殲神封神大戦⑭〜酒池肉林に耐え、妲己に永眠を齎せ
――これは、封神仙女『妲己』の独白である。
私はかつて、封神台建立の命を受け、人界に降り立ちました。
仙界の桃花のみを食していた私が、酒池肉林に穢れる事で生まれる香気……。
私は万物を魅了する『蠱毒の贄』となり、人に討たれる事で封神台を築きました。
それを成す為に、私は多くの殺戮と悪徳に手を染めました。オブリビオンの根絶が後の世に安寧をもたらすと信じたが故であっても、私のした事は赦されません。
されど、封神台建立を命じた仙翁達は何故か死に、封神台は破壊され、私はオブリビオンとして蘇生され、異門同胞に縛られて……こんな事なら、私は何の為に……。
――仙女は玄室で泣き崩れる。
――彼女に備わったユーベルコードは、自動発動型。
――それらは彼女の危機を全て阻害し、自死すら許さない。
――だとしても、仙女は己の死を望む。
誰か、私を殺してください。もう、生きていたくはないのです……。
「……正直、あたいは妲己って、もっと悪辣な性格だと思ってたけど、これは……」
予知をしたグリモア猟兵の蛇塚・レモン(白き蛇神憑きの金色巫女・f05152)が絶句する。
それもそうだろう。
過去に異世界での大戦でも己を殺せと願うものはいたが、猟兵と相対すれば自らの意思で戦った。
だが、かつて様々な罪に手を染めたとはいえ、オブリビオンとして蘇った妲己に限っては戦う意志すらない。そんな彼女を殺せと予知が出たのだから、レモンだけでなく依頼を受領する猟兵たちも複雑な想いを抱くだろう。
「妲己のユーベルコードは自動発動かつ絶対先制攻撃……しかもユーベルコード『傾世元禳(けいせいげんじょう)』で発散された香気が戦場となる玄室にむせかえり、あらゆる者を狂わせる『酒池肉林の宴の間』と化しているよっ! 無骨な要塞の壁さえもが、魅了されて輝く宝石になっちゃってるし、仙界の美しい羽衣人たちが誘われて、正気を失い踊り狂っちゃってて戦闘の邪魔をしてくるよっ! みんなは羽衣人達を傷つけずに、この美しい宴に魅了されないように心を強く保ちつつ、妲己の意思に関係なく攻撃してくるユーベルコードに対処しなくちゃいけない……色々と困難な依頼になると思う……」
レモンの説明に、猟兵たちの顔色が曇るものいれば、不敵に笑みを浮かべるものもいる。
猟兵の中には、桃月桃源郷で魅了対策を講じている者もいるはずだ。
今こそ、そこで創造した宝貝で対抗するときだ。
「今回の任務は後味はあまりいいものじゃないだろうけど、それでも、張角の結界を破壊するためにも……妲己の願いを叶えてあげてほしいな……っ!」
レモンは頭上のグリモアを輝かせると、猟兵たちを梁山泊の玄室へ転送する。
妲己が猟兵へ向けて願った『自身の殺害』は、果たして叶うのだろうか……?
七転 十五起
戦争シナリオ第8弾。
どうか、貴方の手で終わらせてあげて下さい。
なぎてんはねおきです。
●プレイングボーナス
『酒池肉林の宴』の魅了に耐えつつ、妲己の先制攻撃に対処する。
(⑬桃月桃源郷のシナリオに参加した猟兵方は、宝貝の利用を推奨します)
●先制攻撃について
敵のユーベルコードは、猟兵側の使用するユーベルコードと同じ種類に対応して使用します。猟兵側のユーベルコードの複数回・複数種の使用は、敵のユーベルコードの使用回数と種類がそれだけ増すので非推奨です。1つのユーベルコードに、複数のユーベルコードの効力が含まれる場合も、これに該当しますので、予めご了承下さい。
また、【状況的に不可能な先制攻撃への対処法】や、【公序良俗に反する内容と判断したプレイング】、更には【シナリオ内容・趣旨を把握してないと思しきプレイング】については却下対象とさせていただきますので、此方もご了承願います。
●その他
コンビやチームなど複数名様でのご参加を検討される場合は、必ずプレイング冒頭部分に【お相手の呼称とID】若しくは【チーム名】を明記していただきますよう、お願い致します。
(大人数での場合は、チームの総勢が何名様かをプレイング内に添えていただければ、全員のプレイングが出揃うまで待つことも可能です)
なお、本シナリオは全てのプレイングを採用できない可能性があります。
予めご了承くださいませ。
(その場合、オーバーロードでのプレイング採用を優先します)
それでは、皆様の魂の籠もったプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『封神仙女『妲己』』
|
POW : 殺生狐理精(せっしょうこりせい)
対象に【殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD : 流星胡蝶剣(りゅうせいこちょうけん)
レベル×5km/hで飛翔しながら、【武林の秘宝「流星胡蝶剣」】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ : 傾世元禳(けいせいげんじょう)
【万物を魅了する妲己の香気】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
メサイア・エルネイジェ
ピンク髪で姫なので他人の気がしませんわ
せめて痛くないように介錯し申しますわ
往きますわよシン・ヴリちゃん
わたくしもシン・メサイアですわ
ここ最近お金が無かったので蜃ばかり食べてましたのよ
とりあえず欲情を煽られる分には平気そうですわ
ヴリちゃんを煽っても仕方ありませんもの
わたくしもヴリちゃんに乗っていればお嫁に行けなくなるような事は致しませんわ
致しても外から見えなければセーフですわ
殺戮衝動は逆に利用できますわ
たぶんジェノサイドバスターを使いたくなると思いますわ
だって名前がもう殺戮なんですもの
衝動のままに滅亡の瞬光を発射ですわ
発射後は動けなくなりますから暴れ回って羽衣人を傷付けるような心配も少ないですわ
仙界・山岳武侠要塞『梁山泊(りょうざんぱく)』の玄室――。
本来は死者を安置するはずのこの場所は、今や壁一面が綺羅びやかな宝石と化し、仙界の美しい羽衣人たちが狂喜乱舞する『酒池肉林の宴』が繰り広げられていた。
そこへ直接転送されてくる猟兵。
この玄室の主である封神仙女『妲己』は、自分を殺してくれるかもしれない存在の来訪に感嘆の声が漏れた。
「ああ……私の願いが、届いたのでしょうか。あなたが私を殺してくれるのですか?」
転送されてきたメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)に妲己が問う。
「ピンク髪で姫なので他人の気がしませんわ。あと絶世の美女とか恵まれたスタイルとか共通点が多すぎ問題ですわ。生き別れた姉妹か何かでございますの?」
「えぇと、私を、殺すのよね……?」
不安がる妲己に、メサイアが頷いた。
「……ええ、質問の答ならイエスですわよ。せめて痛くないように介錯し申しますわ」
体のラインがくっきり浮き出るタイトなパイロットスーツを着込んだメサイアは、一緒に転送されてきた漆黒の恐竜型キャバリア『ヴリトラ』のコクピットへ搭乗する。
しかし妲己は悲壮感に満ちた表情でメサイアに告げた。
「ですがお気をつけ下さい。私を害するならば、この玄室内に充満する『万物を魅了する香気』があなたを苛んでしまいます……!」
「そのへんは心配ご無用ですわよ。わたくしとヴリちゃんは宝貝『蜃』を食べて、魅了に対する耐性を獲得していますわ。いわばこの形態はシン・ヴリちゃんですわ。そしてわたくしもシン・メサイアですわ。……ここ最近お金が無かったので蜃ばかり食べてましたのよ」
宝貝を食べた甲斐があってか、この玄室にて依然正気を保ってられるのが証左である。
「往きますわよシン・ヴリちゃん。一撃で仕留めますわよ」
シン・ヴリトラが咆哮する。
そこへ狂乱する美形の羽衣人たちが物珍しそうに集まってくる。
更に、妲己が警告を発した。
「いや……そんな! お気をつけ下さい……! 今、私のユーベルコードのひとつ、『殺生狐理精(せっしょうこりせい)』が発動してしまいました……! 殺戮と欲情を煽ることで貴方を狂わせてしまいます……!」
「とりあえず欲情を煽られる分には平気そうですわ。キャバリアのヴリちゃんを煽っても仕方ありませんもの」
だが途端、メサイアの体に顕著な変化が訪れた。
下腹部の奥からこんこんと湧き上がる清水の如く、メサイアの情欲が刺激されているのを自覚してしまう。
シン・メサイアでなければ、即座に痴態を曝け出していたであろう。
「わ、わたくしもヴリちゃんに乗っていればお嫁に行けなくなるような事は致しませんわ。……致しても外から見えなければセーフですわ」
股座にムズムズと甘い痺れを伴う快感の証が溢れ出てくるのを、必死に理性で押し止めるメサイア。
シン化してなければ、今頃は狂いながら自身を慰め続けていたであろう。
ゾッとするメサイアが身震いすると、急にお腹が減り始めた。
「……食料確保しているとはいえ、ずっと二枚貝ばかり食べていると飽きますわ。煮る焼く蒸すなど料理法も一通りやり尽くしてしまいましたし……って、あなた、その大量の食べ物は一体なんですの!?」
妲己の周囲には羽衣人が持ち寄り、供物として捧げられた大量のご馳走や果物などが山積みになっている。
だが妲己は全く手を付けておらず、放置されたままだ。
これにシン・メサイアは怒りを露わにした。
「人がひもじい想いをしてる中であなたに介錯し申し上げようと参上したのに、あなたは泣いてばかりで食べ物を粗末にしやがるのですわね!? 許せませんわ!」
今度は殺戮衝動がシン・メサイアの感情を支配する!
