだなので、早急に返して頂きたい

第六感で先制攻撃を察したらジャストガードで受け
オーラ防御で更に守る
受けた際、相手の足元から蠢く影で浄化を込めた切断攻撃の不意打ち
浄化が効かない様なら呪詛属性にスイッチ
臨機応変に油断なく行きましょう

刀での近接は厄介です。第六感と相手の攻撃動作から瞬間思考力で見切り回避を試みます
攻撃を食らっても相手の流血対策になりますかね
中身を見られるのは不本意ですが、激痛耐性で我慢しましょう

ダッシュ、軽業、逃げ足でヒット&アウェイの立回り
フェイントも兼ねて飛ばしている自分の箒を含め、足場となるもの全て活用する

逃げてばかりと思われますか?
問題有りません。此方は射程内です
伸ばした影で捕縛し、先に効果のあった属性攻撃でUCを発動



●差し伸べる手
 雷鳴響く混沌の地の空を見上げるでもなく、ジョヴァンニ・カフカ(暁闇・f28965)はただ眼前の男を見ていた。
「人質を取る様な小悪党じみた手を使うんですか? あなたが」
 それは静かな声だった、けれど僅かな怒気を含んでいたようにも思える、そんな。
『丁度良かった、それだけだ』
 何に、と問うても無駄だろう、白く濁った左目だけを開いた男――グリモア猟兵に融合した鴻鈞道人は既に腰に佩いた太刀へと手を掛けている。
 骸の海そのものだと言う割には手口がせこいんですよ、と声をやや尖らせて言うと、ジョヴァンニが狐面の奥に隠した琥珀の瞳を淡く輝かせた。
「彼にはつい最近、桃源郷に連れて行って貰ったばかりなんですよ」
 チャリ、と揺れるのは中国結びにされた飾り紐に結ばれた、破魔の力持つ小さな烏。
「お礼がまだなので、早急に返して頂きたい」
 お礼を言う前にいなくなられるのは少々寝覚めが悪いと、動きやすさとデザインの良さで愛用しているハイカットスニーカーの爪先で地面をとんとん、と蹴る。
 その言葉に口許だけで鴻鈞道人が笑うと、腰を落として疾く駆けた。
 ひゅっと息を呑む音の後、ジョヴァンニが鴻鈞道人の放つ一閃をナノマシンで硬化した両腕を前に合わせて受け止める。
「……あっぶないですね」
 瞬きの間遅れていれば、ナノマシンで硬化はしただろうけれど胸で受けて吹っ飛ばされていただろう。意識して両腕で受けるのとでは蓄積するダメージが違う。
 拮抗する刃に対抗する為、両腕のガードにオーラを纏わせじりじりと押し返す。そして、相手が力比べに意識を向けている間に、ジョヴァンニの足元の影が蠢いた。
 影に浄化の力を込め、鋭利な刃の様なそれを襲い掛からせる。
「不意打ちってやつです」
 鴻鈞道人が真後ろに飛び退き、刃で幾つかを弾くが全ては避け切れずに血を流す。
「……浄化、効き目がないですかね」
 軽く首を傾げつつ、相手の様子を窺いながらジョヴァンニがウィザードブルームを取り出すと、柄の部分を軽くコンコン、と叩いて囁きかける。
「お願いします」
 主の願いに応えるように、魔法の箒が空を翔けた。
「浄化、効いてない訳じゃなさそうですが」
 他の猟兵と戦ったであろう、グリモア猟兵の身体を侵していた白い蜘蛛の巣のようなものが引いている。
「決定打としては弱いですかね、まぁ臨機応変に行きましょうか」
 呪詛属性もありますよ、と多彩な手数を見せるように影が走る。その瞬間にジョヴァンニは背後に回り込むように空飛ぶ箒を足場にして跳び上がり、蹴りつけた勢いで鴻鈞道人へと襲い掛かった。
 上空から回転しながら蹴りを放ち、鴻鈞道人の背後からは伸びた影が切断攻撃を仕掛ける。体幹のみで身体を捻り、鴻鈞道人がジョヴァンニの蹴りを避けても影が襲い来るのだ、二段仕掛けの猛攻に鴻鈞道人が刃を振るいながら徐々にその速度を上げていく。
「これ以上速くなりますか」
 血を流させるにしても、こちらと同程度にしなくてはならないかと瞬間的に思考したジョヴァンニが、敢えて刃を振るう鴻鈞道人に肉薄する。
「中身を見られるのは不本意ですが」
 そうも言ってられませんね、とジョヴァンニが深手は負わぬようにギリギリのラインを見極めつつ、時に近距離から、時に遠くから攻撃を仕掛けて即座に距離を取ながら影を操るトリッキーな動きを見せた。
 狐面を弾き飛ばされようと、その奥の黒いタールが見られようとも、彼が動きを止めることはない。
『ちょこまかと……』
「それが俺の持ち味なので」
 互いにダメージは蓄積しているけれど、対比で見れば鴻鈞道人の方がダメージ量は多いだろう。何せ、浄化と呪詛をスイッチしながらの攻撃を仕掛けられているのだから。
 鴻鈞道人の動きを牽制する為に飛ばしている箒が彼に突っ込んでいくのに合わせ、再びジョヴァンニが距離を取る。
『逃げるか、猟兵』
「逃げてばかりと思われますか?」
 地を蹴り宙を蹴り、大きく後ろに宙返りをして距離を取った彼の手には弾かれた狐面。
「問題有りません」
 鴻鈞道人がジョヴァンニに向かって駆けるよりも早く、ジョヴァンニから伸びた影が鴻鈞道人を捕縛する。
 ギチリと足を拘束され、動きが制限されたところへジョヴァンニが静かに片手を上げ、己の背後から現れた無数の魔法剣を鴻鈞道人へと向けた。
「此方は射程内です」
 放たれた魔法剣が帯びるは浄化の力、雷鳴轟く暗雲の下、無数の剣が激しい雷雨のように鴻鈞道人へと降り注いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
【おかえり】
心情)いままでの《過去》は”いのち”だった。過去に死んだとしてもな。だが骸の海、"いのち"ではないモノ。むしろ俺に近いか。マ・てめェと違って俺ァひとりじゃない。その体返して貰うぜ。まだ寿命にゃ早いンでね。
行動)サテ最初。旦那の刃はやべェからな。坊の樹根繭と結界にかぶせて多重結界を展開、加えて象に陸亀、たんと喚ぶ。"盾"だ。酸は使わンどこうか。繭・結界・"盾"で減速したとこをモノクローズが止める、その一瞬の隙に黒兄さん・虎兄さんが決める手はずだ。さァさこっからは時間との勝負、吹っ飛ばせ白いの。俺も追う。来い、エラ。もっとも古く恐ろしき者よ。あれは強敵、お前の目に適う敵だ。7人の闘士を寄越せ。4人は攻撃を、3人は味方を守れ。眷属も回す。神仙すなわち神、王サマの毒も効くだろ。思考かき乱し身を腐らせてやる。病と毒を携えて、頼られ叶えにかみさまが来たよォ。誰が相争うかよ、てめェだけ腐り溶かしてやらァ。病毒煮詰めた宿で体当たりだ。
剥がせなけりゃ俺がやる。懇切丁寧に躊躇なく旦那ごと殺そう。


