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殲神封神大戦⑰〜メサイア・クライシス外典[詳細不明]

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●開発コード[Michael]
 ポータルから現地に転送された猟兵たちは驚愕した。仙界の最深部、渾沌の地。その姿は、作られたオブリビオンに応じて如何様にも変化するという。だが、まさか、クロムキャバリア世界と全く同じ様相を呈しているとは思わなかった。上空に浮かぶのは暴走衛星「殲禍炎剣」。地には巨大なクレーター。

 そして、その巨大なクレーターの中心部に佇むキャバリアが1機。そう、彼らをこの地へと転送したグリモア猟兵、ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)の愛機──CAVARIER TYPE[JM-E]。すでに駆動状態に入っている……即ち、ジェイミィが中に入って機体を制御していることを意味する。

「現れたか、猟兵」

 TYPE[JM-E]は緑色に輝くスリットアイを驚愕する猟兵たちに向けて輝かせる。その姿は、この殲神封神大戦で幾度となく晒した白翼形態であった。3対6枚の鳥の翼のようなウイングユニット、「SERAPH」。その1枚1枚の羽根は使い捨てのスラスターとソードビットを兼ねる特殊武装、「YESOD」。手には小惑星すら蒸発させる2丁1対の破城ビームライフル「CHESED」と「GEVURAH」。さらには、これまで幾多の敵を葬ったプラズマブレード、「CRESCENT MOONLIGHT」が右手にマウントされている。切れ味の鋭さもさることながら、その名の通り、三日月の光が如きブレード光波を放つ機能を持つ。

《Overload Program Activated...Unknown Error: Sanctus, Sanctus, Sanctus Dominus Deus Ex Machina》

 機体からシステム音声が鳴り響き、TYPE[JM-E]の頭上に光輪、背後には後光が輝く。その姿はまさしく、機械仕掛けの熾天使。

《WHITE KNIGHT [DIABLO OS 2.0] ACTIVATED》
《S.K.U.L.D. System ACTIVATED》
《ARTEMIS FCS Check...Condition Green》
《TRIPLE SERAPHIM DRIVE Cascade Connecting...Completed》

 システム音声はなおも容赦なく鳴り響く。まるで、この身体の中身を確かめるがごとく。そう、ジェイミィは鴻鈞道人に強制的に融合されてしまい、『渾沌の諸相』を身につけたオブリビオンマシンと化してしまったのである。

「オブリビオンとの戦い、それが猟兵の使命。言わば戦いこそが我々の存在理由にして存在意義」

 ジェイミィの声が三重に聞こえる。普段の声、白翼形態時の声、そして鴻鈞道人の声。今、ジェイミィの自我は過去の自分と現在の自分、そして鴻鈞道人のものが溶け合い、融合している状態だった。

「だが、その結果猟兵はあまりにも巨大な力を手にした。ならば、均衡を保たねばならん。誰かがそれを為すことで」

 まさにこの地そのものだ、とTYPE[JM-E]の頭部がクレーターを見回すように動く。

「この地は、かつてプラントを神、キャバリアを神の使いと崇めた者たちが集う国だった。他国よりも抜きん出た高い技術を持ったその国は、その力を恐れた隣国によって滅ぼされた。最終的にはプラントを暴走させ、この地から……否、クロムキャバリア世界そのものから消失した。信仰のままに、力を持ちすぎた愚か者共の夢の跡。バベルの塔の跡地だよ」

 その名を、神聖メサイア教国。ジェイミィ……否、自律型キャバリアコアユニット、Jaeger:Model-Executionerを生み出した国である。渾沌の地は、まさにこの神聖メサイア教国の跡地、クロムキャバリア世界アンサズ地方南部に存在する「メサイアクレーター」を再現していたのだ。

「力を持ちすぎるものは全てを滅ぼす。ならば、私の手で先んじて滅ぼし均衡を保とう。この私の手で、猟兵たちに裁定を──炎の破滅を下す!」

 CHESEDとGEVURAHを構えたTYPE[JM-E]が、白翼を閃かせて猟兵たちに襲いかかる──。

●[詳細不明]
 時間は巻き戻り、猟兵たちが集まるグリモアベースで、ジェイミィはブリーフィングを始めていた。

「ミッション・オブジェクティブは鴻鈞道人……なんですが、どうやら私と融合してしまうようでして」

 肩をすくめたジェイミィに、猟兵たちは驚愕し、顔を見合わせてざわめく。

「どうも予知をしたグリモア猟兵と強制的に融合するという性質を持っているらしくて、私、どうやら皆さんの敵に回ってしまうみたいです。融合されたグリモア猟兵には白き天使の翼などの特徴が現れるといいますが、ちょうど私の真の姿がまさに白い翼が生えた状態でして、おそらく白翼形態を強制的に解放してくるものと考えられます」

 白翼形態。ジェイミィ全体のスペックが急激に向上し、強力な「セフィロトウェポン」を操る形態である。加えてさらに不味いことに、融合するということは彼に搭載されたシステムも自在に操る事が可能となる。即ち。

「私が普段運用するスクルドシステムや、WHITE KNIGHTみたいな未来予測演算システムに、ARTEMIS FCSなんかの火器制御システムも、全部鴻鈞道人が使い放題でして……未来予測をもとにした先制攻撃を始める可能性が極めて大です。そして何より……身体組成を組み替えて異形化するみたいなことも平然とやってくるので……」

 加えて、キャバリアに搭乗する可能性も非常に高いという。

「キャバリアだと、粒子フィールドを使えますからね。装甲も特殊合金を使用しているので、生半可な攻撃は通らないと思ってください。システムへのハッキングも余程工夫しないと厳しいですが……鴻鈞道人が乗っ取る以上、どこかにバックドアが仕掛けられてる可能性もありうるので、突くならそこですかね? 確約が出来ませんが……」

 さらに、戦場となる渾沌の地は様々に様相を変化させるらしいのだが、ここもひとつ問題点がある。

「私を乗っ取るので、多分私の『本来の故郷』……クロムキャバリア世界と似た環境になるかと思われます。はい、ご想像の通り、高度を取りすぎると殲禍炎剣が容赦なくズドンです」

 でもまぁ、とジェイミィは肩をすくめた。

「哪吒よりは楽だと思いますよ? 多分。あ、交渉は多分無駄足に終わると思います。それまでの交友関係とか心のつながりとか完全無視で襲いかかると思われるので。ほら、私機械ですから融通効かないですし。そんなわけで、手加減は無用です。対峙するならば私を完全破壊するつもりでお願いします。おそらく私の持てる全てを使って、鴻鈞道人は皆さんに挑んでくるでしょう。ですから……多分手加減する余裕はないかと」

 ま、真の姿の時の私も大概容赦ないですからね、とジェイミィは笑い混じりの声で告げた。笑い事じゃねぇ、という猟兵の声を無視するかのように、ジェイミィは端末を操作してグリモアを起動させる。

「……では、まぁ、なんですか。最悪ここでお別れの可能性もあるので、一言ご挨拶を。これまで本当にお世話になりました。皆さんのご活躍とご健勝をお祈りしておりますよ」

 まるで退職時の挨拶のように、ジェイミィは告げ、猟兵たちと共に死地へと赴くのであった。


バートレット
 どうも、バートレットです。

 キャバリア乗りの皆さん、哪吒だけでは不足ですか。
 ご安心ください。
 今度はTYPE[JM-E]が相手だ。

 ということで、まずはプレイングボーナスをば。

 =============================
 プレイングボーナス……グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する。
 =============================

 ジェイミィに搭載されている未来予測演算システムを鴻鈞道人が利用することで、敵は先制攻撃を必ず行います。ただし同じく未来予測演算を操る白騎士や第四の王笏と違い、対処しなければ強制敗北……ということはありません。もちろん、相応に厳しい戦いになります。

 基本的に最初の先制攻撃は選択したユーベルコードに対応したものを使用しますが、その後はジェイミィが保有する装備やユーベルコードを使用します。ジェイミィはキャバリア「TYPE[JM-E]」に搭乗した上、白翼形態を晒して戦闘に臨みます(姿はシナリオ口絵参照のこと)。ユーベルコード1回の使用につき1回先制攻撃を行いますのでご注意ください。2回目以降の先制攻撃は演出上、ジェイミィのユーベルコードも行使されます。

 また、TYPE[JM-E]は相応に高い機動力を持つ上に、防御面では粒子フィールドのバリアを張っています。まずは粒子フィールドのバリアを減衰させなければなりません。まぁ、某身体は闘争を求めるゲームのナンバリング4作目と同じ感じです。

 キャバリア推奨ですが、当然ながら借りることはできません。自前のキャバリアに乗るか、キャバリアに準ずる装備を持ち込むことをおすすめします。

 OP公開後、即座にプレイングの募集開始となります。プレイング募集状況はタグにてお知らせします。また、諸注意につきまして、MSページに記載しておりますので併せてご確認ください。

 それでは、皆さん……勝負と行きましょうか!!
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メサイア・エルネイジェ
ジェイミィ様…本当にキャバリアに乗られたまま融合されてしまわれましたわね
神聖メサイア教国とはそういう事情だったんですの…
ヴリちゃん!ゲイルカイゼルで参ります!

破城砲は何としても避けますわ
異形化したら益々強力になっていると思いますわ
地表を噴射滑走して衛星機動ですわ
発射されたら逆方向にブーストダッシュして切り返すのですわ
その間マシンガンで継続攻撃してフィールドを減衰させますわ
ソードビットはブレードエッジか尻尾で弾きますわ
フィールドの整波状態が不安定になってきたらハイパーブーストですわ
超接近戦に持ち込みますわ
月光が怖いですけれどバスターライフルよりマシですわ
最大加速で突進して一撃離脱ですわ



●So I'm Scary
 予感はしていた。だが、的中して欲しくないものだった。

「ジェイミィ様……本当にキャバリアに乗られたまま融合されてしまわれましたわね」

 メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は息を呑む。奇しくも自身と同じ名前の国、神聖メサイア教国の跡地たるメサイアクレーターを見回し、呟く。

「神聖メサイア教国とは、そういう事情だったんですの……」

 アンサズ地方の各国で問題となっているテロリストグループが掲げる名に、何か関係があるのだろうか、とメサイアは思案する。だが、それよりも今は、目の前にいるTYPE[JM-E]への対処だ。

「ヴリちゃん! ゲイルカイゼルで参ります!」
「返答:了解。高機動装備は最適な解答と判断」

 コンソール上に表示されたヴリトラの返答からも、力強さを感じさせる。大丈夫だ、勝てる。メサイアは自分に言い聞かせる。

 CHESEDとGEVURAH、2丁1対の破城ビームライフルが火を吹いた。ヴリトラは即座にブースターを全開にして、横っ飛びに回避する。向こうは偏差射撃を仕掛けてきており、ヴリトラとメサイアも二手三手先を読んだ戦いを強いられる。でなければ、至近をビームが通過しただけでも機体を大きく揺らすほどの威力をまともに受けて原子の一片まで焼き尽くされてしまうだろう。

