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殲神封神大戦⑰〜彩鏡罅譚

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』

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#渾沌氏『鴻鈞道人』


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●古物の聲に
 目の前が真っ暗で、まるで箱に仕舞われていた頃のよう。
 音も遠い此処は忘れ去られた蔵のようで、寒気がするけれど温度が無い……ような。
「(さみしい)」
 分からない。
 見えない。
 暗い、暗くて、くらくて――……。
 だれも、わたくしなんてしらないような。
(恐ろしいか)
「(こわい)」
(沈むがいい我楽多。骸の海の礎に、)

 “沈め、『(グリモア猟兵)』”。

 ごぼりと喉から逃げたソレが“上”へ行ってしまう気がして、必死に手を伸ばす。

●鏡の前のはなし
「皆様、お集まりくださりありがとうございます。話はお支度の最中で構いません」
 それは余りに火急の言葉であった。
 グリモア猟兵 壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)にしては珍しく落ち着かない様子で、いつもグリモアを輝かせる鏡に触れながら口を開く。
「仙界最深部一端、未だ形定まらぬ“渾沌の地”に“骸の海”を自称する“鴻鈞道人”が確認されました」
 猟兵達は騒めかず、淡々と話を聞いていた。
 不測の事態はよくある事――……だが、“想定外”にも限度と言うものがある。骸の海は形無きもの……それが人の形を取り、“道人”などと名を持つことはいくら封神武侠界といえど異常事態だ。
「鴻鈞道人は“左目”だけを持っています。今は、」
 左目“だけ”――とは、含みのある言葉であった。
 ひくりと反応はしたが必死に冷静装うとする杜環子に応える様に、皆々静かに聞きながら座していた。
「左目だけでも、鴻鈞道人は強力です。その膨大な力を以て“渾沌の諸相”をわたくしに――」
 あ。
 誰かが口を開きかけたと同時、凄まじい光が鏡から迸り全てを呑み込んだ。常とは違う輝きで、グリモア猟兵たる杜環子ごと――全てを。

 乾きかけの泥に似た手が杜環子の細い頸を掴み、唯一の瞳を撓らせ“わらう”。
 必死に得物伸ばした猟兵の手を掠め抜け、どろりとその“器物”の内へと入り込むや杜環子の顔で“わらった”のだ。

「相争い、私の左目に炎の破滅を見せてくれ」

 色失った杜環子の“左目”がわらえば、唇だけが“迷わないで”と囁いた。


皆川皐月
 お世話になっております、皆川皐月(みながわ・さつき)です。
 きこえないけど、きっと君が。


●注意:こちら一章のみの『殲神封神大戦』の戦争シナリオです。

●戦場:蔵のような箱のような暗い閉鎖空間ですが、猟兵はよく見えています。

●敵:鴻鈞道人に入り込まれた壽春杜環子です。
   意識は無く、呼びかけの一切に応じることが出来ません。そのため杜環子の見目でありながら一切加減の無い攻撃をしてきます。対応するには全力でなければすぐ追い詰められます。

●プレイングボーナス!:グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する。


●先着順で🔵が👑に達しそうと気がついた日で締め切る予定です。
 オーバーロードは物理的に閉まるまで可能です。


 複数ご参加の場合はお相手の【呼称+ID】または【グループ名】で大丈夫です。
 IDご記載+同日ご参加で確認がしやすいので、フルネーム記載より【呼称+ID】の方が分かりやすいです。
 マスターページに文字数を省略できるマークについての記載がございます。

 もしよろしければ、お役立てくださいませ。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

 最後までご閲覧下さりありがとうございます。

 どうか、ご武運を。
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●鏡裏に潜む

 にこにこと笑う目の前のソレは、壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)の顔をした鴻鈞道人は杜環子の手で鏡を生み出すとわらって言った。

『罪深き刃を刻まれし者たちよ』

 ころころ、わらう。
 真白い袖を振り、唯一異なる青白い瞳を弓形にして。

『絶えず時は運び、全ては土へ返る』

 にまりと引き上げられた唇が、本来の体の持ち主と違っていた。
 あんな風にどこか見下した笑みを、杜環子が浮かべることは永劫無いだろうから。

『これより炎の破滅を始めよう』

 ほたほた残る右の藍目が雫を零す。

 
 
