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殲神封神大戦⑦〜キョンシーなんと四度も死ぬ

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「年が明けたばっかりで大変だけど、みんな働き者でとても助かるよ」

 此処はグリモアベース、その一角。
 自身からの招集に応じて集まった猟兵たちを見回しながら、イサナ・ノーマンズランド(ウェイストランド・ワンダラー・f01589)はその手に乗せていた立方体型のグリモアを虚浮かび上がらせる。明るい緑色に明滅しながら、緩やかに回転する立方体が虚空に投射する映像は、封神武侠界での主な戦場を示す巨大な地図だ。そのまま、空いたもう片手が背負った狙撃ライフルを手繰り寄せ、指示棒よろしくその銃口にて一つのポイントを指し示す。

 そこに存在しているのは、大陸の端に位置する巨大な門であった。
 
「……手短に説明するけど、今回みんなに制圧してもらうのは此処、南蛮門だよ。
 此処は仙界『紫霄宮』に続く、本当は不定期に出たり消えたりする場所なんだ。
 でも、今は何かの力で固定されて出現しっ放し。
 此処から人界にオブリビオンを送ったり、自然の力を吸い上げたりしてるんだ」

 要するに、放置しておくだけ損ってことだね。
 そう続けながらイサナは虚空を指し示していたライフルを引っ込め、担ぎ直す。

「ここを抑えれば、三皇の動きも鈍らせる事ができるはずだよ。
 勿論、敵にとっても侵略の要所だし、簡単には取らせてくれないだろうけど」

 再び虚空に浮かぶのは、此処を防衛するために用意された兵士であろうか。
 独特の民族衣装を纏う姿はさながら揃いの軍服のようにも見える。
 そしてそのいずれもが、その身体の何処かに大きな符を貼り付けられていた。

「防衛のために、門からは僵尸(キョンシー)が大量に湧いてくるよ。
 筋力と仙術に対する防御力は普通とは比べ物にならない特別製らしいんだ。
 なんでも「二度殺す」工程を経る事で作られているんだってさ。
 生きてた頃に殺され、キョンシーにされてから殺され……。
 オブリビオンになってまた殺されて……って、あれれ。
 ……もしかして殺されたのって三回目?」

 沢山殺されてなんだか気の毒だなあ。まあ、もう一回くらい死んでも今更かも。

「ともかく、これでラストにしてあげるってつもりで楽にしてあげて欲しいかな。
 普通に戦えば面倒くさい相手だけれども、そこはキョンシー。
 ……そう、御札だよ。これを剥がせば動く死体も、動かない死体に戻っちゃうからね」

 そう。動かない的なら、仕留めるのは楽勝だよね!

「……まあ、もちろん剥がすまではパワフルに動き回る死体なんだけどさ。
 どうにかして、隙をついて御札を狙ってみて欲しいかな」


毒島やすみ
 本年度も既に6日目。
 皆様はお元気にしていらっしゃいますでしょうか。
 何とかやれそうなので二本目の戦争シナリオでございます。
 完結までスピード重視、気力体力の限りお早めにお返しできればと思います。

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今回のプレイングボーナス:『敵の封魂符を剥がす』
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第1章 集団戦 『キョンシーモドキ』

POW   :    連撃
【分銅鎖】が命中した対象に対し、高威力高命中の【斬撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    分銅鎖
レベル分の1秒で【分銅鎖】を発射できる。
WIZ   :    地の利
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【剣や分銅鎖】の威力と攻撃回数が3倍になる。

イラスト:にこなす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜刀神・鏡介
何処かの世界には無限に再生し続けるから無限に殺され続けた奴とかもいるらしいし、それに比べれば4回くらい……いや、そういう問題じゃないか

まずは敵に囲まれないように立ち回り
鉄刀を抜いて漆の型【柳葉】の構え。筋力が上がっているなら、物理防御力も相応に強化されているのだろうが、これで致命傷を与える必要はない
腕か脚の腱などを斬る事で敵の行動阻害を狙う。その攻撃で体勢を崩したなら素早く踏み込み、封魂符を引き剥がして止めだ。一体ずつ確実に数を減らしていこう

分銅鎖は敵の予備動作から狙いを見極めて素早く回避か、刀で弾き返そう

……敵とはいえせめて、二度と戻ってこないで済むように祈るくらいはしてやろうかな


エリー・マイヤー
4回死ぬキョンシーですか。
死の定義がよくわからなくなる話ですね。
できれば私は、死ぬのは1回以内で済ませたいところです。
いや、別に死ぬ予定があるというわけでもないんですが。

さて、そんな与太話はともかく死体の処理ですね。
札をこっそり剥がせばいいということであれば、私の得意分野です。
【念動ハンド】で敵の分銅鎖を受け止めつつ、
別の念動ハンドで足払いしたり腕を捻ったりして敵の行動を阻害し、
更に別の念動ハンドを敵の後ろにこっそり回して札を回収です。
最大何個出せるか忘れましたが、まぁとりあえず大量の手です。
ある程度複数の敵にも同時に対処できることでしょう。

…そういえば、残った死体って私たちが片付けるんです?


