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殲神封神大戦⑪〜瑞獣載霊殿の黄金巨人化を阻止せよ!

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑪ #『王翦大将軍』

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#『王翦大将軍』


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 封神武侠界の果て『楽浪郡(らくろうぐん)』は、神隠しによって多くの人が異世界から飛ばされてくるという不思議な土地で、それ故に、これまでもそうした異世界人との交易や勧誘の場として知られていた。
 だが今では、始皇帝の配下(青龍の瑞獣)であった『王翦(おうせん)大将軍』に占領されており、その住人たちの中から新たな始皇帝の兵馬俑になりうる肉体を求めるべく虐殺が行われているのだ!
(なんと、始皇帝の正体は『増殖する水銀』であり、本来なら知能も肉体も不要であるが、覇王たる信頼を得るために人型の肉体が必要なのだ!)

「へーかの新しい兵馬俑になり得る覇王の相の持ち主……つまり、倫理観が終わってて、断言癖がスゴいやつはいないかなぁ~っ?」
 王翦はグリードオーシャン世界のような街並みの区画で下っ端海賊を嬲り殺しにしては、新たな覇王の器を探していた。
 しかし海賊たちは屈強な将であっても、なかなか覇王になり得る資格を持つ者がいなかった。
「う~ん、だめだこりゃ! 仕方がない、ここは『瑞獣載霊殿(ずいじゅうさいれいでん)』を使おう!」
 王翦が天へ右手をかざすと、突如として空飛ぶ黄金の巨大宮殿が出現した!
 その宮殿の上には『黄金の数字』が浮かび上がっており、時間経過とともに徐々に数が減っているようだ。
「んー、11くらいで十分かな? よし! あっしもそろそろ宮殿内部へ行こっと! 猟兵達が来るだろうけど、宮殿内部の構造が絶えず変化するなんて思わないだろうし、あっしは絶対先制攻撃を撃って逃げての一撃離脱戦法で時間を稼いでいるだけで勝てるもんね!」
 その言葉通り、黄金の巨大浮遊宮殿は、数字が減る度に人型へと変形し続けていった……。

 この予知をグリモアから投影し終えた蛇塚・レモン(白き蛇神憑きの金色巫女・f05152)は、招集に応じてくれた猟兵たちへ、今回の任務について伝達し始めた。
「まず最初に言っておくけど、あの空飛ぶ巨大な黄金宮殿の上に浮かぶ『黄金の数字』がゼロになったら、あたいでも何が起こるか分からないよ……きっと、ろくな事は起きないだろうし、間違いなく猟兵のみんなに危険が及ぶと思うよ。だから、興味本位で『数字がゼロになるまで待つ』なんて考えないでねっ!?」
 それは宮殿が黄金の巨人へと完全に変形し終えることを意味する。
 そうなればまず被害に遭うのは楽浪郡に住まう異世界からの流浪の民たちだ。
 好奇心から多くの人々を危険に晒すような真似は止めるように、とレモンは釘を差した上で、討伐対象の『王翦(おうせん)大将軍』の戦闘傾向を予知した。
「とにかく、王翦は絶対先制攻撃をぶっぱしたら即逃げてゆくっぽい! 宮殿内部が絶えず変形しまくってるから、なかなか追いつくことが出来なかったり、死角から奇襲される可能性があるよっ! けど、それは敵にもリスクがあって、逃げた先が行き止まりになったり、放ったユーベルコードが宮殿内部に運良く阻まれたり……宮殿の変形を先読みできれば、優位に此方が戦えるはずだよっ!」
 問題は、どうやってその先読みをするか、なのだが……。
「ごめんねっ! そこは各自に任せるよっ! 生命の埒外の猟兵なら、あっと驚く方法で先読みできるはずだよっ! だからみんな、頑張ってねっ!」
 レモンの頭上のグリモアが輝くと、猟兵達は瑞獣載霊殿へ転送されてゆく。
 果たして、謎のカウントダウンがゼロになる前に王翦大将軍を討ち取って、宮殿の変形を阻止できるのだろうか……!?


七転 十五起
 まさかまさかの、始皇帝復活フラグ!
 それに加えて、謎のカウントダウンと黄金巨人も……?
 なぎてんはねおきです。

●プレイングボーナス
 変形する宮殿を利用して敵の先制攻撃に対応しつつ、制限時間内に王翦を倒す。

●補足説明
 このシナリオで王翦が呼び出すオブリビオンは、グリードオーシャン由来の集団敵を想定しています。
 また🔴の数だけカウントダウンが進みます。
(つまり、大成功判定ならカウントダウンが進みません!)
 最初は『11』から始まりますので、ソロ描写よりも連携を意識したプレイングを推奨します。
(そのため、連携のためのオーバーロード投稿も大歓迎です)

 更に、宮殿の変形の先読みについて、単に『宮殿を調べる』だけでは失敗します。
 どのような方法で先読みをするか?を明確に書いていただければ、更に有利に立ち回れるでしょう。

