【サポート優先】ジュエルと金とヒーローの意味
これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)。
●宝石より価値あるもの
「あーもうサイアク!」
近頃のブローカーは金払いが悪い。怪盗ジュエルは路地裏で地団駄を踏んでいた。
彼女は名の通り、宝石専門の怪盗であった。それも狙うのは富豪が貯め込んだ財産で、盗んではブローカーに捌かせて金に換え、自分の取り分は貧民達に流す――ヴィランではあるが、もっと適切な表現をすれば義賊と言えるだろうか。
ブローカーとは顔馴染みにならないのがジュエルの主義。裏社会とは強大なヴィラン組織であるものの、裏切りと隣り合わせの世界でもある。信頼は油断の温床。下手に寝首を掻かれぬようジュエルは毎回相手を変えていた。
だから、という面もあるのだろう。やれ流通ルートの締め付けが強くなっただの、盗んだ宝石に傷がついているだのと理由や難癖をつけられて取り分を削られる。嫌なら取り扱いは御免だ、と言われればジュエルも泣き寝入りするしかない。
ジュエルの活動を貧民達は何一つ知らず、彼女をあたかもヒーローのように扱ってくれる。それでいい、とどこか自分を納得させるように信じ込んできたが。
後ろめたい気持ちが付き纏うなら、いっそ本当にヒーローになってしまおうか――。
「……でも、ヒーローになって、何があるの……?」
本当のヒーローになったとして、元ヴィランである事実はついて回るだろう。貧民達には知られないままでありたいが、そうすると活動拠点を変える必要がある。
全く別の土地で、助けたい存在も見出せぬままヒーローになる意味とは。悩めども答えは出ず、ジュエルは今日も冷たい風に流されているのだった。
●ヒーローズアース・35thラウンド
「富める者からなら盗んでもいいという法はありませんので、ジュエルさんも立派なヴィランではあるのですが……複雑な問題ですね」
ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)が気付いたヴィラン達の悩みも十人十色だ。事件の情報を纏める際にもロザリアは考えていたが、自分がこの事件に当たったとして、ジュエルに掛けるべき言葉はまだ見つかっていない。
「ジュエルさんは盗みを働きながらも、一方で貧しい方々の支援も行っているという、ちょっと珍しいタイプのヴィランになります。盗みを行うことが彼女にとって最善の方法だった、と思うしかないのですが……ジュエルさんは今、岐路に立たされています。ヒーローになりたい願望がある一方、その先がまるで闇の中で踏み出せずにいる……そういう方に光を差し伸べて導いてあげるのも、私達猟兵に課せられた使命なのではないでしょうか」
ヴィランであり続けることは、ジュエル自身が幸福にならない。かと言ってヒーローであれ、と押し付けるのもまた違う。自らの足で踏み出していかなければ結局は何も変わらないのだ。
「ジュエルさんは『ヴィランであることを捨ててヒーローになる意味』を探しています。ですから皆さんには、ヒーロー、つまりは猟兵としてどういった経験をして、何を得ることができたのかを、彼女に伝えてあげてほしいんです。皆さんが経験したことは必ずしもいいことばかりとは限らないかと思いますが、それでも猟兵になってよかったと思えることであればジュエルさんも心を開いてくれるはずです。また逆に、ジュエルさんに思いの丈を吐き出してもらって、それについて何かアドバイスをする、といったアプローチもあるでしょう。何にせよ、皆さんの生の声が大事です。どうか、ジュエルさんを助けてあげてください」
ロザリアの願いは年の瀬の空に届くのか。それは猟兵達の頑張りにかかっている――。
沙雪海都
沙雪海都(さゆきかいと)です。
年末年始の楽しみが多くて有難いですね。休みはまだかー。
●フラグメント詳細
第1章:日常『悩める者達へ』
ヒーローになる意味とは何なのでしょうか。
正直自分もここに何を書くべきか悩んでいますよー皆さんのお声を! お聞かせください。
第2章:集団戦『悲劇のゲルミュータント』
ジュエルがヒーローを決意して最初の困難になります。
やはりここでも皆さんの力が必要ですよーよろしくお願いします!
