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殲神封神大戦②〜騎虎之勢

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 新年の挨拶もそこそこに、彼は佩いた刀の柄を指でコツコツと叩く。
 晋の皇帝たる司馬炎の軍勢が、樊城(はんじょう)にて、南蛮門より押し寄せるオブリビオンの大群と戦っている。
「この『樊城の戦い』に乱入してきてくンねえか。ンで、司馬炎の助けになってほしい」
 樊城には司馬炎の放ったユーベルコードの余波で【消えざるシバの炎】が盛る箇所が点在する。
「相手は虎型のオブリビオンだ。【シバの炎】をうまく使って巻き込めば、一挙に仕留めるられっかもしれねえ」
 虎は、獣らしい身のこなしで兵たちと交戦しているが、獣らしく炎を畏怖することはない――見ただけで竦み上がることはないだろう。脅しの類も聞かない。そも血気盛んに跋扈している。
「もうすでに戦いは始まってンだけど、先に交戦してる兵士たちが、おめえらの邪魔になることはない」
 一緒に戦うより、猟兵の戦闘の邪魔にならぬよう退くことを真っ先に選ぶだろう。そうして別のオブリビオンと戦う。樊城を護る使命のもとに。
 兵たちが安堵していられぬほどの軍勢ということだ。
「おめえらにはよ、とっておきのユーベルコードがあンだろォ?」
 虎は特別に強いわけではない。しかし数が多い。それだけで脅威だ。
 彼の掌上に蒼い光が収斂していく――精緻な紋様を浮かび上がらせた蒼珠の中で、一輪のアネモネが咲く。
「とにもかくにも、一体でも多くの虎を狩ってきてくれ」
 鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)の言下、グリモアの光は一層強くなる。
 一体でも多く討ち取れば、足元は固まるだろう。尖る紺瞳は決起する猟兵を見返して、
「始まったもんは仕方ねえ。新年だろォがなんだろォが関係ねえわなァ。頼んだぜ」
 新年の浮つく楽しげな気配と、戦地のざらつきひりつく緊張感が、土煙を運んでくる。
 繋がったのは、風雲急を告げ、剣戟と咆哮が飛び交う樊城。

●消えざるシバの炎
 樊城。
「怯むな! 我らの使命を忘れるな!」
 剣を掲げ、矢を番え、盾を構える。押し寄せる猛虎の軍勢と戦う兵の士気は高い。しかし、このまま静観していることはできない。オブリビオンの数が尋常ではないのだ。
 そこここに司馬炎の放った力の残滓が燃えている。
 轟然と。猛然と。兵たちを鼓舞するような力強さで。
 その炎を一瞥するも一切怯まぬ虎どもの牙が、爪が兵へと迫る――今、助力の手を。


藤野キワミ
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「殲神封神大戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
====================
プレイングボーナス……戦場を包む「消えざるシバの炎」を利用して立ち回る。
====================
明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
そんなわけで炎と一緒に戦闘しませんか、藤野キワミです。

▼プレイング受付期間
・【OP公開直後~1/3(月)8:30まで】
・成功度に達しなかった場合延長します。
・オーバーロードはお好きにどうぞ。
・断章はありません。
・採用は先着順ではありません。

▼お願い
技能の使い方は明確にプレイングに記載してください。
プレイング採用の仔細、ならびに同行プレイングのお願いはマスターページにて記載しています。

▼最後に
純戦闘になる予定のシナリオです。みなさまのかっこいいプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『虎』

POW   :    虎視眈眈
予め【敵を睨みつけて唸る】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    猛虎幻翼
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    三回攻撃
【爪・爪・牙の連続攻撃】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:史牙空兎虎

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ベルベナ・ラウンドディー
虎、ね
武術とは概ね人に対する術のもの
相手にし難い部分があるのは仕方ない

ユーベルコード発動の為、戦場を駆けつつ爆弾設置
仕上げにドカンと一発が理想です
その為の救助展開、戦闘は二の次の方針です


●偵察・索敵・救助活動
兵達の撤退準備を手伝います
猟兵の大規模戦闘に巻き込んではかないませんからね
バイクで駆け巡りザザッと陣確認、混戦乱戦状態を除去目的に誘導します
爆弾も設置しながらね

●砲撃・衝撃波・ぶん回し&結界術
戦闘展開は『旋回する衝撃波』つまり竜巻をブチ放つ
足止めしつつ炎を指定方向に拡散し、視界と熱風で追撃を拒む戦術です
結界の障壁も同時併用し、あくまで足止めで結構
そして最後にドカン、私の役目はこれで完了です


夜刀神・鏡介
実の所、俺としては剣や銃を持ってるオブリビオンより、今回の虎みたいな奴の方が怖いというか、厄介というか
いや、だからといって臆する訳じゃないけどな

さて、虎が炎に臆する事はないと言っても、炎に触れれば負傷は避けられない
不用意に突っ込んで来る事はないと思うが、警戒は欠かさずに

鉄刀を抜いて、識の型【炯光】を発動
虎の動きを見極めて、まずは攻撃を回避する所から始める

狙える場合は敵の突進や落下の位置を誘導して炎に突っ込ませるが、基本的には虎の着地を狙って素早く切り込み、脚を狙って攻撃
一撃では倒すのは難しいから、まずは敵の機動力を奪って確実に体力を削る
敵は多いが、だからこそ一匹ずつ確実に仕留めていこう


