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天下を求む夢を討て

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●虎絵
「踏めぬと申すか」
 侍の声に、町人が首を振る。
「あんただって、わかってんだろ!? この虎がどなたなのかってぐらい…1」

 その足元には、猛々しい虎をかたどった金属板が置いてあった。幾重にも施された彫刻を見れば、その筋の人間には呪具であると判別できただろう。

「俺には、ッ、俺達には踏めねえ…!」
 町人は血を吐くような声を上げた。

「アンタが命を奪うと脅しても、その命を授けてくだすったのは、この、唯虎様だ、俺には、唯虎(ゆいとら)さまを踏みにじるなんてマネ、出来やしねぇ」

 侍は静かに頷いた。
「然様か」

 そして男の首を、たたき切った。

 周囲に集められていた町人たちから悲鳴が上がった。
 だが武器を向けられ、誰一人として暴れだせない。

 侍は待機列へ目を向ける。そして抑揚のない声で言った。
「次のもの、御前へ参れ」

●土蜘蛛謀反
 蜘蛛の巣にかけられた、三本脚の虎の絵がある。
 虎の目は血走り、罠から逃れようと必死にもがいている。
 だがそれをあざけるように蜘蛛の糸が絡みつき、爪や牙を捕らえていた。

 そんな錦絵を猟兵に示しながら、藤間・英(多重人格者のゴッドペインター・f13788)は問う。

「なァ、なんで人間ってのは、絵に心打たれると思う?」

 普段の無駄話とは違う物言いで、彼は語る。
「絵には精神が込められる。信仰、愛、美意識……絵は人間の縮図だ。そのありざまに、鑑賞者は胸を打たれる。魂を揺さぶられて、時にゃ欲情し、命をかき乱される」
 わかるか? と彼は猟兵に尋ねた。

「時にゃ自他ともを滅ぼすほどの強い情念……それ無しに、名画は描かれない。この絵にあるのはまさしくそれだ。何を食い殺してでも、叶えなきゃならねえ夢がある」

 少しため息をこぼしてから、藤間は本題に入る。

「サムライエンパイアで事件が発生した。この絵を描かれた鉄板の呪具を踏ませて、オブリビオンが力を集めている」

「この虎は、恵西藩主千堂唯虎(せんどうゆいとら)の隠喩でな。彼は幕府に自ら藩の困窮を訴え出る道中で片腕を切り落とされても決して屈せず、藩を救った明主ってわけだ。
『然らば我が腹、隻腕の不肖なれど切り奉る。自らその根を断つ巨木、如何に日ノ本天道の加護、八幡帝釈護りの元とて永らえますまい』
 とまぁ、幕府のことを盛大に揶揄したくせ徳政令をもぎ取って帰ってきた猛者サマよ。

 そんな超カリスマを、町人は現人神のように称え、親しみ、愛した。情念の量、質ともに十分すぎるだろ? それをもしエネルギー源に変換できる装置があったとして、それをオブリビオンが悪用したら、どうなる?」
 想像に難くないと、藤間は唇をゆがめて笑った。

「唯虎に対する町人の信頼、そして彼を踏みにじることへの罪悪感を糧にして、天下を取ろうとする不埒なオブリビオンがいる。この儀式を中断させて主犯のオブリビオンを討つのが、当面の目標になる」

 自ら模写した錦絵を、藤間はひらりと翻した。

「敵の名は泥隠国造(ひじかげのくにつくりのみやつこ)土雲(つちぐも)。
 八刀流使いで、手足ならまだ分かるが、口、肘、踵、額、果ては死体や地形、その場にあるものは何でも使って刀で攻撃を仕掛けてくる相当な手練れだ。刀の一本一本が、オブリビオンの生命源になってる。刀は武士の命ってのはこの事かね」

 今回は道中も厄介だぞ、と、藤間はくぎを刺す。

「吾平里、っつってな、その強さを恐れた幕府が秘密裏に滅ぼした忍者の里があるんだが、その残党の人間兵器がしたがっている。靭帯改造の途中で人間としての情だのはぶっ壊れちまってるが、主君の悲願を果たすためにゃ何でもする連中だ。言っとくが、間違っても説得しようなんて思うなよ。お前さんらの肉団子見るなんざ御免だからな」

 一通りの説明を終え、パン、と藤間は手をたたく。

「ともあれ、お前さん等なら討てる相手だ。千何百年も天下取りの夢を見続けた末裔の、哀れな情念を打ち砕いちまってくれ」


千歳アキラ
 はじめまして。歌舞伎と講談がホットな千歳です。

●各章の流れ
 第1章:踏み絵の儀式を食い止めるため侍の姿をしたオブリビオンと戦闘、町人を救助(冒険)
 オブリビオンの支配下にある侍たちが邪魔をしてきます。彼らは操られただけの人間ですので、戦闘の際はご留意ください。

 第2章:妖魔忍者との戦闘(集団戦)
 説得などは通じない相手です。
 10人前後の精鋭と、敵城内での戦闘になります。

 第3章:八刀流使いのオブリビオン、泥隠国造土雲との戦闘(ボス戦)
 八つの刀を打ち砕くことが勝利条件です。

●プレイングについて
 ビシッとキマる口上を頂けちゃったりすると、とってもテンションが上がります。
 グループは最大4名までだと助かります。
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第1章 冒険 『踏絵呪術』

POW   :    力ずくや体を張って踏絵を阻止する

SPD   :    絵をすり替えたり、目くらましをして妨害する

WIZ   :    呪術を緩和させる術式や魔術を練り上げ相殺させる

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

桜・吹雪
…主や敬愛するかたを想う気持ちを利用し、踏みにじる
主無き人形である身ですが、許しがたく存じます
町の方々の為にも必ずとめさせて頂きますわ

【見切り・学習力】で警備の視線の隙を探します
【忍び足】で極力気配を消し踏み絵に近づくよう試みます

接近が叶えば【殺意】を振りまき注意を集めましょう
誰何をされれば名乗りをあげて時間稼ぎを
『言い飽いた台詞ですが貴方には初耳でしょう
姓は桜に名は吹雪
虎の絵をみると欲しくなる性分、絵を頂けば用はございません』
名乗りの間に踏み絵の下にユベコで落とし穴の設置を
1mx1mx20mの穴に踏み絵を落とすよう試みます

鋼糸と罠で操られたお侍様は拘束妨害
妖魔には短刀でお相手致しますわ



 桜・吹雪(主を求めて三千世界・f09844)は、険しい顔をして町人の列を見据えていた。
 桜は主を持たない人形だ。だから忠誠心を体感したことはない。
 だがそんな彼女でも、町人たちの思いは推して測れど尚余りある。

「町の方々の為にも必ずとめさせて頂きますわ」

 きっぱりそう宣言してサムライエンパイアの地に降り立った桜は、踏み絵を取り囲む警備へ視線をやった。どれだけ侍とはいえ生身の人間だ。長い間警備を続けているのであれば、必ず隙を見せるはずだ。【見切り・学習力】は確かに機能した。まだ若い侍の目が泳いでいるのを見つける。
 その男の死角から、【忍び足】で気配を極力遮断して近づいた。長時間立ったままで疲労がたまっていたらしい。若い男は疲れたように首を巡らせて、やるせないため息をついた。
 その隙にすかさず踏み絵に近付いた。
「何奴!」
 怒鳴って追いかけてくる男たちを躱し、桜は凛と言い放つ。

「言い飽いた台詞ですが貴方には初耳でしょう」

「姓は桜に名は吹雪。――この虎、確かにもらい受けました」

 すかさず放たれる追っ手を鋼糸と罠でやり過ごし、桜はその場を後にしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

轟・富士王
・SPD
踏み絵で儀式ねぇ……金属板の呪具ならすり替えるにしてもちょいと偽物造りにゃ時間がかかりそうだね。
だったら一彫り加えてやろうかね。
着流し姿で町人を装い、踏み絵に参加するよ。
自分の番になったら、飛閃・流れ星でおじさん自身が呪具に体当たりして呪具に傷をつけちゃおう。
魔方陣やらこの手の呪具は1文字違えば大違いだ。
虎の尻尾がこんなに長けりゃあ、もう猫みたいなもんだろう?



