2
バレンタインの女王

#UDCアース

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース


0




「バレンタインね……ふふ、日本の男女が一喜一憂し、浮つつを抜かす冬の行事……」
 ショッピングモールに隣接した倉庫区画。その一画、ひとつの冷凍倉庫に女王は鎮座していた。
 品質保全のために締め切られた倉庫内は日中とも思えぬほど暗く、冷え込んでいる。
 女王は積み上げられたコンテナを玉座にしていた。流れるような金糸の長髪。身に着けたドレスはその切れ長な瞳の色と同じ真紅。整った面立ち、豊満な胸、しなやかな肢体。その下半身は……光量が足らず確認することは難しかった。
 女王は無造作に声をかける。
「お前達……出番はもうすぐよ」
 呼びかけへ応えるように、目玉が光る。
 2、4、6……一対の眼球が次々と点灯していく。その伝播の波は、あっという間に倉庫の端から端までへと広がっていった。
「お前達はこれからショッピングモールのチョコとして、販売物に混じり、客へと襲い掛かる。そうして、混沌を巻き起こすの」
「ピヨ!」「ニャン!」「ワン!」
 同意めいた小動物のさえずりが、そこかしこから上がる。
 配下のオブリビオンは、丸っこいボンボンショコラのような形をしていた。
 それぞれが、動物を模している。愛くるしい見た目であり、1体1体は小さい。しかし、それはまごうことなき怪異、オブリビオンなのだった。
「バレンタインを血に、染めてやりなさい……フフ、フフフフフ……!!」
 女王は笑う。哄笑だ。これから巻き起こる混乱と災厄を想像したのか、愉悦にまみれた……美しく、それでいて同時に下卑た嬌声だった。

「もうすぐUDCアースではバレンタインデーなのです! 皆さんもチョコを贈ったり、贈られたりするでしょうか?」
 プルミエールは、雑談でもするかのように話を切り出す。
 だが、もちろんこれは雑談ではない。世界に災厄をまき散らさんとする女王と切り結ぶための、ブリーフィングなのだった。
「そのUDCアースなんですが、邪神教団の拠点について、情報を得ることができたのです! それは、とある湖に隣接したショッピングモール、その倉庫区画なのですよ!」
 湖に隣接した巨大な商業施設、その倉庫区画の冷凍倉庫に邪神教団の1つが居を構えているという。
「教団の女王様が、配下のチョコっぽいオブリビオンを商品に紛れ込ませて暴れさせようとしているのです……なので」
 その前に、猟兵たちが奇襲することで計画を潰してしまおう。
 プルミエールの作戦は、おおむねそういったものだった。
「まず配下を倒してから、次は女王って感じになると思います……配下のチョコは1匹は弱いですけど、視た感じ、数が多いです」
 女王は多くの兵を率いているものだ。それは古今東西、世界が違えど共通の概念なのだろう。
「あと可愛いです……だからって油断したり、情をかけたりしたら駄目ですよ」
 足を掬われてしまうかもしれない、とプルミエールは釘を刺す。
「無事に作戦が終わったら、ショッピングモールで買い物したりするのもありだと思います。今なら本物のチョコも色々種類があるでしょうし……とはいえ、まずは倒すことを優先しなくちゃですけど」
 気を引き締めるようにプルミエールは両拳をぐっと握り、片腕を天へと高く突き上げるのだった。
「私がみなさんを倉庫区画までお送りします! みんなで力を合わせて頑張りましょう!!」


蘇我真
 どうも、蘇我です。もうすぐバレンタインデーということでチョコっぽいフラグメントを使わせていただきました。
 1章:集団戦 2章:ボス戦 3章:日常(ショッピングモール)
 の構成となっております。

 今回もまとまったプレイングがあれば執筆配信を行いたいと思います。
 告知など詳しくはツイッターアカウント(@furabono)をご確認ください。
61




第1章 集団戦 『チョコっとショコラーズ』

POW   :    カロリー・イズ・ジャスティス
戦闘中に食べた【チョコレート】の量と質に応じて【身体のツヤと素早さが増し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    一口チョコの誘惑
レベル×5体の、小型の戦闘用【チョコレート製ロボット】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ   :    チョコレートーテムポール
【大きなトーテムポール】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携歓迎】

食品、しかもバレンタイン直前にチョコに偽装だぁ!?
かわいいナリしてえげつない作戦を考えるもんだねぇ…っくしゅん!
うう寒っ。重ね着しててもそん中に防寒具がないと意味ないか。
風邪ひかないうちに手早く片付けるよ!

相手が小さい奴らなら素手で殴っても遅い、
食品倉庫だから排ガス出すうちのカブも無理。
なら【サイキックブラスト】しかないね!
空間にばら撒くだけじゃなく、金属製の棚を通じて
チョコのふりをし続けてる奴らを攻撃する。
適当にあしらい続けて放電が溜まったら、
棚一つを単位にする感じで【黄泉送る檻】を発動。
一口チョコロボともども一網打尽にするよ!