桜井・亜莉沙
炎も恐れない獣の群れか。
少々厄介な獲物だけど……狩りの時間だ、おいで。

狼の群れを呼び出したら【逃げ足】を活かして自分を囮にして逃げ回りながら【時間稼ぎ】
狼と連携しながらシバの炎が一番よく燃えている場所に虎たちを誘導

虎が消耗した所で総攻撃開始
炎の中に虎どもを押し込んでいくよ
恐れないといっても、焼かれないわけじゃないだろう?
恨むなら、自分の蛮勇を恨むことだね。

※アドリブ・連携歓迎




 轟然と燃え盛る炎を一瞥した獣の目に、それは脅威とは映らないらしい。
(「虎、ね――」)
 勇猛なのか、無知なのか。考えても詮無いことと切り替えて、獣どもの鋭い咆哮を掻き消すのは、ベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)の操るミネルヴァ重工製の宇宙バイク《PC:MN-009》の駆動音。
 果敢に虎へと鋒鋩を揺らし刺突を繰り出す兵たちへと車体を寄せれば、虎は大きく吼えた。
「ここは私たちが預かります。もう少し後方へ!」
 武の世界に身を置くベルベナには、獣を相手にするのは難しくもあるが、こればかりはどうにもなるまい。
 兵たちは、「おうっ」と応じて退いていく。彼らへの追撃をベルベナは赦さない。
 バイクを手足のように操り、タイヤをロック――スリップの瞬間の空気の揺れが衝撃波となる。
 強烈な力は、不滅の炎を巻き込んで旋風へと姿を変え、兵たちを守らんとうねり猛った。
 翡翠がごとき双眸は、隙なく戦場を見渡し、今しがた退避させた兵たちにお守りを――障壁が展開される。
「炎も恐れない獣の群れか」
 ぽそりと呟く桜井・亜莉沙(自称大魔術師・f26162)の桜色の唇は、嫋やかな微笑に歪む。
 紫瞳に映るは、高らかに吼える虎の群れ。ベルベナの巻き起こしたシバの火旋風を前にしても、牙を剥き戦意を失うことはない。その勇猛さを警戒し、気を引き絞れども、溢れいずる魔力は、行き場を欲して熱を持つ。
「少々厄介な獲物だけど……『――狩りの時間だ、おいで』」
 地が震えるような咆哮を掻き消すように、凛乎たる遠吠え――瞬間、亜莉沙は駆けだした。
 喚び出した群狼は、亜莉沙を目で追った虎の動向を見逃さない。標的を兵から彼女へと分かりやすく変えたのだ。
 亜莉沙は、それを引き付ける。逃げる獲物であると虎に錯覚させる。
 猛虎の双眼は赤く爛々と光り、地を抉る踏み込み、己の命を削るような双爪と牙の連撃――初撃はとっと跳ねて難なく避け、二回目の爪撃は、亜莉沙と虎との間に飛び込んだ狼を裂く。
 全員が傷つかないことはない。覚悟の上だ。消えゆく彼に代わる狼が駆けこんだ。
「征け!」
 亜莉沙の呼号。応えた狼の鋭い牙が次々と突き立てられる。爪は深々と虎へと突き刺さり、命が噴き出す。全身はやがて朱に染まり、巨躯は崩れ落ちた。
「おお……なんと勇猛な」
 その様子を見た兵たちが感嘆を漏らし、握る槍へと烈気が伝播する。
 護る。護る。これを斃す。その意思が烈々たる喊声となって轟く。しかし、相手はオブリビオン。理性なく、鏖殺のみを目的に攻め入る非道の群れだ。
「その意気は素晴らしい。ですが、ここは私たちが――さあ、下がってください。巻き込みたくありません」
 黒の車体に光る不穏な翠が、赤い戦場に糸を引く。
 エンジンを吹かせば轟音が爆ぜ、虎を威嚇する。ベルベナは兵を背に護りながら、そっと罠を張り続ける。
「相手をしてあげますが、それは今ではない。私を捕まえることができれば、遊んであげましょう」
 言葉が通じているのかは判然としないが、虎どもの唸り声は、地を駆け、宙を蹴り跳ね、ベルベナを追ってくる。
 順調だ。もうすぐだ。
 追われながらも、彼は冷静に戦場を見ていた。
 司馬炎の放った力の残滓は凄まじい。
 いまだ消えずに燃え盛る火柱へと大きな獣を追い立てるのは、亜莉沙の狼たちだ。
 群れで狩りをする狼らしく、多数で孤を翻弄し追い詰め、炎へと追いやっていく。
「恐れないといっても、焼かれないわけじゃないだろう?」
 狼たちの爪牙の攻撃を受け、それでもなお向かってくる虎へ、亜莉沙は視線を投げる。
 狼の群れに吼え立てられ、後退ったところには、不滅の炎。
「恨むなら、自分の蛮勇を恨むことだね」
 最後の一押しは、狼の尖爪の一撃だった。
 そこへ風が翔る。空気が送り込まれ、さらに大きく強い炎へと成長。バイクを繰るベルベナだ。
