殲神封神大戦⑰〜時計の針が逆さに回る
●異変
「皆、転移は無事完了しただろうか」
虹色の星型のグリモアを掲げながら、ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)が猟兵たちを見回して問うた。
ここは仙界の最深部にある、いまだ形定まらぬ『渾沌の地』。
自らを『骸の海』と自称する謎の敵、『鴻鈞道人』が待ち受けるとされる場所。
何が起こるか分からぬからと、有事に備えて自らも戦えるだけの力量を持ったニコが予知と転移を引き受けた次第だったのだが。
まさか、それが災いしようとは。
『来たれ、我が元へ来たれ』
「……!?」
転移を受けて渾沌の地に降り立った猟兵たちを置いて、ニコ一人が突然姿を消す。
その後はもう、あっという間だった。
敵地に乗り込んだからには何が起きてもおかしくない、とはいえ。
まさか『グリモア猟兵を自らの元に呼び寄せ、その体内に潜り込み、融合する』など!
騒然とする猟兵たちの前に立ちはだかるのは、たしかに『ニコだったもの』。
惜しげもなくその本性を晒し、双剣を体内から引き抜き、猟兵たちに襲いかかる。
どうすればいい。
どうすればいい?
激しく叩きつけられる双剣をすんでのところで受け止めながら、猟兵たちは、しかし確かにニコ自身の『声』がするのを確認する。
(「……ますか。聞こえますか……今、あなたの心に直接」)
「「「この非常時にネタぶっ込んでる場合か!!!」」」
当然ながら怒られたので、真面目に話すことにしたらしいニコの話は、こうだ。
――端的に言おう、俺の身体は鴻鈞道人に乗っ取られた。
――彼奴は強敵だ、例え皆と俺との間に何らかの『心のつながり』があったとしても、それが有利に働く事は一切無いだろう。
――彼奴は強すぎる、申し訳ないが『手加減をする事が出来ない』。
――故に、皆も一切の手加減無しで。戦闘後に、俺が生きている事を祈っていてくれ。
残念ながら、現時点でニコの身体を乗っ取った鴻鈞道人を完全に滅ぼす方法はないようだが、ひとまず戦闘で殺すことは可能だし、攻め続ければいずれは撤退する。
成すべきは、ひとつ。
本気で死合い、狂った時計のヤドリガミをどうにかすること。
仙界の最奥にて、地獄のような戦が、幕を開ける。
かやぬま
Q:鳳統さんは?
A:あの人は戦闘能力が皆無なのでお休みです。
こんにちは、かやぬまです。ニコをよろしくお願い致します。
●プレイングボーナス
・グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する。
●どういう状況なの
参加者の皆様の転移は、戦闘開始時点で既に完了しているものとします。
現在、鴻鈞道人は「ニコ(真の姿)」の姿をしています。
ニコはオープニングでこそ状況説明のため意思の疎通を可能としましたが、リプレイ本編では一切登場しません(呼び掛けには少しなら応じるかも知れません)。
原則として鴻鈞道人が応対します。思念でお話します。
●結局どうすればいいの
死なないでくれと祈りながら、殺す気で鴻鈞道人inグリモア猟兵を殴って下さい。
先制攻撃への対処は必須です、お忘れなきようお願い致します。
●プレイング受付について
タグとMSページでご案内しますので、ご確認をよろしくお願いします。
また、MSページ全体にもプレイング前に一度お目通しをお願いします。
それでは、鴻鈞道人の思惑に屈せぬ思いの強さを、どうか。
第1章 ボス戦
『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』
|
POW : 肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : 肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : 流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
荒谷・つかさ
何だかんだ言っても、最初にネタぶっこめるならそれなりに余裕ねニコさん?
安心なさい、お望み通り全力の一撃を入れてあげるから。
手甲「鬼瓦」を装備しつつ突撃
双剣は手甲で弾く、或いは受け流して対応
鴻鈞道人のコードも同様、手甲で受けつつ「怪力」で以て逸らして直撃を避ける
ニコさん本人にとってなら兎も角、鴻鈞道人にとってニコさんの身体は大した代償でもないはず
であれば、正面からの対処も不可能ではないわ
懐に潜り込んだら【鬼神拳・極】発動
これまでの鍛錬の成果たる「怪力」を総て発揮した、全力の拳を腹狙いでぶち込む
本体(懐中時計)無事なら、殺しても死なないでしょニコさん。
だから、遠慮せずにやらせてもらうわね。
●その、一撃
(絶えず時は運び、全ては土へと還る)
双剣を構えたニコの口は動いていないのに、声だけが頭の中に直接聞こえる。
(罪深き刃を刻まれし者達よ)
事前に転移を受けた猟兵たちへと、挑発的に語りかけてくる。
――そこで、『ああ』と、何かに思い至ったかのような『ニコの声』がした。
『折角『七孔』揃いし肉体を得たのだ、使わぬ手はないというもの』
もはや思念で会話をする必要もないと、遠慮なく乗っ取ったニコの口を使う鴻鈞道人。『さあ、相争い、私の左目に『炎の破滅』を見せてくれ』
その言葉と共に、本来赤い色をしているはずのニコの瞳が、左色だけ灰色に変わる。
融合が、より完璧なものへと近づいていることの証左であろうか。
猟兵たちの中から、我先にと一歩足を踏み出した女の姿があった。
名は、荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)。羅刹の乙女にして、猛者であった。
「何だかんだ言っても、最初にネタぶっこめるならそれなりに余裕ね、ニコさん?」
『私も驚いた。私との融合をああも長く拒み、お前達に大事を伝えるとは』
ニコ――の声をした鴻鈞道人の台詞に、つかさは指をごきりと鳴らしながら告げた。
「安心なさい」
それは、今は眠るニコへの呼び掛けか。それとも、鴻鈞道人への宣戦布告か。
「お望み通り、全力の一撃を入れてあげるから」
今はまだ定まらず、何者にもならない虚無の空間。
渾沌の地にて、最初の戦いが幕を開ける――!
ニコの姿をした鴻鈞道人が、小手調べとばかりに双剣を構える。
対するつかさは手早く手の甲から肘までを覆う手甲「鬼瓦」を装着。
そして二人は、同時に地を蹴った。
「――!!」
激しく振り下ろされる右手の長針剣を、左手の鬼瓦で弾く。耳障りな金属音が響く。
隙間を縫って突き出される左手の短針剣は、右手の鬼瓦で間一髪受け流す。
『最初の一撃としては、此のようなものか』
鴻鈞道人がそう呟き、双剣を後方に滑らせるように放り出す。
『肉を喰らい貫く、渾沌の諸相――見るが良い』
そう言うなり、鴻鈞道人は左腕で右肩あたりを乱暴に掴み、掴み――。
「……!!」
つかさが思わず顔を歪めた。表情一つ変えない、変えられないニコの代わりに。
肩口から、右腕が巨腕化した。いや、これはもはや腕とも呼べない、異形化だ。
ぼこぼこと音を立て、醜い肉塊と化していくニコの右腕だったもの。
ニコの利き手であり、失う代償としては相当に大きい部位を狙ったのか。
『さて、娘。此の一撃は、受けきれるか?』
鴻鈞道人が、異形化した右腕を大きく後方に反らし――ただ一直線に突き出す!
「ぐっ……!!」
つかさは眼前で交差させた一対の鬼瓦で受け止める。
瞬間、地を踏みしめる両の足が一メートルほど後方に押された。吹っ飛ばされず踏みとどまれただけでも上等だ。
腕に、腹に、脚に――全身の筋肉に『怪力』を総動員させ、耐える。
「……っらぁ!!」
上に弾き上げるように、手甲を跳ね上げ、遂に異形の巨腕を逸らせることに成功した。
ぜえ、はあ。
荒い息を整えながら、つかさは考える。
(「ニコさん本人にとってなら兎も角、鴻鈞道人にとってニコさんの身体は大した代償でもないはず」)
それは、先程ニコの右腕を『異形化』させた際の挙動から見ても明らかだ。
(「であれば、正面からの対処も不可能ではないわ」)
ここまでの思考にかかった時間は、ほんの刹那。
跳ね上げられた右腕に引っ張られて、ニコの身体の懐が完全にがら空きになっている間。
判断は、一瞬。
つかさは、再び地を蹴って、思い切り勢い良く鴻鈞道人の懐に潜り込んだ。
右腕を限界まで引いて、引いて――。
(「これまでの鍛錬の成果たる『怪力』を総て発揮した、全力の拳」)
『速い』
率直な感想を述べる鴻鈞道人に、いつまでその余裕が残されているだろうか。
(「腹狙いで、ぶち込む――!!」)
「これが……私の、全力(フルパワー)よ!!!」
――【鬼神拳・極(オウガナックル・エクストリーム)】!!!
