その城は月光の如く輝いて
●月に輝く地底城塞
ダークセイヴァーには太陽は昇らない。空に見えるのは満ちて欠ける、月だけだ。
そんな世界の月の満ち欠けに呼応して輝く城塞が、地底都市のところどころにあるという。
城主不明の謎めいたそれは『月光城』と呼ばれ、第五の貴族の干渉すら退けあらゆる存在の侵入を拒むとされている。
そんな月光城の一つ、城塞の中には奇妙な霧が立ち込めていた。
視界が酷く悪く、建物の中なのに壁も殆ど視認できない程。霧の中から聞こえてくるのは水の音と苦悶のうめき声。
おぞましき仕掛けに捕らえられ、『作品』に仕立てられた人々の苦しみと嘆きの声が月光城内に絶え間なく響いているのだ。
グリモアベース。
「ちょっと封神武侠界の戦争で忙しい所に悪いんだけど、手を貸してくれないかな」
シャチのキマイラ、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が猟兵達に呼びかける。
「ダークセイヴァーについての予知になるんだけど、地底都市に幾つかあるらしい月光城って呼ばれてる城塞に侵入してそこの城主を撃破してきて欲しいんだ」
グリモア猟兵曰く、謎めいた月光城は第五の貴族も含めた他の存在の干渉や侵入を遮断しているとの事で、その実態は謎に包まれているのだという。
「ほら、ダークセイヴァーって地底世界の筈だよね。だから太陽が昇らないんだけど……ならこの地底でも見える月ってなんなのか、月の満ち欠けに呼応して光るらしいこの謎の城塞に手掛かりがありそうな感じしない?」
手掛かりとしては弱いだろうけど、謎を解き明かす価値はあるかもしれないとヴィクトルは言う。
「それでこの月光城についてなんだけど、城門から入ってすぐの広場で配下であるマージナル・ビーストが出迎えてくるだろう。この城の主に強化されている上に城壁から不規則に強烈な矢が放たれてくる。ここを狩場としているようにね。真っ向勝負じゃちょっと大変かもしれないから逆に罠を利用してやるくらいの気概で挑まなきゃ難しいかも」
マージナル・ビーストはその剛腕と冷たい炎を操る能力、そして血の匂いを付けた相手を延々と集団で狙い続けてくるようだとヴィクトルは言う。
「城内については深い霧に閉ざされてよく分からない。ただ人間が捕らえられていて、聞こえてくるらしい悲鳴からして城主は碌な事はやってないだろうね。もし余裕があったら捕まってる人たちを助けてあげた方がいいだろう。城主はフレイルを得意としているようなんだけど……何だろうね。相当強力なオブリビオンのような気配がする」
真っ向勝負じゃ猟兵の皆でも厳しいかも、と思案するようにグリモア猟兵は語り。
「まあ皆ならなんとかできるだろう。ダークセイヴァーの謎を解く為にも、頑張って来てね」
そう締め括り、鍵の形をしたグリモアを手にしヴィクトルは転移の準備を開始する。
向かう先は謎に輝く月光の城塞、城門広場では獣たちが侵入者を血に染め上げんとその爪牙を研ぎ澄ませていた。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
なぜ月だけが空に見えるんでしょうね。
第一章は月光城城門広場での『マージナル・ビースト』の群れとの戦いです。
オブリビオンは強化されている上、トラップとして城壁から鋼鉄も貫く威力の矢が不規則に飛び出してくるようです。
第二章、第三章は月光城内部での調査および月光城の主との決戦になります。
こちらはそれぞれ冒頭に状況説明を追加致しますのでそちらをご確認下さい。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 集団戦
『マージナル・ビースト』
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POW : 黒の剛腕
単純で重い【岩をも砕く強靭な剛腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 冷たき炎
【強靭な顎を開き吐き出す、凍える炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【冷たき】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ : 血に猛る獣
攻撃が命中した対象に【濃厚な血の匂い】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と群がる仲間のビースト】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
赤星・緋色(サポート)
なんやかんやで事件を解決に導こうとします
フリーダムかつアグレッシブなアドリブも可
合わせ等も自由にどうぞ
伊藤・毅(サポート)
『エネミータリホー、ドラゴン01、エンゲージ』
普段の口調は「真面目(自分、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、戦闘中は「無口(自分、呼び捨て、言い捨て)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、基本的に生身では戦闘を行いません。
空中戦をメインに戦い、航空爆撃や戦術偵察で地上の味方を助けます
依頼の達成を最優先とし、戦闘機パイロットとしての行動規範を根底に行動します
そのほか、キャラクターを壊しすぎない範囲でお願いします
月光城へとやってきた猟兵達に、一斉に襲い掛かるのは獣人の群れ。
その剛腕は大岩をも容易く砕くという説得力を持った太さで、相対する赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)へと襲い掛かる。
靴の圧縮空気を吐き出しその剛腕を緊急回避する緋色だが、少年に向かいオブリビオンは次々に襲い掛かってくる。
しかしその時、空から何かが降ってくる。
それは高速で月光城の敷地の外から飛来した爆撃機、城門広場にたむろするオブリビオン達目掛けミサイルを発射した。
「エネミータリホー、ドラゴン01、エンゲージ」
爆風が暴虐の獣を吹き飛ばすのを爆撃機のパイロット、伊藤・毅(Nemo・f06702)は冷静に見下ろしつつ機体を反転させ次の爆撃へと移ろうとする。
しかしマージナル・ビーストも黙って攻撃されるわけではない。
怪物はその大口を開き凍える炎を吐き出す。それは単なる炎ではなく、冷気を広げていく冷たき炎、地上の獣の群は空の爆撃機に向け一斉に放ち剛腕で叩き潰せる距離に墜とそうとする。
しかし毅は慌てない。
「D01、バーナーオン、MAXパワー」
淡々と口にしつつ毅がユーベルコードを発動すると同時、爆撃機の軌道が普通の技術では考えられない曲芸飛行のようなものに変化して冷たい炎の群を軽々と回避する。
爆撃機を操縦する為の技術を跳ね上げるユーベルコード、それにより向かってくる無数の炎弾を見切り回避できるほどに彼は機体性能を限界にまで引き出していた。
そしてそれだけではない。
ミサイルの爆風に紛れ、ロケット噴射で飛翔していた緋色が空からオブリビオンに向かってやや斜め方向からに突撃してきたのだ。
爆撃機の高さまで飛翔し反転、十分な高さからロケットの加速を乗せた突撃に、オブリビオンの剛腕の迎撃は間に合わずその胴に直に激突ダメージを受ける。
体格差自体はかなりあるものの、激突の衝撃には重量だけでなく速度も関わってくる。
だから緋色の一撃はマージナル・ビーストの屈強な肉体を吹き飛ばし、更に他の仲間も巻き込む形で纏めて城壁へと叩きつけた。
派手に最初の攻撃を受けたオブリビオンの群。
しかし強化されている上に数も多く、怯む事無く猟兵達に敵意を向け襲い掛かってくる様子だ。
空の猟兵と緋色の猟兵は殲滅の為、それぞれ次の行動を開始するのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
月光城、ここで3つ目、か…
このお城の秘密も、きちんと調べないとね
人狼病解決の為の、手掛かりがあるといいな
強そうな相手だね
それに、あの矢も…
パターンを読んでる暇はないよね
それなら!
