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殲神封神大戦⑰〜どうも、あなたの美形です。

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』

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#渾沌氏『鴻鈞道人』


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「皆さんのお戻りを信じて、お待ちしておりますよ」
 そう言って微笑むと、グリモア猟兵のクロア・ルースフェルは自分が最も美しいと思う所作で手を振り、猟兵たちを戦場へ送り出した。予兆がはっきりと見えなくとも、己が美は崩さない。ナルシストの鑑である。
 猟兵たちは、仙界の最深部、うぞうぞと形の定まらない「渾沌の地」へと転送された。
(罪深き刃(ユーベルコード)を刻まれし者か)
 突如頭に響く意思。混沌が曖昧に形を現していく。だが、はっきりと定まるのは左目だけ。
(私は渾沌氏……すなわち【骸の海】である。お前達が生きるために踏みしめてきた、全ての過去である)
 浮かぶ左目と、その周囲にうごめく白い体。それが先にグリモア猟兵が告げていた敵『鴻鈞道人(こうきんどうじん)』の姿なのだろう。鴻鈞道人が話すことを真実だとすれば、【骸の海】が猟兵たちに意思を伝えてきている。
(罪深き刃(ユーベルコード)を刻まれし者達よ、相争え)
 再び渾沌が何かを形どっていく。左目のすぐ傍に白く、しかし今度は確かな形を――通った鼻筋、流れる銀糸、本人ご自慢の肩出し腹出しの美麗な衣服を現していく。
「は?? あちょっとたんま、今わたしアホ顔じゃありませんでした?」
 先ほど猟兵たちを送り出したグリモア猟兵、クロアその人である。流れるように手鏡を出してキメ顔を映すが、その顔は驚愕に塗り潰される。
「ウソ……? や、ぁ……わたしを……奪わない、で……」
 手鏡が落ちて渾沌に飲まれた。左目がずぶずぶとクロアに融合していく。
「…………」
 定まらないクロアの目。
 と、口の端がわずかに吊り上がった。
「……んふふふふ。皆さん、あぁ……どうかわたしに、見せてくださいな……?」
 彼の手がするりと誘うように伸び、腕に白い触手が這う。爪が鋭く伸び、刃と化す。体中から、ばさりと白い翼が生える。
「炎の破滅(カタストロフ)を」
 ごうと存在感が増した。あれはクロアであって最早クロアではない。猟兵たちが相争うことを命じる鴻鈞道人、【骸の海】だ。


あんじゅ
 マスターのあんじゅです! ナルシストのクロアお兄さんを叩きのめす、九つ目の依頼のご案内です。『殲神封神大戦』の戦争シナリオで、一章のみの構成です。

 依頼に際しての注意なのですが、【鴻鈞道人inクロアは先制攻撃をしてきます】。また、いかなる理由があっても手加減はしません。
 クロアの性質を引き継いでいるので、誘惑をしてくることがあります。希望される方は、プレイングに「こういう内容で誘惑される」的なことをお書きください。この場合でも先制攻撃はしてきますのでご注意くださいね。

 この依頼にはプレイングボーナスがあります。『グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する』とボーナスがつきますので、ぜひ狙っていってみてください! そのほか、クロアが極度のナルシストであることも利用できるかもしれません。
 プレイングには、何をどうしたいか具体的にお書きください。セリフや心情を入れていただくのも大歓迎です! 技能は、技能名だけではなく、それを使ってどうするのかをお書きくださいね。
 なお、この依頼は戦争シナリオということもあり、シナリオの完成を優先させます。やむをえずプレイングを返却する可能性があります。時間が許す限り採用いたしますが、大成功、成功を優先させていただきます。
 本依頼も一生懸命取り組ませていただきます。皆様のご参加を、お待ちしております!
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

久留米・圓太郎
■WIZ
なるほどグリモア猟兵さんを亡き者にしてしまえば、オブリビオンが暴れてる世界への転移そのものや、事件の予知が出来なくなってしまうではないか!

