殲神封神大戦⑩〜建業奪還作戦
●かの地のグリモア猟兵、かく語りき
「作戦目標は自律型オブリビオンマシン『哪吒』。ここで叩いてもらうのは指揮官機の方じゃなくて、それを模した量産型部隊だね。結構な数で、建業の都って街――ああ、えっと、南京? を占領してるから、市街地での地上戦になるよ」
ちかちかと、赤く、ハニカム状に光るグリモアを瞬かせ。
猟兵たちが集まるが早いか、学生服姿の金髪の少女――南・七七三(“鬼灯の楔”・f30098)と名乗ったグリモア猟兵は、そう口にした。
クロムキャバリアに浮かぶ殲禍炎剣(ホーリー・グレイル)の代行者を名乗る『哪吒』の最大の目的は、攻撃衛星『九竜神火罩(きゅうりゅうしんかとう)』の打ち上げにある。
知る者にとっては今更語るまでもなく、その名が意味するのは長年に渡りクロムキャバリアの空を狭め続ける絶望だ。このまま打ち上げを許せば、封神武侠界を大きな災禍が襲うことだろう。
そして、それを阻止するためにも、建業の都に展開する敵部隊を殲滅し、道を切り開くことは不可欠といえる。
「確認できてる『敵機』の兵装は、炎を放つ槍・RXS火尖鎗、損傷に伴って一定範囲に装甲炸裂弾を放つEP金磚。それから生物の血流を含めた液体の動きを操作するBS-B混天綾。パイロットはいない無人機で――」
つらつらと重ねられるのは、猟兵としてはやや独特の言葉遣いを交えた、やはり端的な説明で。
「最後の兵装も心配だし、できたらキャバリアに乗って――っても、クロムキャバリアでの依頼じゃない以上、貸し出してくれる企業もないから、機体は自前で持ち込みになるね。ああ、もちろん、皆が生身で戦えるってなら、信じて送り出すけどサ」
そう首を振る。
なお、この辺りの表現は、本人の言では彼女自身がキャバリアパイロットだというから、その影響も強いのだろう。生身でキャバリアを打倒出来る自信と実力、そして作戦があるのなら、恐れずして向かって構わない。
「んで、敵部隊は町中に展開して占領中の建業の都を破壊しようとしてるから、各機これを叩いて下さい、っと――こんなトコかな。……ああ、そだ、えっと」
まだあまり案内に慣れていないのか、一度天を仰いで手順を確認した金髪の少女は、こほん、と、軽く咳払いして。
「アタシなんか生まれも育ちもクロムキャバリアだから、余計こう思うのかもだけどさ。……空を塞ぐ兵器なんてクソッタレなモノ、他の世界にまで、絶対広げさせちゃいけないと思うから。量産型とはいえ、決して楽な相手じゃないと思うけど――片っ端から、殲滅してきてよ」
そう、真剣な様子で口にして。
貴方たちを送り出すのだった。
黒原
ご無沙汰しております、黒原です。
今回は戦争依頼ということもあり、揃い次第サクッと書いちゃうつもりですので、プレイングを頂いた数によっては採用率が低くなるかもしれません。お気軽な感じでご参加下さい。
情報はオープニングの通り。キャバリアの貸し出しはありませんのでご注意下さい。
第1章 集団戦
『陸戦量産型『哪吒』』
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POW : EP金磚(きんせん)
自身の【増加装甲】から、戦場の仲間が受けた【ダメージ】に比例した威力と攻撃範囲の【装甲炸裂弾】を放つ。
SPD : RXS火尖鎗(かせんそう)
【槍から「破滅の炎」】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : BS-B混天綾(こんてんりょう)
自身の【胸部】から【高出力のエネルギー波動】を放出し、戦場内全ての【液体(生物の血流を含む)】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アニエス・アルカンシェル
殲禍炎剣の代行者とは、言ってくれますね。
クロムキャバリアのキャバリア乗りとして、あれが別世界の空を貶めることなど許せるはずもありません。
量産型を突破し、疾く衛星を破壊しましょう。
敵の攻撃は全方位への無差別攻撃、そして複数存在……受けに回っていては苦戦は必至ですね。
であれば、強引にでも突破するのみです。
『戦闘機動・虹刃抜剣』。
音速を遥かに超えた速度で焼かれるよりも先に炎を突破、突進により敵の撃墜を狙います。
ダメージは避けられませんが、まずはジリ貧になるよりも先に敵の数を減らさなければいけません。
足を止めれば焼かれますから、撃墜後は即座に反転し別の敵機へと突進します。
虹の光芒、戦場に刻みましょう。
●虹の光芒、戦場に刻む
建業の都の至るところに火の手が上がる。
平時は人々で賑わっていたのだろう町並みを、今はこの都に――否、この世界にすら似付かわしくない、赤鋼の騎兵が闊歩する。
無人機だというその編隊は、されど一糸乱れぬ動きで町を焼く。
その一軍が、不意に。
何かを察知したように、一斉に同じ方向を向き――
続けざまに2機、機体胴部を両断され、爆炎に包まれた。
一瞬遅れて発生したソニックブームが、既に残骸と化していた周囲の建物を薙ぎ倒す。
残るオブリビオンマシンは動揺する様子もなく「火尖鎗」を向け、崩れ落ちた僚機を慮ることもなく激しい炎を放つが、それも遅い。
炎を切り裂くように戦場を走る光を最後の景色に、片端から切り刻まれていく。
――そのカメラアイに映った最期の光景、読み取れた情報は一つだけ。
その残光が、虹を纏う青に輝いていたこと。
クロムキャバリアはシエル王国、四天護機の一。CK-S3『アルカンシェル』を駆るアニエス・アルカンシェル(虹のアニエス・f31989)は、コクピットの中、目を細めた。
視界端のディスプレイには、アルカンシェルの軽微な損傷を示す複数のアラート。無傷、とはいかない。ただでさえ数で勝る敵が、フレンドリーファイアを恐れる様子もなく撒き散らす炎をかわしきることは、音速を超える速度で戦闘機動を続ける彼女の機体といえど――否、ある意味ではだからこそ、難しい。
既に繰り返してきた数度の戦闘。常ならばサファイアのように輝く機体装甲は、恐らくは高熱の炎に炙られ、くすみ、ぶすぶすと煙を上げているのだろう。
それでも。
(「殲禍炎剣の代行者とは、言ってくれますね」)
国家の枠を超え、ただクロムキャバリアの一キャバリア乗りとして。あの忌々しい衛星が、別世界の空を貶めることなど許せるはずもない。
守勢に回れば数の暴力に押し潰されるだけだ。周囲の残機を掃討すれば、迷うことなく、次の反応へ桿を向ける。
本体ですらない意志なき敵に、騎士としての名乗りは不要。故に音をも置き去りに、虹の光芒は、戦場に刻まれ続けた。
成功
🔵🔵🔴
朱鷺透・小枝子
殲禍炎剣、あんな物をこの世界に撃ちあげさせてなるものか!
壊すぞ!主よ!!
亡国の主を【操縦】
破魔の大団扇の霊力で風の【ブレス攻撃】、炎を【吹き飛ばし】接近。
振るわれた火尖鎗を双剣変形フォースサーベルの片方で【武器受け】。もう片方で【カウンター】、【早業切断】攻撃。
戦え!この命が壊れ失せるまで!!