●その他
 コンビやチームなど複数名様でのご参加を検討される場合は、必ずプレイング冒頭部分に【お相手の呼称とID】若しくは【チーム名】を明記していただきますよう、お願い致します。
(大人数での場合は、チームの総勢が何名様かをプレイング内に添えていただければ、全員のプレイングが出揃うまで待つことも可能ですが、その際はオーバーロード投稿を推奨します)
 なお、本シナリオは全てのプレイングを採用できない可能性があります。
 予めご了承くださいませ。

 それでは、皆様の創意工夫を凝らしたプレイング、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『王翦大将軍』』

POW   :    王翦異界混成軍
レベル×1体の【異世界オブリビオン兵団】を召喚する。[異世界オブリビオン兵団]は【出身世界】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    王翦奇兵用兵術
いま戦っている対象に有効な【ユーベルコードを使う新たなオブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    王翦龍神変異軍
召喚したレベル×1体の【オブリビオン軍団】に【龍の角と尾、翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユニ・バンディッド
アドリブ歓迎
基本は自慢の視力で宮殿変形や敵の動きを先読みしていくよ。視界確保に空飛ぶ金貨達の鏡面反射も利用しちゃお。光には要注意だね!
まだまだボクは贋作の悪魔!
精巧な贋作生成のため構造把握力・武器改造の要領で変形や王翦の逃亡妨害するよ。
そのための【エスケープ】、ボクも逃げるが勝ち!。ぁ、手が滑っちゃった。
・王翦や呼び出された敵の持ち物を盗み、避けては逃げる。
・閉じたりしそうな変形兆候先へ盗んだものを投擲して敵を釣る。
敵の動きを誘導妨害していくね!持ち切れない位に盗んでも収納の魔術カードの中にどんどん詰め込んで。
味方の元へ誘い込み騙し討ちだー!だってボクはあくまで盗賊、これがお仕事だもん。


ガーネット・グレイローズ
王翦将軍、貴様が海賊達をやったのか!…ってもう逃げた。待て!

とりあえず奴の気を辿って宮殿の奥を目指すが、オブリビオンが襲ってくるだろう…退けながら進まないと。「メカたまこEX」を放ち、《闇に紛れる》機能で先行させて内部を《撮影》《情報収集》させる。飛行できる敵に対応するため、こちらも【グラビティマスター】を使って《空中戦》だ。スラッシュストリングを《念動力》で操り、龍の翼を削ぎ切って機動力を奪い、クロスグレイブの《レーザー射撃》でトドメを。絶えず変化する宮殿は、たまこの映像を元に分析、《瞬間思考力》で素早くルートを選択するぞ。
王翦将軍、覚悟!素早く距離を詰め、《功夫》による拳打で彼女を攻撃!



