殲神封神大戦⑩〜打ち上げを阻止せよ、猟兵よ
●建業にて待つものは
「みなさん! たいへんなことになりましたねっ!」
グリモアベースにて、千束・桜花(浪漫櫻の咲く頃に・f22716)は集まった猟兵たちへと明るく声をかける。
「伝説の怪物と言われていた哪吒の正体が、自立型オブリビオンマシンだったとは驚きです。しかも、殲禍炎剣の代行者を名乗るとは……」
殲禍炎剣とは、クロムキャバリアにおいて、高速飛翔体を無差別砲撃する暴走衛星だ。かの世界は、これによって広域通信網が失われたことで世界全体の情勢や地形を知ることができなくなったと言われている。
その殲禍炎剣にも似た大量殺戮兵器が、哪吒の打ち上げようとしている攻撃衛星『九竜神火罩』である。
これが打ち上げられてしまったら、封神武侠界ではどれほどの被害が出るだろうか。
「非常に度し難い兵器です! 衛星軌道への打ち上げは必ず阻止しなければなりません! ですが……」
桜花は言い淀んで、俯いた。
「哪吒はまさに怪物の如き強さを持つオブリビオンマシンです。その武装の一つ一つが極めて強力で、まともに戦っては、我々に勝ち目はありません」
過酷な戦いになるだろう。
もし希望があるとすれば、と桜花は続ける。
「哪吒は打ち上げ前の九竜神火罩を守るようにして戦っています。守りながら戦うとなれば、行動には多くの制限があるはずです。これを活用しない手はありません。うまく使って、哪吒の強力な攻撃を凌いでください」
一通り説明を終えたところで、猟兵たちへと敬礼をする桜花。
「厳しい戦いになるとは思いますが……みなさん、どうかご無事で!」
るーで
●ご挨拶
ごきげんよう、るーでです。
うわぁーーーかっこいい!
この世界でオブリビオンマシンと戦うとは……!
●概要
ボス戦です。
哪吒は体高5mの自立型オブリビオンマシンです。
必ず先制攻撃をしてくる上に途轍もない強さを誇ります。
プレイングボーナスは「哪吒が九竜神火罩を守護する状況を利用し、哪吒の先制攻撃に対処する。」となっております。
ここはクロムキャバリアではないのでキャバリアを貸し出したりはしていないので、生身で巨大な敵と戦うか、キャバリア乗りの方は自前のキャバリアを持ち込んで戦う感じになると思います。
それではよろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『オブリビオンマシン『哪吒』』
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POW : RX金蛟剪(きんこうせん)
【二刃一対のハサミ型刀剣兵器】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【新型オブリビオンマシン】に変身する。
SPD : EP風火輪(ふうかりん)
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【両足の火炎車輪型フロートユニット】から【火炎竜巻】を放つ。
WIZ : RXS-A乾坤圏(けんこんけん)
【腕】を向けた対象に、【空飛ぶロケットパンチ】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
チトセ・シロガネ
それは打ち上げさせナイ!
その剣は、人類の翼を奪うモノだ!
ボクはBXSカレイドスコープ(レーザー射撃)を九竜神火罩へ乱れ撃ちしながら推力移動で突っ込み空中戦を仕掛ける。
第六感が「哪吒は九竜神火罩の盾として立ちふさがる」と告げたなら信じるのみッ!
そして、相手が腕を向けた瞬間、光子頭脳の瞬間思考力で選んだ戦闘知識からロケットパンチであることをたたき出す。
それならば、シンプルなアンサーネ。全部叩き斬ればいい!
そうと決まればリミッター解除、早業でBXグリントと推進力に全出力をつぎ込み、重なる乾坤圏、哪吒、九竜神火罩を見据え巨大な光刃の斬撃波で切り結ぶ!
●一閃
建業の都にて、用意されたこの世界に似つかわしくない衛星の打上台。
すでに、攻撃衛星『九竜神火罩』は打ち上げの準備に入っていた。
その現場へと向けて駆ける蒼き光。
(それは───)
頭部ユニットの柔らかなファイバーを髪のように揺らし、衛星へと一直線に向かう。
「それは打ち上げさせナイ! その剣は、人類の翼を奪うモノだ!」
近接特化型クロムキャバリア、オービタル・テイルズを駆るチトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)が向かう先には、衛星を護るように腕を組んで立つオブリビオンマシン、哪吒。
威風堂々たるその姿は、猟兵たちに威圧感を与えるに足るものだ。
あの強大な敵を越えなければ、九竜神火罩の打ち上げを阻止することはできない。
そう思うと、チトセの背筋に寒いものが走る。
だがそれでも、必ず遂行しなければならないのがこの任務だ。
速度を維持したまま、肩部のビーム兵器を九竜神火罩へと向けるチトセ。
まずは衛星に向けて砲撃をすれば……。
(アイツは、哪吒は九竜神火罩の盾として立ちふさがる……! ボクの第六感がそう言ってイル!)