『ディスポーザブル』発動。技能レベル×10強化。
【残像】機体高速機動で攻撃を回避し、斬艦刀変形、長身のフォースセイバーで【なぎ払い】、距離が離れていようと刀身を伸ばしてぶった斬る!
ああああ!!壊せ!!!もっと壊せ主よ!!!!
【闘争心】と【念動力】で身体を動かす事で【継戦能力】過負荷を無視。
戦闘続行。
●その命、壊れ失せて尚
殲禍炎剣、あんな物をこの世界に撃ちあげさせてなるものか。
噛み締めるような朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の独白が、無機質なコクピットを揺らす。
「壊すぞ! 主よ!!」
まるで応、とでも答えたかのように、竜が如き面相のジャイアントキャバリア――『亡国の主』の、咆哮が如き駆動音が響く。
破壊の力を帯びた風のブレスが炎を吹き散らし、哪吒部隊の只中へと切り込んで。突き出される槍を左の剣で受け、払い、三面六臂の哪吒のマニピュレ―タを2本まとめて叩き斬り、おまけとばかりに蹴り飛ばし、隣の敵機に叩き付け――機体ごと突進するように突き込んだ刃が、2機を纏めて貫いた。
そして、次。
その動きは、迅く、巧みで、――されど、保身とは程遠い。
まるで命を使い潰すような捨て身の戦いぶりに、『亡国の主』の機体は見る間に傷つき、随所から火花が上がる。
その戦法を隙とみたか、次々と撃破されながらも、哪吒部隊が誘い込むように動きを変えた。
続けざまに突き刺さる槍が『亡国の主』のアンダーフレームを石畳に縫い留め。
周囲を方位した哪吒達の、共鳴するように一斉に輝くBS-B混天綾。
血液を含む液体を揺らすという、生身の命を奪うことに特化した兵器。
「――あ」
その光景を生身で観測しているものがいたならば、何かの終わりを確信していただろう。
即ち、キャバリアの機体の外にまで――コクピットの内側から響いた、何か、致命的な水音。
意志なきオブリビオンマシン達の間、それでも何か、勝利を認識したかのような空気が広がって。
「――――ああああっ!!!!!」
されど、竜は止まらない。
明らかに中破の域にある脚部を見えざる力が動かし、平然と一歩を踏み出し。斬艦刀が変形した長大なフォースセイバーが、可動範囲を明らかに超えて出鱈目に振るわれ、理解不能な動きにわずかな遅滞を見せた哪吒の包囲を文字通りに切り破る。
「壊せ! もっと壊せ主よ! この命が壊れ失せるまで!!!」
その声は何も変わらない。
先の一幕に、何の痛痒も感じなかったかのように。或いは――。
狂騒は、続く。
成功
🔵🔵🔴
エミリア・ジェフティー
敵は陸戦型で、無差別攻撃の反応装甲に炎の槍、と
…まともに付き合ったら市街地の被害が甚大です
ここはアウトレンジから攻めましょう
町の外、超長距離に位置取り狙撃支援をします
こんな自走砲めいた狙撃砲、町中には持ち込めませんからね
…もっと小型で同等の能力を持つ装備もあるけど
…どうしてだか拘りたいんですよね、この骨董品を使う事に
追加加速機能、リリース
弾丸の周囲で発生する衝撃波を超能力で封じ込めて家屋に被害が出ないようにし、着弾時に敵機内で衝撃波が解放されるようにしましょう
オウルアイで町の地形や敵の位置を【情報収集】して、敵部隊の行動を【瞬間思考力】で瞬時に判断
町への被害が最小限になる位置で…射撃、今!
●彼女の答えは
建業の都に火の手が上がっていた。
各所で破壊工作を行う炎使いのキャバリア。それを各個撃破しているのだから、当然の帰結だ。
――そして、都の郊外にて。知識と知恵の神の名を与えられた試作型クロムキャバリア『セシャート』のコクピット内部。ある意味では同機の本質ともいえる情報収集演算装置・EPオウルアイを通じて戦況を確認しながら、エミリア・ジェフティー(AnotherAnswer・f30193)は、微かに視線を伏せた。
市中で戦う判断が間違いだとは言えまい。殲滅もまた時間との戦いであり、猟兵たち各自が出来る全力を振るっている。
けれど。
――エミリアは。己の身を犠牲にしてまで見知らぬ誰かを救う、なんてほど、英雄でも聖人でもない。少しばかり特殊な出自で、少しばかり特殊な機体に乗ってはいても、その感性はただの、普通の少女だ。
けれど。
「追加加速機能、リリース」
セシャートが接続した、あまりに大きすぎる「それ」を見遣る。
容易に持ち運ぶこともできないそれは、れっきとしたキャバリア用の装備。けれど正直、型落ちの骨董品だ。
もっと小型で同等の装備もあるけれど。どうしてだか、こだわりたくなってしまう。
『Brain hack started, 5sec to reach the set Acceleration-Level.』
「それ」の弾丸に、力を押し留めるイメージ。
己の超能力を弾に注ぎ込む。着弾の瞬間に撒き散らされる衝撃をその場に留め、敵機内部で衝撃波が解放されるように……そしてそれ以上に。家屋に無用な被害を出さないように。
射出後にも途切れないよう、強く力を籠める。何か大きな力を消耗している感覚。それでも、まだ。もっと。もっと。
――けれど。
そう、「けれど」、今は、決めたのだ。
それがささやかな努力であれど。
戦いの後、この街に戻ってくるはずの日常を、少しでも元に近い形で守るために引き金を引くと。
遠方からの狙撃。或いはこちらに敵を引き付ける結果となる可能性もあるが、――それはそれで、市街地を守るという目標は達成できているのだから、問題はない。もちろん、自分が死ななければの話だが。
オウルアイの情報をリアルタイムで解析し、瞬間思考を回す。回す。回す。
標的を確定。遮蔽物なし。住居を破壊しようと背を見せる、その姿に。
させない、と、その思考を言語化するよりも先に、
「今!」
射撃。放たれた弾丸――超大型電磁加速砲電磁砲・RS/XFA-00“アーバレスト”から放たれた流星の如き一弾は、反応すらも許さずオブリビオンマシンを――針の穴を通すように、その動力系統だけを正確に貫き、荒れ狂うはずの衝撃を一点に押し留めることで、炎上させることすらなく沈黙させて。
その結果を見届けるまでもなく。
エミリアは、索敵に注意を払いつつ、次の目標を探して更なる思考を巡らせた。
大成功
🔵🔵🔵
ルヴトー・シフトマン
【猟機甲】
……俺達にとって、殲禍炎剣は最悪の象徴だ
それを他所でもやろうってことは…盛大に喧嘩を売っていると、受け取って良いわけだな
いいだろう、我ら機狼衆、喧嘩は買い占めるのが礼儀というものだ
叩き潰してやる──行こうか、狩りの時間だ
空は彼女の狩場だ 故に敗北を想定なんぞしない
二秒の先駆け──未来視は貴様らの動きを【見切り】、先に教えてくれる
情報は素早くクラリスさんに共有し、彼女の誘導を助けよう
狩りの神髄は、追い込みにある…そろそろ頃合いだな
『殺法』──武装をフルブースト 殺傷能力を強化
煌爆雷華のプラズマグレネードでまとめてスタンさせ、崩砦一擲の振り回しで、まとめて吹き飛ばす
頭を垂れろ、有象無象が
クラリス・クレスト
【猟機甲】
――この世界にも、あの最悪の悪夢を起こす?