限界まで引き絞られた弓のような右腕が解き放たれ、まるでミサイルのように鴻鈞道人の腹に突き刺さる!
『が……はッ……!?』
完全に油断していた鴻鈞道人は、遥か後方へと吹っ飛ばされ、数度バウンドしてようやく止まる。
半身を起こすと、こみ上げる血が何度も口から吐き出された。
『娘、お前……本気で、この男を殺す気で……』
そこへ、静かに歩み寄ってきたつかさが足を止め、冷然と言い放った。
「本体無事なら、殺しても死なないでしょニコさん」
事実であった。
有事には念入りに隠しておくニコの本体――懐中時計さえ無事であれば、ニコの肉体自体はどれだけ損傷してもいずれは無傷で復活する。
長い付き合いだ、それくらい分かる。
故に、存分に殴った。
「つっ……」
そこで、つかさが何かに耐えきれぬといった様子で膝を突き、己をかき抱く。
(「来たわね、反動の、全身筋肉痛……」)
ここまでしたのだ。帰ってきてもらわねば困る。
「だから、遠慮せずにやらせてもらったわ」
攻撃が通ることは証明した。
あとは、後続の猟兵たちに託そう――。
全身を襲う激しい痛みに耐えながら、つかさはそう思うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
リア・ファル
今を生きるモノに融合し、その明日を脅かすか、渾沌!
その行い、許すまじ
……ちょっと死ぬほど痛いかも知れないけど、耐えてねニコさん
「イルダーナ」で駆け、「セブンカラーズ」で牽制
「ライブラリデッキ」製の弾丸で、相手の代償を強めて隙を作ろう
(空中戦、弾幕、毒使い、呪詛、時間稼ぎ)
「ヌァザ」で触手を切り抜け、刃を止められれば、反撃の機会もあるはず
(見切り、なぎ払い、武器受け)
我が魔剣の一撃を食らうがいい
【暁光の魔剣】!
(全力魔法、リミッター解除)
時と因果律への介入…ニコさんだったら、きっと抗っただろう
キミはどうかな、鴻鈞道人!
さあ、時計の針よ、正しく明日を刻め!
●その、暁光
『……素晴らしい』
咳き込みが落ち着くと、口元の血を拭い、ニコ――に融合した鴻鈞道人が嗤う。
『此れこそが、罪深き刃』
濁った左目が、不気味に見開かれる。
『そうか、そうか。此奴は時計の化身であったか』
乗っ取ったニコの身体を改めて検分するように、鴻鈞道人は全身を軽く眺めた。
『全ての過去たる私に身体を明け渡す気分たるや、如何なものであろうな』
そこまで言った時、一発の銃弾が鴻鈞道人の足元を穿った。
鴻鈞道人が視線を上げると、その先にはリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が制宙高速戦闘機「イルダーナ」にまたがり、リボルバー銃「セブンカラーズ」を構えて立ち塞がっていた。
「今を生きるモノに融合し、その明日を脅かすか、渾沌!」
リアの可憐な顔立ちは今や怒りに満ち、すぐにでも次弾を放てる状態にあった。
「その行い、許すまじ!」
『そうか。ならば、止めてみせよ』
鴻鈞道人がそうとだけ言えば、ニコの肉体から、本来有り得ざる白き天使の翼に白きおぞましき触手、そして白き殺戮する刃がぶわっと生じたではないか。
そして、純白を染める赤き血潮は、恐らくその力の代償。
血を流しながら、鴻鈞道人は忌まわしき白で、リアと対峙する。
(「……ちょっと死ぬほど痛いかも知れないけど、耐えてね、ニコさん」)
イルダーナの操縦桿を握る手に汗が滲む。
けれども、決して引けない戦いがそこにはあった。
リアがアクセルを踏み込むのと、鴻鈞道人が忌まわしき白を展開したのは、ほぼ同時。
渾沌の空間をイルダーナに乗ったリアが駆ける。
それを鴻鈞道人の白き触手が追い回す。
「……っ!!」
複製魔術符「ライブラリデッキ」製の弾丸を、ほとんど秒で再装填できるセブンカラーズの弾数は実質無制限。
撃つ。撃つ。撃ちまくる。
無数の触手を、振り切れるまで撃って千切る。
宙を舞い、無尽蔵に撃ちまくれる魔弾で触手を牽制し、殺戮の刃を押し返す。
『羽虫のように、良く飛ぶ娘よ』
そう呟く鴻鈞道人――ニコの身体から流れる血の量が、目に見えて増していく。
代償もここまで来ると相当な足枷になるはずだ。
「ヌァザ!」
リアのそのひと声で、銀虎猫はたちまち次元を裂き万物に干渉する魔剣へと姿を変える。
『そろそろ、遊びはお終いにするか、娘』
鴻鈞道人がそう言うと、白きおぞましき触手をいっせいに猛烈な勢いでけしかける。
「そうだね、終わりにしよう……!」
魔剣型デバイスと化したヌァザを力の限り振るい、迫る触手をざくざくと斬り払う。
「来る……!」
触手をいなしたところで油断してはいけない。
まだ、殺戮の刃が残っている。
迫る刃を真正面から受け止めれば、激しい激突と衝撃に手がしびれるよう。
「絶対に、止める……!」
リアの気迫が勝った。殺戮の刃を受け流し、遂に鴻鈞道人の元へと迫る!
(「キーワード――『Tomorrow never knows, Tomorrow never dies.』」)
プログラムが走る。リミッターが解除される。
「我が魔剣の一撃を食らうがいい――【暁光の魔剣(デイブレイカー)】!」
ヌァザの刀身が限界まで煌めき、次々と封印が解除されていく。
それは、時空間制御。
それは、因果律操作。
それは――現実改変。
「時と因果律への介入……ニコさんだったら、きっと抗っただろう」
まばゆい光を放つ魔剣を振りかざしながら、リアが告げる。
その額には脂汗が浮いていた。無理もない、ここまでの超常を駆使するとなれば、彼女自身にも代償が必要だろうから。
それでも。
それでも構わないと、リアは夜明けを告げる魔剣を放つのだ。
「キミはどうかな、鴻鈞道人!」
思い切り、袈裟斬りに魔剣を叩きつける。
「さあ、時計の針よ、正しく明日を刻め!!」
斬撃の傷が、確かに深々と鴻鈞道人の身体に刻まれていた。
リアの決死の一撃が、確かに届いたのだ。
『……見事なり、お前の罪深き刃、確かに身を以て知った』
口調こそ余裕だが、鴻鈞道人には間違いなく大きな痛手となったはずだ。
(「――リア」)
(「申し訳ない、君の貴重な『時間』を削らせてしまった」)
どちらかと言えば、ニコは超常の代償の方を気にしていたとか。
成功
🔵🔵🔴
怨燃・羅鬼
◎
はい☆というわけでマネージャーさんの心の声にお答えして
らきちゃん☆一切の手加減無しで逝くネ!
マネージャーさんが生きてることを願ってが~んば☆(技能、祈り0)
白い翼に触手、刃…はっ!?マネージャーさんに新衣装!
らきちゃん☆負けてられないネ!
『大声』で歌いながら羅射武舞逝苦をもって狂々【ぶん回し】、『ダンス』で攻撃を避けながら触手を切って【切断】焼いて【焼却】~♪
…(もごもごもご【大食い】)
お腹いっぱい☆ということでらきちゃん☆も遺装替えだ~!
黒く燃える鳥の翼!錆色のファラリスくんの鎖!赤いふぁらりすくんのギロチン刃!
これでマネージャーさんと恐ろいだネ!
