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殲神封神大戦⑥〜丹薬成らざりし辰砂の残影

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑥ #始皇帝

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#始皇帝


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●地下宮殿『始皇帝陵』
「朕こそが、永遠不滅の『始皇帝なり!」
 その言葉は地下宮殿『始皇帝陵』に響き渡る。蘇りし過去の化身『始皇帝』にとって、そこは己の安眠を貪るための聖域であった。
 しかし、すぐそこまで猟兵達が迫っていることを彼は知っているはずであるというに、慌てた素振り一つ見せなかった。
 自身が絶対的な存在であると信じるからこそ、『始皇帝』は高らかに宣言するのだ。
「生も死も、人も仙も、獣も神も、天地開闢の三皇さえも、朕の前にその頭を垂れ、朕の威光にひれ伏すべきなのだ。朕は皇を超えるものであるが故に、皇帝なのだから……!」
 己の言葉に『始皇帝』は酔いしれる。
 響く言葉は甘露や美酒の類と同じだったのだ。

 己の絶対性を信じてやまぬからこそ、地下宮殿『始皇帝陵』に蠢く『辰砂兵馬俑』たちを前にして告げるのだ。
「フハハハ、実に明快な理論! 水銀を飲み、不老不死を手に入れてから、朕の頭脳は冴え渡っておる! こうなれば、もはや朕の配下に頭脳はいらぬ。全員の脳をくり抜き兵馬俑としてくれよう。さすれば、朕を裏切る者も居なくなるであろうからな」
 その理論の飛躍は尋常ならざるものであった。
『始皇帝』の言葉は自信に満ちあふれてはいたが、正常な判断ができているかと問われれば、答えは否と応えるしかないほどにおかしな言葉ばかりであった。

「……猟兵? 何だ其れは? そんな奴は知らぬ」
 その言葉はおかしい。
 なぜなら、オブリビオンとは過去の化身。存在を知らぬとも、その姿を見ればひと目でそれが己の敵であると理解できるはずだからだ。
 しかし、今の『始皇帝』はそれさえも理解していないようであった。
 己に猟兵の接近を知らせる『辰砂兵馬俑』を蹴落としながら、『始皇帝』は告げる。
「兵馬俑共よ、貴様らは脳も無いくせに、くだらぬ考察などせずとも酔い。貴様らの脳は朕である。余計な報告などせず、ただただ、朕に従う駒であればいいのだ」

『始皇帝』は兵馬俑たちの言葉を一切省みることなく己の安眠を守る地下迷宮である地下宮殿『始皇帝陵』を示す。
「朕はこの二大宮殿を移動させ、洛陽までの覇道を進むのだ。その……猟兵? とかいうわけの分からぬ遊牧民族風情が来たところで返り討ちだ! 脳をくり抜き兵馬俑としてくれる!」
 万が一などありえないというように『始皇帝』は己の力を誇るように寝台列車のごとく移動し始める地下迷宮たる宮殿の中で座す。

「朕こそが、永遠不滅の『始皇帝』なり! フハハハハ、フハハハハハ……!」
 その高笑いは地下に響き渡る。
 己の敗北などありえぬというように――。

●殲神封神大戦
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。ついにその姿を表した強大なオブリビオン『始皇帝』……かの皇帝の亡骸がかつて埋葬された地下宮殿である『始皇帝陵』が洛陽目指して移動をはじめました」
『始皇帝』はかつての栄華を取り戻さんとしている。
 五胡と呼ばれる遊牧民族の一つ、羌族が兵馬俑軍団に支配されてしまい、大量の兵馬俑軍団として猟兵たちの道を塞いでいるのだ。

 しかも、地下宮殿である『始皇帝陵』は巨大な迷宮構造となっており、巡回する無数の『辰砂兵馬俑』によって守られている。
「『始皇帝』を打倒するためには、『辰砂兵馬俑』に構っている余裕はありません。地下迷宮を利用し、彼等の猛攻を躱し、最奥に座す『始皇帝』だけを討ち取らねばなりません」
 ナイアルテの言葉は端的なものであった。
 それが難しいことは理解している。『辰砂兵馬俑』は液体金属の装甲でもって、こちらの攻撃を大きく減退する力を持っている。変形し続ける一瞬を付いて生身を攻撃しなければ打倒することすら難しい敵だ。

 一々倒していたら時間がいくら在っても足りない。
「迷宮構造となっていることを逆手に取ることができれば、『辰砂兵馬俑』軍団の巡回を躱すこともできるでしょう。一刻も早く、迷宮を踏破し『始皇帝』に打撃を与える必要があります……しかし、『始皇帝』自身も強大なオブリビオンです」
 迷宮踏破と強敵との戦い。
 それは猟兵達に多大なる疲弊を齎すことだろう。
 だが、ナイアルテの瞳には猟兵たちを心配する色はあれど、彼等の敗北を感じる色はなかった。

「ですが、付け入る隙はいくらでもあります。『始皇帝』は水銀を飲み干した影響のせいか、あまり賢いとは言えない状態のようです。お世辞にも中国史上初の統一を為し得た人物とは言えないものであります」
 賢くない。
 それが如何なるものの影響かはわからないまでも、そこに付け入る隙があるのならば勝機は見出すことができる。
 猟兵たちはそれさえわかればいいと転移していく。
 その背中をナイアルテは見送る。いつだって猟兵たちは見事な戦いを見せてくれる。それがどんなに強敵であっても変わらない事を彼女は知っているからこそ、再び自身に勝利した姿を見せてくれることを疑わないのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『殲神封神大戦』の戦争シナリオとなります。

 ついに現れた強大なオブリビオンの一体『始皇帝』との対決となるシナリオです。
 地下宮殿『始皇帝陵』の迷宮を征き、巡回する数多の『辰砂兵馬俑』軍団を躱して最奥に座す『始皇帝』を打倒しましょう。

 現在の『始皇帝』は水銀の影響からか、あまり賢くない状態です。
 無論、その中国史上初の統一を為した力だけはそのままでありますので、強敵には変わりありません。
 これを打倒し、オブリビオン・フォーミュラに迫りましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……迷宮を利用して辰砂兵馬俑をかわす。/始皇帝の愚かさを利用する。

 それでは、地下迷宮と兵馬俑軍団を躱し、傲岸不遜たる『始皇帝』を打倒する皆さんの物語の一片と慣れますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『『始皇帝』』

POW   :    変幻自在水銀剣
【自在に変形する水銀の剣】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    辰砂兵馬俑親衛隊
自身の【操る水銀】を代償に、1〜12体の【自在に変形する液体金属の兵馬俑】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    万里水銀陣
戦場全体に【水銀の大渦】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【覇者の気を帯びた水銀】による攻撃力と防御力の強化を与える。

イラスト:さとをみどり

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

東雲・深耶
この始皇帝は愚帝のようだな
だが、そこに付け入る隙が在るという訳か

先制攻撃がないならばこちらから仕掛けよう
鋒から斬撃を飛ばし、挑発を仕掛けていく
私の能力は『真空波を放出する事』だ
水銀の剣と真空波の剣、どちらが勝つか見物としようじゃないか
そう嘘を言って始皇帝に私の能力を誤認させる

迷宮内を空間把握能力で正確に駆け抜け、配下を振り切って始皇帝と切合を演じていく
…伸縮する刀身というのは思ったより厄介なものだ

一撃を切り落とし、迷宮内に隠れた所でUC発動
時間を吹き飛ばし、世界に結果だけを残す魔剣の前に敵は存在しない
時空間切断剣術で始皇帝を切り刻み、通常の時間へと戻す

態々、自分の能力を正直に告げるはずもない



 中国史上初の統一を為し得た『始皇帝』。
 その偉業は凄まじきものであったことだろう。しかし、オブリビオンとして蘇った『始皇帝』は違う。
 丹薬として飲み干した水銀の影響からか、嘗ての賢帝の面影は何処にもない。
 あるのはオブリビオンとして過去に歪み果てた体のみ。
 だが、そのオブリビオンとしての力こそが凄まじいものである。地下宮殿であり迷宮である『始皇帝陵』に多くの『辰砂兵馬俑』軍団が巡回し、これを突破することも難しい。

 しかし、東雲・深耶(時空間切断剣術・空閃人奉流流祖・f23717)は迷宮内を迷わず奔る。
「この『始皇帝』は愚帝のようだな」
 しかし、そこに付け入る隙があるというのならば、突かぬ手はない。
 迷宮内に巡回する『辰砂兵馬俑』軍団は手強い相手である。液体金属の装甲は絶えず変形し、変形の一瞬を突かねば打撃を与えることも難しい。
 ならばこそ、彼女は精確に迷宮内を走る。
 迷宮の最奥に座す『始皇帝』は、高笑いを続けているからか、迷宮内に音が反響してよく通る。
 この反響する声を辿ればいいのだ。
「フハハハハ! その、なんだ……猟兵とかいう遊牧民族が如何なるものか! 朕の皇帝たる威厳の前に頭を垂らすというのならば、兵馬俑にしてやってもよいぞ、フハハハハ!」
 その笑い声を深耶は聞く。

 迷宮を抜けた彼女の前にあるのは、『始皇帝』。
 周囲に蠢き続ける水銀は変幻自在であった。放つ斬撃が挑発の一撃であると『始皇帝』は理解しないだろう。
 それほどまでに愚かな知性しか持たぬというのであれば、態々、自分の能力を正直に告げる必要もない。
「私の能力は『真空波を放出すること』だ。水銀の剣と真空波の剣、どちらが勝つか見物としようじゃないか」
 彼女の言葉は偽りである。
 しかし、今の『始皇帝』には、その嘘を看破するだけの知性はない。

 放たれる斬撃を水銀の剣が受け止め、切り払う。
「この程度で朕に刃を向けたか! 何たる愚かしさよ! お前のようなものに考える脳は要らぬ! 兵馬俑として脳をえぐり出してくれる!」
 放たれる変幻自在なる水銀の刃。
 それは四方八方から襲い来る攻撃であり、深耶は斬撃で持って水銀の刃を切り捨てる。
 しかし、即座に形を変えて襲い来る水銀の刃は厄介そのものであると言わざるを得ないだろう。
「……伸縮する刀身というのは思ったより厄介なものだ」

 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 己の放つ斬撃は過程を無視して結果のみを世界に残す時間すら消し去る魔剣である。
「時間を吹き飛ばし、世界に結果だけを残す魔剣の前に敵は存在しない」
 それが紅帝斬撃・刃は因を消し去り世界に果を残す(クテイザンゲキ)ものである。

 放たれた斬撃は『始皇帝』にとって目に見えぬ斬撃であったことだろう。
 切ったという結果だけを残す剣。 
 それを躱すことなどできようはずもない。
 水銀の刃をかいくぐる斬撃に『始皇帝』は驚愕したと同時に、己が何をされたのかさえ理解できなかった。
「朕の玉体に傷を! おのれ! その、なんとか……という遊牧民族! 許さぬぞ! 一体如何なる……いや、朕は全能なり! この程度のしかけなどっ――!」
 だが、その言葉は斬撃にかき消されることだろう。
 どれだけ伸縮自在たる水銀の刃であったとしても、結果のみを残す斬撃を防ぐ手立てなどない。

 打ち込まれる斬撃の理由すら理解できぬ『始皇帝』を見やり、深耶は息を吐き出す。
「如何に強大な力であったとしても、それを手繰るものが愚かであってはな」
 己の斬撃を偽った時点で勝負は決していたのだ。
 知略に優れたるからこそ『始皇帝』。
 その知性が失われた今、ただの力の塊にすぎない。ならばこそ、どれほどの強大さであっても、今の猟兵たちにとって『始皇帝』は敵ではなかったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

董・白
賢くない始皇帝
中華史上最初に統一した手腕を失った始皇帝ってただの暴君というか…ボケ皇帝?
正直…ちょっと残念です

始皇帝陵を『龍脈使い』の『道術』で『情報収集』します
辰砂兵馬俑の位置を確認しつつ、回避するように進みます。
兵は拙速を貴ぶ。無駄な戦闘を避けるが吉です。
途中、霊符に『おびき寄せ』の術をかけて、壁に貼り付け辰砂兵馬俑の動きをある程度操作します。

始皇帝御覚悟を。張良に成り代わりあなたをここで暗殺します。
失敗しちゃいましたからね張良…。

宝貝「五光石」を用い攻撃いたします。
水銀を『結界術』でいなしつつ、五光石の光弾を『投擲』いたします。
僵尸といえども水銀は勘弁です。馬鹿になりたくないですから!!