そんなこと、許せるわけないでしょう
って、ちょっと
キミだけに買わせたりしないよ、共同戦線でしょ
傭兵小隊『Blast of Wind』所属、R12“ブルーバード”――いくよ!
建造物を蹴り渡り加速しながら、頭上から敵を急襲していくよ
倒せるつもりは毛頭ない
出来る限り多くの敵の目を集め、気を引くのが狙い
……その火力は脅威的だね
ボクの機体だったら集中砲火を浴びたら簡単に融ける
――でも密集地帯で撃つのには向かないよ
キミたち、お互いの位置をちゃんと確認した?
“うまく”同士討ちするように誘導されてたの、気付かなかったでしょ
隙は作った――ルヴトーさん、今だよ!
●かの地の兵、かく戦えり
彼は、思う。
「俺たち」にとって、殲禍炎剣は最悪の象徴で。それを他所でもやろうってことは、盛大に喧嘩を売られているってことだ。
彼女は、思う。
「ボクら」にとって、殲禍炎剣は最悪の悪夢で。それをこの世界にも作り出そうなんて、到底許せるわけもない。
「いいだろう、我ら機狼衆、喧嘩は買い占めるのが礼儀というものだ」
静かな怒りを込めて、ルヴトー・シフトマン(ズレた時の中で・f31792)が呟けば。
『って、ちょっとキミだけに買わせたりしないよ、共同戦線でしょ!』
打てば響くように響く通信越しのクラリス・クレスト(ブルーバード・f30400)の言葉に、分かってるよ、と返す。
まるで平和な日常のような、といえば、そうも取れるだろう言葉のやり取り。けれど実際に聞けば、穏やかな空気を感じ取る者はいないだろう。
要するに。きっと、他の戦場も同じこと。
それは最早、かの世界の住人にとり、立場も利害も感性も、何もかも超えて当然のものとして共有できる、普遍的な悪、というものだった。
「――行こう、狩りの時間だ」
「傭兵小隊『Blast of Wind』所属、R12“ブルーバード”――いくよ!」
●
「彼ら」は、苛立っていた。感情と呼べるものがその自律型オブリビオンマシン――陸戦量産型『哪吒』の回路に宿っていればの話であるが。
追跡中の敵機――脚部の逆関節が異彩を放つ細身の機体は、まるで冗談のように建造物を蹴り、槍のリーチを逃れて軽やかに裏路地を進んでいく。
無論「彼ら」とて、ただ漫然と追いかけながら手をこまねいているわけではない。周辺の僚機と連携を取り、包囲し、回り込み、通りごと焼き払ったはずが、済んでのところで捉え損ねる。その繰り返し。
そして何よりも。常に一定の距離を取り、わずらわしい妨害を繰り返す第二目標――まるで複数の機体のパーツを寄せ集めたかのような、武骨な黒いキャバリア。多様な兵装は無論のこと、未来を読んでいるかのような的確な妨害が、第一目標を捉えさせない。
ならばあちらを先にと目標変更する素振りをみせれば、やはり先読みしたかのように姿を消し、同時に第一目標が光学兵器での射撃に切り替えてくるのだから、わずらわしいことこの上ない。
――だが、その不毛な鬼ごっこも終わり。
・・・・・・・・・
哪吒部隊は既に、敵部隊の狙いを看破していた。
突如開けた視界、地に舞い降りた第一目標。そして前方に、回り込んでいた別動隊。
「――――、――――?」
第一目標の外部スピーカーが、空気を震わせる。
同士討ち狙いでの誘導に気付かなかったかと、そう勝ち誇ってでもいるか。
されど、一切の遅滞なく。「彼ら」の槍の穂先から放たれた炎が、辛くも逃れた第一目標をすり抜け、僚機を飲み込んだ。
構わない。計算済みである。――詰めの手は、EP金磚。損傷に応じて勢いを増す、自爆同然の装甲炸裂弾。
「彼ら」の連携と、犠牲を前提に殲滅すればいいという価値観を読み誤った、敵機の――――
視界の、先。
プラスマグレネード?
問題ない
敵機主要兵装の有効射程は交戦中に確認済、
光が、
弾けて――
オブリビオンマシンの「思考」が、白く明滅し、
飛来する鉄球、冗談のような質量兵器、
「頭を垂れろ、有象無象が」
それが「彼」のアイカメラが映した、最期の光景だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
チトセ・シロガネ
異常な熱源をキャッチ!
残像を織り交ぜ軽業で回避したが、肩部装甲が一部溶けている。
さすが、伝説のロボットってところカナ。
だけど、ブレインのほうは良くないみたいダネ。
後ろにいる量産型に被弾しているのを確認、乱戦にはめっぽう弱いと見える。これまで激戦を潜り抜けてきた戦闘知識がそう告げる。
そんなビッグな得物を乱戦で振り回せばどうなるかレクチャーしてあげるヨ。キャバリアの推進力のリミッターを解除、UC【軌道舞踏】を発動させる。
推力移動で空中戦を仕掛ける。瞬間思考力で自身を狙う射線に別の敵を巻き込み、残像をばらまいて回避。同時にカウンターでレーザー射撃を乱れ撃ちしつつ移動を繰り返す。
●狐刃舞踏
戦場の各所で繰り広げられるキャバリア同士の戦闘。
その多くで叫ばれ、或いは囁かれたのは、かの鉄騎の世界に生きるパイロット達の義憤。――けれど、戦場を走る機影の正体は、決してそれだけではなかった。
吹き荒れる炎の間をすり抜けるよう宙を疾る、青き残像。
ひらりひらりと閃いた刃が槍を断ち斬り、手土産とばかりに首を落として。
踊るように地に降り立ったキャバリアの様相は、一言で言えば、青き狐面の武者であった。……優美なる姿であったが、肩部の装甲が僅かに、熱で歪み。
「おっと、掠めただけでこれか。さすが、伝説のロボットってところカナ」
声の主の名は、チトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)。感心したように囁く台詞も、動きも、されど一瞬たりとも止まることなく「でも」、と続き。
「――ブレインのほうは良くないみたいダネ」
加速。
リミッターを解除しさらに速度を増した狐武者は、槍衾をすり抜けるよう後方の敵機の懐に潜り込み、その脚部を切り飛ばし……次の瞬間には、飛翔じみた跳躍。
高々と舞った機体を追うように見上げ、『哪吒』らがポイントすれば――待ち受けていたのは、既に展開された無数のリフレクタービット。
実のところ公平に見れば、彼女の評価は酷なものであったかもしれない。
哪吒の連携は、決して稚拙というわけではない。むしろ一糸乱れぬ連携は、生半な有人機の部隊では及ばぬものであっただろう。
ただ、そのプロトコルが、地を這う陸戦型のスケールで組み上げられていただけのこと。
そして、その想定する「常識」を、クロムキャバリア世界のみならず、スペースシップワールドの――本来、かの衛星により人の手が届くべくもない、星間を翔ける世界の技術を取り入れたクロムキャバリア『オービタル・テイルズ』の縦横無尽の推力移動が、大きく上回っていただけのこと。
「レクチャーしてあげるヨ。そんなビッグな得物を乱戦で振り回せばどうなるか。それと――」
流星が如きレーザーの雨が、複雑に乱反射しながら降り注ぐ。
その間を踊るように、残像を振りまき、狐武者の剣舞は続く。
その光景は、まるで。
人と神の世の空を塞がんとするオブリビオンマシンに、人はいつかこんなにも自由に星空を駆けるのだと、その身を以て示しているかのようだった。
大成功
🔵🔵🔵
夢幻・天魔
【厨ニならなんでもご自由に】
フッ……たかが量産型風情、この俺と『Azazel』の敵ではない……
数の話であれば、無限増殖する半植物の究極有機ロボットを全て残らず討伐したこともあるのだからな
(妄想世界のひとつのラスボスらしい。そして、無双設定撃を発動)
混天綾のエネルギー波動など、超越魔剣『ネガ・フォース』で 斬り裂いてくれる!