桃の闘気に魔力を混ぜて【オーラ防御】の【結界術】を発動
その結界と闘気を使って、床からお城に魔力を接続
【ハッキング】を試みるの
罠のコントロールだけ、乗っ取れればいいの
同時に、【高速詠唱】でUC発動
ビーストたちを迷宮に閉じ込めるの
コントロール、奪取!
迷宮の構造は、空から狙いやすくしてるの
自分たちの罠で、貫かれてね?
「月光城、ここで3つ目、か……」
人狼の少年、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は月のようにやわらかな輝きを放つ城を見上げ、呟く。
月光城に、この城に隠されているだろう秘密をきちんと調べる為にも眼前のオブリビオンをまず撃破せねばならないだろう。
(「人狼病解決の為の、手掛かりがあるといいな」)
彼自身も五年前に発症したその病を克服する為の手掛かり求め、魔術師の少年は術式を展開する。
それを阻止せんとマージナル・ビーストは血の匂いを漂わせ少年に襲い掛かる。
強そうな相手だ、そう思いながらロランは周囲の城壁へと視線を巡らせる。
時折威力の高い矢を放ってくる仕掛け、パターンを読めればこの獣達を誘導して同士討ちさせる事もできるだろうがその暇はなさそうだ。
ロランは懐からサシェを取り出すと、桃の精より授けられた花弁より発せられる香と闘気を周囲に立ち昇らせ魔力を通していく。
それにより生ずるのは結界、頑強なそれは振り下ろされた魔獣の腕を受け止めた。
だがマージナル・ビーストの攻撃は血の匂いをつけた対象に仲間のビーストに追加攻撃をさせるもの、血の匂いに惹かれ周囲のビーストが次々にロランに襲い掛かってくる。
ロラン自身には当たらないよう防げているが、耐久力には限度がある。
数撃防ぎもう少しで限界を迎えるというその時、
「……コントロール、奪取!」
ロランの感覚が城壁の弓の仕掛けと繋がった。魔力を通した闘気を地面伝いに通し、城壁の仕掛けへとハッキングを試みていたのだ。
そして同時、ユーベルコードを起動する為の詠唱を開始。
「展開空間読み取り、定義完了。ラビリンスマップ、作成完了。広域錬成式、描画。ラビリンス、錬成開始」
高速で機械的に紡がれたそれが終わると同時、城門広場に突如壁が展開される。
それは突如生じた天井のない迷路、中にいるだけで体力と魔力を吸い取り続ける恐るべき罠。
マージナル・ビースト達は突如生じた迷路を突破せんと駆け出すが、空から降り注ぐ矢に体を貫かれてしまう。
天井のない迷路、それは城壁から矢で狙い易くするためのものだ。
獣人の体力と速度でゴリ押しされないよう直接的に攻撃する為に罠のコントロールをロランは奪取していた。
「自分たちの罠で、貫かれてね?」
もしも壁を越えてくるのであればそれを狙えばいい。ロランは静かに言って、迷路と奪取した仕掛けに夜迷路に囚われしオブリビオン達への攻撃を開始した。
大成功
🔵🔵🔵
レイン・ファリエル(サポート)
『さぁ、貴方の本気を見せて下さい』
人間のサイキッカー×ダークヒーローの女の子です。
普段の口調は「クールで丁寧(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、機嫌が悪いと「無口(私、アナタ、ね、よ、なの、かしら?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は落ち着いてクールな感じのミステリアスな少女です。
人と話すのも好きなので、様々なアドリブ会話描写も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
月光のようにやわらかく輝く城壁に囲まれた広場全体に展開された迷路に囚われたマージナル・ビースト達の多くは、出口を求め壁と壁の間の狭い道をひた走っていた。
迷路の壁は徐々に体力と魔力を削っていく上、本来は援護射撃であるはずの城壁から放たれる矢も壁に遮られ外から目視出来ず当てずっぽうに撃つしかない状況では獣達を害する災厄となりうる。
そんな迷路から脱出する為に脱出、或いは術者を狙わんと走るオブリビオン達だが、この迷路の中には壁や矢以外の敵も当然いる。
脱出せんとする数体の群れ成す魔獣の前に、漆黒の外套を纏った一人の紫髪の少女が立ちはだかる。
その所作は優雅、おそろしき獣達を前にして怯えもなくただ落ち着いて迎える彼女の名はレイン・ファリエル(クールビューティー・f17014)。
「あら、次はアナタ達ですか」
迷路の中、音や足音から敵の居場所を察知して進んできた彼女は腕にはめたエナジーの増幅器を静かに起動し一斉に襲い掛かってきたマージナル・ビースト達に向けて身構えた。
魔獣の剛腕は岩をも砕く、真っ向から受ければ大ダメージは免れないだろう。
だからレインはユーベルコードを起動し、自身の腕から魔獣達に向けて地獄の炎を噴出させる。
魔獣達に地獄の炎が命中、その全身を焼くが獣達は止まらない。強化されたその生命力によって自身の命が尽きる前に眼前の紫髪の少女を叩き潰せると計算なのだろう。
しかしレインは手袋より緑のエネルギー障壁を放ちその突撃を阻む。増幅器により強化されたその障壁は魔獣を吹き飛ばし、更に空からの落ちてきた矢が獣達の足を貫き地面に縫い留めた。
そこに、レインが地面に延焼させていた紅蓮の炎が再び獣達を焼き、獣の絶叫が響く。絶叫はやがて沈黙へと変化し、そして真っ黒な炭だけが残り、崩れていった。
周囲の敵がいなくなったことを確認したレインはふう、と一息を吐く。
クールに振る舞っているけれども内心は冷や冷やもの、一つ危機を乗り越えた安心が顔を覗かせた形だ。
その安堵もほんの一瞬、まだまだ敵の気配は消えていない。
サイキッカーの少女は倒すべき魔獣達を殲滅する為に、再び迷路を歩き出すのであった。