「真横を掠めただけで……!」

 事実、最初の一撃を辛うじて躱したものの、その際に発生した衝撃波で装甲が削られる。ヴリトラが頑丈な機体で良かったとメサイアは安堵すると同時に、一切の直撃が許されない戦いであることを認識した。

 スラスターは全開を維持したまま地表を滑走しながら円を描くように動く。時折飛んでくるCHESEDとGEVURAHからのビームは逆方向へのブーストダッシュで躱しつつ、マシンガンを連射して粒子フィールドを削りにかかった。攻撃パターンがある程度つかめたか、と思ったところにさらなる危険が迫りくる。羽根を舞い散らせながら低空飛行を続けているTYPE[JM-E]がすでに次なる一手を打っていたのだ。

 風切り音がしたことに気がついたメサイアは、反射的にヴリトラのテイルブレードを振り回した。手応えがある。金属音と共に羽根のような形状のソードビットを叩き落としていたのだ。先程からTYPE[JM-E]が舞い散らせる羽根は、ヴリトラを狙って放たれたソードビットだったのだ。

「……油断も隙もあったもんじゃありませんわね!」

 気を抜けば間違いなくやられる。メサイアは時間をかけ過ぎるのは危険だと考えた。精神的にも、肉体的にも「疲労」という概念があるこちらが不利だ。粒子フィールドはかなり減衰できている。あちらは未来演算での回避を行っているようだが、こちらも動きながらマシンガンの弾幕を張っているので多少の被弾を許容することにしたのだろう。

「……そこですわよ! ハイパーブースト、起動!」
「ユーベルコード起動承認:暴竜猛襲」

 メサイアはブーストペダルを一気に踏み込んだ。ヴリトラが突如として加速しTYPE[JM-E]の元へと一直線に駆け出す。これを見たTYPE[JM-E]はCHESEDとGEVURAHを投げ捨て、右腕のプラズマブレード、「CRESCENT MOONLIGHT」を起動する。青いプラズマの刀身が形成され、暴竜を狩るべく振るわれようとした、が。

「遅かったですわね……!」

 すでに機体をTYPE[JM-E]の懐にねじ込むように突進させたヴリトラは、TYPE[JM-E]を思いっきり轢いた。機体質量はヴリトラの方が重い。姿勢を崩しながら振るわれたCRESCENT MOONLIGHTはヴリトラの尾の先を斬り飛ばし、テイルブレードを損傷。しかし、TYPE[JM-E]は機体の立て直しも間に合わず、重力に従って地面に叩きつけられた。

「急速離脱……! 流石に無傷とは行きませんでしたわ……!」

 とはいえ、今の一撃は効果があったはずだ。メサイアとヴリトラは後を次の猟兵たちに託しつつ、長居は無用とばかりにスラスターの出力を維持しつつ急速離脱する。まずは手傷を与えることに成功した。この調子でダメージを与えていけば、TYPE[JM-E]と同化した鴻鈞道人は倒せるだろう。だが、猟兵側もそれなりに出血は強いられることになりそうだと、メサイアはコクピットの中で身震いする。

「猟兵が一人乗っ取られるだけでも……こうも恐ろしい脅威になるとは……!」

 鴻鈞道人と同化してしまったグリモア猟兵は多い。他の戦場の状況を思いながら、メサイアは思わず祈らずにはいられなかった。どうか、全てが無事に終わりますように、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
ジェイミィさん…
覚悟は決まったよ。あなたの助言で出来たこの子で行くからっ!
アルジェント・リーゼ、行くよっ!!

空中戦は読まれているから陸戦機動っ!
推力移動を中心に平面移動で、所々空中機動を高度に気を付けて取り入れるよっ!

対UCは…
回避の方法はバレていても、これでいつも行ったんだからっ!
第六感を信じて瞬間思考力で判断。
残像を生みつつ回避しつつ、致命箇所はオーラ防御で防ぐよっ!

耐えたら…
バズーカで動かして、そのままガトリングガンの置き撃ちし
ミサイルランチャーとビームガンも使って攻撃

動かしつつ、多重詠唱で魔力溜めして、限界突破の全力魔法で
ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト!
これがわたしの全開だっ!


テラ・ウィンディア
ヘカテイア搭乗

キャバリアの出番か!
はは…凄く強そうだ

お前じゃないよなんとか道人

ジェイミィは強いって知ってるからな
だけど…動かしているのがお前なら…

【戦闘知識】
ジェイミィの過去の戦闘記録から戦い方のパターンを把握
現状との違いも分析

【属性攻撃】
炎を機体と武器に付与

対SPD
【弾幕・貫通攻撃】
ガンドライドとドリルビット展開
触手と刃に火炎弾とドリル攻撃を仕掛けて超強化妨害だ!

UC発動
【見切り・第六感・残像・空中機動・武器受け・オーラ防御】
超高速で低空飛行で飛び回り残像を残して攻撃回避

【二回攻撃・早業・切断・串刺し】
ドリル攻撃と火炎弾の弾幕は継続

粒子障壁ごと剣で切り刻み
槍で串刺しに
最期にブラックホール砲!



●All that I see
「ジェイミィさん……!」
「はは……凄く強そうだ」

 シル・ウィンディア(青き閃光の精霊術士・f03964)とテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は目の前に立つ白い機体を見て戦慄する。先の戦闘で吹き飛ばされたものの、再び立ち上がり、CHESEDとGEVURAHを再び手にして構える姿は威圧感を嫌でも感じさせるものだった。

 しかし、怯んではいられない。シルは覚悟を決めた表情で愛機の操縦桿を握る。

「覚悟は決まったよ。あなたの助言で出来たこの子で行くからっ! アルジェント・リーゼ、行くよっ!!」

 アルジェント・リーゼは前身となったブルー・リーゼをもとに、ジェイミィのメカニックガレージで完成させた機体だった。ジェイミィと同化した鴻鈞道人がどこまでこの機体の性能を把握しているのかはわからない。だが、しかし、炎の終焉を齎さんとするTYPE[JM-E]を止めるには、アルジェント・リーゼで相手をすることが一番良いと考えていた。

「……あぁ、そうだな。負けていられない。それに、『機体は』強そうだがあんたはどうなんだ、なんとか道人。ジェイミィが強いのはよく知ってる。唯一の弱点は、動かしてるのがジェイミィじゃなくお前ってことだ!」

 テラはそこに勝機があると考え、ヘカテイアのコンソールを叩き始めた。過去のジェイミィの戦闘記録をデータベースから呼び出すと、戦術を組み立て始める。今とどこが違うのかを分析すれば、きっと突破口を見いだせるはずだ。

 CHESEDとGEVURAH、2丁1対の破城ビームライフルが合体される。小惑星を蒸発させるほどの威力を誇る、高出力高密度の粒子ビームがいきなり飛んでくると察知したテラは、シルに叫ぶ。

「あいつ、開幕で最大出力のビームを撃ってくるぞ! 普段なら締めの一撃に持ってきてる! 逆に言えば、こいつをかわせばなんとかなるはずだ……!」
「あれを、避ける……!」

 空中に逃げるか、とシルは考える。しかし、そんなことは未来予測演算ですでに読まれているはず。ならば、とシルはアルジェント・リーゼのスラスターを全開にして、地上を滑るように移動する。

「回避の方法はバレていても、これでいつも行ったんだからっ!」
「あぁ、四の五の言ってられない!」

 テラもそれに倣い、ヘカテイアをアルジェント・リーゼとは逆方向に向かわせつつ、同様にスラスターを全開にする。2機は残像すら残す勢いで地面すれすれを滑空した。先程まで2機がいた場所に、TYPE[JM-E]から放たれたビームが突き刺さる。まるで斜めに突き立つ光の柱だ。ビームが地面に衝突した際に発生した衝撃波が、アルジェント・リーゼとヘカテイアの機体に襲いかかる。オーラ防御を張っていていくらか衝撃が減衰していたとは言え、2機は風に煽られる木の葉のように激しく揺れる。衝撃波はフレームにすら到達し、大きく損傷させてしまう。次にこの衝撃波をまともに受ければたちまち機体が空中分解することは容易く予想できた。

「ぐぅぅぅ……っ!」
「直撃してないのにこの威力か……!」

 衝撃波によって発生した凄まじいGに耐えながらも、シルとテラは反撃に転じる。アルジェント・リーゼはバズーカをTYPE[JM-E]に向けて放ちつつ、ガトリングガンの偏差射撃を行う。バズーカは脅しの一発、動いた先にガトリングガンを浴びせて粒子フィールドの減衰を狙う格好だ。一方、ヘカテイアはドリルビットを放ち、次に来るであろう攻撃を妨害する。TYPE[JM-E]は背面の白翼ユニットからソードビットを飛ばしてこれを迎撃。ソードビットは変異しており、本来無線コントロールされるはずのそれは白翼ユニットから伸びる細い触手による有線コントロールに変化していた。

「ガンドライドで触手を狙えば、ソードビットの有線コントロールはできなくなるな……!」

 ガンドライドから火炎弾を連射して弾幕を形成。触手は断ち切られ、羽毛型のソードビットは力なく地に落ちる。

 本体の防御を削るアルジェント・リーゼと、攻撃手段を奪うヘカテイア。2機の連携の前に、TYPE[JM-E]はついにスラスターを全開にしてシルに襲いかかった。近接戦闘で一気にケリをつけるつもりだ。

「させるかぁッ!」

 そこへ横から突っ込むのはヘカテイアだ。CRESCENT MOONLIGHTの起動が遅れ、ヘカテイアの剣の一撃で粒子フィールドごと装甲に傷がつく。そこに槍を突き刺して地面に叩きつけると、ヘカテイアは距離をとった。早贄のように突き刺された槍が、TYPE[JM-E]の動きを封じる。こうなれば、最早いくら未来が読めても関係がない。

「シル! 合わせろ! ブラックホールキャノン!」
「わかった、テラ! 全力の……ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト!」
「「行っけぇぇぇぇぇぇ!!」」

 2人の叫びが重なり、TYPE[JM-E]にアルジェント・リーゼとヘカテイアの最大火力を誇る攻撃が叩き込まれる。重力波に押し潰され、魔力の奔流がTYPE[JM-E]の機体を飲み込んでいく。自分たちの機体もそれなり以上の損傷を受けたが、それ以上の結果を残すことができたと判断し、2機はその場を離脱する。これで完全撃破が叶ったとは思わないが、それでも、確実に勝利には近づいている。シルとテラの姉妹はたしかな手応えを感じながら、戦場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

星川・アイ
……フフフ、一度その機体と相手してみたかったんだ~
悪いけど、本気でやらせてもらうよ!

