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殲神封神大戦⑭〜華泪刃聲

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑭ #封神仙女『妲己』

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#封神仙女『妲己』


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 白磁の肌の上を、落涙が滑り落ちてゆく。
 はらりほたり――……落ちる様だけで、命あるものの呼吸すら忘れさせる魔性。

「私は……どうして、」

 意図せぬ嫋やかな聲には芳醇な桃の香が乗り、息をするより早く心を絡め取る。
 タガが外れ、浮かされた様に虚空見て狂い舞う羽衣人。命ある全てが左右さえ見失うような酔気。

 誰もが狂っている。
 唯一、中央ではらはら涙を流す花の様な女を除いて。

「私、は……救えたのでは、無かったのですか……?」

 女に手を伸ばす“全て”は、女の望まぬ形で鋭利な刃が斬り捨てる。
 狂い咲く赤い花が山岳武侠要塞“梁山泊”を染めて、染めて。

「……し、て……お願い、どうか、私を――……」

 “私を、殺して”。

 落涙に滲む悲鳴が、饗宴に踏み躙られる。
 女の名は命と善性投げ打ち封神台を建立せし仙女 妲己。突如起こりし戦における駒として微睡から揺り起こされ、与えられた名は 封神仙女『妲己』。

 死ねずの体で死を求め、捩じ込まれた古の呪いに嘆く一人の仙女である。


 瞳を伏せた壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)が、細く息を吐く。
「望まぬ悪しを大義ゆえと成した末……雪がれぬ汚名着せられたまま、その通りに振る舞えなど、」
 眉を寄せながら杜環子の指がなぞった地の名は『山岳武侠要塞“梁山泊”』。現在、オブリビオンとして甦らされた封神仙女 妲己が根城としている場所だ。
 ハッと猟兵の姿に気がついて、居住まい正した杜環子が頭を下げる。
「お集まりくださりありがとうございます。此度向かって頂きたいのはこちら……」
 かつて封神台建立せし妲己がいる場所。
 望んで悪し成した記録ばかりが先走った真実は、ある種真逆のもの。大義成した末に擲った命は封じたはずのオブリビオンとして甦らされた皮肉と屈辱は度した難いことだろう。
「妲己は死を望んでいます。ですが、彼女に埋め込まれた仙翁達の古の呪が“自死”を赦しません」
 まるで地獄だ。
 だか……救いは唯一、此処に在る。
「妲己に死を与えられるのは、わたくし達猟兵だけ。どうか、お力をお貸しくださいませ」

 苦しむ命に安らぎを。
 深々と願った杜環子の鏡が、猟兵達を送り出す。


皆川皐月
 お世話になっております、皆川皐月(みながわ・さつき)です。
 きみはずうっと、ないていたんだね。


●注意:こちら一章のみの『殲神封神大戦』の戦争シナリオです。


●もし宝貝をお持ちの方は、プレイングで掲示またはアイテム化して装備活性化してご参加下さい。
 確認ができ、プレイング内で利用する様子が見受けられた場合、リプレイ内で描写されていただきます。


●プレイングボーナス!:無数の武器が飛び回る中で、妲己の先制攻撃に対処する。


●先着順で🔵が👑に達しそうと気がついた日で締め切る予定です。


 複数ご参加の場合はお相手の【呼称+ID】または【グループ名】で大丈夫です。
 IDご記載+同日ご参加で確認がしやすいので、フルネーム記載より【呼称+ID】の方が分かりやすいです。
 マスターページに文字数を省略できるマークについての記載がございます。

 もしよろしければ、お役立てくださいませ。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

 最後までご閲覧下さりありがとうございます。

 どうか、ご武運を。
99




第1章 ボス戦 『封神仙女『妲己』』

POW   :    殺生狐理精(せっしょうこりせい)
対象に【殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD   :    流星胡蝶剣(りゅうせいこちょうけん)
レベル×5km/hで飛翔しながら、【武林の秘宝「流星胡蝶剣」】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ   :    傾世元禳(けいせいげんじょう)
【万物を魅了する妲己の香気】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜鳥・藍
青いリボンで髪を纏めて。