 白髪の女が踏み絵の鉄板を持ち去ったため、予備の新たな鉄板が持ち出される。
「いやいや、お侍様も大変だね」
 轟・富士王(テキトーおじさん・f03452)は侍に向かって柔和に笑って見せた。
 口ぶりが不敬だと睨まれたが、轟はどこ吹く風だ。着流し姿でからりと下駄を鳴らし、首を軽く掻きながら最前列へぶらりと現れる。

「さて、これが例の一品かい」
 足元に置かれた鉄板を、まじまじと眺める。
 そして目をきゅっと細めた。

 轟の雰囲気が一変したことに気付いたのは、手練れの侍だけだった。
「下がれ!」
 先輩の侍が後輩に鋭く声を飛ばす。すかさず一人が抜刀して、轟の元へ駆け寄ってくる。
「なぁに、心配いらないよ」
 轟は不敵に笑み、低く囁いた。

「何が大将かぐらい、よぉく分かってるさ」

 次の瞬間、轟の姿が描き消えた。わずかに遅れ、金属が硬質なものと激しくぶつかる音がする。
 一瞬の陽炎のように揺らめいたその姿を、何人が正確に捉えただろう。

「はは、ちょっとよろけちゃったね」
 何事もなかったかのように轟は笑った。
 その足元の鉄板が傷つけられたことに、侍たちはまだ、気が付いていない。
 任を果たした轟は、人込みに紛れて姿を消した。   

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ランゼ・アルヴィン
ほうほう、自分の命よりも大事なモンがあるって事かい。ただの町人にしても剛毅な奴らだねぇ……
いいぜ!こういうのを手助けするなら気分良く戦えるってもんだ

俺は正面から踏み絵を阻止するために乗り込むぜ
邪魔しに来る奴らは一応手加減して倒すとしよう。多少の怪我は勘弁な!

俺が派手に暴れて目を引けば他の仲間が色々やる隙も作れるだろうよ


「おうおうおう!無粋な踏み絵はそこまでにしてもらおうか!」
「俺こそは乱世に轟く快男児!オブリビオンの野望を打ち砕く、ランゼ様よ!」

せっかくだ、派手に名乗って見栄を切るか!

邪魔する敵が多いようならユーベルコードを使うぜ
相手に当てちまったらヤバくなる前に火を消すように気をつけねえとな



 唯虎を裏切れないと叫ぶ町人たちの声に、ランゼ・アルヴィン(乱世に轟く・f06228)は嬉し気に目を細めた。
「剛毅な連中だ。ああいう人間のために戦えるってのは、気分がいい」
 そして声を張り上げて真っ向から人の群れに突っ込んだ。

「おうおうおう!無粋な踏み絵はそこまでにしてもらおうか!」

「何だ!?」
 侍たちはざわめいたが、武人たる彼らの反応は早かった。
 儀式を邪魔する不届き物を切り捨てに一斉に襲い掛かってくる。

「しゃらくせぇ!」

 ランゼは男たちを一笑に付し、腰を低く落とす。
 居合切りにも似た溜めの姿勢に、心得のない若輩者が腰を引く。
 黒剣ラススヴィエートを解き放つまでもないと判断し、駆け寄ってきた侍を正拳で突き飛ばす。

「遠くのやつァ音に聞け、近いやつはよぉく見ろ」

 そして地に剣を突き立て仁王立ちし、声を張り上げた。

「俺こそは乱世に轟く快男児!オブリビオンの野望を打ち砕く、ランゼ様よ!」

 声は朗々と響いた。侍たちの注目が、一斉にランゼに向けられる。
 この隙に同行した仲間がうまく事を運んでくれるよう祈りながら、ランゼは剣を地面から抜き放ち、大胆不敵に笑って見せた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

花盛・乙女
■POW重視

千堂唯虎…まつろわぬ民の我が身であっても名は聞き及んでいる。
名君と名高かく義に厚い立派な御仁だ。
それを利用しようとは…愚かだな。
この花盛乙女、悪を断つ一振りの刀として働こう。

さて、町民の踏み絵を阻止せねばならん。
踏み絵の儀に混ざり、怪力で踏み、千切る。

信心がないかといえば、ないと応える。
私の心の信ずるは刀のみ。
敬意がないかといえば、あると応える。
敬意を捧ぐは唯虎その人。民草と同じ、心の唯虎にこそ敬意はある。

そも唯虎が斯様な扱いを良しとする訳があるまい?
ゆえにこの絵この儀は御霊なき絵を踏む児戯に過ぎない。
愚かだな、土蜘蛛。

くだらん児戯はこれにて終いだ。
ここより我等猟兵が遊んでやろう。



 町人たちからどよめきが起きた。
 侍が早く絵を踏むよう強いた中、拒む町人を差し置いて現れた羅刹の女剣豪が、一投足のもとに鉄板を踏み砕いたのだ。
「ぶ、無礼者め!」
 一人の侍が裏返った声を上げた。女の怪力に腰を抜かしながらも、震える刀を向けている。
 女――花盛・乙女(誇り咲き舞う乙女花・f00399)は、涼しい顔をして侍を見遣った。

「無礼? その鉄の板に信心などない。刀、この一振りのみを、私は信じる」

 踏み砕かれた板は、硝子細工のように粉々になる。
 驚く町人たちに、花盛は軽やかに笑って見せた。

「このような板を踏む戯れ一つで、鈍る信心でもないだろう。唯虎への敬意は、くだらない板一枚で損なわれはしない」

 町人たちがはっとしたように顔を上げた。
 それを見て花盛は、我が意を得たりと侍を見遣る。

「下らん児戯はこれにて終いだ。ここよりは、この花盛・乙女がお相手致す。皆のもの尋常に参られよ」

 そして腰の獲物を抜き放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇迦野・兵十
[POW重視・アドリブで参加者と絡めるの歓迎]

「おおっとごめんよ」

列を割るようにして金属板の前に行こうか。
途中で斬られそうな町人がいれば、そいつを助けながらね。
「なるほど、こいつはいい出来だ。かの豪傑・隻腕の虎のいい姿絵じゃないか。
 だってのに、これをわざわざ人に踏ませるなんてさ、随分と趣味が悪いじゃないかい?」

周囲の侍が攻撃してくるようなら[残像]を残し、攻撃をかわしてみせようか。
まぁ、かわせようとかわせまいと、返す刀で侍達を峰打ちで反撃して全員昏倒させるとしよう。
うちの鈍ら刀は斬れないことには定評のある。
そもそも斬る気もないしね。だがまぁ……
「お侍なんだ、骨の一本や二本は我慢してくれよ?」