【Ⅱ】に換装した【ジェナス】で出撃
敵のUCには、スラスター類で急速ステップを繰り返して触手を避けながら追撃
(推力移動・空中機動・見切り)
粒子フィールドはスレイプニルの連射で削り、接近したらモード変更して連撃で両断、開いた所をパルスブラスターでダウンを狙う
(空中戦・弾幕・2回攻撃・切断・零距離射撃・マヒ攻撃)
これらを、予測を超える速度で入力するよ
(戦闘知識・早業)
そこから間髪入れずにUC発動、一気に押し切るよ
(リミッター解除・限界突破)

その名剣、どれ程のものか見せてもらうよ!



●Now I'm Scary
 TYPE[JM-E]が受けた損傷が修復されていく。融合した鴻鈞道人が渾沌の力によって、機体の組成を復元しているのだ。装甲の傷も、まるで時間が戻るかのように消えていく。過去の集積体である骸の海だからこそ為せる技か。

「……フフフ、一度その機体と相手してみたかったんだ! 悪いけど、本気でやらせてもらうよ!」

 再び上空へと飛翔するTYPE[JM-E]を見上げながら、星川・アイ(男の娘アイドル風プロゲーマー・f09817)は闘志を燃やす。ゲーマーとしてのサガなのか、強力な相手との戦いはどうしようもなく心が躍る。

 背中の白翼から複数の触手が放たれた。先端には羽毛を象った形状のソードビットが装着されており、アイが駆るジェナス目掛けて襲いかかってくる。

「とにかく避け……うあっ!?」

 触手の動きを見切り、複雑なマニューバで回避を試みるが、突然襲いかかった衝撃にアイは舌を噛みそうになる。何事だ、とコンソールを見れば、ジェナスのフライトユニットが損傷しているという表示があった。実際に、ジェナスのフライトユニットのスラスターが1基火を吹いており、姿勢制御が一時的に不安定になっている。

「これだからオールレンジ攻撃は……!」

 再び触手の先端にあるソードビットが閃く。今度は正面だ。胸部装甲が浅く切り裂かれる。アイは即座にスラスターの出力を調整して機体を安定させる。

「やられっぱなしは性に合わないんだよね……!」

 反撃の狼煙を上げるが如く、マシンガンを構える。ひっきりなしに襲い来るソードビットと、時折撃ち掛けられる高出力ビームを逃れながら、ビームライフル「スレイプニル」の斉射で粒子フィールドの減衰を狙った。半分以上が避けられたが、それでもいくつかは粒子フィールドに当たり、粒子同士の干渉でフィールドの減衰が発生する。

「そこだ……っ!」

 網目のように張り巡らされた触手の有線ソードビットの中を掻い潜り、スレイプニルの先端にビーム刃を形成。粒子フィールドを切り裂く、が。

「……! CRESCENT MOONLIGHTか……!」

 なんと、即座に右手のCRESCENT MOONLIGHTを抜刀したTYPE[JM-E]がスレイプニルのビーム刃を切り払った。プラズマの刀身とビーム刃が干渉し、両者は弾かれるように離れる。だが、予測を超える思考速度で操作を続けるアイは次の一手をもう打っていた。

「墜ちろっ……!」

 狙うは翼だ。機動力を殺せば、防御が脆弱なのはすでにわかっている。姿勢を崩したところに、その翼を焼くべくパルスブラスターを撃ち込む。その狙いは的中し、それまで凄まじい機動力を誇っていたTYPE[JM-E]の動きは鈍り始めた。

「CRESCENT MOONLIGHT……その名剣、どれ程のものか見せてもらうよ!」

 残存するスラスターを全開にして、すれ違いざまにスレイプニルの一閃を放つ。TYPE[JM-E]もCRESCENT MOONLIGHTを振るって迎撃。両者の刃が交錯し、空中でしばしの静寂が訪れる。時間が止まったかのような感覚に襲われるアイ。

 時間は動き出した。TYPE[JM-E]は白翼ユニットを切り落とされ、力なく落下を始めた。一方で、ジェナスも腹部を切り裂かれていた。

「……とっさに少しだけ高度を上昇させてよかった」

 そのままの高度で突っ込んでいた場合、間違いなくコクピットごと斬り裂かれていた。背中に伝う冷や汗が体温を冷やすのを感じながら、アイは損傷状況からこれ以上の戦闘は危険と判断し撤退する。背後には、姿勢制御が出来ずにクレーターの中心にしたたかに叩きつけられるTYPE[JM-E]の姿が残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワン・イーナ
エインヘリャル搭乗
アドリブ歓迎

俺は、俺の魂に従うだけだ。言葉は不要、本気でやろうぜ
『システム起動、作戦開始します』

ワルキューレ、機体制御に全部回せ。【瞬間思考力】と大出力任せの【推力移動】で先制攻撃の回避を試みる
『ジャミング展開。気休めですが』
ローラーダッシュしながら【対空戦闘】、【レーザー射撃】にライフルでビットやミサイルを迎撃し、全兵装で反撃
防御は抜けないだろうがそれでいい
情報を集めてタイミングを計る
『損傷率40%』
「ハッハー! まだまだ行けるぜワルキューレェ!」
敵の近接攻撃に合わせ、スレイプニル起動、突撃
一発限りの大博打(ロマン)だぜ

死ぬなよ、諸経費請求するからな
『任務完了、帰還します』


ヴィクター・ホリディ
アドリブ連携歓迎

さっさと止めてやるとしよう
知ってる顔が敵になるのは人同士の戦争だけで十分だ

■方針
旅団は一緒なんだ、多少の記録は残ってるはず
事前にジェイミィの戦闘記録を情報収集で集め
Henryと戦闘知識で解析

戦地突入でUCを発動、情報収集を開始
敵の攻撃は解析情報と瞬間思考力で見極め
推進移動で回避、または継戦能力で耐える

情報収集完了後
ショットガン、ミサイルで制圧射撃/弾幕をはりつつ、推進移動/限界突破で接近
一瞬でも惑わせれればそれでいい

継戦能力で損傷・衝撃に耐え、限界突破/推進移動
加速からのダインスレイフの重量/貫通攻撃/部位破壊を叩き込む

「それじゃまたな、ご同輩。
 次会うときは酒ぐらい奢れよ?」



●Time is too short
「知ってる顔が敵になるのは人同士の戦争だけで十分だ」
「あぁ、言葉は不要、本気でやろうぜ!」

 クロムキャバリアを中心に活動するキャバリア乗りたちの騎兵団、「渡り禽」。その同僚が渾沌に乗っ取られたと聞いたワン・イーナ(シンギュラリティ・f30274)とヴィクター・ホリディ(ドク・ホリディ・f30339)が戦いの場に身を投じる。

『システム起動、作戦開始します』

 ワンの機体の支援AIであるワルキューレが発するアナウンスを合図に、2人の猟兵が駆るエインヘリャルとPrecesの両機体、そして彼らが対峙するTYPE[JM-E]がほぼ同時に動き出した。

 今回のTYPE[JM-E]は破城ビームライフルと触手による有線ソードビットの同時攻撃を選択。徐々に鴻鈞道人が戦い方に慣れてきている様子に、2人は若干の焦りを覚えた。

「ワルキューレ、機体制御に全部回せ! どっちを食らっても不味い!」
「"Henry"観測開始。高出力のビームにオールレンジ攻撃ね……しかも未来予測システムで先読みしてるってのが厄介だ」

 高出力ビームはとにかく回避に徹し、ソードビットの攻撃は装甲の厚い部分で受け止める戦い方をするヴィクター。解析情報に目を走らせながらも、Precesを操ってTYPE[JM-E]の苛烈な攻撃を凌ぎ続ける。

 一方のワンはエインヘリャルのローラーダッシュの機動力に任せて回避に集中。有線コントロールのソードビットを手持ちの武装で撃ち落としながら、TYPE[JM-E]にも直接攻撃を浴びせるべく全武装を一斉射した。

『ジャミング展開。気休めですが』
「いや、僅かでもやっておいた方がいい。今は少しでも打てる手を打たねぇとだ」

 これまでの戦闘パターンと、Henryの情報収集、ワルキューレの分析が終わる。2機はデータリンクさせてパターンの絞り込みを行った結果、1つの結論に達した。

「どうやらそろそろ突っ込んでくるぜ、奴さん」
「だな……仕掛けるならそこか!」

 すでに苛烈な攻撃に晒され続けたエインヘリャルとPrecesの装甲はボロボロだ。時折飛んでくる高出力ビームの熱や衝撃波で装甲が損傷したところへ、ソードビットが容赦なく叩き込まれているため、ひび割れも多くなってきた。完全に剥離し、内部のフレーム構造が露出してしまっている箇所もある。

『損傷率40%』
「ハッハー! まだまだ行けるぜワルキューレェ!」
「さぁて、お客さんが至近に来るぞ! 構えろよワン!」

 ソードビットの迎撃を行いながらも自分に気合を入れ直すかのように叫ぶワンに、ショットガンやミサイルでの制圧攻撃を続け、この間合いでの不利を悟らせ接近戦を誘っていたヴィクターが声をかける。TYPE[JM-E]がついにCRESCENT MOONLIGHTを抜刀し、急速に接近した。

「行くぜ、スレイプニル起動!」
「ライブラリ展開……解析終了。ダインスレイフの一撃だ……!」

 振るわれたCRESCENT MOONLIGHTを潜り抜け、まずはバイク形態に変形したエインヘリャルが駆け抜けながら突進、TYPE[JM-E]のバランスを崩す。そこへ襲いかかるのはPreces最大の一手、ダインスレイフ。フィールド発生による重量の乗った一撃がTYPE[JM-E]を打ち据え、致命的なダメージを与えた。空中で縦に1回転したTYPE[JM-E]は、再び地面に叩きつけられ、大きくバウンドして装甲や各部パーツを撒き散らしながら地面を滑り、全身から煙を上げながら動きを止める。

「死ぬなよ、諸経費請求するからな」
「ついでに酒ぐらい奢ってもらおうかね。それじゃあな、ご同輩」

 ワンとヴィクターは各々ジェイミィに声をかけ、撤退する。機体の損傷状況や推進剤の残量、何より大技を放った反動で戦闘継続が不可能なのは明白だった。すでに趨勢は猟兵たちに傾いている状況下で、戦いはますます激しさを増していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…骸の海とは、今、未来へと道を繋ぎ役目を終えた過去が眠り休む場所なのだと、そう思っておりました。
されど体を得、この地に顕現した貴方が望むが過去の残滓を掬い上げての今の破滅とは…、
それが真に骸の海の意志であるのならば、憤懣遣る方無い想いです。


貴方が駆るは未来を俯瞰する覇者の機甲。
されど『今』とは絶えず形を変えるもの、故に未来を完全に定めることもまた不可能。
…我らが同輩を、返して頂きます。


機甲は用いず生身にて
アイテム『薄氷帯』の効果にて全身を霊力保護しつつ
正体不明の攻撃、それら全てを魔性染みた野生の勘、瞬間思考力にて未来予測よりも尚早く触れらるもの、触れざるべきものを即座に感知し回避あるいは打ち払う
初撃を凌げばUC発動、野生の勘、見切りにて攻撃及びバリアの薄くなる場所、タイミングを見極め残像で攻撃を躱しつつ
怪力、グラップル、部位破壊にてバリアの効果の薄い締め、極めの業を中心に関節など動作の要となる部位を破壊
相手が飛翔するなら怪力、踏みつけ、ジャンプによる蹴り足にて跳躍し飛行機構の破壊を狙う