第1章 日常
『悩める者達へ』
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POW : これまでの成功体験を聞かせて勇気づける
SPD : これまでの失敗談を聞かせて慰める
WIZ : 話の聞き役に回ってアドバイスをする
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
キャロライン・メイ(サポート)
ダークセイヴァーの貧民街の生まれ。生きるため、悪事に手を染めてきた。ある日商人から一振りの剣を盗み出す。剣は呪われており、その邪悪な魔力によって、呪われし黒騎士へとその身を堕とす。その冷酷な様を人々はアイスドールと呼ぶ。
自身の半生に強いコンプレックスを持ち、心の中では常に自己を否定し続けている。死に場所を探しているかのような言動をとることがある。
ダーインスレイヴ~漆黒の魔剣による強力な一撃。
ライフドレイン~魔剣の血塗られた鉄鎖が無数の棘に変形し敵に突き刺さる。
「私は人形・・・ただ冷ややかな心で剣を振るうだけ。」
エロやグロに巻き込まれなければ、どんな展開でも大丈夫です。
大神・零児(サポート)
人狼
妖剣士×黒騎士
普段(俺、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)
怒った時(俺、てめぇ、か、だろ、かよ、~か?)
探索や調査、追跡等は内容に即した使えそうなUCを選択し、技能やアイテムも駆使
またマルチギアイヤフォンという通信機を仲間に配って即時情報共有も可能
戦闘の際は敵のUCにメタ、カウンター、一方的に攻撃ができるようなUCを選択又は状況を技能やアイテムを駆使して作り出し、マルチグレネードの機能を選択して使ったり、妖刀「魂喰」や黒剣「黒鞘」を駆使しての剣士の動き等で戦う
基本戦闘型キャラ
ギャグシナリオはツッコミのような立ち位置
自身に触れられる危険がなければお色気も少々いける
アドリブ共闘等可
夜鳥・藍(サポート)
生まれも育ちもサクラミラージュのクリスタリアン。誰かの願いで転生した元影朧。そのため影朧には同情しがち。
それなりの良家の出で言葉遣いは丁寧。だが両親とは違う種族で生まれたのを悩み高等部(高校短大相当)卒業を機に家を出ている。現在は帝都で占い師をしている。
もふもふ大好き。
実家ではいろいろ我慢してたのもあって、飼えなくとも一人暮らし&猟兵となったことで爆発しがち。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は絶対にしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●人は出会うから美しい
「お前という存在がいなかったら、おそらく何百、何千という子供達が堕落し、ヴィランとなっていたことだろう。感謝する」
「え、あ、まぁ……ありがと……」
怪盗ジュエルは裏の顔。表社会では大手商社にでも勤めていそうなパリっとしたスーツを着込んでいるが、だからと言って何処かに勤めているわけでもなく今は公園のベンチに腰かけている。
その隣には少し間を開けて夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)が座っており、正面にはキャロライン・メイ(アイスドール・f23360)、斜向かいに大神・零児(魂から別れたもう一人の令二・f01283)が立ち並び、ジュエルは何だか尋問を受けているような気分だったが、唐突にキャロラインが頭を下げて礼を述べてきたので困惑しながらも応じていた。
キャロラインは、世界は違うものの貧民街の生まれ。だからジュエルが支援してきた貧民達の境遇が痛いほどよく分かる。キャロライン自身は悪事に手を染め一度は道を踏み外したが、ある少女との出会いがあり、こうして依頼解決に乗り出せるくらいにまで立ち直ってきた経緯があったため、ジュエルが貧民達を支援してきたことに改めて感謝を示したのだ。
「だが、ヴィラン活動はいただけないな。……で、ヒーローに転身したい気持ちはあるも、ヒーローになって何があるのかわからん、と」
「そうよ。この際だから猟兵さんに聞くけど、猟兵になって何かいいことあった?」
「ありましたよ、色んな出会いが」
