殲神封神大戦②〜茸、樊城に舞う
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その軍勢は無言で戦場を進行していた。一人の兵が剣を振るうが、それは石の如き……否、石そのものの体に叩きつけられあえなくへし折られる。
「く、くるな、うわあああああ!!」
武器を失ったその兵に石像たちはすがりつき、ただ一つ赤く光る目で相手の目を覗き込んだ。その視線に射られた兵の全身は瞬く間に固くなり、恐怖の表情を張り付けた席増と成り果てた。
そのまま石となった相手を捨て置き前進を続ける石造の群れ。だが突如後ろから叩きつけられた一撃によって、その体は粉々に砕け散った。
「助かった、仙人殿!」
今しがた石にされた兵が動き、石像を砕いたここだけ石のままの右腕を振り回し他の石像をも砕いていく。
「武器間違えるなって言ったでしょうが。でもまあ、お陰で新しい技開発できましたね? じゃ、次行ってくるんで!」
呪詛さえ気脈に乗せ力とする仙界の秘奥、それをただの兵が為したはまさにその秘奥を閉じ込めた薬を与えられたから。
その薬を大量に携えた仙人は石像を追うように戦場を巡り、石にされた兵を戻しては新たな力を授けて回っていくのであった。
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「明けましておめでとう。早速だけど、今年最初の依頼をするわ」
子豚・オーロラ(豚房流剣士・f02440)は正月の挨拶もそこそこに話を始めた。
「世界は封神武侠界。場所は樊城。あの関羽が討ち取られた場所として有名ね。今はオブリビオンと晋軍の大乱戦の場所になっているわ」
新年早々始まった殲神封神大戦、その戦場の一つに赴いて欲しいという。
「ここにいるのは『ストーンキョンシーズ』というキョンシーの石像たち。石の体でただ殴るだけでも強い他、眼から放つ呪いの光で相手を石像に変えてくるわ」
石兵八陣などというまどろっこしいことはせず、直接動いて殴って呪ってくる石像。その大集団が樊城を制圧せんと前進し続けているという。
「この場所を大勢の晋軍が守って敵と激戦になっているわ。ただその実力は所詮一般兵。オブリビオンの超大群にはいずれ押し潰されてしまう。一方で数は相手にも引けを取らないほどいるから、うまく指揮すればその数はそのまま力になるはずよ」
戦いは数、それを見せるには十分すぎる程の人数はいるはずだ。また彼らは腐っても皇軍であり、国を守る意思は固いという。
「彼らが今戦線を維持できているのは最近司馬炎旗下に入った仙人がメディックについてるから。彼女が石化した兵士を治療したり、肉体を強化する薬を与えたりして戦線の崩壊を防いでいるわ」
本来ならば戦線離脱も同義の石化を直し、個々の実力をも押し上げる秘薬を大量に持つ仙人。皇帝司馬炎が自ら封神武侠界全土を守り集めた英傑、その実力はまさに折り紙付きだ。
「だから、大勢の軍と彼女の回復能力を味方につけて敵の大軍勢を押し返してちょうだい。回復役がいるということで、兵たちも多少無茶な作戦でも乗ってくれるわ」
死ぬこと以外はかすり傷、その覚悟を持って戦ってくれるという。
「ここを抜かれれば洛陽に万を越えるオブリビオンが押し寄せることになるわ。そうなればいかに皇帝司馬炎とはいえ命も危ない。どうか皆、この戦場を制してきてちょうだい」
そう言ってオーロラはグリモアを起動し、再び戦乱の地となった中華へ猟兵を送り出すのであった。
鳴声海矢
明けましておめでとうございます。鳴声海矢です。殲神封神大戦の始まりです!
