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温泉郷を生むは水神か災魔か

#アルダワ魔法学園

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 地下迷宮のとある区画。そこいら一帯は地熱が高く、場所によっては地面や壁の亀裂から火山性のガスが噴き出して充満しており、学園から立ち入り禁止区域に指定されている場所も少なくない。
 ひとたび道に迷えば、火山ガスで行き倒れる冒険者も出るほどで、学園有志の手による探索ガイドが迷宮内随所に見て取れる。
 危険な場所もあるが、それでも比較的浅い階層、そして魅力的なスポットもあることから、この区画に足を踏み入れるものは後を絶たない。
 区画のほぼ中央に位置する開けた空洞は天井も高く、迷宮植物も多数見受けられるほど植生が豊かで、地底である事を忘れるほどの緑が生い茂っている。
 なんとそこの植物は、火山ガスを無害化する特性を持っているのである。
 そして、それだけ植物が旺盛に育つほどに、そこは水源も豊富にある。
 水源……すなわち、温泉である。
 高い地熱で温められた湧水は、大きな泉を注ぎ、植物も生育可能な程度の温度を保っている。
 その効能はとても高く、打ち身や切り傷、腰痛やリウマチなど、様々な病症に効果があるとされている。
 そのため、多くの冒険者が旅の疲れを癒しにやってくるのだが……。
「いやー、今年もこの季節がやって来たべぇ」
「んだども、今年は数が多いっぺなぁ」
 温泉の管理を任されている男たちが、湯かき棒のような器具を使って、温泉の底からやってくる蠢くヘドロのような何かを駆除しながら、口々にそう洩らす。
 いくら浅い階層といっても、ここが地下迷宮である事に違いはなく、危険がないわけではない。
 源泉から流れ出てくるらしい、ヘドロのような何かが、温泉の利用者に襲い掛かることは少なくなく、被害が増え始めるシーズンになると、こうした係りの者が駆除を行っているのだ。
 しかし、今年はなんだか様子が違うらしい。
 源泉の方で何かあったのだろうか?

「今回のお仕事は、温泉の調査依頼です。……といっても、効能を調べろだとか、そういうお話ではなくてですね……」
 グリモアベースの一角にて、猟兵たちを前にした羅刹のグリモア猟兵、刹羅沢サクラは考え込むように顎に手を当てつつ、今回の依頼の概要を説明する。
 アルダワ魔法学園の地下迷宮の、比較的浅い階層に温泉の湧き出る場所がある。
 その温泉地には、定期的にヘドロのような災魔が湧き、利用者を襲うことがあるらしい。
 いつもは有志の手によって排除しているのだが、最近どうにもその数が増え始め、とても手が回らず困っている。
「猟兵の皆さんには、まずこの温泉の安全を確保するため、敵となるヘドロ的な何かを排除して頂きます。
 続いて、この騒動の根本をなんとかすべく、源泉の調査に向かってもらいます。
 おそらく、このヘドロのような何かが数を増やしている原因があるかもしれません。
 その原因の排除も、今回の依頼に含まれます。
 もしかしたら、思わぬ強敵に遭遇せぬとも限りません。調査に向かわれる際は、十分に気をつけてください」
 そうしてサクラは、いつもと同じように恭しく一礼するのであった。


みろりじ
 こんばんは、流浪の文章書きのみろりじです。
 今回のシナリオフレームは冒険→冒険→ボス戦となっております。
 温泉調査でボス戦も何もあるんだろうか……と思うかもしれませんが、そういう奴が出てしまったので、ならばやらいでかという感じでございます。

 温泉、いいですよね。この時期は特に身に染みます。
 体の芯から温めると、体調もよくなるので、オススメです。

 今回もなるべく拾えるだけプレイングを拾っていくつもりですが、いつもの通り長くなってしまうことがあると思うので、その点は御了承くださいませ。
 皆さんと一緒に楽しくリプレイを作っていきましょう。
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第1章 冒険 『温泉を守れ!』

