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名伏し難き異形伝承

#UDCアース

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#UDCアース


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●語り継がれる忌話
 離農により過疎が進む、山陰地方の小さな農村。
 そんな場所に、何故か残っている場違いな洋館。館は既に崩れ落ち、村人にも放棄されて長い場所だが、しかし妙な噂は後を断たない。
 曰く、夜な夜な悍ましい泣き声が聞こえ、近づいた者が正気を失った。
 曰く、謎の正体を解明すべく跡地へ向かった者が、それきり二度と帰らなかった。
 どこにでもある、他愛もない怪談。それであったら、どれほど良かっただろうか。
「おい、しっかりしろ! 何が……何があったんだよ!」
 早朝、洋館の跡地に向かった青年が、変わり果てた仲間達を抱き起こし、揺すっている。だが、彼らはそれに応えることなく、ヘラヘラと笑いながら揺れているだけだ。
「山田! 加藤! どうしちまったんだよ……お前達……」
 青年の言葉に、変わり果てた友人達は何も答えない。そんな中、脅え竦んだ表情の仲間をみつけ、青年は咄嗟に駆け寄った。
「お前は無事だったか、水元! いったい、何を見たんだ!」
「あ……あぁ……」
 もっとも、彼の後輩である女性もまた、脅えた様子で満足に話すこともできなかった。よほど、恐ろしいものを見たのだろう。辛うじて、掠れた言葉で発しながら、彼女は青年の後ろを指差し。
「田……田んぼ……。女……大きな……」
「田んぼ? おい、田んぼがどうしたんだ? それに、大きな女って……」
 だが、青年がそこまで叫んだ時、唐突に彼の頭を巨大な何かが鷲掴みにした。
「なっ……あ……がぁ……」
「ぽ……ぽぽ……」
 万力のような力で、青年の頭蓋に5本の指が食い込んで行く。薄れ行く意識の中、青年は自分の口に鉄の味がする生臭い液体が溢れるのを感じながら、奇妙な声を聞いて力尽きた。

●侵食する伝説
「UDCアースで事件発生よ。山陰にある小さな村で、オカルトサークルの人達が行方不明になるっていうね」
 事件の裏に、オブリビオンがいるのは間違いない。そう言って、神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)より語られたのは、寂れた村に残る忌々しい伝説。
「その村には昔から、場違いな洋館があったらしいの。まあ、とっくの昔に崩れ落ちて、今じゃ跡地に瓦礫が放置されているだけなんだけど」
 その跡地から、夜な夜な悍ましい泣き声が聞こえる。とある大学のオカルトサークルの面々が、そんな噂を聞きつけて現地へ向かい、そして原因不明の怪異に見舞われてしまうのだ。
 サークルのメンバーは、村の休耕田で野営をさせてもらい、夜になってから跡地に向かう。一人だけ、野営地の番をするための人間を残し、後はメンバー全員で。
 だが、結果としてメンバーの大半は正気を失い、発見されたときは既にまともな会話もできない状態だった。サークルのリーダーは忽然と姿を消し、様子を見に行った最後の一人も、謎の手によって頭を握り潰されて殺されてしまう。
「私の見立てだと、この事件……都市伝説の元になった、複数のUDCが関係していると思うわ。手掛かりは、『田んぼ』とか『大きな女』ってことだけど……それ以上のことは、私の予知でも判らなかったの」
 そのため、後は現地に行って調査を行い、何が起きているのかを調べる他にない。幸い、今から向かえばオカルトサークルの面々が現地入りするよりも早く、村に入って調査を行うことができる。
「このままだと、事件に巻き込まれてサークルのメンバーは全滅よ。それに、放っておけば、他にも犠牲者が出かねないしね」
 事件の裏に潜むUDC。その正体を暴き、倒して欲しい。そう言って、鈴音は猟兵達を、UDCアース世界の村へと転送した。


雷紋寺音弥
 こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。

 寂れた村の怪奇な伝説を調べていたオカルトサークルの面々が、原因不明の怪異に見舞われることが予知されました。
 背後には、UDCの影が潜んでいるに違いありません。

 第一章では、瓦礫の山となった洋館跡地を調べ、UDCの正体を探っていただきます。
 第二章で、怪異を引き起こしたUDCの群れと戦闘。
 続く第三章で、同じく怪異を引き起こした、強力なUDCと戦い、倒していただきます。
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第1章 冒険 『村に伝わる伝説を暴け!』

POW   :    瓦礫を掘り起こし埋まっている手がかりを見つける

SPD   :    村人から伝説を聞き出し手がかりを見つける

WIZ   :    魔術的なアプローチで手がかりを見つける

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

紫洲川・珠璃
「大きな女、ねぇ。この手の話はだいだらぼっち、くらいしか思いつかないけどあれは女性がモチーフではなかったような・・・」


とにもかくにも調べないと始まらないわね。
とりあえず村人から話を聞きましょうか。
いつからその手の噂があったのか?
調査に向かったのはどういう人だったのか。
特に後者は、どれだけの手練れが向かったのかによってどの程度の脅威かわかりそうなので
できるだけ詳しく聞けると良いわね


ジョー・グラム
何だか妙な事になってやがるな……。

洋館跡に向かう前に近所の村で聞き込みをする。
「あの館に住んでた奴とか、知らねぇか?」
「まぁ一服してくれよ。ゆっくり話が聞きてぇ」
煙草を吸いそうな村人が居れば葉巻を勧めたりして情報を集める。
「おっ♪お嬢さん。ちょいとお話聞かせて貰えませんかね?」
娘さん……いや、そこそこの年齢の女性にも積極的に声をかける。
噂話好きなら、なにか知ってるかもしれないしな。
「洋館の噂とか知らねぇか?」
「女のお化けとか、田んぼにお化けが出るとか?」



●忌み伝えの村
 バス停を降り、村の中へと足を踏み入れると、冷たい風が猟兵達を出迎えた。
 思っていた以上に閑散としているからだろうか。収穫期には黄金の稲穂が大海原のように続いているであろう水田も、今は水を抜かれて見る影もない。それ以外には何の変哲もない田園風景ではあるが、しかしどこか嫌な空気が漂っているのは気のせいだろうか。
「やれやれ……。何だか妙な事になってやがるな……」
 紫煙を曇らせつつも、ジョー・グラム(サイボーグのブラスターガンナー・f02723)は軽く息を吐いてバス停の周囲を見回した。彼の吐く息が白いのは、冬の冷たさのせいだけではない。
「大きな女、ねぇ。この手の話はだいだらぼっち、くらいしか思いつかないけど、あれは女性がモチーフではなかったような……」
 神話にも名を遺す国創りの巨人の名を思い出し、紫洲川・珠璃(夜を追う者・f00262)もまた考え込んだ。が、そもそも『大きな女』とはあるが、巨人かどうかは不明のままだ。
「とにもかくにも、調べないと始まらないわね。とりあえず村人から話を聞きましょうか」
「ああ、そうだな。ちょうど、向こうから人が来たようだぜ?」
 そう言ってジョーの指差す先には、学校帰りの女子高生が歩いている。こんな辺鄙な場所に高校などないので、恐らくはバスで1時間以上かけて、麓の高校に通っているのだろう。
「おっ♪ お嬢さん。ちょいとお話聞かせて貰えませんかね?」
「えっ!? な、なんですか……?」
 唐突に声を掛けられ、女子高生は明らかに警戒しているようだった。訝し気な視線を向けて距離を取るが、それでも構わずジョーは続けた。
「いや、怪しいもんじゃねぇ。ただ、ちょいと聞きたいことがあってな」
「聞きたいこと……ですか? この辺りの地理程度でしたら、お話できると思いますけど……」
 未だ警戒する素振りを解かず、女子高生は怪訝そうな様子でジョーに返す。もっとも、聞きたいことは地理などではなく、この村に伝わる忌まわしき伝説についてなのだが。 
「洋館の噂とか知らねぇか?」
「洋館、ですか? ……すみません。あそこには、近づくなって言われているんです。それ以上のことは、私も知りません」
 それだけ言って、女子高生はそそくさと二人の横を擦り抜けると、そのまま足早に去って行った。あまりに突然のことだったので、更に続けて何かを聞くことはおろか、引き留めることさえできなかった。
「随分と警戒されたものね。それとも、本当に知らないのかしら?」
「こりゃ、ガキに聞いても埒が明かねぇな。大人が口止めしてやがる以上、もっと古くから村にいるやつに話を聞いた方が良さそうだ」
 そう簡単に、怪異の詳細に辿り着けるはずもなし。闇雲に聞いているだけでは難しいと知り、珠璃とジョーは、村の役場へ向かって歩き出した。