拡散する悪夢(ナイトメアウイング)で空の支配者の如く飛翔し、空から敵を急襲して破壊していくぞ
フハハハ!!!
これが最強というものだ
●悪夢の夜、災機の振るう超越魔剣が破滅の炎を切り裂き今予言されし運命の扉は開かれる
各所で次々と撃破されていく陸戦量産型『哪吒』であるが、決して、弱卒ではない。むしろ機械的ながら一糸乱れぬ連携を誇る彼らは十分な脅威であるといえる。
それを証明するかのように――不用意に突出した黒いキャバリアに続けざまに槍が突き刺さり、破滅の炎が火柱となって吹き上がった。
撃破、と、判断したのだろう。『哪吒』たちは即座に、次の猟兵の方へ向かおうとする。
――けれど、その瞬間。
炎の中からぬう、と現れた黒腕、その赤い爪が、事も無げに、2本の槍を掴んだ。
「……ククク……その程度の力で俺に勝てると思っていたのか……?」
『『……!!?』』
響く、自信にあふれた男の声。鉄の連携を誇っていたはずのオブリビオンマシン部隊に、確かな動揺が走り。
炎を吹き散らすように噴き出した無限の闇が、『哪吒』数機を飲み込み、遥か次元の彼方へと消し飛ばす!
「フッ、他愛ない――たかが量産型風情、この俺と『Azazel』の敵ではない。数の話であれば、無限増殖する半植物の究極有機ロボットを全て残らず討伐したこともあるのだからな……」
妄想……いや設定……もといあったはずの過去を語る夢幻・天魔(千の設定を持つ男・f00720)の声と共に、炎を飲み込んだ闇の中から再び姿を現した、闇色の翼を広げる異界の魔王が如き姿のキャバリアに、もはや槍の傷は無論のこと、炎による損傷すらまるで見受けられない。
なんで?
いや……多分かつて滅ぼした邪悪なる機体より奪った、因果の逆行を利用して格下からの攻撃をなかったことにするカオスエンペラードライブとか……そういう……やつ……? だろう。
刮目せよ、これなるは災機『Azazel』。世界の破滅を招くと(天魔に)予言されたオブリビオンマシンである……!
「拡散する悪夢(ナイトメアウイング)展開。さあ、哀れな子羊共に『最強』を教えてやるとしよう……!」
『Azazel』の背より、(自称)空の王たらしめる(自称)最速の飛行ユニットたる闇が吹き上がる。暗黒のサイキックエナジーを啜り(でもサイキックキャバリアじゃないんだ……)、万物を斬り裂く(という妄想設定を持つ)赤き超越魔剣『ネガ・フォース』を高々と掲げ、災機は空を舞う。
この世界においてかつて封じられた「神」の一柱の名を冠するオブリビオンマシン『哪吒』。だが、かつて多分絶対創造神とか切り裂いてるような気もする魔剣を前にしてはあまりにも無力。次々と無窮の闇へと呑まれていく。
「フハハハ! これが最強というものだ!! フハハハハ――ハーハッハッハ!!!!!」
なにこれ?
大成功
🔵🔵🔵
美聖・らふる
「私は、私の世界が嫌いじゃありません」
「――――だけど」
「他の世界まで、同じにしようとは思わない」
「……美聖・らふる、“レ”」
「美化活動を、実地します」
制空権の制圧はアイ様が。
切り込みは恐らく、“黒騎士”が行うのであれば。
私の担当は、殲滅あるのみ。
ノブリス・オブリージュ・ベクトルコントローラシステム展開。
“サンクチュアリ”起動、敵機の総数を算出し補足。
メガリス・ドライブ最大稼働。
チャージ完了次第、殲滅を開始します。
――――コード/Raffinement。
空中に放った「メガデス」の光線を細分化させ、敵機一体一体に狂いなく襲いかからせます。
あなたには。
なにもさせない。
玉響・飛桜
…別に拙者は、空も飛ばないし。
アレに撃たれた経験も無いし。
「この街」に思い入れも、ここの人達が大事な訳でも無いけど。
あんなもんが増えるってだけで、腹が立つ。
玉響・飛桜、“トランペッター・テリオン“、出るでござる!
《オロチ》!さっさと手ェ貸せ!!
敵の武器でも街の建物でも何でも良い!さっさと触って来て接触情報寄越せ!
片っ端から倍音(ハーモニクス)だ!
武装の能力はとして使えなくても槍や鋏はパクって鈍器にして使い潰す!!建物は壁に!!
数が多かろうが!
武装が強力だろうが!
自律型のオブリビンマシンだろうが!!
新世界の生徒会や委員長程の圧も無ければ怖さもねえ!!
さっさとくたばりやがれ、ガラクタ共!!!
●新世界学園校外活動記録 File No.40106-01
美聖・らふる(メガデス・f29983)は、思う。
自分たちにとって、「自分たちの世界」の存在は当たり前にあるもので。別の世界を知り、猟兵として渡る術を得たとて、逃れ、移り住もうという者は周囲には滅多にいないけれど。
それでもやっぱり、聞く限りでは窮屈な世界なのだろうし。自虐のような語り口をする委員を目にするのも、1度や2度ではなかった。
では自らの感情はといえば――実は、そう悪いものでもない。
学友たちと比べても、決して多くはない年数だけれど。確かに生きて、死んで、歩いてきた自分の世界が、らふるは嫌いではなかった。
だけど。
他の世界まで、同じにしようとは思わない。
「……美聖・らふる、“レ”。美化活動を、実施します」
ここは、あの島ではないから。
そんな出撃の宣言に応えてくれるオペレーターもいないのだけど――
『熱くなるなよ、馬鹿共』
「――――、」
思った矢先の、あまりに聞き慣れた声色に、思わず目を見開いて。
――笑っていいのかムッとしていいのか。その判断も付かぬまま、“レ”は、建業の空へ飛び出した。
(「制空権の制圧は――そして地上には、今の声――」)
僅かな時間だけ己のすべきことを黙考するけれど、結論は一瞬。
元より。美聖・らふるを前線に出すのなら――
「ノブリス・オブリージュ・ベクトルコントローラシステム展開。“サンクチュアリ”起動、敵機の総数を算出し捕捉。メガリス・ドライブ最大稼働――」
その役割など、10に9まで殲滅に決まりきっている。
「――――コード/Raffinement」
光の柱が、天を貫き。
天上にて無数に枝分かれしながら、都各所の敵機へ向けて、幾何学的な模様を描きながら正確に降り注ぐ――――!