幻武・極
へえ、世の中にはすごい人もいるんだねぇ。
そんな人の威厳を奪うオブリビオンはまさしく虎の威を借る狐だねぇ。
そんなのに天下を取られては堪ったもんじゃないねぇ。

しっかりとこの儀式は妨害させてもらうよ。

バトルキャラクターズを使用して撹乱させてもらうよ。
隙をついて絵もすり替えておくよ。



 宇迦野・兵十(きつねさん・f13898)と幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は二人で町人の列に並んでいた。
 食えぬ風体の優男と青髪の幼い少女がともにいる様子へ、何人かが不思議そうな視線を投げていた。親子と呼ぶにも、兄妹と呼ぶにも不釣り合いな年齢の二人だ。
 だが腕に覚えがある人間が見れば、あるいはこういったかもしれない。
 武人の連れ合い、互いに肩を並べる仲だ、と。
 もっとも当の本人たちはそのような視線の腹の内を知るわけもない。

「いやぁ、きな臭いねぇ」
 宇迦野がつるりと顎を撫でた。
「こんな悪い空気はさっと払うに限る」
「そうだね」
 幻武もこくりとうなずいた。
「そろそろ頃合いかな」
「読みはお前さんに任せるよ。僕は陽動だからね、元気に騒ぐだけだ」
「了解。それじゃ」
 幻武の姿が消える。彼女は農村の出身だ。ひょっとすると、腹のうちに思うところのある光景なのかもしれない。
 じき、仕込みが済んだとの合図が宇迦野へ寄越される。

「さぁ、てと」

 宇迦野は人の列を割って先頭の方へ向かう。
「おおっとごめんよ」
 侍と町人が揉めている間に、すっと割り入った。
 そして、いかにも初めて見たかのよ」うに鉄板をのぞき込む。
「なるほど、こいつはいい出来だ。かの豪傑・隻腕の虎のいい姿絵じゃないか」
 糸目を開き、宇迦野は不穏に笑んで見せる。

「だってのに、これをわざわざ人に踏ませるなんてさ、随分と趣味が悪いじゃないかい?」

「貴様、逆らうか」
 侍が刀を抜く。だが、宇迦野の抜刀のほうが早かった。相手の刀を素早くかわし、返す刀で峰内を試みる。
 切り殺す気のない剣技に、侍たちはすぐに宇迦野を囲む。
 宇迦野はにっこりと笑って見せた。

「お侍なんだ、骨の一本や二本は我慢してくれよ?」

 その侍の輪を、奇妙な人影が覆った。

 額に数字の刻まれた異様な風体の人間……まるで浮世絵に描かれた虚構のような存在に、侍がおののく。
「なっ、なんだ貴様らは」
 幻武の放った戦闘用【ゲームキャラクター】だ。
 額に書かれた数字の数は1のまま、今回は陽動を目的としているから人数を増やすことを重視している。

 十分な隙が生まれていた。
「灯台下暗し、ってね」
 幻武は侍の目を盗んで素早く鉄の板を入れ替えた。
 そして撤収の合図を宇迦野に送る。

 侍と切り結んでいた宇迦野は素早くうなずいた。
「では、これにて御免」
 納刀し、刀を振り回す侍を軽くかわして走り出す。残った侍たちをゲームキャラクターが妨害していく。

「お疲れ様」
 合流地点で待ち合わせた二人は、軽くハイタッチを交わした。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

宴・段三郎
【SPW】鉄であれば一振りで終わる。踏み絵を鍛造し直す。
儂の化生炉を使い、ユーベルコード『地国炉開闢』を発動。『さて、おっとり刀で行くかの』
踏み絵を虎から8本足の蜘蛛へと作り変え、展開した炉の炎は操られてる侍達の足止めにも使用し、町人を逃す。
オブリの侍は面白い妖刀になりそうじゃ、の……『おんしを鍛刀す』
今回は妨害と救出が目的じゃから退き際は町人撤退させてからじゃな。
オブリ侍は強ければそのまま儂も撤退じゃ。
もしオブリ侍を妖刀へ鍛刀できたら次の忍の者達の戦いで使うかの


上泉・信久
POW
「信仰心をそのような手法で使うのはよろしくないな」
堂々と悠々と歩み寄っていく。

「俺は流れ者でな。弱いものいじめをするお主らを止めに来たのだ」
納刀したまま侍を殴り、気絶させる。
抜刀しても持ち替え、峰打ちの状態にする。
村人がいる場所から少しずつ離れるように後退し、相手をおびき寄せる。

【見切り】と【残像】で攻撃をかわしつつ、人は峰打ち
相手の武器は長物は【剣刃一閃】で切断し、刀類は遠くに弾き飛ばし、使えなくする。
「すまぬな。お主らとは積み重ねてきた経験が違うのだよ」

他にも猟兵がいるなら村人を救出している者もいるだろう。
と、信じての行動。

侍を制した後は、縄で縛り、事件が解決するまでは寝てもらおう。



 身の丈三尺にも満たない幼子が刀鍛冶だと聞いても、その好々爺――上泉・信久(一振一生・f14443)は訝しがらなかった。
「成程」
 ただそういって、合点がいったように顎をさすった。好々爺、と言っても見た目はみずみずしい青年のままだ。彼は幼子の策を聞き、にっこりと笑った。
 幼子、宴・段三郎(刀鍛冶・f02241)はこくりと頷いて見せた。
「ならばその策でいけるだろうさ。段三郎の鍛刀も見てみたいが、それはまたの機会だ」
 それは刀として99年の生を経てきたゆえの言葉だろう。
「その作戦であれば、陽動がいるな。それは俺が引き受けよう」
「頼んだでの」
 二人は軽く手を合わせて、別々の方向から踏み絵の現場へ向かった。

 堂々と近づいてくる男に、侍たちは警告の声を飛ばす。
「止まれ、何奴か。まだお前の番ではないぞ」
 上泉は闊達に笑い返した。
「忠心を悪事に使うなんてのは、よろしくないな」
 止まらぬ上泉たちに、白刃が向けられる。邪魔するものは切り捨ててもかまわないとお触れが出ているのだろう。
 だが上泉は臆さない。
「俺は流れ者だ。だからこの藩への恩義ってのは特段ないが、弱いものいじめを見逃せる性分じゃない。――何をするかは、わかるな?」
「謀反とみなすぞ」
「好きにしな。こちとら流れ者だと、言ったばかりだろう」
 一人の侍がすかさず距離を詰め、刀を下段から振り上げてくる。上泉は抜刀しなかった。重い得物を振らない分拳のほうが早い。間合いを詰め、顔面を殴り飛ばす。
 場がざわめいた。
「すまぬな。お主らとは積み重ねてきた経験が違うのだよ」
 悪びれず、上泉は言い放つ。