紫洲川・珠璃
「バレンタインデー、ねぇ。あんまり興味はないけれど、というか介入のレベルが低くないかしら」

確かチョコレートなるものは、熱に弱く溶けるはず
ということでUC炎狐で熱して出足を挫いて、斬りかかるわ
チョコレート製ロボットは、数が多くて厄介なので、個別に散らせた火狐で片っ端から潰していく

倉庫ということはある程度普通の商品もあるかもしれないので、
あんまり派手に吹き飛ばしたり焼き払ったりは避けておくわ

戦闘は虚鐵一振りで行い
一撃の重さより、手数を重視し、機動力を中心とした戦い方をします

アドリブ、他者連携希望します



「バレンタイン直前にチョコに偽装たぁ、かわいいナリしてえげつない作戦を考えるもんだねぇ」
「そうかしら、私としては介入のレベルが低いと思うけれど」
 多喜と珠璃は今回の騒動について、それぞれ違う見解を持っているようだ。
「いやいやバレンタインだよ? あのバレンタイン」
 冷凍倉庫の扉を開けながら異議を唱える多喜。
「あなたの考えるバレンタインと私の考えるバレンタイン、差はないと思うけれど」
 珠璃の眼前、運搬車も入れるほどの大扉がゆっくりと押し開けられていく。
「私はバレンタインデーにあまり興味がないのよ。だからさして問題にも思えない」
 倉庫から漏れ出てくるものがある。
「へっくしゅん!」
 それは冷気。重ね着をして対策をしてきた多喜は、それでも寒気に鳥肌を立たせる。
「我、此処に求むるは、火軍の尖兵」
 それと、オブリビオン。
 小型、野球ボール程度の大きさの、チョコレート然とした怪異達。
「ピヨー!!」「ニャー!!」
 猟兵の襲来を察知して、それぞれ思い思いの鳴き声を上げながらとびかかってきた。
「うおっ!? いきなりご挨拶じゃねえか!!」
 それは大波がサーファーを飲み込もうとするのに似ていた。
 超能力を発動して迎撃しようとする多喜を珠璃が片手で制する。
「我が喚び声に応えて赤熱の森より姿現せ、焔纏いし我が眷属」
 あらかじめ備えておいた詠唱を口ずさむ。
 呼び出された狐型の炎が、ふたりの周囲を護るように駆け回る。
「確かチョコレートなるものは、熱に弱く溶けるはず」
 燃え溶けていくチョコのオブリビオンたち。二人へと届く間も無く蒸発していく。
「なれば、それを模した怪異もまた火に弱い……当たったのかしら、それとも、単に相手の実力が低かったのかしら」
 珠璃の推測はどちらが正しかったのかはわからない。
 ただひとつ確かなことは、見事に敵へ先制攻撃を食らわせることができたということだ。
「へっ、まあいいや、そんじゃああたしも暴れさせてもらうよっ!!」
 第一波を炎狐で蹴散らし、続くは多喜が飛び込んでいく。
「おらおらおらぁっ!」
 両掌から発せられる高圧電流。多喜が腕を振る毎に、そこから伸びた電流が鞭の如くしなり、敵を薙ぎ払っていく。
 ある個体は水蒸気を上げて蒸発し、またある個体は床にへばりつき溶けて消えていく。
「本物の商品もあること、忘れないでほしいのだけど」
「忘れてねえよ、だからあたしもカブ使ってないんだって」
 スターライダーとしてはカブを使わず、サイキッカーとして行動している多喜。
 倉庫の棚へと電撃を張り巡らせる。
「ashes to ashes,dust to dust,past to past……」
 棚の区画全体に電流が走り、大きな電磁檻が形成されていく。
「収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
 電撃が、商品の振りをして待機していたオブリビオンや一口チョコロボたちを打ち砕いていく。
「愛とは寛容であり、愛とは親切である――お勉強になったかよ!」
 漏らすことを許さない電撃の網目の向こう、倒れた怪異たちへと多喜は告げるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

二條・心春
くっ…卑怯ですよ、こんなにかわいい敵なんて!
…ですが、敵であることに変わりはありません。厳しい戦いになりそうですが、頑張りましょう。

相手がチョコレートなら、炎による攻撃が良く効くはずです。ここは【召喚:炎魔】でウコバクさんに燃やして…溶かして?もらいましょう。先手を打ってチョコレートを溶かしてしまえば、相手も自分の強化はできないですよね。……うぅ、かわいそうですが、ひと思いにやっちゃってください!
炎をくぐりぬけて接近してきた相手には、私が槍で応戦します。敵の攻撃は「第六感」で避けて、槍に炎を付与した「属性攻撃」を当てる感じでしょうか。


フルム・サーブル
バレンタインというと、UDCアースの日本の風物詩だね
職人たちの手による美しいショコラは僕も気に入るところだけれど…
まさかこんな殲滅対象まで居るなんてね
世の中、分からない事も多いものだ

さて、僕のすることは怪力・力溜め・気合いを活用した妖精さんパンチ
小さくてかわいいというキャラ被りをしているところだし
向こうだってきっと寄ってくるだろう、そうだろう?

