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銀河帝国攻略戦⑱~艦隊破壊工作

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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「やーやー皆さん!お揃いですね!」
 テンション高く挨拶をするのは望月・鼎。
 毎度毎度妙に元気の良い彼女がホワイトボードを持ってきて説明を始める。
「皆さんの活躍により、帝国の執政官兼科学技術総監……舌噛みそうな長い肩書きですね。まぁ件のドクター・オロチが乗る『実験戦艦ガルベリオン』の所在が判明した訳ですよ!お手柄です!ヒューヒュー♪」
 ホワイトボードに大きな紙飛行機の様なものを書く巫女。
 絵の上手さは相変わらずの様だ。
 彼女は更に、小さな凸マークの様な物を多数書き加える。
「そんな私達の快進撃に待ったを掛けるのはドクター・オロチ配下のアマルテア情報艦隊です!これら艦隊に積まれているコンピューターは宇宙屈指の情報処理能力を持ち、帝国工作員達が宇宙各地で収集する多種多様な情報を集積していたみたいです!つまり情報収集から作戦立案まで一通りをこなすハイパーメディア軍師みたいなもんです!そしてその艦隊に搭載されているコンピューターこそが、今回倒すべき相手です!その名もリキッドコンピューター!!」
 そう言って鼎はホワイトボードに丸い何かを書き込む。
 横にはカタカナで「ガオー」と謎の声が。
 如何見ても知性的には見えない。
「艦隊に積まれている武装自体は大した事は有りません。ですがこのリキッドコンピューター、何と私達猟兵の転移・出現に反応して何か強い敵を生み出してくると言うのです!艦内での白兵戦とあって中々に手強そうな雰囲気がしますね!でしが心配は御座いません!」
 鼎は更に赤いペンを取り出し、先程の丸い何かに矢印を引いて大きく弱点と書き込む。
「如何に強敵と言えども、本体であるリキッドコンピューター自体に戦闘力は有りません!上手い事これをボコボコに出来れば、生み出した強敵も余裕で倒せます!帰りは私が転移させるので、安心して暴れてきてくださいな!」


一ノ瀬崇
 本体が弱点なのはどの世界も一緒ですね。
 こんにちは、一ノ瀬崇です。
 今回は強化されたボスを相手にどう戦い仕掛けて行くかが問われますね。
 奮ってご参加ください。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦 『闇に堕ちたサイキッカー』

POW   :    3体のしもべ
自身が戦闘で瀕死になると【黒き四足獣と白き巨鳥、そして鋼の巨人】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    サイコスピア
【伸ばした腕】を向けた対象に、【サイキックエナジーで生み出した光の槍】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ラプラスの鏡
【対象の背後】から【サイキックエナジーで生み出した光の鏡】を放ち、【鏡の中に閉じ込めること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルシー・ナインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携歓迎】
胸糞悪い幻影を見た甲斐は
あったようだね。
この勢いで押し通ろうじゃないのさ!
サイキッカーが相手とくれば、
迂闊な思考も読まれかねないかな。
ま、それはお互い様なんだけどな!
バイクが動ける空間があるなら
乗りながら撹乱する。
タンデムで他の誰かを乗せてもいいね。
今回アタシはとにかく味方の連携のバックアップに回る。
敵さんにテレパスを繋いで、次の攻め手を探ろうとするよ。
更には味方にも同じく念話で情報を回し、
皆が奴に隙を見せないように立ち回るよ!


シズホ・トヒソズマ
※他猟兵との絡み、連携、アドリブOK

なるほど、液体コンピューター……まとわりつかれたらキモチよさそげふんごふん!障害である以上、容赦なく破壊しないと!はい

UCでユングフラウを宇宙バイクに変形、【挑発・誘惑・誘き寄せ】でサイキッカーを誘い、慌てて【逃げ足・ダッシュ】で逃げることで本体から引き離し、その間に他猟兵に本体を叩いて貰う作戦でいきます