事実、哪吒はオービタル・テイルズと九竜神火罩の間にその身体を置くことで盾になった。
「来たな、猟兵よ。試してみるがよい。吾が目的、妨げられるものならば!」
逞しいその腕部を、オービタル・テイルズへ向けながら。
(グッド! でも腕をこちらに? この距離で何を───)
狙いをつけ、これからレーザーを放とうというときである。
不可解な状況を叩き込まれたチトセの光子頭脳が、すぐさま結論を弾き出した。
(いや、ロケットパンチ……っ!?)
オービタル・テイルズの肩からレーザーが放たれるよりも早く、哪吒の腕が飛び出した。
それに気付いたチトセは、機体を斜めに向けてレーザーを放つ反動で、その拳を躱す。
(馬鹿みたいに速い! それに……)
紙一重で凌いだそれを目で追うと、大きく弧を描いて空を飛び、自動的に哪吒の元へと帰っていく。
同時に、別の腕が再びオービタル・テイルズに向けて放たれた。
推力を一気に上げてそれを躱すと、チトセは飛んでいった乾坤圏の様子を窺う。
「使い切りでもナイし、再使用間隔も短い。多分誘導も可能で威力も上等……うーん、隙なし!」
随分と高性能な兵器だ。
猟兵たちの持つキャバリアには、これほど強力なものはないだろう。
「それならば、シンプルなアンサーネ。全部叩き斬ればイイ!」
啖呵を切ると共に、チトセは光刃を抜き放った。
音速を越えて自身へと向かってくる拳を切り払うと、鈍い音と共に弾かれた拳が哪吒の元へと帰る。
グリントから腕部、そして操縦桿を通してチトセの手にまで、鈍く重い衝撃が伝わった。
エネルギーで出来た刀身で、実体を持つ拳を切ったのに、この手応え。
それに寸断することも、できていない。
(……って、こんなの何度も弾いてたら、機体が持たナイ!)
チトセの判断は早い。
即刻リミッターを外し、機体の動力をフル回転させる。
「それなら、一発でぇッ!!」
元々近接特化型のキャバリアだけあって機動力の優れいていたオービタル・テイルズが、さらに加速する。
青光を残すようにして空を駆けるオービタル・テイルズ。
その動きを、哪吒のアイカメラが追う。
「速いな。だが、速いだけでは───」
言葉と共に放たれる何度目かになる哪吒の乾坤圏。
それに合わせて、オービタル・テイルズはその進路を哪吒へと真っ直ぐに向ける。
拳に自ら飛び込むなど、恐れも知らない行為だ。
同時に光刃の出力を上げてると、刀身が膨らんでいく。
グリントの巨大化な光刃に、オービタル・テイルズの推進力を乗せて、チトセは一気に振り抜いた。
オービタル・テイルズに向かって飛来する乾坤圏、堂々と立つ哪吒、そしてその先に立つ九竜神火罩まで重ねて斬るように。
「これは、受けねば九竜神火罩に支障が出るか」
乾坤圏は弾かれ、哪吒の身体をその光刃が通る。
巨大な一閃。
それが哪吒の身体に深い傷を残したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
ただでさえ強敵のキャバリア、それもかなり高位のモノですか。
こんなところで戦う羽目になるとは思いませんでしたが……!
馬鹿正直に挑むのは愚の骨頂、こちらもただでは済まないのは明白です。
ただ、相手が防衛を第一に考えているなら、防衛目標からそうは離れられない、と言うことでしょう。
だとするなら超長距離狙撃、これしかないですね。
幸い、市街戦。
身を隠す場所は多いし、向こうよりかは小回りは利く。
何とか竜巻を凌ぐ物陰さえどうにかできれば、あとは防衛に徹するにしろこちらを探しに飛んでくるにしろ、迅雷弾で狙い撃つ、と言ったところでしょうか。
撃墜は望めずとも、かき回すことくらいは出来る筈です……!