楊・美帆
ウンウン。三回死んでるならもう一回くらい……って、そんなわけないデショー!そんなにポンポン死んでたらたまんないヨ!!
なんて感情移入しちゃうけど、すぐに切り替えていくヨ。今度こそちゃんと死なせてあげたいしネ。

キミたちは封魂符を剥がしても暴走しないんだネェ。それなら簡単簡単!
鎖分銅を【オーラ防御】して追加の斬撃は【功夫】っぽい動きでいなす。体制を崩させたところで【鉄山靠】!転倒したところをペリッと剥がしていこー。

動かなくなったらボクの炎で燃やして【浄化】させるヨ。今度こそ安らかに眠れるといいネェ……。



●屍を借りて魂を還す
「何処かの世界には無限に再生して無限に殺され続けた奴も居るらしいし
 それに比べれば四回くらい……」
「ウンウン。三回死んでるならもう一回くらい……って、そんな訳ないデショ!
 そんなにポンポン死んでたらたまんないヨ!」
「死の定義がわからなくなりますが、死ぬのは一回以内で済ませたいところです。
 いえ、別に死ぬ予定があるという訳でもないんですが」

 視線の遙か先には仙界へと続く巨大な門が聳え立つ。そして、其処からはわらわらと、無尽蔵にも思える勢いで次々と数多の僵尸(キョンシー)たちが這い出してくる。死者たちが闊歩し、生者の世界を脅かそうとする悪夢めいた光景――それらを前にして、猟兵たちは口々にそんな感想を漏らした。

「確かに、回数の問題じゃないよな。彼らも生命を弄ばれた存在だ」

 特に、自らもキョンシーそのものである楊・美帆(デッドハンド・f33513)の言葉に、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はすぐに考えを切り替えた。咥え煙草のまま、死者たちを見守るエリー・マイヤー(被造物・f29376)の言う通り、普通の生き物ならば生命のあり方はただ1度きりのものなのだ。そして、彼らの蹂躙を見過ごせば、更に数多の生者たちが彼ら同様の存在へと成り果てて、やがてはこの世界全てが死者で埋め尽くされてしまう事にもなりかねない。

「……ま、与太話はともかく死体の処理ですね」

 生前、武術の心得でもあったのだろうか。或いは死後に造物主より無理矢理に知識を刷り込まれたのか、門から這い出しゆっくりと立ち上がるキョンシーどもは剣や鎖分銅―― それぞれ思い思いの得物を携え、額に貼り付けられた呪符を揺らしながら、虚ろに淀み濁った双眸を目の前の生者たちに向けている。其処に理性知性の類を見出す事は難しい。ただただ、恨み辛みと憎悪と飢餓―― 攻撃的な本能のみが、彼らを支配しているのだ。

「そうネ。憤りはあるけども、やる事やんないといけないヨ。
 今度こそちゃんと死なせてあげたいしネ」

 眠そうな、或いは何か遠くを見ているような目のままで呟くエリーの言葉に、美帆もまた力強く頷いた。生命を冒涜され、敵の言い様に使役されている同類たちを救いたいという彼女の意気込みは強いが、激情の余りに目的そのものを見失ってしまう程に視野が狭い訳でもない。その熱は己の四肢に込め、磨き上げた功夫を更に冴え渡らせてくれるはず。

「数が数だ。敵に囲まれないように――」

 気をつけて行こう、と続くであろう言葉を途中で打ち切った鏡介が地を蹴り跳んだ。一拍遅れ、彼がそれまで立っていた場所を、投げつけられた分銅が叩き、大地を文字通りに叩き割る。

「……なるほど、筋力が強化されているというのは確からしい」

 虚空を踊りながら、鏡介は腰に下げた愛用の鉄刀に手をかける。
 そんな彼を追うように、キョンシーたちが次々と跳躍した。空中においては逃げ場などなく、四方より殺到するキョンシーたちの得物が唸りを上げて鏡介へと吸い込まれていく―――― が、その一撃が彼へと到達することはなかった。