緒戦だから、まだ流血による効果は考え無くてもいいのは幸いだけど、[オーラ防御、殺気]発動させて[地形の利用、世界知識]で攻撃を避ける位置取りをしよう

「落ち着いてこれを見ろ!」
(と[コミュ力]併用してこちらに視線を向かさせ、照妖鏡をクロアさんへ向けて「これを見ろ!」と言ってからの【UC発動】)

「まさか、こんな使い方をする事になろうとは、思わなかったぜ!」
(首尾良くUC発動したところで、[高速詠唱、全力魔法、属性攻撃、2回攻撃]のせで倒す!)



 うむぅ、とうなったのは猫耳猫しっぽ、翼を持つキマイラのウィザード、久留米・圓太郎(自称魔法使いの一番弟子・f00447)だ。
「なるほどグリモア猟兵さんを亡き者にしてしまえば、オブリビオンが暴れてる世界への転移そのものや、事件の予知が出来なくなってしまうではないか!」
「ご慧眼、ですが遅いですよ!」
 肉薄するクロア、翼の推力だ。上から刃と化した爪が、圓太郎へと降ってくる。
「大人しく当たるかよ!」
 圓太郎は防御のオーラを発しながら、クロアと同じく翼を羽ばたかせて横へ回避しようと――だが爪はあまりにも速かった。圓太郎の肩をしかと捉えた爪は、ぎりぎりでオーラにいなされ、この渾沌の地にすら五筋の爪痕を残す。
 もし。
 もしオーラ防御をしなければ、圓太郎の腕が落ちていただろう。
 もし翼で避けていなければ、渾沌に足を取られ、落としていたのは命だっただろう。
「賢明でいらっしゃる。知識に裏打ちされた堅実な行動……まさか無傷とは」
 そう言いながら、渾沌を裂いた爪を構えなおすクロア。
 圓太郎はひとつ羽ばたき、ごくりと唾を飲む。
(初戦だから、流血による効果が無かったのが幸いしたか!)
 もしクロアが流血していたのなら、ユーベルコードにより彼の命中率もダメージも3倍になっていた。
 まさに、死と紙一重の戦い。
 この状況を打破するにはもう、この手しかない。圓太郎は、照妖鏡をクロアへと突き出した。
「落ち着いてこれを見ろ! 髪が乱れてるぞ!」
「えっマジで??」
 思わずクロアは鏡を覗き込む。
 途端、照妖鏡が光を発した。圓太郎のユーベルコード【スペクルム】だ。
「まさか、こんな使い方をする事になろうとは、思わなかったぜ!」
「くっ……!」
 【スペクルム】の光には、敵を友好化する力がある。抵抗も可能であるため、今にもその効果は無力化されようとしているのだが。
 これだけの隙があれば圓太郎には十分だ。なにせ偉大なる魔法使いの一番弟子(※自称)なのだから。圓太郎は翼で高く舞い上がりながら、魔法使いの箒を操る。箒に結んだ黄色と水色のリボンが仲良く風になびいた。
「凍ってしまいやがれっ、【タタッルジュ・マウト】! グリモア猟兵さんごめん!」
 魔法で生み出された氷雪がクロアに、そして渾沌の地に吹きつける。見る間にクロアと足元が凍りついていく。
 その吹雪の底から、ギギ……と軋む音がした。クロアが錆びた人形のように動き、その冷たい瞳で圓太郎を睨んだ。
「たばかりましたね……? 髪はいつも通り美麗でした……許すまじ! 【エレメンタル・ファンタジア】!!」
 ごおっ!
 炎の嵐が巻き起こる。空中の氷雪とぶつかって相殺し、一瞬の無が訪れる。
 いや無ではない、何か聞こえる。それは圓太郎の高速詠唱。圓太郎ははじめから、二段構えだったのだ。
 圓太郎が箒でクロアを指し示す。
「吹けよ、突風! 【impetus venti(インペトゥス・ヴェンティ)】!!」
 魔法の突風が、遮るものの何もない空間を突き進んだ。それはまるで、衝撃波を撒き散らす巨砲の一撃。
「くっ……あああああ!!」
 クロアは渾沌を踏みしめようとした、だが軽く飛ばされる。なぜなら、足元が凍っているからだ。
「あッ! ガッ! ぐァァッ!!」
 そしてその凍結した硬い地面に、突風に巻かれながら何度も叩きつけられる。
 吹き荒れる風がようやく止んだとき、そこにはボロボロのクロアと、無傷の圓太郎がいた。
「――【タタッルジュ・マウト】の狙いは、直接ダメージじゃなかったんだ。『滑りやすく』て『硬い』地面を作ることだったんだぜ! 有利なものがなければ、作りだす。これも師匠に教わったことだ!」
「罪深き刃(ユーベルコード)で渾沌を上書きするとは……小賢しい……!」
 顔を渾沌で修復しながら、クロアはよろよろと立ち上がる。氷に裂かれた傷が白い服を赤く染めていく。しかしその傷もまた、ゆっくりと渾沌が修復しているようだ。
「効いてる……が、一筋縄じゃいかないか」
 圓太郎は箒にまたがる。相手が速いことは初撃で痛いほど分かった。ならばこちらも速さを駆使しなければ。魔法使いの戦いは、最後まで想像と希望を失わないことだ。
「小賢しいっていうか、賢くいくぜ。俺は偉大なる魔法使いの一番弟子なんだからな!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