●田の幽霊
 役場に着くと、そこはやはり田舎の村ということなのか、閑散とした空気が漂っていた。
 このご時世、過疎の進む村では、役場を訪れる者も少ないのだろう。仕方なく、役場の裏手に回ろうとしたところで、老人がベンチに腰かけているのが目に留まった。
「なんだぁ、お前さん達は。この辺じゃ見かけねぇ顔だなぁ?」
 こちらに気付いたのか、老人は舐めるような視線を向けて来た。こういった寒村は排他的なところが多いとも聞くが、それにしても随分と妙だ。まるで、この村に人が来ること事態が、凶事の前触れであるとも言わんばかりである。
「まぁ、一服してくれよ。ゆっくり話が聞きてぇ」
 煙草を差し出し、ジョーは老人の横に腰かけた。その上で、改めて老人に、この村にある洋館についての話を切り出した。
「あの館に住んでた奴とか、知らねぇか?」
 一瞬、それを聞いた老人の顔が強張った。やはり、何かあるとは思ったが、老人はそれ以上何も語ろうとはしなかった。
「それじゃ、こんな噂は聞いたことねぇか? 女のお化けとか、田んぼにお化けが出るとか?」
「女の化け物じゃと? ……もしや、あんたらどこぞの学者さんかえ? それとも、雑誌か何かの記者さんか?」
 老人の眉間に、明らかな皺が刻まれていた。さっさと、この村から出て行った方がいい。そう言わんばかりの形相だ。
「あんたらが何者か知らんが、悪いことは言わん。あの館の跡には、近づかん方がええ。……いや、近づいてはならんのじゃ。絶対にな……」
 これは警告だ。言葉には出さなかったが、老人の顔がそれを語っている。それでも、気になって珠璃が食い下がろうとしたところで、老人は大きな溜息を吐いた。
「あそこは忌み地じゃよ。儂がガキんちょの頃には、まだ立派なお屋敷じゃったが……いつの間にか、荒れ果ててしまってのう」
「忌み地って……やっぱり、あの館には何か妙な噂があるってことかしら?」
「それについては、自分の目と耳で確かめたければ確かめるがよいわ。ただし、何が起こっても儂は知らんぞ」
 忠告はした。それでも、稀に話を聞かず、あの館の跡地を訪れる者がいる。
 そういった者は、まともな姿で帰っては来ない。もしくは、そのまま忽然と姿を消してしまう。だから、これ以上は妙なことを考えない方がいいと、それだけ言って老人は二人の前から立ち去って行った。
「……キナ臭ぇな。こりゃ、よほどヤバい奴が関わっていると見て間違いねぇぜ」
「そうね。やっぱり、後は実際に洋館へ赴いてみないと、何も収穫はなさそうね」
 この村には、確実に何かが潜んでいる。なんとも不穏な空気を感じつつ、珠璃とジョーは、目的の洋館に向かって歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ウェルミス・ミステリース
何はなくとも情報、だね。
あたしは村長が在宅ならそちら、そうでなければ事情に明るそうな噂が好きそうなご婦人に話を聞いてみようか。

ああ、すまないね。ひとついいかい。
この辺で、田になんかしら出るって噂を聞いてね。
何か知ってたら教えて貰いたいんだけどね。
……ああ、別に記者とかではないさ。
余所に面白おかしく触れ回ることだけはしないよ。
そんなことをしたら、余計に“被害”が増えるだろう?
今でさえこれだけ“人が居なくなってる”んだ。
これ以上変な噂が立つと困るのは誰だろうね。
安心しな、悪いようにはしないよ。
それを何とかするのが、あたしらの仕事さ。

……さて、何をどう解釈したのかは知らないけど、ね。

(ご自由に)



●村長の話
 異質な空気が漂う村の中。排他的な場所と分かってはいても、情報を集めねば始まらない。村人に尋ねて回るよりも早かろうと、ウェルミス・ミステリース(黒塊・f05501)は村を治める村長のところへ赴いていた。
「ああ、すまないね。ひとついいかい。この辺で、田になんかしら出るって噂を聞いてね。何か知ってたら教えて貰いたいんだけどね」
「あんた、街の記者さんかえ? 悪いが、この村には記事にできそうなもんは、何もねぇよ」
 もっとも、このような村の村長であるからして、そう簡単に口を割るはずもない。だが、こちらとて手ぶらで帰るわけにもいかないと、ウェルミスは更に食い下がる。
「……ああ、別に記者とかではないさ。余所に面白おかしく触れ回ることだけはしないよ。そんなことをしたら、余計に“被害”が増えるだろう?」
 被害。その言葉を聞いた瞬間、一瞬だけだが村長の身体が強張った。それを見逃さず、ウェルミスは一気に畳み掛ける。
 今でさえ、これだけ人が少なくなっている村だ。これ以上、変な噂が立ってしまえば、この村の過疎化は更に進むことになると。
「安心しな、悪いようにはしないよ。それを何とかするのが、あたしらの仕事さ」
「何とかする、か……。できるもんなら、やってみるがええ。あそこに何がおるのかは、正直なところ、儂らにも解らんのじゃよ」
 そう言って、村長はどこか遠くを見るような目つきになり、そのまま静かに天井を仰いだ。
「あれは……暑い、暑い夏の日だった……」
 ウェルミスを他所に、村長は唐突に回想を始める。しかし、そこに何かが隠されていることを敏感に悟り、ウェルミスは敢えて、村長の話を聞くことにした。