ジュエルの単刀直入な質問に、最初に口を開いたのは藍だった。彼女はサクラミラージュ出身のクリスタリアン。サクラミラージュにおいて異世界種族は影朧の転生が関わっており、その概念は一般化されているものの風当たりは必ずしも良いわけではない――少なくとも藍はそう思って過ごしていた時期があった。
そんな身の上話をジュエルは黙って聞いている。
「猟兵となって、色んな価値観を持つ人との出会いがあって……私は、世界に私を受け入れてくれる人達がたくさんいることを知りました。だから気付けたんです。私のために癒しを与えてくれる人がいたことは、本当に幸運なことだったのだと」
「私も……猟兵となって得た最も大きなものは、出会いだな。もし、呪われし黒騎士へこの身を堕とす未来と堕とさない未来、どちらかを選べるとしたら……今の私なら身を堕とす未来を選ぶ、それくらいかけがえのない出会いだ」
藍とキャロライン、二人の語りはそれぞれ違った印象を与えるが、口を揃えて言うのは人との出会い。それが大きな転機になったと二人は強く自覚している。
「俺が印象深い出会いは猟兵になる前の話だが……結果として俺は猟兵になったし、猟兵になったことを別に悪いとは思っていない。ただな……二人も同じだと思うが、出会いは運命の巡り合わせみたいな側面もある。俺達の話を鵜呑みにしてヒーローになろうってのは勧めない」
「……そんな風には思ってないから安心して。それに、あなた達の話を聞いて……少しだけ、新天地での人との出会いが楽しみになってきた気がするわ。寂しい思いをしなければならないのは仕方ないわね。それは私がこれまで行ってきたことの罰」
ジュエルは徐に立ち上がると、ベンチの脇に出て三人へと向き直る。その表情はどこか垢抜けたようにさっぱりとしていて、
「感謝するわ。私はもう迷わない。何処かで必ずヒーローになってみせるから、その時は――」
だが言葉が紡ぎ切られるより早く、
「きゃああぁぁぁ!!」
暴徒の到来を知らせる悲鳴が場を劈くのだった。
成功
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第2章 集団戦
『悲劇のゲルミュータント』
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POW : ゲル・ハンマー
自身の【ゲル化した右腕】を【身長と同程度の巨大ハンマー】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD : ゲル・キャノン
【ゲル化した体で作った砲身からゲル弾】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : ゲル・ブレード
速度マッハ5.0以上の【極超音速に到達したことで刃化したゲルの鞭】で攻撃する。軌跡にはしばらく【緑色の弾力あるゲル物質】が残り、追撃や足場代わりに利用できる。
イラスト:ヤヅキヒロ
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●裏切り者に死を
裏社会に秘密は通用しない。怪盗ジュエルの表の姿すら把握していたゲルミュータント達が公園に溢れ出していた。
「――っ!? こんなところに、何で――」
「ユルサナイ……コロス、コロス……!!」
ゲルミュータント達は非業の死を遂げた者達の集まりだ。裏切りの抜け駆けなど、到底許すはずもなかった。
赤嶺・愛(サポート)
『世界が平和になりますように』
人間のパラディン×シーフの女の子です。
普段の口調は「平和を愛する(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、怒った時は「憤怒(私、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は明るく、人と話す事が好きで
平和的な解決を望む優しい性格の女の子ですが
戦う事でしか依頼を成功出来ない時は戦う事も厭わないです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
エリー・マイヤー(サポート)
どうもエリーです。
手が必要そうなので、手を貸しに来ました。
【念動力】で解決できる事なら、お任せください。
遠くから押したり引いたり掴んだりとか、
持ち上げたり回したり投げたりできますよ。
包み込んで動きを封じたり、破裂させて攻撃したりもできます。
微弱な念動力をばら撒けば、ソナー代わりにも使えます。
後はスプーンを曲げに曲げて、コルク抜きにしたりとかですかね?
