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銀河帝国攻略戦⑰~本性

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●本性
 難攻不落の帝国大要塞「エンペラーズマインド」を突破した『解放軍』は、帝国旗艦『インペリウム』を目指し快進撃を続けていた。
 しかしその前に黒騎士アンヘル配下の『アゴニーフェイス』艦隊が立ちはだかる。
 精神破壊兵器『アゴニーフェイス』――それは専用カートリッジを入れて作動させることで、強大な『テレパシーの悲鳴』が放たれ、受けた艦の人間達の精神を破壊する兵器だ。
 その、専用カートリッジとは特殊加工したサイキッカーの脳。
 苦痛に喘ぐ人間の顔のような形をした金属の塊である『アゴニーフェイス』には、戦闘力はない。
 しかしこの『アゴニーフェイス』を中心とした戦団を組み、『アゴニーフェイス』で無力化した敵を撃破するのが、『アゴニーフェイス』艦隊の必勝の戦法となっている。
 だが、
 解放軍の艦隊には『アゴニーフェイス』の攻撃を防ぐ方法が、ない。
 いままたひとつ――解放軍の艦隊が終わりを迎えようとしていた。

●猟兵の向かう先
 ヤドリガミの少女、華切・ウカ(空鋏・f07517)はグリモアをその手に、スペースシップワールドに再び向かってほしいと、集った猟兵達へと紡いだ。
「皆様に戦っていただきたいのは、『アゴニーフェイス』艦隊のひとつなのです」
 精神破壊兵器『アゴニーフェイス』――それは専用カートリッジを入れて作動させることで、強大な『テレパシーの悲鳴』が放たれ、受けた艦の人間達の精神を破壊する兵器だ。
 しかし、サイキッカーの脳を使うという攻撃回数制限がある為、解放軍の艦隊が全滅する事はない。しかし放っておけば甚大な被害が予測されるのは必至。
「猟兵の皆様には、『アゴニーフェイス』艦隊が、スペースシップワールドの艦隊を射程に収める前に急襲し、精神破壊兵器『アゴニーフェイス』を撃破していただきたいのです」
 そう言って、ウカは『アゴニーフェイス』艦隊についての説明を続ける。
『アゴニーフェイス』艦隊は、精神破壊兵器『アゴニーフェイス』を中心に布陣した集団敵。
 艦隊というが、戦艦などがあるわけではない。
『アゴニーフェイス』の攻撃で敵を無力化するので、最低限の護衛と残敵掃討のための戦力以外は、隠密性が重視された結果のようだ。
 おそらく猟兵の襲撃を受ければ、猟兵達へと向けて『アゴニーフェイス』が発射されるだろう。
「その精神破壊攻撃は皆様にも効果を及ぼしますが、『理性を失わせ、その姿を強制的に真の姿とする』ということになるかと」
 おそらく『アゴニーフェイス』の破壊効果を、猟兵の生存本能が上回ったという事とウカは続ける。
 そしてこの効果はこの兵器を破壊するか、戦場から撤退するまで続くと。
「敵のとった手を逆手にとるような戦法になりますが……強制的に、そうなってしまいますので向かわれる方はお気を付けください」
 そうなられることを望まぬ方もいらっしゃるでしょうから、とウカは言う。
 そして――これにはさらに副作用がある。真の姿が通常の姿から大きく外れていればいるほど、より強力な戦闘力を発揮する事ができるようなのだ。
「皆様が行動を起こすことで助けられる方がいらっしゃるのは間違いありません」
 どうかよろしくお願いします。
 そう言って、ウカは猟兵達を戦場へと送った。


志羽
 お目通しありがとうございます、志羽です。

●シナリオについて
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 敵への急襲→『アゴニーフェイス』発射→真の姿に変化するシーン→真の姿での戦闘シーン→『アゴニーフェイス破壊』→元の姿に戻る→敵を掃討
 以上の流れが想定されますが皆様のプレイングによっては展開が変わることもあります。

 『アゴニーフェイス』発射により皆様は強制的に『真の姿』となります。
 その詳細や心情等をプレイングにお詰め下さい。
 なお、早めに締め切らせて頂くと思いますので、プレイングをお返しになる方もでると思います。
 その点、ご理解、ご了承の上、ご参加ください。

