殲神封神大戦⑯〜真実在れば愛在りき
●三皇女媧の塒
封神武侠界の人類の祖。
それが三皇『女媧』である。その『女媧』の祠が仙界に在りし『三皇女媧の塒』である。
『神農』が南蛮の魔獣『兀突骨』と融合し顕現したことは猟兵たちにとって記憶に新しいものである。
しかし、『女媧』はオブリビオンとして蘇ってはいないようである。
それでもこの祠は『消えることのない炎』と『固まることのない泥』で満たされている。
一歩を踏み出せば、そこに渦巻く魔力を恐ろしいと思うことだろう。
そして、突如して踏み込んだものを取り囲む『固まることのない泥』。
四方を囲まれ、『固まることのない泥』と呼ばれた泥は突如として塊、美しい彫刻の為された部屋へと変貌する。
通常の方法では出ることすらままならぬほどの強度を持つ部屋は、猟兵たちの進撃を阻むことだろう。
しかし、その魔力を浄化せしめる方法がたった一つだけ存在するのだ――。
●殲神封神大戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます」
しかし、そんな彼女の顔は困惑に満ちていた。
いや、正確には困惑しながらも、どこか楽しげな雰囲気があったのを猟兵達は見逃さなかったことだろう。
「仙界、『三皇女媧の塒』へと至ることができ、漸くにして、この殲神封神大戦も佳境にいたろうとしています」
新年より始まった戦い。
封神武侠界を救うために奔走する猟兵たちの働きは言うまでもなく、賞賛されるべきものであった。
だからこそ、ここで足を止めるわけにはいかない。
『三皇女媧の塒』は恐ろしい魔力が充満している要所である。これを突破しようと足を踏み込んだ瞬間、『固まることのない泥』が猟兵たちを囲み、瞬時に固まるのだ。
まるで一歩も此処から出さぬというように。
「それは美しい彫刻の施された部屋なのですが……」
ナイアルテがなんと言っていいのかというように言いよどんでいる。
説明が難しいのだろうか。
猟兵達が訝しんでいると、ナイアルテは意を決したように言葉を紡ぐのだ。
「皆さんの愛を語って頂きたいのです」
なんて?
猟兵達は皆、一斉にナイアルテの言葉に疑問符を浮かべたことだろう。これまでも、わりととんちきなことを言い出すことはあったナイアルテであるが、今回はさらに何を言っているのかわからんってなるやつであった。
「いえ、この『固まることのない泥』が固まることに寄って出来た皆さんを囲む部屋は、魔力が満ち、通常の方法では踏破することができないのです」
それはこの局面において、進軍の速度が落ちるということである。由々しき事態であるからこそ、猟兵達はナイアルテの言葉を思い出す。
愛を語る。
ん?
「はい、この部屋は『愛を語らないとでれない部屋』なのです。皆さんの愛する誰か、あるいは大好きな趣味、もしくは其れ以外の愛でも良いのです。真摯に語ることによって、この魔力が浄化され、『固まることのない泥』で囲われた部屋から脱出する事ができるのです」
ふんす。
握り拳を握るナイアルテの姿に猟兵達はげんなりするだろう。
割りとろくでもない部屋である。
というか、面倒くさい。かなり。
「このような戦いの中ではありますが、戦闘が発生しない要所というのは貴重であると思うのです。それに皆さんの愛を語る姿は、とても尊いものだと思うのです」
ナイアルテは転移を維持する係なので割りと他人事である。
猟兵達のじとっとした視線を受け止めて、彼女は微笑む。
愛を知り、愛を語ることもまた『今』を生きる者たちにとって必要なことである。
ならばこそ、猟兵は語って聞かせねばなるまい。
己の愛を。
自己愛でもいい。誰かへの愛でもいい。何かに対する愛でもいい。
人が『今』を謳歌するために必要なのは、いつだって須らく愛であると高らかに叫べ――!