妲己彼女への想い。悲しい。だけど「わかってしまう」
ええ、だって。かつての私は自分がどうなってもいいと思ってた。それで誰かが良き生を送れるのならば欠片だって惜しくなかった。どんな謗りを受けても平気だった。
そうして命を使い切って私は死んだ。心穏やかに悔いなく死んだ。

飛び回る武器が厄介ですが、第六感による回避や、最悪念動力で強制的に一時的な操作をして動きを阻害、致命傷さえ受けなければ。だめだとわかっていても、「この身がどうなってでも」という感情には逆らいきれない。きっとかつての私がそう思っていたのでしょう。
彼女に届く距離にたどり着いたなら青月を構え、雷光天絶陣を放ちます。



●閃いた一片
 しゃらりと七色に輝く小巻貝がリボンの先で揺れている。
 結った銀の髪が、“悍ましいほど”酣な宴にふわと舞わせて背を逸らす。すれば夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)狙う刃が空を翔けた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
 はらはらと涙を流す封神仙女 妲己の眦は赤く腫れていたが、それさえ狂った者は美しいというだろう。
 彼女胸の裡で燻る悲しみが、藍には分かる。“分かってしまう”。
「(かつての私みたい、)」
 藍の脳裏に蘇る過去は過去世のものなれど――今もはっきり、“あの時の気持ち”を覚えている。
「誰かが幸せだったらいいって、思っていたのよね」
 ねえ妲己、と届かぬ声で藍が言えば、返す刃が一瞬無防備な足を斬る。
 痛みに歯を食い縛り、群れた刃を掠めながらも飛び越えて、尚。向かってくるのは意図せず妲己から発される万物魅了する香気。恐らく吸えば一溜りも無いソレを斬り払って、藍の動きに合わせてぶつかり清浄な音奏でる七色の貝のさざめきに救われながら、藍は行く。
「私は、」
 胸が締め付けられそう。
「私“も”っ、自分なんてどうでもよかった――!謗りも平気で、でも」
 でも。
 でも決して過去の藍も今苦しむ妲己も、このような“形”を望まなかった!
 護りたかったものを護れたのだと、救えたのだと、信じていたかった!

 だが踏み躙られたうえ、必要のない苦しみを生めと嗤われたなら―――今世の藍から、蘇った過去の妲己へ贈るは稲妻。
 撓った雷公鞭が音速の一撃と嘆く仙女へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

虹月・天柳
自死封じの呪、か。保険に近いものだったのだろうが、この状況に於いては最悪の再現性だな。


妲己のUCには義眼とピアスに仕込んでいる【狂気耐性】の術式と「泡影の角燈」が齎す【環境耐性】で人形憑きの悪魔たちごと影響をカバー。

飛び回り襲い掛かってくる武器の群れの初撃は「ウト」の繰る糸での【捕縛】、「ヴィトニール」の仕込み銃よる【零距離射撃】、「ケートゥ」の【斬撃波】等で弾き飛ばして対応。
直ぐに此方もUCを発動し、飛び交う武器を纏めて刃の手脚を備えたマネキンのような人形の群れに変換。妲己へと嗾ける。



