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殲神封神大戦⑪～王翦大将軍

作者：ゆうきつかさ

●封神武侠界
「……えっ？　へいか、なむなむちーんなの！？　この王翦が駆けつける間もなく、やられちゃうなんて……。無能な張角がこ～んな遠い所に配置するから、何にも出来なかったじゃん！　ま、いっか。過ぎた事だし。へいかは迷わず成仏してね。あっしは新しいへーかの「兵馬俑」を探そっと。へーかはもう『増殖する水銀』だから、本当は身体も思考もいらないけど、天下を治めるには、民草に納得される肉体と脳味噌が必要だもんね」
　王翦大将軍が封神武侠界の果てにある楽浪郡で、楽しそうに鼻歌を歌いつつ、空中から黄金に輝く巨大宮殿『瑞獣載霊殿』を召喚した。
「うにゃらからにゃ、ぽいっ！」
　それに合わせて、王翦大将軍が不思議な儀式を行い、瑞獣載霊殿が黄金の巨人に変形する準備を整えた。
　既にカウントダウンは始まっており、空中に浮かぶ『黄金の数字』がゼロになった時、黄金の巨人は完成らしい。
　それまでに宮殿内部にいる王翦を追い詰め、撃破しなければ、取り返しのつかない事態になってしまう事は確実だった。

●ガジルからの依頼
「黄金の巨人……完成するとヤバイけど……ボクは見てみたいんだよ！」
　ガジル・コリアンダー（キマイラのスカイダンサー・f00907）が理性と煩悩に挟まれて苦しみながら、今回の依頼を説明した。
　今回の目的は、王翦大将軍の撃破。
　ただし、王翦は巨大宮殿『瑞獣載霊殿』内におり、猟兵達の存在に気づくと逃げ出してしまうようである。
　その上、宮殿内部は儀式の影響で常に変形を続けており、注意しておかないと、壁に挟まれたり、穴に落ちたりしてしまうらしい。
　その上、『黄金の数字』がゼロになると、黄金の巨人が完成してしまうため、そうなってしまう前に撃破しなければならないようだ。

第1章 ボス戦 『『王翦大将軍』』

POW   :    王翦異界混成軍 レベル×1体の【異世界オブリビオン兵団】を召喚する。［異世界オブリビオン兵団］は【出身世界】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。 SPD   :    王翦奇兵用兵術 いま戦っている対象に有効な【ユーベルコードを使う新たなオブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。 WIZ   :    王翦龍神変異軍 召喚したレベル×1体の【オブリビオン軍団】に【龍の角と尾、翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。 イラスト：藤科遥市 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

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「わわ、もう来ちゃったの？　まだ変形が終わっていないのに！　こういう時は、変形が終わるまで待っているのが、悪役のお約束でしょ？」
　黄金に輝く巨大宮殿『瑞獣載霊殿』の中で悪巧みをしていた王翦大将軍は、予想外の出来事に驚き、激しく動揺し始めた。
　当初の予定では、瑞獣載霊殿が黄金の巨人に変形を終えたのと同時に猟兵達を踏み潰し、高笑いを上げながら勝利を宣言するはずだったため、既に気持ちは御通夜のようである。
「……って、ボク達、完全に悪役扱いですか！？」
　その言葉に違和感を覚えた琶咲・真琴（１つの真実に惑う継承者・f08611）が、王翦大将軍にツッコミを入れた。
　そもそも、悪役扱いされる事自体、あり得ない。
「うん、悪役。だって、あっしの邪魔をしているし」
　王翦大将軍が躊躇う事なく、キッパリと答えを返した。
「まあ、確かに……そうだけど……。それで悪役って……」
　真琴が腑に落ちない様子で、言葉を詰まらせた。
　確かに、王翦大将軍からすれば、作戦の邪魔をする悪役だが、それも世界を守るため。
　世界からすれば、王翦大将軍の方が、間違いなく悪役だった。