●新世界学園校外活動記録 File No.40106-02
「いいっ――――!!?」
そして降り注ぐ光の雨に、“トランペッター・テリオン”のコクピットに収まった玉響・飛桜(カゲロウ・f30674)の喉は、思わずくぐもった悲鳴を漏らした。
いや。分かる。幾らか見慣れたものに比べれば形は違うが、この輝きを知らぬ者はネバーランドにはいない。通信管制を受けられずとも、一目瞭然。
そして、かの「メガデス」は長らく戦場からの退避とセットの存在、死の象徴であったのと同時に――
・・・・・・
誤射はしない。それもまた、誰もが知る逸話だ。ならばこの混戦でぶちまけられた光にも、過たず敵だけを狙い撃つ勝算があるということだろう。実際、レーダーに密集していた敵機の反応が、冗談のような速さで消えていく。
『カッカッカッカ! この一帯は花火の会場か。どうする今代、任せて下がっちまうか?』
「……冗談! 撃ち漏らしを確認して落とす。索敵はこっちでトランペッターとやるから、片っ端から触って来て接触情報寄越せ、《オロチ》!」
見えざる蛇に叫び返す声は、刺々しい。苛立ちが漏れる。
――別に拙者は、誰かみたいに、空も飛ばないし。アレに撃たれた経験も無いし。
この街に思い入れもなければ、ここの人達が大事な訳でも無いけど。
あんなもんが増えるってだけで、腹が立つ……!
搭乗者ヒオ、と、澄んだ声が己の名を呼ぶ。
建物の影に敵機複数、恐らくは僚機を盾に生き残ったものと――そんな戦術分析を断ち切るように、
「――トランペッター! 倍音(ハーモニクス)、連続実行!」
忍者が如き機体が大きく跳躍したかと思えば、その周囲に無数の巨大な影が出現する。
焦げた建物が丸々2棟、中央で焼き切られたRXS火尖鎗、あるいは『哪吒』の残骸そのもの。
まるで何処かから取り寄せたよう、なんて言えば、きっと「そういう本物」は嫌な顔をするのだろう。これはより無法に現実を蹂躙する異能だ。キャバリアのAIの支援の下で実行されるそれは、正真正銘の複製。限定的ながらも、無から生成される有。
純粋なる質量攻撃と化したそれらは、遮蔽物諸共に敵機の反応をまとめて飲み込んで――
「……残像反応アリ! 雑すぎたか、トランペッター、もう1度――」
舌打ち混じりの指示を、
『今代。いいのか?』
「!? 何が――」
・・・・・
『巻き込むぞ』
老獪な声が、制止して――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
火翅・ナナ
しょーじき他の世界に構ってる余裕なんてないんだけどぉ、殲禍炎剣って言われちゃ邪魔したくなっちゃうよねぇ。
コードネーム“屍”、マクガフィン・エクスマキナ、委員会活動を開始するよぉ
【空中戦】【軽業】【だまし討ち】【遊撃】【瞬間思考力】を駆使して、持高機動で相手を翻弄するよぉ
我、魂無き者。汝、姿無き者。――我ら囚われざる者。Code:Silow-Ruli、解放
BX-B"ブリンク"を足場にしたり、BSw/RX-x“ゴーティエ”ワイヤーガンで軌道を変えたり、立体的な動きで立ち回り、隙を突いてSOC-006-F“グリード”で攻撃
派手に動いて敵の注目を集め、その隙を味方に突いてもらう
アドリブ、絡み歓迎です
●新世界学園校外活動記録 File No.40106-03
宙から降り注ぐ、ビルの残骸。あるキャバリアと異能者によって作られた複製。
・・・
――その裏に、張り付くように。獣の如き爪を持つ黒きキャバリアが、そこにいた。
「我、魂無き者。汝、姿無き者。――我ら囚われざる者。Code:Silow-Ruli、解放」
火翅・ナナ(空得・f30145)の静かな囁きと共にリミッターを解除した、XE-009AM〝マクガフィン・エクスマキナ〟の機体が跳ねる。
瓦礫を蹴り、曲がり、瓦礫を蹴り、曲がり、繰り返し。
其は、瞬間思考と高速軌道の局地。
わずかに引っかかれば戦闘不能になりそうな、細身の軽量機体で成し遂げられる曲芸。
無造作にぶちまけられた瓦礫の中を走り抜け、
「――ひとつ!」
事態をまるで理解できていない、「メガデス」の傷跡残る『哪吒』の三面の首を、叩き切る。――ここはコイツで終わりかな、と、周囲の機体反応に一瞥をくれていれば、
『――いやいやいや! そっちの方がよっぽど忍者でござるよ!?』
喚くように飛び込んできた通信に、思わず、にはは、と、笑みが漏れる。
「ごめんねぇ、つい張り切っちゃってさぁ。……他の世界に構ってる余裕なんてないんだけどぉ、殲禍炎剣って言われちゃ邪魔したくなっちゃうよねぇ」
それはそうでござるが――なんて返してくる相手に、でしょぉ、と相槌を打ちながら。
――本当にそれだけかな、とも、少し思う。
張り切ったのも確か。無茶をしたのも確か。
その理由に。ちょっと目を話したらどんどん先へ進んでいっちゃいそうな同級生、目の前で繰り広げられていたメチャクチャな光景。その前で浮かんだちょっとした焦りが、なかったと言い切れるだろうか。
(「……なぁーんて」)
コクピットの中、首を振る。こんなとこでぼーっとしてたら、今頃ヤキモキしてる方の同級生にだって、怒られるってもんだよねぇ。
「さー、次行こっかぁ!」
目の前の瓦礫をすり抜けるように抜け出して、射出したワイヤーガンを巻き取って宙に駆け上がる。
文句を言いながらもついてくる友軍反応を確かめながら、目視での索敵を兼ねて少しだけ高く。――セキレイの翼がなくとも遠慮なく駆け出せる広い空に、遠く、ナナのよく知る翼を認め。
ヒトゴトだけど。やっぱこの空も守ったげたいにゃぁ、なんて。
胸の内だけで、小さな呟きを漏らした。
大成功
🔵🔵🔵
ユウ・キリヤマ
※言動のアドリブ、他キャラさんとの絡み大歓迎!
「熱くなるなよ、馬鹿共」
通信機から響く言葉は淡々と、戦場を睥睨する視線は冷たく冴えて
しかし、他所の世界の騒乱に出撃する程度には、あの空の鉄クズと、それを為そうとする者に思う所もあるわけで
「戦線は維持する。好きにやれ」
この場にいる委員会クラスであれば、概ね行動は予測できる
必要なのは、臨機応変に前線を掻きまわし、時に装甲で耐え、敵を引きつける前線要員
そしてこのユウ・キリヤマと“黒騎士”、およそ戦場活動において不可能は無い
機体重量を常に調整、打撃と銃撃、速度と防御を使い分け前線で持久戦
攻撃も行うが主攻は他に任せる
状況に応じて、面識のない猟兵とも柔軟に共闘
御門・白
行きましょう、ツクヨミ
私たちは、空を覆うあの衛星の眷属を赦さない
──体内の水が揺らぐ感覚
これはまずいですね。
即死しないとしても、これだけで体の動きを損なうし、集中も鈍る
立てなおさないと
呪いの波動は【呪詛耐性】で堪えて、その合間に【道術】で確かな「私」を固定して
……どうやらずっと同じ波動を射出し続けることはできないようで
でも、連携して撃ち続けられるといずれ負けますね
なら……
こちらのルールを押し付けましょうか
空を、夜空が上書きして……
われ
ここは天帝が宮である
托塔李天王の子が、何故頭を上げる?
