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森よ、森よ

#UDCアース

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#UDCアース


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 森には主が必要だ。
 森に棲むあらゆる動物の頂点に座す王がいればこそ、森の中では秩序が保たれる。綺麗で醜く、無惨で美しい森のなんと素晴らしいことか。
「この環境は、歪だ」
 地方都市のビル群を見上げて、男は呟く。
 ヒトという種は動物にあってあまりにも特異だった。山にも森にも草原にも、多様な獣が共生して一つの生態系を創り上げている。しかし、ヒトの棲む街という環境はヒト以外の獣の多くを排除してきた。そしてヒトは環境の頂点を自分たちと定め、存分に食らい、存分に殖えてきた。種として頂点に座す王となりながらも、殖えすぎたがために種の中に王を見出して独自の生態系を創り上げた。
 男には、それが許せなかった。それは自然環境の理への冒涜であり、彼の信ずる神への涜神であった。
「――神よ」
 男は角の欠片を路地裏の奥まった場所へと、捧げるように設置する。
「どうか、この傲慢なるヒトどもに裁きをお与え下さい――」



「よくお集まりになられました、猟兵の皆々様」
 グリモアベースへ集った君たちを出迎えたのはエルフの少女、アイリス・イルダルヴだった。
「遠路遥々おいで下さった後で恐縮ですが、早速説明を始めさせて頂きます。危惧すべき事件が今、UDCアースで起きようとしているのです」
 彼女は地図を広げると、そこにはとある地方都市が描かれていた。
「組織が管理していた小型のUDCオブジェクトが持ち出されました。UDCオブジェクトには一般人に対する洗脳効果があるとされており、邪神教団による悪用の可能性が危惧されています」
 写真を数枚、慣れない手付きでアイリスは並べる。写真には茶色い欠片のようなものが映っていた。
「こちらがその持ち出されたオブジェクトを写したものです。鹿の角が砕かれた物で、これらの破片がこの地方都市の中に点在しているのをわたくし予知しました。……残念ながら森に住まっていた身では街の具体的な場所までは判然とせず……」
 アイリスは己の無力さと未熟さを噛み締めるように双眸を閉じる。
「猟兵の皆様にはお手数ですが、このオブジェクトの発見と回収をお願い致します。現場まではわたくしがお送りしますので、配布されたUDCレポートを参考にしながら捜索をお願いします」
 深々とアイリスは猟兵たちへ頭を下げ、胸元に身に付けた宝石へと手を伸ばす。宝石が――グリモアが輝いた。君たちの転移が始まったのだ。


三味なずな
 お世話になっております、三味なずなです。
 今回は真面目な依頼。UDCオブジェクトが持ち出された結果、地方都市の各所に散らばってしまったためそれらの回収を行って頂きます。

 目標オブジェクトは「鹿角の破片」。詳細はレポートにて記載されます。

 また、なずなのマスターページにアドリブ度などの便利な記号がございます。よろしければご参考下さい。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 冒険 『持ち出されたUDCオブジェクトの探索』

POW   :    気力体力を駆使し、足で探す

SPD   :    持ち前の技術力を活かして、機転を利かせ情報を集める

WIZ   :    オブジェクトの性質を鑑み、どこにありそうか推理する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


========UDC Report========

・UDC番号:UDC-◆◆◆◆
・オブジェクトクラス:Safe(安全)
・説明
 UDC-◆◆◆◆、通称「ヘラジカの角破片」は茶色い角の破片です。拳大の大きさで、非常に固く、過去【検閲済】件の破壊実験を行いましたが、いずれの実験においても「ヘラジカの角破片」を破壊することはできませんでした。
 発臭性があり、森の木々のような匂い、あるいは酸っぱいコーヒーのような匂いを発するタイミングが存在すると報告されています。
 「ヘラジカの角破片」は中度の洗脳効果が確認されています。長時間に渡り素手で触った者は自然環境が至高の環境だとして、人間の集まる村や街などの人口密集地を嫌うようになります。また、被洗脳者は植物園や森などといった、自然環境が多い場所へと多く向かいやすくなると報告されています。

・収容プロトコル
 一般UDC職員は「ヘラジカの角破片」は肌に直接触れず、気密性の高い袋、あるいは箱に入れて、UDC保管庫に収容して下さい。

・補遺
 3966号事件において、UDC-◆◆◆◆が持ち出される事件がありました。持ち出した者は被洗脳状態にあり、オブジェクトを利用した邪神降臨の儀式を行ったとされています。この危険性を鑑みて、管理チームはUDC-◆◆◆◆のオブジェクトクラスの再定義を申請中です。
セゲル・スヴェアボルグ

自らのことを棚上げして人間を卑下するなど滑稽でしかないが……
まぁ、洗脳状態なら致し方ない

POW
いずれにしても、回収が必要ならば足を動かすしかなかろう
とは言っても、的外れな場所を探しても仕方がない

より多くの人を洗脳しようと考えるなら
密集した場所が狙われる可能性は高そうか
大きなターミナル駅周辺を探してみるとしよう
臭いが独特ならば、花粉症でないことが役に立ちそうだな

手甲を付けていれば直接触る危険はないだろうが……
情報を得るために多少は触れておいた方がよさそうか?
無論、長時間は禁物ゆえ、必要以上に触らんがな。
容器ないし袋にとっとと移すとしよう。

……消臭スプレーを持っていった方が良いか?


マグダレナ・ドゥリング


考えてみると、自然環境、って表現も不思議な言葉だよね。
自然って何だろう、人間は自然ではないのかな?

とりあえず【情報収集】しなきゃね。
【ハッキング】も駆使して、
【撮影】された、オブジェクトの写真に似た画像を探したり、
不自然な森の匂いやコーヒーの匂いについての噂話に【聞き耳】を立ててみよう。
可能性が高い場所を見つけたら後は他の猟兵と情報共有、数を使わないとね。

情報の取捨選択は【SPD】勝負だ、膨大な情報に一々時間をかけては日が暮れる。

人間が傲慢、なんて言えるのもこの世界だからこそだね。
生態系の頂点が人間なんて、誰も保証してくれないというのに。



「自ら人間であることを棚上げして、人間を卑下するなど滑稽でしかないな」
 グリモア猟兵の予知によって語られた男の言葉を思い出しながら、セゲル・スヴェアボルグは呟く。配布されたUDCレポートから目を上げて、折り畳んで拡大鏡と共に仕舞った。
「もっとも、洗脳状態ならば冷静で論理的な思考もできまい。致し方ないのだろうとは思うが」
「でも、少し考えてしまうよね」
 腕に装着したハンドヘルドコンピュータを操りながら、マグダレナ・ドゥリングが言った。彼らは情報収集の効率化を求めて同道していた。
「『自然環境』って表現も、改めて見れば不思議な言葉だ。自然って何だろう? 人間は自然ではないのかな?」
「さて、な。真っ当に考えれば、人間が作っていない――つまり、人工ではない環境を指すと言う。であれば、人間という概念自体は自然環境に内包されているだろう」
「君はそう考えているんだね。だけど、僕は社会的な側面まで含めると自然を人工へと変える人間は……自然だとは言いにくそうな印象を受けるよ」
 なんだか哲学的だね、と薄く笑うマグダレナ。
「いずれにせよ、彼のように人間が傲慢だなんて言えるのはこの世界だからこそだね。生態系の頂点が人間なんて誰も保証してくれないというのに」
 そう言いながら彼女が思い浮かべるのはダークセイヴァー界。あの世界では、ヴァンパイアこそが頂点に立っていた。
 彼女は機器の操作に一段落つけたのか、よしと呟くとセゲルへ視線を向ける。
「何かわかったのか?」
「この地域の住民の使ってるSNSと、それから監視カメラをハックして匂いや目撃情報について手早く調べてみたよ。ターミナル駅構内、鍵をかけてないコインロッカーの中に一つあるみたいだね」
「空いているコインロッカーの中に入れておいて、利用者が中に入っている破片を取り出そうとすると洗脳される……という仕掛けだな。成程、賢しらな手を打つものだ。ロッカーならば発見されにくく、匂いも多少は抑えられる」
 誰かに接触される前に回収せねば、とセゲルとマグダレナはターミナル駅へと向かう。保管されているらしいロッカーを開けてみると、成程確かに酸っぱいコーヒーの匂いが溢れ出て来た。
「どんな豆で煎れたらこんな酸い匂いに……?」
「異臭騒ぎが起きて管理者に渡っていたら危なかったやもしれんな」
 腕甲を付けた手でセゲルがロッカーへ手を差し込み、中にあるヘラジカの角破片を取り出す。むわっ、とコーヒーの匂いが強くなった。
「……情報を得るために多少は触っておいた方が良いだろうか?」
「さすがにやめといた方が良いんじゃないかな……。洗脳効果は一般人に対するものだそうだから、僕達猟兵は大丈夫だろうけど……その、匂いが」
 鼻を腕で覆うマグダレナ。セゲルは「そうだな」と同意の言葉と共に嘆息しながらジップロック袋へとヘラジカの角破片を封入する。
「…………これだったら手袋か消臭スプレーを持って来るべきだったな」
「あはは……うん。他の猟兵にも情報共有しておくよ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

八坂・操
●◎【SPD】

自然を顧みる事は悪くないだろうけど、だからって自然に還るのはまた違うと思うんだよねー♪
自然環境が至高って言うなら、文明の成長と共に成ったアスファルトの大地とコンクリートの樹木もまた、自然の産物なんじゃないかな?

操ちゃんはそんな現代文明の利器で【情報収集】して【失せ物探し】だ♪
仕掛けるとすれば人込みの中! 外見的には石ころみたいな物だけど、臭いを発するなら目撃情報には事欠かないだろうね☆
素手で触るのは駄目みたいだし、【目立たない】よう回収には『怪糸』を使おう☆ 気密性の高い袋は、そこら辺のコンビニ袋で代用出来るしね♪
「自然こそ至高と謳う存在が、ビニール袋に包まれるなんて、皮肉だね」



 木を隠すならば森の中と言う。
 であればあの外見上は茶色い石ころにも似た「ヘラジカの角破片」もまた、その発する臭気を誤魔化せる場所に仕掛けられているだろう――というのが八坂・操の推理だった。
「~~~~♪」
 テンションも高く、上機嫌に白いワンピーススカートを揺らしながら操は町中を歩いて行く。
 向かう先は、映画館に併設されたコーヒー喫茶。携帯電話で情報収集していると、コーヒーの匂いが変わったと噂になっていたのだ。考えてみれば成程確かに、コーヒー喫茶であれば人が集まりやすい場所ながら、コーヒーの匂いも誤魔化しやすいだろう。
 喫茶店の中に入ると、ふわりとコーヒーの匂いが漂ってくる。芳しく深みのある香りの中に、どこからか酸い匂いが漂って来るのを操は確かに嗅ぎ取った。
「一人でーす。あ、禁煙で」
 立地が良いこともあってか、客数はそれなりに多いようだ。映画談義に花を咲かせる他の客たちとすれ違いながら、早速ビニル袋を手に匂いのする方向へと向かう。
「――見ぃつけた」
 女にしては高い身長を屈めて、操が覗き込んだのは観葉植物の植木鉢。その影に破片は転がっていた。
「ちょっと難しいけど……っと」
 口調の割には動かす手は鮮やかに。特殊合金製の怪糸を操り、ヘラジカの角破片をビニール袋へ入れる。空気を抜いてしっかりと口を締めてやれば、酸い匂いはようやく消えた。
「自然こそ至高、なんて洗脳を施す存在がこうして人工のビニル袋に包まれてるなんて、皮肉だね」
 透明な袋越しに破片を眺めて、操は呟く。あるいは、UDC保管庫だなんていかにも人工物で保管されているのに嫌気が差したのか。いずれにしても、語る言葉を持たない破片からその思いを知る術はない。
 袋の中の破片を弄びながら、注文したコーヒーを一杯ゆっくりと楽しんでから店を出る。
 目の間に広がるのはなんてことはない街の景色。コンクリート、アスファルト、数えきれない程の人工物。
「自然を顧みることは悪くないんだろうけど、ねー」
 ビニル袋を揺らしながら、操は町並みを眺める。ここがもし森になったら――そんな想像をして、緩く首を横に振った。自然は大切だろう。だからこそ顧みもしよう。しかし、だからと言って自然へと還るべきだという主張は違うと彼女は思った。
「自然環境が至高って言うなら、文明の成長と共に成ったアスファルトの大地とコンクリートの樹木もまた、自然の産物なんじゃないかな?」
 人間とて自然から生まれた存在。ならば人間から作り出された物もまた、自然と言うこともできるだろうか。
「破片くんもそうは思わない?」
 ビニル袋を目の前に掲げる。人工物に囲まれた破片は、黙したままだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒川・闇慈
「自然への畏敬は持ってしかるべきですが、崇拝ともなるといささか行き過ぎですねえ。過ぎたるは及ばざるが如し、というやつですか。クックック」

【行動】
wizで行動です。
角の破片に洗脳された者は自然環境が多い場所に向かうことが多いんでしたね。であれば、地方都市ですし、緑化の行き届いた公園の一つ二つはあるでしょう。そういった場所を探してみることにしましょうか。
生け垣や花壇、ちょっとした林など、緑に関連していそうな場所を重点的に回ってみましょう。

「春先だから自然への思いが昂ぶったんでしょうかねえ。付き合わされるこちらはたまったものではありませんよ」




ロク・ザイオン

(森が広がる。ととさまの御旨だ。それそのものを、悪とは思わないが。
森番は、それぞれの世界に秩序があることを知っているし、重んじる。)
……森も、ひとも守るのが。森番だから。
(森番は、森とひとの間に。仲立ちをするものだ。
そう、教わった)

●POW
(匂いはかなり強いと聞いた。【追跡】【野生の勘】で匂いを辿り、探す。
森の匂いを違える森番ではない……酸っぱいコーヒー、とかいうものは、よくわからないけれど。たぶんわかる)

……大鹿の角。
また。あの、病なのか?

(儀式、がしたいなら。ひとを集めるのかも知れない。
これを手にしたものは、何処に誘われていくのだろう?)
……持つものを追うことは。できるだろうか。



 森が広がる、というのは、ロク・ザイオンの言う“ととさま”の御旨だ。それゆえに、彼女はそれそのものを悪だとは思わない。もともと緑は徐々に徐々に拡大するものだ。
 しかし、森番であるロクはそれぞれの世界に別々の秩序があることも知っていた。森には森の、川には川の、そして街には街の秩序がある。それを重んじるよう教わり育ってきて、その通りにしてきたがゆえに、彼女は森とヒトとの間に仲立ちする森番だった。
 すん、と鼻を鳴らしながら辺りを見回す。ロクが来たのは、街の外れの方にある雑木林に隣接する場所。来る途中に見た石碑には『自然公園』と書かれたいたか。生け垣や花壇、木造の遊具やベンチが自然の中にある場所だ。奥の方には深い緑が生い茂っていて、街と緑の淡い境界線のようでもある。
「被洗脳者は緑の多い場所に行きやすい、という話でしたが……」
 同道していた黒川・闇慈が生け垣の辺りを探りながら呟く。
「酸いコーヒーの臭いはしますか?」
「……ん」
 ふるふると首を横に振って応えると、残念そうに闇慈は「そうですか」と呟く。ロクには「酸っぱいコーヒー」というものがいまいちどんな臭いを指すのかわからなかったが、それでも現状、妙な臭いというものは感じられなかった。
「まったく、こんな砂漠の中に宝石を落とすようなことをよくもやってくれたものです。自然への畏敬は持って然るべきですが、ここまでやるような崇拝の情念ともなるといささか行き過ぎですよ」
 呟きながら、闇慈は花壇の方を探しに行く。何だかんだ言いながらも、彼が捜索を続けているのはUDCオブジェクトがそれなりに興味深いものだからだろうか。魔術を玩具として捉えるきらいのある闇慈からしてみれば、ヘラジカの角破片もまた玩具の対象候補で、この捜索もそんなご褒美を手にする前の少し面倒なゲーム――なのかもしれない。
「――変わった」
 やすりをかけたようなざらりとした声で、ロクが呟いてある方向を向いた。闇慈の探している花壇の方へと向かったかと思えば、ジョウロを指す。
「ここではない森のにおいがした」
「森の匂い……ああ、そういえばUDCレポートではコーヒーの匂い以外も発臭するとありましたっけ」
 どうにもコーヒーの方に気を取られてしまっていたが、成程森の中であれば人は少ないし、森の木々の匂いを発していればそう目立ちはしない。
 闇慈が重たいジョウロをひっくり返すと、地面へ水と共に茶色い欠片のようなものが出て来た。ヘラジカの角破片だ。
「お見事。……水の中に入れて臭いを誤魔化していたんですね。よくもまあ考えるものです」
 角を容器に入れて回収し、闇慈は一息つく。一方ロクの方はと言うと、彼女はまだ鼻をふんふんと鳴らしながら辺りをうろうろしていた。
「まだあるんですか?」
「……ない。もってきた人の跡が、途切れている」
「ああ、追跡ですか。手掛かりが途切れてこうして成果を挙げた以上、これ以上の深追いは意味が薄いかもしれません。一度戻りましょう」
 闇慈に促されて、ん、とロクは頷き、自然公園の出口へと向かう。
 からん、と容器の中で角破片の音が鳴る。
 この破片を手にした者は、果たしてどこに誘われていくのか。疑問を抱きながらも、二人は街へと戻って行くのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トルメンタ・アンゲルス


へらじか……拳大の、茶色い角の塊、ですか……。
このサイズの物を、この街中から探し出すんですか。
これは、一苦労しそうですねぇ……。

人が多い所を嫌う。そして、自然が多い所を好む。
この辺りからすると、人のいないような細い路地や袋小路。
それと公園……広いか、あまり手入れのされていない、草木の多い所を狙いましょうか。
……ああでも、人気のないビルの屋上とかもありますかねぇ?
高い所に登れば、見えるものも変わるかもしれませんしねぇ。

System Change.
Shift:Accele.
『Shift Up──Accele.』

パワーリソースを加速用に特化。
さぁ、足であちこち駆け回って探りましょうか!



「へらじか……拳大の、茶色い角の塊、ですか……」
 写真に写ったUDCオブジェクトを見ながら、トルメンタ・アンゲルスは眉根を寄せていた。
 それなりに大きいとはいえ、この大きさのUDCオブジェクトをこの広範囲の中で探すのはいかにも彼女にとって難しいことだった。彼女の長所とは速度であり、速度とは彼女の特徴。早さを重視するトルメンタにとって、この捜索という作業はいかにも遅々とした地味なものだった。
「これは、一苦労しそうですねぇ……」
 参りましたと言わんばかりに、トルメンタは頬を掻く。
 とはいえ、話を聞く限りあまり放置していて良い代物でもないだろう。
《System Change》《Shift:Accele》
「Shift Up――Accele.」
 ベルトを操作し、パワーリソースを加速用へ傾ける。
 ハッキングや聞き込みなどといった、細かで地道な工程は性に合っていないということは、彼女自身心得ていることだった。
「ならば足で稼ぐしかありませんね!」
 であれば自分にできる、自分が得意なことをするべきだろう。トルメンタは写真をしまうや否や、猛然と走り始めた。
 情報を頭の中で反芻しながら町中を駆けていく。人の多いところを嫌い、自然が多い場所を好む。その特徴に該当する街の場所へ向かい、要所を確認して次へ向かう。
 家と家、ビルとビルの間に挟まれて入り込みにくいような場所へと跳躍し、見て回る。その途中でふと、ビルの屋上に緑が見えた気がした。
「……そういえば、最近は屋上緑化なんてものもあるんでしたか」
 ビルを見上げて目測。強化された脚力でもって飛び上がり、緑が見えたビルの上に降り立つ。緑化された屋上はまるで公園のようになっていて、歩いて行くとちょうどベンチのそばに茶色い物が見えた。
「まさかとは思いましたが、本当にあるとは」
 ビルの屋上であれば立ち入りが制限されていて人も集まりにくければ緑も多い。確かに隠すのにはうってつけだろう。
「さあて、届けるまでが回収任務。もうひとっ走り行きましょう!」

成功 🔵​🔵​🔴​

アイリ・ガングール
【WIS】
んー。UDC組織の力借りれる訳じゃし、そっから警察と協力体制を敷けんかの?
で、異臭がするとかいう通報の合った場所へ向かってみるとか。
とはいえ、それだけじゃと特定も出来ないし、特に人通りの多い場所での異臭騒ぎなどあれば其処に顔を出すような形での。
警察への説明はUDCから何か証明書のようなもの貰って、特別協力者みたいな形で説明しようか。
余りに人通りの多い場所での異臭騒ぎが多いようならそこはもう【第六感】で一番危なそうな場所から優先的にめぐっていくよって



 交渉やお願い事など、アイリ・ガングールにとっては容易いことだ。
「なあ、この手弱女を哀れむのなら、何でもええんじゃ。異臭騒動があればみどもへ教えておくれ」
「し、仕方ないですね。ちょうどガングールさんに合った場所から情報があったので、そこへ……」
「ふふっ、ありがとうなあ」
 UDC職員も人の子だ。持ち前の舌先三寸にちょいと色仕掛けを加えてやれば、向こうから情報を教えてくれる。
 失せ物探しは情報と足が重要だ。足にそう自信が無いのであれば、情報に頼るのが最効率であることは言うまでも無いだろう。
 手近な男性職員を捕まえて手練手管で丸め込み、入って来た情報に目を通す。
「さて、警察は仕事をしておるかのう」 



「……確かに異臭騒ぎがあれば呼んでくれとは頼みはしたが」
 呆れた様子でアイリは溜息をつく。
 盛り場の一画、風俗店が密集する場所にアイリ・ガングールは案内されていた。当然ながら情報元は特殊自由業の方からだった。
「なにも猟兵の仕事をしている時にも遊郭と縁がなくてもよかろうに」
 とはいえ、こんな特殊な場に慣れた猟兵というのもそう多くはないだろう。適材適所というものだ。
 異臭のするというホテルへ足を踏み入れる。過剰なほどの消臭剤の臭いなど慣れたもの。フロントで閉鎖されている部屋番を確認して廊下を渡って行くと、確かにどこからか酸い臭いが漂って来た。
「……部屋じゃあ、ありゃせんねえ」
 部屋は商売道具だ。念入りに清掃が入るし、消臭もされる。拳大の破片など、清掃の時に取り除かれるかどうかしてしまうだろう。加えて言うなら、ここも歓楽街なれば人の集まりがある。被洗脳者の人の多い場所を嫌う性質からはやや外れることから、破片を隠した場所もまた違うだろう。
「と、なると。後に残るは――」
 こっちかのう。非常出口の扉を開き、外へ出る。
 そこには誰が育てているのか、家庭栽培の植木鉢がずらりと並んでいた。植物好きの嬢でもいるのかしらん、と植木鉢の間を覗き込めば、あった。酸い臭いを発するヘラジカの破片が。
「まったく、変わった場所に隠しよるのう」
 鞘の先をちょいと使って破片を打ち上げ、袋に落とす。
 回収できたならば留まる意味もあまりない。そのまま一度戻ろうと足を向け、ふと気が付いた。
「ああ、成程。ここは“花”街じゃからか。くだらないねえ……」

成功 🔵​🔵​🔴​

冴木・蜜


それほど強烈な異臭がするならば
騒ぎになっていてもおかしくはないでしょう

他の猟兵が角破片を発見した場所を地図上にマーク
今まで角破片が置かれていた場所に
共通点が無いか分析します

その結果を踏まえ
近くに駅等の移動手段がある場所付近で
異臭騒ぎが起きている場所がないか
調べてみましょう

洗脳状態の一般人が
自然環境の残る場所を目指すなら
移動手段が近しい場所の方が効率が良いでしょうし

発見したら手袋着用の上確保を
しっかりを袋に入れて密閉し持って帰りましょうね

近くに影響を受けた一般人がいた場合には
催眠術で洗脳を上書き
儀式に加わる人間は少ないに越したことはないでしょう

……これは
後で記憶処理をした方が良さそうでしょうか



「概ね、UDCレポートの特徴通りですか」
 冴木・蜜は端を黒く変色させてしまった地図に目を落とす。地図上には、他の猟兵たちがヘラジカの角破片を見つけた場所と、異臭騒動があった場所がマーキングされていた。
「大別して配置の特徴は二種。『目立たないところで誰かに見つかろうとする配置』、『見つからないようにする配置』。前者はUDCオブジェクトの洗脳効果を拡大させる狙いか、ある程度人の集まる場所に置く性質がありますね。後者は洗脳された時の人口密集地を避ける性質と緑のある場所を好む性質から、自然と見つからないような場所を選ぶ、と……」
 考察を口にしながら、ふぅむ、と蜜は口の端からタールを漏らす。指先で拭ったそれを、地図のある一点に落とす。
「――ターミナル駅周辺の花屋。すぐ隣にはコーヒーショップ。恐らく、高確率でここに隠されているでしょう」



 結論から言って、蜜の推理は的中していた。
「お帰り下さい」
 拳大の茶色の破片は無いかと問い質した途端、店員のにこやかだった態度は豹変した。花の芳しい匂いに混じって、コーヒーの酸い匂いが蜜にも感じられた。
「ここにそんな破片はございませんので」
「……参りましたね」
 試しに聞いてみたら、本当に洗脳済みだったとは。苦笑するように口元を歪めると、その隙間からまたタールが漏れ出る。
 とはいえこれも充分蜜は想定していたことだった。最初からここに仕掛けたか、あるいは仕掛けた物に素手で触れてしまったか。どちらなのかは判然としないが、店員は高い確率で洗脳済みだろうと、対策も考えてきた。
 きゅぽん、とフラスコの蓋を取る。酸い匂いと花の匂いに混じって、薬品の匂いが辺りに漂う。
「――さあ、私をよぅく見て下さい。キミは段々と意識が朦朧として、眠くなって来ますから」
「何、を……この、変な匂い……」
「――数を重ねる程に意識が薄れて行きます。1、2、3……。まぶたが段々重くなるでしょう」
「…………」
「――次に目を覚ます時、キミは今日一日のことをすっかり忘れて、いつものキミに戻っています。さあ……おやすみなさい」
 薬物を利用した催眠術。洗脳されて意識が無防備になっている一般人の頭を催眠術で上書きするのは、蜜にとって赤子の手を捻るようなものだった。
 レジへ回って戸棚を漁ると、果たしてそこにはヘラジカの角破片が見つかった。
 床に伏せて寝息を立てる店員を見下ろして、蜜はふぅむと唸る。ごぽり、とタールが漏れた。
「……これは、後でUDC職員を呼んで記憶処理をした方が良さそうでしょうか」

成功 🔵​🔵​🔴​

天命座・アリカ


そっちが神と言うのなら!こっちはなんと天命座!裁けるもんなら裁いてみたまえ!
まあ、他人を無用に無法に裁けるなんて存在は!この世にいていいものじゃないと思うけど!
難しい話はどうでもよく!禅問答にね意味はなく!
正しさの在り処は知らないが!私は私の道を行く!
だって私は天命座!ハッピーエンドを目指すのさ!