悟られないよう【フェイント】でサイキッカーへの攻撃も入れ、【武器受け】で時間を稼ぎ【空中戦】で空中も使い逃げます

弱った様子が見えたら一転攻勢、【2回攻撃】やトゲミサイルによる【鎧無視攻撃】でサイキッカーを叩きます

私より誘導が上手い人がいたら、本体攻撃に回る


デナイル・ヒステリカル
情報集積地を抑えることは、各地での戦闘の負担軽減へと繋がります
それだけに防衛ユニットも強力である可能性は高いですが……
そもそもワープ技術で渡り合う、この戦争戦域に危険ではない場所など有りはしません
ならばせめて、負担の大きい作戦こそ、猟兵である僕たちが遂行すべきです

この作戦に挑む価値は大きいと判断します

UC:レギオンを召喚し、大部分の機体へは他の猟兵への援護を指示しつつ、リキッドコンピューターから敵サイキッカーを引き離すように戦域を誘導しようと試みます

数機のみに光学迷彩テクスチャを張り付けて別動隊とし、敵とコンピューターの距離が充分に離れた状態を見計らい、コンピューターへと自爆特攻を命じましょう


月鴉・湊
【商業組合Aチーム】で参加。
どんなのが出てきたとしても、元を断てばいい。そうだろ?


他の猟兵達が出てきたオブリビオンを引き付けてくれている間にUCを使い姿を消し、リキッドコンピューターを破壊しに行こう。他に狙う者がいたら忠告しておく。
「狙うものが見えなくなってもそこには存在する」と。
なんせ俺が消えると狙う対象も消える。守るものは大慌てだろうな。
消えている間に銀河帝国に恨みを持つ魂達の力を借り妖刀で破壊する

おじさんの早業の暗殺技、見せてあげよう。


月代・十六夜
「あらよっと!んじゃ作戦開始と行こうじゃねぇの!」
「鬼さんこちらっと。余所見厳禁ってなぁ!」

【商業組合Aチーム】として参加。
転移した直後に持ち込んだ煙玉を投げて相手の視界を阻害、おじさんが透明化、エミリー嬢のファンネル展開、自分の【ジグザグフィールド】の展開の時間を稼ぐ。
最低限の展開が終わったらファンネルと共に煙から飛び出して、おじさんに注意を向けさせないよう相手の周りに仕掛けたワイヤー、ファンネルを【韋駄天足】で踏んで、【スカイステッパー】で【フェイント】も混ぜて動く。
サイコスピアに関しては【ルアーリング】のフェイントでこっちに攻撃を誘って隙を作れればおいしいな。


エミリー・ローレライ
【商業組合Aチーム】 【起動、殲滅せよ機械の僕たち】を起動、浮遊砲台を90機召喚。【Duplication】を発動し浮遊シールドを複製。浮遊砲台を敵の周囲を取り囲むように配置、十六夜の足場にしつつ【一斉発射】、【時間稼ぎ】、【目潰し】、【属性攻撃:光】で目を狙い射撃。浮遊盾は味方に行く攻撃を【かばう】、【盾受け】で防御。自身は敵に接近、【サイコキネシス】で敵を動きを制限して、フォースセイバーで足を攻撃し時間を稼ぐ。攻撃は手持ちの盾で【盾受け】。アドリブ歓迎


ニレッド・アロウン
……まー、なんとかなるでしょう。どうせ私以外に優秀な方はたっぷりとおりますからね。とりあえず私は敵の目をこちらに向かせておきましょうか。

【トリニティ・エンハンス】を【全力魔法】で強く発揮し、【氷の魔力】による防御構成主体で行動します。
【オーラ防御】全開で味方をかばえるようにしつつ敵に突貫します。相手が何か遠距離攻撃して来るなら、【第六感】によって相手の【殺気】を感知し、武器で受け流したり回避したりしながら近づきます。
その後?……まー、適当に水晶鋏をぶん回して攻撃したり、敵の目を向かせるように罵倒や挑発したりでしょうか?攻撃は他の方に任せておきましょう。

※アドリブ・他者との協力・踏み台歓迎


アズール・ネペンテス
…この巫女ノリノリだがまぁ気にしないでおこう。
んでまた妙なもん相手にすんのな。他の世界にも似たようなものあるとは思うけどこれを0から作った奴がいるなら相当なもんだとは思う。だがこのコンピュータの残骸とかデータとか売れそうだな。