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『殲神封神大戦』の戦争シナリオとなります。
仙界、『三皇女媧の塒』に赴き、『固まることのない泥』に囲われ、固まった『愛を語らないと出れない部屋』から脱出するために真摯に愛を語るシナリオとなります。
脱出は通常の方法では不可能です。
ですので、真摯に愛を語りましょう。
誰かへの愛でもいいですし、趣味に対する愛でもいいのです。とにかく真摯に愛を語ることこそが、この『愛を語らないと出れない部屋』の唯一の脱出方法なのです。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……誰か(あるいは何か)への愛を語る。
それでは、愛、その強さを以てこの要所を突破する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 日常
『愛を語らないと出られない部屋』
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POW : 情熱的に愛を語る
SPD : 淀みなく愛を語る
WIZ : 語彙を尽くして愛を語る
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大町・詩乃
(『三皇女媧の塒』にしゅたっと参上)
この戦争を終わらせる為には愛を語らないといけないのですね。
ならば仕方ありません。
神として愛するものは多岐にわたりますが、ここは猫ちゃんへの愛を語る事で突破いたしましょう。
(尤もらしい事を言っているが、要は猫への愛を語りたいだけ。)
気儘でプライド高いですけれど、甘える時はとことん甘えてきて、その落差が良いのです!
意外と気を使って、気分が落ち込んでいる時には傍にいてくれたりして、心がほっこりします♪
長毛種も短毛種も、どちらも愛らしいです。
ひなたぼっこした後の猫ちゃんを抱くと、フカフカの毛布みたいな感じが良いです♪
突破口が開いた後も、語りはしばらく続くのでした。
愛を語る。
それは言葉にすれば端的なものであり、途端に陳腐なものへと成り下がるものであった。
けれど、愛は言葉でしかない。
感じることができるからこそ、それは愛という力になり、輪郭を得ていくものだ。
ゆえに、猟兵はその真心でもって愛を語らねばならない。
『三皇女媧の塒』は、猟兵が足を踏み入れた瞬間、『固まることのない泥』四方を覆い、固める。
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)もまたその一人であった。
「この戦争を終わらせるためには、愛を語らないといけないのですね」
ならば仕方ないと彼女は己の中にある愛を確かめる。
優美な彫刻の施された部屋はとてもではないが、自分が閉じ込められたという事実を感じさせないものであった。
「神として愛するものは多岐に渡りますが……」
悩む。
愛とはすなわち好きなものである。
それについて語れと言われても、多くのものを愛する詩乃にとって、一つに絞ることは難しいことであったのかもしれない。
けれど、愛を語らねば、この部屋からはでられない。
いっそあみだくじでもって語るべきを決めてしまおうかと思ったが、詩乃の頭がぴこんと動く。
その様はもしかすると猫耳が立ち上がったかのように思えたかも知れない。
「そうですね。言う成れば、気儘でプライド高いですけれど、甘えてくる時はとことん甘えてきて、その落差が良いのです!」
何の話?
唐突に始まったアピールタイム。
いや、可愛い自慢とでも言うべきか。詩乃が語るのは猫に対する愛であった。
彼女は神社の境内で見かける猫のことを思い出す。
慣れるまで時間は掛かったけれど、それでもあの猫は可愛らしいものだ。世代を重ねても、その可愛さは変わらない。それどころか、自分の中で沸き上がる感情は一匹一匹がそれぞれ違った魅力を備えていることを自覚させるには十分なものであった。
「意外と気を使って、気分が落ち込んでいる時には、傍に居てくれたりして、心がほっこりします♪」
猫とはそういう生き物である。
気儘で自分勝手。
言ってしまえば、そんなふうにも表現できるだろう。
けれど、時にギャップを見せる愛らしさ。
それがまた詩乃の心を高鳴らせてやまぬのだ。
「長毛種も短毛種も、どちらも愛らしいです」
どんな姿形をしていても、その愛らしさに陰りは見えない。むしろ、みんな違ってみんないいとさえいい切れるものである。
それに詩乃は知っている。
「ひなたぼっこした後の猫ちゃんを抱くと、ふかふかの毛布みたいな感じが良いです♪」
語る。それはもう語りに語る。
猫の愛らしさ、猫の素晴らしさ。
もはやどれだけ語っても、筆舌に尽くしがたいものがある。ああ、叶うことならば、戦いなどせずにずっと猫の世話だけしていたい。
そんな極端な思考さえ湧き上がってくる。
猫とはそういう生き物なのだ。
愛玩と言ってしまえば、それまでかも知れない。けれど、詩乃は、そんな気儘な自由さをこそ己の境遇と重ねて良いものだと思うのだ。
猟兵として立つ自分。
神としての自分。
それとは異なる猫の立場。
それは憧れにも似た感情であったのかも知れない。
しかし、詩乃は気がついていない。もはや『愛を語らねば出られない部屋』は消え失せている。
「ええ、本当に猫ちゃんは素晴らしいのです。あの素晴らしさを知るのならば、他の何物にも代えがたいものである理解できるはずです。ああ、早く戻って猫ちゃんのふかふか毛並みを撫で回したいです!」
愛を語り足りない詩乃。
もはや、この要所の魔力を浄化するという目的は関係ない。
彼女の猫語りは、それから長い時間をかけて行われ、とめどなく溢れる愛でもって魔力を浄化しつくすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
雨倉・桜木
SPD
はっ!仲間(猫好き)の気配を感じる!
