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力も入れずして天地を動かし

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●グリモアベース/目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ
「【アルダワ魔法学園】にオブリビオン迷宮が出現したアルヨ! そこ、『またか』みたいな顔をするんじゃないアル! ワタシだって『またか』って気分アルヨ!」
 グリモア猟兵のミャオ・ニャンニャン(謎のヒーローマスク・f13204)はマスクに刻まれたYの字の覗き穴から、特徴的な口調と声で任務を告げる。その中身は暗闇に包まれており、どんなに覗き込んでも、あるいは光で照らそうとも、その素顔は決して伺い知れない。

「今回発見された迷宮は【騒霊迷宮】と呼称される迷宮アル。その名の通りフロアのあちこちで騒霊、つまりポルターガイスト現象が発生し、普段は動かないものが浮かび飛び交う迷宮アル。そういうのを掻い潜りつつフロアボス災魔をやっつければ迷宮攻略、任務達成アルヨ! ね、簡単アルヨネ?」
 このグリモア猟兵、自分が戦闘に参加しないからと随分気安く言ってくれるものだ。まあそれはともかくとして、迷宮を攻略してフロアボスを倒す。それでこの件については万事解決となるはずだ。

「まず入口に入ると、見えない不思議な力が奥へと扉を塞ぐと同時に、床をタイルを回転させながら飛ばしてワタシ達侵入者を追い払おうとするアル。とは言え不思議な力も、タイルの枚数も無限大じゃないアル。飛ばすタイルがなくなるまで付き合ってあげれば、扉を塞ぐ分の力もこじ開けられる程度に弱まって奥へと進むことが出来るはずアルヨ。その先もそれ系の見えない力を操る奴とか、本来動かないハズの物が動いて襲い掛かるとかあると思うアルケド、そういうのも全部ひっくるめてやっつけてくるアルヨ!」
 つまりは仕掛けを破り、奥へと進み、立ちはだかるもの襲い掛かる奴は全部倒す。ハック&スラッシュは迷宮に挑む者にとっての必修科目だ。

「それじゃあ迷宮入り口まで転送するアルヨ。グッドラックアル!」


前後
 皆さん、初めましての方は初めまして。以前プレイングを送って下さった方は今回も御贔屓にありがとうございます。前後です。

 シナリオ内容について一応捕捉です。

 第1章は床のタイルが飛んでくるのでひたすら身を守るなり避けるなり迎撃するなりして、全てのタイルが剥がれるまで耐えれば扉が開いて奥に進めるようになります(フラグメントクリアです)。知ってる人向けに言えば「ごまだれーなアクションゲームのアレ」を想像して頂ければ分かりやすいかも知れません。
 第2章以降も概ねそう言った「動かないものが動き、飛ばないものが飛ぶ」的な敵との戦闘になると思います。なお当シナリオは、そう言った現象の心霊的脅威よりも、物理的脅威に重点を置いたものになると思いますので、ホラー要素は皆無または希薄になると思います。ご了承くださいませ。

 通しで参加して頂ける方にはいつも感謝させて頂いております。勿論、第2章以降からの参加や、特定章のみのスポット参加、同じ章の連続参加等も大歓迎です。
 皆さんがプレイングを通して寄せて頂ける期待にリプレイで応えられるよう尽力しますので、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『襲い掛かる無数のタイル』

POW   :    タイルの体当たりをひたすら耐える

SPD   :    タイルの体当たりを素早く回避する

WIZ   :    タイルが体当たりする前に撃ち落とす

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月凪・ハルマ
へぇ、これがポルターガイスト現象ってヤツか
(実は初体験なのでちょっと興味がある)

まぁ、だからってわざわざ痛い目に遭いたい訳じゃない
ここは頑張って全部躱すくらいの気持ちでいこう

◆SPD
飛んでくるタイルは基本的に【見切り】【残像】を駆使して
回避していくスタイル

躱しきれなければ【武器受け】、または
【ガジェットショータイム】で防壁を召喚して防いでいく

あとはタイルの動き方にも注意を払っておく
直線的な動きしかしてこないならまだ楽だけど、曲がってきたり
急に方向を変えてこられたりするとちょっとめんどくさいからな

しかしコレ、回避訓練には結構いいかもしれないなぁ
まぁ、いつ終わるか分からない点はちょっとアレだけど



●タイルよ止まれ、時間よ進め
「へぇ、これがポルターガイスト現象ってヤツか」
 月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)がフロアに進入すると同時に、迷宮の床を構成する正方形のタイルが、クルクルと回転しながら浮かび上がる。話に聞いてはいたが実物を見るのは初めてだとハルマは興味津々だ。尤も、ポルターガイスト経験者というのも珍しい部類には入ると思うのだが。
「まぁ、だからってわざわざ痛い目に遭いたい訳じゃないからな。頑張って全部躱すくらいのつもりでいこう」
 体の腱を伸ばしながらハルマはタイルの軌道を見極めんと集中して見据える。浮かび上がった無数のタイルは、ハルマを打ち据えんと空飛ぶ凶器と化し襲い掛かる。

 ハルマはステップを交えながら、自ら目掛けて飛来するタイルを【残像】を残しながら【見切り】回避していく。その動きは最小限である。下手に大きく動いて体の均衡を崩せば、次に襲い掛かるタイルを避け切れない恐れがあるためだ。
 ハルマは五枚六枚と順調に避けていくが、次にハルマに立ちはだかるのは二枚同時だ。一枚を避けると同時に、二枚目は両手に握る【魔導蒸気式旋棍】を構え、【武器受け】して防ぐ。タイルが砕け、破片の一部がハルマの仮初の肉体に襲い掛かる。
「思った以上に重いなこれ。直撃した時の事なんて考えたくもないぞ」
 破片によるダメージもさることながら、砕けた時に体に感じた重い衝撃がハルマの足を後ろへと滑らせる。そう漏らしている間もタイルはさらに数を増やし、このままうまく避け続けられるとも限らない。

「【ガジェットショータイム】。来れ、敵を遮る障壁よ」
 彼の言葉に呼応するように、目の前には己の体躯程の壁を持ち、足に付けたキャスターで自走するガジェットが出現した。それはハルマに追従すると共に彼とタイルを遮る守りだ。
 壁はタイルが直撃する度に壁自体をバネ仕掛けで仰け反らせることで自身へのダメージを最小限に抑える機構を備えている。そのため多少は距離を取る必要はあり、壁自体も一面だけのため全ては防げないだろうが、ハルマの回避を補助する分には十分過ぎる性能だ。召喚したガジェット防壁で死角を補いつつ、ハルマは襲い掛かるポルターガイスト現象に順調に対応していく。

「あとはタイルの動き方だが」
 もう一つ、ハルマが神経を注力させていたものがある。タイルが馬鹿正直に真っ直ぐ飛んでくるとは限らない、という点だ。やはりと言うべきか、ガジェット障壁を回避するようなカーブ軌道でハルマ目掛けて襲い掛かる。
 幸い、彼自身そのような攻撃は予想の範疇にあり、また途中で軌道を変えたことで勢いが殺されたこともあり、トンファーで一撃殴打すると、それはビスケットのように軽々と砕かれる。
「しかしコレ、いつ終わるんだろうなぁ。まぁ、回避訓練には結構いいかもしれないけど」
 だだっ広いフロアには、まだまだ夥しい数のタイルが残っている。これが全部剥がれるまで終わらない。先は長そうだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナズヴィ・ピャー
【アドリブコミカル他全部鬼盛り】
ふむ、騒霊現象ですか
こんな事もあろうかと…
博士のケツを蹴り上げて作らせた魔導蒸気管があります
その名も対騒霊管!
説明書によるとパキーン(飛んできたタイルで粉々