 水銀の影響からか、その生前の知性を尽くなくしてしまった存在。
 それがオブリビオンとしての『始皇帝』である。
 史上初の統一。
 それを為さしめた手腕は、言わずとしれたその知性あってのものである。
 だからこそ、董・白(尸解仙・f33242)は相まみえる『始皇帝』の知性のなさに、正直に言えば残念であると思わざるを得なかったのである。
「中華史上最初に統一した手腕を失った『始皇帝』ってただの暴君というか……ボケ皇帝?」
 その言葉に反応したのかどうかはわからないが、地下宮殿、その迷宮の最奥から『始皇帝』の咆哮が聞こえる。

「如何に迷宮たる『始皇帝陵』と言えど龍脈から伝わる情報はあるはずです……それに安眠を得るための陵であるというのならば、必ず龍脈を見ているはず」
 白は己の道術で持って龍脈より伝わる情報を得る。
 この迷宮には巡回する『辰砂兵馬俑』軍団が存在している。変幻自在たる装甲をである辰砂は猟兵たちの攻撃を大きく減退させる。 
 撃退することはできなくはないのだが、装甲の変形の一瞬を突くということは中々に骨が折れるし、そこまで時間を駆けている暇はない。

「ならばこそ、兵は拙速を貴ぶ。無駄な戦闘は避けるが吉です」
 白は道中に霊符におびき寄せの術を掛けて、壁に貼り付け『辰砂兵馬俑』軍団を引きつける。
 そうすることで巡回を躱すのだ。
 走る白が目指すのは龍脈より伝えられる『始皇帝』の座す最奥である。
 玄室であるからこそ、中央に位置する『始皇帝』の寝室では、すでに先行した猟兵が戦いを繰り広げている。
 その身に刻まれた斬撃の痕を見やり、白はやはりと思う。
「朕の玉体をよくも! 万死に値する! お前達……なんと言ったか、猟兵であったか! ただの遊牧民族風情が皇帝たる朕を傷つけるなどあってはならぬのだ!」

 渦巻く水銀は覇者の気迫を見せる。
 それがオブリビオンとしての『始皇帝』の力なのだろう。
「『始皇帝』お覚悟を。張良に成り代わり、あなたをここで暗殺します」
 その言葉に『始皇帝』は首をかしげる。
 そこに知性ありし瞳はなかった。あるのは、ただ目の前の存在を敵として認識するオブリビオンとしての最低限のみ。
「暗殺? 朕を暗殺するだと? やってみせるがいい! 一歩、半歩届かぬことを知るがいい!」
 渦巻く水銀。
 それが白を襲う。
 白の言葉で言うところの張良は暗殺未遂に終わった。だが、白は違う。猟兵であり、その手には宝貝「五光石」(パオペエゴコウセキ)がある。
 この宝貝は狙ったものを逃しはしない。

 放たれる光弾が水銀の渦をありえない角度と軌跡でもって駆け抜け、『始皇帝』へと迫るのだ。
「相打ち覚悟というものはなぁ! 必ず殺す手立てがなければ、ただの犬死となるのだ!」
『始皇帝』の覇者の風格さえ感じる水銀の渦が白へと迫る。
 それを白は結界術でいなしつつ、投擲された光弾が次々と『始皇帝』の体へと打ち込まれる。

 したたかに打ち据える一撃が『始皇帝』の体を吹き飛ばす。
 渦のように迫る水銀を白は振り払い、己の僵尸としての、そして仙人としての力で持って躱す。
「僵尸といえども水銀は簡便です。馬鹿になりたくないですから!!」
『始皇帝』は不死を求めて水銀を飲み干した。
 それは愚かであると言わざるを得ないだろう。しかしながら、富と権力を得た者がたどるのはいつも同じものである。

 すなわち不死。そして不老。
 ただそれだけを追い求め、これまで己が築いてきたものをないがしろにする。僵尸こそがそれを乗り越えたものであるというのならば、白こそが『始皇帝』を凌駕するものを唯一持つのである。
「不老不死、それを求めることが悪いことだとはいいませんけど。それでも、人の愚かさは、貴方をみればわかります。今此処で、歴史は繰り返させないためにも」
 ここで『始皇帝』は打ち倒すと、白は煌めく宝貝の光弾を渦のごとく蠢く水銀の向こうへと打ち込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオン・ゲーベンアイン
ダンジョン攻略は冒険者の十八番だよ
侯爵になっても時折ヴェルニスで潜って感覚は鈍らせていないよ
無論、ダンジョンのモンスターとのエンカウントを避ける技量もね

始皇帝の元へと辿り着いたらUC発動
本来は一発で三撃を同時に食らわせたいけど…この愚かさなら、早めに一発ずつ撃ち込んで掠らせればいいか

黒炎で炙り、透過する矢をかすらせて慢心と油断を誘う
その愚かさが、敗因となるんだよ
最後の自殺衝動で身を傷つけさせる
朕に自ら傷をつけさせるとは不敬?
脳をえぐり出す?

いや、もう終わりだよ…
瞬間、3つの力を受けた始皇帝はUCを封じられる

これで終わり、黒炎と透過する矢の前に断罪されると良いよ!



 地下宮殿『始皇帝陵』は広大な迷宮そのものであった。
 巡回する『辰砂兵馬俑』たちは手強いオブリビオンである。変幻自在なる液体金属の装甲。
 あらゆる攻撃を減退する力を持ち、絶えず変形しているからこそ、打ち破ることは容易ではなかった。
 されど、猟兵の力を持ってすれば打倒できぬほどでもない。
 しかしながら、時間は限られているが故に、敵の巡回の目をかいくぐり迷宮を踏破し、刃を『始皇帝』へと突きつけなければならないのだ

「ダンジョン攻略は冒険者の十八番だからね」
 リオン・ゲーベンアイン(四大副王北方担当『神弓侯』・f23867)は、公爵になっても未だ冒険者として鳴らした腕前を鈍らせては居なかった。
 迷宮の踏破にモンスターとのエンカウントを避ける技量は必須である。
 戦って勝てぬまでも、疲弊を齎すのならば、無用な戦いは避けるべきである。他世界で鳴らした腕前を発揮し、リオンは迷宮の中を進む。
 先行した猟兵たちの痕を辿れば、それは容易いことであっただろう。
 留意すべきは巡回の『辰砂兵馬俑』たちのみ。

 ならば、リオンにとってそれは容易いものであった。
「フハハハ! 無駄よ無駄! どれだけ朕に攻撃を届かせようともなぁ!」
 溢れる水銀は『始皇帝』の周囲を固める。
 しかし、先行した猟兵たちの与えた打撃の痕は残っている。斬撃と弾を打ち込まれた痕。
 それはどれだけ鉄壁を誇る水銀の守りと言えど、届かせることができるということであった。
「創世にして終末たる八の慟哭の側近。その魔弾は常闇の炎、常闇の魔弾、常闇の自壊を以て慟哭の創世妨げし者を葬送する」
 リオンは『始皇帝』を敵と認識た瞬間に、その水銀を黒炎で炙る。
 立ち上がる黒煙に『始皇帝』は己の水銀を犠牲に『兵馬俑親衛隊』を出現させる。
 彼等は液体金属で出来上がった兵士たちであり、リオンめがけて殺到してくるのだ。

 だが、それを迎え撃つのは、全方位、超連射、物質透過の力を持つ矢の放射であった。
「敵を前にして壁を作る……自分から目隠しをするというその愚かさが、敗因となるんだよ」
 放たれた矢は『兵馬俑親衛隊』たちに自殺衝動を突如として湧き上がらせ、自傷行動でもって霧消させる。
 それはリオンの常闇司りし無感動なる魔弾の射手(ストライク・ザ・ダークポイント)たる力の現れであったことだろう。
 放たれる矢は、壁を失った『始皇帝』に打ち込まれる。
 沸き上がる自殺衝動に『始皇帝』は困惑したことだろう。不老不死を求めて辰砂――水銀を飲み干した彼にとって、死とは何物よりも恐れるものであった。

 だからこそ、己の水銀が形作る剣が自身の体を傷つけることをこそ、理解不能であると叫ぶのだ。
「朕の体が勝手に動く……朕に何をした! この不敬者が!」
 喚く『始皇帝』を前にリオンは頭を振る。
「いや、もう終わりだよ……」
 すでに三つの力は楔となって『始皇帝』に打ち込まれている。
 ユーベルコードを封じる力。
 それこそがリオンの放った矢である。水銀で出来た兵馬俑の親衛隊たちが崩れて消える。

 壁を失った『始皇帝』を前に現れるリオンが弓引く。
「これで終わり。黒炎と透過する矢の前に断罪されると良いよ!」
 放たれる矢が一直線に『始皇帝』へと迫る。
 富と権力。
 人が追い求めるものの大半を得た嘗ての賢帝は見る影もない。そして、それこそが人の辿る堕する道であるというのならば、それをこそ否定しなければならない。
 未知なるがゆえに、辰砂を丹薬として飲み干すまでの狂乱した愚かしさをこそ、貫く矢は、『始皇帝』の過去をこそ示すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

張・西嘉
始皇帝陵を巡回する兵馬俑…始皇帝の言うように頭脳はいらぬとして存在しているならその動きも限られてこよう。複雑な迷宮と言うなら【聞き耳】などでしっかりと動きを把握し地形を利用して巡回を躱して行こう。

水銀による不老不死やら知能が最強だと言うならば俺たちがここに至る事はなかっただろうよ。
その頭脳は水銀により犯されている。
そんなお前に誰が付き従うものか。

挑発を込めた真実を語り怒りを買ったところでUC【青龍破斬】を打ち込む



 強大なオブリビオン『始皇帝』が存在するのは、地下宮殿たる『始皇帝陵』。
 本来は『始皇帝』の玄室である。
 しかし、今は地下に広がる迷宮となって猟兵たちの接近を阻む障害として存在している。
 さらに悪いことに『辰砂兵馬俑』軍団が迷宮内を巡回しているのだ。
 この『辰砂兵馬俑』は液体金属の装甲でもって攻撃を大きく減退させる力を持っている。つねに変形し続けるため、その変形の一瞬を突いて生身に打撃を加えなければ、打倒することも難しい。

 だが、これに構っている時間は猟兵にはなかった。
 急ぎこれらを躱し、迷宮を突き進み、最奥に座す『始皇帝』を打倒しなければならない。
「しかし、『始皇帝陵』を順回する兵馬俑……『始皇帝』の言うように頭脳はいらぬとして存在しているのなら、その動きも限られてこよう」
 張・西嘉(人間の宿星武侠・f32676)は、その猛禽の如き雰囲気のままに瞳を凝らす。

 目の前に広がる『始皇帝陵』は広大な迷宮。
 されど、複雑な動きはできないであろう『辰砂兵馬俑』たちは巡回程度が関の山。ならば、これを躱すことは容易であろう。
 音が響く。
 それは『辰砂兵馬俑』たちが立てる音であり、迷宮に響き渡る。
 その音が反響するのを確認し、西嘉は道を進む。どれだけ広大な迷宮であるのだとしても、音の反響で彼の脳内には立体が描かれていく。
「ふむ……確かに複雑。それに巡回の兵馬俑も多いと来ている。だが」
 そう、それでもすでに先行した猟兵たちは、これらを躱し奥の『始皇帝』へと至っている。
 
 戦いの音が響いている。
 ならば、その優れたる聴覚でもって迷宮を往く。猟兵の戦いとは繋ぐ戦いである。確かに『始皇帝』は強大なオブリビオンであろう。
 猟兵の個としての力では敵うべくもない。
「だが、相手が悪かったな」
 西嘉は迷宮を走り抜け、『始皇帝』の玄室に迫る。
 そこにあったのは黒炎に塗れながら己のユーベルコードを封じられた『始皇帝』の忌々しげに叫ぶ姿であった。

「朕の玉体に傷を付け、あまつさえはユーベルコードを封じるなど! 言語道断である! 貴様らは全て兵馬俑にすることさえ生温い極刑をもって処す! 朕は皇帝なるぞ! 不老不死を得て、朕の完全なる知能でもって再び世界を統一しようというのだ!」
 その言葉に西嘉は息を吐き出す。
 確かに中国史上初の統一をなさしめた『始皇帝』は優れた存在であったのだろう。
 だが、過去の偉大な者が、後に生まれる者たちより優れているという理屈もまた通らぬものである。
「水銀による不老不死やら知能やらが最強だと言うならば、俺たちが此処に至ることはなかっただろうよ」
 西嘉は青龍偃月刀を構える。
 その瞳はユーベルコードに輝いていた。

「ぬかせ! 遊牧民族風情が! 朕の言葉を否定するなどあってはならぬこと。死罪だ!」
 迫る水銀の剣。
 それは形を変え、伸縮自在たる剣閃となって西嘉を襲うだろう。
 しかし、それらを彼は青龍偃月刀とで叩き伏せる。

「その頭脳は水銀により犯されている。そんなお前に誰が付き従うものか」
 その言葉に『始皇帝』は激高したことだろう。
 これまで彼はあらゆる外敵を屈服させてきた。如何なる存在も己の知力、有する武力でもって打倒してきたのだ。
 その歴史があるからこそ、世に名を刻む『始皇帝』である。
 真っ向から否定する西嘉の言葉に怒りを顕にし、水銀の剣が一斉に迫るのだ。
 しかし、冷静さを欠いた攻撃など、西嘉に通じるわけもない。

「龍の氣の宿りし一撃。喰らうといい!」
 放つは青龍偃月刀の一撃。
 その一撃が水銀の刃をかいくぐり、『始皇帝』へと刻まれる。さらに、彼の持つ青龍偃月刀より蒼き竜の氣が解き放たれる。
 ユーベルコード、青龍破斬(セイリュウハザン)。
 それは強烈なる一撃。
 これまでの歴史を否定するわけではない。しかし、過去の化身たるオブリビオンとして蘇った『始皇帝』は否定する。

 彼の存在を赦しておいては世界が滅ぶ。
 ならばこそ、西嘉は己の刃を向ける相手を違えない。放たれた斬撃は水銀の防御すら貫いて、袈裟懸けに振るわれ、『始皇帝』の血潮を噴出させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧沢・仁美
始皇帝って言ったら、色々な業績を残した凄い人って学校で習ったけど…
…流石に生きてた頃はもうちょっとまともだった、よね…?