今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス……司馬炎の兵士達と協力し、なるべく長時間敵と戦う』
現地には大勢の司馬炎配下の兵士たちがいます。実力はまさにモブ兵士といった程度ですが、数が多いため様々な形で利用できることでしょう。
また、敵はほとんど無制限に湧いてくるので、ここの目的は制圧よりも『いかに戦線を維持するか』になります。もちろん全滅させれば増援が来るまでは休憩や作戦会議に当てられるので、殲滅作戦が無意味ということはありません。
敵は『ストーンキョンシーズ』の大集団。仲間を呼んで数を増やし、石の体での格闘戦の他呪いの視線で相手を石化させてきます。一方で賢いわけではなく人数も単なる数押しにしか使わないので、味方兵の動かし方によっては大きな有利を取れるかもしれません。
兵の中にはメディック役として司馬炎にスカウトされた薬師の仙人がいます。兵士の石化回復や戦闘力強化のため戦場中を飛び回っています。兵士たち共々使えそうなら利用してください(彼女は無理に共闘しなくても可)。
以下詳細。
蕈娘(シィンニャン) 羽衣人の仙人×闇医者(外見年齢14歳)
赤毛に白メッシュの入ったボブカット。仙丹の研究をする薬師で、直接の戦闘力は低いが肉体や気の強化をする薬を提供してくれる。とある一件(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=38402 読む必要はなし)にて司馬炎旗下となる。千年分の修行を一度に得られる薬の開発を目標としているが、安易な力には取り返しのつかない代償があることを知りその克服も考えるようになった。
それでは、10万の軍さえ押し返すプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『動く石の屍『ストーンキョンシーズ』』
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POW : 重石重撃
【重い石の拳】が命中した敵をレベル×10m吹き飛ばす。
SPD : 同族支援
【もう一体の同族】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 石化閃光
【両瞳】から【赤い閃光】を放ち、【石化状態】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:V-7
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
蕈娘さん、お久しぶりですぅ。
『FAS』で飛行、『FMS』のバリアを展開しますねぇ。
相手の攻撃は『拳』ですから『飛行で射程外に位置する』ことで対処、『味方を殴って飛ばす』等の方法は『FGS』の重力波で抑えますぅ。
そして【乳霹宙】を発動し『乳白色の雷』を放射、広域への[範囲攻撃]を行いましょう。
『石像』は『土行』で『雷』は『木行』、『木剋土』故に有効に働くでしょうし、命中すれば『雷球』で拘束し『行動不能』と『継続ダメージ』を付与出来ますぅ。
後は拘束が有効な間に、兵士さん達と共に『F●S』各種の攻撃で順に仕留めますねぇ。
蕈娘さんは『兵士達が仕留める為の強化』をお願い出来れば。
月灘・うる
やっほー。助っ人にきたよ!
え? ち、ちがうよ!
蕈娘さんと司馬炎さんが心配だったとか、そういうんじゃないんだから!
ここで司馬炎さんたちがやられちゃったら、
せっかくのビジネスチャンスがだいなしになっちゃうからなんだからね!
(突然の謎ツンデレ)
今回は回復役がいてくれるから、ちょっと安心だね。
うーちゃんは【サルベージ・ロープ】を『木の属性』で放って、
『石像キョンシー』の動きを止めつつ、目隠しもしちゃおう。
兵士さんたちには、動けなくなったのから倒していって欲しいな。
武器は剣とかより鈍器系の方がいいかもだね。
司馬炎さんに用意してもらえると嬉しいな。
え?
いえいえいえ! 薬の強化とかいらないからね!(真っ赤)
大量のオブリビオンと皇帝司馬炎の兵たちとの激戦の場となった樊城。今この場所に侵攻しているのは石化能力を持つ『ストーンキョンシーズ』の大集団だ。その敵に対して兵たちは退くことなく戦線を維持し続けている。その理由の一つは、彼らを回復、強化するメディックが付いているからであった。仙丹使いの仙人、蕈娘は石化した兵を直すことで即座の戦列復帰を促し、石にされることによる戦線崩壊と士気低下を防ぎ続けていた。
幸いにして相手の知能は低くそちらを先に狙うという発想はないが、それでも戦場全土を飛び回るとありその負担は並のものではない。元より実戦慣れしているわけでないこともあり、その顔には如実に疲労の色が見え始めていた。