「おまけに頑丈にもなっているようだが、致命傷を与える必要もない」

 彼らの攻撃を一呼吸の差で追い越し、鏡介の振るった一太刀。
 それは、キョンシーたちの腕や足の腱をしたたかに斬りつけ、攻撃の狙いを大きく逸らしていた。彼らが態勢を立て直すよりも早く、鏡介が振るう返す刀の二太刀目。
 それもまた尽く、その切っ先がキョンシーたちの眉間に貼り付けられた符を掻き斬り、彼らは跳躍して鏡介へと襲いかかったその姿勢のまま、ただの動かぬ死体へと戻ったのだ。

「破壊するのは大変そうだが、最低限これだけ斬れれば十分だ」

 鏡介が着地――すると同時、その周囲には再び死後硬直したキョンシーたちがどさどさと重たい音を立てて地べたに転がり落ちる。新たな標的へと向き直り、構え直そうとする鏡介のその背を目掛けて新手のキョンシーたちが伸ばす無数の鎖分銅―― しかし、それらは音もなく割り込んだ美帆の虚空を巻き取るよう揺らめく巨大な焔の腕による廻し受けで絡め取られ、大地揺るがす震脚と共に奪われた鎖に引きずられて虚空へと引っ張り上げられるキョンシーたちは、次々と大地に叩き付けられた。受け身を取ることもなく無表情のまま地面をバウンドするキョンシーたちの額に貼られた呪符がべりべり剥がされる。まるで『見えない手』でも彼らの目の前にに存在したかの如く、次々と。―― 土埃を巻き上げながら大地に落ちたキョンシーは、そのいずれもが先と同様ただの死体へと成り果てる。

「……札をこっそり剥がせばいいということであれば、私の得意分野です」

 虚空に浮かんでいた符がふよふよと泳ぐように舞いながら、エリーの手元へと引き寄せられる。幾枚かのそれらを束ねて「えいやっ」と掛け声ひとつ、エリーは纏めて破り裂いてしまう。びりびりに破られた紙片が風に舞う中、新たに殺到してくるキョンシーたちの投げつける分銅は、しかしそのいずれもが虚空でぴたりと静止して、彼女に届くことはない。

「最大何個出せるか忘れましたが、まぁとりあえず大量に出せます」
「……互いの死角も十分カバーできるらしい。思ったよりもやりやすい」
「封魂符を剥がしても、暴走しないんだネ……。それなら簡単簡単!」

 エリーがその強大な念動力によって自由自在に操る『不可視の手』が幾つも。エリー自身もよくわからないほど多数展開されたそれらが次々と虚空を踊る。見えぬのだから避けようもないそれらは面白いほどにキョンシーたちに殺到し、無理くりにその身動きを封じ込めていった。

「一体ずつ確実に、数を減らしていくぞ!」
 
 そしてエリーの操る無数の手たちがキョンシーどもの動きを封じている僅かな一瞬。だが一瞬もあれば十分に足りるのだ。そう言わんばかりに風の如く疾駆し一気に距離を詰める鏡介の振るう鉄刀が唸りを上げる。

「了解ヨ!……ほいしょォ!!」

 或いはその姿勢を崩した胴体目掛けて美帆の打ち込む鉄山靠―― 闖歩と呼ばれる独自の踏み込みにて生まれる力を余す所なく乗せて、その背中から相手に貼り付くような強烈な体当たりをぶちかます、八極拳の大技が彼らを吹き飛ばし、叩き付け、その態勢を崩していく。

「おふたりのお陰で私も楽ちんです。いえ、ちゃんと私も手を動かしてますよ。
 見えてはいないでしょうけど」

 理性も知性もない彼らは、その額に伸びる手を拒む事もできぬまま、次々と符を剥がされ、死体に戻っていった。……否、これは彼らにとっての救済でもあった筈だ。これ以上、自分たちの生命を弄ばれることはないのだから。




「……ふぅ」

 何十体ほど仕留めただろうか。刀に絡みついた分銅の鎖を振り払いながら、鏡介は額に滲んだ汗を拳の甲で拭う。敵の第一波は抑え切れた筈だ。周囲に転がる、最早動かない死体たちを見回しながら微かに乱れた呼吸を整える。