成功
🔵🔵🔴
西院鬼・織久
我等の誰かがかつて見たオブリビオンに支配される前の月も作り物だったのでしょうか
否、謎解きは俺の領分ではありません
我等が求めるは我等が怨敵の血肉のみ
築く死山血河こそが我等が領分よ
【行動】POW
五感と第六感+野生の勘を働かせ城からの矢と敵の攻撃を見切り、瞬間思考力+戦闘知識を活かして常に矢の射線上に敵を置いて盾に使えるように動く
前列に先制攻撃+UC+怨念の炎の範囲攻撃、呪詛+焼却の継続ダメージを与えつつ、一体を影の腕で捕縛、怪力で振り回し周囲の敵をなぎ払い体勢を崩す
前列の生き残りがいたらなぎ払い+切断の範囲攻撃でとどめを刺し、薙ぎ払った周囲の敵が体勢を立て直す前になぎ払い+切断の範囲攻撃
城門広場全体に展開された迷路の中でサイキッカーの少女がオブリビオン達を順調に撃破していく中、離れた場所でも戦いは行われていた。
闇に溶け込むような濡鴉の羽色の外套纏うダンピール、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)に向け振るわれたマージナル・ビーストの拳は空振りし壁に命中、硬質な迷路の壁に僅かに罅が入る。
追撃を仕掛けようとするオブリビオン達、更に城壁から空に向けて放たれた矢が迷路上部の隙間から連続で降り注ぐ。
しかし、織久はその優れた感覚でそれらを見切り、瞬間的に思考を巡らせて獣人の足元を潜り抜けるように低い姿勢で飛び込み攻撃を躱す。
空からの矢は魔獣の肉厚の背に突き刺さるがその下に潜り込んでいた織久には届かない。
「何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
魔獣達とすれ違いざまに淡々と呟きユーベルコードを発動、至近距離から黒い影に触れさせ起爆し影の腕で彼我を繋ぐ。
更に周囲に彼の怨念と殺意を形にした呪詛の塊でもある炎を撒き散らせば、手前側に飛び込んできていた獣たちを容赦なく焼却していき、同時に影の腕で繋がれた魔獣を怪力で持ち上げ振り回した。
オブリビオンの巨体は十分な重量をもった鈍器のよう、怪力で振りまわされた同類を回避できず、織久を引き裂かんと飛び込まんとしていた魔獣達は薙ぎ払われ吹き飛ばされる。
更に織久の追撃、闇器の一つである黒椿という銘の大剣を抜くと、時間差で飛び込んできた獣達にその怪力で振るい両断。
そして更に吹き飛ばした魔獣達へとダッシュで飛び込んで立ち上がる前にその首に向けて黒椿を振るい、その首を刎ね飛ばしていく。
狂戦士のように、オブリビオンを容赦なく焼却し断ち切っていく織久。
黒椿に彫られた花が赤く染まる頃、周囲のオブリビオン達も全て生命活動を停止させていた。
丁度その時迷路の壁が薄れ消失していく。見渡す限り、この広場で生きて動いているのは猟兵だけだった。
「……我等の誰かがかつて見たオブリビオンに支配される前の月も作り物だったのでしょうか」
迷路が解除され視界が拓け、目に映る月色の城に織久はぽつりと呟く。
百年ほど前、オブリビオンとなり復活した吸血鬼達により現在のこの世界は支配されている。
ならばそれ以前はどうだったのか――オブリビオン狩りを至上目的とする一門の彼でも、天体現象までは分からない。
大昔は本物で、歴史のどこかで今の月にすり替わったのか、はたまた思いもよらない真実が隠されているのかもしれない。
けれど、そういった謎解きは彼の領分ではなく。
「我等が求めるは我等が怨敵の血肉のみ。築く死山血河こそが我等が領分よ」
狂気にも似たオブリビオンへの殺意、狂戦士たる織久は瞳に粘りついた怨念を宿し、霧に溢れる城の内へと突入していった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『五里霧中』
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POW : 大胆に行動する
SPD : 慎重に行動する
WIZ : 冷静に行動する
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●霧の中の人間画廊
城門広場のオブリビオン達を殲滅した猟兵達は霧に満ちた城内への侵入を果たした。
霧に真っ白に染まる通路は屋内で見えて当然の壁すらも見通せぬ程に濃く、また微かに魔力を帯びているようで、正常な方向感覚や距離感が少し狂わされてしまうようだ。
足元をよくよく注意して見れば落とし穴、耳を澄ませると金属と金属をすり合わせるような音や何か重いものが落ちるような音が響いてくる。
恐らくは侵入者を退ける為の罠、それも殺傷力の高いものが仕掛けられているのだろうと猟兵達は直感する。
それだけではない。霧中のどこかから絶えず聞こえるのは水の音と人間の苦悶の声。
城内に反響するそれは数も位置も分からないけれども、この城に囚われた哀れな人間達の発するものだろう。
この視界が悪く罠だらけの通路を抜けた先に城主はいる。
そこまでが一本道かは分からないが、もし他の目的の為に余計な道を歩くのであれば罠にかかる確率も上がってしまうだろう。
少しでも早く城主の身を目指すように進み撃破して人々を苦痛から解放するか、はたまた城内を探索し囚われの人々を救出しながら城主の居場所を探りそして討伐するか。
どのような作戦をとるか――それは猟兵一人一人の手に委ねられた。
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
………、聞こえる、苦しむ人たちの声が
………、におう、鉄のさびた、命の匂いが
ボスなんか知らない
苦しむ人を放っておくなんて、ぼくにはできないの
それでも、この霧の中を行くには…
ちょっと、本気を出さないとね?
