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~恋想うカタチ~ 世界に一つのチョコレート

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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●風に揺れるもふもふはホワイトチョコレート
 人通りの少ない路地裏に、彼はいた。
 体中を覆う白い毛並み。すらりと伸びた四足。頭には、桃色のシルクハット。
 彼はピンと立った耳を揺らして周囲を警戒しながら、今朝の食材を確認する。
 山盛りのチョコレート。
 山盛りのチョコレート。
 山盛りのチョコレート。
 ――ご機嫌な朝食だ。
 世はバレンタイン。街が数多のチョコレートで溢れかえる時期。
 その中には哀しいかな、大量の売れ残り、廃気品も存在する。
 これを貪り、力として。必ずや、チョコレートを無駄にする世界を根絶してくれようと。
 彼は、そう心に誓いながら。円らな瞳を煌かせるのだった。

●そんな感じの事件です
「皆さん、お集まり頂きありがとうございます。
 えー、と……それじゃあ、早速事件の説明に入りたいのですが……」
 ウィンドボイスが猟兵達の前へ歩み出た。が、続くどうにも続く言葉の歯切れが悪い。見れば、苦笑いを浮かべたまま人差し指でぽりぽりと頬を搔いている。
「今回予知で見た脅威の正体は――こんな感じの子なのです!」
 ドンッ!
 ウィンドボイスが、意を決したように力強く、スケッチブックをテーブルに立ててみせる。
 そこに描かれているのは――犬だった。
 めちゃんこ可愛いわんちゃんだった。
「毛並みは白。もっふもふですよ……!」
 自分が予知で見た姿を思い出しながら、むふー、と締まりなく破顔する彼女。
「と、とはいえ……間違いなく人類の脅威です! 捨て置く事はできません!」
 倒すなんて勿体無い、とか本心では思っていそうだったが。
 猟兵達の視線を感じた為か、やがて首を振って表情を引き締める。
「で、作戦なんですが! この子はチョコレートが好物みたいなんですよね!
 つ・ま・り――」
 つまり。チョコレートを使って気を引こうという作戦だった。
 ただし、有象無象の市販品ではいけない。様々なチョコレートを貪った彼の気を引くには不十分だと彼女は語る。
 そう。必要なのは、世界に一つの手作りチョコレート。
 とっておきの気持ちを込めた逸品ならば、必ずや彼の興味を引けると力説している。
「という訳で、まずはチョコレート作りです!
 材料は沢山、色々用意しましたよ! 勿論、持ち込みも歓迎です!」
 折角なので、意中の人に渡すチョコレートとかも、作ってみたらどうですか……?
 などと言って。ウィンドボイスは、にんまりと微笑むのだった。


盛野玖磨
 皆様こんにちは、盛野玖磨です。
 当方初のキマイラフューチャー依頼となります。

 今回は時節を感じるチョコレート依頼である事に加え、

 ~恋想うカタチ~ 熱く熱いココロ(弥兎MS)
 恋想うカタチ~チョコで犬と戯れる~(蒼雪MS)

 上記2シナリオとコラボしてお届けしたいと思っております。両名とも素敵なMS様です。
 同時参加も可能となっておりますので、個々のMSが紡ぐ微妙に違う物語を、どうぞご体験頂ければ幸いです。
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第1章 冒険 『チョコでちょこっと作るもん!』

POW   :    定番だろうと心が大事!で攻める!

SPD   :    変わりものが面白い!チョコで作るよ面白い形!

WIZ   :    インパクトは大事!チョコで作る彫刻を見ろ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

キキ・ニイミ
【てぶくろ】で連携するよ。

ボク(キタキツネ)ってイヌ科だから、チョコって食べれないんだよね。
そのわんちゃんも大丈夫なのかな。

作るだけなら問題ないしやってみよう。
①弱火の【アニプラズマショット】で板チョコを溶かし、【オーラ防御】で泡だて器にオーラを纏わせてかき混ぜる。
②遥さんが用意してくれた小麦粉と牛乳と卵をかき混ぜ、カップに注ぐ。
③強火の【アニプラズマショット】で、30分程焼く。
④【バトルキャラクターズ】で氷系キャラを出して、2時間程冷やしてもらう。
⑤美味しくなるよう、お【祈り】する。

これでチョコカップケーキの完成。
遥さんに試食してもらおう。

意中の人か…
いつか「あの人」に再会出来たら…


如月・遥
【てぶくろ】で連携するね。

う~ん、普段料理なんて全然やらないからなぁ。
でも材料調達なら何とか。

【サモニング・ティアーズ】で、巨大化したニワコ(鶏のティアーズ)と、モー美(ホルスタイン牛のティアーズ)を召喚(ティアーズ=UDCオブジェクト『女神の涙』で人間の少女になった動物達のこと。元の動物の特徴を受け継いでいる)。
で、ニワコには卵(もちろん無精卵)を、モー美には牛乳を出してもらうね。
二人とも巨大化してるから卵も大きいし、牛乳も大量に出るよ。
小麦粉だけは【サモニング・ティアーズ】じゃ用意出来ないから、スーパーで買ってくるけど。

まあたまには料理も悪くないよね。
キキも楽しそうだし


ベルカ・スノードロップ
容姿と声は男装女子な男が白いエプロンを着けながら

インパクトより、やっぱり心、です

チョコを刻んでから2/3の量を湯煎します
温度は50度くらい
チョコが溶けるのはこれくらい熱いので、身体に塗ったりしてはダメですよ?
やけどしますからね

湯煎からおろして、残りの1/3のチョコを加えて混ぜます
手早く、でも空気が入らないように気をつけて、です

滑らかになってきたら良い感じです

理屈は、分かってますが、上手くいくと良いですが

スタンダードに、ハートの形。
後は、星形も作ります
贈る相手の事を考えながら作るのは、こういったイベントの醍醐味ですね
誰のことを考えながら作ったかは、ヒミツですよ。えぇ

