殲神封神大戦⑭〜傾国の美女は二度目の死を望む
●
――なぜ、こんな事になったのでしょう。
女の端正な口からため息とも嘆きともいえぬ言葉が紡がれる。
遥か昔、女は賢き王を堕とし、酒池肉林をはじめとした殺戮と悪徳を行った。
多くの人を殺めた。国を飢えで満たした。
――許されることではない事は最初から分かっている。
それでも悪行を成したのは彼女の残虐性からではない。封神台建立の命を受け、封神台が建立した後の世の安寧を信じてのこと。だからこそ女は堕とし殺し――最期は人に討たれたというのに。
何故、なぜ。オブリビオンとして蘇り、異門同胞に縛られているのか。
「こんな事、こんな事になるのなら私のしたことは……一体、なんだったというのですか……」
はらはらと薄墨色の瞳から涙がこぼれ落ちた。
●
「妲己という女性をご存じでしょうか」
チャーリー・ライドゴー(ぶらり自転車週末紀行・f03602)が次の戦場の説明を始める前に、妲己という女の話を振る。
「ご存じの方も多いとは思いますが簡単に説明いたしますと、絶世の美女にして悪女として謳われる女性です。悪行として有名なのは酒池肉林でしょうか。
そんな彼女が、今回の戦争でも彼女は私たちの前に立ち塞がります。ですが、どうやら彼女はこの戦いは不本意のようです」
そう、彼女は蘇ったことは本意ではなく、むしろ蘇ったことに嘆いているという。
「彼女が生前の悪行は封神台の建立、そしてオブリビオン根絶のため。
そんな願いのために悪行に手を染めたのに今オブリビオンとして蘇ったのです、彼女の嘆きと悲しみは深いのでしょう」
妲己は殺されることを望んでいるが、そう簡単にはいかないとチャーリーは苦い顔をする。
「まず彼女は『傾世元禳(けいせいげんじょう)』、武林の秘宝『流星胡蝶剣(りゅうせいこちょうけん)』、『殺生狐理精(せっしょうこりせい)』を有しています。これら全て彼女の意志に関係なく発動する物のようで不用意に近づけば……いえ、近づかなくともタダでは済まないでしょう。
そして彼女がいる場所、山岳武侠要塞「梁山泊」……遠い未来に、人界が宿星武侠を必要とした時の為に作成された山城ですね。その内部には沼のような濁流が流れ込んでいまして、その沼からは無数の武器が襲い掛かってきます。
ただこの武器は宿星武侠を襲うことは無いのですよね……。とはいえ、無策で行けばいくら皆様が腕利きとはいえ勝利することは難しいでしょう」
いかに無数に飛び交う武器を回避しながら妲己の攻撃に対処していくか。
これが今回の戦いで重要なポイントとなるだろう。
遭去
だ・っ・き・ちゃーん!!!!!
……遭去です。妲己戦を執筆させていただきます。
●戦場
山岳武侠要塞「梁山泊」という山城が今回の戦場です。この城の内部には至る所から沼のような濁流が流れ込んでおり、その濁流からは無数の武器が現れ猟兵達を切り刻まんと襲い掛かってきます。なぜか宿星武侠には襲い掛かってきません。
●妲己
絶世の美女、悪女として伝わっている彼女ですが、実は悪行には理由がありました。
オブリビオンとして蘇った彼女に戦意はなく、むしろ殺してほしいと願っていますが、自動発動する彼女のユーベルコードは彼女を傷つけることも自死すらも許しません。
濁流が流れ込む広間での戦闘となります。
●採用人数
👑が達成できる4~6人のみの採用予定です。ご了承ください。
●プレイングボーナス
無数の武器が飛び回る中で、妲己の先制攻撃に対処する。
第1章 ボス戦
『封神仙女『妲己』』
|
POW : 殺生狐理精(せっしょうこりせい)
対象に【殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD : 流星胡蝶剣(りゅうせいこちょうけん)
レベル×5km/hで飛翔しながら、【武林の秘宝「流星胡蝶剣」】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ : 傾世元禳(けいせいげんじょう)
【万物を魅了する妲己の香気】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
イラスト:碧川沙奈
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エドゥアルト・ルーデル
ようは鬱だ氏のうでござるな
…
特にこれ以上ないのでサクッとやるか!
「武器を躱す」「先制攻撃も防ぐ」「両方」やらなくっちゃあならないのが「猟兵」の辛い所でござるな
武器はあくまで濁流からしか飛んでこない…そして相手のUCは【狐理精】を憑依させる事…つまりどちらも拙者に到達するまで若干のタイムラグがあるッ
このタイムラグの間に拙者の体と【流体金属生命体】君を融合!拙者は人間をやめるぞ!DAKKIーッ!
