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殲神封神大戦⑬〜宝貝一丁、なるはやで!

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『誰か、私を殺してください』
 彼女は願った。
 そしてそれに答えようとする者たちがいた。
 だが、それを拒むものがあった。
 ならば掴むのだ。拒むものを拒むものを。


「あなたのメルでございます。今日も殲神封神大戦の依頼です」
 メル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)が集まった猟兵たちに即席ラーメンを配る。
「はい、とうとう出てきましたね妲己ちゃん。まさかいい人路線とは思いませんでした」
 世界のため自ら汚名を被り悪を成し、その上でなおその志と功績まで踏みにじられようとする悲しき仙女。それが彼女の正体であった。
「本人も死にたがってらっしゃるのですが、まあ知っての通り彼女の魅了は自動発動。本人の意思がどうあれ周囲の全てを魅了し、そして滅ぼしてしまいます」
 その魅了もまた彼女の離反を恐れた仙翁に植え付けられたものだという。
「で、それに対抗する手段は知っての通り。いにしえの仙界「紫霄宫」にある桃の花で宝貝を作って用いること」
 膨大な霊力を秘めた桃花を材料にした宝貝は妲己の魅了すら破る。その為いにしえの仙界への道が通じて以降、多くの猟兵が宝貝を創造してきた。
「とはいえ人によっては宝貝を作っている暇がなかったり、作り忘れてしまった方もいるでしょう。そのような方のため、今回手っ取り早く宝貝を作る場を用意いたしました」
 一応は無くても突破は可能ということも判明してはいるが、やはりそれに特化した道具があった方が心強くはあるだろう。
「お急ぎなので複雑すぎるものは作れませんが、武器、防具、装飾その他、簡単に思いつきそうなものはすぐ作れるはずです。人手がいるならちょうど南蛮門で助けた瑞獣の方々がいるので、恩を着せゴホゴホお願いしたら快く門をくぐって手伝いに来てくれましたのでお使いください」
 彼らはすでに現地で材料の花集めに精を出してくれているという。なんでも少しでも動かないといけない事情に迫られているとかなんとか。
「ちょっとの手間ですぐできる、まさに即席ラーメンのような宝貝ですが、時に暖かい即席ラーメンが戦士の心を奮い立たせることだってあります。満漢全席にも負けない最高の即席ラーメンを作ってきてくださいませ」
 そう言ってメルは紫霄宫へと猟兵たちを送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。

 今回は少々特殊なシナリオとして『妲己に挑みたいけど宝貝持ってない(あるいは新しいのが欲しい)』という方のためのお急ぎシナリオとなります。

 プレイングにて欲しい宝貝と作るための行動を書いていただければ、なんやかんやあって宝貝が完成します。引っ担いで妲己ちゃんの所へ向かってください。文字数が余ったら妲己戦への意気込みや殲神封神大戦前半戦の思い出など語ってみてもよろしいかと。
 基本的に文字数少な目、描写あっさり目での執筆となります。その代わりその分だけ早めのリプレイ完成を目指します。
 また大事なところとして、妲己戦のフレームも『宝貝が絶対必須というわけではありません』。宝貝の効果の最終的な判断は各MS様次第となりますのでご注意ください(一応鳴声自身は適切に使えば効果ありと判定する予定です)。

 以上、諸々注意事項をご了承のうえご参加ください。

 それでは、よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『破魔の宝貝』

POW   :    大量の花を集め、多くの霊力を得る。

SPD   :    仙界の他の素材と組み合わせ、更なる力を引き出す。

WIZ   :    魔術的な加工を施し、宝貝の性能を高める。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

岩倉・鈴音
よっしやー!
【浄化】と【呪詛】に使えるおトク用マイク型宝貝『マイク破魔』をつくるぜ〜!

おうブルマの者共、手分けして花とか道具探してくるのだ!
よしわたしは今のうちに発声練習だなっ
「魅了で他人をかってに動かそうとするな〜!オレが掟だァ!!」
パッパラぱおぺえ〜♪
集められたブツを気合でマイクみたいに合体!