結・縁貴
【おかえり】
真の姿:異能の眼を常時発動して狂気に晒された、覚醒しきらぬ仮の真の姿

俺よりよほどヤクザに見える自称一般人を助けに来たんだよ
俺に防御手段なんてない、先制攻撃は任せた!

異能の眼が光る
理性が焼ける感覚
未だ馴染まぬ生命の埒外の領域で嗤う

かみさま、トヲル帅哥
俺が剥いだと叫んだら、どう攻撃しても好い
物理の距離が物を言う、鴇帅哥に近づけないよう如何にか離してくれ
噫、鴇帅哥の回収はお任せした!

バチン

斬るは鴻鈞道人と鴇帅哥の融合の御縁
縺れて歪んで無理に結んだのがすぐ分かる御縁だ
出ていって貰おう!
斬った糸を掴んで引きずり出す
剥いだ!後は祝好(よろしく)!

スー帅哥は仕事が確かだな、斬りやすくて…助かるなァ
…は?死ぬまでって言った?刻限は?百秒余り!?

脂汗を流れる
嗚、これだから格上は…操(クソ)!

バチン

否、無理を通す
虚勢を張って嗤う
繋ぎかければ斬って、抵抗する糸を手繰り寄せて幾度も幾度も

攻め込まれたら、異能に集中してる俺に逃げる術はないけれど
…守ってくれるよねェ?
守りは小雲珠に甘えて、鋏を振るおう


茜崎・トヲル
【おかえり】
よくもみゃーさんを!おれは怒ったよ、ぜってー許さねえ!
やっちゃおーぜあーさん!兄ちゃん!かみさま!やーさん!
やーさんってヤクザさんみたいだね!