「いやあ、大量。……そういえば、残った死体って私たちが片付けるんです?」
 
 びりびりと再び大量の符を纏めて破り散らしながら、エリーもまた同様に周囲を見回し――ほんの少しだけ面倒くさそうな顔をする。

「心配には及ばないネ。そこは僕の出番ヨ」

 そんな言葉と共に、美帆は緩やかに身構えた。

「あ、一応これくらいはお手伝いさせてください」

 美帆の意を察したエリーは、再び出現させた無数の不可視の手によって、彼方此方に散らばった死体たちを持ち上げて、それらを一箇所に集めて高く積み上げていく。

「ありがとネ。ふたりとも、あまり傷つけないように戦ってくれたから
 きっとあの子たちもそんなに苦しまなかったと思うヨ」

 そんな言葉と共に、美帆は同類たちへの祈りを込めて両腕を突き出す。
 長い袖の内にあるものは、途中から先を失った腕の名残。
 しかし、彼女には新たな腕がある。

「おやすみ、みんな。今度こそ安らかに眠れるといいネェ……」

 広げられた袖の先から虚空に伸びるのは地獄の焔で形成された巨大な両腕だ。まるで抱擁するかのように、蒼い焔が死体の山を包み込み―― そして、一瞬にて燃やし尽くす。不必要に破壊の工程を長引かせる事もない超火力での火葬は、同胞たちに向けた美帆なりの気遣いだったのだろう。
 
「敵だったとは言え……せめて。
 彼らがもう二度と戻ってこないで済むように祈るくらいはしてやろうかな」

 そんな言葉と共に、灰さえ残らずに消えていく彼らから視線を逸らした鏡介。
 その視線は未だ次の兵士たちを生み出そうとする南蛮門を静かに見据える。
 そして、彼は鉄刀の柄を握りしめる自分の指に一層キツく力を込める。

 流れる風に乗って舞う呪符の紙片がどこか遠くへ飛んで、消えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エル・クーゴー
●WIZ



躯体番号L-95、目標戦域の高高度を航行中

オーダー『敵の封魂符を剥がす』

>タスク了解
これより作戦行動を開始します


・バトルスーツ背面より展開する鎧装騎兵のプラズマジェットでお空を飛んで横切っていく(空中機動+推力移動)

・機関砲等をバリバリ射掛けて回り(空中戦+範囲攻撃+威嚇射撃)、敵注意を惹き付けん

・真の狙いは、周辺風景を取り込み生成した電子迷彩(撮影+学習力+迷彩)を体表に塗布したマネギ達により隠密裏に仕掛けるお札剥がし工作
・【ウイングキャット『マネギ』】MAX565体を戦場へ順次こっそり投下、敵頭数一体に対しマネギをふんだんに差し向け、脚だの胴だのを拘束してから額のお札へネコパンチ


シャーロット・クリームアイス

まずは、サメを複数召喚してけしかけます

遠近両用の武器、防衛側ゆえの地の利、増幅された膂力と仙術耐性
オブリビオンである以前に死体……となれば痛みも恐れも、きっとないでしょう
毒なんかも、そうそう効かないっぽいですねー
おまけに多勢で、ゲートから補充もできそう――と

ふむ。軍事力として見るなら、なかなかよくできています
“お札”というのも、そこまで大きな弱点ではないでしょう
頭部のそれを剥がされるような状況なら、人間の兵士だって死にますからねぇ

さて、踏まえて効率よくいきましょう
サメたちで敵の位置を誘導し、どーん!(水流をぶつける)です

激流はお札を剥がすかもですし……
その符の顔料って、耐水性はありますか?



●暗かに陳倉に渡る
 エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は空を飛んでいた。
 その身に纏う戦装束、バトルスーツの背部から展開させたプラズマジェットが、轟音と共に青白い推進の軌跡を大空に刻みつけていく。見下ろす視界の遙か先―― 常人ならば望遠レンズを要する所であろうが、エルの視覚センサーはまるで小さなゴマ粒のような南蛮門をしっかりと捕捉していた。

「躯体番号L-95、目標戦域の高高度をサメと共に航行中」

 エル・クーゴーは飛行のさなかにあった。彼女の周辺を、まるで護送船団(コンボイ)宜しく幾多もの空飛ぶサメが取り囲む。
 
『エルさん。大丈夫だとは思いますけど……喧嘩とかしてませんか、ウチの子たち』
「問題ありません。総員、統制された動きを維持しています」

 流れる通信音声に答える合間、エルの目元を覆っていたコンピューター内蔵式の高機能電脳ゴーグルの表面で、センサーライトが青白く走査パターンを光らせる。それはゴーグルの下に秘められるエル自身の眼の動きを反映させているかのようだった。

「タスクの最終確認、完了。これより作戦行動を開始します」
『了解しました。上手く行った暁には今後もぜひ弊社とよいお取引を――』

 ――検討はしておきましょう。
 通信相手にそう短く答えると同時、エルは背部のプラズマジェットの出力を全開に。大気を揺るがす爆音と共に、天空高くより目標地点目掛けて急速降下を開始する。そんな彼女を追うように、周囲のサメたちも一斉に空を滑り降りていく。