「礼を欠いて、無作法に攻め入ってきたのは、そちらですからね」
 彼の隠した一手に兵たちを巻き込まぬよう撤退を促し、戦地に細工を繰り返した。亜莉沙たちが派手に駆け回り、虎どもの注意を逸らしてくれていたのも助かった。
 セットされた罠は、号令の瞬間をいまかいまかと待ち侘びる。
 準備は整った。
 虎どもとの戦いは二の次にしてきた。
 武術とは概ね人に対する術のこと――それを獣相手に発揮することは、やはり難しそうだと戦地を走って分かった。
「もう少し知的で理性的な攻め方をしてきたなら、また違った戦い方ができたかもしれませんが」
 バイクから降りることなくベルベナは、空中を跳ね、こちらに向かって落ちてくる虎を睨めあげる。轟く排気音。一瞬前まで彼のいたところに虎が着地したその隙。
「『着火』」
 彼の声音は、剣戟と咆哮の中で、やけに鮮烈だった。
 刹那。
 眼を焼く閃光。
 耳を劈く爆音。
 体中に駆けた衝撃。
 それらがいっぺんに戦場を支配する。
 設置された爆弾が、次々と加速度的に連鎖し爆発していく。
 ベルベナの頬にはっきりした笑みが刻まれた。
「私の役目はこれで完了です」
 凄絶に地を揺らした時限爆弾の大爆発に、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は思わず瞠目してしまった。されど、その心はすぐに平常へと戻る。
 ベルベナの朗々たる吶喊に、鏡介の士気も上がる。
 炎を恐れないとはいえ、やはり焼かれれば負傷はするし、命を絶やす。虎は、それでも自ら炎へと突っ込んでくるだろうか――答えは出ずとも、警戒を解かなければ良いだけのこと。
 戦地を駆ける亜莉沙と狼の連携を崩せない虎を目の端にとらえたまま、眼前の虎に注力する。
 抜いた刀は《鉄刀【無銘】》。幾度となく仇なすものを屠ってきた得物――鏡介の掌に確と馴染む。
 先の爆発を寸でのところで生き延びた虎が吼えた。
(「やかましいな」)
 隙なく正眼に構えて、鏡介を獲物と認識したその獣を睨みつける。
「残念だがな、『既に観えている』――討たせてもらおう」
 不可視の足場でもあるように空中を跳ねながら接近、鏡介の意表をつくような動きだったとしても、獣だ。
 見極めることは容易い。その爪が鏡介の顔面に迫ろうとも、喉笛を裂こうと繰り出されようとも、鉄刀はそれを払い、往なし、消えることのない火柱の中へと突っ込ませようと駆けるも、虎は小癪にも炎の手前で中空を蹴り、鏡介を狙い続ける。
 両者に決定打はない。しかし、宙を蹴る回数にも限度はあるだろうに。
 纏わりつく外套をそのままに、体を低く沈み込ませ、狙うは虎の着地の瞬間――振り抜かれた一閃は、虎の脚を斬る。流れる体そのままに、無理やりに踏ん張って返す刀で斬り上げる。
 一刀で沈めることはやはり厳しい。傷を負いながらも闘争心を剥き出しに襲い掛かって来る虎の赤瞳を睨み返す。
 ああ、やはりだ。
 剣や銃を持って敵対するオブリビオンより、眼前の虎のような――獣の方が怖い。否、厄介だ。
(「だからといって臆する訳じゃないけどな」)
 怯み、委縮し、鈍ることはない。体勢を立て直しざまに、左上方からくる虎の爪撃を斬り上げ弾く。
 数が多い。だからこそ、一匹ずつ確実に仕留める――まずは、対峙する手負いの虎。
 烈気を鋭い息に混ぜて吐く。
 無銘の剣であれ、鏡介の愛刀。執拗に繰り出された虎の強靱な爪を断ち、骨を砕き、その向こうの虎の眉間へと突き刺さる。
「まずは、一匹」
 動きを止めたそれから刀を抜き、血振るい。血溜まりの中に、一滴、還って溶けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
虎狩りは武人の第一歩。とはいえ新年から干支を狩るとは縁起がいいのか悪いのか。
さてシバの炎を利用しろと。なら一番わかりやすいのは

わたし自身が
シバの炎に
なることだ

まずスーパー変態人2を発動。なんとか人ぽいオーラがわたしを覆う。そしたらシバの炎に飛び込み、【属性攻撃】でオーラに火属性、というより『シバの炎』属性を付与。あとは戦場を空中【ダッシュ】で駆け巡る。このままオーラで虎を焼く。あとわたしの軌道の後にシバの炎が残り、炎の壁と化すので、これで焼いたり動きを制限。
あとは右手にサムライブレイド+フライングシャドウ、左手にバスタードソード+ヒーローソードの四刀流で突撃し、虎を虎刈りにしてやるだけなのだ。