鹿の角ということは!神様とやらは鹿なのかな?
目には目を!鹿には鹿を!今宵のゲストは一味違う!
鹿を再現して……よいしょっと!
天命座on鹿!!!
さあ、行こうかアシカ君!む?名前がちょいとややこしいかなまあいいや!

本丸は多分森の中!探しに行こうレッツゴー!
人には厳しい地形でも!鹿の足なら大丈夫!


白鐘・耀

【POW】
いやーロクなもんじゃないわねこのオブジェクトとかいうの。見つけたらぶっ壊した方がいいんじゃない? ダメなの?
うーん私こういう地道な作業苦手なのよねえ……森、森ねえ私可憐だけど森ガールって柄じゃないし……
なんかこう、そのへんの鼻が利きそうな子がいたら上手いこと相乗りしちゃいましょうかしらね
幸いグリモア猟兵やっててそこそこいろんな子達送り出してるし、見知った顔なら話が早いんだけどねえ
自分で探した方が楽そうなら、路地裏とかビルの屋上の隅っことか……そういう人気がなくて狭いとこひょいひょい跳んで渡って探してみるわ
いやーめんどくさいわねえ、ぶっ壊したら……ダメ? そっかあ……


リチャード・チェイス

「陰謀とは他者に悟られぬよう計画を運ぶことである。
しかし、真に全てを隠し通すのは不可能である。
陰謀が何かに影響を与えた時点でそれは世界との接点を持つ。
即ち、接点である以上は首謀者へと繋がる道しるべなのである」

鼻の利く鹿カール・パンズラム君を呼び出し、匂いを辿る。
しかし、特徴的な匂いがあるからと言ってすぐに見つかるわけでもなく。

「ふむ……いったいどこにあるのであろうか」
キュポンと自分の角を取り外して、破片を取り出す。
匂いも嗅いでみる。コーヒーの香りがする。
何故なら私の朝は一杯のコーヒーから始まるのである。

「いったいどこに……!」
鹿の角の破片を握りしめる。



「そっちが神と言うのなら! こっちはなんと天命座! 裁けるもんなら裁いてみたまえ!」
 テンションも高く、天命座・アリカは声高らかに謳うようにのたまう。
「まあ他人を無用無法にさばけるなんて存在は! この世にいていいものじゃないと思うけど!」
 神の一方的な価値基準で裁かれるなどあまりにも理不尽で、そんなものには納得いかない。しかし、とアリカは首を横に振る。
「難しい話はどうでもよく! 禅問答にね意味はなく! 正しさの在り処は知らないが! 私は私の道を行く!」
 何が正しいか、何が正しくないか。価値とは常に移ろうもので、それは今どうこうするべきものではない。ゆえにこそ、今大切なのは己を貫くこと。
「だって私は天命座! ハッピーエンドを目指すのさ!」
 天を仰いで胸を張る。それはまるで、天命座の在り処はここにありと示すかのようでもあった。
 そんな演技がかった彼女の一連の言葉へと、ぱちぱちと拍手を送ったのはリチャード・チェイスである。
「素晴らしい鼓舞であったな。我々の戦意も高揚するというものである。カール・パンズラム君とテッド・バンディ君の戦意も雰囲気でふわっと充実したようだ」
 リチャードがユーベルコードで呼び出した鹿が同意するように地を蹴立てる。気合充分には間違いなさそうだった。
「しかし鹿の角ということは! もしやもしくはもしかして、神様とやらは鹿なのかい?」
「あるいはそうかもしれないのであるな。今まで伝説の鹿料理、鹿の王を見たことはあれど、鹿の神というものはお目にかかっていない」
「ならばそれなら目には目を! 鹿には鹿を! 今宵のゲストは一味違う!」
 手拍子2回、カチューシャに触れながらフィンガースナップ。0と1がつむじ風のように巻き起こったかと思うと、そこにはリチャードの呼び出した鹿とまったく同じような鹿が現れていた。
「そして二味違うのは、そうさゲストはもう一人! リチャードの知り合い白鐘・耀さ!」
「はーい、白鐘・耀でーす。今日はロクでもないオブジェクトを破壊……回収しに行きまーす」
 アリカが両手で示した先にいたのは、にこやかな笑顔で誰に向けるでもなく両手を振る白鐘・耀だ。アリカのノリに乗ってか乗せられてか、どことなくノリがラジオパーソナリティーだった。
 何人もの猟兵を依頼へ送り出して来た彼女は顔見知りがとかく多い。リチャードなどその一人で、グリモアベースで偶然会った彼女たちはそのまま合流して3人で捜索へ向かうこととなっていた。
「リチャード君とはスペースワールドシップ以来かな? こうして同じ依頼に同道できるなんてね」
「うむ、そうであるな。悪巧みの皆と宇宙へ飛びだった、そうあれは夏のある日のこと――いや冬だったか?」
「はいはいやめやめ、やめたまえ! キミの伝説は語り出すと長いんだからさ、時間は有限早く行こう!」
 リチャードの伝説語りを強制的に打ち切って、さっとアリカは自分の生成した鹿に飛び乗った。語り口を閉ざされてやや不平そうなリチャードと、愉快げに笑う耀もそれぞれ呼び出された鹿であるカール・パンズラムとテッド・バンディの背にまたがる。
 鹿に騎乗した彼らが向かう先は――森だ。



「あのUDCレポートに書かれてた特徴からして、多分森に複数隠されてると思うのよね」
「それゆえの我ら、それゆえの鼻の効く鹿らというわけであるな」
 三人の乗って来た鹿たちが、それぞれ鼻を鳴らしながら森の中をうろうろと歩き回る。もちろん猟兵の三人もただその結果を待っているわけではなく、木々の間やうろの中などを探し回るが――。
「見つからないねえ、空振りだ! 匂いもしないしここではないかな?」
「鹿たちの方は何となくこの辺りだと言っているようであるのだが、匂いが微かで具体的な場所が不明であるな」
「第六感の囁きはするのよね。勘は呼べども姿が見えず……」
 膠着状態に陥って、三者三様に何か状況の打開策はないものかと思案する。
「うーん、やっぱり私こういう地道な作業って向いてないかもしれないわね……。私可憐ではあるけど森ガールって柄じゃないし」
「親和性と言うならば、私だって正反対! 森と電子は相容れないさ!」
 お手上げだね、降参だよ、とばかりにアリカは肩を竦めてみせる。その一方で、耀は何やら考え込むように口元に手を当てていた。
「いや、もしかして……。ねえ、アリカちゃん。この辺りに電気製品が無いかわかったりしないかしら?」
「森の中に電気製品? それは一体どういうことかな? こんな森の中なんて、誰も持ち込みはしないだろうに」
 言いながらも、耀の提案に従ってアリカは電気製品が無いかカチューシャに手を当てて周辺に検索をかける。かかった時間はほんの数秒。ん、と声を上げてある方向をアリカは見る。
「まさかホントにあるなんて、思いもよらないびっくりだ! しかも大量、どっさりあるね!」
「こんな森の中に大量の電気製品があるとは不自然であるな。誰か住んでいるのであるか?」
「いいえ、違うわ。ここにある電気製品の大半は恐らく家電だろうけど、誰かが住んでいるわけじゃないの」
 茂みを掻き分け、反応のあった場所へと三人は向かっていく。異臭も漂うその場所にあったものは――山のように不法投棄された家電品の数々。それなりに長い月日が立っているのか、その大半は植物に覆われていた。
「不法投棄場として利用されていたんでしょうね。臭いもそれなりに酷いし、それに多分、この辺りに――」
 がこん、と家電の一つ、冷蔵庫を無理矢理にこじ開けてその中へと耀は手を突っ込む。引き抜かれた手に握られていたものは――ヘラジカの角破片であった。
「成程、これはしたり。密閉性の高い冷蔵庫の中であれば臭気も防げる。その上、緑が近い」
「まったくよくも考える! けれど無事に見つけて良かった一安心だ!」
 見つけた破片を容器に入れて、皆一様に疲れと安堵の息をつく。
「ご苦労であったな、二人共。一時はどうなることかと思いもしたが、なんとか見つかって良かったのである」
「そうねえ。冷蔵庫の中ならあの鹿たちも気付かないわけね」
 袋の中の破片を何とか壊せないものかと耀がチョップを連打するその途中。急に動きが止まって首を傾げた。それなら、なぜあの鹿たちはあの辺りをしきりに気にしていたのだろうか、と。
「ではコーヒーブレイクしたら一度帰還するのである。他の猟兵たちもきっと今頃回収し終えているであろうからな」
 きゅぽん、と音を立てて彼の唯一の鹿要素である自分の角を取り外す。からんとヘラジカの角破片を空洞の中から出して、缶コーヒーを注ぎ込み、コーヒーカップの代わりに自分の角を傾けてコーヒーを飲んだ。
「……待てよ待ってよ待ちたまえ。リチャード、君の持つそれは、一体全体何なんだい?」
「角の破片であるが?」
 問い詰めるアリカに対して、至極当然のことのように首を傾げるリチャード。何らおかしいところはないだろうと言わんばかりであった。
「……灯台下暗しというかなんというか。あんたが持ってたらそりゃあ鹿たちもあなたの周囲をうろつくでしょうよ」
 ふんすふんすと鼻を鳴らす鹿3匹に囲まれるリチャードを見て、耀は疲労感のある溜息をつくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ

リリアさん(f00527)と

UDCアースって自然が少なそうですし獣は生き辛そうでかわいそうなこと
まあ、ただの同情ですわ

二人で聞き込みをしましょう
人が多そうなところ…駅前がいいかしら?
チョロそう…ごほん、誘惑しがいが…ごほん、話を聴いてくれそうな男性に声をかけましょう
大丈夫ですわ!リリアさんも女の子に見えますもの!
私たちならイチコロですわ!

もし、そこの殿方
私たち学校の課題で地質の調査をしておりますの
森の木々のような匂いや酸っぱいコーヒーのような匂いがする場所をご存知なくて?

ほら、リリアさん
もっと可愛くおねだりして
と、こっそり耳打ち
ふふ、効果は上々かしら?
あら…自覚が無いのも困りものですわね…


リリアネット・クロエ


千桜・エリシャ(f02565)とご一緒。

生き辛い環境だからと言って、森の主がそれを破壊していい通りにはなってないと思うんだ。

聞き込みだよ。まずは、レポートにあった手掛かりを元に人通りが多い駅前からかな。エリシャが一緒だから聞き込みもやりやすそうだ…。
(あれ、エリシャがなんかすごい嬉しそうな顔してこっちを見てる…。)

「あの、すいません。森の木々のような匂い、あるいは酸っぱいコーヒーのような匂いを発する場所ってご存知なかったりします?」

ねぇ、エリシャ。なんかやけに男の人の目が気になるのだけど…なんでだろ。

洗脳効果もあるみたいだから注意しないとだね。



「UDCアースって自然が少なそうですし、獣は生き辛そうでかわいそうなこと」
 ぱらり。UDCレポートの資料をめくりながら、千桜・エリシャは呟いた。話に聞くスペースワールドシップやキマイラフューチャーほどではないが、UDCアースの都会は自然が少ない印象を受ける。
「うん……。でも、生き辛い環境からって、森の主がそれを破壊していい道理にはならないよ」
 同行するリリアネット・クロエが控えめに、けれど確信を持って言葉にする。
 文字通り、生活圏が違う。獣たちが森や山が快適な環境だと思う一方で、人間は街を快適な環境だと思っている。どちらが良い、どちらが悪いの話ではないのだ。
「その通りですわね。ですから、この事件を解決するために、まずは――」
「街で聞き込みから、だったよね?」
 ええ、とエリシャは頷きを返す。レポートによれば角破片は臭いがキツいらしい。噂を元に探すこともできるだろう。それに被洗脳者は人口密集地を嫌うようになるため、それを利用して最近失踪した者の噂などを頼りに足取りなどから角破片がどこにあるのか探すこともできる。
「聞き込みなんてあんまりやったことないけど、エリシャが一緒ならやりやすそうだ。頼りにさせて貰うね」
「お任せ下さいまし。とっておきの作戦がございますの」
 にっこりと、それこそ桜が咲くかのような笑顔でエリシャは紙袋をリリアに差し出す。
「変装グッズか何かかな。刑事さんの服とかは似合いそうに――」

 中身を覗く。女子セーラー服、二着。

「……セーラー服?」
「学生に扮して聞き込みするのがやりやすいかと思いましたの。ほら、わたくし17で、リリアさんは18でしょう?」
 花の高校生ですわね、と鈴のようにころころとエリシャは笑う。対するリリアネットの笑みは若干引き気味だ。
「二着あるのは予備用、だよね……?」
「いいえ? リリアさんも着るのですわよ?」
 悪い予感が的中した、とばかりに引き気味だったリリアネットの笑みが苦笑へと変じた。
「ぼく、男なんだけど」 
「存じておりますわ。大丈夫です、リリアさん」
 にっこりと、安心させるようにエリシャは笑みを向ける。
「――リリアさんも女の子に見えますもの、きっとお似合いですことよ! 私たちが力を合わせればイチコロですわね!」
「そういう問題じゃないんだよ……」
 リリアネットのつく溜息は、どこまでも深かった。



「もし、そこの殿方」
 あれから数十分後。結局エリシャの押しに負けてリリアは女子学生に扮し、一緒に街の駅前で聞き込みを始めていた。
「私たち学校の課題で地質の調査をしておりますの。地質によっては、森の木々のような臭いが起きる場所や、あるいは酸っぱいコーヒーのような臭いを発する場所があるんだとか……。ご存知なくて?」
「へえ、地質調査。学生さんも大変だねえ。森の臭いは知らないけど、酸っぱいコーヒーならそういえば最近ちょくちょく話題になった場所がいくつかあったなあ」
 笑顔で答える休憩中らしきスーツ姿の男。自分たちのセーラー服に向けて視線が動いたのを感じ取り、エリシャはこの男なら与しやすそうだと確信を深める。
 それはリリアネットも同じように感じたのか、エリシャにひそひそと耳打ちで話し掛ける。
「ねえ、エリシャ。なんだかさっきから男の人の視線が……」
「大丈夫ですわ、リリアさん。うまくいってます。ほら、もっと可愛くおねだりして」
 早く早く、とエリシャから期待の視線を向けられる。そんな無茶苦茶な、とリリアネットは思ったものの、しかしこのままではエリシャばかりが聞き込みの成果を挙げて、自分が女装までして同行した意味が無い。自分も何かしら貢献しなくては、と腹をくくって、男の方を向く。
「えっと……みんな、あんまり知らないみたいで、頼れる人がいないんです。もっとお話、聞かせて貰えないでしょうか?」
「ええ、そうですわね。博識なあなたに、是非お話お伺いしたいですわ」
 おずおずとしたリリアネットの上目遣いと、歳の割には垢抜けて艶やかなエリシャの笑みにやられたのだろう。男は「し、仕方ないなあ」と満更でもない表情で自分の知ってることを話し始める。
「……ふぅ、なんとかうまく聞き出せたね。この話に聞いた場所なら、きっとありそうだ」
 聞き込みを終えて。やや疲労感のある吐息を漏らしながら、リリアネットはメモ帳に記した情報へ目を落とす。
「ふふ、効果は上々のようですわね」
「エリシャがいてくれたからね。ぼく一人だったらこうはいかなかったよ」
「あら、私は逆にリリアさんがいなかったらこうもうまくはいかなかったと思いましてよ」
「そうなのかな……?」
 その証拠に、男の視線は主だって話していたエリシャよりもリリアネットへ向かっていた。きっと彼の好みだったのだろう。
 自覚がないのも困りものですわね、とくすくす笑いながら、エリシャはリリアネットを連れて角破片を探しに現地へ向かうのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート


さて、と…自然環境への回帰、ねぇ
いたなぁ、そんなのを謳ったカルトがストリートにもよォ
そういう奴に限って、人間の齎した文明にあやかってるもんだぜ
テメェの嗜好をテメェの世界だけで済ませてりゃいいものを、他人に押し付けるから反感買うってんだ。まぁいい、スロット・アンド・ランで解決してやらぁ。

そんじゃ、オフィス街あたりでも調べてみるとしますかね
ユーベルコード発動。【追跡】を大幅に強化する
鋭敏な知覚がありゃ、僅かな匂いでも角破片を追うことができる

見つけたら小さい箱に封入しとくぜ、ガッチリとな

へぇ、こいつが角の破片か
こんなものが洗脳効果を持つんだから、UDCはおっかねえな
もう世に出てくんなよっと…封印



 自然環境への回帰、と聞いてヴィクティム・ウィンターミュートがまず思い出したのは、ストリートのカルト宗教団体だった。あれは確か、室内でも植物を生育して自然と一体化するとかいう教義だったか。結局その室内で育成している植物というものが麻薬の原料に用いられる植物で、そこから麻薬を製造していたことが摘発されて壊滅していたのを覚えている。
「ヤクなんて人間の文明そのものだっての」
 ストリートで自然への回帰を謳うカルト宗教と言えば、そんな矛盾したような連中ばかりだった。それでいて、飯を食ってる横から「植物由来の食べ物の方が優れている」だのと自分の思想を押し付けて来るのだからストリート民の反感もかなり高かった。
 こんな場所にもそれと似たような奴が出て来るのかと思うと、ヴィクティムの表情もげんなりしたものになろうものだ。
 とはいえ嫌な仕事でも仕事は仕事である。頼まれたからにはそつなくこなすのが一流というものだ。そして――
「嫌な仕事をスロット&ランでスマートに片付けるのが超一流だぜ」
 街へと到着したヴィクティムは、早速ユーベルコードを起動する。【Extend Code『Ferryman』】――黄泉の川へと渡す暗殺者(Ferryman)としての力を活性化するこのユーベルコードは、こういった臭気の追跡をも可能にする。
 五感の強化と共に大脳インプランテッドデバイスの情報処理能力を向上。網膜上に拡張現実オーバーレイを展開して臭気を色別に可視化する。
「……こいつか。まったく、ニュービー相手だと楽で仕方ないぜ」
 それらしい臭気を追跡し、臭気の跡と同じ方向へ向かっている足跡を強調表示。向かっている先を予測。地図情報をオーバーレイ。照合。
「予測結果は……オフィス街?」
 ヴィクティムが不審げに顔をしかめる。オフィス街は自然が少なく、なおかつ人が多い。被洗脳者が好む場所ではなく、嫌う場所のはずだ。
 オフィス街のビルの情報を検索してみて、ああ、と彼は納得する。ビル内に原料の栽培施設を抱え込んだ研究施設。そこならば確かに、緑があるだろう。機密保持性も高く、隠蔽もしやすい。
 早速そのビルへ向かって、裏口からハッキング。セキュリティを突破。監視カメラ情報をループ画像で欺瞞して、隠密しながらするすると侵入していく。実に慣れた潜入だった。
 栽培施設へと入って可視化臭気の痕跡を追っていくと、確かにあった。ヘラジカの角破片。
「へぇ、こいつが角の破片。こんなものが洗脳してくるってんだから、UDCオブジェクトはおっかねえ」
 一見してなんてことはないような物品でも、とんでもない効果を秘めているのだから余計にたちが悪い。もう世の中に出て来るなよ、と言いながら、ヴィクティムは小さな箱へと密封した。
「次に洗脳するんなら、痕跡を残さねえようなスマートなやつにしとくんだな」
 小さな箱を揺らすと、破片は抗議するようにからんと音を立てるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

パーム・アンテルシオ
人を操ったり、洗脳したり。いやらしい奴らだよね。
…仲間の事も、疑わなきゃいけないのかな。この世界での戦いは。

●WIZ
まずは物探し、かぁ…
私も狐の仲間だから、鼻には、いくらか自信があるけど…
だからって、警察犬みたいに物を見つけられるわけじゃないよね、きっと。

私が教団員だとしたら、どこに置くか。
人が多くて、落ちてるものへの警戒心も薄い。
…小学校、とか?