…ふむ、騒霊現象ですか(便利アイテムは無かった事にした
想定外のアクシデントがあったような気がしますが何もありませんね

それはそれとして
ニョホ略社の資料室で見かけた事のある罠というか仕掛けですね(蘊蓄
資料によるとグエー(蘊蓄垂れようとしてたら後頭部にパカーン

要はタイルを避けるか破壊すれば良いのです(簡潔な説明
機動補助管で三次元機動
壁を背にして飛んでくる方向を限定
避けきれないものは副椀で防いだり受け止め+タイル返し



●夢をかなえてナズえもん
「ふむ、騒霊現象ですか。これはニョホ略社の資料室で見かけた事のある罠というか仕掛けですね」
 フロアを飛び交う無数のタイルを光なき瞳で追いながら、そう語るのはナズヴィ・ピャー(不忠犬ナズ公・f03881)だ。
「資料というか常識ではありますが、力の発現、つまり出力には必ず入力が伴うものです。今こうして飛んでいるタイルも、物理的か霊的に問わず、何らかの入力によってグエッ」
 蘊蓄など知った事かとばかりに飛来するタイルがナズヴィの後頭部に直撃する。彼女はカエルが潰れたような声を絞り出し、顔面から地面に激突する。ビクン、ビクンと体を痙攣させ、地面を掴むように上半身を持ち上げ、プルプルと首を振るうと何事もなかったかのように立ち上がる。当たり所が良かったらしく、意外にもダメージは少なかったようだ。

「ええ。こんな事もあろうかと、博士のケツを蹴り上げて作られた魔導蒸気管があります。その名も――」
 ナズヴィはゴソゴソと懐を弄り、何かを取り出す効果音と共にソケットのような物体を取り出す。
「対騒霊管(たいそぉーれぇーかぁーん)」
 何故かダミ声と化したナズヴィが秘密道具の名を呼び、それを天に掲げると同時に突如迷宮にファンファーレが鳴り響く。だがナズヴィは違和感を抱く。魔導蒸気管なのに妙に短く、軽かったような。掲げた物体に視線を向ける。
「あ」
 その痛ましい姿にナズヴィは呆けた声をあげる。対騒霊管――厳密に言えばついさっきまで対騒霊管だったはずのものは、彼女が握るソケットの先が存在していなかった。僅かに先端に残ったギザギザのガラスが、かつての姿を偲ばせるのみである。さっき思いっきりコケた拍子に粉々に割れたのだろう。博士は泣いてもいい。

「……、……、……。ふむ、騒霊現象ですか。想定外のアクシデントがあんたような気がしますが、気のせいでしょう」
 何事もなかったかのようにそう語るナズヴィ。だが思い出したかのように痛み出す頭が、あまり長々と蘊蓄を語るのは危険だと警告する。
「要はタイルを避けるか破壊すれば良いのです」
 これ以上ない簡潔な説明とともに【機動補助管】を作動させ、空中を蹴って真上に飛ぶ。先ほどまでナズヴィのいた場所をタイルが空を切り、軌道変更も間に合わないまま地面に激突し砕け散る。後方に連続で飛び、上下運動を織り交ぜて的を絞らせずに回避していく。
 やがてナズヴィの背中は壁に貼り付くが、それも想定内だ。壁を背負えば攻撃方法を限定出来る。本来それは回避方法もまた左右に限定される諸刃の剣でもあるが、幸いにも彼女は補助管の力で上下への回避運動も可能であり、実質的にフロアの中心で避けているのと同等の移動範囲を担保することに成功した。

 ナズヴィは飛び交う無数のタイルを左右に避け、あるいは飛び越え、または重力に身を任せて躱していく。そしてそれでも追い縋るタイルは、スチームアーマーから伸びる副椀が掴み取り、次に襲い掛かるタイル目掛けて投げ返して防いでいく。
 対騒霊管がなくともナズヴィは案外どうにかなるようだ。博士は泣いてもいい。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜神・静流
「騒霊……つまりは悪霊の類ですね。ならば除霊しなければ」

視力・見切り・第六感技能で飛来するタイルの動きを見切り、残像・ダッシュ・ジャンプ技能で躱します。
また、回避不可能な物or仲間に命中しそうな物は早業・カウンター・衝撃波技能を使用しての一ノ太刀・隼で迎撃します。
あとは背後などの死角からの攻撃に注意を払い、仲間と補い合うように動ければと思います。

「数は多いですが、所詮は物を飛ばすだけ。冷静に対処いたしましょう」



●オンリョウ |||||||||||||||||||| 50
「騒霊……つまりは悪霊の類ですね」
 【アルダワ魔法学園】世界はその名の通り、魔法を基軸とした世界ではあるが、それと同時に蒸気科学の世界でもある。迷宮の仕掛けやトラップも魔力によるものだけでなく、機械仕掛けのものも数多く存在している。だが夜神・静流(退魔剣士の末裔・f05903)は、目の前のそれを悪霊の引き起こす怪力乱神の類だと断言した。
 飛び交うパネル、無機質の存在であるはずのそれらからかすかに感じる邪気と悪意――研ぎ澄まされた静流の【第六感】はそれを見逃さなかったのだ。
「幽鬼悪霊もまた魔の類。除霊しなければなりませんね」
 彼女は腰に差した愛刀【十六夜】を鳴らし、迫る無数のタイルに対峙する。

 迂闊に持ち上げれば腰を壊す恐れもある重量のタイルが、まるで独楽の如くクルクルと回転し、静流目掛けて高速で襲い掛かる。直撃を浴びれば骨すらも砕かれかねない質量と速度だ。さらにその角が回転することで丸鋸の如く鋭利な刃物としての側面も併せ持ち、何発も直撃を受け続ければ猟兵言えども命は危ういだろう。
 その中で静流は【見切り】を働かせる。襲い掛かるタイルのみならず、回避した先で次に迫るであろうタイルとの位置関係も直感的に計算し、先の先を読んで位置取りを取っていく。静流は地を駆け、天を舞い、残像を残し躱し、タイルに的を絞らせない。

「いくら数が多くとも、所詮は物を飛ばすだけの怪異現象。冷静に対処いたしましょう――むっ?」
 静流はタイルの動きに違和感を感じる。今まで休む暇もなく連続で放たれ続けたそれの飛来が急に止んだのだ。だがフロアを眺めても『弾切れ』はまだ先だ。そしてタイルが剥がれ、宙に舞う音は止むことはない。静流は次に来る『攻撃』を予想し、抜刀の構えを取る。
 そしてそれは来た。十枚以上ものタイルが全方向から一斉に静流目掛け放たれる。逃げ場のない包囲攻撃、万事休すかと思われたが、静流は冷静であった。
「【一ノ太刀・隼】、その名の如く――天駆けよ!」
 利き足を踏みしめ体を捻りながら刀を抜く。抜刀と共に静流は体を一回転させ、そしてゆっくり刀を収め、鞘と鍔がカツンと触れる音が鳴る。それと同時に全方位に放たれた衝撃波によって、タイルは静流は愚か刀身にすら触れることなく両断され、形を保てなくなったそれはバラバラに崩れ落ちる。

「そのような浅はかな攻撃で、私を倒せるなどとは思わぬことです」
 今の一斉飛来で静流は確信する。このフロアで床のタイルが飛ぶ騒霊現象は、特定の法則に沿って飛ばされるような仕掛けの類ではない。静流が悪霊と仮定した、明らかに作為をもって放たれた『攻撃』だ。一斉飛来も、恐らくは回避され続けたことで痺れを切らした何らかの意思が確実に静流を倒すために意図したものだろう。
「ええ、もう少し殺気を抑える努力をした方が良いと思います。それでは目を瞑っていても見えますよ?」
 とは言えこの騒霊現象を引き起こす『悪霊』は、恐らくこの場にはいない。距離や精度にも長けた強い念動力は決して侮れるものではない。まずは『悪霊』が根負けするまで耐え続けねば。静流は油断することなく飛び交うタイルを見据える。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
あーこれ知ってるよ!床がビュンッてやつ!某あれだと部屋に入って一歩も動かなければ勝手に飛んできて勝手に壊れて何もしなくても進めるやつだね!
とはいえここのは流石にその手は通用しないかなー。
それにしても、色々な迷宮がでてくるねー。