「まあ、それなら悪役って事でいいか」
　諏訪野・啓太郎（さすらいのライダー・f20403）が面倒臭そうにしながら、王翦大将軍の言葉を軽く流した。
　ここで文句を言ったところで、なんだかんだと屁理屈をこねて悪役扱いするのがオチなので、これ以上反論しても時間の無駄であると判断したようである。
「ほら、見ろ！　やっぱり、悪役じゃんか。やーい、やーい」
　その事に調子に乗った王翦大将軍が小馬鹿にした様子で、啓太郎のまわりを跳ね回った。
「……！」
　これには啓太郎もイラッとしたが、抜群にイイ笑顔を浮かべて、『必ず倒す』と心に誓った。
「あらあら……。大変な事になってますね。私達が悪役扱いされるなんて……」
　土御門・泰花（風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833）が、王翦大将軍を見つめてニコっと笑った。
　表面上は柔和な笑みを浮かべているものの、首根っこを掴む勢いで殺気を放っており、利口な相手であれば借りてきた猫になるほど、空気がピリピリとしていた。
「ひょっとして、怒ってる？」
　そんな空気を察した王翦大将軍が、警戒した様子で身構えた。
「いえ、別に……。怒っていませんよ？」
　その間も、泰花は笑顔を浮かべ、視線を逸らす事はなかった。
「うう……」
　そのため、王翦大将軍も視線を逸らす事が出来ず、次第に恐怖が膨らんでいった。
「あ、あの……喧嘩は良くないと思うんですが……」
　その事に恐怖と危機感を覚えつつ、ジード・フラミア（人形遣いで人間遣いなスクラップビルダー・f09933）が声を掛けた。
「そうそう、そんなに怒ると……いや、何でもない」
　王翦大将軍が泰花を茶化そうとして、途中で言葉をゴクンと飲み込んだ。
　これ以上は……ヤバイ。
　その事を本能的に感じてしまう程、泰花の笑顔が怖かった。
「何やら困っているようですね。私も手を貸しますから、すぐに解決してしまいましょう。とりあえず、あの敵を倒せばいいんですね」
　そんな中、エリー・マイヤー（被造物・f29376）が、王翦大将軍の前に陣取った。
「えっ？　何っ？　何っ？　ひょっとして、あっしが悪者？　なんで、あっしは何も悪い事をしていないのに！」
　その途端、王翦大将軍が不満げな様子で、プンスカと怒った。
「さてと、I.S.T起動。お仕事、お仕事。さあ、私の研究成果の実験台になってもらうよ。そのために、ここまで来たからね」
　その言葉を遮るようにして、月夜・玲（頂の探究者・f01605）が、王翦大将軍に迫っていった。
「……って、何、研究結果の実験台って！　すっごく怖いんだけど……！」
　王翦大将軍が身の危険を感じ、全身に鳥肌を立たせた。
　それが何なのか分からなかったが、色々と怖い考えが脳裏に浮かんでいるため、ガタブルが止まらなくなっていた。
「ああ、なるほど……」
　そこに追い打ちをかけるようにして、杼糸・絡新婦（繰るモノ・f01494）が含みのある笑みを浮かべた。
「えっ？　何っ！　何っ！　何っ！　何か知っているの？」
　王翦大将軍が青ざめた表情を浮かべ、心配した様子で絡新婦に駆け寄った。
「それは、まあ……秘密や」
　絡新婦が王翦大将軍の不安を煽るようにして、あえて何も答えなかった。
「……って、なんで笑うの？　そう言う状況じゃないじゃん！」
　その事で余計に不安な気持ちになったのか、王翦大将軍が涙目になって絡新婦に文句を言った。
「ここで無駄話をしても意味がありません。私達はあなたを倒すため、ここまで来たのですから……！」
　すぐさま、石森・ユリ（強化人間のスーパーヒーロー・f27532）が間合いを詰め、剣の形状になった偽神兵器で、王翦大将軍に攻撃を仕掛けていった。
「いや、そう言うの、いいから！　あっしは逃げるし！」
　その攻撃を避けながら、王翦大将軍が全速力で走り出した。
　どうやら、瑞獣載霊殿が黄金の巨人に変形を終えるまで、逃げ続けるつもりでいるらしく、正々堂々と戦う気など微塵もなかったようである。
　そのため、自分では乳蛙、オブリビオンを召喚し、自分を守る盾にした。
　オブリビオンは、全身に鎧を纏ったような姿をしており、巨大なハンマーを握り締めていた。