夜刀神・鏡介
一体どんな力をもっていればこんな無茶苦茶な事が出来るのか……
いや、今はとにかくこの状況を打破する事だけを考えよう

神刀を引き抜き、神気を纏う事で身体能力を強化
一旦距離を取り、斬撃波によって牽制しつつ行動の見極めを
物理攻撃には刀で受け、或いは切り払い、魔法攻撃は基本的に回避するよう努める

十分に行動を見極めたなら、攻撃を受け流すか、または回避した後のすれ違いざまに、漆の型【柳葉】の構えで攻撃
敵がUCによって宿した部位を切り落としつつ戦闘力を削ぐ……壽春の肉体的な損傷を最小限に抑える為、きっちり三太刀で戦闘力を奪う

――尤も、これで鴻鈞道人を祓えた訳ではないか
落ち着いて、浄化の力を込めた一刀を振るおう



●一刀に語り
『ふふ、ふふふ』
「―――ふぅ」
 深呼吸を一つ。
 “命ある他者の体に入り込む”なぞ荒唐無稽なことをよくもやってくれたものだと思いながら、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は抜き身の神刀を油断なく構える。
 鏡を手に“壽春・杜環子”の顔で薄ら笑いを浮かべる鴻鈞道人は未だ計れない。
『あそ び、ましょ   う?』
「っ!」
 ひらり回った鏡に映った瞬間、圧し折られるような感覚に身を翻しながら纏う神気で再度自身を覆い、一つ把握した事実に斬撃を返した。
 漠然と歴戦の感覚が得た答えに内心ゾッとしながら、それでも。
「随分と下手な真似だ」
 にこりと口角上げたその笑顔さえ、猿真似だ。

 突如暗がりから強襲する鏡を斬り飛ばし、間髪入れず叩き下ろされた鋭利すぎる羽の雨
を掠めながらも前進する。
 触手内包した振袖を切り捨て、鏡に似た刃を転がり退け踏み込んだ小さな体を当て身で体制崩せば、焦った顔。
『やぁぁああ!!』
「――慣れない刃物は似合わないものだな」
 無理矢理白い手が握った鏡の刃を弾き上げて見下ろせば、即時鏡介を捉えたのは“鴻鈞道人の白濁した瞳”と、撃ち抜かんと構えた鋭利な羽ばかり携えた白っぽい翼。
 ただ一瞬の間なれども冷静に見下ろした時、小さな背を破って生えた翼は血に塗れ不格好が過ぎた。
 振り乱された白い髪の一筋さえ傷付けぬ鏡介の一閃が、鴻鈞道人を狙い澄ます!
「斬り堕とす――漆の型【柳葉】」
 UC―漆の型【柳葉】―それは洗練された刃ながら、杜環子傷付けぬよう細心の注意と共に祓いの神気籠った三太刀が不要な全てを言葉通りに斬り堕とす。

 未だ、祓いきることは叶わなくとも―――……。
 繋がる全てを信じ、鏡介は願う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
なんとも腹立たしい相手。
でも深呼吸して心を凪にして止めて。何となく懐かしい気もするこの空間がさらに私に冷静さを与えてくれる。
そう大丈夫、どんな姿であっても誰であっても私は討てる。必要であればどんな代償でも払える。私は昔からそうだった。そしてこれからも。

先制攻撃は第六感と幸運で全力で避けます。
そののち鳴神を投擲し、よけられたとしても念頭力で操作、確実に命中させて竜王を召喚します。
渾沌は七孔がないからこそであり、左目を得て実体化したのであれば逆にそこがねらい目なのではないかと。可能な限り左目を狙って操作します。そして掠る程度でもそれは当たったと言う事。十分竜王さんを呼び出す事が出来ますから。



●双眸揃わぬならば
 まるで箱の様に“閉じ込められた閉塞感”に夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は瞳を瞬かせる。
 ぼうっと浮かぶのは、見たことのある白い着物纏った壽春・杜環子の顔で“鴻鈞道人”がにまりとわらった。
「……なんとも、腹立たしい」
 いつもの杜環子の見た目で、内側だけが違う状態。
 唯一の切欠はおそらくぎょろりと蠢く白濁した瞳――そう直感し、藍は冷静にあろうと深呼吸をした。
「私は、大丈夫」
 例え知った顔だとしても。
「私は―――」
 “討てる”。