「あー……こんなに外出たのいつ依頼ですかね……面倒な事引き受けちゃいました……」
楽観的な性格な彼女も思わず弱音を吐く状況。だがそこに、その意思を支える者が現れた。
「やっほー。助っ人にきたよ!」
聞こえた声に蕈娘が顔を上げる。そこには、友人の少ない彼女が知己と呼べ、そしてこの苦境を確実に覆してくれると信じられる者がいた。
「え、あ……」
「蕈娘さん、お久しぶりですぅ」
月灘・うる(salvage of a treasure・f26690)と夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)。研究の転換点となり、皇帝旗下に入ることともなった事件で自身を助けてくれた者たち。
「た、助かりました……」
「え? ち、ちがうよ! 蕈娘さんと司馬炎さんが心配だったとか、そういうんじゃないんだから! ここで司馬炎さんたちがやられちゃったら、せっかくのビジネスチャンスがだいなしになっちゃうからなんだからね!」
珍しく気弱になり、心から安堵した様子を見せる彼女にうるが突如謎のツンデレモードを発動する。その姿勢は蕈娘の心を安らがせ、再び元の調子を取り戻させた。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その裁きの御印をここに」
その様子を後ろに見て、るこるが【豊乳女神の加護・乳霹宙】を発動。白い雷球が迫るストーンキョンシーズを包みこんだ。
石に雷という一見相性の悪そうな属性。だが、ストーンキョンシーズたちはまるで感電したかのように体を痙攣させ、満足に動けなくなる。
たどたどしい動きで振り回す拳も飛行することでるこるは逃れる。だが、知能は低くとも戦う感はあるのか、一部の石像が仲間を持ち上げ、殴り飛ばして強引に飛行させるような動きを見せ始めた。
「そう来ると思いまして」
だがそれも、先んじて配置した重力制御装置『FGS』で抑え込んで墜落させる。拘束した相手が力技で突破してくるというのはかつて別世界で経験したことだ。その時の経験から、怪力を持つ相手には多重の拘束が必要なのは分かっていた話だ。
だが、動けずともストーンキョンシーズにはもう一つ取る手がある。石像たちはそこだけ生々しく光る赤い瞳を輝かせ、周囲に石化の光を撒かんとした。
だがそれも、眼からの光という手段故に容易に封じる手はある。
「逃がさないよ!」
うるは手から草で編まれた【サルベージロープ】を大量に放ち、キョンシーズに巻き付けた。一見すればキョンシーズの怪力をもってすれば強引に千切れそうなそれは、だがその全身を戒めていく。
「目隠しもしちゃおう!」
それでもなお目を光らせようとする石像にさらにロープが的確に目隠しをし、その眼光を完全にふさいだ。
「なるほど、木行ですか」
二人が用いた拘束攻撃、それはいずれも五行に置いて木行に属するものであった。それは木剋土の理にて土行に属する石像にはことさら有効。五行思想の本場封神武侠界ではその効果はまさに覿面であった。
こうまで徹底して拘束をかけられては最早文字通りのただの人形。実力差もなにもあったものではない。
「兵士さんたちには、動けなくなったのから倒していって欲しいな」
「蕈娘さんは『兵士達が仕留める為の強化』をお願い出来れば」
そうなれば後は圧倒的な数における蹂躙の時間だ。うるとるこるの指示に従い、一斉に攻めかかる兵士たち。
「はいはい、今年は寅年、筋に力を、薬師の指で差し上げます! これ全て木行なり!」
その兵士の間を飛び回り、蕈娘は筋力強化の薬を縫って回る。
「武器は剣とかより鈍器系の方がいいかもだね。司馬炎さんに用意してもらえると嬉しいな」
戦前の報告では剣を用いて失敗している兵がいた。司馬炎のこと、戦力の拡充を渋ることはあるまい。
「はいはい、誰か走らせて言っときます。あ、そちらも一つキメときますか?」
猟兵にも強化役がいるかと聞く蕈娘だが、それを聞いたうるは顔を真っ赤にして首を横に振る。
「え? いえいえいえ! 薬の強化とかいらないからね!」
その様子はどんな薬を想像しているのか。蕈娘は常と変わらぬ調子で笑い、るこるは彼女自身も『回復』したとその姿から見て取るのであった。
大成功
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楊・宵雪
「みなさん、頑張りましょうね」
自分が囮になって敵の攻撃をひきつけ、UCで司馬炎の兵士たちを回復して支える
前線で[空中浮遊]し、立体機動で石化閃光を避けやすく
[挑戦][誘惑]で注目集める
[オーラ防御]と[生命力吸収]で踏ん張りつつ、敵に[弾幕]と[衝撃波]と[範囲攻撃]で戦線乱す嫌がらせ
司馬炎の兵士たちへ攻撃が向いたら[かばう]
「石化閃光はとにかく厄介ね」
[部位破壊]で頭部を狙って少しでも状況をマシにできないかしら?