※他の方との絡み歓迎※



●チョコレート製作開始!
 場所はキマイラフューチャーに無数と広がる廃ビル街の一角。
 事件の元凶を誘き寄せる為。大事な想い人へ気持ちを届ける為。或いは、その練習の為に。
 多種多様な思惑を持ってこの場へ集った猟兵の中で、真っ先に行動を開始したのは――
「う~ん、普段料理なんて全然やらないからなぁ。
 でも材料調達なら何とか……」
「ボクってイヌ科だから、チョコって食べれないんだよね。
 でも、作るだけなら問題ないしやってみよう……!」
 UDCアース世界最大級の超巨大動物園『アーク・パーク』よりやって来た如月・遥(『女神の涙』を追う者・f12408)と、キキ・ニイミ(人間に恋した元キタキツネ・f12329)であった。
「よし、それじゃあ早速お願いね。ニワコ、モー美!」
 まずは遥がユーヘルコード【サモニング・ティアーズ】で巨大化した鶏のティアーズ『ニワコ』とホルスタイン牛のティアーズ『モー美』に対し、ポニーテールを揺らしながら明るく微笑みかける。
 ニワコとモー美が軽快な鳴き声を上げてこれに応えると、遥が慣れた手つきでニワコの傍に産卵用の藁を敷き、モー美の隣に採乳用に容器を用意する。
「キキは今の内にチョコレートをお願いね」
「うん、任せて!」
 そして、モー美が牛乳を出してくれるのを見守りながらキキへ笑いかけた。
 これを受け、意気込みを感じさせる返事を返したキキは、ユーベルコード【アニプラズマショット】――凝縮させた高濃度、高純度のアニプラズマによる炎を、弱火に等しい火力で顕現させ、チョコレートの加熱を開始する。
「ふふ、微笑ましいですね。私も頑張るとしましょうか」
 和やかな二人、と動物達の様子を見ながら朗らかな微笑みを浮かべるのはベルカ・スノードロップ(森に住まう"ようかん"司祭・f10622)だ。
 見目麗しい男装麗人、といった雰囲気を纏う"彼"は、れっきとした本物の男性である。
 とはいえ、普通に接しているだけでこの事実に辿り着く事が出来る相手が、果たして存在するのかどうか。それほどまでに彼の纏う雰囲気や声質は、女性のそれであった。
 今身につけている純白のエプロンも、とてもよく似合っており、この場に居合わせた猟兵の大半が、彼の事を女性だと勘違いしている事だろう。
「まずはチョコを刻んでから、三分の二の量を湯煎します」
 お湯の温度は五十度くらい。
 眼を細め、柔和な表情。誰に説明するでもなく自らの工程を口ずさみ、慣れた手つきでチョコレートを溶かしていく。
「チョコレートが溶けたら湯煎から降ろし、残りの三分の一のチョコを加えて混ぜます。
 手早く。でも空気が入らないように気をつけて、ですね」
「おー、あっちも順調だね……!」
 胴に入ったベルカのチョコレート作りを見て、遥が感嘆の声をあげた。
 その手にあるのは鮮度抜群、正真正銘の産みたて卵と搾りたて牛乳だ。
「それじゃあ、キキ。これを使って!」
「うん、ありがとう。よし、負けないぞ!
 それじゃあコレを、小麦粉と一緒に混ぜて――こほっ、こほっ!」
「うふふっ。焦ったらダメよ、キキ」
 オーラを纏った泡立て器に材料を投入した際に小麦粉が宙に舞ってしまい、それを吸い込んで咳き込んでしまうキキ。思わず遥から笑みが零れる。
「うぅ……で、でも、後はカップに入れて焼くだけ!」
「そしてその後、少し冷やせば。チョコレートカップケーキの完成ね」
 引き続き【アニプラズマショット】――先ほどより少し火力強め――を用いてケーキを焼き始めるキキと、遥。
「こちらもそろそろ、良い感じです。
 さて、理屈に間違いは無し……上手くいくと良いのですが」
 そこに、同じく型取りを終えたベルカが合流し、三人はにこやかに微笑みあった。

●さて、出来映えは――?
「「「おお~……!!」」」
 三人。そして、周囲の猟兵達も一斉に感嘆の声をあげた。
 まずベルカのチョコレートは、スタンダートなハート型。
 そこに星型も加わって、正に王道。奇をてらわず、インパクトより真心で勝負した純朴なチョコレートだ。
「ふふ、上手に出来ました。
 贈る相手の事を考えながら作るのは、こういったイベントの醍醐味ですね」
 そう呟き、少し照れた表情を見せるベルカの――世界に一つだけの手作りチョコレートは、よほど禁欲的な猟兵でもない限り、是非とも受け取りたいと名乗り出てしまうほどの魅力を放っていた。
「誰のことを考えながら作ったかですか?
 それは――ヒミツですよ。えぇ♪」
 だが彼は男だ。現実は非情である。
「こっちも上手に出来た! と、思う。
 遥さん、味見してみて?」
「ええ、もちろん。
 どれどれ……」
 笑みを浮かべながら、チョコカップケーキを一摘みする遥。その姿を固唾を呑んで見守るキキ。
「――うん。とっても美味しいよ……!」
「本当? やった……!」
 遥の言葉に、キキは無邪気に喜ぶ。
 遥にとっては、ケーキが上手く出来た事も勿論だが、そのキキの姿もまた、何より嬉しい成果の一つ。
「料理もたまには悪くないわね……また、キキと一緒に作ろうかしら」
 次々と周囲がチョコレートを完成させていく和やかな空気の中、一人満足げに呟く。

 ――意中の人か……
 ――いつか『あの人』に再会出来たら……

 そして、キキもまた。
 人知れず、淡い想いを募らせていたのであった。

 この三人の猟兵達が作ったチョコレート。
 そこに籠められた強い想いは。
 必ずや事件の元凶を、強く惹きつける事だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
【狐の宿】で参加

とっておきの気持ち…陽とヴェルに持っている気持ちだね
本人達の前で作るから完璧だよ
…敵に1個でも食べられたら癪なのが難点だなぁ

チョコは湯煎して固めるだけでも難しいらしいけど(レシピぱらぱら)生チョコに挑戦しよう

料理に詳しい知人曰く、分量が大切らしいからレシピをしっかり見て分量と手順を守る
アレンジしたい気持ちもあるけど美味しくしたいから先人の知恵に従うよ

二人は凄く楽しそうにしてるなぁ

陽が百面相してる…あ、チョコと同じ顔になってるのか
ふふ、そうだね、お菓子作りって難しいよね

ヴェルはその発想凄くない?それ、マンガニクって奴でしょ
手も込んでるし
うーん…

でもきっとこれが俺らしさなんだろうな


縁城・陽
【狐の宿】で参加

判定:WIZ

ヴェルとサンディと一緒にチョコ作り!
へへ、仲いい友達と作るってだけで、すげー楽しいや。
楽しいチョコ作り。二人は何作るんだろ?
自分の作りながら時々チラ見してみるぜ。

オレの方は、犬の顔の形したチョコを作る!
白い犬だし、ホワイトチョコで犬の顔を作りつつ、
目や鼻を普通のチョコで。
折角だし色んな表情作ってみるか。笑顔に、驚いたかんじに……
沢山作っておく。作ってるとついつい同じ表情しちまうな……
顔見られたら恥ずかしーから作るの苦労してるって言ってごまかしとこ。

あと、ヴェルっぽい犬とサンディっぽい犬も作っておく。
仲良くしてくれる二人に後でやる予定。
喜んでくれるといーな♪


ヴェル・ラルフ
【狐の宿】で参加

陽とサンディと、3人で何か出来るのって、すごく嬉しいなぁ。
このわくわくした気持ちを込めて…とっておきの面白いやつ、作ろう。

犬と言えば、お肉だよね。それも、骨付きのかぶりつきたくなるやつ。
骨はホワイトチョコレートで、型もちゃんと作ろう。
お肉部分は生チョコにカシューナッツを混ぜて、固めた骨チョコをくるんで…っと
最後にココアパウダーで出来上がり。
うん、いい出来じゃない?

