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殲神封神大戦⑬〜偏食仙人達の宴

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●桃源郷
 いにしえの仙界・紫霄宫(しあいきゅう)。
 その入り口には、桃源郷と呼ばれる区域があった。
 ひらり、ひらりと舞い踊る桃の花弁。
 ふわり、ふわりと青空に漂うのは、真っ白な浮雲。
 そこは常に変わらず、うららかな春のような気候で、大地には色鮮やかな花が咲き誇っていた。

 ぽかぽかの日差しに照らされた桃源郷は、賑やかな声で溢れていた。
 声の出処は桃源郷の花園の中央に建つ、絢爛豪華な東屋からだった。
 そこには贅沢な装飾が施された丸テーブルが多数配置され、多種多様な料理が並べられていた。
 そう、この日は仙人達の宴。
 花園では天女の羽衣を身に纏う眉目秀麗な女性たちが舞を踊り、それを眺めつつ大食漢の仙人たちが宴の料理に舌鼓を打ち、桃源郷秘伝の霊酒を浴びるように呑む。

 世界がカタストロフの危機に瀕しているというのに、仙人はいい気なもんだな。
 何も知らない者はそう思うだろう。
 だが、この宴は封神武侠界を救うために仙人達が講じた、深謀遠慮の策だったのである。

●グリモアベース
「皆さん、今すぐ桃源郷の宴に参加してください!」
 紡木原・慄(f32493)は、慌てた様子で依頼の詳細を伝える。

 紫霄宫の入り口に位置する桃源郷で仙人達が宴を開いている。
 目的は張角を守る三皇のうちの一体、封神仙女『妲己』を弱体化させるためである。
 張角が潜伏する紫霄宫には、陰の気が満ちている。
 陰の気は『妲己』の妖力の源泉。
 仙人たちは宴会を大いに愉しむことで陽の気を集めれば、陰の気を弱めることができると考えたのだろう。
 ところが、宴の準備には敵の間者が紛れ込んでいた。仙人たちは間者によって仕込まれた毒入り料理をたらふく食べ、全員無きものにされてしまうというのだ。

 慄は予知の内容を話し終えると、眉をひそめ、ため息をつく。
「要するに陰陽説ですね。仙人たちを守るために宴を中止にするのは簡単ですが、それこそ敵の思う壺です。宴会が中止になれば桃源郷の仙人たちは意気消沈し、逆に陰の気が集まってしまいます。なので、桃源郷の宴を私たちの力で無事に成功させることが最善というわけです。そのためには、仙人たちが毒が混入された料理を食べるのを阻止する必要があるわけですが……」
 慄は一度言葉を区切り、申し訳なさそうな顔をして切り出す。
「毒入り料理を発見したら皆さんが速やかに食べてください。毒は仙人を殺害するために調合されたものなので、猟兵が食べても命を落とすことはありません。他の手段を講じてもいいですが、その際には隠密行動を心がけてください」

 猟兵たちはあくまでも宴に招かれた客。
 不審な行動をし、仙人達の宴に水を差すような行為は極力控えなければならない。
 猟兵が毒入り料理を何食わぬ顔で食べてしまうのが、一番手っ取り早い手段だが、毒は猟兵にとって完全に無害というわけではない。体質によっては軽度な副作用が生じるおそれもある。
 毒を食べるのが不安ならば他の手段で仙人たちが毒入り料理を食べるのを阻止してもよいだろう。
 その場合は仙人たちに悟られないように、隠密行動を心がける必要がある。

「仙人たちは変わった人が多いですが、皆さんを歓迎してくれます。宴を楽しんできてくださいね」
 宴が盛り上がれば陽の気が強まる。猟兵たちが宴を楽しむことも大切なのだと、慄は最後に言い添えると、猟兵たちを桃源郷へと送り出すのだった。