UCを発動して魔術陣の首輪、魔術回路の鎖で縛られた狼に変身なの
強化された嗅覚と聴覚(【聞き耳】)で、人々の位置を探知
霧の中に魔力を乗せた遠吠えを反響させて罠を【索敵】
あとは、桃の闘気が人狼の狂気を抑えられるうちに、
狼の身体能力で駆け付けるの
できるだけたくさんの人を、助けるの
魔術で罠を壊したり止めたり、助けた人たちを安全な所に連れていくよ
大丈夫、ぼくの後を着いて来て
白く染まる霧の城内で、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は目を閉じて狼耳に届く音に意識を集中していた。
「………、聞こえる、苦しむ人たちの声が」
そして、匂いを嗅ぐ。水草のような湿った匂いに微かに混じっているのは――、
「………、におう、鉄のさびた、命の匂いが」
どれだけの悪がこの場で為されているのだろう。どれだけの人々が虐げられているのだろう。
それを感じてしまってはロランはもう、城主の事に構ってはいられない。
例え城主を倒せば彼らを解放できるのだとしても、苦しむ人を放っておくことなんてできはしないのだから。
ただ、この霧は魔力を帯びていて魔術も視覚も微妙に攪乱されてしまう。
仕掛けられた罠の事も考えるとこのまま行く事は難しい。
だからちょっと、本気を出さなければ。
「夜の灯りを、呼びし遠吠え、大いなる円の下、静寂を尊ぶ」
人狼の少年は桃のサシェを取り出しつつユーベルコードを発動する。するとその体が徐々に変形し、美しい灰色の毛並みを持つハイイロオオカミの姿へと変わっていく。
首元には魔術陣の首輪、それに繋がれた魔術回路の鎖が狼の体をぐるぐると縛りその身に満月のオーラを纏わせていく。
「ほぉぉぉぉぉぉぉぉ……ん」
変身が完了し遠吠えを一つ。魔力を乗せた遠吠えは城の中に反射してロランの優れた知覚に城内の構造を描き出させる。
あまり時間はない。寿命だけでなく人狼の狂気がロランの正気を削ってくるのだから。
桃の香はその狂気を和らげてくれるけれどもそれに頼る事もできないから、ロランは狼の脚で床を蹴って霧の中を走っていく。
天井から降ってくる錆びついたギロチンの刃を軽く躱し、通り過ぎた後に遠吠えを触媒に魔弾を後方に放ち刃を引き上げる為の鎖を破壊。
壁の穴から放たれる矢の雨は満月のオーラを結界として防ぎつつ、場内を探索しながら、そして人間が囚われた仕掛けを発見する。
それを視認したロランは息を呑んだ。ガラスの箱に入れられているのは水車に縛り付けられた人間の男。
天井から落ちてくる水がゆっくりと回り、六割ほど水に漬かった水車を回していく。
殆どの時間を水の中で、けれど僅かな時間水上に顔が出るから何とか呼吸はできるような構造になっているようだ。
ロランは無言でガラスの下部を魔弾で破壊、水を外へと流出させて囚われの男を水責めの拷問から解放した。
(「まさか、ここに囚われてるのは全員……?」)
悪趣味な人間画廊、その作品とされてしまっている人はどれだけいるのだろう。
「……大丈夫、ぼくの後を着いて来て」
ロランはハイイロオオカミの姿のまま、探索で発見した比較的近くにあった罠などない、安全な部屋へと囚われていた人間を避難させる。
大成功
🔵🔵🔵
風雷堂・顕吉(サポート)
アドリブ連携可
約100年前、ダークセイヴァーの人類敗北以来、ヴァンパイアとの死闘を細々と繰り広げてきたダンピール、それが俺だ。
【世界知識】ダークセイヴァー世界の大抵のヴァンパイア相手ならそれがどのような血族かは知っているし、知らなくとも【情報収集】の伝手はある。
それ以外の世界については物珍しそうに振る舞うことになる。すぐに慣れるだろう。
ダークセイヴァーとスペースシップワールド以外の世界は日差しが強すぎるので、サングラスを着用する。
戦闘は剣士の動きだ。
次に参加する猟兵が戦いやすい状況を作ることも多い。
霧の中を、乾いた印象のダンピールは城の壁伝いに歩いていた。
彼、風雷堂・顕吉(ヴァンパイアハンター・f03119)は酷く長い間この世界でヴァンパイアと死闘を細々と繰り広げてきたダンピールだ。
そんな彼を以てしてもこの霧に満ちた城砦の中は酷く進み辛い。
嫌な感覚を感じる。それは直感ではなく経験による知識に裏付けされたもので、鉄塊の如き刀を抜いて天井に向けて斬撃波を放つ。
その直後、彼の眼前にギロチンの刃が落ちてくる。
無数の経験からどのような罠があるのかをある程度予測できていなければ、このギロチンの錆にされた誰かの二の舞になっていたのだろう。
そんな風に進む彼だが、かつて別の月光城に挑んだ時の記憶を思い返していた。
(「確かアレは……人間画廊に囚われた人間をエネルギーにする……」)
この月光城の特性の一つ、異常に強力な城主。それを実現しているのは人間画廊に囚われた人間から吸い上げるエネルギー。
城内の人間画廊に囚われた人間をある程度は救出しなければ猟兵でも勝ち目がない。
この霧の中、罠を回避しつつ人間画廊の人々を救い出すのは酷く骨が折れるだろう。探そうとすればその分自身の実も危険に晒す事になる。
耳を澄ませれば、狼のような足音が遠くから響き、ガラスを砕く音と水音が聞こえてくる。
多分人間画廊の人々を救おうとしている猟兵なのだろう。できるだけ沢山の人を救おうとしている、まだ若く輝かしい意志を抱いた誰か。
霧の中の人間画廊を探し出し、救出する事は彼に任せれば問題ないだろうと判断した顕吉は、先に進むことにする。