「この殺戮衝動は逆に利用できますわ。もうこれは『滅亡の瞬光(ジェノサイドバスター・ラディカルレイ)』を使わざるを得ませんわ。だって名前がもう殺戮なんですもの。シン・ヴリちゃん! 衝動のままに『滅亡の瞬光』を発射ですわ!」
シン・ヴリトラの口元から荷電粒子砲が即座に放たれると、妲己の体を飲み込んで爆発を起こす!
妲己の体は為す術もなく吹き飛んだ!
「発射後は動けなくなりますから、暴れ回って羽衣人を傷付けるような心配も少ないですわ。さて、お供え物を失敬しましょうか。今のうちにパクパクですわ!」
シン・メサイアがお供え物を手掴みで頬張りながら、コクピット内へ何度も食料を押し込む。
――だが、妲己の横たわった体が、ピクリと動いたのを彼女は気が付いていない。
大成功
🔵🔵🔵
笹乃葉・きなこ
●POW アドリブお任せ
酒池肉林と聞いてたけどここまでひでぇとは
宝貝作っておくんだったなぁ
ユーベルコードを使いながら見渡すべ
あぁ~いいオスといいメス共がァ…いい飯がオラを誘惑するぅ…
ぜぇてぇ楽しい空間じゃんここぉ~~。
「殺生狐理精」もうるせなぁ、望み通りお前の飼い主殺してやるって
呪詛耐性、狂気耐性ダメ押しでダメならおらのアイテム要の紋をリミッター解除でもっと耐性をあげて二つを我慢我慢
「殺生狐理精」にはそれに加えて除霊と浄化で対応するんだべぇ
身体から追い出せるなら引っぺがしてなぎ払ってやる
無駄な攻撃もしないで戦う無駄に体力を使うから
待たせたべな、死ぬ前はいてぇし辛いからなぁ?
がまんしろよぉなぁ!
「酒池肉林と聞いてたけどここまでひでぇとは……宝貝作っておくんだったなぁ」
笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)が舌打ちをして後悔しても、既に彼女は既に玄室に転送されてしまっている。
彼女は下唇を片手の親指でなぞることでユーベルコードを発動させ、次の行動の成功率を徐々に底上げし続けていた。
「……今度は、あなたが私を殺してくれるのですか?」
妲己の問いに笹乃葉が首肯した。
「その様子じゃ、一発程度じゃ死ねなかったぁんだなぁ? となると、オラの一撃でも殺せるかわがんねぇけど、きっちり仕事はするだべぇ」
笹乃葉は己の体中に描かれた要の様を赤く発光させる。
「オラの呪詛耐性やら狂気耐性やら、限界超えて無理矢理引き上げて我慢するだべ……ってあぁ~いいオスといいメス共がァ……いい飯がオラを誘惑するぅ……ぜぇてぇ楽しい空間じゃんここぉ~~」
目の前で美形の羽衣人が見境なく身体を重ね合って“踊る”様子や、妲己へ捧げられた供物たるご馳走の香りなど、野生児きなこには耐え忍ぶ事が厳しい環境である!
更に、笹乃葉の殺意に呼応するように、妲己のユーベルコード『殺生狐理精』が先制攻撃として勝手に発動してしまう。
「うるせなぁ、望み通りお前の飼い主殺してやるって」
だが笹乃葉は唐突に、持参してきた清酒月乃夜を一升瓶に口をつけて呷り始めたではないか。本来は龍神への供物であるこの酒は、飲むだけで憑き物を祓ってしまうというチート性能を誇るのだ。
故に、憑依していた殺生狐理精が一瞬で酒精で洗い流されてしまった!
これには妲己も唖然として言葉が出ない!
「邪魔だべ! 引っ剥がされたら、おとなしく祓い斬られてくんろ!」
妲己のユーベルコードを薙刀で両断するトンデモをやってのけた笹乃葉は、ニッカリと笑って仙女の首元へ刃を添える。
「待たせたべな、死ぬ前はいてぇし辛いからなぁ? がまんしろよぉなぁ!」
躊躇なく薙刀の刃が妲己の首筋を斬り裂く。
吹き出す仙女の生暖かい鮮血を浴びた笹乃葉に、最初から迷いなどあるわけがなかった。
大成功
🔵🔵🔵
黒城・魅夜
私は希望の依り代にして希望の紡ぎ手ですが
自らの脚で歩まぬものに手を差し伸べて回るほどのお人好しでもありません
殺してほしい?
甘えているのではありません
その覚悟があるのなら自ら抗い戦い抜きなさい
この間作成した宝具「53枚の死神札」を装備し戦場に挑みましょう
酒池肉林?
ふふ、ダンピールたる私の好物は瑞々しい血ですけれど?