ともあれ。
迷宮は兵馬俑の巡回を躱しつつ、できるだけ素早く突破。
見つかりそうになったら、【念動力】でその辺の小石とかを逆方向の壁や床にぶつけて気を惹き、その隙にすり抜けて行くよ。

始皇帝との戦いは、召喚された兵馬俑を何とか躱しつつ【衝撃波】で攻撃。
これだけじゃ追い詰められる一方だけど、本命は視線を介しての【精神攻撃】。
思考力を下げて、兵馬俑への指示を雑にさせたところで距離を詰め、あわよくば兵馬俑に始皇帝自身を攻撃させる。
怯んだところを念動超昂で兵馬俑諸共吹き飛ばすよ!



『始皇帝』とは中国史上初の統一をなさしめた人物である。
 一廉の人物以上の人物。
 その知力のなさしめるところは、あらゆる存在を打倒して築き上げたものである。
 様々な業績は言うまでもない。
 それは封神武侠界ならざる、他の世界の歴史にも名を刻まれた存在。
 ゆえに霧沢・仁美(普通でありたい女子大生・f02862)は、彼女の生まれた世界であっても、その名を学校で倣ったのだ。
「……流石に生きてた頃はもうちょっとまともだった、よね……?」
 仁美はどうにも実感できなかったことであるが、『始皇帝』の様子は明らかにおかしいものであった。

 こうして『始皇帝陵』の地下迷宮に響き渡る彼の声は、あまりにも知性を感じさせないものであった。
「ともあれ……」
 今は早くこの迷宮を踏破しなければならない。
『辰砂兵馬俑』軍団が迷宮内を巡回している。彼等を躱して最奥に在る玄室を目指さなければならない。
 ここで兵馬俑たちに構っていては、時間が足りないのだ。
 しかも『辰砂兵馬俑』は、その常に変形し続ける液体金属の装甲に覆われ、変形の一瞬を突かねば打撃を与えることすらできない。

 猟兵に打倒できぬ相手ではないが、構うことはできない。
「時間を稼がれるわけにはいかないものね」
 仁美は己の念動力でもって小石を逆方向の壁にぶつけて、あえて巡回の兵馬俑たちの気を惹き、その隙に彼等を躱して奥へと進む。
 先行した猟兵たちの戦いの音が響き渡る。
 彼等の戦いを引き継ぐように仁美は玄室へと駆け込む。
「朕の玄室に次から次へと! 朕の安眠を妨げる輩などというのは!」
 放たれるは水銀をもって生み出される『兵馬俑親衛隊』である。彼等は皆、液体金属である水銀でもって生み出された兵士であり、非常に強力なユーベルコードだ。

 これまで猟兵に寄って封じられていたが、その力を振りほどいて召喚し、仁美へと差し向ける。
「くっ……これっ、強い……! 近づけさせないから!」
 放つ衝撃波が『兵馬俑親衛隊』たちを近づけさせない。
 しかし、じりじりと追い詰められていく。敵の数は多く、一体一体が強力な個体なのだ。『始皇帝』を守る水銀は減ってはいるが、それでも液体金属の兵士たちの前に仁美は追い込まれる。

「朕の安眠を妨げた罰よ! 貴様の脳もくり抜いて、兵馬俑にしてくれるわ! ……う――!?」
 それは瞳の視線であった。
 視線を介する精神攻撃。それは『始皇帝』ほどのオブリビオンであっても、僅かに揺らぐものであった。
 瞳の視線はたしかに僅かな精神への攻撃に過ぎなかったのかもしれない。けれど、彼女のサイキックは知性落ちた『始皇帝』には十分すぎるものであった。

 同時にその攻撃は『始皇帝』の思考を雑にさせる。
「うぅ……なんだ、これは。朕の頭の中に、何者かが入り込んでくる……!? ええい、鬱陶しい!!」
 精神攻撃の波長を振り払い、『始皇帝』が叫ぶ。
 それは『兵馬俑親衛隊』への指示をおろそかにさせ、隙を生み出す。
「怯んだよね、なら! もう手加減はできないんだからね……!」
 輝く瞳にあるのはユーベルコードの光。
 仁美のユーベルコードは念動超昂(サイキック・オーバードライブ)によって増幅させられ、大波のように『兵馬俑親衛隊』もろとも『始皇帝』を打ち据える。

 サイキックエナジーを純粋な物理破壊力に変換したサイキック・バスター・ウェーブは凄まじい威力となって『始皇帝陵』の中に響き渡る。
 ふきとばされる『始皇帝』は、その不可思議なる力の源を理解することも、其れに対する対策を立てることもできなかった。
 もしも、生前の知性があるのならば、この攻撃は次には対策を立てられていたことだろう。
 しかし、もはや彼には知性はない。
「昔の面影がないっていうのなら、あたしにだって出来るんだから!」
 放たれるサイキックエナジーの奔流と共に『始皇帝』を押し流し、仁美は高らかに己の勝利を宣言するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイン・セラフィナイト
うーん、自らの立場に胡座をかいちゃってる為政者の成れの果てというか……全盛期の始皇帝はどうだったのかな。

迷宮攻略からだね!追いかけてくる兵馬俑から逃げ惑う子供を演じるよ。

「た、助けて……!」

逃げ惑うふりをしてUCを発動、砂を壁に変えて、迷宮の道を変質させながら接近、兵馬俑たちの追撃をかいくぐってみよう。
ある程度砂が増殖したら砂の大津波に変えて、兵馬俑を飲み込みながら始皇帝に接近だ!

その座は今の貴方には相応しくないよ。水銀の大渦を球状に展開した砂の塊で『オーラ防御』、始皇帝を砂の怒涛で座から引きずり下ろす!

かつて暗殺されかけたことをもう覚えてないのかな。……為政者として、失格だよ。



「うーん、自らの立場に胡座をかいちゃってる為政者の成れの果てというか……」
 アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)は、オブリビオンとして蘇った『始皇帝』の姿に失望を禁じえない様子であったことだろう。
 全盛期の『始皇帝』は富も権力も思いのままにしていたことだろう。
 史上初の統一。
 それをなさしめた手腕は尋常ならざるものであったことだろうし、本来の『始皇帝』であるのならば、猟兵を寄せ付けることすらさせなかったことだろう。

 しかし、オブリビオンとして蘇った『始皇帝』は違う。
 生前に求めた不老不死。
 丹薬――すなわち水銀を飲み干すことによって、彼が人生に幕を下ろしたように、権力者が最後に求めるのは不老不死である。
 死をこそ恐れ、怯え、なんとかして遠ざけるのがいつの時代の為政者においても変わらぬことであると言える。
 だからこそ、アインは歴史から学ぶのだろう。

 そんな彼が『始皇帝陵』の地下迷宮を走る。
 彼を追いかける巡回の『兵馬俑』たち。アインは何も出来ぬ子供のように助けを求めながら迷宮内を走る。
 言うまでもないが、それは逃げ惑うふりである。
 すでに彼の瞳にはユーベルコードが輝く。
「絆がれた我が盟杖、解け荒む挺身の砂塵、波紋に墜ちる雫が涸る―――呼び声に応えよ、豊穣の祖よ(ノーム・ダスト)」
 周囲の無機物を砂に変換しながら迷宮の道を変質させていくアイン。崩れていく迷宮の壁。
 それは本来『始皇帝』の眠りを守るために敷かれた陣であったが、アインのユーベルコードによって尽く砂へと変質させられていく。

 道がなければ作ればいい。
 簡単なことだというようにアインは逃げ惑うふりをしながら、『始皇帝』の玄室へと迫る。
「これくらいでいいかな……なら!」
 アインの瞳が輝く。
 瞬間、彼が変換した無機質は、超重量超高密度の増殖する砂に代わり、一瞬で迫る『兵馬俑軍団』を飲み込みながら最奥である玄室へとなだれ込む。

「なんだ、何事だ! 朕の玄室に……! 朕は皇帝なるぞ!」
 渦巻く水銀が大量に流れ込んできた砂から『始皇帝』を守る。
 しかし、それは覇者のオーラ纏う力の象徴。水銀の大禍は渦巻くようにしてアインへと迫るのだ。
「その座は今の貴方にはふさわしくないよ」
 球場に展開した砂の塊が『始皇帝』へと襲いかかる。
 それは凄まじい勢いで『始皇帝』を引きずり下ろし、水銀の大渦もろとも飲み込んでいく。

 かつて『始皇帝』は幾度となく暗殺に見舞われた。
 それが死への恐れへと変質したのかもしれないし、己が裏切られ、生命を脅かされることへの怒りに変わったのかもしれない。
 だが、彼はもうそのことすら覚えていないだろう。
 人は誤ちや、失敗から学ぶ。
 そして対策を講じ、同じ誤ちを繰り返さぬようにとするだろう。けれど、知性失われた『始皇帝』にそれはない。
「かつて暗殺されかけたことをもう覚えていないのかな」
 アインは渦巻く水銀の大渦ごと砂で『始皇帝』を飲み込ませる。怒涛の攻撃は水銀のガードも間に合わぬだろう。

「朕が、ここで敗れるわけなどない! あってはならぬのだ。朕は皇帝なるぞ!」
「……為政者として、失格だよ」
 アインは嘆息する。
 あの『始皇帝』には学ぶところが何一つ無い。
 失敗という経験すら学ぶことがない。過去に歪み、水銀の影響にあって彼は最早、史上初の統一を為し得た偉大なる存在という最大なる功績すら陰る者でしかない。

 見るに耐えぬとアインの操る砂が水銀を押し流し、その為政者足り得ぬ愚かなる存在に鉄槌を下すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テラ・ウィンディア
何だか大変な作戦だがやってやるぞ!

【戦闘知識】
迷宮の構造と突破口の把握
何より敵の巡回の捕捉

【属性攻撃】
土属性で迷宮で壁を作ったり目印を潰しておくぞ
そして相手を迷わせつつ突破だっ

対始皇帝
【見切り・第六感・残像・空中機動・オーラ防御・武器受け】
UC発動
確かに強そう…だけど

水銀剣の動きと攻撃の癖
パターンを見切りつつ
残像で敵の攻撃を誘い幻惑
高速で飛び回り回避
避けきれない場合はオーラで防ぎつつ

【重量攻撃・弾幕・貫通攻撃】
正面からぶつかり合いつつ死角にガンドライドとドリルビット展開
重力弾の弾丸の乱射とドリル攻撃で突き込み
【二回攻撃・早業・串刺し】
怯んだ瞬間に剣による連続斬撃から槍で貫く!!