妲己をお姫様だっこする猟兵は誰か!それが裏テーマの妲己戦。わたしも負けてらんね〜ぜ。妲己、抱きゅしたい……それが猟兵の本性っ

ほんと漢字のムズい戦争だ。
とくにナタとか言う野郎は!



 いにしえの仙界『紫霄宫』。そこではついに姿を見せた封神仙女『妲己』に対抗するため、宝貝の増産が急ピッチで進められていた。
 とは言っても実際の制作は猟兵が来なければ始められない。事前に主に行われていたのは材料集めや作業場の設営だ。
 そして準備の整った紫霄宫に、早速猟兵がやってくる。
「よっしやー! 【浄化】と【呪詛】に使えるおトク用マイク型宝貝『マイク破魔』をつくるぜ〜!」
 岩倉・鈴音(【機械天使12番】JKハングマン・f09514)は既にその形状のみならず活用法、さらには名前まで決めてある。ここまで決まっていれば作業は早い。
「おうブルマの者共、手分けして花とか道具探してくるのだ! よしわたしは今のうちに発声練習だなっ」
 早々に【ブルマ遊撃隊】を花びら集積所まで走らせ、自分は早くも実践のための予行練習だ。
「魅了で他人をかってに動かそうとするな〜! オレが掟だァ!!」
 一緒に従軍した戦友でも殺されたかの如きハードボイルドな歌声。気分よく歌っている所に、大量の花びらを抱えたブルマ軍団が戻って来た。
 その花びらを、抱きかかえるように全身で掴む鈴音。
「パッパラぱおぺえ〜♪」
 気の抜ける声と共に、圧巻の気合いで花びらを凝縮していく。そしてしばしの後、何ということか、あの大量の花びらは大変持ちやすいハンディマイクの形に合体してしまった。
 圧縮率を考えたらこれもう鈍器として使った方がいいんじゃないかとも思われるが、既に使い方は決めてあるのだ。今更そこはブレさせられない。
「妲己をお姫様だっこする猟兵は誰か! それが裏テーマの妲己戦。わたしも負けてらんね〜ぜ。妲己、抱きゅしたい……それが猟兵の本性っ」
 いやさすがにそれは言い過ぎ……とは思うが、言葉通りの意味の他、魅了されたら多分だっこどころじゃないエリアまで行くのでだっこで済む程度に留めることで抵抗の証とするとか、だっこした上で思いっきりボディスラムして殺害とか、あと単に最後のギャグを言いたかっただけとか、その辺まで含めればそれなりに該当する者はいる……とも言えなくもない可能性も無きにしも非ずやと言っても決して間違いではない可能性が微粒子レベルで存在しているかもしれない。
 そんな強敵戦に向けて最後に鈴音は殲神封神大戦前半戦を振り返ってみる。
「ほんと漢字のムズい戦争だ。とくにナタとか言う野郎は!」
 読むのも書くのも大変な敵揃いのこの戦争。ナタで変換しても鉈しか出ない。ナタクで出るのでIME先輩に頑張って貰っています。兀突骨が変換できたのは驚いた。
 そんな殲神封神大戦の後半戦に、鈴音はマイクを持って挑むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
動かなくてはいけない事情、ですかぁ(目を逸らしつつ)。

私自身は既に『FXS』という『宝貝兼祭器』を御用意しておりますし、先日の『吸収砲』も調整中なのですが、何方も完全に『私自身が使う想定の品』で『救助した相手に渡して逃がす』『同行者に渡して対策に使う』為の品が無いのですよねぇ。
ですので、『機能が絞られる代わり量を用意出来る』タイプの、例えば『丹薬を生み出す壺』の様な品は作れませんかぁ?
これでしたら、折を見て機能を改良し『作れる薬の種類を増やす』等の拡張も出来そうですので。
『生み出す』機能の元として、先日の『絡繰』の複製を【成翫】でご用意しましたので、ご利用頂けましたら。