 空を飛ぶ瑞獣載霊殿の中へ転送された猟兵たち。
 早速、なにやら怪しげな呪文を唱えながら儀式を執り行う王翦大将軍の姿を発見した。
「げっ! 猟兵達がもう此処まで来たの?」
「逃さないよ! 覚悟しろー!」
 ユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)はおうごんの壁に手を当てると、自身の贋作創造能力で一振りのダガーを生成してみせる。
 ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)も巨大な十字架を模した形状の携行型ビーム砲塔デバイス『クロスグレイブ』を起動させて身構える。
「王翦将軍、貴様が海賊達をやったのか! ……ってもう逃げた。待て!」
「待てって言われて、おとなしく待つ奴が居るわけないよね!」
 青龍の下半身で器用に壁を蹴って、宮殿内部を立体的に駆け抜ける王翦。
 途端、目の前の通路が壁で封鎖されてしまった!
『この瑞獣載霊殿は黄金の巨人へと変形中! 残念だけど、迂回しないとあっしは捕まえられないよ~?』
 壁の向こうで勝ち誇る王翦。
 やむなくユニとガーネットは協力して王翦を追うことにした。
「何処から変形するか分からないなら、それを予測するまでだよね!」
「ああ、此方も情報収集に努めよう」
 ユニは自身の権能の一部である空飛ぶ金貨(偽金)を周囲に放ち、鏡面の代わりとして通路の影を此方へ映し出した。
「あっちはもう通路が塞がっちゃう。逆にこっちは新たな道が開けたみたいだよ!」
「こちらも周辺のマッピングは把握した。放ったメカたまこEXのおかげだ」
 ガーネットが放ったニワトリ型ドローンが先行することで、通路の安全と偵察を同時に行ってる。
 更にガーネット自身が王翦の気配を探りつつ、王翦が先制攻撃ユーベルコードとして召喚したオブリビオン軍団が何処に居るのかまでメカたまこEXに感知させていた。
「ユニ、左方向から敵多数接近中だ。これは、サメなのか?」
 隠密モードのメカたまこEXのカメラアイには、龍の角と尾、それに翼が生えたサメの群れが空中を回遊している光景を捉えていた。
「グリードオーシャン由来の集団敵を召喚すると聞いていたが、まさか海賊ではなくサメの怪物だとは……」
「どうする? 迂回する? なんならこの通路を封鎖してみるけど?」
「……出来るのか、ユニ?」
 ユニの言葉に耳を疑うガーネット。
 黄色い悪魔はニッコリと微笑むと、黄金の壁に手を当てて念じる。
「まだまだボクは贋作の悪魔! この瑞獣載霊殿が王翦の武器や所有物だって言うなら、贋作を作れない道理はないよ! 完全複製は無理でも、壁の一枚くらいなら!」
 空飛ぶ金貨が通路へ結集すると、それはたちまちサメの群れを遮る壁へと変化したではないか!
「材料なら周囲の壁からいくらでも生成できるし、あの金貨たちは役目を終えたら勝手にボクの懐へ転移してくるからね!」
「なるほど、便利なものだな」
 ガーネットは感心してみせるが、ユニはまだまだこれからが本番だと指を振る。
「ここからは王翦との鬼ごっこと洒落込もう! ――鬼だらけの戦場に、微風が吹き抜ける。狗盗の風車。北も南も。東も西も。巡り盗って嗤う、逃げるが勝ちさ♪」
 途端、外部から隔離された宮殿内部に一陣の風が吹き抜ける。
 すると、ユニの身体は羽が生えたように身軽になり、目にも留まらぬ速さで通路を駆け抜ける!
「早く早く! 王翦がいるのはこっちでいいの!?」
「あ、ああ! 私もすぐ後を追う! いまこそ封神武侠界で修行をした成果を見せてやろう!」
 ガーネットは空飛ぶサメに対抗するべく、ユーベルコード『グラビティマスター』にて重力制御を行い、仙人の飛空術を再現する。
 その最高速度は時速595kmまで達し、あっという間にユニの隣へ並び立った。
「見つけた! 王翦、追い詰めたよ!」
 ユニは背中から吹き付ける狗盗の微風を受け、王翦へと飛び込んだ。
 しかしユニを待ち構えるのは、マスケット銃を身構えた海賊オブリビオン軍団だった。
「君の弱点は『閉鎖空間での高密度の弾幕』みたいだね! そのまま蜂の巣になっちゃえ!」
「させるか!」
 ガーネットは液体金属の翼『ブレイドウイング』を硬質化させ、ユニを庇おうとする。
 だが彼女のもとにサメの大群が押し寄せる!
「おねえさんはサメと遊んでてね!」
「しまった! ユニ、伏せて損傷を最小限にするんだ!」
 ブレイドウイングでサメの群れの突撃を受け流して回避したガーネットが叫ぶ。
 しかし、ユニは構わず弾幕の嵐の中へ突っ込んだ!
「ボクは贋作の悪魔にして魔界盗賊! この程度の弾幕を“盗む”なんて朝飯前の楽勝だよ♪」
 懐から取り出したカードを前方にばらまくユニ。
 すると不思議なことに、カードを撃ち抜いたはずの弾丸が消失してしまうのだ。
 これに王翦が目をこすって二度見した。
「嘘でしょ!? あのカード、まさか銃弾を収納してるの!?」
「あれ、バレちゃった?」
 薄くなった弾幕をひょいひょいと回避し続けるユニ、遂に王翦の手前3mまで接近!
「こうなったら、あっしの青竜刀で!」
 接近してきたユニを王翦は黒い青竜刀を横薙ぎに払って迎撃を試みる。
 しかし、それすら胡蝶のように舞うユニはひらりと回避してみせると、そのまま飛び上がって王翦の頭を思いっきり踏みつけた!
「ぁ、手が滑っちゃった。じゃなかった、足が出ちゃった!」
「なにするのさ! ってやば、もうすぐ此処も変形しそう……!」
 地鳴りする通路に王翦は闘争の構え!
 だがすかさずユニは盗んだ弾丸を王翦へ向けて解き放ち、弾幕を展開させて反撃開始!
「行かせないって言ってるよね!?」
 ユニは弾幕を操作して王翦の行動範囲を制限して追い込む。
「いてててて! ならこっちへ逃げるだけだよ!」
 ユニの放つ弾幕から逃れるべく、出現した小道へ飛び込む王翦。
 しかし、前に進もうとした自身の体が突然切り刻まれて仰天する。
「いったーい! 今度は何~!?」
 自身の皮膚を裂いた物を凝視すると、それは鋭いブレードワイヤーが念動力で行く手を遮っていた。
「それは私のスラッシュストリングだ。その翼と足、削がせてもらうぞ!」
 鋭い鋼糸の刃は、宇宙世界で暴れる凶暴な宇宙怪獣の肉体さえ切り裂く!
 危険を察知した王翦が身を翻すが、周囲にいたサメ軍団は瞬時にぶつ切りとなって床に転がっていった。
 すかさずクロスグレイブのレーザー射撃で手負いのサメを焼き殺すと、ガーネットは姿勢を低くしたまま、ユニのユーベルコードで吹かせる微風の回復効果で活力を得て、瞬時に王翦の懐へ潜り込んだ。
「王翦将軍、覚悟!」
 鍛え上げられた功夫から繰り出される拳打の乱れ撃ちが、王翦をこれでもかと打ち据える。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 痛いってば本当!」
「待てと言われて待つ奴などいないんだろう!?」
 ガーネットの拳が王翦の顎を打ち上げる!
 ふらつく王翦!
 そこへユニが生成した贋作ダガーをこれでもかと王翦へ投げ付け、すれ違いざまに脇腹……動脈が流れる箇所へ精密に突き刺した。
「いっだぁ~いっ! もうやってらんない! 逃げよっと!」
 苦悶の声を上げる王翦が、変形した壁の向こうへ消えてゆく。
 ……逃げられたが、あの出血量なら追跡は容易いだろう。
「仕留め損なったか。怪我はないか、ユニ?」
「平気平気! それにボクはあくまで盗賊、盗むことがお仕事だもん」
 ユニがガーネットへ向けてしてやったりと微笑む。
 その手元には、王翦が懐へ忍ばせていたと思しき高価そうな宝玉が握られていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百海・胡麦
【焔硝】