●夏の日の怪異
 館について教えて欲しい。そんなウェルミスの問いに対し、村長の口から語られたのは、世にも奇妙で怪奇な体験。
 曰く、彼がまだ幼い子どもの頃、村の禁忌を破って洋館の近くまで探検に向かったことがあるらしい。さすがに、夜ではなく昼間に赴いたようなのだが……その際に、兄が田んぼの方で奇妙なものを見たという。
 否、正確には、本当に見たのかどうか分からない。実際に兄の指差す方を見ても、そこには何もいなかったのだ。
 だが、単純に見えていないだけで、実際に何かいるのは明白だった。なぜなら、程なくして自分の横に立っていた兄の顔が弛緩して、だらしなく涎を垂らしながら、狂った笑みを浮かべていたからだ。
「……そして、儂の兄はそれっきり、儂の前に現れることはなかったよ」
 狂った兄は二度と再び戻ることはなく、やがて両親の言われるままに、使っていない休耕田へと放り出された。しばらくは、その真ん中で寄声を発したり笑ったりしていたようだが……やがて、それも聞こえなくなったところで、兄は行方をくらましていたそうだ。
「あの時、兄が何を見とったのかは、儂も知らん。ただ、この村の田には……あの、洋館の近くにある田には、何かがおるのじゃ。確実に言えることは、それだけじゃな」
「いや、助かったよ。さて……真相を調べるには、やはり洋館の跡地まで足を運ばないといけないか……」
 なかなか面倒なことになって来た。その場で静かに立ち上がり、ウェルミスは村長の家を後にする。今回の事件の元凶たる存在。洋館に住まう、謎のUDCを撃退するために。

成功 🔵​🔵​🔴​

藤堂・遼子
田んぼと大きな女の都市伝説?なんか聞いた覚えあるわね。
(ぽちぽちとスマホで検索)
あー……くねくねと八尺様かしら?
あくまでこの都市伝説のモデルになった邪神か眷属なんでしょうけど、また変なのが出たわね。
ふむ、何処まで都市伝説の話しが当てになるかわからないし。この洋館跡地で事件が起きるのは確定なのだから、此処を調べてみましょうか。
地下室とか邪教の祭壇かなにかあったりするのかしらね?
瓦礫とかは義肢のパワー上げて、私が重機代わりになって撤去するわ。
あぁ、捜索中も油断はしないわ。此処が敵の根城なら何時襲撃を掛けられてもおかしくないしね。

アドリブ・絡み歓迎よ


庚・鞠緒
POW

まったくマニアってヤツはよォ、どーしてこんなとこ好き好んで来るンだよ
……ま、好きってだけでマジモンがいるなんて信じてねェのかもな、それが普通か

田んぼつったら泥田坊、でかい女つったら八尺様くらいしか知らねェけどよ
どっちも洋館てイメージねェんだよな
まァいいさ、調べりゃわかることだろ

とりあえず力仕事なら得意なほうだ、【怪力】駆使して瓦礫をどかしていくぜ
崩れた洋館で怪しいトコっていうと地下がポピュラーだよな
掘り進むように瓦礫をどかして床を完全に露出させる勢いでやっていく
地下への入り口とか見つからねェかな?
あと【失せ物探し】でこの洋館に遺された呪術的なアイテムがないかも注意しとく



●洋館と都市伝説
 村の外れにある洋館の跡地へ赴くと、先程までに増して嫌な空気が漂っていた。
 寒い。いくら冬とはいえ、もうじき春を迎えようとしている季節にしては、この寒さは以上だ。鋭く肌を刺すような冷たさはなく、まるでタールの海を漂っているかのような、不快で湿った冷たさが溢れている。
「まったくマニアってヤツはよォ、どーしてこんなとこ好き好んで来るンだよ。……ま、好きってだけでマジモンがいるなんて信じてねェのかもな」
 崩れ落ちた洋館を前にして、庚・鞠緒(喰らい尽くす供物・f12172)の口から思わず愚痴が零れた。その隣では、藤堂・遼子(サイボーグの探索者・f09822)が何やらスマホで調べているようだが、内容までは分からない。
「田んぼつったら泥田坊、でかい女つったら八尺様くらいしか知らねェけどよ。どっちも洋館てイメージねェんだよな……」
 思い付く限りの妖怪譚や都市伝説の名を口にする鞠緒。すると、今まで一心不乱に検索をしていた遼子が、徐に顔を上げて口を開いた。
「あー、たぶん、田んぼの方は、くねくねじゃないかしら? あくまでこの都市伝説のモデルになった、邪神か眷属なんでしょうけど……また変なのが出たわね」
 都市伝説の話を信じるならば、どちらも人の手に余る恐るべき存在だ。
 曰く、その姿を見た者は発狂し、二度と再び元には戻らぬ。
 曰く、その者に魅入られたが最後、逃れることは叶わない。
「まァいいさ、調べりゃわかることだろ」
「そうね。何処まで都市伝説の話しが当てになるかわからないし。この洋館跡地で事件が起きるのは確定なのだからね」
 互いにうなずき、鞠緒と遼子は目の前に広がる瓦礫の山に手をつけた。いったい、崩れ去ってからどれだけの月日が経ってしまったのか。今となっては、それさえも定かではない程に、洋館はかつての面影を完全に失ってしまっている。
「崩れた洋館で怪しいトコっていうと地下がポピュラーだよな?」
「後は、邪教の祭壇かなにかあったりするのかしらね?」
 柱や天井の残骸を取り除きながら、二人は掘るようにして瓦礫を退かした。本来であれば重機のひとつでも欲しいところだったが、彼女達の怪力を駆使すれば、この程度の作業は造作もない。
 果たして、そんな二人の勅勘が当たったのか、現れたのは地下へと続く階段だった。
「おいおい、マジかよ。何かの泣き声ってやつも、ここから聞こえて来たのか?」
「……中に空気は通っているみたいね。さあ、調べに行くわよ」
 火の着いた紙を放り投げて内部の安全を確認し、遼子は鞠緒に促した。
 ここから先は、敵の領域。いつ、どこで何が起きてもいいように、心の準備だけはしておくよう釘を刺して。