●賑やかな仙人たち
 猟兵たちが桃源郷に到着すると、仙人達はテーブルに着き、酒宴が始まろうとした。

「久しぶりやな、饅頭仙人。あんた、相変わらず饅頭ばかり食うとるんか? 顔が饅頭みたいになってきとるやん」
「お主に言われたくないわい、チャーハンばかり食っとる炒飯仙人よ」
「はははっ、二人は仲良しだなぁ。まあ、二人とも拉麺でも食べて落ち着きなよ」
「おっ、拉麺仙人、久しぶりやん。相変わらず、拉麺しか食わへんのか?」
「まあね。拉麺は奥が深いからね。100年食べ続けても飽きないさ」
「ほぅ、炒飯が浅いと申すのか、聞き捨てならんのう」
「そうやそうや、饅頭のほうが奥が深いで!」
 饅頭仙人、炒飯仙人、拉麺仙人……おかしな名前だが、もちろん、それぞれにつけられた通り名である。
「お前らうるせーよ。酒がまずくなるじゃねぇか」
「なんや、酒樽仙人のおっちゃんかいな。おっちゃんは、酒とツマミだけやろ。栄養偏るで!」
 髭面イケオジの酒樽仙人に、関西弁少女の炒飯仙人がツッコむ。
 ちなみに福々しい老人が饅頭仙人で、拉麺仙人は爽やか系イケメンの姿をしている。

 他にも回鍋肉仙人、八宝菜仙人、餃子仙人など大勢の仙人が大集合していた。仙人たちは見た目も性格も様々。老若男女が入り乱れての大宴会が開幕する。
 しかし、この一時間後、宴は阿鼻叫喚に包まれ、地獄絵図の様相を呈する。
 猟兵たちは仙人たちが楽しい宴を過ごせるように、毒入り料理の排除に動き出すのだった。


刈井留羽
 こんにちは。刈井留羽です。お寒い中、お越し下さりありがとうございます。
 本作は戦争イベント『殲神封神大戦』の戦争シナリオ(一章完結)となります。シナリオの補足情報は以下の通りです。

●目的
 桃源郷での宴を無事に成功させること。
 宴の料理の一部に毒が仕込まれているので、仙人が毒を食べるのを阻止してください。

●舞台
 いにしえの仙界「紫霄宫(しあいきゅう)」の入口にある桃源郷です。
 枯れない花が咲き誇る花園。その中央に絢爛豪華な東屋が建っています。

●料理
 封神武侠界のアイテムにある料理の数々が大皿に盛られ、所狭しと並べられています。
 料理が足りない場合は、給仕を担当する羽衣人の女性たちが持ってきてくれます。

●プレイングボーナス
 ①毒入りの料理を見つけ出し、何食わぬ顔で食べること。
  毒は仙人を殺すために調合されたものなので、幸い、猟兵が食べても死ぬことはありません。猟兵ならば味覚や嗅覚などで検知できるような毒です。

 ②宴を盛り上げるような行動を取ること。
  仙人たちを楽しませれば陽の気が集まりやすくなります。

 補足は以上です。
 シナリオ公開後、すぐにプレイング受付開始します。
 プレイングの受付状況は随時タグでお知らせします。
 既に⑬は必要成功数に到達しているようですが、青丸数で貢献できればと思い、滑り込みで出させていただきました。よろしくお願い致します。
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第1章 日常 『毒酒の宴』

POW   :    頑健さに任せ、多くの毒入り料理を食べる。

SPD   :    仙人達の前に並んだ毒入り料理を無害なものにすり替える。

WIZ   :    仙術や霊薬で毒の作用を中和しながら料理を食べる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

栗花落・澪
うーん……正直僕としては健康を考慮して偏食もなんとかしたいところだけど
今回はね、水差さずに黙っておきましょう

辛いのは苦手だけどそれ以外ならなんでも食べるよ
お茶かジュースがあればありがたいんだけど

勿論宴に参加させていただくからにはタダでとは言わないよ
盛り上げ役として僕から舞踏を披露させてください

ご飯よりも僕に注目してもらえるように
優雅な【歌唱】と【ダンス】で【誘惑】
その間に演出も兼ねて【指定UC】
【破魔】の【浄化】で完全とはいかずとも
少しでも広範囲の料理の毒を緩和できれば

ご静聴ありがとうございます
はー動いたらお腹空いたー!
あ、その料理美味しそう、もらってもいいですかー?

あとは【演技】で誤魔化す!