これで凸撃ー!【重量攻撃・バーサーク】
●その、狂気
「廃☆ というわけでマネージャーさんの心の声にお答えして、らきちゃん☆一切の手加減無しで逝くネ!」
次は自分の番だと元気良く飛び出してきたのは怨燃・羅鬼(怒りの心を火に焚べろ・f29417)。その姿を見た鴻鈞道人は、かつてない強靱な精神力で内側から意思を伝えてくる『肉体の持ち主』の声を聞いた。
『馬鹿な……どうして出てこられる?』
(「悪い事は言わない、俺を少しでも良いから表に出せ! お前にあの子の相手は無理だ!」)
『異な事を、斯様な小娘程度、私一人で十分よ』
(「言ったな? 俺は助け船を出したからな? 知らないからな?」)
『くどい。お前は憩っているが良い』
……。
ニコを黙らせた鴻鈞道人は、改めて羅鬼に向き直る。
『待たせたな、小娘。お前はどのような戦ぶりを見せてくれるのか?』
「がんばっちゃうゾ☆ それはもう、マネージャーさんが生きてることを願って、が~んば☆」
きゃるん♪ とポーズを決めていつもの調子を崩さない羅鬼。
対する鴻鈞道人はそんな羅鬼を見て、こう思わざるを得なかったという。
(『願うと言っても……この娘、祈ったり願ったりする技能がまるでないではないか……』)
何となく肉体の主が気合いと根性で一瞬だけ口を挟んできた理由が分かるような気がしながらも、やることは変わらない。
『ぐっ……呪縛が代償か……』
そう呻きながら、鴻鈞道人はニコの肉体に白き天使の翼、白きおぞましき触手、そして白き殺戮する刃を宿す。
すると、その姿を見た羅鬼がお目々キラッキラで声を上げた。
「白い翼に触手、刃……はっ!? マネージャーさんに新衣装!!」
『えっ』
「らきちゃん☆負けてられないネ!」
『新衣装……? この娘は何を言っている……?』
いぶかしみながらも、鴻鈞道人は小手調べにと触手を伸ばして攻撃を仕掛ける。
そこで羅鬼が取った対策は、こうだ。
「◎△$♪×¥●&%#~♪」
うるさかった。
控えめに言って、うるさかった。
でもこれ、らきちゃん☆からしてみれば『大声で歌っている』のだ。
鴻鈞道人が思わず耳を塞ぐ中、羅鬼は「羅射武舞逝苦」を手にして狂々(くるくる)とぶん回し、迫る触手をガンガン弾き返す。
そして華麗なステップのダンスで(どうやら踊りは普通に上手いらしい)触手や刃の攻撃を躱しながら、手近な触手を切り落とし、マイクを持った手とは反対の手から炎を生じさせてその触手を焼いた。
『……?』
その一連の行動に全く意味が見出せず、鴻鈞道人は首を捻る。
だが、その直後、鴻鈞道人は信じられない光景を目の当たりにする――!
「……(もごもごもご)」
『私の触手を……焼いて、食べた……!?』
この猟兵は一体何を考えて……いや、埒外の存在に常識を当てはめようとするのがそもそもの間違いなのでは……? 思考がぐるぐると回転する。
もしかして、先程ニコが言わんとしたことは、こういった事態を予め想定して……?
そんな思いが脳裏をよぎった時、羅鬼の無邪気な声が渾沌の地に響き渡った。
「お腹いっぱい☆ ということでらきちゃん☆も遺装替えだ~!」
――あな口惜しや、口惜しや、口惜しや。
我は【怨燃羅鬼(オンモラキ)】、今ここにアイドルの仮面を脱ぎ捨て、黒く燃え盛る炎の鳥へと変じよう。
「黒く燃える鳥の翼! 錆色のふぁらりすくんの鎖! 赤いふぁらりすくんのギロチン刃!」
『待って』
「これでらきちゃん☆もマネージャーさんと恐ろいだネ!!」
『待って!?』
そりゃ確かに似てるかも知れないけどさ。
そういう問題じゃなくない!?
そう言いたかった。でも言えなかった。だって鴻鈞道人、そういうキャラじゃないし。
(「だから助け船を出してやろうと思ったのに、意地を張るからだ」)
うすぼんやりと、ニコの意識がそう言った気がした。
「これで、凸撃ーーーっ!!!」
もはや羅鬼を止められるものは誰も居ない。
攻撃の代償で身動きが取れない鴻鈞道人を、理不尽な処刑道具「ふぁらりすくん」が襲う――!
『何だ此れは……何なのだ……』
全く理解出来ぬといった様子で、ただただふぁらりすくんの下敷きになるばかりの鴻鈞道人であった。
う~ん、相手が誰でもらきちゃん☆最高(サイコ)☆
成功
🔵🔵🔴
木常野・都月
【符狐】◎
ニコさん…憧れの先輩が…
セノサキさんすみません、時間稼ぎをお願いします。
先制攻撃は[カウンター、高速詠唱、多重詠唱]で対処しよう。
無理なら[激痛耐性]で我慢かな。
[集中力]が切れないといいな。
風の精霊様にニコさんの側で控えて貰い、[野生の勘、第六感、情報収集]で動きに注意しよう。
UC【精霊砲】を準備…
(あれ?ニコさんて何が苦手?
まぁ…焼いておくか。
ニコさんには腹筋があるし。
それに以前、火の精霊様の気配があった…相性は良いはず。
後で精霊の石で回復しとこう…
今はニコさんを信じる!)
ニコさん、歯を食いしばれ!
火の精霊様の[属性攻撃、全力魔法、魔力溜め]て風の精霊様の誘導で。
精霊砲、発射!
レモン・セノサキ
【符狐】
なっ……頭に、直接!
なんてね、ありがとニコさん
お陰で肩の力も適度に抜けたよ
自分には光学▲迷彩の魔術をかける
「幻符」に▲魔力貯め
▲存在感の増した幻を呼出して
先制攻撃を受けさせよう
キツネ君の大魔法の▲時間稼ぎがしたい
「ブルーコア」を無数に舞わせ、▲レーザー射撃の雨を浴びせつつ
自分も「仕掛鋼糸」の▲ロープワークで急接近
▲零距離射撃も織り交ぜ、「STACCATO.357」で斬りつける
準備が整えば僅かな隙を見せ▲誘惑、敵のUC発動を誘う
こっちも被せる様にUC発動、敵の強化を根こそぎ奪いたい
背に天使の翼、十字剣に殺戮する刃を宿し、触手で損傷した右腕を補強
放たれた大魔法に追撃を乗せる様に畳みかけたい
●その、全力
「ニコさん……憧れの先輩が……」
木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)がギリ、と歯がみして今や鴻鈞道人と成り果てた『ニコだったもの』を悔しそうに見る。
もはや意識は完全に乗っ取られているとしても、諦める訳にはいかない。
最後の力を振り絞って残してくれた言葉に、一縷の望みをかけるだけだ。
「なっ……頭に、直接! なんてね、ありがとニコさん」
都月の隣に立つレモン・セノサキ(金瞳の"偽"魔弾術士・f29870)は笑ってみせる。
「お陰で、肩の力も適度に抜けたよ」
眼前に立つのは、己を骸の海『そのもの』と自称する、強大な存在。
勝てるのか? なんていう疑問や恐怖心なんて、一気に吹っ飛ばしてくれたようで。
かのヤドリガミがそこまで意識していたかどうかはさて置き、都月とレモンは一度顔を見合わせると、頷き合う。
「セノサキさんすみません、時間稼ぎをお願いします」
「まっかせといて! 大魔法、期待してるよ」
これまでの猟兵たちの攻撃が、決して通じなかったことはなかった。
己の攻撃の代償抜きにしても、受けた傷からの流血はそれなりのものだ。
故に、鴻鈞道人の都月に対するあらゆる行動の威力は常の数倍となり襲いかかる!