まずは腹拵えして【色々食べよう!】を防御力重視で発動させておくよ。
色々な方向から襲われると対処が大変だから、フロアのすみや壁際へ急いで移動するよ。
あとは飛んでくる床を迎え撃つだけだね。
使う武器はスプーンで、叩いたり飛んできた床を掬って投げ返して別の床に当てたりして凌いでいくよ。



●GOMA☆DARE
「あーこれ知ってるよ! 床がビュンってやつ!」
 緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)は、ポルターガイストと銘打ったその迷宮の仕掛けに何らかの既視感を覚えつつ、透乃の知ってる『床がビュン』すらも存在する究極迷宮アルダワの多様さに感嘆を覚えていた。
 それはアルダワが作られた当時にあらゆる可能性を詰め込んだのだろうか。それとも今回の仕掛けのように作為を持つ何者かがせっせと新しいアイデアを考えてるのだろうか。その真実は未だ骸の海の中だ。
「某あれだと部屋の入口で一歩も動かなければ、扉の縁に当たって勝手に壊れるけど――ここは入り口が階段だから通用しないなー、残念」
 そこまで残念ではなさそうな様子で身の丈程の【もぐもぐ欲張りスプーン】を左肩に掛け、【うめーおにぎり】を三角の頂点から被りつく。米の水分を吸ってしっとりとした糊が滑らかな舌触りとなり、梅の酸味が口の中に広がる。
 無論、それは只の早弁ではない。この【色々食べよう!】に代表されるように、フードファイターの食事はユーベルコードを発動させる引き金であり、透乃がおにぎりを咀嚼し、呑み込む度にそれは彼女の肉体をより強靭なものへと変えていくのだ。

 透乃がおにぎりを平らげながら移動した先はフロアの隅。タイルの攻撃をほぼ正面にのみ絞れる代わりに、その全てに相対・対応しなければならず、逃げ場は一切ないハイリスク・ハイリターンな陣取りだ。だがそれくらいのスリルがなければ釣り合わないとばかりの視線で、ビュンビュンと音を立てながら襲い掛かる床を見据える。そして剥がれたタイルは袋の鼠だと言わんばかりに透乃目掛け一斉に襲い掛かる。
 透乃は部屋の角を背にしながら巨大スプーンを構え、連続で放たれるタイルを迎撃していく。避けるべきは高速で回転するタイルの縁にスプーンの面がかち合うこと。威力を殺すことも出来ぬまま弾かれ、最悪スプーンを持ってかれる恐れがある。透乃はリーチに入ったタイルを上から面で殴りつけて破壊し、あるいはその先端で鋭く突いて砕いていく。
 破壊されたタイルは欠片となりつつも容赦なく次々と透乃を襲う。だがユーベルコードによって絹のような柔らかと蜘蛛の糸の如く強靭さを併せ持った彼女の皮膚に、砕けた断片が何十何百と命中しようとも重篤なダメージとはなり得ない。

 やはりというべきか、タイルは透乃を倒すべく『対応』しようとする。一定間隔毎に飛んでくる『某あれ』ではあり得ない、数珠繋ぎの如く長蛇を成して無数のタイル。迎撃し切れない程の連続攻撃によって打ち倒そう狙ってきたか。
「でもそんだけ連なってると――」
 透乃は神経を研ぎ澄ます。狙うは先頭の一枚。スプーンの底を地面に付け、構える。そしてスプーンを振り上げ、タイルを掬い上げるように投げ返す。その場でひっくり返されたタイルは次のパネルに激突し、激突したパネルがその次、それはさらにその次――連続で玉突き事故を起こしていき、透乃に触れることも出来ぬまま自滅していく。
「――こうなるんだよね? もしかして『こいつ』、あんまり頭良くないのかな?」
 念動力には脅威を抱きつつも、肝心の使い方について疑問を抱き出す透乃。同時に飛び交うタイルが徐々に数を減らしていき、勢いも気持ち弱まり始めたことを彼女は鋭敏に察し始めた彼女は、改めて気合いを入れ直す。
 扉が開くジングルが鳴るまであと少しだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

セシリア・サヴェージ
【WIZ】

ポルターガイスト…災魔による攻撃か罠か、それともタイル自体が災魔なのか。いずれにせよ先に進まなくてはなりませんね。

前方から飛んでくるタイルはUC【ダークスピラー】で破壊します。
どれだけ飛んでこようとも【高速詠唱】でタイル以上の剣を用意してみせましょう。
もちろん後方や側面等の死角からも飛んでくるのでしょうが、『暗黒』を用いた【オーラ防御】を周囲に展開しておけば守りは完璧と言えるかと。
もちろん、我が暗黒剣による【武器受け】も必要なら行いますが、出番があるかどうか。

自分の身を守れてこそ初めて他者を護ることができる。暗黒騎士たる私の守り、崩せるものなら崩してみるがいい。



●Room of Darkness
「ポルターガイスト……災魔による攻撃の罠か、或いはタイル自体が災魔なのか」
 白い肌に銀の髪と瞳、それと対比するような黒を基調とした濃い色の衣装に身を包むセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、回転しながら発射の体制を取るタイルと、既に大部分が禿げ上がりアスファルトが露出したフロアを見据える。
「いずれにせよ、先に進めば分かることです……さあ、かかってくるがいい」
 セシリアが白き長大な刃を暗黒剣を抜き、挑発めいた言葉を掛けながらその切っ先を向ける。無数の空飛ぶ床が、回転する刃となってセシリアに迫る。恐らくはこれが最後の攻撃となるだろう。

「相手が数で攻めるなら、こちらはそれ以上の数で防いで見せましょう――【死翔の黒剣】(ダークスピラー)」
 セシリアは両手で持った剣を目の前に掲げ、闇の魔法剣を呼ぶための【高速詠唱】を唱える。言葉が紡がれ、呪文が完成する度、彼女の周辺の地面から闇の魔法剣の柄が生えていく。それは上に伸びるに従い柄、刃と形成され、一本の剣の姿となる。そして完全な形になったそれは、迫るタイル目掛けて先端を向けると、弩矢の如く撃ち放たれる。飛来する魔法剣とタイルは互いに相殺し合い、闇と砕けたタイルが辺りに飛散する。
「暗黒騎士たる私の守り――崩せるものなら崩してみるがいい」

 正面から襲い掛かるタイルを迎撃し続けるセシリア。だが彼女の【第六感】が危機を告げる。彼女が視線のみ一瞥すると、背後からタイルが迫る。既に距離は近く、黒剣では間に合いそうにはない。体を向け、【暗黒剣ダークスレイヤー】による【武器受け】で防ぐべきか、と一瞬思案はしたが、だがすぐにセシリアはその必要もないと判断する。ここで迂闊に詠唱を乱した方が危険だと判断したためだ。
 セシリアの肉体を穿とうと飛来したタイルは、だがそれを叶えることはなかった。背を向ける彼女が纏う濃い【暗黒】のオーラを浴び、タイルはそれがまるで煤の塊であったかのように先端から黒い粉となって崩れ落ちる。奇襲的に襲い掛かり、場合によっては致命傷もあり得たタイルの一撃は、だが結局脆い欠片がいくらか彼女の体を打つのみであった。
「自分の身を護れてこそ初めて他者を護ることが出来るように――敵に至れぬ程度の攻撃が、私を穿つことなど出来ませんよ」
 タイルもヤケクソだとばかりにセシリアに怒涛の数で襲い掛かるも、表情を崩すことなく詠唱を続けるセシリアの周りには常に十数本もの剣が召喚され続け、生成された側から尽きることなく撃ち放たれる。その迎撃を突破出来た数は僅か、そしてその僅かな量では、セシリアの暗黒を貫くことなど出来はしなかった。