●迅雷、穿つ
周囲には、街を飲み込むほどの巨大な火炎竜巻。
辺りで建物の焼ける匂いが、やけに鼻についた。
敵は、相当高位のオブリビオンオマシン。
正面からバカ正直に挑むのは愚の骨頂である。
(とは思っていたのですけど、ここまで強力とは……)
建物の影に隠れて打上台と哪吒の様子を窺うシャルロット・クリスティア(弾痕・f00330)は、その火力を見て眉を顰めた。
建業の都ごと焼きかねない熱と風が、シャルロットの前に渦巻いている。
近付いて攻撃するためには、この火炎竜巻の間を縫って進む必要がある。
生身で進むにはあまりに危険なこの場所を、だ。
(ただ、相手が防衛を第一に考えているなら、防衛目標からそうは離れられない、ということでしょう)
哪吒は、九竜神火罩を守るように立ったまま、猟兵たちの猛攻に対処している。
時折、超高速で移動して攻撃を仕掛けることもあるが、九竜神火罩を守るため必ず発射台へと戻るのだ。
だとするなら───。
(───超長距離狙撃。これしかないですね)
そうと決まればシャルロットの判断は早い。
シャルロットの道を遮る火炎竜巻に背を向けて、周囲を見渡す。
周りよりも高く作られた関所を見つけると、建物の屋根伝いに駆け出した。
藁葺き屋根の民家から、石造りの関所へと飛び移ると、さらにその最上部へと身軽に駆け上がっていく。
関所の物見台にたどり着いたシャルロットは、手早く魔導銃を固定し、スコープで哪吒の様子を確認。
他の猟兵たちと戦っているのが見えると、魔導銃に術式弾を装填した。
(流石にこれだけで撃墜は望めないでしょうけど……)
哪吒をスコープの中央に捉えると、深く息を吐く。
シャルロットと哪吒との距離はおおよそ10キロメートル。
哪吒が5メートルの大きさがあるから辛うじて見えるほど、塔の上に登ることで辛うじて斜線が通るほど、遠い距離だ。
(大丈夫、この距離の狙撃は初めてではないですから)
まずは落ち着くために深呼吸すると、次第に呼吸を小さくしていく。
身体の揺れを止めるためだ。
両目でスコープを覗き、じっくりと待ち、それから数十秒。
十分に揺れが収まったのを確認すると、改めてスコープで哪吒を捉える。
哪吒の動きの速さは人智を超えたものだが、それでも必ず小さな隙があった。
トリガーに指を添えて、リズムを測るシャルロット。
そうして猟兵たちと戦うために空を飛び回る哪吒が、乾坤圏を放とうと動きを止めたそのとき、シャルロットは静かにトリガーを弾いた。
単発仕様に切り替えられた機関銃から、雷光が放たれる。
弾丸は風を切り、空を切り、乾坤圏を放つために構えられた哪吒の腕部ユニット、その関節部に吸い込まれるように当たり、吹き飛ばした。
数瞬遅れて、術式弾の発動による轟音と衝撃が、シャルロットと哪吒の間を奔る。
(よし、腕一本……って、六本もあるじゃないですか!)
着弾を確認すると同時に、シャルロットは機関銃を抱えて塔から飛び降りた。
スコープで覗き込んだ10キロメートル先で、哪吒と目が合ったように感じたからだ。
圧倒的強者の放つ重圧、それを感じ取れるだけの力量が、シャルロットにはある。
シャルロットが塔から降りて着地し、影に隠れるまでの数秒の間に10キロメートルの距離を詰めて、熱波を放ちながら塔殴り砕いた哪吒が、その証明だろう。
「……っ!!?」
心臓が飛び出るかと思うほど驚きつつも、慌てて口を塞ぎ、音ひとつ立てないシャルロット。
哪吒は手応えがなかったことを不思議そうにしながらも、九竜神火罩を守るために来たときと同じように2秒程度で元の場所まで戻った。
上空の熱波が去ったのを確認にすると、影から飛び出して走り始めるシャルロット。
(こうやってかき回すことくらいは……!)