●忌まわしき儀式
 地下へ続く階段を降りると、黴臭い空気が鞠緒と遼子の鼻腔を刺激した。
 頼りになるのは、僅かばかりの灯りのみ。電気など通っておらず、廊下には蝋燭を置くための窪みが、壁のあちこちに設けられているだけだ。
「気をつけてね。いきなり襲われても、守ってあげられるような余裕まではないから」
「ああ、分かってるぜ。この場所はヤベェ。それだけは、間違いなく言えることだからな」
 遼子の言葉に頷く鞠緒。共に、邪神を辛抱する教団に運命を弄ばれた者としては、この地下に漂う空気は忌まわしき過去の記憶を否応なしに思い出させる。
 やがて、真っ直ぐに伸びた廊下を抜けると、現れたのは巨大な扉だった。力任せに押してみると、扉は金属の軋むような音を立てて、思いの他に容易く開け放たれた。
「なんだ……ここは? 真っ暗で、よく見えねェな」
「待って! そこの床……何か、変なものが描かれているわよ」
 片手に持った灯りで床を照らしながら遼子が告げる。そこにあったのは、薄汚れた木の床に描かれた魔法陣。周囲には何かの盛られた紙と思しきものもあったが、あまりに長く放置された結果、紙はボロボロに朽ち果てており、上に盛られた何かもすっかり黒ずんでしまっていた。
「こいつは塩か? なんか、黒焦げになってんぞ?」
「なるほど……そういえば、八尺様は盛り塩を苦手とするって話だったわね」
 都市伝説との奇妙な一致に、遼子は納得した様子で顔を上げる。だが、次の瞬間、彼女は自分の正面に現れた白き影に、思わず息を飲んで身構えた。
「ぽ……ぽぽ……」
 成人男性をも超える身の丈をした、巨大な女。それが、部屋の奥に置かれた姿見の中に写っている。咄嗟に、義肢に内臓された武器で攻撃したことで、鏡は粉々に砕け散った。
「な、なんだったんだ、今のは?」
 砕け散った鏡を気にしつつも、鞠緒が後ろを振り返る。しかし、そこにいるはずの大女は、果たして影も形もなく。
「……あれが八尺様よ。たぶん、昔、この家に住んでいた人間が、何かの目的で呼び出そうとしたんでしょうね」
 しかし、儀式は失敗に終わり、八尺様は中途半端な形でしか、こちらの世界に現れることができなかった。その代わりに、冒涜的な何かが魔法陣より溢れ出し、洋館諸共に全てを食らい、そのまま村の中に解き放たれてしまったのだろうと、遼子は自身の見解を述べた。
 儀式が失敗したことから、呼び出された者達は、この洋館の周囲にしか存在できない状態なのだろう。それでも、彼らは哀れな犠牲者を見つけては食らい、生贄として捧げて来た。今度こそ、八尺様と呼ばれた存在を、完全な状態でこちらの世界に呼び出すために。
「冗談じゃねェぞ、おい! だったら、まずは田んぼに現れる、くねくねとかいうやつを退治しねェと拙いんじゃねェか?」
 慌てる鞠緒。このまま邪神が完全なる復活を遂げれば、今度こそ何が起こるか分からない。それこそ、大学のオカルトサークルメンバーだけでなく、この村にいる全ての人間が危険に晒される可能性もある。
「……行くわよ。この場所に、もう用はない」
 邪神の復活を阻止するためには、その眷属を倒すしかない。魔法陣と、砕け散った鏡を一瞥して、遼子は今しがた下って来た階段へと引き返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『『都市伝説』くねくね』

POW   :    アナタも「くねくね」
【自分を視界に捉え、疑問】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【クネクネした物体】から、高命中力の【相手の身体に侵入して、発芽する自分の種】を飛ばす。
SPD   :    ワタシも「くねくね」
【自分と同じユーベルコードを使用する分身体】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    キミも「くねくね」
【自分の身体をクネクネさせる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【目標に、その眼前に自身をワープさせて触手】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●見てはならぬ者
 村と洋館地下の調査を終え、洋館跡地の前にて合流した猟兵達。だが、それを待ち構えていたようにして現れたのは、白い触手が幾重にも伸びて絡まったような、なんとも奇怪な生き物だった。
 否、果たしてそれは、本当に生き物と呼んでよいのだろうか。不規則に蠢く触手の先端を見ているだけで、精神の奥が揺さぶられ、遺伝子レベルに組み込まれた嫌悪感を抱かされる。
「なんだ、あれは? あれが、くねく……」
「直視しない方がいい。下手に視ると、精神を持って行かれる」
 単に揺れているだけにしか見えない存在だが、下手に凝視することは死を早めるだけだ。しかし、ここであの奇妙な化け物どもを倒さねば、より恐るべき邪神が復活を遂げてしまう。
 全身を奇妙にくねらせる、捉えどころのない邪神の眷属。休耕田より湧いて現れし異形の怪物は、猟兵達を新たに邪神への生贄とすべく、身体をくねらせて襲い掛かって来た。
庚・鞠緒
オイオイ直視すンなつってもよ、心眼でもやれってか?
ウチは達人でも何でもねーンだよ

ま、わざわざこっち来るってンなら【カウンター】狙ってみるか
チャンスは●キミも「くねくね」された時か
こっちもユーベルコード「Hate Crew Deathroll」で合わせてやる
くねくねしてるからって不用意に近づいたこと後悔させてやるよ
後手に回ったら【捨て身の一撃】っぽくなっちまうが仕方ねェ

そうでない時は…直視はダメなら足元か、影ならどうだ?
やり辛ェがそれで動きを追って攻撃するしかねェわな
間合いに捉えたら目視は一瞬、攻撃も一瞬だ
面倒臭ェことさせやがるぜ、絶対ぶちのめしてやっからな


ジョー・グラム
サイバーアイで視力を強化、狙いを外さねぇようにな。
画像越しでも訳の分からない妙な奴だぜ……まぁ、自己紹介が必要な間柄じゃないがね。
銃撃と熱戦銃で潰していく。
「オードブルに時間をかける趣味はねぇんだ。とっとと潰れてくれ」
相手が近づいてきたらクイックドロウで、一気にぶち抜く。
訳が分からなくても、弾も当たるし、それで倒せるなら、気にする必要もないな。
一気に攻勢をかけて、本命退治といこうじゃないか。


紫洲川・珠璃
「くねくね・・・なるほど直視できない、というのは厄介ね」

倒すのにアレを理解する必要はなさそうだけど、視界に頼らないで倒すのは至難ね。
となると、私が心を保っていられなくなるのが先か、全部制圧するのが先か、になるのかしら・・・

黒狐を呼び出して騎乗、戦域を駆けまわりつつ刀で斬りつけて攻撃。
一撃離脱を心掛けつつ、同じ相手に二度目の攻撃を仕掛けると見せつつ
別の相手に攻撃して、敵の注意をこちらに引き付け、他の猟兵の攻撃の支援をします