●蝶を獲る
「――最悪の再現性だな」
 つい虹月・天柳(人形憑かせの悪魔遣い・f30238)の口をついて出た言葉が、ひらり交わした妲己の刃に斬り裂かれる。
 静かに涙する目の前の仙女はあまりにも憐れであった。
 命を賭した行いは踏み躙られ、最中に成した悪行のみを語り継がれ、そして望まず甦らされた現在、自死も儘ならない。
 濃すぎる花の馨に目を顰めながら、天柳は髪に隠れたピアスを黒革に包まれた指先でなぞればこの地に蔓延る狂気へ対する加護が意識を包み、呼応するように左の義眼も左右の視界から狂気を拭う。
『わたし……私は、』
「……」
 声すら甘い。
 それは望まぬ誘惑で願わぬ幻惑と分かるからこそ、天柳は角燈の燈火の下黙して糸を手繰る。
「転換せよ」
 それは呼び起こす合図。
「変容せよ」
 くるりと人形の義肢がまわり、蠢いて。
「汝は僕」
 起きた人形は一体の少年に二体の青年。
「我が手足――」
 朗々と紡がれたUC―転変偶人の令―が、天柳狙って飛来した刃を強靭な絲で絡めとったウト、大刀を正確な射撃で撃ち落としたヴィトニール、無数の鏢を撃ち落とす!
「行け」
 止められた妲己の得物が地に落とされると同時に、集い刃纏った人形へと変換され次に飛来した刃の群れを防いでゆく。その中を、進んだ末に。
『……ごめん、なさい』
「難儀なことだ」
 抵抗しない妲己の胸を、天柳の操る刃人形の群れが貫いた。
 無抵抗で受け入れられたそれにしたのは、ただ一瞥。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
望まずオブリビオンとして蘇った者を見る事はあったが、その中でもこれはおよそ最悪の部類だろ
救うことは出来ないのなら、せめて――

宝貝たる利剣を手に、攻撃が飛んでくる方向を限定する為、敢えて壁際に立って飛び交う武器を弾き、破壊。または回避しながら凌いでいこう
殺生狐理精には憑依されないようそもそも回避するのが理想だが、無理なら急所を避けて、自分に刀を突き立てる――これでも破魔の力が祓ってくれるだろう

封神台は破壊されてしまったが……ただ一時であっても。世界からオブリビオンの驚異を取り除く事ができていた
なら、あなたのやった事は無駄じゃない。俺達が、無駄にはさせないさ
ただ渾身の一刀を、妲己へと



●花に燕の
 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は詰めた息を細く吐いた。
「ほんと最悪の部類だろ、これ」
 酷なことをと言ったとてこうも酷いものなど見たことが無い。
 重ねて言えばいくら仙人だろうと仙女だろうと、“オブリビオンとして蘇らされること”を喜ぶ者など――……まして“オブリビオンを封じるために命擲った妲己”をオブリビオンにすることは、あまりにも最悪だった。
「……救うことは、」
 きっと、妲己の命があるままでは叶わぬことだろうと鏡介には直感的に分かる。
 これは“斬らねば”断てぬ鎖のようなもの―――……ならば、成すことは一つだけ。静かに利剣【清祓】をぬけば、溢れる清浄さが桃花の花弁となって零れ落ちた。
「せめても妲己、君に」
 手向けの一閃を見舞うことを誓おう。

「っ!」
『ああっ……!』
 死角から襲い来た青龍刀が鋭く鏡介の腕を掠める。悲鳴染みた妲己の声は甘くも、悲壮に満ちている。
 大きな瞳を潤ませ震わせる様は余りに香り高く、常ならば意識せずとも魂すら奪われていたかもしれない。だが、手中で正常な香り零す刃あればこそ、鏡介の瞳には妲己が悲しみにくれる一人の少女にさえ見えた。
 空踊りまわる狐狸がにやにやわらいで鏡介の殺戮と欲情煽らんとするが、揮われる刃の香気と鋭さに斬り捨てられる度、忌々し気に鏡介を睨めつけ地に落ちる。
 祓い斬り捨てその先で――鏡介は、微笑んだ。
「ただ一時であっても、この世界からオブリビオンの脅威を取り除くことが出来ていたあなたの行いは、決して無駄じゃない」
『……ありがとう、私の心まで……お救い下さるのですね』
 命救えなくとも、守れるものはあるから。
「封神台壊れた今でも、俺達があなたの行いを無駄にはさせないさ」