 大豪傑・麗刃(23歳児・f01156)は考えた。
 虎狩りと言えば、武人の第一歩。強さの証明。とはいえ、新年早々、本年の干支を狩ることは、縁起がいいのか悪いのか麗刃には判らない。
 麗刃は、さらに考える。
 群れの気勢を削ぐために放ったシバの炎が、いまなお眼前で燃えている。この不滅の炎を上手く利用すれば、虎を一網打尽――とはいかずとも、実にこちらに有利に戦えるとのこと。
 ならば、一等わかりやすく、一等手っ取り早いのは……。

「わたし自身が シバの炎に なることだ!」

 あまりに突飛で、ツッコミどころ満載の発言であろうとも、麗刃の近くにその意味について合いの手を挟んでくれる者はいなかった。残念なことに、兵士たちも己の戦いで忙しそうだ。
 ともあれ、麗刃は至極マジメ。この上なく本気。だのに――このわたしを無視するなんて、ひどい。
「ふふふ……ふはは、……んもー! 『わたしはちょうぜつおこってるのだー――――!!』」
 もうこの雰囲気ムリ。
 シリアス? 知ってる! かっこいいけど! わたしにはムリ。やっぱりムリ。ああっ、でもいまとっても、なにか、力が溜まるような気がする! どおおおおボケたい! いや、まだダメ! ぎいいっボケたい! ツッコミほしい! でもダメ! はよっ、はよ終わらせよう! 頑張って眉間に寄せた皺が、のびきってしまう前に。
 麗刃の波乱の内心を知らず、虎はこちらを睨みつけ、一歩二歩とにじり寄りながら低く唸り声を上げ続ける。
 しかし麗刃もそれどころではない。青白いなにかがバチバチと弾け、金色に輝くオーラが麗刃を包む。黒髪は凄まじいオーラで金色に見えるが、瞳は残念ながら青くなることはなかったし、筋肉が突如発達してムキムキになったりもしないが、体の奥底から抗い難い衝動に比例する凄まじい力が湧き出でる。
 その衝動のままに、火柱の中へとダイヴ!
 この突飛な行動に、さしもの兵も驚き悲鳴を上げた。果たして、彼は見事にシバの炎を纏って生還する。
「どうだ! わたしはシバの炎になっただろう!」
 その身に炎を宿しながら戦場を駆ければ、彼の軌跡は炎壁となって聳え、兵に襲い掛かる虎の進路を遮った。
「さあさ、選ばせてやろう! 燃えてチリチリになるか、わたしに虎刈りにされるか!」 
 ぐるるると低く喉の奥で唸る虎の赤眼は炯々と尖れども、いまに飛びかかってくるのは、麗刃にも見えている。
 諸手に握るは、四本の刀剣。
 燃える麗刃と対峙する虎の闘争心は、それでも衰えない。根源的に火を恐れたりしないのが不思議だが――それもオブリビオンたらしめる特性か。
 轟々と盛る炎のオーラは、四刃の先まで伝播する。
 虎視眈々と麗刃の命を狙って、地を蹴り迫った虎と相対し、タイミングを合わせて四刃を振るう。軌跡をなぞる炎が虎を焼き、駆けてくる虎の勢いすら利用して、斬り断つ。
 どさりと崩れ落ちた虎だったソレを見下ろす。
 しっかりとシリアスした麗刃は、にやりと口の端を吊り上げた。いつもの調子に戻るのは、もう少しあとになるだろう。
「虎刈りにし足りないから、もうちょっと付き合うのだ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

護堂・結城
目には目、殺意には殺意、だ

【POW】

悪意を持つ外道じゃない?ふざけるな、人を襲う獣如きには赦しも優しさも、贅沢すぎる
『誰かを護りたい』という願い、『誰か助けて』という声に応える為なら俺はこの手を血に染めよう