 たとえ、どんな代償を払ったとしても。

『ふ、うふふ』
「……っ、 竜よ」
 襲い来る渾沌の諸相に塗れた杜環子の爪が、掠めただけの藍の腕を裂く。
 痛みに歯を食い縛りながら冷静に携えた三鈷剣を構え、藍は距離と杜環子――否、鴻鈞道人の攻撃のタイミングを測り続けていた
 やはり人の形を取っている杜環子に憑いているせいか、人体の法則に則っている節があることを藍は知ったのだ。それを利用しない手は無い。
「私は――!」
 三鈷剣を振り上げる真似をすれば、宿る力を感知したか狙ったように刃より鋭すぎる爪が揮われる。
 飛ぶ血飛沫。裂ける藍の腕。右目で泣いて左目で嗤う杜環子に、藍は微笑みかけた。
「私は、迷いません」
 裂かたその手にはもう、三鈷剣は無い。既に放られたそれは星の如く虚空を舞い死角から杜環子の左目を狙う!
『ぎゃっ!』
 悲鳴は恐らく鴻鈞道人のものだ。だって、藍の知る杜環子は我慢強くて、耐えてばかりで……そんな安っぽい悲鳴など、出したことも無いのだから。
「私は貴方に用事はありません。だからこそ――……竜王招来!」
 空っぽの手で印を組み、叫ぶ言葉に力を込めて。発動するはUC―竜王招来―。
 立ち込めた雷雲の間から鎌首擡げた雷竜の咆哮が、針に糸通すより速く左目だけを撃ち抜いた――!

 七孔無きまま海揺蕩えばよかったものを竜の嘶きが雷鳴にわらった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

丸越・梓


壽春、と咄嗟に手を伸ばす
同時に目の合う左目
交錯した視線に眼光を鋭くし

彼女が実力者であることは知っている
彼女自身の才能と並々ならぬ努力があってこその力だと尊敬もしている
そんな壽春の力を利用し、彼女がきっと望まぬだろう結末へ導くなど見過ごせる筈もない
壽春、と何度も呼びかける
俺の声が聴こえず、目覚めずとも
彼──"骸の海"に飲まれぬように
君の存在を証明するように

壽春が責任を感じてしまわぬ様にと
絶えず襲い降る猛攻へはオーラ防御と我が刃にて捌き、相手からの怪我は最小限に留めるよう努め
そして彼女の身体に一筋たりとも傷をつけたくない
彼女に痛い思いなど、苦しい思いなどさせたくない故に躊躇いなく喚ぶ夜

壽春も勿論大切だが、鴻鈞道人に敬意を払わない理由もない
彼の言う通りその左目に骸の海を宿すなら
そこに眠る数多の心と魂へ、そして宿す彼へ最大限の敬意を以て
放つは渾身の一閃
断ち斬るはオブリビオンたらしめる縁を

