●雪はちらつき厳かに
冬。
アックス&ウィザーズの地にも雪が降っている。
集まった人々は供物を石像に捧げ、しばし黙祷を捧げていた。
時代を感じさせるその石碑は、かつて世を救った英雄の像。
暴竜を押し返した英雄の一人、それを象ったものだ。
人々はそれに供物を捧げ、今生きていることを感謝し一年を締めくくれることを噛みしめるのだ。
今宵は聖夜。
世界が平和であることを、親しい者といっしょに分かち合うのだ。
祈りを捧げた者たちが次々と酒場へと向かう。
そこには供物のお裾分け。
参拝者が持ち寄った食べ物や飲み物が山のように積み上がっている。
今宵は御代は必要無い。
供物を持ち寄ってくれば、こうやっていくら飲み食いしてもタダなのだ。
乾杯乾杯とあちこちから歓声があがる。
その声に悲壮感や苦しみはない。
外の寒さに負けない活気が、そこにはあった。
●グリモアベースにて
「わかりやすく言うと、UDCアースにおけるクリスマスのようなものでしょうか」
ライラ・カフラマーンは居並ぶ猟兵たちに深々と頭を下げていた。
その背後に生じている霧には、さきほどの光景が幻となって現れている。
ここはグリモアベース。
ライラは居並ぶ猟兵達に説明を続けようとしている。
「今回みなさんにお願いするのは事件の解決などではありません。まあ休暇願いというのでしょうかね」
この時期行なわれているアックス&ウィザーズの祭り。
その催しを猟兵にへと薦めてるのだ。
ライラは続ける。
「日々を感謝する聖夜を象徴する大宴会なのですが、決して破ってはならぬ掟があります。それは何か一品、食べ物でも飲み物でもよいです。それを持ちよってきてください。本来なら英雄像に捧げるのが正式なやり方ですが、それは現代では簡略化されており、酒場に持ち寄るだけでOKとなっています。もっとも、形式を重んじ捧げ物へと小分けして持ち込んでももちろん構いません」
要は聖夜を皆で楽しむ。
喜びをかみ締め分かち合うのが主旨なのだ。
「今年も色々あったと思います。一年が終わるまであと少し、それを親しい者と一緒に過ごすのはどうでしょうか」
杖を抱え込むようにして、ライラは微笑んだ。
「まあ、楽しんできてくださいってことです」
妄想筆
メリークリスマス、妄想筆です。
アックス&ウィザーズで聖夜を祝う大宴会が行われています。
それに参加するシナリオ、一章構成となっています。
酒場には色々な人が持ち寄ってきた品がありますので、おおよそ望む物を飲み食いできます。
しかし条件がひとつ。
オープニングにもありましたように『何か一品』を会場に持ち寄ってきてください。
食べ物でも飲み物でも構いません。
料理が苦手な人は買ってきた物でもOKです。
それも出来ない人は料理の品になる材料を持ち寄ってください。
酒場の主人がそれを裁いて料理にします。
宴会場には色々な人がいますので、頼めば何かしてくれます。
吟遊詩人に大道芸人、絵師や商人。
その人達も聖夜を楽しもうと騒いでいます。
一緒に混じって飲み食いしてください。
もちろん、聖夜を厳かに祝うのもOKです。
参加お待ちしております。
第1章 日常
『酒場で持ち寄りパーティ』
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POW : 肉やパンなど、ボリュームのある物を持っていく。
SPD : ジンジャークッキーやカナッペなど、つまみやすい物を持っていく。
WIZ : フルーツやケーキなど、甘いデザートを持っていく。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「今宵に乾杯! 生ある喜びを!」