 勝負は付いた。生成量ですら上回り始めたセシリアの黒剣は、もはや飛来の準備すら整わぬ回転して勢いを付ける中途のタイル目掛けて射出され、それを破壊していく。射的の的と化したタイル、その最後の一つが砕け散ると、フロア深部を閉ざす扉は抑えつける力を失い、奥への道を開け放った。

「終わりですね。先に進みましょう」
 彼女の踏みしめる地面には、猟兵達を追い返そうとしたタイルの、欠片と化した無惨な残骸が散らばっていた。セシリアはそれを一瞥すらせず、迷宮の奥へと進む。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『ポルターガイスト』

POW   :    パイロキネシス
【自然発火の能力を持つ念力】が命中した対象を燃やす。放たれた【青白い】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    テレキネシス
【念動力で操った家具の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ラップ現象
対象のユーベルコードに対し【対象の集中を阻害する騒音】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●歌よみは下手こそよけれ
 猟兵が迷宮の奥へ進むと、そこには洋館のような一室が広がっていた。家具や燭台、本棚に食器などの調度品。何故迷宮の中にこんな部屋が、と疑問が浮かぶのに前後し、猟兵達は部屋の中に只ならぬ雰囲気を感じる。調度品がカタカタと音を鳴らすと同時に、急に室内の気温が下がったかのように、背筋に寒気を覚える。
 そして部屋全体に広がる、強い悪意と殺気。そしてそれが猟兵達に向けられると、調度品は突如宙を舞い、狙いを付けるように放たれる。

 部屋の中に、青白い炎を連想させる少女の姿を持った力場が一人、二人と姿を現す。先程のフロアの空飛ぶタイルが『彼女』の仕業だったかは分からない。だがこの部屋で起こる怪奇現象は間違いなくその『彼女』、【ポルターガイスト】級災魔が引き起こしているに違いない。
 猟兵達はポルターガイストの透明な体内に、力場の核になるであろう家具が存在していることに気付く。恐らくそれを破壊すればそのポルターガイストは倒され、怪奇現象を弱めることが出来るだろう。

 敵は二十数体程。猟兵は飛び交う器物や襲い掛かる怪奇現象を掻い潜りながら、悪意に満ちた災魔に戦いを挑む。
ナズヴィ・ピャー
ふむ、騒霊現象の元締め達ですか
つまり…先程のタイルはあれらが原因
当機の後頭部にお茶目な挨拶をくれたのは何奴ですかね(怖い顔

…少々冷静さを欠いていたようです(怖い略
すていびーくーるというやつですね(怖略
・手のひらにタイルと書いて飲み込む

●当機は正気に戻った
・冷静に考える(略
ぽく
ぽく
ぽく
ちーん

皆殺しにしてしまえば問題無いのでは?(凄く怖い顔
問題があっても訴える者が居なければ問題は無かったことになるのです
最初から最後まで頼れるのは暴力のみだったのです

●ジャガーノートで粉砕
副腕で飛来物を防ぎつつ突進
そのままタックル…不幸な交通事故ですね
ジャガーノートの名に恥じぬ無慈悲なノンストップ暴力をご馳走です


夜神・静流
迷宮内に洋館とは、また面妖な……
ですが、何処であろうと私のやる事は変わりません。悪しき魔の者は全て滅します。

早業・先制攻撃・属性攻撃・破魔・範囲攻撃の技能を使用し、七ノ太刀・暁を放ちます。
●ラップ技能に対しては見切り・フェイント技能で、相手がそれを使うタイミングを見切り、フェイントでタイミングを外す等して対処。
妨害によって外しても、その場合は地形を浄化された結界内にダッシュ技能で素早く入り、2回攻撃の技能を使って続けて二発目を放つ。
「この技は、一度外れても終わりではありません。むしろここからが本番!」


セシリア・サヴェージ
【WIZ】

なるほど、あの核となる家具を破壊すればよいのですね。
ならば我がUCによって破壊してしまいましょう。

飛んでくる物体は暗黒剣を使っての【武器受け】や【なぎ払い】で防御し、隙を見計らって【高速詠唱】【全力魔法】によって暗黒の力を高めた一撃で核となる家具を災魔諸共消し飛ばします。

守護こそ騎士の務め。味方の猟兵に攻撃が飛んだ際には積極的に護りにいきます。
私が攻撃を防いでいる間に味方に攻撃してもらうのもよいでしょう。【かばう】【時間稼ぎ】



●ヘル・アンド・ヘブン・アンド・スチール
「ふむ、騒霊現象の元締め達ですか。つまり先程のタイルの原因はあれら。当機の後頭部にお茶目な挨拶をくれたのは何奴(どいつ)ですかね」
 飛び交う無数の家具、そしてその中心に立つ少女型の力場【ポルターガイスト】の群れに、ナズヴィは氷の如く冷たい視線を向ける。未だに痛む頭が、彼女の頭に過剰な蒸気を流入させていく。
「おっと、当機、少々冷静さを欠いていたようですね。すていびーくーる、すていびーくーる……」
 ナズヴィは掌にタイルと書き殴っては呑み込み、自分は冷静だと言い聞かせていく。だがその声の震えは収まらず、表情の影は深さを増すばかりだ。

「ナズヴィさん、大丈夫でしょうか」
「心配には及びません。当機は至って冷静です。冷静なのです」
 先程からどうにも挙動が不審なナズヴィにセシリアは声を掛ける。返ってきたのはあまり冷静とは言えない、ぎこちない返答だ。心配ではあるが、仮にも彼女もまた猟兵。暗黒騎士たる自分にも決して遅れような者ではあるまい。激情に呑まれることなく、それを正しい方向に向けることが出来るだろう――私が【暗黒】を制御出来たように。
「……倒すべきは『少女』の心臓部、核となる家具。我が暗黒剣で破壊してみせましょう」
 セシリアは飛び交う家具の中で薄ら笑いを浮かべる『少女』とその中に浮かぶ『本体』を見据え、幅広の大剣を構える。

「それにしても、迷宮内に洋館を拵えるとは。これまた面妖な……」
 静流は迷宮の中に広がる『一室』に怪訝な表情を浮かべる。誰が言ったか、究極迷宮アルダワには何でもありだと。空飛ぶタイルに空飛ぶ家具と来て、さてフロアボスの間では一体何が空を飛ぶのやら。
「ですが、何処であろうと私のやる事には変わりありません。悪しき魔の者は誰であろうと、全て滅します」
 敵は悪しき騒霊、倒すべきオブリビオン。寄らば斬る。寄らずんば寄って斬る。静流は腰の刀に手を掛け、床を踏み抜かん勢いで踏み込む。猟兵と騒霊の戦いは、静流の【先制攻撃】で幕を切る。

「我が剣は陽。魔を祓え、浄化の刃――【七ノ太刀・暁】!」
 目にも止まらぬ【早業】で太刀が抜かれ、薙ぐように放たれた一閃が光の柱と化し、床やカーペットを焼き切り、ポルターガイストの群れへと襲い掛かる。
 機先を制した一撃が空飛ぶ家具を次々に撃ち落とし、少女の体を掠めると同時に抉り取っていく。だがその一撃はポルターガイストの『本体』を断ち切ることは叶わず、ズタズタに引き裂かれたはずの幻体がニタリと歪んだ笑顔を浮かべると、忽ちそれが繋がり肉体が再構築される。そしてお返しだとばかりに、周りで浮かぶ無数のフォークとナイフを【テレキネシス】で静流目掛けて射出する。