戦闘は虚鐵一振りで行い
一撃の重さより、機動力を重視した戦い方をします

アドリブ、他者連携希望します



●見てはならぬ者
 洋館跡地の前に広がる、今は使われていない休耕田。その泥の中から、まるで異界の植物のようにして生えて来た白い物体は、奇怪に身体をくねらせつつも、猟兵達へと迫って来ていた。
「画像越しでも訳の分からない妙な奴だぜ……」
 演算デバイスで視力を強化し、ジョー・グラム(サイボーグのブラスターガンナー・f02723)は休耕田に群がる異形へと狙いを定めた。
 分析結果は「UNKNOWN」。数多の世界を渡り、怪人から妖魔、果ては宇宙生物まで相手にして来た彼の演算デバイスを以てしても、目の前で蠢く異形達の正体を判明させることは不可能だった。
「まぁ、自己紹介が必要な間柄じゃないがね」
 それだけ言って、ジョーは異形の存在に狙いを定めると、熱線銃で焼き払う。幸い、耐久力はそこまでないのか、数発も攻撃を受ければ敵は容易に崩れ落ちて行く。
 これは、数が多いだけの有象無象か。見た目の不気味さに目を瞑れば、竜を狩るよりは容易い仕事だろうと……一瞬、そんな考えが頭を過ったが、甘かった。
「◇〇*#&□?」
 およそ、人間の口では発音が不可能な何かを叫び、異形が種を飛ばして来た。それは巧みにジョーの銃撃を避けて彼の腕に取り付くと、瞬く間に身体に根を下ろし、そこから異形と同じ物体を生やし始めたのだ。
「ちっ……! 俺を同化しようってのか!?」
 慌てて異形なる物体を引き抜くジョーだったが、それは凄まじい痛みを伴うものだった。
 敵は、ほんの僅かな疑問さえも見逃さない。あれは何だ。意味が分からん。そんな些細な、それこそ針の先程もある疑問の感情を見逃さず、己を凝視した相手を同化せんと、恐るべき種子を飛ばしてくるのだ。
 スコープによる狙撃は、くねくねを相手にあまりにも相性が悪いと言わざるを得なかった。いや、それどころか、じっくりと狙いを定めるという行動を取れば、それはそのまま死亡フラグとして返って来る。
「くねくね……。なるほど、直視できない、というのは厄介ね」
「オイオイ、直視すンなつってもよ、心眼でもやれってか? ウチは達人でも何でもねーンだよ!」
 紫洲川・珠璃(夜を追う者・f00262)の言葉に、庚・鞠緒(喰らい尽くす供物・f12172)が思わず悪態を吐いた。
 個々の力では、くねくねは猟兵達の力に遠く及ばない。しかし、視認した者を問答無用で襲うというユーベルコードの存在が、この異形の怪物を極めて戦い難い相手に仕上げている。
「倒すのにアレを理解する必要はなさそうだけど、視界に頼らないで倒すのは至難ね。となると、私が心を保っていられなくなるのが先か、全部制圧するのが先か、になるのかしら……?」
「冗談じゃねェ! 視たら気が狂うってんなら、足元の影を狙って攻撃してやるぜ!」
 苦笑しつつも漆黒の狐を召喚して珠璃が敵陣に切り込む一方で、鞠緒は異形の者達の影に目を落とし、その動きを読みつつ斬り付けて行く。視認に頼らず戦うことに不安はあったが、敵の動きがそこまで速くないのは幸いだった。
「#&◇*■〇!!」
「◇●#□!? ◆〇*!!」
 奇怪な叫び声を上げながら、崩れ落ちて行く異形達。珠璃の振るう刃に刈り取られ、次々と休耕田へ倒れ伏して行く。
 この調子なら、行けるのではないか。そう思った矢先、鞠緒を乗せた黒狐から、異形たちの芽が一斉に発芽した。ほんの僅かな心の隙間さえ見逃さぬ怪物達の攻撃は、種族や存在を問わず有効なようだった。
「おい、アンタ、一度離れな! そのままじゃ……ッ!?」
 見兼ねた鞠緒が顔を上げ叫ぶが、次の瞬間、突如としてくねくねの触手が至近距離に現れる。が、それは鞠緒も読んでいたのか、間髪入れずに強烈なカウンターを叩き込んだ。
「滅茶苦茶痛ェぞ……後悔しやがれッ」
 捕食形態となった右手で、力任せに触手を食い千切る。そちらから近づいてくれるのであれば、好都合。接近戦は自分の十八番とばかりに、鞠緒は敢えてくねくね達の攻撃を誘い、その度にカウンターで返り討ちにし。
「なるほどな。下手に何か考えながら撃つよりも、こっちから誘ってやった方がいいってわけか」
 鞠緒の戦い方を見て何かに気付いたのか、ジョーも細かいことを気にするのは止め、ひたすらに銃を撃ちまくった。
 あれが何なのか、今は考えても無駄だろう。どうせ、弾さえ当たれば相手は死ぬのだ。ならば、何も考えずに無心で敵を討ちまくり、近づいて来た触手には、ありったけの弾を叩き込んでやればいいだけのこと。
「ようやく、少しは減って来たみたいね。さあ、もうひと頑張りかしら?」
 真横から襲い掛かってくる敵の触手を薙ぎ払いつつ、珠璃は他の二人に目配せする。既に、相当な数のくねくねが倒されている以上、一気呵成に畳み掛けるなら今だ。
「面倒臭ェことさせやがるぜ。絶対ぶちのめしてやっからな!」
「オードブルに時間をかける趣味はねぇんだ。とっとと潰れてくれ」
 鞠緒の鉤爪が敵を引き裂き、ジョーの銃弾が異形を射抜く。残されたくねくね達は一斉に休耕田の中央へと集まると、なにやらくねくねした動きを始め、それ以上は近づいて来なかった。
「なんだ、あいつら? 降参のダンスでもするつもりか?」
「いえ、違うわね。これは……!?」
 訝し気な表情になり首を傾げる鞠緒の横で、不穏な空気を感じ取ったのか、珠璃が叫ぶ。果たして、そんな珠璃の予想は正しく、くねくね達は自らの分身を生み出すことで、欠けた数を補っていた。
「マジかよ! 増えやがったぜ、こいつら……!!」
 驚愕する鞠緒。敵の呼び出した分身体は、技だけであれば、、オリジナルと全く同じものを繰り出すことができる。このままでは、いくら潰してもキリがない。
「これは、長期戦になると更に厄介ね」
「同感だ。一気に攻勢をかけて、本命退治といこうじゃないか」
 ひとつずつ潰しても効果はないと察し、珠璃とジョーは覚悟を決めた。
 こうなれば、後は殲滅戦あるのみだ。蠢く異形を直視しないよう注意しつつ、猟兵達は一気呵成に、くねくねの群れへと飛び込んで行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ウェルミス・ミステリース
くねくね、ねぇ。こっちゃ割とぐにぐになんだけどね。
ま、冗談は置いとくとして、だ。

【バウンドボディ】を使用
あっちが触手やら放ってくるなら、こっちも似たような動きをしてやろうじゃないか。
文字通り白黒つけてやるよ。
直線じゃ当たり難かろうから、縦横に薙いで攻撃。
ダガーを振り回してもいいかもね。
間接を気にしないでいいのがあたしらの特性さね。

可能なら極力移動・回避。
どこから相手の触手が飛んでくるかわからない以上、常に全面警戒。
ああ、味方の展開状況は気にしとくよ。
こんな状況でフレンドリーファイアは避けたいしね。

……にしても。
こりゃ、行方不明者の成れの果てなのかね。
それならそれで、きっちり弔ってやるべきか。


藤堂・遼子
本当にくねくねだったわね。
直視しないように戦うにはキツイ相手だけど、そういう相手だから仕方ないわね。
大鎌の「狂気を狩るモノ」で触手を切り払っていくけど、直視しないでの対応だと限界があるわね。
それでまぁ、くねくねに捕まるかなにかして追い込まれたら【落とし子誕生】の使用に踏み切るわ。
不本意だけど、他のユベールコートのオーバリミットアームズも流血賛美歌を詠う書も、直視できず更には捉え所のない相手だと効果的とは言えないわ。だから、使いたくはないけど落とし子誕生ね。
産み落としたのは、今回は触手ね。くねくねに絡みつき縛り上げて拘束することでくねくね出来なくしてやるわ。
動きさえ封じれば後は鎌で刈り取るだけよ



●毒には毒を
 休耕田に現れた、世にも奇妙な異形の群れ。倒しても、倒しても、次から次へと増える様は、戦いが長引けば長引く程に、猟兵達の戦意を奪って行く。
「本当にくねくねだったわね。直視しないように戦うにはキツイ相手だけど、そういう相手だから仕方ないわね」
 その者を間近で見てはならない。なぜなら、正気を奪われてしまうから。
 その者の存在に、疑問を抱いてはならない。なぜなら、正体を知ると精神を病んでしまうから。
 ネットの噂で読んだ話を思い出し、藤堂・遼子(サイボーグの探索者・f09822)は溜息交じりに覚悟を決め。
「くねくね、ねぇ。こっちゃ割と、ぐにぐになんだけどね。ま、冗談は置いとくとして、だ」
 そちらがくねくねと蠢くなら、こちらも同じ動きで戦ってやろうと、ウェルミス・ミステリース(黒塊・f05501)が身体を伸ばす。
 文字通り、白黒つけてやるとしよう。ブラックタールのウェルミスにとって、肉体の形などは仮初のものに直ぎない。敵が身体を揺らし、伸ばすよりも早く、より柔軟性に富んだ身体となって、ダガーの一閃で薙ぎ払い。
「さて、こっちも刈り取るとしましょうか。正直、直視しないでどこまでやれるか分からないけど……」
 遼子もまた、狂気を狩る者の名を冠した大鎌で、異形の存在を斬り伏せる。
「◇●#□◆〇*!!」
 だが、それでも蠢く異形達は、分身を呼んで失われた数を補填することで対抗して来た。気が付けば、どこもかしこも、くねくねだらけ。相手の姿を視界に入れるなと言われても、これでは目でも瞑らない限りは不可能であり。
「……っ! しまった!?」
 気が付くと、目の前に現れたくねくねの触手が、遼子の身体を貫いていた。一撃を許してしまうと、そこから先は歯止めが効かない。次々に襲い来る触手の波に、遼子の身体は瞬く間に飲み込まれ。
「ちっ……! 待ってな、今、助けてや……!?」
 慌てて駆け付けようとしたウェルミスだったが、次の瞬間、触手の群れの中心にいる遼子の姿に、思わず自分の目を疑った。
「あっ、あんっ……いあ! いあ! ……う、産まれる……」
 全身を触手に貫かれ、果ては身体からくねくねの芽を生やした状態になりながらも、遼子は何かを産み落とさんと悶えていた。
「……っ!! いぐぅ! あ、ああぁぁああああぁぁぁ!」
 絶叫と共に、彼女の肉体から吐き出された者。それは、くねくね達に勝るとも劣らない、世にも悍ましい触手の群れ。
「ア、アンタ……いったい……?」
「……はぁ……はぁ……だ、大丈夫よ……。正直……この技だけは、使いたくなかったけど……」
 完全に毒気に当てられたウェルミスを他所に、遼子は自分の身体から生えた芽を引き抜きつつ言葉を返した。
 自らの肉体を依り代に、魔力体の疑似眷属を産み落とす。あまりに冒涜的で、狂った技だ。が、しかし、正体不明の怪物相手には、むしろ相応しい対抗策とも言うべきか。
「目には目を、ってやつかい? だったら、その行いを無駄にしないよう、あたしもせいぜい頑張らせてもらうさね」
 触手に絡みつかれ、動けなくなった異形の者を、ウェルミスはダガーの一閃で斬り払う。やはり、耐久力には乏しいのか、斬られたくねくねは次々に物言わぬ塊となり。
「正体不明の、邪神の眷属、ね……。それなら、見せてあげるわ……。狂気を以て狂気を狩る……私の戦い方を!!」
 遼子の大鎌が宙を舞ったところで、くねくねの身体が蠢きながらも両断された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『都市伝説』八尺様』

POW   :    八尺ノック
単純で重い【蹴り、又は拳などの打撃系の技】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    恐怖怪談イミテーション
対象のユーベルコードを防御すると、それを【身体に吸収して、自身を超強化する。また】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    【常時発動型UC】フレキシブルボディ
自身の肉体を【物理ダメージを軽減する、柔軟な身体】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●中から出てくる
 気が付くと、休耕田の周囲には、くねくねの残骸がそこら宙に転がっていた。
 もしかすると、これは今までに犠牲となった者達の、成れの果てとなった姿なのかもしれない。ふと、誰ともなしに、そんなことを考えた矢先……倒したはずの異形達が、ゆっくりと身体を揺らしながら起き上がった。
「なっ……! こいつら、まだ生きて……!?」
「いや、様子が変だ。これは……」
 再び起き上がったくねくねだったが、しかし彼らは猟兵達に攻撃を仕掛けて来る様子はなかった。
 くねくねと身を揺らし、何かに縋るようにして触手を伸ばす。瞬間、異形の肉体がどろりと溶けたかと思うと、そのまま休耕田の土に吸収されるようにして消えてしまった。
 いったい、あれは何だったのか。最後の悪足掻きか、もしくは断末魔の代わりなのか。なんとも不可解な行動に首を傾げる猟兵達だったが、果たしてその答えは、程なくして洋館跡地から現れた。
「……ぽっ……ぽぽ……ぽ……」
 野太い男性のような声の、なにやら妙な呟きが聞こえた。思わず振り返ると、そこにあったのは巨大な亀裂と日本の腕。文字通り、空間の裂け目から、大きな白い腕が『こちらの世界』へと入り込もうとしていた。
「ぽ……ぽぽ……」
 強引に空間を抉じ開け、腕の主が姿を現した。亀裂から、ずるりと抜け出したそれは、ゆっくりと立ち上がって猟兵達を見下ろした。
 その身の丈は、八尺ほど。白い衣に白い帽子を纏った、巨大な女がそこにいる。
 八尺様。かつて、この地にあった洋館に住まう者達が呼び出そうとし、失敗した存在だろうか。
 先ほど、くねくね達が見せた最後の足掻き。あれはきっと、八尺様を呼び出すための儀式だったのだろう。くねくね達は、己の本能が命じるままに、自らの肉体を生贄に捧げることで、八尺様と呼ばれる存在を不完全ながらも召喚したのだ。
「ぽぽ……ぽっ……ぽぽぽ……」 
 奇怪な笑い声と共に、巨大な女の邪神が猟兵達に迫る。忌み地の因縁を終わらせるため、猟兵と邪神による最後の戦いが始まった。
藤堂・遼子
生み出した触手はまだいるのかしらね。もういないなら仕方ないけど、いるなら八尺様に嗾けるわ。それで少しでも動きを止められれば十分よ。
くねくねの芽を引き抜いた時の出血を「流血賛美書」に吸わせて凶器を創り出すわ。ちなみに四肢はサイボーグの義肢だから血は流れてないわよ。
【流血賛美歌を詠う書】で凶器を複製するわ。剣や槍、鉄槌なんかを四方八方から八尺様に襲いかからせるわ。
無駄に長いその手足、斬って砕いて縮めてあげるわ!
仮に幾つか吸収されてもまだまだ凶器はあるわ!吸収される前に切り刻んでやるわ!
首が届くところまで下がれば大鎌の「狂気を狩るモノ」で刈り取ってやるわ!さぁ、その首をよこしなさい!