POW   :    力押しでガンガン倒していく

SPD   :    罠を作り一気に駆除

WIZ   :    策を講じてうまく殲滅

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

才堂・紅葉
温泉いいわねぇ
アースでゆっくりする機会余りないし、この存在は貴重だわ。
また骨休みしようかしら、と思ってた所にこの件である。

業務手順としては、まず猟兵諸氏に礼儀作法で情報の収集と共有。
後は爆破してよいポイントを探って爆薬を仕掛け、追い込み猟を行います。
ヘドロに対して少し離れた場所からアサルトライフルで制圧射撃で牽制。弾幕をわざと薄くして爆破ポイントに誘導し、ある程度数が溜まったらまとめて爆破しましょう。
他の猟兵さんの迷惑にならないよう注意しますね。

※連携、アドリブ歓迎


リューイン・ランサード
温泉に来た人には安心して癒されてほしいです。
人助けにもなるので頑張ってヘドロ駆除します。

まずは温泉を管理している方達に協力を申し出ます。
源泉の方から流れてくるとの事なので、一カ所に追い込んで
まとめて殲滅する方針を説明し、湯かき棒を借りて行動開始。

全体の地形を観察して、温泉の流れと行き止まりになりそうな
場所を把握、上流から湯かき棒でヘドロ達を追い立て、
行き止まりの箇所に集まるように誘導します。

その上でユーベルコード:スターランサー発動。
更に【属性攻撃(光)】と【破魔】の力を上乗せして威力強化。
70本の光線でヘドロをまとめて浄化します。

これを何度か繰り返し、大量発生したヘドロを殲滅します。


アシェラ・ヘリオース
【WIS指定】
「これが温泉か。折角だ。久しぶりにゆっくりするのも良いな」
温泉は故郷になかったものだ。宇宙船内の設備として、高級将校用にスパはあったが天然物は文化から絶えて久しかった。
折角なのでゆっくり堪能していこう。

と言うわけで障害の排除だ。
地図を読み込み作戦を立案。連中を大技を叩きこんで良い場所に誘導し、まとめて葬るのが簡単だろう。
黒騎招来で闇鋼から小さな騎士の駒達を召還し、偵察と追い込みを行う。ノリは軽薄だが頼れる連中だし、この手の指揮は手馴れたものだ。
十分ヘドロ達が集まれば自前のフォースで薙ぎ払うのも良いが、他の猟兵達と協力すればより効率的だろう。