プレケス・ファートゥム
何をやってるんだ(呆れ)
まったく、見苦しいその姿を、長々とさらすな

敵の初撃を、第六感と見切りで躱す
躱しきれないものはオーラ防御

剣は好きではないが……そうも言っていられんな
大きなため息を吐きながら、剣の柄を握ると、いつもの感情の見えない瞳が、爛々とした光を宿す
剣を抜き、UCを発動
攻撃ではなく、クロアへの直線ルートを作るのが目的
足場を空中機動でダッシュ、一気に距離を詰める
攻撃などはオーラ防御で
防ぎきれなくても足は止めない
剣に風を纏わりつかせ(属性攻撃)、顔を狙うが、これはフェイント
顔を庇うために開いた腹に向け、ダッシュした勢いを乗せて膝を入れる
体勢が崩れれば、剣で2回攻撃する
顔だけは勘弁してやる!



「何をやってるんだ」
 はぁ、と呆れ交じりのため息。長身のエルフ、プレケス・ファートゥム(森を去りし者・f02469)である。
「えっ。芋ジャージじゃないぷーちゃん……?」
「放っておけ。それよりも、何だその姿は」
「やーまぁ、そりゃあちょっとは思うトコロもありますケドぉ~」
 口をとがらせて触手をつまみ上げるクロア。
 ほのぼのとした会話が続き、場違いに和みかけた空気に、プレケスが冷や水を浴びせる。
「まったく、見苦しいその姿を、長々とさらすな」
「は??」
 ぴしり。クロアの顔が固まった。
「聞こえていなかったのか? 見苦し――」
「あああああああ!!!」
 クロアの白い翼から幾つものかまいたちが生まれ、四方からプレケスに迫る。そのすべてを、プレケスは避けきった。
 「見苦しいその姿」と口にした時から、プレケスは第六感を研ぎ澄ませ、オーラ防御を張っていたのだ。あの言葉は安い挑発。クロアの攻撃のタイミングを、プレケスは誘った。ならば避けきることも決して難しいことではない。
 だが渾沌の地にすら深々と残る、クロアの攻撃痕。単純に、彼が脅威であることには間違いない。
「剣は好きではないが……そうも言っていられんな」
 大きくため息をつきながら、プレケスは剣の柄を握る。
 常日頃やる気のない、もとい感情の見えない緑の瞳に、爛々とした光が宿った。剣を抜いた時こそが、プレケスの本領。
 いまだクロアから襲い来るかまいたちが、すべて、かまいたちに相殺された。
「えっ……?」
 クロアが目を丸くする。
 剣を抜き放ったプレケスは、常とは雰囲気を異にしていた。
 彼がかまいたちを出したところなど、視認すらできなかった。そのプレケスがみるみる迫ってくるのだ。ユーベルコード【エア・レムナント】でできた風の足場を駆ける、彼の姿はまさに勇猛。美しいとすら思えるほどに。
 しかし、クロアはどうあっても手加減ができない。プレケスがいくら美しかろうとも、いくら彼のことが好きであろうとも。
 続けざまにクロアから放たれるかまいたちが、プレケスのオーラ防御を貫いて頬を、脇腹を裂く。しかしプレケスの脚は衰えるどころかますます加速する。