 静流へと迫る危険な攻撃。だがその前に立ち塞がり、攻撃を【かばう】のはセシリアだ。襲い掛かる家具を大剣の一閃で【なぎ払い】、続けて放たれる第二波・第三波を剣の背で【武器受け】し、弾いて防ぐ。
 セシリアは心の中で語る。守護こそが騎士の務め。私の暗黒は全てを護るため。そしてこの程度の攻撃で私を傷つけることなど出来はしない、と。
「ここは私が防ぎます! 静流さんは攻撃を!」
「セシリア様、恩に着ります!」
 静流はセシリアの脇を抜けるように【ダッシュ】し、降り注ぐ家具の雨を掻い潜り、敵陣の中央へと飛び込む。一見自殺行為にも思えるこの突進であったが、無論策もなしに静流は突進した訳ではない。先程の暁の光刃が通り過ぎた先には、浄化された結界領域が作り出されていた。それは攻撃が終わった後も【破魔】の力が溢れ出し、善きものの強さを高め、逆に悪しきものを遠ざける出来合いの陣地だ。

「この技は一度外しても終わりではありません。むしろここからが本番です!」
 静流は再び七ノ太刀を構える。太刀に先ほどよりもさらに強力な光が灯る。無論ポルターガイストもそれを防ごうと、恐怖を引き起こす騒音【ラップ現象】を放ちそれを掻き消そうとする。心の奥底に響く音が迷宮内の洋館に鳴り響く。
 光の刃は放たれない。ラップ現象に打ち消されたか――否。彼女の太刀は未だ光を帯びている。そう、彼女はまだ剣を振るっていない。ポルターガイスト達は静流の【フェイント】にまんまと引っかかったのだ。
 満を持して放たれる真打が、ポルターガイストへと襲い掛かる。結界によって威力を増幅されたそれは、もはや幻体が触れただけで本体までも消し飛ばす一撃と化した。ポルターガイスト達が、悲鳴にも似たラップ現象を残し次々に吹き飛んでいく。

 静流の攻撃に呼応し、降り掛かるテレキネシス攻撃を防ぎ切ったセシリアも動き出す。彼女は暗黒剣を天に翳し、同時に【高速詠唱】を始める。彼女の内に眠る強大な暗黒が力を固めていき、漆黒のオーラが剣を、そして彼女を包み込む。
「お前達に救いの道などない。静流には悪いが、浄化などと生易しいことを言うつもりはない」
 彼女の中の闇の化身が、一瞬にして僅かであるがその言葉に姿を現す。漆黒が黒い炎となってその剣の刀身を覆う。それは決して低くはないフロアの天井にまで迫る勢いで伸びていく。少女の姿を持った怪異達は、それを防ごうと一斉にラップ現象を引き起こす。だがセシリアにとってそれは単なる不快極まる音に過ぎない。その集中も詠唱も、些かも乱れることはなかった。
「【純然たる暗黒の奔流】――消えろ」
 セシリアが掲げた暗黒剣を振るうと、圧縮された暗黒の衝撃波、その全力が走る炎となってポルターガイスト目掛けて襲い掛かる。放たれた闇の波濤は、少女型の力場も、彼女達が操る家具も次々に呑み込み、闇へと還元していく。そして闇が通り過ぎた後には、家具や食器の痕跡すら残さず、辛うじて直撃を免れたそれらも多くは操り主を失ったことで力なく地面へと落下する。フロアに、陶器が割れ、家具が砕け、金属が落下する音が一斉に響いた。

「冷静に考える、冷静に考える……」
 そんな戦いの中、ナズヴィは何とか平静を保とうとしていた。落ち着け、落ち着くのだ当機。熱くなったら負けだと己に言い聞かせる。そんな彼女の目の前で、ドス黒い闇がフロアを暗く輝かせる。
 ぽく、ぽく、ぽく……ちーん。
「当機は正気に戻りました――要はあれらを皆殺しにすれば問題ないのでは?」
 セシリアの中の闇の化身に当てられたのだろうか。尋常の者が覗き込めば素早さがガクンと下がりそうな程の恐ろしい形相を浮かべ、ナズヴィは一つの結論を導き出す。
「例え問題があっても、それを訴える者がいなければ問題は無かったことになるのです。当機のしたことがうっかりしていました。最初から最後まで頼れるのは暴力のみだったのです」
 それは一見すると滅茶苦茶なように思えるが、ことオブリビオンとの戦いに関してはそれは厳然と立ちはだかる事実の一側面でもあるから困る。いずれにせよ、ナズヴィは答えを得た。いや、答えは最初から己の内にあったのだ。ならばもはや迷うことも、逡巡することもない。己の思い、成すがままに。そしてナズヴィにはその手段がある。

「【魔導蒸気式ジャガーノート】を起動。当機は目標(あれら)を殲滅します」
 ナズヴィは魔導と蒸気と暴力の化合物たるスチームアーマーに乗り込み、セシリアの一撃で混乱するポルターガイストの群れに無慈悲でノンストップな暴力の嵐を巻き起こさんと突進する。巨体それ自体が凶器となるジャガーノートのタックル、ラリアット、そして踏みつけが、次々に操る家具や少女型力場の本体を打ち砕いていく。
 その巨体目掛けてポルターガイスト達もテレキネシスで勢いよく家具を飛ばして反撃するが、それらがジャガーノートの動きを鈍らせる程のダメージは与えられず、ナズヴィ目掛けて襲い掛かる飛来物は彼女の服腕にキャッチされ、逆に少女型力場の核へと投げ返され、正面衝突と共に消え去っていく。

 三人の猟兵が繰り出した光、闇、そして鋼の嵐が、ダンジョンの中に広がる洋館をメチャクチャに変えていく。そこには粉々に砕けた家具が散乱し、清浄な空気と深淵なる暗黒が入り混じり、そして先ほどまで部屋に漂っていた悪しき力場は完全に気圧され、僅かに残るのみとなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
ほむほむ、幽霊みたいなやつの仕業だったんだねー。
でも、殴って倒せるのなら守りに徹する必要があったさっきの部屋よりはやりやすそうだね。

今回もスプーンで戦うよ。重さより振りの速さ重視だね。
倒すことが目的だから、真っ直ぐ敵へ突っ込んでいこう!
飛んでくる物は殴り壊すよ。
パイロキネシスは動作などが分かるなら避けるけれど、そうでないならそのまま突っ込んじゃおう。燃やされても転がって接近しながら消せばいいんじゃないかな。
幽霊には炎というのは定番だし、接近できたら火迅滅墜衝でガンガン焼いていくよ!

それにしても、幽霊っぽい姿に青白い炎とは、どんな世界でも幽霊のイメージはあんまり変わらないのかなー?



