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殲神封神大戦⑰〜Dolls

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』

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#渾沌氏『鴻鈞道人』


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●See you again at the Ends of the World.
「殲神封神大戦で忙しい中、集まってくれてありがとう」
 グリモアベースの片隅で。猟兵達が集まったのを認めると、鈴・月華(月来香・f01199)は口を開いた。
「仙界の最深部にある「渾沌」の場所に、自分を『骸の海』と自称する『鴻鈞道人』っていう敵が現われたんだ」
 月華が鴻鈞道人を『オブリビオン』ではなく、『敵』と言ったのは。鴻鈞道人はオブリビオンではないからだ。
 それがどういうことなのか、詳しくはわからないと。月華は申し訳なさそうな顔を見せる。
「今回、あなたたちにはその鴻鈞道人と戦ってもらうことになるのだけれど……。んと、転移されたら……」
 猟兵達から視線を逸らし、月華は言い淀む。
「……そこには私が居る。ええと、正確には、鴻鈞道人と融合した私が」
 それは一体どういうことなのか。

「どうもね、渾沌の地に転移させたグリモア猟兵を瞬時に呼び寄せちゃうみたいで」
 それはどうしても避けられぬ事象だと月華は言う。呼び寄せた鴻鈞道人は、瞬時に月華の体内に潜り込み、融合してしまうのだそうだ。
「だから、私を倒して」
 鴻鈞道人は強敵であり、仮に月華と何らかの繋がりがあったとしても、一切有利に働かない。
 ただひたすら、力尽きるまで戦うしかなく。手加減を許すことも出来ない。
「手加減なんかしたら確実に刈り取るから。全力でね」
 残念なことに現時点で鴻鈞道人を完全に滅ぼす方法は見つかっていない。しかし撤退に追い込むことは出来る。
「んー、多分私は大丈夫だから。あなたたちは全力で倒しにかかってくれればいいよ」
 荒事には慣れているから、と。月華は小さく微笑んで見せる。
「あなたたちなら、きっと出来るって信じているから。それじゃあ、また」

●So now laugh.
 遮るものが何も無い、闇色の世界。さまざまなものを形作ることが、出来ていない世界。
 どこからが天で、どこからが地なのか。境が見えずはっきりとしないが、足がついている場所は地だろう。
 世界には満月が浮かんでいた。その光で、辺りは薄ぼんやりと明るく感じる。
 そも、あの月は本物か? そんな疑問が浮かぶだろう。
 だが、月としか形容できぬその下には。
 大鎌を手にした娘が、佇んでいた。


雪月キリカ
 お目にとめていただき有難うございます。はじめまして、もしくはまたお会いしました。雪月です。
 ……なんなんだろうこのオブリビオン。

 ※このシナリオに参加する猟兵は、シナリオ開始時点で既に転移されていたものとします※
 今回は自らを【骸の海】と自称する謎の敵、『鴻鈞道人』との戦いになります。
 鴻鈞道人は転移を担当したグリモア猟兵を自身のもとに呼び寄せ、瞬時に融合します。
 でもって融合した鴻鈞道人の膨大な力によって『渾沌の諸相』を身につけたグリモア猟兵が、猟兵達に襲い掛かります。
 鴻鈞道人は強敵です。仮にグリモア猟兵と何らかの繋がりがあったとしても、一切有利には働きません。ご注意。
 ひたすらに、鴻鈞道人が力尽きるまで戦うしかないです。加えて、手加減をすることも出来ないです。これもすごく大事です。手加減したらザックリやります。

 プレイング受付は1/23の8時31分からとなります。
 やや難ですので、それなりには見ます。
 なのでプレイングの内容によっては流れます。全採用の確約は出来ません。その点ご了承ください。

 シナリオにはプレイングボーナスがございます。

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 プレイングボーナス……グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する。

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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「殲神封神大戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーヴァルディ・カーライル
…手加減無用と言うならば、その通りにしましょう。だけど心しなさい