「風の精霊よ……」
 駆けながら構えるプレケスの風精剣に、風が巻く。
 プレケスの属性は風。ゆえにそもそも、かまいたちではプレケスに有効打は与えられない。加速し続けるプレケスは、今やもはや一陣の風。
「食らうがいい!」
 風とひとつになった瞬速の刃が、クロアご自慢の顔を狙う。
「イヤイヤイヤムリムリムリ顔ダメ絶対!!」
 ガン!!
 硬い音。ユーベルコードで強化された異形の翼が剣を受け止めたが、
「ぐぼあ!!」
 次の瞬間、クロアは体を二つに折っていた。
 勢いを乗せたプレケスの膝が、がら空きのみぞおちに刺さったのである。
 プレケスは空中を滑るようにしてターン、その回転のまま、風の剣でクロアに追撃の一閃。
「顔だけは勘弁してやる!」
「ギャアアアッ!!」
 獣のような悲鳴が響き、赤が散る。
「!?」
 その血液がプレケスの皮膚に触れた途端、痺れをもたらした。毒だ。
「チッ……」
 舌打ちをひとつし、下がるプレケス。
 一方のクロアは、膝蹴りと剣の二連撃で大きく飛ばされ、ぐしゃりと地に落ちた。が、すぐにガバッと上体を起こす。
「ひどーいひどーいぷーちゃーん!」
 ぷりぷりと頬を膨らませてお怒りのご様子だ。
「うわっ。ヤダー、わたしの美しい腹筋がグロい痣になってるじゃないですか~~!」
「……見え透いた時間稼ぎだ。よほどダメージが大きかったと見えるな」
 そうプレケスが言えば、胸の傷を押さえて大仰にお腹を見ていたクロアが、ゆっくり顔を上げる。憎々しげな瞳。
「……やりにくいヒトですね」
「お互い様だ」
 実際、クロアは毒にかかった素振りも見せなかった。彼はよく「美は我慢」と豪語しているが、本当に我慢強いのだろう。
 時間稼ぎを見破られたクロアは、隠すことなく渾沌で傷を修復し始める。
 プレケスは剣を収め、グリーン・ボウに持ち替えた。痺れがあるのなら、後方支援に回るほうがよいだろう。自分でできるなりには、“敵”の体力を削った。あとは他の猟兵を信じる――いつもの通りに。
「夕飯までには終わらせる」
 そしてプレケスは矢をつがえて、その健脚で駆けだすのであった。
 彼らと共に住むプレケスたちの家に、この大バカ者を連れ帰るために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天翳・緋雨
【SPD】
えー クロアさん、そうゆう?
無力化させて助けなきゃ…

「ふーん凄いね でも、貴方は強さの代わりに美しさを失ったらダメな人でしょ? 鏡見ますー?」

【陽炎】でも初撃は情報が少なすぎて躱せないかも
『第三の瞳』稼働により、直撃だけは避けよう
(オーラ防御・ジャミング・第六感・見切り・地形の利用等)

初手さえ対処できたなら、彼にボクなりの美しさでも示そうか
射程の問題で近距離にしか活路は無い
けれど近づいたなら攻防一体の華麗な体術とサイキックを示せるかな
容易く捕捉させない そして魅了して、逃がさない