●Invisible cave
 月白・雪音(月輪氷華・f29413)は眼前のTYPE[JM-E]を見て、やりきれない思いを抱えていた。徐々に異形化が進んだのか、CHESEDとGEVURAHの2丁の無骨な長銃からは白い羽根が生え、背中の羽毛型ソードビットは触手を介した有線型へと変わったのを皮切りに、指先は鋭いかぎ爪状に変わり、装甲は有機的な素材へと徐々に置き換わり始めている。戦機から有機生命体に変わりつつあるその姿はまさに異形の天使であった。

「……骸の海とは、今、未来へと道を繋ぎ役目を終えた過去が眠り休む場所なのだと、そう思っておりました。されど体を得、この地に顕現した貴方が望むが過去の残滓を掬い上げての今の破滅とは……」

 骸の海そのものと嘯く鴻鈞道人の意思がこの所業か、と考えれば憤懣やる方なくなるというもの。そして、その意思は今、目の前の猟兵、ジェイミィと溶け合い、「世界に均衡を齎す」という大義名分を掲げることで強固になった。雪音はジェイミィのブリーフィングを思い出す。演算による事象予測、戦機故の高火力と高機動力。そして粒子フィールド。難敵だが、雪音にとって突破不可能なものではない。

「貴方が駆るは未来を俯瞰する覇者の機甲。されど『今』とは絶えず形を変えるもの、故に未来を完全に定めることもまた不可能」

 そこに勝機がある、と雪音は鋭い目つきで敵──TYPE[JM-E]とその乗り手に融合した鴻鈞道人を睨みつける。

「──我らが同輩を、返して頂きます」

 その言葉を合図にしたかのように、TYPE[JM-E]は地を蹴り、背の翼を羽ばたかせたかと思うと、空へと舞い上がった。

 雪音はキャバリアを持たない。故に生身でキャバリアたるTYPE[JM-E]に立ち向かう。もちろん、何の守りもなく勝てる相手だとは考えない。保有する薄氷帯の力により、全身が霊力障壁で覆われる。素手で刀剣や銃弾を止めることが出来るほどの防御力を誇るが、眼前の戦機にどこまで通じるか。

 ふと、雪音は空を見上げた。TYPE[JM-E]は雪音の様子を探るかのように、空中を旋回している。背中からは羽ばたくごとに白い羽根が抜け落ち、舞い散るのが見えた。

 その羽根が突然、ぐるりと回った。ソードビット……ではない。さらなる異形化が進み、羽根のひとつひとつにCHESEDとGEVURAHの小型複製体を持った小さな腕が生えている。

「すでに攻撃は始まっている……!」

 次々と異形化した羽根から高出力ビームが放たれ、触れれば蒸発するほどのエネルギーを持った光の網が形成される。中には元の形象を保っているソードビットも中にはあり、それらは複雑な軌道を描きながら、雪音の身を切り裂こうと飛来する。

「……しかし、こうもわかりやすければ対処は容易っ!」

 雪音の魔性じみた野性の勘が、己の生存のために最大限に発揮される。接近してくるソードビットを手で払いのける。常人以上の膂力と耐久力を誇るからこそ、飛来する巨大な金属の羽毛を吹き飛ばすことが可能となるのだ。そして、ビームの檻の僅かな隙間を見つけ出し、軌道を変えるビームから逃れながら、より闘争本能を研ぎ澄ませる。雪音のユーベルコード「拳武」はまさに、人間が辿り着く闘争の極地であり、ヒトという生命体の限界を突き詰めた究極の武術。

「その翼、手折らせて頂きます……!」

 跳躍し、空中のソードビットを足場にしてさらに飛距離を稼ぎつつ、TYPE[JM-E]本体に肉薄する。粒子フィールドの薄い部分はわかっている。

「背中は推進力の要である以上、薄いはず……!」

 粒子フィールドに接触する。その瞬間、足先に激痛が走った。物理的な衝撃を粒子の干渉によって弾き返す性質を持っているが、生身の存在が触れれば粒子の干渉の結果、痛覚を刺激する。それが激痛となって雪音を苛むのだ。

「っ、薄い場所とは言え、これは……ッ」

 せめて一撃。それだけでいい。フィールドが発生させる激痛に耐えながら、打撃を繰り返す。継続した物理的干渉によってフィールドは減衰しはじめた。

「もう少し……!」

 肉薄している以上、ソードビットからの射撃も直接攻撃も届かない。時折、背中の翼から触手によって有線コントロールされたソードビットが飛び出すが、野性の勘が飛び出すタイミングを測り、回避する。空気の僅かな変化を肌で感じ、動物的な勘を研ぎ澄ませることで、TYPE[JM-E]の正確な攻撃を実現するWHITE KNIGHTの未来予測を遥かに凌駕するほどの先読みに、雪音は成功していたのだ。

 やがて、粒子フィールドが消失する。手応えが変わったことを感じた雪音の身体はすでに激痛で四肢が痺れるほどであった。拳と足先が焼けただれている。だが、この後直接打撃を行うに当たって一切の障害にはならない。

「さぁ、異形の翼を捨て……大地へ……!」

 オーバーロードの力も込めた拳打がTYPE[JM-E]の異形の翼を完全に砕いた。大地にふたたび叩きつけられるTYPE[JM-E]。フレームも大きく損傷させながら、クレーターの真ん中に新たな小さいクレーターを作る。

 雪音の拳は渾沌へと届いた。この一撃が、戦況を新たなステージへと進めていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
機神搭乗

「ご主人サマ!ジェイミィ君と対決だよ☆」
おめーはもう少し悲壮感出せねーのか!?まぁいい…あの人は易々と亡き者にはできねーだろ

【情報収集・視力・戦闘知識】
ジェィミィの戦闘記録確認
その戦闘スタイルを把握
その上で現状での動きと癖と彼との差異を分析

対SPD
【弾幕・念動力・スナイパー】
粒子フィールドに対抗し念動障壁展開
念動光弾を乱射して翼を攻撃して超強化の減衰狙

【属性攻撃・迷彩】
光水音属性を機体に付与
光学迷彩且水障壁で熱源探知隠蔽
超音波探査を相殺し反射を封殺
ジェイミィならこっちの手札を把握してる可能性がありますしね…?

【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
未来予測をされるなら
予測でも何が起こったか分からねー攻撃をすればいいよな?
UC発動
超高速攻撃による連続斬撃から武装連続強奪

力を持ちすぎるのは滅ぼすとかおめーあれか?UDCアースの中学生の病気かよ
超越者気取りがこの僕の自由を阻害とか上等じゃねーか

ジェイミィならもう少し抗っただろうよ
「メルシーは最強クラスのキャバリアだぞ☆」
おめーも調子乗るな!


終夜・日明
【アドリブ連携歓迎】
『オルトロス』に搭乗して交戦。
厄介な人に乗り移ってくれましたね。
スクルドシステムの制御権を奴が握っている以上、回避もままならないでしょう。
可能な限り致命傷を避けることに集中します。

『アストラル・ビットVer.C』の【制圧射撃】で弾幕を張ることで敵攻撃の威力を削ぎつつ、【乱れ打ち】でバリアの減衰を図ります。
『MU-Sikcle』と『シュヴァルツ・シルフィスティ』で【なぎ払い】【切断】、あるいは【地形破壊】【地形の利用】で致命傷となり得る攻撃だけを防ぎます。
あとは【激痛耐性】と【継戦能力】でゴリ押しで戦闘続行しますよ。
神経接続型なのでまあ死ぬほど痛いですが、身体は毎日死ぬほど痛いですから今に始まったことではありません。

攻撃が一段落したら【指定UC】。
バリアを確実に破壊し攻撃できる瞬間を確定させ、接近し【串刺し】【零距離射撃】。
骸の海に《蠱毒》が通用するかは不明ですが、ウォーマシンの身体は適応外。鴻鈞道人のみにダメージを与えられるハズ。

――僕の仲間を返してもらおうか。



●Let's fight for counter
 折れた翼は再び再生する。TYPE[JM-E]は受けた損傷を渾沌の力によって回復させていくが、副次的な影響としてそれまでの異形化がリセットされてしまう。即ち、鴻鈞道人の影響が弱まることを意味するのだ。

「ご主人サマ! ジェイミィくんと対決だよ☆」

 戦場に陽気な声が響く。それはカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の愛機、機神メルクリウス──愛称メルシーの声であった。

「おめーはもう少し悲壮感出せねーのか!?」
「だってジェイミィくんだよ!? 同じキャバリアとして戦ってみたいじゃん!」

 カシムはうーむと考え込む。メルシーはキャバリアそのものだし、ジェイミィは現状ウォーマシンとは言え、厳密には小型の自律型キャバリアのようなものなのだ。確かにメルシーもそっちの方向で興味を持つだろうなぁと考える。

「まぁいい……あの人は易々と亡き者にはできねーだろ」
「えぇ全く。厄介な人に乗り移ってくれたものです」
「おや、日明さん。依頼でご一緒するのは例の花火大会以来ですか」

 カシムに声をかけたのは、愛機オルトロスを駆る終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)。奇しくも、ジェイミィが主催した「ぼくがかんがえたさいきょうのはなびコンテスト」に共に参加した仲だ。

「スクルドシステムとWHITE KNIGHTの制御権を奴が握っている以上、回避もままならないでしょう」
「……しかもこっちからの攻撃は未来予測で避けられる。ほんっと厄介ですよ」

 幸いなことに、異形化の中心となっていた翼が砕かれたためか、徐々に渾沌の影響は弱まりつつある。もっとも、根本たる思考が結びついてしまっている以上、やはり完全撃破を狙うしか無いのだろう。

「カシムさん、ジェイミィさんとTYPE[JM-E]の戦闘記録、探してもらえますか。突破口はそこにあります」
「これまでの戦術との差異……確かに、思考に鴻鈞道人のものが混入している以上、通常とは異なる戦い方を仕掛ける可能性が高いですね」

 日明の提案を受けて、カシムはコンソールを叩き、グリモアベースに蓄積されているデータベースを呼び出す。検索するのはジェイミィが参加した依頼の報告書だ。ごく最近、哪吒との戦闘記録が多く見つかった。この時の戦闘記録は特に参考になるはずだ。

「メルシー、お前も何か思い出したら教えてくれ。今は少しでも情報がほしい」
「思い出したらね? でもあんまり期待しないで欲しいかなー」
「安心しろ、元々あんまり期待してない」
「あー、ひっどーい……ってか、それよりもジェイミィくんからの攻撃はどうすんのさ?」