(「先制攻撃は……速い!?」)
高速多重詠唱によるカウンターで対処しようと考えていた都月の肩口と脇腹を、反応速度を超えた双剣による切り裂きが容赦なく貫いていく。
「ぐ、うっ……!!」
こうなったらひたすら痛みに耐える他ない。
よろめく足元に落ちる己の血が、眼前の存在の脅威を示すようで目眩がする。
けれども、集中を絶やすことはなく、何とか踏み止まった。
「キツネ君!」
「大丈夫、です……準備に、入ります」
――精霊様、各種展開。
風の精霊様は鴻鈞道人の近くでその動向を常に都月へと伝えること。
火の精霊様は攻撃の起点となるべく都月の元でその力を溜める。
『何を企んでも無駄だ、次で仕留め――』
「どこ見てるの、キミの相手はこっちだよ!」
挑発的な声と共に、今度はレモンが鴻鈞道人目がけて突っ込んでいく。
『威勢の良い事だ、だが』
鴻鈞道人の言葉と共に、白き翼と触手と刃がぶわっと展開される。
それは迫るレモンを包み込むように――縛り上げ、その首を刎ねる!
『……!?』
「ざーんねん、引っかかったね」
哀れ無残な姿となったレモンは、文字通り幻のようにかき消える。
声の方を鋭く睨む鴻鈞道人は、ピンピンしているレモンの姿を認め、眉間に皺を寄せた。
「本体たる私には光学迷彩の魔術をかけて、幻符に魔力を貯めて幻を呼び出して、キミの先制攻撃を受けさせた」
本物さながらの、すごい存在感の幻だったろう?
否定できない事実を告げ、レモンはここからが大仕事だと掌に拳を打ち合わせる。
『幻符の使い手か、相当の技量である事は認めよう――面白い』
「それだけじゃないってトコも、見せてあげよう!」
鴻鈞道人の言葉に、レモンは不敵な笑みを崩さず、何やら蒼く輝くとても小さなものを宙にばら撒いた。
「行くよ、ブルーコア!」
無数に散った極小ビットは、レモンの呼びかけに応えるようにいっせいに輝き、敵と定めたものをどこまでも追尾する誘導レーザーを放ち、雨のように鴻鈞道人を襲う!
『……はは、やりおる』
白き翼で己を包み込むように、レーザー射撃の雨を防ぐ鴻鈞道人。
そうして動きを封じているところに、レモン本人も「仕掛鋼糸」を腕輪から射出して、巧みなロープワークで蒼い光の雨を縫って鴻鈞道人への突撃を敢行する。
何対もある翼の、さらに一対で防御を固めようとしたところに、ガンナイフ「STACCATO.357」のうち一挺をねじ込み――零距離射撃!
「これでっ……!!」
こじ開けた翼の間から見えた、血まみれの肉体は、他でもない『ニコ・ベルクシュタイン』のもの。
けれどレモンは躊躇せず、もう一挺のガンナイフでさらに斬り傷を増やしてやる。
『娘、余程戦慣れしていると見える……只者ではないな?』
「……そうだね、伊達に修羅場はくぐってない」
近い距離で言葉を交わし、鴻鈞道人とレモンは再び刃とガンナイフとを打ち合わせた。
――時間は、十分に稼いでもらった。
あとは、都月の『奥の手』を解き放つばかり。
(「あれ? ニコさんて何が苦手?」)
属性攻撃というものは、誰しもが持つ得意不得意を上手に突いて効果を発揮する。
ちなみに答えを言ってしまえばニコは本体が精密機械なので水が弱点ではある。
(「まぁ……焼いておくか。ニコさんには腹筋があるし」)
ちょっと待ってそのチョイスの仕方よく分からない。
(「それに以前、火の精霊様の気配があった……相性は良いはず」)
ちなみにもう一つ言い添えると、ニコの得意属性は炎である。間違ってはいない。
「どのみち、後で精霊の石で回復しとこう……」
とにかく、ニコの中に巣くった鴻鈞道人を倒すことに専念せねば!
「今は――ニコさんを信じる!」
風の精霊様が、現在の鴻鈞道人の様子を斥候よろしく伝えてくれる。
(『標的は現在、セノサキ様との交戦に集中しています。今が好機かと』)
その言葉にひとつ頷くと、都月はエレメンタルロッドの先端を鴻鈞道人へ向け、叫んだ。
「ニコさん、歯を食いしばれ!!」
『何……!?』
「よし、オッケー!」
都月の準備が整ったことを知ったレモンは、わざとガンナイフを弾かれた振りをして、鴻鈞道人の攻撃を誘発する。
『其処を退け、娘!!』
「させない!!」
意地と意地がぶつかり合う。鴻鈞道人が再び忌まわしき白を展開すれば、レモンも遂に『本気』を見せる。
右手に握るのは、白銀の十字剣。
それは、かつて独りで世界を背負った巡礼士の男の覚悟そのもの。
「――換装(アクティブ)」
め、きっ……!!
超常発動の代償に、レモンの利き腕が痛ましい傷を負う。
「……っ、【"偽装" 聖杯剣・ランドルフ(レプリカント・リベレイション)】!!」
『何と……罪深き刃……!』
白く濁ったニコの左目に映ったのは、自身の力を根こそぎ奪い取ったレモンの姿。
損傷した右腕は触手で補強され、しっかと握る十字剣には殺戮する刃が宿る。
「キツネ君!!」
「【精霊砲】――発射!!」
業炎、ただそう表現する他なかった。
都月のロッドから直線上に放たれた炎は、ごうごうと渦を巻き、鴻鈞道人を襲う。
『力を貯めて……その為の時間稼ぎだったと……!?』
身を守るための白き翼は、レモンに奪われもはやそこには存在しない。
正面から業火に焼かれる鴻鈞道人に、追撃とばかりにレモンが十字剣を振るって迫る。
「これで、どうだ……っ!!」
殺戮の刃が、ニコではなく、鴻鈞道人を滅ぼせとばかりに振り下ろされた。
『――見事』
酷い火傷に、派手な斬り傷。
それでもなお『鴻鈞道人』としての意識を手放さない。
ニコが「本気で来い」と言った理由が、分かった気がする。
成すべきことは成したと、二人は後続の猟兵たちに道を譲るのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
荒谷・ひかる
(目前で繰り広げられた戦闘を見て)
うわぁみんな色んな意味で容赦ない……あれ、もしかしてこれ今わたしヤバいんじゃ。
(たぶんここまでの戦闘で結構流血してるはずなので)
先制攻撃への対処は三種類のお手製爆弾を使用
一つは液体窒素爆弾、出血を凍らせて止めるのが目的(投げつけて使用)
残り二つは閃光音爆弾と煙幕弾、視覚と聴覚を攪乱することで逃げて時間を稼ぐ(足元で炸裂させる)
何とか時間を稼げたら、煙幕弾の煙に紛れて【草木と炎の煙幕弾】発動
濃密な煙と花粉で身を隠しつつ、精霊銃の冷凍弾でひたすら凍結攻撃
ついでに花粉症と目鼻にしみる煙で地味にダメージ稼ぎます
折角七孔揃った身体に宿ったんです、存分に味わってください!
●その、追撃
剣と刃がぶつかり合い、大魔法が放たれ、拳が唸る。
眼前で繰り広げられる『鴻鈞道人』と猟兵たちとの戦いを、荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)はただひたすらハラハラと見守っていた。
「うわぁ、みんな色んな意味で容赦ない……」
そうですね、特におたくのお姉さんの初手腹パンとかホント酷かったですね。
「あれ、もしかしてこれ、今わたしヤバいんじゃ」
『次の相手はお前か、娘』
「ひっ……!?」
ひかるを一瞥して、そう問うてきた鴻鈞道人の姿を見て、ひかるは思わず声を上げた。
血まみれだ。
代償と、受けた攻撃と、合わせて今鴻鈞道人が流す血の量は相当なものであった。
それはつまり、ひかるに対してのあらゆる行動が有利に働く状況であるとも言える。
それこそが、鴻鈞道人の『罪深き刃』のひとつ、『流れる血に嗤う渾沌の諸相』だ。
「……分かりました、覚悟を決めましょう」
だからといって、それで怯んだり逃げ出したりするようなか弱い娘ではない。
ひかるはすっくと立ち上がり、後ろ手で何やら転がしながら鴻鈞道人を睨む。
『たまには、一撃のもとに葬っても良かろうて』
胸元から引きずり出すように双剣を取り出し、ニコの身体を奪った鴻鈞道人が迫る。
「――!」
ひかるが、手にしていた『何か』のうち一つを鋭く投擲する!