「……悪いが、お前の相手をしている暇はない」
　即座に、啓太郎が【ゴッドスピードライド】で宇宙バイクを変形させ、勢いよく乗り込むと、オブリビオンの横を通り抜けた。
「……逃がすか！」
　その足を追うようにして、オブリビオンがガシャコンと金属音を響かせ、全速力で走り出した。
　だが、いくらスピードを上げても、啓太郎には追いつく事が出来ず、触れる事さえ出来なかった。
　その間に、啓太郎が王翦大将軍を追い越し、逃げ道を塞ぐようにして陣取った。
「……って、嘘、嘘、嘘！」
　その事に危機感を覚えた王翦大将軍が、慌てた様子で踵を返した。
「いえ、これは現実です」
　そこに追い打ちをかけるようにして、ユリが【クロックアップ・スピード】で指を鳴らし、高速戦闘モードに変身すると、爆発的に増したスピードと反応速度を駆使して王翦大将軍に迫り、捨て身の覚悟で斬りつけた。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ！　何だよ、これ！　全然、役に立たないじゃん！」
　王翦大将軍が傷ついた身体を庇いながら、恨めしそうにオブリビオンを睨みつけた。
「余所見をしている暇は無いと思うんやけど……」
　それと同時に、絡新婦が【駆けるモノ（カケルモノ）】を発動させ、全身が鎧で覆われた大型四足獣と共に、王翦大将軍の後方にテレポートした。
「……ちょっ！　集団でフルボッコはないでしょ！　ええっと、こうなったら！」
　王翦大将軍が慌てた様子でオブリビオン軍団を召喚し、自分を守るようにして陣取らせた。
　オブリビオン軍団は竜人のような姿をしており、猟兵達に対して激しい敵意を向けていた。
「これは面倒な事になったようね。まあ、どれだけ毒に耐えられるのか、試してみたいところだけど……」
　バジル・サラザール（猛毒系女史・f01544）が、オブリビオン軍団に視線を送った。
　オブリビオン軍団は、先程のオブリビオンよりも強く、オマケに飛翔能力まで得ているようだった。
　その力をフル活用して、王翦大将軍を守っており、命を捨てる覚悟もあるようだった。
「みんな、死ぬ事なの……？」
　そんな空気を察したニケ・ブレジニィ（桜の精の王子様・f34154）が、複雑な気持ちになった。
「そんなの当然だろ！」
「俺達の命は、王翦大将軍のモノ」
「生きるか死ぬかも、王翦大将軍様次第！」
　オブリビオン軍団が殺気立った様子で、猟兵達に攻撃を仕掛けていった。
「それなら、倒すだけです！」
　すぐさま、真琴が【神羅畏楼・白銀蜃焔（シンライロウ・ハクギンシンエン）】を発動させ、畏れを発する白焔の炎を113個放ち、オブリビオン軍団を炎に包んだ。
「う、嘘だろ！」
「まだ触れてもいないのに……！」
「せめて一撃だけでも、ぐぎゃああああああああ！」
　その途端、オブリビオン軍団が悲鳴を上げ、炎の熱さから逃れるようにして、床をゴロゴロと転がり始めた。
　しかし、白焔の炎がネットリと纏わりついてきたため、熱さからは逃れる事が出来ず消し炭と化して動かなくなった。
「う、嘘！」
　それを目の当たりにした王翦大将軍が、オブリビオン軍団を見捨てて、脱兎の如く逃げ出した。
「逃がしませんよ、絶対に……！」
　次の瞬間、泰花が【巫覡載霊の舞】で神霊体に変身し、巴形薙刀【菫】を振り下ろし、衝撃波を飛ばしてオブリビオン軍団を蹴散らした。
　だが、オブリビオン軍団は怯む事なく壁になり、王翦大将軍が逃げるまでの時間を稼いだ。
「あ、あの……退いてください。そうしないと……」
　ジードがモジモジとした様子で、『“ワタシ”の人形劇（メリア）』を発動させ、メリア人形に視線を送った。
『ワタシがダンスを踊っちゃいマスヨ！』
　その視線に気づいたメリア人形が華麗にダンスを披露する事で、オブリビオン軍団の注意を引いた。
「うぐっ……」
「なんだ、この感覚は……！」
　その影響を受けたオブリビオン軍団が、もっとダンスを観たいという衝動に襲われ、身動きを取る事が出来なくなった。
「せっかくなので、もっと盛り上げさせていただきますわ」
　その流れに乗るようにして、ルーヴェニア・サンテチエンヌ（命短し吼えよ狼　夜は明けねど歌えよ乙女・f13108）がエレキギターを掻き鳴らし、声高らかに歌声を響かせた。