…例え異物が混じっていたとしても貴女がダンピールである以上、
吸血鬼狩りの業から逃れる術は無い事を…

今までの戦闘知識から大鎌の攻撃動作を見切り、
第六感が捉えた敵の殺気や気合いからUCの発動を先読みし、
「写し身の呪詛」の残像を囮に攻撃を受け流しUCを発動

120体の分身で敵を包囲し「精霊結晶」を乱れ撃ちする集団戦術を行い、
"過去を世界の外側に排出する自然現象"のオーラで防御を無視し、
肉体を傷付けず過去の存在のみを浄化する世界属性攻撃を放つ

…お前が過去の集積体である以上、世界の理からは逃れられない

…乾かず飢えず、あるべき居場所に還るが良い



●will
 音すら吸い込まれそうな闇色の中、先に動いたのは月華の方だった。月華は一瞬でリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の懐に潜り込むと、大鎌を振るいリーヴァルディの首を斬り落とさんとする。
 リーヴァルディは寸でのところでマスケット銃を盾代わりにし、何とか受け止め攻撃を凌いだ。銃を介して腕に重い衝撃が伝わる。
 月華は鴻鈞道人に融合され、その膨大な力によって『渾沌の諸相』を身につけている。
 先手を取る相手に対して、自身の経験や感覚に頼る策だけでは不十分だったのだ。
 それだけでは相手の動きは読めても、止めることは出来ない。攻撃を受けた際にどうするかということも考慮すべきだった。
 だが起きたことはどうしようもない。大事なのはここからどうするかだ。
 手加減するなと言われたが、本当にそうしなければ自身が追い込まれるのが目に見えた。
「……手加減無用と言うならば、その通りにしましょう。だけど心しなさい」
 突如現れたリーヴァルディの分身が、銃口を月華に向け取り囲む。その数は120体にも及び、それを受けた月華はその場から飛び退き離脱せんとする。
「例え異物が混じっていたとしても貴女がダンピールである以上、吸血鬼狩りの業から逃れる術は無い事を……」
 だが包囲されている以上、月華に逃げ場は殆ど無かった。分身たちのマスケット銃から乱れ撃たれた精霊結晶は、月華の身体を貫く。
 声をあげることは無かったが、月華、いや、鴻鈞道人は顔を歪ませているように見えた。
「……お前が過去の集積体である以上、世界の理からは逃れられない。……乾かず飢えず、あるべき居場所に還るが良い」
 リーヴァルディから放たれた浄化の攻撃が、月華を包み込む。

成功 🔵​🔵​🔴​

推葉・リア(サポート)
色んなゲームで推しキャラを育成して愛でるのが好きな妖狐

基本的に人がいいので命や心を大事に行動し相手の心に寄り添おうとする、例えそれが敵であっても(倒すときはしっかりと倒す)
あと結構関係のないことも考えたりもしたりもするがやるときはやる

各ゲームの推しキャラ達の召喚と狐火を使う戦闘スタイル
基本的には推しキャラ達が戦い自分は狐火での後衛攻撃やサポートに回ることが多い
状況によっては相手の属性や戦闘スタイル又は戦場に有利な推しキャラの選んで喚ぶ
推しキャラが動きやすいように自分を囮にすることも
推しキャラを呼ぶと不利又エログロ場面になりそうなら絶対に喚ばない自分だけで戦う

共闘OK
過剰なエログロNG


月夜・玲(サポート)
『さてと、I.S.T起動。お仕事お仕事。』
口調 元気(私、~君、だね、だよ、だよね、なのかな? )


お仕事ついでに研究も出来るんだから、この仕事良いよねぇ
さあ、私の研究成果の実験台になってもらうよ

模造神器という独自の兵器開発を生き甲斐とする研究者
誰にでも気さくに砕けた口調で話しかける
戦いは全て研究の為、楽しみながら戦闘を行う
全ては研究の為、研究と戦闘を楽しめる猟兵生活は結構気に入っている
戦闘スタイルは4本の模造神器から2本を選び、二刀流で敵と戦う形です
UCで遠距離戦闘にも対応したSF剣士

日常ではのんびりと景色を楽しんだり風情を楽しんだり
冒険では考察しながらじっくり進む

あとはお任せ!