タネなし手品で子供を喜ばせるとか、朝飯前です。
子供は煙草の臭いで逃げる気もしますが…
まぁ、それはさておき、状況に応じて色々できますよ。
あ、運動は苦手なので、
殴り合いとか派手な運動は期待しないでくださいね。
たぶん息切れして倒れちゃいますよ。
土御門・泰花(サポート)
※アドリブ・連携・苦戦描写・UC詠唱変更・その他歓迎
「あらあら……。ふふ、ご安心を。お手伝い致します」
一人称:私
口調:基本的に敬語。柔和な印象を与える口ぶり。
表情:基本的に柔和な笑みを湛え、義憤もその下に隠す。
性格:普段はおっとりだが「陰陽師の家系の当主」という自覚があり、凛々しくみせる時も。
先ずは式神で私や仲間へ【結界術】【オーラ防御】を展開。
敵の攻撃は【早業】【軽業】【地形の利用】等で回避。
通用しなければ薙刀で【武器受け】し、薙刀か式神の黒揚羽で【カウンター】攻撃。
UCは、戦況とその効果に合わせて発動。
可能なら【早業】で敵のUC発動前に発動。
UCは状況に合わせてどれでも使用。
後はお任せ。
アニカ・エドフェルト(サポート)
『よろしく、おねがいします。』
オラトリオのサウンドソルジャー×聖者、6歳の女です。
普段の口調は「読点やや多め(わたし、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、あわてた時は「読点少なめ(わたし、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
藍原・蒼夜(サポート)
人間の學徒兵×力持ち、20歳の女です。
普段の口調は「おっとり系(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
偉い人には「敬語(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
のんびり、おっとりした性格で、多少天然ボケな面もあります。
武器は主に退魔刀を使用して戦います。
好きな物は、可愛いぬいぐるみ、綺麗な花、静かな場所。
趣味は小説等の読書。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●託すべき者達へ
ジュエルと接触していた公園に突如襲来したゲルミュータント達。その姿を前にして。
「この数……十秒後には一般人に被害が出ますよ」
そんな予言めいたことを告げたエリー・マイヤー(被造物・f29376)の脳内では現在進行形で周囲の地形からゲルミュータント達の配置、移動速度、攻撃手段、一般人との位置関係――あらゆる視覚情報が超高速処理されていた。全ては演算結果であり、予言ではなく確定的な事実の予告だ。
「なら、私が行くよ! 皆を護る為の力を、今ここに!」
「では、お供致しますね」
赤嶺・愛(愛を広める騎士・f08508)が常に持ち続けている優しさを満ち溢れさせてオーラを纏い飛び出すと、土御門・泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)が内功を活性化させて風に舞い、超高速で続いていく。たった十秒、されど十秒。超人を超える飛翔速度を得た二人は戦場から逃げ遅れた一般人を抱えると即座に離脱し被害を防ぐ。
「ニゲルナァァ!!」
ゲルミュータント達にとっては何もかもが敵。右半身を緑色のゲルにした集団は一斉に右足を愛と泰花目掛けて振り抜いた。その速度は音速を遥か上回る極超音速。ゲルの鞭は刃と化して空中を一瞬にして滑り飛ぶ。