寄ってこなくても僕が追跡するだけの話だけれどね
倉庫の中で聞き耳を立てて、怪しげなところを探っていこう



「怪しいところを探ろうと思っていたけれど、まあこれはこれは……」
「バウー!!」
「当たるか!」
 倉庫へと踏み込むなりとびかかってきた犬型のチョコ怪異。
 それをひらりとかわすひとりのフェアリー。フルムその人である。
 一般的なヒューマンからすれば小ぶりに見える怪異だが、身長30センチ程度のフェアリーにとっては充分な大きさ。獰猛な大型犬にとびかかられているかのような心地だった。
「ワウッ!」
「寄ってきたところを……叩くっ!!」
 再度の噛み付きを実行するチョコ怪異に対して、フルムはカウンターでの殴りを選択する。
 できるだけ敵を引きつけてから、腕を振るう。
 それはチョコ怪異が飛びついてくる速度よりも速かった。
 拳がチョコ怪異の顔面にめり込み、ヒビを入れ、砕く。
「これなら如何かな?」
 そう尋ねたときには、すでに対象は破壊されていた。
「コケーッ!」
 続けざまに鶏チョコ怪異が跳びかかる。攻撃を終えた後、腕が伸びきったところの硬直を狙った一撃。
「甘いわ!!」
 フルムはその場で身をくるりと回転させた。
「破っ!!」
 伸びきった腕をムチのようにしならせる、遠心力を利用した妖精さん裏拳が鶏チョコ怪異を打ち砕く。
「ふぅ……やはり小さくてかわいい僕を見て、キャラ被りだと焦って寄ってくるようだね」
「た、確かにかわいいです……」
 慢心気味、あるいはツッコミ待ちのフルムに対して全肯定の態度を見せたのは心春だった。
「相手もかわいいうえに動物型……正直、厳しい戦いになりそうです」
 心春の眉は困ったようにハの字になっていた。厳しい戦いになる理由は戦力ではなく、心情的な理由のようだ。
「かわいいものや美しいものを失くしてしまう葛藤はわかるよ……でも大丈夫さ」
 群がってくる怪異チョコを跳ね飛ばしながらフルムは心春を鼓舞していく。
「儚い散り際もまた美……彼らのかわいいが行きつく先なんだ。思う存分やってくれたまえ!」
「は、はいっ! ひと思いに……やりますっ!!」
 フルムの攻撃はパンチである分、処理できる数が少ない。
 それをカバーするように、心春は炎の悪魔を召喚した。
「みんな、溶けちゃってくださいっ!」
 先ほどの珠璃の炎は狐型だったが、今度のは人型だ。
 体当たりするように一直線に飛んでいく炎。チョコ怪異を舐めるように溶かしつくしていく。
「フニャ~……」
 チョコ怪異の悲し気な鳴き声が響く。
 もうひとつの狙いは、彼らのカロリー・イズ・ジャスティス封じだった。
 倒れたチョコレート製ロボットのかけらなどをついばんで、自らのツヤと素早さを上げようとするチョコ怪異もいた。
 圧倒的な火力によりチョコレートを消し炭にすることで、強化を防ごうという狙いだった。
「あぁ、そんな声あげられると、手加減したくなっちゃう……」
 心春は、幾度も炎を緩めてやりたくなりながらも、心を鬼にしてチョコ怪異を溶かしていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

虚偽・うつろぎ
チョコレート生命体とは違うのかな
とりあえず戯れておくとしよう


UCはジバクモード使用

まだ数は残っていそうだし
うろちょろ動き周りながら7本の腕を振り回してぺちぺち攻撃してまわるよ
なるべく敵が僕に向かって来るよう立ち回りたいね

チョコロボには攻撃
ショコラーズには防御重視
7本の腕で体を囲むようにして防御を固め軽く逃げ回るよ
自分に引き付け誘き寄せるのが目的
ジバクモードの効果範囲内にある程度集まったらジバクモード発動
(なるべく多くを巻き込みたいが、時間が掛かりそうなら約2/3の敵で発動)
技能:捨て身の一撃を駆使して渾身の自爆をプレゼント