罠を回避しながら壁伝いに慎重に進む顕吉、だが途中でガラスに囚われた人間を発見してしまった。
仕掛けを見て、そして彼はガラスを刀で砕き囚われの人を開放する。
無理に探そうとはしないが、偶然通り道にいる者を救う位はする。そのスタンスで進む事に決めた彼は、礼を言う人間を近くの部屋へと導き暫く隠れているように言い含める。
そして、再び城主を目指し霧の中の探索を再開するのであった。
成功
🔵🔵🔴
西院鬼・織久
囚われているのは一人二人ではないでしょう
人々の救助は他に任せます。俺の仕事ではありません
俺の目的はただ一つ、我等が敵を狩る事のみ
【行動】POW
五感の狂いを野生の勘+第六感で補い、黒酸漿の蛇特有の感覚器官による索敵+追跡で補強
感覚のずれを把握し戦闘知識+瞬間思考力を基にどんな場所にどんな罠があるかを予測し見切る
見切るのが難しければ周囲の通路ごと怨念の炎を宿したUC+範囲攻撃で爆破し壁、床、天井が崩れる事で落下系や射出系の罠を阻害
罠の仕掛けが設置されている空間があれば炎が流れ込むためそれによって焼き正常な動作をさせないようにする
人々を救う、或いは慎重に進んでいる他の猟兵に先行する形で西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は城主を目指していた。
やや前方を飛ぶ黒蛇【黒酸漿】がその蛇特有の感覚器官で進路上の罠を感知し、巨躯をうねらせ織久を先導する。
霧の視界の悪さも蛇の感覚器官には殆ど関係ない、魔力による阻害による感覚のずれも織久自身が補正できる程度だ。
ここまでにいくつかの罠を作動させているが矢や落とし穴、吊り天井やギロチン等で種類自体はそれほど多くない。
だから織久も徐々に罠のパターンを読めるようになってきていて、わざと作動させて破壊する程度には余裕がある。
(「囚われているのは一人二人ではないでしょう」)
織久は思考する。いくら罠が単調とはいえこの広く視界の悪い月光城のどこにいるかもわからない囚われの人々を助け出すには時間がかかり過ぎる。
だから彼は救助を他の猟兵に託した。彼の、オブリビオンを狩る狂戦士の仕事はそこにはない、と。
「俺の目的はただ一つ、我等が敵を狩る事のみ――」
怨念の炎を宿した黒い影が、霧に隠れた壁へと伸びていく。
爆発による轟音、それと同時に天井が轟音立てて落ちてくる。
この城の吊り天井の仕掛けはこうするのが一番手っ取り早く崩せると、そう織久は悟っていた。
それだけではない。壁に燃え広がる怨念の炎は壁に空いた矢の発射口へと延焼し、中の機構を焼却していく。
単純に突破するだけならどうにでもなる。だが、わざわざ罠を起動できるままに残して後続が引っかかる可能性を残す必要もない。
すべてはオブリビオンを狩る為に。殺意を叩きつけるべき相手を求め、狂戦士は空泳ぐ黒蛇と共に白き城内を走っていく。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『無音公』シャンテモンストル侯爵』
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POW : 叩き潰し
単純で重い【生首を加工したフレイル】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : まとわり付く血の泡
【生首を加工したフレイルの空振り】を向けた対象に、【対象をホーミングする血の泡】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 『無音公』たる所以
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【姿を消し、対象の死角】から【フレイルによる打撃と生命力を奪う血の泡】を放つ。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠銀山・昭平」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●青髭の月光城主
霧中の罠を突破して人々を救出しながら、やがて猟兵は城主の間へと至った。
扉を開く。そこに霧はなく、月光の色にほんのり輝いている酷く簡素な作りの広間であった。
その中心で豪奢な椅子に座る一体のオブリビオンが顔を上げ侵入者たちを睨みつける。
横に太い、他の世界のドワーフにも似た体型の城主は無言で立ち上がり、手にフレイルを握り締める。
単なるフレイルではない、その先端に繋がれているのは血涙流す青銅の生首だ。
嘆きの声が生首から漏れる――これ以上苦痛を与えないでくれと懇願するように。
だがオブリビオンは何も語らず振り回し始める。それと共に左の肩に月と眼を組み合わせたような奇妙な紋章が輝きだし、そこから棘鞭が飛び出し周囲を薙ぎ払う。
恐るべき速度で振るわれたそれは広間の中の僅かな調度品を薙ぎ払い壁に叩きつけていく。
通常のオブリビオンとは思えない威力の一撃――恐らくあの月の眼の紋章がオブリビオンに力を与え強化しているのだろう。
だが、全く見切れないわけではない。強化されているとはいえやり方次第で十分対応できる範疇だ。
人間画廊に囚われた人々をエネルギー源とする紋章は、人々の救出により66倍に強化するという本来の機能を十全に発揮できていない状態だった。