 揮う一閃、地滑り天空へ舞う燕が如く。
 UC―壱の型【飛燕】―が、その細頸を断つ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
薬も過ぎれば毒となる。淫靡な気配でむせ返りそうです。
ですが、世の中便利なものがあるのです。スペースシップワールドで一般的な、「着用してもそうとは見えない極薄透明な宇宙服」。
これを事前に知人から借りましょう。いかに誑かしの香気とて、宇宙服に浸透するのは無理なはず。

とはいえ、宇宙服に傷が付くと終わりですしね。流星胡蝶剣を裁断鋏『Gemeinde』で「受け流し」、再びの攻撃態勢に入る前に、「全力魔法」「範囲攻撃」「催眠術」「歌唱」「楽器演奏」でアンチウォーヴォイス。伴奏は小脇に抱えた竪琴で。

これで邪魔は入らなくなりました。
妲己さん、どのような最期をお望みですか? せめてお望みの葬送歌でお送りします。



●声響かせて
 噎せ返る空気に眉顰めながら、儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は纏う“それ”を確認するように指先で摘まむと不思議な膜のようなものが一枚。
「まったく世の中便利になったものです。と……悠長にもしていられませんね」
 それは封神武侠界とは異なる宇宙の理を中心とする世界で最新鋭の所謂“宇宙服”。重力無き世界でも一切のものを受け付けず弾くと評判のそれを纏い、芽亜は襲い来る刃に裁断鋏『Gemeinde』を向ける。
「、っと……!」
 足掬う様に飛来した大刀を跳び上がり避け、大上段から振り下ろされた青龍刀を弾いた瞬間、雨の如く降る鏢を転がり避ける。
 息つく暇もない武器という武器の荒波は生半可ではない。
「私の演奏をお聞きになるのなら、爪牙は収めで頂きましょう!」
 起き上がり様、小脇の竪琴を弾く。
 UC―アンチウォーヴォイス―を響かせれば、その音に絡めとられた妲己の刃が次々と地落ちた。
「ふぅ……、第二陣ですか!」
 音も無く――否、風切り音纏い飛来する無数の刃を逃れんと芽亜は駆けながら、じわりと妲己と距離を詰めて。

 初めて近くで見た妲己は、泣いていた。
 いつのまにか切れた頬から血を滴らせた芽亜の姿を目にして、ごめんなさいと呟く妲己の儚くも甘いこと――対策と意地が無ければ、きっと同性である自身さえ心ごと絡めとられていただろうと、後に芽亜は言う。

「妲己さん、あなたはどのような葬送歌をお望みですか?」
『私?私、は……』

 “やさしいあなたのこえがいいわ”そう瞳伏せた妲己の耳に、永き眠りの歌が捧げられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

無間・わだち


生は尊ばれるべきだ
死は悼まれるべきだ
死者を、弄ぶな

飛び交う刃物の群れを感覚で潜り抜け
多少の傷は耐えられる
そういう躰だ【激痛耐性、継戦能力

己の痛んでいる気がする傷よりも
痛いと嘆く人が居る

抜けた先
偽神兵器である黒球を放って彼女を蓮の花の群れへ
彼女の香気は望まぬ穢れ
すべて、無力化する【浄化、狂気耐性、呪詛耐性

たとえ泣いてばかりでも
彼女の声がする
有象無象のささやきと一緒に
悲鳴がする

泣きすぎて、疲れてしまったでしょう
大丈夫
俺が、此処に居ます

接近、偽神兵器を小さな刃に変えて
ただ静かに心臓を貫く
【捨て身の一撃、貫通攻撃、優しさ

その罪も罰も
全部俺に預けていいですよ

おやすみなさい
もう、起きなくていいんです



●咲いた花に清らな水を
 命は、尊い。
 弔った経験があるからこそ、無間・わだち(泥犂・f24410)は知っている。

「生は尊ばれるべきだ」
 首を捻って突貫してきた方天画戟を躱す。
「死は悼まれるべきだ」
 飛び込むように鏢の群れを躱し、飛来する鉄扇の空気に抗わず身を任せれば当たらない。
 歩くように息をするように、封神武侠の言葉にするならば舞を舞うよりしなやかにわだちは飛び回る無数の刃を避けてゆく。
 嫋やかな足運びから想像できぬ燃えるような眸で、封神仙女 妲己を無理やり蘇らせた者を睨んだ。
「死者を、弄ぶな」