 その陽動の向こう、宴はユーベルコード『地国炉開闢』の発動に成功していた。
「さて、おっとり刀で行くかの」
 その言葉通り、炉の展開は早かった。掻き立てられた炎は、たちまちのうちに侍たちと町人を隔てる。
「火事だ! 水、水を!」
 何人かが井戸の方へ走っていく。
 これで踏み絵の警備は手薄になった。
「さて、ご対面じゃな。唯虎殿」
 残された鉄板に近づく宴に、若侍が一人近づく。善人だったのであろう、彼は宴を火から守ろうと駆け寄った。
「おっと」
 これは心算りの外だった。
 悟られぬよう鉄板を急いで加工しながら、宴は何も知らぬ無垢を装ってほほ笑む。
「どうしたの、お兄ちゃん」
「煙に巻かれるといけない。おっとさんとおっかさんはどうした」
「ボクはぐれちゃったんだ」
 とっさの嘘を、侍は信じた。そして宴を担いで火の手の回らぬところへ運ぶ。その道も宴が自分の逃走用に残しておいたものであるのだが、侍は気付く風がない。
(やれ)
 宴は内心ため息をこぼす。
 オブリビオンの侍がいれば鍛刀してしまおうと思っていたが、これでは叶いそうもない。
 命を削る炉を消し、約束の場で上泉との合流を待つ。
 やがて、さすがにいくらか疲弊した様子の上泉が姿を現した。
「追っ手はどうかの」
「撒けたさ」
「して怪我のほどは」
「かすり傷だ。年季が違うんでね」
「うむ、ご苦労」
「絵はどうなった」
「人を呪わば穴二つ人を呪わば穴二つ。蜘蛛に変えてやったわ」
 上泉は肩をすくめた。
「末恐ろしい子だな」
「九十九も年を経て、今更何を恐れることがある」
 純粋に不思議がる物言いに、上泉はひとつ、苦笑を返した。  

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『妖魔忍者』

POW   :    忍法瞬断
【忍者刀】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    忍法鎌鼬
自身に【特殊な気流】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    忍法鬼火
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

上泉・信久
POW 共闘歓迎

忍者か……まるで猿だな
腰に帯刀している『無窮村正』に手をかけて近づいていく
間合いに入れば『無窮ノ型 阿修羅斬』の命中重視で居合斬りをする【属性攻撃+残像】

複数でかかってくるようなら【見切り+なぎ払い】を応用し
『無窮ノ型 阿修羅斬』の攻撃回数重視で斬り捨てる

無理には攻めず、見極める
攻撃は回避か、刀で受け流す
「速くとも何をするのかわかれば、対処はできるのだよ」

忍は倒したかどうかが怪しいため
きちんとトドメも差しておく
油断も余裕もないが忍者への挑発はしてしまう


桜・吹雪
主君に使える志は理解できますが
町の人々の為に容赦は致しませんわ

【殺気】を放ち注意をひき、皆様の盾になるよう心がけますわ
相手の動きを観察し【見切り】【学習力】し、相手の攻撃を回避しながら妖刀で切り結ぶよう試みますわ
戦闘の間に、不可視の鋼糸を戦場に張り巡らせます
相手の妨害ができれば御の字、切断されても構いません
鋼糸を巡らせた後に、できるだけ多数の敵を巻き込める位置を見極め
、WIZUCで張り巡らせた鋼糸を爆裂する桜の花片にかえますわ
仲間の皆様を巻き込まぬよう、起爆致します

華の命は短うございます
散り際の美しさをご堪能下さいませ



 互いに背中を守り合うようにして、長身の男と小柄な女が城の廊下を進む。本命は本丸にいるのだと分かっているが、その前に無数に表れる気配に警戒を緩めることはしない。

 上泉・信久(一振一生・f14443)は佩いた『無窮村正』に手をかける。いつでも抜ける姿勢を崩さないまま、後方への警戒も怠らない。
 一方の桜・吹雪(主を求めて三千世界・f09844)も、妖刀『桜吹雪』を手に時折り背後へ目をやっていた。

「近いな」
 ふすまの前、二人は足を止めた。複数のものがじっと息をひそめる気配がある。

「私が、盾になりますわ」

 桜の言葉に、上泉は顔をしかめた。
「そんな若い娘さんが、わざわざ鉄火場の前線に立とうとするもんじゃない」
 そういってとっさに手を取り、上泉は彼女の選択の意味を知る。
「私はドールですもの。死んだって大した事ございませんわ」
 上泉は眉をしかめた。だが今は、敵の排除が先決だ。

「勘違いしちゃならんがな、これは死に戦じゃないんだ」

 言い聞かせるつもりで語り、ふすまに手をかけた。
 たがいに目を合わせ、同時に開く。
 途端、一斉にオブリビオン『妖魔忍者』が現れた。数は四、敵が多勢だ。
 敵は先に上泉を始末にかかろうとした。桜を華奢だと判じたのが誤りだった。
「ッ……!」
 桜がとっさに【殺気】を放った。敵の鍛錬が仇になった。妖魔忍者たちは刹那、動きを止めてしまう。

 そのわずかな間も、上泉は無駄にしなかった。無理のある攻め方を選ぶことはないが、隙を逃すほど臆病でもない。
「ちと甘いんじゃないのかい、お前さんら……ッ!」

 桜の方へ首を向けた忍者を、『無窮ノ型 阿修羅斬』で切り捨てる。装甲を砕くのに手間取りはしたが、二体を仕留める。
 残った二人が左右から上泉を仕留めにかかる。それをいなし、上泉は軽い足運びで攻撃をかわす。
 その隙に、桜が敵へ背を向けた。入ってきたふすまの奥へ戻り、声を張りあげる。

「上泉様、こちらへ!」
 上泉は軽くうなずき、畳を蹴って駆けた。そのすぐ後ろ、逃亡するかに見える二人へ忍者が肉薄する。

 あともう僅かで得物が上泉に届くかに見えた瞬間、座敷の中に赤と白の花が咲いた。
 桜の張り巡らせた鋼糸が、爆裂する花片に変わったのだ。

「……飛んだ隠し玉だな」
 安堵の笑いを浮かべた上泉に、桜もにこりと微笑んで見せた。
 
「華の命は短うございます。散り際の美しさをご堪能下さいませ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

宴・段三郎
予想通り良い原料が豊富な城よ
では大将首の為に忍刀を一振りこさえるかの

味方との連携と鍛刀を重点に置く
出来るだけ鍛刀に使う原料は多い方がよい
まずは味方と連携して出来るだけ多くの敵を集めようぞ

ふむ…大分集まりそうか?
ではユーベルコード【屍山血河】を発動する

『無象鍛刀』と詠唱し、化生炉の鞘から出る炎と刀の一振りによって的な魂と肉体…そして怨嗟を原料とした鍛刀を行い、一振りの妖刀…忍刀をこさえる

もし発動に失敗した場合は味方のフォローに着く。
基本は連携重視じゃしの。
儂は忍刀を作れればそれでよい。

出来るだけ囲まれない様に移動しながらの闘いを心がけよう


幻武・極
ただの侍の目は誤魔化せたけど、さすがにオブリビオンの忍者が相手だと誤魔化すのは厳しそうだね。
なら、戦って倒すただそれだけだね。

模倣武術で忍法鬼火をコピーして使うよ。
複数相手だから合体はさせず全て個別で撃ちこむよ。

ところで忍法鎌鼬で特殊な気流を纏っている忍者は大丈夫かな?
その気流に鬼火が吸い込まれて炎が燃え上がらないかな?