 桃源郷の花園に降り立った栗花落・澪(f03165)を出迎えたのは、給仕担当の羽衣人のお姉さんだった。
「桃源郷へようこそ! まずはお飲み物をどうぞ♪」
「あの僕、未成年なので……」
「あっ、すみません。お酒はダメですよね? それではこちらをどうぞ♪」
 お姉さんが差し出したのは、桃源郷で栽培されている最高級茶葉を使った特製タピオカミルクティー。お礼を言って受け取り、澪はご馳走が並ぶ東屋に向かおうとすると、花園の舞台で舞い踊る羽衣人の女性たちが視界に入ってくる。
(あれなら僕も……)
 澪はふと思いつき、先程のお姉さんに声をかけ、歌と舞を披露したいと申し出るのだった。

 大地を埋め尽くすように咲き誇る、色鮮やかな花々。
 爽やかな春風がそよそよと吹き、羽衣を纏う天女たちがふわふわと舞い踊る。
 そして、澪は天女たちの中央で恭しくお辞儀すると、にこやかな笑みを浮かべ歌い出す。

 波紋のように広がる歌声。すると賑やかだった東屋がシンと静まり返る。
 穏やかな琵琶と箏(こと)の音色に映える、清く澄んだ歌声。
 その歌唱は中華風の抑揚をつけたアレンジが施され、演奏に寄り添うように響き渡る。
 
 水面をたゆたう白鳥の如く優雅な舞。
 それとは対照的に、澪の琥珀色の瞳は妖艶な色を湛え、歌声には扇情的な響きが混じり、聴衆を魅了していく。
 
 歌声と舞踏。そして、見る者の心を揺らめかせ、惑わす寵姫の色香。
 澪はそれらを存分に発揮して仙人たちの目を釘付けにし、料理に伸びる手を止めてしまう。
 そして、澪はユーベルコード「心に灯す希望の輝き(シエル・ド・レスポワール)」を発動。その瞬間、虹色の光沢を放つ極彩色の花弁が虚空を舞い踊り、魔を滅ぼす浄化の光が粉雪のように降り注ぐ――。
 すると、琵琶と箏の演奏が荒々しいものへと変化し、それに呼応して澪は情熱的な想いを歌い上げ、激しく踊り狂う。その姿は天上世界に侵入した悪魔との死闘を繰り広げる天界の騎士を連想させた。
 そして、舞台の盛り上がりが最高潮に達したとき、突然演奏が止まり、澪はガクリ膝を突き、花園の上に倒れ伏す。
 命がけで戦い、天界を守った天界の騎士。これにて澪の特別ステージは終幕だった。
「ご静聴ありがとうございました!」
 カーテンコール。澪が聴衆の仙人たちに頭を下げると、万雷の拍手が鳴り響き、仙人たち前の料理に、破魔の力を帯びた浄化の光が吸い込まれていくのだった。

「お疲れさん、キミ、歌も踊りも最高だったよ。こっちに来なよ、美味しい点心がたくさんあるからさ!」 
 ステージを降りた澪を待ち構えていたのは、澪のパフォーマンスに感銘を受けたという、ヲタク風の容姿をした3人の仙人だった。
 彼らは点心仙人と名乗り、自分たちのテーブルに澪を強引に連れて行ってしまう。
 案内されたテーブルには大量の点心。見た目は美味しそうだが、周囲には毒の匂いが漂い、毒入り料理がいくつも混在しているのがわかる。
(これが毒入り料理か……さっきので多少は浄化されてるから大丈夫だよね)
 澪は意を決し、点心仙人たちのテーブルに着く。
「あ、美味しそう、その焼売、もらってもいいですかー?]
 同席の仙人が毒入り焼売をつまもうとしていることに気づき、澪は慌てて取り上げて口に入れる。
(美味しい! でもちょっと舌がピリピリするかな……浄化されてるからなんとか食べられるけど……パクパク)
 顔が引きつりそうになるが、演技力でカバー。澪は満面の笑顔で食べ続ける。
「あっ、そっちの春巻きも美味しそう。いただきます!」
(ふぅ、危なかった……皮がパリパリして美味しいけど、これも毒が入ってるんだよね……もぐもぐ、ごっくん)
「えっと、そっちの小籠包ももらっていいですか? それからその蒸し餅も!」 
 もぐもぐ。ぱくぱく。むしゃむしゃ。澪はひたすら笑顔で毒入り点心を食べ続け、点心仙人たちの命を守り抜くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎

仙人さん達が危険だ
誰一人犠牲にならないように…俺が食べきる!
いや、別に「色々な料理が食べられそうだなー。楽しみだなぁ」とか、そんな事は思ってないです!