 地下宮殿『始皇帝陵』の広大さは言うまでもなく。そして、迷宮として外敵を寄せ付けぬ攻略の難しさは言うまでもなかった。
 しかし、この程度の迷宮を踏破できぬのならば猟兵たちは多くを取りこぼすことになっていただろう。
 これまでの戦いの経験、それらが全て猟兵の背中を押すものである。
「なんだか大変な作戦だがやってやるぞ!」
 迷宮の構造を把握し、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は意気揚々と飛び込んでいく。
 この『始皇帝陵』において肝要であるのは巡回の『辰砂兵馬俑』の軍団である。
 彼等は猟兵であれば倒せない存在ではない。
 しかし、時間が掛かるのだ。

 液体金属の装甲でもって守られ、その絶えず変形する性質ゆえに、一瞬の隙を付いて打撃を与えなければ攻撃の大半を減退させられてしまう。
 言ってしまえば、面倒な相手なのであった。
「なら、巡回するルートを増やしてやればいい!」
 そう言ってテラは迷宮の壁を土属性の力でもって増やし、目印に鳴るものを潰したりしながら、兵馬俑たちを戸惑わせ、迷宮を踏破するのだ。
 すでに先行した猟兵たちの戦いの音が響き渡っている。
 この迷宮を踏破し、『始皇帝』に打撃を与えている者たちがいると知れば、テラは己も負けじと飛び込んでいく。

「っと、わっ!?」
 飛び込むテラの眼前で空を切る音がする。
 それは水銀の刃。『始皇帝』が放ったユーベルコードであり、伸縮自在なる水銀の剣はテラを串刺しにせんと放たれていた。
 それを空中で持って躱し、残像を走らせながらテラは『始皇帝』を見下ろす。
「皇帝たる朕を見下ろすとはなんたる不敬か! 貴様ら如き遊牧民族などにやられる朕ではないわ!」
「確かに強そう……だけど」
 テラは迫る水銀の剣を躱す。伸縮自在の剣戟は厄介極まりない。けれど、手繰る者に知性がないのであれば、それらがパターン化されたものであると知る。
 残像残すほどのスピードで空中を駆け抜けながら、テラは『始皇帝』の技量を見定める。

「かつての知性がないのなら、それも宝の持ち腐れってやつ!」
 テラは正面から水銀の剣と打ち合う。それは馬鹿正直な戦い方であったけれど、『始皇帝』にとっては考える余地もないことであった。
 彼には水銀の影響からか、このような勝負事に対しての駆け引きができないでいる。ならばこそ、テラは死角より放ったガンドライドとドリルビットの展開、そしてモード・グランディアに至る己の放つ重力弾でもって突き崩すのだ。

「なんだ!? どこから撃ったのだ!?」
「やっぱりそうだ。どう考えても戦い慣れてない。その水銀の力が大きいだけなんだ、お前は!」
「朕を愚弄するか、遊牧民族風情が!」
 怒りに咆哮する『始皇帝』の攻撃は明らかに直線的になっていた。直前に見せた死角からの攻撃を最早忘れたように直情的になっている。
「戦いっていうのは、冷静さを欠いた時点で負けているんだ!」
 テラの斬撃が水銀の剣を打ち払い、ガンドライドとドリルビットが道をこじ開ける。
 水銀の剣は伸び切ってガードが開かれる。

 テラの目の前にいるのは水銀の守りを引き剥がされた『始皇帝』のみ。
 驚愕に染まる瞳を見据え、テラは一気に展開された超重力フィールドと共に、己の闘争心を燃やす。
「グランディアよ…全ての存在がもつ原初の力よ。我が身に宿り力と成せ…!グラビティフィールド…展開!」
 凄まじい速度で飛び込むテラを『始皇帝』は止めることなどできなかった。
 慌てて水銀の剣を戻したとしても、もう襲い。
 剣による斬撃と超重力フィールドでもって弾き飛ばし、テラは構えた槍の一撃でもって『始皇帝』の体を貫く。

 それは戦いにおいて、如何に駆け引きが重要であるかを示すものであった。
 その重要性を『始皇帝』は理解しなかったであろう。けれど、テラはその一撃で持って、かつての大陸の覇者を打倒するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

肆陸・ミサキ
※絡み苦戦怪我アドリブok

酔狂な王様だ
皇帝なんだっけ?
どっちでもいっか

迷宮は普通の造りかな
兵馬俑の巡回、どれくらいの自律性で動いているのか解らないけど、壁を殴り抜いて突破したらどうなるだろう

定められたルートから逸脱しても追ってくるのなら、いくつかダミーで壊しておけば混乱してくれそう
始皇帝の命令に背くからと放置してくれるならラッキーかな

ダメそうなら慎重に、先に行った仲間の跡を辿ってみるとか、かな

で、本命だけど、水銀操作って繊細そうだし、焼却の光熱ってどう?
私は黒剣しかないし、手加減してよね
とか言いつつ、拳をぶちこみに行くよ
一つでも通用すれば、活路があると思う

ま、神殺しよりは楽でしょ、皇殺しなんて



 オブリビオンとして蘇った『始皇帝』は水銀の影響に寄ってか、その知性を著しく残っていた。
 そこには嘗て在りし史上初の大陸統一をなさしめた手腕は何処にもなかった。
 権力者が最後に至る道、その最期というものはいつだって愚かしさを煮詰めたものであるのかもしれない。
『始皇帝』は、その晩年をして不老不死を求めた。
 権力も富も、全てを手にしてなお手に入らぬのが死を回避する方法である。そのために丹薬として水銀を飲み干して死したことは皮肉でしかなかっただろう。

「そして、これがその『始皇帝陵』っていう地下宮殿ってわけ……これで洛陽まで迫ろうっていうのだから」
 肆陸・ミサキ(終り・f00415)は余りの荒唐無稽さに息を吐き出す。 
 幸いにして地下迷宮の作りは至って普通である。
 踏破が困難な迷宮となっている以外には、『辰砂兵馬俑』たちの巡回がある。彼等は猟兵が打倒できぬ存在ではないものの、その身にまとった液体金属の装甲の性質ゆえに、打倒するのに時間が掛かるという難点があった。

 つまり、彼等に構っていては『始皇帝』を倒す時間がなくなってしまう。洛陽に地下宮殿が至れば、どんな虐殺が起こるかなど想像に難くない。
「なら、壁を殴りぬいて突破しよう」
 ミサキの行動は単純明快であった。
『兵馬俑』たちには脳がない。彼等に命令を与える『始皇帝』こそが脳。ならば、巡回ルートも決められている。
 ならば、本来壁が在るところに大穴が空いていたのならば、どうなるか。
「定められたルートから逸脱しては追ってはこれない……」
 ミサキは拳で持って壁をぶち抜き、一直線に『始皇帝』の玄室へと迫る。 
 それはあまりにもあんまりな攻略ルートであったが、呆れるほどに効果的であった。ダメなら慎重に先行した猟兵たちの痕を辿ろうと思っていたが、どうやらミサキ以外にも同じような手段で迷宮をぶち抜く者がいたのだろう。

「なんなのだ、一体! 朕の玄室を何と心得るか! 不敬者どもが!」
 ミサキはぶち抜いた先に猟兵たちと戦う『始皇帝』を見やる。
 酔狂な王様だと思っていた。いや、皇帝であったか、と考え直す。しかし、どちらでもかまわない。
 自分が打倒することに変わりはないのだからと、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「私、黒剣しかないし、手加減してよね」
「誰が不敬者に掛ける情けなど持ち得ようか! 貴様らは兵馬俑にしても空きたらぬ!」
『始皇帝』の水銀が剣となってミサキを襲う。
 手にした黒剣でもって刃を退け、ミサキは踏み込む。

 戦いにおいて傷を追うことをためらっていては、大した戦果を上げることはできない。それは彼女の戦いの経験。傷だらけになりながらも勝利を収めてきた彼女だからこそ辿り着くことのできた解答であった。
 黒剣を投げ放ち、ミサキの瞳がユーベルコードに輝く。
「くれてやる、遠慮なく受け取ってよ」
 輝く拳はユーベルコードに満ちている。赫灼たる絶焼(カクシャクタルゼッショウ)を思わせる光がミサキの腕より放たれている。

 その熱量は凄まじいものであり、ミサキの利き腕を代償にする凄まじき一撃。
 あらゆるものを焼き焦がす光の余波は、熱波となって水銀装甲すらも退けるものであった。
「馬鹿な、朕の守りが剥がされる……?! そんなことがあってなるものか! 朕は皇帝ぞ! わかっておるのか、雑兵が!」
 しかし、ミサキは躊躇わず踏み込む。
 水銀の斬撃を熱波が吹き飛ばし、振るう拳は光に満ちている。
 目も眩むほどの光量。
 されど、放たれる一撃は己の利き腕を代償にして強烈なものへと昇華される。

 打ち込まれる拳が『始皇帝』の胴にめり込み、その光で持って内側から灼く。
 吹き荒れる熱量がミサキの肌を焼くだろう。
「あ、皇帝だったのか……ま、神殺しより楽でしょ、皇殺しなんて」
 なんてことはないのだというようにミサキは言い放つ。
 光が肌を焼くことも、目の前の『始皇帝』を吹き飛ばすのも、彼女にとっては造作も無いこと。
 痛みも、苦しみも、全てを飲み込んでミサキは戦場に立つ。
 全て終わらせるために。
 自分が終わらせるためにこそ、ミサキのユーベルコードは燦然と輝き、凄まじい爆風となって彼女の頬を撫でるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
まずダンジョン攻略です
巡回する辰砂兵馬俑を切り抜けて進みましょう
事前に古代中国の【世界知識】を学習しておきます

迷宮は学習した知識に、天性の【野生の勘】
培った【戦闘知識】をフル活用して、危険な罠を
回避しますね

罠の位置を把握後は
辰砂兵馬俑を罠に落とすよう動く
【なぎ払い】【衝撃波】、
そして風の【属性攻撃】で罠に落としたり、
行き止まりに追いやります!

そして始皇帝の元にたどり着いたら、
仲間が消耗させているでしょうし、
思い切り安っぽい【挑発】を。
「私たちには手も足も出ないようですね、愚帝ここにあり!」

其の隙を突き、【カウンター】の鎧砕きの攻撃で
動きを止め、宙に舞っての
《トランスクラッシュ》で倒しますよっ!



 強大なオブリビオンである『始皇帝』を打倒するためには、地下宮殿である『始皇帝陵』の迷宮を突破する必要がある。
 しかも、その迷宮には『辰砂兵馬俑』軍団が巡回しているという。
『辰砂兵馬俑』は液体金属の装甲に覆われ、絶えず変形し続けるからこそ、如何なる攻撃も減退せしめる強固な防壁と成り得る。彼等を打倒するためには変形の一瞬を捉えて、生身へと打撃を通さねばならない。
 倒せぬ相手ではない。
 しかしながら、時間と手間が掛かることもまた事実。そうこうしている内に移動し続ける地下宮殿『始皇帝陵』は洛陽へと至り、人々を虐殺するだろう。

 時間がないのだ。
 だからこそ、彼等に構わず猟兵たちは迷宮を踏破する。
「まずはダンジョン攻略というわけですね!」
 ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は、古代中国の知識を習得し、迷宮の在り方を覚え込む。
 迷路そのもの。しかし、先行した猟兵達が尽くこれを破壊している。迷うというのならば、道を作ればいい。
 そして、『辰砂兵馬俑』が巡回しているのならば、これを迷わせればいい。そうすることで紡がれた道は、たしかに後続の猟兵たちの道を作るものであった。
「これなら! 罠を利用できますね!」
 敵である『辰砂兵馬俑』は打倒しづらい存在である。しかし、ユーフィは迷宮内部の罠を巧みに利用し、彼等を襲撃から放たれる衝撃波でもって吹き飛ばし、罠へと落とし、行き止まりに追いやるのだ。

「後に続く方々の邪魔をさせはしませんよ! そこで立ち往生してもらいます!」
 ユーフィは兵馬俑軍団を袋小路に追いやり、壁で塞ぐ。簡単に出てはこれないだろう。自分はそのまま『始皇帝』の座す玄室へと疾走る。
 すでに先行した猟兵との戦闘が行われている。
「朕は皇帝なるぞ! 全能! 完璧な理論を持つ存在! それを!」
『始皇帝』の激昂と共に放たれる水銀の剣。
 伸縮自在たる水銀の剣はユーフィにも迫るだろう。それを彼女は躱す。確かにやっかいな攻撃である。

 しかし、先行した猟兵達が消耗させているせいで、その動きは鈍い。
「私達には手も足も出ないようですね、愚帝ここにあり!」
 それは挑発の言葉であった。
 ともすればやすっぽいとも言える言葉であったことだろう。しかし、生前の知性を失っている『始皇帝』にとっては、あまりにも不敬な言葉であったのだ。
「不敬者め……! 朕を言うに事欠いて愚帝と僭称するか!」
 荒れ狂う感情のままに振るわれる剣がユーフィを捉えられるわけがない。
 揺れる感情によって放たれる水銀の刃はユーフィにとって、躱すには容易い。どれだけ広範囲に渡る攻撃を仕掛けてきたとしても、鍛え上げられた肉体をもつユーフィには無意味であった。

「鍛えられた肉体を!」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
『始皇帝』の体はボロボロである。斬撃に見舞われ、弾丸を打ち込まれ、水銀すら焼く熱量で持って脅かされた体はオブリビオンとして存在しているからこそ保たれているにすぎない。
 ならばこそ、ユーフィは己の拳で持って『始皇帝』の水銀のガードの上から衝撃を通すのだ。
「ガハッ――!?」
『始皇帝』にとってユーフィの拳はガードしたはずなのに、突き抜けてくる凄まじい拳。理解不能であった。

 だからこそ、その目が白黒している合間にユーフィは中へと舞い上がる。
「めいっぱい叩き込みますっ!」
 それはトランスクラッシュ(クラッシュ)。
 ユーベルコードにまで昇華した肉体を誇るユーフィの一撃。ボディアタックの一撃は巨岩が落ちるかの如き轟音を立てて水銀のガードごと『始皇帝』を押しつぶすことだろう。
 衝撃波が『始皇帝陵』に吹き荒れ、その一撃の凄まじさを物語る。

 ゆらりと立ち上がる影があった。
 それはユーフィの影。
 彼女は痛烈なる打撃を見舞った『始皇帝』を見下ろす。猟兵の戦いはいつだって繋ぐ戦い。
 ユーフィの一撃に『始皇帝』は意識を飛ばしかけている。
「鍛えられた体は何物にも負けぬ鋼となりましょう! 水銀なんかに頼っていては、私には敵いませんよ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒珠・檬果
イッツ スニーキング ミッション!ゲーマーとしてやりがいのある話。
地味目の頭巾被っておきましょう、私の色は目立つ。
あと、七色竜珠を全て合成、白日珠[ビーム竹簡形態]へ。
地縛鎖を刺して、情報収集。ふふ、これでルート等はばっちりですね!