今回『も』金になりそうなものもありそうだしやる気出すか…って言うと装着者が怒りそうではあるが。モチベーションの出し方は人それぞれだからしゃーないのだ。

んで、戦闘はというと…敵の技盗んでやり返そうと思ったがどのみち本体破壊しないといかんなら本来なら岩とか弾丸代わりにする魔法だけどこれで鉄くずを弾丸にして本体優先で破壊しに行くか。


(アドリブ歓迎



「よし、そろそろ敵の本丸だ。準備は良いかな?」
 怖ろしい程に静まり返った艦内を進みながら、月鴉・湊は静かに問い掛ける。
 それに頷きを返す七人の猟兵達。
 転送された先は目標であるリキッドコンピューターの眼前、ではなく少し離れた場所の小部屋だった。
 流石に直接目標の傍に転移する事は叶わなかったが、打ち合わせた作戦を実行するには丁度良い。
 小部屋の中にはこれまでの猟兵達との戦いの中で得たデータを分析していたのか、各言語を解読したと思しき文書データを詰め込んだ記憶媒体や、書物を始めとした紙媒体のものも乱雑に置かれていた。
 その中には何処から入手したのか、幼児が使う『あいうえお表』まで有る。
「此処を抜ければ例のリキッドコンピューターが鎮座する区画に出る。此処に有るマップによればただっ広い一つの部屋らしい。仕掛けるには十分な広さだが、それは向こうさんにも言える事だ。詰まらない怪我をしない様、しっかり気を入れて挑もうか」
 普段よりも幾分硬い声色で告げ、小部屋を後にする。
 目指す場所は二つ十字路を過ぎて次の通路を右に曲がった先だ。
 自動で開く扉を抜けて辿り着いた部屋はかなりの広さを持ち、随分と特徴的な形をしていた。
 完全な球体ではなく、横に広がる楕円形。
 その球体の下半分を更に半分に割って底を付けた様に、壁は床に対して垂直ではなく緩やかに湾曲していた。
 天井には幾つかの照明が埋め込まれており、跳び回る分には十分な高さが有る。
 機械類やケーブルと言った障害物になりそうなものは見当たらず、中央に円柱状の水槽の様なものが有り、その中に緑色の球体に似た何かが浮かんでいる。
 恐らくはアレがリキッドコンピューターだろう。
 その水槽の前に立ちはだかるのは麻布を纏った姿の青き髪を持つサイキッカー。
 彼我の距離は凡そ百メートル。
 何か行動を起こすにしても直ぐには仕掛けられない距離だ。
「あらよっと!んじゃ作戦開始と行こうじゃねぇの!」
 すかさず月代・十六夜が煙玉を床に転がす。
 立ち上る白い煙が周囲を包み、皆の姿を包み込む。
 この隙に湊はユーベルコード【咎は無となり消えていく】を使用し自身とリキッドコンピューターを透明化して攻撃の準備、エミリー・ローレライはユーベルコード【起動、殲滅せよ機械の僕たち】で浮遊砲台を召喚し敵を取り囲む、自身はユーベルコード【ジグザグフィールド】を展開し動き易い足場の構築を。
 残る五人も左右に分かれて波状攻撃とサイキッカーの意識を逸らす算段となっている。
 例え強力な敵が相手でも弱点たるリキッドコンピューターを抱えては流石に対処出来ないだろうと読んでの速攻。
「……っ」
 咄嗟に反応したのはエミリーだ。
 銀色に輝くタワーシールド『守護者の大盾Ⅰ』を構えて二歩前に出る。
 腕を揺らす衝撃と響き渡る鈍い衝突音。
 余りの衝撃に思わず歯を食い縛るが、大盾を弾かれる訳には行かない。
 一拍遅れて煙幕が吹き飛ばされ大盾を構えたエミリーと、砕けて消えていく光の槍が露になる。
 その後ろには姿は消えているものの動き出しては居なかった湊が居る。
「狙ってきた……この状況で俺を?」
 此方に手を伸ばしているサイキッカーを睨み付けながら湊は鯉口を切る。
 刀も透明になってはいるが、其処に纏わせた殺気は微塵も鈍りはしない。
「如何やらそう簡単に首は刈らせてもらえないらしいな……面白い」
 そう言って湊は口の端を持ち上げる。
 誰にも見えてはいないが、この場の皆がその殺気に小さく身震いした。