※連携やアドリブを歓迎します



 熱気と湿気、しかしやけに清々しく感じるのは、古く朽ちた宮殿風の遺跡一帯を埋没させるほどよく育った緑の存在が大きいのだろう。
 温泉区画には既に予防線が張られていた。
『ヘドロモンスター大量発生につき、大変危険です。
 駆除が終わるまで、温泉の利用は控えてください』
 源泉があるとされる祠へたどり着けるらしい、一際大きな宮殿の入り口には、そんな文言の看板が、行く手を阻むようにして張られたロープに吊るされていた。
 招致に応じた猟兵たちは、場所を確認するように周囲を見回してから、予防線をこえて宮殿内に入っていく。
「これが温泉か。折角だ。久しぶりにゆっくりするのも良いな」
 勇ましい黒の装いで一行を先導するように堂々と歩きながらアシェラ・ヘリオース(ダークフォースナイト・f13819)は何気なく口を開く。
「確かに、このニオイはそんな気にさせるけどさ。あんた、そんな格好で暑くないの?」
 ずんずんと先へ進むアシェラにやや遅れて、周囲に無駄なく気を張りつつ足音すら消して慎重に、しかし素早く身を低くしながら才堂・紅葉(お嬢・f08859)は、依頼とは全く関係のないことを口にする。
 世間ではまだまだ冷え込む季節ではあるが、この区画は温泉地ということもあってか平均気温が常に高く、湿度も高い。
 スパリゾートという名目がつけば、それも心地よく感じるかもしれないが、今回の目的はそれではなく、ここはあくまでもダンジョンである。
 紅葉は愛用のジャケットを着込んでいるとはいえ、今回は身軽で通気性の良いものを選んでいるつもりだった。
 何しろ湿度が高い。厚着して蒸れるのは、お肌にあまりよくないのである。
 その点で言えば、黒いフードつきの外套を羽織るアシェラの格好はいかにも暑苦しく感じたのだろう。
「このローブは特殊素材でできている。それにだ、多少の悪環境に対応できぬでは、宇宙では暮らせないぞ」
「えぇ、宇宙技術すごいわね……でも全身真っ黒なのは考え物ね」
「何故だ? 身を隠すのに、便利だぞ?」
「いや……うん、まあ、そうね」
 噛み合っている様で、微妙にずれているような会話を挟みつつも、二人は宮殿の奥へと進んでいく。
 その二人にやや遅れて、
「あ、あのー……お二人とも、もうちょっとゆっくり行きません? ちょっと道具がかさばって……」
 数本の湯かき棒を抱えて二人を追いかけるように歩くリューイン・ランサード(ドラゴニアンのマジックナイト・f13950)は、助けを求めるように声を上げた。
「先ほどから思っていたのだが、その棒は何か儀式のようなものにでも使うのか?」
「いや、あれは湯かき棒っていって、お湯の温度にむらが出たときにかき混ぜる棒だよ。ほら、追い焚きとかすると表面だけ熱くなったりするじゃない?」
「そうか? よくわからんが、そんなものが役に立つのか?」
 文化の相違からうまく噛み合わない部分はあるが、ひとまずそれは置いておいて、今はお風呂用具の用途を問う場面ではない。
 なぜリューインがそれを持ち込んだのか、その説明を聞くことにした。
「ええ、僕もここの人に聞くまで半信半疑だったんですけど、この温泉で災魔を駆除していた人たちは、この湯かき棒でヘドロモンスターを押しのけて、下層まで押し流していたようです。
 尤も、今回のように大量発生してしまった以上、押し流すのは無理みたいですけど……」
「それじゃ、意味無いじゃない」
「ま、まぁ、最後まで聞いてください。
 この湯かき棒、実はここの区画の木で作られているんですよ。
 知ってます? ヘドロモンスターたちは、ここの植物を攻撃できないみたいなんです。
 だからこんな湯かき棒でも、ヘドロモンスターに効果があったんですよ。
 それで、今回は、これを使って連中を一箇所に集めて、一網打尽にしてみようかと思ったんです……あの、どうでしょう?」
 年上の女性達に囲まれながら、懸命に自分の立案した作戦を説明するリューインは、湯かき棒を取り落としそうになりながらも説明し終えると、二人の様子を窺う。
「なるほどねぇ。ちゃんと意味があったわけだ……でも、なんでそんないっぱい持ってるの?