刃物が来ようが!攻撃力が高かろうが!自身の体を流体としてしまえばッ!全ての物理攻撃は体を通り過ぎる、という事だァーッ!
後は近づいてラッシュで殴るのみでござる!
お望み通り貴様の死が、ここに来たッ!
●
山岳武侠要塞「梁山泊」。かの山城の広間に座すは妖艶なる女が一人。女の名は世にも名高い封神仙女『妲己』という。
しかし、この城の主であろう彼女はただ泣きながら言葉を紡ぐ。
『ああ、誰か、誰か私を殺して下さい……』
顔は悲痛に満ちていても美しく、まるで絵画のようだった。
「いるさ、ここにな!」
突如、広間に響くは男の声! 妲己が顔を上げれば広間の入り口に孤独なシルエットが一つ!
それは間違いなく奴……エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)!
『あの……?』
「ようは鬱だ氏のうでござるな……」
少し困惑した表情の妲己をよそに、特にこれ以上感想もないのでさっさとやるか。と、エドゥアルトは一歩足を踏み入れる。
『いけません、ここに入っては……!』
妲己の静止の声よりも早く、それは動いた。
一つは水をまき散らし沼から飛び出してきた武器。
もう一つは妲己から飛び出してきたのは目に見えぬ精霊、殺戮と欲情を煽るという殺生狐理精(せっしょうこりせい)。
(「来やがったか。だが、武器はあくまで濁流からしか飛んでこない…そして相手のUCは狐理精を憑依させる事。
……つまりどちらも拙者に到達するまで若干のタイムラグがあるッ」)
エドゥアルトの灰色の脳みそが戦場の状況を一瞬にして計算。そして行き着いた結論は――
「拙者は人間をやめるぞ! DAKKIーッ!」
エドゥアルトが流体金属を掴み掲げるとそれに呼応するように流体金属が彼と合体!溶けるように人間の形を取るのを辞めた!
「刃物が来ようが! 攻撃力が高かろうが! 自身の体を流体としてしまえばッ! 全ての物理攻撃は体を通り過ぎる、という事だァーッ!」
咆哮と共に妲己へと猛進するエドゥアルト。
無数の武器が殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」が彼を捕え、切り刻まんと暴れまわるがかの流体の動きを止められるものなど一つもない。
あっという間に距離を詰めて体を流体から元の姿へ戻る。
「お望み通り貴様の死が、ここに来たッ! ……なるほど近くで見れば確かに美人だな」
目の前の傾国の美女を見てエドゥアルトは一つ笑みを浮かべ、銃を構える。
「だが拙者は二次元にしか興味ないゆえ! 御免!」
彼の携えたライフルから飛び出した銃弾が、女の肩を抉った。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
POWで挑む
攻撃力5倍、回数半減
「確かに最後まで続くことはなかったけど、
アンタが願った安寧は存在していた!
アンタのやったことは無駄なんかじゃねえ!
誰がなんて言おうと、オレはそう思う!」
飛び回る武器を[オーラで防御]し、[斬撃波]と[衝撃波]で粉砕
殺生狐理精が武器に宿るなら[力を溜めた]一撃で迎え撃ち、
オレに宿るなら[破魔]の力と[気配]で弾く
「色んな後悔や無念があるだろうな。
その重さを思い図ることは出来ねえ。
けど、せめて一握の安堵のために!」
鎧が黄金の巨弓となり、想いを込めて羲和之箭を番える
あふれるオーラが周囲の武器を撥ね除けた
「後のことは、オレ達に任せてくれ!」
痛みすら感じぬ一矢で彼女を祓う
紅いマントをはためかせながら空桐・清導(ブレイザイン・f28542)が広間を駆ける。
襲い掛かるは沼より現れし無数の武器。だがその武器の猛攻も清導が振るう剣から発せられた光の斬撃波にオーラに次々と弾かれていく。
武器を払いのけながら一歩、また一歩と妲己との距離を詰め、あと数歩で武器の射程内に入るという所で、突如、ふわふわの毛並みをした何かが清導の体へと触れた。
途端に体がぼんやり熱くなり、思考の鈍化なるのを感じる――清導が成人していればそれは酩酊の状態に似ていると思っただろう。
これこそ妲己を護る『殺生狐理精』。殺戮と欲情を煽り憑依した相手の理性を崩す恐ろしき化生である。
「まだ、だ!俺達なら、もっとやれるよな!“ブレイザイン”!!」
憂いに満ちた目を向ける妲己に清導は汗を浮かべながらも彼女へにっと笑みを向ける。同時に彼の纏う機械鎧"超鋼真紅" ブレイザインが光り輝き、清導へ憑依する殺生狐理精を押しのけながら姿を変えていく!