毒に関しては嗅覚を意識した【野生の勘】で敏感に察知し【早業】で仙人達が手に取るより早く料理を入手
【毒耐性】持ってるのもあるし俺自身は問題ないだろう
【早食い】+【大食い】で食べまくる!

仙人達はそれぞれ好きな料理というものがあるようだ
各自で主食は決まっているといえるだろう
それなら軽く摘まめる物をUCで作成しよう

「主食のお供に」という感じで配り、万一毒入りを食べてしまった方も
このおつまみ等に付与されている解毒効果でこっそり体内から治療する



 東屋の裏手に作られた小屋。
 厨房として使われているその建物の一角を借り、鳳凰院・ひりょ(f27864)は料理の準備をしていた。
 調理台に並べた食材は小麦粉、卵、長ネギ、紅生姜、揚げ玉、鰹節、昆布、水、食用油。そしてメインの具材はタコ。現地調達できない食材や調理器具は事前に購入して持ち込み、準備万端だ。
「さあ、作ろうか!」
 ひりょはゆっくりと息を吐き出すと、ユーベルコード『風巻殘雲(マダタベルノデスカ)』を発動。まばゆい光とともに食材が空中を乱舞し、またたく間にこんがりと焼けた「たこ焼き」が完成する。
 綺麗な球形に整えられたたこ焼き。外側はカリカリ、中はトロリ。ひりょは一つ味見して大きくうなずく。
「うん、ちゃんとできてる……あとは仙人さんたちが、これを食べてくれるといいんだけど……」
 このたこ焼きには「風巻殘雲」で解毒効果を付与しておいた。一口でも食べてもらえれば、たとえ毒入り料理を食べてしまってもすぐに治療できるはずだ。
 だが、これはあくまでも「保険」に過ぎない。
 ひりょは容器に入れた大量のたこ焼きを携え、「戦場」に出陣するのだった。

(回鍋肉、青椒肉絲、麻婆豆腐、油淋鶏……どれも毒入りと思えないほど美味いな)
 ひりょは仙人たちのテーブルを巡回してたこ焼きを配りながら、毒入り料理を探していた。
 予想以上に毒入り料理は多かったが、大食漢のひりょには腹ごなし程度。宴のご馳走を普通に楽しんでもいた。
(もぐもぐ……そういえば副作用があるかもって聞いてたけど、大丈夫そうだな。この調子ならまだまだ食えるぞ!)
 体に異変が起こらないことに安堵し、ひりょは桃源郷の料理を思う存分堪能し、胃袋を満たしていく。