ふふ、作ってる最中はずっと楽しくてご機嫌だから、その気持ちが反映されたチョコになること請け合いだね。

…本当に心を込めて作った生チョコは、二人のために取っておこう。
これは取られないようにしなきゃね。



●狐のお宿から――
「チョコは湯煎して固めるだけでも難しいらしいけど……生チョコに挑戦しよう。
 ふふ。二人と一緒に来れて、本当に嬉しいよ」
「へへ、仲いい友達と作るってだけで、すげー楽しいや」
「うん。このわくわくした気持ちを込めて……とっておきの面白いやつ、作ろう」
 続いてチョコの製作に取り掛かるのは、『狐の宿』からやって来たサンディ・ノックス(飲まれた陽だまり・f03274)縁城・陽(瓦礫の城塞・f03238)ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)の仲良し三人組だ。
 まずは二人に声をかけたリーダー役のサンディが、パラパラとレシピ本をめくってチョコレート作りの工程を確認していく。
 料理に詳しい知人曰く、分量が大事との事だ。手順と分量を確実に守って、失敗をしないように気をつける。
 難しいアレンジは今更必要ない。今回のチョコレート作りにおいて何より大事な『とっておきの気持ち』は、目の前の二人の為に作る事で、完璧にクリアできるのだから。
 そう確信しているサンディの表情は、とても穏やかだ。一通りの確認を終えたレシピ本をポンと音を立てて閉じれば、チョコレートを細かく刻んでボウルに入れ、湯銭を開始する。
 さて、二人はどんなチョコレートを作っているのだろうか。少し気になったサンディは、周囲を見渡し始める。
「犬と言えば、お肉だよね。それも、骨付きのかぶりつきたくなるやつ」
「えっ……凄いユニーク……」
 真っ先に目に留まったのは、ヴェルの作っている犬の餌を彷彿とさせるチョコレート。
 それは、知る人ぞ知る――『マンガニク』と呼ばれる、あの形だ。
「骨はホワイトチョコレート。お肉部分は生チョコにカシューナッツを混ぜてみた。
 後は、固めた骨チョコをくるんで……最後にココアパウダーで出来上がりだよ」
「……その発想凄くない? しかも、手も込んでるし……」
「ふふ、そうかな? なんだか、こうして三人でチョコを作っている間、ずっと楽しくて」
 そう言って笑いかけてくるヴェルは、見るからに上機嫌だ。
 彼が楽しいと感じている気持ちが、そのままチョコレートにも現れているのだろう。
「このチョコレートなら、例のわんこも必ず寄って来るだろうね」
「うん。だと良いな」
「犬か……しかもモフモフなんだろ? はー、もふりてー……」
 二人の会話に陽も混ざってくる。先ほどからサンディやヴェルの様子をチラチラと伺っていたのだ。
「陽はどんなチョコレートを作っているの?」
「オレの方は、犬の顔をしたチョコレートだぜ。
 白い犬らしいから、ホワイトチョコで作ってみた。目や鼻は、普通の茶色チョコな」
 サンディの問いに陽が元気よく応える。
 見れば、笑った顔に驚いた顔、様々な表情をした犬のキャラクターチョコが模られている。
「うわぁ、可愛いね。
 陽は料理上手だから、食べても絶対美味しいヤツだ。楽しみだな」
 ヴェルもまた、陽のチョコレートを見て笑顔を向け、自分のチョコレート作りに戻っていく。
「二人とも楽しんでるなぁ。
 あっ――ふふ、陽ってば、百面相してる」
「い、いや、流石に作るの結構苦労しててなー。難しい顔になっちまうぜ」
 作っている犬の表情と同じ顔になってしまう陽を見て、くすくすと笑うサンディ。
 それが見つかってしまった陽は、照れくさそうに誤魔化そうとするが、その姿がまた、サンディの笑いを誘ってしまう。
「――やっぱり、二人と一緒に来れて良かったよ」
 やがて、泡立て器でクリームとチョコを混ぜ合わせながら、サンディがそっと呟く。
 その小さな声が聞こえたのか、ヴェルと陽もまた、はにかむような笑みを浮かべて。
 三人で和気藹藹と、チョコレート作りに精を出すのであった。

●さて、出来映えは――
「「「出来た……!」」」
 三人の歓声があがる。女子顔負けの出来映えに、周囲からの反応もとても良いようだ。
「ばっちりだね」
「うん、良かった」
「おー! これなら絶対に大丈夫だ!」
 お互いのチョコを称え合い、ハイタッチの要領で手と手を合わせていく三人。
「敵に一つでも食べられるのが、なんか癪だなぁ……」
 そんな中、サンディが少しだけ陰のある笑みを零す。
 他の二人は、犬を誘き出す為のチョコレートを作ったのだ。だが、彼は。
 できる事なら、このまま二人に味わって欲しいと。心のどこかで願ってしまった。
 だって、彼の『とっておきの気持ち』は、二人に向けたものなのだから。
 サンディは、そっと。幾つかのチョコレートを選り分けて隠しておく事にした。
 ――しかし、その裏で。

 ――本当に心を込めて作った生チョコは、二人のために取っておこう。
 ――これは取られないようにしなきゃね。
 二人に悟られないように、こっそりと別のチョコを握り締めるヴェルがいた。

 ――内緒で作ったヴェルっぽい犬とサンディっぽい犬のチョコ。
 ――喜んでくれるといーな♪
 誰にも見られないように、特製のチョコ型を取っていた陽がいた。

 そんな三人の絆は。
 きっとこれからも、永久に続いていく事だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『天国か地獄か?チョコプールアスレチック』

POW   :    力が全て!ゴリ押しで進む!

SPD   :    テクニックが命!タイミングよく進む!

WIZ   :    無謀にも挑戦?または応援!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●開催、チョコレートアスレチック!
「み、皆さん! 一大事です、大事件です!!」
 突然、ウィンドボイスが血相変えて叫び声をあげた。

「う、海が……チョコレートの海が発生しました!!」

 ――はい……?

 猟兵たちは、言葉の意味が分からずに立ち尽くす。
「そのままの意味なんですってば! と、とにかく外を見て下さい!」
 言われるままに、近くの窓から外の様子を覗き込む。

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

 ――確かにそれは、チョコレートの海だった。
 階下の路地裏が茶色の液体で覆いつくされているのだ。
 一部、足場になりそうな瓦礫だの板だのは確認できるものの、其々の距離が離れていたり、そもそもとても細かったり。簡単に移動できる状況ではない事が分かる。
「えーと、申し上げにくいんですが。多分これ、例のわんこの仕業です。
 つまり――」
 つまり……?
「チョコレートの発生源へ向かう必要があります。
 なんとかこうとか、あの海を突破して、その奥にいるわんこを探して下さい!」
 マジですか……
「うっかり海に落ちても所詮はチョコレートなので、命に関わるような事はないと思います。多分。
 ただ、いろんな意味で無事では済まないと思いますので、どうかお気をつけて……
 あ、作ったチョコレートは、ちゃんと持って行って下さいね」
 そう指示する彼女自身も、苦笑に近い笑顔を浮かべていた。
ベルカ・スノードロップ
行動指針はWIZ
これから挑む味方を応援【鼓舞】します