腕一本を失った哪吒と猟兵たちの戦いを遠巻きに確認しながら、次の狙撃ポイントを探すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エミリア・ジェフティー
さすがにアレを打ち上げられるのは洒落にならないですね…
ここは止めさせてもらいますよ
機体に備わった【環境耐性】で先制攻撃の高熱にはある程度耐えれますが…
さすがにこれだけでは凌げないですね
念動球で機体を覆いそのエネルギーで熱を軽減
センサーで収集した情報に超感覚、【瞬間思考力】を総動員して敵の攻撃を【見切り】、建造物等の【地形の利用】もして回避行動をしながら衛星兵器へ接近
火炎の速度では捉えられない
機体本体で止めなければならない
そう判断させて一瞬でも竜巻を途切れさせて
その隙をついてシステムを起動
私や機体の行動も、機体が起こす事象も全て最大に加速する状態よ
950倍速の散弾砲の掃射…たらふく喰らいなさい!
●たったひとつの答え
エミリア・ジェフティー(AnotherAnswer・f30193)の脳裏に浮かぶのは、飛行機ひとつ飛ぶことのできないクロムキャバリアの空。
もしあの攻撃衛星が、九竜神火罩が打ち上げられてしまえば、この封神武侠界の空もクロムキャバリア同様に静かなものになるか、それに匹敵するほどの被害が地上に出るだろう。
(さすがにアレを打ち上げられるのは洒落にならないですね……)
汎用性の高い試作キャバリア、セシャートの乗ったエミリアはいくらか先に聳え立つ発射台を見上げて、それから哪吒の様子を窺う。
6本の腕のうち二本を組んで堂々と立つその姿には、強さへの自信と、必ず目的を達するという信念が表れていた。
だが、エミリアもそれを許すつもりはないのだ。
「ここは止めさせてもらいますよ」
つまりは、信念のぶつかり合いになる。
まず仕掛けたのは、セシャートの接近をいち早く察知した哪吒だ。
いくつもの巨大火炎竜巻が発生し、建業の都ごとエミリアの駆るセシャートを包み込む。
高温に包まれて機体表面温度を示すインジケータは針が折れんばかりに周り出し、強風で機体が激しく揺れた。
地に足をつけていなければ飛ばされてしまいそうなこの状況だが、じっとしていては熱を受け続けることになる。
「うわっ、熱っっ! これ……さすがに機体の環境耐性だけでは凌げないですね」
コックピット内の温度も上がり続け、中はさながら蒸し風呂だ。
毛先の触れる頬で、タイトなPLUSスーツの内側で、汗が吹き出ているのがエミリア自身にもよく分かった。
機体へのダメージを考えても、自身の消耗を考えても、長くこの空間にいるわけには行かない。
そう考えると、エミリアは精神を集中させる。
作るのだ、この機体を守る空間を。
そうしているうちに、機体の温度や揺れが徐々に落ち着いていく。
セシャートがエミリアの超能力で作られた念動球に包まれたからだ。
火炎竜巻の影響をある程度緩和し、、石造りの砦の影へと機体を滑り込ませる。
「ここから飛び出して、2ブロック前進、すぐに右に曲がって……」
外から見た砦や街の作り、そして記憶していた哪吒の位置を重ね合わせるエミリア。
哪吒の元へとたどり着くための道の多くは、火炎竜巻で塞がれている。
それを躱して進む経路を瞬時に組み立てるのは、エミリアの瞬間思考力が為せる技か。
やるべきことが決まると、エミリアはすぐさま行動を開始した。
推力を上げ、けれど頭を上げず、水平飛行で建物の間をすり抜けるようにして前へ。
エミリアの動きに気付いた哪吒が火炎竜巻を増やしてそれを遮ろうとするが、最初に見た瞬間に把握していた街の構造を利用してすり抜けていく。
このまま進めば、セシャートはそう遠くなく哪吒の前にたどり着くだろう。
(とはいえ、哪吒のあの動き。あの火力。普通に戦ったら痛い目に合いますね)
エミリアの視線が、機体に内蔵された〝システム〟の切り替えスイッチに向かう。
一度大きく呼吸をすると、システムの起動シークエンスに移った。
『登場者への重大な健康被害が予想されます』
内部ライトが赤く染まり、機体のモニターに大きな警告が表示されている。
もちろん何度も使いたいものではないが、敵の強大さを考えると飲むべきリスクだ。
「───承認っ!」
哪吒の前に飛び出しながら、最後のボタンを押す。
その瞬間に、エミリアの世界が変わった。
全てがほとんど静止したかのようにゆっくりと動くなかで、エミリアとセシャートだけが、普段通りに動いている。
正確には、エミリアとセシャートの思考と感覚、それに行動が超加速しているのだが───。
「うっ、ぐうぅぅっ!!」
機体が少し動くだけで、強烈な負荷がエミリアに掛かる。
尋常ではない速度で、慣性力を持たぬかのように動くのだから、当然だ。