「プランBへ!皆さん散開して的を絞らせない様に!」
 デナイル・ヒステリカルが声を飛ばす。
 呼応して飛び出したのは二台のバイクだ。
 ライダースーツに身を包み『宇宙カブJD-1725』を駆るのは数宮・多喜。
 自身もサイキッカーである多喜はサイキッカーの思考を読み取り、攻撃を予測して味方に知らせ援護しようと意識を束ねていく。
 当然思考に接触したならば此方の思考も相手には伝わってしまうだろう。
「ま、それはお互い様なんだけどな!」
 アクセルを噴かしてスピードを上げながら外周を走って行く。
 傾斜の付いた壁を走り抜ける様は宛らバイクレースの様だ。
 そして意識が一本の線で繋がる感覚。
「悪いね、アンタとはちょいと繋がらせてもらったよ」
 クリアになる意識。
 そこへ流れ込んでくる相手の思考――。
『540.430.0240.1110.520.850.930.410.1110.420.240.120.0350.230』
「んなっ!?」
 予想だにしなかった情報の形質。
 思わずハンドル操作を誤り一瞬ぐらりと身体が傾く。
 慌てて意識を引き戻した多喜はバイクを安定させながら皆へとテレパスを繋いだ。
『ヤツの思考は生物のそれじゃない!数字で構成された信号だ!』
「……文字通り、製造された相手ですか」
「また妙なもんが相手なのな」
 その報告に皆が戸惑いを返す中、ニレッド・アロウンとアズール・ネペンテスが仕掛けに行く。
 先ずニレッドがユーベルコード【トリニティ・エンハンス】で防御力を高め、サイキッカーの左手側から距離を詰めていく。
「……まー、なんとかなるでしょう。どうせ私以外に優秀な方はたっぷりとおりますからね。とりあえず私は敵の目をこちらに向かせておきましょうか」
 何処か気怠げな口振りで言い捨てつつ、両手の『水晶鋏』を構える。
 此方に右手を向けたサイキッカーが、先程と同じ光の槍を生み出して放つ。
 真正面から受け止めるには威力が強い。
 それなら、勢いはそのままに方向をずらしてしまえば良い。
「点で攻撃する武器は切っ先を逸らされると無力なんです」
 巧みに水晶鋏を操り光の槍を滑らせる。
 予想以上に強い衝撃に一瞬眉を顰めるが、それでも力を込めれば狙った通りの動きに誘導する事は可能だ。。
 刃の淵をなぞらせる様に受け流しつつ切っ先を下方向へずらしていく。
 指を掠める手前で完全に向きを変えた光の槍は、床に当たって跳ね飛びながら消えていく。
 槍の粒子の欠片を摺り抜ける様にして、アズールが続く。
「こいつは当たったら痛いどころじゃ済まねぇぞ」
 道中拾って置いた特に価値の無さそうな板金や部品等をユーベルコード【岩土の弾丸】で撃ち出す。
 無論、金目の物と思しきものは仕舞い込んである。
 その辺りトレジャーハンターである彼に抜かりは無い。
 装着者の少女は怒りそうではあるが、モチベーションの出し方は人それぞれだからしゃーないのだ、とは彼の言。
 対するサイキッカーは飛来する礫を念力で捉える。
 まるで透明な壁が有るかの様に空中でピタリと制した弾丸は、勢いを失って音を立てながら床に散らばっていく。
「サイキッカーか、割と厄介ですね」
 室内を駆け回るもう一台のバイクに跨るヒーローマスク、シズホ・トヒソズマ。
 ユーベルコード【加速同調・疾走人形】を使いアイアンメイデン型の戦闘人形『ユングフラウ』を変形させたバイクで壁を走りながら度々サイキッカーに誘いを打ってみるが、相手は動じず向かってくる攻撃だけを弾いている。
 幾度かフェイントも交えてはみるが的確に見抜いてくる為、妙なやり辛さを感じずにはいられない。
 それならと本体を狙ってみるが、飛び道具の類はサイキックで止められ直接バイクで突っ込もうとすると途端に光の槍が飛んでくる。
「何ともやり辛い……!」
「こっちの仕掛けにも一切反応して来ねぇな」
 十六夜がシズホの呟きに応える。
 元々フェイントを主体とした攻撃や機動を仕掛けていく十六夜だったが、サイキッカーは全くと言って良い程此方の誘いには乗って来なかった。