『何……!?』
双剣で打ち払おうとする直前に鴻鈞道人の前で炸裂したそれは、液体窒素爆弾。
ばきばきとニコの身体を凍らせ固め、出血さえも止めていく。
『ふ、ふは』
これまでにない知恵を絞った戦ぶりに、鴻鈞道人の口から思わず笑みが漏れる。
『これまた、面白い娘よ!』
「お褒めにあずかり光栄です、っ!」
笑いながら、それでもゆっくりと迫って来る鴻鈞道人の足元に、ひかるは次の手として閃光音爆弾と煙幕弾を投げつけ、炸裂させた。
『……ッ、逃げよ、逃げよ』
ニコの身体を乗っ取ったということは、今の鴻鈞道人には視覚も聴覚も存在する。
それを撹乱することで、少しでも逃げて時間を稼ぐことも可能というもの。
――だが、どうする?
ここから、どうする?
双剣で斬られない程度の距離は稼いだ。
いまだ残る煙幕弾の煙に紛れて、ひかるは『とっておき』を取り出した。
「燃え広がりて、総てを覆え。覆い隠して、幕を引き給え――」
――【草木と炎の煙幕弾(エレメンタル・スモークボム)】!
『何だ……此の、今までにない煙幕は……!?』
たちこめるのは濃密な煙と――大量の花粉。
『……っくしゅ!』
あ、くしゃみした。鴻鈞道人ともあろうものが。
(「効いてる、効いてる」)
割とどうでもいい情報なんですが、ニコ本人も重い花粉症持ちという設定があります。
「えい!」
その隙を突いて、ひかるは精霊銃を構えて冷凍弾を撃ち、ひたすら凍結攻撃をする。
(「花粉症と目鼻にしみる煙で地味にダメージを稼げればと思ったけど……」)
これはもしかして、想定以上に効いているのでは???
『……しゅ! ぶへーっくしゅ……!!』
双剣を持っていられず放り出すと、鴻鈞道人というかニコは口を押さえて必死にくしゃみを堪えようとし、ぐしぐしする目を擦って苦しんでいるではないか。
「折角『七孔』揃った身体に宿ったんです、存分に味わってください!!」
ひかるが思いっきりそう叫ぶと、鴻鈞道人が忌々しげに顔を上げた。
『おのれ、斯様な思いなどしたくはなかっ……へーーーっくしょい!!!』
くしゃみの声が結構うるさいのは、ニコ本人のものなのか、それとも鴻鈞道人のせいなのかが、ちょっぴり気になるところであった。
大成功
🔵🔵🔵
リューイン・ランサード
ニコさん、おいたわしや…。
死して尚、ネタに走る芸人魂は決して忘れません。
えっ、死んでない?
それなら何とか頑張ります。
シマドゥ島民…は止めておいて、あれで行こう。
相手の先制攻撃は第六感でタイミングを掴み、結界術・高速詠唱の防御壁&オーラ防御全開の状態でビームシールド盾受けし、自身の翼と空中戦能力で上空に向けて吹き飛ばされるようにして衝撃を受け流し、そのままの勢いで反転。
仙術で多数の分身を作り出して、同じ攻撃態勢で突撃。
2回攻撃の1回目で光の属性攻撃・高速詠唱による閃光で目くらまし。
2回目でUCソウルスラッシュ使用。
エーテルソードでニコさんに融合した鴻鈞道人の魂のみを貫通攻撃する!
タマ取ります!
五百崎・零
◎
グリモア猟兵さんと本気で戦える機会なんてそうそうないし、うん、楽しめそう。
ヒヒ、ヒャハハハハ…!
※戦闘中はハイテンション
手加減しなくていいって言ってたし、そんなことする気はない。
全力で楽しませてもらうぜぇ。アハ、アハハハハハハ!!
多少の攻撃は当たる覚悟で突っ込んでいく。
相手の攻撃は、実弾を装備した「召喚式『アイン』」の零距離射撃で攻撃の軌道を逸らす。
直撃さえしなければ、激痛耐性である程度は耐えられる。
ヒヒ、痛いもんは痛いけどなぁ!
触れられるほどの距離まで近づいたら【魂式「終ノ雷」】を発動。
しばらく腕が使えなくなるけど、死にたくないからそんなの関係ない。
「ハハハハハ、全力いくぜぇっ!!」
●その、殺意
世にも恐ろしい煙幕がようやく薄れ、鴻鈞道人のくしゃみも収まってきた頃。
「ニコさん、おいたわしや……」
リューイン・ランサード(乗り越える若龍・f13950)が、涙目を拭いながら現れた。
「死して尚、ネタに走る芸人魂は決して忘れません」
『此の身体の持ち主が「まだ死んでいない」とツッコミを入れたいそうだが』
「えっ、死んでない?」
一体この憑依融合した肉体の持ち主の交友関係や扱われ方はどうなっているのか、などと鴻鈞道人が考えたかどうかはさて置き。
「グリモア猟兵さんと本気で戦える機会なんてそうそうないし、うん、楽しめそう」
いおりんこと五百崎・零(死にたくない死人・f28909)もリューインの横に並ぶ。
『そうか、そうか。見せてくれるか、『炎の破滅』を――!』
ニコの――鴻鈞道人の双腕が、みるみるうちに異形化によって禍々しくなっていく。
「ヒヒ、ヒャハハハハ……!」
戦の予感に、零のテンションも高まっていく。
「それなら、何とか頑張ります」
リューインも真面目に――、
「シマドゥ島民……は止めておいて、あれで行こう」
真面目にやってくれるようで、何よりです。
右の腕でリューインを、左の腕で零を、それぞれ相手取る動きだ。
この先制攻撃を、どうにかしていなさねばならない――!
(「下からアッパーを繰り出すような動き、それなら」)
巨腕ゆえ、動きがどうなるかが予測しやすい。リューインは第六感も合わせてその軌道とインパクトのタイミングを掴みつつ、高速詠唱による結界術で展開した防御障壁と、オーラ防御の力を目いっぱい纏わせたビームシールドとでその一撃を受け止める。
「――っ!!」
赤き竜の翼と、得意な空中戦の能力とで、上空に向けて吹き飛ばされるようにして衝撃を受け流し、そのままの勢いで反転した。
地上の零は、愛銃の「召喚式『アイン』」に実弾を込めながらニィと笑う。
「『手加減しなくていい』って言ってたし、そんなことする気はない」
言われたのだ、「死合え」と。
ならば、喜んで乗ろうではないか。
「全力で楽しませてもらうぜぇ――アハ、アハハハハハハ!!」
鴻鈞道人の左腕は、零を正面から捉えんと迫る。
(「多少の攻撃は、当たる覚悟で突っ込んでいく」)
――がん! がぁん!
異形の拳目がけて、零距離射撃を二度ぶちかまして、攻撃の軌道を逸らす。
(「直撃さえしなければ、激痛耐性である程度は耐えられ――」)
――ど、ごっ!!
零の肩口付近に、鋭く弾かれた異形の指が強烈にめり込んだ。要するにデコピンだ。
「……ヒヒ、痛いもんは痛いけどなぁ!」
勢いで後方に吹っ飛ばされながら、零はそれでも笑う。
これがいい。これがいいのだ。
どちらかが死ぬことなく、いつまでも戦っていられる。
ああ、何て――。
中空を取ったリューインは、封神武侠界での戦いらしく仙術を発動させる。
髪の毛を少量つまんでふうっと吹けば、多数の分身がリューインを囲む。
「突撃!」
掛け声と共に、リューイン本体と分身体とが全く同じ攻撃態勢で鴻鈞道人目がけて突っ込んでいく。
光の属性を纏ったエーテルソードの一閃は、まだ一撃目。
『閃光による目くらましか……!』
「この一閃で、悪しき魂を斬り断ちます! 【ソウルスラッシュ】!!」
二撃目こそが本命! 肉体を傷つけずに、魂のみを攻撃する超常で、ニコに融合した鴻鈞道人のみを貫通攻撃したのだ。
「タマ取ります!!」
『ぐうううううッ!』
ヤクザの抗争かな? なんてことを考えながら、一度は吹き飛ばされた零が地を蹴って苦しむ鴻鈞道人のもとへと急接近した。
「楽しそうじゃん、オレも仲間に入れてくれよ……!」
片腕を伸ばす。鴻鈞道人――ニコの身体に触れる。
発動条件は揃った。零は躊躇なく『罪深き刃』を発動させる!