「ふふっ、次は何の料理を食べられるか楽しみだなぁ……ん? この匂いは……」
 大量の毒料理だ。野生の勘が告げていた。
 慌てて駆けつけると、そのテーブル席には仲良し4人組の仙人が座っていた。
 ひりょは仙人たちに丁重に挨拶をし、たこ焼きを配っていく。
「美味い。これは変わった饅頭だのう。どれ、もう一つ……」
「これめっちゃ美味しいやん。炒飯の具にも使えそうやで!」
「いや、これは拉麺のトッピングにぴったりだよ。キミ、これどうやって作ったんだい?」
「おめえ、いい酒のツマミをもってきたじゃねぇか。褒めてやるぜ!」
 仙人たちの評価は上々。多少体内に毒を入れてしまったかもしれないが、これで大丈夫だろう。
 ひりょはホッと息をつく。すると、唐突にひりょの腹から飢えた獣の鳴き声が発せられる。
 ――グルルルル!!
「威勢がいい腹の音じゃのう。わしの饅頭でよければ思う存分食べるがよい」
「ウチの黄金炒飯も食べてもええで!」
「僕の担々麺も食べなよ。饅頭と炒飯だけじゃ、口の中パサパサになるだろ?」
「ありがとうございます! ではお言葉に甘えて……これと、これと、これと……」
「あんた、どんだけ食べんねん! 少しは遠慮せんかい!」
 毒入り料理を手当たり次第に自分の前に置いていくひりょに、炒飯仙人の強烈なツッコミが飛んでくる。もちろん冗談である。すぐにどっと笑いが起こる。
「それでは、いただきます!」
 仙人たちが笑顔で見守る中、ひりょは本領を発揮し、猛然と毒入り料理を口に運んでいく。
「おお、すげー食いっぷりだな。酒の肴に丁度いいぜ!」
「わしらはたこ焼き饅頭でも、食うとするかの」
「そやな、たまには他のもんも食べんとな!」
「僕も賛成です。たまには箸休めもしないといけませんしね」
 客人の食べっぷりに圧倒された偏食仙人たちは、解毒作用のあるたこ焼きをちまちまと食べ続け、ひりょは毒入り料理を手当り次第に胃袋に詰め込んでいく。
 こうしてひりょはテーブルの上の毒入り料理を食べ尽くし、4人の偏食仙人たちの危機を救うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
仙人ってのは悟りを開いたものがなる……みたいな印象があったんだが、相当な偏食である此処の仙人達はどうなんだろう。いや、これはこれで寧ろある種の境地に到達していると言えるかもしれない
だが、そんな仙人であっても毒には勝てなかったと。放っておく訳にもいかないし、お邪魔させてもらうとしよう

体力はある方なので毒入り料理をどんどん食べていこう
拘りのある仙人が用意した料理だけあってか、どれも非常に美味い
折角だし、それぞれが拘った点でも聞いてみようか。……あ、不用意に聞いたけど、これはひょっとして長くなる奴?
いや、確かに興味深い話だし、なんなら真似できる所は真似したいまであるが
……うん、色々な意味でご馳走様だ