【呪詛】を連ねて、押し寄せる敵機を地面に不可視の力でねじ伏せる
迂闊な「銘」をつけるから、こうなる
●新世界学園校外活動記録 File No.40106-04
『熱くなるなよ、馬鹿共』と。
伝えた意味を分かっているのか、彼奴らは。
とでも、言って。
・・・・
普段なら舌打ちしていたかもしれないと、ユウ・キリヤマ(クロムキャバリア・f30057)は、ほんの刹那、珍しく無意味な「もしも」を脳裏に描く。
「黒騎士」内部のコンソールでリアルタイムに閃き続けるのは、ネバーランド所属各機からの交戦及び索敵データ。距離が離れても常よりクリアに伝わる通信内容もまた、思考を分けて頭に叩き込む。
世界の壁を超え、通常の通信が断絶されている以上、黒騎士自身が司令部だ。
その現状こそが。――そこまでして他所の世界の騒乱に出撃する程度には、あの空の鉄クズと、それを為そうとする者に思う所もあるという。
彼らの、そして副会長たる彼自身のモチベーションを示す、何よりの証左であった。
故に、先の通信の後には続けて、『戦線は維持する。好きにやれ』と伝えたものである。
そして選んだ戦場は「メガデス」の光雨がぶちまけられた中心点からは、やや遠い。
無論、前線基地の役割を兼ねている以上、突出はしない。されど、この通りを突破されれば乱戦が加速する。そういう場所だ。
轟音と共に叫ぶ鉄火は、右肩部にマウントしたJRS-07-S“シャープシューター”の掃射。放棄された家屋の外壁が吹き飛び、物陰に潜んでいた敵機が距離を取る。
――敵機の性能がそう低いわけではないが、単純な射程では完全に勝っている。合戦の時代のキャバリアというのも妙な物だと感じながら、深追いはしない。
黒騎士は、牽制射撃を中心に、言葉通りに巌が如く戦線を維持し続け、
「――――ッ!?」
ぎしりと、突如黒騎士の機体が軋み、がくんと歩幅が乱れた。
ユウは、眼鏡の奥で鋭く目を細め、隙ありとばかりに不用意に踏み込んできた『哪吒』の脚部を蹴り砕き、近接武器の使用を避けてシャープシューターの零距離射撃で粉砕しながら、機体パラメータに視線を走らせて。
僅か、半瞬。明らかな驚きと共に、理解した。
『液体』への干渉能力を実現するエネルギー兵器、BS-B混天綾。
“グリモア猟兵”の口振りからも、キャバリア内部への干渉力は、ある程度の条件が揃わなければ高くないと考えていたが。
干渉を受けているのは、――黒騎士の纏う『泥』だ。
「―――――阿呆が」
直後、ユウの声に浮かんだ色は、苛立ちと……呆れと、哀れみだった。
機体内部に意識を向ける。
殺せ狂え暴れろ■せと喚き散らす意志、小石を投げ入れられたさざめきが広がり、乱れた怨嗟の渦を、『黙れ』と捻じ伏せる。
ただそれだけ。――本当に、ただそれだけのことで、何の害意も要することなく。
『―――■■!!?』
『■■■■―――!!!!!』
・・・・・・
周囲数カ所の物陰から、干渉場を逆流したどす黒い泥が吹き上がり、不遜なるオブリビオンマシンを声なき悲鳴ごと飲み込み、跡形もなく消滅させる。
当然の帰結だ。――何のために、新世界学園がこの泥の実験申請にあれほど厳格な手順を敷いていると思っている。
だが、そうは言っても――、
「――――連続で仕掛けられれば、少々面倒か」
額に浮かぶ脂汗を拭うこともなく、呟けば。
『状況は理解しました。宜しければ、こちらで対応しますが』
まるで独白を聞いたかのように差し込まれた、涼やかな女の声からの通信。
ユウ・キリヤマは、微かに眉を上げると。
「任せる。しくじるなよ」
躊躇なく答え。その結果押し広げることになるだろう前線の先へ、歩を向けた。
●新世界学園校外活動記録 File No.40106-05
「心得ました。――行きましょう、ツクヨミ」
御門・白(月魄・f30384)の囁きに応え、黒のオブリビオンマシンが浮き上がる。
否。浮く、というより、空を歩くと称するべきだろう。
(「さて」)
白の見る限り、「あの攻撃」は呪術的な側面を深い部分で取り入れている。或いは、そのための機体名であり、その為の武装名なのかもしれないと思えるほどだ。
ならば使われる度、道術により対抗し、式を乱し、隙を見て呪詛を叩き返す……それも、全く不可能ではあるまい。
――けれど、それは言うなれば対症療法。提案を即座に容れ、手法も聞かずにしくじるなとだけ告げてきた指揮官の信用に応えるには、それでは足りない。
(「……信用に、応える」)
当然のように脳裏に過ぎった言葉に、思わず、口端が上がる。
ツクヨミからの訝しげな思念に、いいえ、と、首を振り。
「先手を打ちます。こちらのルールを押し付けましょう」
――いそぎいそぎ、天帝の定めたるとおりとすべし
歌うかのような呪言が戦場に響くと共に。
広がるのは、「夜」だ。建業の都の空、その一角を、夜空が覆っていく。
地を黒き騎士が駆け、空を月詠が歩む。
この暗転をもって、一帯は一時、彼女の領域となった。――否。それもまた、正確な表現ではない。
――ここは天帝(われ)が宮である
びり、と、響くのは誰何。
それは白の声であるのと同時に、より上位の誰かの声である。
天宮・紫微宮。
ある宗教体系における最上位存在の領域を顕現し、そのルールを押し付ける術式。
そして。
・・・・・・・
――托塔李天王の子が、何故頭を上げる?