●火と火が合わさり炎となる
「ほむほむ、さっきの床ビュンもあの幽霊みたいなやつの仕業だったんだねー」
 透乃は残り少なくなったポルターガイスト現象、そして僅かな核となる少女型の力場をその瞳に移す。
「今度はさっきの部屋みたく守りに徹する必要はないんだ。やりやすいね――」
 透乃が【もぐもぐ欲張りスプーン】を振るい構えると、皿の底から桃色の火が燃え上がる。煌々と燃える炎はまるで、霊すらも震えあがる地獄の炎の一匙の如くであった。そして掬った炎が皿全体を覆うとともに、透乃は残る調度品を殲滅せんと切り込む。

 ポルターガイスト達が生き残った家具や食器を掻き集め、次々に透乃目掛けて放っていく。透乃はスプーンを柄を半ばで握ることで振りの速さを高め、近づく側から叩き落としていく。そして最初に狙いを定めた少女型力場目掛け【火迅滅墜衝】でスプーンを突き入れると共に、まるでプディングを掬うように力場を抉り取りながら『本体』を掻き出す。本体が匙の上で焼かれ砕けて溶けていき、忽ち真っ黒な炭と化すと、臓物を抉られたかの如く少女型の力場も器を失い掻き消えていく。
「幽霊に炎ってのは定番だね! このまま全部火葬するよ!」
 透乃は匙を背中に振り、炭となったポルターガイストの成れの果てを投げ飛ばしながら、次の力場へと駆け寄る。

 ここに至り、残るポルターガイストはついに奥の手を解禁する。まるで青い炎のようであった力場が、突如燃え上がるようにその力を強める。刹那、火種など何もない透乃の体に青白い炎が燃え上がる。
「わちっ、あっちっち!! 掟破りの【パイロキネシス】ー!?」
 透乃は青い炎に巻かれ、地面に転がる。燃え盛る炎が、先の戦いで散乱していた家具や食器の成れの果てが透乃の体を傷つけていく。だがそれは単に炎の痛みで足を縺れさせた訳ではない。激しく燃焼する体を地面に押し当て、消火しているのだ。現にこうして転がりながらも、透乃はスプーンを離すことなく、ポルターガイストの足元にまで接近している。
「こんのー、お返しだよー!」
 そして透乃が足元を踏みしめると同時に体を持ち上げ、すかさず桃色に燃えるスプーンを振り上げる。ポルターガイストの青白い炎よりなお強い、昇る龍の如き赤白い炎がたちまち本体と力場の双方を焼き尽くしていく。そしてそれと同時に、術者を失った透乃のパイロキネシスも消火される。

 こうなればもはや勝負は付いたも同然だ。透乃が、仲間の猟兵達が、次々に残るポルターガイスト達を追い込み、それらをただの調度品の残骸へと変えていく。そして最後の一体に透乃がスプーンを振り下ろすと、それはガシャンと割れる音を立て、この部屋に漂う邪悪な力場の全てが消滅する。
「それにしても、幽霊っぽい姿に青白い炎――どんな世界でも、幽霊に抱くイメージはあんまり変わらないのかなー?」
 煤と埃、そして切り傷塗れになった透乃が露出の多い肌を叩きながら、もはや見る影もなくなった『洋館』を見つめていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『騎士の怨鎧』

POW   :    戦鎧の妙技
【縦横無尽の剣閃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    闘鎧の秘技
【自身に刻まれた戦闘経験から的確に】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    魔鎧の禁忌
【魔核の稼働制限を解除。超過駆動状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●漆黒の家
 ポルターガイストの群れを倒した猟兵達は、だが迷宮のさらに奥により強力、そして邪悪な力を感じ取った。そう、まだこの騒霊迷宮のフロアボスは倒されていないのだ。

 そしてしばらく歩いた先で、猟兵達は迷宮の最深部に辿り着く。ガランとした大部屋の中央に、一領の漆黒の鎧が鎮座していた。先程から感じる力の根源はこの鎧からか。 そして鎧もまた、猟兵の気配を感じ取ると、何もないはずの空洞から赤い眼光を照らす。あれこそがフロアボス【騎士の怨鎧】級オブリビオンだ。
 それは地面に付き立てられた細く長い両手大剣を抜き取ると、マントを翻しながら飛ぶような俊敏さで、一気に猟兵との距離を詰める!
フェリクス・フォルクエイン
「実際に戦ったことはありませんけど、この災魔ならある程度の事は知ってるんですよね」
グリモア猟兵として討伐をお願いしたことがありましたので
「強力な攻撃を持つとは言え無差別攻撃ですから」
乗じる隙はそこにある筈
「暫し、お付き合い願いましょうか」
共に戦ってくれる猟兵が居るなら無敵城塞で敵の攻撃は僕が引き受け盾代わりに
単独で挑むなら我慢比べですね
無敵城塞で様子を見つつ無差別攻撃後の隙をついてはまた無敵城塞で身を守るという
無敵城塞を解除してから無敵城塞に移るまでの間を狙われた場合、武器で受けつつカウンターを狙います
「鎧に効果があるかと聞かれるとあれですが」
カウンターにはマヒと気絶の攻撃をのせて行きます


セシリア・サヴェージ
【POW】

漆黒の鎧に大剣…この世界にも暗黒騎士に近しい者がいたのか…。
ならば暗黒騎士たる私が討ち果たさねばなりませんね。

UC【ブラッドウェポン】で暗黒剣に強化を施します。
相手が鎧であれ、騎士同士の決闘とあらば名乗らねばなりませんね。
「我が名はセシリア・サヴェージ!騎士の誇りにかけてお前を討つ!」
ここは正々堂々と真っ向勝負、剣の対決と参りましょう。
【武器受け】【カウンター】であちらの攻撃に対処しながら、暗黒剣で素早く【二回攻撃】。
とはいえ、さすがにフロアボスを私一人で相手にするのは荷が重い。危なくなったら一度下がり仲間と交代し、【力溜め】【鎧砕き】で必殺の一撃を叩き込む機をうかがいます。


ナズヴィ・ピャー
【アドリブコミカル他山盛り】
ふむ、次は動く鎧ですか
飛ぶタイルに家具、動く鎧…お化け屋敷的な何かでしょうか
…危険性等を考えなければ大ヒット間違いなしです

相手は一体
こちらは複数となると…ジャガーノートで暴れるのは周りの迷惑ですね
他の方のアシストに回りましょう

摩擦低減管で鎧の動きを阻害
他の猟兵さんの動きに合わせて援護射撃

…当機と戯れたいのであれば頑張って猟兵さんと援護射撃を抜けて貰いましょうか
当機の元までたどり着けたら敢闘賞として殴打、蹴撃、熱線照射をプレゼントです
…置き土産に摩擦低減管で滑って貰いますか

上手いこと離脱出来ないようであれば
バトンタッチのタイミングを計りつつ格闘+熱線他で対応


緋月・透乃
ボスが普通に強そうな騎士とは今までと雰囲気が……あー、幽霊が鎧動かしてるみたいな奴なのかな?それなら騒幽迷宮のボスとしては適切だね!
強そうな気配もあるし、やる気満々で突っ込んできているしで、戦いがいのありそうな相手だね!
身を守る鎧より武器を振りやすくスリルも楽しめる薄着を選んだ私の強さを見せてあげるよ!

屋外のほうが風情はありそうだけれど、緋月覚醒で武器を強化しよう!
そして接近戦を挑むよ!
戦鎧の妙技は避けるよりも武器でガードし、剣の直接攻撃も回避よりガードからの怪力いかした押し返しを狙っていくよ!
強化した武器を信頼して攻守ともに使っていこう!