一つでも見つけられたら、次の手を試すよ。
一人静火。
臭いでも、気配でも、力でも。他の何かでもいい。
このオブジェクトの、それを追跡して。
追跡に特化したあなたなら、私じゃわからないようなものも、感じ取れるかもしれない。
ふふふ。期待してるよ。

【アドリブ歓迎】



 UDCレポートをぺらりとめくり、パーム・アンテルシオはそこに記載されている情報と、目の前にあるUDCオブジェクト『ヘラジカの角破片』とを見比べて唸り声を上げた。
「洗脳効果……。いやらしい効果だね」
 渋い表情で呟く。自分の持つ誘惑の力と似通っていながらも、それとは一線を画する力。他人を意のままに動かそうとする、という意味では確かに同じ性質だ。しかし誘惑は自分の魅力に魅入らせ、彼らを誘い自発的に何かをして貰うようにする言わば「お願いする」ための力だ。洗脳のような、他者の頭を無理矢理に掻き乱し書き換えるような力とは全くの別物である。
 だからこそ、パームは洗脳というものを殊更に嫌っていた。もしかすれば、仲間のことも時として疑わなくてはならなくなるのだから。信頼すべき相手を失い、疑心暗鬼に陥るような状況など、想像するだに悪夢としか形容のしようがない。
 だが、今は大丈夫だ。仲間はちゃんと信頼できる。そのはずだ。
「影の舌、火の舌、這いずる影を慈しもう」
 だから、すでに見つけて来た猟兵から一度破片を借り受けて、パームはユーベルコード【一人静火】を発動し、黒い炎でできた狐を呼び出した。めらりと燃えるそいつはくんくんと破片の臭いを嗅ぐような仕草をみせると、ひらりと身を翻してある方向へと向かっていく。追跡に特化した黒炎の狐が記憶した情報を頼りに、微細な痕跡を追い始めたのだ。
「破片、ありがとう」
 協力してくれた猟兵へ礼を伝えながら破片を返し、パームは急いで黒炎の狐を追っていく。
 彼女は妖狐だ。鼻にはそれなりの自信がある。しかしそれは人よりもいくらか嗅ぎ分けられるというだけであって、犬のように微細な臭気までわかるわけではない。だからこそ、追跡はユーベルコードに頼る必要があった。
 だが、それ以外の部分はパームの役割だ。
「私が、教団員だったとしたら……」
 どこに置くだろうか。森のような緑の多い場所へ向かっている感じではない。むしろ、人の多いところ。黒炎の狐を追って走っていると、大きな建物が見えてきた。小学校の校舎だ。
「人が多くて……落ちているものへの警戒心が薄い?」
 まさか、と嫌な予感を覚えて校舎を見上げている内に、黒炎の狐はするりと校門をすり抜けて敷地内に入って行く。
「あっ、待って!」
 慌てて自分もまた、校舎をよじ登って乗り越え、小学校へと侵入した。
 黒炎の狐はそのまま体育館の裏手へ向かう。酸い臭いが漂う薄暗いその行き止まりのところで、狐は止まった。その隅に、ぽつんとヘラジカの角破片はあった。
「こんな小学校の目立たないところに配置してあるなんて……」
 パームが広げた袋へと、黒炎の狐が咥えて拾い上げた破片を放り込む。きゅっ、と袋を閉じると酸い臭いは消えた。
「……ちょっと嫌な予感がするかも。これじゃまるで洗脳者を増やしているみたいだ」
 袋に入った破片へ視線を向けるが、UDCオブジェクトは何も語らない。きゅっ、と結び口を強く握ると、パームは来た道を急いで戻って行くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

皐月・灯


自然環境が至高の環境か。
この世界じゃあそう考える向きもあるだろ、否定はしねー。
……ただ、そいつが自分の考えじゃねーってんなら話は別だ。


黒幕は緑地に陣取ってるかもしんねーが……
破片がばら撒かれてるってのは、大方洗脳目的だろ。

UDCアースの地方都市なら、大規模な商業施設があったりしねーか?
巨大なコンクリート建ての建物、多くの車が行き交う駐車場……まさしく文明の象徴だよな。
調べてみる価値はありそうだ。

駐車場、エレベーター、フードコート、ゲームコーナー。
必ず人が近づくが、細部までは注目され難い……そんな場所はあるよな。
そこに場所を絞り、匂いを頼りに探すぜ。

……何も出んなよ、ここは家族連れが多いんだ。



 この地方都市には大規模なショッピングモールがある。買い物、食事、娯楽施設。休日を過ごすのにはまさに打って付けの場所と言えるだろう。
 人々が集まり、物が集まり、物が忙しく売り買いされいくそこはまさしく現代文明を象徴する場所の一つと言える。
 だからこそ、破片はそこに配置されるだろうと皐月・灯は考えた。
「破片がばら撒かれて配置されてるってことは、大方洗脳目的だろ」
 分散して隠すにしては隠し方が甘く、儀式にしては配置が乱雑だ。恐らくこれは儀式のもっと前の段階。被洗脳者を増やしているのだろう、と灯は予想する。
「だとしたら、もっと場所は絞り込める」
 これだけ人が多く、広い場所だ。必ず「人は近付くものの注目されづらい目立たない場所」――つまり、意識外になりやすい空間が生まれる。駐車場、エレベーター、フードコート、ゲームセンター……。
「駐車場は広く薄暗い利点があるが、ここは地下だ。換気性が悪く臭いが溜まりやすいから発見もされやす過ぎる。警備員に回収されるリスクがあるから避けるだろうな」
 地下駐車場を一瞥して通り過ぎ、エレベーターに乗り込んで上の階へと向かう。
「エレベーターは店員も頻繁に使う。回収されてしまう危険性があるから除外だ」
 エレベーターから降りて、更に歩いて行く途中、フードコートを通り掛かる。
「フードコートは衛生管理が厳しくなりがちだ。異臭がすれば店員がすぐに処理してしまうだろうな。論外だ」
 そして最後に訪れたのは――ゲームコーナー。喧騒にも似たいくつものゲーム音に出迎えられながら、灯は奥の方へと進んでいく。
 薄暗い中、ガラス窓で隔てられたコーナーへ進んでいく。近年急速に広まる分煙意識によって新設された、分煙室だ。タバコの臭いに少し顔をしかめながら、更にその片隅の方へ視線を向ける。
「――アタリだ」
 ヘラジカの角破片が、ごろりと転がっていた。分煙室ならばタバコの臭いで臭気もある程度誤魔化しが効く上に、それなりに人の集まりも良い。薄暗いので目立たないが、それなりの大きさがあるため、ふとした拍子に見つけられる。
「自然環境が至高、ね」
 灯は拾い上げた角破片を容器に収めながら呟く。彼としては、それについて否定する気はなかった。UDCアースでならばそう考える者がいてもおかしくはない。
「だが、その考えが自分の物じゃねーってんなら話は別だ」
 洗脳でもって植え付けられたものだという点が、彼は気に入らなかった。それなりの体験や知識、思考を経ることによって獲得するべきそれを、無理矢理に持たされるのは看過できない。
「……ここでは何も出てくれるなよ。家族連れが多いんだ」
 破片へ言い聞かせるように呟き、足早に出口を目指す。
 平和なショッピングモール。平和な街。
 その水面下で、何かが蠢いていた――。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿忍・由紀

花世(f11024)と

協力してくれるんなら助かる
二人の方が効率良さそうだし

探してこいって簡単に言ってくれるけど、なかなかの無茶振りだよね
木の匂いがするみたいだし、木を隠すなら森の中、っていうけど漠然としすぎてるかなぁ
花世だったらどこに隠す?
なんて、雑談するような軽さで

触れられやすいっていう条件が必要だろうから深い森ではないよね
人が多く訪れるとこなら
うん、花世が言う場所、ありそうだね
第六感と野生の勘で散歩でもするように焦る様子もなく可能性がありそうなところを一つずつ確認していく

破片を見つけたら手袋をつけて密封容器へ回収
一応俺が持っとくけど、もし自然環境について語り始めたら止めてね

……冗談かなぁ


境・花世

由紀(f05760)と

任せて、とかろやかに笑って
常に淡々としたきみの声に耳を傾け

狂信者の思考回路は謎だけど
わたしなら好きな場所にはつい足を運ぶかなあ
都会砂漠でそこだけ緑の気配に縋れるような――
森林公園や並木道や庭園、うん、探す価値はありそうだ

第六感の呼ぶ方へ足の向くまま
ふたりとも何か感じるなら、きっと何かがある筈
違和感の濃い場所には目を凝らして
失われたものを、探し出そう

危ないものを持ってくれる姿に
ありがとうと跳ねるように背を追って

ええ、語ってくれてもいいのに
自然愛護はそこまで興味ないけど
ハイテンションなきみは稀少そうだし、なんて
悪戯っぽく笑って隣を見上げる

あは、やだなあ、冗談だよ



「探してこいって簡単に言ってくれるけど、なかなかの無茶振りだよね」
 街の中を歩きながら、読んでいたUDCレポートを閉じて鹿忍・由紀は呟いた。
「花世が協力してくれて助かるよ。二人なら効率も良くなる」
「任せて。二人でならきっとすぐに見つかるよ」
 右目で咲き誇る八重牡丹に負けないような微笑みでもって、境・花世が返事をする。
「とりあえず目星は付けないとね。木の匂いがするみたいだし……木を隠すなら森の中かな。ちょっとまだ漠然としているけど。花世だったらどこに隠す?」
「洗脳された狂信者の思考回路を逆算するのは難しそうだけど……。わたしなら好きな場所につい足を運んじゃうかな。都会という砂漠の中で、そこだけオアシスみたいに緑の気配に縋れるような――」
「隠すのは俺たちみたいな奴らに見つかりたくないから。それでいて、洗脳者は増やしたいんじゃないかな。だとしたら、人の訪れやすい場所で緑のある場所とか」
 まるでなぞなぞを協力して解いているかのような気軽さで、二人は情報の整理と確認をしながら推理を進めていく。
「森林公園、並木道、庭園……。探す価値がありそうだ」
「うん、花世が言う場所、ありそうだね」
 それぞれ頭の中の地図で条件に合う場所を絞り込み、直感に従って足を進めて行く。特に示し合わせるでもなく、さりとてどちらが先導するわけでもなしに二人が同じ方向に進んでいくということは、つまり二人の直感が向いている先は同じということ。
 特に焦ることもなく、まるで散歩のような気軽さで訪れた先は小川の流れる並木道。並んで歩いていた花世が、その景観の美しさに自然、足を早めて踊り出すようなステップを踏む。
「綺麗。これだったら、隠すためじゃなくてもここに来たくなっちゃうよ」
「オアシスっていうのも、言い得て妙だったかもしれないね」
 軽い身のこなしで由紀は柵を越えて小川へ向かう。川の中を覗き込むと赤い影がちらり、ほらり。ザリガニだ。近くに立っていた看板に『ザリガニ釣りは足元に気を付けて!』という注意書きがあることから、きっとここは地元の少年少女たちに親しまれた場所なのだろう。
「緑があって、人も来る。匂いは……どうするんだろう?」
「何かに入ってて匂いがわかりにくいんだったら、むしろわかりやすいんだけどね」
 花世が目を凝らしながら辺りを見る。しかし、細かなゴミは落ちていれども拳大ほどの物が落ちているようには見えない。外れたかな、と思って由紀の方へ視線を向けてみると、彼は腕をまくって小川へ手を突っ込んでいた。
「匂いもしなくて見つからないなら、多分ここでしょ。……ほら、あった」
 ざぶ、と水面から持ち上げたのは、確かに写真にあった茶色の欠片だった。由紀は見つけたヘラジカの角破片を密封容器に収めて、ぐっしょりと濡れた回収用に付けていた手袋を外す。
「一応俺が持っとくけど……もし自然環境について語り始めたら止めてね」
「語ってくれても良いのに。自然愛護はそこまで興味ないけど、ハイテンションなきみは珍しいから見てみたいな」
 勘弁してよ、と由紀が溜息をつくのを見て、花世は口元に手を当てて悪戯っぽく笑う。
「あは。やだなあ、冗談だよ」
「……冗談かなぁ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『『都市伝説』くねくね』

POW   :    アナタも「くねくね」
【自分を視界に捉え、疑問】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【クネクネした物体】から、高命中力の【相手の身体に侵入して、発芽する自分の種】を飛ばす。
SPD   :    ワタシも「くねくね」
【自分と同じユーベルコードを使用する分身体】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    キミも「くねくね」
【自分の身体をクネクネさせる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【目標に、その眼前に自身をワープさせて触手】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


========UDC Report========

●UDC No.:UDC-▼▼▼▼
●Class:【検閲済み】
●説明
 UDC-▼▼▼▼、通称「くねくね」は白い樹状に触手を広げた生物です。二足歩行し、胴体と思しき場所から触手を枝分かれさせて広げています。
 枝は台形ないしは菱形に変形している部分があり、そこから頭部に該当する部分にあるものと同じ口のようなものがあります。何の器官であるのかは一切判明していません。
 危険性が高く、また増殖性があります。発見次第、戦闘行動によって完全な排除を行って下さい。
 以下は過去の実験や観察から得られた「くねくね」の特性です。

 ・「くねくね」を視認した者は強い疑問の感情が植え付けられます。不可視ではありますが指向的な呪詛性が高く、耐性ないしは魔術や呪術などの非物理的防御手段、または単純に視認しないことによって防御が可能です。
・疑問を植え付けられた場合、触手を伸縮させて攻撃し、刺突によって種らしきものを植え込みます。このことから、放射される疑問の感情はアクティブソナーのような役割を果たしているのではないかと推察されています。
・種には生命吸収によって成長する特性があり、数十分の時間経過で急速に発芽して「くねくね」へと姿を変えます。原理は不明ですが、種を植え付けた元となる「くねくね」を殺害すると種は枯死して身体の外へと排除されます。

・「くねくね」は種以外にも自分のコピーを増殖させる能力があります。観測範囲の外から発生し、種と同じく本体となる「くねくね」を殺害するとコピーも消滅することが確認されています。

・「くねくね」は視界内にいる対象を自身の眼前まで瞬間的かつ強制的に移動させる能力を持ちます。予備動作として身体をくねらせることが確認されており、移動させた後は対象を触手で攻撃します。

●指令
 通称「ヘラジカの角破片」を持ち出された3966号事件において、邪神降臨の儀式が確認されています。この影響により、UDC-▼▼▼▼「くねくね」が夜の市街地で大量に出現しました。
 時刻は深夜。天気は晴れ。街は即座に戒厳令下におかれ、UDC職員たちによって避難誘導が行われています。猟兵たちは「くねくね」討伐に向かって下さい。猟兵は、報告された直近の発生場所へ向かうか、あるいはグリモア猟兵の転移によって討伐に向かって下さい。

 ――以上。
マグダレナ・ドゥリング


彼らの信じる「自然環境の理」とやらに、これも含まれているのかな?
まあ、何を信じるのも勝手だけどさ。

機械越しでも影響を受けるのかな、一応、警戒しておこうか。
目隠しでもして自分の【視力】を封じよう。

視界の不利はヘッドフォンとマイクを利用して、
周囲に【聞き耳】を立てて音で相手の動きを【見切る】ことでカバーしようか。

あとは転移しようが増えようが【手榴弾】で纏めて吹き飛ばそう。
自分に向かう爆風は【我が身は霧】で回避するよ。
爆発の前にはヘッドフォンを消音にしておくのも忘れないようにしなきゃね。

周りを巻き込むだろうけど避難はしてるみたいだし、後始末はUDC職員に任せるよ。



「彼らの信じる『自然環境の理』とやらに、これも含まれているのかな?」
 マグダレナ・ドゥリングはウィンドウから目を離す。仮想展開されたそこに表示されているのは、送信されて来たUDCレポートだ。
「まあ、何を信じるのも勝手だけどさ」
 自分にはどうでも良いことだ、とばかりに吐息して思考を一新する。ここには信教の自由なるものがあると言うし、好奇心はあれど深く知ろうと思えるほどの熱意がない。
 マグダレナはマップウィンドウと現在位置を見て、敵の所在地に至ったことを認める。
 デバイスの設定を見直して、首にかけていたヘッドフォンを耳に付けてから目を閉じる。
 暗闇。集音マイクを起動すると、周囲の音がいつもよりよく聞こえた。
 実際のところ、マグダレナは機械を介した映像から観察することもできた。その選択肢を選ばなかったのは、感情強制能力に機械越しにも強制してくるようなミーム汚染の性質が無いか警戒したというのが一つ。もう一つが単純な費用対効果だ。彼女の所有する機械もタダではない。壊れればそれなり以上の費用がかかるし、新調でも、修理でも時間がかかることに変わりない。
「――これか」
 さわさわと、木の葉擦れのような音が聞こえてきた。
 音を頼りに彼我の距離感を測る。距離、およそ50歩先。歩調を緩めながら、まったくの暗闇の中で慎重に距離を詰める。
 ヘッドフォンから聞こえる音を一つも聞き漏らすまいと神経を尖らせ続ける。
 聞こえ続ける自分の足音、衣擦れ。
 次第に大きくなる木の葉擦れのような音。
 鋭くなった神経は時間間隔を引き伸ばす。
 ――ああ、これではまるで暗い暗い、夜の森を進んでいるかのようじゃないか。
 そんな錯覚を得始めた瞬間だった。
 葉擦れの音が急に止まって、何かが空を裂くような音が聞こえてきた。
「――ッ!」
 サイドステップ。さっきまで自分が存在した空間を、ヒュッと軽い音が通り過ぎて行った。敵が触手で攻撃してきたのだ。
 隠密で距離を詰めるのはここが限界だろう。マグダレナは手榴弾を取り出してピンを抜き、信管に繋がったレバーを握り込んで敵の方向へと駆ける。
 一歩、二歩、三歩。レバーを離す。四、五、六歩。
 手榴弾の殺傷能力は約15m。彼我の距離はとうに15mを過ぎていた。しかしマグダレナは疾走をやめない。致命傷を与えるのには5mが必要だ。
 マグダレナの身長は約172cm、歩幅は約77cm。暗闇の中での投擲は無謀だ。確実に致命傷を与えるにはこの10mを更に詰める必要があった。
 だからこそ、前進する。焦りはない。奥の手を切る時は冷静に、確実を期すべきだから。
 ――5秒。それはマグダレナが信管のレバーを離してから今までの時間であり、手榴弾が爆発するまでの時間だ。
 手榴弾がマグダレナの手から零れ落ち、その破片を飛び散らしながら爆裂した。半径5mを無慈悲に死に至らしめ、15mを容赦なく害するほどの爆発。
 破壊的な暴力の嵐は一瞬のこと。数秒後には再び夜陰の静けさが戻る。爆発の跡には、誰も立っていなかった。敵はその白い身体の大半を吹き飛ばされ、見るも無惨な姿に成り果てている。
「ある意味、邪教団への意趣返しみたいになってしまったかな」
 声がした。夜闇の中から霧が集まり、それは人の形を成す。
「僕が自爆特攻だなんて、するわけがないけれどね」
 マグダレナだ。彼女は爆発の寸前に、ダンピールとしての力の一つを用いてその身を霧へと変えていたのだ。爆風で霧は飛ばされはしたものの、爆裂が霧を害せようはずもなく、その身はまったくの無傷である。
 マグダレナが費用対効果からこの戦法を選んだ最後の理由。それは『自信』だった。この戦法ならば、確実に、かつ被害を最小限にして敵を倒せるという確信だった。
 音を聞いてから、ぐるりと周囲を見渡す。敵影なし。しかし、爆発で周辺に被害がそれなりに出ていた。
「……後始末は職員にお任せだね」

成功 🔵​🔵​🔴​

冴木・蜜


儀式の影響、ですか
なんというか、不気味ですね
兎に角、これ以上増殖されても面倒です
悉くを狩り尽くしましょう

体内の毒を限界まで濃縮
その上で攻撃力重視の捨て身の『毒血』
目を瞑るのは忘れずに
物音を聞き、範囲攻撃を駆使し、私の毒で絡めとります
私はただ触れるだけで良い

種で増殖するとは
まるで植物のようですね

不要な芽は間引かねば
不要な樹は枯らさねば

さあ立ち枯れる時です

それでも私の毒の身に種を植えようというのなら
発芽する前に私の毒で溶かし尽くします

私の体に根付くUDCは一つで充分です
キミの芽吹く隙間は無いということですよ



「儀式の影響、ですか」
 口の端から漏れ出るタールを拭いながら、冴木・蜜はUDCレポートを読む。掲載された写真にはいかにも不気味な『くねくね』が写っていた。
「とにかく、これ以上増殖される前に悉くを刈り尽くしませんと」
 紙端が黒ずんでしまったレポートをしまって、現地へ向かう。耳を澄ますと、確かに角を曲がった先から木のざわめきにも似た音が聞こえてきた。
 目を閉じて、暗闇の中で音を頼りに敵のいる方角へと向かう。
 恐れはない。彼は確かな足取りで歩いて行く。元が付くとはいえ、彼はDクラスだった。ともすれば「Disposable(使い捨て)」などとも揶揄されることもあったが、ことこういったUDCに対する恐怖というものに彼は強かった。
 ひゅ、と音がした。触手の音だ、と蜜が知覚した時には、彼の右腕はそれによって穿たれていた。
「あ――」
 しまった、と声を上げる。自分のやろうとしていた作戦が瓦解する。
 UDCは触手をぐにゃりと震わせると、蜜の腕へと種子を植え付ける。種子は生命力を急激に吸い上げる程に強力で、戦闘行動上のかなりの不利だ。
 ――もっともそれは、普通ならばの話だが。
 彼の腕の中へと植え付けられた種子が見る間に黒ずんで、生命力を吸収するどころかその活動を停止した。蜜は人外であり、ブラックタールだ。その身体の中には毒が限界まで濃縮されている。さしものUDCと言えどもこの毒には抗えなかったのだ。
 先端が壊死したように黒ずんだ触手を引き抜きながら、UDCがたじろぐようにくねる。
 蜜がこのUDCを恐れなかった理由はもう一つある。
 彼が、このUDCへ恐怖を与える側であり、天敵とも言える存在だったからだ。
「確か、種で増殖するんでしたね。まるで植物のようです」
 体表面が僅かに揺らいで、埋め込まれたはずの種子だった物が体外へと排出される。
 圧倒的な優位性。UDCもオブリビオンであるとはいえ生物の範疇である。当然、敵に圧倒されていると判断すれば逃げ出しもする。蜜はそれを厄介だと認識していたからこそ、毒を持っていることを悟らせず一撃で済ませるつもりだった。
「不要な芽は間引かねば。不要な樹は枯らさねば」
 余計な木は間伐しないと他の草木の成長を阻害する。ゆえに芽の時点で摘まねばならない。今はまだ芽だ。だから今、摘んでしまおう。
 UDCが逃げる。蜜がそれを追う。果たして、うねるUDCの速度は蜜の俊敏さの前では無力だった。
 目を開いて、蜜は噛み切った手の傷跡から毒の血を振りかける。
「――どうして逃げるんですか?」
 彼がUDCを見て抱いた疑問は、それだった。
 UDCは最後の抵抗とばかりに触手でもって蜜を突き刺すが、刺した先から毒に侵され枯れていく。
「さあ、立ち枯れる時です」
 触手から毒の黒みは広がっていき――数分もしない内に、元は白かったUDCはすっかりと毒の黒へと染まってしまっていた。
 ごぽり、と口の端から溢れたタールを拭いながら、蜜は焦げ跡のようになった触手を見下ろす。
「残念ながら、私の身体は先客がおりまして。身体に根付くUDCなど一つで充分。キミの芽吹く隙間はありませんよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

白鐘・耀

同行:ロク・ザイオン(f01377)

あの妙な鹿?の奇行は一旦忘れ……っと、私が居るのが不思議?
うふふ、たまには暴れないとだもの。行くわよロクちゃん!
(準備運動を終えふぁっさーと髪かきあげる)

さて、ロクちゃんは待ちの構えみたいね。なら名案があるわ!
種攻撃は第六感で察知済み、なので噛み砕いて食べる!
種は畑の肉! 【フードファイト・ワイルドモード】発動よ!
そして近づいて蹴る、また蹴る! トドメに蹴る!!
こう、脇腹をガッて。そうすると痛みでくねるじゃない?
痛がってたら防御の余裕ないんじゃないかしら
あとは森の専門家にお任せよ。ロクちゃんの強さはようく知ってるもの!

味? ふふふ、まずいわ!!!


ロク・ザイオン

白鐘・耀(f10774)と

耀。
…自分ですることもあるんだな。
運命、変えるの。
(もう、何度も送り出して貰ったが
共に戦うのは、はじめてだ。
心配だが、少し楽しくもある)
(それはそれとしてテンションには圧倒される)

(見れば種を蒔かれ、見なければ拐われる。
ならば、見ない。
「轟赫」の二十九条を広げ待つ。
移動させられたら【野生の感】で察知
炎の帯の半数で身を守りながら
【先制攻撃、早業】で半数を束ね【傷口を抉る】
手の届くところに自ら誘い込んでくれるなら都合がいい。
耀が動きを止めてくれるなら、尚更。)

種を蒔く。
増える。満ちる。
…まるで。木を、森を真似た…

…ところで。耀。
それ。うまかったのか?



