殲神封神大戦⑭〜其はうつくしき花泪
彼女は待ち続ける。
己を終わらせてくれる誰かを。
彼女は願い続けている。
己に、ほんとうの終わりが来ることを。
「誰か……どうか私を、死なせて下さい……お願いします……お願い……」
美しい仙女は悲哀の涙を流して懇願する。
過去の骸として蘇った己を、その手で殺してほしい――と。
●其はうつくしき花泪
「――封神仙女『妲己』への道が開かれました」
フィオリーナ・フォルトナータ(ローズマリー・f11550)は静かに告げる。
己が身を生贄として仙界の至宝――『封神台』を建立し、この封神武侠界で生じた全てのオブリビオンを封じた封神仙女『妲己』。
その彼女がオブリビオンとして蘇ったのだとフィオリーナは続けた。
「正確には、蘇らされたという表現のほうが相応しいでしょうか。……彼女は、こうなることを望んではいなかったようですから」
全ては此度の大戦を起こした大賢良師『張角』の仕業だ。張角の操るユーベルコード『異門同胞』により、妲己は望まずして彼の支配下に置かれることになったのだから。
「妲己は自らの死を望んでいます。……ですが、彼女が持つユーベルコードが、それを赦さないのです」
妲己のユーベルコードはいずれも彼女の意思とは関係なく、彼女を護るために自動的に発動するものだ。
「加えて、彼女がいる『梁山泊』という地。ここでは至る所に沼のような濁流が流れており、その中から無数の武器が飛来して侵入者を襲うのだそうです」
梁山泊は遠い未来に、人界が宿星武侠を必要とした時の為に作成された山岳武侠要塞だ。濁流から現れる武器は宿星武侠を襲うことはないとのことだが、そうではないならば襲い来る武器の群れを潜り抜けて妲己の元へ向かわなければならない。
更に、妲己が放つユーベルコードへの対策も必要となるだろう。もしも桃源郷で得た破魔の力が在るならば、魅了する術に抗うことも出来るはずだ。
「厳しく、辛い戦いとなるかもしれません。ですが、どうか――皆様の力で彼女の願いを叶え、その魂に安らぎを与えて差し上げて頂きたいのです」
多くの殺戮と悪徳に手を染めて、酒池肉林に穢れて――。
万物を魅了する香気を放つほどの『蠱毒の贄』となり、人に討たれることで封神台を築いた妲己。
全ては、オブリビオンの根絶が後の世に安寧を齎すと信じていたがゆえ。
けれど――。
この世界のために最期まで身も心も利用され、封神台を造り上げたことで終わったはずだった彼女は、死してなおこうして望まぬ過去として蘇ってしまった。
彼女に、どうか皆の手で安らぎをと。
フィオリーナはそう、願うように告げて――妲己の元へと続く扉を開いた。
小鳥遊彩羽
ご覧くださいましてありがとうございます、小鳥遊彩羽です。
今回は『封神武侠界』、『殲神封神大戦』でのシナリオをお届け致します。
●プレイングボーナス
無数の武器が飛び回る中で、妲己の先制攻撃に対処する。
先制攻撃にはユーベルコード以外での対処をお願いします。
(なお、宿星武侠の方は飛び回る武器に襲われることはありません)
●その他の補足など
ご一緒される方がいらっしゃる場合は【お相手の名前(ニックネーム可)とID】もしくは【グループ名】をご記載下さい。
プレイング受付はオープニング公開時より。クリアに必要な人数+若干名での進行予定です。
特に心情をたくさん込めて下さったプレイングを優先して採用させていただく予定です。
以上となります。どうぞ宜しくお願い致します。
第1章 ボス戦
『封神仙女『妲己』』
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POW : 殺生狐理精(せっしょうこりせい)
対象に【殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD : 流星胡蝶剣(りゅうせいこちょうけん)