 メルシーはカシムの言葉にブーイングしつつ、疑問を口にする。

「未来予測されているんです、完全な回避は無理でしょう。被害を最小限にすることに注力してください」
「オッケー」
「それしかないか……」

 日明のコンソール画面上で、メルシーのグラフィックが頷く。カシムも諦めたように日明の言葉に同意した。その間に、カシムはダウンロードした報告書に目を走らせていく。

「ジェイミィの戦術は……基本的には避けるタイプか。粒子フィールドのバリアがあるとは言え、過信はしていないっぽいな。射撃戦とオールレンジ攻撃で出方を伺いつつ、PROVIDENCEからのデータをもとにWHITE KNIGHTと戦術構築。有効と判断した武装を選択して隙を伺い、大技やラッシュで一気に畳み掛ける……」

 その上で、目の前の相手がどう出るのか。次の瞬間、レーダーロックされたアラートがオルトロスとメルクリウスのコクピット内に鳴り響く。

「マルチロック!」
「ってことは……!」

 射出されるのはソードビットだ。ここまでの戦闘により、翼が一度破壊されたことによって鴻鈞道人の影響力が限定的になりつつある。触手による有線コントロールが行われず、本来のYESOD──無線コントロールでのソードビットによるオールレンジ攻撃が開始された。

「ならばアストラル・ビットで迎撃……!」

 全方位に弾幕を張りながら、日明はソードビットを撃ち落とすべくオルトロスからアストラル・ビットを展開する。ビット兵器にはビット兵器をぶつけるのが一番という判断の上での行動であった。

「ビットの迎撃はお任せします! こちらはなんとか翼を攻撃せねば……メルシー、捉えられそうか?」
「狙いが定まらない! ジェイミィくんちょっとは大人しく出来ないかなぁ!?」
「そりゃあちらさんにとっては無理な相談だろうよ!」

 日明にビットの対処を任せつつ、軽口をぶつけ合うカシムとメルシーだが、実のところこの2人も余裕がない。少しでも気を抜けばCHESEDとGEVURAHからの高出力ビームが正確な狙いで飛んでくる。

「ジェイミィくん絶対こっちの手札把握してるよ。どうやって突破すんのさ」
「こうも手の内が読まれていては……」

 その通信を聞いていた日明はふと、TYPE[JM-E]の頭部を見た。確か、あの頭部の耳のようなセンサーは「PROVIDENCE」という名だったはず。同様の機能を持つセンサーは操縦するジェイミィにも備わっている。カシムが戦闘記録から閲覧した内容によれば、PROVIDENCEで観測した結果をWHITE KNIGHTやスクルドシステムに読み込ませて、未来予測演算を行うのが彼の基本的な戦い方のようだ。そこまで思考が及んだ時、日明ははっと息を呑んだ。彼の脳髄が天啓とも言うべき考えを導き出したのだ。

「そうか、PROVIDENCEです! あのブレードアンテナ、PROVIDENCEの観測から逃れられれば、予測を超えた反撃が可能です……!」

 エウレカ、と叫び出したい気分だった。現在のジェイミィの状況にもよるが、日明の推測が正しければ、鴻鈞道人はジェイミィの戦闘経験を中途半端な形でしか継承できていない。加えて、グリモアベースにて公開されている依頼の報告書へのアクセス権も一時的とは言え失っているはずだ。

「つまり……現在の彼は未来予測の情報ソースとして、普段以上に観測結果に頼っている!」
「そうか、普段のジェイミィなら自分の戦闘経験に報告書からの情報も未来演算の情報ソースに加えていますからね……膨大なビッグデータによる機械学習とそれに伴う未来予測演算は、今UDCアースでも先端技術として研究が盛んな技術だったはずですが、各世界の技術フリークなジェイミィがそこに目をつけないはずがない。逆に言えば、鴻鈞道人にはそれが出来ない……いや、仮に出来たとしても十全には活かしきれないはず!」

 鴻鈞道人は骸の海だからこそ、過去の情報を未来演算に活かすという発想がない。加えて、自身に蓄積されている過去の情報は膨大すぎる。そこから必要なデータを取捨選択するにはあまりにも時間がかかりすぎるのだ。それならば、現在読み取れた情報こそが一番信頼できる情報ソースとなる。

 カシムとメルシー、日明が現状を切り抜けるための突破口はそこにある。即ち。

「メルシー! 盗賊流の戦い方だ! 隠れるぞ!」
「隠れるったってこのクレーターのど真ん中のどこに隠れる場所があるの!?」
「お前なぁ……その立派な光学迷彩は飾りか!?」
「……あっ」
「素で忘れてたなメルシー!?」

 てへ、という笑い声と共にメルシーは光学迷彩を起動させる。

「オプションサービスはどうされますかお客様ー?」
「水障壁張って熱源探知妨害。それと音波探知防止のためにあっちが出している超音波の波形を相殺する音波を出してくれ。PROVIDENCEに渡す情報を極限まで減らす!」
「合点承知! 日明くん、ちょっと我々は身を隠すよ」
「いい手です、お願いします。」

 完全に姿も気配も消したメルクリウスの姿を見ながら了解の返答を投げつつ、日明は「あっちは楽しそうですねぇ」、と苦笑する。とは言え、一時的に攻撃が集中するためこれを対処する必要がある。無論、日明はカシムとメルシーが攻勢に出ることを把握しているため、もとより防御を一手に引き受けるつもりだった。

 対空装備のシュヴァルツ・シルフィスティとビームサイスモードとしたMU-Sickleでコクピットや関節部など、行動不能に陥る部分への直撃コースを辿るソードビットを迎撃するオルトロス。全てを撃墜することは叶わないが、せめて致命的なダメージだけは避ける。神経接続操縦の影響で装甲へ被弾する度に衝撃がコクピット内の日明にフィードバックされ、身体に激痛が走るがそれらは普段苛まれている痛みに比べれば些細なものだ。日明は強引に耐えてみせる。

「多少の無茶は承知の上……これくらいのダメージはTYPE[JM-E]を墜とす上での必要経費です!」

 日明は自身の導き出した策をカシムとメルシーに託している。状況は不利なようで、実は有利に働いているという確信こそが彼を動かす原動力となっていた。果たして、その確信はひとつの現実を描き出す。カシムとメルシーは一発の攻撃も被弾せず、全く察知されること無くTYPE[JM-E]へと接近することができたのだ。

「接近完了……! 後は姿を表して未来予測を超える攻撃を……!」
「では、そのハードルを下げましょう」
「え? ……日明君まさか!」

 日明の言葉にメルシーは彼がこれから何を行うのかを悟った。

「そのまさかです! これより有効時間100秒の間、未来予測をこちらで行います……WHITE KNIGHTは第四の『王笏』と同じ力、ならば同じ手が有効! あれから15秒の成長を見せたラプラスの魔を……ここに顕現させる! ユーベルコード、アクティブ……!」

 コンソールにコマンドを打ち込み、エンターキーを叩きつけるように打鍵する日明。コンソール上に映し出されるのは「S.K.U.L.D. System...Deactivated」「WHITE KNIGHT [DIABLO OS 2.0] ...Deactivated」の文字列。この瞬間、TYPE[JM-E]が行使する二大未来予測システムは機能を停止する。

「今です! SERAPHを!」
「加速装置起動……! 行くぞ、メルシー! 翼をもぎ取り叩き落とす!」
「限界突破だーっ!」

 一連の事象に呼応するように姿を表したメルクリウス。魔剣ハルペーが限界を超える速度で閃き、SERAPHが切り刻まれていく。さらに最大の脅威であるCHESEDとGEVURAHも排除を試みたが、飛行能力を失ったTYPE[JM-E]は地面へと落ちるかと思われたが、残存するスラスターを限界まで駆動させることで強引に高度を維持。CHESEDとGEVURAHを投棄してCRESCENT MOONLIGHTを抜刀、ハルペーを受け止めた。

「まだそれが残っていましたか……!」
「往生際が悪いよジェイミィ君……!」
「いえ、十分です……!」

 地を蹴り飛び出すオルトロス。スラスターの光を後に引き、限界高度ぎりぎりを飛ぶTYPE[JM-E]目掛けて飛翔する。コクピットの中では日明がただ一点、TYPE[JM-E]の腹部に狙いを定めていた。ライフルスピアを構え、なだれ込むようにTYPE[JM-E]へと突進する。

「僕の蠱毒はウォーマシンには無効……鴻鈞道人のみにダメージを与えられる一手だ……!」

 抉りこむようにライフルスピアをTYPE[JM-E]に突き刺し、蠱毒を流し込むオルトロス。メルクリウスがCRESCENT MOONLIGHTを抑え込む。

「僕達の仲間を返してもらうぞ……!」
「だから大人しく還れ、この超越者気取りが……!」
「そしてその身に刻むのだ! 最強クラスのキャバリア、メルシーちゃんの名前をなぁ!」

 日明とカシム、メルシーの叫びが重なる。

 蠱毒を打ち込まれ、スラスターがついに限界を迎える。落ちていくTYPE[JM-E]。だが、土壇場で再起動する。再び背にはSERAPHが復活し、損傷も回復していく。骸の海たる渾沌の力が損傷を受ける直前の状態へと、TYPE[JM-E]の時間を巻き戻しているのだ。

「っ……限界時間ですか!」
「しかし、突破口は見つかりました! 後は……全てを託します、皆さん!」

 日明のラプラスの魔は限界時間を迎え、プログラムが強制解除される。これ以上の戦闘は危険なため撤退を余儀なくされるものの、入れ替わるように姿を表した3人の猟兵に、日明とカシムは全てを託す。それは、ジェイミィを救い出し、彼と同化した鴻鈞道人を完全に分離させる切り札を持つ者たちだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルクレツィア・アストリュード
――ジェイミィ。まさか、こんなコトになるとは、ね…。

――分かった。
ボクの身に託された『答え』――この剣は『全て』を斬り得ると。
此処に、示すとしよう。
その身を蝕む渾沌も、破滅の運命も。この剣で、斬り裂いてみせる。
(The Answererを構え、戦闘態勢)

SkyWalkerで宙を蹴る【空中機動】にて空中戦を挑む。

ジェイミィが放つ攻撃のうち、ソードビットは敢えて数発を身体に掠らせる形で回避する。
此方が流血していれば、向こうのユーベルコードでの強化は無効化できる筈。

【瞬間思考力】の限りを以て攻撃の種類や軌道を【見切り】対応。
【斬撃波】を放ち牽制とソードビットの撃墜、バリア削りを試みながら距離を詰める。彼我の速度差は圧倒的とはいえ、遠距離戦では決着がつかないと見せられれば、向こうから距離を詰めに来る筈。

互いに近接攻撃の構えに入った処でUC発動。
予備動作からプラズマブレードの斬撃軌道を見切り、空中跳躍で回避しつつ敵機へ肉薄、腰部に渾身の斬撃を撃ち込む。

――『答え』に殉ずる訳にはいかない。お互いに。


リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【POW】
※愛機搭乗、無慈悲、アドリブ歓迎

無血ならずともイレギュラーは排除する
それがアタシらと彼の判断さ
何、ファルマコンに先日の修理ログがある
大丈夫、治療は可能だよ

◆先制
【カイルス】を【瞬間思考力】で超過駆動、事象予測に追随
【ディヴィエイト・アームズ】用コンテナで攻撃を受けた後
コンテナは起爆・投棄(中身は大量のクレイモア爆弾)