でですね、始皇帝になんですが。先制攻撃でUC発動させますね!
いやー、これ戦場全体なので、その兵馬俑がどれだけいようが関係ないのですよ。大水計なので、動きづらいでしょうし。
しかも、残るのはまとわりつく水である。そしていまは冬である。
とても冷たい!兵馬俑はともかく、始皇帝は…鈍るのでは?

で、そこへビーム食らわせますね。隙を逃すはずがないのですよ。



 荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)はゲーマーである。
 シャーマンズゴーストであり、バトルゲーマーでもある彼女にとって、地下宮殿『始皇帝陵』の迷宮は謂わば、ステルスアクションゲーム。
 彼女の得意分野である。
「イッツ、スニーキングミッション! ゲーマーとしてやりがいのある話です」
 彼女は地味目の頭巾をかぶる。
 シャーマンズゴーストである彼女の色はやたらと目立つ色合いである。こういうゲームではないが、ゲームに例えられる戦いにおいて、必要なことは全部やるのが彼女なのだ。
 七色竜珠を全て合成し、ビーム竹簡形態へと変えた白日珠を持ち、気分はもうスパイである。

「あとは地縛鎖を刺して……と」
 それは大地から魔力と、その地域にまつわる情報を吸い上げる鎖。
 この鎖に寄って檬果は、迷宮の情報を得るのだ。すでに先行した猟兵達がおり、迷宮を踏破したがゆえに多くの障害が取り除かれている。
 巡回する『辰砂兵馬俑』はその性質の厄介さから、まともに戦うことを推奨されていない。それに彼女より前に迷宮を抜けていった猟兵が多くの兵馬俑軍団を袋小路の通路に押し込んで塞いでくれているおかげで迷宮を抜けやすかったことも起因している。

「ふふ、これでルートはばっちりですね! それに皆さんが色々残しておいてくれたおかげで、短縮です」
 ゲーマーとしてはイージーモードすぎる気がしないでもない。 
 どうせならハードモードでクリアしたかったと思うところであろうか。しかしながら、この地下迷宮は移動を続けている。何処に、問われれば、洛陽に、と答えられる。洛陽にこの地下宮殿がたどり着けば、行われるの人々の虐殺であろう。
 それならば、短縮上等である。

 この宮殿の最奥の玄室に『始皇帝』は座している。
 いや、すでに得た情報から猟兵たちとの戦いを繰り広げ、消耗しているようでもあった。
「朕が敗れる……!? そんなわけなどあるわけがない。朕は皇帝ぞ! 負ける道理など一分足りとてあるわけがない!」
 溢れる水銀でもって『兵馬俑親衛隊』を呼び出そうとした『始皇帝』をよそに檬果は容赦がなかった。
 ルート短縮がうまく行ったおかげで、早く玄室にたどり着いた彼女は速攻でユーベルコードを発動させていた。

「十二秘策・水(カヒノスイケイ)、明らかになっている策の一つ、ですね! 行きましょう、深密将『荀攸』!」
 彼女のユーベルコードに寄って召喚され、憑依された深密将『荀攸』。
 彼の持つ計略の一つ、水計におって竹簡より放たれる大量の凍えるほどの冷たき水の濁流。
 それは玄室になだれ込み、『始皇帝』を飲み込むだろう。 
 水銀で持って『兵馬俑親衛隊』を生み出そうとしていた矢先であったため、水銀でのガードも間に合わない。
「水……!? 水攻めだというのか!?」
「その兵馬俑がどれだけいようが関係ないのですよ。大水計なので、動きづらいでしょうし」
 しかも、残るユーベルコードに寄る水は凍らずまとわりつくものである。

『始皇帝』をガードする水銀があれど、まとわりつく水は容赦なく体温を奪っていく。
「とても冷たい! ですよね!」
『始皇帝』がオブリビオンであろうとも、人の形をしているのならば、寒さで動きも鈍るものである。
「朕を凍えさせるか! 不敬! しかしながら、朕は不老不死を得たのだ、この程度で!」
 凍え死ぬことはない。
 しかしながら、動きは鈍るものである。そして、檬果がそれを見逃すはずなどないのだ。
 竹簡形態へとなった白日珠より放たれるビームが『始皇帝』を撃つ。

「ええ、でしょうね。だから私達がいるのです。オブリビオンを打倒する猟兵が。あなたにはわからないのかもしれませんが、私達は滅ぼし、滅ぼされる間柄」
 そこに地位など関係ない。
 如何に過去の功績素晴らしき『始皇帝』なのだとしても、オブリビオンである以上滅ぼすことに変わりはない。
 穿たれた一撃は『始皇帝』の胸を貫くだろう。
 もしも、彼が生前の知性を有していたのならば、此処までうまく事が運ぶことはなかったはずだ。

 けれど、知性無き彼にとって深密将『荀攸』を憑依させた檬果の計略を破る術などない。
 大量の濁流に押し流されていく『始皇帝』を見やり、檬果は己の勝利を確信するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…脳が無いなら当然、第六感なんて不確かな物も存在しない
ならばこそ、この術を見破る術は無いはずよ

UCを発動して全身を呪詛のオーラで防御して覆い、
敵の索敵を阻害しつつ迷宮を攻略して始皇帝の下へ向かう

…智者を僭称するならば、この程度の幻術に惑わされる事は無いでしょう?

…さあ、どれが本物か見事当ててみせるが良いわ

…等と挑発しながら「写し身の呪詛」を乱れ撃ち、
無数の残像を囮にする集団戦術で闇に紛れて死角から切り込み、
限界突破した魔力を溜めた大鎌をなぎ払い同時に闇属性攻撃の斬撃波による追撃を放つ

…正解は"その中に本物なんて存在しない"よ
己の愚かしさの対価を支払うが良いわ。お前自身の生命でね



 地下迷宮である『始皇帝陵』を巡回する兵馬俑軍団に脳はない。
 それは強大なオブリビオンである『始皇帝』が彼等に考えることをさせぬためである。裏切りへの対策とも取れる行いであったことだろう。
 脳をくり抜き兵馬俑とされた者たちは、すべて『始皇帝』の意志のもとに統一された行動を取る。
 巡回せよと命令せされれば、決まったルートしか巡回しない。
 そして、侵入者を発見すれば、これを排除しようとする。

 だが、逆に考えるのならば、脳なきゆえに普通の人間ならば感じることもあるであろう第六感を感じることがない。
 視聴嗅覚に知覚されぬ存在がいたとして、それを感じる術を『始皇帝』は兵馬俑から喪失させたことになる。
「ならばこそ、この術を見破る術はないはずよ……」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、己の体を陽炎の呪詛で多い、他者から己の存在を視聴嗅覚での感知を不可能としていた。
 これこそが、吸血鬼狩りの業・隠形の型(カーライル)である。
 後はこの迷宮を踏破するだけである。

 彼女にとって、巡回無き迷宮など踏破するのは容易いものであったし、先行した猟兵達が迷宮の尽くにショートカットを生み出していたからこそ、大幅な時間を短縮して『始皇帝』の存在する玄室まで至ることができたのだ。
「おのれ、おのれ! 朕を愚弄するかのごとき策! 鬱陶しい!」
 己にまとわりつく水を蹴り飛ばし、水銀で身を守る『始皇帝』。その怒りは蠢く水銀の剣となって発露する。
 玄室はすでに多くの猟兵との戦いで荒れに荒れている。
 水浸しになっているのも、猟兵のユーベルコードに寄るものであろう。

「……智者を僭称するならば、この程度の幻術に惑わされることはないでしょう?」
 リーヴァルディは視聴知覚で感知されぬようになっていながら、あえて『始皇帝』を挑発するように姿を表し、『写し身の呪詛』を乱れ打ち、数多の残像でもって集団戦を『始皇帝』に仕掛けるのだ。
「洒落臭い真似を! 朕を謗ることなどあってはならぬ! 朕は皇帝なるぞ!」
 激昂する『始皇帝』の感情に合わせるように水銀の剣が疾走る。
 それをリーヴァルディの写し身の呪詛に寄って生まれた残像向けるが、尽くが空振りに終わる。

 どれもがリーヴァルディそのもの。
「……さあ、どれが本物化見事当ててみるが良いわ……それもハズレね」
 リーヴァルディの残像を貫く水銀の剣。
 残像が襲い来る圧倒的な物量を前に『始皇帝』は混乱する。どれを貫いても手応えがないのだ。
 しかし、襲い来る幻影の中に本物が紛れ込んでいるかもしれないという恐怖が彼を襲う。
「朕を狙うなど、如何なる不敬者か! 死罪! 死罪である! 暗殺など許せるものか!」
 もしも、『始皇帝』が生前の賢さを残していたのならば、リーヴァルディの幻影とその意図を汲み取ることができたであろう。
 しかし、今の彼は水銀の影響か嘗ての知性を失っている。

 だからこそ、気が付かなかったのだ。
 リーヴァルディが闇に紛れ、その手にした大鎌に極大の魔力を込めていることを。その必殺の一撃を解き放とうとしていることを。
「……正解は“その中に本物なんて存在しない”よ」
 放たれる闇色の斬撃波。
 それは水銀の剣を切り裂き、『始皇帝』へと迫る。如何に水銀がガードするのだとしても、それすらも切り裂く膨大な魔力が織り込まれた斬撃は『始皇帝』の体を切り裂くだろう。
 血潮が噴き出し、玄室を濡らす。

 その光景を見やり、リーヴァルディは告げるのだ。
「己の愚かしさの対価を支払うが良いわ。お前自身の生命でね」
 告げる言葉は冷たく。
 されど、これまで彼の傲慢の犠牲になった人々の生命に贖うためにリーヴァルディは闇色の斬撃を再び放つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
始皇帝――偉大な人物との話だが、とてもそうは思えないというか
ま、オブリビオンなら無理もない事か?

迷宮では敵の気配を探り見つからないよう前進
立ち位置の関係などからそれが難しい場合は、神刀を密かに抜いて離れた壁に向かって斬撃波――わざと音を立てて、敵を誘導した隙に進もう

始皇帝と兵馬俑それぞれには漆の型【柳葉】の構えで相対。
兵馬俑には全力で。神刀なら液体金属相手でも痛打を与えられる
一方で始皇帝へ攻撃する際は敢えて、大きな手傷を与えないように刀を振るう……精々油断させて、防御を甘くしてもらおう
奴に三太刀を叩き込んだ所で、今までの斬撃も効果を表す――始皇帝の戦闘能力を奪い、そこから本命の攻撃を叩き込む



 地下迷宮たる『始皇帝陵』は猟兵たちの踏破という名の蹂躙によって尽くがショートカットの痕を刻まれ、また巡回の『辰砂兵馬俑』たちも罠に嵌められ、数を減らしていた。
 時間との戦いである此度。
 それはありがたいことであったし、同時にこの地下宮殿が洛陽に至れば人々が虐殺の憂き目に遭うということを考えれば、猟兵達が後続の者たちのために策を講じることもうなずけるものであった。
 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は巡回の『辰砂兵馬俑』と遭遇した時のことを考え、神刀を抜刀する用意さえしていたのだが、それはどうやら不発に終わりそうであった。

 猟兵の戦いは繋ぐ戦い。
 先行した者が後続の者へと託すからこそ、これまでも強敵であるオブリビオンを打倒することができたのだ。
 だからこそ、鏡介は先行した猟兵たちの轍とも言うべき跡を辿り、『始皇帝』座す玄室へと大幅に時間を短縮して辿り着くのだ。
「『始皇帝』――偉大な人物との話だが、とても走破思えないと言うか」
 その言葉は挑発ととられても仕方のない言葉であった。
 けれど、本来の……いや、生前の『始皇帝』であるのならば、安い挑発であると切って捨てたであろう。

 しかし、今オブリビオンとして蘇った『始皇帝』にとって、それは挑発ではなく愚弄であった。
「朕を愚弄するか! 下賤の者が! 朕は皇帝! 全能なる存在なるぞ!」
 その言葉に鏡介は嘆息する。
 この問答に意味はない。その瞳がユーベルコードに輝く。目の前の敵は断ち切るのみ。
 オブリビオンである以上、滅ぼす以外の道などありえない。
 それはオブリビオンである『始皇帝』をしても当然であった。己を滅ぼさんとする者を前にして、己の力を出し惜しみする理由など何処にもない。
 水銀が形作る『兵馬俑親衛隊』たちが護るように壁となるが、鏡介にとって、それはさほど重要なことではなかった。
「斬り堕とす――漆の型【柳葉】(シチノカタ・ヤナギバ)」
 それは剣閃の一撃。
 放たれる神刀の斬撃は、液体金属が相手であっても痛打を与えるおのである。