 数度、仕掛けたワイヤーが意図しない動きをした時に此方よりも早く反応し叩き落したくらいだ。
「サイキッカーか、こっちの動きでも読んでるのかねぇ?」
 再度ワイヤーを踏みながら空を歩む。
 時折光の槍を投げ付けてくる以外は特に脅威となる行動は取ってこない。
 が、それは同時に十六夜を危険視していないと言う事の裏返しでも有る。
「……ちっ、随分と舐めた真似してくれるじゃねぇの」
 それまで能動的には仕掛けて来なかった十六夜の胸中に生まれる、小さな燻り。
 虚を突く事に特化させてきたこれまでの自分を否定するかの様なサイキッカーの対応。
(それなら俺は、更にその先を目指す)
 虚を実と成し、実を虚とする。
 圧倒的な知力を誇るリキッドコンピューターとサイキッカーを出し抜くべく、十六夜は味方の援護に回りながら静かに時を待つ。
「動くに動けない、か」
 一度ユーベルコードを解除した湊。
 同時に彼の身体に色彩が戻って行き、リキッドコンピューターも変わらず水槽の中でぷかうぷかと浮かんでいるのが見える様になった。
 透明化を続けている間は疲労が蓄積していく。
 額には僅かに汗が浮き始めていた。
「むぅ……厄介」
 大盾を構えるエミリーは湊への攻撃を弾きながら、ほんの少しずつ前へと動き出していた。
 何度かユーベルコード【起動、殲滅せよ機械の僕たち】で召喚した小型の戦闘用自律式浮遊砲台を展開させるが、その度にサイキッカーは砲台を全て撃ち落してくる。
 その間は攻撃が止むのだが、それでも大盾から湊が駆け出そうとする度に光の槍が行動を阻害してくる。
「……どうやら奴さん、俺を脅威と見たらしい」
「モテモテ?」
「嬉しくないねぇ」
 軽口を叩きつつ隙を窺う湊。
 そんな彼を護り続けるエミリー。
 大盾の強度も自身の消耗も気になるものではないが、しっかりと足止めを喰らっている現状は如何にか打破したい。
『数宮さん、僕にあのサイキッカーの思考、その信号を伝えて頂けますか?』
「ちょいと待ってな!ええと……」
 デナイルから届いた念の声に答えながらバイクを走らせる多喜。
 直接彼とサイキッカーを繋げる事は出来ない。
 代わりに出来るのは、読み取った思考をそのまま彼に伝え直す事だけ。
「同時翻訳家ってのはこんな心境なのかね……?」
 パスを繋いだ瞬間に流れ込んでくる数字の羅列に冷や汗を流しながら、多喜はデナイルへと念話を送る。
『いくよ、440.220.220.0850.130.120.0450.640.1110.210.510.320』
 伝えられた数字を電脳で洗い直しながら、デナイルは解読を試みる。
 途中ユーベルコード【疲れ知らずの配下たち】で召喚した小型の戦闘用電子精霊で構成された機械兵器は、エミリーのものと同じ様に撃破されている。
「何故だ……脅威度と言う点で見れば他の皆さんの方が高い筈。展開されて包囲されるのを嫌った?それにしては壁をぐるぐると走り抜けるお二人のバイクを止めようとはしていない。幾度も背後を狙える位置に居るが、攻撃を仕掛けるのは直接突っ込もうとした時だけ。何より僕のレギオン、光学迷彩テクスチャを貼り付けたものまで的確に攻撃した……それに、透明になった筈の月鴉さんまで。もしや……【見えている】とでも?」
 訝しむ視線の先では、アズールが再び攻撃を仕掛けている。
 手にしたダガーで切り込みに行くが、光の槍で打ち払われ中々懐に入り込めない。
 堪らず距離を取った所でサイキッカーは左手を向け、光の槍を撃ち出す。
「大した威力だ……けどな、悪いがその技……盗らせてもらうぜ?」
 刃毀れするダガーを見て小さく舌打ちしつつ、ユーベルコード【技能:略奪者】を発動して右手を向ける。
 それを見たサイキッカーも同時に右手を向けた。
 互いの光の槍がぶつかり合い、激しく光の粒子を撒き散らしていく。
 威力は互角。