　その歌声に合わせて、メリア人形が華麗に踊り、オブリビオン軍団の注意を引いた。
「うぐぐっ！」
「正直、嫌いじゃない」
「だが、戦わねば……！」
　その事に動揺したオブリビオン軍団が、ギチギチと歯を鳴らした。
　猟兵達を倒さなければいけないのは事実だが、メリア人形の踊りから目を逸らす事が出来なかった。
「もう戦う必要なんてありませんわ」
　ルーヴェニアが【Les chansons de mon amie（レションソンデモナミ・ココロノトモノウタ）】を発動させ、共感能力によって『わかってもらえた』の類の感情を与え、召喚した楽器の音色と、自らの歌声を響かせる事で、オブリビオン軍団に相手の望みが叶った幻影を見せ、容赦なく肉体を蝕んだ。
「それじゃ、たっぷりと毒を味わいなさい」
　続いて、バジルが【ポイズン・スピア】を仕掛け、毒属性の魔法の槍を雨の如く降らせた。
　その槍がザクザクとオブリビオン軍団に突き刺さり、猛毒で身体が蝕まれていった。
「ふ、ふざけるなっ！」
「また俺達は戦えるっ！　まだ……戦えるんだ！」
「そ、それなのに……身体が……。まさか、これは……毒か！」
　その事が原因でオブリビオン軍団は、力を発揮する事が出来ず、次々と力尽きて倒れていった。
「……そろそろ休もう。あなたの名を忘れないように、私は憶えておいてあげるから……」
　そんな中、ニケが【桜の癒やし】で桜の花吹雪を放ち、戦闘不能になったオブリビオン達の魂を鎮め、転生できるように祈りを捧げた。
「それじゃ、あっしはこの辺で！」
　そのドサクサに紛れるようにして、王翦大将軍が再び逃げようとした。
「そう簡単に逃げる事が出来ると思ったら、大間違いですよっ！」
　即座に、エリーが【アルジャーノンエフェクト】で脳の演算速度を一時的に増強し、全ての能力を6倍にした上で、念動力を使って王翦大将軍の動きを封じ込めた。
「えっ？　あれ？　どういう事？　身体が全然……動かないんだけど！」
　その事に気づいた王翦大将軍が、必死に身体を動かそうとした。
　だが、その気持ちに反して、指一本さえ動かす事が出来なかったため、今度は異世界オブリビオン兵団を召喚した。
「ひょっとして、このオブリビオン達って、キマイラフューチャー産かな？　なんだかネタキャラばかり揃っているけど……」
　それを目の当たりにした蒼月・暦（デッドマンの闇医者・f27221）が、気まずい様子で汗を流した。
「そうやって見た目だけで判断すると、痛い目を見るからねっ！　……って、何っ、何っ、何っ！」
　その途端、王翦大将軍が異世界オブリビオン兵団に両腕を押さえられ、捧げ物の如く猟兵達に差し出された。
　どうやら、異世界オブリビオン兵団は命が惜しいらしく、王翦大将軍を差し出す代わりに命を助けてほしいようである。
「それじゃ、このノコギリでバラバラにしてあげるね」
　そんな空気を察した暦が、改造ナノブレードで王翦大将軍に斬りかかった。
「……って、ちょ、ちょっと！　当たったら、どうするの？　あっしはデリケートなんだから！」
　王翦大将軍が異世界オブリビオン兵団を払い除け、ギリギリのところで改造ナノブレードを避けた。
「……と言うか、当てようとしているんだけど……」
　その間に、暦が間合いを詰め、再び改造ナノブレードを振り上げた。
「今日は大盤振る舞い！　模造神器4振り、全部持ってけ！」
　それに合わせて、玲が【決戦兵装：建御雷神（ケッセンヘイソウ・タケミカヅチ）】で4振りの模造神器を代償に自身の装備武器の封印を解き、決戦兵装に変化させ、王翦大将軍を斬りつけた。
「う、嘘っ！　まさかの不意打ち……！　い、痛いよぉ……」
　その一撃を喰らった王翦大将軍が傷口を庇いながら、ジリジリと後ろに下がった。
「それじゃ、今度こそ……」
　そこに追い打ちをかけるようにして、暦が【解体ノコギリ（カイタイノコギリ）】を発動させ、改造ナノブレードを振り下ろし、王翦大将軍の身体を両断した。
　それと同時に、瑞獣載霊殿の変形が止まり、完全に動かなくなるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2022年01月24日