もし血の盃さえあったとしても
なんでもいいわけではありません
私は結構、選り好みが激しいのでね、ふふ
強い意志と未来への希望が宿った血でなければ私の嗜好には合いませんよ
羽衣人さんたちには私の「残像」と戯れていてもらいましょう
私の目的は妲己のみ
魅了の香気を「死神札」で反射
さらに私自身の「誘惑」「精神攻撃」「呪詛」を上乗せしお返ししましょう
僅かに隙ができたならUCを発動
さあ、よくごらんなさい
あなた自身の心の奥が映し出されたこの鏡の迷宮を
一度は己を犠牲にしようとしたあなたの決意はまだ美しく輝いています
張角の術などに屈したままでよいのですか
せめて異門同胞を一瞬だけでも破り、満足して逝きなさい…
梁山泊の玄室へ転送されるやいなや、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は桃源郷で摘んだ桃の花で創造した宝具『53枚の死神札』を手元で扇のように広げる。
すると、カードに浮かび上がった桜の花の加護で、玄室に充満する魅了の香気の影響を黒城は跳ね除けてみせた。
「今度は、あなたが私を殺してくれるのかしら……?」
妲己は先程も死んだはずなのだが、不思議と傷は癒え、何事もなく石棺に腰掛けていた。
その様子を黒城は値踏みするようにじろりと見詰めると、毅然とした態度で言い放った。
「私は希望の依り代にして希望の紡ぎ手ですが、自らの脚で歩まぬものに手を差し伸べて回るほどのお人好しでもありません。殺してほしい? 甘えているのではありません」
黒城は妲己に指差して言葉を継ぐ。
「その覚悟があるのなら、自ら抗い戦い抜きなさい」
「……いや、私はもう、戦いたくないの」
「ですが、それでも周囲が錯乱するほどの香気を放ってくるのですね」
「これは違うわ……! 私の意思とは無関係に出てくる自動発動型ユーベルコード……! 止める術は、私を殺すほかないの……!」
泣き崩れる妲己に、黒城は眉をひそめる。
そこへ狂い乱れる羽衣人たちが黒城を踊りに誘い、淫靡な戯れを見せ付けてくる。
これに黒城は鼻で笑って一蹴する。
「酒池肉林? ふふ、そんなまぐわいを見せ付けられても何も響きませんし、宴の酒も要りません。そもそも、ダンピールたる私の好物は瑞々しい血ですけれど?」
黒城は影織りのリボンをひらりと中でなびかせた次の瞬間、周囲に黒城そっくりの幻影が何体も現れて羽衣人たちの相手をし始めた。
「羽衣人さんたちには私の残像と戯れていてもらいましょう。私の目的は妲己のみ。それに、もし血の盃さえあったとしても、なんでもいいわけではありません。私は結構、選り好みが激しいのでね、ふふ……強い意志と未来への希望が宿った血でなければ、私の嗜好には合いませんよ」
「だとしたら、私は一番あなたの嗜好とは遠い存在だわ」
妲己が目を伏せたまま言葉を漏らす。
「オブリビオンに未来などないわ。これ以上の生を望むわけでもなく、強い意志なんて呼べるものなんて……」
「だとしても、あなたは戦わねばなりません」
死神札の数枚を妲己に投げつけ、その柔肌へ突き立てる。
すると、カードに吸い込まれていた香気が妲己の体内へ直接注入され、呪詛返しの要領で妲己自身の精神を苛んでゆく。
「あ、あぁ……お願い……早く、殺して……」
「時より遠く記憶より遥かにただ見つめよ、狂気と哀を」
黒城は妲己の訴えを無視し、ユーベルコード『鏡の森に追憶の哀しき葉は舞い落ちる(グレイ・グラス・エターナル・プラント)』を発動させた。
「さあ、よくごらんなさい。あなた自身の心の奥が映し出された、この鏡の迷宮を」
玄室全体に、心の深奥を映し出し心身共に斬り裂く鏡で出来た迷路が出現し、黒城と妲己を飲み込んだ。
妲己は鏡に写った姿を見て目を疑った。
「これは……封印される前の、私……?」
鏡の中の妲己は、使命感から殷国を滅ぼすべく非道の限りを尽くしていた。
それを直視できずに、妲己は心身ともに鏡に刻まれてゆく。
黒城は唱える。
「一度は己を犠牲にしようとしたあなたの決意は、まだ美しく輝いています」
「これの何処が美しいの……!? 私は、こんなことなら命に背いて何もしなければよかったのよ……!」
「ですが、その御蔭で一度は悪しき神々や妖仙を封印できました。それが張角に封神台を破壊されたとしても、その意思自体美しいものです」
「それでも虚しいわよ……ねえ、早く殺してくれるかしら……?」
妲己の諦観の念に、黒城は苛立ちを声に混ぜて言い放った。
「私に殺されるとしても、張角の術などに屈したままでよいのですか? せめて異門同胞を一瞬だけでも破り、満足して逝きなさい……」
「……ごめんなさい、それは、無理よ」
それほど張角のユーベルコード『異門同胞』は強力な効果を持つ。
黒城は妲己に愛想を尽かして玄室に背を向ける。
鏡の迷宮の中で、失意の底の妲己は全身をバラバラにされて再び息絶えていったのだった。
成功
🔵🔵🔴
カシム・ディーン
…ちっ
何で極悪非道な悪女じゃねーんだよ
ヤりづれーだろうが
「ご主人サマ意外とそういうの弱いよね?」
死ぬしかねーって状況も虫唾が走るな…
対魅了
宝貝使用
基本羽衣人は気絶させるに止め
対SPD
【情報収集・視力・戦闘知識】
妲己の動きと攻撃の癖
胡蝶剣の性能も把握
【属性攻撃・迷彩・念動力・武器受け】
光水属性を己達に付与
光学迷彩で存在を隠し捕捉させず
それでもくる場合は念動障壁と水槍で直撃や致命を避け
UC発動
【空中戦・弾幕・スナイパー】
超高速で飛び回りながら
念動光弾を乱射
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣と短剣による連続斬撃
更に胡蝶剣を強奪しての無力化を狙
止め
【医術】
…確実に痛みも苦しみもなく仕留められる部位を捕捉
更に痛覚を麻痺させ眠りへと陥らせる薬も用意
ふん、僕は欲望優先だからな?
「そうだねご主人サマ☆」
妲己をむぎゅっとサンドイッチして抱擁
すりすり堪能し
…お前のやった事は無意味じゃねーよ
少なくともあの台はこの世界を守ってきてたんだ
それに…後は僕らが張角も潰す
後は僕らに任せてのんびり寝てろ
…痛み無く始末
テラ・ウィンディア
妲己って悪い奴だって聞いてたのに…
「歴史ってのはそういうものですよ…表になってない真実は何処にでもあるものです…」
マリーアントワネットって人も実はそんなに悪くなかったらしいしな…
【戦闘知識】
周辺状況の把握
羽衣人達の動きと妲己への突破口の把握
対魅了
三呪剣展開!
宝貝の力で魅了に拮抗!
対POW
【見切り・第六感・残像・空中機動・オーラ防御・武器受け】
多分羽衣人に憑依させてるかな
攻撃は残像を残して回避しつつ
三呪剣や武器で攻撃を受け止め直撃による致命を避ける
【弾幕・重量攻撃・属性攻撃】
ガンドライド展開
闇属性の精神打撃弾と重力弾を展開して羽衣人達を気絶や無力化させる!
【二回攻撃・早業・切断・串刺し・貫通攻撃】
剣と太刀
三呪剣による連続斬撃
更に槍による刺突による猛攻
…手は止めないぞ
余計に痛くなっちゃうだろうからな
せめて痛みが麻痺してくれればいいんだが…
あんたのやった事は無意味じゃない
おれ達が無意味にさせない
だから…その…
UC発動
精神を直接攻撃してせめて意識を飛ばしにかかる
せめて眠れ…!…安らかにっ!!
妲己は何度殺しても、少し時間が経過すると完全復活を果たしていた。
「なぜ? なぜ私は死ねないの……?」
何かがおかしい、と強い違和感を覚える妲己の前に、新たな猟兵が玄室に転送されてきた。
「……ちっ、何で極悪非道な悪女じゃねーんだよ。ヤりづれーだろうが」
「ご主人サマ意外とそういうの弱いよね?」
「うるせー、つか死ぬしかねーって状況も虫唾が走るな……」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)とその相棒メルシーは、玄室に転送されるやいなや、賢者の石で構成された宝貝の槍『賢銀水槍』で充満する香気を打ち消していく。
同行しているテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)も、宝貝『時空魔刃・三呪剣』を用いて香気の“過去”を斬ることで、はじめから存在していなかったと現実を改竄。
やり方は違えど、猟兵たちの周囲の香気は次第に取り除かれていった。
「妲己って悪い奴だって聞いてたのに……これじゃあ、あんまりだ……」
宙を舞って自動的に攻撃を行うテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は、憑依してくる殺生狐理精の対象が自分自身だという事に戸惑う。
「歴史ってのはそういうものですよ……表になってない真実は何処にでもあるものです……」
相棒のヘカテにゃんは、その事実にまだ気が付いていない。
脂汗を額に浮かべながら、纏わり付いてくる羽衣人たちを傷付けまいと必死にテラは奥歯を噛み締めてこらえる。
「マリーアントワネットって人も実はそんなに悪くなかったらしいしな……う、うぅ
……!?」
「おい、テラの様子がおかしくないですか?」
カシムは飛来してくる流星胡蝶剣を『賢銀水槍』と万能魔術砲撃兵装『カドゥケウス』の光弾で撃ち落としながら、ヘカテにゃんへ問うた。
その場にうずくまるテラに、ようやくヘカテにゃんが彼女の異常に気が付いた。
「テ、テラ!? まさか妲己のユーベルコードに……うう、私も、なんだか……」
意識が性欲と殺戮衝動で今にも塗り潰されそうになるヘカテにゃん。
テラは呼吸を荒げるだけで済んでいるのが信じられないくらいに理性を保っていられなくなる。
「は、羽衣人たちへユーベルコードを放ってくるんじゃ……なかったのか……?」
テラの疑問に妲己が答えた。
「此処に集う羽衣人たちは、私の香気に誘われただけで私を害する感情を持っていません。私の自動発動型ユーベルコードは、私を殺そうとする相手に向けられますので……それはつまり猟兵へ効果が及ぶということです」
妲己の言葉に、テラは自分たちの思い違いを悟った。
「ま、まずいぞ……! えっちな気分と誰かを殺したい気分で、おれのあたまがおかしくなりそうだ!」
「フニャぁ~! フニャぁ~!」
「ああ! ヘカテにゃんが発情期に! もう駄目だ! って、またカシムとメルシーは光学迷彩魔術で姿を消したのか!?」
先程まで隣りにいたカシムとメルシーのアホアホコンビは、今や忽然と姿を消してしまっている。
ただ、妲己のユーベルコードの胡蝶剣が何度も空中で弾かれているので、敵意を放つ2人に胡蝶剣が引き寄せられているのだと分かる。
「それよりも、おれたちをどうにかしないと……! はぁ、はぁ……ん……っ! やめ、ろ……!」
熱を帯びるテラの身体に、羽衣人たちの手が伸びる。
その手が次第にテラの濡れた未開の秘所に伸びて、下着越しに刺激を与えようとする。
「やめろ……! そんなことされたら、殺したくなるだろ……!」
慌ててテラは三呪剣を操って、羽衣人たちへ当身を行うことで意識を奪ってゆく。
更に、自身の腹に黒剣と灰剣をいきなり突き刺した!