 届かぬ言葉と知りながら、成した者が歯牙にも掛けぬ思いと知りながら、それでも。

『ごめんなさい、私……私が、』
 小さな声が幼子の様に泣いている。
 鼓動の無い胸が痛んだ気がして押さえた手が、青龍刀の刃に裂かれ指が飛んだ。小さな悲鳴にわだちは申し訳ないことをしたような感覚を抱きながらも、足は止めず。
「だいじょうぶ。大丈夫ですよ」
 ただ、安心させたくて言葉にする。
 穢れた泥から芽吹いた蓮のような貴女を相応しい場所へ、今。
「……泣くのは、疲れたでしょう」
『あ、あぁ……!』
 わだちの先行させた偽神兵器がUC―浄土―の力を以て妲己の忌むべき香気を祓い、本来ちょっと能力秀でた仙女であった妲己の姿へと戻してやれば、嘆きではない雫が白い頬を滑る。
 咲いた仙界の桃花ではなく、天上の蓮花。
『……きれい、きれいね』
「もう、“一人で”背負って泣かなくていいんですよ」
 それはきっと欲した言葉のうちの一つ。
 ただ仙女の一人で在りたかった、見ないフリをした過去に求めた言葉一片。

「おやすみなさい。罪も、罰も、全部俺に預けていいですよ」
『あ……ぁ、あ……!』

 音を止めた命が一つ、美しいままわだちの腕の中にあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
己を全てかけ、且つて果たした彼女を
倒すことがだけが、解放なのですね
…はい、これ以上尊厳を踏み躙られ、悲しい思いをせぬよう

共にある火の精くれあに、狙われぬよう姿を隠しておいて
魅了されれば、炙って痛みで正気を取り戻す切欠を作って欲しいと頼み

縦横無地に不意打ち飛んでくる武器へは
軌道を見切りで読み可能な限り回避しながら駆け
回避叶わぬと判断したものは、薙ぎ払いで軌道逸らし
致命傷は避けつつ、距離を詰める

香気をわずかでも感じれば、くれあの名を呼び
同時に、自身を手を短刀で切り抵抗
それと共に…潤む瞳を逸らさず見て

介刀による血の刃を生み
嘆きと苦しみから解放されるよう
祈りながら、斬る

もう、泣かないで
おやすみなさい



●片銀杏のさざめきに
 命を賭した“まことのおはなし”は、きちんと終わったはずだった。
 だが、無理矢理張り付けられた新しいページは主人公たる妲己の求めぬ形で新たに紡がれようとしている。
「……これ以上尊厳を踏み躙られ、悲しい思いをせぬように」
 その無理矢理張り付けられたページを今、切り離し燃やす。
 微かに聞こえる封神仙女 妲己の涙声はどこか苦しくて、枯れ尾花の鯉口をいつでも切れるようにしながら冴島・類(公孫樹・f13398)は“くれあ”と柔らかく炎精の名を呼んだ。
 ぱちぱちと火花爆ぜるような声が類に問う。
「くれあ、隠れていて。でももし、僕がおかしければあぶって欲しいんだ」
 “正気になるまでね”と言えばパチン!と一際爆ぜた火花が“了解”の意を示す。
 呼気短く、とんっと跳び上がり避けた屠龍刀を蹴り出し落ち葉より軌道の読める鉄扇に体を捻り、着地から間髪入れずに地を蹴った。
 落ち着いて違えずに、必要なのは冷静さと判断力。