 明らかに三人分以上持ってきてるよね」
「それは……皆、この仕事が嫌いみたいで、話を聞いていたらいっぱい貰ってしまいまして……」
 感心したように質問する紅葉だったが、苦笑を洩らすリューインにちょっと呆れてしまう。
 洞窟探索に、かさばる荷物は禁物だ。
 基本的にはお人好しなのかもしれないが、ちょっと頼りないところがあるかもしれない。
「ふむ……ならその湯かき棒、私が全て持とう」
 微妙な空気が流れる中で、それまで思案顔だったアシェラが手を差し出してくる。
「へ? いや、でも、一人一本が限度じゃないですか?」
「なに、手数ならアテがある」
 困惑するリューインから湯かき棒を受け取ると、アシェラは複数本の湯かき棒をまとめて担ぐと、にやりと笑って銀髪をなびかせ颯爽と前を歩いていく。
 その男らしい行動には圧倒されるものがあるが、すぐに傍らの紅葉に肩を叩かれて促されると、リューインたちもアシェラを追いかける。
「あ、あの、アシェラさんはどうするつもりなのでしょうか」
「さぁ? 手数を用意できるってんなら、そうなんでしょう。
 そっちはまかせるとして……こっちも仕事に移ろうかな。追い詰める場所は決まってるの?」
「あ、はい。ここから先の、少し下ったところに湯だまりがあります……」
 見取り図を取り出して説明するリューインによると、ヘドロモンスターたちを追い立てる場所は宮殿の下層に当る部分で、かつて下水道代わりに使用していた水路の浄化槽の一つであるという。
 現在は区画そのものの温泉利用が増えて浄水設備なども増強したため、使用されなくなったルートであり、派手に暴れて破損しても問題ない場所として選んだようである。
「どうせ戦闘になるって考えたら、壊れてもいい場所のほうがいいかなって……探してもらいました」
「ふふん、ナイスチョイスじゃない。やりがいがありますわ」
 おずおずと説明する割にリューインの配慮は実に行き届いているものだった。
 その事に感謝しつつ、説明を心中で咀嚼した紅葉の顔には、実に悪そうな表情が浮かんでいた。
「あの、何するつもりですか?」
「楽な手を使うのよ。一網打尽にするんでしょ?」
 やや不安を覚えたらしいリューインの問いかけに、紅葉は得意げに笑みを深めつつ、掌サイズのパイナップル状をした固形物を取り出す。
 それが何なのか、リューインはすぐに察したものの、追求する間もなく先を歩いていたアシェラが制止をかけた。
 気が付けば、周囲の湯気が濃くなっており、やや傾斜のある足元には温泉が流れ込んでいる。
 屋内とはいえ、日の高い時間……そして、崩落した天井からは迷宮内とは思えないほどの光が降り注いできている。
 水没した宮殿。そう表現できてしまうほどに、その広間は神秘的ですらあった。
 だが、漂う湯気や揺らめく水面には、緊迫した気配が漂っている。
「……いるな。なかなか数が多い」
 油断なく周囲を見回し、アシェラは足首辺りまで浸かった足場からやや下がりつつ、フォースセイバーの柄を手に取る。
「リューイン君、追い詰める場所はどっち?」
「は、はい……えと、あの路地の先、行き止まりになっている場所です」
 急に鋭い目付きになり戦う者の顔となった二人に気圧されつつも、リューインはモンスターたちを追い詰める予定の場所を告げる。
「アシェラさん、私は追い詰める場所に罠を仕掛けてくるから、こっちは二人に任せちゃって良いかな?」
「うむ、心得た。それと、さんは要らない」
 ニッと勝気な笑みを交わす二人と、それを不安げな顔で交互に見るリューイン。
 それに気付いた紅葉が、作戦行動に出る前に肩を叩いていく。
「追いたて、よろしく。なぁに、皆でやればすぐだよ」
 かくして、三人の猟兵による一網打尽作戦は開始されたのである。
 湯だまりに先行した紅葉を追いかけるように、水面から黒っぽい泥の塊のようなものがゆっくりとした動きで這い出てくる。
「連中も、動き始めたか。こちらもはじめようか」
 紅葉を追いかけるヘドロモンスターはあえて放置して、ひとまず目の前の他のモンスターを追い詰めるべく、アシェラはかついでいた湯かき棒を下ろすと、懐から闇鋼と呼ばれる触媒をとりだすと、ユーベルコードを発動する。