レベル×5km/hで飛翔しながら、【武林の秘宝「流星胡蝶剣」】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ : 傾世元禳(けいせいげんじょう)
【万物を魅了する妲己の香気】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
イラスト:碧川沙奈
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
栗花落・澪
過去に犯した罪は許されない事かもしれないけど
それとこれとは別だよね
僕の力が解放の一助になれるのなら
僕自身が元々持つ【誘惑】を少しでも香気への耐性代わりに
【高速詠唱、多重詠唱】で【浄化】の光と風魔法を組み合わせた【オーラ防御】
一時的でも香気を遮断しつつ
避けきれなかった武器群の威力を風で和らげオーラで弾く二段構え
濁流から飛来してくるなら凡その位置は推測出来るんだし
翼の【空中戦】で回避を重視
一応【催眠術】を乗せた【歌唱】で妲己さんの動きを少しでも鈍らせ
貴方には花が似合うから
【指定UC】発動
追尾仕様だから仮に友好的に避けてしまっても折り返し攻撃
【破魔】の【祈り】を乗せる事で斬撃の痛みは和らげてあげたい
「過去に犯した罪は許されない事かもしれないけど、それとこれとは別だよね」
過去を封じる封神台。その礎となるために、蠱毒の贄となって果てた封神仙女――妲己。
けれど死してなおその魂は報われることはなく、今こうして過去の骸として猟兵たちの前に現れてしまった。
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は静かに、濁流の向こうでただ死を願う彼女を見やる。
(「――僕の力が、解放の一助になれるのなら」)
澪は自身が持つ、他者を惹きつけて止まぬ力を魅了の誘いに抗うための要として。
さらに浄化の光を重ねた守りの風で自身を包むことで、一時的にではあるが妲己の香気をやり過ごした。
それでも気を抜けば瞬く間に呑まれてしまいそうな心地を覚えながら、澪は翼を広げて濁流を超えていく。
纏うオーラの風は、避けきれなかった武器群の威力を和らげ弾く障壁にもなる。
淀む流れの動きを見れば、飛び出してくる武器の位置を予測することはそう難しくはなく。
――そうして、辿り着いた先。
澪は、死を待ち侘びる仙女と向き合った。
「殺して下さい……私を」
涙を流しながら懇願する妲己に、澪は優しく告げる。
「僕たちは、貴方を終わらせる――そのために来ました。……貴方には、花が似合うから」
香り高く舞い遊べと澪は真っ直ぐに指先を向けて、妲己の周りに破魔の祈りを込めたたくさんの花を咲かせてゆく。
桃源郷を思わせる桃に、桜、竜胆、金木犀、――色とりどりの様々な花がそのまま花嵐となって舞い踊り、妲己を包み込んだ。
たとえ妲己の香気にあてられて、花たちが彼女を傷つけぬように避けてしまったとしても。
追尾仕様の花たちは、定めた狙いを決して見失うことはない。
妲己の香気までも包むような、優しくも気高き香りが辺りに満ちる。
(「どうか、少しでも……」)
彼女が穏やかに、安らかに眠れるように。
澪はそっと、祈るように目を伏せた。
大成功
🔵🔵🔵
源波・善老斎
功罪相償えど、封神台の建立により平和が続いたのは事実。
ならば、生前の功をなお穢す前に送るが、この場における活人と心得たり。
貴殿の願い、行善天拳が聞き届けよう。
足下が濁流ならば、飛び回る武器も丁度良いわい。
【軽業】を活かして刃を避けつつ、刀身を【足場】に跳び移り接近じゃ。
殺生狐理精は甘んじて受けるが、心までは流されんぞい。
「活人の心得」を胸に、心を【落ち着け】一撃に賭けよう。
労を惜しまぬは他の者も同じはず。
ならば、功を紹ぎて殆うきを断つべし……行善天拳奥義が一、【断殆功紹拳】!