 以上です。
 ご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『ミサイルファイター』

POW   :    衝角突撃
【機体前方に装備された対艦衝角】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ファイターレーザー
【速射式レーザービーム】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    スターシップキラー
【レーダー波】を向けた対象に、【対艦ミサイル『スターシップキラー』】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アルトリウス・セレスタイト
何にせよやることに変わりはないか

臘月で呼び出した霊体と協働
自身は魔眼・封絶で拘束
心眼で捉えうる全敵性個体を同時に縛る
使える技能は活用

霊体は破天で爆撃
止まった個体を中心に爆ぜる魔弾の嵐で蹂躙
此方も各種技能を駆使し絶え間なく叩き付け圧殺する面制圧飽和攻撃

他の猟兵があれば巻き込まぬ程度に狙いは絞る


※真の姿は淡青色の光の粒子で構成された人型。近付くほど実体を失う
※アドリブ歓迎


黒玻璃・ミコ
【真の姿】
漆黒の西洋甲冑を身に纏い
魔槍を携えた美少女竜騎士

◆心情
あぁ、成る程
進めば進む程鬼畜の所業が明らかになると言うことですか
ですが、非道な者を私は逃がしはしませんよ?

◆行動
【黒竜の恩寵】で攻撃力UP

バリアを張っているならば
此方も愛槍を携えチャージランスです
【第六感】でタイミングを図り
肉と骨を切らせて全てを断つ理論で【カウンター】です
その一撃は【鎧を砕き】
比類無き【怪力】で機体ごと【串刺し】にしてみせましょう
何しろ【毒使い】による腐食毒も塗ってますからね

そして悲しき犠牲者には誓いましょう
必ずやこの世界を救ってみせる事を(兜を脱ぎポニーテールを靡かせながら)

◆補足
アドリブ、他の方との連携も歓迎


村崎・ゆかり
人の脳を『弾薬』にしようなんて、悪趣味にもほどがある。そんなに脳みそを使いたいなら、ドクター・オロチを使いなさい!

防衛する邀撃機を巫覡載霊の舞で斬り捨てながら、『アゴニーフェイス』艦を目指すわ。

――来た、精神破壊攻撃!
ああああぁぁっ!

真の姿は三面六臂の阿修羅のような姿。それぞれの手に武器を持っている。

この声が、気に障る……。潰す。

矛と戟を振るって装甲を「串刺し」にして引き剥がし、侵入路を作る。
戦輪を飛ばし敵兵の射撃に対抗。「オーラ防御」を無意識に使いつつ敵の懐へ入って、二本の長柄武器で「なぎ払い」蹂躙する。

あれが大本か。容赦なく、穿ち抜く。

……戻ったか。我ながら暴れたものね。残敵掃討に入るわ。


尾崎・ナオ
誰か可愛い子の壁になりませーん?(連携歓迎)

真の姿は、なんと、猫耳が生えまーす!髪の横部分がね、猫になるよ!(普通の姿でサポート戦闘でもOK、書きやすいようにアレンジしてください☆)(真の姿時は、陽気さウザさが3割増し)

ナオちゃんは「集団戦闘」の方をメインに考えてる。
アゴなんちゃらは任せる~。集団戦、だーいすき☆

技能【クイックドロウ52】で、高速の早打ちを仕掛けるよ!弾薬が足りない?いやいや、大丈夫。拳銃自体が沢山あるから!同じ銃ちゃんと複数装備してるから!

ファイターレーザー怖い怖い怖い。レベル20か25よね、離れてよー。
ナオちゃん銃弾なんでその距離届くし【ナイフいっぱい☆】でナイフ投げる。


クロード・ロラン
敵の攻撃を警戒しつつ、艦体を襲撃
アゴニ―フェイスを受け、真の姿に変身する

正直、理性失って戦うのは好きじゃねぇ
無策に暴れまわるってかっこよくねぇしなぁ
でもこれが今回の最適解だっていうなら、覚悟決めて受け止めてやる
お前ら、後悔するなよ?

●真の姿
漆黒の毛皮を纏う、巨大な狼
黒風鎧装に似た漆黒の風を纏い、荒れ狂う風にも攻撃力がある
理性手放せば人語を失い、力任せに暴れ回り
視界内の全ての敵がいなくなるまで攻撃をやめない

元の姿に戻れたら、大鋏持って敵を掃討
あー、やっぱり真の姿の間のことよく覚えてねぇし
仲間に見られたと思うと恥ずかしい!
とりあえず敵側の見たやつは全員ぶっ潰そう
それでチャラにしてやるよ!