まぁ、アレですね
チョコレートなら、冷やして固めましょうか
全体を冷やすのは流石に無理ですから、動線の確保ですね
局地的に、味方の進む個所を冷やし固めていきますよ
「ひとまず、これで通れると思うので、先に行ってくださいね」
足場の確保なので、一番手に見せかけて殿ですね。
『プラトニック・チェイン』を渡る際に掴むためのワイヤーにしましょうか。
【ロープワーク】で、対岸に上手く引っかけながらいきますよ



●永久に広がる絶対零度の世界
「さて、と。それでは一番手、行かせて頂きましょうか」
 厨房の窓から外へ飛び出し、一定の広さを備えた足場へ集合した猟兵達。
 ここが、チョコレートアスレチックのスタート地点となる。
 眼下に広がるチョコレートの海を前にして、真っ先に一歩前へ出たのはベルカ・スノードロップ(享楽を求め続ける"ようかん"司祭・f10622)だった。
 一番手と口に出してはいるものの、彼のスタンスは我先に飛び出して一番を目指す、という類のものではない。
 その信条は、あくまでサポート。これからチョコレートの海に挑もうとする全ての猟兵達、その第一歩となる為に。
「ご安心下さい。私に凍らせられてないモノは――ほとんど無いですよ」
 ベルカは微笑みを崩さず、両手を宙へ差し出した。瞬時、彼の掌から発生するのは煌びやかな冷気の風が、眼下を覆いつくすチョコレートへ向かって吹き付けられる。
 次の瞬間。
 水害のように波打っていたチョコレートの荒波が、ぴたりと動きを止めた。
 例えるならば、液体窒素による瞬間冷凍。
 これがベルカのユーベルコード――【永久の氷河】の力である。
「ひとまず、これで通れると思うので、皆さん先に行ってくださいね」
 自らの成果を誇るでもなく、後続の猟兵達へ向けて、ごく自然に微笑むベルカだが……落ちたらドボン、という大前提がひっくり返ってしまった程の大成果である。
「全体を凍らせるのは流石に難しいので、ここから皆さんの足場を局地的に凍らせて援護しますね。
 それと、これを――!」
 続いて彼が対岸に向けて投げ放ったのは、魔術的に編み込まれた鎖【プラトニック・チェイン】
 黒と銀が規則的に編みこまれた鎖が対岸の瓦礫を器用に捉え、挑戦者を対岸へと導くワイヤーとなった。
 至れり尽くせりか。

「それでは皆さん、頑張って下さい。
 ふぁいと、ですよ」
 猟兵達へ向けて、再度ふわりと笑いかけるベルカなのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テフラ・カルデラ
チョコプールと聞いて!!
…ってそうじゃなく!えっと…そのわんこのところに行けばいいのですね!
実はこっそりチョコを作ってきたのです!よーし!がんばりますよ!!

よっ…はっ…これは…割と難しい…
しかし野性の勘があるからこそ何とかなっています!
さて…ここを超えたら…あっ…しまっ…

うぅ…落ちてチョコまみれです…でも、目的地は目前なのでいいでしょう…
…あれ?身体が…ってえぇ!?チョコが固まっていく!?なんで!?
まさかあのチョコって相当危険なものじゃ…やっぱりフラグには勝てなかったぁー!!
あぁ…ここでチョコ像になって佇むなんて…恥ずかし…い…
(チョコ像になったテフラはスタッフがあとでおいしくただきました☆)



●世界に一つのチョコレート
「チョコプールと聞いて!」
 そんな中、我先にと足場を飛び出そうとする猟兵もいた。
 テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)である。
「って、いや、そうじゃなく!
 えっと……そのわんこのところに行けばいいのですね!
 実はこっそりチョコを作ってきたのです! よーし、がんばりますよ!!」
 とか言ってますけど、彼の称号がちょっと不穏なんだよなぁ?
 ともあれ。
 自らの胸の前で両手を握り、ふんす、と鼻を鳴らしながら気合を入れると、元気いっぱいに足場へ向かって飛び降りた。
 最初の着地は、見事成功。その後も、チョコの波に揺られた不安定な足場を、危なげな足取りで少しずつ進んでいく。
 だが正直、相当危なっかしい。
 自らに備わっている野生の感を駆使しているのか、なんとか転落には至っていないものの、後ろで見ている猟兵達はハラハラドキドキ。どうしても彼の奮闘をじっくりと見守ってしまう。
「もし落ちたら、チョコが身体にへばりついて、最悪そのまま固まってしまうかも……そう、まるで石みたいに……
 そんなの、絶対に嫌です……よし、ここを越えれば……アッ――!?」
 ド、ボン――!
 見事なフラグ建設、アンド回収。
 最後の最後でがっつり足を滑らせてしまったテフラは、見事にチョコの海へダイブしてしまった。
「わぷっ!? わ、わわわっ……!」
 幸い、すぐに手近にあった鎖状のワイヤーに捕まり、対岸へと這い上がる事ができた。
 だが、哀しいかな。彼自身も予想していた通り、全身チョコまみれ状態である。
「うぅ……でも、目的地には到達出来たので、良いでしょう……」
 がっくりと肩を落としながら、それでもまぁと力なく苦笑を浮かべるテフラ。
「――あれ? 身体が……」
 が、勿論それで終わるはずもなく。
「チョコが、固まっていく――!? なんで!?」
 ピキ、ピキピキピキ……と、分かりやすい音を立てて、チョコが急速に固まっていく。
 まぁその、なんでかと言われると……
「まさかあのチョコって相当危険なものじゃ……
 やっぱりフラグには勝てなかったぁー!!」
 うん、ありがとう。そういう事にしときましょうね。
「はうぅ……チョコと一緒に、身体も固まっちゃいますぅ……嫌ぁ……!
 ボクは、ボクは絶対に――石化なんかに、負けない……ッ!」
 どんどん身動きが取れなくなっていく身体。
 それに対して精一杯上半身をくねらせるテフラ。必死にもがく顔が徐々に赤みを帯び、酸欠の為か、瞳も徐々に呆けていってしまう。
「あぁ……ここでチョコ像になって佇むなんて……
 恥ずかし、い……」
 それが、彼の残した最後の言葉。
 こうして今、一人の猟兵による戦いが終わった。
 何故かちょっと恍惚気味の表情を浮かべた――世界に一つのチョコレートが今、完成したのである。
 ちなみにこのチョコレート像は、後にグリモア猟兵が美味しく頂き――もとい、きちんと治療致しました事をお伝えしておきます。

成功 🔵​🔵​🔴​

縁城・陽
【狐の宿】で参加

チョコの海に道が!ベルカ、ありがとなー!
流れに逆らって走ればいつかつくんだ。なんとでもなるぜ

判定:POW
技能:手をつなぐ/怪力

怪我は多分平気だろーし、強引に走り抜ける!
ヴェルとサンディが落ちそうになったらしっかり【手をつなぐ】
その後【怪力】で引っ張りあげるぜ
「気をつけろよー?全身チョコ色に染まっちまうぜ?」

オレが落ちそーになったら道連れにしねーように
落ちてもその辺のもの【怪力】で掴んでさっさと上がるぜ
「チョコで泥遊びみてーなことしてる気分だなー」
落ちた後あがって陸地についたら体は拭ける範囲で拭く
「うわ、べっとべと…すげー量あったなー…」
手についた奴は舐め取っちまうか


ヴェル・ラルフ
【狐の宿】で参加

雪と同じで、一面に広がるものって入りたくなる…
いやいや、無事にたどり着かなきゃね。
ワイヤーまで…できる男はちがうね。ベルカ、ありがとう!