心中お察しするが、亡き後のことはその時生ける者の責じゃ。
貴殿が築きし平和は我輩らが取り戻してみせる故、安らかに眠られよ。
――功罪相償えど、封神台の建立により平和が続いたのは事実。
「ならば、生前の功をなお穢す前に送るが、この場における活人と心得たり」
厳かにそう告げて、源波・善老斎(皓老匠・f32800)は地を蹴った。
「貴殿の願い、行善天拳が聞き届けよう」
世界のために命を賭した、ひとりの仙女のただひとつの願いを。
濁流が溢れていようとも、善老斎にとっては然して問題ではなかった。
所構わず飛び回る無数の武器を持ち前の身軽さで軽々と避けながら、善老斎は刀身を足場にして次々に跳び移り、妲己との距離を詰めていく。
「……っ」
その時、善老斎は意識が眩むような心地を覚えた。
善老斎の心にするりと忍び込んだのは、妲己が持つ力のひとつ、殺生狐理精。
殺戮と欲情を煽る禍々しき力を甘んじて受け止めながらも、心までは流されまいと善老斎は活人の心得を胸に抱く。
それは、人々を護るために世の悪を討たんとする志。
心の平静を保ちながら、善老斎は次に己が繰り出す一撃に全てを賭けた。
「労を惜しまぬは他の者も同じはず。ならば、功を紹ぎて殆うきを断つべし……」
皆の流した汗も血も、その一滴とて無駄にはしない――と。
「行善天拳奥義が一、断殆功紹拳!」
己が立つこの血に流された数多の血潮。善老斎はそこに残された想いの気を練り上げて、渾身の気孔拳を繰り出した。
放たれた気は憑依した狐理精ごと呑み込んで、妲己へと集約する。
「心中お察しするが、亡き後のことはその時生ける者の責じゃ」
悲しき仙女へ、善老斎は静かに告げる。
「貴殿が築きし平和は我輩らが取り戻してみせる故、安らかに眠られよ」
「ああ……」
彼らはきっと、己を殺してくれる。
妲己の瞳に、微かに光が差したような気がした。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
貴女の願い、しかと聞きました。
――私の《戦士の手》は、その為にあるのですから。
ディアボロスエンジンを稼働。
【空中浮遊】し、飛び交う無数の
武器を【衝撃波】で落としつつ
妲己の先制攻撃を【見切り】での回避と
【オーラ防御】で耐えることを組み合わせ、
凌いでいきます
人々の、そして貴女の痛みに比べれば耐えられます!
【気合い】【勇気】【覚悟】をもって!
妲己のUCを凌いだら至近距離に間合いを詰め
組み付いた状態で【功夫】を生かした打撃を
密着状態で打ち込んでいきます
……本当は。いえ
猟兵として、戦士として
貴女に出来ることは、静謐なる死だけ
だから全力で――
一度組んだ後は二度と間合いを取らせずに、
必殺の投げで決めますっ!
空色の大きな瞳に映るのは、悲嘆に暮れるひとりの仙女。
彼女こそが、この世界のためにあらゆる穢れをその身に纏い、命を捧げた封神仙女――妲己。
「貴女の願い、しかと聞きました」
確かな意志を双眸に灯し、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は静かに告げる。
「――私の《戦士の手》は、その為にあるのですから」
ふたりを隔てる濁流を前に、ユーフィはまず愛用の大剣ディアボロスに組み込んだウェポンエンジンを稼働させて、ふわりと空中に浮かび上がった。
「お願い、逃げて下さい……!」
そのまま飛び交う無数の武器を衝撃波で落としながら、懇願するような言葉とは裏腹にこちらへ襲いかかってくる妲己の流星胡蝶剣から逃れるべくユーフィは身をひねる。
纏うオーラが掠めた切っ先から滲む痛みを幾許か和らげてくれたのは幸いだろう。
妲己が自らの意志で剣を振るったわけではないことは明らかだった。
彼女自身からは、敵意も殺気も全く感じられないからだ。
「――大丈夫です。人々の、そして貴女の痛みに比べればこれくらい耐えられます!」
この想いが少しでも届けばいい。
揺るがぬ勇気と覚悟をもって、ユーフィは声を上げた。
そうして妲己へと肉薄したユーフィは、そのまま組み付いた状態で功夫を生かした打撃を打ち込んでいく。
「……本当は。いえ」
言いかけて、ユーフィは口を噤んだ。
伝えたいことは少なからずあった。だが、彼女の運命が定められている以上、届かぬ未来を願ったところで叶いはしないから。
「猟兵として、戦士として。貴女に出来ることは、静謐なる死を与えることだけ」
だから、全力で。
ユーフィは鍛え抜かれた戦士の手を存分に振るい、妲己へと確かな一撃を刻むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼
望まぬ悪徳に手を染めて、自らの身も心も犠牲にして、
死後は張角に利用される……何と哀れな
永劫の苦しみから解放し、せめてもの安らぎを
濁流の武器は俺に当たることはないが、ヘルガは狙われる
己の背に彼女を庇い、彼女を狙う武器は自ら盾受け、
時には我が身を盾にしても庇う
ヘルガが創り、俺に託してくれた宝貝『想映鏡』に彼女の愛を感じ
先制攻撃には狂気耐性、覚悟で耐える
怒りに飲まれ、獣と成り果ててしまえば楽だろう
だが俺はそれを望まない
俺が戦うのは、ヘルガが望んだ人々の幸せ、彼女の笑顔のため
その願いを殺意や情欲で穢してなるものか!