「イッチニーサンシー……よし、準備運動終わり!」
 いい汗かいたわー、とばかりに白鐘・耀は髪を掻き上げる。
 場所は公園。この辺りに今回大量発生したUDCが移動して来る、と予測されていた。
「ねえ、ロクちゃんの方は準備良いのかしら?」
 視線を向ける先には赤毛の少女がいた。彼女は大鉈を手に、周囲を警戒しているようだった。
「……大丈夫」
 ヤスリのようにざらざらとした声音でロク・ザイオンは答える。
 そばだてる耳はそのままに、彼女は耀を見つめ返した。表情に乏しい彼女は見つめながら小首を傾げる。
「……自分ですることもあるんだな」
「するって、何を?」
「運命、変えるの。ともに戦うのは、初めてだ」
 ああ、と耀はようやく得心いったように頷いた。
 運命を変える――それは事件を、悲劇を予知して解決へと尽力するグリモア猟兵としての耀が何度となく言ってきた言葉だった。予知は介入しなければ当然そのまま悲劇を迎える。しかし、そんな“運命”を猟兵たちの力を借りることで介入すれば、悲劇を回避できるのだ。困難な道なれど、悲劇の運命を変えられると信じるからこそ、彼女は火打ち石の切り火でその困難に立ち向かう多くの猟兵たちを見送ってきた。
 だが、今回は見送る側ではなく見送られる側だ。ロクに不思議がられるのも無理からぬことだろう。
「うふふ、たまには暴れないとだもの。ちゃんと身体は動かしておかないと、色々なまっちゃうし」
 肩を大袈裟にぐるぐると回してみせると、ロクは頷きを返して注視をやめた。
 納得してくれたのだろうか、と耀は思ったが、ロクの雰囲気の変容で違うと瞬時に察っした。敵が来たのだろう。
 横目で見るロクは動かない。待ちの構えのようだ。視認すれば種を蒔かれて、見ていなければ転移させられてしまう。彼女は転移させられる方を選んだのだろう。
「よっし。それじゃあ一丁やったりますか!」
 それなら自分は攻めに行こう。前へ出ると、向こう側に何か揺らめく白い物が見えた。
「あれは――」
 何なの、と。疑問を得てしまった。あれが何なのかわかっているにも関わらず。
 それをトリガーにしたかのように、触手が伸ばされた。
 ――耀という猟兵が「戦闘に秀でているのか?」と聞かれたならば、彼女は恐らく「可憐な私に戦闘なんて似合わないでしょ」としれっとした顔でのたまうことだろう。
 事実、彼女は特筆するべき戦闘技能を有さない。その代わりに――彼女は未来の予報と察知に関しては他の追随を許さなかった。
「なんの!」
 伸ばされた触手を手で掴む。そこまでは良い。だが、それだけではない。触手の先から飛ぶ種は、掴んでいても防ぎようが無い。
「それも察知済みっ!」
 首筋へと植え付けられるはずだった種を、耀は歯で受け止める。飛来する銃弾を歯で噛み付いて止めるかの如き蛮行だ。
 バキ、と音を立てて種が噛み締められる。
「――知ってるかしら? 種は畑の肉なのよ!」
 耀が掴み取った触手を掴む握力がみしりと増した。種――つまりは畑の“肉”を食べたことを条件に、ユーベルコードで耀の細胞が活性化されたのだ。UDCは「いやそれ大豆のこととちゃうん?」と困惑するようにくねるが、ユーベルコードは「大豆ぐらいデカイから実質大豆やろ」とばかりに遠慮無しに耀の身体能力を強化する。
「どっせーい!!」
 まるで綱引きのように掴んだ触手を思い切り引いて引き寄せる。引き寄せられたUDCを出迎えるのは耀の蹴撃という名の熱い歓待だ。
「可憐蹴り!」
 引き寄せられ、宙を舞って飛来するUDCの体躯へとハイキックを叩き込む。
 UDCの重量は身体能力が強化されたこともあって驚くほどに軽かった。引き寄せられ、蹴られて地べたへと撃ち落とされる。
「可憐キック!」
 回転とともにステップを踏んで、地に墜ちたUDCへローキックが入る。後方へとのけぞるUDC。
「そしてこれが! トドメのぉ――キューティー・キーック!!」
 最後の追撃とばかりに、跳躍した耀は飛び蹴りをUDCの胴体へと突き刺す。
 以上、三蹴撃には全て「可憐」ないし「キューティー」と冠されていたが、どれも体重が乗った鋭い一撃でおよそ可愛らしい要素が無かったことをここに明記しておきたい。
「見たかしら! これが戦法『攻撃こそ最大の防御』よ!」
 着地しながら勝ち誇るように叫ぶ耀。UDCの方にもかなりダメージが入ったようで、立ち上がりながらくねる様子はよろよろとした覚束ないものになっていた。
「意外とタフね……!」
 まだ蹴りが足りないと見える。そう思って更に畳み掛けようと一歩前へ出ようとして、彼女はそこで足を止めた。直感的な判断。それは確かに的中したようで、UDCと耀の間にロクが盾になるように瞬間転移させれた。
 ――それなら、後は森の専門家にお任せね。
 立ち止まって、目の前のロクとUDCを見る。彼女だったらあのしぶといUDCを相手にしても、きっと楽勝だろうと耀は確信していた。耀は彼女の強さというものを何度となく見届けて、知っていたのだから――。



 風が変わった。匂いも変わった。
 それらの五感から得られる情報は全て具体的に言語化される前にロクの判断へと昇華される。
「――灼けろ」
 ざらりとした声で命じると、彼女の赤毛からおよそ29本もの帯状の炎が現れた。その半分が、ロクとUDCの間に割って入り、彼女の身を守る。攻撃のためにUDCが伸ばした触手の先が炎で灼けた。
「種……」
 炎の中で消し炭となる触手と種を見て、ロクは呟く。
 種を蒔く。増える。茂る。広がる。満ちる。
 その様はまるで――木を、森を真似ているかのような増え方だ。
「だめだ」
 残る炎帯が纏まり束ねて一本の刃と化す。
 このUDCの有り様は、森をダメにする。何よりも自己の繁殖のみを優先し、他の植物たちの育まれる余地を奪う。あれの作る“森”には、このUDCしか存在していないだろう。
「森に、入るな」
 だから、侵入を許してはいけない。存在してはいけない。
 束ねられた炎の刃は、まるで斧のそれのようだった。
 火の爆ぜる音と共に、夜陰の中で炎色の光が横薙ぎに一条の線を描く。
 UDCはその身を炎の刃で両断され、燃やし尽くされ――黒い灰となってその存在を骸の海へと還した。
 夜の暗闇の中で、炎の光が止んだ。戦いは終わったのだ。
 ぱちぱちぱち、と拍手が聞こえてきて、そちらを振り向く。耀がいた。
「お疲れ様、ロクちゃん。さすが森番ね、あれだけ蹴ってもしぶとかったUDCを一撃だなんて!」
「……」
 こくりと頷きを返す。耀との共闘はこれが初めてで、少し心配なところもあったが、愉快な彼女と戦うのは少し気分が高揚した。……こうしてハイテンションで接せられると、いささかそのテンションに気圧されてしまうところはあるが。
「……」
 ところで、と思い出したように、ロクはじっと耀を見つめる。
「何かしら? 顔には可憐な目とキューティーな鼻とキュートフルな口しか付いて無いわよ」
「種。齧る音が聞こえた」
 耀が驚いたように目を丸くする。あの戦闘の中で、そこまで知覚して聞き分けていたとは、凄まじい聴覚だった。
「……うまかったか?」
 ざらざらした枯木の肌のような声での質問に対して、耀はふっと笑みを作って胸を張る。
「――まずかったわ!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒川・闇慈
「ふうむ、くねくね……有名な都市伝説ですねえ。大量発生されるとありがたみも何もないですが。クックック」

【行動】
wizで行動です。
向こうから距離を詰めてくれるというならこれを利用しない手はありません。
高速詠唱の技能でユーベルコードを使用し、超アストラル体に変身し、くねくねの目の前に転移したならば至近距離からアストラルレーザーで攻撃しましょう。
触手の攻撃も超アストラル体ならばダメージを軽減させられるでしょう。

「真夜中のダンスパーティーもほどほどにしませんと。健康によろしくありませんよ?クックック」





「『くねくね』……有名な都市伝説ですねえ」
 UDCナンバーを確認しただけで、黒川・闇慈はUDCレポートを閉じた。読まずともその概要や性質がわかるほど、この『くねくね』と呼ばれる存在は都市伝説として有名だった。
「一説には広まった都市伝説を起源としてUDCとしての形を得た、などと言われていますが」
 さてさて、と視線を上げて。彼方に見える白い物体を眺める。
「“どうして”こんなに大量発生してしまったんでしょうか? ありがたみも稀少性もありませんね」
 くつくつと笑う最中。闇慈は『くねくね』を視界に捉えたことによって疑問の感情を植え付けられ、次の瞬間にはUDCの目の前へと瞬間転移させられていた。間を置かず、二本の触手が襲いかかる。
「なるほど組み合わせて来ましたか。これは驚きです」
 目を丸くする闇慈は敵の触手を躱そうともしない。触手は過とうはずもなく、闇慈の身体へと突き刺さり、種を射出し――そして、突き抜けた。
「あなたも面白い“玩具”を持っているのですね。ですが、どうやら超アストラル体になった私までは届かないようで」
 残念です、と無傷の闇慈は言う。彼はユーベルコードによって、その身を超アストラル体と呼ばれる状態へと変じさせていた。これもまた、彼の数多持つ“玩具”としての魔術の一つだ。
「さて。あなたもなかなか面白いことができるようで、私としてもじっくり観察させて頂きたいのですが……。惜しいことにこの超アストラル体は元の肉体との乖離が激しいものでして。あまり長くは使っていられないのです」
 困惑するようにくねりながらUDCは触手をめったやたらに振り回すが、いずれも空を切るように超アストラル体となった闇慈の身体をすり抜けるのみ。それを見る当の闇慈はせせら笑うでもなく、今回の超アストラル体への変身はかなり上出来だと満足気に笑みを漏らすばかりだ。
「さ、せっかくの限られた時間なのです。少し踊ってくださいな」
 歌うような一言と共に、闇慈の黒い身体から、無数の白い光線が放たれる。アストラルレーザー、と闇慈が呼ぶそれは、触手を貫きUDCの身体を貫通していく。その光線が命中するたびに、UDCのくねり方が鈍くなり、よろめくようなものへと変わる。
「……おっと」
 “踊る”UDCを観察していた闇慈は、観察対象が動かなくなってようやく我に返った。魔術ほどではないがなかなか面白い玩具で、疑問が尽きなかったのは果たして闇慈の性質か、それともUDCの性質ゆえか。照射していたアストラルレーザーが止んで、闇慈の身体が元の肉体へと戻っていく。
「いけないですねえ、真夜中のダンスパーティーもほどほどにしませんと。健康によろしくありませんから、ねえ? クックック……」
 笑いながら、彼は黒い長髪とコートを翻す。
 後に残されたUDCだった黒い灰は、ただ風に巻かれてその身を骸の海へと返すだけだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セゲル・スヴェアボルグ

生憎だが、触手プレイの趣味はないんでな。
苗床が欲しいのであれば、よそを当たるといい
まぁ、誰も受け入れはせんだろうがな。

枯れ木なら燃やすに限る。朱竜回禄で消し炭にしてやろう。
燃やしきれないものは切るか潰すか貫くか。
その場その場に応じて対処するしかないな。

視界に入れないようにするのは簡単だが、それだとまともにかばうこともできんな。
呪詛が不可視ではないなら暗視あたりで対処も可能か?
多少の呪詛耐性はあるが……まぁ、無いよりはましだろう。
いずれにしても物は試しだ。あるものはすべて使うとしよう。
……呪詛にやられる前から疑問が多いな?


八坂・操
◎【SPD】

自然崇拝の種を摘めば怪異の尾花が萌えいずる……うーん風が吹けば桶屋が何とやらに通じるものがあるね♪
ま、除草はやっぱり根から断たないと駄目だよね☆ 草むしり頑張ろー♪

とりあえず、種に関してはどーしよーもないから、本体を叩く事を第一に行動しよっか♪ 目を瞑って敵を倒せる程、操ちゃんは器用じゃないのだ☆
種を植えられる瞬間を狙って怪糸を本体に引っ付けよう♪ 増殖しようと、本体への目印があれば迷わず狙えるからね☆
「つーかまーえた♪」
後は『敵を盾にする』応用で手繰りつつ、【メリーさんの電話】で呼び出したメリーちゃんに止めを刺して貰おう♪
ヒヒヒッ、元気な犬の散歩ってこんな感じなんだろうね♪



「自然崇拝の種を摘めば怪異の尾花が萌えいずる……。うーん、風が吹けば桶屋がなんとやらに通じるものがあるね♪」
 あっけらかんと笑いながら八坂・操はUDCレポートを閉じた。
「UDCがススキ扱いか。確かに、写真に載っている姿はそう見えなくもないが」
「群れてるところに風が吹いたら、結構似てると思うんだよね☆」
 やめてくれ、とその光景を想像してしまったセゲル・スヴェアボルグはレポートに目を落としながら溜め息をつく。彼は難しい顔をして顎を撫でながらレポートから戦術を考え続けていた。
「ふぅむ、呪詛は不可視……。多少の耐性はあるが、それで耐えきれるのか? それはそれとして瞬間移動させてくるともなると、それの対策も必要になってくるな。だが対策と言ってもどうしたものか……」
「呪詛にやられる前から疑問が多くなーい? シワ寄っちゃうよ」
 額の辺りを縦に引っ掻くような仕草をする操を見て、む、とセゲルはシワを寄せながらレポートを閉じた。
「難しいことを考えるよりも実行あるのみ! 除草は根からを守ればオッケー☆」
「ああ、考えすぎるのも面倒だ。それに――向こうからわざわざ来てくれたようだしな」
 セゲルが視線を向ける先には、ススキのように白い影が見えた。UDCだ。
「あれ、なんでもう来てるんだろ?」
「さあ、なぜだろうな」
 二人の口からするりと出て来た疑問の言葉へ応えるように、UDCは触手を伸ばす。
「受ける」
「よっろしくー☆」
 大盾を手にしたセゲルが前へ出て、操がその後ろへと隠れる。軽い音と共に、触手の攻撃は盾に阻まれた。
「生憎だが、触手プレイの趣味はないんでな。苗床が欲しくばよそを当たるといい」
 もっとも、誰も受け入れはせんだろうが。言葉と共に、セゲルは伸びてきた触手を剣で切り払う。
「さて、根からとは言うが結局どうする?」
「ちょーっと待っててね♪」
 陽気な返事をしながら操が取り出したものは、武器ではなくスマートフォンだ。操作して、それを自分の耳に当てる。
「もしもし、メリーちゃん?」
 戦いの場にあって電話を始めた操を背に、セゲルは盾を構えながら襲いかかる触手を切り払い、灼熱の息吹で燃やして撃退する。敵の動きはただくねくねとするだけで規則性がなく襲い来る触手を見てから防ぐ他に無い。それでいて敵の数は増殖を繰り返し、増えていく。
「――うん、うん。そうそう、その子。それじゃ、いつも通りよろしくー☆」
「支援要請か?」
「ピンポンピンポン大正解ー♪ すぐに来るよ、近付ける?」
「任せておけ」
 本来であれば持ち上げることすら困難であるはずの重盾を持ち上げ、セゲルが突撃する。触手は――動かない。動けない。見れば、UDCたちの群れの中で、いつの間にかに現れた金髪の少女がナイフを振るっているのが見えた。
「数が多いほど奇襲には脆くなるものだな」
「行け行けゴーゴー!」
 混乱から立ち直った何匹かのUDCがセゲルたちへと向けて触手を向ける。遠間ならば見てから反応できたが近間になるとさすがに量には対応できず、盾と剣の間を縫うようにして触手が迫る。が――
「おおっと、危ないっ☆」
 これを通す操ではない。彼女は手を振るって怪糸を引くや否や、UDCの一匹を宙へと釣り上げる。宙を舞うUDCへと、飛来する触手が突き刺さった。敵の射線を読んで、そこへUDCを釣り上げることで盾にしたのだ。
「結構増えてるねー、本体どれだろ?」
「知らん、わからん。だが、敵の倒し方ならわかる。――全て焼き払えば良い」
 後は自分で守ってくれ、と言い残して、セゲルは単身UDCの群れへと盾を手に突っ込んだ。
「枯れ木のようなお前さんらは燃やすに限る!」
 大きく息を吸った後、セゲルが吐いた息吹は灼熱となった。真朱の炎は見る間にUDCの中で燃え移り、燃え広がっていく。
「ひゃー、すごーい☆ キャンプファイアーみたい♪」
 怪糸で引き寄せたUDCを金髪の少女に刺殺させながら、きゃっきゃと操は年甲斐もなくはしゃぐ。
「除草は根から、だろう?」
「終わったら燃やして処分も忘れずに、だね♪」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リリアネット・クロエ


千桜・エリシャさん(f02565)とご一緒。

セーラー服で登場。

くねくねしてて得体の知れない感じがとても苦手だ…
見続けてるとなんかおかしくなりそうだな。

エリシャと一緒ならこんなやつ余裕だよ
さっさと倒しちゃおうエリシャ!

リバティス・スピアでくねくねとした触手を焼き尽くすよ

エリシャが襲われそうになったら援護、間に入り盾に。
「そのくねくねした触手でエリシャに触れるな!!」

再生力を上回る攻撃を。自己強化でさらなる攻撃を繰り出す。

「エリシャ、行くよ!!」
ひらりとスカートなびかせながら。


千桜・エリシャ

リリアさん(f00527)と

なんだかくねくねと気持ち悪い敵ですわね…
でもリリアさんと二人ならば、こんな奴ら敵ではありませんわ!
…首があるのか、よくわからないのが残念ですけれど
さっさと片付けてしまいましょう

2回攻撃ですぱすぱと軽快に切り刻んでいきましょう
って、いきなり目の前に現れるとか本当に気持ち悪いですわね!
リリアさん助かりましたわ…
リリアさんに種が飛んでくれば花時雨を開いてオーラ防御
お互いを守り合いましょう
リリアさん、かっこいいですわ…セーラー服ですけれど

それにしても斬っても斬ってもきりがないですわね…
かくなる上は傾世桜花で魅了して同士討ちさせましょう
その長い腕でご自分の首を締めなさいな



 ――この敵はなんだか気持ちが悪くて苦手だ。
 という感想は、リリアネット・クロエと千桜・エリシャに共通したものだった。
「何だかくねくねと……気持ち悪い敵ですわね」
「うん、得体の知れない感じが何か苦手だ……見続けてるとおかしくなりそう」
 二人の目の前には、わらわらとUDCたちが群れていた。自然、二人の表情に薄っすらと嫌悪感が滲み出るが、しかし彼女たちの目に宿る戦意は決して萎えてはいなかった。
 敵の伸ばしてくる触手攻撃をリリアネットは槍で薙ぎ払い、エリシャは刀で斬り捨てる。
「けど、エリシャと一緒なら――」
「でも、リリアさんと二人ならば――」

「「こんな奴ら敵じゃない!」」

 最初に動いたのは短槍を手にしたリリアネットだった。刃が赤く塗られたリバティス・スピアを一振りすると、矛先に秘められていた紅焔の魔力が活性化して、UDCたちへ業火を見舞う。
 続くエリシャがその細腕で黒い大太刀、墨染を振るう。閃く刃の軌跡が一条、二条。反撃の触手攻撃を斬り飛ばす。
「首があるのかよくわからないのが残念ですわね……。あの胴体にくっついているのが御首なのでしょうか?」
「わかんないけど、中途半端な攻撃じゃ倒れてくれそうにないみたいだ」
 少し困ったような表情をしながら、UDCの首がどこにあるのか探すエリシャ。対してリリアネットの表情はいつもよりも厳しいものだ。
 実際、彼の言う通りUDCへの攻撃は胴体部分へ直撃すれば比較的楽に倒せるものの、触手をいくら斬ろうが焼こうが敵は元気なままである。
 核となる胴体を攻撃しないと倒せないようだ――というのがリリアネットの見立てだった。
「少しずつ、確実に倒す……!」
 槍を構え直して、再びその矛先に炎の魔力を宿し。自身の左手には水、右手には風の魔力を生み出すことによって三種の魔力を混合し、それでもって自身の身体能力を強化する。
「斬っても斬ってもきりがないですわね……」
 その一方で、エリシャは敵の攻撃を対処しながら焦れていた。斬っている実感はあるものの、それがダメージに繋がっている感覚がまったくしない。比較的リーチの長い大太刀とはいえ敵の胴体、特に御首を狙うには我が身を必要以上の危険に晒さねばならない。無理筋を通すよりも、敵が隙を晒すのを待って見に徹するのが得策だと彼女は判断していた。
 ――不意に、エリシャの景色が急変する。立っていた場所が変わって、遠間にいたUDCが一瞬で目の前に来た。UDCたちが接近したのではない。エリシャがUDCたちの元へと瞬間移動させられたのだ。
「うっ……」
 UDCの不気味な造形を間近に見てしまったエリシャが顔をしかめて一瞬怯んだ。その隙を見逃そうはずもなく。UDCは鋭い触手攻撃を放つ。
「――そのくねくねした触手でエリシャに触れるな!!」
 リバティス・スピアを突き込んで、リリアネットが間に割って入る。数本の触手は矛先で斬り裂かれるものの、続く触手が襲いかかってリリアネットの柔肌へと突き刺さった。
「っく――!」
「リリアさん!? よくも、やってくれましたわね……!」
 エリシャの瞳にあったゆとりが、激しい感情へと変貌する。彼女が墨染を構えると、黒い刀身が端から解けるように消えて、薄桃色の桜の花びらへと変じていく。
 花びらは風も無いのに宙を舞い踊り、花嵐となってUDCたちへと襲いかかる。それ自体に殺傷力があるわけではない。あの花びらには――魅了の魔力がかかっている。
「その長い腕でご自分たちの首を締めなさいな」
 UDCたちは互いを互いに触手で攻撃し始めた。その様はまさしくエリシャの言葉の通りである。
「はぁ……。本当に、御首が自分の手で綺麗に刈り取れないのが残念で仕方ありませんけれど……リリアさんの身には代えられませんわね」
「ごめんね、エリシャ。大丈夫だった?」
 触手に穿たれた腕を抑えながら、申し訳なさそうにリリアネットは眉尻を落とす。それに対して、エリシャは首を横に振った。
「謝るのはこちらの方ですわ、リリアさん。私を庇ってそんな傷を……。そちらこそ大丈夫ですか?」
「種が植わったみたいだ……早く本体を倒しちゃおう」
 リリアネットの腕に種が植え付けられたためか、彼の顔色はやや青白くなっていた。傷跡を庇いながら、槍を構えて同士討ちをするUDCへと焔の一撃を叩き込む。
「これで――最後ですわね」
 一度魅了状態に陥った敵を倒すのには、さして時間を要さなかった。最後の一匹を討ち倒して、エリシャは吐息する。
「こんなことなら、もっと早くに敵を魅了しておくべきでしたわね……」
「って言っても、隙の大きいユーベルコードだから、ぼくが盾になってなかったらどちらにせよ撃てたかは……」
「そんなことはわかっておりますけれど!」
 落ち込んだエリシャへとリリアネットがフォローの言葉をかけるが、それでも彼女は感情的な納得ができなかったようだった。
「もう種も身体から出て大丈夫になったから。次のUDCの動きまでには、治療して貰えるだろうし」
「ええ……そうですわね。次はしっかりとお守りしますから」
 断固とした決意を秘めたエリシャの言葉に、やや大袈裟に思いながらもリリアネットは「うん」と苦笑と共に頷きを返す。
 戦場跡から戻る間際。エリシャが振り向いた。
「……かっこよかったですわ、リリアさん」
 セーラー服でしたけれど、という言葉は胸に秘めて。
 二人は戦場跡から戻っていくのだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ペル・エンフィールド
くねくねくねくね
木の虚が顔に見えるなんて森では良くあることなのですよ

先ず空中から暗視と視力を活かしてくねくねを探すのです
それから察知されないよう暗殺で先制攻撃!

わぁ!くねくねも分身できるのですね!
それじゃ私も残像の分身で力比べなのです!
質量を持つ残像、どれが本物か見極めてみろですよ!

長針のⅨ
我を選びしはストラスの大爪
従うは本能
思うがままに、感じるままに、飛び、そして狩る者
さぁ、名状し難き不思議な木々よ
魔鳥と共に踊れ…です!