●狂気と凶器
 崩れ落ちた洋館の跡地より、姿を現した大女。八尺様と呼ばれるそれは、誰が何の目的で、この地に呼び出そうとしたのだろう。
 今となっては、それさえも解らぬことだった。だが、ひとつだけ解っていることがある。
 この女を、村の中へ解き放ってはいけない。彼女は人の世の理を超えた存在。故に、人の常識もまた通用しない。
「ぽ……ぽぽぽ……」
 迫り来る巨大な影に、藤堂・遼子(サイボーグの探索者・f09822)は先の戦いで傷付いた個所を抑えつつも、改めて周囲を見回した。
(「くねくねを倒すのに使った触手は、もういないみたいね。だったら……」)
 その場の状況、その場の相手に併せて産まれ出る邪悪な落とし子は、しかし役目を終えれば姿を消してしまう。否、そもそも、くねくねと八尺様は異なる存在故に、同じ手が通じるとも限らない。
 こうなれば、ここは新たに敵を倒すための武器を生成し、それで迎え撃つしかないだろう。くねくねの芽を引き抜いた時の出血を力に変えて、遼子は呪われし禁断の賛美書を読み上げる。
「捧げろ捧げろ鮮血を、流せ流せ命の滴、喰らえ喰らえ啜れ啜れ流血賛美書、汝の贄はそこにある!」
 剣、槍、鉄球に鉄槌。およそ、考えられる種類の限界とも言えるだけの凶器が、遼子の前に現れた。それらは全て、遼子の意思により浮遊して八尺様を取り囲むと、一斉に攻撃を開始した。
「無駄に長いその手足、斬って砕いて縮めてあげるわ!」
 襲い掛かる無数の凶器。だが、刀や剣による攻撃は兎も角、鉄槌などの打撃武器は、あまり効果がないようだ。ナイフのような小型の武器も同様で、八尺様の身体に突き刺さりこそすれど、そのまま彼女の肉体に、ずぶずぶとめり込み吸収されてしまった。
「ぽ……ぽっぽぽぽ……」
 白い帽子の影になっている八尺様の瞳が、微かだが三日月のような形に歪んで見えた。瞬間、遼子の放った凶器と同じ物体が八尺様の身体を突き破って現れると、それらは一斉に遼子へと向かい飛んで来た。
 その様は、正に鏡写し。一瞬、自分自身と戦わされているような錯覚に陥るも、遼子は慌てず、残る凶器で相手の生み出した凶器を迎え撃つ。
「こっちにも、まだまだ凶器はあるわ! 吸収される前に切り刻んでやるわよ!」
 打撃や刺突が駄目なら、後は斬撃に賭けるのみ。鉄槌や棍棒の類は敵の攻撃を弾くのに用い、刃の類は突き刺すよりも、斬り裂くことを主体として飛翔させ。
「ぽ……? ぽぽっ……?」
 鬱陶しそうに刃の群れを払おうとする八尺様だったが、それこそが遼子の真の狙い。どの道、擦れ違い様に斬り付ける程度で倒せるとは思っていない。本命は、己の手で振るう大鎌の一撃。毒を以て毒を制すの諺の通り、狂気にて狂気を狩る危険な武器を振り被り。
「さぁ、その首をよこしなさい!」
 振り下ろされた大鎌の刃が、八尺様の身体を深々と斬り裂いた。人間であれば、鮮血が噴水の如く溢れ出そうな一撃を食らった八尺様は、しかしその身から何も噴き出すことはせず、人の声では表せないような悲鳴を上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

庚・鞠緒
チッ結局出てきちまったかよ
けど好都合ってモンだ、コイツをヤっちまえば全部終わりなんだからな

ウチはとにかく前衛で、「鉤爪」使って切り込んでいく
【2回攻撃】で斬ったり刺したりだな
柔軟な身体ってヤツがどこまで攻撃を邪魔してくるかわかンねェけど
ま、直視したらいけねェってのよりは細かいことに気使わなくて済むってもんだ

八尺ノックはどう警戒すっかな
振り下ろすような攻撃は、受けずに避けて対処する
【第六感】頼りなとこもあるわな

弾力のある、柔軟な身体ね
だからってウチにゃァこれ(鉤爪)しかねェんだよ
弾力に弾かれる前に切っちまえばいいんだろうが
ユーベルコード「Follow the Reaper」で切り裂いてやるよ


紫洲川・珠璃
「なるほど、巨大といってもこの程度なのね。これなら何とかなるかしら」

妖剣解放を使用して、正面から強襲
相手に攻撃をさせてからその攻撃をかいくぐって接近戦行う
身長に比例して手足も長そうなので、リーチの内側に潜り込んでしまえば
有利に立ち回れるはず

相手のフレキシブルボディは、打撃には有効かもしれないが
斬撃に対してはあまり有効ではなさそう
一応対策としては同じ個所を斬りつけることで切断を狙う

戦闘は虚鐵一振りで行い
一撃の威力より手数を重視した戦い方をします

アドリブ、他者連携希望します



●笑う邪神
 虚空と虚空の狭間より、現れ出でしは巨大な女。八尺様と呼ばれるそれは、しかし名前以外の正体を誰も知らない。
 曰く、その者は己の気に入った相手を見つけると、執拗に付け回して取り憑き、殺す。何故と問われても、それは解らない。そもそも、異界の神の常識など、常人には理解することさえ不可能なのだから。
「ぽ……ぽぽっ……ぽ……」
 地の底から響くような野太い声で、八尺様は奇怪な声を発していた。
 笑っている。そう、彼女は笑っているのだ。いったい、何が面白いのかは知らないが、その声は聞いた者の内臓を内側から撫でるような、なんとも言えぬ不快で耳障りな音だった。
「チッ、結局出てきちまったかよ。けど好都合ってモンだ、コイツをヤっちまえば全部終わりなんだからな」
 鉤爪を構える庚・鞠緒(喰らい尽くす供物・f12172)。邪神と眷族どもの目論見を打ち破れなかったのは癪だが、それでも不完全な形でしか召喚されなかったのは幸いだ。
「なるほど、巨大といってもこの程度なのね。これなら何とかなるかしら」
 紫洲川・珠璃(夜を追う者・f00262)が、冷静に敵の背丈を見つめながら呟いた。
 八尺様の名が示す通り、その背丈は2mを優に超える。が、そのくらいの巨体であれば、他の世界に現れるオブリビオンと大差がない。魑魅魍魎、悪鬼羅刹の類と思えば、そこまで恐れることもないだろうと。
「……ぽっ……ぽぽ……ぽ……」
 滑るような足取りで、八尺様が二人へと迫る。巨体に反して、その動きは意外と素早い。そのまま両腕を振り上げると、八尺様は微かな笑みを浮かべ、力任せに両腕を振り降ろして来た。
「……っ! 冗談じゃねェぞ、おい! あんなもん食らったら、それだけでミンチにされちまう!」
 衝撃に大地が揺れ、地面が大きく抉られたことで、思わず鞠緒が叫んだ。目で見て避けられない攻撃ではないが、しかしその威力は想像していた以上だ。あんなものを正面から受けたら、一撃で木っ端微塵にされてしまう。
「確かに、威力は脅威ね。でも……リーチが長い分、内側に入ってしまいさえすれば……」
 妖刀の怨念を纏い、駆け出す珠璃。この世の理の外より現れし異形の者との、壮絶な死闘が幕を開けた。