 この宝貝急造施設は一人の手で作られたものではない。南蛮門で救助された瑞獣たちが恩を着せられて……もとい恩返しの為に協力することで突貫工事で作ることがができたのだ。
 そんな彼らは今も休む間もなく花びらをかき集めてくれている。その動きは可能な限り自らに負荷をかけ、少しでも多くカロリーを消費するような激しいものだ。
「動かなくてはいけない事情、ですかぁ」
 そんな彼らのダイエットムーブから目を逸らしつつ、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は考える。
「私自身は既に『FXS』という『宝貝兼祭器』を御用意しておりますし、先日の『吸収砲』も調整中なのですが、何方も完全に『私自身が使う想定の品』で『救助した相手に渡して逃がす』『同行者に渡して対策に使う』為の品が無いのですよねぇ」
 そう、彼女は既にこの紫霄宫で宝貝作りを行い、それはもう実戦投入に耐えうる装備として完成していた。さらには追加で作った魅了の力を吸収し砲撃として打ち返す者も調整段階に入っている。
 だが、妲己戦における戦場の全貌が明らかになった今、さらに気にかけなければならない存在がいることが発覚していた。妲己の周囲には魅了された羽衣人が多数侍り、意図せずして人質、あるいは肉壁のようになってしまっている。また魅了の力が薄い代わりに多数の罠が仕掛けられている所では、特定の職業の者の力を借りなければならない状況も想定されている。敵の詳細な情報が判明したのだから、よりそちらに特化させた宝貝を誂えるのは全く持って理にかなった話であった。
「ですので、『機能が絞られる代わり量を用意出来る』タイプの、例えば『丹薬を生み出す壺』の様な品は作れませんかぁ?」
 薬ならば服用することで誰でも効果を得ることができる。もちろん自分で使っても良いし、効果を戦場に合わせたものに特化すれば様々な面での製造コストも低く抑えられるだろう。
「これでしたら、折を見て機能を改良し『作れる薬の種類を増やす』等の拡張も出来そうですので」
 さらに妲己が倒れ、あるいは殲神封神大戦が終わった後も再改造で機能の変更、拡張をしていけば腐ることもない。一般人を殺さず対処しなければならない時や、猟兵でない者の力を借りねばならない状況はどの世界でも少なからずあり得るのだ。仙丹の効果については薬に詳しい仙人に伝手があることもあり、その知識も借りられるだろう。
 そしてもっと難しいだろう無限生産についても、るこるは当てがあった。
「『生み出す』機能の元として、先日の『絡繰』の複製を【成翫】でご用意しましたので、ご利用頂けましたら」
 そうして現れるのは、嘱託と椅子を備えた巨大な絡繰。南蛮門で起きたとある事件で敵が使ったものを猟兵が鹵獲、そのコピーを【豊乳女神の加護・成翫】で作成したものだ。
 これはなんと席に着いたものの思考を読み取りそれに対応したものを無限に生み出す驚異のメカニズムを備えたものなのだが、それが出た瞬間周囲で花びら集めをしていた瑞獣たちが一斉に悲鳴を上げて逃げ惑いはじめた。
「あぁ、やっぱり……」
 その理由はるこるには大いに心当たりがある。そしてユーベルコードの反動で膨らんでいる自分の体もそれとは無関係ではないこともまた。
 まあものすごい勢いで走り回ってるし大声を出すのはかなりカロリーを消費するので、結果的にはいいのかもしれない。そう考えながら花びらと絡繰を交互にいじりなつつ、るこるは製薬宝貝を制作していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
ああ、困ったわ
メアリ、こう見えて狂気や欲望に耐えるのは得意よ?
だけれど臭いは獣の嗅覚に効きすぎる
今ここですらくらくらしてしまいそうだっていうのに

……あら?
見覚えのある兎の瑞獣を見つけ、開口一番ご挨拶
まぁ、相変わらずのおデブさん!
ねぇ、なにかいい案はないかしら?
花集めのついでに作るのも任せてしまおうと

そして出された完成品がこちら!
宝貝「桃花臀杖」!
その名の通り桃色の、しなやかな杖
正確には刑罰の笞(むち)や武器の鞭(べん)に近いらしい?
言われてもわからないけれど

その能力は……
妲己のと同じ自動発動型で?
放てば独りでに飛び回って?
お尻を叩いて正気に戻す!?
なによそれ! そんなの絶対に使わないんだから!