 互いに弾き飛ばされ消えていくのを尻目にアズールは更に前へ出ようとするが、新たに生み出された光の槍で牽制される。
「厄介な事だ」
『信号!410.120.320.0850.130.550.220.0850.130.120.0450.1030.250.130.320.1110』
 多喜から伝えられる数列を次々と電脳世界に放り込みながら、デナイルは思考の海に沈む。
「何の法則が有るんだ……」
 幾つもの数列を多喜から受け取ったが、それでも全容はまだ見えてこない。
「0は2桁、若しくは3桁の数字が並ぶ毎に配置されている。0は時折頭に付く事がある。その場合0の後ろに来る数字は必ず2.3.4.6.8のどれかになる。6の場合のみ、0の数はもう一つ増える場合がある。1から5までの数字は連続する事がある。3桁の場合の始まりは必ず11となり、12から19までの数字で始まる事は決して無い。1から10までを頭とした場合、続く数字は必ず1から5までとなる。11の場合は続く数字も必ず1。上は1から11、下は1から5だ。クソッ、この数列は何だ、何かを意味している筈だ……!」
 頭を悩ませるデナイル。
 出来る事ならリキッドコンピューターに解析して欲しいくらいだ。
 暗号解読の為に使える機械くらいその辺に置いてないだろうか。
 転移してきた小部屋にも色々と役に立ちそうな資料は。
「――――ん?」
 何かが、思考に引っ掛かった。
 小部屋、機械、資料、書物。
「…………そうか、あいうえお表だ……!」
 デナイルは電脳空間に並んだ数列の横にあいうえお表のデータを呼び出した。
「0は区切り、最初の数字は行、次の数字は段だ!0の後に続く0は濁音、半濁音を示す為に置かれている!先程のは……『たいしょうのきょういどをこうしん』……対象の脅威度を更新か!すると最初に数宮さんが読み取ったと言う数列は……!」
 デナイルは電脳空間に指を滑らせて文字を映し出す。
 浮かび上がったのは『ねつげんによるたんちけいぞく』即ち熱源による探知継続、だ。
 当初、煙幕による攻撃で視界を遮られながら的確に湊へ攻撃を仕掛けられたのも、熱源を辿っていたからに他ならない。
 エミリーとデナイルの小型兵器を即座に撃ち落としたのも、視界を塞がれその奥に居る猟兵達の熱源が隠れてしまう事を嫌っての対処。
 漸く、反撃の糸口を掴んだ。
 そしてリキッドコンピューターの驕りとも言える油断も。
『数宮さん!先程から繋いだままですが、向こうが此方の思念を読んだと思しき反応は有りましたか!?』
『うんにゃ、最初にこっちを確認したくらいで後は思念を読み取る所か触ってすら来やしないよ!』
 好都合、とデナイルはこの戦いで初めて笑みを浮かべる。
『此方を侮った報いを受けさせる時が来ましたね。数宮さん、皆さんと思考を繋げて頂けますか!』
『ちょいと待ってな!……よし!』
「うおっと」
 傍に居た湊が驚いた様に声を出す。
 全員に思考が繋がったらしい。
 直ぐ様、デナイルは念話を飛ばした。
『皆さんそのままで!奴等を倒す逆転の秘策が出来ました!』
『逆転の秘策ですか?』
 距離を保ちながら果敢に斬り掛かり両手の水晶鋏を振るうニレッドが問う。
 流石に疲れが溜まっているらしく、その白い肌に汗が浮かんでいる。
『相手は熱源の探知で此方の位置や行動を把握しています。それが最初、月鴉さんを攻撃出来た理由です』
『そうか、姿は消せるが体温や匂い、物音なんかは消せないからな』
 顎に手をやり頷く湊。
 先程までの疲労は少し抜けて、動き回るのに支障は無い様だ。
『そして今も、相手は熱源探知を続けています。更に此方の思念をいつでも読み取れる状態にあるのに、それをしてこない。この侮りを突きます。先ず数宮さんはそのままテレパスを繋げていてください、そして相手から接触してきた感覚が有り次第、僕達を繋いでいる全回線を遮断してください。アズールさんは数宮さんの護衛を。もし途中で相手が何かの気紛れで狙ってきた時に対応出来る様にお願いします。それと出来ればサイキッカーへの攻撃を兼ねた陽動を』