_

戦闘が終わった後、壽春の身体を受け止め労り
傷があるなら手当てをしたい
「…おかえり、壽春」



●三度でも君を呼んで、
 伸ばした手は届かぬまま、白い着物を血で汚したそれはわらっていた。
「っ、壽春……!」
 ぎろぎろと生求める白濁した左目だけが別の生き物のように蠢く。
 いくら呼ぼうとも届かないことを知りながら、それでも丸越・梓(零の魔王・f31127)は器にされた壽春・杜環子を救わんと真っ直ぐに視線をぶつけた。
 すればすぐにぎょろりと白濁した左眼が梓を睨み据え――わらう。
『りょう へ、い』
「壽春を返してもらおう。壽春の力を利用することは――……っ!」
 唇が動いた瞬間、白い顔が目の前に。
 続けようとした梓の言葉ごと捻じ壊さんと、白い手が血を流すことも厭わず鏡片のような白刃握り斬りかかる。
「……壽春、っ傷が」
『ふふ、ふ!』
 その言葉に明らかに左目だけが嗤った。
 杜環子が傷付く様に苦しげな顔をする梓にニヤつき、嗤っているのだ。ぐっと梓は歯を食い縛りながら、迷わず出鱈目な軌道の刃を全て防ぎ続ける。
 此処で防戦に徹さなければ、恐らく――。
『あらそえ、  相、争え!! ふ、ふ、ふふ!!』
「壽春、壽春は――」
 煽るような言葉は梓の聞き慣れた鈴転がすような声。
 体の主たる杜環子が後にも先にも浮かべぬような歪な微笑み。
 ――吐き気がしそうなほどの不快感が梓の思考を襲った時、藍の瞳が自身を見ていると梓は初めて気が付いた。
 言葉は無い。しかして過ったのは“迷わないで”という最後の言葉。
 そうだ――そう思った瞬間、突き抜けたような感覚が梓の思考を透き通らせ、焦っていた気持ちを凪がせた。これさえ恐らく、“壽春の力を利用する”ことの一部なのだろうと脳の内の冷静な聲が呼びかけて来る。
 それと同時に、何より強い思いが胸の内で早鐘を打つ。
 梓のよく知る杜環子は力のある女で、並々ならぬ努力をひた隠す照れ屋で、それで……。
「壽春がっ、壽春がそんな結末を見過ごし、望むわけがないだろう!」
『  あ、』
 弾き上げた刃が細く小さな手から飛ぶ。
 その隙を逃さず踏み込み、間髪入れずに梓はうたうように夜を喚ぶ。その名、UC―黒曜―王を戴き王に従い王の守りたきを護るもの。
 走る黒が箱のような空間の闇を掌握した時、白濁と白の間に歪な隙を生じさせる。
「鴻鈞道人、貴方に――いや、数多の魂と心へ安寧おくる骸の海たる貴方へ、敬意を」
 梓が囁いた瞬間、杜環子の左に宿る白濁の目がわらい、杜環子の唇が紡ぐ。
『ならば』
「だが、壽春は返してもらおう」

 瞬間奔った白刃一閃。
 深々と杜環子の裡で猟兵嗤った“鴻鈞道人だけ”に食い込んだ。

『お  のれ――!!』

 白が翻され赤が散り、壊された闇が破片と舞う。
 だが確かな手応えは梓の掌にあり、ただ一瞬でも受け止めた小さな温もりの名残を握りしめる。
 綻び始めた繋がりは、もうすぐ切れようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤・美雨


思い出すのはデトロイトでの戦い
支えてくれた手の震えも
泣きそうになってた藍の瞳も
そして私を送り出してくれた時の顔も
忘れる訳ない
そんな杜環子の顔で、そんな風に笑うなよ
お前だけは絶対に『殺す』、鴻鈞道人!

まずは避けなきゃ
心は怒りに満ちていても頭は冷静に
どんな攻撃が来るかは分からないけど、そして悔しいけど起点は分かる
杜環子の様子を観察しつつ【オーラ防御】展開
【野生の勘】も研ぎ澄ませて初撃を感知したら回避に入る

うまく避けられなくても【激痛耐性】で歯を食いしばる
杜環子の方が痛いし苦しいんだ
……負けてられるか
勝つのは、生き抜くのは私……ううん
私達猟兵だ!

UCを発動し飛翔
【軽業】の要領で渾沌の地すら踏み場にし鴻鈞道人に接近
その間に二発目が来れば増強した戦闘力と【怪力】で受け止めるよ
捕まえた、もう逃がさない
この手は絶対に離さない!
再び怪力を発揮して敵をこちらに引き寄せて
至近距離まで引っ張ったら準備万端

迸れヴォルテックエンジン
殺すべきものを殺すために
【限界突破】だ
身体が壊れるのも厭わない一撃で終わらせる!



●四方津雷電
 機械街での戦いは記憶に新しい。
 あの時だってそうだった。怖いくせに、泣きたかったくせに、人の心配ばかりする壽春・杜環子という人が強がっていたことを藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)はちゃーんと覚えている。
「だからさぁ――!」
『ほう ふふ、』
 咲いた蓮花は達人域なればこその昇華技術、UC―嶺上開花―。
 棺に似たこの暗闇さえ、今の美雨は乗り越える!
「何にも知らない癖にっ、杜環子の顔でっ、そんな風に笑うなよ!!」
 吼える様、炎の如く。