破魔と浄化の力を籠めた雷撃で、彼の力を確実に削いでいこう

他の猟兵と力を合わせれば、きっと彼は取り戻せる



(えー。クロアさん、そういう?)
 その言葉は、口から出さずに飲み込んだ。慎重な姿勢である。藍色の髪に緋色のエクステが鮮やかなサイキッカー、天翳・緋雨(時の迷い人・f12072)だ。
(どうにか無力化させて助けなきゃ……)
 この戦いは、鴻鈞道人の体力とクロアの体力を同時に削る戦いだ。だが一方で、強力な鴻鈞道人そのものではなく、極度のナルシストであるクロアを相手取れるアドバンテージがある。
 無力化を狙うのであれば、そこだ。
「ふーん凄いね、クロアさん」
 にこりと人の好さそうな笑みを浮かべて、緋雨がクロアに話しかける。
「でっしょー。今のわたしはとってもお強いんですよ~」
 当のクロアはひゅんひゅんと白い触手を振ってご自慢モードである。そうして図に乗らせておいてからの――
「でも、貴方は強さの代わりに美しさを失ったらダメな人でしょ?」
「うっ」
 正論である。古来、正論ほど人を傷つけるものはない。
「鏡見ますー?」
「ううっ……」
「あ、サイキックで鏡面くらいだったら出せるかも?」
「やーやあああ、やめて~~~~!!」
 涙声交じりの、死が飛んでくる。スコールのような白い羽根の群れだ。それと共に彼は、耳から血を流しているようだったが。
 緋雨は、なにがしかの攻撃がくることは予測していた。額の『第三の瞳』が赤く光り、サイキックの力が倍増する。強力なオーラ防御を張りながら、スコールの範囲の上へと跳んだ。
 だが緋雨の尖りきった感覚が小さく、微かに死の予感をささやく。
 即座に張ったジャミングが、緋雨を追って軌道を変えた白い凶器たちを、ただの羽根吹雪へと散らしていった。
 羽根の濃い箇所をサイキックで固めて足場にし、次々に跳び移って距離を一気に縮める。
 手持ちのカードを洗ってみても、遠距離攻撃では分が悪い。緋雨には近距離にしか活路はないだろうと、早々に結論を出したのだ。
 その瞬間、長い刃となったクロアの爪が正確に緋雨を捉えた。が、すでにそこに緋雨の姿はない。クロアの爪が空を切る。
「クロアさん、ボクなりの美しさでも示そうか」
 緋雨はクロアの眼前に現れた。短距離転移したのだ。緋雨のユーベルコード【CODE【陽炎】(コード・カゲロウ)】の前では、どんな攻撃も幻を切ることになる。
 顔を引きつらせたクロアが挑発に乗ってきた。
「へぇ……美を語りますか? 審査は厳しゅうございます、よッ!」
 クロアが爪を横に薙ぐ。緋雨は体勢をぐっと低くしての足払い。バランスを取るようにホバリングしたクロアを、緋雨がバック転しながら蹴り上げる。クロアの両手の爪が交差したときには、緋雨は地面を前へ蹴って懐に入っていた。
 顔と顔とが近づく。息がかかるほど。
「審査結果はどうかな」
「なるほど、追いたくなるような華麗な動きですねぇ……でもここまでです♡」
 クロアがぎゅっと緋雨を抱きしめる。
 その瞬間、強力な電撃が下から上へ駆け抜けた。
「ギャアアアアアアア!!!」
 緋雨は緩んだ腕を跳ね上げ、くるりとターン。流れるようなバックハンドブローを、クロアがぎりぎりでのけ反り、避ける。
「もう復活したの? 自分で言うのもなんだけど、結構強い雷なんだけどな」
 緋雨の雷は破魔と浄化の力を持つ。接触していたならかなりのダメージになったはずだが――
「美形は次のコマでは復活しているものですよ」
「美形っていうか、それってギャグキャラだよね」
「黙らっしゃい!」
 まだまだ元気そうである。クロアはそこまで強くはない、ならば鴻鈞道人の体力が桁違いなのだろう。
「美形なら、ダンスには付き合ってくれるんでしょ?」
 軽口を叩きながら、互いにフェイントを仕掛け合う。
「もちろんですとも。あなたはさぞ、ダンスもお上手なのでしょうね」
(かかった)
 先ほど分析した通り、近距離にしか緋雨の活路はない。このまま動きで魅了し続け、近距離に引き留められれば、何度か雷を打つチャンスもあるだろう。体力お化けが相手なのであれば、力を地道に削いでいくしかない。
 踊る、踊る。回って反って、近づいて。
 この死の舞踏は、緋雨の体力が尽きるまで続く。
 しかしたとえ緋雨が力尽きたとしても、他の猟兵が緋雨のあとを継いでくれるだろう。そうすれば、きっと彼は取り戻せる。
 緋雨は確信を持って、今ひとたび体捌きの瞬時に『第三の瞳』で高速演算を走らせ、雷を練り上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水澤・怜
…久しぶりに会えたと思ったら何をしている?
天上天下なんとかじゃなかったのか?(いつもの調子で美やら誘惑をかわしつつ頭を抱える)