 浄化されようと、まだ鴻鈞道人はグリモア猟兵と融合したままだった。身体が動く限りは使う気でいるのだろう。
「お仕事ついでに研究も出来るんだから、この仕事良いよねぇ」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は軽く笑う。グリモア猟兵の背から翼が生え、服の袖から触手が顔を出そうと、その笑みは崩れなかった。
(「……よし、今回は私だけで頑張りましょ!」)
 触手を認めた推葉・リア(推しに囲まれた色鮮やかな日々・f09767)は、心の中で決意する。推し達を絶対、あれに触れさせてたまるものか。


 グリモア猟兵が手を猟兵たちへと向ければ。袖から顔を覗かせていた触手が素早く飛び出す。
「さあ、私の研究成果の実験台になってもらうよ」
 玲は『空の記憶』と『Blue Bird』の二振りを手にすると、迫り来る触手を叩き切る。
 戦うことは全て研究のため。データが得られるのは喜ばしいことだと、玲は至極楽しそうだった。
「近付くなら燃やしてあげるんだから!」
 色とりどりの鮮やかな狐火を召喚し、迫り来る触手へと放つリア。狐火が命中した触手は、ただただ灰へと還ってゆく。
「背中の翼は飾りなのかな。飛んでくる気配が無いね」
 翼は飛ぶための器官であるのに飛んでくる気配が無いことから、そんな言葉が玲の口をついて出るも。その疑問はすぐに解決されることとなった。
 何故なら翼が異様なまでに肥大化し、猟兵たちを叩き潰さんと動いたからだ。
「そういうのはチートって言うのよ」
 リアがすぐさま反応し、狐火を一気に嗾けた。複雑で美しい軌跡を描きながら、翼を集束点として狐火は舞う。翼に接近するにつれ狐火は寄りあい、巨大化し。そして翼を飲み込み焼き切った。
「成る程、叩き潰すための器官だったのか」
「関心を引かれてる場合?」
 子供の様に目を輝かせたに玲に、リアがツッコむ。
「大丈夫、まだ研究成果の実験はしてないからね。……さて、ここからでも届くはず」
 両手に握る二振りを、交互にグリモア猟兵へと振るう玲。
 刃を避けるためにグリモア猟兵は飛び退るが、刀身は届かなくとも斬撃は衝撃波となり、グリモア猟兵の身体を斬り裂く。
 間髪入れず、次から次へと玲から放たれる衝撃波に斬り裂かれ。グリモア猟兵の顔を使う鴻鈞道人は、苦悶の表情を見せていた。

 しかしいくつもの攻撃を受けても、まだ鴻鈞道人が力尽きることは無かった。だが2人は鴻鈞道人の体力を確実に削り取っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木元・杏
まつりん【祭莉・f16554】と

満月…、そして、月華
ううん、月華ではなく鴻鈞道人
月華も言ってた、大丈夫だから全力でいけと
その言葉を信じる(真の姿解放して瞳が青へ

大鎌に対しわたしは幅広の大剣にした灯る陽光を
道士の白の強化からの攻撃、回避は難しい
攻撃タイミングを第六感と今迄培った戦闘知識で読み取り
盾を振り上げるように大剣を前に構え武器受けを狙う
押されても怪力で堪える!

月華は色んな予知をして、色んな場所へと案内してくれた
これからだって案内してくれる
声掛け、戦闘に有利にはならなくても
月華にはきっと届く、届け
大丈夫、道士をぶっ倒して月華を解放する

【花魂鎮め】
高速移動で道士を惹き付け、まつりんの接近のサポートを
地を蹴り高くジャンプ、月あかりを背にした位置から大剣を振り切り斬撃を

月華から出ていけ

確実に倒す事が出来たなら、事後に月華の手当てを


木元・祭莉
月華姉ちゃんには、よくお世話になってるから。
連れて行かせるワケにはいかないんだよね!