肺の空気が全て吐き出され、胃が絞られる。
それでも、歯を食いしばって眼前の哪吒に食らいつくのだ。
哪吒が限界を越えた挙動をするセシャートから距離を取るために飛び去ろうとするが、それを逃すエミリアではない。
手足のスラスターで姿勢を整えると、狙いを付ける必要もない距離で、肩部ユニットの自動散弾砲を哪吒に向けた。
「950倍速の散弾砲の掃射……たらふく喰らいなさい!」
幾つもの音が重なって出来た轟音が、建業の空に響く。
放たれた散弾は数百か、数千か。
「吾が装甲を砕くか───」
近距離で放たれた高密度の弾丸は、哪吒のオーバーフレームに大きな傷を残すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
儚・ソラ
※アドリブ歓迎
あれの危険性は僕達が一番知っています。
だから、どんな強敵であろうと立ち向かわなきゃけいないんです。
【虚無の肯定】を使用して、九竜神火罩を背にできる位置取りをします。
敵の攻撃には多目的射出機を犠牲にしましょう。
使い捨て前提の武装ですから問題ありません。
ソムニウムには不得手が多いんですよ。
例えば、隙の無い飽和攻撃をするような相手には近づけないでしょう。
でも、そんな戦い方ではソムニウムと一緒に九竜神火罩を巻き込んでしまいませんか?
勝てなくても膠着状態を作れればいい。戦ってるのは僕一人じゃないんですから。
……情けない話ですけどね。
●迫る
(あれの危険性は、僕達キャバリア乗りが一番知っています)
建業の都に置かれた発射台にて、すでに打ち上げ準備がされている攻撃衛星『九竜神火罩』を見上げて、儚・ソラ(リベリー21・f30723)がキャバリア・ソムニウムを駆る。
その衛星の打ち上げを阻止せんとする猟兵たちと、九竜神火罩を守る哪吒の戦いは、すでに始まっている。
こんな状況だからこそ、ソラは、ソムニウムは、その隠密性を高めることで九竜神火罩のすぐ近くにまで迫ることができた。
ここまで近づけば、分かる。
哪吒の異様な強さが。
強力な兵器で武装したオブリビオンマシンの強大さが。
だが、それがなんだというのだ。
もし九竜神火罩が打ち上げられてしまったら、封神武侠界の空がクロムキャバリアのように飛べない空になるか、それとも、それに類する大虐殺が起こるか……。
(だから、どんな強敵であろうと立ち向かわなきゃいけないんです)
たとえ、戦闘力が高くないキャバリアを使っていたとしても、だ。
心の炉に火を入れて、ソラはソムニウムの動力を高めた。
哪吒と九竜神火罩の間に飛び込むと、腰の多目的射出機から誘導弾を打ち出すソムニウム。
直後に、哪吒が誘導弾に超高速で反応し、金蛟剪で切り払った。
「この距離まで吾が気付かぬとはな」
凄まじい速度でソムニウムへと肉薄すると、金蛟剪をソムニウムに突き出す。
もしソラが油断していたら、次の瞬間には、オーバーフレームとアンダーフレームが別れることになるだろう。
咄嗟に、パージした多目的射出機を前方に投げ出し、同時にスラスターを噴かせて、射出機が金蛟剪に切られて爆発すると同時に、後方に下がった。
「こんな奇襲にも反応するなんて……!」
ソムニウムが姿勢制御をしている間にも、哪吒は止まらない。
爆風の中を抜けて、ソムニウムを両断せんと、鋏を突き出して迫る。
「ソムニウムには不得手が多いんですよ」
そんな中で、そらがふと語りかけたのは、哪吒だ。
「自ら不得手を誇るのか? 自ら瑕疵を語るのか? 不可解な───」
哪吒が人間であればおそらく怪訝な顔をしていただろう。
目の前の相手は、自分が少し手をひねれば戦闘不能にできるのだから。
「いいえ、自分に出来ることに注力しようという話です」
だがそらは、落ち着いた声で語る。
「この場所では、乾坤圏や風火輪での攻撃はもちろん、その金蛟剪でソムニウムを、僕を斬ることもできないでしょう。大事な九竜神火罩にも、大きな傷が出来てしまいますから」
ソムニウムのすぐ後ろにあるのは、九竜神火罩だ。
「……理解した。吾を策に嵌めたか」
金蛟剪を持った一番上の一対の腕は、これ以上前に出せない。
その腕が邪魔で、下の腕ではソムニウムを打つことはできない。
「これも大したダメージは与えられないかもしれない。だけど膠着状態が作れれば、誰かがやってくれます。戦っているのは僕一人じゃないんですから。……情けない話ですけどね」
哪吒の背後から、他の猟兵の攻撃が迫る。
急いで腕を引かねばならない哪吒のボディに、単分子重斬刀の一撃が刻まれた。
大成功
🔵🔵🔵
アイオライト・セプテンバー
クロムキャバリア以外の世界にオブリビオンマシンが湧いて来るとはね
それも……あの忌まわしい攻撃衛星をこの世界の空にも打ち上げるって?