――【魂式「終ノ雷」(レイ)】。
「……ってぇ……!! でも、関係ねえ……!!」
零の左腕が、どう見ても使い物にならないほど損傷していた。超常の代償だ。
しばらくの間片腕は使えない、でも死にたくないからそんなのは関係ない。
『ぐあ、ぁ……! 何だ、今の膨大な電流は……!?』
「ハハハハハ、全力いくぜぇっ!!」
思わず両腕の異形化を解き、よろめく鴻鈞道人。
どちらかが斃れるまで、この戦いは終わらない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
栗花落・澪
◎
どちらかというと(自称)か弱くて戦闘向けじゃない僕だけど
ニコさんのピンチは無視出来ない
いえ決して一度戦ってみたかったとかそんなことは
念のため【高速詠唱】で風魔法を乗せた【オーラ防御】を纏い
風圧で威力緩和、バリアで防御の二段構え
更に翼を用いての【空中戦】
人型である以上音は効くよね
回避と★杖での受け流しに専念しつつ
【催眠術】を乗せた【歌唱】で微睡ませ判断力の低下
更に目線に乗せた【誘惑】で突っ込んでくるよう挑発
所で…骸の海って、悪ですかね
触手持ってるから悪ですね
【指定UC】発動
悪を【浄化】する【破魔】の力で
中身(鴻鈞道人)だけ焼きたい
あ、ニコさんにも影響出たらごめんね!今度お詫びにお菓子作るので!
●その、輝き
(「どちらかというとか弱くて戦闘向けじゃない僕だけど」)
ハハハ、常にカンストをひた走る栗花落・澪(泡沫の花・f03165)さんが何を仰る。
(「ニコさんのピンチは無視できない……いえ決して一度戦ってみたかったとかそんなことは」)
大丈夫? 今度模擬戦する?
それはさて置き、鴻鈞道人はいまだニコの身体と融合を続けている。
ならば、全力で戦わなければ。
『不思議な気配を持った猟兵よ、それは酔狂か?』
「大真面目ですぅー!! 文句は姉さんに言って欲しいなー!!」
濁った左目が看破した澪の『正体』に鴻鈞道人が触れたものだから、こういうことになる。そう言いつつも油断せず、高速詠唱による風魔法のオーラ防御を身に纏い、風圧での威力緩和とバリアでの防御の二段構えで先制攻撃に備える澪。
『翼持つ者よ、我が白き翼と競ってみるか』
そう言うと、鴻鈞道人は全身からつ、と血を流しながら白い翼を何対も生やし、それを羽ばたかせて宙を舞った。
「空中戦……!?」
澪は一瞬驚愕するも、すぐに口元に笑みを浮かべる。
「なら、僕だって得意だよ!」
凶悪なる殺戮の刃が何度も襲いかかるたび、あらかじめ展開したバリアの防御で防ぎきる。だが、白い触手が大量に迫った瞬間、目を見開いて後方へと飛び退った。
(「触手を使う……!?」)
この時点で、澪の中で鴻鈞道人は完璧に敵視される存在と化した。
(「人型である以上、音は効くよね」)
蠢く触手をアクロバット飛行のごとく回避しながら、聖なる杖「Staff of Maria」で織り交ぜられる刃の攻撃を受け流す。
そうしてしばらく回避に専念しつつ、口ずさむのは催眠術の効果を乗せた子守唄。
『……?』
先程も似たような攻撃を受けたが、七孔を持った代償をまたしても受ける時が来た。
意識が、ぼんやりとする。
心地良い微睡みに包まれる感覚に、抗えない。
『何を、した』
少女――いや、少年を睨みつけようとした濁った左目が、澪の琥珀の瞳とかち合う。
――おいで。
ふらふら、と。
その言葉に、逆らえず、鴻鈞道人は澪に向かって緩やかに飛んだ。
「ところで……【骸の海】って、『悪』ですかね」
『……?』
「触手持ってるから『悪』ですね」
もうすっかり悪確定といった様子で、澪が身体中から解き放つように光を放つ。
――全ての者に、光あれ。【Fiat lux(フィーアト・ルクス)】。
『ぐ、く……っ!!?』
融合した肉体から、強引に引き剥がされそうになる、忌まわしい光。
それが、鴻鈞道人『のみ』を灼いていく。
「あ、ニコさんにも影響出たらごめんね! 今度お詫びにお菓子作るので!!」
澪が慌ててフォローを入れる。
この様子だと、多分大丈夫だと思いますよ!
成功
🔵🔵🔴
七那原・望
◎
全力魔法で性能を限界突破させたスケルツァンドに騎乗して、自身の周囲に結界術を展開して空中戦。
その速度と第六感や野生の勘を活かして触手と刃を躱し、空中にいる敵へと距離を詰めます。
下衆が……次から次へとわたしの友達を人質にして、しかも我が物のように彼らの身体を好き勝手に……!
果実変性・ウィッシーズスカイを発動したら更に増したスピードで斜め上空から敵へと騎乗突撃を敢行し、地面へと突き落とします。
愛する人を失う苦しみは何よりも耐え難いのです。だから、彼を悲しませたくないなら死にものぐるいで生き延びてください!
地面への激突直前に素早く離脱してスケルツァンドごと多重詠唱全力魔法で爆破します。
●その、激情
鴻鈞道人の白き天使の翼が、再び羽ばたく。
己に容赦なく迫り来る、危機を察知したからだ。
それは、同じく純白の翼を宿した荘厳な姿の宇宙バイク「奏空・スケルツァンド」!
乗り手たる七那原・望(封印されし果実・f04836)の全力魔法によって、その性能を限界突破させたのだ。
『お前も宙を舞うか、良いだろう』
「……」
望は応えない。その代わりに自身の周囲に結界術を展開し、攻撃に備える。
渾沌の地には、本当に今はまだ『何もない』。
まさに虚空。そのただ中を白くおぞましい触手が伸び、殺戮の刃が飛ぶ。
限界まで高めたスケルツァンドの速度と、直感に任せてそれらを躱しながら、望は鴻鈞道人――ニコとの距離を徐々に詰めていく。
「下衆が……」
望から発せられた言葉には、明らかな怒りが滲む。
「次から次へとわたしの友達を人質にして」
『この状況が、余程気に入らぬと見える、娘』
「当たり前なのです!! 我が物のように彼らの身体を好き勝手に……!!」
これまでの猟兵との交戦で、鴻鈞道人――に融合されたニコの身体はボロボロだ。
もはや、精神に無理矢理動かされていると言っても過言ではないほどに。
故に、望の怒りをさらに高める結果となったのだ。
「わたしは望む……ウィッシーズスカイ!」
背中の翼があっという間に縮小したと思うと、紅の差し色が美しい白き蒼空の天使が現れた。これこそが【果実変性・ウィッシーズスカイ(トランス・ウィッシーズスカイ)】、望の生きる時間と引き換えに、スピードと反応速度を爆発的に増大させる、秘技。
更に増したスピードで、鴻鈞道人の斜め上空を取る。
あっという間の出来事だった。
『上を……!?』
「行くのです……!」
宙を舞う鴻鈞道人目がけて、そのまま騎乗突撃を敢行し、地面へと突き落とさんと!
『お前……! この男がどうなっても良いのか……!?』
鴻鈞道人の耳障りな言葉に、望は歯をぎり、と噛み締める。
「愛する人を失う苦しみは、何よりも耐え難いのです」
両手を伸ばす形となった鴻鈞道人の肉体を見る。
その左手薬指には、光る指輪がしっかりと嵌まっていた。
「だから、『彼』を悲しませたくないなら、死にものぐるいで生き延びてください!!」
『お、おおおおおお!!』
いよいよ地面へと激突するその直前、望――いや、ウィッシーズスカイは素早く離脱し、残したスケルツァンドごと、多重詠唱全力魔法で鴻鈞道人を爆破した――!