・・
哪吒とは、まさにその体系に属する名だ。
故にこそ、逆らえない。逆らうべくもない。
如何な三面八臂の武神といえど、否、だからこそ、この誰何を逃れることは能わない。
ましてや。恐れ多くも天帝の在所たる紫垣において、不遜にも羽衣の宝貝如きを持ち出す資格など、持とうはずもない。
「夜空」を仰ぐ『哪吒』が、一斉に頭を垂れ、重圧に押し潰されたように地に叩きつけられる。
中には膝を突いて堪える者もいたけれど、騎士の刃が振り下ろされるのだから、同じこと。
「迂闊な『銘』をつけるから、こうなる」
惨状を見下ろして囁き、そのまま天を仰ぐ。
『哪吒』とは、なんなのだろう。
自分の術と同じように、神の力を重ねるために名を借りたのか。
或いは「この世」においては、それが神代のまことであるのか。
いずれにせよ、その名は力と共に逆らえないルールを帯びて、白の呪は容易く成った。
……本物の空にゆっくりと溶けていく星空の果てに、たった一つ、自分が描いたわけでない、鷲座の星を仰ぎ見て。
白は微かに、その目を細めた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イオリ・カクトゥス
連携・アドリブ等歓迎
まさか他の世界にも殲禍炎剣があるなんてね。
幸い、まだ空には上がっていないようだし、今のうちに叩いておこうか。
世界が違うとはいえ、あんなものが空に二つも浮いているなんて御免だよ。
ジャイアントキャバリア『D-Ogre』に機乗して、真正面から対峙しようか。
文字通り手数は互角かもしれないけど、たかだか無人の量産機に腕で負けるつもりはないからね。
武装を切り替えながら、【乱れ撃ち】で敵を撃破していこう。
派手に動けば、こっちを狙って来る敵の数も増えるだろうけど、構わない。
多対一は得意だし、【継戦能力】には自信のある機体だ。
そう簡単に押し切られるつもりは無いよ。
それにこっちに敵の意識が集まるのは悪いことじゃない。
その分、自由に動ける味方が増えるならね。
別に空に強い思い入れがあるわけじゃないけど、それでも殲禍炎剣は嫌いだ。
その代行者だなんて……まぁ気にくわないよね。
風祭・ヒュウガ
案内もなかなかサマになってンじゃねェの
ハ、そんじゃオマエの分も暴れてきてやるとすっか!!
殲禍炎剣と同じモン空に浮かべようってンだろ?
――潰すぞ、"ベルゼビューガ"
巨大な腕型のブースターが生み出す推進力で宙を駆け、目につく相手を片っ端から殴り飛ばす
機動力があるってのは、有象無象を蹴散らすにゃ楽でいいな!! 未だ空も縛られてねェとなりゃ猶更だ!
こちとら戦場の掃除が仕事だ――大人しくスクラップになりな!!
火線を避けながら、蹴りや拳を叩き込む
余所見して味方を狙う奴がいれば、巨腕で直接殴りかかる
隙だらけだよ、オラ!!
無人機だってんなら、遠慮はいらねェだろ
思う存分、コイツの馬鹿力を見せつけてやらァ!
●新世界学園校外活動記録 File No.40106-06
飽和砲撃で圧殺する、速度で押し切る、遠方から撃ち抜く――都に集った猟兵達のキャバリアの多くが取ってきたのは、そうした戦法であった。文字通りに多い手数。最も目立つ武装である火尖鎗の火力。それらを考えれば、自然なこと。
近接戦闘を避けるというほどのことはなくとも、わざわざ相手の得手を発揮させることもない、そうした方向に向かうのは自然なこと。
だから、そこで繰り広げられている光景は、少しだけ異質だった。
続けざまに鋼と鋼を打ち合わせる、鋭い音。けたたましい衝撃は、まるで雨滴のよう。人の剣士の死合ではありえないリズムと頻度で、剣閃がぶつかり続ける。
双槍に加えて、高々掲げた二本の刃。
それらと正面切って打ち合うのは、やはり異形――両面四臂のジャイアントキャバリア『D-Ogre』の振るう、三本抜かれた大刀であった。パイロットは、新世界学園園芸委員長、イオリ・カクトゥス(Twin's・f30101)。
「文字通り、手数は互角かもしれないけど――おっと」
まさか、言葉が聞こえた抗議……というわけでもあるまいが。体の後ろから振り上げられ、がきりと大刀と噛み合ったのは、これまで振るわれる様子のなかったハンマーのような兵装……否、杵か。
なるほど、三面六臂。顔も腕も一回り多い計算、ということになるが。
「それは失礼。……でもその程度で、無人の量産機に腕で負けるつもりはないからね」
――その衝撃を受け流した、動きのまま。ずるりとずれ落ちていく、哪吒の上半身。斬られるまで斬られたことに気付きもしなかったそれを、それ以上見ることもなく。
機体の影から新たに覗いた敵機に向けて、空けておいた最後の腕で抜き放った無骨なキャバリアライフルの弾をばら撒きながら、重厚な機体からは想像しかねる程の速さで間を詰める。
目を向けず、微かに意識だけを向ける空。
……世界が違うとはいえ、あんなものが空に二つも浮いているなんて御免だと、ただ、そう思う。どっかの誰かや誰かのように、空に妄念じみた衝動を抱えているわけではないが……イオリだって。殲禍炎剣は、当たり前に嫌いだ。
思考を他所に、またもけたたましい剣戟。繰り返される騒音が警報代わりになったか、それとも連携した動きか。周囲を囲むように、追い込むように機体反応が近付いてくるのが分かる。
――いずれにせよ、狙い通り。防衛戦はイオリの得手だ。引き付ければ、それだけ他の戦場が楽になる。故にこそ、あえて派手に打ち合い、引きつけてから叩き潰す。
それを、ただひたすらに。繰り返す。繰り返す。繰り返す。
顔色一つ変えることなく、戦って戦って戦って――
「――?」
そんな最中。イオリに初めて浮かんだ表情は――結局、敵機ではなく。彼らの包囲網が突如乱れたことに対する疑念だった。
●新世界学園校外活動記録 File No.40106-07
オブリビオンマシン、"ベルゼビューガ"が宙を舞う。
その肩でブースターのように火を吹き機体を押し出すのは、『腕』。
そしてもう一つの腕が固めた、光の尾を帯びた拳を――罅割れた槍を交差させ、必死に受け止めようとしている『哪吒』の一機。
飛翔は、時間にすれば、数秒かそこらだ。
ただ、広がる空に、風祭・ヒュウガ("ベルゼビューガ"・f30077)の脳裏に雑念が過ぎる。
機動力があるってのは、やってみると有象無象を蹴散らすにゃ楽でいい。こうやって縛られてない空で、高度を気にせずに飛べるならなおのこと。――これがアイツの気持ちかね、なんて。
思った頃には、ほら、もう『目的地』。
「おォォォォ……っらァ!」
轟音。
着地の勢いのままに『哪吒』の機体を叩き込んだ廃屋は、瓦礫となって崩れ落ち。
もうもうと上がる砂煙を前に、"ベルゼビューガ"は平然と立ち上がり――目当ての相手に、声をかける。
「よォ。囲まれて参ってた――って感じじゃねェな」
『まあ、ね。こっちに敵の意識が集まるのは悪いことじゃない。その分、自由に動ける味方が増えるならね』
……それまさか、わざわざ助けに来たつもりなら行って良いぞ、ってコトかよ、と。イオリの返事から、言外に傲慢なまでの自負を感じ取り、ヒュウガの口から乾いた笑いが漏れた。
その、飄々とした声が、強がりでも大言壮語でないことは。