『あぁ、任しときな!』
『了解だ』
 外周を回っていた多喜がバイクを寄せ、素早くアズールが後部座席へと乗り込んだ。
 サイキッカーは光の槍を飛ばして来たが、巧みなドライビングテクニックとアズールの岩土の弾丸でその矛先を躱していく。
『シズホさんはニレッドさんの足となってください。一瞬を制する事がこの作戦の肝となります。ニレッドさんは僕の合図と共に属性攻撃で両手の鋏に火の魔力を、それもとびきり強いのを纏わせてください。具体的には、一瞬で水が水蒸気に変わるくらいの熱量を』
『オッケーです』
『解ったわ』
 今度はシズホのバイクにニレッドが乗り込んでいく。
 同じ様に光の槍が飛んでくるが、切り払うまでも無く隙間を掻い潜って行く。
『月代さん、例の新兵器。持って来てるんでしょう?』
『兵器ってか玩具みたいなもんだけどな。属性結晶だろ?』
 戻って来た十六夜が懐から小石程の大きさの結晶を取り出す。
 内部には様々な属性が封じられており、属性に対応した色が付いている。
『その中から水、若しくは氷の属性の結晶を合図したらばら撒いてください。ニレッドさんに斬ってもらいます』
『なぁるほど、水蒸気の熱で目を晦ませようってか』
『えぇ、サイキッカーの視覚は誤魔化せる筈です。その後は……お任せします。お得意でしょう?』
 そう言ってニヤリと笑ってみせるデナイルに、十六夜、エミリー、湊の三人が頷いてみせる。
『では皆さん、作戦開始です!』
 デナイルの念話に、先ずはアズールと多喜が仕掛ける。
 岩土の弾丸で水槽とサイキッカーを同時に狙い、且つ傍を走り抜けながらの鋭い斬撃を見舞う。
 礫は念力の壁で、斬撃は身体を捻っての光の槍射出で迎撃するサイキッカー。
 本体であるリキッドコンピューターはそれらの動きを解析しつつ、指示を送る。
 その隙を狙うと見せ掛けたもう一台のバイクを操る猟兵と、その後部座席で鋏を構える猟兵。
 その何方も此方を攻撃する筋肉の動きではない為無視して構わない、と。
『よし、今です!』
 デナイルの指示が飛ぶ。
 すかさず十六夜が水の属性結晶をばら撒き、それをニレッドがバイクの上から切り裂いていく。
 途端に生まれる爆発的な水蒸気。
 その勢いをサイキッカーは念力の壁を作り出して防ぐ。
 最も爆心地に近かったニレッドはシズホの華麗なる操縦で既にその場を脱出していた。
「今ので水槽に罅でも入ってくれれば楽なんですけどね」
 そう呟くシズホ。
 軽々とバイクを操っているが、彼女でなければ危うい場面は幾つも有った。
 後部座席に座るニレッドは密かにシズホの技量を頼もしく思い始めていた。
 そうした彼女達に対して、サイキッカーとリキッドコンピューターは突然の状況の変化への対応に幾分の驚愕に似た評価を得ていた。
 迎撃に移ろうにも、サイキッカーの視界は赤一色。
 熱を持った蒸気が壁となり、視界を埋め尽くしていた。
 瞬時に視界を通常のカメラモードへと切り替え、同時に先程から此方を探っている思念にアクセスする。
 テレパスによる接触を捨て置いたリキッドコンピューターだが、自身の想定したグレードを超えてきた猟兵達の対応に侮る事を止め、思念を読み取り情報の収集を行う事とした。
 しかしその動きは遅きに失する。
『お生憎様』
 多喜は即座にテレパスを解除した。
 同時に念の力でサイキッカーからの干渉を妨げる様に尽力する。
 情報の取得に失敗したリキッドコンピューター。
 サイキッカーの姿勢を戻せば、いつの間にか眼前まで接近してきた大盾がある。
「私もサイコキネシスは使える」
 宣言と同時に大盾の右側からエミリーが飛び出した。
 放たれたサイキックエナジーが纏わり付き、両腕を拘束する。
 その隙にエミリーはフォースセイバーで足を狙うが、左手から床を対象として射出された光の槍に阻まれる。
 その瞬間大盾から左側に飛び出す影が映る。