 白黒入り乱れる渾沌の様相は杜環子の手に憑りつくや触手の如く変化し撓るや美雨を喰らわんと襲い来る。
 跳ね避けたのは当たる直前。
 纏う“鴻鈞道人への闘争心”を燃料に胸のエンジンを唸らせ、足当たった場を壁に飛び出した美雨の瞳は獣の如くギラついて。
「私は、杜環子のこと全部ちゃんと覚えてる」
『よい。よいぞ 、ゆえ争え 相争い――私に、』
 平然と言いのける鴻鈞道人という存在に、腹が立って仕方が無かった。
 何が争えだ。何が良いんだ。ごうごう ごうごう。美雨のエンジンが燃える。壊れそうなほどの怒りで燃えるから――その全てを“力”に換える。
「―――フゥー、   ハッ!」
 その呼吸冷静に、別の生き物が如く唸る触手の点穴突いた指先に溜まった気が針の如く突き刺さりほんの束の間動きを止める。再び蠢かんとしたそれを力いっぱい握った美雨は告げた。
『ぐ、   ぁ゛』
「勝つのも生き残るのも、“私達”」
 確固たる意志を言葉に宿し、引き千切る!
 悲鳴を無視して追い縋る触手を軽やかに飛び避け、無い全てを在るが如く美雨は駆けた。暗闇で無きと思うから無いのなら、在ると思えば全て在る。そう、此処は“箱”ゆえ。
 打って。
 打って、打って、 打つ!
「っ、ふ  ヤァ!」
 翻した袖の暗器で伸びた爪を切り飛ばし、蠢いた触手を斬り裂いて。
 徐々に慣れた――そう、僅かに思った瞬間だった。“鴻鈞道人”がわらっている。にたにた、にたにた。杜環子の顔で。
「や、  め――」
『つちへかえれ』
 杜環子のこえが言った。
 何故か視線惹かれ自身の足元見た時、切り落としたはずの鴻鈞道人の触手が、ほんの一瞬、瞬きわずか、“杜環子の指のように見えて”。
『つちへ』
「あ   ―――っ゛ァアア゛ア゛っっ!!!」
 たった一撃、逸らし損ねた触手が美雨の腹を食んだ。
 かみしめるように味わうように、ぐちゃと響く音が美雨の脳を揺らす。
 わらう白濁した瞳。合わないはずの杜環子の声。“涙を流す藍の瞳”。藍の。“あいのひとみがないている”――!!!!
 それはだめだと、美雨の胸でヴォルテックエンジンが天無き上へ吼えた。
「つかまえた」
『む』
「つ かまえ た!!!」
 白い腹に刺さったままの触手を握る指先力いっぱい。死人に似た冷えが何だ。そんなの美雨自身分かっている、端から自身の命は“電動鼓動”と重々承知の上なのだ。
 恐れること等、在りはし無い。

 体の主の意に沿うようにヴォルテックエンジンの稼働率が上がり、限界を突破する!
 その輝きは雷光神が如く、最初に見せた輝きなどちっぽけなものと思わせるほどの“迸る光”。
 美雨自身漠然と思う。ああ、せかいが燃えている。自身が、もえている。
 それでも。
 それでも、いい。
「鴻鈞道人っ、お前だけは絶対に殺す!!」

 杜環子の左眼に居座るソレを、気のオーラが突き貫く――!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

鎹・たから


その唇が
迷わないでと動いた

わかっています
なのに
体が、震える

迷ってはいけないのに
彼女のきらきらした藍硝子の眼がしろくて
怖くなってしまった

…いいえ、いいえ
たからの馬鹿
本当に怖がっているのは
杜環子ではないですか!【勇気、覚悟、鼓舞

雪のオーラで身を包み【オーラ防御
道人が生やした部位の攻撃をすべて受け止めます
痛くても我慢できます

弱虫でも泣き虫でも
友達をすくうことは出来ます

たからは正義の味方です
杜環子の味方です

この身にマガツを降ろす
どんな代償を払おうと構いません

素早く戦場を駆けまわり【ダッシュ、残像
彼女に似合わない部位を手裏剣とセイバーでたたっ斬る

そのままが一番綺麗な杜環子に、そんなもの要りません!

いつか見せた真の姿ではなく
今のたからの姿をあなたに見せたい
だってこのほうが
すぐにたからだって気付けるでしょう?