爆破だヒャッハー

自爆後はボロボロになってピクピクしてると思います



(「チョコレート生命体とはまた違うのかな、不思議な生き物だよね」)
 そんな風に考えているうつろぎもまた、ブラックタールなのでわりと不思議な生き物寄りなのであった。
「ガオー」
 跳んでくる虎型チョコ怪異を伸ばした手でハエ叩きのようにはたき落とす。
「クルックー」
 跳んでくる鳩型チョコ怪異を以下同文。
 2本の腕で防御を固め、かつチョコロボは撃墜しながらうつろぎは倉庫の奥へと突き進んでいく。
 格子のように区切られた通路、目指すのは中央付近。うつろぎが自らの目的を果たすためには、そこが最適と判断したのだった。
 道中、戦いで破損したチョコの詰め合わせが転がっているのを見る。
 破れたパッケージからは溶けたチョコが流れ出し、チョコ溜まりを形成している。
 猟兵たちもなるべく被害を押さえて戦おうとしていたが、いざ戦いともなればそうは言ってもいられない。
 そのチョコ溜まりで寝転がり自らの身体にツヤを出すチョコ怪異たちもいた。まるでサバンナの野生動物のようだ。
 このへんでいいだろう、そう判断したうつろぎは足を止めて振り向く。
「めぇー」
 自らを追い、群がってくるチョコ型怪異たちを見すえて、ユーベルコードを発動する。
「ゴッドうつろぐアタック……!」
 胸の奥が熱くなる感覚。己の内に眠っている力を全て絞り出し、自身を中心に大爆発を巻き起こす。
「神風となり……HPは1になる……!」
「ぴぎゃー!!」
 獣たちの鳴き声が、爆風にかき消されていく。
「道はできた……後は、よろしく、ね……」
 抉れて土がむき出しになった地面に、うつろぎは横たわってピクピクと痙攣しているのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

レコ・ジェヒ
バレンタインかぁ。
いろんなチョコ売ってて見てるだけでも楽しいよね。
なのにいくら可愛くてもそこにオブリビオンを混ぜるなんて……
混ぜるなんて……
えっと、実害がなければアリ、かな?(チョコっとショコラーズを見た感想)

でも実害が出ないはずないし、やることはちゃんとやるよ。
だいぶん倒されてるみたいだけど、まだ沢山いるのかな?
僕は手数のあるほうじゃないから一度に沢山来られると困るかも……。
エレメンタル・ファンタジアで炎を召喚しようかとも思ったけれど、暴走しちゃったら困るしライオンライドで戦闘力を強化して地道に一体ずつ倒していくよ。

……このオブリビオンの形した、本物のチョコがあればいいのに。



「また派手にやったね……」
 レコは冷凍倉庫中央で巻き起こった爆発を眺める。
 凍てついた冷気は熱風で暖められ、南風のように吹き抜けていく。
 揺れるレコの黒髪。その黒が、不意に金色へと変わる。
 髪は髪でもたてがみだ。召喚された黄金のライオンがすっくと立ちあがったのだ。
 ビーストマスターとして、レコはライオンを駆り、残ったチョコ怪異を蹴散らしていく。
「ピーッ!」
 インコ型チョコ怪異は、文字通り小鳥のごとく跳ね飛ばされる。
「ガオッ!」
 ライオン型チョコ怪異もいたが、その力の差は明らかだ。
 獣たち、食物連鎖の頂点に立つ獅子が、大きな口を開き、その鋭い犬歯でバリボリとチョコ怪異を噛み砕いていく。
「せっかく可愛かったのに……オブリビオンじゃなければね……」
 かわいらしい見た目なこともあり、レコはわずかに怪異へと同情を寄せる。
 だが、それもわずかだ。実害を起こす相手ならば、猟兵として厳正に対処しなくてはならない。それはレコもわかっていたし、だからこそ黄金の獅子と共に群れの処理に当たっている。
「これで……終わりっ!」
 最後の1体を獅子の前足で踏みつぶすと、レコは名残惜し気に呟くのだった。
「……この形のチョコが、本当にあればいいのに」
 もしかしたらショッピングモールには似たようなものがアニマルチョコとして出品されているかもしれない。
 だが、それを考えるのにはまだ早い。

 彼らのボスが、まだ残っているのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『灼紅の女王・ブラッドクィーン』

POW   :    敵から護る赤黒くおぞましきモノ
【敵対 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【絡みつく赤黒き触手の群れ】から、高命中力の【高粘着性の強酸溶液】を飛ばす。
SPD   :    解放されてはならない狂気の姿
【世界に隠匿された真の邪神の身姿 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    死しても逃さぬ邪悪なる降霊
【 自身に挑んで返り討ちにあい支配された敵】の霊を召喚する。これは【生前に使用したユーベルコード】や【得意としていた武器】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアイリス・スノーキャッスルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●リアルじゃバレンタインもう終わったけど、もうちょっとお付き合いください(悲しみ)
「よくもやってくれたわね……おかげで私の計画は滅茶苦茶よ!」
 猟兵の自爆攻撃による爆心地、その中央で揺らめく影がある。
 プラチナブロンドの長髪にクリムゾンドレスを着こんだ美しき女王。 その下腹部は、ドレスと同じ色の、醜い触手が蠢いていた。
「こんなに破壊してくれちゃって……許さないわ」
 女王は鋭い視線で猟兵たちをねめつける。
 彼女は倉庫中央、商品コンテナの上に鎮座していた。
 そのコンテナ付近で猟兵が自爆攻撃をした結果、コンテナが吹き飛びダルマ落としのように地上へと引きずり降ろされたのである。
 居城を荒らされ、配下をことごとく失い、女王は何本もの触手をブンブンと苛立たし気に振り回す。
 そうして叫び、宣言するのだった。
「バレンタインを、彩ってあげるわ。あなたたちの鮮血でね!!」
レコ・ジェヒ
なんだかもったいないなぁ。
折角(上半身は)美人なのにカリカリ怒っちゃって……女王サマならもっとこう優雅に、泰然としてなきゃだめでしょ?
まあ、配下いなくなった上に拠点潰されかかってるんだから気持ちはわからなくもないけど。