イア・エエングラ
だいきらいな、故郷のために
けれど、人のために、為しましょう
景色も忘れるくらい焼き切れるなら
きっと、都合も良いでしょう

駆けて、翔けて、欠けて、疾く
揺れる裾は水の刃に
名を呼ぶ声は凍てる嵐を呼んで
伸べる手は水晶の鉤爪の四肢へ
翻る裾は幾つもの尾になり火を曳いて
光るを星を呑んで沈めて
水に嵐の獣とはてよう

これではきっときみに届かない
きっときみに触れられやしない
真直ぐに、食い破って蹂躙するために、
天籟のほかにはなんにも聞こえなく、なって

剥片ばかり降りおちる
砕けて裂いて、全部
おんなじに戻れなくなったら、かなしいかしら
全部忘れるのと、どちらが良いだろね
ただすべてを、薙ぐために

ご随意に


浮世・綾華
脳って…ハ、マジか
吐き気がする

真の姿の両腕は異形の黒
影のような鋭い指先が
黒い艶やかな長髪をかきあげる
隙間から覗く強膜は漆黒に染まり
緋色の眸だけが変わらずそこに

嗚呼、俺に殺されてえの?
苛立つようにけれど冷えた表情で
黒鍵刀を力の儘奮う
普段の計算高い行動も柔い表情も此処にはない
在るのはあの日々の苦痛と恐れ、嫉妬
本当は何も知らぬ開けた世界への妬み
それらを振りかざすように
堕ちる、這う

耐え難いに決まっている
この広い宇宙で宇宙船での生活を余儀なくされるのは
考えただけで憎い憎い憎い
その住居さえも破壊し自由を奪う何者も

アア、嗚呼、嗤えない
――大丈夫、正気だぜ?
御前を毀し、世界を開くから

アドリブ歓迎
お好きなように


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
真の姿――なァ。
嫌いではないのだが……他人の邪魔になるのが何とも……。
などと言っている場合ではないか。
ふはは、ならば見るが良い。
私こそが悪徳の名を関する蛇竜、ニルズヘッグ様だ!

真の姿は、翼の生えた巨大な黒い竜である。
本当に……どう見ても悪役なものだから、どちらがオブリビオンか分からんな。
こうなると力の制御は出来ん。
溜め込んだ呪詛と瘴気を纏い、それを他者に向けて発するだけの獣だ。
ふはは、あまり寄るなよ――と言って、聞こえる状況ではないな。
だが私もこの姿で手加減はしてやれん。
【嘲笑する虐殺者】とこの尾で、まとめて薙ぎ払う!

この体で避けることはせん。鱗で防ぐのみ。
腐っても猟兵だ。どうとでもなろう?


両角・式夜
あぁ、たまには地竜としての姿を思いだしませんと
…わしが、地に在る雷電竜である!

真の姿は岩石と鉱石の鎧を纏った雄々しき竜
大暴れしてアゴニーフェイスに向かう者達の露払いをしてやろう
クク……ハハハハッッ!!いい気分だ!!
普段は身体強化に魔術を割いているが、全て攻撃に回そう
なぁに、手足の一本や二本、この姿になると決めていたら当然の犠牲だ【激痛耐性】で幾らか耐えられるだろうて
【捨て身の一撃】と【怪力】を合わせながら爪を振るおう
こうして大暴れするのも久しぶりでとても楽しいぞ!
あぁ、あぁ、宙も悪いものではないな


アドリブ、合わせ大歓迎!