「…………ナンセンスです」

 まるで、自分まで空を飛んでいるのではなく泳いでいるかのよう―― 
 そんな不可解な感覚を一瞬覚えはするものの、そんな感慨はすぐに電脳の片隅に押し込め、エルは戦場を―― 其処に無数に配置された敵たちを見下ろした。同時に、周囲を護衛するサメたちの更に周囲に改めて展開する、エル自身の手勢。空を滑り落ちていく自身らに反してその動きは音もなく、静かに。そして速やかに。着実に進行していた。バトルスーツにマウントされたアームズフォートが装甲を展開し、内蔵された火器類が次々と顔を出す。接近に伴い、視界の先で次第に大きくなっていく幾多の目標をゴーグルの内側で次々とロックオンしていく。露出した機関砲が低いモーターの駆動音と共に砲身の回転を始め――

「……交戦開始(エンゲージ)」

 エルの兵装より吐き出された無数の弾丸が、文字通り火の雨となって降り注ぐ。
 ばらばらと、撃ち出した弾丸の数に比例して散らされる空薬莢はまるで金色の雨のよう。撃ち込まれる弾丸は大地を薙ぎ払い、その延長線上に立っていたキョンシーたちをも纏めて吹き飛ばす。理性を持たぬ死者たちであっても、それは用意に自身らを苛む凶器だと本能にて察する事はできたのだろう。第一射にて吹き飛ばされた者たちを一顧にすることもなく、キョンシーたちは射線から速やかに飛び退いた。しかし、それもエルの計算の内である。そして、撃ち込まれる銃撃によって掻き乱されるキョンシーたちの織りなす戦列を、少し離れて見守る少女が居る。彼女こそが、エルを護送していたサメたちの主であった。

「思っていたよりも素早いですね、キョンシー。強化されているそうですものね」

 シャーロット・クリームアイス(Gleam Eyes・f26268)。汎用配達サービス〈サメール〉の事業主である。全世界に派遣してある端末同士を幽海経由で接続することで物理的な距離や障害に影響されない独自の通信ネットワークを構築する、電脳魔術と鮫魔術を組み合わせた全く新しい技術体系が彼女最大の武器である。

「……遠近に対応し、地の利と増幅されたスペックによる防衛力。
 そしてオブリビオンである以前に死体であるが故、恐れも痛みもきっとない。
 毒なども恐らくは効かないっぽいですねー……。
 おまけに多勢、ゲートからも補充が効く……と」

 思案の表情を見せるシャーロットを目敏く見つけたキョンシーが、一気に距離を詰めようと地を蹴って跳ねるように駆け出した。瞬く間に距離を縮めてくるその突進、生中な膂力で受け止められるものではないだろう。しかし――

「ふむ。軍事力として見るなら、なかなかよくできています」

 未だ思案の最中、考察を続けているシャーロットのすぐ傍らを音もなく飛び出した巨大な影が、突っ込んできたキョンシーに食らいつき、大地へと叩きつける。その巨体に相応しい重量と怪力を正面からまともに受ければ、如何に痛みを知らぬ死者とて一溜まりもなかっただろう。ほぼ一瞬の間で理不尽な程の重圧を加えられたその身体は彼方此方の関節が無残に折れ曲がり、最早まともな身動きを取ることも
望めまい。そんな残骸めいたキョンシーを打ち捨て、シャーロットを護衛するように取り巻いていた鮫は優雅に空を泳ぎ、未だ空を箒星の如く駆けながら弾雨を振り撒くエルのコンボイたちに加わっていった。

「弱点が“御札”というのもそれほどの問題ではないでしょうね。
 頭部の札を剥がされる状況、人間の兵ならとっくに死んでいるという事ですし。
 ですが、この戦場においてはキョンシーよりも鮫のほうが優秀です」

 思索を打ち切ったシャーロットは視線を持ち上げる。
 緩やかに振るう腕の動きに従い、視界の遙か先―― 空を泳いでいた無数の鮫たちの動きに変化が起きた。低空気味に飛行し、弾丸の雨をぶちまけてキョンシーたちを蹂躙するエルを護衛するような隊列から、鮫の群れはフォーメーションを変えた。速やかに散開し、それぞれ思い思いの方角に広がっていった群れたちは、流れるような動きでキョンシーたちへと群がった。それはまるで、獲物を追い立てる狩猟の動き。エルの降らせる弾丸から逃げるキョンシーを、鮫たちが更に追い詰める―― 皆、自分たちの動きが誘導されたものである事になど気付きもしなかったはずだ。……彼らが死体でさえなければ、或いはそれに気付くことも出来たかもしれないが。