 鎧すら断ち切る一刀は、『兵馬俑親衛隊』たちを切り裂き、さらに襲う剣閃が『始皇帝』をガードする水銀すら跳ね飛ばす。
 だが、返す刃はあえて力を緩めていた。
 大きな手傷を与えぬようにと手加減していたのだ。
「くっ……! 朕の親衛隊を切れども、全能たる朕を斬ることは能わずか! 無駄なのだ、遊牧民族共め!」
 しかし、知性失った『始皇帝』にそれを看破する術はない。
 
「精々油断するといい……」
 彼の斬撃は一瞬の内に三連撃。
 残す一撃は足を狙う一閃。『始皇帝』叩き込まれた三撃でもって完成するユーベルコード。
 すなわち、ユーベルコードの封印である。
「これが漆の型【柳葉】の完成。これが本命だ」
 煌めくは神刀の刀身。
 その輝きを『始皇帝』は如何なる感情で見ただろうか。己を滅ぼすためだけに振るわれる斬撃。

 言いようのない恐怖。
 それは生前にも感じたものであったことだろう。死の恐怖。逃れたいと思う一心でもって水銀を飲み干したのだ。
 権力も富も手に入れた。されど手に入らぬものがあった。死から逃れる術である。それだけは如何なるものを手に入れたといしてもついぞ手に入ることはなかったのだ。
「やめろっ、朕は、朕は皇帝なるぞ!」
「オブリビオンになっても滅びが恐ろしいか。だが、その言葉に意味はない」
 放たれる斬撃。

 それは深々と『始皇帝』に刻まれる。
 どれだけ強大なオブリビオンであったとしても、繋ぐ戦いをする猟兵にとっては全てが乗り越えることのできる存在である。
 鏡介はそれを知るからこそ、躊躇いなく、そして迷いなく己の太刀筋でもって後続に託すことができる。
 迸る斬撃は柳の如く靭やかに、確実に『始皇帝』へと打ち込まれるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
どうにもつける薬は無さそうな感じだねえ。
とはいえ兵隊も多いし本人も強いと。
まあ、何とかしようか。

さて、敵を避けて迷宮を抜けるなら、
【撃砕突破】で迷宮の壁をぶち抜いて進めばいいかな。

兵馬俑は始皇帝の宮殿壊すなんてやらないだろうし、
追いかけてきても壁や天井を崩して道を塞いだりしていけば、
壁を壊して進めるこっちの方が早く始皇帝にたどり着けるよね。

始皇帝の所に着いたら、相手が持ってる水銀めがけて電撃を放って攻撃するよ。
水銀は金属だから電気を通すし、アースして地面に流すなんて知らないだろうしね。
痺れて動きが止まったら、【撃砕突破】で体当たりを叩き込むよ。

ここがアンタの墓なら、もう一回ここで寝るといい。



 どれだけ地下迷宮である『始皇帝陵』が猟兵の道を阻むのだとしても、それは時間稼ぎ以外の何物にも成りえはしなかった。
 それが示すとおり先行した猟兵たちは罠を逆利用したり、そもそも壁などなかったかのごとく破壊せしめている。
 策略とはすなわち、敵の思惑に乗るからこそ効果を発揮する。
 ならば、生命の埒外にある存在である猟兵は如何に。
 答えは明快である。
 ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、それを示すように、瞳をユーベルコードに輝かせる。
「あたしの道を、遮るな!」
 単純で重い突進よる体当たり。

 己を質量兵器そのものへとなさしめる撃砕突破(ドレッド・ノート)は『始皇帝陵』の迷宮の壁をぶち抜き、『辰砂兵馬俑』軍団すら吹き飛ばしながら突き進む。
 目指すは『始皇帝』の玄室のみ。
「――ッ!? なんだ、何が起こった!?」
 これまで先行した猟兵達と戦っていた『始皇帝』は目を剥く。
 巨大な地鳴りの如き音が響き渡り、この玄室へと飛び込んできた存在、その異形を見やる。

 ペトニアロトゥシカは、彼女に気がついた『辰砂兵馬俑』軍団すら崩落する壁や天上に巻き込みながら一直線に『始皇帝』を目指していた。
 なにせ『兵馬俑』軍団より彼女の方が圧倒的に早いのだ。
 その進軍速度は、個であるからこそ群を圧倒する。
「どうにもつける薬はなさそうな感じだねえ……」
 ペトニアロトゥシカは見る。
『始皇帝』はこれまでの打撃を受けて尚立っている。これほどの数の猟兵が迷宮を突破し、彼に打撃を与えてなお健在であることが『始皇帝』の力の強大さを物語る。

 知性なくとも、その力である水銀が剣に形を変え、襲い来る。
「水銀は金属――どれだけ生前に賢帝と言われていてもね」
 放つ電撃が水銀の剣を伝って『始皇帝』に流れ込む。
 肉の焼ける音と匂いが充満し、絶叫が迸るのだ。
「グォォ!? 朕の肉が、やける! この玉体を焼く、だと!? ありえぬ! 天の雷を操る者など!」
 もしも、生前の知性が残っていたのならば、『始皇帝』は雷撃を地面に逃がすことをしただろう。
 けれど、彼はそれを知らない。知っていたとしても、それを活用する知性がない。だからこそ、猟兵たちは、そこに付け入る隙を見出すのだ。

「朕は皇帝なるぞ! 獣風情が、朕を打倒するなどあってはならぬ!」
「ここがアンタの墓なら、もう一回ここで寝るといい」
 ペトニアロトゥシカの瞳がユーベルコードに輝く。
 己の肉体をもって迫る一撃。それは何物も止めることができない。水銀のガードごと『始皇帝』を陵の壁面に叩きつける。
 破片や副葬品の数々が砕け、『始皇帝』は痛みにあえぐだろう。

 しかし、ペトニアロトゥシカは知っている。
 それはただの反応でしかない。オブリビオンとして蘇った『始皇帝』にあるのは、ただ嘗ての威光を取り戻さんとする欲望だけである。
 この地下宮殿が目指しているのは洛陽。
 今を生きる人々の生命を脅かさんとしている存在をペトニアロトゥシカは許さない。
「どれだけ強大な存在でも、皇帝と呼ばれた男であっても。過去が今を脅かしていい理由なんて無い。だから」
 もう一度眠れとペトニアロトゥシカは己の拳を『始皇帝』に叩き込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
猟兵を返り討ちにしようとするのはオブリビオンならば当然ですが……存在を理解した上で対峙するのとそうでないのでは大きな開きがありそうですね。

とはいえ、この数の兵士たちに液体金属の装甲を与えるその力は本物。あちらの戦力が迷宮に分散している今が好機ですね。

【ファンブルの冬】を使用し、迷宮全体に氷霧を張って兵馬俑軍団から姿を隠しつつ、その運気を吸い取ります。
「軍団」と呼べるほど数がいるのであれば、効果も大きいでしょう。
幸運を利用し迷宮を抜け、霧に紛れて始皇帝を「フィンブルヴェト」で狙い撃ちます。

永遠などこの世にはありません。どんなに権勢を誇ったところで……落とすには一発の弾丸があれば十分です。



 猟兵とオブリビオンは滅ぼし、滅ぼされる関係でしかない。
 どれだけ生前の偉業凄まじき英傑であったとしても、過去に沈み歪んだ果に『今』ににじみ出てくるのならば、それはオブリビオンであり滅ぼさなければならない。
 しかし、『始皇帝』は生前の知性を失っている。
 水銀による影響なのか。
 それも定かではないが、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、そこにこそ付け入る隙があると知る。
「猟兵を返り討ちにしようとするのはオブリビオンならば当然ですが……存在を理解した上で対峙するのとそうでないのでは大きな開きがあります」
 しかしながら、脳をくり抜き『兵馬俑』と変え、辰砂による液体金属の装甲を与える力は、強大なオブリビオンである証である。

 今や『始皇帝陵』は本来の地下迷宮としての様相を失っていた。
 先行した猟兵たちが迷宮を尽く破壊し、そして巡回する『兵馬俑』軍団ですら罠に陥れ、その数を減らしていた。
「敵が群であるというのならば――」
 セルマは己の冷気を操る力を開放する。
 その瞳に輝くはユーベルコード。地下迷宮に巡回する全ての兵馬俑たちの視界を氷霧で制限し、運気を吸い上げていく。
 それこそが、ファンブルの冬(ドウシウチノフユ)。
 セルマの手繰る冷気の力は、こと対群においてこそ発揮される。運気は全てセルマへと飲み込まれていく。

 巡回する『兵馬俑』たちは皆、己たちの視界が制限されていたことさえ気がつくことがなかっただろう。彼等は考えない。その考える力は全て『始皇帝』が握っている。だからこそ、この異変にすら対処できないのだ。
「何事だ! これは! 朕の危機であるぞ! 何故兵馬俑共は朕の救援に来ない!
『始皇帝』は度重なる猟兵の襲撃に晒されながら、未だ健在であった。
 身に刻まれた傷跡は凄まじいものであるが、強大なオブリビオンである彼にとって、それは消滅するには未だ至らぬものであった。

「これだけの攻撃を受けて尚、存在し続けるのは大したものですが……」
 声が響く。
 ひどく静かな声であったことを『始皇帝』は知る。しかし、それが何処から響くのかもわからなかった。
 だが、氷霧が『始皇帝』の玄室を満たしていることだけは理解できる。
 液体金属で出来た『兵馬俑親衛隊』を展開し、己を護る壁とする。彼にとって真に恐れるのは死である。
 権力も富も全て手に入れた。
 だが、一つだけ手に入れることのできないものがある。それは死から逃れる術である。

 どうあっても逃れられぬ死。
 それを回避せしめようとするのは、自然な流れであった。もっと若く、もっと生きたい。その願いが歪み果てた結果が水銀中毒という死。
「永遠などこの世にはありません」
 セルマの静かな声が氷霧の向こう側から響き渡る。
 彼女の姿が『始皇帝』に視認されなかったのは、これまで吸い上げてきた幸運ありきである。
 しかし、たった一つのやり方さえできればよかったのだ。
 己を視認させず、ただ引き金を引く瞬間さえ許されれれば、セルマには十分であったのだ。

「どんなに権勢を誇ったところで……落とすには一発の弾丸があれば十分です」
 引き金を引く。 
 氷霧の向こう側から迫る死の気配を『始皇帝』は知っただろうか。
 感じることもできなかったかもしれない。放たれた弾丸は『始皇帝』の体を貫く。
 逃れられぬ死。 
 それはオブリビオンになったとしても変わらぬ。
 運命というものがあるのだとして、死は必定。ゆえに、『始皇帝』はその欲望を叶えることもなく、歪み果てたまま二度目の死を迎える結末を回避できない。

「それがあなたの運命なのです」
 セルマはスコープの先にある『始皇帝』に告げる。
 その運命を前に足掻くがゆえに多くを犠牲にした存在、その末路を見送るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「我こそが、永遠不滅の美少女魔女だ!」(対抗

相手は皇帝か……
だが我は皇帝を超える『菜医愛流帝』より番長の名を受け継ぎし者!
皇帝ごとき、我の威光の前にひれ伏すが良い!

「いいことを閃いたぞ!
皇帝の部下たる馬どもは我が馬刺しにして食ってくれよう!
フハハハ!不老不死の我、頭脳が冴え渡っているな!」(注:兵馬俑は馬ではありません

おぶりびおん?
それ、なんだったか?
ともかく、我の馬刺しの邪魔をするものは滅するのみ!