『嘘だろ、お前みたいな奴いるのかよ…』
多分、居ると思うよ?それだけお猫様は魅力的な存在なのさ!
『とうとう様づけで呼び始めやがった…』
まあ、それはさて置くとして、とりあえず語ろうか!!
※猫は猫でも愛猫語りです。
ぼくの愛猫キュウダイくんは元猫の影朧でぼくの契約悪魔である訳なんだけど!悪魔になってもやっぱり猫で日向ぼっこが大好きなんだ!お宿(お家)に作った猫部屋の日向でお腹を天辺にして無防備に寝てるのが最高に可愛くてね!そのときにしか拝めないキュウダイくんの隠れたチャームポイントがお腹のエンジェルマーク!それだけのアルバム作りたい!
『プライバシーの侵害だ!』
仙界、『三皇の塒』にて響き渡る愛の言葉。
それはまさしく誰も否定できぬ愛を語るものであった。響き渡る声に、雨倉・桜木(愛猫狂・f35324)は、はっとした表情を浮かべた。
「仲間の気配を感じる!」
それは確かに違いないものであった。
この『三皇の塒』は『固まることのない泥』が踏み込んだ猟兵たちを取り囲み、閉じ込めるのだ。
恐るべき魔力が充填している。
この魔力を浄化するためには『愛を語らねばならない』。
そして、桜木が感じたように今何処かで仲間の愛を語る声が聞こえたような気がしたのだ。
『嘘だろ、お前みたいな奴いるのかよ……』
桜木の言葉にげんなりした雰囲気を醸し出しているのは、一角猫キュウダイであった。
彼の言うところの仲間とはすなわち『猫好き』である。
正直、一角猫キュウダイにとってはどう反応していいかわからぬところでもあった。
「多分、居ると思うよ? それだけお猫様は魅力的な存在なのさ!」
にっこり微笑む桜木。
ああ、もしも許されるのならば、どこかでお猫様への愛を語っている猟兵とも語らってみたいと思ったかも知れない。
しかし、猫が好きだと、猫愛を語るのだとしても桜木のそれは少し変わっていた。
『とうとう様づけで呼び始めやがった……」
一角猫キュウダイは益々持ってげんなりした顔をしてしまう。
もう桜木にスイッチが入っている。
そう、彼が愛を語るのは猫であるが、愛猫語りである。
「おいで!めっちゃ可愛いぼくの愛猫!(ショウカンイッカクネコキュウダイ)」
手を広げる桜木。
自分の腕の中に飛び込んできて欲しい、そう瞳に欠いているが一角猫キュウダイはたじろぐ。
なんというか、怖い。
じり、と逃げ場のない『愛を語らねば出られない部屋』の中で後退する。
すぐに後ろ足が壁についてしまう。
なんというか、逆光で桜木の表情が見えないのが怖い。
いや、それ以上に桜木の愛猫語りは凄まじかった。
「ぼくの愛猫キュウダイくんは元猫の影朧でぼくの契約あくまであるわけなんだけど!」
始まってしまった。
もう予告とか、前フリとか、そんなの関係なかった。
もうノンストップである。その気迫というか迫力に一角猫キュウダイはたじろぐ。今口を挟んだら、どえらいことになりそうであったからだ。
「悪魔になってもやっぱり猫で日向ぼっこが大好きなんだ!」
そう、猫と温かいところはワンセットである。
ごろりとお腹を見せてくれると嬉しいけれど、それはそれで野生を忘れてはいやしないかと心配にも為る。
「お宿に作った猫部屋の日向でお腹を天辺にして無防備に寝てるのが最高に可愛くてね!」
桜木の言葉に一角猫キュウダイは、えっ……という表情を浮かべる。
完全に無防備であった。下手にまとわりつかれないこともあったからこそ、無防備にお腹を出して眠っていたのだが、それを見られていたのだとはつゆ知らず。
「その時にしか拝めないキュウダイくんの隠れたチャームポイントがお腹のエンゼルマーク!」
何故それを!