「今宵に乾杯! 勇者さまに乾杯だ!」
「今宵に乾杯! え~とえ~と、とにかく乾杯だ!」
喧噪と熱気が酒場を包む。
そこへ扉を開けて一団が入ってくる。
入って来た寒さに目をむけ、外、扉の先にある物に目を見開いた。
ずかずかと奥へとはいってきて一団のリーダーが主人に声をかける。
「ワイバーンだ。ステーキでもなんでも捌いてくれや」
「おいおい、食べきれるのか」
「俺のおごりだ、みなに振る舞ってくれや」
その声を受けて、あちこちから又乾杯の声が上がる。
今宵は聖夜。
多くの者と飲み食いする夜だ。
ご多分に漏れず今し方入って来た一団にも、各所から色々な物が振る舞われる。
「すげえな、アンタらワイバーン倒したのか! ぜひその話聞かせてくれよ!」
「おいおい、俺の持ち寄ってきた料理食ってくれよ? ワイバーンなんかより飛ぶぜ?」
それらの声を邪険にせず、一団は適当な場所に座って飲み食いをしはじめる。
彼らの喧噪が、他の喧噪と混じり合ったとき、また余所から新たな者がやってくる。
自分が薦める、一品を手に持ち寄りながら。
エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎
ほうほう。暴竜を撃退したとは中々勇ましい御仁じゃ。
やはり竜退治は古今東西分かりやすい英雄譚なのじゃろうな。
これも何かの縁じゃ、わしの流儀になるが皆と共に英雄殿を奉るとするか。
供物は故郷の平原で狩ってきた野牛でよいじゃろう。
酒場の前のスペースでお肉に香草を詰め込み岩塩をまぶして丸焼きでじっくり焼き上げるのじゃ。
焼き加減は炎の精霊にお任せじゃから焦がす心配はないぞ。
焼きあがったら足を1本英雄殿に備えて残りはナイフで肉を削いで皆に振舞うのじゃ。
ほれほれ、はよう器を持って来ぬか。ワイバーンにも負けぬ美味さじゃよ。
ひとしきり皆に料理を振舞ったらわしもご相伴にあずかるとするかのう。
わしは果実水と甘いお菓子がよいのう。マニトゥにはお酒とワイバーンのステーキがよいかな?
マニトゥと一緒に英雄殿に乾杯を奉げて酒場の港一緒に歌い騒ぐのじゃ。
広場にどよめきが広がる。
ちらつく雪より白き毛並みの巨狼に跨りながら、少女がやってきた。
それは問題ない。
彼らがどよめいたのは、巨狼がソリで引いてきた獲物にである。
巨狼に勝るとも劣らない巨躯の野牛。その見事さにあったのだ。
「嬢ちゃん、それはアンタがやったのかい?」
尋ねる声に少女、エウトティア・ナトゥアは満足げに頷いた。
「ああそうじゃ、これは捧げ物じゃよ。かつての英雄殿に、皆々様にのう」
懐からナイフを取り出し、よっと背からエウトティアは飛び降りた。
どうやらこれから調理を始めるらしい。
物見高い客たちが、はやくも遠巻きに少女を囲んで見守った。
臆することもなく、エウトティアが牛の腹を割いて香草を詰めこんでいく。
臭みと香り付けのためだ。
ぎゅうぎゅうとありったけに詰め込み、こんどは塩を取り出すではないか。
それを牛の表皮に丁寧にまぶしていく。
さすがに図体の大きい牛を少女独りで行なうのは難儀である。
「嬢ちゃん、手伝おうか?」
周りで見守る観衆の助けを、エウトティアは笑顔で退けた。
「ありがたいが、わし一人でやらせて欲しいのじゃ」
これは儀式。捧げ物を制作する神聖な儀式である。
誰の手も借りず、完遂する。
そう、それがエウトティアなりの流儀。かつての英雄に対する敬意であった。
下ごしらえをすませ杖を握る。
料理人は杓子を持つが自分は違う。
集中し、呼びかけるとたちまち炎の精霊は応えてくれた。