「痛っ!?」
傷は浅いが、溢れ出る鮮血と激痛にテラは涙が零れる。
「……でも、これでおれの中の『過去』と『現実』を斬った! 妲己のユーベルコードは克服したぞ!」
荒療治ではあるが、どうにか周囲の羽衣人たちを斬殺せずに済んだようだ。
それでもテラへ引き寄せられる羽衣人たちを、彼女は浮遊砲台で撃ち落としていく。
「ごめんな、みんな! 弾丸は非殺傷用だから、おとなしく寝ててくれ!」
テラが奮戦の末に、ようやく妲己の元へ辿り着く。
「待たせたな妲己! 今、殺してや、る……は?」
だがそこには、メルシーとカシムが両サイドから妲己を挟み込む形で抱擁していた!
「ふん、僕は欲望優先だからな?」
「そうだねご主人サマ☆」
「うわああぁぁー!?」
テラが思わず両手で目を隠す。
アホアホコンビが、妲己へ凄まじい攻撃を仕掛けている真っ最中だったのだ。
前後からの同時挟撃による槍と銃が妲己を苛む。
透明状態からの奇襲は効果抜群で、飛来する胡蝶剣は無理矢理キャッチして石棺の壁に今や突き刺さっているので無効化済み!
「ここがいいのか? ほら言ってみろ?」
「一番弱いところへ念動光弾を撃っちゃうよ♪」
「……ぁっ! っっっ!?」
カシムとメルシーが繰り出した、槍と銃の妙技で達した妲己が石棺の上でぐったりと横たわる。
「……ふぅ」
「賢者モード突入……☆」
持てる技量を吐き出したカシムとメルシーも添い寝をし、その耳元へ囁きかける。
「……お前のやった事は無意味じゃねーよ。少なくともあの台はこの世界を守ってきてたんだ。それに……僕らが張角を潰す。後は僕らに任せてのんびり寝てろ」
「今ので妲己ちゃんの弱い身体のところは把握したぞ☆」
「さっきの行為にそんな意味が!?」
気が付けば、妲己に押し付けられる宝貝槍の穂先と銃口が、そのみずみずしい柔肌を喰い破っていた。
「痛みなんて感じないだろう? 楽に死んでくれ……!」
これにテラが続く。
「……手は止めないぞ。余計に痛くなっちゃうだろうからな。せめてさっきの2人の行為で痛みが麻痺してくれればいいんだが……」
三呪剣の過去・現在・未来の三対の剣が、妲己のユーベルコードのように自動戦闘を行う。
テラも紅龍槍『廣利王』と星刃剣『グランディア』の連続攻撃を繰り出し、妲己の体を貫いた。
「おれもカシムと同意見だ……あんたのやった事は無意味じゃない。おれ達が無意味にさせない! だから……その……」
テラは意を決して、闇を凝縮させたかのような新たな魔剣を創造すると、それを妲己へ向けて振り下ろした!
「せめて眠れ……! ……安らかにっ!! エレメンタルシェイド・スラッシュ・エクステンド!!!」
漆黒の斬撃が、妲己の精神を斬り裂いた。
大量の出血も重なって、妲己はそのまま息を引き取った。
カシム達とテラはそれを見届けると、玄室から盛り狂うヘカテにゃんを抱えて出てゆくのだった。
――だが、それでも妲己は死ぬことを許されない。
――まるで何者かに生きることを強制されているかのようであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神代・凶津
「…戦う意志すらないオブリビオンですか。」
おっと相棒、同情は禁物だぜ。倒さなきゃいけない相手なのは変わらねえんだからな。
敵の先制攻撃は足元に結界霊符を貼り結界術で防御だ。
しかし【傾世元禳】、厄介だぜ。結界から一歩でも出れば魅了されかねない。
なら、『酒池肉林の宴の間』を俺達が塗り替えてやるぜッ!
「…悪しき不浄を祓いたまえ。破邪・禍祓陣。」
禍祓陣で魅了の呪詛を祓ってやる。相棒ッ!禍祓陣が効いてる内に一気に行くぜッ!
妲己の攻撃を見切り、薙刀で受け流しながら近付いて破魔の霊力を込めた霊鋼の薙刀の一閃を食らわしてやるッ!
望み通り引導を渡してやるぜッ!
【技能・結界術、浄化、見切り、破魔】
【アドリブ歓迎】
何かがおかしい。
妲己はここまでに何度も猟兵に殺され続けている。
それでも妲己は何度も再生し、命が無理矢理に繋ぎ止められている感覚さえ味わっていた。
「……おい今の見たか、相棒?」
「……蘇生しましたね」
朱塗りの鬼面猟兵こと神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と、彼を装着して戦う神代・桜は、そんな妲己復活の瞬間を目の当たりにしてしまった。
戦慄する2人に、妲己は語り掛ける。
「お願いします。私を今度こそ殺して下さい……。何かが、何かがおかしいのです。思えば封神台が破壊されたことも、私がオブリビオンになったことも、すべて……」
「確かに、こいつは何かやべー黒幕が糸引いてやがるみたいだな、相棒? ……相棒?」
凶津の言葉が耳に入っていないのか、桜が先程からぼぅっと思案に暮れている。
「……戦う意志すらないオブリビオンですか」
「おっと相棒、同情は禁物だぜ。どうも妙な事になってるらしいが、それでも倒さなきゃいけない相手なのは変わらねえんだからな」
桜が妲己への憐憫の情を抱く前に、凶津は早めに釘を差しておくことにした。
「って、香気が強くなってきたな! 絶対先制攻撃ってやつか!」
「……結界霊符で香気を遮断します」
今まで平然と会話が出来ていたのは、2人が身体に結界霊符を貼り付けて香気を遮断していたからだ。
だが玄室に充満する香気とは比べ物にならない濃度の香気が、妲己のユーベルコード『傾世元禳(けいせいげんじょう)』として放たれればもはや空間ごと結界で香気を遮断する他なかった。
「しかし『傾世元禳』、厄介だぜ。結界から一歩でも出れば魅了されかねない」
「……壁や床も宝石に変わるほどの魅了効果、恐ろしいですね」
「なあ相棒? この香気を瓶に詰めて持ち帰って、道端の石に嗅がせたらダイヤモンドになるんじゃねぇか?」
「……はいはい、今はそれを試す余裕もないですけどね」
「ンだよ相棒! 冗談だぜ? ちゃんと手はあるじゃねぇか!」
一見、八方塞がりの状況だが、凶津はあるユーベルコードで逆転が狙えることを見出していた。
それを桜に耳打ちすると、桜もあっとそれに気が付いた。
「……なるほど、凶津、冴えてますね」
「だろ? んじゃ、今からこの『酒池肉林の宴の間』を、俺達が塗り替えてやるぜッ!」
桜が凶津を被ると、屋を番えていない破魔弓を桜は宝石きらめく天井へ掲げる。
「……悪しき不浄を祓いたまえ。破邪・禍祓陣」
そして空の弦を引っ張って手を放した。
すると、不思議なことに玄室という密室の中へ、相棒の巫女の祷りを込めた矢が部屋の四方に降って突き刺さったではないか!
途端、香気で満ちていた玄室の空気が一変する。
清浄な気配が玄室を支配すると、狂乱していた羽衣人たちは一時的に正気に戻り、壁や天井もただの岩へと戻っていった。
「禍祓陣で魅了の呪詛を祓ってやる。相棒ッ! 禍祓陣が効いてる内に一気に行くぜッ!」
「……羽衣人の皆さんは、どうかお引き下さい」
霊鋼の薙刀の穂先に、桜色の霊力が渦を巻いて高まってゆく。
神代コンビは石の床を蹴って前へ飛び出すと、疾風めいて一気に妲己へ肉薄!