みゃーさんの攻撃はぜんぜん一般的じゃねーから、おれはがんばるよ!
生身の目と脳みそを肉体改造(技能)で強化、サイバーアイフル稼働!
一瞬もゆっくり見える状態で瞬きせず剣筋を見て、みんなの壁で少しでも減速したら……うん、スーさん!
めっちゃ増やして強化した腕で手首ごと白羽取り!リミッター解除(技能)した上で限界突破、化術で挟んだ瞬間に全身金属化して止める!

あーさんとやーさんがめちゃくちゃ頑張ってみゃーさんからあのヤローを剥がしてくれる
そうすれば……あとは任せて、行くぜかみさま!

リミッター解除(UC)、オーバーロードォ!
ハンマーで力いっぱいぶっ飛ばす!ドッカーン!ナーイスショット!
真の姿にはならない、あれは戦えないから!この姿で能力あげて、あんたを、殺す!
7人のやべー戦士と一緒に死ぬまで殴る
ダメージは瞬時に再生して殴る!

あばよクソ野郎海還れ!!


スキアファール・イリャルギ
【おかえり】

…まさか骸の海自体が襲ってくるとは
しかも他人の躰を乗っ取るだなんて…クソがッ…!

あぁもう一般人の概念が崩れる!
展開された繭と結界にオーラの防壁を重ねる
先制攻撃の対処はこれしかお力添えができません、共に何とか凌ぎましょう
護りで斬撃が減速した瞬間を狙い…トーさん、行きますよ!
トーさんの白刃取りと呪瘡包帯の捕縛で刀を止める!
続けて縁さん、行きましょう!

鴻鈞道人、おまえの好きにはさせない――!

即座にUC発動
『骸の海』にどれ程これが通用するかは不明ですがね…!
出来うる限り奴の有利な現象は生み出さない
能力が倍になる力も、攻撃も、深山さんと融合している状況も!
これなら縁さんの仕事もやり易くなる筈――頼みます縁さん!
深山さんと奴を引き剥がす!!
成功したら包帯を使い雲珠さんと一緒に深山さんを奴から遠ざける
雲珠さん、護りは任せました!

この身が死ぬ直前まではUC継続
あ、…はは、言ってませんでしたっけ
皆さんなら時間内に片が付くと信じていますよ

トーさん、朱酉さん、奴をぶっ飛ばしてください!!


雨野・雲珠
【おかえり】

理解なんてできてないのに体が勝手に震える
佇んでいるだけなのに呑まれそう───いえ!
かみさまなんて陰そのものですよ!
負けませんよ!深山さん返してください!
(枝の花満開+桜織衣【白妙】、渦巻く花弁と共に真の姿に)

【花鳴り】を爪弾き結界を張りながら
【枝絡み】を最大出力で展開します。
金属をも断つ居合を防ぐために枝根をねじり、
何重にも絡み合わせて皆が入れる大繭を作りましょう。
まずは、最初の一撃……!

落ち着け、落ち着け。
怖いからって離れすぎるな
標的にされてもトヲルくんやかみさまに間に入ってもらえる位置取りで
梓弓をつまびき続けます。
結界を張る先は縁さん。邪魔はさせませんよ