 くねくねというUDCを見て、ペル・エンフィールドが初めに抱いた印象は、その触手の間にある口のようなものを指して「木のうろのようだ」という感想だった。木のうろが顔に見えることなど、彼女が生まれ育って来た森では往々にしてよくあることだった。幼い時分に、よく夜と朝の中間ぐらいの頃合いに、木のうろをお化けの顔だと勘違いして泣き出してしまい、それを笑われたことはいまだに記憶に残っている。
「……あ、見つけたです」
 暗夜の中、星と月の灯りで頼りなく照らされる街の上空でペルは飛行していた。眼下には街灯で照らされた町並みが広がっていて、彼女は夜目の中で敵の姿を発見していた。
 無論、発見したからには疑問の感情を抱いて敵の種攻撃が飛んで来るのだが――いかんせんペルがいる場所は上空だ。普通に飛び回っているだけで種も触手も届かない。
 本来ならば敵に気付かれないまま先制して暗殺を仕掛けるつもりだったのだが。今回はそういった小細工は通用しない手合のようだった。しかしだからと言って打つ手がなくなったわけではない。彼女は属する“結社”と呼ばれる組織での訓練で常より「サブプランを用意しろ」と訓示を受けていた。
「こういう時は――真っ向から狩ってしまえば良いですね!」
 身体を起こして羽ばたきで制動をかけ、下へとペルは下降していく。
 空を飛ぶペルを相手にするのは分が悪いと感じたのだろう。下界のくねくねたちはその身を分けて分身を始める。うえ、とペルは少しばかり顔をしかめた。結社の模擬戦で、大人気なく対空火器を再現されて空中で集中砲火を受けたことを思い出したのだ。
「そっちが分身してくるのなら、それじゃあ私も分身で対抗するですよ!」
 ばさりと彼女が翼を一度振るったかと思うと、その姿が一瞬ブレて数十体もの分身体が現れた。ただの残像――ではない。それらは全て質量を伴ったものだ。
「我が項に刻まれし数字は“Ⅸ”!」「我が従うは本能!」「我を選びし刻器は“ストラスの大爪”!」
 残像たちが名乗りを上げる。
 ペルは“結社”と呼ばれる組織の構成員――ナンバーズだ。隠匿を是とするその組織の構成員にあって、敵の前で名乗りを上げることは「ナンバーズとしての誇りを賭けた討伐の誓い」を意味する。
「思うがままに」「感じるままに」「飛んで」「舞って」「そして狩る者」「さあ、名状しがたき不思議の木々よ」「どれが本物の私なのか、見極めてみろですよ!」
 ペルの宣戦布告と共に、彼女“たち”の攻撃は始まった。
 種の射出による一斉対空射撃を、ペルたちは急旋回によって数隊に分かれて散開する。まるでライフル弾の如きバレルロール機動で追撃の対空攻撃を躱し、敵の攻撃が止んだと見るや、一斉にその足をUDCへと向けて急降下する。
「燃え尽きろです!」
 ストラスの大爪が風圧を強めてペルの足から噴出する地獄の炎をガスバーナーのように先鋭化する。生半可な触手による迎撃をものともせずに、ペルたちは一斉にUDCの身を次々と焼き貫いた。
「まずは――挨拶です!」
 追撃とばかりにストラスの大爪の特性を解放し、ペルたちは地表で気流を巻き起こす。それぞれの大爪を中心として円状に強風が巻き起こり、それぞれ強風圏がぶつかり合ってその間に置かれたUDCたちが風圧の中で潰された。
「ここは既に魔鳥の踊り場。冥府に最も近しき舞台」
 上空から、金色の双眸がUDCたちを――獲物を見下ろす。
「一匹残らず――狩り尽くすです!」

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿忍・由紀

花世(f11024)と

随分と不可思議な見た目だね
あ、不思議だと思っちゃダメなんだっけ
どうやら花世はあの見た目が無理っぽいけど、どうしようかな

戦闘中に目を瞑るなんて本来ならありえないけど……と考えつつ
じゃあ俺がアイツらを止めるから攻撃だけ任せて良い?
確実に敵を落とせる手段があるなら、目を閉じたままで良いよ

……そんなに褒めても何も出ないからね

あんまり見ちゃ良くないみたいだけど、
そこは呪詛耐性と破魔でやり過ごそう
ワープの予備動作だけ見逃さないようにうまく見切って
磔で固定出来たら花世に合図を
目標から大きく外れたら指示を出そうかと思ったけど余計なお世話だった

上手いことやってくれたね
もう大丈夫みたいだよ


境・花世

由紀(f05760)と

なんかあれ、見てるとぞわぞわする
思わず目をぎゅっと瞑って
だけどこれじゃあ戦えないと困り顔

……由紀、どうしよう?

無茶ぶりに返ってきたのは完璧な作戦
天才! いけめん! さすが!
今度のは本気だよ、うん、心から

目を瞑ったまま第六感を研ぎ澄まして
きみが切り拓いてくれるチャンスを
疑いもなく信じて待つ

きみの合図に導かれたなら、
翻す扇を花びらへと変えて
敵を引き裂く嵐を巻き起こそう

きみの魔力が向かう方へ、
不穏な気配に騒めく方へ、
見えずとも狙いは違えずに
確かに葬り去ってみせる

気配が消えたら薄目をあけて確認
もういなくなった? だいじょうぶ?

褒められて少しどやっとしつつ
きみの作戦のお陰、だよ



「随分と不可思議な見た目だね」
 鹿忍・由紀はUDCレポートに載った写真を見て、そう評した。都市伝説型のUDC「くねくね」の外見は形容に難い。強いて表現するなら、不気味な白い木のようだと言うだろうか、と由紀は首を傾げる。
「へえ、そんなに変な見た目してるの?」 
「花世も見る?」
 赤髪を揺らして、花世がヒールを浮かせて彼の持つUDCレポートを覗き込む。それでは見づらかろうと由紀がはい、と頭一つ分ほど低い花世に合わせて、腕を下げた。
「へえー、くねく……――っ!?」
 ひゅっ、と。写真を見た花世が浅く短い呼吸をした後に、由紀の腕ごとレポートを押し返した。
「どうかした?」
「……なんか、それ、見てるとぞわぞわする……」
 八重牡丹の咲いていない目を、きゅっと蕾のようにつぶりながら、花世は必死に今しがた見たものを忘れようとする。
 ああ、見た目が無理っぽいか。察した由紀は、さてどうしようかと頭を掻く。花世は活発で、鉄火場にあっても飄々としているような女性という印象が強かったためか、この反応は少し意外でもあった。
「ごめん、変な物見せちゃったね。顔色悪いけど、ダメそう?」
「……大丈夫。大丈夫だけど、そいつは今後見たくないかも」
「参ったな……」
 時刻を確認する。情報通りなら、そろそろUDCがこの辺りを巡回に来るはずだ。しかし花世がこの様子では、到底彼女を戦わせるなどという酷なことはできない。
「目、つぶったまま戦っちゃだめ?」
「耳良いの? それか、心眼みたいなのがあったりとか」
「多分、人並み。心眼もない……。由紀、どうしよう……?」
 だよね、と由紀は頷く。充分予想していたことだった。ふぅむ、と由紀が考え込んで、あ、と思い付いたように声を上げる。
「じゃあ俺がアイツらを止めるから、攻撃だけ任せて良い? それなら見えなくても戦えるでしょ」
「おお……!」
 目を閉じた花世が感嘆の声を上げる。心なしか、沈んでいた表情が八重牡丹に似合ういつもの彼女らしい明るさに戻った気がした。
「天才! いけめん! さすが! それでいこう!」
「……そんなに褒めても、何も出ないからね」
「やだな、今度のは本気だよ。うん、心から」
 なら良いんだけど、と吐息して。由紀が顔を上げたその視線の先。白い影が見えた。
「――花世。目、閉じたまままにしといて」
 彼の言葉と声音の変化で敵が来たものだと察したのだろう。薄紅色の扇子を手に、うんと短く返事する。
「さて、あんまり見ちゃ良くないみたいだけど。発動条件なんだよね」
 外套を寄せて由紀は次第次第に近付いて来る白い影――UDCを注視する。しかし不可視の呪詛は彼には届かず、疑問の感情も強制されない。彼の魔を打ち破り、呪を耐える性質によって弾かれたのだ。
 くすんだ青い左目でUDCの姿を捉え、彼は一言、命ずるように言葉を発する。
「――止まれ」
 その一言を鍵としたかのように、堰を切ったように魔力が流れ出す。圧縮されていた目に見えぬ魔力は一直線にUDCの元へと殺到し、その身体へと纏わり付いて動きを封じた。
 ほんの数分に満たない、一時的な猶予時間。しかし、敵の致命的な隙を晒させ続けるには十二分な時間だ。
「花世」
「――咲いて、散って、咲いて」
 言葉に合わせて扇子を振るたび、端の方から解けるように牡丹の花びらと化していく。宙を舞う薄紅色の牡丹の花びらたちは、由紀の向けた魔力を辿るように、あるいは不穏な気配がざわめく方へと惹き寄せられるように向かって行く。
「――散らないでいて」
 不明の中なれど、花世の放った花びらたちは狙いを過つことなくUDCへと殺到し、身を斬り裂き押し潰す。
 花びらたちから伝わる気配がなくなると、花世は恐る恐る薄目を開けた。
「……もういなくなった? 大丈夫?」
「大丈夫みたいだよ。うまいことやってくれたね」
「やった!」
 跳ねんばかりに喜ぶ様は、まさしく往時の彼女だった。花に埋もれるUDCを一瞥して、由紀は言う。
「大きく外れたら、スイカ割りみたいに指示を出そうと思ってたけど。杞憂だったみたいだね。心眼、あったんじゃない?」
「君の魔力を辿ったからね。そこから先はわたしの実力だけど」
 どやっ、と胸を張ってみせる花世に、はいはい、と由紀は適当な返事を返す。
「……きみの作戦のお陰、だよ」
 戦場を後にする由紀の背中へ向けて、花世は一言感謝するように呟くと、その背に続いて自分も歩き出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パーム・アンテルシオ
深夜に、怪しい白い影。
まるで、おばけみたいだね。ふふふ。
…おばけの方が、まだ良かったのかな。
元を辿れば、だいたい人間なわけだし…なんて。

見てはいけないとか、疑問を持ってはいけないとか。
いかにも、この世界の妖怪…都市伝説らしい存在だね。
数を増やすっていうのも、厄介だけど…

ユーベルコード…極楽鳥火。
こっちも増やせるだけ、私はまだマシかな。
攻撃は、みんなにお任せ。
生き物であれば、燃えないなんて事は無いよね?

私は…瞬間移動に警戒。
前兆が見えたら、後ろに跳ぶ準備。
戦ってると、疑問が浮かぶっていうのが気にかかるけど…
行動は、端的に。決めた事をする。
迷わない為には、それが大事だよね。きっと。

【アドリブ歓迎】



「深夜に、怪しい白い影」
 まるでおばけみたいだね、と愉快そうに笑いながら、夜道を歩くのはパーム・アンテルシオだ。
「元は都市伝説……なんだっけ? おばけの方がまだ良かったのかな。元を辿れば、人が死んだ後なわけだし……」
 妖怪とかだったら、もしかすると仲良くなれるかもしれない。何せ自分は妖狐なのだ。似てはいないが
 なんて、と愚にもつかない思考を止めて、パームは歩を進めていく。
 しばし歩いていくと、街灯の下に白い影のような物が見えた。あれはなんだろう、という小さな疑問を得た時には、もう戦闘は始まっていた。
 一際激しくうねったかと思うと、遠間から白い影――UDCはその触手を伸ばして来る。それに対応するように、パームは九尾から“気”を放出し、それらを無数に分ける。
「――陽の下、火の下、燃える羽音を響かせよう」
 そこから生まれたのは、小さな鳥の形をした炎たちだ。一斉に羽ばたいたかと思うと、数羽は飛来する触手へその身をぶつけ、残りは全て敵の方へと殺到していく。
「燃えないなんてことは無いよね。さあ、攻撃はみんなに任せたよ!」
 燃え落ちる触手を見ながら、重心はやや後ろへ。特攻していく火鳥たちを見送る。
 火鳥たちは火の粉を散らしながら夜闇の中、まるで地表の流星群のように飛んでいく。それに対抗するように、触手たちも火鳥たちを打ち落とそうと触手を振り回す。火でできた鳥とはいえ、その強度はあまりに脆い。触手と火鳥が互いにぶつかり合い、その数を互いに減らしていく。
 このまま消耗戦になるか、と思われた瞬間の出来事だった。
 パームの周囲の景色が激変した。気付けば視線の先に無数の火鳥たちはおらず、UDCが目の前に立ちはだかっていた。
「やっぱり――っ!」
 敵に瞬間移動させられたのだ、と気付くよりも先に、パームの足はバックステップを踏んでいた。
 追い討ちするように伸びる触手。だが、パームはその背から温かさを感じていた。火の温かさだ。
 入れ替わるように火鳥たちがパームの横をすれ違う。追い討ちの触手へと火鳥の一匹が突っ込んでいき、身を挺してパームを庇った。
「……ありがとう」
 命があるのかどうかすら不確かな火鳥たちへ、一言だけ礼を述べて。
 直後、UDCへと火鳥たちが殺到し、火柱が立った。
 ぱちぱちと爆ぜる音と共に火の粉が舞い上がり、ほんの十数秒の間だけ、周囲の暗闇を明るく照らす。
「火葬ってわけじゃないけど」
 火種となるUDCの残骸が燃え尽きて、消えゆく焔を見送る。
「骸の海にちゃんと帰れるといいね」
 煌々と照らしていた炎がなくなるのを見届けて。パームはその場を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート


さーて、フリークスどもがぞろぞろと来やがったか
深夜なのも相まって中々にホラーナイトめいているが…
生憎、現実の方が怖いって散々思い知ってるんでな
まずは手近な現場から行くとしよう
レポートの内容は秒で叩きこんでおく

へぇ、強制転移か
普通なら厄介な能力ではあるが…
逆に言えば、「向こうから近づかせてくれる」ってことでもある
ユーベルコードを使用直前まで準備しておいて
予備動作であるクネクネを【見切り】
いざ飛ばされたらすぐさま【早業】で発動
【カウンター】のようにマイクロ波を投射するぜ
そうすりゃ動きを止められる
その隙にズバっとナイフで切裂いて、終いだ

そうすると分かっていれば対策も簡単だ
情報は武器だぜ?フリークス


アイリ・ガングール
【呪詛耐性】はもっておるからのう。そも殺す相手に疑問など抱かんやね。明鏡止水の境地で戦うよ。
 視界内に強制的に転移させて来るじゃったら【暗殺】技能使って寄って行くよ。他の仲間もおるし、その陰に隠れて近付こう。それで無理なら金狐霊糸使って【地形の利用】と【ジャンプ】で縦横無尽の機動力を駆使して近付いていこうやね。
 そいで新谷守・宗光の全力解放で斬りかかって行こう。UDCだのなんだの言うて所詮は妖物で骸の海より出でた過去の産物。さっさと過去にお帰り。



「さーて、フリークス(化物)どもがぞろぞろと来やがったか」
 ヴィクティム・ウィンターミュートはドローンのカメラ越しに白いUDCたちの姿を認めていた。その数は多く、どれも揺れ動いていることもあって総数を把握しづらい。
「深夜なのも相まって中々にホラーナイトめいてやがるぜ……」
 これがホラー映画であれば、この異形の行進を息を潜めてやり過ごすしかないのだろうが――。
「生憎、現実の方が怖いってのは散々思い知らされてるんでな。今からB級に落としてやるよ」
 青のゴーグルに映し出される景色をゴーグル主体に切り替える。夜中にあっても暗視機能によって、真昼のような明るい視界に変わった。
 画面上部。つまり彼の上の方から、触手が飛んで来る。
「いきなりご挨拶だな!」
 サイドステップでそれを回避。続く触手の薙ぎ払いも跳躍でもってしのぎ切る。遠距離からの攻撃であれば、ランニングハッカーであるヴィクティムならば持ち前の身体能力で避けることなど容易いことだ。
「……とはいえ」
 予想していたよりも敵の数が多いかもしれない。処理しきれないわけではないが、これは多少骨を折ることになりそうだ、とヴィクティムは冷静に戦況分析を始めていく。
「そらよっ!」
 飛来する触手の回避際に生体ナイフで切り裂くと、紙のような切り応えと共に触手が地に落ちる。
 ――ふと、焦れたようにUDCたちのくねり方が変化した。予感と同時に、ヴィクティムの左手は右腕のサイバーデッキ、フェアライト・チャリオットへと伸びる。
 一瞬の後に、ゴーグルに描画されていた景色が一瞬でぱっと移り変わった。
「来やがったか強制転移――!」
 UDCたちの持つ能力、強制転移。自分が移動するのではなく、敵を自分の場所に呼び寄せて来るそれは、普通であれば厄介な能力だ。だが、強制転移させられたヴィクティムに浮かぶ表情は、危機へ直面した焦りではなく好機を前にした勝負師の笑みがあった。
「俺の熱波(Heat Wave)を食らってみやがれ!」
 フェアライト・チャリオットから放たれたプログラムは攻性のもの。ニューロンへと直接マイクロ波を送り込むことによって熱暴走を起こさせるという代物だ。
 果たして、そのプログラムはUDCにも作用した。異常な熱暴走を引き起こしたUDCたちは見る間にその動きを鈍くさせていく。非殺傷性ながらもなかなかの範囲制圧力を発揮した。
 ヴィクティムに向かっていた触手攻撃も、その影響ですっかり無力化されてしまっている。
「情報は武器だぜ、フリークス。怪物ってのは人間に対策されて倒されるもんだ」
 一時的とはいえ、無力化できたのは敵の前衛のみ。マイクロ波の圏外にいた残る後衛はいまだに健在で、反撃とばかりにヴィクティムへと攻撃をする。彼は迷うこと無くあっさりと引き下がって、その攻撃を回避した。
「お膳立ては済んだぜ。さあ、主役の登場だ!」



 ――今から殺す相手に対して、疑問を抱くことなどない。
 アイリ・ガングールはそう思う。戦いに邪念は不要だという考えは、大昔に姫将軍だなんだと謳われていた頃から変わったことはない。今から殺してしまう相手に疑問を持ったところで、それが解決されることなど本当に稀なことだ。
「――嘗て汝は我が護国の徴であった」
 アイリはその身を夜闇に紛れさせ、UDCたちの群れへと近付いていく。
「――敵の血を以て輝きを増すその鋭さは我が理想」
 UDCたちを視界に捉えようとも、その呪詛は彼女には届かない。魔という魔を彼女の握る刀が破るから。呪詛という呪詛から、今はもうなき神社の御守りが彼女を守るから。 
「――例え冥府魔道に犯されようと、変わらぬ誓いを此処に示せ」
 冥門、開錠。アイリの有する精気を糧に、彼女の握る刀、新谷守・宗光の形状が変貌する。二尺余ほどの太刀は見る間にその刀身を伸ばし、三尺――いやさ、アイリの背丈にも達さんばかりの四尺ほどはあろうかという大太刀へと変化した。余人が見れば狐に化かされたかと目を疑うようなその光景の中で、アイリは大太刀を手に、足場にしていた電柱の上から跳躍する。
「これより屍山血河を拓くは黎明の如き我が一閃!」
 遥か夜の空高く、雲間より覗き見える月を背に。アイリは大太刀をUDCたちへと向けて振るう。
 剣閃、一条。
 地に降り立ったアイリが、大太刀に付いたUDCたちの残骸を血振るいの所作で払い落とす。それと同時に、彼女の目の前に立っていたはずのUDCたちの身体が真っ二つにズレて、地に落ちた。
「UDCだのなんだの言うて所詮は妖物で骸の海より出でた過去の産物。さっさと過去にお帰り」
 気付けば刀も元の太刀の姿へと戻っている。鞘へと納めて、吐息を一つ。煙管を口に咥える。
「お疲れさん。一網打尽だったな。ストリート・サムライみたいだったぜ」
「コココ、そっちが良い仕事をしてくれてたお陰で、みどももだいぶ楽をさせて貰ったよ」
 手を挙げて話し掛けて来るヴィクティムへ、いつも通りの笑みを返す。
 敵を惹きつけ、ヴィクティムが動きを止める。そこへ呪詛への耐性を持ったアイリが奇襲を仕掛け、一網打尽で仕留める――それが二人の筋書きだった。結果は予想通り。敵の数が予想よりも多いこともあって、戦果は上々である。
「さあて。老骨に鞭打って、まだまだ働くとしようかねえ。まだ音は上げていないだろうね?」
「勿論だ。まだまだいけるぜ」
 街も静まる闇夜の中。優しく照らす月の下。
 二人は街の中を歩いて行く。その闇に潜む、敵の影を見つけるために――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天命座・アリカ
証拠品探しの次は怪物退治かい?昨今の探偵はなんとも忙しい!
まあ、街の景観によくないからね!演出に口を挟もうか!

天才美女はちゃんとだね!予習復習欠かさない!
要は見なきゃいいんだろう?任せ給えよ天命座!
つまり、こうして!(頭のカチューシャをカポッと外す)
こうなのさ!(カチッと目の部分にセットする)
アリカちゃん!そなーーもーーーぅどぉ!!!
悪いが、劇中の君らは「モブ敵」だ!
単なる記号に意味はなく!何かをできない意義もなく!
そういうわけでリザレクト・オブリビオン!
騎士と蛇竜が前へと進む!単純明快な物語!
その剣その尾を振り回し!快進「劇」を始めよう!



 天命座・アリカは天才美女であるからして、予習復習を欠かさない。
 その証拠に、今回配布されたUDCレポートの敵の詳細情報についても目を通した。
 そしてそこから彼女が得た結論はただ一つ。
「要は見なきゃ良いんだろう? ご遠慮ください閲覧禁止! 任せ給えよ天命座!」
 ――実際のところ、見ないことによって防げるのは敵の感知と種を植えて来る攻撃なのだが。
 それはともかく、アリカは敵の姿を見ないという点を重視した。
「とはいえ見るなと言われると、見たくなるのが人間さ! 電子生命であろうとも、欲求というものには抗えない!」
 自分の特性であるだとか行動というものは概ね容易に想像がつく。天才美女は危険予測も得意であった。
「だからこうして!(スポっとカチューシャを外す) こうするよ!(カポっとカチューシャで目隠しをする)」
 これこそアリカが考え抜いた対策の一つ。カチューシャをバイザーサングラス代わりにすることで物理的に視界を塞ぐことであった!
「アリカちゃん! そな――も――ぅどぉ!!」
 なんだかVR機器を取り付けているようだね、とのたもう彼女はどことなくその状況を楽しんではしゃいでいるような節さえあった。
「さあさあいざいざ出陣だ! これより始まる天才美女の大活――」
 ごっ、と。
 鈍い音を立てて、アリカは電信柱に頭をぶつける。特に工夫もなく視界を塞ぐのはやめよう。早々にちょっと反省するアリカだった。



「それでも天才美女はへこたれない! 失敗を活かして立ち上がる!」
 夜の街、相も変わらずカチューシャをバイザー代わりにするアリカの手を引くのは、ユーベルコードによって呼び出された死霊騎士と死霊蛇竜である。互いに周囲を警戒しながら進んでいくと、死霊騎士は敵影を認めて立ち止まった。
「おっと敵だねエネミーだ! けれど悪いね君たちの、劇の役目は“モブ敵”さ!」
 手を離し、死霊騎士と死霊蛇竜が前へ出る。睨み合いは数秒のこと。死霊蛇竜が最初に動いた。
「単なる記号に意味はなく! 何かをできない意義もなく!」
 迎撃の触手がUDCから伸びて、蛇竜と触手が互いに互いを絡め合う。それを好機と見て取った死霊騎士が飛び掛かった。
「騎士と蛇竜が手を組んで、前へ進むよどこまでも! 単純明快ストーリー!」
 蛇竜が惹きつけ、騎士が切る。その剣を、その尾を振り回してUDCへ立ち向かって行く。
 そして、彼らの倒したUDCの先に立ちはだかるのは――同じUDCの群れである。
「――さあ、快進“劇”を始めよう! この敵を倒した先にこそ、我らの望む“道”がある!」

成功 🔵​🔵​🔴​

リチャード・チェイス

「疑問に思うことは知的好奇心の発揮として、実に賞嘆されるべきことである。
それは己の無知を認める勇気ある行動であり、人としての器を大きくする。
だが裏を返せば、所詮人は己の知る事しか知らぬという現実が存在している。
即ち、世界とは限りなく広いという事である」

市街地をそれゆけ!ペドロ・ロペス君で走り抜ける。
くねくねの側を通過するとき、歩行者なのでちゃんと徐行します。

「つまり、疑問を疑問を足らしめているのは己自身である。
世界からすれば疑問足りえる物は存在しない。
そう思えば疑問など持ちようがないのである」
ポチッとな。

「以前、我が主は棒人間も見たことあると言っていた。これも似たようなものである」



「疑問に思うことは知的好奇心の発露として、実に賞嘆されるべきことである」
 リチャード・チェイスは市街地を駆け巡っていた。トナカイ――実際はチョッパーカスタムされたハーレーなのだが、彼は頑なにペドロ・ロペス君という名のトナカイであると主張していた――に乗って走り抜ける彼は今、まさしく一陣の風と化していた。
「それは己の無知を認める勇気ある行動であり、人としての器を大きくする。だが裏を返せば、所詮人は己の知る事しか知らぬという現実が存在している。即ち、世界とは限りなく広いという事である」
 彼の長広舌は聞き手がいないにも関わらず今日も今日とて絶好調である。
「世界は広く人の知ることには限界がある。つまり、疑問を疑問を足らしめている原因は己自身の不明である。世界からすれば疑問足りえる物は存在しない」
 強風の如き速度は次第に交通安全を守ったそよ風ほどの徐行となる。歩行者の近くでは徐行して通過するのが交通マナーだ。たとえその歩行者というのが、都市伝説型のUDCであったとしても!
 あまりにもスッと自然に通過しようとしたリチャードを咎めるように触手でその進路を塞ぐ。リチャードも仕方あるまいとばかりにトナカイをアイドリング状態にして一時停止した。
「我々が抱く疑問など世界にとっては矮小極まりない。そう思えば疑問など持ちようが無いのである。我々の疑問とは世界の当然であるのだから。わかるかね?」
『~~~~~~……』
 いやわかるかねとか聞かれましても、と困惑するようにUDCはその身をくねらせる。UDCもUDCでリチャードの勢いに色々と呑まれて攻撃を忘れてしまっていた。
「では具体例を挙げよう。ある特殊な学校でのことだが、そこには棒人間が通っていた。棒人間という名前だとかではなくガチでビジュアルが棒人間なのである。これがなかなかの好漢であってガールフレンドさえ作っていたのだが、これもまた似たようなものである。理解が及ばないがゆえに疑問を抱くのは我らの不明。この疑問を『まあそういうもんなんやろな』と受け入れることによって、我々は疑問を超克することができるのである」
 なるほど、とUDCが右に触手を傾げ、なるほど? と左に傾ぐ。完全にリチャードのペースに乗せられて、その話術で言い包められてしまった形だ。
「それでは、私はこれにて失礼するのである」
『?????????』
 あまりの情報量の多さと意味不明さによって、むしろ自分の方が疑問符を上げまくっているUDCを尻目に、リチャードはトナカイのエンジンをかけて再び走り始める。
 後に残されたのは、インパラ――実際サイドカーなのだが、リチャードはこれをエド・ゲイン君なるインパラと強く主張していた――が一台のみである。
「ポチッとな」
 爆発。サイドカーもといインパラが突如としてUDCを巻き込んで爆発する。
 爆風を背中に感じながら、リチャードは町中を駆け巡るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トルメンタ・アンゲルス
◎◎◎

危険性は高く、増殖するので完全消去が好ましい、ですか。
やれ、仕方ないですね。
全力で走りましょうか!