だが刃は紙一重で愛と泰花の背には届かず離脱を許した。極超音速が次の瞬間には無になっており、ゲルミュータント達は不愉快そうに顔を歪める。
「この状態は長く続けていられませんからね……働ける時に働いておきますよ」
高速演算の傍らで念動力の性能を六倍に引き上げていたエリーがゲルミュータント達の攻撃を一挙に固めたのだ。エリーが持つアルジャーノンエフェクトの効果は二分弱。その後は昏睡状態に陥ってしまうため戦線から離脱することになる。
「今が狙い時よね。雷の追撃からは逃げられないわよ!」
念動力で右足を固められたゲルミュータント達は一時的に移動不能となっていた。その隙を逃さず藍原・蒼夜(蒼き宝刀・f23131)は月光の猟銃を構えて素早く照準を合わせ、一射必中の狙撃を連続的に繰り出していく。弾丸が命中すれば次に飛ぶのは雷撃で、蒼夜の体からあたかも千手の如く伸びた雷撃がゲルミュータント達の体に突き刺さる。
「イヤアアァァッッ!!」
半分ゲル状態の体は雷撃に焼かれて蒸発し、残りの半身はぼろぼろとパン屑のように零れ崩れた。ゲルミュータントの一団は処理したが、それは群れの全貌のほんの一部。
「わたし、も、いきます、ね」
雷撃迸る戦場にアニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)が飛び込んでいた。蒼夜と違い接近戦を主軸として戦うアニカの接近に気付いたゲルミュータントの一団はゲル化した右腕をハンマーにまで膨らませている。移動力を代償として攻撃力を
五倍まで跳ね上げるゲルミュータント達の力はアニカの小さな体には脅威だ。
「ツブレテ……シマエェェッ!!」
アニカの頭上に振り下ろされてくる緑色のハンマーは、当たれば一撃でぺしゃんこになってしまうほどの威力だ。アニカはゲルミュータントをまずは一体掴みかかろうとしていたが、待っていたかのようにハンマーが迫る。
ずん、と地響きを鳴らしてハンマーが地面を打った。アニカはぺしゃんこに潰れてしまったか――。
「その手は……甘い、ですよっ!」
アニカは生きていた。掴みかかり攻撃にフェイントを織り交ぜて右方向へと回避していたアニカはゲルミュータントの通常状態である左腕を強く引っ張りバランスを崩すと、流れるように蹴りへと移行してゲルミュータントの腹へずどんと一撃、蹴り落とす。
「ガァッ!!」
ゲルミュータントの体が地面の上でくの字に折れ曲がり、腹の潰れた者は溶けるように消滅していく。
残るゲルミュータント達が襲ってくるのを、アニカは躱して掴み、倒して蹴る、の繰り返しで大立ち回った。後ろからエリーが念動力で支援しており、ハンマーの振り下ろしが念動力に固められた隙を突いて、掴み引き摺るように体勢を崩して蹴りを叩き込んでいた。
「一般の方々の避難が終わりましたよー」
「私達もいくよ!」
泰花と愛が一般人の避難を終えて戦場に戻ってくる。飛翔速度は健在で、群れるゲルミュータント達に愛は双剣の構えで突っ込んでいた。
新たな敵の登場を察知したゲルミュータント達はハンマーの性質を変えてくる。移動力を犠牲にした攻撃回数の増加。突っ込んでくる愛を逆にカウンターで潰してしまおうという算段だ。
愛の両手には二振りのバスタードソード。進行方向の両側から、前傾姿勢で飛翔する愛の顔面目掛けて振り出されたゲルの鎚。それを愛は二本の剣でそれぞれ受け止める。
(仲間を……守らなきゃ……!)