妲己……お前もそうだったのだろう?
ヘルガと連携し、剣に込めた破魔と浄化の一撃を
ヘルガ・リープフラウ
❄花狼
襲い来る無数の武器への対処をヴォルフだけに任せてはいられない
【奇しき薔薇の聖母】に変身し、彼の取りこぼした分は花弁と茨で迎撃
大丈夫。わたくしも戦える
あなただけに辛い思いをさせはしないわ
先制攻撃には宝貝『華織の羽衣』を纏い、呪詛耐性、狂気耐性で抵抗
魅了の術がなくとも、彼女の境遇には憐憫を感じずにはいられない
多くの悪徳を成した彼女もまた犠牲者なのだから
それでも、彼女の永劫の苦しみを終わらせられるのはわたくしたちだけ
覚悟を決め、『浄罪の懐剣』に祈りの力を込めて
浄化の力込めた無数の薔薇の花弁で包み込む
犠牲を強いる幸せは、いつかどこかで破綻する
約束するわ
貴女が望み果たせなかった「真の幸せ」を築くと
すべてを飲み込んでしまいそうな濁流の中から、無数の武器が躍り出る。
それらは宿星武侠の力を宿すヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)を傷つけることは決してないが、妻であるヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は別だ。
ヴォルフガングはヘルガを背に庇いつつ、彼女を狙う武器の群れを盾で受け流し、時には己の身そのものを盾にして受け止めながら進んでいく。
けれども、全てを防ぎ切ることは難しくて。
「――ヘルガ!」
降るように迫る一振りに叫んだヴォルフガングに、ヘルガは微笑みを浮かべながらしっかりと頷いてみせた。
「大丈夫。わたくしも戦える」
ヘルガは仙界に咲く桃花の力と万物の色を込めて織り上げた華織の羽衣を纏い、白いベールと薔薇を纏った聖母の姿へと変じた。
辺りに満ちる噎せ返るような香気は妲己が纏うそれに他ならない。だが、羽衣が持つ破魔の力と呪詛や狂気に抗う力でヘルガは心を強く保ち、薔薇の花弁と茨の蔓で飛来する剣を撃ち落とした。
「……あなただけに辛い思いをさせはしないわ、ヴォルフ」
濁流と刃の群れを抜けた先に待つ封神仙女――妲己。
ヴォルフガングはヘルガがかの美しき桃源郷に咲く桃花から創り、託してくれた宝貝“想映鏡”から、彼女の想いを確りと感じ取る。
桃色の宝玉をあしらった小さな鏡は、覗き込むと自身ではなく愛する伴侶の姿が映るもの。
ヘルガがいつだってヴォルフガングに守られていると感じているように――いつだってヘルガに守られているのはヴォルフガングも同じだ。
いつも傍にと込められた確かな想いが、ヴォルフガングの心を蝕もうとした殺生狐理精を祓う。
煽られるまま怒りに呑まれ、ただの獣と成り果ててしまえばどんなにか楽だろう。
だが、ヴォルフガングは決してそれを望みはしない。
「俺が戦うのは、ヘルガが望んだ人々の幸せ、彼女の笑顔のため。――その願いを、殺意や情欲で穢してなるものか!」
そうして、ヴォルフガングは妲己に問いかける。
「妲己……お前もそうだったのだろう?」
ヴォルフガングの言葉に、妲己の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
殺してほしいと希う仙女に、ヘルガが覚えたのは憐憫だった。香気に魅了されていなくとも、そう思う気持ちに変わりはない。
犠牲を強いる幸せは、いつかどこかで必ず破綻する。それを、ヘルガは嫌というほどに知っている。