行くぞ相棒!
変身!
『MaximumEngine――Mode:HotHatch』

アクセルユニゾンを使用し、防御力重視の装甲として変身合体!
ダッシュからのハイスピードで向かいますよ!
……とはいえ地上ですからね、被害の出ないスピードで行きますよ。

呪詛への耐性はある程度ありますが、
それでも目の前に急に現れたり触手を飛ばして来たら、
咄嗟の一撃の奮撃のブリッツガストで消し飛ばしますよ。

ですが、こう増えると面倒ですね。
OverClock、始動!
直る間も、増やす間も与えない!
一気に全て、同時に蹴り穿つ!



 敵がどのような手合いであれ、トルメンタ・アンゲルスのやることはただ一つである。
「行くぞ相棒! 変身!」
『MaximumEngine――Mode:HotHatch』
 ――ただ、全力で走る。
 状況によって枝葉末節は違えど、根幹はそれで全て共通している。
 他のあらゆる何者よりも早く、速く、疾く走る。走って走って走り続ければ敵の攻撃は当たらない。敵をより迅速に打ち倒せる。そうすれば、自分は何も喪わない。
「――見えたッ!」
 疾走し目まぐるしく変わる街の風景の中で、目の前に白い影の群れが確かにいた。UDCたちだ。
 気付いてはいるのだろう。触手を動かしていないのは、トルメンタの纏う装甲があらゆる呪詛を弾いているのが一つ。
 もうひとつが――遅いのだ、単純に。
 戦う者たちがそれぞれ持つ能力とは世界である。彼らはそれぞれの世界を持っている。自分の有する世界をぶつけ合い、その強さを知らしめる。
 その意味合いでは、トルメンタの持つ世界とは間違いなく“速さ”であった。そして、その世界は生半な物では否定できないほどに強かった。
「たとえあなたが触手で攻撃しようともォ!」
 一際強く踏み込んで跳躍すると彼女は目にも留まらぬ速さで、“ようやく”敵が構え始めた触手を即座に蹴り抜いた。
 着地と同時にまた跳躍し、蹴撃を繰り返す。敵は速度に翻弄されて、ロクに反撃もできていない。トルメンタ・アンゲルスとまともに戦うことを望むなら、まず線ないしは面で制圧できる攻撃手段、そしてそれを十全に使うタイミングに恵まれるための反射神経などが求められる。あるいは、このUDCたちの放つ疑問強制の呪詛が物理的危害を咥えるものだったならば、攻撃を“当てること自体は”できただろうが。それも彼女の身に纏う装甲が阻む。
 つまり――このUDCたちがトルメンタに抗する手段は無かった。
「最後の仕上げと参りましょう!」
『TurboBoost Over――Acceleration』
 ベルトが音声を発した次の瞬間には、全てが終わっていた。
 時間流さえも超えんばかりの超高速で動くトルメンタによって、UDCたちが蹴り穿たれる。一陣の暴風が周囲の空気を大きく揺るがした後、UDCたちは黒い塵となって還って行った。
「再生する、増殖する、攻撃して来る――。そんなもの、速さの前ではあってないようなものですよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『緑の王』

POW   :    暴食
【決して満たされぬ飢餓 】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【辺り一帯を黒く煮え滾る消化液の泥沼】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    巡り
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【消化液 】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    慈悲深く
【激しい咆哮 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は多々羅・赤銅です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 一度喪ったら、二度と同じものは戻らない。
 緑の王はそれを充分に弁えていた。己の両脚を、消化器を喪い、それを地獄で覆い変えたからこそ、それを知っていた。
 ゆえに、この果てなき飢餓感は危険なものだと自覚していた。どれだけ食べ物を、緑を食んだところで、喪った消化器は「もっと食え、喰らい尽くせ」と飢渇を訴え続ける。
 それではだめだ。緑の王は食物連鎖の頂点であるがゆえに、尽きせぬ飢餓のままに喰らい尽くせば後には何も残らない。自然環境の理を守る者として、守護すべきものを己が手によって壊してはならない。森の秩序は己よりもずっと弱くて、遥かに脆い。だから腹に収める食物は、緑は、最低限にするべきだ。たとえこの飢餓感が食物の代わりに己が理性を喰らい、蝕むとしても。王は強くて、自然は弱いのだから己を犠牲にしたとしても守りきらねばならない。
 「二度と同じものは戻らない」という理性は「喰らい尽くせ」と訴える破壊的な飢餓感によって蝕まれる。「弱きは護るべきである」とする王の誓いが摩耗するのは、そう遅くないことだった。
 そもそも、矛盾していることなのだ。
 彼女は強大な力で森の頂点に君臨する王者であり、自然環境の理の守護者だ。
 理の守護者が「護るべきだ」と不食を掲げ、食物連鎖というごく単純な自然環境の法則に逆らっている。それは最初から歯車が噛み合っていない。永く続くわけがない。
 一度破綻してしまえば、飢餓を止める者はない。
 そうして食らって食らって喰らい尽くして――。
 気付けば、孤高の王は孤独な害獣に成り果てていた。
 

――――――――――
――――――
――……


========UDC Report========

●UDC No.:■■■■■■■■■
●Class:■■■■■■■■■
●説明
 ■■■■■■■■■、通称「緑の王」は半人半獣の生物です。鹿の首から上の部分が、人間の上半身に置換された■■■姿をしています。
 外見は女の■■ですが、■■イラのように王を象徴する大きな角を有して■■■。全身に傷跡や縫合跡があり、痩せ■■であることが特徴です。
 過去の顕現での観測から、戦闘力が高く凶暴で危険性が高いことが知られています。■■次第、戦闘■■によって■■な排除が推奨■■■■。
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。


●指令
 3966号事件において、邪神降臨の儀式が確認されています。現地の猟兵たちの奮闘によって、儀式に用いられた「ヘラジカの角破片」は回収されたため、顕現は不完全なものとして成立したものと思われます。
 時刻は明け方。天気は晴れ。場所は街の郊外に位置する森林にある、小さな社。街は引き続き完全な戒厳令下におかれています。猟兵たちは「緑の王」討伐に向かって下さい。
 UDC職員は儀式を行ったと思われる邪教徒や被洗脳者を制圧しています。また現地の猟兵たちが「くねくね」を排除したため、他勢力による介入の可能性はありません。
 以下は今回の顕現における敵の戦闘情報です。

・緑の王は肉弾戦に長けており、また植物を利用した攻撃を得意としています。
・緑の王は周囲の地形を変質させる能力を持ちます。黒い消化液が泥濘のように地形から湧き出し、攻撃を行ってきます。
・緑の王が座り込んだ状態では、ユーベルコードが無効化されます。無効化されたユーベルコードは、再現に伴う多少の変質を経て地形から湧き出した消化液から排出されます。
・緑の王が放つ激しい咆哮は戦場を無差別的に襲います。これを耳にした者は一時的に身体能力に悪影響が出ます。過去の記録では、喉や肺を破壊しても阻害・中断ができませんでした。

========UDC Report========

●MSより
プレイング受付:5/7(火)8:30より開始
八坂・操
◎【SPD】

自然崇拝の種は摘まれ、歪んだ枝葉は剪定され、最後に残ったのは小さく実った破滅の果実……うん、映画の煽り文句としちゃあ上出来な感じだね♪
……さ、収穫の時間だ。

まずは【影の煩い】でもう一人の操ちゃんを呼ぼっか♪ 肉弾戦に長けてるなら、人数の多い方が良いもんね☆
「おっはよー王サマ♪」
「寝起きの気分はどーかな?」
「「なーんてね☆」」
『忍び足』で『目立たない』よう近付いて、お互いに『フェイント』を交えて『だまし討ち』だ! 『逃げ足』も駆使して一撃離脱を心がけるよ♪
王サマが座り込んだら、もう一人の操ちゃんを突撃させて、取り込ませる寸前で操ちゃんごと『串刺し』貫手だ♪
「どうぞ王サマ、お手を拝借」



 月明かりは沈み始め、陽が昇り始める払暁の頃。ひやりと冷たい風が舞い、木々がざわめく。申し訳程度に添えられた街灯が、じぃ、じぃ、と明滅する。
 ここは仄暗い森の中、朽ちた社の前。
 緑の王はそこに座していた。茫洋とした目ははっきりと物を捉えず、それでいて瞳の緑色だけがやけに薄暗闇の中ではっきりと見えている。
「自然崇拝の種は摘まれ、歪んだ枝葉は剪定され、最後に残ったのは小さく実った破滅の果実……」
 ざぁ、と颶風がその場を薙いだ。夏にはまだ早すぎる白いワンピースを揺らしながら、歩いて来たのは八坂・操だ。
「……うん、映画の煽り文句としちゃ上出来な感じだね♪」
 常通りの笑顔で、上機嫌に呟きながら操は目の前にいる緑の王と対峙する。
 ひゅ、と。冷たい風と共に彼女が手にしたのは飾り気のない短刀だ。
「……さ、収穫の時間だ」
 その一言だけは、底冷えするほど静かに響き。
 次の瞬間、操は駆けていた。
「おっはよー王サマ♪」
 飛びかかりながらの『ご挨拶』。緑の王の脳天めがけて操はドスを振り下ろす。
 硬質な音が響いて短刀が弾かれる。王は頭を振って、その大角でもって弾き返したのだ。
 それでいい。
『寝起きの気分はどーかな?』
 操の影から現れ出たのは、小柄な“操”だった。彼女もまた短刀を持ち、逆手に持って刺突を繰り出す。
 王は右手を伸ばして、その刃を握って受け止めた。
「……はらがへった」
 王が腕を振り上げると同時に、握っていた短刀ごと小柄な体躯が宙を舞う。
『うわわわわぁっ!?』
「危ない、操ちゃん!」
 投げ出されたもう一人の自分を助けようと、操が身を乗り出す。
 暗闇の中に舞う白が二つ――否、四つ。

「『なーんてね☆』」

 白いワンピースを翻し、二人は白刃を閃かせる。救助すると見せかけた操はそのままドスを突き立てて。投げ出された操は身軽に着地し短刀を振り降ろす。
 手応え。ぞぶり、ぞぶりと緑の王へと刃が刺さる。刃がその肌を切り裂く。その手応えは、いずれも驚くほどに硬い。
「かったぁーい☆」
『全然効いてる気がしなーい♪』
 場違いに、おかしそうに嗤いながら。煩わしそうに振るわれた王の右手の薙ぎ払いをバックステップで二人は避ける。ごう、と薙ぎ払いが来た後に、風圧が二人の頬を撫でた。
『さすがは邪神って感じだね♪ これで大きかったらハリウッドみたい☆』
「それならプランB! レッツ操ちゃんGO!」
 小柄な操が前に立ち、徒手空拳で躍り出る。今度は騙し討ちも虚実の駆け引きも無い真正面からの突撃だ。座したままの緑の王は拳を握って振り被り、迎撃の姿勢に入る。
『真正面から真っ向勝負!』
 拳を突き出す小柄な操。その小さな腹へとみしり、と緑の王の拳が突き刺さる。ごぼ、と赤い水音が少女の口から漏れ出た。拳は腹の中ほどまで埋まっていて――少女は緑の王の腕を、捉えていた。
「――そんなこと、すると思った?」
 唐突に、小柄な操の白いワンピースから、赤と腕が生えて来る。血と、それから――大柄な方の操の手。 
 少女の背中を貫通させて、操は貫手でもって腹に埋まっていた緑の王の右手を掴み取る。
「どうぞ王サマ、お手を拝借」
 そのまま握った手を強く引き、もう片手で貫手を放つ。ぞぶりと、硬い肉を掻き分ける感触があった。
 ああ、けれど。王を殺すにはまだ足りぬ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ペル・エンフィールド
自然の世界は弱肉強食、それが私たち獣の本能のはずなのです
何を堪える必要があるですか?
弱きを護る?今の貴方に護るものたちなんていないのに?
喰らいたいままに喰らう
それが本来の私達のあるべき姿のはずなのに……

…互いに命をかけているからこそ本当の狩りになるのです
だからペルも命を懸けるですよ

名乗りはしない、これは私情の一撃なのです
ですがストラス…力を貸して……

超加速からストラスの大爪の一撃を真っ正面から消化液をも燃やす地獄の炎の蹴りを全力で叩き込む

全力で狩りに行く、それが、森から逃げたペルが示せる王であろうとした者へのせめてもの礼儀なのです



 自然界とは即ち弱肉強食。弱き者が強き者に食われる食物連鎖のピラミッドだ。
 ペル・エンフィールドは少なくとも自分たち獣の本能をそのように理解していた。
「何を堪える必要があったのですか?」
 翼を羽ばたかせながら、ペルは上空から緑の王を見下ろす。
「喰らいたいままに喰らう。それが私達の本来あるべき姿のはずなのに……」
 なぜ弱きを護る? 思うままに喰らえば良い。喰らえぬ程に喰らい尽くして、そして次なる強者の肉となれば良い。それになぜわざわざ抗った?
 答えはない。わからない。
 ペルは森で生まれ、森で育った。狩りを繰り返してその日を凌ぐ野生児と言って良いような暮らしをしてきた。それゆえに視野が狭く、王としての責務など理解するべくもなかった。
「……互いに命を懸けているからこそ、本当の狩りになるのです」
 白骨化し、包帯が巻かれた緑の王の前脚を見て、ペルは表情を硬くする。連想するのはまだ森で暮らしていた頃。竜のオブリビオンに、自分の両脚を食い千切られた時のこと。
 狩りとは一方的なものではない。命のやり取りだ。狩られる側が負ければ死ぬのは当然のこと。狩る側が返り討ちに遭ってもまた命を落とす。それこそが自然界の宿命だ。
「だから、ペルも命を懸けるですよ」
 決意の言葉と共に、ペルは羽ばたいた。高度を上げて、更に上空へ。混血のハーピィが薄暗闇の中を舞う。きらりと金色の瞳と鋼の鉤爪が煌めいた。
「ナンバーズとして、名乗りはしません」
 結社の一員、ナンバーズの名乗り上げ。誇りを賭けた討伐の誓い。王を前にして、大物の獲物を前にして、しかしペルはそれが不要なものだと断ずる。
「これは私情の一撃なのです」
 ナンバーズとしてではなく。ただ、森で生まれ、森で暮らして来たペル・エンフィールドとして。今、ここで“狩り”をするのだ。
「ですがストラス、力を貸して……」
 “ストラスの大爪”が応えるように炎を噴き上げる。地獄の炎は薄暗闇の中にあって仄暗く、けれど闇の中を煌々と照らしていた。
 脚を天へと向けて、ペルは自由落下に身を任せる。

「刻器、神撃――!」

 言葉と共に、地獄の炎が脚を覆った。ジェット噴射のように炎が荒れ狂い、ペルの急降下を加速させる。

ミニットハンド・ナイン
「 長 針 の Ⅸ !」

 天を向いていたストラスの大爪が大気操作の力によって地へ向かう。
 高空から放たれ超加速を得て炎を纏ったヒールドロップだ。払暁の中にあって、地上の流星の如き一撃が地へ墜ちる。
 衝撃。静かだった黎明の森に轟音が響き渡る。地獄の炎が周囲から湧き出す消化液すらも沸騰させ、蒸発させる。
 全力、全開の狩猟。
 それが森から逃げたペルが示すことのできる、森の王であろうとした者へのせめてもの礼儀だった。
「どちらが狩って、どちらが狩られるのか。雌雄を決するですよ……!」

成功 🔵​🔵​🔴​

パーム・アンテルシオ
孤独な王は、いつかその座から降ろされる。
自分の座す玉座すらも食べ尽くして。
あるいは…
仕えるものたちの、反乱によって。

ユーベルコード…金盞火。
喰らいつけ。焼き尽くせ。
肉片ひとつ食いちぎること。一匹が出来る事は、それだけでいい。
喰い付いた子が喰われても、次の子が。
その子が喰われても、さらに次の子が。
食い破り続ければ、いつかはその身も喰われ果てる。

喰い続けた者が、いつか喰われるのは、自然の摂理。
今ここで、小さな摂理の輪を見出そう。
この子たちは、紛い物の命かもしれないけど。
ここで作れるのは、幻想の理かもしれないけど。
あなたは、たしかに、自然の中に埋もれるんだ。
弱い者の、食物連鎖の中に。

【アドリブ歓迎】



 怪異の女が臓腑へ届く一撃を加え。混血のハーピィが焔の一撃を与え。
 しかし、緑の王は立っていた。決して軽い傷では無いというのにも関わらず。
「孤独な王は、いつかその座から降ろされる」
 森の薄暗闇の中で、ぼう、と桃色の焔が舞った。狐火だ。揺れる狐火は数を増やして、小さな妖狐の姿を照らしてみせる。パーム・アンテルシオだ。
「自分の座す玉座すらも食べ尽くして。あるいは――仕えるものたちの反乱によって」
 それはUDCレポートや予知の情報から得られたことから予測されたもの。全てを喰らい尽くして、結局飢餓の中で死んだか。あるいは危機感を覚えた森の動物たちに殺されたか。
「喰い続けた者がいつか喰われるのは自然の摂理」
 それは誰しもが知るこの世の理。皆誰しもがいつかは朽ち果てる。動物に、魚に、鳥に、虫に――大地に、いつかは喰われる。
「今ここで、小さな摂理の輪を見出そう」
 パームの操っていた桃色の狐火たちが集まり、形を変え、地に足を付ける。
 それは狼。200に届かんばかりの炎を纏った狼たちの大きな群れと化す。
「喰らいつけ!」
 パームの一言を引き金にしたように、狼たちが弾丸の如く緑の王へと駆けて行く。
 向かって来る狼の群れへと、王は両手を広げる。その様はまるで歓迎するかのようだ。――その背後から、無数の蔦が見えなければ。
 狼の群れと無数の蔦がぶつかり合う。
「焼き尽くせ!」
 言葉に応じるように、狼の纏う焔が火勢を増した。炎の舌が蔦を舐め取り、燃え移る。蔦の壁は炎によって食い破られ、突破口から無事な狼たちが雪崩れ込む。王へと殺到し、その身体へと牙を突き立てる。
 肉食獣に食らいつかれ、体当たりされて、緑の王が膝を屈する。
「肉片ひとつ食いちぎること。一匹が出来る事は、それだけでいい。喰い付いた子が喰われても、次の子が。その子が喰われても、さらに次の子が。――食い破り続ければ、いつかはその身も喰われ果てる」
 皮肉な光景だった。独りで全てを食らい付くした王が、今群れによって喰らわれようとしている。だが、それが自然の摂理。当たり前のこと。いくら強大な個であろうとも、数の前では屈せざるを得ない。
「この子たちは、紛い物の命かもしれないけど。ここで作れるのは、幻想の理かもしれないけど」
 呟きながら、狼たちの群れに埋もれた王を見る。
 焔の狼たちを呼び出す術――【金盞火】。名前の元となった花へ贈られた言葉は『悲嘆』、『寂しさ』、『暗い悲しみ』。
 孤独な害獣に成り果てた緑の王の現状を表現するものとしては、それはきっとこの上ないものだろう。
「――あなたは、たしかに、自然の中に埋もれるんだ。弱い者の、食物連鎖の中に」
 だからもう、そのまま倒れてくれ。ここでまた同じ暴食を繰り返すことは、きっとまだ理性のあった頃の“王”が望んでいないだろうから。
 ――しかし、けれども。
「――――ウ"ゥルルォ"お"オ"オ"アア"ァ"!!!!」
 王は膝を屈しながらも、けれど斃れてはいなかった。
 腹の底から喉を突き抜け脳天へ達し、空気を貫き大地を揺さぶる咆哮が、狼の群れを掻き消してしまう。それは獣の本能を呼び覚ます王の勅令。誰しもが持つ“畏怖”を思い出させる王の御稜威。
「……まだ、戦うと言うんだね」
 咆哮の直後、静まりを取り戻した森の中で。パームの声が、ただ悲しげに冷たい空気を揺らした。

成功 🔵​🔵​🔴​

白鐘・耀

同行:ロク・ザイオン(f01377)

むう。だいぶ厄介そうね
不完全な顕現でこれってのが……ま、やるしかないか

肉弾戦に長けてるってんだから小技は通用しなさそうね
ねえ、ロクちゃんってあいつと戦ったことある?
なら私たちとあいつの「運命の糸」は強く結びついてるはず!
てなわけで【運命予報】……ふーん、なるほど
「攻撃を無効化され消化液で斃される」、か。ならあえて乗ろうじゃない

〈第六感〉で攻撃を回避し接近、視えた光景通りに蹴り飛ばすわ
反撃を甘んじて喰らいつつ、敵の頭を掴み首を晒させる
ようは斃れる前に斃す。これが"運命を変える"ってこと、よ!

(ロクの言葉には笑い)
大丈夫、あなたが守ってくれたからオッケーよ!


ロク・ザイオン

白鐘・耀(f10774)と

(ここにもまた、痩せ衰えた王が
森の為に、病んだ王がいた)
(王の首を刎ねよう。それが、仕事だ)

戦ったこと、あるけど…
耀!!