冗談じゃない
猟兵として初めてこの封神武侠界に来た時、山河を臨むこの世界の広い空を、心の底から綺麗だと感じたわ
もうこれ以上、青い世界で大きな顔をさせてやるものか!!
こちらがアドバンテージを得られるとすれば、奴には九竜神火罩という守護対象があること
打ち上げられれば終わりだけど、奴にとっても戦況のアキレス腱ってわけでしょ
まずは愛機【リベルタス】に装備されたホーミングレーザーので九竜神火罩を狙い、空から攻めるわ
守るなり、こちらに攻撃を向けるなり、多少でも奴の先制攻撃のタイミングを誘導出来るはず
オーバーロードとUC【バースト・モード】を使用し、愛機【リベルタス】の【リミッター解除】を敢行
最初から最大性能で行く
九竜神火罩を狙い注意を向けることで奴の攻撃のタイミングを掴み、この機体の【推力移動】能力と私の【空中戦】の経験
全てを動員して先制攻撃を【見切り】、反撃に転じて見せる
イオリ・カクトゥス
◎
連携等も歓迎
殲禍炎剣か……
空にあったら面倒だったけど、まだ打ち上げ前でセーフかな?
まぁ厄介そうな相手が守っているから、まともにやり合えば大変そうだけどね。
狙うのは敵の弱点、つまり九竜神火罩。
射程ギリギリの位置でジャイアントキャバリア『D-Ogre』を発射形態に移行させて、【エネルギー充填】
荷電粒子砲で狙いうつよ。
通常なら簡単に避けられるだろうし、発射形態だとこっちの動きは鈍くなる。
となれば、痛い反撃をくらうだろうけど、九竜神火罩を守るためには避けれられないよね?
【乱れ撃ち】でお見舞いしてあげよう。
反撃を受けたとしても、攻撃は止めずに九竜神火罩を狙い撃つ。
頑丈さには自信のある機体だからね。
【継戦能力】を生かして、少しでも敵にダメージを与えよう。
卑怯かもしれないけど……まぁ戦場だからね。
容赦はしないよ。
●仙界空域解放戦線
建業の都で戦闘が始まってから、いくらか経った頃だろうか。
いくつもの火炎竜巻に赤く染まった空を、蒼き軌跡が貫く。
「クロムキャバリア以外の世界にオブリビオンマシンが湧いて来るとはね。それも……あの忌まわしい攻撃衛星をこの世界の空にも打ち上げるって?」
専用機〝リベルタス〟を駆るアイオライト・セプテンバー(〝エアダスター〟・f29954)は、打ち上げ台へと真っ直ぐに向かいながら、打ち上げ準備のされている攻撃衛星『九竜神火罩』を見据える。
「冗談じゃない」
アイオライトの脳裏に浮かぶのは、殲禍炎剣によって支配されたクロムキャバリアの空。
誰一人として自由に舞うもののいない、死の空だ。
吐き捨てるように放ったその言葉には、煮えつくような怒りが満ちていた。
「落ち着いて、アイオライトさん。空にあったら面倒だったけど、打ち上げ前だからセーフだよ」
短波通信でアイオライトに声をかけたのは、イオリ・カクトゥス(Twin's・f30101)だ。
(流石に早いね……)
まるで弾丸のように空を飛ぶリベルタスを見上げながら、イオリは哪吒や九竜神火罩までの距離を確認した。
約5キロ。
リベルタスや哪吒の全力飛行であれば数秒かもしれないが、機動力で劣る〝D-Ogre〟ではそうはいかない。
それから、他の猟兵たちと戦う哪吒の強さが目に入る。
キャバリアに乗っているとはいえ、まともにやり合えば大変だろうと、すぐに分かった。
「D-Ogre、発射形態に移行。僕はここから長距離射撃をさせてもらおう」
四腕を持つジャイアントキャバリアが地面に身体を固定し、甲冑のようなその装甲から大きな銃身が現れる。
内蔵式荷電粒子砲〝タケミカヅチ〟だ。
さながらひとつの砲台と化したD-Ogreが、その銃口を哪吒へと向けた。
「猟兵よ。吾が目的、吾が炎の破滅、止められるものか」