●急襲
 ミサイルファイターで組まれた『アゴニーフェイス』艦隊――それは今、ある解放軍の艦隊を狙って静かに進んでいた。
 しかし、その襲撃を予知した猟兵達は先手を取って迎え撃つ事となる。
「誰か可愛い子の壁になりませーん?」
 なんて、尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)は言いながら敵へと走る。
「当たると痛いですよ~ぅ」
 そう言って、ナオは己の持つ黒いナイフを多数生み出し操ると共に敵の関節部へと突き刺していく。
「何にせよやることに変わりはないか」
 アルトリウス・セレスタイト(原理の刻印・f01410)は紡ぐ。
 写せ、と。
 すると傍らにはアルトリウスと同じ外見と能力の霊が。
 その霊体はアルトリウスが扱うユーベルコードをそっくりそのまま使いこなし、敵へと仕掛ける。
「淀め」
 心眼で捉えた対象は動きを一時的に拘束される。
 その隙に言葉紡がず、霊体は青く輝く魔弾を数多く並べたてた。
 それは死の原理で存在根源を直に砕く、属性の影響を受けない弾丸。
 放たれたそれは敵の群れを撃ち抜いていく。
 あぁ、成る程、と。
 ふよんと身体を揺らして黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)は想う。
 進めば進む程鬼畜の所業が明らかになると言うことですか、と心は冷えていた。
「ですが、非道な者を私は逃がしはしませんよ?」
 そして戦場にミコが降り立ったすぐ後に、それは放たれる。
 猟兵達からの攻撃に苦痛に喘ぐ人間の顔のような形をした金属の塊『アゴニーフェイス』だ。
 それは戦場の真ん中に落ち、強大な『テレパシーの悲鳴』をあげた。
 常人ならば、それを受ければ心砕かれ、精神を滅ぼされ優位に働く。
 けれど相手は――猟兵。
 その影響は敵にとっては思いもよらぬ、ものなのだろう。
「人の脳を『弾薬』にしようなんて、悪趣味にもほどがある。そんなに脳みそを使いたいなら、ドクター・オロチを使いなさい!」
 己の抱える怒りを村崎・ゆかり(紫蘭・f01658)は吐き出しながら敵を切り捨てていた。
 そこへ飛来した姿に、ゆかりは構える。
「――来た、精神破壊攻撃! ああああぁぁっ!」
 これは避けられぬものだ。
 その身に痛みが走っていた。変異していく、その代償がゆかりに降りかかっていた。思わず、膝をついてしまう。
 やがて、その変異も終わる。
 痛みが引き、立ち上がったゆかりは三面六臂の阿修羅のような――それぞれの手に武器を持った存在へと成っていた。
 しめやかに頭に響き続けるもの。その存在にゆかりは、眉を顰める。
「この声が、気に障る……。潰す」
 ぽとりと、言葉落として。ゆかりはその声の強くなる方へと歩を進め始めた。
 響く、『テレパシーの悲鳴』は。それを起こす物の内にはひとの脳が使われている。
 それを知った浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)は嫌そうに、眉を顰めた。
「脳って……ハ、マジか」
 吐き気がする、と零す。その声音には嫌悪が滲んでいた。
 そしてその影響を受けねばならないことにも。
 綾華の両腕は変じる。
 異形の黒がはい出して、影のような鋭い指先が生まれて。
 ゆるりと、視界をまた黒が流れる。
 黒い艶やかな髪を、長い長い影のような指先でかきあげて。その隙間から覗く強膜もまた黒に染まり緋色の眸だけが変わらず、らんらんとそこにある。
 嗚呼、と綾華が。黒い異形が零す声はひどく苛立ちを含んでいる。
「俺に殺されてえの?」
 目の前に現れたそれへと冷えた表情で。
 振り上げた先端に刃がついた黒色の鍵刀は、今はその大きさを、敵を斬るに能うに変えて振るわれる。
 力の儘、ただただ振り落とされるだけの一撃は敵を簡単に、潰した。