世界のためにという大義名分のもとに多くの悪徳を成した彼女もまた――犠牲者なのだから。
「――彼女の永劫の苦しみを終わらせられるのは、わたくしたちだけ」
ヴォルフガングと眼差しを交わし頷いて、ヘルガは浄罪の懐剣に覚悟と祈りを込める。
煌めく水晶の刀身に咲く沙羅双樹。全ての人の罪を贖うために聖別された一振りを胸に、ヘルガは浄化の力を込めた無数の薔薇の花弁で妲己を包み込む。
そして、同時にヴォルフガングが駆けていた。
「望まぬ悪徳に手を染めて、自らの身も心も犠牲にして、死後は張角に利用される……何と哀れな」
――永劫の苦しみから解放し、せめてもの安らぎを。
ヴォルフガングが剣に込めた破魔と浄化の一撃が、願いと共に刻まれる。
「約束するわ」
妲己を真っ直ぐに見つめ、ヘルガは紡ぐ。
「貴女が望み果たせなかった“真の幸せ”を築くと」
その言葉に、妲己は瞳を潤ませながら小さく、けれど確かに頷いてみせた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レザリア・アドニス
【オーラ防御】と【狂気耐性】で香気を抵抗してみる
そして死霊ちゃんにも、心臓と魂を握りしめるように頼んで、その激痛で正気を保つ
どれぐらいの苦痛と悲哀を味わってて、そう願う結末に至ったのか
想像もしたくない
ーー『器』は、自分の運命さえも決められないよね
壊されるか、捨てられるか、もしくは、使えなくなるまでこき使われるか
ああ
まったくこんなのもう見たくないわ
願った通りに、死なせてあげて、安らぎを与えてあげる
『器』としての運命から、解放してあげるわ
騎士に守られつつ、蛇ちゃんに彼女の喉笛を噛ませる
そう…香気は色んな物に効くかもしれないけど
この子たちは、『オブリビオン(あなたと同じ)』ですね…
――噎せ返るほどの甘い香りに、瞬く間に心を奪われてしまいそうだった。
咄嗟に張り巡らせた護りの魔力に狂気に抗う力も重ねて、レザリア・アドニス(死者の花・f00096)は封神仙女――妲己が放つ香気への抵抗を試みる。
そして、それだけではなく。
「……死霊ちゃん、お願い」
不安げな眼差しを向けてくる死霊に、レザリアは告げる。
「大丈夫、耐えてみせる、から」
――刹那。
心臓と魂に、荊棘が幾重にも巻き付いたような激痛が走った。
衝撃と痛みに灰色の羽が、そして髪に咲く黄色い福寿草の花弁がはらりと零れ落ちる。
「……っ、」
レザリアは正気を保つために、己の心臓と魂を握り締めるよう死霊に命じたのだ。
魂だけでなく、身体まで抉られたような心地がする。
だがそれにより、レザリアは妲己が放つ魅了の香気に耐え抜いた。
「どうか、――どうか私を、殺して下さい……お願い、します……」
妲己はただ、そう希う。
レザリアの澄んだ翠の双眸に映るのは、容易く折れてしまいそうなほどに儚く弱々しい、ひとりの女だった。
彼女は己の死を、ただそれだけを望みながら、己自身の手でそれを叶えることが出来ない。
――どれほどの苦痛と悲哀を味わって、そう願う結末に至ったのか。
(「……ああ、まったく」)
想像など、したくなかった。
だって、それでは、まるで――。
「……“器”は、自分の運命さえも決められないよね」
レザリアがぽつりと零した言葉に、妲己は何かを察しだように、あぁ、と悲しげな声を漏らす。
「壊されるか、捨てられるか、もしくは、使えなくなるまでこき使われるか――」
無意識に重ねかけた記憶ごと払うように、レザリアは小さく首を横に振った。