 城の中を二人で歩みながら、宴・段三郎(刀鍛冶・f02241)は周囲の気配を感じ取りながらぽつりと口にする、

「ずいぶんな城じゃな。これなら刀の材料に苦労はあるまい」

 隣を行く幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)が不思議そうにそれを見下ろした。

「刀って、この場で作るの?」
「そうじゃ」
「時間はどのぐらい?」
「それなりかの」
「材料は?」
「多いほど困らぬ」
「分かった」

 幻武はこくりと頷いて見せる。

「やっぱり正面から戦ってさっさと倒そう」
「ん、そうなるか」
「ただの侍ならまだしも、オブリビオンだしね」

 ふすまの奥に、僅かな気配がある。
 襲来せんと、誰かが息をひそめているのだ。

 幻武は宴を振り返った。

「いい?」

 先手を打ってもいいかと。先に奇襲を仕掛けてもいいかととれるような問いかけに、宴は深く頷いて見せる。

「いつでも構わんでの」

 幻武は頷き返し、ユーベルコードの発動へ意識を向ける。
 そして一気に障子を開け、中に転がり込んだ。

 障子の向こうは暗闇だった。
 オブリビオンであることを踏まえても、それ以上に敵はプロだった。びりびりした空気が伝わり、幻武は唇を舐める。

「頼もうーー!」

 わざと道場破りのような声を張り上げた。
 静寂を切り開くような声に、確かに敵の気配が濃くなる。

 これで、人数を集める役は果たせたか。

 一瞬の間があった。だがすぐに、幻武の目の前に青白い火がともる。こちらがどれほど幼い子どもであっても、その攻撃には容赦がなかった。
 前と後ろを【鬼火】に挟まれ、退路も進路も絶たれる。

「くっ」

 だが、とっさのガードは間に合っていた。
 『模倣武術』(ゲンブリュウ・コピーアーツ)が発動し、敵の鬼火をコピーすることに成功する。
 なるべく敵を散らさなくてはと、幻武は人の気配を追って攻撃を続ける。
 自分たちの鬼火と同じ攻撃が向けられ、忍者たちに僅かな隙が生じた。

 忍法鎌鼬は互いの連携があってこそ、鬼火と併用できている技だ。任意で鬼火を操り互いの気流に巻き込まれないようにしているからこそ、炎と風、二つの技を同時に駆使することができている。

 だがそんな事情にお構いなしの鬼火を注ぎ込まれてはたまらない。

 忍者たちに起きた動揺はさざ波のように連携を崩した。
「ほう、大したものじゃの」
 宴は小さく称賛を送り、ユーベルコード【屍山血河】を発動させる。

「『無象鍛刀』」

 鬼火の流れに伴い、化生炉の炎があたりを包む。
 鎌鼬の風はもはや止んでいた。
 敵味方の判別が難しい鬼火を放たれたことで、忍者たちの連携に乱れが生じていた。
 そこへまた新たな炎を注がれてはたまらない。

「火の用心、って、街の人に習わなかったの?」

 幻武の言葉にこたえるオブリビオンはいなかった。

 宴の刀が次々と敵を刀に変えていく。

「あぁ、熱くてたまらぬの」

 怨嗟を原料とする、静かなれど確かな熱が、刀を振るう腕に、皮膚に伝わってくる。
 囲まれそうになる背中を、すかさず幻武が守りに入る。
 たちまちのうちに、忍者たちは一振りの妖刀と変わった。

 畳の上に刺さった一振りを、宴が手にする。

「……それ、さっきの忍者たち?」
「そうじゃ」
「数は足りた?」
「あぁ。礼を言うでの。ありがとう」
「ううん、ボクも楽しかった」

 幻武は廊下の向こうへ目を向ける。
「あとは、大将首だけだ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

宇迦野・兵十
主命であれば、己を殺して事を成す。
忍としても侍としても、そりゃ立派なもんだ。
でもなぁ、己を殺すと己を壊すじゃ意味が違うだろうに。
まぁ……言っても、もうわかりゃしないんだろうがね。

さて鈍ら刀片手に頑張ろうか。
相手の攻撃は[見切り]でかわし、刀の間合いまで踏み込むよ。
間合いに入った相手から[鎧砕き]と[2回攻撃]で斬りつつ
[見切り][残像]も組み合わせて相手の隙を伺い
隙があれば[剣刃一閃]で斬り捨てる。

仕えるべき主人も進むべき道も誤った。
お前さん、哀れだよ。

[アドリブ歓迎、諸々お任せいたします]


花盛・乙女
茶番の後に沸いて出るのは化生忍者共ときたか。よかろう。
花盛流の修羅の剣、黄泉の旅路の土産話にでもするが良い。

城の中には町民たちはいないだろう。
もしもまぎれていれば、避難を先に行う。
万が一の時は身を挺して『かばう』ぞ。

さぁ、透波共。ここよりはこの花盛乙女が遊んでやろう。
なに、遠慮などせず存分に技前を振るわれよ。

【黒椿】と【乙女】の二振りを使う。
太刀は首を、小太刀は受けと足の腱を狙う。
動きが小賢しいのが貴様らだからな。
だが一人ずつ減らしても時間がかかる。

…どれ、鬼の吹雪を舞うとしようか。
【鬼吹雪】を使い、視界全ての忍者を切り捨てる。
情けがあると思うな。
貴様らの前に立つは怒れる羅刹女なのだからな。



 背の丈、およそ四尺五寸の女が廊下を歩いて行く。
 その後ろを、四尺七寸近い男がついて行く。
 花盛・乙女(誇り咲き舞う乙女花・f00399)と宇迦野・兵十(きつねさん・f13898)の二人は、それぞれ得物を手にしていた。
 隠し切れなかった気配を感じ取って、花盛は薄く唇をつり上げる。
「茶番の後に沸いて出るのは化生忍者どもと来たか。よかろう」
 【黒椿】と【乙女】の二振りを構えて、油断なく当たりを見据えた。
「花盛流の修羅の剣、黄泉の旅路の土産話にでもするが良い」
 次の瞬間、すぐ隣の障子を打ち砕いて一人の忍びが現れた。
 陽動だ。
「宇迦野」
 本来であれば花盛が異性をこう呼ぶことは難いが、そうも言えない状況だ。
「応」
 陽動に飛び出した方を極悪刀【黒椿】で乙女が狙う。その背後から隙を突くように飛び出した忍者の前に、すかさず宇迦野が立ち塞がった。相手の攻撃を[見切り]でかわし、刀の間合いまで一気に踏み込む。刀を振り下ろした忍者が次の挙動に出る前に、[2回攻撃]で斬りつける。
「チッ」
 攻撃を受けた忍から、短い舌打ちが聞こえた。
「立派なもんだよ」
 忍者の目を見て、宇迦野は呻く。
「主命であれば己を殺してでも事を成す。忍としても、侍としても、あんたのそりゃ立派なもんだ」
 でもなぁ、と続ける言葉は、憂いを含んで重く響いた。
「己を殺すと、己を壊すとじゃ、意味が違うだろうに」
 言っても無駄だと分かっていて尚、言葉を紡がずにはいられない。
 対する花盛は、きっぱりと割り切っていた。
「生憎だが、私に情けを期待するなよ」
 太刀と小太刀を構え、忍をにらみ据えて不敵に笑った。
「貴様らの前に立つは、怒れる羅刹女だ。貴様らの奸計、万死に値する」
「そうだね」
 花盛の背を守り、宇迦野は小さく頷いた。
「仕えるべき主人も、進むべき道も誤った。──お前さんら、哀れだよ」
 途端、四方から忍者が襲いかかってきた。
「動くなよ、宇迦野」
「わかってるさ。鬼の吹雪には巻き込まれたくない」
 次の瞬間、無数の一閃が忍者たちを貫いた。
 殆どのものが、呻きを上げて倒れていく。
「随分開けたもんだね」
「造作も無い」
 離れたところに逃げた忍を、宇迦野が[剣刃一閃]で切り捨てる。
 誰の気配も失せたのを確認し、宇迦野はほっと息をついた。
 軽い気持ちで花盛の肩にポンと手を乗せようとする。
「さて、じゃあ本丸を目指そうかね。乙女ちゃん」
 だが花盛は、男性に対して非常に高い警戒心を持っていた。
「やっ、やめろ! 私に触るな!」
 と、即座に距離を置いてしまう。
「なんだ、つれないね。さっきまで良い相棒同士だったろ」
「それはそれ、これはこれだ。早く本丸を目指すんじゃないのか」
「だから仲良くしようって言ってるのさ。それに、俺は人が好きだしね」
 花盛は何かを言おうと言葉を探したが、結局宇迦野が先に肩を竦めた。
「ま、いいや。行こう」
 促され、花盛はこくりと頷いてその後ろをついて歩いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『乱世の名将』