――これだけやっても、まだ、生きている。
それが、渾沌氏『鴻鈞道人』の恐ろしさだ。
けれど、きっと、あとひと息。
諦めなければ、きっと届く。
どうか、望の言葉が、ニコのもとに届いていますように。
成功
🔵🔵🔴
ヴィクトル・サリヴァン
◎
渾沌か…全ての可能性はそこから生じるとか誰の言葉だっけか。
それはともかく乗っ取り喰らって…ネタぶっ込めてる辺り余裕なのかなー。
じゃないよね、うん。
本体が無事なら大丈夫かもだけど、それこそ渾沌なら何が起きても不思議じゃない。
出来る事と言えば…余計な事する間もない位速やかに仕留める、かな。
何だかんだお世話になってるんだ、ちょっとばかり頑張らせて貰うよ。
本体の懐中時計だけは狙わぬように。
基本は支援重視で遠距離から高速無酸素詠唱で水の魔法を展開、水の網やロープで捕縛を狙う。
出血なんてさせたらそれこそ大変、締めて封じてやろう。
あ、でも加減できないから腕の一本位は覚悟してね。後で治すから。
もし先に出血してるのなら俺自身の尾とかを水の刃で傷つけ向こう以上に出血させておく。
攻撃を念動力や結界術で逸らして時間稼ぎしつつ準備できたらUC起動。
雷属性と竜巻を合成、ちょーっときついだろうけどニコくんならきっと何とか耐えれるよね。耐えてね。
雷の竜巻で感電させながら動き封じ、締めに特大の水弾でぶっ飛ばしちゃおう!
●その、救い
「渾沌か……」
シャチのキマイラ、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が呟いた。
「『全ての可能性はそこから生じる』とか、誰の言葉だっけか」
のっそりとその巨体を揺らして、渾沌氏――鴻鈞道人と融合したニコを見遣る。
「それはともかく乗っ取り喰らって……ネタぶっ込めてる辺り、余裕なのかなー」
『お前達はこの肉体に対して、随分と……随分であるな』
いくらヤドリガミの、仮初の肉体とはいえ、ここまで受けた傷は深く。
鴻鈞道人をしてそう言わしめるのだから、相当のものだろう。
「……じゃないよね、うん」
故にヴィクトルも苦笑いで、鴻鈞道人の言葉に応える。
(「本体が無事なら大丈夫かもだけど、それこそ渾沌なら、何が起きても不思議じゃない」)
何ができる?
何がしてやれる?
(「出来る事と言えば……余計な事する間もない位速やかに仕留める、かな」)
ニコの状態を見る限り、この身体はそう長くない。
かと言って、気軽に新しい肉体に乗り変わることも出来ない――ならば。
「何だかんだお世話になってるんだ、ちょっとばかり頑張らせてもらうよ」
愛用の三又銛「勇魚狩り」を勇ましく構え、ヴィクトルは鴻鈞道人に向き直った。
(「想像以上に、出血が酷い」)
このままやり合っては、強化された鴻鈞道人のユーベルコード――『罪深き刃』によって、手酷い仕打ちを受けてしまうことだろう。
(「こっちだって、多少は痛い思いしないと、不公平ってトコかな」)
銛を持つ手とは反対の手で水の刃を生み出すヴィクトル。
それを――やおら己のごん太い尾に叩きつけて、自ら傷付けた。
「……っ」
『少しでも私の諸相の効果を緩和しようというのか、涙ぐましい努力である』
ヴィクトルの突然の自傷に、その狙いを即座に理解した鴻鈞道人が嗤う。
「そうだよ、俺は勝つための努力を惜しまない」
太い血管を切ったか、生温い血が流れていく感覚が少しばかり不快ではあったけれど。
『面白い、ならば――見せてみよ』
双剣を構え、鴻鈞道人が戦闘態勢に入る。
「――すぅ」
高速無酸素詠唱、それはもう高速も高速。あっという間に水の魔法が展開され、水の網やロープがヴィクトルの周囲に生じた。
(「出血量がこちらよりも少なければ捕縛して……と思ったけど、難しいかなー」)
『生け捕りにして何とする? 拷問でもするつもりか?』
嘲笑う鴻鈞道人の声は、憎らしいことにニコそのもの。
これは、いよいよもって速攻で決着(ケリ)をつけなくてはならなそうだ。
「くっ……!」
鋭い長針の一撃を、念動力でギリギリ軌道を逸らす。
死角からの短針の攻撃は、結界術で紙一重弾き飛ばす。
一進一退の攻防は、本来ニコが得意とする『時間稼ぎ』。
制御が難しいとされる『あの』ユーベルコードの成功率を、限界まで引き上げるため。
「……よし」
ヴィクトルが選んだ属性は、雷。現象は、竜巻。
「ちょーっときついだろうけど、ニコくんならきっと何とか耐えれるよね。耐えてね」
何か最後の方完全に願望になってましたけど大丈夫!?
突如生じた雷の竜巻に、鴻鈞道人は為す術もなく巻き込まれていく――!
『ぐ、ぐッ……!』
完全に動きを封じられたところに、ヴィクトルの勇魚狩りが向けられた。
「これで、締めだよ――ぶっ飛ばしちゃおう!!」
特大の水弾が、竜巻の中の鴻鈞道人に激突し、渾沌の地の果てまで吹き飛ばす。
ここでもヴィクトルの『うっかり』が発動してしまったか? ニコ生きてる??
『本当に……お前達は……』
解せぬ、と言わんばかりに、鴻鈞道人がよろよろと立ち上がる。
「あ、良かった。生きてた」
良かったじゃねえんだよ!!! というツッコミがどこかから聞こえたという。
成功
🔵🔵🔴
御桜・八重
◎
「ニコさん、しっかりしてよ、ニコさん!」
頭ではわかっていても、呼びかけるのを止められない。
だって、ニコさんだよ?諦められるわけがない!
当然ニコさん=鴻鈞道人は遠慮呵責なく攻めてくるわけで。
しかも先の戦いの傷から結構血を流してるわけで。
「くうっ、なんか激しくないっ!?」
双剣捌きがいつもの3倍くらいの強力さ。
オーラで身を固め気合と集中で二刀を振るうけれど…
「きゃあっ!」
捌き切れずに吹き飛ばされる!
朦朧とする意識の中、ニコさんとの思い出がフラッシュバック。
そして辿り着く。ニコさんが見出し、わたしに花開いた一つの力。
立ち上がり、納刀した二刀を構える。
「かしこみかしこみ! 集え光よ、この胸に!!」
二刀をくるくる回すと巫女服が光と共に散り、
現れるヒロイックな魔法巫女少女!(真の姿)
とは言え、ニコさんを凌ぐような流血量で足元がふらつく。
ニコさんの動きも鈍ってるけど、攻撃のチャンスは一回だけ…!
「行くよ、ニコさん!」
腰だめに構えたホウキングに、生命を削ってオーラを充填。
「覚悟完了一発必中☆てーっ!!」
●その、叫び
御桜・八重(桜巫女・f23090)は、叫ばずにはいられなかった。
「ニコさん、しっかりしてよ、ニコさん!」
呼びかけても無駄だと、頭ではわかっていても、それでも止めることができない。
(「だって、ニコさんだよ? 諦められるわけがない!」)
もしかしたら、という思いがあった。
もしかしたら、物語のように、思いが通じて呪縛が解けるやも知れないと。
しかし――ああ無情、ニコ=鴻鈞道人は遠慮呵責なく双剣で攻め込んでくる。
「くうっ、なんか激しくないっ!?」
具体的に言えば、双剣捌きがいつもの三倍ほど増した強力さを感じる。
『此処に至るまで、見ての通り、相当傷を受けた故に』
鴻鈞道人の口調が、元々のニコの口調に近いのがまた、腹立たしい。
桜色のオーラを纏い身を固め、気合いと集中で陽刀と闇刀のこちらも双剣で相対するも。
「きゃあっ……!」
徐々に押されていき、遂には赤い双剣を捌き切れずに思い切り吹き飛ばされてしまう。
(「……、っ」)
したたかに打ち据えられ、数度地面を転がり、ようやく止まる。
朦朧とする意識の中、八重の脳裏にフラッシュバックするのは、ニコとの思い出。
花の帝都を中心として、幾度となく事件に携わり、その度に新しい発見があった。
――そして、辿り着く。
ニコが見出し、八重に花開いた、ある一つの『力』。
『――ほう』
がくがくする脚を奮い立たせ、八重は立ち上がる。
それを見た鴻鈞道人が、思わず感嘆の声を上げる。
納刀した二刀を構える八重は、凜とした声で叫んだ。
「かしこみかしこみ! 集え光よ、この胸に!!」
そのまま二刀を器用にくるくる回せば、トレードマークの巫女服が光と共に散る!