「こんなの、もう見たくないわ。……願った通りに、死なせてあげて、安らぎを与えてあげる」
そうして、レザリアを守るように、レザリアと同じ強さを持つ死霊の騎士と蛇竜が現れた。
「――“器”としての運命から、解放してあげるわ」
騎士はレザリアを守るように立ちながら、妲己へと剣を振るう。
そして、するりと忍び寄った蛇竜が、妲己の喉笛に食らいつく。
香気は色々な物に効くかもしれないけれど――。
「この子たちも、オブリビオンですから……あなたと同じ、ですね……」
そう、死した霊と共にレザリアは戦うのだ。今までも、これからも。
その言葉が、どのように響いたかはわからない。
――けれど妲己はレザリアに微笑んで。
ありがとう、とそう告げた。
大成功
🔵🔵🔵
城野・いばら
*桃源郷で作った『桃花』の浄化の力と
呪詛耐性で香気に対抗
沼に落ちないよう白のブーツで足取りは軽やかに
浄化の光乗せた魔法の風で
飛び交う武器を属性攻撃し吹き飛ばしながら進むわ
弾ききれない刃は【密生した茨】で武器受けたり、
伸ばしてグラップル
茨は、いばら
私の意思が揺るがない限り
狙いは外さないわ
桃さん、どうか力を貸してね
貴女の頑張りが平穏を築いた
一時だったとしても
それは決して無意味じゃないの
私、貴女を無理に起こしたコを怒ってくるわ
だから…ね、もう悲しい事は言わないで
届けたいのは
痛みではなく穏やかな眠り
そっと蔓バラで抱きしめて生命力吸収
浄化の光も重ね
桃源郷のぬくもりを此処へ
冷たい夜はお仕舞に
おやすみなさい
手には破魔の花弁からつくられた美しい桃花の枝。
ひとたび振るえば、噎せ返るような魅了の香気がふわりと散っていくのを感じる。
花柄のシューレースが愛らしく綻ぶ白のブーツで軽やかに澱みを超えて。
「――茨は、いばら。私の意思が揺るがない限り、狙いは外さないわ」
飛び交う無数の刃を全身を覆う茨で受け流し、あるいは弾き飛ばしながら、城野・いばら(白夜の揺籃・f20406)は進んでいく。
「桃さん、どうか力を貸してね」
語りかければ応えるように、手の中の桃花が揺れた。
綻ぶ桃花の慎ましくも優しい香りを纏い、いばらは“彼女”の元へ辿り着く。
――望まずして与えられた仮初のいのち。
その終焉を希い、ひとりきりで震えていた仙女は、まるで幼い子どものようにも見えて。
けれど、これまでに届けられた言葉が、想いが、彼女の涙を優しく受け止めていた。
そして、いばらもまた、胸に灯る想いを紡ぐ。
「貴女の頑張りが平穏を築いた。一時だったとしても、それは決して無意味じゃないの」
いばらが彼女に届けたかったのは痛みではなく穏やかな眠りであり、そして。
「――私、貴女を無理に起こしたコを怒ってくるわ」
ぷくりと頬を膨らませて、約束をひとつ。
けれど、すぐに柔らかく双眸を細め、いばらは続ける。
「だから……ね、もう悲しいコトは言わないで」
――冷たい夜は、もうお仕舞い。
いばらはそっと両手を伸ばし、妲己を蔓薔薇と共に抱き締めた。
浄化の光も重ねて、永遠に褪せぬ桃源郷のぬくもりで包み込むように。
遠慮がちに、背に細い腕が回されるのをいばらも感じる。
「ありがとう――……」
それから、いばらの耳に届いた確かな声と共に、妲己の身体が光に包まれて。
「……おやすみなさい」
淡い光が零れ落ちるように消えていく。
そうして、全てが終わった時。
いばらは桃花のそれに似た――けれどほんの少しだけ違う優しい香りが、鼻孔を擽るのを感じた。
大成功
🔵🔵🔵