夜神・静流
「なかなかの強敵のようですね。心してかかりましょう」

破魔技能は常時使用。
見切り・視力・投擲技能を使用し、間合いを見切って●戦鎧の妙技の範囲内に入らないギリギリの位置を保ちつつ、鉄礫や霊符で牽制。

味方を援護しつつ必殺の一撃を叩き込む隙を探り、チャンスが来たら一気に攻勢に出る。
怪力・早業・残像・ダッシュ・ジャンプ・衝撃波・鎧砕き・カウンターの技能を使い、間合いの外から一気に敵の頭上に跳躍して五ノ太刀・穿で攻撃。



●天地の動き出いだしてたまるものかは
「ボスが普通に強そうな騎士って、今までとなんか雰囲気が……」
 飛来するオブリビオン【騎士の怨鎧】の太刀の一撃を重戦斧で受け止め、すかさず【怪力】で弾き返しながら透乃は語る。物体を飛ばしたり、念動力を操るような今までの敵とは、一見すると別物だ。とは言えお菓子の迷宮に機械の大蜘蛛が巣食っていた前例もある。これもそういった類のものなのだろうかと透乃は考える。
「ふむ、飛ぶタイルに浮かぶ家具と続き、最後は動く鎧……ここはお化け屋敷的か何かでしょうか」
 そこに追撃するように【魔導紋:掩護】の射撃を加え、仕切り直しを図るナズヴィ。二人の連携で鎧からパーツがいくらか外れて吹き飛んでいく。
「あー、幽霊が鎧動かしてるみたいな奴なのかな? なら騒霊迷宮の最後を飾る相手にはぴったりだね!」
 ナズヴィの言葉に合点したような声を出す透乃。思えばあの鎧が放つ雰囲気、動作の度の感じる力は床ビュンや家具食器ビュンのそれと同質だ。現に、先程吹き飛んだパーツが本体へと引き寄せられ、ジャキンという金属音と共に元鞘へと収まる。
「魔法学園の生徒達に大ヒット間違いなしです」
 とまで口に出してから、ナズヴィは頭に残る違和感を思い出す。
「……危険性等を考えなければ、ですがね」
 ここのアトラクションはどうやら最低安全基準すら満たしていないようだ。即ち――おイタが過ぎる。
「残念ですが、当施設は営業停止処分が決まりました。強制執行を実施します」
 当機のような悲惨な犠牲者をこれ以上出してはならない。ナズヴィの蒸気が流量を増大させる。
「つまりぶっ壊すってことだね! 相手はやる気満々だし、戦いがいがありそう!」
 対して透乃は上々な気分だ。今日が施設の最終日なら、せめて思う存分楽しもうと胸を高鳴らせた。

「されど相手はなかなかの強敵のようです。油断せず、心してかかりましょう」
 さらに静流が【浄化の霊符】で包んだ無数の【鉄礫】を怨鎧目掛けて投げ放ち、追撃を行う。弾丸の如く飛来する鉄礫が怨鎧の鎧に突き刺さり、あるいは隙間から内部へと侵入すると同時に、丸められた霊符が広がり、皺一つない姿となって鎧の内外へと貼り付く。霊符に込められた強大な【破魔】の力が怨鎧を電流が走ったように痙攣され、悪しき邪心を撃ち滅ぼしていく。
 とは言え相手は腐ってもフロアボス、それだけで倒せるよう程の弱敵ではない。無論それは静流が誰よりも承知している。鎧の中に仕込まれた魔核、それがさらなる力場を発生させ、黒い炎と共に霊符を燃やしていく。
「流石に浄化され続けるとは嫌がったという訳ですか――残念ですが、あなたに選択肢はありません」
 悪しき魔は討ち滅ぼされるべし。静流は怨鎧との間合いを図りながら、必殺の一撃を叩き込む隙を探る。

「この災魔の事はある程度は知ってるんですよね。実際に戦うのは初めてですけど」
 グリモア猟兵でもあるフェリクス・フォルクエイン(人間のパラディン・f00171)がそう語るように、かつて彼は同型のオブリビオンの存在を予知し、討伐を依頼したことがある。送り出した仲間の猟兵から聞き出した戦いの結果は立派な情報だ。されど猟兵達の過酷な戦いにおいて、同じ敵に同じ行動を取っても、必ずしも同じ結果が得られるとは限らないとも聞く。先例や情報を生かしつつも、それらに振り回されぬよう戦う必要があるだろう。
「暫し、お付き合い願いましょうか」
 細身の体を翻し、誓いと裁き、二つの銘を持つ剣を握りフェリクスも怨鎧へと対峙する。

「漆黒の鎧に大剣……この世界にも私のような暗黒騎士に近しい者がいたのか……」
 セシリアは目の前の災魔に、己の似姿を見たような感覚を得る。だが異なる部分もある。セシリアの内に抱くそれを純粋なる闇と呼ぶのならば、怨鎧が抱くそれは強くそして悪しき指向性を持った邪だ。あるいは道を踏み外したまま骸の海に落ちれば、自身もやがてあのような怪物と成り果てるのだろうか。
「なればこそ、暗黒騎士たる私が討ち果たさねばなりませんね」
 セシリアの握る暗黒剣の柄から、血が吸われるような感覚を感じると同時に、その手に握る【死を呼ぶ魔剣】が赤黒い闇を纏う。敵対者を打ち倒し、のみならず恐怖と絶望を与える【暗黒剣ダークスレイヤー】、その真の力が解放される。
「我が名はセシリア・サヴェージ! 騎士の誇りにかけて――お前を討つ!」
 例え敵が邪悪にして空虚なる鎧であれど、恐らくその根源は騎士。なればこそ、正しき騎士の使命は堕ちた騎士を正々堂々の戦いで『正す』こと。元より身の丈程の大暗黒剣が、さらなる暗黒の炎を帯びて巨大なオーラを放つ。怨鎧もまた【魔鎧の禁忌】を解いて超過駆動状態に入る。

 まず振りかぶったのは怨鎧だ。細く長い、されどダークスレイヤーにも劣らぬ業物である両手大剣が振りかぶられる。セシリアはそれを【武器受け】し、攻撃を防ぐ。怨鎧もまたユーベルコードによる能力強化を受けており、セシリアのブラッドウェポンと撃ち合える程の重い一撃だ。切り結んだ剣が弾かれ、セシリアの体が後退する。
「魔鎧の元の持ち主は、さぞ高名だったのでしょう……ですが!」
 セシリアがフロアに足を滑らせつつも踏みしめ、すかさず【カウンター】の暗黒剣を振りかぶる。一撃目は怨鎧の剣に防がれるも、強力な衝撃で態勢を崩し、軌道を変えた追撃の【2回攻撃】がその腰へと叩き込まれる。鎧を横から叩き割る一撃が入り、上半身と下半身が分割される。
 だが怨鎧も負けては無い。上半身のみで腰を一回転させ、両手大剣を振りかぶる。その遠心力のまま【戦鎧の妙技】が放たれる。猟兵達が数で優位に立ちながら、怨鎧相手に一気に攻め込めないのが、まさに一対多に特化したこのユーベルコード故だ。されど、セシリアをもってしても怨鎧を一対一で相手をするのは荷が重い。何としても数の優位を得なければならないのだが――

 今まさに妙技が放たれようとしたその瞬間、セシリアの前に立ちはだかったのはフェリクスだ。彼は【無敵城塞】を発動、超防御モードとなってセシリアを庇う。
「強力な攻撃とは言え無差別。さらに超過駆動では最も早く動いたものを集中攻撃する……つまり!」
 怨鎧の攻撃は素早く正面に出たフェリクスへと集中する。体を高速回転させながら、軌道を変えて一撃、二撃、三撃とフェリクスへと猛打が叩き込まれる。だが超防御モードのフェリクスにそれは有効打とはなり得ない。しかしその凄まじい防御力の代償に、彼自身は攻撃出来ないという最大の欠点を持つ。
 無論、セシリアはここで己が何を成すべきかを承知している。フェリクスを飛び越えるように跳躍し、怨鎧の真上を取る。そしてブラッドウェポン、渾身の【鎧砕き】を叩き込む。怨鎧がセシリアに反応する前に兜割りは決まり、それは左右真っ二つへと両断される。
「ぐっ……流石に限界ですね」
「セシリアさん、後は僕達に任せて下さい」
「……お願いします」
 多大な戦果を挙げつつも、セシリアの血液は手に握る吸血武器に些か多く奪われ過ぎた。フェリクスと交代し、彼女は後退する。