[ダッシュ]で真っ直ぐ進んでいこう!
ところどころある足場も[力溜め]でジャンプして進む

陽とサンディと進む速度は合わせながら
誰かが落ちそうになったら、[手をつなぐ]で3人で助け合いたいな

無事にたどりつくのが一番だけど、べとべとになっても、思い出になって嬉しくなっちゃうかもなぁ
友達といるのって、何してても楽しい。久しぶりだな、こういう気持ち。

この時間、大事にしたいなぁ…
なんて、ぼんやりしてないで進まなきゃね!


サンディ・ノックス
【狐の宿】で参加

あちらから寄ってきてくれると思ってたんだけど甘かったなぁ
普段なら誰かに任せて応援に回るけど今は俺も走るよ

至れり尽くせりのサポートで
チョコフォンデュになる心配が無くなったのはありがたい
「ありがとう、頑張るよ。じゃ、発生源に行ってわんこをもふろっか?」

最初は慎重に移動、二人のペースにあわせてスピードアップ

念のため朔(フック付ワイヤー)をフォローに使えるよう右手で持つ
あまり使いたくない装備だけどこういうときに活躍する物品だし
いざというときは【投擲】して近場に引っ掛け【怪力】で支える

でも手を繋ぎ落ちないようにと二人が動くなら助けてもらう
俺だって二人を支える補助のためにも朔を投擲するしね



●手と手で繋ぐ絆
「さて、それじゃあオレ達も行こうか」
 続いてスタート地点に立ったのは、サンディ・ノックス(飲まれた陽だまり・f03274)と……
「おー、チョコの海に道が! ベルカ、ありがとなー!」
「それにワイヤーまで……できる男はちがうね。ベルカ、ありがとう!」
 同じく『狐の宿』からやって来た縁城・陽(瓦礫の城塞・f03238)と、ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)の仲良し三人組だ。
 まず陽とヴェルの二人が、先ほどユーベルコードやアイテムを用いて進むべき道を作ってくれた猟兵に向けて、朗らかな笑顔と御礼の言葉を投げかける。
「オレからもありがとうベルカ、頑張るよ。
 ――よし。じゃあ二人とも、発生源に行ってわんこをもふろっか?」
 サンディもまた、彼らに続く形で礼を述べ、やがて眼前に広がるチョコレートの海へと眼を向けた。
 だが、二人に怪我をさせる訳にはいかない。軽い言葉とは裏腹に、自然と表情が引き締まる。
「おう! 強引に走り抜ける!」
「真っ直ぐ、進んでいこう!」
 そんなサンディの両後ろを、陽とヴェルが並び固めた。
 声に振り返ったサンディは、思わずハッと息を飲む。
 二人とも決して油断をしている様子ではないものの、その表情は、実に晴れやかなものだったからだ。
「大丈夫、なんとでもなるぜ」
「そうだよ、三人で助け合えばね」
 彼らはサンディの瞳をしっかりと見つめながら、其々の片手を差し出してきた。
 見れば、もう片方の手は、既に二人の間で繋がれていた。
「二人とも……――うん、頑張ろう!」
「「おーっ!!」」
 その手と手を両の手で其々しっかり握ったサンディが加わり、小さな円陣となった三人は、互いの健闘を祈って声を張り上げた。

●ファイト、一発!
「とはいえ、最初は少し慎重に行かないとね」
 流石に手を繋いだまま軽業に挑むのは難しい。
 三人は互いをフォローできる距離を保ちながらも、それぞれのペースでチョコレートアスレチックの攻略を開始した。
 サンディは、念の為に持ってきた【朔】を右手に備えて慎重に進む。いざとなれば、フック付ワイヤーとして近場に投げ、支えとするのだ。
「よっ……ほっ……!
 二人とも気をつけろよー? これ、落ちたら全身チョコ色に染まっちまうぜー?」
 小柄な身体を躍動させて先頭を突き進む陽が、少し振り返って後続の二人に注意を促す。
 先の猟兵がチョコレートを冷やし固めてくれているとはいえ、局地的な効果である。その細い道から足を踏み外せば、容赦なくドボンなのだ。
「ふふ。でも、それはそれでなんか思い出になる気がするから、ちょっと嬉しいかも……」
 どこまで本気で冗談か。くすりと微笑みながら言葉を漏らすヴェルは、ついつい足を止めて、この得難い光景と時間に、夢中になってしまう。
 日の当たる恵まれた生活、とはとても言い難いような生活を続けてきた彼にとっては、信頼できる友人と共に過ごすこの瞬間が、とても尊く感じられていた。
 何をしていても。ある程度なら、どうなってしまっても――ただひたすらに、楽しい。
 こんな気持ちに至ったのは、いつぶりだっただろうか。
「おっといけない。ぼんやりしてないで、先に進まないと……」
 ふと我に返り、進行方向に意識を向けた。その時――
「陽、危ないッ!!」
 眼前でバランスを崩し、落下する陽の姿が目に留まった。
 しかも悪い事に、チョコの波が速い地点だ。
「届け――ッ!」
 二人に合わせて攻略のペースを上げていたサンディが、可能な限り距離を詰めながら朔を投擲する。
 幸いな事に、その先端に備わったフック部分がチョコの渦でもがく陽の付近に位置する瓦礫へ引っ掛かった。
「ぶ、はーっ……! やべー……泥遊びじゃ済まねーとこだったぜ……!」
 流石は怪力自慢の羅刹といったところか。その細腕でしっかりとワイヤーを掴んだ陽は、チョコレートの波に流される事なく済んでいた。
「今助けるよ、手を……!」
「陽、捕まって……!」
 ヴェルとサンディが、陽へ向けて手を伸ばす。
「二人とも、さんきゅーな!」
 その手を、力強く握り返す陽。
「ふぁいとーっ!」
「いっぱぁぁぁぁつ!!」
 サムライエンパイアの一部に古くから伝わる掛け声と共に、力強く引っ張り上げられた陽は、文字通り全身チョコまみれとなってしまっていた。
「うわ、べっとべと……すげー量あったなー……」
「あーあ……これじゃ、等身大チョコレートだね……持ってきたチョコレートは無事?」
 手早く陽の身体を拭き取りながら、サンディが少し心配そうに声をかける。
「おー、無事だぜー。ひでぇ目にあったけどなー」
 返事を返し、思わず手に付いてしまったチョコを舐めとってしまう陽。味はまぁ、悪くない。
「ふふ、陽ってば。流石にちょっと汚いんじゃない?
 でも、等身大の陽チョコレートか……今度作ってみようかな」
「うえー? そ、それは……どうなんだー……?」
 ヴェルの呟きに、ビシッと手の甲でツッコミを入れるような仕草をする陽。
「ふふふっ。それは確かに、オレも興味あるかも」
「おいおい、サンディまでー……」
「――ぷっ」
 苦笑いする陽の姿を見て、二人のどちらからか、笑い声が漏れる。
「「「あははははっ……!!」」」
 それを口火に。●手と手で繋ぐ絆
「さて、それじゃあオレ達も行こうか」
 続いてスタート地点に立ったのは、サンディ・ノックス(飲まれた陽だまり・f03274)と……
「おー、チョコの海に道が! ベルカ、ありがとなー!」
「それにワイヤーまで……できる男はちがうね。ベルカ、ありがとう!」
 同じく『狐の宿』からやって来た縁城・陽(瓦礫の城塞・f03238)と、ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)の仲良し三人組だ。
 まず陽とヴェルの二人が、先ほどユーベルコードやアイテムを用いて進むべき道を作ってくれた猟兵に向けて、朗らかな笑顔と御礼の言葉を投げかける。
「オレからもありがとうベルカ、頑張るよ。
 ――よし。じゃあ二人とも、発生源に行ってわんこをもふろっか?」
 サンディもまた、彼らに続く形で礼を述べ、やがて眼前に広がるチョコレートの海へと眼を向けた。
 だが、二人に怪我をさせる訳にはいかない。軽い言葉とは裏腹に、自然と表情が引き締まる。
「おう! 強引に走り抜ける!」
「真っ直ぐ、進んでいこう!」
 そんなサンディの両後ろを、陽とヴェルが並び固めた。
 声に振り返ったサンディは、思わずハッと息を飲む。
 二人とも決して油断をしている様子ではないものの、その表情は、実に晴れやかなものだったからだ。
「大丈夫、なんとでもなるぜ」
「そうだよ、三人で助け合えばね」
 彼らはサンディの瞳をしっかりと見つめながら、其々の片手を差し出してきた。
 見れば、もう片方の手は、既に二人の間で繋がれていた。
「二人とも……――うん、頑張ろう!」
「「おーっ!!」」
 その手と手を両の手で其々しっかり握ったサンディが加わり、小さな円陣となった三人は、互いの健闘を祈って声を張り上げた。