ニクロム・チタノ
すごい数だねしかも石化とか厄介の極みでしょ?
こうなったらチタノの加護を借りるよ
ボクの真の名、紅明日香の名を以てチタノヤタテを降臨させる
晋軍の兵士のみんな盾の後ろに下がって、この八つの盾は反抗の加護を受けた護りの蒼焔の盾だ、石化の妖術や怪力程度じゃびくともしないよ!
重力槍展開まずは一本発射、正面の敵を打ち砕くよ
今のうちに石化した人や負傷兵を盾の内側に救助して、仙人の方治療お願いします
重力槍はまだ七本ある、兵士のみんな一本ずつ飛ばして援護するから重力槍で攻撃した場所に斬り込むんだ、石化はボクの蒼焔の盾が防ぐから怖がらないで大丈夫だよ
さあ反抗開始だ、反抗の竜チタノの加護と導きを
夜刀神・鏡介
今回求められるのは、確実な戦線維持か
指揮官としての訓練は専門外だったんだが……どうにかやってみよう
まず連の型【絆魂】を発動。元々彼らの士気は高いようだし、一般人と言っても十分な強化が見込めるだろう
俺は前線を抑えにいきたい所だが、そうすると戦況の把握が難しくなる
基本的には後方で指示を出しつつ、戦況を把握して押されている所への救援へ。片付けたならまた後方へと戻るのを繰り返し
敵の少ない所に先んじて戦力を集中させるなり、均等に割り振るなり、適宜判断していこう
この手の戦いの原則だが、原則は複数人で一体に当たらせる
死ななければ上等とは言うが、怪我をしなければその分長く戦えるし、そうすれば全体の負担も減る
死絡・送
アドリブ絡みOK
スーパーロボット、ジガンソーレに乗って参加。
仲間の猟兵や司馬炎の兵士達と協力して戦う。
敵が遠距離ならルーチェ・デル・ソーレは一斉発射と範囲攻撃を君合わせて使用。
ブルザードインパルスで拠点防御と薙ぎ払いを組み合わせて使い氷の城壁を作り敵の進行を抑える防衛線を張る。
兵士達には氷の城壁を盾に戦ってもらう。
敵の石化はオーラ防御と念動力を組み合わせてバリヤーで防御。
タイミングを計り、ジガンソーレの胴体からユーベルコードのプロミネンスバスターをぶっぱなす。
今、樊城の地は戦場となっている。ここで行われているのは試合や決闘などではない。大軍と大軍がぶつかり合う『戦争』なのだ。そこには多くの役割が必要となり、また一人で全てをこなす必要はない。
「今回求められるのは、確実な戦線維持か。指揮官としての訓練は専門外だったんだが……どうにかやってみよう」
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は大軍同士の戦うこの戦場に置いて、成すべき役割と勝利条件を改めてそう考えた。彼自身この樊城で戦うのは初めてではない。幾度となくこの地に足を踏み入れ、オブリビオンと刃を交えた。だがそのほとんどは、一騎当千の兵としての活躍。今回はそれとは違い、武力となる兵は数だけは既に揃っているのだ。いかにしてそれに実力以上の力を出させるか。
「よし、全力で乗り越えるぞ。連の型【絆魂】」
鏡介は兵から見えるところで朗々と声を上げ、【連の型【絆魂】】を呼びかけた。これは型と名は突いているが刀の神気を解放する数を持つ型ではない。困難を乗り越える意思を共有する仲間を鼓舞するための、士気高揚の掛け声だ。
当然仲間がいなければ何の力にもならない技。なれど、この地を守るという固き意思の元集った無数の皇軍が彼に従うこの場に置いてはどんな型よりも力となる技。その声に呼応するように、晋の兵たちは一人一人が一騎当千の兵であるかのごとく奮い立ち、そしてその姿は指揮官となる鏡介自身にさえその力を湧き立たせた。
その奮い立つ軍が向かうのは、言葉なく意思も定かではない動く石像の群れ。士気と呼べるものこそあるのかすら疑わしいが、それ故か何があろうとその歩みは鈍ることはない。
「すごい数だねしかも石化とか厄介の極みでしょ? こうなったらチタノの加護を借りるよ」