 桃源郷に駆けつけた夜刀神・鏡介(f28122)は宴の光景に目を見張る。
(仙人ってのは悟りを開いたものがなる……みたいな印象があったんだが、あんなに大勢いるのか。それなら相当数の料理に毒が混入されていると考えるべきだろうな……)
 それなら一刻の猶予もない。鏡介は仙人たちに挨拶をして回りながら、テーブルに並ぶ料理に視線を走らせる。
(一見して普通の料理でも、殺気がここまで漂ってくる……案外わかりやすいものだな)
 鏡介は殺気を頼りに毒入り料理をピックアップし、ゲスト用に設けられたテーブル席に並べていくと、いつの間にか中華料理のフルコースが完成していた。
(他の猟兵も頑張ってるようだし、俺もどんどん食べていかないとな……)
 鏡介は椅子に腰掛け、黙々と料理を食べ続ける。
「どれも非常に美味いな……こうなると作り方が気になるところだが……」
 目移りするような料理の数々。どれも作り手のこだわりを感じさせる美味しさで、鏡介は自然と興味をそそられる。
 すると、ちょうどテーブルのそばを通りかかった優男風の仙人が声をかけてくる。
「おや、キミが今食べてるのは油淋鶏じゃないか?」
 仙人は嬉々とした表情で近づいてくると、鏡介の隣の椅子に腰掛ける。
「どうだ。美味いだろう。外はパリパリ、中はジューシー。生姜と長ネギの風味が効いた甘酸っぱいタレが脂っこさを緩和してくれるから、いくらでも食べられる。まさに、鶏肉料理の皇帝! まだまだたくさんあるから、どんどんおかわりしてくれよ!」
 まるで自分で作ったような口ぶりで話す男は、「揚鶏仙人」と名乗る。
 仙人のイメージとはかけ離れた軽薄そうな男だが、話し相手にはちょうど良さそうだった。
「この料理って、仙人の皆さんがご用意されたんですか?」
 油淋鶏を味わいつつ話を振ると、揚鶏仙人は得意げに微笑む。
「ああ、みんな自分の従者を連れて来ていて、好物の料理を作らせてるんだ。僕もそうだけど、自分の好物をみんなに広めたいからね」
 さらに鏡介は彼に油淋鶏のこだわった点について尋ねてみる。すると――。
「この鶏は餌にもち米だけを与えて育ててる。それから飼育小屋に閉じ込めずに、広い柵の中で放し飼いにして育てるんだ。手間はかかるが筋肉が引き締まり味も格段に良くなる……やはり材料にはこだわらないとね!」
 揚鶏仙人は手始めにと食材の話を語りだした。
 あ、これは長くなる奴だ。
 鏡介はそのことを早々に察したが、一度入ったスイッチは簡単には切ることはできない。
「……衣は米粉と片栗粉を半々で混ぜたものを使っている。揚げ方のコツは、2度揚げすることだ。最初は低温から徐々に加熱し180度くらいになったら一旦油から上げてしばらく外で休ませる。そうすると予熱で内部に火が通るから、二度目は高温で短時間揚げてカラッとした衣に仕上げるんだ。それはね……」
 その後も油淋鶏の作り方について饒舌に語る揚鶏仙人。
 10分後、薀蓄を語り終えた揚鶏仙人が満足げに立ち去ると、鏡介は苦笑いを浮かべる。
(……うん、まあ確かに興味深い話だったが……もういろんな意味でご馳走様だ……)
 ところが、揚鶏仙人が立ち去るやいなや、大柄な仙人が現れる。
「おっ、あんたが今食べてんのは刀削麺じゃん。そいつはオイラのこだわりがぎっしり詰まってるんだぜ!」
 さらにその後ろから威厳を感じさせる銀髪の中年男が顔を出す。
「お主じゃな? 料理の話を聞きたいという好奇心旺盛な青年は。鍋物仙人のわしが火鍋の極意を教えてしんぜよう!」
 噂が広まり、やがて鏡介は仙人たちに取り囲まれることになった。
 食事の手を止めて自慢の料理について嬉々として語る仙人たち。
 鏡介はその合間に毒入りの料理を取ってきては食べ、仙人たちの話に相槌を打つ。
 なんだか予想外の展開になったが、結果良ければすべて良し、といえるだろう。なにしろ薀蓄を語る仙人たちが皆大喜びし、食事の手を止めてくれたのだから。
 こうして図らずも仙人たちの陽の気が高まり、鏡介は宴の成功に大きく貢献するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬飼家・ヤング
なんかここの仙人のおっちゃんたち、めっちゃ親近感感じるわー
ほな遠慮なくいただきまーす!
ささ、ジャンジャンごちそう持ってきてんか!

特に肉料理!
金華ハム!北京ダック!棒棒鶏!油淋鶏!
酢豚に回鍋肉に青椒肉絲!
ああ~、どれもこれも熱々ジューシーでたまらんわ~
もちろん野菜や海鮮、甘味に酒も爆ウマやん!
かーっ!老酒ウマー!!

美味い肉を食えば食うほど【フードファイト・ワイルドモード】で
毒にも負けへん強い子パワー、免疫力アップや!
40㎝足らずのプリチーボデーの胃袋に
どんどん食い物が収まっていく不思議、これこそ正にエンタメ!
東洋の神秘、万国びっくりショーや!
(酒の酔いか毒の副作用なのかやたらとハイテンション)



 桃源郷の宴が行われている東屋の片隅。
 とあるテーブルを取り囲むように人だかりができ、集まった仙人たちは一様に驚愕の表情を浮かべ、眼前で起こっている珍事を見つめていた。
 