●ファイト、一発!
「とはいえ、最初は少し慎重に行かないとね」
 流石に手を繋いだまま軽業に挑むのは難しい。
 三人は互いをフォローできる距離を保ちながらも、それぞれのペースでチョコレートアスレチックの攻略を開始した。
 サンディは、念の為に持ってきた【朔】を右手に備えて慎重に進む。いざとなれば、フック付ワイヤーとして近場に投げ、支えとするのだ。
「よっ……ほっ……!
 二人とも気をつけろよー? これ、落ちたら全身チョコ色に染まっちまうぜー?」
 小柄な身体を躍動させて先頭を突き進む陽が、少し振り返って後続の二人に注意を促す。
 先の猟兵がチョコレートを冷やし固めてくれているとはいえ、局地的な効果である。その細い道から足を踏み外せば、容赦なくドボンなのだ。
「ふふ。でも、それはそれでなんか思い出になる気がするから、ちょっと嬉しいかも……」
 どこまで本気で冗談か。くすりと微笑みながら言葉を漏らすヴェルは、ついつい足を止めて、この得難い光景と時間に、夢中になってしまう。
 日の当たる恵まれた生活、とはとても言い難いような生活を続けてきた彼にとっては、信頼できる友人と共に過ごすこの瞬間が、とても尊く感じられていた。
 何をしていても。ある程度なら、どうなってしまっても――ただひたすらに、楽しい。
 こんな気持ちに至ったのは、いつぶりだっただろうか。
「おっといけない。ぼんやりしてないで、先に進まないと……」
 ふと我に返り、進行方向に意識を向けた。その時――
「陽、危ないッ!!」
 眼前でバランスを崩し、落下する陽の姿が目に留まった。
 しかも悪い事に、チョコの波が速い地点だ。
「届け――ッ!」
 二人に合わせて攻略のペースを上げていたサンディが、可能な限り距離を詰めながら朔を投擲する。
 幸いな事に、その先端に備わったフック部分がチョコの渦でもがく陽の付近に位置する瓦礫へ引っ掛かった。
「ぶ、はーっ……! やべー……泥遊びじゃ済まねーとこだったぜ……!」
 流石は怪力自慢の羅刹といったところか。その細腕でしっかりとワイヤーを掴んだ陽は、チョコレートの波に流される事なく済んでいた。
「今助けるよ、手を……!」
「陽、捕まって……!」
 ヴェルとサンディが、陽へ向けて手を伸ばす。
「二人とも、さんきゅーな!」
 その手を、力強く握り返す陽。
「ふぁいとーっ!」
「いっぱぁぁぁぁつ!!」
 サムライエンパイアの一部に古くから伝わる掛け声と共に、力強く引っ張り上げられた陽は、文字通り全身チョコまみれとなってしまっていた。
「うわ、べっとべと……すげー量あったなー……」
「あーあ……これじゃ、等身大チョコレートだね……持ってきたチョコレートは無事?」
 手早く陽の身体を拭き取りながら、サンディが少し心配そうに声をかける。
「おー、無事だぜー。ひでぇ目にあったけどなー」
 返事を返し、思わず手に付いてしまったチョコを舐めとってしまう陽。味はまぁ、悪くない。
「ふふ、陽ってば。流石にちょっと汚いんじゃない?
 でも、等身大の陽チョコレートか……今度作ってみようかな」
「うえー? そ、それは……どうなんだー……?」
 ヴェルの呟きに、ビシッと手の甲でツッコミを入れるような仕草をする陽。
「ふふふっ。それは確かに、オレも興味あるかも」
「おいおい、サンディまでー……」
「――ぷっ」
 苦笑いする陽の姿を見て、二人のどちらからか、笑い声が漏れる。
「「「あははははっ……!!」」」
 それを口火に、サンディが、ヴェルが、額にチョコを残したままの陽が。
 三人揃って、思いきり笑いあった。

「――さぁ、流石にもう少しでチョコ海の中心だと思うよ。
 行こう、二人とも!」
 やがて、満足げに笑みを浮かべるサンディが、改めて二人に向き直る。
 彼らもこれに頷いて、誰からともなく差し出した手を、互いにしっかり握り締めると。
 一際大きな瓦礫の足場へと、飛び移っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『チョコットキング』