斬りつけた部位をぶちまけることで隠れ蓑に
小柄なたからなら隠れられる
接近して、刃で友達を斬ります【暗殺、2回攻撃、貫通攻撃

傷つけてごめんなさい
あとで必ず治すって約束します
だから、起きて

ね、杜環子



●雪華五角刃
 最初に躊躇いの片鱗も見せず“迷わないで”と言った唇が目に焼き付いている。
「(わかっています)」
 きちんと答えたいのに。
 その言葉が、どうしても。どうしてか声にならなくて心臓の真ん中がくるしい。
 鼻の先がツンとして目の奥が痛くて――……それでも鎹・たから(雪氣硝・f01148)は、ぼたぼたと血を零して真白い着物に紅梅咲かす壽春・杜環子から目を離さなかった。
 わらった顔は今まで戦い鴻鈞道人の存在に刃突き立て続けた猟兵達の言葉通り、杜環子だけど杜環子じゃなくて。
 違うと、分かっているのに。
『つみぶかきやいば きざみ、し、もの』
「……っ、」
 ガァン!と激しく打ち込まれた鏡片の刃を弾けば杜環子の手が裂けた。
 違う。
『ふふ!さあ さ、あ!あいあらそえ!』
「ぅ、」
 襲い来る触手を刃が掠めてしまえば杜環子の腕が裂け、ぼたぼたと赤が落ちる。
 違う。
『つちへ 、諸とも、土へかえるがいい!!』
「―――  !!」
 白濁した左眼が、たからを嗤っていた。
 常に藍の右眼が、“たから”を見ている。
「いいえっ!」
 きろきろと輝く六華の雪がチラつくや、頬に赤一線滴るたからを包み込む。
 顔を上げたたからの瞳は、冷たくも燃えていた。
 目の前の藍色がほたほた涙を流すから、友達のたからは拭うのだ。懼れることなど何も、“始めから何もなかった”。
「杜環子、こわいですね」
『?』
「ええ……ごめんなさい杜環子、遅くなりました。でももう、たからは迷いません。だから、」
 “どうか待っていてくださいね”。

 誰より何より“君”の味方で在れるように。

「はァァアアっ!!」
 ふるえ。
 何を恐れよう。
 UC―降魔化身法―はたからの深い呼吸に呼応するように角の先から爪先まで“マガツ”を降ろし、全てをほんの一時“かみ”に似せた。
『ア、ぐぁ』
 踏み込んだと見せかけ鴻鈞道人の眼前に残した己の残像。
 杜環子の細い背から無理矢理生やした翼は残る片翼のみ。アンバランスなそれの付け根にひたりと刃添わせ、たからは叫ぶ。
「杜環子は、そのままが一番綺麗なんです!」
 純粋な想いは獅子より貴く響かせて。
 ごぼりと競り上がった血を吐き捨て、何度でも叫ぼう。杜環子に届かないといくら鴻鈞道人が囃し立てようと、それがなんだ。
 たからは雪の瞳を鋼色に染め、ギラつかせる。
 未練がましく襲い来る鏢に似た白羽を不香の花で切り散らして、杜環子から無理矢理生やした触手を意志以て斬り飛ばして尚、踏み込む。
「杜環子!たからが、」
『ほのおの、破滅を!』
「――その炎はたからが消す!!」
 燃やしてなるか。
 ぎりぎりと忌々し気に歯を食い縛り、杜環子の体を薪にしようなどさせるものかとたからは粘る。“杜環子では扱わない鏡片”を雨のように壊し散らせば幾重もの傷刻まれた鴻鈞道人の視界が、動作が、とうとう乱した。

 一歩――否、半歩を欲す。
 吐きかけた毒血を呑み込んで勝ち取った半歩は、たからに杜環子――ではなく、鴻鈞道人の背を取らせた。

「おまえはここで、お終いです!!」

 だから杜環子、かえってきて。たからはここに、居るんです。

●待六の白花

「祓えてよかった」
「本当に……ありがとう、竜王さん」
 乱れた白い髪がはらりと落ちて、震えた瞼がゆっくりと上がる。
「……おかえり、壽春」
「えへへ……うん、よかった、生きてる」
 壽春・杜環子には耳慣れた声ばかり。
 様々綯交ぜだった何かが晴れた時、体の節々が痛かったけれど――それでも。

「杜環子、おはようございます」
「……はいっ!」

 箱から出た世界はとても明るくて、なんだか滲んで仕方がないけれど。
 それでも。ああそれでも、この世に在れてよかったと、増えた“記録”の硝子片に“こころ”廻して、万華鏡は想うのです。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月31日


挿絵イラスト