 ぴりりと、肌の上を撫でる緊張感がある。
 クロード・ロラン(人狼の咎人殺し・f00390)は自身の変異を感じきゅっと、眉間に皺を。
 意識が薄れていく感覚。自我を保たせようとするが――それも否定されていく。
「理性失って戦うのはすきじゃねぇ……無策に暴れまわるってかっこよくねぇしなぁ」
 けれど、それが防げぬものと了承はしてきた。
 ああ、と溜息一つ落とし金色の瞳をクロードは真正面へと向ける。
「でもこれが今回の最適解だっていうなら、覚悟決めて受け止めてやる」
 お前ら、後悔するなよ? と不敵に人狼の少年は笑って――漆黒の毛皮を纏う。
 そこから先はクロードの意識はあって無きもの。
 四肢は地をしっかりと掴み、その吐息は荒く。漆黒の、荒れ狂う風纏う巨大な狼は眼前の敵へと躍りかかった。
 力強い雄叫びをあげ、力任せに敵の群れへ。
 自身を強化したミコは、己の身が変わっていくのを感じる。視線が今よりも、ゆっくりと高くなっていくのだ。
 そんな仲間達の様子見つつ、ナオもまた自身の変化を感じていた。
 黒髪がざわりと蠢いて、猫耳へと変わっていく。
「にゃ~ん! なんちゃって」
 そんな風にきゃらきゃらと笑いながら、ナオはにんまり、瞳細め。
「アゴなんちゃらは任せる~。集団戦、だーいすき☆」
 近くにいた仲間へと声をかけ、敵が集まる場所へと駆ける。
 ああ、とアルトリウスは己の手を見る。
 すぅと淡青色の光の粒子が身の回りに煌めく。いまはまだ、己の身の感覚はここにあった。
 しかし、それが徐々に薄れていくのも確かなこと。
「あぁ、たまには地竜としての姿を思いだしませんと……わしが、地に在る雷電竜である!」
 と、両角・式夜(銀錫赤竜・f01415)は高らかに叫ぶ。
 その身は一層固く。岩石と鉱石の鎧が身の上を這うように式夜の身体の上を多い守りを硬く。
「大暴れしてアゴニーフェイスに向かう者達の露払いをしてやろう」
 そう言って、敵のもとへとその身からは想像できぬほど軽く、早く式夜は走り突っ込んでいく。
「真の姿――なァ」
 うぅん、と少しだけくぐもったような声色でニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)は零す。
 それは嫌いではないのだが。だがしかし。
「……他人の邪魔になるのが何とも……などと言っている場合ではないか」
 そう言ってニルズヘッグは友の姿に、先に行くと告げ走り出す。
 ざわり、とその身はすでに変異を感じている。
「ふはは、ならば見るが良い――私こそが悪徳の名を関する蛇竜、ニルズヘッグ様だ!」
 ひらりと、マントの端を翻してニルズヘッグは敵の元へと走る。
 一歩踏み出せばその足は鱗に覆われ、また一歩でその腕が黒き鱗の、鋭い爪へと変わっていく。
 そして尾が、翼が。巨大な黒い竜が戦いの場を席巻する。
 どう見ても悪役――と、変じる瞬間に思う。
 これではどちらがオブリビオンなのか。こうなれば力の制御などは無き者だ。
 ニルズヘッグは敵の懐へとそのまま、飛び込んでいく。
 その友の背中を見送って――何故ここにいるのか、とふと思ってしまう。
 そう、戦うためにここにいるのだった。
 だいきらいな、故郷のために――けれど。
 人のために、とイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)は思う。
「景色も忘れるくらい焼き切れるなら」
 きっと、都合も良いでしょうと紡いだ直後だ。
 イアの身は変じ、地を蹴る足は鋭き鉤爪を得る。それは足だけなく、伸べる手も。
 駆けて、翔けて、欠けて、疾く――揺れる裾は水の刃。
 名を呼ぶ声は凍てる嵐を呼んで。
 蒼褪めた星が尾を曳く夜の裾、は幾つもの尾になり火を曳いて、光る星を呑んで沈めて。
 変容は一瞬だった。
 水に、嵐の獣となったものはここではないと走り始めた。