「蜜霰」の溶けて張り付く飴の弾を
掌に灯した「息名」の炎で溶かし
壁へと撒きながら宮殿を進む
この弾には己の魔力が宿る、付く物を探知することができる
変化、建造、すればいい
炎は揺れる空気に揺らぐ、魔力も壁に宿る
アタシが全部感じ取ってやろう

先制攻撃にゃ『ブレイズフレイム』
地獄の炎をたんまり広く焚いて驚かす
ひとつ隙ありゃ貴方の独壇場
敵の頭にも蜜霰の雨を降らせてやる

さ、漁の始まりだ
宮殿の壁の動きをイージー殿と情報共有しながら
索敵し、追い込むよ
アタシは地図でソナーってわけ
今だ「静墨」お前と同じ世界の敵どもだ、ほらあの人の手足となれ
挟み撃ちしてやりな

己は炎で露払い
王翦…彼処だ。愛しい硝子の刃の味は如何?


イージー・ブロークンハート
【焔硝】
まず向こうさんの先制攻撃を硝子剣で受けます!
硝子なんで割れます!当然!――割れた硝子片を【範囲攻撃】敵さんにあてる。
命令を一つ。「真っ直ぐ進め」誰にでも守れる簡単な命令。
ここが変化する迷宮じゃなきゃな。
これで向こうさんの動きを制限し、追いかけまあす!
曲がったりしても手痛いダメージはいるしな。
面倒な迷宮の変化に対する察知は、胡麦、頼んだ!
奇襲には【カウンター】
迷宮の変化がある程度読めるなら、
真っ直ぐ逃げやすいように、誘導し行き止まりまで追い詰める。
こういうのも【だまし討ち】っていうんかな?どう思う?
然らば王翦――猟兵に探り当てられた自らの愚をば恥て、首をば差し出せ。
きれいに刎ねてやる。