長期戦に持ち込まれるとヤバい。
翼には綾帯を巻き付け、触手には花冠を投げ付け、刃には如意な棒で弾き飛ばして対抗。

月華姉ちゃんのキレイな髪が異形化して襲い掛かってきたら。
キレイな瞳が血の涙を流していたら。

それまでは伏せていた視線を上げて。夜空を見上げる。
あぁ、満月だ……血が沸き立つのがわかるよ。
それじゃ、アンちゃん。後はヨロシクね!

人狼の本性と同時に、真の姿を解放。
理性を手放して気迫を前面に出し、ダッシュで迫る。
大鎌の狙い澄ました一撃は、踊るように体勢を低くして間一髪で往なし、懐へ潜り込み。

野生の勘で致命傷を避け、激痛耐性下で体当たり。
至近距離からのカウンター灰燼拳で、暗器のガードごと打ち砕く!

渾沌氏、満足したか?
これが、キミの見たがってた猟兵の姿さ!



●過ぎ去ったもの
「満月……、そして、月華」
 木元・杏(焼肉処・杏・f16565)は天上を見上げる。浮かぶは満月、その下で傷だらけになりながらも立ち、大鎌を手にするは月華。
(「ううん、月華ではなく鴻鈞道人」)
 見た目は月華でも、今は鴻鈞道人と一体となっている状態で。その精神、心は月華ではない。
 此処に送り出す前に、月華は言っていた。大丈夫だから全力で行けと。
 その言葉を信じ、鴻鈞道人をキッと睨みつける杏の瞳は。黄金色から青色に変化していた。

●現に実っているもの
 月華の背と側頭部から、新たな白い翼が生え出ずる。服の袖から覗く触手は大鎌を掴み、何があっても手放さんとしているようだった。
 地を蹴った月華は瞬時に杏との距離を詰めると、一息に両断せんと大鎌を振りかぶる。
 杏はそのタイミングを直感と今まで培った経験で読み取って。幅広の大剣へと象らせた『灯る陽光』を前に構え、大鎌の刃を受け止めた。
 暖陽の彩がぱっと散り、腕にじん、と。痺れるような衝撃が走る。
 はじめから杏は、大鎌の斬撃を躱せるとは思っていなかった。それならば、はじめから受け止めてしまえばいいと判断したのだ。
 ぎりぎりと鍔迫り合いする大鎌と大剣。衝撃に吹き飛ばされることなく堪え、それどころか徐々に押し返してくる杏の怪力に。月華の身体を使う鴻鈞道人は目を見開き、数歩飛び退る。
「月華は色んな予知をして、色んな場所へと案内してくれた。これからだって案内してくれる」
 この声が戦いの役にも立たなくても、きっと届くと。届けと杏は願うのだ。
「お前も、この娘も。いずれ土塊に還る。それはすぐかも知れぬというのに」
 月華の服の袖から新たな白い触手が伸びる。だが触手は杏に触れる前に、飛んできた何かにより斬り裂かれる。
「月華姉ちゃんには、よくお世話になってるから」
 それは杏の双子の兄である、木元・祭莉(マイペースぶらざー・f16554)が投げた『仙人花冠』だった。
「連れて行かせるワケにはいかないんだよね!」
 触手を切断され、鴻鈞道人が一瞬気を取られている隙に。間髪入れず祭莉は『天地の綾帯』を月華の背の翼に巻き付ける。
「アンちゃん、大丈夫!?」
「大丈夫、道士をぶっ倒して月華を解放する」
 祭莉が気に掛ければ、杏は頷いた。あまり月華と近すぎると不味いと判断した双子は、視線を月華に定めたまま一旦距離を取る。
 追いすがるように白い刃が向かってきたが、祭莉が『如意みたいな棒』で杏を庇うようにしながら弾き飛ばす。世界がまだうまく定まっておらず、躓くような障害が地に無いのは幸いだった。
(「長期戦に持ち込まれるとヤバい」)
 消耗戦となったら。体力のある相手に軍配が上がるだろうという予想が、祭莉の脳裏を過ぎる。
 その時ぶわりと月華の髪が広がって。動かせぬ背の翼の代わりなのか、新たに翼となった。それは次第に肥大化していく。
 表情の無い月華の瞳から、赤い雫が伝っていることに祭莉は気が付く。それは肉を破った渾沌の代償によるものと、分かっていても――。
「あぁ、満月だ……血が沸き立つのがわかるよ」
 天上を見上げる祭莉。そこにあるのは月、それも人狼の本性が解放される満月だ。祭莉の跳ねた短髪が腰下まで伸び、伸びた分の髪が銀色に煌めいた。