POW   :    チョコレートテイルズ
【甘味への欲求 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【巨大な溶けかけのチョコレートの尻尾】から、高命中力の【滑らかトリフチョコ】を飛ばす。
SPD   :    蕩けるチョコボディー
【チョコットキング 】に覚醒して【熱々のチョコボディー】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    超硬化チョコボディー
【 超硬化したチョコボディー】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠柊・弥生です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●チョコットキング、参上!
「いたぞー! 白いチョコのわんこだ!!」
 チョコレートの海原に、とある猟兵の声が響き渡る。
 彼は、元は平屋の屋根だったと思われるような足場の中央に鎮座していた。
「グルルルル……!」(何者だ、お前達。我が領土を犯すとは……名を名乗れ!)
 体中を覆う白い毛並み。すらりと伸びた四足。頭には、桃色のシルクハット。
 円らな瞳にうっすらとした敵意を覗かせて、猟兵達の動向を伺っている。
「素晴らしいです! ありがとうございます!
 居場所さえ分かってしまえば、こちらのもの! 後続の皆さんもすぐに応援に向かえると思います!」
 これに対し、安全な箇所から声を張りあげるウィンドボイス。
「後は、その子を撃退すれば万事解決です!」
「ヴゥ……バウッ!」(だが我は慈悲深き王である……我が舌を唸らせるチョコレートを献上すれば、許してやってもよい!)
「最新の情報によると、その子の名前は『チョコットキング』!
 チョコを使った攻撃や、身体の硬さを自在に変幻させて戦闘力を増したりするようです。お気をつけて!」
「ワンッ! ワン、ワンワンッ!!」(見れば貴様ら、良いチョコを所持しているようではないか! 手作りチョコは良い、実に良い。この世に一つのオンリーワンだ。さぁ、疾く其れを此方に――)
「さぁ!! 戦闘開始です!!!!」
縁城・陽
【狐の宿】で参加

ちょっと可愛い感じの名前しやがって……
帽子も可愛いし…も、もふりてーぜ……
でもオブリビオンだから退治しねーとな!

判定:WIZ
技能:おびき寄せ/武器受け/怪力

まずは作った犬チョコで【おびき寄せ】だ
「ほーら、渾身のチョコだぞー、美味いぞー?味わえ、よっ!」
言いつつ空高く放り投げ
釣られたところに<狐花の舞>を叩き込む
「その表面削いでやるぜ!」
ってサンディの攻撃が犬になってる……相当もふりてーんだな?

ヴェルが足止めしたら全力で殴りかかる
速攻で刀を叩き付けてカタをつけるぜ

飛んでくるチョコレートは<狐花の舞>解除して【武器受け】
【怪力】で全部打ち返してやるぜ!
ほーむらん、してやるからな!


ヴェル・ラルフ
引き続き【狐の宿】で参加

帽子も被って小粋な感じだね。
…可愛い…いや、オブリビオンだっけ。
どうにも動物の姿だと撫でたくなるな。

さて、勿体無いけど、作ったチョコを囮にしよう。
渾身のマンガニクのチョコレート…
一生懸命作ったんだ、あげられないよ!といいつつ[だまし討ち]
陽がチョコを投げるタイミングに合わせて、「うっかり」チョコを放り投げてしまって、飛び付いてきてくれたらもふもふ…もとい、【残光一閃】で動きを止めよう

二人とも、今のうちだよ!

どうせ食べるなら、心して食べてね。
僕の、友達との思い出のチョコレートだから。

無事終わったら、二人に作ったチョコあげたいなぁ…


サンディ・ノックス
【狐の宿】で参加

敵意以外になにか伝えようとしてる?
わんこの言葉がわからないのが残念だなぁ
陽、もふってから退治すればいいんだよ(真面目な顔で)

敵の行動はしっかり見てなごむ…じゃないや
【見切】って回避の判断材料にする
【フェイント】しつつ回避するけどコレ、犬と戯れている錯覚に陥るね
小刀の攻撃に続ける『招集・紫』の黒い獣の幻が
黒い大きな犬でかまってアピールが凄くなるのも仕方ないんだ、俺は悪くない

ヴェルがユーベルコード封じに成功したら気を引き締め
黒甲冑姿に変身(性格は変化無し)、【怪力】を込めた斬撃で速攻する

トリュフチョコは反射的に食べる、食べ物を粗末にしちゃいけない(※言い訳)
美味しい、これ攻撃なの?


ベルカ・スノードロップ
※アドリブ、連携歓迎
わんこですね。うん

「では、こちらをどうぞ、です」
ちなみに、あげるのは星形の方です
ハートの方はあげませんよ!
「お味はいかがでしょうか?」

とりあえず、チョコと引き換えに、わんこがもふもふさせてくれる場合
他の猟兵さんで、したい人が済むまで待ちます
その間、【全力魔法】のユーベルコードを準備をしておいて
済んだら【スナイパー】で【串刺し】です

「チョコが好きなら、チョコの海とか、チョコを無駄にしちゃダメです」
めっ、ですよ!
食べ物を無駄にしてはいけないのです

あ、攻撃は【見切り】ます
避けますね



●王様、謁見
「わんこだな」
「うん、わんこだね」
「わんこですね、うん」
 全身にもふもふっとした白毛を蓄えた犬――にしか見えない相手を見据え、その場に居た猟兵達全員が同じ感想を口にする。
「ちょっと可愛い感じの名前しやがって……帽子も可愛いし……も、もふりてーぜ……」
「うん……どうにも動物の姿だと、撫でたくなるな」
 縁城・陽(瓦礫の城塞・f03238)が、抑えきれない本音を漏らせば、隣に立つヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)もそれに同意を示す。
 だが、あんな姿でもオブリビオンなんだっけと、自らの使命を今一度思い返した。
「敵意以外にも何かを伝えようしてる……? ような……?
 まぁ、うん。陽、そういう時はもふってから退治すれば良いんだよ」
 ヴェルの更に隣で、サンディ・ノックス(飲まれた陽だまり・f03274)も口を開く。
 穏やかな物腰ではあるが、どうにも冗談を言っている様子ではなく、極めて真顔である。心なしか、チョコットキング――王様がちょっと怯んでるぞ。
「さて、皆さん。チョコレートは無事に持って来れていますか?」
 最後にベルカ・スノードロップ(享楽を求め続ける"ようかん"司祭・f10622)が、三人の少し後方から歩み寄りながら問いかける。その手には、先ほど製作したばかりの手作りチョコレート。
「大丈夫、抜かりないよ」
「僕も、ここに……」
「おう、もちろんだぜー」
 ベルカに応えながら、三人も其々の懐から手作りチョコレートを取り出した。
「バウッ! バウバウッ!」(むっ、献上品か! 苦しゅうない!)
 これを見た王様は、自慢の尻尾をピコピコ振っている。
「よし、それじゃあ勿体無いけど――これを囮にしよう。
 それっ! 渾身のマンガニクチョコレードだ!」
「では、こちらをどうぞ、です」
「ほーら、渾身のチョコだぞー、美味いぞー? よーく味わえ、よっ!」
 こうして、ほぼ同時のタイミングで四人の手作りチョコレートが宙を舞い、チョコットキングの足元へ献上された。