 黒騎招来。黒い触媒から黒い影が染み出すかのごとく、複数体の小柄な甲冑戦士が形を成していく。
「ウィーッス、オツカレサマッス」
「オッスオッス、オツカレサマッス」
 黒く、精悍なフォルムながら小さいためか可愛らしくもある黒い自動人形達は、見た目からはかけ離れた軽口を叩きながら、主人であるアシェラに傾注の姿勢を見せる。
「あの、彼らは?」
「うむ、頼れる部下達だ。その軽薄さまで再現されたAIだがな」
 困ったように笑うアシェラだったが、どこか誇らしげでもあるのは、彼らをそれだけ信頼しているのだろう。
「皆、傾注。貴君等の今回の作戦は、敵勢力の追い込みである。武器は各自で用意しても良いが、追い立てるのに有用な装備はここに用意してある。
 こたびの作戦は、貴君等の働きにかかっているといってもいい。良い働きを期待している。
 では、速やかに行動開始せよ!」
「リョウカイ、マッタクヒトヅカイアライヨー」
「アイマム、コンドメシオゴッテクダサイ」
「ハイヨロコンデー」
 厳しいアシェラの言葉に対して、黒い戦士たちの応対は実に様々だったが、動きは統率されたものであり、皆一糸乱れぬ動きで湯かき棒を手に、躊躇いなく温泉に入り込んでいく。
 初めて使う道具のはずだが、戦士たちの動きは実に堂に入ったもので、まるで歴戦の掃除夫の如く、チームプレイでラインの動きを形成しつつ、あっという間にヘドロたちを押し流して、路地の奥へと押し遣っていく。
「ただいまーっと……おお、なんかいっぱい呼んだね」
「あ、お帰りなさい……すごいです。言っている事は不真面目なのに、すごくまとまっています」
 湯だまりに罠を仕掛け終えた紅葉がリューインのもとに戻ってくる頃には、広間に居たヘドロたちは全て湯だまりのほうへと押し遣られていた。
「よし、総員退避! ……いいぞ、紅葉」
「OK、起爆するから身を低くして。口を半開きに」
「え、あ、はい……起爆?」
 アシェラが戦士たちを撤退させ合図をしたのを切欠に、紅葉は傍らのリューインに注意事項を述べると、返答を待たぬままスマートフォンを操作する。
 言われるままに身を低くして口を半開きにしようとするリューインだったが、何が起こるのか知らされないまま、率直に気になった部分を思わず反芻、
 しようとして、激しく空気が振動する爆裂音につんのめる。
「わ、え、え、何?!」
 路地から吹き出る爆炎と周囲の湯気を吹き飛ばす爆風。そして耳を劈く空気の揺れに、リューインは軽くパニックを起こしそうになる。
 紅葉の仕掛けた爆弾により、湯だまりは完全に爆破された。
 しかし、
「生き残りがいるぞ。掃討戦だ。皆、武器を取れ!」
 アシェラの鋭い檄が飛ぶ。
 応じる黒い戦士たちが、今度は湯かき棒ではなく武器を取り、
 紅葉は銃をとり、やや遅れてリューインは霊符を手に取る。
 湯だまりから広間に戻ろうとするヘドロたちを迎え撃つ猟兵たちの掃討戦がはじまる。
「これこそが文明人の正しい戦い方よね」
 宮殿の瓦礫を支えに銃を構えて、紅葉が制圧射撃を行う。
「天空の光よ、我が元に来りて敵を貫く槍と成れ!」
 驚いてばかりの戦場だったが、それだけに遅ればかりとってはいられない。
 リューインも負けじと、自身の特性と合致した光の魔法で光線を幾重にもばら撒く。
「さて、私も食べ残しを獲りに行くとしようか」
 弾雨の影に逃れたヘドロたちには、アシェラが黒い外套をなびかせて立ちはだかった。
 その手には赤黒いフォースセイバーの輝き。
 元々それほど脅威とは言い難いヘドロモンスターたちは、成す術なく駆逐されていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御形・菘
うーむ、温泉を汚すとはなんたる悪行!
地味な悪さランキングの中では結構上位に入るであろうな
しかもこの悪事の積み重ねが、実は凄い災厄の前兆かもしれんとはな、良いぞ良いぞ!
此度の妾は掃除人(スイーパー)! さあ、どんどんボコってくれよう!