「ライオンライド」でライオンに乗ったまま戦うよ。
少なくとも僕一人よりは全然マシ……だと思うし。
返り討ちにした敵を支配してその霊を召喚するなんて、さすが女王サマえげつない。
でも触手召喚したり理性を失うのは女王サマとしてはどうなのかなー?

……まあどの攻撃も受けたくないんだけどさ。僕、あまり強くないから。

「もふもふおしくらまんじゅう」で一時的にでも動きを止められるといいんだけど。


フルム・サーブル
せっかちな女王だねぇ
バレンタインデーがやられてもまだホワイトデーが残っているじゃないか
可愛い系ショコラなら、むしろホワイトデーが本領の発揮し時ともいえる

まぁともかく。
バレンタインを彩るなら、君のようなゴシック風の暗赤色のほうが
僕たちの鮮やかな赤色よりチョコレート寄りだし似合う気がするね
その触手、妖精さんチョップで斬り落として差し上げよう

いやしかし、こうも粘性があると
フォンデュとかファウンテン的な属性を感じるね

(ツッコミ推奨キャラです、アドリブOK)



「なんだかもったいないなぁ」
 レコは金色の獅子にまたがったまま女王を見上げてそう呟いた。
「せっかく、美人なのにさ。腰から上は」
 醜悪な触手まみれの下半身に比べ、見目麗しい上半身。
「でも、そんなカリカリ怒っちゃってさあ」
「怒らせたのは、あなたたちでしょう!」
 女王は金切り声を上げるとドレスの裾がひるがえる。
 飛び出してきた触手が幾本もの槍となり、レコ目がけて伸びていく。
「はっ!」
 レコの掛け声に合わせて、獅子は横っ飛びに回避する。先ほどまでレコがいた箇所、アスファルトが砕けて破片が舞う。
「まあ、気持ちはわかるよ? 兵隊やられて、この城も落とされようとしてるんだからさぁ」
 猛烈な攻撃、その回避を騎乗した獅子に任せてレコは泰然と女王を見上げたままだった。
「ぐぬぬ……小癪な……!」
 闇雲に触手を繰り出す女王、その耳元で誰かが囁いた。
「せっかちな女王だねぇ」
「なっ……!」
 レコに似た口調、似た体格。それはフルムだ。フェアリーの小柄な肉体を活かし、突き刺さった触手の上に乗り女王に文字通り肉薄していた。
「バレンタインデーがやられてもホワイトデーが残ってるじゃないか。いったん逃げて戦略を整えればいいだろうに」
 怪異に助言を贈るフルム。余裕の表れか、それとも生来の気質なのか。
 それを女王は知る由も無し、また彼女はそういった言葉の多くを侮蔑と解釈するような性質だった。
「この、ハエめっ!」
 別の触手が鞭のようにしなり、フルムの横っ面をひっぱたこうとする。
「まあ、それはともかく――」
 フルムの手が指先までピンと反りかえる。
「バレンタインを彩るなら、君のようなゴシック風の暗赤色の方が、僕たちのよりに似合うと思うよ」
 水平に一閃。
「なっ……!」
 触手が割られた。手刀で。真っ二つに。
「おおー、おみごとだねぇ」
 鮮やかな手並みを拝見したレコが、感嘆の声を上げる。
「矮小な存在が……私を愚弄するでないっ!」
 召喚される闇の騎士。かつて女王を撃ち滅ぼさんとした者の成れの果て。
「させないよっ!」
 駆けつけた援軍をレコが遮る。騎士の前に現れた、王城の正門を彷彿とさせる大扉。そのかんぬきが抜かれ、観音開きに引き開けられる。
「メエエエェェェ~~~~」
 現れたのは怒涛の羊たちの群れ。先ほど戦ったチョコ怪異たちを想起させる動物たちの群れ。
「!!!」
 もふもふな羊に押し流され、騎士は身動きが取れなくなる。
「先にそちらから叩かせて、もら、うっ!」
 そこへ更にフルムが浮遊し、頭上から騎士目がけて、脳天唐竹割りを叩き込む。
「!!!」
「唐竹のように割れるがいい」
 特に見せ場なく、左右に割られて消滅する騎士。女王は歯がみし、触手を何度も勢いよく床へと叩きつける。
「これならば、割れないでしょうっ!」
 女王は絡みつく赤黒き触手の群れから、粘着性のある強酸溶液を飛ばす。
「くっ……!」
 さすがにこれはフルムの手刀でも切り捨てられない。頭から強酸を被り、身体中から白煙を上げる。
 わずかに傷は負ったが、総じて初手としては充分な布石を打つことができた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

鮮血でバレンタインを、ねぇ。
そういや誰かが言ってたっけ、血のバレンタインって言葉が
どうとかこうとか……
そんなのはチョコ食い過ぎの鼻血で十分だよ!