 瑞獣載霊殿内部は激しく構造が移り変わる。
 それは逃走を続ける王翦自身も予測不能だ。
「あちゃ~! こっちは塞がっちゃった! でもこっちが拓けた、ラッキー!」
 新たに出来た道へ身を滑らせ、なんとしてでも猟兵たちの追撃をかわしたい王翦。
 それを必死に追走するのは、百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)とイージー・ブロークンハート(硝子剣士・f24563)だ。
「……イージー殿、大丈夫? もしかして、鬼ごっこは嫌い? もう疲れちゃった……?」
「ぜぇ、ぜぇ……なんだあれ? あんな不安定な下半身で、よくもまあ身軽に逃げられるね……? 胡麦は全然息上がってないの?」
「さてね、イージー殿がそう見えないなら、そうかも?」
 少しからかうよ言うな口ぶりで、胡麦は秘術で練った飴状の弾丸媒介『蜜霰』をひと摘みすると、空いたもう片方の掌に自身の魔力を練り直した炎を灯してそれを炙る。炙られた飴弾丸がぐにゃりと溶けると、胡麦は無造作に真横の黄金の壁へそれを塗りたくった。
 イージーはそれを小首を傾げながら訊ねる。
「そういえば、さっきから溶かした飴をいろんな箇所に塗ってばら撒いてるけど、何をしているの?」
 胡麦はイタズラがばれた稚児のように口角を上げてみせる。
「この弾には己の魔力が宿る、付く物を探知することができる。いまやこの宮殿の大半は半ばアタシの掌の上同然。変化、建造、すればいい。炎は揺れる空気に揺らぐ、魔力も壁に宿る。何処が塞がるか、何処が拓くか、少なくとも王翦よりかは把握できる」
「ってことは……? 逃げた王翦の居場所も分かったりする?」
「いわずもがな。アタシは地図でソナーってわけ。炎の揺らぎは全てを悟って。アタシが全部感じ取ってやろう。さ、追い込み漁の始まりだ」
 胡麦はこのあとも壁にどんどん塗りたくってゆき、王翦を先回りするようなルートを選択し続ける。
 そして遂に、王翦の前を塞ぐように2人が対峙する。
「げ! なんであっしよりも先にいるのさ!? お前達、足止めしろー!」
 王翦はユーベルコードでオブリビオン海賊団を召喚すると、彼らに攻撃を仕掛けさせて逃走を図る。
 突撃してくる海賊団を前に、胡麦を守るべくイージーが前に出る。
「此処から先は行かせない!」
 鞘から抜き放った彼の剣身は異様だった。
 透き通った刃はあたりの景色を透過するほどの透明度。
 まるで硝子……いや硝子で出来た剣であった。
 そんな剣身で攻撃を受け止めれば……。
「やっぱ砕けた! 知ってたけど!」
 盛大に破砕音を撒き散らしながら破片が飛び散っていく。
 だがその破片は海賊団の体に浴びせかけられ、勝手に全身がズタズタに傷付いてゆく。
「胡麦、お願い!」
「あいよ、地獄の炎をたんまり広く焚いて驚かそうか」
 胡麦は自分の身体を飛散した硝子の破片で斬り裂くと、そこから紅蓮の火炎が吹き荒れる。
 通路内の酸素が一気に燃焼し、ユーベルコードで顕現した地獄の炎は海賊団たちを丸呑みにしてゆく。
「ひとつ隙ありゃ貴方の独壇場。敵の頭にも蜜霰の雨を降らせてやる」
 イージーの硝子剣は初見殺し。
 それを理解している胡麦だからこそ、阿吽の呼吸で連携が取れるというもの。
 逃げようとする王翦にも、熱せられた飴の弾が浴びせてマーキングを仕込む。
 ここでイージーは海賊団へユーベルコード『ささやかなお裾分け(フラット・イット)』で命令を下す。
「ここで命令を一つ。『真っ直ぐ進め』――誰にでも守れる簡単な命令さ」
 硝子片が刺さった海賊団へ命令を下せば、彼らは王翦の背へ向かって一直線に突っ込んでゆく。
「え、ちょっと!? なんであっしを追いかけてくるのさ!? って目の前の曲がり角が壁にー!?」
 左へ折れる通路は、競り上がる壁によって封鎖され、王翦はむさ苦しい海賊団におしくらまんじゅう状態で壁に圧迫されて身動きが取れない!
「あーあ、ご愁傷さま。確かに簡単な命令だが、此処が変化し続ける迷宮じゃ『真っ直ぐ進め』なんて自殺行為だよね。こういうのもだまし討ちっていうんかな? 胡麦はどう思う?」
「貴方の慧眼の賜物、と。愛おしいひとのハカリゴトには、いつも心が躍る」
 親愛の感情を言葉に添えて、彼女は仕上げに入る。
「今だ『静墨』……お前と同じ世界の敵どもだ、ほらあの人の手足となれ。挟み撃ちしてやりな」
 何処からともなく、宙を泳ぐサメが2人の前に現れると、壁と海賊団で足止めされた王翦へサメが飛び掛かる。
「いやー!? それは無理ーっ!!」
 海賊団はバラバラに蹴散らされ、王翦はその頭からガジガジと噛まれて泣き叫ぶ。
 狼狽する敵将へ、イージーが猛然と駆け寄ってくる。
 気が付けば、硝子の剣は元通りになっていて、先程よりも鋭利さが増している気もする。
 これそこがイージーが振るう硝子の魔剣、砕ける度に強くなり、イージーに不死の体を齎す反面、彼の身体が硝子化して蝕まれてゆくのだ。
「然らば王翦――猟兵に探り当てられた自らの愚をば恥て、首をば差し出せ。きれいに刎ねてやる」
「やなこった!」
 青竜刀で硝子剣を砕き、敢えてその破片を身に浴びる王翦。
「首を斬られるくらいなら、破片を浴びたほうがましだよ!」
「そうか、じゃあ『こっちへ来い』」
「へ?」
 ユーベルコードの命令で、今度は胡麦のもとへ。
 燃え盛る地獄の炎が出迎える!
「ぎゃあああっ!?」
「王翦……彼処だ。愛しい硝子の刃の味は如何?」
 女は怪しく嗤った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
「ご主人サマ!物量とかで蹂躙する酷い人がいるよ!もうあれしかないよね!」
ぬがあああ!!