周囲に展開する火炎竜巻を増やして猟兵たちへの牽制とする哪吒。
巻き込まれれば、キャバリアといえどただでは済まない熱量と風量だ。
「バースト・モード、起動!」
アイオライトは手早くリベルタスのリミッターを解除し、歯を食いしばった。
出力を上げたリベルタスはその機動力を活かし、火炎竜巻の間を縫うように飛んで哪吒へと肉薄する。
「猟兵として初めてこの封神武侠界に来た時、山河を臨むこの世界の広い空を、心の底から綺麗だと感じたわ。もうこれ以上、青い世界で大きな顔をさせてやるものか!!」
さらに速度を上げて、妨げるもののない空へと舞い上がるリベルタス。
その翼から放たれた光が螺旋を描き、放たれる。
「イオリ! 合わせなさい!!」
向かう先は、二本の腕を組んで猟兵たちを待ち受ける哪吒ではなく、発射まで秒読みの体勢に入った九竜神火罩だ。
「卑怯かもしれないけど……まぁ戦場だからね。容赦はしないよ」
D-Ogreのコックピットで照準を覗くイオリが、リベルタスのホーミングレーザーにタイミングを合わせてトリガーを引く。
砲身にぱりっと電気が走り、轟音と共に放たれた光。
ホーミングレーザーを纏うようにして、高エネルギーの塊〝タケミカヅチ〟が、発射台へとまっすぐに進む。
九竜神火罩を貫くかのように思えた瞬間に、割って入った哪吒。
振り上げた拳のひとつで、放たれた荷電粒子砲を殴りつける。
さらに胸部の装甲で、ホーミングレーザーを受けた。
弾かれたレーザーたちが、建業の都に降り注ぐ。
受けた部分が、とくに高エネルギーの荷電粒子砲を受けた拳が、高温になっているのか激しく赤熱して煙が立ち昇っているが、大きな損傷は見られない。
「威力は高い。が、吾を撃墜するには能わず」
効いていないと言わんばかりに哪吒が腕のひとつをリベルタスに向けると、その拳が飛び出した。
荷電粒子砲を一撃で霧散させるオブリビオンマシンの拳だ。
まともに当たれば、ただでは済まない。
「───速い、けど、これくらい……!」
リベルタスの光の翼が一層強く輝くと、速度を上げてその攻撃を躱す。
リミッター解除によって高めている反応速度が為せる動きだ。
強いGがアイオライトの身体に掛かり、身体中が痛む。
「射撃を続けるよ。アイオライトさんも巻き込まれないようにね」
その間にも、イオリは荷電粒子砲を九竜神火罩に向けて放つ。
その全てを哪吒は殴り、蹴り、弾いた。
(エネルギーはまだ保つけど……)
単独で、あの守りを抜ける気がしない。
実際哪吒は、こうしてD-Ogreの攻撃を捌きながら、火炎竜巻をD-Ogreへと向けている。
五キロの距離が埋まるまで、そう長くはないだろう。
「とんでもない硬さだわ。けど、わざわざ拳で受けるということはッ!!」
限界を超えた速度で肉薄したリベルタス。
荷電粒子砲を弾くために大きく振った腕のすぐ下、脇腹に向けて、リベルタスがプラズマエネルギーブレード〝スラッシュ〟による斬撃を仕掛ける。
だが、その剣先は装甲を貫くには至らなかった。
「………ッ!!!」
上腕を後ろから回して、金蛟剪の切っ先でブレードを受け止めていたのだ。
スラッシュを引いて、一度距離を取るリベルタス。
その攻撃の隙を埋めるように、追撃を防ぐように、再びタケミカヅチが哪吒を襲う。
閃光が哪吒の腕のひとつを穿ち、大きく損傷させた。
「いけるよ、アイオライトさん。このまま当てていけば倒せる───」
イオリがそう言った瞬間である。
D-Ogreが、巨大な火炎竜巻に囚われた。
「イオリ! 生きてるの!? イオリ!!」
視界の端で、D-Ogreが炎に包まれている。
元々、血のように紅かった装甲が、さらに赤熱している。