「馬刺し満載の始皇帝陵とやら、我に渡すのだーっ!」

とりあえず、敵の頭上から【隕石召喚】をぶち込めば、どれだけ守りを固めていようと関係あるまい!(頭悪い作戦

「我こそが永遠不滅の美少女だ!フハハハ!」



 嘗て偉業を成し遂げた人物。
 それが『始皇帝』である。彼の偉業は言うまでもなく中国史上初の統一である。その手腕は凄まじいの一言である。
 ゆえに『始皇帝』が生前の知性を宿していたのならば、猟兵たちは地下宮殿たる『始皇帝陵』の攻略にももっと手間取っていたことだろう。
 もしも、『兵馬俑』軍団に己達で思考する脳を残していたのならば。
 ただ巡回ルートをめぐるだけでしかない彼等の隙を猟兵たちは突くことはできなかったし、強引に迷宮を破壊するという術も対策をとられていたことだろう。

 そうはならなかったのは、水銀の影響によるものか『始皇帝』は、己の存在こそを至高のものとしていいた。
 己以上はなく。そして、己以下ばかりであるとおごるからこそ、猟兵たちの侵入を赦し、己へと打撃を与えられるのだ。
「相手は皇帝か……だが我は皇帝を超える『菜医愛流帝』より番長の名を受け継ぎし者! 皇帝如き、我の威光の前にひれ伏すが良い!」
 フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)は、永遠不滅の美少女魔女である。
 いやまあ、そういうことなのである。
 しかしながら、番長の名を受け継いだ下りは、割りと黒歴史だと思うのだが、そこのところどうなのだろうかと思わないでもない。

『始皇帝陵』の迷宮はすでに先行した猟兵たちのおかげでだいぶショートカットが進んでいる。
「いいことをひらめいたぞ! 皇帝の部下たる馬どもは我が馬刺しにして食ってくれよう! フハハハ! 不老不死の我、頭脳が冴え渡っているな!」
 わりと水銀の影響で知性失っている『始皇帝』とどっこいどっこいな気がしないでもない。
 しかし、悲しいかな。
 今のフィアにはツッコミ役が存在しない。
 ついでにいうと、『兵馬俑』は馬の字こそ使っているが、馬ではないのだ。

「おぶりびおん? それ、なんだかったか? ともかく、我の馬刺しの邪魔をする者は滅するのみ!」
 わー、本当にどっこいである。
 フィアの目にあるのは馬刺しのみ。馬刺しなんて何処にもないし、調理のしようのない敵ばかりであるというのに、フィアはショートカットされた道を真っ直ぐに『始皇帝』の玄室へと迫るのだ。
「馬刺し満載の始皇帝陵とやら、我に渡すのだーっ!」
 その声は玄室において猟兵達と戦っていた『始皇帝』にも届いたことだろう。
「なんだ? なにを言っておる? 馬刺し? 知らぬぞ、そんなものは!」

『始皇帝』の叫びも尤もである。
 展開される水銀の剣がフィアへと襲いかかる。己を暗殺線とする愚か者を串刺しにせんとするが、フィアは其れよりも早く、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「天空より来たれ、全てを破壊する一撃よ」
 天空より召喚された巨大隕石が『始皇帝陵』へと迫る。
 魔力に寄り凄まじい速度で持って飛翔し、その隕石の質量と落下速度、フィアの極大魔力……何より、彼女の食欲に比例した力はあらゆる障害を吹き飛ばす一撃となって打ち込まれる。

 これこそが、フィアの大魔法にして、食欲の権化が齎す一撃。隕石召喚(メテオストライク)である。
「我こそが永遠踏めの美少女だ! フハハハ!」
「なんだ? 何を言っているのだ、コヤツは!?」
 マジで理解できないと『始皇帝』はたじろいだことだろう。皇帝である己にとって知らぬものはない。
 しかし、理解不能なる存在に出くわしたのは、オブリビオンとして蘇ってから初めてであったのかもしれない。
 フィアはまさしくその理解不能の凝縮した存在であったことだろう。

 敵を滅ぼすよりも食欲。食欲ありきの滅ぼし方。馬刺しなんてないのだけれど、それでも勘違いしたフィアの食欲大暴走は止まらない。
 それが力となるのが生命の埒外たる所以であったのかもしれない。
「細かいことはどうでもいい! 馬刺しを! 寄越せ――!」
 フィアは隕石の一撃とともに水銀に守られた『始皇帝』を打ちのめし、破壊された『始皇帝陵』の中で馬刺しを求めて彷徨う。

 しかし、馬刺しなど見つかろうはずもなく。
 只々、極大なる魔術の行使で腹を減らしに減らしたフィアは高笑いというか、激昂というか、食欲の権化としての姿を晒すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
偉大な先達が蝕まれた姿を見るのは忍びなき物があります

かの皇帝を憐れむ程、私の戦法も上等な物ではありませんが

機械馬に騎乗しUCのバリア纏い突撃
迷宮の壁を粉砕、蹂躙、一直線に駆け抜けつつ、背後に物資収納Sの爆薬を投げ追跡妨害の破壊工作
兵馬俑軍団が追い付けぬ勢いで迷宮を突破

封神武侠界の地に今を生きる人々の為、討ち取らせて頂きます
御覚悟を、始皇帝

所で…何故私が辰砂兵馬俑を突破出来たと思いますか?
ある仙人より授けれられし水銀を操る宝貝…術を一度解かぬ限り、これにて彼らは意の儘に

貴方に侍るそれらも我が方に与する暗殺者
嘘と思うなら解除の命令を出しては如何でしょうか?

動揺で陣形乱れた隙を付きランスチャージ



 鋼の騎士道突撃行進曲(チャージ・アット・ウィンドミル)が如き疾駆の音が地下迷宮『始皇帝陵』に響き渡る。
 それは数多の猟兵達が切り開いた玄室への道を往くものであった。
 敵は『始皇帝』。
 かつての偉業を成し遂げた存在。
 史上初の大陸統一。
 それが後の歴史に如何なる影響を与えたのかなど言うまでもない。
 ゆえに、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はそれを忍びないものであるとする。
「偉大な先達が蝕まれた姿を見るのは忍びなき物があります」
 とは言え、己もまたかの皇帝を憐れむほど、自身が取る戦法もまた上等なものではないと彼は自嘲する。

 機械馬を仮、疾駆するトリテレイアは自身と乗騎を包み込む円錐形のバリアフィールドと共に迷宮の壁を粉砕し、『始皇帝陵』の中心たる玄室を目指す。
 突き進むそれは槍の穂先の如きものであり、いかなる障害をも突破せしめるものであったことだろう。
 あらゆる障害を貫く槍となったトリテレイアは『兵馬俑軍団』も追いつけぬ勢いで迷宮を突破し、『始皇帝』に迫るのだ。
 これまで猟兵たちの戦いによって地下迷宮たる『始皇帝陵』は甚大なる被害を被っていた。
 空より降り注ぐ巨岩もまた同様である。

 地下迷宮であった名残すら探すのが難しい最中、『始皇帝』は己が周りに『兵馬俑親衛隊』を展開し、己の身を護るのだ。
「おのれ! なんとかという遊牧民族共め! 朕は皇帝なるぞ! 朕の威光を知らぬ蛮族など蹴散らせばいいものを、生意気に朕の玉体に傷をつける! 許さぬ許さぬぞ!」
 だが、トリテレイアは意に介さない。
「封神武侠界の地に生きる今を生きる人々のため、討ち取らせて頂きます。御覚悟を、『始皇帝』」
「ふざけるな! 朕を討つなど天に唾するものとしれ! その大逆を赦してはおけぬ!」
 激昂する『始皇帝』を前にトリテレイアは告げる。
 冷静な、『始皇帝」とは真逆なる言葉であった。

「ところで……何故私が『辰砂兵馬俑』を突破できたとお思いで? ある仙人より授けられし、水銀を操る宝貝……術を突かぬ限り、これにて彼等は意のままに」
 それはこれまでトリテレイアが迷宮を突破する際に使っていた爆薬のことを示すものであった。
 確かにそれは敵の接近を阻むための爆薬であった。
 だが、『始皇帝』はその偽りを看破する知性がない。ならばこそ、トリテレイアの言葉は真に至ることだろう。
 いや、本来の知性があれば、それをブラフであると見抜いたかもしれない。それができぬからこそ、オブリビオンの『始皇帝』なのだ。

「な、何を言う! そんなものがあるはずがない! 現に朕の兵馬俑は――」
「貴方に侍るそれらも我等が方に与する暗殺者。嘘だと思うなら解除の命令を出してはいかがでしょうか?」
 トリテレイアの声は平坦そのものであった。
 人の身であれば声に揺らぎもでたことだろう。しかし、彼はウォーマシン。そこに感情を載せぬことなど容易であったのだ。
「ばかな……! 朕を護る親衛隊……そんなことが!」
 揺さぶる言葉に『始皇帝』は揺らぎに揺らぐ。
 トリテレイアの言葉が真であるかを試すことができない。とはいえ、疑念も捨てきれない。
 知性を失ったからこそ、簡単なブラフにも引っかかるのだ。

 トリテレイアはその一瞬を見逃すことはなかった。
 動揺し、『兵馬俑親衛隊』たちの隊列が乱れた瞬間、一気に機械馬『ロシナンテⅡ』と共に距離を詰め、その馬上槍を突き出す。
 それは『始皇帝』が防御することも出来ぬ一撃。
「ご無礼は承知の上。しかしながら、申し上げます」
 トリテレイアは言う。
 己の戦法は褒められたものではない。わかっている。だが、敵を穿つために必要なことはどんなことでもする。
 例え、それがブラフにブラフを重ねた一撃のためであっても。
「今を生きる人々のために戦うことこそが、猟兵であるからこそ。貴方の存在こそが、在ってはならぬものであれば、これを討つと申し上げた」

 放たれた一撃は鋭く、『始皇帝』を吹き飛ばす。
 嘗て在りし名君も、死の恐怖から逃れることはできない。それを示すようにトリテレイアは二度目の死を与えるべく、己の槍でもってオブリビオンを討つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…始皇帝、ね……UDCの歴史でも確か水銀中毒だったという話もあったけど…
そのお陰で頭が少々あれな事になってるのか……出来れば健在なときに話したかったな…

…さて、簡単に言えば怪物に見つかることなく迷宮を踏破しろ…と…
…アルダワでは良くやってた事だからなんとかなるかな…
……まあ命令してるんだから伝令を辿るなり声を辿ればたどり着けるか…
…心理隠密術式【シュレディンガー】で隠れながらいこう…

…水銀を操るのは良いけど…水銀は無機物だね…【我が手に傅く万物の理】で水銀の構成要素を水に変えて無効化…
無防備になった始皇帝に術式装填銃【アヌエヌエ】で炸裂弾をあびせてダメージを与えていくとしよう…



「……『始皇帝』、ね……UDCアースの歴史でも確か水銀中毒だったという話もあったけど……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は猟兵たちの突撃に寄って荒れに荒れた『始皇帝陵』の有り様を見やりながら、その中心たる玄室を目指す。
 すでに多くの猟兵達が策を講じ、また力任せに迷宮を突破したおかげでメンカルは悠々と道を進むことができた。
「そのお陰で頭が少々あれなことになってるのか……」
 この惨状は、『始皇帝』が生前の知性を失っているからこそ、引き起こされた光景であろう。

 猟兵がなんであるかを正しく認識していたのであれば、ここまで簡単に『始皇帝陵』の迷宮を突破されることもなかったであろう。
 できれば健在な時に話がしたかったと悔やむメンカルの嘆きもわかろうというものだ。それ以前にメンカルはアルダワ迷宮を踏破してきた猟兵である。
 迷宮探索などよくやってきたことだ。
 簡単に言えば、怪物に見つかることなく迷宮を踏破せよ、というミッションにほかならない。
「まあ、脳をくり抜いて『兵馬俑』にしているのなら、伝令を送っているんだろうし……だからこそ、簡単な命令しか遂行できないんだろうね」
 メンカルは心理隠密術式『シュレディンガー』でもって隠れ潜みながら、迷宮を突破する。

「と言っても……これじゃあね。迷宮っていうより一本道だ」
 猟兵たちの突破した跡。玄室へと至る道が、散々に刻まれている。その最奥で猟兵達と戦う『始皇帝』の姿を見やれば、追い込まれていることが理解できる。
 覇者のオーラを纏う水銀の大渦が、追い込まれても尚、その力を健在なままにしてる要因であろう。
「朕は滅びぬ! 朕は皇帝なるぞ! 遊牧民族の輩がなんとする!」
 その言葉にメンカルは息を吐き出す。やっぱり健在な時に出会いたかったと思わざるを得ない。

「……水銀を操るのはいいけど……水銀は無機物だね……数多の元素よ、記せ、綴れ、汝は見識、汝は目録。魔女が望むは森羅万物全て操る百科の書。我が手に傅く万物の理(マテリアル・コントロール)」
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
 敵が水銀を手繰るのであれば、メンカルのユーベルコードはそれを変換することができる。
 水銀の構成要素を水に変えて無効化し、一気に疾走る。
「――ッ!? 朕の力が無効化される……何をした! 朕はこんなこと知らぬぞ!」
 喚く『始皇帝』にメンカルは術式装填銃を向ける。
 もはや鉄壁の水銀のガードはない。
 あるのは水のみ。ならば、それを打ち破ることなど容易であった。放たれる炸裂弾が『始皇帝』に浴びせかけられ、その体に弾殻が破砕した破片が襲い掛かる。

 広範囲にばらまかれる破片は躱すことはできず、如何に覇者のオーラを纏う存在であっても、その強大な力を無きものとするだろう。
「ぐぅ……! 朕の玉体にこれほどの傷を負わせる……! 皇帝なる朕に!」
 其処に在るのは生前の賢帝たる『始皇帝』ではなかった。
 ただ愚昧なる存在。
 己の知性ばかりを信じ、他者を軽んずるだけ。過去に歪み果てたがゆえに、見るに耐えぬ『始皇帝』の末路がそこにあった。
「朕は死なぬ。死んでなるものか……! 死こそ超越したはずだ、朕こそが不老不死の体現者のはずだ!」
 だが、それは否定される。