とはいえ完全には力を失ってはおらず、数倍に強化されていることは疑いない。
しかし、やるしかない。この城を支配する強大なオブリビオンを撃破する為、猟兵達は武器を構えた。
風雷堂・顕吉(サポート)
アドリブ連携可
約100年前、ダークセイヴァーの人類敗北以来、ヴァンパイアとの死闘を細々と繰り広げてきたダンピール、それが俺だ。
【世界知識】ダークセイヴァー世界の大抵のヴァンパイア相手ならそれがどのような血族かは知っているし、知らなくとも【情報収集】の伝手はある。
それ以外の世界については物珍しそうに振る舞うことになる。すぐに慣れるだろう。
ダークセイヴァーとスペースシップワールド以外の世界は日差しが強すぎるので、サングラスを着用する。
戦闘は剣士の動きだ。
次に参加する猟兵が戦いやすい状況を作ることも多い。
雁野・リジ(サポート)
「オレが盗んでいいの?それとも盗まれたいの?何をくれる?」
貼り付けたような笑顔を浮かべている女性。
怪盗であると言うが怪盗が何かは分かっていない。
人間の姿をとる狸。人間には人間の、狸には狸の、オブリビオンにはオブリビオンの生活があるし考え方も違う。ということを知っている。
合わせられることは合わしていきたいけれど、
世界が滅ぼされると困っちゃうので、普通に戦う。
「……『無音公』シャンテモンストル侯爵か」
羽根付きの幅広帽子を目深に被った年齢不詳のダンピールの男――霧の城内を突破してきた風雷堂・顕吉(ヴァンパイアハンター・f03119)は、相対するオブリビオンの名を呟いて、長らく戦ってきた知識から思い出される特性を口にする。
「あのフレイルが空振りすると血の泡がまき散らされる。まともに喰らえば……」
「すごくあぶないか」
ちょこんと座るふっかふかの冬毛の青い狸――東方妖怪の雁野・リジ(たぬき・f34917)が顕吉に片言で返し、ヴァンパイアハンターは頷く。
オブリビオンが手にしているのは生首を丸ごと加工したようなフレイル。周囲に軽く視線をやれば同様の悪趣味なフレイルが幾つか壁に飾られている。
そして、無音公自身の目を見るとどう考えてもまともな精神のものではない。
合わせられることは合わせていきたい彼女だけれども、まあ、どうみても意思疎通とかは無理そうだ。
「行くぞ」
短く顕吉が言って剣士の間合いに飛び込まんと床を蹴るが、無音公は左肩の紋章から棘鞭を恐るべき速度で伸ばし迎撃してくる。
それを顕吉は体を捻り回避しつつ鎧砕きの刀を叩き付けるが、生首の如きフレイルに阻まれる。
みしり、と音を鳴らしながらオブリビオンはフレイルに怪力を籠め顕吉を弾き飛ばしてフレイルを振るう。
着地をした瞬間横方向に跳ねて直撃を回避するが、苦悶の表情の生首の目から溢れた血の泡が避ける顕吉を追うように飛散してくる。
軽く舌打ちし、顕吉がユーベルコードを起動し周囲に吸血蝙蝠の群れを放つ。
竜巻のような吸血コウモリの嵐は血の泡を吹き飛ばしつつ、無音公の血を啜らんと襲い掛かる。
無音公は何の感情もないかのように、無言でフレイルを構えコウモリの群れを弾き飛ばさんとする――が、そのフレイルに横合いから投げ放たれた紙切れ、予告上が命中すると奇術のように消失する。
消失した行き先はいつの間にか人型に変身したリジの手元の泥棒袋。
「怪盗らしく? 大事そうなものだし盗むね。趣味悪いけど」
貼り付けたような笑顔で妖怪の女は中身の入った泥棒袋を見せびらし、激昂した無音公は即座に彼女に棘鞭を伸ばそうとする。
が、迫っていた吸血コウモリの群れが襲い掛かるのが早い。
コウモリの嵐がオブリビオンを飲み込み全身から血を吸い取り、そして壁に吹き飛ばす。
轟音と共に壁に叩きつけられたオブリビオン、だが全身から血を流しているにも拘らず何もなかったかのように肩の紋章をぼんやり光らせながらゆらりと立ち上がった。
どうやら紋章による強化はユーベルコードの直撃にも耐えさせる程のものであり、そして壁に飾られていた別の人頭フレイルを手にし恐ろしい速度でリジに飛びこんできて血泡と共に叩き付ける。
距離があったからその一撃は回避できたものの、
「こいつ、ちょっと、物騒……!」
追尾してくる血の泡をその逃げ足と化術で青狸の姿に変身して虚を突きつつリジは何とか攻撃から逃れようとする。
無音公の追撃を阻止するように顕吉が鉄塊の如き刀で斬りかかる。
それを厭うたか、無音公は一旦攻撃を諦め二人から距離を取り、フレイルを空振りし血泡を飛ばす。
その動きは変わらず俊敏、まだまだ体力を削らねばこのオブリビオンは倒れそうにない。
顕吉とリジは放たれた血泡から逃れつつ次の攻撃の為の隙を伺うのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
大神・零児(サポート)
アドリブ共闘可
単純戦闘の場合
強力な一撃を叩き出せそうなUCか、形勢逆転が狙えそうなUCを
味方や護衛・救助対象への援護や支援が必要な場合
味方や護衛・救助対象へのサポートとなるようなUCを
戦闘のみ
所持している武器・アイテムを効果的に使い戦局を有利にするよう行動(所持アイテム等を駆使し攪乱や敵の隙をつくる等)
救出・護衛
対象者の命最優先で行動
敵の動きに注意し、牽制しながら戦う
仲間との連携・連絡はアイテムも駆使し密に
常時使用技能
戦闘知識