●王様、実食
 まず真っ先にチョコットキングが食いついたのは、ヴェルが作成したマンガニクのチョコレートだった。
 犬には肉、という読みが当たったのか。はたまた、単純に物珍しかったのか。
 チョコットキングは嬉しそうに大口を開け、マンガニクの中心部分を大きく咥え込み、そのままバリバリと音を立てて齧っていく。
「――バウバウ、バウッ!」(素晴らしい、実に素晴らしいチョコレートだ。色だけでなく、部位によって味も食感も違うという拘り方! 口にする者を心から楽しませようとする強い気概が感じられる。好奇心と優しさを併せ持った、優秀なシェフが作ったモノであろうな! 美味である!)
 王様。尻尾、ぶるんぶるん。
 その度、そこから滑らかトリュフチョコが周囲に撒き散らされる。
 これ、一応彼にとっては攻撃にもなる行動なのであるが。
 ベルカには当然の如く避けられ、陽には刀で打ち返され、サンディに至っては美味しく食べてみせていた。緊張感、ゼロ。
 そんな事は露知らずの王様、あまりにがっつきすぎて、折角の真っ白な毛並みが目元に近いところまで生チョコ部分の色に染まっていた。
 最後にはお肉の骨部分を表現したホワイトチョコレートを咥え、そのまま美味しそうに噛み砕き――はい、ご馳走様。
「ヴゥ……ワンッ!」(ほう、これもまた、見事なり!)
 次に王様が向かうのは、ベルカが用意した星型のチョコレート。ハート型は、やはり簡単にはあげられないという事だろうか。投げ入れた袋の中には入っていない。
「ワンワンッ! ……ワンッ!」(均整の取れた美しいチョコレートだ。それだけであれば何処ででも大量生産されていようものだが、このチョコには気持ちが、心が宿っておる! これを作ったシェフは、さぞや清廉潔白な――いや? なんかそう見えて実は、というような感じも? まぁ良い、美味い!)
 続いて王様の鼻が向かうのは、陽が作ったわんこの顔チョコレート。
 驚いている顔、楽しい顔。色々な表情をした其れを、意外にも一つ一つ目で見てから口にしていく。
「バウッ!」(ほう、これはまた愛らしいチョコレートだ。そして、面白い。この手の刻印が入ったチョコ菓子は、安く量産されているのをよく食わされたが――なんとかのまーち、とか言ったか)
 いけません、王様。
「ワン、ワンッ!」(だがこれは、まるで違う。全てが手作りで、同じものは二つと存在しない作品だ! 二種類のチョコレートで、こうも豊かな表情を表現するとは見事である! 大変、美味!)
 大きく舌を出し、ハッ、ハッと小刻みに息を吐きながらチョコレートの表情を確認して、一つ食べる。
 そんな動作を繰り返す王様の表情は、ついつい口にするチョコレートと同じ表情になってしまっていた。
「ヴゥ……」(そして、これだ……)
 王様が最後に目をつけたチョコ。いや、最後まで取っておいたチョコ。
 それは、サンディが作成した生チョコであった。
「ワンッ――アォォォォン!」(一見にして、平々凡々。だが、決してそうではない。精一杯まともなモノを作ろうとしながらも、どうしても不揃いになってしまうカタチ。かかり方にムラのあるココアパウダー。なんと微笑ましい手作り感であろうか! そして何より、籠められた強い気持ちが最高のエッセンス――これぞ我が長く探し求めた世界最高のチョコレート、その名も《本命チョコ》なのでは!?)
 ガツ、ガツガツ……!
 一心不乱にチョコを貪るチョコットキング。
 あまりの夢中っぷりに、陽とサンディ、ついでにヴェルまでもがこっそりと身体をもふっているのにも気付かない。
 ちなみに、王様を触った感触は――ふわっふわだった。
 あの毛並み、チョコで出来てるはずのにね。

●王様、退場
「さて、少しは満足したかい?
 でもそのチョコは僕なりに一生懸命作ったんだ。ただでは――あげられないよ!」
 頃合を見て、ヴェルが声を張り上げた。
 チョコットキングは、残念だがオブリビオンなのだ。退治せねばならない。
 他の三人も、彼の声に頷きを返す。
「舞い咲け曼珠沙華、魑魅魍魎を彼岸に運べ――!
 その表面、削いでやるぜ!」
 まずはサンディが小刀を放ってユーベルコード【招集・紫】を、そして陽が【狐花の舞】を発動させる。
 無数の白い彼岸花と化した陽の武器が、チョコットキングの体毛――チョコだけど――を削ぎ取っていく。
 この花びらに混ざる格好で、チョコットキングの横腹辺りに刺さった小刀。これを目印として、サンディが放った黒い獣の幻影が襲い掛かっていく。
「バウッ……!?」(なんだ貴様、我は食事中であるぞ!?)
 前足を高く上げて威嚇した後、激しいフットワークで応戦するチョコットキング。
「サンディの攻撃、犬になってんな……」
 陽が思わず呟いた通り、どう見ても可愛い二匹のわんこがじゃれ合ってるようにしか見えないが、その実、真剣な戦闘風景である。多分。
「ギャイン!?」
 そこへ続くタイミングで、ヴェルが【残光一閃】を発動。
 鎖のように練り上げた闘気が、チョコットキングの四肢に絡みつき、動きを縛る事に成功する。
「みんな、今のうちだよ……ッ!」
 このユーベルコードは毎秒、寿命を削る。
 それでもヴェルは奥歯を噛んで。
 共に戦う仲間を信じ、脱出しようともがくチョコットキングの動きを封じ続けた。
「おう、任せろ!」
 ヴェルの気持ちを汲み取った陽がチョコットキングへ向かって疾走。
 武器を刀へと戻し、全力で斬りつけた。
「――我が夜の血に応え、顕現し、貫き穿て、夜王の槍――
 準備完了です。皆さん、離れて」
 そして。
 三人の少し後方から、凛とした言葉が紡がれる。
 声の主は、ここまでずっと力を溜め続け、今まさに全力のユーベルコード【ナイトメアジャベリン】を解き放とうとする、ベルカだ。
「王様。チョコのお味は、いかがだったでしょうか?
 ですが本当にチョコが好きなら、チョコの海とか……食べ物を無駄にしちゃダメです」
「ヴゥ、バウッ! ワンワンッ――!」(待て、清廉潔白な娘よ! であればせめて、献上されたチョコを、残さず全て食べてから――!)
「めっ、ですよ!!」
 王様。その人、男なんですよ。
 ともあれ。
 その数、実に百にも迫る魔法の槍に身体を貫かれた我らがチョコットキング様は、もうちょっと食べたかったなーみたいな無念を抱えながらも、無事に退治されたのでした。

●チョコレート作りは、もうちょっとだけ続くんじゃ
「終わりましたね」
「うん、ありがとうベルカ。凄く助かったよ」
 戦闘の後。サンディとベルカが、互いの健闘を称えながら握手を交わし、陽もまた、自分も混ぜろと声をあげる。
 そんな、とても幸せな風景と時間を楽しみながら。ヴェルは一人、静かに微笑んでいた。
「帰ったら、もう一度みんなにチョコレートを作ってあげたいな」
 それは小さくて素朴な。だけど今、彼に宿った、彼だけの願い。
 こうしてまた、世界に一つのチョコレートが、生み出され。
 世界に一つの大事な絆へと、繋がっていくのだろう。
 その絆に、永久の幸あれ――!

 ――Moving Next……

「ぴんぽんぱんぽーん☆
 今回登場したわんちゃん、チョコットキングはオブリビオンです。
 現実世界の犬は、チョコレートを食べる事が出来ません。くれぐれもご注意下さいね!
 以上、ウィンドボイスでした♪」

 ――Moving Next Period……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月03日


挿絵イラスト