『この偽りの体は』
俺のこの力は
『それでも誰かの願いで出来ていた』
俺に生きろと叫んだ奴がくれたから

シバの炎を利用してUCで炎の竜装の群れを召喚。獣使いとして蹂躙開始だ
群れと連携して自分以外に狙いをつけた虎を優先して攻撃、炎の体で焼却を狙う

「睨んで唸るほど暇ならさっさと来い、死ぬぞ」

挑発交じりに光の範囲属性攻撃で目潰ししてUCを妨害
怯んだ隙に怪力の貫通攻撃、衝撃波も込めて防御ごと蹴りぬいてやる




 どこかで耳にしたことがある。
 目には目を、歯には歯を――そして、殺意には殺意を。
 轟々と燃えるのは、司馬炎の放った力の残り滓。それすら強力な力に変えて戦う猟兵たちの背を見、なお果敢に立ち向かう兵たちを一瞥した。
 護堂・結城(雪見九尾・f00944)の彩違いの瞳の中にも、不滅の炎が揺らめく。
 一歩、戦地を踏みしめる。
 外道は滅する。これだけは曲がったことのない結城の信念だ。対峙する虎は、果たして外道か――悪意に満ちた救いようのない、骸の海に突き落とすしかないような外道か――否。否。笑止。人を襲っているではないか。
 今まさに城を攻撃し、前線に出た兵を噛み、爪を立て襲い続けているではないか。
 これを外道とせずなんという。
 人を襲う獣風情に赦しも優しさも、くれてやる義理はない。贅沢にもほどある。
 もっと似合いの破滅をくれてやる。
「……『誰かを護りたい』という願い、『誰か助けて』という声に応える為なら俺は、この手を血に染めよう」
 握った拳に決意が宿る。
「『この偽りの体は』――、『それでも誰かの願いで出来ていた』から、来い! 俺の元へ!」
 【雪見九尾の護獣魂装】――ソウルバースト・リフレクトマリスが成る。
 シバの炎がうねり、熱波を巻き起こして、がなる。炎の竜装に身を包む虎の群れだ。
「食わずにはやってられない。てめぇらの声は煩くてかなわないな」
 炎虎の群れへと、突撃の号令を発すれば、巨躯を跳ねさせ驀地に駆けた。
 城を守る兵を噛み殺そうとしていた虎へと襲い掛かる。炎虎の足跡がじりっと燃えていた。
 食っても食ってもまだ足りない――兵の助けに入った彼は、鋭い牙を虎に突き立てる。逃げられぬように巨躯で押さえつけ、凶悪な爪を容赦なく食い込ませる。
 じりじり燃えゆく虎は、このまま事切れるだろう――しかし結城はそれから目を離さず、慌てて退避していく兵を背に隠すように、立ちはだかる。
「すべて燃やし、一切合切を喰らい尽くせ!」
 標的は、兵を狙う虎の軍勢。猛獣を手懐け、意のままに操る。強烈な体当たりは、虎を燃やし、猛烈な爪撃は隙を生み、噛撃で命を喰らう。
(「俺のこの力は、俺に生きろと叫んだ奴がくれたから」)
 ここで外道に屈するわけにはいかない。
 ここで慈悲を見せるわけにはいかない。
 完膚なきまでの蹂躙を。
 炎虎に喉笛を噛み千切られ燃えていく虎の影から、不意打ちの爪撃――否、不意をうったと思っているのは、虎の方かもしれない。
 結城には見えていたから。
「睨んで唸っているほど暇だったんなら、さっさと来ておけばよかったな。残念。終いだ」
 虎の眼前に強烈な光が閃く。炎を恐れずとも、その刺激に耐えられるものか――反射的に瞼を下ろした、まさに瞬く間に結城は地を蹴る。
 一足の間。鋭利い覇気を火炎がごとき熱き吐息にのせて、渾身の蹴撃を虎の眉間に突き刺した。
 虎の躰を走る衝撃は筋を断ち、はらわたを裂き、気炎を掻き消す。
 どうっと倒れ伏す躰を見下ろせば――耳の奥に響く鼓動の向こうで、「応報せよ、まだ足らぬ」と静かにそれでも激しく嗾ける声を聞いた気がした。
 結城の眉間に深く皺が刻まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
樊城に司馬炎かぁ…燃えるぜ
しかし虎退治ってどこぞの小坊主みてぇだな
まぁとんち利かせなくても虎ごときには遅れは取らねぇけどな

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波撒き散らしつつ残像纏い手近な敵にダッシュで接敵グラップル
足払いでなぎ払い
そのまま蹴りで吹き飛ばして他の敵巻き込み
追撃して一気に倒す

炎背にし
ヒット&アウェイ
背水の陣…とはちと違うが
向かって来る敵は勢い利用して掌で受け流しカウンター
炎に拳で叩き込む
おーよく燃える

虎の分際で生意気にも空中戦か?
どこから来るか分かんなくても
来る瞬間は無防備だ
見切り避けジャンプしUC
ほら胴体がら空きだぜ
跳び蹴り
お返しの様に軌跡利用し
炎へと蹴りの乱れ撃ち