 パーツを無視して真っ二つにされた怨鎧。だがその『本体』が魔核、そしてそこから放たれる力場である以上、それは完全な致命傷にはならない。真に倒すためには、力場の憑代である鎧を、その力を維持出来なくなるほどの粉々に破壊しなくてはならないのだ。そして怨鎧は双方の接着を待たぬまま、剣を握った右半身のみでフェリクスへと襲い掛かる。
 目の前のオブリビオンが、一気に畳みかけるには危険な相手であることは何よりフェリクスが知っている。殴りつけるように叩き込まれる大剣の一撃を左手の剣で巧みに逸らし、残る右手の剣で鎧の裏側へと突き刺すように【カウンター】を放つ。
 何合か打ち合う間に、怨鎧が残った左半身を接合し、切れ目に黒い炎を走らせながら両手に剣を構える。戦鎧の妙技、その第二波が来る。再びフェリクスは無敵城塞を展開し、放たれる連続攻撃を防ぎ切る。そして攻撃が終わったタイミングを見計らい、フェリクスは超防御を解いて右手の剣で斬り付け、左手を吹き飛ばす。
「我慢比べ勝負……付き合いますよ?」
 フェリクスは欲張らず左手を構え、すかさず繰り出される反撃を防ぎ、反撃のさらに反撃を繰り出していく。

 あるいはフェリクスだけならば、ジリ貧の末に彼は打ち負けていただろう。だが即背面、怨鎧の妙技射程外から遠距離攻撃や支援をする猟兵もいる。
 一人は間合いを取りながら鉄礫を投げつつ、床に霊符を敷いて攻撃とフロアの浄化を試みる静流。鎧の隙間に小指の先程の小さな鉄球が突き刺さり、その動きをぎこちないものにしていく。さらに霊符が清浄の紋を刻み、互いの力を増幅させることにより、怨鎧の力場はまるで毒に冒されたかの如く奪われ続ける。
 そしてもう一人が、ジャガーノートの上から無数の魔導紋を展開し、撃ち下ろすように射撃を加え続けるナズヴィ。敵は一体、こちらは複数。さらに何時ぞやのサイクロプスとは違い、敵の大きさも然程でもない。
「当機は優秀です。故に周りに迷惑をかけぬよう空気を読んで援護射撃に徹するのです」
 通常時にはフェリクスを避けつつ、そして無敵城塞発動時には彼の守りを信じフェリクス毎、怨鎧の横っ腹に射撃を叩き込み続ける。

 絶え間なき援護射撃を受け続け、怨鎧は自身に刻まれた戦闘経験からこのままフェリクスと我慢比べを続ければこちらがジリ貧と判断する。
 そして怨鎧は【闘鎧の秘技】を発動、フェリクスを差し置いて恐るべき素早さでナズヴィとジャガーノートへと迫る。さらに走りながら放たれる戦鎧の妙技が、ジャガノートを幾度となく斬り付けていく。
「なるほど、当機と戯れたいのですか。ならばまずは当機の怒涛の射撃を抜けて貰いましょう」
 ナズヴィは雨霰と射撃の雨を降らせる。だが歴戦の知識でこちらの動きを予想し、さらに高速で動き回る怨鎧に攻撃を当てるのは容易ではない。ジャガーノートがさらに損傷を受け、魔導紋による射撃時の採点が急速に辛くなっていく。そしてついに怨鎧は足元へと迫る。
「なるほど。当機の元まで辿り着けましたか。敢闘賞です。商品は――殴打」
 斬り付ける両手大剣とジャガーノートの拳が撃ち合う。
「蹴撃」
 よろめきつつもさらに斬り付けようとする怨鎧に蹴りを叩き込む。
「熱線照射」
 ナズヴィの顔の前から展開された魔導紋から焼けつく光が放たれる。
「そして置き土産の【摩擦低減管】です。おめでとうございます」
 特殊な魔導蒸気管を作動するとともに、怨鎧の関節部が必要以上に潤滑され、形を保てなくなりその場でバラバラと化す。最後に砂を掻くようにジャガーノートのインサイドで蹴り飛ばし、遠くへバラバラに散らしていく。
「ですが当機とジャガーノートもそろそろ限界のようです。バトンタッチです、後は任せました」
 一連の攻防でナズヴィとジャガーノートも少なからぬダメージを負った。だがまだ猟兵は残っている。

 バラバラになった怨鎧は一カ所に集まり、再構築を試みる。だが潤滑油塗れの如く状態になった鎧の接合部は繋ごうとしてもなかなかうまくいかず、何度かの崩壊を経てようやく元通りに戻る。しかし蓄積されたダメージによる力場の低減、そして慣れない低摩擦状態に鎧全体がプルプルと震えている。
「曇りなき 刃の空に 緋い月」
 戦場に歌が響くと、空なき迷宮に怪しく光る緋い三日月が輝く。否、それは透乃の【緋月覚醒】によって重戦斧【緋月】に発現した文様だ。
「本当なら屋外の方が風情はありそうだけどね……ま、いっか! バトンタッチ、承ったよ!」
 透乃が斧を振るえば、その軌道はさらに巨大な緋い三日月となる。怨鎧とは真逆の固く踏みしめるような走幅で、透乃はフロアボスへと迫る。
 怨鎧は接近する透乃をその前に迎撃しようと、さらに戦鎧の妙技を放つ。ナズヴィのジャガーノートですらマトモに当たればそう数は耐えられない。ましてや薄着軽装の透乃ともなれば、一発でも直撃すれば致命傷になりかねない。
「でも鎧で身を纏ってちゃ武器は振り回しにくいでしょ? それにスリルも――危機感も足りなくなるからね!」
 攻撃は避けず、すべて受け止める。己の力を、技を、そして愛用の武器を信じているからだ。構えた重戦斧と振り回される両手大剣が撃ち合う。だがその衝撃が異様に軽い。低摩擦状態の弊害は攻撃にも表れ、十分に踏み込めず、力の籠らない怨鎧の連撃は悉く防がれ、重戦斧を弾くことすら叶わない。
「そして――私の一撃は、どんな鎧だって打ち砕くんだから!」
 振り上げるように放たれた渾身の一打が、緋い三日月を描くように放たれる。関節部を悉く無視した一撃は、その太刀筋が通った先を粉々に砕き、重大な損傷を引き起こす。

 なおも再生を試みる怨鎧であったが、それももはや限界に近かった。各部が損傷したそれは、既に人型を取ったスクラップの集合体に近い存在と化していた。支える足や振り被る腕こそが、単体では単なるテレキネシスの延長線にしかならない両手大剣を、必殺の剣技へと昇華させてきた。
 だがそれももはや機能不全に陥って久しい。そしてそれは一人でも、誰一人欠けても成し得ない戦果であった。ここで味方の援護に徹してきた静流が、決定的な機会を得て攻勢に出る。
「油断ならぬ強敵でした。ですがそれも終わりです」
 静流が愛刀【十六夜】を青眼に構え、大地を強く踏み込むと、【残像】を残しながら、静流が跳躍する。怨鎧がそれを撃ち落とそうと、戦鎧の妙技を放つ。最後の執念ともいうべき乱撃が、静流に迫る。だがそれらは残像を切り、あるいは静流の体を掠めるのだ。
「我が剣は剛、打ち砕くは魔! 【五ノ太刀・穿】!」
 頂点で十六夜を振り上げ、そのまま怨鎧の目前へと落下する。
「――悪鬼退散!!」
 振り下ろされた剛の刃は、怨鎧を周囲の地形ごと粉々に粉砕する。さらに彼女の抱く破魔の力が、器を失った悪意を雲散霧消させていく。落下の衝撃を吸収するように屈んだ静流が立ち上がり、刀身に付いた残骸を振るい払い、刀を収める。

 猟兵達のチームワークとバトンリレーによって、恐るべき騒霊迷宮は攻略された。猟兵達の去った最深部に残るのは、巨大なクレーターの中で地面の残骸と混じって区別の付かなくなった鎧の欠片と、宙を舞った後に地面に突き刺さった、怨鎧の得物である両手大剣のみであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月20日


挿絵イラスト