薙刀を前に突き出す鋭い突きの一閃が、妲己の心臓を見事に貫いてみせた!
「望み通り、引導を渡してやるぜッ!」
「か……げハッ……! 今度こそ……し、ね……ま……す」
ずるりと血濡れた薙刀の刃から抜け落ちた妲己の身体はピクリとも動かない。
念の為、脈を測るが反応もない。
「……死んでるな」
「……ええ、死にました。でも」
「なんでだろうな? こいつ、まだ“意識がある”ぜッ!?」
凶津は妲己と目があってしまった。
呼吸こそしていないが、じっと朱塗りの鬼面を仙女が見詰めている。
その口元が、ゆっくりと。
ごめんなさい。
と動いたのを、凶津は見逃さなかった。
大成功
🔵🔵🔵
黄泉川・宿儺
POW ※アドリブ連携等歓迎です
妲己殿を、殺したくない
だけど、この呪われた身体で彼女を助けるには
それしか方法は、ない。
桃月桃源郷製宝貝「黎明甲」の<狂気耐性>により
酒池肉林の宴で正気を失わないように精神を鎮静化
落ち着いて羽衣人殿達を躱す
『殺生狐理精』が誘発する殺意と劣情を<根性>で耐えながら、
妲己殿の下へ、歩を進める
妲己殿、お覚悟を
迸る黒幕への怒りを糧に
【UC:変異・修羅道】発動──
妲己殿の苦しみを断つべく、全力の一撃を放つ
生命力の減少なんて関係ない
妲己殿の悲しみに比べたら、こんなもの!
妲己殿を倒した後、涙が溢れて止まらなくなる
こんなぐしゃぐしゃな顔、妲己殿にはとても見せられないでござるなぁ
「妲己殿を、殺したくない。だけど、この呪われた身体で彼女を助けるには、それしか方法は、ない」
黄泉川・宿儺(両面宿儺・f29475)はボロボロの桜學府制服の軍帽を目深に被り直すと、桃月桃源郷製宝貝『黎明甲』……つまり宝貝の軍手を両手にはめてみせる。
「妲己殿の香気、666の魔を宿すこの小生の身体でもなかなかに酷でござる。ですが、この宝貝があれば……はぁッ!」
空中を唐突に殴りぬく黄泉川。
すると、殴った箇所から香気が霧消してゆくではないか!
「殴ると呪解する宝貝ですって……!? 猟兵はまたとんでもない宝貝を作るのですね……?」
驚く妲己だが、自動発動型ユーベルコードを己の意思で制御できずに下唇を噛み締めていた。
黄泉川は纏わり付く羽衣人たちの鳩尾をワンインチパンチで呪解しながら気絶させてゆくと、一歩ずつ妲己の下へ歩み寄る。
「妲己殿、妲己殿……今、お救い致すでござる。小生の拳にて、その生に安寧の眠りを齎して差し上げましょう」
まるで地中を掘削するかのように、香気を殴って吹き飛ばし続ける黄泉川。
だがしかし、妲己の更なるユーベルコードが黄泉川を襲う!
「それ以上は近付いたらいけません……! 『殺生狐理精』があなたに憑依しました……!」
欲情と殺戮衝動を増幅させ、攻撃する度に体力を大幅に削らせる憑依型ユーベルコード。
黄泉川の心身を蝕もうと、悪徳の精が猛威を奮おうとした。
その時だった。
「殺生狐理精殿、小生の心身は既に満席でござる。貴殿の座す隙間など一寸もござらぬよ。なにせ666体も詰め込まれておりますゆえ!」
黄泉川は押し寄せる欲情と殺戮衝動をたちどころに払い除けると、己の拳を自身の鳩尾に叩き込んだ!
「げハッ!? ……結構、痛いでござるな! だが、これで――」
呪解の一撃で肉体から剥離された殺生狐理精が、振り返る黄泉川と対面する。
「おさらば御免ッ! フンッ!」
怪力任せに悪徳の精を拳で粉砕!
一部始終を眺めていた妲己は、もはや言葉を失っていた。
「……妲己殿のユーベルコードはご覧の通り。小生が打ち砕いてみせました。さあさあ、妲己殿……!」
間合いは既に1mを切っている。
黄泉川は腰を少し落とし、呼吸を正し、拳を引いて身構えた。
「我が必殺の一撃で、その身に死を。妲己殿、お覚悟を」
「……ええ、お願いします」
目を閉じ、身体を委ねる妲己。
黄泉川は全集中で拳に力を一点に溜め、それを打ち出そうとした。
だがそんな彼女に、妙な声が頭の中に届いた。
(……死ぬことは許さん。何度でも『再孵化』して甦れ、妲己)
「今の、声は……?」
黄泉川の問いに妲己は答えない。顔を青ざめたまま、無言を貫く。
これで黄泉川は理解した。
「真の敵は張角に非ず……妲己殿を弄ぶ黒幕がいる……! 許せないでござる……オブリビオンには安寧の眠りさえ享受されないというのでござるか!?」
妲己の蘇生は他の有力敵の仕業だと、黄泉川は本能的に悟ったのだ。
そしてまだ視ぬ黒幕への怒りが最高潮に達した時、彼女の拳はユーベルコードとなって妲己へ放たれた。
「小生――ブチ切れたでござる」
黄泉川の姿が凶悪な悪鬼羅刹の姿へと変化し、その身長が2倍に伸長してゆく。
同時に攻撃力と反応速度も2倍となり、異形になる度に倍々に強化されていった。
「黒幕の顔面に拙者はこの拳を叩き付けるでござる! 妲己殿の無念と理不尽……小生が頂戴致す!」
そして放たれる『変異・修羅道(ディープエロージョン・ラクシャーサ)』が、妲己の心臓を鷲掴みにして引き抜いてみせた。
「生命力の減少なんて関係ない……妲己殿の悲しみに比べたら、こんなもの!」
「なら……私の心臓を……お食べなさい……仙人の肉は……不老長寿の妙薬……です、か、ら……」
事切れた妲己を看取った黄泉川。
しかし、すぐにその心臓が再生してゆくのを確認すると、黒幕の所業に怒りの炎を滾らせる。
「黒幕……絶対に許さで置くべきか。そして妲己殿の施し……ありがたく貰い受けるでござる。いただきます!」
黄泉川は握り込んでいた妲己の心臓を丸かじりし、咀嚼して飲み込んだ。
途端に湧き上がる凄まじい霊力を感じ、黄泉川の目から涙が溢れる。
「こんなぐしゃぐしゃな顔、殺した相手を気遣える妲己殿には……とても見せられないでござるなぁ」
ぐしぐしと包帯まみれの腕で涙を拭いて踵を返す黄泉川。
きっと、妲己はまた息を吹き返すのだろう。
それでも、口の中に残る鉄臭い心臓の味を、黄泉川は生涯忘れまいと固く決意するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
蛇無・杏珠
◎アドリブ・改変歓迎。POW
「そっかあ、だっきさんそんな哀しい人だったんだね……でもそれなら!ちゃんと倒してあげないと!」
【桃花鉄爪】を装備していくよ!
【魅了】も【破魔】の力をこめた爪でどうにかなるかな……
憑きものの狐理精は、危なくなる前に鉄爪で切り裂く!
それが駄目なら、【破魔】の宿った爪で自分の腕を少しだけ傷つける。
これで出ていってくれるといいけど。
それに、【破魔】の力を身体に取り込めたら、少しは抵抗力も上がりそう。
「だっきさん!貴方がそんな力なくても素敵な人なのは凄い分かるよ!でも苦しいんだよね……蛇無ちゃんが楽にしてあげるから、次に生まれてくるときは仲良くできるといいね!」
UC発動。こんなもんじゃ蛇無ちゃんの元気はなくならないよ!