 妲己の魅了、それは香気とも呼ばれ、その名の通りに強烈な匂いとして現れる場合もあった。それにメアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)はいたく悩む。
「ああ、困ったわ。メアリ、こう見えて狂気や欲望に耐えるのは得意よ? だけれど臭いは獣の嗅覚に効きすぎる。今ここですらくらくらしてしまいそうだっていうのに」
 例えどんな香りであろうと、強すぎれば不快になって来ると言うもの。ましてや相手を狂わせる魅了の香り、それをまともに嗅いでしまえばどのようなことになるか。鼻を摘めばいいという話でもなく、また【獣の嗅覚】は彼女の大きな武器。それを蔑ろにして負けてしまっては本末転倒というものである。
 そしてそのための桃の花、そのための宝貝だ。それを創造せんとこの紫霄宫に赴いたメアリーは、奇遇にも知った顔を見つけた。
「……あら?」
 桃の花を懸命に集めている兎の瑞獣。どこかふくよかなその彼に、メアリーは開口一番ご挨拶。
「まぁ、相変わらずのおデブさん!」
 普通に考えれば失礼極まりないその挨拶に、その瑞獣は赤くなったり青くなったり何とも微妙な反応だ。それに構わずメアリーは続ける。
「ねぇ、なにかいい案はないかしら? 花集めのついでに作るのも任せてしまおうと」
 それに対して今度は本当に驚いたような顔になる瑞獣。自分はしがない一般人。それがまさか猟兵から重要な宝貝の制作まで依頼されるとは。
 だが、彼はメアリーに大きな恩がある。いまこそそれを返す時。その決意とともに彼は自分の集めた花をもって作業場へと向かって行った。なお去り際に彼がメアリーの下半身方面をちらちら見ていたような気がするのは果たして気のせいか否か。
 そして待つことしばし。兎の瑞獣が完成した宝貝を持って戻ってきた。
 桃色をしたしなやかな杖。その名も宝貝『桃花臀杖』!
「正確には刑罰の笞(むち)や武器の鞭(べん)に近いらしい?」
 鞭というと細長くしなる紐のようなもののイメージがあるが、乗馬鞭や教鞭のような短い鞭もあるし、また中華発祥の打撃武器として鞭(べん)と呼ばれるものも存在する。
「言われてもわからないけれど。で、どう使うの?」
 明確な武器の種別より、大事なのは実戦でどう使うか。その能力は……
「妲己のと同じ自動発動型で?」
 確かに魅了されて使う意思そのものを封じられてしまってはどんな高性能な宝貝も意味がない。これならば万一の時の保険にもなるだろう。
「放てば独りでに飛び回って?」
 いかにメアリーが腕の立つ猟兵とはいえ、新しい武器を一朝一夕に使いこなすのは難しい。ましてや用いるべき敵はすでに現れているのである。練習無しに即実戦投入可能というのは逼迫したこの状況では非常にありがたい。
「お尻を叩いて正気に戻す!?」
 痛みを与えて目を覚まさせるのは良くある手。何一つ間違ったことではない。鞭の本来の用途は行動不能になるような傷を負わせず痛みだけを与えること。自分に喝を入れるにこれ以上相応しいものはあるまい。
 非常に合理的かつ実用的な発送の元作られた宝貝。なお説明の間も瑞獣はメアリーの尻の方にずっと目をやっていた。何を思い出しているのかどこか興奮したような息遣いですらある。もしかしたらこいつの方が鞭で叩かれるのに相応しい性癖を持っているのかもしれない。
「なによそれ! そんなの絶対に使わないんだから!」
 羞恥と怒りで顔を赤くするが、今からリテイクして新しいのを作らせている時間はない。憤慨しながらも「桃花臀杖」を受け取り足早に去っていくメアリー。
 その後ろ姿、一歩歩くごとにまるで鞭を誘うが如くゆっさゆっさ揺れる尻を、瑞獣はまるで至高の思い出に浸るかのようにうっとりと見つめているのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィーリィ・チゥシャン
確かに俺の場合食欲を増幅されたら抵抗できなそうだな。
下手するとその場で料理勝負を始めそうだし。