懐に忍ばせておいたカブの予備パーツを触媒に、
手近なチョコロボの残骸と合わせてメーザー銃を作成。
棚を遮蔽にしながら、銃撃戦を仕掛けるよ。
…とはいえ、アタシも銃の扱いは苦手なんだよね。
あくまで牽制射にとどめて、クリーンヒットは狙わない。
女王の気を引く程度にするよ。
たまーに残っているロボや怪異の残骸やらを放り投げて、
アタッカーの付け入る隙を作ろうじゃないのさ。


二條・心春
あのかわいい敵の次がこれとは…ギャップがえぐいですね…(触手を見ながら)。でも、これで心おきなく戦えそうです。バレンタインを彩るのは血なんて物騒なものじゃなく、綺麗なチョコレートと、人々の笑顔です!

敵も召喚術を使うのですか。では私もタブレット型の媒介道具を使って、槍を持った魚人型UDCを呼び出して戦わせましょう。あの子が敵の霊を引き付けている隙に、【ウェポン・ブースト】を使って、一気に距離を詰めて女王を攻撃します。敵の反撃は「第六感」「オーラ防御」を使って防ぎましょう。



「鮮血でバレンタインを、ねぇ」
 多喜は現況を眺めて吐き捨てる。
「血のバレンタインがどうたらこうたらって聞いたことあるけど……今は酸のバレンタイン祭りなのかねぇ。なんとかの春のパン祭りみてぇな?」
 強酸をまき散らす女王を睨みつける。軽口と反比例して、その視線は鋭く、怒りに満ちていた。
「バレンタインに流す血は鼻血で充分だよ!」
 多喜の手には、その場でクラフトしたメーザー銃が握られている。
 主な材料はスターライダーとして持ち込んでいた宇宙カブの予備パーツだ。
 そのアクセントに付け加えられたのはチョコロボのスクラップ。
「チョコは隠し味に使うと美味いんだぜ、ってな」
 ユーベルコード、熱線銃作成。UDCアースの科学を越えた技術の粋で、女王の顔に照準を合わせる。
「銃撃か……!」
 避けるべく横にスライドする女王。
 それは、多喜『たち』の計算通りだった。
「一直線に……貫きます!」
「!!」
 横から、雷光の稲穂が伸びる。心春の突き出した槍の矛先だ。
 女王は身体をブリッジ気味に逸らし、突きをかわそうとする。
 しかし、心春の狙いは胴体だ。避けきれず脇腹に槍の先端が食い込んだ。
「上手く制御できれば良いのですが……!」
 槍の柄に搭載されたブースターが発動する。
「うっ……ぐっ、ぐああぁぁっ!!!」
 絞り出すような女王の叫び。脇腹に突き刺さった槍が、爆発的な推進力を伴ってその身を穿とうとしているのだ。傷口を抉られ、体液が飛散する。
 それは人間の血液に似た、鮮やかな赤色だった。
「こんなものは……要りません!」
 返り血を浴びながら、心春は叫ぶ。
「バレンタインを彩るのは、こんな物騒なものじゃなくて……」
 ブースター、モーターの回転数が上がっていく。
「綺麗なチョコレートと、人々の笑顔ですっ!」
 ある瞬間を境に、槍の抵抗が軽くなった。
「か、はっ――」
 女王の腹部を貫通し、飛んでいくブースター槍。射線上にあったコンテナを6つほど貫いて停止する。
「よくも……よくもよくもよくもぉっ!」
 腹腔を手で抑えながら、女王は更なる悪霊を降臨させる。
 それは平易な衣服を身にまとい、手には鎌や斧を携えていた。
 村人や木こり、平民だ。心春が望む、平和な人々の姿。
「はいはいはい、騎士団は羊の相手で打ち止めなのね。案外戦力しょぼいねぇ」
 多喜がメーザー銃を構える。今度の狙いは悪霊だ。
 先ほどは牽制と注意を惹くことで心春が突撃する隙を作ったが、今度は配下の相手をすることでサポートに回る腹積もりのようだ。
「お嬢ちゃんにゃこういう相手の荷は重いだろ?」
「感謝します!」
 一旦離脱して、得物である槍の回収へと向かう心春。
「銃の扱いは苦手なんだけどね――」
 ひとりの平民が、多喜へと鎌を振り上げる。赤い光線。平民の手から鎌が落ち、金属質な音を立てる。
「こんだけ的がありゃあ、適当に撃っても当たるってもんさ!」
 メーザー銃の熱線を受け、そのまま前のめりに倒れる鎌使い。
「さぁて、こっからはあたしのターンだ。使えるモンはなんでも使って、援護してやろうじゃないかい!」
「く、くおおぉぉぉぉ!!」
 度重なる猟兵たちの動きは、女王の目には蛮行に映る。
 そして、ついに怒りが許容量を超えた。
 ドレスが破け、露わになる素肌。その柔肌に触手が食い込み、同化していく。
 全身に絡み付く蛇めいた触手。それは解放されてはならない狂気の姿だった。
 血の色をした瞳は焦点を失い、口は三日月型に歪んでいる。
「おおぉおおおおおおぉぉおおおぉぉぉ!!!!」
 超攻撃力と超耐久力を得た女王。戦いは、佳境へと向かっていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