引きはがされた大きな体をすかさず引き受けます
任せっ…待って、スーくん今なんと!?
覚悟の声音。深山さんも皆も、成すべきことをしている
俺もそうしなくては

爆音を背に、再び厚い壁を張って
怪我の部位と程度を調べて手早く応急処置。
トヲルくんの雄叫びが、
かみさまの囁く声が聞こえる
決着まできっとあとわずか

誰も死なない。みんなで帰るんです



●おかえりなさいのその為に
 混沌の地は一層激しく雷鳴を響かせる、それはまるで猟兵達の猛攻により手傷を負った男の――鴻鈞道人の心象風景のように。
「か、雷……!」
 その音の大きさに、雨野・雲珠(慚愧・f22865)がひゅっと息を吞む。
「兄ちゃん、雷苦手?」
「天敵です」
 彼を兄ちゃん、と呼ぶ茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)の問い掛けに短く答える。桜の精たる彼は雷が苦手だ、苦手だけれど今はそれよりももっと恐ろしいものが目の前にいる。
 グリモア猟兵――彼らからすれば深山・鴇と言った方が馴染みがある男と融合を果たした鴻鈞道人が距離はあるとはいえ、目の前に。
 理解なんて到底できそうにないのに、小さな体はまるで寒気を覚えたように震えている。相手がこちらを視認している、それだけで呑まれそうな――。
「しっかりしなィ、坊」
 静かに耳に馴染む声で雲珠がハッと意識を戻し、声の主に視線を向けた。
「かみさま……」
「戦う前から呑まれちゃいけねェよ、旦那を助けるンだろォ」
 かみさま、と呼ばれた朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)が真っ直ぐに鴻鈞道人を睨んだまま唇の端を持ち上げる。
「マ、おっかないってのはわかるがね」
 まるで手負いの獣のようだ、と思う。散々っぱら猟兵とやり合って、あの身体は限界なのだろう。だが、限界に近いからこそ普段以上の力を見せるヒトは多い、それが猟兵の肉体ともなれば尚更だ。
 鴻鈞道人自体は逢真にとっては脅威ではない、あれは『いのち』ではないから。
「可不是、滅茶苦茶おっかないけどね」
 自分よりよっぽどヤクザに見える自称一般人を助けに来たと笑う結・縁貴(翠縁・f33070)が何あれ、と目の前の敵に翡翠のような目を細める。
 左腕は異形化し、背には翼の名残、右目は蜘蛛の巣を張ったように潰されて、左目は濁った白。立っているのも不思議なくらいの有様だと言うのに、此方に向けて放つ剣気は恐ろしく鋭い。
「……まさか骸の海自体が襲ってくるとは。しかも他人の躰を乗っ取るだなんて……」
 クソが、と吐き捨てるように呟いたのは普段は何処までも温厚な青年であるスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)で、よほど男の有様に思う所があったのだろう。
「よーし、やっちゃおーぜ、あーさん!」
「ええ、返してもらいましょう」
 おれは怒ってるんだ、とトヲルが鴻鈞道人を睨めば、男は薄く笑みを浮かべてこちらを見返すから。
「ぜってー許さねえ!」
 にゃーさんはそんな笑い方おれたちにしないんだよ! とトヲルが息巻く。
「兄ちゃん! かみさま! やーさん! ……やーさんってヤクザさんみたいだね!」
「あっちの方がよっぽどそう見えるけどね、トヲル帅哥!」
 ああ、と雲珠が小さく息を吐く。
 大丈夫、俺にはこんなにも頼もしい仲間がいるんだもの、雷にも目の前の敵にも、恐れる理由なんてないと気合を入れる。
「はい! 鴻鈞道人何するものぞ、です! かみさまなんて陰そのものですよ!」
「その意気だぜ、坊」
 何せ陰そのものなのはその通りなので、逢真がひひ、と笑って。
「それじゃあ……行くぞ、お前さん達」
 そう言って、異形の宿を編み上げる。瞬く間にヒトの形から空駆ける巨大な鳥の姿になると、雷鳴轟く空へと舞った。
「はい!」
 答えた桜は凛と瞳を見開いて、柏手を一つ大きく打つ。