POW   :    八重垣
全身を【超カウンターモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    八岐連撃
【一刀目】が命中した対象に対し、高威力高命中の【七連撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    永劫乱世
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【復活させ味方】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 城の最奥に、そのオブリビオンは佇んでいた。
 泥隠国造(ひじかげのくにつくりのみやつこ)土雲(つちぐも)。

 見果てぬ天下取りの夢を描き、今まさに立ち現れた邪魔者を屠らんと、腰の得物を抜いた――。
上泉・信久
POW 共闘可
こいつが首魁か、嫌な気配を纏っているな
居合いの構えは崩さず、剣戟の間合いを維持する

八岐連撃を放ってくるなら【武器受け】と【残像】回避で対応する
可能であれば【武器落とし】で刀を落とさせる
拾うがいい、名将なれど武器なき相手は斬れん

【見切り】で八重垣発動を見逃さず、無理に斬りかからない
読みをきかせ【残像】を使ったフェイントを放ち、相手にカウンターをさせる
残像を相手が斬った直後
【早業】で納刀、『無窮ノ型 阿修羅斬』攻撃回数重視の【鎧無視攻撃】で斬る

同じように残像を斬らせ、同じように斬ると思わせて対応させたものも【残像】とし、『無窮ノ型 阿修羅斬』の攻撃力重視の無窮村正で斬る


幻武・極
へえ、八刀流の使い手か面白そうだね。

その構えはカウンター狙いのようだね。
なら、攻撃でなかったらどうするんだろうね。
モフぐるみでも乗っけてみるかな。

そのユーベルコードの弱点は攻撃でない行動に対処できない。
さて、ボクのユーベルコードは発動するかな?



 本丸に到達した上泉・信久(一振一生・f14443)は、始めて目の当たりにする首魁に目を眇めた。

「──嫌な気配だ」

 居合いの構えは崩さぬまま、己の得物の間合いを保つ。

 どのような攻撃が繰り出されても、【武器受け】と【残像】による回避でいなせるものだと思っていた。相手に隙があれば、すかさず【武器落とし】で刀を取り落とさせることも出来るだろう。
 だが互いに刃を構えて理解した。

 このオブリビオンには、殆ど隙が無い。
(どうする)
 じりじりとすり足で間合いを読む。
 相手のやり口が分からないままでは手の出しようがない。
(試してみるか)

 【残像】を使った囮攻撃で、土雲の攻撃を誘発する。
 次の瞬間、目にも留まらぬ速度で反撃された。
「……なるほど、そう簡単に取らせてはくれないか」

 ならば、と、『無窮ノ型 阿修羅斬』の構えを取る。
 深く息を吐いて、一刀に全てを込めんと攻撃力に重きを置き、時が来るのを待つ。

 互いに緊迫が続いた。
 どちらも沈黙を打ち破らず、じりじりとにらみ合う。

 その時、不意に上泉の背後でふすまが開いた。
 土雲の注意が一瞬そちらへそれる。

「さぁ、謎かけだ」
 現れたのは青髪の幼子、幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)だった。
「その構えはカウンターのようだけど、攻撃以外の技にはどう対応するんだい」

 土雲の殺気がまっすぐに幻武へ向けられる。
 幻武は間髪容れず、この場にはやや不釣り合いなもの──それでいて、だからこそ有効打たりうるものを土雲めがけて投げた。
 愛玩のぬいぐるみだ。
 土雲の反撃は、発動しなかった。
 投擲による攻撃と見なされそうにはなったものの、投げられた得物の殺傷力の低さから、反撃するまでもないと判断された。
 その結果、幻武のユーベルコードが発動した。弱点を指摘されたユーベルコードの発動を三分押さえこむ。

「今だ!」
 幻武が叫ぶまでもなかった。
 上泉は猛然と駆け、深く一歩を踏み込んだ。

「これで……どうだ!」

 村正をまっすぐに叩き下ろす。
 土雲はすかさず両腕に持った刀を交差させて攻撃を防ごうとした。だがユーベルコードではない、ただの防御だ。
 当然、上泉が勝った。

 二本の刀が折れる音が響いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

桜・吹雪
町の人々が信ずる主への畏敬の念を踏みにじる蛮行
ここで止めさせて頂きますわ

【SPD】
UCで妖刀開放、真の姿と合わせ桜吹雪を纏い
妖刀による高速戦闘を仕掛けますわ
相手の行動、太刀筋を観測
見切り、学習し回避を試みます
1秒でも速く近づき1秒でも長く相手と自分の命を削り続けましょう

高速戦闘の合間に不可視の鋼糸を張り巡らせ、妨害・拘束を試みます
刀を手繰るのに地形を利用するなら、予めそこを狙いますわ
隙があれば忍び足で死角に潜り、暗殺を試みますわ

仲間や人々の為、身を刻まれても仕留めましょう
創られた私と貴方
共に散るまで舞踊りましょう
どちらも、いなくても困らないものなのですから
華は咲いて散るのが運命でございますよ



 桜・吹雪(主を求めて三千世界・f09844)のユーベルコード発動にはためらいがなかった。
「二度咲き、夢咲き、狂い咲き。泡沫に乱れ咲き、共に散りましょう」
 清くも艶やかに微笑む桜の様子は、土雲の目にどのように映ったのだろう。
 確かめるような悠長な真似を、桜は選ばなかった。
 己の真の力を解放し、妖刀による速攻戦法で土雲との距離を詰める。