「俺たちは今、奇跡を目撃してるのか?」
「わしらの常識を超える者がおるとはのう……」
「おいおい、あの小さい体のキャパ、完全に超えてんだろ!」
 
 口々に感想の声を漏らす仙人たちの視線の先にいたのは、満漢全席のように並べられたご馳走の前でご満悦の馬飼家・ヤング(f12992)だった。
 ちなみに、ヤングは身長40cm足らずのテレビウムのちっさいおっちゃん。
 その小さな体のどこに大量の料理が入るのだろうか。まさに東洋の神秘。仙人もびっくりの光景が繰り広げられていたのである。
「ああ~、どれもこれも熱々ジューシーでたまらんわ~、かーっ! 老酒ウマー!!」
 仕事終わりに居酒屋で一杯ひっかけるおっちゃんの如く老酒をあおり、油淋鶏を豪快に頬張る。さらにヤングは、エビチリ、麻婆豆腐、八宝菜、カニ玉の皿を口の中に流し込んでいく。
「ウマー! 野菜に海鮮、卵に豆腐、どれもこれも激ウマやん。いくらでも食えるで!」
 ――おーっと、ここでいくらでも食える宣言がでました! まさに『中華料理は飲み物』と言わんばかりの食いっぷりです! さて、ここからの実況は私、舌先三寸仙人がお送りします!
 唐突に実況者の声が響き渡り、仙人たちの歓声が上がる。
 実況者に名乗りを上げたのは、何事もノリと勢いで生きるのがモットーの「舌先三寸仙人」。
 彼は人だかりの原因を察し、このショーの盛り上げ役を買って出たのだ。
「なんや、騒々しいな……まあええわ、わいかてエンターテイナーの端くれや! あんたらに万国びっくりショーを見せたるわ! ささ、ジャンジャンごちそう持ってきてんか!」
 ポンと腹を叩き、ヤングは見物人たちに宣言する。
 ヤングは既にテンションが上がりきっていた。それは毒の副作用が原因か、それとも酔っているのが原因か、はたまたエンターテイナーの性(サガ)か。誰にもわからなかった。

「甘味もウマー! ちょっと姉ちゃん、杏仁豆腐のおかわり持ってきてんか!」
 ――おっと、ここでおやつタイムか? これには杏仁仙人も大喜びだ。しかしみんな、糖尿病には気をつけような!
 桃まん、月餅、杏仁豆腐、桃源郷料理には甘味も充実していた。特に杏仁豆腐は胃腸にも優しく箸休めに丁度いい。
(さすがにファンサし過ぎてやて……きつうなってきよったわ……そういや、料理に毒入っとんのやったな……このままやったらマズイことになるで……)
 ――おや、なんだか苦しそうだぞ! ここでボリューム満点の桃源郷料理を休みなく食べ続けたツケがようやく回ってきたのか!
 ヤングの異変を実況者の仙人が指摘すると、聴衆たちから落胆のため息が漏れる。
 だが、その目はまだ死んではいなかった――。
「肉や! 肉料理をどんどん持ってきてんか!」
 金華ハム、北京ダック、棒棒鶏、油淋鶏、酢豚。ヤングの注文に応じ給仕を担当する羽衣人の女性たちが肉料理を急いで運んでくる。
「よっしゃ、戦闘開始や!」
 ヤングはデカい金華ハムをワイルドに噛みちぎり、ユーベルコード『フードファイト・ワイルドモード』を発動させる。
 ――おっと! 肉を食べたら雰囲気が変わったぞ! これは野生の本能に目覚めたのでしょうか? あれは、獲物を狙う肉食獣の目だ!!
 ヤングは肉食獣の如き本能に目覚めていた。
 肉を食えば食うほど全身の細胞が活性化し、肉体が強化される。
 肉食獣にとって食うことは、戦うこと。要するにヤングは臨戦態勢に移行したのだ。
(モードチェンジしたわいは、負けたりせえへん。免疫アップの強い子パワーで毒にも勝ったるで!)
 ――これは凄い、凄いぞ、凄すぎる! ん? 料理がみるみるうちになくなっていくぞ! これはまさにイリュージョン! 伝説の大食い道士がここに降臨したぁ!
 口先三寸仙人の熱の籠もった実況が響き渡り、会場は興奮に渦に呑まれていく。
 息を吹き返したヤングは仙人たちの大歓声の中、残る毒入り料理を食べ尽くすのだった。

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 猟兵たちの活躍で桃源郷での仙人たちの宴は一人の犠牲者も出さず、無事に幕を閉じる。紫霄宫には陽の気が集まり、封神仙女『妲己』の妖力の源たる陰の気を打ち消しつつあった。
 妲己に向かう道も、もうすぐ開通しようとしている。
 猟兵たちは仙人たちに別れを告げ、ひとときの休息を取るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月16日


挿絵イラスト