(突っ込んでいく耀に肝を冷やす。
烙印刀、剣鉈《閃煌》の二刀を構え
【野生の勘】で攻撃察知、【地形利用、ダッシュ、ジャンプ】で回避しながら耀に追随
耀への攻撃は極力【かばう】)

(これ以上耀が傷付く前に。
最速で一直線に「燹咬」で首を断つ)


助かった。ありがと。…だけど、
(この王ではない王の前で。怪我した自分を叱った烏も、こんな気持ちだったんだろう。
キミが怪我をしているなら、光で癒やしながら)
耀。
キミの未来も、守ってくれ。



 王の咆哮が、森を揺らした。薄暗闇の中で、黒い緑がざあ、と揺れる。
「ここにも」
 ざらりとした声で、ロク・ザイオンが呟く。緑の王が発する咆哮。これで聞くのは二度目になるか。その激しさの裏には、王の護ろうとしてきたものたちへの慈悲深さが隠れているように思えた。
 ――ここにもまた、痩せ衰えた王がいた。森のために狂い、病んだ王がいた。
 ロクは大鉈を握り締める。
 緑の王。自然の支配者の、成れの果て。暴食の化身。
 森番の役目を、ロクはよく理解していた。
 ――王の首を刎ねよう。それが、仕事だ。
 以前そうしたように、そうするべきだろう。ちゃんと、土にしてやるべきだろう。
「不完全な顕現でこれって……だいぶ厄介そうね。これは小技も通用しなさそう」
 咆哮によって脳を揺らされた白鐘・耀は顔をしかめながらも、けれどすぐに余裕のある不敵な笑みをいつも通りに浮かべてみせる。
「……ま、やるしかないか。ねえ、ロクちゃんってあいつと戦ったことはある?」
 呼びかけられたロクは、赤毛を揺らして小さく頷きを返す。
「戦ったこと、あるけど」
 過去、とある雪山でロクは緑の王と戦っていた。鳥の亡骸を踏み締めて、互いに咆哮を上げながら戦って、王の喉を斬り裂いた。百聞は一見に如かず、百見は一験に如かず。その経験はいかにも貴重なものだろう。
「それなら私たちとあいつで『運命の糸』が強く結び付いているはずね!」
 “運命の糸”。あるいは“縁”。巡り合わせ、あるいは繋がりを意味するそれで繋がっていれば、耀はその真価を発揮できる。
 彼女は一時、目を閉じる。瞼の裏に浮かび上がるのは連続した光景だ。接近した耀が蹴撃を放ち、反撃を喰らい。果てには、攻撃を無効化されて消化液によって斃される。それらの情報が一瞬の内に耀へと伝えられて行く。これから起きる未来、これから辿る運命を知る術――【運命予報】。
「……ふーん、なるほど。なら敢えて乗ろうじゃない」
 不敵な笑みをそのままに、耀はその足を前へと進めた。
「耀!!」
 ロクにしては珍しく、大きな声を上げて制止しようとするが遅い。止まる様子もなく耀は先へ駆けて行く。ロクは二刀の鉈を構えて彼女を追った。
「全部、観えて、いたんだからっ!」 
 果たして敵の攻撃は“予報”の通りに来た。耀はそれを自然体で――つまり運命予報の通りに避ける。伸びる蔦を躱し、除けて、あるいは追随してくるロクが切り払い、庇い――緑の王へと肉薄する。
「食らいなさいッ!」
 助走を載せた飛び蹴りを放つ。角の一振りによって薙ぎ払われる。ここまではすべて“運命”通り。
 しかし、ここから先は“予報”に無い“予定外”だ。
「ねえ、あんた」
 吹き飛ばされそうになるのを踏み止まり、耀は緑の王の大角を――誇り高き王冠を掴む。

「――運命って、変えられると思う?」

 王の首をそのままへし折らんばかりに耀はその王冠へと全体重を加える。頭が大きく傾ぎ、縫合痕の残る浅黒い首筋が露わになった。
 そしてその首筋へと襲い掛かるのは、二刀を構えたロクである。

「る゛ぉ゛お゛お゛お゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!」

 千載一遇の好機。それを物にするために最速で、一直線に、首を断ち切りに向かう。獣の如き咆哮を上げながら、赤熱する鉈を必殺必中を企図して振るう。
 ――だが、この運命の変更は些か強引に過ぎた。
 一点だけ誤算があった。彼女たちは持てる手札を全て使い果たしていたがゆえに、あるいは不可抗力と言うべきか。
 緑の王の膂力の前に、耀の体重は余りにも“可憐”に過ぎたのだ。

「オ゙オ゙オ゙オ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッッ!!!!!!」
 
 咆哮と共に、緑の王の大角が耀ごと振り回される。遮二無二腕が振り回される。
「――――ッ!?」
 必中必殺を意図した斬撃の先。首が刃の前から失せて、代わりに王の左腕が現れる。
 ぞん、と。まるで唐竹割りに石を割り落としたかのような手応えと共に、王の左腕から先が地に落ち、黒い灰と化した。
 だが、追撃ならば。握る二刀の内、もう片方を――ロクは手放した。追撃を諦めた。その代わり、空いた手は空中へと放り投げられた耀へと向かう。
 どさり、と大きな音を立てて、ロクは耀を受け止める。
「耀、耀。……だいじょうぶか?」
「あいたたた……。うん、大丈夫。あなたが受け止めてくれたから、オッケーよ」
「よかった……」
 やすりのようなざらついた声でありながら、安堵の溜息をロクは漏らす。
 以前緑の王と対決した時に負傷した自分を叱ったあのヤドリガミの気持ちが、今のロクになら理解できた。あの時の自分は、今の耀のように突っ込んで行って彼を心配をさせていた。
「……すまない。運命、変えそこねた」
 王手にまで手をかけて、しかし至らなかった。ロクは追撃ではなく耀を助けるという選択を取った。それでも、どこか心の中で歯がゆさのようなものを感じる。あとひとつ、歯車がどこかで噛み合っていれば。森の王をこの手でまた土に還してやることができたのに。
「大丈夫、ちゃんと変わったわ」
 しかし、平時のように耀は快活に笑顔を返す。最悪のデッドエンドからベターな結果にまで持ち込めたのだ。たとえ王手を逃したとしても――
「――まだ、王への攻撃は続いているわ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

冴木・蜜


喪ったら、二度と戻らない
…私には重すぎる言葉ですね

貴方がそれ以上森の秩序を壊さぬように
その誓いを穢さぬように
幕を引きましょう

注射器を取り出し己を『偽薬』で強化
限界を超えて毒を濃縮

その上で身体を液状化
目立たなさを活かし煮え滾る消化液に紛れる形で
緑の王の背後に回り機を待ちます
消化液も広義では毒
ならば私に効く道理はない

注意が逸れている間に
その露出した首に毒蜜の手を掛け
私の毒腕で全て融かしてみせましょう
貴方が緑の王であるならば
私はただ――触れるだけで良い

願わくば
苦しみもない眠るような最期を

さあ
目を閉じて
私の毒に溺れて 眠ってください

この終わりが貴方にとって救いとなりますように



 喪ったら、二度と戻らない。
 その言葉は冴木・蜜にとってあまりにも重すぎた。彼が喪わせる側のモノであるがゆえに。
「毒は薬に、薬は毒に」
 毒も薬も、程度と加減が違うだけで同源であるという事実は有名だ。だからこそ、一匙に満たぬほどの匙加減を一度誤るだけで――薬は毒へと変貌し、取り返しのつかない喪失を引き起こす“害”となった。
 緑の王も同じだと、蜜は感覚として理解していた。王は自分と同じ“過ぎた”存在だ。秩序を守るため、弱きを護るために強過ぎた。本来食物連鎖の成立に寄与するはずの食欲が過ぎた。だから、王は“害”獣になった。
「貴方がそれ以上森の秩序を壊さぬように。その誓いを穢さぬように」
 シリンダを取り出し、己へ注射する。投与されたのは決して有益な薬ではなく、むしろ【偽薬】。死毒、麻酔、混酸。毒物によって、毒たるその身を強化する。
「――幕を引きましょう」
 身が引き絞られるかのような感覚と共に、体内の毒が限界を超えて濃縮された。毒は全身を支配し、蜜の身体を液状化した。
 毒液と化した蜜はその身を這わせて、煮え滾る消化液へと身を投じる。痛くはない。痛みには慣れているから。毒も問題ないだろう。かのパラケルススが「すべての物質は有害である」と唱えていた通り、広義で言えばこの消化液もまた毒液。であらばより強い毒である蜜に効く道理はなかった。

 消化液の中で、蜜は二人の少女が疾駆する様を見ていた。片方の少女が角へとしがみつくことで無理矢理に王に隙を作り出させる。が、目論見通りとはいかず、左腕を斬り落とすのみに留まる。
 ならば、次は自分の番だ。
 消化液より這い出た黒い液体が人の腕を形作る。黒い腕が、いまだに気付いていない緑の王の首筋まで伸ばされて、掴んだ。
「私の毒腕で全て融かしてみせましょう」
 人の形を形成しながら、蜜は王の首筋へ指を食い込ませる。元々浅黒かった王の肌が黒ずんでいく。
 自分が毒物であり、緑の王が獣であるならば。この毒は必ず王を仕留められる。蜜はそう考えていた。それゆえに、彼はただその首筋に触れているだけで。緑の王に毒を与えるだけで良い。
「どうか、私の毒に溺れてください。この終わりが貴方にとっての救いとなるように、どうか目を閉じて眠って下さい」
 害なすものならば。せめて眠りに就かさなければ。祈るように、懇願するように、蜜は指を喉へと食い込ませる。黒ずみは広がっていく。
 ――しかし、それは途中で止まった。
「ヴ、ゥ――――」
 毒に冒され、指が食い込んでいるはずの王の喉が、震えた。
「ヴゥ゙ゥ゙ゥ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」
 圧倒的な咆哮(シャウト)。ブラックタールである蜜であっても、音の震動の影響は受けざるを得ない。
 王の喉笛に指跡を残し、しかし蜜の願いは届かなかった。
 咆哮によって弾き飛ばされながらも、蜜は自分が王へ残した毒跡を見遣る。あの様子であれば、後続たちが断ち切るのが少しは容易になるだろう。
 己が手で殺めることは叶わなかったが、それでも蜜はいずれかの猟兵たちの手によって、この王を討伐することができると信じていた。だからこそ、最後に祈りの言葉を捧ぐ。
「願わくば――苦しみもない眠るような最期を」

成功 🔵​🔵​🔴​

黒川・闇慈
「王様も随分と大変なご様子……お察ししますよ。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
さて、肺や喉を破壊しても咆哮は止められないそうですが、咆哮である以上は空気をまず吸い込まねばなりません。そこを突くといたしましょう。
属性攻撃、高速詠唱、全力魔法の技能を活用し風獄刃軍を使用します。竜巻で緑の王を捉えてしまえば轟々とした乱気流の中、呼吸をするのも苦労するでしょう。もし強引に咆哮を放つようであれば覚悟と激痛耐性の技能で耐えるといたしましょうか。

「一介の魔術師風情には王のあり方は分からないものでして……申し訳ありませんねえ。クックック」

【連携・組み合わせ・アドリブ歓迎】


ヴィクティム・ウィンターミュート


…あぁ、なるほどな
よう、"また会ったな"
つっても、覚えちゃいねーんだろうけどさ
いっぺん戦ってるんだぜ、お前とは
あん時は随分辛気臭い顔をしてたが…今はどうだかな?
ま、どっちにしても関係ねぇ
ここは「人の世」だぜ。帰りな

ご自慢の咆哮がかなり厄介だな
まあ任せておけよ。対策はあるさ

まずは咆哮の予兆を【第六感】と【見切り】で察知する
【早業】で素早くユーベルコードを準備
発動する前に発動、命中させる。あるいは地形を無音空間に塗り替えて、奴の咆哮を無力化する
俺のプログラムは『空気の振動ごと』音を掻き消しちまう
衝撃波も起こりやしねえ

怒りか?哀しみか?それも悔やみ?
どんな感情を乗せようと、お前の声は…
──届かない



 とにもかくにも、かの王の咆哮は厄介極まりない。
 それはヴィクティム・ウィンターミュートも黒川・闇慈も、まったくの同感であった。
「……あぁ、なるほどな。“また会ったか”」
 その姿を実際に見るよりも早く、遠間から咆哮を聞いたヴィクティムは緑の王がそこにいるのだと確かに感じ取った。
 以前戦った時は、かの王は悲しそうな顔をしていた。助けてくれと言っているかのようだった。今、こうして相対することではっきりとその表情を見ることができたが――。
「なんだよ。あん時は随分辛気臭い顔をしていたが――ちっとはマシなツラできるじゃねえか」
 にやりと、ヴィクティムが口角を上げる。相対する緑の王に浮かぶ表情は“戦意”だ。
「王様も随分と大変なご様子ですね……お察し申し上げますよ、クックック」
 彼の横に、闇慈が並び立つ。表情こそ戦意を漲らせているものの、しかし事実としてその身体には数々の傷があった。手でえぐりぬかれたような胸。切り落とされた左腕。毒で黒ずんだ首筋。体中の火傷の数々。いずれも猟兵たちによる激闘を物語っていた。
「そのお身体では、もう吠え猛ることすら苦しいでしょう。今、楽にして差し上げますよ。クックック」
 怪しい笑みを浮かべながら、闇慈は暗い森の中で、闇色のコートを翻す。周囲に展開されるのは、魔法陣だ。
「――吹き荒れるは命を逃さぬ致死の風。肌を撫でれば切り刻み、ひとたび吸えば死神呼ばう竜の跡。死を運び行き、命を奪い去り、一切全てを切り刻め」
 魔法陣が重なるように幾重にも展開されて、塔のようなものが形成される。そこから生み出されるのは、詠唱にある通りの風である。

テンペスト・センチネル
「 風 獄 刃 軍 」

 ありったけの魔力を注ぎ込む。属性を多重に追加する。そのための追加詠唱を高速で終えて、闇慈が放つのは竜巻と風の刃である。
 竜巻は緑の王を捉えて包み込み、その肌へ無数の傷を刻み、その喉へ入る空気を刃と変貌させる。
 だが足りない。闇慈の全力を尽くした魔術であってしても、かの王の御稜威の象徴たる咆哮を止めるにあたわない。
「やれやれ、これでもこれが“現状で切って問題ない”一番の手札なのですが、よもや足止め程度にしかならないとは。恐るべきは邪神ですかねえ」
 咆哮を撹拌することで打ち消す竜巻を、更に激しい咆哮によって揺らがせて瑕疵を生み出し打ち消そうとする緑の王。それを見て、呆れたように闇慈が肩を竦める。
「足止めできてりゃ充分だ。――こっちの準備が整ったぜ」
 闇慈の隣から、ヴィクティムが一歩前に出る。
「頼みましたよ。あの竜巻も、そう長くは保ちません」
「まあ任せとけよ。待たせてた分の働きはするからな」
 そう言って、ヴィクティムは左腕のトランシス・アヴァロンから一つのプログラムを射出する。竜巻の中へと吸い込まれて行ったプログラムは緑の王の立つ地へと命中し――王から音を奪い去った。
「――――――――――――――――」
「お前と戦ったときのことを思い出すぜ。あん時の冬山も、これぐらい静寂が耳に痛いぐらいの寒さだった」
 今じゃすっかり春めいちまったけどな、と彼は呟く。

ウィンターミュート
「  冬  寂  は季節外れだが、悪くねえもんだろ?」

 お前を殺した直後も、これぐらいの静けさだったさ。呟きながら、音もなく揺れる竜巻、音もなく吠え続ける王を見遣る。
 【冬寂】――それは着弾地点のあらゆる音を消し去るプログラム。ただ雪がしんしんと降り積もり、ただ沈黙だけが支配する空間を作り上げるユーベルコードだ。
「あいつの叫びは何を載せているんだろうな。怒り? 哀しみ? それとも――悔やみか?」
「さあ、どうでしょうね。一介の魔術師風情には王の胸中はいかにも推し量り難いものでして……申し訳ありませんねえ。クックック」
「それこそどうだか。案外、似たようなことを考えてるかもしれねえぜ」
 かつて自分が生まれ育ったストリートで、怒りと悔恨の叫びを喚き散らしたように。あの王も今、あの竜巻のように荒れ狂う感情を咆哮に載せていたのかもしれない。
「……悪いな。お前がどんな感情を載せようとも、その叫び声は届かねえ」
 かつて自分が叫び声を上げても、結局無為に終わった時のように。
 冬寂に支配されたそこでの叫びは誰の耳にも入らないのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀

花世(f11024)と

何度も何度も呼び出されて難儀だね
その餓えも過去に置いていきなよ

先導する花世の後方に続いて
作ってくれるチャンスを窺うよ
盾になる彼女の背中を変わらぬ表情のまま眺めながら

すごいね、花世が二人
本物はこっち、かな
牡丹の花を目視して
うん、大丈夫そう、多分

緑の王が花に誘われて顔をあげれば
その隙を見逃さずガラ空きの首元へとダガーを振るう
足元の消化液は、高速移動で出来るだけ踏まず激痛耐性で構うこともせずに
間髪入れず二回攻撃で傷口を抉るように切り裂くよ
暴れたらフェイントかけて生まれた隙にカウンターを
肉弾戦に長けてるらしいけど、俺も接近戦は苦手ではないからね

どう、期待通りの成果になったかな


境・花世

由紀(f05760)と

そんなにお腹が空いてるのなら
満ちるまでは眠れないね
狂うほど饑い夜を、今だけでも終らせてあげる

扇一閃、掲げる手は分かたれて
わたしとわたしがもうひとり
片方は囮で盾になろう
襲い来る泥濘と咆哮から、
きみを間違いなく守って最前線へ

あれは偽物だからだいじょうぶ、
……うん、たぶん?
(右目をそっと確認しつつ)

接敵できたなら燔祭をこの手に咲かせ
その餓えた唇に花を捧げよう
喰らいに立ち上がっておいで、王
その隙こそが待ち望んだ好機

きみに――繋ぐ!

刹那、入れ替わる由紀の背に
何もかも託して飛び退る
流れる斬撃は己には成し得ぬ業、
問う声に誇らかに笑ってみせて

さすがいけめん、パーフェクトだ



「何度も何度も呼びされて難儀だね」
 鹿忍・由紀は緑の王を見遣る。紡ぐ言葉こそ哀れむようなものだが、その目は常と変わらない。
 あるいは――少しばかり奇妙な話ではあるが――彼は少し安堵したのかもしれない。
 以前、由紀は工場跡地で緑の王と戦ったことがある。その時の緑の王は、こんなにも攻撃的ではなかった。いっそ、人を憎んで暴れまわってくれれば戦いやすかったのにと思うほどに。
 だから、哀れになるほど弱々しい王の姿ではなく、猛々しいまでの王を見ることができて、安心したのかもしれない。
「遠慮はいらなさそうだね。戦いやすくて良い」
「遠慮なんてするつもりだったの?」
 緊迫する戦場にあって、由紀の隣に立つ境・花世がきょとんとした顔を向ける。
 花世を一瞥して、彼は「まさか」と呟く
「大丈夫、そんなつもりはないよ」
「なら良いんだけど、ね」
 言って、花世は扇を横に振る。一閃、一条。花世の姿が一瞬ブレて、一瞬の後に現れたのは、右目に八重牡丹を咲かせぬもうひとりの花世だ。それを由紀は、目を丸くして見比べる。
『そんなにお腹が空いてるのなら、満ちるまでは眠れないね。――狂うほどひだるい夜を、今だけでも終わらせてあげる』
 その間にも、もうひとりの花世はそれを待つことなく敵へと駆ける。花弁を散らしながら戦う様は、まさしく花の舞いと言ったところか。
「すごいね、花世が二人」
「ほんものはどっちでしょう?」
「……本物はこっち、かな」
 しっかりと、花世の右目に八重牡丹が咲いているのを確認して答えた。正解、と彼女は笑って小さく拍手する。
「それじゃあ、行こうか」
「うん、行こう」
 先陣を切ったもう一人の花世を追って、由紀と花世もまた緑の王へと立ち向かう。
「――――――――ッ!!」
 声無き咆哮を上げながら、緑の王は泥濘を、蔦を操り三人へと攻撃する。無遠慮な黒と緑を、もう一人の花世の操る薄紅色の花びらが受け止める。



 ――花。花だ。
 王の緑の瞳に薄紅色が映る。可憐に咲く花。愛おしまれる存在。それが無数に眼の前を舞っている。
 ――食べたい。
 右手が伸びる。食べたい。食べたい。あの綺麗な花弁を頬張りたい。あの甘い蜜をこの舌で受け止めたい。そしてどうか――この暴食を癒やして欲しい。
「喰らいにおいで、緑の王」
 ぱっと、目の前で花が咲く。綺麗で美しい花。八重牡丹を右目に咲かせた女が差し伸べるそれへと、飢餓から脱したいただそれだけの思いで手を伸ばす。

 ――飢えと渇き。それこそが緑の王が致命的なまでの隙を晒す急所とも知らずに。

「きみに、繋ぐ――!」



 花世の手から放たれた花。顔を上げ、右手を伸ばす緑の王。
 その隙を逃さず、刹那の間に飛び退る花世と入れ替わるように飛び出した由紀は、王が晒す無防備な首元へとダガーを突き立てる。今度は崩れた足場なんてものは用意されていないから。この手で、刃を向けるしか無い。
 ぞん、と。毒によって黒ずんだ肌へとダガーが突き立つ。ぞぶりと毒に汚染された黒血に塗れた白刃が外気に晒され、また埋没する。深く――深く。
 緑の王の動きが、一瞬止まる。しかし――
「――――――、――――――――ッッッッ!!!!」
 しかし、王は止まらなかった。終わらなかった。
 異様にぎらぎらと光る緑の瞳が由紀を捉え、右腕が音もなく振り被られる。
 必殺を意図した刺突。それゆえに、由紀は逃げられない。避けられない。ダガーの間合いは、あまりにも近すぎた。
『――危ない!』
 もうひとりの、牡丹を咲かせていない方の花世がそう叫んだかと思うと、由紀を突き飛ばす。振るわれる王の右拳。それは由紀を庇ったにせものの花世を吹き飛ばし――その姿を、薄紅色の花弁に変えた。花世、と。由紀は反射的に叫びそうになる。あるいは、本当に叫んでいたかもしれない。
「由紀、だいじょうぶ?」
「なんとか。花世の方は?」
「あれはにせものだから。こっちはだいじょうぶ」
 由紀を助け起こしながらも、さすがに肝が冷えたのか花世の顔にも一筋の汗が見えた。
 ふと、花世の右手が自分の右目に咲く花へと伸びる。
「……うん、たぶん?」
「うん、大丈夫そう。多分」
 助け起こされながらも、由紀は緑の王を見る。
 喉にダガーを深々と突き立てられながらも。緑の王の戦意は尽きていなかった。
「――」
 無音の空間にあって、『まだ』と緑の王が告げた気がした。
 『お前。私が倒れるなどと、思うのか』と、その緑の瞳が言っているように思えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トルメンタ・アンゲルス


周囲の地形への強制干渉、無差別無尽蔵の破壊。
彼の存在が完全な形で顕現していたら、どうなっていたことやら。

ですが、不完全とはいえ危険性は高いまま。
ここで葬り去ります!

第一リミッター解放!
ユーベルコードが通じる時が限られているなら、通常兵装で削ります!
周囲を跳び回りながら、ブラスターを様々な方位から撃ち込みましょう。
光学兵器なら、胃液越しでも届くはず!

そして、奴が動き、一瞬の隙が生まれれば、その隙を突く!
俺からすれば、一瞬も永遠と同じ!

エネルギーを足に収束!
次いでOverClock始動!

そして、「『Finish Blow――』!」
OverflowBreak!
消化液は、装甲と速さで一気に突破する!