●本性
「遅い遅い~」
 ご機嫌な様子でナオは高速の早打ちを仕掛けていく。
 弾薬が足りない? そんな心配はなく、拳銃を沢山もって。
 と、速射式レーザービームが放たれて。
 怖い怖いと笑いながらナオはそれを一足、猫のように身軽に交わした。
「ナオちゃん銃弾なんでその距離届くし」
 ナイフもいっぱいあると黒いそれをいくつも複製して、ビームの砲身へと操って詰め込んだ。
 するとそこはもう一射する瞬間爆ぜて砕け散る。
 その様子をナオは面白そうに見て、次の得物を定めた。
 視界の端では黒い竜が、ニルズヘッグがその尾を振って敵を吹き飛ばす。
 その身に溜め込んだ呪詛と瘴気を纏い、ただただ、他者に向けるだけの竜。
 作戦も何もなく、ただただ荒ぶるだけだ。
「ふはは、あまり寄るなよ――と言って、聞こえる状況ではないな」
 ぐぅと喉奥鳴る、竜の声。
 だが私もこの姿で手加減はしてやれんと、笑えばくぐもった声になる。
 自らの怨念に喰われるが良い――そう紡いだ声は、敵に理解できているのかはわからない。
 だが、目に見える範囲にある敵は突如動きを鈍くして。
 そこをニルズヘッグは尾で払う。
 一気に、敵の数は削られていく重量のある攻撃だった。
 人としての、その形を失ったアルトリウス。
 形の輪郭はまだある。しかし傍らの霊体よりももっと不安定な、淡青色の光の粒子のかたまりは、言の葉も紡がず。
 しかし、やることだけは何なのか、解っている。
 霊体の生んだ魔弾の嵐が蹂躙するように走り抜けていく。
 アルトリウスへと向かってレーダー波が向けられるが、それはその身を通り越して狙いを定めるに至らない。
 それでも放たれた対艦ミサイル『スターシップキラー』の命中力は本来なら高いのだがアルトリウスの姿を見失い過ぎていく。
 自身を強化したミコも、今その姿は変わっていた。
 漆黒の西洋甲冑を身に纏い魔槍を携えた美少女竜騎士姿のミコはその槍を敵へと向けて駆け抜ける。
「悲しき犠牲者には誓いましょう、必ずやこの世界を救ってみせる事を」
 そう零して脱いだ兜からはポニーテールが流れ落ちる。
 目の前の敵へと、自身を邪魔する者へと矛と戟を振るう。
 その装甲を串刺しにして、払って。
 ふと目にした先に、それはいた。しかしいかせまいと飛び出てきたものへ、戦輪を放ち叩き落とす。
 そんな、少し乱暴な、力押しのような戦いをしていると援軍が――それらに援護をしているという気はまったくないのだろうが――続く。
 普段の計算高さも、柔い表情は此処にはない。
 在るのはあの日々の苦痛と恐れ、嫉妬――本当は何も知らぬ開けた世界への妬みだ。
 綾華は目の前の敵を蹴りつけ、赴くままに荒れる感情をぶちまけようとする。
 それらを、振りかざすように――堕ちる、這う。
 長い髪は重く、地を這って。緋色だけは酷く鮮烈。
 耐え難いに決まっている、と口の端を綾華は食む。
 この広い宇宙で宇宙船での生活を余儀なくされるのは、考えただけで――憎い憎い憎い。
 その住居さえも破壊し自由を奪う何者も。
 心の澱は綾華の心からあふれ出て来る。まるでどこかと繋がっているかのように。
 それぞれが敵を破壊し、その数を経していく。
 すると、守りの厚い場所がある。
 そこが敵の中枢だ。
 ニルズヘッグは敵の攻撃を避けることなく、その鱗で防ぐ。
 痛みが全くない、とは言わないが耐えきれぬものではなかったのだ。
 腐っても猟兵――どうとでもなろう? と、敵のミサイル撃たれる中へと突っ込んで、道を切り開く。
 そこへ続いたもうひとり。
「クク……ハハハハッッ!! いい気分だ!!」
 普段は身体強化に魔術を割いているが、全て攻撃に。
 式夜は敵の攻撃の、一番重い部分を請け負ってここまで進んできた。
 鎧は剥がれ落ち、その肉が見えている。爆発で吹き飛ばされ、レーザーで焼かれたその身は激痛が走っているのは間違いない。
 しかし耐性を得ていたからこそ、まだ気丈に、高らかに式夜は笑っていられた。
「なぁに、手足の一本や二本、この姿になると決めていたら当然の犠牲だ」
 さぁ、いけと。
 式夜はその爪を、思い切り力をもって。己の身の犠牲と共に振り下ろす。
 敵の攻撃、ミサイルも放たれ手も吹き飛ぶが確実に、ぐしゃりと潰し弾いた。
「こうして大暴れするのも久しぶりでとても楽しいぞ! あぁ、あぁ、宙も悪いものではないな」
 ニルズヘッグと式夜によって大きく『アゴニーフェイス』への道が開かれた。
 その脇から敵が詰めるがそれでも先程までよりは少ない。
「あれが大本か――邪魔」
 静かに、敵の姿を見定めゆかりは二本の長柄武器を交差して薙ぎ払った。
 そこへ――一匹の漆黒の狼が飛び出す。
 視界内にあるものすべてに敵意向けるクロードだ。
 喉奥から吠え、一番の敵と見定めたのは金属の塊『アゴニーフェイス』だ。
 あれが一番、癇に障るとでもいうのだろう。
 迷わず、クロードはその塊へと飛びかかった。
 けれど他方からまた敵が現れる。
 しかしそれを、別の獣がその爪で捉え叩き伏せる。
 これではきっときみに届かない――と嵐の獣は呻く。
 きっときみに触れられやしないと、敵を叩き伏せたその爪をひどく寂し気に見つめて。
 けれど、気は逸る。
 目の前にあるものその喉元を、食い破りたい。
 真直ぐに、食い破って蹂躙するために。
 駆ければ鳴くように響く、天籟のほかにはなんにも聞こえなく、なって――けれど視界の端に黒い獣の姿が見えた。
 これじゃない、あれだと示すように、黒い巨大な狼――クロードが、嵐の獣たるイアへと示したのは本能なのだろう。
 その視線に惹かれて、イアの意識は周囲を拾う。
 小さな、硬い音たて剥片ばかり降りおちる。
 砕けて裂いて、全部――身が、欠ける。
 おんなじに戻れなくなったら、かなしいかしら、と。
 ふと、嵐の獣の心に跳ねる。
 全部忘れるのと、どちらが良いだろうねと思いながら、振り払った爪が金属の塊『アゴニーフェイス』へと届く。
 ただすべてを、薙ぐためにと、その尾が叩き伏せる。
 二頭の獣が、踊りあう。その爪もって己の意志を向けるように。
 それを受け、金属の塊『アゴニーフェイス』は悲哀の表情を浮かべているように見えた。
「アア、嗚呼、嗤えない――大丈夫、正気だぜ?」
 こんな風に、閉じ込めたのは御前かと。
 何をがこんな風にか分からないけれども、それは狂いのせいだろう。
 御前を毀し、世界を開くからと綾華が振り下ろす黒鍵刀はまさしく――その金属の塊を割り開いた。