敵の攻撃は必ず先制…ならば相手よりも自身がほんの少しでも多く血を流せばいい
【オーラ防御】での防御、【第六感・見切り・受け流し】による回避はするも初手は自身からは攻撃を仕掛けない
もし被ダメがなければ敢えて自身の身を青藍で傷つけ血を流し【激痛耐性】で耐える
それくらいの【覚悟】がなければこの戦い…勝てん

相手の初撃をいなしたらUC発動
メスを【クイックドロウ・受け流し・カウンター】による防御、射線を開ける事にも利用しつつ【マヒ攻撃】
【二回攻撃】で相手に【早業・ダッシュ】で踏み込み、月白による【なぎ払い・斬撃波】で【追撃】
【戦闘知識・地形の利用・限界突破】使えるものは使えるだけ使う

もしクロアが聞いたら笑うかもしれないが…今の俺は人の為の未来も…願うようになった
望み薄、だけどな(苦笑して
だからまだ死ねない。全力でいく

死にかけまでなら後で俺が何とかしてやるから…
絶対に、戻ってこい



「……久しぶりに会えたと思ったら何をしている?」
 目深に被った軍帽から“敵”を睨む。緑の軍服に白衣という出で立ちの桜の精、水澤・怜(春宵花影・f27330)だ。白衣は彼が軍医であり、人々の命を救う者の証である。
 そんな彼を見て、クロアはぱぁっと顔を明るくした。
「怜っちゃ~ん♪ ナニって、ちょっと世界滅ぼそうかなって」
「ちょっとでする事じゃないだろう……」
 相変わらず意味不明なことを言うクロアに、怜は頭を抱える。
「世界を滅ぼすといったって、なんだ、お前は天上天下なんとかじゃなかったのか?」
「そりゃあわたしの美しさは天下にとどろきますケドぉ~」
 クロアは髪をくるくるしながら答える。そして、にぱっと笑った。
「今はそーゆーキブンなんですっ。怜ちゃん、炎の破滅(カタストロフ)見~せて♪」
「断る」
 怜が真顔で即答した瞬間、第六感が走る。
「じゃあ死んで♡」
 今まで怜が立っていた場所、そして下がった怜を追うように数多の触手が突き立っていく。数本は怜の姿を捉えるが、咄嗟に張ったオーラ防御が弾いた。
 第六感に従っていなければ串刺し、即死だった。
「おやぁ……? おかしいですねぇ、もっと威力が出るハズ……。あぁ、なるほど」
 触手の雨を凌ぎきったはずの地に、赤い線が続いている。
 鴻鈞道人のユーベルコードの条件、クロアが[敵より多くの血を流している場合]を満たさぬよう、怜は青藍――桜の刻印が彫られたメスで己の腿を刺していたのだ。ゆえにユーベルコードは発動せず、命中率やダメージも上がらなかった。
「自傷なさるとはねぇ。さぞ痛かったでしょうに、よく避けきりましたねぇ」
 抜いた白い触手の群れをひゅんひゅんと遊ばせながら、慈しむようにクロアは言う。
「痛みで止まってはいられん。それにこうでもしなければ……勝てんのだろう?」
「おやおや、まるで勝てるとでも言っているかのようですケド」
「回避率も上がっていないお前こそ、避けきれるつもりでいるのか……この【八千矛(ヤチホコ)】を!」
 ザッと怜の周囲に浮かんだメスは、およそ500本。そのどれもに、強力な麻酔薬が塗られている。
「行け!」
「ふふっ、あはははははっ!」
 触手の群れが、複雑に絡み合いながら怜に襲いかかる。
 怜はその流れを読み、メスを続けざまに撃ち込む。麻痺した触手の奥から、新たな触手が湧いては襲いくる。圧倒的な物量に、戦線が見る間に怜へと近づいていく。
「くっ……!」
「まぁだ、まだまだでしょう、怜ちゃん?」
「“お前”がその名で呼ぶな!」
 叫ぶと同時、刺すのではなく何本かのメスが触手を受け、一気に弾いた。怜とクロアとの間に射線が開く。
「コレはコレはありがとうございます、ねッ!」
 射線を一直線に触手が貫く。
 だが、怜はすでに跳んでいた。直線に伸びた触手を踏みしめ、その上を滑るように駆け抜ける。腿からは血が流れ続けている。それがなんだ。痛みなどとうに超え、今、持てる速さすら超えて、抜刀した。
「うおおおあああッ! 闇を祓え、月白!!」
 周囲の触手ごと軍刀・月白を一閃、しかし途中で硬い何かに止められた。一息遅れて、斬撃波が触手たちを切り裂いていく。
 クロアが、横腹で月白を受けていた。深々と食い込んだ月白を、怜が思わず抜こうとしたのは大きな隙だった。それも敵の間近での。
「つーかまーえた♡」
 クロアが怜を抱きしめる。その力は強く、骨がメキメキと悲鳴を上げる。