輪郭だけが浮かび上がるスレンダーボディに、ヒロイックな魔法巫女少女の衣装!
変身バンクをお見せ出来ないのが残念です!
(「とは言え、ニコさんを凌ぐような流血量で、足元が」)
泥仕合であった。互いに、限界が近い。
ならば、攻撃のチャンスはこれ一度きり。
「行くよ、ニコさん!!」
腰だめに構えた「バスターブルーム・ホウキング」に、みるみる桜色の力が溜まっていく――八重の『今を生きる力』を代償に。
(「シズちゃんなら、迷わず、こうするから」)
恐れはなかった。
ただ、救いたいという一心であった。
「覚悟完了一発必中☆てーーーっ!!!」
『なっ、何故だ!? 何故身体が動かない……!?』
主人公の必殺技はちゃんと喰らう、悪役のマナーですからね!
成功
🔵🔵🔴
榎・うさみっち
◎
はぁ~~~、乗っ取られるとかあいつあんぽんたんなの??
仕方ねーからこのうさみっち様が何とかしてやんよ!
なんてったって俺はニコの「伴侶」だからな!
こういう時、伴侶のビンタで目覚めるって言うだろ!
おうおう、こうきん何とかさんよ!
言っておくが、俺は今までニコと死闘を繰り広げたことが何度もある!
そしてその度に俺は勝った!
お前が乗っ取っていようが負ける気がしねーぜ!
小さい中指立てて啖呵切る
ぴゃあああ!何か白いウネウネとか出てきた!
ゆたんぽが出てくるゆたんぽからありったけのゆたんぽを取り出す
それらを念動力で操り、俺をがっちり守るように周囲に配置
更に俺自身は小さな身体と逃げ足を活かして
残像発生する程に素早く動き回って攻撃を凌ぐぜ!
凌げたらUC発動!
ワルみっちたちにはニコの動きに合わせて
とりもち入りの銃を撃ちまくってひたすら妨害に徹してもらう
その間に俺は念動力ゆたんぽを盾にしながらダッシュでニコに接近
ニコの鼻っ面目掛けてうさみっちばずーか発射!
そして畳み掛けるように、伴侶ビンタをお見舞いじゃー!!
●我が、伴侶
もはや満身創痍と言っても良いほどに傷ついたニコの身体。
『まだだ……まだ、私は炎の破滅を見届けていない』
それを放棄しようともせず、鴻鈞道人は立ち上がる。
「はぁ~~~、乗っ取られるとかあいつあんぽんたんなの??」
渾沌の地に、何かイラッとする声が響いた。
鴻鈞道人が辺りを見回せど、声の主は見当たらない。
「なんてったって俺はニコの『伴侶』だからな! こういう時、伴侶のビンタで目覚めるって言うだろ!」
『誰だ……? 一体、どこから声が……』
声の主――榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の姿を、鴻鈞道人は捉えることが出来ないでいた。
最初は気にしなかったうさみっちだったが、あんまりにも鴻鈞道人があんぽんたんムーブをかますものだから、自分からその眼前に飛び出していってやった。大サービスだ。
「おうおう、こうきん何とかさんよ!」
『何と、小さき者よ。お前であったか』
「言っておくが、俺は今までニコと死闘を繰り広げたことが何度もある!」
『何度も』
「そしてその度に俺は勝った!」
『常勝不敗』
「そう! だからお前が乗っ取っていようが、負ける気がしねーぜ!!」
盛大に啖呵を切ると、うさみっちはちっちゃい中指を立てて挑発のポーズを取った。
その様子が、鴻鈞道人からすると怒りを通り越して面白く見えたものだから、ここまで来ておいて慢心のポーズを取って返してしまった。
『良かろう、小さき者よ。ならば、私に勝利してみせよ!』
束縛を代償に、鴻鈞道人は白い翼と触手、殺戮の刃を生じさせる。
「ぴゃあああ! 何か白いウネウネとか出てきた!」
すごい速さでうさみっちは鴻鈞道人から距離を取ると、「ゆたんぽが出てくるゆたんぽ」からありったけのゆたんぽ――うさみっちシリーズをずらりと取り出した。
それら一個一個を念動力で器用に操り、うさみっち本体をがっちり守るように周囲に配置した。これは侮れない、鉄壁の防御である。
『不思議な力を扱うのだな、小さき者よ』
「小さき小さきってうるせー! うさみっち様だ!!」
けれども悲しいかな、実際ちっちゃい(身長19.2cm)うさみっちは逆にその小さな身体と逃げ足を活かして、それはもう残像が発生するレベルで素早く動き回り、攻撃を凌ぐ。
的が小さいと攻撃が当てづらい、を地で行く攻防に、さすがの鴻鈞道人も息を荒げる。
『ちょこまかと……!』
「よっしゃ、今だぜ!」
そこに勝機を見出したうさみっちが、【でんこうせっかのワルみっちスナイパー(ウサミノ・ガンガン・ショータイム)】を発動させ、マフィア風のうさみっちこと『ワルみっち』をたっぷり召喚した。
ワルみっちたちは鴻鈞道人の動きに合わせてとりもち入りの銃を撃ちまくるという、地味に嫌な妨害に徹する。
『この、小賢しい! おのれ……本体さえ叩けば』
「俺が、何だって?」
とりもちで徐々に動きを封じられていく鴻鈞道人の忌々しげな声をよそに、うさみっちは念動力で寄せ集めたゆたんぽたちを盾にしつつ、空中ダッシュで鴻鈞道人に迫る!
『――は、』
「ニコー!」
鴻鈞道人――ニコの鼻っ面目掛けて、うさみっちばずーかをぶっ放す。
「ちねー!!!」
そして畳み掛けるように、物騒な台詞と共に、繰り出されるは愛らしいたれ耳から放たれる『伴侶ビンタ』!!
『割と痛い!!!』
「おっ、何かその反応いつものニコっぽいぞ?」
うさぎのたれ耳でビンタされるって、ある種のご褒美ですよね。
それはさて置き、鴻鈞道人はたまらずその場に膝を突く。
『……降参だ、罪深き刃を刻まれし者達よ』
「! それじゃあ」
鴻鈞道人は言葉の代わりに、何かを懐から取り出して、掲げ持った。
(――半壊した心臓を掲げた、僕だ)
「ニコーーー!!!」
そこで事態を理解したうさみっちが、初めて真剣な声で叫んだ。
どんなに本体を守りながら戦おうとも、この激戦の中を無傷ではいられない。
傷だらけになった懐中時計を自ら掲げたまま、ニコはそのままニコに戻った。
「おい待てよ! 借りたものを壊して返すなんて、お前!!」
(直してやれ、まだ完全に壊れてはいない)
最後の最後に、無責任なことを言う鴻鈞道人。
(『伴侶』なのだろう)
「……っ、ニコー!」
あの日、ニコと初めて出逢った時よりは、身長もずいぶんと伸びた。
けれども、この懐中時計は、やっぱりうさみっちには大きいし、重い。
――この重さが、命の重さ。
うさみっちは懐中時計を抱え、渾沌の地を脱出しようとして――首を傾げた。
「で? どうやって帰るの、俺たち?」
(「……す、す、済まない……最後の力を振り絞って、ベースに転送する……」)
申し訳なさそうな声が、懐中時計から響く。
どうやら、無事事件は解決しそうであった。
成功
🔵🔵🔴