邪魔な羽衣人は躱し、音速で妲己に迫る。
__またね。
妲己を哀しみと慈愛の籠る【桃花鉄爪】の一撃で貫く。
小雉子・吉備
【境界妖怪組】
善のために悪を成す……キビには真似出来ないや、貴女には貴女の妹分の雉鶏精の事も含めて色々気になるけど
せめて、なるべく苦しまない様に
[POW]
事前に手に入れた桃の花を霓虹ちゃんに一つ渡し〈ひいろ&なまり〉ちゃんにもう一つ渡し【動物使い】で撹乱と羽衣人達を【気絶攻撃】で無力化し
【オーラ防御&結界術&呪詛耐性&狂気耐性】で備え【高速詠唱】UC攻撃力重視発動
【集団戦術&団体行動】で皆と連携
殺生狐理精を【属性攻撃(聖)】を上乗せした【浄化&破魔】の【斬撃波】を破魔の宝貝刀〈偽御神刀・桃乃花吉備男〉の力で振るい妲己ちゃんから引き剥がし
二の太刀で彼女が苦しまない様に
[アドリブ絡み大歓迎大歓迎]
ルインク・クゼ
【境界妖怪組】
何か歴史や漫画で知った妲己と、偉い違いやね……悪辣な事したんは間違っとらんけど、こうするしかないんなら
あたし達も出来る限りの事を
[POW]
〈蛸墨の破魔筆刀・オクトインクブレイド改〉使って【属性攻撃(睡眠)】込め羊と地面に書いて発現した羊【弾幕】を【範囲攻撃】で解き放ち羽衣人達を
羊が一匹二匹な感じで無力化させ
【オーラ防御&狂気耐性&呪詛耐性】で備えて
【動物使い】で〈ヒナスミ〉ちゃんに【気絶攻撃】の手伝いを
吉備ちゃんらと連携し
〈蛸墨の破魔筆刀・オクトインクブレイド改〉で地面に桃乃花と書いた【弾幕】張って
あたし達もUCで殺生狐理精を妲己ごと
【怪力&捕縛】を
[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]
蒼・霓虹
【境界妖怪組】
自ら悪を被って成そうとした、貴女の願い……わたし達がオブリビオンを倒すと言う形で引き継ぎます
せめて心安らかに
[POW]
吉備ちゃんから貰った桃の花を一つ
使い〈彩虹(戦車龍)〉さんを【早業&メカニック&武器改造】し一時的に
妲己さんの力に対する耐性に
わたしも【オーラ防御&結界術&狂気耐性&呪詛耐性】で備えUC【高速詠唱】で耐性を更に上げ
【集団戦術&団体行動】で吉備ちゃんやルインクちゃんらと連携し
【高速詠唱】〈レインボークローバー〉【結界術&弾幕】を【念動力】展開し吉備ちゃんらを取り巻き等の攻撃から【盾受け&ジャストガード&受け流し】援護を、後は頼みます
[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]
梁山泊の玄室へ、新たに4人の猟兵が転送されてきた。
どうやらそのほとんどが面識のある者同士らしい。
「そっかあ、だっきさん、そんな哀しい人だったんだね……でもそれなら! ちゃんと倒してあげないと! ね! 吉備さん、ルインクさん、霓虹さん!」
元気を振りまく蛇無・杏珠(暴走恐竜配信者・f35795)が、小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)とルインク・クゼ(蛸蜘蛛のシーアクオン参號・f35911)、そして蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)へと微笑みかける。
その腕には、魅了の呪力を斬り裂く桃色のアイアンクロー『桃花鉄爪』が備わっていた。
おかげで玄室に充満する香気の影響を受けずに正気を保っていられるのだ。
小雉子は蛇無の言葉に静かに頷き返すと、その赤い目で妲己を見詰めた。
「善のために悪を成す……キビには真似出来ないや。貴女には貴女の妹分の雉鶏精の事も含めて、色々気になるけど……」
「その姿は……そうですか、雉鶏精が猟兵となって私の元へ。なんて数奇な巡り合わせでしょうか」
感慨深いと言わんばかりに、妲己は遠き記憶へ想いを馳せているようだ。
「けど、何か歴史や漫画で知った妲己と、偉い違いやね……悪辣な事したんは間違っとらんけど、それが封神台建立のために人に討たれるようにする方策だったなんて……いくらなんでも不憫過ぎるんよ……」
ルインクも封神武侠界における彼女の在り方に戸惑いを隠せない。
「自ら悪を被って成そうとした、貴女の願い……わたし達がオブリビオンを倒すと言う形で引き継ぎます。せめて心安らかに……」
この蒼の真っ直ぐな言葉は開戦の合図となった。
妲己への危害の石をはっきりと口にした途端、彼女の意思とは関係なくユーベルコードが猟兵たちへ襲いかかってきた。
「霓虹ちゃんの言う通りだよ。せめて、なるべく苦しまない様に、キビたちがやり遂げてみせるよ」
「せや。こうするしかないんなら、あたし達も出来る限りの事をするまでなんよ」
小雉子とルインクも、迫りくる先制攻撃を前に身構える。
4人の猟兵たちに襲いかかったのは、殺戮と欲情を煽るユーベルコードの『殺生狐理精』だ。
猟兵たちへ憑依することで効果を発現させ、攻撃を行う度に体力の3分の1を失う恐ろしいユーベルコードだ。
「蛇無ちゃんに取り憑かないで! 破魔の力で引き裂いちゃうよ!」
完全に憑依される寸前、蛇無は『桃花鉄爪』で自分の太ももを軽く引っ掻いた。
腕でも良かったが、この玄室なら走り回ることもなさそうなので足を犠牲にしてみせる。
皮膚が裂けて滴る血液に顔をしかめる蛇無であるが、その傷口から殺生狐理精が抜け出てゆくのが分かった。
「やっぱり! 蛇無ちゃんの身体を引っ掻いて身を清めれば、せっしょうこりせいは嫌がって外へ出てくるよね!」
瞬時に敵のユーベルコードの弱点対策を、本能的にやってのけた蛇無の戦闘センスは計り知れない。
一方、境界妖怪組の3人は、互いに強力しあって殺生狐理精への対処を進めてゆく。
「霓虹ちゃん……! これ、を……!」
小雉子は3人の中で唯一魅了への耐性が弱い蒼へ、手折った桃の花の枝を差し出した。
「い、今までは彩虹さんと繋がって結界を体に張り巡らせて耐えてましたが……これ、は……!」
体の芯が熱く疼き、劣情と殺意が同時に蒼の思考を埋め尽くしてゆく。
手にした桃の花の枝で殺生狐理精の侵食を遅らせるも、蒼は未だに余談を許さぬ状況のままだ。
「キビも、ちょっとまずいね……って、ちょっと邪魔しないで!?」
宝貝刀として生まれ変わった偽御神刀・桃乃花吉備男の破魔の霊力のおかげで耐え忍ぶ小雉子も、早く対処をしなくてはと焦る。だがそこへ、狂乱して我を忘れる羽衣人たちが酒池肉林の宴へと誘う。
目の前で酒に溺れつつ、男女が代わる代わるまぐわい続ける光景は、殺生狐理精の侵食を思いのほか早めていった。
「ちょっとこれは青少年の健全な育成方針に反するんよ……」
この中で一番正気を保ってられているのは、ルインクであった。
彼女の宝貝である『蛸墨の破魔筆刀・オクトインクブレイド改』は、書いた漢字の意味が世界に影響を及ぼす霊具である。
これにて殺生狐理精を『悪霊退散』と足元に書き認め、更に猟兵たちの足元の床に『桃乃花園』と書き記す。
すると、ルインクに憑依していた殺生狐理精はたちまち祓われ、他の3人も破魔の霊力を底上げされて落ち着きを取り戻してゆく。
「ルインクちゃんが筆刀を使いこなしてる……むしろチートなんだけど……?」
「吉備ちゃん、感心しとる暇あったら、羽衣人さんたちをはよ眠らせるんよ……!」
相棒の空飛ぶ巨大蛸のヒナスミが羽衣人たちの首筋へ8本の触腕を伸ばして締め上げる。
気道を絞られた羽衣人たちは酸欠でバタバタと気絶していった。
ルインクも羽衣人たちへ直に『安眠』やら『睡魔』やらを殴り書き、強制的に入眠させてみせた。
小雉子もお供の青い狛犬なまりと炎の赤猿ひいろに手伝ってもらいつつ、羽衣人たちの首筋へ当て身を繰り返す。
「はい、霓虹ちゃんも……これで除霊完了なんよ……」
「ぺっぺっぺ……あ、ありがとうございます、ルインクさん……お正月の羽子板で負けた以来ですね、顔に墨を塗りたくられるのは……」
顔だけではなく全身が真っ黒になった蒼と彩虹。しかしおかげで正気を保つことが出来るようになった。
「なんかおもしろーい! 蛇無ちゃんもやってやって!」
「え……蛇無ちゃんはもう殺生狐理精の影響受けてないやろ……」
戸惑うルインクだが、蛇無のお願いに恐る恐るその顔へ墨を塗りたくった。
「あはははは! 蛇無ちゃん、全身真っ黒だー! あれ? なんか強くなった気がする!? うおー! まだまだ元気有り余ってるよー!」
破魔の文字を書き付けられた蛇無は、溢れる元気をユーベルコードに変え、ティラノの覇気を全身に纏ってパワーアップ!