寒さを吹き飛ばすような火柱があがり、周りから思わず歓声があがる。
凄まじい火勢は離れていてもよく分かる。
これほどの獲物、焼け焦がすような愚はしない。
万全の焼き上がりに仕上げると、その脚をひとつ切り裂き、周りに見せつけるように高々と持ち上げた。
脚先と残った胴体から、周りの吐息に劣らない湯気がもうもうと立ち上がっているではないか。
「コックさんよ! そいつは勿論おこぼれに預かれるんだよな!?」
「ああ、もちろんじゃ! だが焦るな皆の衆! まずは主賓が先じゃ!」
脚を掲げたまま、エウトティアがむかった先は石碑であった。
そこにある英雄の像へと捧げ物を置き、彼女はしばし黙祷を捧げるのだ。
碑にはかつての英雄譚が記されている。
暴竜を退けたと言われるその行為。
はたしてどんな人物であったのだろうか。
生きていれば聞けることもあったであろうが、今はこれが精一杯。
彼女なりの敬意を示し、エウトティアは振り返り、周りの人にむかって呼びかけた。
「待たせたのう。ほれほれ、はよう器を持って来ぬか。ワイバーンにも負けぬ美味さじゃよ」
その声の主を、観衆達は乾杯と歓迎の声を上げて迎え入れるのであった。
あれほど大きかった牛の姿はもう無い。
切り分けられ取り分けられ、影も形も無くなってしまっていた。
自分たちの分を確保して、エウトティアとマニトゥは宴の中を進んでいた。
「ほうほうこれは異国の甘味か? これも確保しないといかんのう」
小皿に山と盛りつけると、マニトゥの頭にちょこんと乗せる。
クリスマスツリーに飾りつけするように、巨狼の背にはそのような皿が所狭しと並べられていた。
さすがは聖獣である。
そのような目にあってもバランスを崩すことなく、食材を無駄にすることもない。
だが顎から漏れ出す唸りは、明らかに抗議の色が強く出ていた。
それを聞いてエウトティアがため息をつく。
「やれやれ、そのように言わんでも良いでは無いか。ちゃんとお主の分も選んでおるのじゃぞ?」
機嫌を損ねないようにと、彼女が次に選んだのはワイバーンのステーキであった。
頭の小皿と入れ替えるように置き、先ほどの皿を両手で抱えるエウトティア。
これで次の食材をつまむことは出来なくなった。
バイキングの行脚を終えて、テーブルへと辿りつく。
大人数用のテーブルは、戦利品を並べればすぐに手狭になってしまった。
マニトゥには酒を、自分には果実水を注ぐと、エウトティアはふうとため息をつく。
「今日は、いや今年は色々あったのうマニトゥ」
しゃがんでマニトゥ用のグラスに自分のグラスを当て、軽めの乾杯をこなすと、エウトティアはそれに口をつけた。
甘い。
一仕事終えた身にその甘さはゆるゆると染みこむ。
齢13の身ではあるが、この一年はそのか弱き身に不相応な出来事がよほどあった。
それを乗り越え今日までやってきた、これも成長したということであろうか。
しみじみと物思いに耽るが、皿の品を口に入れると、年相応の表情に戻って破顔する。
「おお、これはなかなか。当たりじゃのう。マニトゥも遠慮せずに頂くが良いぞ」
エウトティアの声を聞くまでもなく、姉妹は皿の獲物に食らいついていた。
思えば彼女につきあわされ、マニトゥもこの一年難儀したものだ。
それに対し愚痴を言う気は無い。
聖獣は小さき巫女よりずっと大人なのだ。
酒場の喧噪に合せ、エウトティアが軽やかに歌を口ずさむ。
「ははは、楽しいのうマニトゥ!」
今宵はうるさくなりそうだ。
エウトティアが満腹になれば静かになるのだろうか。
そっと、マニトゥが皿を彼女へと差し出した。
それを見てエウトティアが大笑する。