第六感
野生の勘
見切り
地形の利用
世界知識
咄嗟の一撃
情報収集
早業
護衛・救出対象等有
拠点防御
時間稼ぎ
鼓舞
失せ物探し
オーラ防御
覚悟
救助活動
かばう
聞き耳
C-BA使用
運転
操縦
運搬
騎乗
西院鬼・織久
この地に満ちる苦痛と嘆きは我等が怨念も滾らせる
如何なる強敵であれ死合いを以て互いの血肉を喰らい合い、この餓えを満たすとしよう
【行動】POW
怨念の炎+UCの先制攻撃力に夜砥を忍ばせる
爆破で体勢を崩し影の腕と夜砥の麻痺毒で捕縛
即座の反撃を防ぎつつ、怪力で引き寄せると同時にダッシュ
爆破によって傷ができていたらその場所を、紋章以外に傷がないなら紋章を狙い串刺し+傷口を抉る
怨念の炎の継続ダメージで弱らせながら反撃を五感と第六感+野生の勘を働かせて見切る
戦闘知識+瞬間思考力を基に次の行動を予測
破壊された瓦礫とUCの爆破を隠れ蓑にしてフェイントを仕掛け、フレイルの間合いに入り切断+なぎ払い
――この地に満ちる苦痛と嘆きは酷く濃い。
城内を抜けて無音公の人頭フレイルによる攻撃を回避しながら西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)はそう思う。
それらは同時に織久の西院鬼一門の怨念をも滾らせていき、彼の瞳に一層強い狂気と殺意の炎が宿る。
(「如何なる強敵であれ死合いを以て互いの血肉を喰らい合い、この餓えを満たすとしよう」)
跳躍した無音公が真上からフレイルを人狼の大神・零児(魂から別れたもう一人の令二・f01283)に振り下ろし、それを零児は全力で回避する。
紋章による強化を受けているオブリビオン、その一撃をまともに受ければ立ち上がれないと彼の野生の勘は告げていた。
破壊される床にグレネードを発射、閃光が室内を満たしうっとおしそうに無音公は目を細める。
だがその瞬間、無音公と零児の間に織久が割り込んできて、
「何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
怨念の炎を燃え上がらせた織久はユーベルコードを起動、今だ残る閃光弾の光が織久の黒い影を無音公へと伸ばし爆破する。
その衝撃と炎上する怨念の炎の苦痛に無音公は体勢を崩しつつ逃れようとするも、影の腕に繋がれ逃げることは叶わない。
それだけではない。織久が影に忍ばせていた極細の糸が怨念に操られ無音公に巻き付き麻痺毒を撃ち込んでいたのだ。
紋章により強化された無音公と言えどそれだけ重ねられれば即座の反撃は不可能、そこに飛び込んできた零児が魂喰らいの妖刀を鞘より抜き、呪詛を纏わせ無音公の左腕に斬りつける。
刀は無音公の太い腕を斬るが、強化された筋肉に阻まれ切断には至らない。
しかし、
「喰らえ」
零児はユーベルコードを発動し封印を解く。ギチギチと禍々しい音を立て刀身が捕食形態に変形し牙を突き立てるかの如く食い込んで抜けなくなる。
生命力を喰らう刃の本領発揮、喰らった命を自身の強化に回しながら黒鞘を無音公の側頭部に叩き付けた。
非常に頑丈な黒鞘の一撃はさしもの無音公と言えど影響なしとはいかずよろめいて、その瞬間織久が怪力の影の腕で無音公を引き寄せ同時にダッシュ。
咄嗟に右腕のフレイルで織久を叩き潰そうとするが、その行動は予測済み。足元の瓦礫を蹴りつけフレイルの持ち手に命中させ、一瞬気が逸れた瞬間にフェイントをかけてフレイルを躱す。
そしてフレイルが床を砕くとほぼ同時、フレイルの内側に飛び込んだ織久は手にした黒椿を無音公の左腕に刻まれた傷口に突き立てる。
そして、殺意と呪詛を乗せた叫びと共に大剣を一気に怪力で切り上げる。
前腕、肘、上腕、そして――仄かに輝く紋章。それらを一刀に切り裂かんと一気に斬り上げた。
――だがその瞬間、零児と織久の背に悪寒が走る。
無音公は苦痛に顔を歪めながらフレイルを手放し左肩に力を籠めつつ右手で織久の大剣を殴りつけ、紋章を切り裂かれぬように軌道を逸らしたのだ。
大剣は僅かに紋章を掠めつつ左肩から抜けていって、即座に織久と零児は後方に跳躍。直後、紋章から棘鞭が放たれ周囲を薙ぎ払った。
危うい所だったが反応が早かったため二人は棘鞭の間合いから何とか逃れる事に成功した。
オブリビオンの左手は恐らく使い物にならない程に大きなダメージを与える事には成功、そして燃える怨念の炎は無音公の体力をじわじわと削っていくだろう。
だが、もう一手必要だ。床に落としたフレイルを持ち上げ無言のままに殺意を猟兵達に向ける無音公。
決着をつける為、二人は無音公の猛攻を回避しつつ次なる攻撃の為の行動に移るのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
これは…、どういう状況?
破壊痕と、凄い量の血…
物凄い匂いだね
ぼくも、お手伝いしなきゃ
月光城に蓄積してる、満月の魔力を利用するの
破邪結界から、大剣型の天狼の魔剣【ルプス】を作って、ぼくの目の前に突きたてるよ
ぼくの人狼の力、「魅了と変化の満月の魔力」を高めるよ
月光城の満月の魔力を【ハッキング】して自分の魔力に上乗せなの
人狼の狂気が活性化するけど、桃の闘気の【耐性】で【落ち着け】るの
UCを【高速詠唱】
部屋全体に【全力魔術】で広【範囲攻撃】の月光を放つよ
魔力が続く限り、魔術を維持するの
このお城について、聞きたい事があるけど…、
喋てくれないよね?