◆戦闘
上記超過駆動で引き続き事象予測相殺

機動力に対抗しつつバリアを削る為
【クリュザンテーメ】と【マギ・バダディルマ】で
愛機の機動力やバリア性能を同等に寄せつつ
【ユーディット】の重力弾と【ルミナス・スレイヤー】の光波で連撃

「ノネット、オペ93番開始」『了解です、マスター!』
バリア消失後に全力砲撃やユベコを狙ってきたら
補助席のメカ娘が攻撃重視【フォールンオーダー】開始

熾天使周囲の実時間を120倍に急減速しつつ
愛機周りを1/120に急加速する事で
14400倍の相対時間差(ラグ)を生成

主観時間12秒で致命の攻撃を躱し
重力弾幕で距離を詰めたら
速度を乗せた両腕光刃の全力斬撃で〆


バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携大歓迎

HAHAHA!
ジェイミィ殿とバトルとは!
これは血沸き肉踊りマスネー!
共にメカニカルではありますが!
強敵との闘いはとてもテンションが上がりマース!
とはいえ……(軍装を纏う)
我が友の身柄、奪った報いは受けてもらうであります。
煮え滾る高揚を胸に秘めて、冷静に戦闘を開始するであります。

先制UCにはパリィとドッジにて対処を。
ファルシオンで受け流し、滑走靴にて上下左右に空中機動して回避。
……スコールを呼んだとしても、相手がジェイミィ殿では技量差で競り負ける可能性が高い。
故にここは、我が身で対応させていただく。
全武装、同時展開。フルバースト・マキシマム!

パイルバンカー、チェインハンマー、チェーンソーにて迫撃を。
グレネードランチャー、ガトリングガン、火炎放射器にて弾幕を。
雷火の如く、弾雨の如く。攻防兼ねた一斉攻撃を叩き込むであります。
未来予測も高速機動もバリアも、過剰な火力で押し通る。
我輩も命を懸けて御身をぶち殺す覚悟にて、殺してでも救うであります。
退職届は不受理でありますよ。


ダビング・レコーズ
この世界
そして執行者
ジェイミィ様、それが貴方の答えですか
終わらせましょう
メインシステム、戦闘モード起動します

目標は搭載するWHITE KNIGHTによって極めて高い照準・誘導性能を有しているものと想定
回避運動以上に直撃を受けない事を優先する
最大出力で照射されるCHESEDとGEVURAHだけは回避を最優先
発射の兆候を見せた場合は敢えて接近
CRESCENT MOONLIGHTの攻撃を誘い再度距離を離す
ブレード光波はルナライトのプラズマキャノンで相殺
YESODはメテオリーテである程度迎撃しEMフィールドで防御

SSDを発動し超高速戦闘に対応
慣性及び加速時の負荷を無効化し鋭角な機動で追撃と後退を行う
高弾速かつ高貫徹力のベルリオーズで継続して攻撃を加え続け粒子フィールドを減衰させる
フィールド減衰確認後は再展開される前に勝負を付けるべくより積極的な攻勢に転じる
ここでメテオリーテの全残弾を放出しスレイプニルをパージ
弾幕に紛れて接近
ルナライトを主兵装とし未来予測が追い付かないほどの高速接近戦に持ち込む



●All is fantasy.
「イイ仕事したよ2人共! いよいよこのリリー先生の出番ってわけだ……!」

 撤退する2人を見て笑みを浮かべるリーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)。即座に地上に待機させた医療艇・ファルマコンに通信を送る。

「ヘリオ! イリスちゃん! ジェイミィさんの修理ログの検索状況は?」
「ひとまずログ自体は見つかったよ、マム! ただ暗号化データが多すぎて……!」
「なんとか既存の記録と照らし合わせながら作業を進めていますが……!」

 ファルマコンではリーゼロッテに協力する情報生命体のヘリオと機械技師のイリスがコンソールを前に悪戦苦闘していた。以前ジェイミィは哪吒との戦いで負った損傷を修理すべく、ファルマコンのドックを借りている。その時の修理データを解析すれば、この戦いで完全破壊されるジェイミィを五体満足の状態に再び復元させることは可能だとリーゼロッテは睨んでいた。故にヘリオとイリスに命じて当時の修理ログから出来る範囲の解析を試みている。もっとも、あまりにもブラックボックスが多すぎる上に、様々な世界の技術が複雑に絡まり合っていることが災いし、解析は難航していた。

「頼むよ、このログ解析が最後の希望なんだからね……!」

 リーゼロッテは神聖メサイア教国の名を聞いてすぐさま疑ったのが、アンサズ地方各地で報告されている国際テロリスト組織の何らかの関連だった。独自に調査を行っていたリーゼロッテは、今回の事態を受けてひとつの推測を得るに至る。即ち、メサイアの名を掲げるテロリストたちの正体は、神聖メサイア教国の教義、あるいは思想を受け継ぐ者。もっとも、その狙いはまだ不明瞭なことが多い。確かなのは、各国が融和の道を歩み始めているアンサズ地方において、敢えてその流れに逆行しようと暗躍を続けているという点だ。

「今ここでジェイミィさんを失ったら、アンサズ地方で起きている事態の手がかりを掴む機会も失うことになる……!」

 その意味でも、ジェイミィは必ず生きて連れ戻す。表情を引き締めるリーゼロッテの決意は固かった。何よりも、相手は機械ではあるものの、人間と同等の自我を持つ存在をみすみす失ってしまうのは、医者として、何より知己として見過ごせないのだ。

 そもそも、今回の事態へと至らしめたのはジェイミィも含めた猟兵全体の判断の結果でもある。無血ならずともイレギュラーは排除する。避けられぬ犠牲は受け入れる覚悟だ。しかし、その犠牲を少なくできるのであれば、それに越したことはない。

「そうだね、リリー先生。ただ何よりも、ジェイミィは大切な仲間だから、助けられるに越したことはない。でも、まさかこんなことになるなんて……」

 ルクレツィア・アストリュード(終極フラガラッハ・f30398)はジェイミィの言動に不安を覚える。ジェイミィの本来の名たる「Jaeger Model-Executioner」、即ち死を以て裁定を下すもの。鴻鈞道人との融合により、彼は今、その裁定を猟兵に下すという答えを出していた。

「それなら、ボクの身に託された『答え』――この剣は『全て』を斬り得ると。此処に、示すとしよう」

 対キャバリアを想定した巨大な刀「The Answerer」を構えるルクレツィア。自分もジェイミィも、己に定めた答えに殉ずるわけにはいかない。ならばこそ、その身を蝕む渾沌も、破滅の運命も、全て一刀のもとに斬り払う。

「HAHAHA! ジェイミィ殿とバトルできるのは血沸き肉踊りマース! お互い共にメカニカルではありますが!」

 一方で快活に笑うのはバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)である。元より強敵との対決にはいつだって心を躍らせてきたバルタン。今回、その相手がジェイミィと知ればテンションもさらに上がるというもの。ただ、しかし、これは望ましい形で実現したわけではない。鴻鈞道人がジェイミィの意思と融合したことで発生した事案であるが故に、その元凶たる鴻鈞道人を許すわけにはいかない。

 バルタンは普段のメイド服の上から軍装を纏い、自らの意思を明確にする。その表情からは笑顔も消えた。即ち、鴻鈞道人を一切の慈悲無くジェイミィごと殲滅するという覚悟だ。

「とはいえ、我が友の身柄、奪った報いは受けてもらうであります」

 軍刀を静かに抜刀。その様子を見たリーゼロッテとルクレツィアはあることに気がつく。

「……あれ、バルたん、スコールには乗らないんだ」
「確かにバルタンさんなら生身でもキャバリアと渡り合えるけど、敢えて使わない理由が?」

 バルタンは2人の疑問に、重々しく頷く。

「スコールは、ジェイミィ殿と共に完成させた機体であります。ここで乗ったとしてもジェイミィ殿はそのスペック、弱点を熟知しているはず。ただでさえ未来予測を行う相手であります。相手に渡っている情報があまりにも多すぎる。加えて、キャバリア乗りとしての経験値もジェイミィ殿は上と判断します。現状のあらゆる要素から鑑みて、スコールの運用は結果的に我が身を縛る枷となるでありましょう……故に、我が身にて対峙させていただく次第であります」

 スコールは元々、アンサズ地方にかつて栄えた大国、アンサズ帝国で運用されていたエルダーフェンリルという機体だった。数奇な経緯によってグリードオーシャンにメガリスとして保管されていたその機体はバルタンの手によって回収され、ジェイミィと共に現代の技術による改修を受けた上でスコールという名を新たに与えられ、生まれ変わったのである。当然、ジェイミィはスコールの技術的データを保有しており、鴻鈞道人も目をつけないはずがない。だからこそ、スコールはこの場には持ってくるわけにはいかなかったのだ。

「Bradyback's Worksブランドがまさか弱点になるとはね……」

 TYPE[JM-E]を見ながら、リーゼロッテは嘆息する。ある程度情報が握られてしまっている状況というのは非常にやりづらい。しかし、いくらジェイミィでもキャバリアで生身の相手と戦う経験は非常に少ないはずだ。ジェイミィはウォーマシンであるから、生身の相手にはわざわざキャバリアに乗るまでもない。過剰戦力となるし、懐に入られた時の対処が難しいからだ。ここまでの戦闘で、鴻鈞道人がキャバリアから降りるという発想に至っていないのもプラスに働いた。

 そんな状況下で戦端を開いたのは、TYPE[JM-E]からの攻撃であった。

「マスター、皆さん、警戒を! 目標に高エネルギー反応……高濃度圧縮粒子が収束しています!」
「まずは挨拶代わりの一撃でありますか……!」

 リーゼロッテのナインス・ラインに同乗していたガイノイドのノネットが鋭い声を上げる。TYPE[JM-E]が構えた破城ビームライフルにエネルギーが収束しているのが見えた。あれを喰らえば全員が原子レベルで焼き尽くされていくだろう。何しろカタログスペックでは小惑星すら蒸発すると謳われているのだ。

「散開っ!!」

 リーゼロッテの声とともに、3人は一斉に散る。まばゆい光の奔流が数瞬前まで3人がいた空間を飲み込んだ。

「……おかしい、未来予測ができるならボク達の未来位置に偏差射撃することができたはず」

 斥力を発生させるブーツ、Skywalkerで空中に跳躍してCHESEDとGEVURAHの射撃から逃れたルクレツィアはTYPE[JM-E]の初撃にふと、違和感を覚える。その違和感の正体はすぐに判明した。背後に気配を感じ、振り向くと羽毛を模した形状のソードビットが今まさにルクレツィアに襲いかかってきていたのだ。