 りりん、とならぬ鈴が鳴る、頭上の桜枝に花が咲く。
 桜が満開になる瞬間、彼を中心に桜の花弁が渦巻いてぶわりと舞い散った。
「負けませんよ! 深山さんを返してもらいます!」
 花緑青色のいつもの書生風衣装から、雪のように白い古風な漢服姿になった雲珠が声を張る。
「噫、俺に出来ることであれば、任された!」
 でも俺はか弱い虎だからね、守りは頼んだからねェ! と縁貴が笑うと異能を持つ眼が淡く光る。青い宝石のような髪がふわりと浮いて、尾が揺れる。覚醒しきらぬとはいえ、異能の眼を常時発動する負担はどれほどのものか。
 狂気に晒され理性が焼ける中、けれど、それを押してでも為さねばならぬ事があると未だ馴染まぬ生命の埒外の領域で騶虞が嗤った。
「ええ、みんなかっけー……!」
「かっこいいですね!」
 真の姿にはならぬ、なれぬ、あれは戦えないからとトヲルは力だけを引き出して。スキアファールもまた真の姿を現すことなくその力だけを同じように引き出して、互いにアイコンタクトを取ると雲珠と縁貴の前へ出た。
 相対するは鴻鈞道人、白く濁った左目だけを見開いて、腰に佩いた太刀へと手を掛けながら腰を低く落とす。
 何度も見た姿勢だと雲珠は思う、あそこから一足飛びに……瞬間移動でも使ったのかと思うようなスピードで鴇は敵に飛び込んでいくのだ。
 今に限って言えば、それを受けるのが自分達であるのだけれど。
 腰を落としきる前に、雲珠が桃の枝で作られた梓弓を構える。矢はなく、ただその弦を爪弾く――魔や邪気を祓う、鳴弦によって結界を張りながら、雲珠の意のままに伸び蠢く桜の枝と根を張り巡らせる。
「――大多恵主の加護ぞあらん!」
 主様どうぞ、お力を。
 そう雲珠が信じる神へ祈りながら作り出した桜の大繭が一瞬の間に自分達を守る防壁へと変ずると、空を舞う逢真がその上へ重ねて結界を被せる。
「過大評価もしねェが、過小評価もしねェよ」
 共に戦場を往く事もある剣士の腕を逢真はよく知っている、手負いの獣にも等しい上に鴻鈞道人と融合しているともなれば、その力は如何ほどのものか。
「今までの『過去』はいのちだった、過去に死んだとしてもな。だが鴻鈞道人、いやさ骸の海」
 いのちではないモノ、寧ろ逢真に近いだろう。
「マ、てめェと違って俺ァひとりじゃない」
 大繭の中、鴻鈞道人を倒そうと、あのヒトの命を救おうとする者達が四人もいるのだ。
「その体、返して貰うぜ。まだ寿命にゃウン十年ばかし早いンでね」
 おいでェ、眷属達よ。
 声なき声でそう喚べば、翼の影から湧き出るは象に陸亀、それを一気に鴻鈞道人へ向けて嗾けた。
 グリモア猟兵の顔をした鴻鈞道人の唇が笑みの形を作る、それと同時に地を蹴った。
「は、さすが旦那の体だな」
 象の群れの隙間を抜け、邪魔なそれを斬り伏せ、桜の大繭へ向けて陸亀の背を踏みつけて跳び上がる。
「足場にしやがったかよ」
 酸も使っておけばよかったか、と逢真が鴻鈞道人へ威嚇の鳴声を放つ。
「耐えます!」
 まずは最初の一撃、これを耐えなければ始まらないと雲珠が一層強く弦を弾く。鴻鈞道人が亀の甲羅を駆け、抜いた刀を大上段に構え――振り下ろす!
「えええ、なんでそんな斬れるの! みゃーさんの攻撃はぜんぜん一般的じゃねー!」
 硬く、固く、堅く結び絡まった枝絡みを結界毎斬り伏せようとする太刀にトヲルが叫ぶ。
「あぁもう、一般人の概念が崩れる!」
 スキアファールがその太刀を防ぐべく、オーラの防壁を重ねて押し返すように力を籠めた。
「鴇帅哥……血を流してるからだ」
 既に他の猟兵と戦った傷によって、こちらよりも血を流している、それが鴻鈞道人の力に反応しているのだろう。
「え、どういうこと?」
「简而言之、いつもの鴇帅哥より強いってことかなァ!」
 厄介だね! と縁貴が空笑いをすると、全員がマジかって顔になった。
「真の姿並みって事かィ」
 逢真が大繭の上から鴻鈞道人を見下ろして、そいつは本当に厄介だな、と八つの朱色を瞬かせる。
「でも、止めます!」