「……頃合いですね、エルさん」
『待機中の“マネギ”、何時でも行動可能です』

 シャーロットからの通信に答え、エルは降下する鮫たちに紛れる形で戦場に潜ませていた己の手勢たちを一斉に解き放つ。戦闘用小型機械兵器『マネギ』。羽を生やした太った招き猫にも似た姿の彼らのその総数、なんと565体。その体表には予め塗布した電子迷彩による隠蔽偽装が働いており、これまで周囲の風景に紛れ込みながら出番を今か今かと待ち構えていたのだ。一斉に動き出した565体ものデブ猫たちは、それぞれ手近なキョンシー目掛けて飛びついた。手に足に首に胴に、一度組み付けば生半な身じろぎでは振りほどけないほど強固に抱き着いてくる、まさに人海……否、猫海戦術とでも呼ぶべき数の暴力にて強引に抑え込まれたキョンシーたち。無理矢理にその拘束を振りほどいても、その周囲を泳ぐ鮫たちが小突いて態勢を崩し、またしても群がってくるマネギたちによってミツバチの蜂球宜しく取り囲まれてしまうのだ。

「マネギによる拘束、完了致しました」
『それでは此方も仕掛けます。マネギさんたち、防水は大丈夫ですか?』

 問題ありません―― そう、エルが返答するとほぼ同時。
 シャーロットは高く掲げた右手のその先で、勢いよく指をぱちんと弾いて鳴らす。

「安心致しました、それでは今ですっ!!!!」

 マネギと鮫に群がられ、身動きの取れなくなった兵士たちを取り囲むように、次々と虚空に浮かび上がる光の軌跡。光が描き上げていくのは幾つかの魔法陣。陣が完成すると同時、発動する術式はいずこかより転送させられてきた夥しいほどの大量の水だ。落下する勢いと重量によって、ただ落ちてくるだけであってもそれは凄まじい大激流へと変化する。大自然の猛威を魔術的に再現した大瀑布が兵士たちへと叩き付けられた―― その寸前に、鮫たちはマネギを己の背に乗せて悠々と空を泳いで逃げていく。

 死者たちが最後に見るものは、視界全てを埋め尽くす巨大な水の天幕であった。



「まあ、御札って基本紙ですし。耐水性なんてありませんよねー」

 転がっているキョンシーを見下ろしながら、シャーロットは屈んで額に貼り付けられていた呪符をつまもうとした。案の定、ふやけた符はボロボロに崩れ去る―― 当然、効力などとっくの昔に失せている。大瀑布に飲み込まれた地点はどろどろに泥濘んでいるが、シャーロットの作り出した激流は、自身を吐き出したゲートに飲み込まれる形で再び消失している。サメたちも既に帰還済みだ。辺りに残っているものと言えば、まるで溺死体の如く彼方此方に転がったキョンシーたちばかり。

「……先程のお話ですが」

 その足元で、やはり同じく転がるキョンシーのふやけた符に“デュクシデュクシ”と小さな前足でパンチの連打を入れるマネギを見下ろしながら、エルはシャーロットの方向に振り向いた。

「サービス名は“サメール”、でしたか。少々興味が湧きました。
 後ほど御社の資料を送付して頂けますか」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

地籠・凌牙
【アドリブ連携歓迎】
三回も殺される羽目になるのは流石に同情を禁じ得ねえが、それはそれでこれはこれだ。
っつーか流石にもう寝かせてやれよって思うしな……

下手に小細工してもどうせ失敗するし、真正面から受けるぜ。
【激痛耐性】と【継戦能力】と【気合】でふん縛って、【カウンター】で【グラップル】する【捨て身の一撃】!。
こいつらの筋力でもそう簡単に剥がせるもんかよ、ドラゴニアンの【怪力】舐めてもらっちゃあ困るからな!

死体と言えど内側まで頑丈とは限らねえだろう、【指定UC】で内側に直接ダメージを与えるぜ。
それで怯んだ隙に封魂符を引っ剥がす。
中身をボロボロにすりゃあ流石にもう利用する奴は出てこねえだろうよ……


トリテレイア・ゼロナイン
有機生命体、しかも人型相手にこの武装を使うのは躊躇われる物がありますが…
永久の眠り齎すという用途では申し分ないのかもしれませんね

…苦しむ素振りを確認すれば直ぐに封魂符の破壊を優先しましょう

剣と盾を背中にマウントし、展開するは両腕部と両肩部に装備した格納銃器
脚部スラスターの推力移動で大地を滑走しながら、装填したUCを僵尸軍団へと乱れ撃ち

ええ、焼夷弾です
それも一瞬で全身に火が回る強力な

例え僵尸化の強化で身体の耐久力が向上しようと
封魂符が何処に貼られていようと
只の札である以上、身体が炎に包まれれば燃えて灰になるのは文字通り火を見るよりも明らかなのです