「さあ、見せてやるぜ。これが俺たちの!超越!!変身!!!」
彼が手に握るは黄金の巨弓。清導の想いに応えたブレイザインの姿である。
「なぁ妲己。あんたはすげぇよ。でけぇ事なしたんだ」
『……何をいうのです。私成した事に何の意味があったというのですか!』
後の世のため悪徳と殺戮に手を染め築いた封神台。
それが今や封神台は壊れ、オブリビオンは蔓延り、自身は世を再び脅かす存在へとなり果てたというのに。
「確かに最後まで続くことはなかったけど、アンタが願った安寧は存在していた!」
しかし、少年は否を唱える。短くともオブリビオンに脅かされなかった時代があったことを。彼女の成した事は無駄ではなかったと!
極限まで弦を引き絞り、羲和之箭の矢じりを妲己へと向けた。
「アンタのやったことは無駄なんかじゃねえ! 誰がなんて言おうと、オレはそう思う!」
弓全体がギリギリと悲鳴をあげる。攻撃回数を犠牲にしたまさしく一撃必殺を決して、決して外してはならない!
「色んな後悔や無念があるだろうな。その重さを思い図ることは出来ねえ。けど、せめて一握の安堵のために!」
研ぎ澄ませ。かの女へ届けるべく。
「後のことは、オレ達に任せてくれ!」
――想いと共に今、黄金に輝く一矢が放たれた!
大成功
🔵🔵🔵
スピカ・ネビュラスター
うーん。ちょっとがっかりだなー
妲己って言ったら、悪女の代名詞で
蟇盆とか炮烙とかヤバい発想がとってもカッコ良かったんだけどなー
実は良い人だなんて……幻滅しちゃったよ
(悪いほど格好いいと言うデビルキングワールド的価値観のラスボス)
まあ、死にたいなら殺してあげるよ
『ミューテーション・ダークマター』を発動して梁山泊に突っ込むよ
これなら武器に襲われても、どうって事ないね
それから……『殺生狐理精』はあえて受け入れるよ
ふふふ。3回は殴っても戦闘不能にならない訳だからね
きっちり3回、全力でぶん殴ってあげるよ!!
(暗黒物質が拳の形を取って殴り掛かる)
暗く、黒い闇を人間の形に押し込めた――そんな姿で現れたスピカ・ネビュラスター(銀河の魔女・f31393)が梁山泊の天井部分を破壊し部屋へと突入すると、への奥に鎮座する妲己の姿を見て嘲りを含んだ笑みを一つ。
「うーん。ちょっとがっかりだなー。妲己って言ったら、悪女の代名詞で蟇盆とか炮烙とかヤバい発想がとってもカッコ良かったんだけどなー。実は良い人だなんて……幻滅しちゃったよ」
デビルキングワールドで生まれたスピカにとって妲己の悪行――銅の柱に罪人を押し付け、柱を熱して罪人を殺す炮烙。毒を持つ生き物を集めた穴に人を落とす蠆盆。――を聞いてとてもワクワクしてたわけだが、実際はそれも好きで行っていたわけでは無かった。
『幻滅していただいて構いませんよ。所詮私の成した事は意味など無かったのですから』
スピカへの態度に妲己は自嘲とも取れる笑みを一つ向ける。
「ふぅん……まぁ、死にたいなら殺してあげるよ」
その言葉につまらないとばかりに目を細め、武器を構えた。途端に敵意ありと判断した沼から這い出た武器の群れが襲い掛かる!