そんな訳で桃花を集め、【料理】で他の茶葉ともブレンドして
「妲己の魅了を破る香りのハーブティー」
を作る。
これなら仲間にも分けられるし、香りだけでも効果があるから魅了された一般人も正気に戻せる。
それに飲めば美味しいし。
付け合わせは月餅がいいかな。



 妲己の魅了は極めて強力で、本来持たない欲求すらその心に植付けて来るという。ならば元々特定の欲求を強く持っていればその影響はどれほどになるか。
「確かに俺の場合食欲を増幅されたら抵抗できなそうだな。下手するとその場で料理勝負を始めそうだし」
 ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は自身の職業、性格を考えその部分を特に懸念していた。何しろ彼は料理人、食欲がなければ始まらない。さらにここは食の本場である中華封神武侠界。それに答える相手が敵中にいても何らおかしくないのだ。
 しかし強い欲求というのは己の核ともなるものだし、魅了に対抗するためにもそこはきっと大事なもの。
 そんなわけで彼が作るのは。
「他の茶葉ともブレンドして「妲己の魅了を破る香りのハーブティー」
を作るぜ」
 桃の花自体も中国茶の材料になるものだし、自分の能力も活かせる。
 そしてせっかく作るのだから、ただ乾燥させるだけでは勿体ない。他の茶葉とブレンドさせることでより香りを高く、それでいて飲みやすく。また当然ながら仙界には仙桃以外にも不思議な霊力、薬効を持つ植物はたくさんある。今この場で調達できるものだけでもうまく混ぜることでさらなる効果も期待できるだろう。
 また茶葉は細かい植物の集まりだし茶は液体。器さえあれば分割するのはたやすい。
「これなら仲間にも分けられるし、香りだけでも効果があるから魅了された一般人も正気に戻せる」
 妲己の周りには魅了された羽衣人がいるという話だし、もう一つの戦場では武侠の力を借りる場合もあるという。また共に戦場に立つ仲間や大切な人も守ることだってできる。一度入れてさえしまえば冷めない限り香りが立ち上り、まさに自動発動の魅了の香りに対抗するが如くその力を周囲に振り撒いていける。
 そして完成した茶葉を早速入れる。甘く上品な香りが当たりに立ち上り、花びら集めに精を出していた瑞獣たちを一斉にそちらへ振り向かせた。
「それに飲めば美味しいし」
 お茶として最も大事なところ。いくら健康に良くても味の悪いお茶は敬遠されがちだ。それはそれで目が覚めるのかもしれないが、どうせ飲むなら美味しいものを飲んでほしい。
「付け合わせは月餅がいいかな」
 付け合わせにだされた月餅もまたいかにも美味しそう。だがそれを見たとき、瑞獣たちは何かためらうような様子を見せる。そう、月餅のカロリーは実は結構高いのだ。
 なぜか全体的に太り気味、かつダイエット中と思しき瑞獣たちは手を出すのを躊躇しているらしい。その苦悩する様子に、ウィーリィは真摯な顔で言う。
「食べてくれ。この一皿のために俺は料理人になったんだ」
 その言葉に、おずおずとお茶に手を出し、付け合わせも食べる瑞獣たち。すると見る間にその表情は綻び、安らぎの心に満たされて行った。【華味三鎮】の力ですこしでもつらい状況を忘れられれば。その願いの効果のほどは、目の前の彼らの姿を見れば十二分にわかった。
 期せずして効果の実験もできたと言うことで、あとはこれを死を希う仙女に振る舞うのみ。己の全てを踏みにじられた彼女に最後の安らぎを齎せるか。
 まるでその時を待ち切れず誘うかのように、器に満たされた茶に桃の花が一片落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月22日


挿絵イラスト