…お互いの為にも速く終わらせましょう



●天を瞞きて海を過る
「三回も殺される羽目になるのは流石に同情を禁じえねえが……。
 それはそれで、これはこれっつーか、いい加減寝かせてやれよって思うしな」
「……そうですね。この四度目にて、永久の眠りに就かせて差し上げたいものです」

 周囲を取り囲むキョンシーたちに背中合わせに身構え、互いの死角をカバーし合いながら対峙する地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)とトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)。襲い来る鎖分銅の重たく鋭い無数の連打を、それぞれドラゴニアンならではの剛力を込めた腕や尾による力強い一振り―― 或いは、高機能のセンサーに由来する正確無比なパリイング。振るう剣が切り払い、或いは大盾が弾き、その尽くを逸らしていく。

「下手な小細工は俺の場合、やんねえ方がマシだけど……お前、なんかある?」
「有機生命体、しかも人型相手に用いるのは躊躇われますが……一応は」

 数に任せ、更に続く怒涛の連撃。次々と飛来する分銅の重たい衝撃が、身体を庇うように交差させ盾とする凌牙の腕に、そしてそれを掻い潜って肩や脇腹、太腿と彼方此方に突き刺さる。彼の身体の頑丈さと根性は、その程度の痛みでどうこう出来るものではないが、如何せん数が多くて鬱陶しい。

「……ああくそッ! 結構いてェなこれ!」

 苛立ちを払うように吠える凌牙。手元に引き戻されようとする最中の鎖を一本、乱暴に掴み取ればそのまま強引に引きずり回し、分銅を握り締めたままのキョンシー自身を分銅代わりに、周囲に並ぶ彼の同類たちを纏めて薙ぎ払い、打ち倒していく。

「うおりゃァァァッ!!!! ドラゴニアンの怪力舐めんじゃねえぞ!!」
「……こちらも、先ずは通常弾にて!」

 掴んだ鎖をハンマー投げ宜しく振り回す凌牙の動きに合わせるように、背中合わせのトリテレイアもまた、その場で旋回―― 同時に彼の両肩、両腕の装甲がそれぞれ展開し、内側に格納されていた内蔵火器が次々と迫り出した。ウォーマシンならではの、極めて精緻な身体制御は、即応にて連携行動を可能とする。凌牙の打ち倒したキョンシーたちに次々と突き刺さる機銃弾は、姿勢を崩したキョンシーたちの全身を荒々しく乱打し、まるで糸の切れた人形が風の中で振り回されているが如く、撃たれ続ける彼らは虚空を踊る。

「……今の彼らに痛みや苦しみは、やはり無いようですね」
「らしいな。……どっちかっつーと、こっちの心が痛くなってくるぜ」

 無数の弾丸を受けて尚、終わることを許されない死者たちはゆっくりと起き上がり、立ち上がる。多少の打撃や斬撃……そんな類の生中なダメージでは、彼らの歩みを止める事など叶いはしない。然しだからと言って、彼らの存在を見過ごす訳にも行かない。彼らの通り過ぎた後に残るものは、悲劇と破滅しかないのだから。
 
「……なんか手があるなら、使い所はたぶん今だぜトリテレイア。
 どんな手だろうと、コイツらこのままにしとく方が、よっぽどマズいだろ!」
「…………そう、ですね。手段を選んでいる場合ではないようです」

 背中合わせの相方の内心の逡巡を感じ取ったか、凌牙が吠える。
 その合間、散々鎖で振り回されて彼方此方の関節を折り曲げられたキョンシーを一呼吸にて手繰り寄せ―― その胴体に空いたもう片手を撃ち込んだ。抵抗する間もなかっただろう。如何に死者たちが頑丈であろうとも、彼らが反撃するよりも尚早く、胴に触れる掌から流れ込む瘴気がその総身を貫き駆け巡っていた。

「……辞世の句……ワリ、もう詠めねえよあ。けども、コイツで仕舞いだ」

 一瞬の内に頭頂から爪先に至るまでをも駆け巡った、濃密な穢れ。それらはキョンシーの肉体を内側から破壊し、焼き焦がした。神経も経絡も骨格も筋肉も、もはや機能しない。――……如何に不死者であろうと、駆動部位がひとつとして正常に稼働しない以上、ただの肉塊と代わりはしなかった。それは苦痛か、或いは憎悪か。叫ぶように大きく開かれたその口から黒煙を吐き出しながら動かなくなったキョンシーの額から、凌牙は乱暴に呪符を引き剥がした。彼らの生命を弄び続けた冒涜者たちへの苛立ちを込めて。