あまりの元気ぶりに、今なら翼がなくても空中だってダッシュできちゃうはずだ。
「ルインクさん! だっきさんにもなにか書いてあげて! そしたらどうにかなるかも?」
「うーん? それはどうなんよ?」
ルインクは筆刀と妲己の顔を交互に目配せさせる。
これに妲己は首を横に振った。
「ごめんなさい、ちょっとそれだけは……」
どうやら、顔を真っ黒に塗りたくられるのは嫌のようだ。
「それに、私のユーベルコードは、どんな強力な解呪の宝貝でも無意味です……解除できるはずの張本人たちは、仙人なのに何故か既に死んでしまいましたので……」
「やっぱり、キビたちが殺すしかないんだね……」
突きつけられた事実は分かりきっていた事だが、いざ行おうとすると躊躇してしまう小雉子。
ルインクも蒼も、踏ん切りが付かずに身構えたままだ。
この状況の中、蛇無だけは明るく振る舞ってみせる。
「だっきさん! 貴方がそんな力なくても素敵な人なのは凄い分かるよ! でも苦しいんだよね……蛇無ちゃんたちが楽にしてあげるから、次に生まれてくるときは仲良くできるといいね!」
無邪気な優しさと明確な殺意の入り混じった蛇無の言動に、妲己は微笑みながら小さく頷いた。
「さあ、覚悟はできています。ひとおもいに、お願いします……」
身を差し出すように、妲己は両手を広げて時を待つ。
4人は互いに目配せし、いよいよ総攻撃を開始した。
「所詮はキビ達は紛い物に過ぎないけれど、紛い物にも、それに込められた想いと矜持がある……二の太刀は要らない。あなたを苦しませたくないから……」
小雉子は偽御神刀・吉備男の刀身を霊力の刃に変え、取り巻きの雉鶏精の霊魂も霊力の刃で武装させる。そして自身も桃太郎のような勇ましい陣羽織を身に着け、霊力を急激に膨張させてゆく。
「赤き糸疾る、真蛸に愛されし土蜘蛛が担う、赤きはシーアクオン参號ここにあり……」
ヒナスミがルインクの周りで踊りだし、彼女は必殺の一撃を繰り出す姿勢を構えた。
「彩虹さん、準備は良いですか?」
『……僕は何時でも行けますよ』
彩虹も、この状況は心苦しい様子。
それを知って尚、蒼は次々とマジックカードをスロットへ挿入してゆく。
「虹三葉『レインボークローバー』! 虹水宝玉『ネオンアクアストライク」! 虹色の焔『レインボーバーナー』! 茶柱『ハッピーティートラップ』!」
今持てるマジックカードを全部乗せだ!
「フォーチュンMAX起動っ! 強襲『猟機戦龍・彩虹』っ!」
虹色に立ち上る幸運のオーラが蒼と彩虹を包み込む。
その主砲が燦然と輝きを放った次の瞬間、全てのマジックカードの威力を籠めた、最強の一撃が妲己へ浴びせられた。
クローバー型の幸運エネルギーが絶対零度のまま燃え盛り、至近距離で破裂すると無数の氷の針の山に変化して妲己の肉体を貫通させる。
そこへルインクの筆刀が空間を走って墨の軌跡を描くと、途端にその軌跡が真っ赤に染まったかと思えば赤い蜘蛛の巣となって妲己を絡め取る。赤い蜘蛛の糸からは、光り輝く蛸の触腕が出現して妲己を縛り上げてみせた。
立て続けに飛び込んでくる小雉子が霊刀を最上段に振り上げる。
横に並び立つは蛇無だ。
「……さようなら!」
「――じゃあね!」
左右から繰り出された音速の斬撃が、妲己の身体を深く刻んで骨を断つ。
妲己の身体が石棺の中へ倒れ込む。
確かな手応えを感じた4人は、その仙女の死亡を確認した。
しかし、それでも妲己は何者かの手によって『再孵化』點せられ、また蘇ってしまうとは4人は知る由もない……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
紅月・スズ
ん、分かったアル
まあそこまで頼まれたなら応えるものアルからね
……理由なんてそんなので十分アル
これまたすごいアルね。ワタシの護業天象拳でもここまで影響を及ぼす域にいたってないアルよ
けど、美しさも酒池肉林も、今のワタシにはもう縁の無いものネ
アナタのその剣、何より万象すら魅了する域に至ったその「業(わざ)」の方がよほど惹かれるアルよ
余計な思考は捨てて(元から無い?確かにそうネ)行動は瞬間思考、剣を見切り、闘気で逸らし、当たっても激痛耐性で誤魔化すネ
後玄室に香気がこもっているなら換気すればいいアル
闘気を纏い、右手の『破邪螺旋穿孔槍』を回し始めて、仙術で風も纏わせ破魔の風を吹かせつつ玄室に大穴開けてやるアル。
そうしてひっかき回して狙うはたった一瞬。雷と化した左腕の『掃天雷爪』での一撃、【迅雷襲】アル
それでも足りなければ隠し持ってた『暗器』でダメ押しするネ
とりあえず張角とかいうのはぶん殴っておくからゆっくり眠るといいネ
死ねない。
ここまで猟兵に殺され続ける妲己だったが、気が付けば時が遡るように蘇生してしまっている。
(まだ死ぬことは許さない……何度でも『再孵化』せよ、妲己)
頭に響く何者かの声に、妲己は怯える。
「ああ、誰か! 私を殺して下さい! お願いだから!」
「ん、分かったアル。まあそこまで頼まれたなら応えるものアルからね」
「……え?」
妲己の目の前には、いつの間にか紅月・スズ(路上格闘僵尸娘・f32726)が佇んでいた。
「……理由なんてそんなので十分アル。にしてもこれまたすごいアルね。ワタシの護業天象拳でもここまで影響を及ぼす域にいたってないアルよ。けど、美しさも酒池肉林も、今のワタシにはもう縁の無いものネ。アナタのその剣、何より万象すら魅了する域に至ったその『業(わざ)』の方がよほど惹かれるアルよ」
充満する香気を物ともせず、僵尸娘は平然としている。
それどころか、自動発動済みの武林の秘宝『流星胡蝶剣』を児戯の如くヒョイヒョイとかわしてみせたではないか。
一体なぜ?
妲己の疑問は、玄室に流れる風にさらわれていった。
「風? え、此処は梁山泊内部奥深くにある玄室なのですが……?」
「ああ、それアルか? 香気がこもっているなら換気すればいいアル。ほら、風穴開けておいたアルよ。ありがたく思えアルね」
紅月が指差す方に見えたのは、外部に通じる巨大な岩壁の穴だった。
妲己は驚きで愕然としている!