 氷柱が如く突き立てられる火尖鎗の群れの間を縫う。
 ごめんなさいと、嫋やかに唇で紡いだ――否、そう類が感じた瞬間“芯”の揺らぐような、酒精度の高い酒を呷ったような感覚に頭が揺れて。
「っ、くれ あ」
 呼びかけより早く気高き炎が類の頬を張り飛ばす。
 現実に戻ると同時に、掠めた鏢が数本腕に突き立って。払いきれなかった痛みを呑み込んで、妲己とぶつかった視線を類は逸らさなかった。
 宝石より華やかに潤む瞳は喩えるものないほど艶めいて見え、優しく触れたくなる衝動を炎に焼かせて走った―――先で。

『ごめんなさい、ごめんなさい……怪我を、させて……でも、』
「分かっています。だから、もう」
 一歩、UC―介刀―で抉った腕の傷から滴った赤が空舞う刃と似た鋭利な姿を取れば、類は勿論妲己もまた行動を理解し、そして迷わない。

「もう、おやすみなさい」
 潤む瞳から落ちた雫は類の袖に染みて、落ちぬまますくわれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
※戦場⑬で入手したサシェ型宝貝【魔符桃香】を持参

部屋に入る前に、深呼吸なの
(内ポケットのサシェに触れて)
桃の精さん、力を、貸してね?
桃色の温かくて気が鎮まる闘気を纏うよ(【狂気耐性・呪詛・落ち着き・ジャミング】)※UC対策

桃の闘気に魔力を乗せて、強力になった【オーラ防御】の【結界術】で守りを固めて、【勇気】を出して、行くの!
妲己さん、望みを、叶えて上げに来たよ

結界・闘気と【第六感】、狼の脚力【ダッシュ・残像】も合わせて、武器を避けながら近づくの

手を差し伸べる様に、【浄化】の【祈り】を込めたUCを【全力魔術】で発動

今のぼくには、こんな形でしか力になって上げられないの…
ごめんね…



●花香の慈悲に
「妲己さんっ!」
 縦横無尽に襲い来る刃の群れを反射的に避けながら、咽る香気を振り払いロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は叫ぶ。
 此処へ踏み込む直前、自分と力を貸してくれた桃の精と約束をしたからだ。
 纏う闘気切り刻むように大包丁が、方天画戟が来る。それを跳んで跳ね、伏せ避けて、声を張る。
「望みっ……望みを、叶えに来たよ!」
 胸に燈した勇気が温かいから、ロランはちゃんと戦える。
 ほとりと落ちゆく封神仙女 妲己の涙が宝石のように見えたとて、香ったサシェが瑞々しくてどこまでも優しいから。
「ぼくがちゃんと、辿り着く……!」
 左右から回転して迫る乾坤圏を伏せ避ければ鎖鎌が迫る。迷わず力込めた狼の足で軽やかに飛び越え、受け身取り転がれば間髪入れずに鏢が追い立てて。
 どくどくと心臓が煩いけれど、胸ポケットのサシェが瑞々しく香るたびロランの心は落ち着けた。
『私、私がいるから……ごめんなさい、ごめんなさいっ』
「……っ、」
 妲己に施された全てが、ロランには重苦しい呪いに見えて仕方が無かった。
 複雑怪奇に一筋縄では解けないよう数多の結び目とコードを混ぜた“呪い”。妲己へこの呪い――否、術式を施したという仙翁達はどういう腹積もりだったのだろうか?未だ人生経験の多くないロランに分かる事実は一つ。
「ひどいんだよ」
 苦しく辛い封神台建立へ命擲つことを了承した仙女を、言葉巧みに――……そう嫌な考えが胸の裡で鎌首擡げた時、腕を掠めた青龍刀の痛みが思考の海からロランを引き上げる。
『(ごめんなさい)』
「違う……違うの」
 ロランは傷付く姿に涙流す妲己を、どうしても救いたくて手を伸ばす。