その敵の様子に、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は決して敵を侮ってはならぬと感じる。味方の高い士気は大いに力になる。だが士気だけで勝てる程戦争は簡単ではないのだ。
「ボクの名、紅明日香の名を以て」
【其の真名を以て反抗せよ】と、蒼焔の盾を8つ前線に並べて守りとする。反抗の加護を受けしユーベルコードの盾。石像の拳程度ではびくともしないし、炎故に容易く石にされるようなこともない。
その盾の後ろからさらに重力の槍を展開し、その一本を盾越しに敵に投げつける。その槍が先頭を歩いていた石像を打ち砕き、戦いの開始の合図となった。
明確に敵を定めたか心持ち勢いよく進み始めるストーンキョンシーズ。その石の像を、空に聳える黒鉄の像が見下ろしていた。
その像のなはジガンソーレ。死絡・送(ノーブルバット・f00528)の搭乗するスーパーロボットだ。
進軍してくるストーンキョンシーズに、まずは一撃ビーム兵器『ルーチェ・デル・ソーレ』をぶっぱなす。高熱の光で広範囲に吹き飛ばされていくキョンシーズを尻目に、ジガンソーレは砲塔を切り替え今度は自陣側に冷凍ガス『ブリザードインパルス』を振りまいた。
超低温のガスはその場に氷塊を出現させ、それは氷の城壁となって味方の前に聳える。ニクロムの炎の盾と合わさり温冷の壁ががっちりと自軍を守る砦となり、その後ろでしっかりと陣形を整え一気に兵たちは出陣した。
士気と力を強化された兵士たちはストーンキョンシーズとぶつかり合うが、双方の戦い方はまるで違う。キョンシーズはただとにかく目の前に来た相手を殴り、石化させようとするだけだが、兵士たちは決して一人では敵に当たらず、複数で一体の敵を囲み、石化の元となる頭部を狙って砕いていった。
相手に対して常に有利を取る状況で倒す。まさに戦場の鉄則を順守するのはそれを指示する指揮官がいるから。
「この手の戦いの原則だが、原則は複数人で一体に当たらせる」
鏡介のその指示を兵たちは忠実に守り、優位に敵の数を減らしていった。
だが一方、どんなに優勢であろうと味方側に多少なりと被害や犠牲が出るのも戦場の定め。敵の撃破と引き換えに傷を負う者、石化させられる者は前線でどうしても出ていた。
味方の敗北を直接見た兵の士気は大きく下がる。だが、それを優しく艶やかな声が包み込んだ。
「みなさん、頑張りましょうね」
楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)は士気をくじかれ描ける兵たちを鼓舞し、戦線を維持させていく。もちろんただ声をかけるだけではない。その隣で石となっている兵たちに針を刺し、その体をほぐしていく。
「ちょっと痛いかもしれないけれど我慢して頂戴ね」
乳白色の【鍼治療】が瞬く間に石化を治し、兵に再度動く活力を与えていく。石となった体に鍼を打ち込むのはなかなか疲れる作業だが、それに見合った効果は得られるだろう。
元々猟兵の力なしで今まで彼らが持ちこたえられていたのは、従軍した仙人による治療活動の効果が大きいと聞く。ならばそれを猟兵がやれば、その効果は如何程になるか。
さらに宵雪は自ら前線に出て宙を舞い、石像たちの注意を引いて囮ともなった。目の前をひらひらと回れれば当然キョンシーズの注意はそちらに向き、石化の視線を宵雪に向けてばらまいていくこととなる。それを左右のみならず上下や前後も含めた立体軌道でそらし、その隙をついては敵中に衝撃波を撒いて戦線を乱していった。
そうして乱れた敵は面白いように兵たちに討ち取られていく。だが戦線から外れすぎた者は逆に宵雪に興味を失くし、また別の手近な相手へ目標を切り替えてしまう。手の届く範囲はかばう宵雪だが、戦場の広さから一人では全てはどうしてもカバーしきれない。
兵士がまた一人石化された。その場所に、今一度ニクロムの重力槍が放たれた。
「石になった人を連れて下がって!」
敵がひるんだすきにニクロムは指示を飛ばし、それに従い負傷した兵が石となった者を担いで下がる。