●掴めぬ身体
 巨体と怪力を武器とする八尺様は、ある意味では先のくねくねよりも、戦いの仕掛け易い相手だった。
 接近戦を得意とする鞠緒や珠璃にとって、直視するだけで精神を蝕まれるくねくねとは違い、しっかりと相手を視界に捕えて戦えるのは幸いだ。もっとも、それは相手も同様なだけに、片時も油断することは許されない。加えて、弾力性の高い八尺様の身体には、通用する攻撃も限られるのが厄介だった。
「弾力のある、柔軟な身体ね……。だからって、ウチにゃァこれしかねェんだよ!」
 鉤爪一閃、鞠緒の斬撃が、八尺様の身体を斬り刻む。敵の肉体の性質を考えると、打撃よりも斬撃の方が、通りが良いのは確かだが。
「ぽっ……ぽっぽぽ……」
「……ッ!?」
 お返しとばかりに繰り出される、八尺様の強烈な膝蹴り。慌てて受け身を取る鞠緒だったが、衝撃を完全に殺すことはできず、そのまま休耕田まで吹き飛ばされた。
「大丈夫? 油断は大敵よ」
「ああ、すまねェ……。しっかし……斬撃に弱いって言っても、深く斬り付けられねェのは面倒だな」
 腕をさすりながら、鞠緒が珠璃に言った。武器で受け止めることでダメージこそ受けなかったが、それでも相手の特性が厄介なことに変わりは無かった。
 弾力性と柔軟性の高い八尺様の身体には、確かに斬撃は効果的だ。が、調子に乗って深く斬り付けようとすれば、その攻撃は弾かれ、八尺様に吸収されてしまう。武器の重さを生かし、叩き付けるような斬り方では、打撃同様に碌なダメージを与えられない。
「一撃を重くしようとすれば、却って面倒なことになるわね。……だったら!」
 その分、こちらは手数で勝負だとばかりに、珠璃は斬撃を無数の衝撃波に変えて八尺様へと繰り出して行く。もっとも、それはあくまで牽制であり、彼女の狙う本命は……。
「……そこ!」
 先程、鞠緒の鉤爪で傷を負った場所。そこに更なる追い討ちを仕掛ける形で、愛刀を振るい、切断する。
「……ぽっ!?」
 脇腹を大きく斬り裂かれ、八尺様の巨体が微かに揺れた。このまま行けば、勝機はある。好機とばかりに跳躍した鞠緒は、八尺様の喉元目掛け、一直線に鉤爪を繰り出した。
「ブッ刺してやるぜ! 食らいやがれ!!」
 鉤爪を通して、鞠緒の腕に伝わる奇妙な感触。腐った肉を貫いた時のものにも似たそれは、しかし八尺様に確かな傷を負わせた証拠としては、十分過ぎるものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジョー・グラム
随分と楽しそうじゃねぇの。いつまで笑ってられるか楽しみだぜ。

相手の間合いを計りながら銃で攻撃する。
熱線銃の方がよく利きそうだな。
味方の攻撃に合わせてガジェットを起動。
「コレがとっておきの超大型膝かっ君だ」
相手の足を捕らえて地面に引きずり込む。
「帽子の下は美人かい?なら心が痛むな」
こんだけ大きいなら顔面は殴られ慣れてねぇだろ。
一気に頭部に攻撃を集中して叩き込む。

背の高い女は嫌いじゃねぇが、すぐ手を上げるタイプはモテねぇぜ?



●その脚、払いたまえ
 鋭刃飛び交う戦場で、ジョー・グラム(サイボーグのブラスターガンナー・f02723)は遠間から、他の猟兵達を相手に暴れ回る八尺様を見つめていた。
「随分と楽しそうじゃねぇの。いつまで笑ってられるか楽しみだぜ」
 自分には、鋭い爪や牙もなければ、魔を薙ぎ払うための刃もない。打撃を吸収してしまう八尺様を相手にするには、確かに決定打に欠けると言われても誤りではないが。
「熱線銃の方がよく利きそうだな。まあ、とりあえず牽制から入るか」
 それは、あくまで生身の身体で勝負した時の話。鉄をも溶かす熱線銃を用いれば、弾力など関係無しに、相手の身体を焼き切れる。
「……ぽっ?!」
 今までの斬撃とは明らかに違う何かを食らい、一瞬だが八尺様が狼狽する様子を見せた。その隙を、決定的な一撃を叩き込むためのチャンスを、ジョーは決して見逃さず。
「さて……大女を倒すのに、何が出るかはお楽しみだな」
 他の猟兵達の攻撃に合わせ、自分もまたガジェットを召喚する。呼び出されたのは、巨大な金属製のアームが付いた奇妙な武器。
 なるほど、どうやらこのアームで、相手を引きずり倒せということらしい。なんとも原始的な方法に思わず苦笑が零れたが、確かに大女には有効な一撃だろう。
「コレがとっておきの、超大型膝かっ君だ!」
 八尺様の後ろに回り込み、ジョーは相手の膝裏をアームで挟んで引き寄せた。バランスを失い、顔面から転倒する八尺様。巨体が倒れて土煙が上がり、その中から怒りに満ちた表情の大女が帽子を抑えながら立ち上がるが。
「ぽっ……ぽぽぽ……!!」
「おっと! 背の高い女は嫌いじゃねぇが、すぐ手を上げるタイプはモテねぇぜ?」
 苦し紛れに繰り出された拳の一撃を軽く避け、ジョーは相手の顔面に熱線銃の狙いを定めた。
「帽子の下は美人かい? なら、心が痛むな」
 これだけ大きな背丈をしているのであれば、きっと顔面は殴られなれていないだろう。そんなことを呟きつつ、八尺様の顔目掛け、熱光線を発射する。
「……ッ! PhoBo◆☆!#*!?」
 顔面を焼かれ、人間の言葉では発音できないような悲鳴を上げて、八尺様はは両手で顔を抑えた。彼女の顔から、黒い煙が立ち昇る。肉とゴムの焦げた臭いを混ぜたような、なんとも不快で鼻につく臭いだ。
「そろそろ、年貢の納め時ですよ?」
「いい加減、倒れろってんだよ、このデカブツ!!」
「さあ、今度こそ、これでおしまいよ!」
 もはや、抵抗する術さえも失った八尺様に、残る猟兵達が一斉に攻撃を開始する。次々と降り注ぐ斬撃の雨。やがて、全身を幾度も斬り刻まれた八尺様は、そのまま静かに倒れ伏し、二度と再び起き上がろうとはしなかった。

●全ては序章
 戦いは終わった。崩れ落ちた洋館跡地と、その周囲に広がる休耕田。それらの場所に、既にUDCの気配が存在しないことを感じ取り、猟兵達はようやく胸を撫で降ろした。
 終わった。そう、これで終わったのだ。今まで、この村で起きていた多くの奇怪な事件は、くねくねと八尺様が倒れたことで、二度と再び起こることはないだろう。
 だが、果たしてそれで、本当に全て終わったのだろうか。去り際に、猟兵達は瓦礫となった洋館の残滓を横目にしつつ、ふと、そんなことを考えた。
 この手の怪奇譚は、日本全国にいくつも転がっている。それらの多くは他愛もない都市伝説として語られているものの、中には本当にUDCの関与しているものもあるだろう。
 自分達が倒したのは、それらの中の、ほんのひとつに過ぎない。この先、より完全な姿で召喚された邪神を前にした時に、果たしてどこまで戦えるのだろうかと。
 全てはまだ、始まったばかりなのかもしれない。しかし、それでも今日の戦いで、多くの命が救われたことも、また事実。
 この先、異形の怪物達が再び現実を侵食するというのであれば、いくらでも受けて立ってやろう。その先に繋がっている未来が、果たしてどのようなものなのか。それは、誰にも分からない。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月20日
宿敵 『『都市伝説』八尺様』 を撃破!


挿絵イラスト