リーヴァルディ・カーライル(サポート)
「…お前がどんな存在で、どんな過去があったとしても関係無い」
「…今を生きる人々を害する存在を討つ。それが猟兵としての私の使命よ」
故郷のダークセイヴァーで主に活動する吸血鬼狩り
他世界の知識に疎く、最初は様子見に徹して見切り戦闘知識を蓄積する
必要に応じ「精霊石の耳飾り」に各属性の精霊を降霊し、
第六感的な精霊の視力を借りて暗視や索敵を行う
敵の攻撃は「写し身の呪詛」の残像による回避や、
「怪力の呪詛」のオーラで防御して受け流し、
大鎌のなぎ払いやUCによるカウンターで迎撃する
「…無駄よ。その攻撃なら、既に見切ったもの」
「…お前よりヴァンパイアの方が余程、手強い」
「…さあ、吸血鬼狩りの業を知るが良い」
城内の人々を救出しながら罠の間を掻い潜り、狼の姿で走り回っていたロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)はようやく城主の間に辿り着くことができた。
「これは……、どういう状況?」
人の姿に戻った彼は戸惑ったように呟く。
あちこちに散った血泡や人頭フレイルによる破壊痕――いずれもこの城の城主によるもので、猟兵達との戦いの激しさを物語っている。
城門広場での魔獣達やあちこちに張り巡らされていた罠のどれよりも強烈な血の臭いが立ち込める室内、そこではリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)というダンピールの猟兵が大鎌を振り回し無音公を斬り裂かんとしていた。
左腕を激しく損傷したオブリビオンは右手だけで器用にリーヴァルディの刃をいなしながら左肩の紋章から棘鞭を伸ばし反撃しようとする。
しかしダンピールはそれを読んでいたかのように回避し、一旦距離を取る。
あのオブリビオンーー無音公というらしい吸血鬼は、これだけ負傷しているにも拘らず一言も言葉を発していない。
人の頭のような青銅のフレイルから漏れる苦悶の声のみ、仮に何事か問うたとしても反応を返す事もないだろう。
これだけ滅茶苦茶に床や壁を破壊しつつ、あれだけの負傷で猟兵と渡り合う恐ろしい力を持つオブリビオン。
けれど、戦いを躊躇う訳にはいかない。
「ぼくも、お手伝いしなきゃ」
そう呟き、展開した破邪結界から天狼の魔剣を形成、少年の体に大きなそれを眼前の床に突き立てつつサシェから桃の香と闘気を周囲に漂わせる。
そして自作の魔術陣を通しハッキングを開始。月光城に降り注ぐ満月の魔力を自身の魔力に上乗せしつつ、ロラン自身の人狼の力を高める。
囚われの人々を救う為に走り回った分もあり、城の構造を一部とはいえ理解できているからこそできる業だ。
魅了と変化――その二つが高まる事で人狼の狂気が活性化されてしまうが、血の臭いよりも強くやわらかな桃の闘気がその狂気を静めてくれる。
ロランが月光の魔力を高めている間、リーヴァルディは新たな猟兵の到着をちらりと見つつ無音公との戦いに意識を集中する。
故郷であるこの世界で吸血鬼狩りとして戦う彼女、普段は慎重に様子見に徹し敵の特徴を記憶していく事を優先するのだが、今回は押し切るのが早いと判断したようだ。
「……お前がどんな存在で、どんな過去があったとしても関係無い」
無音公が手にしたフレイルに視線を向けながら、リーヴァイルは無表情に言った。
今なお苦悶に嘆き続ける人頭フレイルをどうして作るようになったのか、もしかすると理由となる過去があったのかもしれないが、彼女には関係ない。
ただ今を生きる人々を害する存在である事は明らかで、だから彼女は眼前の存在を討つ。
月の眼の紋章から伸びる棘鞭を鎌で円運動で弾きつつ、そのまま無音公を斬りつけた。
相手の左腕はほぼ機能していない、そんな状況でも押されてはいるものの致命打をフレイルで躱し続けているのは紋章による強化もあるだろう。
しかし新たな敵も現れた中、このままではジリ貧――そう判断したのか、無音公はユーベルコードを発動する。
瞬間、無音公の姿が消失する。姿を消し、拘束で飛翔するその力。恐るべき高速で飛翔するオブリビオンはリーヴァルディの死角に回り込み、愛用のフレイルを横薙ぎに全力で叩きつけた。
確かに、リーヴァイルの姿にフレイルと血の泡は命中した。だが手応えは何も返ってこない。
「……無駄よ。その攻撃なら、既に見切ったもの」
青髭の吸血鬼の真下、そこにはリーヴァイルが屈んでいた。
耳飾りに降霊した精霊により索敵を行って仕掛けてくるタイミングを読み、その瞬間に自分の姿の残像を操る呪詛で惑わしたのだ。
「この刀身に力を与えよ」
静かにダンピールが呟き、ユーベルコードを発動させると彼女の周囲に魔力結晶の刃が召喚される。
魔法増幅能力を生やしたあらゆる環境で飛翔可能になった結晶の刃は、逃れようとする無音公に真下から連続で突き刺さり空中へと打ち上げていく。
真下からの連続攻撃を受けている中、少年の声が部屋に響いた。
「地に淀みし邪、月明かりに抱かれ、夢に還れ。それは汝の揺り籠」
高速で詠唱し、高めた魔力によるユーベルコードをロランが起動。
すると、彼の目の前に突き立てられた大剣から放たれた月光を強烈にしたかのような閃光が室内を遍く照らし出す。
無音公と言えど例外ではない。照らされたオブリビオンの全身を丸ごと包み込む光の球が生じその動きを拘束。
装備している天狼の魔剣と魔符桃香で強化されているユーベルコードであるが、無音公は月の眼の紋章に強化されている怪力で強引に逃れようとする。
しかし、魔力結晶の刃が光珠の結界の外から無音公に襲い掛かり離脱を阻止する。
同時、魔力増幅刃は部屋中を照らす月光の輝きと魔力を増幅し反射、オブリビオン一体へと収束させていく。
拘束と浄化の力は一層強まり、月の眼の紋章に強化された無音公でも脱出できない。
そしてロランの魔力が尽きる直前、無音公の手からフレイルが滑り落ちて、青銅の人頭が落下し床に大きなくぼみを作り出した。
月光の結界が消失した後には何も残らない。紋章も何もかも消え失せて、月光城の一つは猟兵達により陥落させられた。
そして、霧がなくなった城内より人間画廊に囚われていた残りの人々を救出しつつ、猟兵達はその月光城を後にしたのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