 戦場には火柱が上がり、猛火が滾り、空を覆い尽くす熱波が渦巻く。
 虎の軍勢の数は目減りし始める。それでも、兵たちの脅威になる群れだ。
「しかし虎退治ってどこぞの小坊主みてぇだな」
 屏風に描かれた虎であれば、いくらも楽だったかもしれないが、頓智を利かせなくとも、陽向・理玖(夏疾風・f22773)が虎に遅れをとることはないだろう。
 慢心でも、自惚れでもなく、いくら虎が軍勢で押し寄せようとも。
 ここは樊城。
 司馬炎の残した不滅の炎が戦地を照らし焼く南蛮門。
 細やかな歴史好きとの自覚がある理玖だ。
「……燃えるぜ」
 燃えないわけがない。
 滾らないわけがない。
 理玖は《龍珠》を弾き、握り締める――五指の隙間から七色の光が漏れ出せば、凛々しき龍へとセット。
「変身ッ!」
 瞬時にフォームチェンジした理玖は、その場で一度軽くジャンプ。足裏が地についた瞬間、驀地に疾る。地を蹴る度に衝撃破となって大地を揺らし、数多の残像を生み出し、一息で一等近くにいた虎との距離を詰め、虎の眼前で横っ飛び、瞬間、首根っこを渾身の力で掴み取った。
 兵がここを護るために戦っている。いま助力に奔走せねば、理玖はきっと後悔するだろう。
 掴んだ虎を引き倒し、渾身の蹴撃を喰らわせれば――虎の巨躯は石ころのように蹴り上げられ、後方に控える虎どもの真中に落ちる。
 その衝撃で俄かに動揺が広がった。
 敏感にそれを感じ取った理玖の追撃は止まらない。拳打を織り交ぜながらの足技に、虎どもは理玖を獲物と定め、咆哮を上げた。
 勢いの衰えないシバの炎を背になるように位置取り、それ以上の深追いを止めて拳を握る。
(「背水の陣……とはちと違うが、まぁ」) 
 こうすることで理玖にとって都合がいいことは確かだ。
 いくら炎を恐れないとはいっても、好き好んで炎の中を突っ切って理玖の背を攻撃してくることはないだろう。
 いても反応してみせよう――最悪の事態も一応想定しておくが、それよりも眼前の虎だ。
 大地を抉り取って真正面から駆けこんでくる獣の勢いを受け止めることなく、体を横へとずらし、拳で流し背後の炎中へと殴り飛ばした。
「おー、よく燃える……」
 絶叫にも似た慟哭を聞き、容赦なく焼けて消えていく虎を見つめる。
 憐憫を誘う哭き声であろうとも、理玖はそれを助けない。助ける意味はない。燃え尽きていく命に背を向け、ファイティングポーズ――戦闘続行。
 そこに影がよぎる。咄嗟に空を見上げれば、不可視の足場を蹴って跳ねる虎がいた。
「虎の分際で生意気だな」
 空中戦に持ち込まずとも獣風情、地上で斃し尽くしてしまおうと考えていたが、跳ねて跳ねて、空襲される――なんと胸糞の悪い。
 それでも虎は理玖へと接近することになるだろう。その瞬間は、無防備になる。理玖にとってのチャンスはそこだ。
「ほら、胴体が、がら空きだぜ!」
 こちらに爪をたてんと落ちてきた虎の動向を鋭く観察、タイミングをはかり、【龍輝旋】が発動する――空気を圧縮されるような、普段は感じることない空気を裂いた理玖は、虎の胴を蹴り上げ、続けざまに蹴り落とす!
 炎の中へと蹴り入れば、すぐさま燃え尽きていく命は最期まで見届けることはできない。
 凄まじいインパクトによって虹色の龍の足場が出来上がり、それの背に足をかける。標的が空へと上がったことで、虎どもも跳ね上がってきた。しかし、機動力に差があり過ぎた。
 虎は、凄絶な蹴撃に耐えきれることなく――輝く龍が見下ろす中、シバの炎の中へと消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
お正月の浮かれた気分の隙をつくのは良い手だと思いますが…
それでもお正月くらい、しかも現れたのが虎とは…

愚痴を言ったところでお引き取り頂けるわけもなく
気を引き締めて一意専心、参ります!

みけさん、ウカ、衝撃波でシバの炎を煽り炎を勢いを強め、簡単に踏み込めないよう炎を壁を作るのです
炎の壁くらいでは驚きもしないでしょうが火事場風にはお気をつけ下さいね?シバの炎の竜巻に飲まれたら一溜りもないでしょうから

ウカ達が邪魔されないようにウケの結界で身を守り、私は破浄の明弓をかまえ援護射撃を
放たれた霊力の御神矢は無数に別れ虎に降り注ぐ
命中するに越したことはないけれど、当たらなくても問題ない。虎の周囲に矢があれば―

UC【天鼓雷音】使用
私の放った矢を避雷針代わりに虎めがけて雷を落とす。
矢を避け、雷を避け、炎の壁すら駆け上がり超えてきた猛虎もいるでしょう。
ですがその雷、落ちて終わりではありませんし、そもそも真っ直ぐ落ちてはきませんよ?

司馬炎殿に鼓舞されたのは兵士だけではありません。
ここに攻め入ったこと後悔なさい!


香神乃・饗
香神写しで武器増やし
苦無と剛糸に油を塗っておく

寅年で虎っすか
正月染みたオブリビオンでも手加減なしっす!

兵隊さん、俺達は猟兵っす!助けに来たっす!退いてて欲しいっす!
大声で身分を明かし虎達との間に苦無の群れと共に割って入る
安全に撤収できる様に派手に立ち回る

跳ねて来る方向を絞りたいっす
消えない炎という地形を利用し
炎の間を繋ぐ様に剛糸を張り巡らせ壁を作るっす

やっぱ無理っす!
情けないフェイントをかけながら気づかれない様に罠をはるっす
地形を利用して炎の間を転がり回ってさりげなく敵を盾にし
喰らわない様に避けながら陣を整えるっす

剛糸の端を火に放り込みその上を越えないと俺に到達できない様に炎の壁を作るっす
宙を蹴り飛び越えて来る所に炎を潜らせた苦無の雨を降らせてやるっす

逃げながら張り巡らせるっす
跳べない様に
最後は糸の端っこに火を放ち寅の網焼きにしてやるっす

苦無を高速旋回
竜巻を起こし炎を巻き上げ炎で焼くっす
虎の丸焼きっす!