「あははっ、無駄無駄! 武器の攻撃なんて聞くわけないじゃないか!」
スピカの宣言通り武器は彼女の体に触れた途端、とぷんと体に小さな波を起こして突き刺さり、そのままどこかへと消えていく。
彼女の体は暗黒物質。何でてきているか、どのくらいの大きさを持っているかすらも分からず、どこにつながっているかも不明。ゆえに武器が彼女の体に刺さったかも分からない。
そして、妲己へと近づいて数m、そこで狐の形をした精『殺生狐理精』がスピカへと襲い掛かると、少女は笑顔でそれを受け入れた。
『……なぜ、そのユーベルコードを避けなかったのですか?』
妲己が純粋な驚きに満ちた声を発した。
スピカの今の体ならばあの『殺生狐理精』もものの簡単に防ぐことなど可能だろうに。そういった疑問があったのだ。
「ふふっ、いいねこの力! まさに魔王にふさわしいパワー……!」
かの精に触れた途端にあふれ出した力に満足気な笑みを浮かべると、くるりと妲己の方を見て、
「ふふふ。3回は殴っても戦闘不能にならない訳だからね」
『殺生狐理精』に憑かれた者は攻撃力が5倍になる代わりに攻撃のたびに生命力が3割減少する、すなわちどんなに調子が良くても3回しか殴れない。逆にいれば倒れるまでに3発も強力な一撃を見舞えるというわけで。
「きっちり3回、全力でぶん殴ってあげるよ!!」
暗黒物質が拳の形を作り、妲己へと振り下ろされる。
一撃、二撃、そして三撃目の拳が妲己の体へと入り――女はそのまま部屋の壁へと叩きつけられた。
大成功
🔵🔵🔵
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
※戦場⑬で入手したサシェ型宝貝【魔符桃香】を持参
脚を踏み入れる前に、深呼吸なの
(内ポケットのサシェに触れて)
桃の精さん、力を、貸してね?
桃色の温かくて気が鎮まる闘気を纏うよ(【狂気耐性・呪詛・落ち着き・ジャミング】)
桃の闘気に魔力を乗せて、強力になった【オーラ防御】の【結界術】で守りを固めて、【勇気】を出して、行くの!
妲己さん、望みを、叶えて上げに来たよ
結界・闘気と狼の脚力【ダッシュ・残像】も合わせて、武器を避けながら近づくの
手を差し伸べる様に、UCを【全力魔術】で発動
苦しむあなたを救うには、これしかなくて…
ごめんなさい【優しさ】
心の底から、あなたが救われるのを、【祈る】の
●
梁山泊内で轟音が、ビリビリと振動が遅れて響く。
先に進んだ猟兵達が戦っているのだろう。
広間へと続く扉の前でロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は一つ深呼吸して内ポケットの中に入れたサシェを握る。
先の戦場で手に入れたサシェ型宝貝『魔符桃香』。それは本来満月の際に発せられるロランの『変化と魅了』の魔力を抑えるための力であるが、今から相対する仙女、妲己も魅了を使う。かの美しさに惑わされないためには役に立つだろう。
「桃の精さん、力を、貸してね?」
――妲己さんの望みを、そして僕の夢を叶えるため
声に呼応するように桃の香りがふわりと漂う。
その香りに勇気づけられるように、ロランは扉に手をかけた。
戦いはもう終わりに近づいてた。
部屋の至る所が破損し、天井は壊れ空が見え、床は抉れ。かの妲己も壁を寄りかかって上半身を起こす力しか残っていない。
もう息も絶え絶えの彼女は今にも命が消えかかっているように見えた。……否、それは彼女に移植されたユーベルコードが許されないが。
ロランが足を踏み入れた瞬間、甘ったるい匂いがロランの鼻腔をくすぐれば部屋の隅でボロボロになっている妲己がとても美しく見えた。が、それはすぐに先ほどの『魔符桃香』によって打ち消された。
気を引き締めるように首を横に振ると、ロランはまっすぐ前を向き、狼のような足が広間の床を蹴り上げた。
その足から出されたスピードは常人のそれを逸しており、あっという間に妲己との距離を詰めていく。
沼から現れる武器を振り切って、弾いて。遂に、妲己の元へとたどり着く。
「――妲己さん、望みを、叶えて上げに来たよ」
ロランが見下ろしながら言葉を発せば妲己がゆっくりと顔を上げた。
『――ほんとう、ですか』
苦悶に満ちた表情に、ロランは心を痛める。
未来のために過去で悪行に手を染めて死に、本人の意志と関係なしによみがえらせられた仙女、妲己。
その悲しみは、怒りは、苦しみはどれ程だったのか――。
ロランは妲己へと手を差し出す様に腕を前へと掲げる。
「苦しむあなたを救うにはこれしかなくて……」
ごめんなさい。
その言葉と共に聖なる光が辺り一面を包み込んだ。
ロランの放つ聖なる光は魔や邪を滅する。オブリビオンとして蘇った妲己も例外なくその身を焼かれていく。
だが、彼女の顔は穏やかだった。
『ああ、ようやく、ようやく終われるのですね』
光に焼かれながら妲己はロランを、先に戦った猟兵達を見やり――
――ありがとう
直後、強い光が辺りを覆う。
光が収まった時、そこにあったのは焼けた簪と着ていた服の一部。
そして床に落ちていた桃の小さな花弁が重力に逆らいふわりと舞い上がり、天井に空いた穴から青い空が広がる外へと飛び立っていった。
大成功
🔵🔵🔵