●掃討
 その攻撃が『アゴニーフェイス』を破壊して、影響が薄れていく。
 人の容からもとのふよんふよんとした丸いスライムに戻ったミコは近くの敵へ攻撃を。
 自分の感覚が戻ってくる。アルトリウスは変な体験だと思いながら形を取り戻す自身を俯瞰した目線で見つめていた。
 そして、あと残りは少しと敵の姿を捕らえる。
 四肢は手足に戻っている。クロードは銀色に光る、背丈程もある薔薇の意匠ある大きな鋏を改めて、構えた。
「あー、やっぱり真の姿の間のことよく覚えてねぇし」
 それに、と周囲にちらりと視線向ける。
 仲間に見られたと思うと恥ずかしい! と視線はうろうろ。
 すると人の形へと戻ったイアとふと視線が合う。
 彼は、誰だろうと真の姿の間のことは朧気だ。けれど、なんとなく。
 小さな笑みをイアは零した。
 クロードはなんだかわからない気まずさにひとまず、今できることといえばと思考切り替える。
「とりあえず敵側の見たやつは全員ぶっ潰そう」
 うん、と一つ頷いて。
「それでチャラにしてやるよ!」
 鋏をしゃきんと開いて敵へと向ける。ざくっとその砲身ごと断ち切るために。
 荒れ狂う様な感情が収まって、はらりとその長く黒い髪が解けるように消えていく。
 綾華は長い息を一つ吐いて、この開かれた世界をただ眩しく思うのだ。
「……戻ったか。我ながら暴れたものね」
 ゆかりの姿は、異質な部分は解けていくように光になって消えていく。
 己の身を確認しつつ、そして周囲を見てまだ仕事が残っているとゆかりもまた動き出す。
「残敵掃討に入るわ」
「私も手伝おう」
「……大丈夫なの?」
 その問いに、問題ないと式夜は笑う。
 真の姿の解放が解ければ、吹き飛んだその手もほらこの通りと握って見せる。
 しゅうしゅうと、その巨大な見は縮まって。
 ニルズヘッグも巨大な黒い竜から人の形を取り戻す。
 手を握って開いて、感覚はひとのものだ。
「さて、残りを片付けるか」
 そう言って手の中にある黒い長槍の感触を確かめる。
 こちらのほうが、しっくりすると小さく笑ってニルズヘッグもまた敵へと向き直った。
 やがて猟兵達により、『アゴニーフェイス』艦隊の一つは崩壊した。
 忌むべきものと、それを守っていたものの両方が。
 それは多くの者が虐殺される可能性を一つ、潰したという事。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月15日


挿絵イラスト