 雲珠が枝絡みを全力で斬れた傍から編み直し、それに合わせてスキアファールもオーラの防壁を押し上げていけば、これ以上は圧し斬れぬと判断したのか、鴻鈞道人が刃を引いた。
「やった!」
「トーさん、行きますよ!」
「うん、スーさん!」
 スキアファールとトヲルが飛び出すのに合わせ、雲珠が大繭を解く。
「トヲルくん、スーくん、お願いします!」
 任せて、と響く二人の声は何処までも頼もしい。駆け出していく二人の姿を見つめ、心を落ち着かせる。
 落ち着け、大丈夫、怖いからって離れすぎるな、標的にされたとしてもトヲルくんやかみさまに間に入って貰える位置取りを……! そう心掛けながら、雲珠は縁貴の横に立ち、梓弓を爪弾き続ける。彼が鴻鈞道人と鴇の縁を断ち斬る間、守るのが雲珠の役目なのだから。
 太刀を引きかけた鴻鈞道人の前に立ち塞がるはスキアファールとトヲルの二人、逢真はその間鴻鈞道人の手が雲珠と縁貴に伸びぬよう頭上から眷属を動かしている。
 肉体改造で生身の目と脳を強化したトヲルがサイバーアイもフル稼働させ、一瞬の動きですらスローモーションのように見える状態を作り出し、引きかけた刃を再び振り下ろそうとする剣筋を捉えた。
「しんっけん! 白刃取り!」
 阿修羅像も斯くやの如く増やして強化した腕で、鴻鈞道人の手首ごと真剣白刃取りを敢行する。そしてその瞬間、肉体の限界を解除した上での限界突破を行い、持てる術の全てを使い手首を挟んだ瞬間に全身を金属化して鴻鈞道人の動きを止めた。
 さらにその先、抗う鴻鈞道人をスキアファールの呪瘡包帯が絡め取る。
「これで刀ほっぽって逃げるのも無理だろ!」
『小賢しい真似を……』
 白濁した左目を細め、鴻鈞道人が力を込めて動こうと試みる。
「無駄ですよ。縁さん、行きましょう!」
「可以! かみさま、トヲル帅哥、俺が剥いだと叫んだら、どう攻撃しても好い!」
 それと、と縁貴が付け加えるように叫ぶ。
「物理の距離が物を言う、鴇帅哥に近づけないよう如何にか離してくれ」
「それは私が!」
「噫、スー帅哥に鴇帅哥の回収はお任せした!」
 道筋はできた、あとは仕上げを御覧じろだと縁貴が異能の眼をしかと見開く。
 みる、見る、視る。
「捉えた、縺れて歪んで無理に結んだのがすぐ分かる御縁だ」
 片方からしか、鴻鈞道人側からしか結ばれていない縁を断ち斬る為に、縁貴が異能で呼び出した鋏を手にしスキアファールに叫ぶ。
「スー帅哥!」
「はい、鴻鈞道人、おまえの好きにはさせない――!」
 スキアファールが合図とともにユーベルコードの力を発動させる。瞬間、スキアファールの怪奇たる躰から混沌の地を包むほどの瘴気が溢れ出す。それは鴻鈞道人の幸運を一時的に無くす呪詛を放ち、鴻鈞道人にとって有利となる状況や現象を無力化する。
「これが『骸の海』にどれ程通用するかは不明ですがね……!」
 即ち、鴻鈞道人の能力をほぼ封じ込んだといってもいい状況であり、グリモア猟兵と融合している状況すらも捻じ曲げる!
「これなら縁さんの仕事もやり易くなる筈です、頼みます縁さん!」
 その言葉を受け取った縁貴が、鋏から鴻鈞道人と鴇を繋ぐ『縁』を断ち斬る刃を放った。
「鴇帅哥から出ていって貰おう!」
 それは過たず捻じれた縁を斬り、縁貴が斬った糸を掴んで鴻鈞道人を引きずり出す。
「こ、のぉ……、往生際が、悪い!」
 斬ったにも拘らず再び融合しようとする鴻鈞道人に向かって、逢真が朱色の羽根を飛ばした。
「触れりゃ腐る毒の羽根さァ、今だぜ虎兄さん」
「謝謝您!」
 縁貴が翡翠の瞳を光らせ、再び繋がらんとする縁を斬って一息に鴇から引き剥いだ。
「剥いだ! 後は祝好」
 よろしく、という声に即座に反応したのは逢真とトヲル、そしてスキアファールだ。
 トヲルが金属化を解き、スキアファールが崩れ落ちる鴇の身体を呪瘡包帯で包み込み雲珠の元へ運び、逢真が鴇と再び融合せんと動く鴻鈞道人と雲珠の間に割り込むように飛ぶ。