「ぐぁ……ッ」
「懐に飛び込むのは悪手でしたねぇ……? ね、怜ちゃん♡ 大好きな怜ちゃん♡ わたしとずーっと、一緒にいて……?」
「!?」
 びくりと怜の身体が跳ねた。
 怜が、何かに置き換わっていく感覚。融合されている。クロアがそうだったように。
 痛みがふわりと消える。どこか幸福感さえ湧いてくる。
 このままでは乗っ取られる。
 足掻こうにも、クロアの腕と触手に絡めとられている。力が、抜けていく……
 そこへ、小さく、泣きじゃくる声が聞こえた。
『イヤぁぁぁぁ!! 逃げてっ、イヤ!! 怜ちゃん、怜ちゃん逃げてぇぇっ!!』
(……クロア、か?)
『怜ちゃ……ん……? 怜ちゃん! 怜ちゃん!! うあああああ!!』
 融合し、同化しかけているからだろう。彼の本当の声が聞こえてくる。彼は、泣いていたのだ。多分、ずっと。
(泣くな……泣いても何も変わらん)
『でもぉ! でもぉぉ!!』
(……笑い話をしてやろう)
『へ?』
(今の俺は、昔の俺とは少し違う。人の為の未来も……願うようになった。望み薄、だけどな)
 半ば朦朧とした意識で、怜は苦笑を浮かべる。
『…………』
(だから、まだ死ねない。諦めるわけにはいかないんだ)
『……ふっ、ふふ』
(……本当に笑うことはないだろう)
『いえ、すみません。だってね、嬉しくって……。そうでしたか、ソレなら応援しないワケにはまいりませんねぇ、怜ちゃんはわたしの大事なお友達ですもん! ――覚悟、決まりました』
 いつの間にか渾沌に染まっていた視界がふっと戻る。自分が自分である感覚も。
 クロアがすっと腕と触手を引き、一歩、二歩と下がる。
「どういう、つもりだ」
「おかげ様でようやく本体にも麻痺が効いてまいりましてね。わたしが介入する余地がほ~んの少し出来ました。でも、猟兵に手加減をするなっていうのは変えられないみたいなんですよねぇ」
 そう言うクロアの足先が、指先が、はらはらとほどけていく。
「クロア!? お前、消えて……!?」
「んふふふ、グリモア猟兵も猟兵、でしょう? なら、わたしが消えればイイ」
 どう!!
 ほどけた部分が大量の『何か』、渾沌の海となって二人の間に溢れた。さらにどんどんと渾沌に押し流される。それはクロアがいまだ消え続けていること、渾沌に還っているということだ。
「――るせるか」
 そう呟いた怜の意識は、真っ白だった。ただ腕が渾沌を掻き、身を進めていた。
「許せるか」
 どこか冷静な部分が、自分は怒っているのだなと認識した。
「っっ!!」
 ふっ切れたように、戦術も状況把握も、何もかもかなぐり捨てて、がむしゃらに渾沌を掻きわけ始めた。
(なぜだ、なぜだ! 聞いていたのか! 俺は人の為の未来を願うようになったと!)
 口から、耳から入ってくる渾沌と共に、慈愛が伝わる。それが一層怜の感情を逆撫でした。
(俺は! お前を殺すつもりも! 死なせるつもりも、ない!!)
 渾沌を掻いて、掻いて、掻いた。視界が開ける。
「クロア!!!」
 渾沌を抜けると、彼の四肢は半ばまで消えていた。顔がまだ無傷で残っているのは、彼らしいというかなんというか。
 何も言わずに、彼は微笑んだ。本当に、美しい笑みだった。
 その胸ぐらを怜は乱暴に掴み上げる。
「なぜ笑う! 死ぬな! また俺に同じ罪を重ねさせるつもりか! 救えるはずの者を、己のせいで死なせる罪を!!」
「!!」
 血を吐くような、怜の叫び。
 クロアは目を見開くと、つうと、涙を流した。
「……泣くくらいなら、死のうとするな。死にかけまでなら、後で俺が何とかしてやるから」
「ごめ、なさ……、れい、ちゃ……」
「……まったく」
 掴んでいた手を離すと、クロアの頭にぽんと手を置いてやる。
 その瞬間だった。
「ぐっ!?」
「怜ちゃん!?」
 クロアから伸びた触手が怜の首を絞める。
 クロアは、猟兵を倒すことに手加減ができない。クロアの標的がクロア自身でなくなったのなら、攻撃が向かう先は当然、怜だ。
 どさどさと渾沌が怜に殺到する。圧迫、窒息。
「怜ちゃん!! 怜ちゃんッ、イヤああああああッ!!」
(――先ほどからクロアの言葉が口から出ている……敵はそれだけ己を保てなくなっている、あと少しのはずだ……!)
 ごはっと息を吐けば、その分渾沌が喉を埋める。落ちそうな意識の中、最後に思うのは――