 一陣の暴風が森を薙いだ。一条の青が線となって駆け抜けた。
 森のざわめきによって迎えられたその風の主こそ、トルメンタ・アンゲルスだ。
「第一リミッター解放!」
 愛機と変身合体して超加速状態となったトルメンタは更にリミッターを解除。対障害物を意識した防御装甲をパージすることによって、加速力と最大速度を強引に引き上げる。
「ユーベルコードの通じる時が限られているのなら! 通常兵装で削るまで!」
 森の中を駆け巡りながらトルメンタが構えるのは腕部に装着された熱線銃“Meteor”。その銃口が向く先は無論、緑の王である。
 青の影に白が混ざり、王を取り巻くあらゆる角度から熱線が降り注ぐ。消化液で防御に入るが遅い。耐久力や火力では確かに緑の王が圧倒的だろうが、こと速度においてはトルメンタが絶対的な優位に立っているのだ。
 とはいえ、トルメンタとてやりにくい相手であることもまた事実。周囲の地形への強制干渉、無差別無尽蔵の破壊。地形が重要となるトルメンタの高速戦術において、地形を敵に回されることはいかにも戦いづらいものだった。加えてその耐久力は恐るべきものであり、熱線銃で与えられるダメージなどたかが知れている。
「緑の王、という名は伊達ではないということですね……!」
 森とはすなわち王の城。敵地を駆け抜けることが常であるトルメンタをして、脅威と認識させられる敵である。
 もしこれで王が完全な形で顕現していたとしたら、果たしてどうなっていたことか。だが現実の問題として、不完全ながら顕現した今の緑の王であっても危険性は当然高い。
「ここで葬り去ります!」
 圧倒的な速度と一点集中した火力で押し切る。それがトルメンタの取れる戦術だ。
 ブラスターの射撃を中止して、動力コアのエネルギーを脚部へと収束していく。
「Over Clock!」
『TurboBoost Over――Acceleration』

「『Finish Blow!』」

 飛び蹴りが王の胴体へと命中し、脚部にあったエネルギーが着弾と同時に射出される。胴体を足場にして、飛び退れば一拍遅れの爆裂が緑の王を襲った。【OverflowBreak】――それは脚部へ充填したエネルギーを射出、敵の内部へ浸透後に時間差でエネルギーを暴走させることで炸裂させるユーベルコードだ。名前の通り、敵をオーバーフローさせることで打ち砕くトルメンタの奥の手である。
「速さで勝っても、あるいは力で勝っていたとしても。それでも勝てない相手へ対抗するための俺の攻撃、確かに届かせましたよ……ッ!」
 肩で息をしながら、戦場では常に高速の中にあったトルメンタが停止し、地に膝を付く。リミッター解除やオーバークロックによって内部蓄積していた熱が、装甲の間から蒸気とともに放出された。
 全力全開の一撃。残余エネルギーはすでに離脱程度にしか残っていない。斃れていてくれと祈りながら、トルメンタは顔を上げる。緑の王を見る。
「――――」
 無音空間で音もなく、緑の王が膝を折る。被弾を無効化するには、あまりにもトルメンタの速度が速過ぎて追いつかなかったのだ。
 しかし、斃れない。倒れない。膝を折れど、傷付けども、王は諦めていない。
「ああ――」
 トルメンタの喉からうめきが漏れ出る。
 ――自分とは逆だ。奴は傷付くのを恐れていない。
 トルメンタは戦いの中で四肢を喪い、光を閉ざされた。ゆえに被弾を忌避し、速度を希求し渇望した。
 緑の王は喪ってなお、喪失を恐れながらもそれに立ち向かい、立ち続けている。王は強者であるがゆえに王なのだと示すように。
 これはどちらが良い、悪いではない。単なる存在としての「在り方」の差だ。どちらも「喪失」を怖れて、それゆえに別々の強さを手にした者たちの話だ。トルメンタは「喪わないための速さ」を、緑の王は「喪わないための強さ」をそれぞれ求めた。
「――――――――――!!」
 無音空間で、音無き咆哮を王は上げる。
 人々を畏怖させるものではないことは明らかだった。あれは、自分を奮い立たせるためのものだ。
「ああ、まったく。嫌になるぐらい強いですね……」
 呟きながら、トルメンタは飛び退る。
 離脱していく青い残影を見送る緑の瞳は、「嫌になるぐらい速い奴だ」と言っているかのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天命座・アリカ
君が彼らの言う神様かい?それとも王様だったかな?
そこらへんはね置いといて!立ちふさがるなら容赦はしない!
嗚呼、しかし、君はーー楽しくなさそうだね?
そいつはちょいとよくないね!笑顔がなにより重要なれば!この天才美女を参考にしたまえよ!

そういうわけでね忍びなく!終わらせようか早急に!
今宵はちょいとサービスだ!刻み付けなよこの姿!
背中に天使の片翼を!晴れ姿だよ天命座!
準備はいいかいできてるかい?「カミサマ」?
人の世に神などいらないと!証明をする時間だぜ!

環境破壊はよくないが!有効な手は打つべきで!
炎の魔弾をばら撒くのさ!悪いがね、君の緑は燃え尽きる!
散弾連弾思いのままさ!距離を取ってね撃ち貫くよ!



 黒が薄れ始めて陽が顔を出し始めて。薄暗さで隠れていた緑色が鮮やかさを次第に取り戻す。
 裾野より僅かに漏れ出る陽の光を背に、桃色がいた。
「君が彼らの神様かい? それとも王様だったかな?」
 きらめく桃色の髪をいまだに冷たい風でなびかせながら、天命座・アリカは緑の王を見る。
「随分派手にやってたようだね! 君の部下も大騒ぎ! 妙な怪物だって出て来た! サスペンスだね、パニックホラーさ! お蔭でこっちも大わらわ、息つく暇もなかったよ!」
 戦場においておよそ場違いな、大袈裟で演技がかった様子でアリカは語る。彼女は息をつくように、「ああ」と嘆息を挟んだ。
「しかし、君は――楽しくなさそうだね?」
「……………………」
 戦意を剥き出しにした瞳。憮然とした表情。王としても、きっと不本意な召喚だったであろうことは想像に難くない。無論、戦場にあって楽しいなどという感情はおおよそ必要なものではないのだが――。
「そいつはちょいと良くないね! 笑顔が何より重要なれば! この天才美女を見たまえよ!」
 ――そんなことをこの天命座・アリカが気にしようはずもなかった。
 ニコリと笑顔を作ってみせる。が、緑の王の表情は依然変わらず。むしろアリカの挙動を不審がるように警戒する色が強まる。
「私たちの関係が、敵同士であるならば! 仕方がないね残念だ!」
 アリカは肩を竦めて、一冊の書物を取り出した。それは学術書にして日記帳。“知識のアリカ”。
「仕方ないから忍びなく! 終わらせようか幕を引こう! クライマックスは盛大に! 今宵はちょいとサービスだ! 刻みつけなよこの姿! ――さあ、天命座を始めよう!」
 桃色の長髪を割って、アリカの背から大きな天使の片翼が広がった。それは翼の羽毛の一本に至るまでが電子によって構築された、バーチャルキャラクターとして電子化された天命座・アリカの真の姿だ。
「準備はいいかいできてるかい? それなら閉幕に向けて走り出そう! フィナーレは近いよ駆け抜けよう!」
 ざぁ、と森を揺るがす強風が吹いて、“知識のアリカ”のページがまくれる。
 何もない空間から、突如として炎の魔弾が現れて、それは緑の王へと向かって行った。
「環境破壊は良くないが! 取れる手段は打つべきだ! 私の魔弾はよく燃える! 君の緑は燃え尽きる!」
 散弾、弾幕、思いのままに。炎の魔弾は生み出されては射出される。王はそれを時に消化液で、時に右手や角で払い除けて防ぐが、炎の舌は容赦なく王の身体に火傷痕を残す。

. 記憶
「 弾 が尽きるかフィナーレか! どっちが先かな読めないね!」

 記憶領域の情報をエネルギー化した魔弾。それが天命座・アリカの張る弾幕の正体だ。蓄積された情報を魔弾に変えて射撃する。
 情報が欠落するであろうことに恐れはない。
 アリカは知っている。喪失を怖れていては、前へ進めないことを――。

成功 🔵​🔵​🔴​

千桜・エリシャ

リリアさん(f00527)と

……そう
己の本能が、己の理性を裏切っていく様はたいそう辛いものだったでしょう
――可哀そうに
私も裡に潜む修羅を飼いならす身の上ですから
やはり浮かぶのは同情という感情で
ならば、一思いに土に還して差し上げましょう
それが慈悲というものかしら

リリアさんと連携して参りましょう
咆哮に対しては耳を塞いだ上で花時雨を盾にするようにオーラ防御を
リリアさんも一緒に傘に入るように促して
私だって護られているばかりではありませんわ

リリアさんがUCを使えるように私が彼岸花腕で隙を作りましょう
見切りで隙をつくように死霊の腕で拘束して、
さあ!今ですわ!
最後は私が、御首をいただいてもよろしくて?


リリアネット・クロエ

エリシャさん(f02565)とご一緒。

緑の王がお出ましだ。
やつに自然界を食い荒らされては自然環境が崩壊してしまう
そんな事させてたまるか!

王の攻撃はどれも強力、エリシャと連携。

まずは【全力魔法】を行い王を挑発、敵意からの戦闘状態に持ち込んでやる
遠隔系の攻撃に注意。「エリシャはぼくが護る」

脱力状態を解除したら
エリシャとのコンビネーションからの【焔桜の魔槍】を使用。
「おまえのその角灼き尽くしてやる!!」

ぼくは角狙い、エリシャにとどめの首切りを任せるよ。

食物連鎖の暴食はここで終いだ。

(緑の王の首。ハンティングトロフィーになりそうだな…。なんて…。)



 朝焼けの森の中に、桜の花が舞う。
「……そう」
 千桜・エリシャは墨染の大太刀を手に、緑の王を見据えていた。
「己の本能が、己の理性を裏切っていく様は大層辛いものだったでしょう」
 可哀想に、と彼女は呟く。彼女もまた、内在する修羅を飼い慣らす身であれば、王の苦悩の程も察せられた。
「一思いに土に還して差し上げましょう。――きっと、それが慈悲というものでしょうから」
「倒そう。――王がそれを望んでいようと、望むまいと」
 赤い短槍を手に、前へ出たのはリリアネット・クロエだ。事態を深刻と見た彼の表情は常ならざる真剣さを帯びたものとなっていた。
「あのまま消化液が拡大したら、あのまま喰われ続けたら、自然環境が崩壊してしまう。――そんなこと、させてたまるか!」
 あるべき自然が崩壊すれば、今を生きる人々とて無事では済まないことは自明の理。それに、害獣と化したとはいえかつての緑の王は暴食を望まないだろう。
「食物連鎖すら食い潰したその暴食、ここで終わらせる……!」
 先に動いたのはリリアネットだった。彼は紅焔の魔槍の矛先に魔力を宿し、赤熱する刃を振るう。消化液が、蔦が、それを妨げようと立ち塞がるが、そのことごとくを紅焔によって斬り裂き、焼き尽くす。
 切り拓いた道をひた走り、狙うは緑の王、その冠たる大角だ。
「おまえのその角、灼き尽くしてやる!!」
 王者は王冠を戴いてこそ。その王冠を奪い取らんとリリアネットは魔槍を振るう。王はそれを首を振って回避する。
「さあ、ぼくを見ろ! よそ見をしようものならぼくがその首を切り落として、ハンティングトロフィーにしてやるからな!」
 普段のおっとりとした幼さを今だけはひた隠しにして。リリアネットは魔槍を構え直し、啖呵を切って緑の王の注意を引く。
 眼の前にいるのは紛うことなき強敵だ。王の放つ重圧は凄まじく、相対するだけで武者震いが止まらない。それでも後ろにいるエリシャを守らなければならないと、リリアネットは使命感にも似た思いを胸に抱いていた。
「――今ッ!」
 震えは止まらないが、それでも思いが支えとなってくれている。槍を握るための力に、敵へ立ち向かうための勇気になってくれている。身体は教練通りに動き、王の戴く冠へと焔の魔槍を突き込んで行く。
 ――角とは誇りだ。ゆえに、それを切り落とされるなどということを、害獣と化した今であっても緑の王は看過できない。
 取るに足らないと咆哮を上げ、退かせることはできなかった。ゆえに残った右腕を振るう。右腕は魔槍へ伸びて、その矛先が角に達する前に。槍の口金を掴み取った。
「なっ――!?」
 リリアネットが驚きの叫びを上げる。それに構うことなく王はリリアネットごと、握った槍を上へ振るった。肩が外れそうになるほどの遠心力と背筋が凍り付くような浮遊感。目まぐるしく回転する視界の中で――ふと、もう散ったはずの桜の花が見えた気がした。
「――その手を離しなさい!」
 聞き慣れた声。エリシャの声と共に、大太刀が振るわれる。金属音。黒の刃が大角によって弾かれた。
「リリアさん――!」
 王の手から離れ、魔槍とリリアネットが宙を舞う。エリシャは叫ぶように名前を呼んで、着地点へと桜の花びらを放ち、リリアネットを受け止めた。
「あ、ありがとう、エリシャ……」
「どういたしまして。庇って頂いた時の宣言、こうして果たせて安心しましたわ」
 緑の王と睨み合いながらも、エリシャは微笑みを浮かべてみせる。
「いつも通り御首を――と思っておりましたけれど。これはそう余裕が無いみたいですわね」
「……うん、とんでもなく強い。ここまで目立った犠牲も出さずにみんなが戦えていたことが不思議なぐらいだよ」
 エリシャと肩を並べ、槍を構え直しながらリリアネットは同意する。
 無数の刺し傷、噛み傷、火傷痕、抉れた痕。首を蝕む毒とそこに突き立つダガー……。緑の王に刻まれた負傷は数多く、しかし王はいまだ健在であると知らしめるように立っていた。「手負いであるから弱っている」などとは口を違えたとしても言えぬだろう。
「リリアさん、時間稼ぎをお願いしてもよろしくて?」
「できるけど……本当に良いの?」
 主語は無いが、エリシャには御首のことだとすぐにわかった。ゆえに「ええ」と頷きを返すことに、迷いは無かった。
「この戦い、犠牲を出さない確証がありません。たとえリリアさんを危険に晒した上で御首を狙ったとしても、きっと獲った御首にそれが表れてしまいます。そうしてらきっとその御首は、私を昂ぶらせてはくれないでしょうから」
「エリシャ……」
「さあ、王がいらっしゃいますよ、リリアさん。ゆめ、油断なさらぬよう」
 エリシャが言葉で示した通りに、緑の王がその脚を蹴立てていた。突撃の準備であることは明白である。
「わかった。――任せて、エリシャ!」
 エリシャが御首にこだわることはリリアネットもよく知ることだ。だからこそ、そのエリシャが御首を断念したその強い思いを背負って、リリアネットは再び前へと出た。
「……行くぞ」
 突進して来る緑の王を前にして、武者震いは止まらない。
 これは“恐れ”だと、リリアネットはようやく自覚した。命を、あるいは大切な友を喪うことへの恐れ。
 だが、自分は立っている。武器を手にしている。そして今、眼前に来たる恐怖の源へと立ち向かわんとしている。それは喪失を恐れるがゆえに、喪失へと打ち克たんとする思いの強さゆえに。
 突進して来る緑の王をしっかりと見据えて捉え、震えの中であってなお、その距離が充分に近くなるまで待ち――そして、永遠にも似た恐れの時間を過ごした先にあった、輝かんばかりの好機を掴み取るように。彼は魔槍を振るう。
「――燃えろぉっ!」
 叫ぶような言葉の通りに、横薙ぎに振るわれた矛先から紅焔が舞った。ありったけの魔力を注いだ、桜色の焔が王の行く手を遮る。
 負傷を焔に焼かれたか。王が苦悶の表情と共に、僅かに速度を減じた。
「――る゙、お゙る゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」
 しかし立ち止まらない。無音空間から抜け出して、駆ける脚をそのままに。リリアネットとエリシャへ緑の王は突進する。
「――――ッ」
 もうダメだ、とリリアネットは直感した。全力で放った魔法はほんの僅かに王の速度を減じただけだった。
 しかし退くことはできなかった。自分の後ろにはエリシャが、大切な友がいる。ならば、自分が壁になる他に無い。
「ッ、来るなら来い!」
 槍を横に構え、魔力でもって障壁を張る。強度からして保って数秒。それまでにエリシャが間に合わせてくれるかどうかは、賭けだった。
 衝撃。障壁が大きく揺らぐ。大丈夫だ、まだ破れていない。砕けていない。槍を握る手が自然と強まる。祈るように障壁を維持する。

「――地獄に咲く花の色、教えて差し上げましょう」

 あともう少しで障壁が破れる。その直前、エリシャの声と共に地面から無数の黒い手が現れて、緑の王を捕らえた。それはまるで地獄に乱れ咲く黒い彼岸花。無数の死霊の手が王の膝を地へ付かせる。
「ま、間に合った……」
「よく頑張りました、リリアさん」
 からんと魔槍を落とし、その場に座り込むリリアネット。大太刀を地に突き立てながら、エリシャは彼へと微笑みかける。
「……後は、然るべき者へ託しましょう」
 そう言って、エリシャは振り向く。そこには日の出の空と、一人の女が立っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

多々羅・赤銅


よ、げんき?

いや、お前が居るって聞いてさ
喧嘩売りに来た
お前がみすぼらしく負けるとこ、見に来てやったよ

剣刃一閃須らく
断斬、消化液を斬り割り疾駆
御機嫌よう、王の御前。私が見てきた『どの』王よりも、殺し甲斐のある面構え

見切りを交え王の攻撃をいなしつつ
捨て身の鎧無視が王の肉を斬り捨てる
そんな腕無けりゃ、何か守ろうともしないで済む
そんな角無けりゃお前が王だなんて誰も信じないし
空腹の腹も要らねえな
要らねえもんだらけだな

ほら
立てよ
王の前髪を掴み持ち上げる
斬れねえだろうが

弱きを守るだ?
お前も大概、見てて傷ましんだよ
二度と湧いてくんな
もういいだろ
もういんだよ

私ごときに殺されるようなお前、あんま見たく無えんだよ



「よ、げんき?」
 日の出と共に現れたのは、派手な桃色髪の女――多々羅・赤銅だった。
 死霊の手に拘束された緑の王を見下ろして、偶然出くわした友へ向けるように手を挙げてみせる。
「いや、お前がいるって聞いてさ。喧嘩売りに来たんだよね」
 お前もこんな日の出の時間によくやるよな、と笑いながら赤銅は煙草を燻らせた。
「お前がみすぼらしく負けるとこ見に行ってやろ~って思ったら、なんだお前、絶体絶命のピンチみたいじゃねえの」
「…………」
 緑の王は憮然とした表情で赤銅を見上げて、それから――。
「ル゙、ら゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッッッッ!!!!」
 咆哮を上げた。畏怖をもたらす叫び声。それは死霊たちとて同じことだ。恐れななした死霊たちが地の底へと逃げ帰り、逃げ遅れた手は――蔦へと変わった。
「か弱い花なら罪も無い……ってか?」
 ただ無害な蔦へと変わったそれを見下ろし、はん、と赤銅は鼻で笑い飛ばす。
「お前はか弱い花ってガラでもねえのに」
「私は、王だ」
 瞳の戦意を敵意へ変えて、緑の王がまた立ち上がる。王は偉い。偉いから強い。強いから、立ち上がれる。何度でも、何度でも。
 その姿を見て、赤銅は目を眇める。緑の王と戦った報告書は数多かれど、彼女が直接戦ったこの王は過去に二人だけだ。冬山の山頂で一度。そして、うだるような暑さの中でもう一度。いずれも王は立ち上がる様子もなかった。
「森の中だからってイキってんじゃねえよ。森の中なら全部お前のホームグラウンドかよ」
 言葉とは裏腹に、赤銅の口元は笑みにも似て歪んでいた。
 眼の前の緑の王は、満身創痍なれど立っている。刺し傷、噛み傷、抉れた痕に火傷痕。毒に冒されて黒ずんだ首にはダガーまで刺さっていて、おまけに左腕から先がごっそり切り落とされている。
 それでも雄々しく、王らしく。緑の王は立っていた。
 咥えていた煙草を素手で握り潰す。冷える夜明けの風はどことなく冬山を想起させて。握り潰した熱はうだるような暑さを思い起こさせた。
「決着付けんぞ。さすがにお前とも、もうこれっきりだろ」
 ぱん、と赤銅は己の手のひらに拳を打ち付ける。この緑の王は今まで見てきた“どの”王よりも殺し甲斐のある面構えだった。
「知るか」
 緑の王が右拳を振り被る。王とてオブリビオン、過去の残滓だ。“緑の王”は今までに何度となく顕現して来たが、それらとは同一の存在であっても同一の個体ではない。つまり、赤銅と別の個体が会っていようが、殺されていようが、今相対している緑の王にとっては知る由もないことだ。
「あぁそうかよッ!」
 煙草を握り締めた拳を振るう。双方、狙い過たず。緑の王と赤銅の左頬に、互いの右拳が入った。
 どちらも避けることもできただろうに。それでも二人して互いの拳をまともに受けた理由は唯一つ。己が強さを示すため。
 こいつこそが宿敵だと認めるように、互いに退いて距離を取る。
「なあ。一つ気になることがあるんだけどさ」
 大業物の刀を抜き放ちながら、赤銅が問いかける。
「なんでそんなに戦うんだよ。守る物ももうねえのにさ」
 襲い掛かって来たから、ではないだろう。赤銅はそう直感していた。こいつが戦う時は、大抵何かしらを守るためだ、と。
 何か為したい大悪行があるわけでもなし、では一体どうしてこの王はこうも戦い抜こうとするのかと。
「守るためだ」
「だから、何をだよ」
 怪訝な顔で赤銅は重ねて問う。もしかしてまだ自分に何か守るべきものがあると思っているのか。それとも、自分の命を守ると言うのか。もし前者なら狂っているし、もし後者ならこいつは王じゃない。事実として、もう守るものはなく。自分しか守るものがなければそれは何かの上に立つ王たりえない。
 緑の王は、自分の空虚な腹に右手を当てる。

「――緑と、命のためだ」

「……は?」
 目を丸くした。こいつは何を言っていやがるんだと口にしようとした瞬間に、赤銅は悟った。
 この王は、自分の命が自分のみで成り立っていると考えていない。
 今まで食らって来た全ての緑が、生命が、自分を成立させていて。自分を構成してきたそれら全てに報いるために、こうまでして戦っていたのだ。
「はは……なんだよ、それ」
 やはりこいつは正気を喪った害獣に成り果てていて。
 やはりこいつはどこまでも何かを守ろうとする王だった。
「だから、負けない。死ねない」
「……ああ、そうかよッ!」
 聞きたいことは、今ので充分。だから吠えて、赤銅は刀を手に疾駆した。
 緑の王が迎え撃つ。蔦を、消化液を飛ばしてその疾走を止めようとする。
「しゃらくせえ!」
 剣刃一閃、須らく。蔦を、消化液を切り払う。こんな小技で止められると思うなよ。止めたいならお前自ら止めに来い。突進する赤銅の姿はそう言わんばかりであった。
 肉薄。王の振り抜く拳を紙一重で躱して刀を振り被る。
「そんな腕無けりゃあ!」
 拳を躱した後は、もう、どうとでもなればいい。蔦が、消化液が、赤銅を襲えども。羅刹はそれを意に介さずに刀を振るう。拳を振るうために伸び切った右腕が、猟兵たちに付けられた傷口から断ち切られて宙を舞った。
「何かを守ろうともしないで済むッ!」
 腕がなければ拳を振るえない。腕がなければ誰かを守ろうと両手を広げて立ち塞がることもできない。
「そんな角無けりゃあ!」
 返す刀で、刀を振るう。渾身の力を込めて、先の戦いで大太刀が生んだ瑕疵を狙って刀を振るう。硬い、硬い手応えと共に、角が落ちる。
「お前が王だなんて誰も信じねえしッ!」
 角がなければ王ではない。冠を戴かぬ王が王と認められぬように、誰もこの獣を王とは見ずに、ただの獣と見るだろう。
「空腹の腹も要らねえな!」
 角が地に墜ちるより先に、赤銅は刀を霞に構えて突き出した。白刃が、王の空虚な腹へと突き刺さる。
「……要らねえもんだらけだな、お前」
 お前は一から十までデタラメで。
 お前は要らないものばかりで。
 お前は自分のロウソクの灯がもう落ちていることにすら気付いていない。
「ほら、立てよ」
 両腕を喪い、角を斬られ、腹に刃を埋められて。もはや己の武器となるもの全てを喪い、地に崩れ落ちた緑の王。その前髪を掴んで、乱暴に持ち上げる。
「斬れねえだろうが」
 刺さった刀を腹から抜く。ごぽ、と黒い消化液が逆流してきた。刀もいくらか消化液に溶かされていた。
「弱きを守るだ?」
 ふざけんなよ、と赤銅は刀を血振るいする。刀に付いていた消化液が地に落ちる。
「お前も大概、見てて痛ましいんだよ。てめえは王でも何でもねえ」
 そうであれ、と赤銅は呪いを口にする。お前は王じゃない。王じゃないんだと、言い聞かせるような呪い。
「二度と湧いてくんな」
 また顕現してしまえば、また同じようにお前は苦しんでしまうだろうから。
 だから、
「もういいだろ」
 だから――
「もういいんだよ」

 刀を振るう。横薙ぎに、あの雪山の時と同じく。

 毒に冒され黒ずんで、ダガーで突かれて弱っていた首は――驚くほどあっさりと断ち斬れた。
 ざあ、と。断ち切れた首が、身体が、黒い灰へと変わって行く。黒い灰は、地を浸食していた黒い消化液へと消えて。
 黒い水もまた、地へと還るように消えて行った。

「私ごときに殺されるようなお前、あんま見たく無えんだよ」

 その声は、少しだけ震えていたか。
 その言葉は、骸の海へと届いていたか。
 いずれも判然とはせぬが。
 これでようやく、きっと緑の王はとこしえの安息につけるだろう。
 ざわざわと、森がざわめく。王の死を、悲しむように。

 森よ、森よ。

 なぜ、こんなにも。何かを喪うことは悲しいのだろうか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月13日
宿敵 『緑の王』 を撃破!


挿絵イラスト