 指先に浄化と祈りを。触れると同時に全力でUC―破邪結界【Luce a spirale】―を織り上げる――!!
「今のぼくは、こんな形でしか……」
『……いいえ、いいえ、ありがとう坊や……この地の空気は、本当はこうなのね』
 束の間の青が天から覗く。
 差す輝きに甘い色の髪を揺らした妲己に光を。

 複雑なコードは全部千切って浄炎で焼いてしまおう。
地に福音を、空に柱の道筋を。きっときっとこの“仙女”は歩いてゆけるから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花川・小町
【戯】◎
(先日得た宝貝より、玉虫の紅を点して粧い、貝も懐に忍ばせ――破邪退魔の謂れ持つ桃と紅を纏って、破魔の力を強めて臨み)
貢物は既に誂えたつもりだったけれど、まさか自ら死を御所望だなんて、ね?
麗しき華を手折るだなんて心苦しいけれど、其こそが他ならぬ餞となるのなら――手も心も、尽くしましょうとも

濁流は氷属性と浄化の気を込めた結界術で、浄め凍てつかせ抑え込みを

UC使えたら一息に攻勢へ
オーラ防御で鎧った神霊体となり、刃は衝撃波の範囲攻撃で凪ぎ払い道を開いて

宝貝の紅でしたためた霊符をひらり
彼女の静かな眠りを祈り捧げましょう
元より、害意より寧ろ友好の意を懐いて

義の為、健気な華の願いの為とあらば――私もまた、例えこの手を血に染めてでも
その心に、報いましょう
その泪を、拭いましょう

もう泣かないで
後は私達が引き受けたわ
――きっと貴女が心穏やかに休める時を、捧げましょう


佳月・清宵
【戯】◎
(先日の宴で手にした宝貝――桃の意匠や霊力で飾り上げられた煙管を燻らせ、その香を纏えば――ああ、コイツは良い、悪酔いせずに済みそうだ)
おう、涙ながらに死をお求めたァ、どうにも人を思い悩ませるのが上手い姫さんなこって
――ま、俺もてめぇも、何であれ元からその腹積もりだったろ
華摘みなんざ趣味じゃねぇが、香気に狂って泣き濡れる華を愛で続ける悪趣味なんざ、もっと御免だ
望みを叶えてしんぜよう

小町の結界で抑え切れぬ分の刃へ、暗器ぶつけて武器落とし
UC使えるようになるまで凌ぎつつ、刃の流れや癖を観察し、見切りに繋げる
周辺地形も探り、岩や壁等の遮蔽物利用し被害軽減

攻勢に回る機が訪れりゃ、小町と一気に駆ける
何、死を捧ぐ事こそ、友好の証に等しい――迷う事なく、夢幻と眠り齎す香を、煙管より相手へ

ああ、もう十分だ
嘆かずとも良い
泣かずとも良い
後は此方で請け負ってやる

重荷は置いて、ゆっくり休んでな



●紅煙くゆる終いに
 玉虫の紅を小指でなぞり、唇と目尻に施した破邪の呪いは常よりいっそう花川・小町(花遊・f03026)を艶めかせると同時に纏う小町の意識も、恐らく見た者の意識も明瞭にするだろう。
 並び立つ佳月・清宵(霞・f14015)が咥えていた煙管から唇を離し、ふうっと息を吐けばどこか濁った周囲の空気と煙の香を感じたものの周囲を徐々に正常にしてゆく。
 揃って見上げた小高い山の先に嘆く女と無粋な数多の武器が我が物顔で空を行く様に、清宵は笑った。
「涙ながらに死をお求めたァ驚いた。どうにも人を悩ませるのが上手い姫さんなこって」
「そうね……貢物は既に拵えたつもりだったけれど、まさか自ら死をご所望だなんて、ね?」
 ごめんなさい、と意識せぬ甘い声が響く。
 白い肌を玉のような涙が滑る――……それだけで、何の心構えも無ければ容易く心を掬われていたことだろうけれど。
「悪酔いしねェ程度に、かね」
「本当は麗しき華を手折るなんて心苦しいのだけれど」
 清宵がちろりと隣の小町を伺えば、残念そうに頬に手を添えた小町が溜息一つ。
 遠くの傾国と並びそうな様子ながら妲己と対極の色湛えた“黄金の眸”だけが、燈火の如くきろきろと燃えているではないか。
 何と言葉より明瞭な事か―――そう気が付いた瞬間、つい清宵は喉を鳴らしていた。
「くくくっ――ま、俺もてめぇも何であれ元からその腹積もりだったろ」
「あらやあね、其れこそが他ならぬ餞になるからこそ――手も心も、尽くしようがあるんじゃない」
 微笑んだ瞬間、二人の間を割るように降った火尖鎗の雨を揃って飛び避けていた。