 その姿を見守りながら、雲珠がスキアファールが連れてきた鴇の大きな体を枝絡みを使って引き受ける。
「雲珠さん、護りは任せました! 大丈夫、この身が死ぬ直前まではユーベルコードは継続します」
「任せっ……待って、スーくん今なんと!?」
「……は? 死ぬまでって言った? 刻限は?」
「百秒ちょっとですから、あと一分以上はありますよ」
「百秒余り!?」
 スー帅哥は仕事が確かだな、斬りやすくて助かるなァ、なんて思っていたけれど、それもそのはずだ。
 命を懸けているのだから。
「あ、……はは、言ってませんでしたっけ。皆さんなら時間内に片が付くと信じていますよ」
「スー君……」
「トーさん、朱酉さん、奴をぶっ飛ばしてください!!」
 柔らかくも覚悟を感じさせる声音に、雲珠が気を引き締める。今この場で、誰も彼もが自分のすべきことをしている、ならば自分がすべきことは鴇を診ること。
「深山さんだって、頑張っていらっしゃるんですから」
 怪我の部位と程度を調べる為、手早く着ている衣服を剥ぐ。どうせ既にボロボロなのだ、切ったところで怒られはすまい。
「大丈夫、俺が助けます」
 右目も左腕も、酷い有様だけれど大丈夫、と雲珠が優しく手のひらを当てた。
「嗚、これだから格上は……操!」
 流れる脂汗を拭いもせず、縁貴がスキアファールが命懸けで創り出しているフィールドで縁を斬り続ける。
 こんな状況にでもしなければ融合の縁が断ち切れないのだ、本当に格上はクソ。
 パチン、パチン、パチン。
 けれど、どうあっても無理を通す。何度だって斬ってみせると虚勢を張って、縁貴は嗤った。
『無駄だ、何度でも融合してみせよう』
「うるせェ。吹っ飛ばせ、白いの。黒兄さんが見てンぜ」
 何度でも融合してみせようとする鴻鈞道人を鼻で笑って、一番近いのはトヲルだと判断した逢真が声を飛ばす。
「あーさんとやーさんがめちゃくちゃ頑張ってみゃーさんからあのヤローを剝がしてくれたんだ、今度はおれの番! 任せて、行くぜかみさま!」
 トヲルが駆けながら、叫ぶ。
「リミッター解除、オーッバーッロードォォォ!!」
 姿形は変えない、この姿のまま能力を上げる。シンプルだが自身の能力と手にしたハンマーの威力は特化しただけあって、かなりのものだ。
「力いっぱいぶっ飛ばぁす! ドッカーン! ナーイスショット!」
 トヲルの無限の怪力によって飛ばされた鴻鈞道人を追い、逢真が翔ける。
「いいぞ白いの」
 異形の喉で笑って、逢真がそれに追い打ちをかけるように眷属を喚んだ。
「来い、エラ」
 それはもっとも古く恐ろしき者。
 メソポタミア神話において戦争や死、疫病、冥界の神とされるもの。
「あれは強敵、お前の目に適う敵だ。七人の闘士を寄越せ」
 エラが玉座から鴻鈞道人を見遣るなり、逢真の命じるままに四人を攻撃に、三人を雲珠達を守らせる為に遣わせる。それに合わせて逢真が眷属もそちらに回し、己はトヲルの後を追った。
「わー! やべー戦士きた!」
 トヲル言う所のやべー戦士と一緒になって、トヲルが反撃すら許さぬ勢いで鴻鈞道人を殴って、殴って殴る!
「神仙すなわち神、ってこたァ王サマの毒も効くだろ」
 その思考搔き乱し、身を腐らせてやる。
 逢真の意を組んで、エラが玉座から神すら退ける程の混乱と疾病を飛ばす。
『これがお前達の罪深き刃……!』
 はは、ははは! と鴻鈞道人が楽し気に笑う。
『相争い、私の左目に炎の破滅を見せてくれ』
 戦いを望むように、鴻鈞道人が再びグリモア猟兵に向かって翔けた。
「不会吧! こっちに来るんだけど!」
 縁を断ち斬る事に集中している以上、縁貴に逃げる術はない。逃げた瞬間に鴻鈞道人が鴇と再び融合するのは目に見えている。
「この期に及んでも、まだ縁を結び直そうと動いてるんだよねェ、諦めの悪いことで!」
「大丈夫、守ります」
 手当てをしつつ、枝絡みを操る。それは雲珠の体力と神経を酷く疲弊させるけれど、ここで引くわけにはいかない。
「かみさま! 頼りにしてますからね!」
「はいよ、病と毒を携えて、頼られ叶えにかみさまが来たよォ」