城は落とさせないっす!
城は人を捨てるっていうっす
でも城は人にとって大事なモノっす!




 新年を迎えて浮かれた気分であったことは、否定のしようもない。
 かくいう吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)もそのひとり。
 警戒が薄れている瞬間を狙うことは、確かに良き手だろう。虚を突くことには成功したかもしれないが、襲撃を成功させてなるものかと、新年早々、戦地へと赴いた。
 そこでは、凄絶な炎が上がる。爆発が起きたかと思えば、狼が、虎が、縦横無尽に駆けた。
 剣戟、発破、閃光――火炎と龍雲が空を彩る。
「現れたのが虎とは……」
「寅年だから虎っすか」
「そう、なのでしょうか? なんにせよ……なにもお正月に来なくてもいいと思いませんか、香神乃殿?」
 隣に立つ長身の男をちらと見上げれば、彼は肯きをひとつ。黒瞳を虎から狐珀へと移し、
「正月くらいはゆっくりしたいっすね、わかるっす。俺は餅を食べ損ねたっす」
「ああ、おもち……!」
「きなこも昨日のうちに準備してたんっす! せっかく食べようと思ってたのにっす!」
 香神乃・饗(東風・f00169)の言下、虎どもが吼え散らす。そんな威嚇をどこ吹く風と受け流し、【香神写し】にて増やした苦無を握る。
「正月じみたオブリビオンでも手加減はなしっす!」
 狐珀と饗の愚痴に反応したような突進。
 それをよしとしない饗の剛糸――むろんこちらも隙なく増やした――が行手を阻む。
「参ります!」
 一意専心に討ってみせんと気合も入る。《破浄の明弓》を構える狐珀は、駆け行く饗の背を見送った。
「ウカ、みけさんと一緒に、シバの炎に向かって衝撃波を」
 戦場に燃ゆる灼々たる輝きは衰えない。
 主人の呼号にいかんなく力を発揮した黒狐とAIロボットの法撃の渦に巻かれて、火柱へと成長。一条だけではなく、幾条もの旋風は、もはや炎の壁となって狐珀らの前に聳え立つ。
「愚痴を言ってもお引き取りいただけないのは、判っています」
 ならば、これ以上踏み込めぬようにするまで――これで怯み退くような手合いでもないだろうが、虎の気勢を削ぐことはできるだろう。
「ウケ、結界でウカたちを護っていてください」
 巻物を抱える白狐は、たっぷりした尾を揺らめかせ、万一にもウカたちが討たれぬよう防壁を編み上げた。
 ぐるるるる……と低い唸り声が聞こえてくる。炎の壁を前に攻めあぐねているのか、どう喰らおうか決めかねているのか――特段驚いた様子も見せないで、虎どもは狐珀を睨み据えている。
 獰猛な牙を見せつけ、今に飛びかからんと、のそりのそりと落ち着かない。
「火事場風にはお気を付けくださいね。焼けたくはないでしょう?」
 旋風は炎熱を撒き散らす。そそり立つ炎壁を前に、攻めあぐねる虎を引き付けている間に、饗は溌剌と声を張り上げ、名乗りを上げた。
「兵隊さん、俺達は猟兵っす! 助けに来たっす!」
 強い風に煽られて勢いを増すシバの炎からも、容赦ない虎の爪牙からも護るために、饗は両者の間に無理やり体をねじ込ませる。
「退いてて欲しいっす!」
 兵を裂くはずだった虎の爪撃を寸でのところで苦無で受け押し止め、一瞬の駆け引き――力の均衡を崩し横薙ぎに斬り裂く。
 饗に異を唱えなかった兵たちは、素直にさらに後方へと下がっていく。退避の最中に襲われてはいけない。聳える炎の壁を忌避することはなくとも、負傷覚悟で飛び込むことのない虎の、行動範囲を絞ることは出来た。
 身軽に跳ね、宙からの襲撃に切り替えた虎の標的は、饗。
「やっぱ無理っすー!」
 ひゃあああっ――なんて情けない声を上げながら、剛糸の先の鋲を踏みつけ、地に埋め込む。
「かっこつけただけっすー、ひゃっ、こわいっすー」
 炎壁と、シバの炎の間を虎から逃げるように走り、空から二方向から迫る爪――前転し躱せば、虎どもは衝突しだんごになって地に落ちた。
 鋲を埋め込む。結わえて、繋げて、編む。
 さらに跳ねてくる虎。苦無を構え、それの攻撃を受け流そうとしたとき――空を裂く清浄の矢が奔った。
 一射だけのはずだった。しかし、狐珀の霊力を帯びた御神矢は、無数に分裂し、まるで雨のように虎どもへ降り注ぐ。
 その混乱に乗じて、饗は最後の段階へと入る――情けないフリも終いだ。
「香神乃殿! お気をつけください! いきます」
 狐珀の言下、鉾鈴の音が凛乎と鳴って、掻き消すように龍の咆哮。聖性が発露し、月白の雷花が爆ぜる。