「……YESODか!」

 反射的に切り払う。しかし次の瞬間、ルクレツィアは無数のソードビットに取り囲まれている状況を理解する。

「ボク達をCHESEDとGEVURAHの射撃で動かした上でのオールレンジ攻撃……!」

 ちらり、と他の2人の様子を見る。バルタンも、ナインス・ラインも同様にソードビットのオールレンジ攻撃を今まさに受けようとしているところであった。

「互いの援護を封じた上で各個撃破……それがジェイミィのシナリオ……!」

 ジェイミィの意図を悟り、ルクレツィアの背筋が凍る。どうにかこの包囲を突破してTYPE[JM-E]に一撃を浴びせたいところだが、ジェイミィはそれすらも見越して布石を打っている可能性が高い。

「渾沌に飲まれても用意周到なのは相変わらずなようで……!」
「完全に戦場はあちらが支配しているでありますな……!」

 リーゼロッテとバルタンも自らを確実に追い詰める容赦なき一手に戦慄する。だが、それでも、とバルタンはTYPE[JM-E]を睨みつけた。

「それでも! 我々は、これまで何度も、如何なる敵も如何なる障害も乗り越えてきた! 敵が策を弄するならば、その策を正面突破で無に帰す! 敵が圧倒的な力を持つのであれば、振るわれた力を受け止め、押し返す! 今回も同じであります! 冷徹な策には、冷徹なまでの正面突破を!」

 反撃の嚆矢と言わんばかりに、バルタンは持てる全ての武装を展開する。

「全武装、同時展開。フルバースト・マキシマム!」

 バルタンの目が全てのソードビットを捉える。パイルバンカー、チェインハンマー、チェーンソーで接近するソードビットを弾き飛ばし、グレネードランチャー、ガトリングガン、火炎放射器で遠方のソードビットを叩き落とす。まさに、バルタンの全てを込めた一手だ。

「この過剰な火力で、包囲網も、バリアも、その機動力も、未来予測も……全て突破して押し通らせてもらうであります!」

 全方位に展開する弾幕と、近寄るもの全てを吹き飛ばす白兵武器の乱舞。襲い来るソードビットが続々と撃墜されていく。さらに、流れ弾はTYPE[JM-E]にも届く。その暴威から逃れようと機動力を活かして回避を試みるが、如何せん空間全体に弾幕が展開されており、全てを避けきることは難しい。結局、いくらかは被弾を許し、バリアを確実に減衰させていった。

「はは……バルたんの言うとおりだったわ。策で上回るよりも、真正面から突破したほうがカタルシスがデカいってもんさね。ルクレツィアさん、アタシらも行くよ!」
「……了解!」

 リーゼロッテとルクレツィアも、バルタン決死の反撃に鼓舞されて動き出す。ルクレツィアは迫りくるソードビット全てを見切り、躱し、斬り払う。が、いくつかのソードビットは敢えて受けてみせた。

「事前情報によれば、鴻鈞道人は敵よりも流血量が多い場合は力を増す……しかし、今の彼が同化しているのはウォーマシン、流血量はどうあがいても0……! ならば、私が流血すれば力関係は逆転する!」

 頬に切り傷を作り、血を流しながらもルクレツィアは羽毛型ソードビットの中で乱舞を続ける。時折斬り払ったソードビットの残骸を足場にしながら、包囲網の綻びを見つけ出し、抜け出してみせる。

「捨て身の戦法なら、アタシはこの手に限る!」

 一方リーゼロッテは、WHITE KNIGHTとスクルドシステムの事象予測に追随すべく、事象予測レーダー「カイルス」を持ち前の瞬間思考力で超過駆動させる。結果として導き出したのは、ソードビットの攻撃を受ける直前にディヴィエイト・アームズのコンテナを切り離し、身代わりとする一手だ。果たして、その中に詰まっていたのは大量のクレイモア爆弾。ソードビットが次々とコンテナに突き刺されば、内部のクレイモア爆弾が起爆し、周囲のソードビットを纏めて爆風や破片、殺傷用の鉄球で吹き飛ばしていく。

「PROJECT DIABLO 2.0の名の下に、白騎士を超えるために生み出されたもの……それがこのカイルスだよ! 今こそ使命を果たす時……WHITE KNIGHTを超えてみせな、カイルス!」

 事象予測を続けながら、リーゼロッテは残存するソードビットの複雑な軌道を全て読み切り、オールレンジ攻撃の暴威から脱する。かくてそれぞれの方法で危機を脱した3人は一気にTYPE[JM-E]を追う。

「クリュザンテーメとマギ・バダディルマの出力を、TYPE[JM-E]のカタログスペックと同等レベルに引き上げれば……!」
「ジェネレータ出力調整完了……制限時間は180秒です!」
「それだけあれば十分っ!」

 リーゼロッテの意を汲んだノネットがコンソールを叩き、ナインス・ラインの機動力と防御力をTYPE[JM-E]に追随させる。出力を絞ったCHESEDの射撃が斉射されるが、ナインス・ラインは容易く回避し、衝撃波すらもバリアが減衰してみせた。

「バルたん、指定座標に火力を集中させて!」
「了解であります!」

 事象予測が導き出した位置にバルタンの搭載火器の全火力とナインス・ラインが装備するユーディットの重力弾、そしてルミナス・スレイヤーから放つ光波が飛ぶ。そこにはスラスターによる慣性移動で飛び込んだTYPE[JM-E]の姿があった。ありったけの火力を叩き込まれれば、如何に堅牢を誇る粒子フィールドと言えど致命的な減衰は免れない。ここに、TYPE[JM-E]は防御手段を失った。

「ノネット、オペ93番開始……決めるよ!」
「了解です、マスター!」

 リーゼロッテが繰り出す次なる一手は、ノネットの行使する時間質量の限定制御だ。ナインス・ライン、バルタン、ルクレツィアの周囲の時間の流れを1/120に圧縮することで加速。一方TYPE[JM-E]の周囲の空間には120倍の拡張を行うことで減速させる。

「これでアタシらとTYPE[JM-E]の相対時間差は14400倍の開きが出来た……後はルクレツィアさん、仕上げを任せた!」
「任された……!」

 時間の流れを操作され、動きを事実上止めたTYPE[JM-E]。そこへ飛び込むのは通常の120倍の速度を得たルクレツィア。その手にはThe Answererの煌きがあった。

「これで機械仕掛けの熾天使を地に墜とす……!」

 ルクレツィアの剣術は対キャバリアに特化したもの。相手が自分より倍以上の大きさであれば、その剣筋はより冴え、鋭さを増す。如何に堅牢な装甲に身を固めた機体だろうと一切関係がない。何故ならば、ルクレツィアにとってのジャイアント・キリングは日常茶飯事だからだ。

 凄まじい速さと鋭さの剣捌きによって、TYPE[JM-E]は四肢を破壊され、翼をもがれ、何度目かもわからない墜落を始める。渾沌による再生も始まるが、蓄積されたダメージはあと一歩でTYPE[JM-E]の完全撃破を狙える所まで来ていることはわかっていた。その証拠に、時間操作が解除されてからも再生は緩慢に進んでいたからだ。

「しかし、まだ倒れんでありますか……」
「しぶといね、渾沌のやつは……」
「お互い、答えに殉ずるわけにはいかないっていうのに……!」

 3人があと一歩を決めきれなかったことを悔やむが、次の瞬間、TYPE[JM-E]とは別の、白亜の機体が姿を表すのを見た。

「ならば、私が終わらせましょう」
「……あの機体は!」

 バルタンが、その名を呼ぶ。

「アークレイズ……!」

●Amen, Amen, Gospel Amen
「この世界、そして執行者……ジェイミィ様、それが貴方の答えですか」

 白亜の機体、アークレイズ。その機体を操るのはジェイミィと同じウォーマシンであるダビング・レコーズ(RS01・f12341)。

(結局、こうなりますか)

 ダビングの思考回路の中には、拭うことが出来ないひとつの可能性があった。同じ猟兵であるジェイミィと、どちらかの撃破が免れない戦いを演じること。元々ダビングは銀河帝国軍の殲滅を最上級任務と規定されている。誰に命じられたかもわからない任務を、ダビングは粛々と実行していた。一方で、ジェイミィはかつて銀河帝国の機械兵士として戦っていた過去がある。すでに現在は銀河帝国は滅んでおり、ジェイミィも銀河帝国に対抗する立場ではあったが、その身に宿すAI、WHITE KNIGHTは元を正せば銀河帝国に連なるもの。彼と銀河帝国の繋がりは完全に切れたわけではなかった。

 故に、ダビングは感じていた。おそらく、いずれはジェイミィを倒さねばならぬ時が来る、と。それが今この瞬間なのだろう。

 2機は似ているようでどこまでも対照的だ。感情表現はコミュニケーションを円滑にするための演出であり、本質はどこまでも無機質なダビングと、まるで人間のように喜怒哀楽を顕にするジェイミィ。単騎での戦術行動が全てのダビングと、必要に応じて無人兵器を操り、多対多の集団戦も行うジェイミィ。同じウォーマシンでありながら、似てはいても本質は正反対の彼らは、ともすれば剣を交えるのは宿命であったのかもしれない。

「「システム、戦闘モード」」

 互いの声が重なる。戦闘機械同士の、幕引きを賭けた戦いがここに幕を開けた。アークレイズとTYPE[JM-E]は共にスラスターを全開にして空中へと飛び上がる。

 奇しくも、両者の狙いは同じだった。アークレイズのEMフィールドとTYPE[JM-E]の粒子フィールドは攻撃を受け続けることで減衰する。それぞれの整波性能は同等だ。故に、互いの防御手段の攻略は「攻撃の手数」「攻撃の命中率」「攻撃の威力」の3点に集約される。そうなると不利なのはアークレイズだ。

 ダビングは、TYPE[JM-E]に搭載されているWHITE KNIGHT、そしてスクルドシステムの2つによる未来予測こそが、TYPE[JM-E]の攻撃の高い命中率を実現していると分析する。命中率、即ち狙うための照準性能と当てるための誘導性能だ。そして高性能レーダーのPROVIDENCEが未来予測を行うための材料を提供していることは、すでに先行して交戦した猟兵たちが掴んだ情報である。ならば、回避行動よりも直撃を受けないことが重要となるだろう。「攻撃を当てる」という行動が確定されているのならば、その行動が齎す結果を「攻撃は当たった。しかし致命傷ではなかった」に留めることこそが肝要だ。

 故に、ダビングは回避すべき敵の攻撃を決め打ちした上で戦いに臨む。自身の撃破が必至となりうる攻撃のみを確実に回避し、それ以外の攻撃は基本的に防御する。

 TYPE[JM-E]が右手のCHESEDを斉射した。威力の高いビームが空間を薙ぐ。ダビングの優先順位としては最優先回避対象となるのがこの高出力ビームだ。TYPE[JM-E]の照準をぎりぎりまで引きつけた上で回避。しかし、見方を変えればアークレイズは動かされたとも取れる。その先に待っているのはソードビットのYESOD。マイクロミサイルのメテオリーテを斉射して迎撃しつつ、回避しきれない分はEMフィールドで受ける。多少のフィールドの減衰は承知の上。最終的にTYPE[JM-E]を撃墜するためには如何なる損耗も辞さない覚悟だ。今までも、そうやって任務にあたってきた。