【戦闘知識】
敵の動きと周辺の宮殿の構造
敵先制の後の己の逃走ルートを把握

対WIZ
お前ふざけんなよ!?
なんつー技使うんだ!
…あれ使うしかねーじゃねーか!(絶望
「わーい☆」
…どうせきかねーだろうが一言
今すぐ自決しろ
そうすれば少しはましな死に様を晒せるぞ
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を己達に付与
光学迷彩で存在を隠しつつ脱走
自分は外の竜眼号に吸い込まれつつ…UC発動
…地獄が始まる

幼女軍団
「「ひゃっはー☆」」
3師団を主の護衛に残して
あらゆる場所から侵入突撃蹂躙開始!
【情報収集・念動力・空中戦・弾幕】
宮殿に突入して飛び回りながら念動光弾を乱射して取り合えず壊せないか確認
更にその動きと構造からあらゆる動きを収集して統合
他の猟兵も含め情報共有

「「もうこれ…王翦ちゃん食べていいよね♥」」
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み・捕食(意味深)】
把握した変形と変化する構造と物量や時に己達で壁になり追い込み
鎌剣や猛攻やイロイロで蹂躙☆



 既にボロボロの王翦は愕然とする。
「嘘でしょ!? まだ1カウントも動いてないの!?」
 猟兵達の殺意溢れる追撃は、王翦の想像を遥かに上回るものであった。
 そしてまた新手が現れる。
「ご主人サマ! 物量とかで蹂躙する酷い人がいるよ! もうあれしかないよね!」
「ぬがあああ!!」
 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は相棒のメルシーの期待に輝かせる眼差しを遮りながら苦悶した。
「お前ふざけんなよ!? なんつー技使うんだ! おかげで……あれを使うしかねーじゃねーか!」
「わーい!!」
 根負けしたカシムががっくりと項垂れ、メルシーは鼻息を荒くして喜んだ。
 王翦は不意になんともいえぬ戦慄に見舞われ、その全身をブルルッと震わせた。
「い、一体、何をする気だ!?」
 王翦の問いを無視して、カシムが絶望に憔悴しきった眼差しを向ける。
「……どうせ聞かねーだろうが一言だけ忠告してやる。『今すぐ自決しろ』……そうすれば少しはましな死に様を晒せるぞ」
「あっしにの身にこれから何が起きるのさ!? ヤバそうだから逃げろー!!」
 王翦は100体以上のサメ型オブリビオンに、龍の角と尾、翼を生やして突撃させた。
 その間に王翦は入り組んでゆく通路の奥へと逃げていった。
 だがカシムとメルシーは自身等に光学迷彩魔術を施し、周囲の壁と一体化して姿を消してしまう。
 サメの群れを素通りして、逃げる王翦の背中に肉薄!
「おーせーんちゃーん♥ あ・そ・ぼ♥」
「うえぇぇっ!? なんで此処にいるのっ!? って、どわーっ!?」
 驚く王翦が見たのは、通路を埋め尽くさん限りに増え続ける幼女型メルシーの軍団であった。
 その数、師団単位で120!
 数十万人が狭い通路で氾濫すれば、王翦はところてんめいて奥へと押し流されてゆく!
「じゃあ、僕は離脱しますんで。オタッシャデー!」
 カシムは宮殿外部に召喚した巨大空中戦艦『竜眼号』へ転送されてゆき、宮殿内部に残されたのは、サメの群れと王翦とメルシー幼女軍団のみとなった。
「「メルシー達が地獄だぞ♥」」
 此処から先は、まさに地獄というべき時間の開幕であった。
「「ひゃっはー☆ 動く壁は訓練された壁だー☆」」
 変形する通路は複製した万能魔術砲撃兵装『カドゥケウス』で破壊!
「「MOVE! MOVE! MOVE!」」
 そのまま強引に突破したかと思えば、サメ軍団をビーム鎌兼『ハルペー』でずたずたに掻っ捌き、三枚に下ろしてサシミにしてしまう。
「うーんサメはアンモニア臭きっつ☆」
「でも淡白でさっぱりした後味だぞ☆」
「すいまーん! この宮殿、お醤油ありますかー?」
「あるわけ無いってば!?」
 王翦のツッコミに幼女メルシー達が囲んで棒で叩く!
「「ザッケンナコラーッ!!」」
 ナムアミダブツ!
「「醤油がないってどういう事なのかな? かな?」」
「「というかマヨネーズも置いてないって、この宮殿マジないわー!」」
「「竜眼号の食堂から持ってきたワサビを鼻の穴に突っ込むぞオラーッ!」」
「グワーッ!?」
 通路を埋め尽くす幼女メルシー達に踏み付けられたり引っ張られたりと、王翦はもはや逃げ場を失って玩具にされている!
「ねえ、そっちのメルシー? もうこれ……王翦ちゃん食べていいよね♥」
「オッケイ、ゲイ♂ボルク、イッとく?」
「でも王翦ちゃんって女の子だったね?」
「男の娘じゃない……だと……?」
「嗚呼もうめちゃくちゃだよ♥」
 カオス!
 王翦は密度300%の幼女(雌雄同体)地獄の中で、足蹴にされたり殴打されつつ、メルシー達の武装で内臓を嫌になるほど掻き回された挙げ句、圧迫祭りに巻き込まれ、何度も意識がぶっ飛んでは凄まじい苦痛で再覚醒してしまうのだった。
「「王翦ちゃん、ワンモアセッ♥」」
「「がんばれ♥ がんばれ♥」」
「「お前が朕になるんだぞ♥」」
「もう止めてぇぇぇぇぇ!? 殺して! あっしを、殺してぇぇぇーっ!?」
王翦、肉体の滅びを迎える前に、幼女達に心を殺されてしまったようだ……。