 しゃら、と小町の花飾りが光を零す。
 紅施した指先まで神経を通し、返す手で濃すぎる妲己の香で満たされた空気を握りながら振るう袖で空を切るUC―巫覡載霊の舞―の足運びそのままに、薙刀の形を取った光を手に小町は微笑む。
「さ、始めましょう」
 既に凍てつかせた荒れ狂っていた濁流は清らな流れに変わり、濁るは妲己の足元ばかり。
 雨霰が如く降り注ぐ無数の刃の群れを光の薙刀で振り払い、死角から襲い来る土砂降りの鏢を衝撃波で散らせば、その間を清宵が抜けた。
「華摘みなんだ趣味じゃねぇ。が――泣き濡れる華を愛でるほど悪趣味じゃねぇんでな」
 鎖くねらせ無軌道に襲う鎖鎌を手裏剣で射落としながら、咥えた桃の意匠麗しい煙管に詰めた狐火の煙草を静かに燻らせ曇天の空を仰ぐ。
 ゆるり、此処へ着いた時から拾い続けていた音の法則が言葉も無く解される。
「――小町、次の斬馬刀が来たら」
「そろそろ華はお眠の時間ね」
 岩に当たり“わざと”無軌道描く鎖鎌を鉄球で撃ち落とし、鏢の群れは小町の衝撃波が散らした瞬間――“縦に”回転する斬馬刀が“二人の間を割るように”迫るから。

 合図など要らないのだ。
 続く火尖鎗の雨を走り抜け横回転する大包丁を伏せ避けたその先で、華が泣いていた。

『あ、ああ……わたし、わた、しが……!』
 ほたほたと妲己が泣いたのは、清宵も小町も当人達気付かぬ間に数多の細かな傷を纏っていたからだ。その傷の原因が、仙翁達によって自身に刻まれた呪の所為だと分かるから。
 ごめんなさいと、また泣いてしまう妲己に清宵と小町は顔を見合わせ笑っていた。
「なあアンタ、もう十分だ」
「ほら、あんまり泣いたら可愛い顔が台無しよ?」
 ふうっと清宵が吐いた清煙が妲己に付き纏う呪に似た香気を振り祓い、なぞるように小町がそっと妲己の眦に施した破邪の紅が“心惑わす呪”が施されていた視線をただの仙女のものへと戻す。
 それでも損なわれぬ美しさこそが、本来妲己が持っていた輝きなのだろう。

『……あ、どう、して……どうして、こんなにっ』
 その変化を力の持ち主たる妲己は具に感じ取り二人の顔を見た。
 すれば清宵も小町も、敵ではない者へ向ける柔らかな温かい視線で妲己を見つめ、告げる。
「嘆かずとも、泣かずとも良いのさ。――後は此方で請け負ってやる」
「その心と泪に報い、拭いに来たのよ。――後は私達が引き受けたわ」

 力強い言葉、求めていた言の葉がとうとう嘆いていた独りの仙女のこころをすくう。
 清らな炎は熱も痛みも無く、ただ送り火のように妲己へと道を示した。

 輝く全ては、君が為。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月27日


挿絵イラスト