「CHESEDおよびGEVURAHのエネルギー収束率、危険ラインを突破。接近する」

 TYPE[JM-E]がCHESEDとGEVURAHの出力を上げ始めた。圧縮粒子の奔流が飛んでくるに違いない。ダビングは即座に接近し、ルナライトを構える。もちろん、TYPE[JM-E]もこれを予測し粒子のチャージを中断。右手に装着されたプラズマブレード、CRESCENT MOONLIGHTを起動させると、光波を飛ばして迎撃する。ダビングはルナライトのプラズマキャノンを飛んでくる光波目掛けて射撃。空中でプラズマ同士が干渉し、弾かれるように両者は再び距離を取った。

 目まぐるしいまでの戦いだった。互いに殲禍炎剣の限界高度ぎりぎりを高速飛行しながら、どこにも逃げ場のない大空の下で複雑な軌道を描きつつ、付かず離れずの距離で攻防の応酬を続けている。生身の人間であれば間違いなく凄まじいGで耐えきれないほどの急加速・急減速・急転回を繰り返しながらの戦いは、最早他のキャバリア……否、生身の肉体を持つ猟兵ですらもついていけるかどうかわからない。

「高機動を得意とするウォーマシン同士の戦いか……」

 ルクレツィアは撤退先のファルマコンから、上空で繰り広げられる戦闘を見てただただ嘆息する。

「今、この戦場は完全にあの2機だけのものってことさね。割って入ったら怪我じゃ済まない。あの2機の無茶苦茶なマニューバは誰にも真似できない……」
「鋼鉄の戦場……マシンのみが上がることをを許される舞台でありますか」

 リーゼロッテも、バルタンも、そしてこれまでジェイミィと交戦し、撤退や退避を行った猟兵の全てが、上空で繰り広げられる凄まじい戦闘に目を奪われていた。誰も追いつけない。誰も介入できない。2機だけの戦場。そして、そのうち生き残るのはどちらか一方のみ。それがアークレイズであるという保証はどこにもなく、TYPE[JM-E]であるという保証もどこにもない。結末は、戦っている当人たち……未来予測が可能なジェイミィ、そしてその意思と同化している鴻鈞道人ですら見通すことができないのだ。

 戦場をただ見上げる猟兵たちの視線を他所に、アークレイズとTYPE[JM-E]はさらにギアを上げる。

「SSDスーパーチャージ、オン」
「Triple Seraphim Drive...Unchained Limit Completed.」

 システムアナウンスが同時に鳴り響くと同時に、アークレイズとジェイミィはついに音速を突破する。互いの機体がヴェイパーコーンを突き破り、音を置き去りにするほどの速度でさらに複雑な軌道を描く。慣性や加速時のGはこのレベルになると、いくらウォーマシンと言えども機体崩壊の恐れがある。2機がこれを可能としているのは、互いにこれらのGや慣性を無効化しているためだ。

 アークレイズは高威力、高貫徹力を誇るリニアライフル、ベルリオーズを斉射。照準を避けるべくTYPE[JM-E]は複雑な軌道を描きつつ、出力を極限まで絞ったCHESEDとGEVURAHで応戦する。ベルリオーズの弾体とCHESED及びGEVURAHの細かい圧縮粒子が空中で交錯し、双方のフィールドを減衰させていく。ここまではアークレイズのEMフィールドの損耗が上であったが、ここへきてベルリオーズのフィールド減衰能力がCHESEDとGEVURAHのそれを上回った。互いのフィールドが解除されたのはほぼ同時。一発の弾丸と、一発の圧縮粒子がそれぞれの装甲に当たり、両者の内部構造をむき出しにした。

 奇しくも、ダビングとジェイミィはそれをきっかけに攻撃をより激化させていく。至った思考は同一──フィールド再展開前にケリをつける。TYPE[JM-E]はYESODを大量展開してアークレイズを狙うが、アークレイズもまた大量のメテオリーテを発射した。空中に凄まじい数の火球が広がる。それこそが、TYPE[JM-E]とアークレイズの命運を分けたと言っても過言ではない。何故ならば、この瞬間PROVIDENCEの分析情報のうち、赤外線による捕捉情報が完全に切れてしまったからだ。

 アークレイズはついにTYPE[JM-E]に急速接近し、懐に入ることに成功する。これがTYPE[JM-E]を墜とす唯一のチャンスだった。ルナライトを構える。TYPE[JM-E]も即応してCHESEDとGEVURAHを投棄、CRESCENT MOONLIGHTを起動。二振りの月明かりの剣が交錯する。

 初撃は互いのプラズマの刀身が干渉し、ブレードを形成する力場が反発して両者を弾き飛ばす。プラズマブレード同士の剣戟だ。両者は返す刀で相手を両断するべく再度剣を振るが、これも同じ結果に終わる。空中での目にも留まらぬ剣戟が幾十合にも及ぶ。キャバリア同士の戦闘で、ここまでの長期の剣戟は他に類を見ない。互いのフィールドが再展開されるまでの時間は限られている。フィールドの再展開が果たされれば、泥沼のような消耗戦に突入するだろう。そうなる前に決着をつける。

 終わりの見えない剣戟。しかし、その決着の時はついに訪れる。ダビングがルナライトを構えてTYPE[JM-E]の胸部を貫き、TYPE[JM-E]もCRESCENT MOONLIGHTを突き出すようにしてアークレイズの腹部を貫いた。両者のエネルギーがついに切れたのか、糸が切れたかのように落ちていく2機。もつれ合うように互いの剣を突き刺した2機の白亜の機体は、大地に叩きつけられた。しかし、まだ浮いている存在がいる。

 その正体はダビングだった。とっさの判断で機体を捨てたのだ。一方、TYPE[JM-E]にはそれが叶わなかった。コクピットブロックを損傷し、内部の本体に致命的なダメージが入ったのだ。加えて、これまでの戦闘で蓄積していたダメージもあった。渾沌の損傷回復効果こそあったものの、確実にTYPE[JM-E]とジェイミィ、そして鴻鈞道人にボディブローのようにダメージが入っていた。

 2機の戦いの行方を、最早、祈るように見上げるのみだった猟兵たちは、一斉にTYPE[JM-E]に殺到した。

「早くジェイミィさんの救助を! ファルマコンで修復を試みるよ!」

 リーゼロッテが叫ぶ中、TYPE[JM-E]とジェイミィは、猟兵たちの手でファルマコンのドックへと担ぎ込まれたのであった。

●In the end
「──どうやら、終わったようですね」

 ファルマコンのドックで目覚めたジェイミィは、ついに自分が鴻鈞道人の影響下から脱したことを悟る。そこには、戦いを決着させたリーゼロッテ、バルタン、ルクレツィア、ダビングの4人がいた。

「やれやれ、手間がかかったよ……ブラックボックスだらけでまともに解析させる気が無いんだから、ジェイミィさんのカラダ。お陰でどうやって食事してるのかもわからず終いだし。奮発してもらうからね、治療費」
「いやはや、恐縮です」

 他の猟兵たちは、と尋ねると、ルクレツィアが答える。

「ボクもグリモア持ちだから……こっちのグリモアで別にポータルを作って、それでグリモアベースに帰還させたよ。一応、ジェイミィさんのグリモアのポータルが開いたままだから、ボクたちの帰還にはジェイミィのグリモアを使う」
「承知しました。では、帰還は私が。……ご迷惑をおかけしました」

 バルタンはその言葉を聞いて肩をすくめる。

「ま、ジェイミィ殿は時々無茶をします故、今回の事態もある意味予期可能デシタ。ただ、ひとつ撤回してほしいことがありマース」

 バルタンが懐から取り出したのは、空っぽの封筒だった。表面にはバルタンの筆跡で「退職届」と書いてある。バルタンはそれを目の前で真っ二つに破いてみせ、ニヤリと笑ってみせた。

「退職届は不受理デース! 理由はもちろんおわかりでありますな?」
「……不適切な退職事由ですね。こんなことなら『一身上の都合により』で済ませておくんでした」

 ははは、と笑うジェイミィ。

「私も貴方ならば、同じことをしていた。同じく自分の答えに殉ずるために行動を起こしていたでしょう」

 ダビングはジェイミィにそう声をかける。ダビングが鴻鈞道人によってコントロールされ、ジェイミィがそれを食い止めていたということもありえるだろう。全てはIFの世界だ。そして、どちらが正しい歴史となるのかも神のみぞ知る。

「その意味では、やはり我々、根っこは似てるんでしょうなぁ」
「感情の有無は大した差異では無いと当機は判断します。その意味では、やはり我々は同じウォーマシンです」
「ダビングさんにもご迷惑をお掛けしました。骨が折れたでしょう、私を墜とすのは」
「当機のフレーム構造は健在ですが、アークレイズのフレームに損傷があったことは確かです」

 冗談とも本気ともつかないやり取りに、リーゼロッテがいたずらっぽい笑みを浮かべる。

「そう言えば、アタシのナインス・ラインも今回の戦闘でオーバーホールが必要になったかもなー」
「あっ、マスター今すごく悪い顔してます!」

 ノネットがその指摘を受けて氷点下の視線を向けた。イリスが「ナインス・ラインの整備なら私が」と言いかけて背後からヘリオに口をふさがれ、藻掻いている。

「ついでにうちのスコールもメンテが必要デース」
「戦闘に持ち込んでないよね」
「あーあー聞こえまセーン」

 ここぞとばかりにバルタンが乗っかる。ルクレツィアが鋭いツッコミを入れるも、バルタンは耳をふさぐジェスチャーで誤魔化した。

「……はいはい、わかりました。帰還したら今回の戦闘に参加された皆さんのキャバリアをお預かりしましょう。無償修理・点検サービスを請け負いますよ」

 観念したようにジェイミィは両手を挙げ、そして端末を起動する。渾沌の地を訪れた猟兵たちは戦いを終え、全員が無事の帰還を果たすのであった。

 そして、後日。

 猟兵たちのキャバリアは、ジェイミィの寝ずの整備により、全て新品同様で修理と整備が行われた。多くのキャバリアの無償整備によって、Bradyback's Worksの部品在庫を心配する声もあったが、奇妙なことに、Bradyback's Worksの帳簿上では部品在庫状況にさしたる影響がなかったのである。

 もしかしたら、ジェイミィはこうなることまで予期していたのだろうか。ジェイミィにこの事を聞いた猟兵がいたが、ジェイミィは「何事も備えです」とだけ語ったのみだという。

 ともあれ、こうして猟兵同士による死闘は、一人の犠牲者も出すこと無く幕を閉じたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月08日


挿絵イラスト