 己の命を縮める術だと分かっていても、桜は他の手段を選ぶことをしなかった。

 土雲が、ユーベルコード『八岐連撃』を解放する。
 右手に、まるで槍のように刀を構え、桜の心臓部めがけて恐ろしいほどの速度で投擲した。

「くっ……ぅ」

 一撃目を食らったところへ、すかさず二撃目、三撃目がたたき込まれる。
 だが桜の学習は素早く、それ以降の攻撃は全て見切りが成功し、致命傷を負わずに済んだ。

「さぁ、踊りましょう」

 桜は笑う。
 己の命を削り、花吹雪を散らしながら、まるで幻惑するかのような軽い足取りで、土雲の命をめがけて駆ける。

「どちらも、いなくても困らないものですから」

 土雲が刀を振りかぶり、振り下ろす。
 だがそこに桜は居なかった。
 振り下ろされた刀身の上に、花びらの如き軽さで舞い降り、桜は囁く。

「ねぇ。泥隠さま。──花は、散るのが定めでございましょう?」

 放たれた【桜吹雪】は、土雲の刀を打ち砕いた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

宴・段三郎
土蜘蛛よ、おんしのために一振り刀をこさえてきたぞ

おんしの部下を7人ほど原料とした忍刀、名を『七葉隠』と呼ぶ
(刀身の見えない大忍刀を抜き)

まずは七葉隠を一振りから七振りに分解した状態で戦闘

忍刀の闘い方は基本刺突。
故に刀身の見えない七葉隠は敵にとって脅威となろうよ

かといって、そう何度も刀を交えば間合いもいずれ読まれるでの。
味方が攻撃してるうちに【武器改造】で七振りから一振りの妖刀へと合体させ、長大忍刀として長距離の刺突を行う。鎧の隙間を通すように刺させてもらう

最後はやはり化生炉を使いユーベルコード『地国炉開闢』でおんしを鍛刀し妖刀を作るかの

もし作れたら、号はどうしようかのぅ…(マスターのお任せで)



「これが、おんしに何か分かるか?」

 ぞろりと宴・段三郎(刀鍛冶・f02241)は一振りの刀を抜き出した。
 刀身は目に映らず、あるいは柄だけを握っているように見えたかも知れない。だが武芸の心得のある人間が見れば、宴の重心が抜刀と共に僅かに傾いたことに気が付くだろう。
 宴は薄く笑った。

「七葉隠、と呼んでおる」
 葉隠──葉の蔭、あるいは葉の蔭に隠れその姿を秘する者を指す言葉に、ぴくりと土雲が反応を示す。
「おんしの抱えた奉公どもの手練手管を、その身で知るのも悪くはなかろうよ」

 形が忍刀であることとその名は、挑発するには十分すぎた。

 土雲が不意に、手にした刀を宙に放った。
 その軌道を目で追った次の瞬間、土雲の胴が甲冑を思わせぬ軽やかさで跳ねた。素早い回し蹴りで、宙に浮いた刀の柄を正確に蹴り抜く。
 空中に固定した砲台を撃ち出すような、硬質な物同士がぶつかり合う音がした。

 宴は咄嗟に身を下げた。
 頭の上すれすれを、刀が飛んでいく。

「くわばら、くわばらじゃな」

 だが口先ほども怯んだ様子はなかった。
 着地の後無防備になった土雲に、刀身の見えぬ忍刀で突きを繰り出す。
 土雲の反応は早かった。甲冑の隙間から現れた小太刀で、忍刀の刃を止める。

「早いのぅ、もう見切ったか」

 土雲が宴に向かって踏み込む。宴は小柄な体躯で攻撃をいなし、土雲から距離を取る。
 間合いの外に出てしまうと、土雲は追ってこなかった。

「ならば、斯うしよう」

 【武器改造】で忍刀を合体させ、一振りの大きな得物に変える。
 土雲はすぐには踏み込まなかった。
 だからこそ、先手を取る。

 その長さ、実に八尺。

「流石に、これは読めまい。手の内を晒すのが、いささか早かったようじゃのぅ」

 宴の身の丈からは想像も付かぬほどの刀身から繰り出される刺突は、土雲の想定を上回った。
 宴の刀は、先刻見せられたばかりである、甲冑隙間の小太刀を打ち砕いていた。

「さぁ、おんしの号を考えねばな。釈迦の説法とかけて、泡沫蜘蛛(うたかたのくも)というのはどうじゃろうな」

 宴は不敵に笑い、油断なく刀を構えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

宇迦野・兵十
いい夢は見れたかい、泥隠国造殿。
遠い時の果てでまで見続けた夢だ、さぞ良い夢だったんだろう?
だがそろそろ覚め時さね。

相手はオブリビオンとはいえ、音に聞こえた剣豪・土雲。
どの攻撃も厄介この上ない。
油断せずに見切りと武器受けで攻撃をさばいて隙を伺おうか。
隙ができればその刀を二回攻撃・鎧砕きで斬る。
無論、一度や二度で斬れるとは思っちゃいないよ。
相手の刀が砕き斬れる瞬間があれば[剣刃一閃]で、土雲ごと斬り捨てる。

もし永劫乱世を受けたものがいれば折紙呪法を飛ばして破魔を叩き込む。
好きにはさせないさ。

見果てぬ夢の果ての果て、千年越える時の果て。
ここがお前さんの夢の終わりだ。

[アドリブ歓迎、諸々お任せします]



 これが夢の行く末だと、宇迦野・兵十(きつねさん・f13898)には分かった。
「夢の果てはどうだった、泥隠国造殿」
 幾星霜にも及ぶ天下取りの夢。
 我こそが天下一になるのだと、御旗を掲げ血を流す。
「遠いときの果てでまで見続けた夢だ。さぞ、良い夢だったんだろう?」
 甲冑が鈍く火の光を返す。
 暗い城の最奥、いくつかの灯火に照らされて、そのオブリビオンは待っていた。

 剣豪の名は聞いていた。いやしくも剣の道をゆくのであれば、名高い使い手の噂は耳にする。
「せっかく拝謁つかまつるんだ。その八刀流、存分にご教授願おう」
 へらりと笑って軽口を叩くが、土雲は無言のまま座していた。
 隙が読めなかった。
 こちらが動けばあるいは、とは思うものの、打つべき手がまだ見えない。

 狙うは刀身だ。であれば、やはり仕掛けるより他ないだろう。
 寸の間息を詰めて、土雲の間合いへ踏み込んだ。
 刹那、鼻ッ先を銀光がかすめた。
 矢張り甘くはないかと知るより早く、躱したそばからもう一方の刀が突き伸びてくる。
「くっ」
 太刀筋を見切りながら、危うい一撃を武器受けで躱していく。一歩、二歩、三歩、こちらへ甲冑が歩み寄るたびに畳が沈み、灯火をはねかえす太刀の流れが光の筋となって見える。
 時折服の袖が捕らえられ、裂ける音がする。だがそこへ目を配る余裕はない。
 畳をはねあげて盾としながら、切り結ばぬように攻撃を回避し続ける。
 正面から刀同士をぶつけるようなことはしない。
 土雲が刀を振り切ったところへ、刀の後ろから鎧割りを叩き込んだ。正面からぶつからず同じ方向へ振り切るため力は分散するが、土雲と正面から切り結ばずに済む。
 勿論、払われた刀を追うせいで胴が無防備になる。
 そこをすかさず狙われ、宇迦野は笑みを零した。
「美事」

 膝の甲冑に仕込まれた太刀が伸び上がり、顎を下から突き上げるようにするどい一閃を放つ。
 最後まで一分の隙もなかった。
 だからこそ、太刀筋が読めた。
 胴を開ければ、そこへ必ず一刀飛び込んでくるだろうと、読めた。

「ここがお前さんの夢の終わりだ。良い旅路を」

 [剣刃一閃]が粉々に太刀を打ち砕いた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ランゼ・アルヴィン
さあて、敵の大将も中々やるようだな……

暴れるには丁度いい、腕試しと行かせてもらおうか!