「……違う。不老不死になど成っていないし、死んだ後にオブリビオンとして、過去の化身として蘇っただけ。仮初の生命を得ただけの存在……」
 メンカルは術式装填銃『アヌエヌエ』から放たれる炸裂弾でもって『始皇帝』を追い込む。
 それは二度目の死。
 必定たる滅び。オブリビオンとして蘇ったのならば、猟兵が滅ぼす。一度目の死は己が不老不死を求めたが末。
 ならば、此度の死は如何なる要因によってか。
「今を侵食などさせない。歪み果てた不老不死の夢はここで潰える……」
 メンカルの放つ炸裂弾の一撃が『始皇帝』を穿ち、権力者が最後に追い求める不死への願いを断ち切るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
こちらにとってはありがたいけど
酷い状態の過去でオブビリオン化しているね
全盛期ならもっと違ったのかなぁ

これはとても永遠とは言えませんの
直ちに正すべきですの

目立たない様に移動しつつ
迷宮の立体構造を利用して
ワイヤーガンで移動したり
落とし穴を利用して
空中浮遊で追手を置き去りにしたりして
辰砂兵馬俑に対処するよ

始皇帝と対峙したら
相手の戦法を観察しつつ
ガトリングガンで攻撃しよう

あえて隙を作って攻撃を誘いつつUCを使用し
相手が疲弊するか大きな隙を晒すまで耐えよう
自分の攻撃が通じない事に癇癪を起こして
殴り続けてくれたらしめたものだね
石像になってしまえば水銀の蒸気も関係ないし

頃合いを見て石の体で思いっきり殴ろうか



 オブリビオン『始皇帝』は生前の知性を失っている。
 それが水銀による影響なのかはわからない。されど、猟兵たちにとってはありがたいことであった。
 もしも、生前の知性を有する『始皇帝』であったのならば、猟兵たちを寄せ付けぬ術策でもって退けたことだろう。
「ひどい状態の過去でオブリビオン化しているね。全盛期ならもっと違ったのかなぁ……」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、地下迷宮『始皇帝陵』の惨状を目の当たりにして、そうつぶやいた。

 晶がそうつぶやくのも無理なからぬ。
 目の前の地下宮殿『始皇帝陵』は最早、迷宮としての体裁を見ることはない。
 数多の猟兵達によって蹂躙された痕しか残っていない。
「これはとても永遠とは言えませんの。直ちに正すべきですの」
 内なる邪神も嘆息している。
 ならば急がねばならない。この地下宮殿が洛陽に至れば、虐殺が引き起こされてしまう。そのために晶はワイヤーガンの射出でもって迷宮を踏破する。 
 猟兵たちの進軍は凄まじい勢いであったのだろう。
 あちらこちらに配されていた罠の類は潰されているし、巡回の『兵馬俑』軍団すら壊滅に近い。

 さらに迷宮の壁は破壊され、一直線に『始皇帝』が座す玄室へと至る一本道が出来上がっている。
「これはまた……みんな、すごいな……」
 だが、これで大幅にショートカット出来るというものだ。晶は玄室へと飛び込む。そこにあったのは猟兵との戦いで消耗した『始皇帝』の姿であった。
 水銀を手繰り、それでもなお、己の威光を信じてやまぬ愚昧。
「朕は皇帝のはず……このようなところで倒れていいわけがない。そうだ、朕こそが至高の皇帝なるぞ!」
 晶の姿を認めた『始皇帝』の放つ水銀の剣。
 一度は水へと分解された水銀であったが、再び体勢を立て直したのは、素直に強大なオブリビオンとして驚嘆すべきところであったことだろう。

「それでも滅びるんだよ。オブリビオンは、『今』に居てはいけない存在なのだから」
 晶は放たれる水銀の剣を身一つで受け止める。
 封印の縛め(シールド・スタチュー)によって己の肉体を鉱物に変換し、水銀の剣による一撃を防ぐのだ。
 まったく動けなくなることが難点であったが、荒れ狂うように放たれる水銀の剣をよく観察することが出来た。
「何故だ! 何故倒れぬ! 朕の放つ剣であるぞ!」
 激高するままに水銀の剣を放つ『始皇帝』は冷静さを欠いている。知性も欠けているのならば、それは最早恐れるに値しないものであった。

「そんなことに意味はないよ。僕の体は今、石像そのもの」
 動けなくなるのが玉に瑕であるけれど。
 それでも晶は己の石像化を解除し、疲弊しきった『始皇帝』へと迫る。これまで他の猟兵達が紡いできたことを己もするだけだ。
 そうすることで猟兵たちは強大な敵に打ち勝ってきたのだ。これまでも、これからも、それは変わることのない事実である。

「待て! 朕は皇帝! お前の望むものをやろう! 朕の財ならば、お前も――!」
 目がくらむはず。
 その言葉に晶は耳を貸さなかった。己の拳は石と化しているし、そんな物に興味などない。
 今を侵食するオブリビオンへとくれてやれるものなど一つしかない。
「いらないよ――代わりにお前にやれるのは、これだけだから」
 放たれる拳の一撃が『始皇帝』の頬をしたたかに打ち据える。
 鈍い音が響き渡り、吹き飛ぶ『始皇帝』の体。
 誰もが権力と富を得た後に望むのは不死である。しかし、それは手に入れることの叶わぬものであると知らしめるのが『始皇帝』の末路であろう。

 どんなものも滅びる。
 だからこそ、『今』を懸命に生きる。それこそが、生命に許された虹の如き美しき煌き。
 己の中に存在する邪神は、その煌きこそを永遠にしたいと言う。
 晶とは異なるものであったことだろうけれど。それでも晶が猟兵である限り、灰色にも似た停滞は訪れさせはしないと、過去の化身打倒し続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うわー…
やっべーやつだこれ…
やっぱり水銀飲んでるような奴は駄目だわこれ
けどこれで能力は高いんだから、やってられなくなるね

迷宮と巡回する兵馬俑軍団…
兵馬俑が巡回してるのも、シュールな感じだけど…
まあ、良いか
迷宮の経路を『情報収集』し経路図を作りながら移動
角では身を隠しながら、巡回が居ないかしっかり確認しながら移動
巡回が居たら、回り道で撒けないか経路図で確認して接触を避けよう
ダンジョンアタックは楽しいんだけど、先に待つのがお宝じゃなくてアレというのがげんなりするね…

始皇帝の近くまで潜れたら、ちょっと服装を汚しておこうか
ボロボロの、やっとの思いで此処までたどり着いた感じで…
始皇帝の前にも倒れこむような感じで姿を現そう
これで少しでも油断してくれれば儲けものだね
ま、判断力も鈍ってそうだし大丈夫かな
一瞬でも油断を誘えたらその隙を付く
初撃に全力を掛ける!
オーバーロード、外装転送
武装全抜刀
一気に距離を詰めて4剣全てで『串刺し』
たとえ防がれても問題ない!
【偽書・焔神】起動
蒼炎を放ち、始皇帝を燃やし尽くそう



「うへー、これじゃマッピングもへったくれもないなー」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は散々に破壊された地下迷宮『始皇帝陵』の惨状を見やる。
 猟兵たちは迷宮を突っ切って破壊しながら中心たる『始皇帝』の座す玄室へと至っていた。あるいは、あらゆる罠を踏み潰し、『辰砂兵馬俑』の巡回すらも振り切っている。
 思い切りが良いと言えば聞こえがいい。
 けれど、これはあんまりにもあんまりだと思う。『始皇帝』に同情をこそしないが、それでも玲はシュールだな、という感想を抱くのだ。
「ダンジョンアタックは楽しいんだけど、先に待つのがお宝じゃなくてアレというのがげんなりするね……」

 そう、ダンジョンの最奥とも言うべき玄室に座すのは『始皇帝』である。
 しかも、生前の知性はなく、水銀による影響によってか、愚昧なる存在へと成り下がっている。
 もしも、生前の知性があったのならば、此処まで迷宮を蹂躙されることはなかっただろう。
 もう少し歯ごたえのある迷宮に成っていたのではないかと玲は残念仕切りに思うのであった。
「朕の玄室をあらし、朕の玉体にまで傷をつけるなど許されざる蛮行! なんだ、その……猟兵とやらが何するものぞ! 朕の怒りに触れたのならば、地の底まででも追いかけて滅ぼしてくれる! 朕は皇帝である!」
 激高する『始皇帝』を見やる。

「やっべーやつだこれ……」
 やっぱり水銀呑んでるような奴はダメだわ、と玲は嘆息する。
 此処まで追い込まれて尚、己の威光を信じている。現状を把握できていない。強大なオブリビオンとしての力があるからこそ、未だ姿を保っているだけに過ぎない。
「これで能力は高いんだから、やってられなくなるね……」
 ついでにいうと、めんどくせー奴である。
 だからこそ、玲は初撃の一撃に全てを掛けるのだ。非常に癪であるが、『始皇帝』のオブリビオンとしての強大さは本物だ。

 まともに戦っていては、消耗させるばかりで決定的な一撃を叩き込めない。
 だからこそ、玲は己の服装を汚して玄室に至る。
 手にした模造神器の刀身を地に立て、やっとの思いで此処までたどり着いたという体を為して息を吐き出す。
 息も絶え絶え……ではないが、まあ、そう見えるのは『始皇帝』のフィルターのお陰であろう。
「また来たか! 遊牧民族風情が! 朕の迷宮にかかり死せるのならば楽に死ねたものを! お前達の脳は全てくり抜いて兵馬俑にしてくれる! それほどに朕の怒りを買ったことを後悔しながら――」
 死ね、と迫るは水銀の剣。
 伸縮自在たる刃は確かに恐るべき力であったことだろう。

 けれど、玲はやはり嘆息する。
 簡単に騙された。知性が失われれば、生前の偉業を成し遂げた『始皇帝』であろうとも、愚昧に墜ちるのだ。
「オーバーロード、外装転送」
 玲の瞳が超克の光に満ちる。それは、オーバーロードに居たり、真の姿たる武装を持って知らしめる模造神器の力。
 頂に至らんとする己の力の発露であった。

 己が両の手にする模造神器の蒼き刀身が煌き、外装たる副腕が二刀を構える。
「武装全抜刀――システム切替、偽書・焔神起動」
 それは刹那に満たぬ瞬間。
 偽書・焔神(ギショ・ホムラカミ)による蒼き炎が浄化の力を伴って、迸る。
「――知らぬ! なんだそれは、その輝きは!」
『始皇帝』は見ただろう。その炎を。全てに浄化を齎す蒼き炎を。水銀の剣が迫る玲へと放たれるも、それらの尽くが模造神器の四振りによって弾き飛ばされる。

 防御が間に合わない。
 水銀のカードをかいくぐった玲と『始皇帝』の視線が耕作する。
 放たれる蒼炎は、『始皇帝』を燃やし尽くすだろう。それは知性ありし頃の彼であったのならば、容易に想像することができた。
 これが詰みであると。
 だが、彼は理解できない。水銀による影響からか、低下した知性では己が皇帝であり、絶対の存在であることしか理解できないのだ。
「朕の威光が、この程度の炎で滅ぼされることなど、あってはならぬ! 朕は皇帝なるぞ!」
 最後まで、その言葉は虚しく玲の耳を打つ。

 玲は初撃に全てを賭けた。
 その時点で勝負はすでに決していたのだ。玲の姿を見て、ボロボロであると侮った時点で『始皇帝』はギリギリのところに居たのだ。
 嘗て、己を暗殺せんと迫った者のことを覚えていたのならば。
 玲に模造神器を抜刀させることすらしなかっただろう。そのための方策を持っていたはずだ。
 だが、オブリビオンとなった『始皇帝』にそれはない。
 例え、己を暗殺しようとして未遂に至った存在の不手際が重なり合った偶然の産物であったのだとしても。

 それでも彼は生き残ったのだ。
 その事実を覆すことはできない。数多の暗殺を躱した歴史をこそ忘れ去ったからこそ、オブリビオンとしての『始皇帝』は滅びるべくして滅びるのだ。
「その傲慢、猛り、狂い、燃やし尽くせ」
 嘗て成就ならざりし、暗殺。
 しかし、時を越え、世界を越えて成就する。蒼き炎がそれを成すのだ。

 打ち込まれた蒼炎が『始皇帝』の体を焼き尽くす。
 燃え猛る蒼炎は、超克の力を得て、強大なるオブリビオンそのものを滅却せしめる。
「――どんな賢帝も権力と富を得れば、最後に求めるのは不老不死……なら、それが追い求めても仕方ないものだと水銀を飲み干す前に気がつけたのなら」
 また結果は違っていただろうにと、玲は模造神器の蒼炎の煌きの中に来ていく『始皇帝』を見送る。

 史上初の統一。
 それをなさしめた偉業をこそ、誇るのではなく。
 その知性をこそ、誰かのために使うことができたのならば。歴史に名を残したいみもまた違ったものとなっただろう。
 玲は停止した地下宮殿が瓦解していく中、己の模造神器を収め、『始皇帝』の末路を彩った蒼炎と共に去るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月12日


挿絵イラスト