表面温度はもちろん、コックピットの内部も相当な高温になっているはずだ。
通信機能に支障をきたしたのか、イオリからの応答もない。
反動制御のために地面についていた四腕が機能不全を起こして、D-Ogreの機体が傾く。
だがイオリを助けに行くことは、今のアイオライトにはできない。
眼前の哪吒が、それをさせないからだ。
「退きなさい! 退かないというなら!」
ビームライフルを哪吒に向けて、エネルギーを収束するリベルタス。
狙うは、胴体。
空を舞いながら、損傷した腕ではカバーしづらい角度を模索して、撃ち抜いていく。
幾度目かの射撃のときに、哪吒のガードが間に合わず、ついに胴体に直撃した。
他の猟兵たちの攻撃もあって、哪吒の腕は次々に機能不全を起こしていたのだ。
「これでぇ!! 落ちなさい!!」
再び武器をスラッシュへと持ち替えて、ダメージを受けてよろめいた哪吒へと斬りかかるリベルタス。
だが同時に、哪吒も無事な腕をリベルタスに向ける。
「覚悟せよ、この距離ならば外さない」
まばたきをするような僅かな間。
プラズマエネルギーブレードが哪吒の胴体に大きな傷を作ると同時に、乾坤圏がリベルタスの肩から胸にかけてを大きく抉った。
両者の機体で、大きな爆発が起きる。
「ぐぅッッッ!!」
飛行機能が低下し、高度を落としていくリベルタスと哪吒。
着地もまともに出来ず、リベルタスは倒れ込んだ。
「痛っ、まだ、終わってないってのに……!」
頭を振って、痛みで飛びそうになった意識を取り戻すアイオライト。
砕けたモニターの破片が刺さって、体中のいたるところが痛む。
落下の衝撃で強く打ち付けた関節も、強い違和感がある。
露出したコックピットから、空が見えた。
それから、すぐ近くに哪吒が倒れているのも見える。
「猟兵よ、その力は砕けた。もう休むが良い。だが吾も、ここまでか」
哪吒は立ち上がろうとするが、リベルタスによって回路が切断されていて、下半身がまともに動かず、立ち上がることもできない。
「吾は哪吒。殲禍炎剣の代行者。せめて、九竜神火罩の打ち上げだけでも───」
哪吒が九竜神火罩へ手を向けると同時に、衛星の打ち上げが始まった。
哪吒が砕け散ると同時に、噴き出す炎、上昇し始める衛星。
世界を滅ぼす可能性のある兵器が、自らを最も活かせる場所へ向けて行こうとしている。
「まっ、待ちなさい!! それだけは許さない!!」
露出したコックピットから直接空を見上げて、手を伸ばすアイオライト。
だが突然、心臓が握られたかのように痛み、目が霞む。
バースト・モードの反動だろうか。
すっかり機能停止したリベルタスも全く動かない。
離れていく九竜神火罩に追いすがることが、できない。
「空は、誰にも───」
掠れた声を絞り出して、手を伸ばしたその先で、九竜神火罩は爆発した。
光が、攻撃衛星を貫いていたのだ。
「あれはタケミカヅチ! イオリ!」
先程まで火炎竜巻に包まれていた場所に、座ったような姿勢のままいる焼け焦げた紅い装甲。
D-Ogreは、健在だったのだ。
尤も、荷電粒子砲は焼き付いて、砲身が曲がってしまったが。
「───ターゲットを破壊したよ。熱に強い機体でよかった」
通信機能が回復したようで、D-Ogreからの声が聞こえる。
「スゥーーー……無事ならさっさと返事しなさいよね、イオリ!! 馬鹿!! 帰ったら一杯奢りなさいよ!!」
通信装置に向けて叫ぶアイオライト。
「ごめん、高温でいろいろ壊れちゃって……。ラーメンだよね?」
「他に何があんのよ」
自由を取り戻した建業の空は、雲ひとつなく、どこまでも青が続いていた。
大成功
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