「ど、どうやってあんな大穴を!?」
「簡単アル。これ、ワタシの宝貝の破邪螺旋穿孔槍アルよ。これを身に着けていれば魅了は無効ネ。しかも仙術で風も纏わせ破魔の風を吹かせれば、どんな物でもゴリゴリ掘削できるアルよ。それが宝石化した壁でも無問題アルね」
「それって宝貝というよりも、ただの巨大なドリルですよね……?」
妲己の言葉通り、紅月の腕には彼女の身体とほぼ同サイズのドリルが装着されていたのだ。もはやただの暴力である。でもしっかり呪力を打ち破る効果もあるので、なおさら癖が強い。
「とりあえず張角とかいうのはぶん殴っておくからゆっくり眠るといいネ。安心するといいアル。これからのことは、瞬きしている間に終わるアルよ」
妲己と紅月の間合いは、およそ10m。
駆け寄るにしても数秒は要する距離だ。
だが、次の瞬間、妲己の心臓は刺し穿たれていたのだ。
「――場をひっかき回して狙うはたった一瞬。雷と化した左腕の『掃天雷爪』での一撃、護業天象拳がひとつ『迅雷襲』アル」
左腕が突如として雷光へと変じたかと思えば、一瞬で紫電の手刀を妲己の胸元へ放ったのだ。
余計な思考捨てて……もとより余計な思考など紅月には持ち合わせていないかも知れないが、即決即断の迷いのなさは、これまでの猟兵とは格段に尖った行動であった。
妲己は何が起きたのか理解する暇もなく絶命した。
だがやはり蘇生が始まっている。
「んー? これは誰かが妲己を死なせないようにしてるアルか? もしかして張角じゃないアルか? 一応、追撃はしておくネ」
手元の暗器で“再殺”する紅月。
妲己は頸動脈を斬られても未だ意識を保っている己を恨んだ。
大成功
🔵🔵🔵
五ヶ谷・グレン
◼️心情
オビブリオンってのは、こう言うこともあるんだな。
兎に角、だ。
うだうだ考えたり嘆いたり悔やんだりは後で、
今はこの理不尽って奴の横っ面に一発いれとく
◼️対策
じいさんとついでに強化されてた俺の衛生手袋、こいつでこの願い、かなえる一手となろう、
竜脈使い、破魔、浄化、道術、仙術、結界術、毒耐性。
持てる力に一匙の【覚悟】
をのせて、
さあ、魔女の時間だ
◼️願い
人ならぬ本当に偉大な魔女ならな、
この願い、はなで笑ってってもんなのだろうが。
俺は、願いに届く楔になれるかなれないかって位が、精一杯だ
◼️一撃に
自滅を誘う手管だな
覚悟を決めて
ここは乗っかるのが得策か?
宝貝の力と、自分の事は取り合わず、
この願い、その覚悟、悲しいが憐れむのも嘆くのも失礼と言うもの。
せめて、俺の今の精一杯に笑顔でおくろう。
三回、食い縛り血反吐位でこたえられるならなら本望だな。
UCで猟兵の、妨害をはね除ける願いを叶え、俺の、、妲己に辿り着く願いを叶え。
最後に妲己の願いをじいさんに保護してもらい、
一緒に思い切りいく、思い切りの一撃をだ
「殺して下さい、か。オビブリオンってのは、こう言うこともあるんだな」
五ヶ谷・グレン(竈の魔女はだいたい筋力で解決する・f33563)は釈然としない表情のまま玄室に立つ。
目の前には憔悴しきった妲己。
何度殺されても死ねず、何者かに生かされ続けている。
「……どうせワタシはまた蘇生するのです。殺してくれなんて願いすら、私には許されないのでしょうか……?」
その呟きに五ヶ谷は黙っていられなかった。
「願いに良し悪しはあれど、許されないならとっくに諦めているだろうが。それが叶わないのは、何かしらの理不尽があるんだろ。ってか、兎に角、だ。うだうだ考えたり嘆いたり悔やんだりは後だ。今はこの理不尽って奴の横っ面に一発いれとくか」
五ヶ谷は妲己のすぐ近くまで歩み寄ると、彼女の手を取って真剣な眼差しを向ける。
これに妲己は思わず手を振り払ってしまう。
「いけません……! 私の香気で、あなたが錯乱してしまいます……」
「それについては心配するな。この帽子のじいさんとついでに強化されてた俺の衛生手袋、これがあんたの香気とやらの影響を弾き返してくれるからな」
魔女のオペラグローブと可変型悪魔の帽子《薬事辞典》は、双方とも桃源郷の桃の花で宝貝強化された品々だ。
これを身に着けていれば、五ヶ谷は平然と妲己の手を取ることが出来るわけだ。
「んじゃ、こいつでこの願い、叶える一手となろう。俺の持てる全て……竜脈使い、破魔、浄化、道術、仙術、結界術、毒耐性、その他諸々。あとは一匙の覚悟を乗せて、準備完了だ」
五ヶ谷の6m弱の巨体が妲己を見下ろすと、ニカッと快活に笑みを浮かべてみせた。
「――さあ、魔女の時間だ」
妲己の完全殺害の願いの完遂が、始まった。
妲己は自分が何度殺されても蘇生してしまうこと、それが何者かによって促されていることを五ヶ谷へ打ち明けた。
「どうすれば、私は死ねるのでしょうか……?」
これに五ヶ谷が腕を組んだまま逡巡する。
「人ならぬ本当に偉大な魔女ならな、この願い、鼻で笑ってってもんなのだろうが。俺は、願いに届く楔になれるかなれないかって位が、精一杯だ」
そう言葉を漏らした次の瞬間、五ヶ谷は急激な感情の変化に見舞われる。
「うぐ……ッ! なんだ? 急に、殺意と欲情が、俺の中で入り混じって……?」
「ああ、それは私の自動発動型ユーベルコード……殺生狐理精の仕業です! ごめんなさい、ごめんなさい……!」
自身では制御ができないユーベルコードで、五ヶ谷を苦しめてしまう事を何度も詫びる妲己。
そんな妲己の顎に手を添え、巨人の魔女が仙女の唇を奪った。
「……っ!?」
唐突な出来事に身構える妲己だったが、すぐに諦観の念を抱いたのか、五ヶ谷へ自分の体を委ねてしまう。
(なるほど、心身ともに自滅を誘う手管だな。覚悟を決めて、ここは乗っかるのが得策か?)
五ヶ谷は、このユーベルコードの効果を妲己の願いの一部だと解釈した。
殺戮衝動も、欲情も、妲己が欲している事への発言だと推測すれば……。
五ヶ谷は妲己の柔肌に大きな指を這わせ、その反応を伺う。
「はぁ……ん……もっと、いいのですよ……?」
妲己も熱が籠もった吐息で返せば、両者の目が見詰め合った。
「……好きにして、構いませんから。さあ、最期に愉しみましょう?」
五ヶ谷の下腹部へ手を添えようとする妲己。
しかし、五ヶ谷はそれを拒んだ。
「……悪いな。やっぱ駄目だ。あんたの願い、その覚悟、悲しいが憐れむのも嘆くのも失礼と言うもの。だからここで俺があんたを押し倒したって、何も解決になりやしない。……そうだろ?」
「それでも私は、悪い気はしませんでしたよ……」
顔を赤らめ、衣服を正す妲己。
五ヶ谷が石棺に腰を掛けると、妲己はその隣で体を持たれかけた。
彼は精一杯の笑顔を妲己に贈り続ける。
その光景は、まるで恋人同士の逢瀬の一時のようであった。
宝貝の影響のおかげでだいぶマシだが、この状況に五ヶ谷は必死に歯を食いしばって耐え続けていた。
「なあ、あんたの殺生狐理精に憑依されたまま攻撃すると、体力がごっそり持ってかれるんだよな?」
妲己は無言で頷いた。
五ヶ谷はこれに破顔して言葉を返した。
「三回、食い縛り血反吐位でこたえられるならなら本望だな。そろそろやるか?」
「……お願いします」
妲己が石棺から降り立って両手を広げる。
いつでも攻撃を受け止める覚悟は、五ヶ谷に美しいという感情を呼び起こさせた。
「応法、因果、悪因、善果。報い酬いは巡り廻るってなぁ……猟兵の、妨害をはね除ける願いよ叶え、俺の……妲己に辿り着く願いよ叶え!」
五ヶ谷の汲み取った願いや欲望を代償に、その願いが叶うために具現化した『願いの化身』を顕現させる。
それは五ヶ谷自身の姿だった。
「最後にじいさん、妲己の願いを保護してもらいたい」
頭の上の紳士的な老悪魔が承諾の言葉を返せば、2人の五ヶ谷が同時に構える。
「あんたを泣かせた奴は、俺が必ずぶん殴る。約束する。だから、一撃だ。一撃で行く。あんたの願いを叶える俺と、あんたを助けたい俺が、一緒に思い切りいく、思い切りの一撃をだ」
「……はい。よろしく、お願いしますね。最期に、あなたのお名前をお聞かせ願いますか?」
妲己の最期の願いに、巨人の男は笑顔で答えた。
「五ヶ谷・グレン。竈の魔女だ」
答え終わると同時に、2人の紅蓮が妲己の腹を貫手で刺し穿った。
更に2人で首を握りしめ、脛骨を一気に粉砕してみせた。
妲己は一瞬で終わった行為に、満足げに目を閉じて眠っていった。
もう再生は起こらない。
この場の妲己は、完全に死を迎えることが出来た。
「願い、叶ったな」
五ヶ谷は血濡れた自身の腕を眺めると、自然と溢れる涙を抑えきれずに、その場にうずくまったのだった……。
まだ、己の唇には彼女の熱が残っていた。
大成功
🔵🔵🔵