「なんじゃマニトゥ、ステーキをくれるのか? すまんのう」
お裾分けと勘違いした彼女が、皿の空いたスペースに食べ物をねじ込んでくる。
来年も腐れ縁は続きそうだ。
寡黙に食を楽しむマニトゥとは別に、エウトティアは周りの熱気にほだされ浮かれている。
一人と一頭は、それぞれこの聖夜を楽しんでいたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
テイラー・フィードラ
……酒場で嗜むのも悪くはない、悪くはないが料理を持ち込まねばならんか。
私も多少の調理はできなくはない。が、野営の為の物よりは真っ当な物の方が喜ばれよう。素直に良き物を差し出しておくか。
何時かの旅で購入しておいた火酒、正確にはウィスキーであったか?それを備え持ち寄ろう。
酒場で屯する存在だ、こういう物が喜ばれよう。
さて、私自身は酒場の端の方で静かに食させて貰おう。
血があれば生きていけるとはいえ、普通の食事も良い物であろう。
なによりこういう場では騒ぐよりも喧噪に耳を向けながら、酒を傾けるのも一興よ。
近くのテーブルで騒ぐ客達の話、客らの前に立ち芸や唄を披露する詩人に芸人、どれも得難き幸せの一面だろう。
今日を忘れがたき日にしようと楽しむ人々。
そんな行き交う人たちの間を縫って、テイラー・フィードラが酒場にむかって歩を進めていた。
獲物を屠りに来たのではない。
彼らと同じように、今宵を楽しむためにここへとやってきたのだった。
中をうかがうテイラーの口から吐かれる息は白く、肌寒さを感じさせる。
だが酒場の灯りは、外からでも十分に暖かく感じられ、活気に満ちていた。
「今日の良き日、……酒場で嗜むのも悪くはない」
殺伐と戦場を駆け巡る彼ではあるが、物事を楽しむという人の感情を忘れている訳でもない。
聞くところによると、酒場の利用には御代が必要なのだという。
獲物を狩りてそれとすべきも良いのではあるが、万人が好む真っ当な物が喜ばれるかもしれない。
それに今宵は聖夜。
朱に染まるはあまりに無粋な行為であろう。
「……素直に良き物を差し出しておくか」
手持ちの品を確かめ、テイラーは酒場の扉を押した。
酒場のカウンターに酒瓶が幾つか並んでいた。
「ウィスキーかい?」
「ああ、酒場であるならこういう物が喜ばると思ってな」
「上等だ! 何より人が多くて、酒は幾らあっても困らねえからな!」
主人はそれらを値踏みしながら、テイラーを歓迎する。
招かれた客は、すぐに空いている席へと案内され、テイラーはそこへ腰を落ち着けた。
グラスへと酒を注ぎ、ぐいとあおって周りを見渡してみる。
眼に映るのは、愉快そうに歓談する人々。
独り静かに酒を嗜むテイラーの耳に、周りの喧噪が否が応でも入ってくる。
耳障りには聞こえない。人の活気。熱気。温もり。
酒場の空気を肌で感じ、テイラーの口元が緩む。
「酒だけでは受け止めきれんな。肴を頂戴しよう」
人々が持ち寄ってきた食材の山へと動き、幾つかを選んで皿へと盛る。
再び席へと戻り、それらをテイラーは口へと運んだ。
美味い。
さすがは大勢が持ち寄ってきただけはある。
思わず頷き、舌鼓を打った。
何品かを平らげ手を休めると、あちこちからの話がやはり耳に届く。
大道芸人や詩人の声が、それに混じりてテイラーの身体を包んでいく。
グラスに酒を注ぎ、伝え聞く雑談に耳を傾ける。
夜はまだ長い。酒も食べ物もまだまだ豊富にある。
少し膨れた腹が再び空腹を訴えるまで、テイラーは喧噪の中に身を委ねていた。
そしてその顔には、喜びの表情がはっきりと見てとれていたのであった。
大成功
🔵🔵🔵