●未だ来ぬもの
「それじゃ、アンちゃん。後はヨロシクね!」
「ん、まかせて」
 いつものように太陽の笑顔を杏に見せると、祭莉は荒々しく飛び出していった。その姿に理性という枷はない。
 肥大化した翼が動き、迫り来る祭莉を打ち据えんとするも。本性が解放され研ぎ澄まされた祭莉の勘が、上手く翼を躱す。
「よそ見、禁物」
 はっとした鴻鈞道人が、声のした方へと視線をやれば。白銀の輝きを纏う杏が、灯る陽光を手にしていた。鴻鈞道人は意識を祭莉へと向かせていたために、杏の接近に気付けなかったのだ。
 白銀の花弁を舞い散らせ、杏が得物を振れば。衝撃波が放たれ、月華の身体を深く斬り裂く。
「月華から出ていけ」
 まだ攻めの手は終わらないと言わんばかりに、杏は強く地を蹴り高く跳ぶ。月明かりを背負い、握る大剣を大きく振り上げて。
 祭莉を狙っていた翼が、月華の身を庇うために素早く引っ込むと交差し盾となる。それでも構わず、杏は落下ざまに思い切り大剣を振り切った。
 とっておき、召し上がれ。
 衝撃波と斬撃。ふたつの攻撃を受けた翼は断ち切られて地に落ちる。落ちた翼はどろりと溶け、消えた。
「アンちゃんが言ってたよね。よそ見は禁物だって」
 翼が無くなり綺麗に開けた視界には、杏ではなくニヤリと笑い迫る祭莉がいた。杏は攻撃した直後、反動を利用し月華から距離を取っていた。
 祭莉を狩るべく、大鎌が真横に振るわれる。祭莉は舞うようにして身を低くすると、間一髪のところでそれを躱す。
「あぶなっ!」
 それでも足を止めず、祭莉は素早く月華の懐へと潜り込むと体当たりを喰らわせる。
 よろめきながら鴻鈞道人は、この距離では大鎌は不利と手放した。そしてぐっと握られる祭莉の拳を認め、暗器の詰まる袖を盾とし自身を庇う。
 不敵に祭莉は笑む。この距離ならば、外さない。
 超高速の拳が、月華の身体に叩き込まれる。渾身の一撃は暗器の守りすら打ち砕いて、月華を遠くに吹き飛ばした。
「渾沌氏、満足したか? これが、キミの見たがってた猟兵の姿さ!」
 地に叩き付けられた月華はまだ立ち上がって来たが、満身創痍を通り越すほどのダメージ量に、立つのがやっとのようだった。
「望むものを見ることは叶わず……ここは退くことにしよう。だが時が運ぶ限り、過去は常に在り続ける。そして……全ては土へと還るのだ」
 この身体はもう使い物にならぬと判断した鴻鈞道人が、そう言い終えるや否や。月華は糸が切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。

●目が覚めないと帰れないっていう
 鴻鈞道人は本当に撤退したのだろう。月華は地に伏したまま、全く起き上がる気配が無かった。
 祭莉と杏はそろりと月華に近付いて、その様子を窺う。意識はないが呼吸はしていた。とりあえず命に別状は無いのだろうが、手当をするに越したことは無い。
 双子は出来る範囲で処置をして、月華の目覚めを待つことにした。

 過去は常に在り続ける。過去なくして未来は無い。
 過ぎ去ったものは変えられないが、未だ来ぬものはよいものへと変えることが出来るはず。
 誰もが過去を持っているのだ。それはきっと、よき未来への糧となる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月28日


挿絵イラスト