 サイキッカーに取って幸運な事に、右手は拘束された瞬間に正面を向いていた。
 そのまま身体を捻り出て来た影に光の槍を射出する。
 命中した、そう判断した瞬間何かが割り込んでくる。
「やらせない」
 浮遊している三枚の盾『自律式浮遊シールド』が光の槍を受け止めていた。
 勿論、操っているのはエミリーである。
 援護を受けた人物はシールドに隠れながらサイキッカーへと迫る。
 その右手には鈍く光る短剣が。
 リキッドコンピューターは猟兵達の動きに評価を上げながら次なる指示をサイキッカーへ送る。
 これまで使わずに居た技【ラプラスの鏡】を使用する、と。
 初手の煙幕から途中まで《何らかの方法で此方に干渉してきた》らしい猟兵こそ、最も警戒すべき相手である。
 故に、此処でその最大戦力を封じておく。
 指示を受けたサイキッカーが迫る猟兵の背後に、サイキックエナジーで生み出した光の鏡を生み出す。
 鏡が煌き、猟兵を鏡の中へを引き摺り込む。
 伸ばされた右手に握られていた短剣は僅かに届かず、サイキッカーの足元へと転がり落ちる。
 それを見てリキッドコンピューターは思考の中で嘆息する。
 如何に猟兵と言えども、我が頭脳には、我が叡智には及ばない、と。
 そう勝ち誇った瞬間、シールドが移動し鏡の中に封じた猟兵の姿が見えた。
「残念、人違いだ」
 ニヤリと笑ってみせる十六夜。
 相手があの猟兵――即ち湊ではない事に思考回路がエラーを返す。
 リキッドコンピューターは一つの思い違いをしていた。
 煙幕の時点で視覚を熱源探知に切り替えていた為、湊のユーベルコードが自分と装備と対象を消すものであると気付けずにいた。
 それ故に相手、湊は何らかの手段で此方に干渉する術を持っている、と。
 テレパスで多喜が接触する以外、皆が使うユーベルコードが直接リキッドコンピューターに影響するものでは無かった事も、その思い違いに拍車を掛けた。
 サイキッカーを操り視界を巡らせているが、最も脅威と目した猟兵の姿が無い。
 いや、もう一つ無いものがある。
 サイキッカーを通して自身を見たリキッドコンピューターは在るべき筈の自身の姿が無い事に激しく困惑――現状の説明を自問した。
「狙うものが見えなくなってもそこには存在する」
 声が反響した。
 抜いた『妖刀「影楔」』を構えながら、港は眼前の水槽に呟きを落とす。
「誰にも気付かれぬまま、お前はここで居なくなるんだ。咎と一緒にな」
 妖刀の切っ先は容易く水槽を断ち切った。
 濡れた刃がリキッドコンピューターを貫き、その活動を停止させる。
 制御を離れたサイキッカーも形を失い、ぱしゃりと床を叩く液体へと戻る。
「おわっとう!?」
 同時に鏡の封印から解き放たれた十六夜が転がり出て、靴の裏を濡らした。
 滑ってバランスを崩しつんのめる十六夜の身体を、ユーベルコードを解除した月鴉が受け止める。
「おじさん出来れば女の子相手の方が嬉しい」
「俺は相手の性別に関係なくこの体勢はイヤだな」
 呆れ顔の十六夜の言葉に、皆がくすりと笑いを零す。
 途中攻めあぐねる場面は有ったものの、誰一人怪我をせず目標を倒す事が出来た。
 文句無く大勝利である。
 そんな彼等の元へ届く唐突なアナウンスと警告音。
『システムの破壊を確認。自爆シーケンスへ移行』
「自爆かい!?お約束っちゃお約束だけど!」
「いや、爆発前に回収されるとは思いますよ」
 多喜に答えたデナイルがその言葉を残して転移する。
 流石に宇宙を漂う嵌めになるのは幾ら猟兵でも避けたい。
 次々に猟兵が転移していく中、アズールが思い出した様に言葉を漏らす。
「あっ、まだお宝の回収が済んでな」
 途中で転移され、部屋には切迫した警告音だけが鳴り響く。
 そして数分後。
 アマルテア情報艦隊を構成する一隻が、爆炎を上げながら沈んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月15日


挿絵イラスト