それなりの被弾も消耗もあるだろうに、碌なダメージを感じさせない『D-Ogre』と――その足元に散らばる、最早数え切れない、比喩ですらなく山ほどの『哪吒』の残骸を。そして未だ周囲を囲む少なくない敵機の警戒ぶりを見れば、明らかだった。
一体どれだけの時間戦い続けて、どれだけ戦い続けるつもりなのか。
流石は委員長格、というところ。
ド ツ キ ア イ
キャバリア・コンバットが専門のヒュウガの目から見てさえ、その技量は異常の一言に達していた。
「――ま、いい。ミーゼも派手にかまして、敵さんも随分減らしたからな。ぼちぼち終盤だろ」
『そう? なら――』
両面四臂と疑似四腕。異形のキャバリア同士がすれ違うように立ち位置を入れ替え、互いの背に迫っていた三面六臂を打ち据え、或いは斬り伏せて。
それ以上の打ち合わせは不要とばかり、2機は背中合わせに、オブリビオンマシンとの戦闘を開始する。
斬る。殴る。撃つ。砕く。灼く。殴る。
多様な武装を使い分ける『D-Ogre』と、対照的なまでに拳を振るい、時に巨腕を叩きつける『ベルゼビュート』。
『……凄いね。相手の動きを取り入れてるのかな――戦ってる最中にも、腕の扱いがこなれていく』
「ハ! そりゃどー、も!」
光を帯びた拳でもう一機、シンクロするように動く巨腕が『D-Ogre』を狙った敵機をもう一機。続けざまに叩き潰しながら、言葉に浮かぶのは獰猛な笑み。戦いながら敵の挙動を学習し――或いは「食らって」、より的確な打撃を重ねていくヒュウガのラッシュ・スタイル。見透かされたか、それともただの感想か。
……だがまぁ、確かに。腕が多いキャバリアなんてキワモノと、こうも戦う機会も珍しい。進化した機体に活かせる、何かしらの学びも持ち帰れるか――
余裕のせいか、ヒュウガの頭にそんな思考が浮かんだ瞬間。どくりと、鼓動が大きく響いて波打って。ベルゼビューガから / それとも、もっと、うちがわから なにかが 囁いた。
何を言ってる。
こんな雑魚から、「それ」を食おうってくらいなら。
目の前に / もっと / 上質で / ■■そうな――
『大丈夫?』
「トーゼン」
何かの気配を感じ取ったのか、かけられた「仲間」の問いかけに、即座に応えて首を振る。問題はない、強がりでもない。
「感情を悪い方向に向けるマシンを乗りこなせ」、なんて偉そうに口にしたのは、もう1年以上も前になるのか。もどかしいだろうにサマになった「案内」をする後輩に、オマエの分まで暴れてきてやる、とまで言っておいて。トチって帰ったら、ドツかれるくらいじゃ済まないってもんだ。
「増援も尽きてきたな、一気に決めンぜ――!」
遠慮なく馬鹿力を見せてやるとばかり、振りかぶられた剛腕、輝きを増すフォトン。
『D-Ogre』の主は、その様子に何を思ったか、口に出すことはなく。背中合わせに暴れ続ける2機の戦いは、終わりに向けて続いていく――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アイオライト・セプテンバー
産まれた時から、私たちの世界の空は狭かった
クロムキャバリアは、正直窮屈な世界よ
空に浮かぶ殲禍炎剣
立ち向かおうなんて思うのは少数だろうけど、あの凶星の存在を忌まわしく思わない者なんて
あの世界には居ないと思っている
だからこそ、私には他の世界の空が自由で、眩しいものに見えていたのに
アレをこの世界の空にも掲げるですって?
冗談じゃない
キャバリアってのは生身で相手するには大きいわ
だったら、やっぱり猟兵のキャバリア乗りも頑張らなくちゃね
行くわよ【リベルタス】
オーバーロードを用い、この機体の真の姿を開放……【リミッター解除】、【バースト・モード】起動
プラズマブレード、ホーミングレーザー、持てるものは全て使う
飛び続けられる限り、奴等を切り捨ててやる
ええ、ええ、敵の火力は侮れないわね
けれどね、こちとら【空中戦】のスペシャリスト
磨いてきた【操縦】技能も、経験により攻撃の【見切り】も今日は振り切れている
何より……この世界にはまだ、あの忌まわしい衛星がないんだもの
自由に飛べるこの空で、この私が負けてたまるかよ
●新世界学園校外活動記録 File No.40106-08
――生まれた時から、私たちの空は狭かった。
LIB:ERT-AS〝リベルタス〟の機体が、金色の尾を引きながら、空を――慣れたそれよりもずっと広く、自由で、何処までも続いているのだろう空を、ぐるりと巡り。コクピット内部、アイオライト・セプテンバー(〝エアダスター〟・f29954)は目を細めた。
やはり戦う猟兵の大半は、所属を問わず、同じ世界の出身……或いは何らかの縁を持ってキャバリアに乗る者。
虹の光芒。荒れ狂う竜。時に泥臭い追撃戦、時に荒々しい力の乱舞。
降り注いだ光の雨。さかしまに降った建造物。その合間を疾った影。
切り込む黒。広がる夜。乱れ咲く太刀。吹き荒れる拳。
或いは――。
・・・・・
目まぐるしく流れ行く戦場の全てを、知覚するような感覚。
この広い空のせいだろうか。
それとも、極度に高まった精神状態による錯覚か。
まるで五感が無限に広がっていくよう。
知らない姿も、よく知る姿も。
よく知るけれど、いつも以上に気負ってみえる姿も、多い。
そりゃあそうでしょう、と、思う。
(「……クロムキャバリアは、正直窮屈な世界よ」)
空に浮かぶ殲禍炎剣。閉ざされた鳥籠。
それに立ち向かおうなんて思うのは少数だとしても。
あの凶星の存在を忌まわしく思わない者なんて、あの世界には居ないと思っている。
――だからこそ。私には他の世界の空が自由で、眩しいものに見えていたのに。
この世界の空は、かつて後輩と見上げたのと同じ空。
バカらしくならない、なんて、あの子らしい遠慮のない質問に、胸の内を素直に答えて。
いつか自分たちの空を取り戻そうと笑い合った、あの空だ。
その空に、アレを掲げるという。
「冗談じゃない」
吐き捨てる声すらも置き去りに、金を纏う蒼が輝く。――否、輝き続ける、というべきだろう。
大鷲座の星を冠する「空戦型キャバリア」という一つの異端は、この日何度目かのダイブを敢行/一時たりとも止まることなく高速戦闘を続行する。
町郊外。市街地から離れて狙撃を行うキャバリアに向かおうとする3機の哪吒部隊、その一機を、反応をも許さずプラズマブレードで斬断。
応じるように放たれかけた炎を切り裂くようなレーザーの光条が爆散させるもう一機。
――最後の一機が体制を立て直そうとした時には、もうそこにはおらず。そして数秒後、吹き荒れるソニックブームに揺れるオブリビオンマシンの機体を、味方機からの狙撃が貫いた。
「ッ……この、世界には」
それを確認するリベルタスの姿、再び高空に。
とうに解き放たれた二重の意味でのリミッター。機体の出力制限と、もう一つ。――いつも以上に高く飛べるのだから、最大出力を活かし切るの動きは当然大きなものとなる。
無茶苦茶な軌道に血流が滞り、重力と慣性に振り回された内臓が悲鳴を上げ続ける。
黙殺する。
己を律するように紡ぐ言葉は譫言。
けれど、そう。この世界には。
「――この世界にはまだ、あの忌まわしい衛星がないんだもの」
理由など、それで十分。
自由に飛べるこの空で、
「この私が負けてたまるかよ……!」
星が閃く度、機械仕掛けの神が堕ちる。
そうして、蒼の軌跡は、更なる戦場へ。
大成功
🔵🔵🔵