 天鼓が猛然と鳴らされ、雷音が地を揺るがせた。
 虎に刺さった矢も、惜しくも外れて大地を穿った矢も、須らく狐珀の力を纏っている。
「全方位を囲め、紫電の雷精よ!」
 暴れ狂う紫電は全てを侵す無形の刃――穿たれ焼かれ斃れる虎がいる中、それでも血気盛んに接近してくる虎もいる。
「成ったっす――もう、お前たちに勝ち目はないっす」
 雷鳴轟く中、陣を完成させた饗は、最後の鋲を火に放り込んだ。油を浸み込ませた剛糸が燃えていく。さながら炎の檻だ。獰猛な虎を閉じ込めてしまう檻ができあがる。
「網焼きにしてやるっす! ん? 丸焼きっすかね?」
 わずかに首を傾げてみたが、どちらでも些末なことだ。
 ここで虎を止めなければならない。
「お前たちに城は落とさせないっす!」
 不滅の炎を潜らせれば、刀身はよく燃える――こちらにも油を塗り付けてあるのだ。跳んで跳ねて炎の檻を抜け出してきた虎へ苦無が奔った。
 城は人を捨てるという――堅固な城と名高くとも、慢心すれば容易く落城する。最後まで気を抜かずに護りぬこう。城は人にとって大事なモノだ。寄る辺だ。これが健在しているだけで、人々の心は強く在れる。
「司馬炎殿に鼓舞されたのは兵士だけではありません」
 戦場に残されたシバの炎は、決起の証。必勝の誓い。その炎熱を受けて心が躍らないわけがない。
 雷花はばちばちと歓呼に叫び咲き乱れる。
 狐珀の矢も、先の雷も、炎檻すらすり抜け、満身創痍になりながらも駆けあがってきた猛虎がいる。
「やらせないっす!」
 猛り狂う虎へ降り注ぐのは、饗の解き放った苦無。さながら炎の雨――司馬炎の力の残滓を纏繞した刃は、猛虎を極上の炎で濡らして、引導を。
 炎を裂いた清浄なる矢を放つ。一射、二射――ウカたちもさらに炎を鼓舞し煽り立てる。
 これ以上跳んで来れないように、燃える剛糸を蓋へと編み上げ、閉じ込める。恐れはない。負傷も厭わない。まさに捨て身の猛虎が牙を剥いて、突進してくる。
(「しつこいっす!」)
 眉を顰め小さく舌を打って、饗は苦無の先に剛糸を手早く結ぶ。
「やっぱり丸焼きっすね!」
 苦無を高速回転させ始めれば、火炎旋風を巻き起こす。巻き上げられた炎は熱波を孕んで、饗の頬を焼きながら虎を捕らえ閉じ込め、それの命を燃やし尽くした。
 焦げて重い火傷を負いながらも、その旋風を抜けてきた虎がいたことに、狐珀は少なからず驚いた。
 なにが虎をそこまで突き動かしているのか、甚だ理解はできないが情けをかけてやることもなし。同情してやる気もない。
 勢いのついた虎は止まることを知らず、一心不乱に狐珀へと迫った。
「吉備さん!」
「大丈夫です、心配ありません」
 霹靂は青白い。
 龍吼鋭く天を穿ち、奔る紫電が虎の足元へと落ちる――命中しなかったわけではない。地に刺さった狐珀の矢のすべてが稲妻を喚ぶ雷針だ。駆けまわる霹靂神の容赦ない雷撃は、狐珀の意のままに落とされる。
「その雷、落ちて終わりではありませんし、そもそも真っ直ぐ落ちてはきませんよ?」
 狐珀の言葉の通り――真横に奔る霹靂は、虎を穿ち貫いた。
 火炎旋風の中、腹に響く雷音ががなる。
「ここに攻め入ったこと、後悔なさい!」
 閃光。
 爆発。
 爆炎。
 爆風は熱く、空気は帯電して、膚をひりつかせる。耳を劈く爆音が、耳鳴りを引き起こしたが、それ以外の音が失せる。
 虎どもの無粋は息吹も、不遜な足音も聞こえない。
 あらゆるものが焼け焦げた匂いは心地よいとはいえないが、耳障りな唸り声はもうしない。
 そろりと緊張を解く安堵の息を、細く長く吐いた。
 煙も土埃も薄れたころ、「そうでした」と狐珀はぱちんと手を鳴らした。饗も、「あ」となにかに気づいたように狐珀を見た。
「昨年はお世話になったっす」
「昨年はお世話になりました」
 異口同音。きょとんと藍色の眼を丸めた狐珀と、ぱちぱちと漆黒の眼を瞬かせた饗。
 面映ゆげに莞爾と頬を緩ませた彼女の肩にウカが飛び乗った。
「明けましておめでとうございます、香神乃殿」
「本年もよろしくお願いするっす、吉備さん」
 互いにぺこりと頭を下げて新年の挨拶を。
 一年の始まりに、勝利の歓喜を浴びて二人は清々と笑み交わした。


 勢いがついて止まらなかった虎はもういない。
 退けた災禍の影は、不滅の炎に照らされ消える。
 戦渦の中の、小さくとも確かな勝ちは、兵たちの勝ち鬨を呼んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月09日


挿絵イラスト