 諦めるものか

 目の前に白い犬が躍り出たように見えた。不思議と息苦しさがなくなった。
『今ひとたび、貴方に問います』
 凛とした女性の声がした。
『人々の命や安寧を護る為、挫けることはないと、誓えますか?』
「誓う」
 即答。何を迷うことがあるだろう。
 声の主が、嬉しそうに微笑んだ気がした。光が、溢れる。
『よいでしょう。か弱き犬の姿なれど……この身に未だ残りし力、今一度貴方に託しましょう』
 輝く白い光の中で、白い神御衣姿の怜がゆっくりと目を開く。
 怜の頭には白い犬の耳。体からは白い尾が生えていた。
 【白花伊奴比売命(シロハナイヌヒメノミコト)】――怜に猟兵の力を与えた、一柱の神。彼女の力を宿した怜は、目の前の彼を見据えた。
 手足を半ば失い、それでも友を思って泣いている彼を。
「怜……ちゃん……? ッッ!!」
 彼の意志に反し、またしても触手が怜を襲う。
 途端、白く何かが閃く。触手は千々になった。怜の手には、すべてを浄化する白き刀が握られていた。
 怜が口を開く。所作のひとつひとつが、神々しく、おごそかだった。
「誓いを果たそう。――【天之尾羽張(アメノオハバリ)】」
 刀が音もなく振るわれ、その場のすべてが、白い光に染められていく。

 光が晴れたとき、怜は元の姿に戻っていた。
「っ、クロア!」
 渾沌の地に、赤い何かが落ちていた。
 怜の背がざっと冷える。
 気配はする。だが本当に、本当に、死にかけだ。
 グリモアベースまで戻れば、ユーベルコードによる治療が受けられる。
 しかしここからグリモアベースに移すまでに、死ぬ。
 1秒、いや、0.1秒でも応急処置が遅れれば、死ぬ。
 怜は医療カバン・木蘭を開きながら駆け寄る。
「絶対に、戻ってこい……!」

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 冬のある日、サクラミラージュにて。
 幻朧桜が舞い散る日常。突然、怜の目を覆い隠す手があった。

「いないいな~い……美形★」
「クロアか……。本当にいないいないするところだったんだぞ」
「おや、怜ちゃんにしてはうまいコト言いましたね」
「なんだ俺にしてはって。く、くっつくな!」
「えー。コレからあなたとカフェーでおデートですのに~」
「なんだと? 聞いてないが……?」
「今思いつきましたからね。さっ、行きますよ~♪」

 ちらり、雪が降り始めた空に、きゃっきゃっ、ぎゃんぎゃんと楽しそうな声が響く。
 それこそが、あの笑い話が、そして神への誓いが本当になった証なのだと、怜はいつ気づくだろうか。そんなことを思いながら、白い犬が一匹、嬉しそうに二人の後を追う。
 桜の花弁と、白い雪がともに、遊ぶようにくるりと舞い踊った。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月28日


挿絵イラスト