 空を飛ぶのなら、この姿で負ける気はあんまりねェな、と嗤って逢真が鴻鈞道人へと突っ込む。
「誰が相争うかよ、てめェだけ腐り溶かしてやらァ」
 逢真の宿は病毒の塊、それを煮詰めたような毒を滲ませて、迷いなく鴻鈞道人へ体当たりをかます。
「おれもいるよー!」
 走って追いついたトヲルがとっておきだとハンマーを振り被り――。
「あばよクソ野郎、とっとと海に還れ!!」
 混沌の地に穴が開く程の勢いで、鴻鈞道人に向け叩き付けた。
「どうだぁ!」
「……ッ、ユーベルコード、切れます!」
 スキアファールが叫び、効果が切れたことを宣言する。
「やりましたか!?」
 雲珠が膝を突いたスキアファールを気遣いながら、鴻鈞道人を倒したかどうか確認するように問う。
「还没有! 縁がまだ繋がってる!」
 トヲルのハンマーの下、白く濁った瞳が覗いた。
「あ……っ!」
 両目を閉じていた鴇が左目を開く、それは白く濁っていて――。
「操!」
 縁貴が舌打ち交じりに叫び、縁を断つ。
「まだその縁は俺の手の内!」
 手繰り寄せ、斬る、斬る、斬る。
「虎兄さん、どこで繋がってる」
 逢真が問い掛けると同時に、鴇が――否、鴻鈞道人が立ち上がる。
「左腕、左腕が一番強いよ!」
「俺がやる、懇切丁寧に躊躇なく、旦那ごと……」
 殺そう。
 逢真がその八つの朱色を見開いて、鴻鈞道人の左手にその翼で触れた。
 指先から壊死が始まる、鴻鈞道人が融合しているからか、本人の耐性か、毒の進みは些か遅い。それでも、その毒はもうその身に触れたあとだ。
「深山さん!」
 雲珠が叫んだその瞬間、鴻鈞道人が太刀を抜き――諸共死ぬ前にと左腕を斬り落とす!
「虎兄さん、いまだ!」
「この御縁は、無かった!」
 パチン!
 既にか細くなっていた鴻鈞道人と鴇を結ぶ糸は左腕が落ちると共に、これにてお終いとばかりに消えていく。
「いい加減、頭に来ました!」
 スキアファールが逃さぬとばかりに呪瘡包帯で鴻鈞道人縛り上げ。
「白いの!」
「まっかせろおおお!」
 もう残滓とも言っていいような鴻鈞道人がトヲルの一撃をもろに喰らう、それに続けて逢真が今度こそお前の負けだと毒を放った。
『――……!』
 消え際に、何か言っていたような気もする。けれど、五人の意識はもう鴻鈞道人ではなく鴇へと移っていた。
「深山さん!」
「うわああ、みゃーさんの左腕!」
「治します、俺が!」
「真的吗? 左腕取れてるんだけど!?」
 生きていればなんとかする、絶対に。
「いいぞ、落ち着いてンな、坊。あの時と一緒だ」
「はい」
 世界は自分の延長、この腕は俺の一部。
 まるでトランス状態に落ちるように、雲珠の瞼が半分落ちる。
「あなたは俺。俺はあなた……」
 雲珠の手が鴇の失われた左腕に触れる。
 ゆっくりと、覆った手の下で失った骨が、肉が、鍛え上げられた筋肉が、血管が――再生していく。
「啊……小雲珠も埒外だった……」
 何あの完璧な再生、と異能の眼を閉じた縁貴が呟いた。
 雲珠の桜織衣がふわりと風を孕み、桜が舞う。
「兄ちゃんの魔法!」
「ええ、以前にも見たことがありますが見事なものです」
 トヲルの体が物理的に短くなった時に、トヲルが自らの身体で体感しスキアファールが間近で見ていた、雲珠のユーベルコードだ。
「これで、大丈夫な、はずです……!」
 疲労感が凄まじいけれど、それはきっと皆も同じはずだと雲珠が顔を上げる。
「ああ、もう大丈夫だろ」
 逢真がそう言った瞬間に、鴇の瞼がぴくりと動いた。
「みゃーさん!」
「深山さん!」
「鴇帅哥」
「深山さん」
「そろそろ起きなィ、旦那」
 五人の声に、少しずつ鴇の意識が覚醒していく。
 目を覚ましたら、目を開いたら。
 ある者は涙を浮かべ、ある者は笑って、きっとこう言うのだろう。
 おかえりなさい、と――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月28日


挿絵イラスト