「おっし!一つ力比べといこうか!」

小細工は不要だ、羅刹旋風で威力を上げて、自慢の剣を叩き込む
敵の防御なんぞ関係なしだ

敵はカウンターを考えるかも知れねえが、こっちは最初から刀狙いだ
派手に名乗りを上げても勝ち筋は冷静に狙わねえとな

反撃で良いダメージを貰うかも知れねえが、そいつも覚悟の上だ
派手にやらせてもらうぜ

「おう大将!ここは一つ、力比べと行こうじゃねえか」
「天下に名乗りを上げようって男が、そこらの牢人から逃げるなんて白けることはしねえでくれよ?」

「ご自慢の刀でコイツが防げるか……試してみな!」



 ランゼ・アルヴィン(乱世に轟く・f06228)は気っ風の良い男だった。
 だからこそ小細工を弄することもなく、只の真っ向勝負を挑むことにする。
「さぁ、大将」

 いかにも歌舞伎者を思わせる風体の羅刹が屈託無く笑う。
「一つ、力比べと行こうか」

 羅刹旋風で黒剣ラススヴィエートを振り回す。
 あらかじめそうすることで、その時間に応じて戦闘力が増強されるランゼのユーベルコードだ。

「天下に名乗りを上げようって男が、そこらの牢人から逃げるなんてマネして白けさせねぇでくれよ?」

 甲冑姿のオブリビオン──土雲はランゼの一挙手一投足をじっとにらみ据えていた。
 ガシャリと甲冑の動く音がする。
 刀身が漆黒の一振りを、土雲が構えた。その刀身五尺二寸ばかりか。
 土雲は身を低くした。切っ先を畳に触れさせ、柄を頭の横で構える。間合いに入れば、下から上へ刃を振り上げ首をそぎ落とすつもりだろう。

「いいねぇ、たまらねぇよ。ご自慢の刀でコイツが防げるか……試してみな」

 ランゼは不敵に笑った。
 仕掛けたら手酷くやり返されることは目に見えている。
 だがこの羅刹は、臆することを知らない。反撃を食らったとしても、己の成すべき事を成すだけだと腹をくくっている。

「いざ尋常に、参る」

 そして一気に畳を蹴って駆けた。
 土雲の殺気が強まる。だがランゼの覇気も負けはしない。
 防御されてもその上から叩き潰してやろうと、ラススヴィエートで空を薙ぐ。

 咆哮とともに、体重を乗せた一閃を上からたたきつける。
 土雲が僅かに勝った。黒い刃はランゼの一刀を受け流し、がランゼの左鎖骨を砕き、肩から血を噴き出させる。

「ぐっ……ゥ」

 ランゼの腕からラススヴィエートが落ちる。
 勝負はあったかに見えた。

 キン、と。
 乾いた音がした。
 次の瞬間、土雲が手にしていた得物が粉々に砕け散った。
 土雲の受け流しは、ランゼのユーベルコードの威力を殺しきることまでは叶わなかったのだ。

「へへ……」

 ランゼは血の流れる肩を押さえながら、なおも笑った。
「悪くなかったぜ、アンタ」
 そしてゆっくりと、目を閉じた。

成功 🔵​🔵​🔴​

花盛・乙女
城の上階で待ち受けるとはな、城主を気取るか。愚かな将、土蜘蛛よ。
この花盛乙女の鞘走り、しかとその目に刻むがいい。

…はは!面白い!戦国を生きた者はみなこのような化物か!?
不可侵の領域といわれれば割って砕きたくなるのが私の悪い癖だ。
強者の剣、味見をせんのは勿体無いというものだ。

【黒椿】と【乙女】の二刀の剣戟でもって八刀を相手取る。
なに、二刀で足りねば鍛え抜いたこの四肢の怪力も刀と同じ。
そして私の角でも刀は受けられる、受けるだけなら口もある。
戦好きの羅刹女を嘗めてくれるなよ。

全てを捌き一太刀を浴びせれば私の間合い。
一斬二打の【雀蜂】、貴様の野望ごと砕いてくれよう。
唯虎の名を遊んだ罪ごと滅びるがいい!



 残る二振りの刀を手にした泥隠国造土雲の前に立ちはだかったのは、花盛・乙女(誇り咲き舞う乙女花・f00399)だった。
 二振りの刀を提げ、ゆっくりと間合いを詰める。

「城の上階で待ち受けるとはな。領主を気取るか。愚かな将、土雲よ」

 土雲は反撃の構えを見せた。
 八重垣──自身がそこから動けなくなる代わりに、全ての攻撃に対してほぼ無敵となるユーベルコードだ。

 乙女はちろりと舌なめずりをした。
「名将の剣、味見せんというのは勿体無いものだ」

 右に【黒椿】、左に【乙女】を構え、だらりと両手を下げたまま近付く。
 奇しくも、土雲の構えもそれに似ていた。土雲の左肘に、仕込まれた刃が見える。

「貴様も、存分に味わえよ」

 どちらともなく、始まりを告げた。
 花盛が突きと変わらぬ速度で右の【黒椿】で刺突を放つ。
 その伸ばしきられた腕を、土雲が蹴り上げた。甲冑を着てよくぞと思える速度で反応し、花盛の右手から【黒椿】を取り落とさせる。

「ははっ!」

 畳に真っ直ぐ地面に刺さった黒椿を、花盛は右手でそのまま押し込んだ。手の甲にヒビでも入ったか、幾許か痛みがあるが戦乙女にはこの程度どうということもない。
 そのまま右腕に重心をかけ上体をひねり、土雲相手に左足を蹴り上げる。
 花盛の脚は真っ直ぐに顎を捕らえ、土雲を仰向けに転がした。だが地面に着地すると同時に、土雲は低姿勢から花盛への反撃に転じる。

 歓喜がこみ上げるのを堪えられなかった。
「面白い、面白いぞ! 戦国を生きたものはみなこのような化け物か!?」

 土雲が左腕を一閃させる。こめかみに突き刺すべく振り切られた小太刀を、しかし花盛は自身の角でぴたりと受け止めた。
 一瞬の膠着、続く花盛の【乙女】の刺突。
 花盛は隙を逃さず、甲冑ごと心臓を貫こうと試みる。
 土雲は即座に動いた。小太刀で花盛の刺突を受け止める。

 女の細腕と侮ったのだろう。
 だが相手が悪かった。

「悪いが、私は貴様が思うほど柔じゃないんだ」
 金属の砕ける硬質な音がした。
 土雲の小太刀が、粉々に砕け散る。
「羅刹女を、舐めてくれるなよ」

 花盛は先刻取り落とされた刀を握る。
 矢張り骨が砕けているらしい、手が思うように動かないが、今ならば勝機があると見て、仕掛ける。
「唯虎の名を弄んだ罪ごと、滅びるがいい……!」

 ユーベルコード、我流実践術【雀蜂】が発動する。
 甲冑の胴に斬撃が命中した。
「はァ……ッ!」
 その攻撃を追うように、固く握りしめられた拳骨が刺さる。
 土雲の身体が畳の上を滑った。
 鎧にヒビが入ったと思ったら、次の瞬間、粉々に砕け散る。

 最後の一刀が無残な欠片と化していた。
 土雲は、息絶えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月03日


挿絵イラスト