「……今夜はカレーですね!」
 竜眼号のモニタに映し出された現場の中継映像をそっとオフにしたカシムが、仏のような顔をしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シノギ・リンダリンダリンダ
黄金の、宮殿!!
なんて素晴らしいものをお持ちなのですかお前は
王翦、悪い事は言いません。今後の為にも、世界の為にも、この宮殿は私に分け渡すべきです
いえ、べきですじゃない。そうしなくてはいけない!

敵の出す軍団に対抗して四の王笏と三つ目と邪剣を召喚
変化する内部は四の王笏の未来予測で対応。相手の攻撃に合わせて隠れたり、あえて変化する場所に敵を追い込んだりしましょう
三つ目のバルバロスパワーでザコはあしらう
邪剣の八艘飛びで王翦やザコに攻撃

集団戦術は、蹂躙は大海賊の十八番です
例え他の猟兵が七大海嘯を敵だと思おうと、多少減った所で追加できますしこっちは痛くもかゆくも無い。継戦能力はこちらが上です
むしろ無惨に死ぬ七大海嘯を見ると気持ちが良い

さぁ、この宮殿を寄越しなさい
大丈夫、元より世界中のお宝は全て私のものです。私の手に戻ってくるだけ。お前が気を病む必要は無いんです
どうやって呼び出すんです。どうやって宮殿を収納するんです?
さぁ、教えなさい



 シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)は狂乱していた。
 王翦の呼び出した黄金の宮殿の中を闊歩し、その輝きに目を奪われていた。
 彼女は黄金が好きだ。
 彼女は黄金が大好きだ。
 今までも黄金が絡めば喜んでオブリビオンを蹂躙し、根こそぎ黄金を略奪してみせた。
 そんな確かな実績と、そこから編み出した、いとも容易く行われるえげつない外道なユーベルコードの数々を持つ強欲の大海賊。
 シノギ・リンダリンダリンダとは、そういうミレナリィドールの女なのだ。
 そんなシノギが、空を飛ぶ黄金の謎の宮殿『瑞獣載霊殿』を無視するわけがない。
 絶対にだ。
「黄金の、宮殿!! なんて素晴らしいものをお持ちなのですかお前は!!」
 逃げる王翦へ向けてシノギは交渉を申し入れる。
「王翦、悪い事は言いません。今後の為にも、世界の為にも、この宮殿は私に明け渡すべきです、いえ、べきですじゃない。そうしなくてはいけない!」
「なんでさ!? これは猟兵には渡せないよ! 詳しくは言えないけどさ!」
 王翦は足を止め、シノギと対峙する。
 ここでシノギを撃退することに決めたらしい。
 だがそんな王翦の目は死んでいる。
「……いや、ひどい顔ですね。やる気ないんです?」
 思わずシノギがツッコミを入れるほどに、王翦はげっそりとやつれていた。
「……もう幼女はいやだぁぁぁ……!」
「私が乗り込む前に、他の猟兵が何かしたのでしょうか? 有力敵にトラウマ植え付けるってどんだけですかね?」
 青ざめる王翦の様子に、シノギは思わず訝しがる。
 だが今はそれよりも、この宮殿を入手したいという使命感にシノギは突き動かされる。
「いえ、それよりも王翦、この宮殿を早く私に献上するのです。そうすればじわじわと痛みを感じるか感じないかの瀬戸際の苦痛を与えて、緩やかな死を褒美として与えてあげましょう」
「さっきと別のベクトルでトラウマ生み出そうとしてる!? うわーん! 助けてー! ドラゴン海賊団ー!!」
 王翦は竜の角や翼を生やした海賊団を召喚すると、一斉にシノギを襲わせ始めた。
 絶対先制攻撃はシノギの眼前まで迫り、あと数秒でシノギは木っ端微塵に打ち砕かれてしまうだろう。
 だが、彼女はニタリと加虐的な笑みを浮かべると、虚空へ向けて呼びかけた。
「ふふふ。手伝ってくれるのですよね、お前たち?」
 その声に応じて姿を表したのは、四の王笏『カルロス・グリード』と三つ目『バルバロス兄弟』、そして邪剣『ピサロ将軍』。
 これがシノギのユーベルコード『一大海嘯(グリードプール)』――七大海嘯を手駒として操ることが出来る効果を持つ異能力だ。
 かつてグリードオーシャンの『羅針盤戦争』で猟兵たちと戦い、破れた有力敵が、見るからに操られている感満載の漆黒の呪詛のアンテナを頭に生やして、シノギを守るように前へ進み出る。突っ込んでくる竜化した海賊団を、バルバロス兄弟とピサロ将軍が返り討ちにすれば、その間に、四の王笏の未来予測演算によって、王翦の逃走経路と攻撃予測を全て炙り出し、更にはこの宮殿の何処が変形するかまでをもシノギに伝達してみせる。
「上出来です、お前たち。さあ、先を急ぎましょうか?」
 シノギは呼び出した七大海嘯を使い捨てるように、自分の肉の盾として攻撃を受け止めさせては見殺しにしてみせる。
「集団戦術は、蹂躙は、大海賊の十八番です。たとえこいつらが死んでも、多少減った所で追加できますし、こっちは痛くもかゆくも無い。継戦能力はこちらが上です。むしろ無惨に死ぬ七大海嘯を見ると気持ちが良い。あ、邪剣が死にました、この人でなし! ……なんて言えば満足ですか?」
 敢えて敵軍勢の苛烈な場所へ七大海嘯を立たせては肉壁にしてシノギはやり過ごし、時には反撃をさせて王翦との距離をジリジリと詰めてゆく。
 ここでカルロスがシノギへ耳打ちをしてきた。
「おっと、あと10秒であの先が一方通行になりますか。では邪剣、行ってきなさい。八艘飛びで王翦を斬るのです」
 シノギの命令に逆らえないピサロ将軍は、言われるがままに八艘飛びで黄金の壁を蹴って、一気に王翦の背へ斬り掛かる!
 剣閃が遂に王翦の背を捉え、その軌跡に血の花が咲き誇った。
「いったたた!? ちょっと!? 海賊団は何やってるのさ!?」
 振り返った王翦の顔面へ、巨大な斧の刃が迫る。
 屠った海賊団を踏み付けて、バルバロス兄弟が王翦へ肉薄していた!
「うわぁぁぁ!?」
 寸前で身を捩らせて直撃を避ける王翦だが、下半身の竜の足元が傷ついてしまった。これでは満足に逃走も回避も出来ないだろう。
「……足が潰されたって、あーしはこの宮殿を渡すつもりはないよ!」
「まだそんな事を言ってるのですか。いいからおとなしくこの宮殿を寄越しなさい。大丈夫、元より世界中のお宝は全て私のものです。今、お前の手にあるのは、私のお宝を預かってるだけに過ぎません。だからいずれ私の手に戻ってくるだけ。お前が気を病む必要は無いんです」
 シノギの強欲の一端が言葉に発せられる。
 常人の思考回路では到底に理解不能な根拠に、王翦は愕然としてしまう。
「ちょっと、この宮殿は最初からあーしのものだから! いいかげんにしろー!」
 青竜刀を振り上げ、四つん這いになっている四の王笏の背に座るシノギへ飛び掛かる王翦。
 しかし、それはバルバロス兄弟の巨体に阻まれ、バルバロス・パワーで強化された膂力と四本腕の武器が王翦を返り討ちにしてしまう。
「か、勝てない……!? あっしが負けるとか、あり得ないんだけど!?」
 狼狽するシノギは、血まみれでうずくまる王翦の顎を己の爪先で持ち上げながら訪ねた。
「この宮殿、どうやって呼び出すんです? どうやって宮殿を収納するんです? さぁ、教えなさい」
「……いやだね! どうせ教えても使いこなせないだろうし!」
 断固として拒絶した王翦へ、シノギは黄金化した王笏の頭蓋骨でこしらえた祝杯で極上の蜂蜜酒を飲みながら告げた。
「じゃあいいです。三つ目、王翦を殺してその血肉を取り込みなさい。そして私に使い方を教えるのです」
 バルバロス兄弟は王翦の首を四本の腕で締め上げてゆく。
「お前は知らないでしょうから教えてあげましょう。この三つ目の兄弟は、倒した相手の肉体の一部を取り込むことで、その相手の能力を奪うことが出来ます。ええ、王翦……お前の能力もきっと奪えるでしょう」
「あ、ぁガッ……!?」
 メリメリメリと頚椎が圧搾される音が聞こえる。
 白目を剥き、泡を吹き、空中で足をバタバタと暴れさせるもの長くは続かず、王翦は首の骨をへし折られて、呆気なく死んだ。
 三つ目の兄弟は早速、王翦の頭蓋骨を割って脳味噌に食らい付くと、この宮殿の召喚法をシノギへ伝授する。
「……なるほど、そうやるのですね。でも黄金の数字のカウントダウンは、脳味噌を食べても謎のままですか。爆速で数字をゼロにして、巨大黄金ロボとして敵を蹂躙してみたかったのですが無理そうですね、残念です」
 とりあえず、空を飛ぶ黄金宮殿そのものは召喚できそうだが、それ以上のことは現状では謎に包まれたままであった。

 主を失い、崩壊を始める『瑞獣載霊殿』。
 王翦は滅びたが、未だフォーミュラは健在だ。
 猟兵たちは最終決戦へ向け、決戦地へ赴くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月30日


挿絵イラスト