虚偽・うつろぎ
ふぅ、死ぬかと思ったよ
そしてまた特攻タイムだね
自爆ばかりだと面白くないから今度はシンプルに行ってみようか
ではレディ、ショータイムだよ


技能:捨て身の一撃を最大限に駆使して
トッカンモード(攻撃力重視)を使用
最初から相討ち狙いだね

へいへーい、こっちこっちー
と高速で反復横飛びをしてアピール

こちらに向かってきたら
これが必殺のぉーうつろぎタックル!
と叫んで頭突きで突貫しときます
敵の真正面からドーンと
カウンターみたいな感じで外さないよう狙いを定めてね

多分『う』の部分はぺちゃんこになります



「へいへーい、こっちこっちー」
 女王を呼ぶ声がする。その声の主は、先ほど自爆したはずの不定形、うつろぎその人であった。
 高速で反復横飛びをする不定形、ブラックタールが嫌でも視界に入ってくる。
「うああああぁぁぁ!!!」
 それが女王の居城の大半を滅ぼした張本人だと、理性が忘れても彼女の本能には刻まれていた。売り言葉に買い言葉、挑発に乗るような格好で突進する女王。
 彼女の表皮を構成する触手は錐状に変形し、抱きしめた相手を穴だらけにするだろう。
 アイアンメイデンと化した抱擁を前に、うつろぎは逃げようとしない。
 己の身体を前傾気味にし、力を溜め始めた。
「これが必殺のぉー……」
 足腰に力を溜めて、一気に解放する。バネのような体当たり、真正面からぶつかっていく。
「うつろぎタックル!」
 突貫モード。その一撃は通常の180倍もの威力であり、女王の強化をも容易く打ち破る一撃だった。
 常ならば、女王も同じような手を二度も食わないだろう。
 しかし、うつろぎの前回の自爆は実に効率的に女王の配下を滅ぼしていた。
 理性を失っていたことに加え、多くの配下を失った怒りが、女王の目をくらませ、足を掬う余地があったのだろう。
「―――」
 至近距離での自爆を受け、女王は触手が剥がれ、後ろへと吹き飛ぶ。
 そのまま転がり、最後はうつぶせの形で倒れ伏す。
「そんな、馬鹿、な……」
 手を伸ばし、立ち上がろうとする女王だが、既に命の灯は消えようとしていた。
 そのまま力尽き、息を引き取る。
「決まった、ね……」
 もちろんうつろぎもただではすまない。最初から相打ちを狙った特攻戦術。反動も大きい。
 女王の元に近寄り生死を確認したところで、意識が途切れてその場にくずおれた。
 その際、うつろぎの身体を構成するパーツの中で一番被害が大きかった『う』がぺしゃんこに伸ばされており、まるで女王のダイイングメッセージであるかのように見えていた……それが結末、喜劇じみた真相なのだった。

 とにもかくにも、かくして狂気に囚われた女王と猟兵の戦いは、たったの一合、うつろぎの自爆攻撃により幕を下ろしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ショッピングモール』

POW   :    買い物を満喫する

SPD   :    ウィンドウショッピング

WIZ   :    イベントに参加する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ショッピングモール・アフターケア
 人々が知らぬ間に、密かに平和を取り戻したショッピングモール。
 バレンタインチョコ関連びフェアが開催される運びになっていた。
 冷凍倉庫の被害もあり、ワケあり品として安値で販売されている高級ブランドチョコも多い。
 その中にはチョコ怪異に酷似した、一口大のアニマルチョコもあったりする。
 万が一チョコ怪異が残っていないかウィンドウショッピングで足早く確認してもいいし、安くなったチョコを購入して少し遅めのバレンタイン気分を満喫するのもいい。
 他にも、少なくなったチョコを補填するためにモール側で『手作りチョコ教室』なるイベントを開催しているようだ。
 イベントに参加してモールの売り上げに貢献してやるのもいいだろう。