完全に油断していた。もうあの宿には安息の地はないのか。
まさにプライバシーの侵害である。
しかしながら、桜木の自白という名の愛語りはヒートアップしていく。もうどうにも止まらない。
愛猫への愛が溢れて止まらないのだ。
この後完全に警戒されてしまって、爪でしゃっとやられてしまうかも知れないが、それでも構わない。
自分の欲望という名の愛を存分に語り尽くすのだ。
「何がいいたいかと言うと! それだけのアルバム作りたい!」
滅茶苦茶である。
桜木の叫びは天を衝くが如く高らかに。
恐るべき魔力は浄化され、決して出ることの出来なかった部屋は元の『固まることのない泥』へと姿を変えていく。
この要所を突破することはできた。
けれど、かけがえのない愛猫の信頼は失ったかもしれない。それでもいい。塩対応もまた愛くるしいの猫であるがゆえに――。
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
【心境】
「愛ねぇ。」
アイ。eyeじゃなくて愛。
正直、くだらないとも、思わなくもないが。
多分、くだらねーからこそ大事なんだろうな。
オレにはわから…なんだ寧々?
【行動】
(カエルの使い魔の寧々が『化術』で人化するとヘッドロックで名捨を『気絶攻撃』で意識を落とすと、そのまま膝枕する/ぇ)
寧々「ふむ。愛というなら妾のたーんという奴じゃの。旦那様は転寝の時間のようじゃ。妾が愛を語って野郎ではないか。
自分が如何に情熱的な愛を抱いているか語り続ける。
寧々「妾は旦那様を愛しておる。その為ならオブビリオンの首級を上げ、旦那様の名前を叫びながら戦場で愛を囁くこともやぶさかではないのじゃ。」
名捨「お願い。やめれ…。」
「愛ねぇ」
小さくつぶやく。
それは言葉にしてしまえば、簡単なことであった。
もしかしたら、アイ。eyeであったかもしれない。なんて、そんなくだらないことを考えてしまっていた黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は、ぷかりと煙管から吹き上がる紫煙を見やる。
正直なところを言えば、愛などくだらないとも思わなくもない。
いや、だからこそ大事なものなのだと名捨は考え直す。
逆にくだらなくないものがどれほど世界にあるというのだろう。
記憶をなくし、己の失われたるを求め、答えに行く着くことのない道を往く。そんな己だからこそ、そうしたものが大切なものに変わるのだ。
「オレにはわから……なんだ『寧々』?」
名捨は、こうして数刻、『愛を語らねば出られない部屋』に閉じ込められて、どうしたもんかと煙管を吹かしていた。
そんな彼を見かねた喋る蛙の『寧々』がぺちんと名捨の額を叩いて飛び降り、化術でもって人の姿へと変貌すると、名捨をヘッドロックでもって気絶させる。
「えっ――」
本当に突然の出来事であった。
流れるような絞め技であったと言えるであろう。落ち癖がついたら大変であると思うのだが、『寧々』は構うことをしなかった。
「ふむ。愛というなら、妾のたーんというやつじゃの」
『寧々』は気絶した名捨を膝枕しながら、慈しむように彼の黒髪を撫でる。
とんだマッチポンプである。
ここまで酷いやつは中々お目にかかれないが、とんでもなくあまーい!
「旦那様は転寝の時間のようじゃ。妾が愛を語ってやろうではないか」
自信満々である。
愛妻恐妻此処に極まれり!
そこからはもう甘すぎて砂糖が口からどばどばしそうな程ののろけ話の連続であった。
どれだけ名捨、旦那様が素敵な御仁でるかを訥々と語る寧々。
彼女は臆面もなく言うのだ。
「妾は旦那様を愛しておる。そのためなら、オブリビオンの首級をあげ、旦那様の名前を叫びながら戦場で愛をささやくこともやぶさかではないのじゃ」
きゃっ。言っちゃった、みたいなことを言っているが、言っていることはひどくバイオレンスである。
首級て。
いやむしろ、名捨の妻を名乗るのであれば、それくらいでなければ勤まらないのかもしれない。
それ以上に『寧々』の名捨への愛情は底知れぬものであったのだろう。
どれだけ注いでも惜しみないもの。
愛情がそうであるというのならば、きっと名捨の器はとんでもなく大きいものであっただろう。
なにせ、ものすごく重い。
こんな極大の愛を受け止められるのは名捨以外に誰が居るだろうか? いや、いない。
そんな愛を語り続ける『寧々』は止まらない。
この機会だから、寝物語ついでに如何に自分が名捨を愛しているかをささやき続けるのも一興であると彼女はやる気満々である。
そんな囁きに名捨は寝言のようにして呻くのだ。
「お願い。やめれ……」
いーや、やめない。
君が、赤面するまで、のろけるのを、やめない!
そんな名捨と『寧々』の愛は、まあ当然のように『愛を語らねば出られない部屋』を構成していた『固まることのない泥』の解散でもって突破するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
愛…か、家族愛でもいいんだよね?
本人の前では絶対に言えないけど
この際だから姉の話、しようかな…と
僕の姉…正確には元従姉妹で義理の姉、なんだけど
僕が村からいなくなった直後からずっと探してくれてたらしくて
滅びた村で生き延びた唯一の血縁者
再会直後に思いっきり抱きしめられて泣かれたのは多分一生忘れられない
勿論その後の妹扱いからのハイテンションデパート連れまわしも忘れられない、ある意味
ほんと、人の話聞かないし滅茶苦茶だけど
それでも…多分誰よりも僕の事想ってくれてる
僕の幸せは自分の事みたいに喜んでくれるし、それに…心配もかけてる
ありがとうなんて言葉じゃ伝えきれないくらいの恩があるから
大好きなんだ
愛を語る。
それは簡単なことのようでいて、難しいものである。
様々な形の愛があるだろう。
そのどれもが愛であるのならば、語ることを咎める者などいないだろう。
だからこそ、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はおずおずと、けれど、しっかりとした言葉でもって家族愛を語る。
「本人の前では絶対に言えないけど、この際だから……」
彼は幼くして囚われ、本当の家族の記憶がない。
奴隷としての扱いを受けながら、時には見世物として生きてきた。
そんな長く苦しい生活を終わらせたのが、今の家族だ。
「僕の姉……正確には元従姉妹で義理の姉、なんだけど」
とつとつ語る言葉は、静かなものだった。
自分が奴隷として生活している間も彼女はずっと探してくれていたのだと後から知った。
滅びた村で生き延びた唯一の血縁者。
それはかけがえのないものだ。
きっと澪はその時のことを一生忘れることはないだろう。
再会した時に思いっきり抱きしめてくれたこと、自分のために泣いてくれたこと。
「一生忘れられない……」
その後のことも、きっとそうだ。
妹扱いしたことは、今でも根にもっている。
ハイテンションでデパートを連れ回された。これはある意味で忘れることができない出来事だ。
「ほんと、人の話聞かないし、滅茶苦茶だけど」
それでも、と思うのだ。
唯一の血縁者だからだけではない。他の誰でもない、世界の誰よりも自身のことを想ってくれていると澪は感じるのだ。
「僕の幸せは自分のことみたいに喜んでくれるし、それに……心配もかけてる」
猟兵として生きているから当たり前のことかもしれない。
それでも心苦しいと思うことはあるのだ。
心の中から溢れ出てくるものは、どれもが言葉になっては口からこぼれてはくれない。
言葉にするのが照れくさいのもあるのかもしれない。
現にこんな機会でなければ言葉にすることもなかったかもしれないのだ。聞かせたいわけではない。
けれど、伝えたいという思いは自然と言葉に出る。
本人を前に伝えることができたのならば、どんなにいいだろう。素直ではない性分が邪魔しているのかもしれない。
「ありがとうなんて言葉じゃ伝えきれないくらいの恩があるから」
だから、と息を吸い込む。
きっと目の前で今は素直に言えないかもしれないけれど。
この言葉は本心だ。
紡がれる言葉は、いつかきっと彼女に伝える。
澪の言葉は愛に満ちていた。だからこそ、周囲を取り囲んでいた魔力が浄化されていく。
まるで花開くように見事な彫刻が施された部屋が形を失っていく。
開かれた道を見る。
未だ戦いは終わらないけれど。
いつか必ず伝えると、優しく開いた唇が紡ぐのは。
「大好きなんだ」
ただ、それだけ。
飾り気のない言葉だからこそ、偽りのない思い――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう!
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!(お約束)
なるほど、ここが愛を語らないと出れない部屋ですか
わかりました、高らかに叫べというのなら声を大にして言いましょう!
私こそがナイアルテさんファンクラブ会長だということを!
今日はナイアルテさんアゲのプレゼンですね!!
まず見た目。褐色の肌が麗しいのは(ここから流れるようにして、ナイアルテさんの萌えを語るクノイチ)
ですがナイアルテさんを語る上で避けてはいけないポイント
それはギャップ萌え!
今日で言えば『ふんす。』のところ!
危うく萌え死ぬところでした!
え?そういうことじゃない?
これじゃだめですかもしかして?
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
お約束の前口上は、開始早々に『固まることのない泥』に四方を囲まれてそれ以上外に響くことはなかった。
ああ、無情。
しかしながら、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は落ち着き払っていた。
これが突然のことならば慌てふためいたかもしれないが、すでに予知によってこの四方を囲まんだ部屋からの脱出方法を心得ているのだ。
「なるほど、ここが愛を語らないと出れない部屋ですか」
聞いてはいたが、優雅な彫刻が施された部屋は、一見するとユーベルコードぶっぱすればなんとなーく破壊できそうな気がしないでもなかったが、どうやらそうではないようである。
この『愛を語らないと出られな部屋』は、恐るべき魔力に満ちている。
これを浄化せしめないことには部屋から一歩も出ることは許されないのだ。
ともすれば、恐ろしき罠であるが、サージェは落ち着き払って深呼吸する。
何事も深呼吸が大切である。
これから語る彼女の愛があれば、自ずと道は開けるのだから。
「高らかに叫べというのなら声を大にしていいましょう!」
かっ!
刮目せよ。
これがサージェの愛である。
「私こそがナイアルテさんファンクラブ会長だということを! 今日はアゲアゲのプレゼンですね!」
くわっ!
どこかで、えぇ……と困惑する気配がした気がするが、気の所為である。きっとたぶん。
「まず見た目。褐色の肌が麗しいのは私と同じですね、わかります。魅惑の肌色。うんうん」
流れるようにして舌が回る。
饒舌と言っていいほどの周り具合。
サージェは語る。如何に何処かのグリモア猟兵が悶そうなことをつらつらと語るのだ。
マジでほんと何処から出てくるのかと言うほどサージェは語りに語る。
もう出られるんじゃない? っていうくらい語っても語り足りぬと、まあよくもまあ、そのー、マジでそろそろよくないです? ってくらい語りまくっている。
「ですが、語る上でさけてはいけないポイント。それは――」
それは?
なげやりである。もう聞いている方が恥ずかしくなるくらい。
「ギャップ萌え! 今日で言えば『ふんす。』のところ! 危うく萌え死ぬところでした!」
こういうことじゃないんじゃないかなーって白猫又さんがじとーってした視線を向けているが、サージェはお構いなしである。
これじゃだめなんじゃないかなーって思う気配もあったが、四方を囲っていた『固まることのない泥』は元の泥へと戻っていく。
えー。
それでいいんだ……と白猫又は想ったことだろう。
案外簡単な罠だな、と思わないでもない。浄化された魔力は、サージェの愛を持って何処かへ消えていく。
「ふぅ。まだまだ語り足りないところですが、今日のところはこれで勘弁しておいてやりましょう。またいつか語って聞かせる時が来るかも知れませんし」
鼻高々である。
サージェとしては、今回ばりぃってやられることもなく、平和に解決できたことに喜びを見出す。
だがしかし。
そんなサージェを恨みがましい目で見る気配があったことは言うまでもない。
散々に持ち上げられたどこかのグリモア猟兵である。
耳まで真っ赤で涙目で訴える姿にこそ、サージェはご褒美だと思ったかも知れないとかなんとか――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
では、私のライフワークである世界の騎士道譚や御伽噺の蒐集について語りましょう(アイテムの本取り出し)
故郷以外の騎士道譚
これが中々奥深いのです
勇壮、悲壮、冒険譚に滑稽譚…骨子は各世界で共通しておりますが、やはり特色や傾向もありまして
騎士と竜の友情譚の多き竜騎士擁するアルダワと竜退治多きA&W
愛馬や剣の役目がサイキックキャバリアのCキャバリア
幻朧桜に騎士の誓いを立てるシーンが飽きる程多いSミラージュ
蒐集という意味ではカクリヨファンタズムが穴場ですね
UDCアースで失伝した物語が「過去の遺物」として流れ着く事がありまして
大抵、歴史に呑まれるも止む無しの凡庸な作品ですが、ごく稀に傑作が…(長話につき略
ライフワーク。
それは生涯をかけての大事業である。
人はいつだって何かを世に遺したいと思うものである。己が生きた証。その痕跡を誰かに見せたいものであるし、ともすれば受け継いでほしいと願うことも在るだろう。
また、それをすることによって己が生きていると実感するものであったはずだ。
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)にとってのそれは、すなわち他世界に散見される騎士道譚や御伽噺の蒐集であった。
他世界を知る猟兵であるからこそ、そのライフワークはとてつもない量と為るだろう。
「故郷以外の騎士道譚。これが中々奥深いのです」
トリテレイアのアイセンサーが煌めく。
常に戦いの中にある猟兵としては、このような機会はあまりない。
だからこそ、こうして誰かに語ることはトリテレイアにとっては何物にも代えがたい機会となったことだろう。
四方を覆う『固まることのない泥』に充満する恐るべき魔力は、愛を語ることに寄って浄化される。
ならばこそ、トリテレイアは己のライフワークに対する愛をもってこれに当たると決めたのだ。
「勇壮、悲壮、冒険譚に滑稽譚……骨子は各世界で共通しておりますが、やはり特色や傾向もありまして」
そう、あらゆる書物はデータ化されて己の電脳にライブラリとして遺されている。
分類してしまえば、おおよそ彼が語った分類になるのだろう。
同じ騎士を扱ったものであっても、見る角度、語る者が変われば、物語の様相は変わるものである。
まるで万華鏡のようでもある。
「騎士と竜の友情譚の多き竜騎士擁するアルダワと竜退治多きアックス&ウィザーズ。愛馬や剣の役目がサイキックキャバリアのクロムキャバリア」
語る言葉はなめらかなものであった。
あまりにも早口に成りすぎないところがウォーマシンならではであろうか。
ただ、惜しむらくは、これを聞く者の姿が見えないことであろう。トリテレイアの語り口はわかりやすく、大分して語られるものであったからだ。
もしも、この物語を研究する専門家がいるのならば、一夜を明かしても尚、語り尽くせぬものであったことだろう。
「幻朧桜に騎士の誓いを立てるシーンが飽きるほど覆い桜ミラージュ。蒐集という意味ではカクリヨファンタズムが穴場ですね」
UDCアースで失伝した物語が『過去の遺物』として流れ着くことがあるからだ。
トリテレイアにとって、それはかけがえのないものであり、人に忘れ去られることで消滅してしまう妖怪たちにとっては、彼のような存在があることが己たちの存在を保つことにつながる。
だから、カクリヨファンタズムでは、妖怪たちが次々と失われたはずの物語をトリテレイアに持ち寄ってくれるのだ。
「大抵、歴史に呑まれるもやむ無しの凡庸な作品が多いものですが、極稀に傑作が見うけられることもあるのです」
トリテレイアは語る。
己の中に騎士道精神が宿るからこそ、そして、それが欠けたるものであるからこそ、蒐集という名のライフワークとなるのだ。
欠けたものを取り戻すのではなく、埋めるように。
欠けたものは決して元通りになることはない。
これが人の生きる道であるというのならば、トリテレイアは騎士として生きる生命である。
だからこそ、彼の騎士道譚への飽くなき探求はまさしく愛と呼べるものへと昇華するだろう。
魔力は浄化され、道が開ける。
殲神封神大戦は未だ終わらず。されど、佳境へと至らんとしている。
ページをめくる手が必ず物語の終わりへと向かうように、終わらぬ戦いはないのだというように、トリテレイアは立ち上がり、一歩を進む。
「戦いのさなかでありましたが、良き時間でした」
トリテレイアは己のライフワークの充実ぶりを確認し、新たな一歩を踏み出す。
戦いを終わらせるために戦う。
その矛盾に満ちた行動であったとしても、その矛盾をこそ愛するが故、トリテレイアは終わる騎士道譚と同じように、その果てを見据えるのであった――。
大成功
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