愛はアニカ、泰花と共にゲルミュータント達の侵攻を食い止める役目を負っている。それを全うすべく湧き上がった意志が愛をさらに強くする。
「やああっ!!」
愛が纏うオーラが一回り大きくなり、愛に力を与えていた。ハンマーを両手同時に押し返すと、バランスを崩したゲルミュータント達を一、二で斬りつけて倒す。
「当たらなければいいわけですね?」
泰花はゲルミュータント達の攻撃回数の増加に、回避することで対処していた。飛翔する泰花に対し、ゲルミュータントは然も導火線に火を放ったかのようにその後ろをハンマーの数々で追っていく。中には先回って泰花を狙いハンマーを振るったゲルミュータントもいたが、泰花の飛翔は曲線的だ。眼前にハンマーが飛び出してきたのに気付くと風を掴んでひゅんと方向転換、回避することでゲルミュータントを振り切りながら誘導し、入れ替わるように愛とアニカへ渡して殲滅の一助とした。
「大分数が減ってきたようですが……申し訳ありません、そろそろ時間ですね」
「わかったよ、お疲れ様」
完全撃破を見る前にエリーは時間切れを宣言し、ふっと力無く倒れていく。それを後方支援で攻撃に回っていた蒼夜が抱き留めて、いよいよ戦いは最終盤へ――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
叢雲・雨幻(サポート)
堂々と正面から、と言うよりは掠め手で相手を惑わせて
攪乱しながら一網打尽にしていくような戦い方を好むよ。
使う武器は【黒雲】【黒霧【対】】の二刀流での高速戦闘が主。
使うUC次第では連結してダブルセイバーにしたり、
そもそも剣を主武器として使わず【武器受け】用として使いつつ、影を操る攻撃で戦ったりするよ。
主に戦い方の例を挙げるならば
【目立たない】様に物影を介して【忍び足】で動き回り敵の視線から外れたり、
【闇に紛れて】居場所を攪乱したり
攻撃すると見せかけた【フェイント】を使って騙したり、
【武器(で)受け】てから【カウンター】で仕留める等だね。
洗脳等で助けられる相手を攻撃する際は、ある程度手心を加えるかな
●ゲルミュータントで仕事納め
「よっし、最後は任されたっと」
猟兵達によって、公園を襲うゲルミュータント達の大部分は倒されていた。叢雲・雨幻(色褪せた根無し草・f29537)がやってきた時にはもうその数は数えるばかり。
「オマエダケハ……!」
「『お前だけは』何なのかな? まあ大体良くない言葉が入るような気がするけどね」
ゲルミュータント達の呻きに応じながら雨幻は「黒雲」、「黒霧【対】」の二振りに手を掛けた。だがその状態で動くことなく、じっと時を待ち続ける。
ゲルミュータント達の右腕が変化していく。風船のように膨らんでいき、出来上がったのは大砲の如き砲身だ。ずらりと横並びになったゲルミュータント達は一斉に砲口を雨幻に向ける。
「わお、人気者は辛いねー。こんなに盛大に歓迎してもらえるなんて……オジサン、涙出ちゃいそう」
「……シネ!!」
一体のゲルミュータントの声で、やはり一斉にゲル弾が放たれた。緑色のスライムのような塊は空気抵抗で形を変えながら、雨幻という一点を目指し集まってきた。
「オジサン、結構心は広い方だけど……そいつはできない相談だ」
雨幻は二振りの剣を抜く、と同時に真正面に飛んできていたゲル弾へ縮地の如く接近、一閃薙いで両断し道を作った。弾速はおそらく雨幻まで辿り着くのに秒とかからないはずだったが、待機していた雨幻はそれを上回る異常な高速移動から斬撃を放ち、道を切り拓いたのだ。
ゲルミュータント達が次弾装填に入る――だがその時には何もかもが終わった状態になっていた。雨幻は並ぶゲルミュータント達の正面を、まるで挨拶でもするかのように端から端まで駆け抜ける。
その間、一体につき二種の斬撃が放たれていたことにゲルミュータント達が気付くのは、まず右腕の砲身が根元からぼとりと落ちた時。
「ァ……」
声を出そうとして、まともに出ないことに気が付いた。二つ目の斬撃はゲルミュータントの首を断っていたのだ。端からウェーブのようにぼとりぼとりと頭が落ちて、それでゲルミュータント達はぐちゃりとゲルの塊になって潰れていく。
「一件落着だね。これで今年の仕事も終わりかなーっと。のんびり年越しができるといいねえ」
平穏の戻った公園で雨幻は剣を収めつつ、穏やかな年越しに思いを馳せるのだった。
成功
🔵🔵🔴