「仙人の方治療お願いします」
その兵たちを任せるのは、元々ここでメディックに従事していた仙人蕈娘。戦場は広く敵は多い。だが、味方もまた多く広く展開しているのだ。猟兵の手の届かぬ場所があっても、それをカバーできるものもここにいるということである。
その間、体勢を立て直したキョンシーズは逃げた兵を追おうと増援を加えてニクロムの方へ侵攻してくる。しかしそれは炎の盾と氷の壁を素早く飛び越えてきた鋭き刃に切り裂かれた。
「俺は前線を抑えにいきたい所だが、そうすると戦況の把握が難しくなる……あまり当て込まないでくれよ」
鏡介は石を紙のように切り裂いた鉄刀を鞘に納め、兵たちにそう告げる。彼は今回の役割は後方で指示を出す総指揮官。なれど戦う力がないということは決してない。一たび前線に出れば彼は無双の剣を振るう剣士と変わるのだ。
「今ここの敵は攻勢に乗りかけている。調子に乗らせてはまずい」
前線に出られる指揮官は、状況をその目で見て臨機応変に判断を下す。
「重力槍はまだ六本ある、兵士のみんな一本ずつ飛ばして援護するから重力槍で攻撃した場所に斬り込むんだ、石化はボクの蒼焔の盾が防ぐから怖がらないで大丈夫だよ」
守りと攻めの中継は任せよとニクロムも兵たちを鼓舞した。そしてその鼓舞に応え前進するは最大最強の兵。
「防衛線を押し上げるぞ。続け!」
敵を押し返すべく、ジガンソーレが前へ出た。キョンシーズは鉄は石に出来ぬとその巨体に殴り掛かるが、送は自身のオーラで機体を包みそれを跳ね返す。
そしてパンチとこう撃つのだと言うが如くに、ロケットパンチ『ラッゾプーニョ』が石像を砕き、殴り飛ばした。敵が砕けて退いた場所にはすぐさま冷凍ガスをばらまいて、新たな氷の壁を作り自陣を拡張する。
その後ろに、負傷や石化した兵がすぐに運び込まれ宵雪の治療を受けた。
「石化閃光はとにかく厄介ね」
やはりただの怪我よりも石化の方が様々な意味で面倒が多い。宵雪は囮になりつつ敵の頭部を重点的に攻撃して破壊を試みていたが、それを見た送もそちらの破壊を優先的に行うよう動き方を変えた。メディックに無用な負担をかけない、それもアタッカーの役目である。
「さあ反抗開始だ、反抗の竜チタノの加護と導きを」
ニクロムが動ける兵に勝利のための攻勢の時を告げ、残る重力槍を打ち出し進軍の道を作る。
「生きて帰るためにね。少なくとも、私は待っているわ」
その上で宵雪がその勝利は生きるためと兵に言い、過剰に捨て身になることを戒めた。
「死ななければ上等とは言うが、怪我をしなければその分長く戦えるし、そうすれば全体の負担も減る」
戦いを優位に進めていることで味方の士気は高いまま。だが、勝勢は無謀や慢心を生み落とし穴はそこにある。鏡介はまさに今こそ慎重を期し完全なる勝利をもぎ取るべきと全軍に伝えた。
「よし、今こそその時だ!」
指揮官からの指示は出た。全力を尽くすタイミングはまさに今ここと、送が兵たちを導くようにジガンソーレを前に出した。
「太陽の紅炎が一切の邪悪を焼き尽くす、プロミネンスバスター!」
太陽のオーラ【プロミネンスバスター】が戦場全土を照らし、焼き尽くした。その炎に焚きつけられるかのように兵たちは一気呵成に攻めかかり、光に悶えるストーンキョンシーズたちを次々と討ち取っていった。
光が収まり、そこに残るのは砕けた石くれと地に立つ晋の兵たちのみ。
兵たちから、地を揺るがす勝鬨が巻き起こった。
前衛、中衛、後衛、そして指揮官。その全てに猟兵がつき各々的確に動いたことでこの戦場は完全に制圧された。いずれ敵の増援はやってこようが、その時この場所は完全に晋の旗に埋め尽くされていることだろう。
一人でも一騎当千、合わさることで真の無双となる。それこそが強者。それこそが猟兵。この『戦』の勝利によって、猟兵はそれを中華に知らしめたのであった。
大成功
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