 それでは、遅ればせながらハッピーバレンタイン!
虚偽・うつろぎ
WIZ

ふぅ、死ぬかと思ったよそのに
さて、ではとりあえず手作りチョコ教室なるものに参加してみるかな
これは僕のアートセンスに対する挑戦だね
よろしい、我がスキル、披露してみせよう

という訳で自分の等身大チョコに挑戦
体の書体美と7本の腕のおぞましくも冒涜的なまでにSAN値直葬な狂気を表現してみせるよ

問題は腕とか自重に耐えれるかだね
ボキッと折れそうさ

アドリブその他ご自由にどぞー


数宮・多喜
【アドリブ改変・絡み大歓迎】

いやー寒かった!
冷凍庫に比べりゃここは南国パラダイスみたいなもんじゃねーか!
せっかくだし楽しもうじゃ…ん?
手作りチョコ教室?
今年は買った義理チョコで済ませたけど
人数が人数だったからなぁ…
来年に向けて習っとくか!
えっと湯せんして、型に入れて、テンパリング?
…なかなか手間かかるんだねぇ。
……ブラックタールにも見えるんだけど、
まさか混じってたりは……まさかね。

出来栄えは…まぁ、どうだろうね!
せっかくだし、バレンタインの追加ってことで
お土産にしようかね!



「いやー寒かった!」
 ショッピングモールの一画。
 そこで大きく伸びをする多喜の姿があった。
 両腕や腰を伸ばし、冷気で固まった関節を凝りほぐす。
 2月の空気はまだ肌寒いが、それまで戦っていた冷凍倉庫に比べたら天と地ほどの差がある。
「さーて、ここらは何をやってんのかね」
 多喜は悠然と闊歩する。
 自らが守った平和をかみしめるように、あるいは皇帝が凱旋するかのように。
「せっかくだし楽しもう……ん? 手作りチョコ教室?」
 そうして、目に入ったのはチョコ教室の看板だった。
「手作り、手作りねぇ……」
 多喜は暫時、沈思黙考する。今年のバレンタインチョコは市販の義理チョコで済ませてしまった。
 配る人数が多かったこともあるが、来年は手作りに挑戦してみてもいいかもしれない。
 それに、義理ではないチョコを作るときが来るかもしれないし……。
「そ、そうだな、来年に向けて習っとくか!」
 自分に言い聞かせるようにして教室へと顔を出す多喜。
「おお、これはなんとおぞましく冒涜的、まさに新鮮! まさにSAN値直葬だよ!」
 そこではうつろぎが自らを模したチョコを作っていた。
「……見なかったことにしてぇ」
「はっはっは、不定形が定形を作るというのも実に面白いと思わないかな」
 うつろぎ、という書体で構成されたチョコ胴体に、7本のチョコ腕をくっつけようとしている。
 だが、自重やバランスの面で制作は難儀しているようだ。
「つーか生きてたのかよ」
「いやあ、死ぬかと思ったよ」
「殺しても死にそうにねーけどな」
 多喜はうつろぎの狂おしい創作物からは目を背け、普通にチョコを作りだす。
「えーと、湯せんだよな」
「そうとも、チョコを直接湯に入れて溶かしてはいけないよ」
「それで型に流し込んで、と……」
「駄目だよ、人生型にはまった生き方では。もっと柔軟に生きなきゃ」
「てめーは自爆特攻の型にはまってんだろうが!」
 うつろぎを無視しようとした多喜だが、あえなく失敗に終わる。
「いやいやひとえに自爆といっても色々型があるんだよ。まず相打ち覚悟の自爆でしょ? 次に自らの意思とは無関係に発動する型、これなんかは巻き込まない為に――」
「あー、いかんいかん、真面目に聞いたら損するだけだ。テンパリングやるか」
 粗熱を取っている多喜。その様子を観察するうつろぎ。
「結構上手だね」
「ええい寄るな、ブラックタールが混じるだろーが!」
「その手があったか!」
「ねえ!」

「ふう……ま、精神的な妨害があったにしちゃ良くできた方なんじゃねーか」
 しばらくして、自作のチョコレートを手に、頷く多喜。
 正気度が下がる中で作ったにしては上出来だ、満足のいくものだった。
「僕の方もできたよ、芸術作品が!」
 うつろぎも等身大チョコを眺めて満足気だった。
 ダークチョコレートを使ったことで、本人と見間違うばかりの出来栄えになっている。
「まあ、作れたのは良かったな、おめでとうさん」
 自作チョコは持ち帰りOKと聞いて、土産替わりに持って帰ろうとする多喜。
「で、それどうするんだ?」
「……そこまでは考えてなかったなぁ」
「作ったんだから責任持っててめーでなんとかしろよ……」
「そうだね……ああ、いいこと考えたよ!」

 その後、そのショッピングモールの冷凍倉庫の片隅には、うつろぎのチョコ像が守り神として放――安置されているとかいないとか。
 めでたしめでたし。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト