もういくつ寝る? 春待つ祭に武侠が舞う!
●春待の祭
それを『クリスマス』と呼ぶものの範疇に入れて良いのかどうか、意見の分かれるところかもしれないが。
封神武侠界においても、十二月の末は祭の時季である。新たな年の訪れに向けて気分を高めるために、宴会などを催して騒ぎ楽しむという場合もあれば、あるいは何やらストイックに座禅を組むなどして心身を鎮めるという者もある。
いずれにせよ、特別、非日常という点では共通している期間だといえる。
「で、そんなお祭り気分を猟兵のみんなも味わってみないか? ってことなんだけど」
今回は殺伐とした予知ついて語るのでないため、グリモアベースにあって珍しく穏やかな笑みを浮かべながら、大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)は言った。
「場所は、人界側のとある市街地の一角だ。そこは、年末は浮かれて騒いで過ごすっていうタイプの所で、賑やかなお祭りをやってる。屋台は出るし、楽隊の練り歩きなんかもある」
そんな中にあって、これは猟兵向きではないかと思える出し物があるのだという。
それは、有志参加型の演舞披露会である。
元は、一年の修行の成果を演武という形で示して武の神に奉納するという、武侠らによる一種の神事だったという。ところが時代が下るにつれ、武に限らず何かしらの芸を身に付けた者たちが参加し、磨き上げた己のパフォーマンスを披露する場へと変遷していったのだという。
ゆえに今では『演舞』の名を冠するようになり、参加者の幅も広くなった。椅子を高々と積み上げてその上で逆立ちするといったバランス芸を披露する者もあれば、ナイフでジャグリングをする者もあるし、演奏やダンスといった芸術分野でのパフォーマンスもある。無論、昔ながらのしっかりした演武を行う武侠たちもいる。
「毎年のことだけあって、客も目の肥えた連中ばかりだ。けど、それだけに猟兵の皆が持つ技量が尋常じゃないのも理解してくれると思う。どうだい、封神武侠界の人たちを、あっと沸かせてみたくないかい?」
自身もパフォーマーとしてうずくところがあるのか、朱毘は現地へとつながるワープゲートを開きつつ、うきうきと語りかけてきた。
大神登良
オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良(おおかみとら)です。
これは2021年のクリスマスのシナリオで、1章で完結する特殊な形式になります。
封神武侠界の街で行われる春待の祭に参加し、楽しんで下さい。
行動に関して選択肢が出てはいますが、あまり厳密に縛られなくても大丈夫です。必ずしも演舞に参加しなくとも、賑やかしであったり、屋台で食べ歩きをするのであったり、基本的にお祭りを楽しむ気持ちのある行動であればどのようなものでも構いません。
それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第1章 日常
『驚異的猟兵雑技団!』
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POW : パワフルな演武!
SPD : 繊細なアクロバット!
WIZ : 口上で人を集めるのも大事な仕事!
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
荒珠・檬果
基本的に『見る専』な私、参上!
やーこういう演舞披露会、見るの好きなんですよ。
なんですが。せっかくですので参加しますね!機会があるなら、それに乗らねば。
こういうのは、やらなかった後悔大きいですし!
ふふふ、楽しむならば全力で!
というわけで、七色竜珠合体させて、白日珠[薙刀形態]にしまして。戦巫女として修めてる舞を披露いたしましょう。
舞うための音は身の内に。常にあるように自然にあります。
元は神事ってことですから、相応しくありましょう。
召喚する将たちの動きに合わせるために鍛えている。そんな私ですよ。
※
鐙のない赤兎馬に乗れるくらいには鍛えられている。
●翠芒果遊舞
寒空の下だというのに袖のない上衣を着ているのは、鍛え抜いた腕の筋肉を見せつけるためだろうか。
とまれ、そんな出で立ちの壮年男性は滑るような運足と同時、長棍をしごいて連続刺突を放つ。さらに鋭く身を切り返しての、逆方向への打ち下ろし。一連の動きには無駄がない。
おお、と沸き立つ観衆の中に、荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)の姿もあった。
ゲーム好き、三国志好きな檬果にとって、この光景の中に己も入り込んでいるという状況は、夢のようだといえた。画面の向こうにしか存在しなかったはずの空気、熱気を、直に肌で感じ取れているのである。
『見る専』に徹してこの空気を味わい尽くす。それも一つの楽しみ方である。
普段ならばそうする檬果だが、今日は違う。より深く楽しむため、演舞披露会に参加することにしたのである。
「こういう機会に乗っておかないと、後での後悔が大きいですからね」
つぶやいて、檬果は参加を申請すべく、スタッフを探した。
中国において、長柄の先に片刃の刀身を取り付けた武器は一般に『大刀』に分類される。その中で刀身がスリムなものを、人の眉の形になぞらえて『眉尖刀』と呼ぶが、この字は『なぎなた』の当て字に使われることもある。それだけ形状が似通っているからだ。
舞台上に立つ檬果が持つは、和風の拵え、比較的反りの小さな静形のなぎなたである。
衆目の中、檬果はまず下段に構えたそれを、ひょう、と斬り上げた。さらに淀みのない動きで身を捻り、薙ぎ払い。さらに、バトントワリングめいた動作で、二連の斬り下ろし。
「ほう……!」
観衆から感嘆の声が上がる。
速度は、遅いわけでもないが、劇的に速いわけでもない。しかし、円舞曲に合わせて踊るような優美な動きを、重量があるはずの長柄武器を軽やかに振るいつつ実現させるというのは、ぱっと見の印象以上の技量が要求される。己自身の姿勢を支える体幹、武器を支える腕力、挙動をコントロールする武器の扱いの習熟度そのもの、どれが欠けても成り立たない。
見巧者が揃った観衆は、檬果の技量の並ならぬ様をしっかりと見て取った。それゆえの感嘆である。
演武にして演舞。檬果が一連の所作を終えた途端、会場は惜しみない拍手の嵐に包まれた。
大成功
🔵🔵🔵
梅桃・鈴猫
【桃桜】
アドリブ◎
友人の鏡介様と。
武を奉納する習わしから、こうして多種多様な演舞が見られるようになったのですわね。
鏡介様とは、演出重視の模擬戦を。共同演舞として披露しますわ。
まずは少し離れて、霊糸を付けた春雷輪を投擲。
鏡介様が弾いたら霊糸で操作し再投擲。
そして、春雷輪に雷を纏って投擲、等数度繰り返しますわ。
そして、UCで足場を作り、予め仙術で鏡介様にも足場を見えるようにしましょう。
春雷輪を手に戻し、その足場を使って互いに派手に、盛大に撃ち合います!
速度は極力抑えて。観客の方々に見えなければ意味がありませんから。
蒼に対し、放つは桃色の闘気。花の如く舞いましょう。
これが私達の演舞でございますわ!
夜刀神・鏡介
【桃桜】
アドリブ◎
梅桃と共に参加
神楽とかもそうだが、どんな世界でも神にそういうものを収める風習があるんだろう
この辺りだと、それが武術であったと
ま、方向性が多少変わるのは時代の流れだよな
それじゃあ、俺達もやるとしようか
投擲された春雷輪を真正面から受けて返す、斬撃波で跳ね返す、輪っか部分に刀を引っ掛けて投げ返すなど。演出重視で工夫を凝らして返していく
足場が出来たらそちらに飛び乗り、UCを発動。目立たせる為、刀に蒼の神気を纏わせて、梅桃の桃色の闘気と打ち合わせていく
彼女が花ならば、今の俺は空を想わせよう。花弁が空を舞うが如くに
見せるための、というのは慣れないが。どうやら楽しんでもらえたみたいだな。
●桃桜繚乱
「神楽とかもそうだが、神にそういうものを奉納する風習はどこにでもあるものなんだな。この辺りでは、それが武術だったようだけど」
舞台上でトントンと軽くジャンプしつつ、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)が言う。近代西洋風のデザインの軍服は、本来であれば封神武侠界では珍奇に映りかねないものだが、その点では猟兵たる彼が観衆からも違和感を持たれることはない。
そんな鏡介の対面には、淡い桃色の衣を着込んだ梅桃・鈴猫(天翔の桃花・f33163)がいる。たっぷりの振りがある袖を持つ衣はあまり武芸を連想させるようなものではないが、所作のしっかりした様から練達ぶりを連想できる者は、果たしているだろうか。
「そのようですわね。今では、多種多様な演舞が奉納されているようですが」
「ま、多少方向性が変わるのは時代の流れというものだろう」
万物は流転し、恒久不変のものはない。
まあそんな哲学めいたことは抜きにしても、にぎやかになる方向で祭りの性質が変化していったというなら、それだけ人気があったということの証左でもあるわけだから、まずまず悪くない現象であろう。
また、それでいて武の奉納という伝統的な部分がないがしろにされていないというのも、祭りに携わる人々の意識の高さをうかがわせる。
「それじゃあ、やるとしようか」
「そうしましょう」
封神武侠界の流儀に則り、鏡介と鈴猫は互いに拱手を交わした。
距離を取った両者のうち、先手を取ったのは鈴猫。
初め袖の下にあった両の手が素速く伸びると、そこには一対の輪状の刃が引っ掛けられていた。
円月輪。戦輪、あるいは封神武侠界ならば乾坤圏という単語も連想されるだろうか。習熟には高い難易度を要するといわれる独特な形状の武器を、鈴猫は鋭くスナップを利かせて投擲する。
刹那、鏡介の顔と胴体とを目がけて鋭刃が飛ぶ。
対して鏡介は正眼に構えていた刀を素直に縦横十文字に振るい、円月輪を弾いてその軌道を逸らす。
軌道を狂わされた円月輪だが、鈴猫の手にはそれと結びついた霊糸がある。ちょい、と彼女が指を微かに動かすような仕草をしたかと思ったら、今度は鏡介の左右から挟み込むように再び円月輪が奔る。
首をはねられる寸前、鏡介は後方宙返りでそれら回避してみせる。獲物を見失った円月輪がかち合い、きぃん! と甲高い音を響かせる。
と、これだけの事が起きるまで、瞬き二つか三つ程度。
「――え?」
猟兵らの一連の動作を見ていた観衆の中から、焦ったような声が上がる。
速い――というより、速すぎる。
飽きるほど反復練習を繰り返した約束組手であっても、これほどの速度で実現させるのは困難である。
「お、おい。あいつら、ガチで戦ってるんじゃないだろうな?」
「冗談だろ? 演舞会は殺し合いじゃねぇぞ!」
どよめきはただの観衆のみならず演舞会スタッフにも及び、中止させるべきか、といった空気さえも流れる。
しかし。
「無用の心配じゃ。あの者らをよく見よ」
いかにも達人然とした禿頭の老爺が、暖簾のように伸びた白眉の隙から眼光を放ちつつ、浮き足だった人々を制した。
「にわかには信じられんが……あれほどの速度でさえ、あの者らにとっては小手調べじゃ」
「……な、ん……!?」
周囲の人々は改めて二人の様子を観察する。
言われてみれば、鈴猫、鏡介の両者とも表情が穏やかなままであって、とても命の奪い合いをしている者同士のそれではないことが知れる。
それに、速度こそとんでもないが、両者ともにどこか動きに余裕がある。その気になればまだいくらでもギアを上げることができるところ、事故の起きない程度にセーブしているらしいといのが、なるほど、気配でわかる。
「こ、こんなことが……!」
「あれが、有り様を歪められた古の英霊らをも討ち果たし得る武、ということよ」
「――……」
老達人の言葉に、観衆が絶句する。
そうこうしている間に、二人の演武は次の段に移行している。鈴猫の繰り出す円月輪が桃色の雷撃を纏うようになり、乱舞する都度に空中に雷光がわだかまる。光が網膜に残るのではなく、現に空間に鎮座するのである。さらにあろうことか、鈴猫はその雷光を階段よろしく足場にして宙へと駆け上がり、円月輪の可動範囲を拡大していった。
さらに、その雷光の階段を鏡介までが利用して跳び回り、刀を流麗に振り回しては円月輪を弾き飛ばす。さらに刀の軌跡に沿って蒼色の闘気が奔ったかと思ったら、水に落ちた墨がごとくに空間を塗り潰していく。本来であれば周囲一帯の敵を討ち平らげる【漆の秘剣【蒼鷹閃】(シチノヒケン・ソウヨウセン)】の広がる速度は、鈴猫の繰り出す雷撃よりなお速い。
当人らが語ったところによると、そうやって生まれた光景でもって、青空を背景に舞う花吹雪を表現したかったらしい。
が、観衆のうちにそれを汲み取れた者はいたかどうか。舞台を埋め尽くす常識の埒外の武技の凄まじさに圧倒され、彼らはただ息を呑むばかりであった。
大成功
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オリヴィア・ローゼンタール
クリスマス……とは少し趣きが違いますが、お祭りを楽しむ心はどの世界でも変わらない良きことです
技芸を尽くしてお祭りを盛り上げましょう!
紅い踊り子の姿に変身し、演舞場に登る
轟く太鼓に銅鑼、響く笛と琴
激しい音楽に合わせて、陽気に明るく【情熱の演舞】を披露(ダンス)
躍動するステップに合わせて揺れ動く、尻尾や尻尾のように束ねた髪は【存在感】を示すに充分でしょう
脚力(ジャンプ)を活かしたアクロバティックな【パフォーマンス】も取り入れて観客を驚かせる
露出多めの衣装の寒さも忘れ、会場の熱気で汗だくになるほど情熱的に踊り明かす
盛り上がってくださった皆さんに手を振って演舞場から降ります
●熱情融雪
「……本当にその格好で演舞をなさるんですか?」
演舞披露会のスタッフの青年が、ひどく困惑した表情を浮かべつつ、言う。
無理なからぬことである。オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の格好は、極端に布面積の少ないビキニめいた赤い服、それに紅白のグラデーションが施された腰布、それにイタチか何かを模したのだろうか、白の獣耳と獣尻尾のような装飾といった出で立ちだった。
まず単純に、優れたプロポーションを誇るオリヴィアがその格好でいるというのは目の毒になる。
しかしそれ以上に、今の季節である。十二月の末、微かながら雪さえちらつくような寒気の真っ只中なのだ。演武ないし演舞という性質上、鍛錬を重ねた肉体美を誇示するために敢えて薄着をする者も多いことは多いが、それでも限度というものがある。
しかし、オリヴィアは落ち着き払って笑みを浮かべていた。
「ええ。音の方はお願いしますね」
「は、はあ……わかりました」
舞台へ上がるオリヴィアを見送る。その足取りはしっかりとしていて、寒さによって体に不具合を来しているような様子はない。
ならば、大丈夫なのだろう――恐らく。オリヴィアを信じることにした青年は、楽隊に合図を送った。
どんどん、しゃんしゃん――と、太鼓と鐘の音が連なる。
さらにそれらに重なるように、古琴や琵琶、管子などが奏でられる。リズミカルで、かつ妙に癖のある余韻を持つ音響が、大陸音楽独特の風合いを持つ旋律となって場を満たす。
それに合わせて、オリヴィアが舞う。
鋭く、速く、激しく、大きい。たっぷりとした白銀色の束髪が重力に従って垂れ下がる暇もなく、延々と彼女の動きに合わせてたなびかざるを得ないほどに。
躍動感あふれるオリヴィアの舞いに観衆の誰もが虜になる――ちょうどそんな頃合い。
どゎん! と一際大きく銅鑼が打ち鳴らされると同時、オリヴィアが大きく跳躍した。
身を翻らせた姿は、力強く美しい。たとえていえば、滝を登り切った鯉が昇竜へと至った様のような。
途端、【情熱の艶舞(パッション・ステップ)】の熱が観衆に伝播し、火を灯す。ただ見ているだけでは収まりがつかなくなった彼らは、オリヴィアに合わせるように身を揺らし始めた。
しかし、それも。
「皆さん! 一緒に踊りましょう!!」
舞台上のオリヴィアが呼び掛けるや、それでも収まりがつかなくなる。観衆は誰もが歓声を上げ、思い思いに踊り出す。情熱的につたなく、極上にでたらめに、雨のような汗が弾け飛ぶ。
冬の冷気は人々の熱気に押し負け、会場はクライマックスを迎えた。
かくして、猟兵らの活躍により例年にない大盛り上がりとなった演舞披露会は、しばしの間人々の間で語りぐさとなったという。
大成功
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