「……ふぅ。幾ら頑丈でも、内側までそうとは限らねえよなァ」

 未だ瘴気を薄っすらと立ち上らせる凌牙の手。手刀の如くその切っ先を、じりじりと距離を詰めてくる次のキョンシーへと向けて、彼は再び身構える。そして、同時にトリテレイアは地を蹴り駆け出した。携えた長剣と大盾はその背のハードポイントへと懸架し、再び展開される両肩の装甲。其処から迫り出す内蔵火器には既に、新たな―― とっておきの弾丸が装填済みだった。

「凌牙様。こちらも埋葬の準備が整いました。手早く終わらせましょう」
「よし来た! 分かってるだろうが、俺まで射線に入れないでくれよ!」

 飛びかかってくる新手のキョンシーの振るう斬撃を、カウンターにて払い除ける凌牙の腕が、その剣を握る腕ごと圧し折って―― 同時に、その手から流れ込む穢は、忽ちにキョンシーの肉体を内側より焼き尽くす。まるで踊るように、近寄ってくるキョンシーたちを次々と捻じ伏せ、大地へと叩きつける凌牙のその周囲、全身各所のスラスターを展開し、青白い噴射光の粒子を散らしながら、低空で疾駆するトリテレイアは、包囲網を狭めようと次々に迫り来るキョンシーたちに狙いを定め、旋回しながら解き放たれた全砲門より、装填された弾丸が一斉に撃ち出された。

「……どうか、安らかに」

 虚空を裂き唸りを上げる弾丸は、ただ前へと進み続けるキョンシーたちの戦列に吸い込まれ―― そして、爆ぜた。弾けた弾丸より溢れ出すのは、例え水中、真空中であろうとも激しく燃焼をし続ける特性燃料だ。悪辣さで知られるナパーム弾、それに輪をかけ凶悪な性質を持ったそれ、騎士としての誇りを追求するトリテレイアが使用を躊躇うのも致し方のない話ではあっただろう。キョンシーたちを瞬く間に呑み込んで尚燃焼の勢いを増す凄まじい火炎が周囲をオレンジの輝きに染め、広がる熱気は距離をとって尚、この戦場を地獄のように思わせる。

「例え、僵尸化の強化で身体の耐久力が向上しようと。
 あるいは封魂符が身体の何処に貼られていようと」

 有機体を容赦なく一瞬の内に燃焼し尽くすほどの圧倒的な凄まじい火力。包み込む焔の中で、灰と化すより尚早く跡形もなく崩れ落ちていくキョンシーたち。ケーキに立てられた蝋燭よりも尚儚く燃え尽きていくそれらを見遣りながら、トリテレイアは物憂げに呟いた。

「有機体である以上、結果は文字通り……火を見るよりも明らかなのです」

 白い装甲で包まれた巨体をオレンジ色に染め上げながら、機械の騎士は南蛮門を見据える。これ以上、彼らを苦しめぬよう、一刻も早くこの場を制圧せねばならないと意識を切り替える。燃え盛る、消えぬ焔は延焼を続け、直撃を免れた死者たちをも巻き込み、次々と燃え広がっていく。しかし、その火力が彼らの痕跡を残さぬことはせめてもの救いだった筈だ。

「俺にはよくわからねえが、それでも何も間違えちゃいねえよトリテレイア。
 ……こいつらはこれで眠れるんだ。
 さあ、お前らも俺たちが楽にしてやる。この四度目が、正真正銘の最後だ!」
「ええ! 一瞬、一秒でも早く――……終わらせるとしましょう」

 心を奮い立たせ、火炎地獄の戦場で、龍の青年と機械の白騎士は再び背中合わせに身構える。未だ生き延び続けてきたキョンシーたちが、全て動きを止め―― そして、煉獄の焔で清められ、消えていくまでそう時間は掛からなかった。

 やがて『火葬』というその役目を果たし、静かに消えゆく焼夷弾の焔――その最後の残滓を見送りながら、凌牙とトリテレイアは確かにその声を聞いた気がする。

 “わたしたちを 眠らせてくれて ありがとう”

 ……それはもしかすると気の所為や幻聴の類だったのかも知れないが。
 しかし、それでも。
 その声を最後に、南蛮門より新たな死者たちの姿が現れる事はなかったのだ。

「……もう、起きてくんじゃねえぞ」

 三度目を通り越して、四度目の正直。彼らはようやく、静かな眠りを手に入れた。
 唯一残ったその門こそ、彼らの墓標に相応しい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月08日


挿絵イラスト