はーっはっはっは! 雑魚など一蹴! いや一薙ぎでガンガン潰していってやろう!
左腕を使って派手にブッ飛ばしていくぞ
カメラ映えする技チョイスという意味では楽土裁断も良いのだが、アレは周辺まで破壊してしまうからのー
温泉を壊してしまうのはアウトよ!

やはり目指すは討伐数一番、できるだけ数の多い方に突っ込んでいってやろう
皆の衆は後ろを任せた! あと(切実に)フォローよろしく!


パルル・ブラックベリー
パルルちゃんも温泉入りたーい!……え?そういうロケじゃないの?ざんねーん
でもでもぉ、こういう依頼を解決すればパルルちゃんの名が売れるから頑張っちゃう!
このドロがオブリビオンだとしたらちょっと面倒かなー。もしただのドロならユーベルコードを使って吸い込んじゃえ!吸い込んだドロの処理はパルルちゃんしーらない!だってこれの仕組みよく分からないもん!後はぁ他の猟兵さんとも協力して調べちゃおっか!温泉の中に入って調べるとか……ちょっと!押さないでよね!?
【何をさせてもOKです】



 早くも戦いは佳境を迎えていた。いくらなんでも早過ぎるような気もするが、最初に色々やり過ぎたのかもしれない。
 そんなことはさて置いて、病巣も害虫も、初手から押さえ込んでしまえば、大した害も無い以上、手を組んだ猟兵たちの敵ではなかったということである。
 しかしながら、まとめて爆破しそこねたヘドロモンスターが這い出てくるうちは、まだまだ完全駆除とはいかない。
「はーっはっはっは! 温泉客を脅かす魔物が出るのはここか! 邪神たる妾が直々に……って、もうほとんど終わってるじゃないですか!」
 銃弾と光弾飛び交う戦場からすればやや後方に当る場所で、高笑いと共にやってきた御形・菘(目指せビリオン・f12350)は、既に掃討戦に移っている戦場を見て、憤慨するついでに思わず本音が洩れてしまう。
 今回の相手は、それほど強敵ではないと聞いていたので、しかし前線に出て痛い目にあうのは嫌だし、それでもそれなりに活躍したいから、後方から参戦できるようゆっくり目に現場に到着しようと思っていたのに、気が付けば先行していた者達を見失うという失態である。
 それだけなら、たいして迷う事もない宮殿内だったのだが、動画配信者の性だろうか、かっこいい名乗りをあげながらあちこち探索していたら、すっかり出遅れてしまった次第である。
「あー、おしかったなー! 妾がもっとはやく着いていたら、この左腕で一網打尽にしてたんだけどなー! 温泉を汚す悪行、絶対許さないんだけどなー!」
 わざとらしく後方から愚痴を言ってのける姿は、ちょっと動画的に情けないというところもあるが、彼女からすればおいしいシーンを撮り逃したという悔しさもあったので、こういった軽口で溜飲を下げないことにはやり切れなかったのである。
 とはいえ、こういう言い回しは得てして、フラグに繋がるというものなのだが……。
「きゃあっ! 巨大な災魔が!」
 そしてそのフラグ回収ともいうべきものだろうか。戦場とは反対側、すなわち菘の近くから悲鳴が上がる。
「ぬぅ、新手か!? よりによって、こんな近くに……」
 大袈裟な仕草で振り向く菘と、すぐ近くで悲鳴を上げたと思われる小さな妖精との視線が交錯する。
 巨大な災魔とやらは見つからないが、どこかに隠れているのだろうか。
 と、視線をめぐらせる菘に対し、目が合ったときだけ大袈裟に怯えた様な顔をする妖精。
 二人はしばし沈黙したまま、同じような事を繰り返していたが、やがて目を合わせたままぱちくりと無表情のまま固まる。
「あれ、あれれ?」
「まさか、巨大な災魔とは、妾のことか?」
 温泉郷の渦中に於いて、やけに温度の下がった目を向ける菘に対し、フリフリでやたらキラキラと光を反射するドレスに身を包んだ妖精ことパルル・ブラックベリー(腹黒フェアリー・f10498)は、誤魔化すように舌を出して視線を逸らす。
「この戯けが! 一緒に参加している同業の顔くらい憶えておかぬか!
 それにお主の顔、覚えがあるぞ。お主もまた、画面栄えを選ぶ者!」
「ええー? 猟兵さんだったんですかぁ? パルル人の顔覚えるの苦手でぇ、ごめんなさぁい」
「なんちゅう、誠意の欠片もない謝り方をするんじゃ、お主は。
 いいか、お主も上を目指すなら、人の顔、特に熱心なファンとか、偉い人の顔くらいは憶えて置かねば、損をするぞ」
「チッ、うっせーな、ババア……」
「あぁん?」
「あ、ごめーんなさい! 妖精さんの声が聞こえちゃってぇ、ウフフフ」
「妖精はお主じゃろうが!」
 前線とは離れた位置で、もはや依頼そっちのけで漫才のような口げんかを始める二人の姿は、まぁ目立っていた。
 これはこれで動画栄えしそうではあるが、周囲で戦っている者にとっては、あまり気持ちのいいものではない。
「あんたら、喧嘩するならよそでやってよね」
 ついに外野から突っ込みが入ってしまった。とはいえ、戦力外通告というわけではなく、
「手透きなら、源泉側のほうを見てきてほしいな。あちらから流れてくるようだからな。湧いているようなら、そちらの排除をしておいてくれ。
 こっちが片付いたら、そちらに向かう予定だ。頼むぞ」
 なんだか学生っぽい女の子と、黒っぽい女性から的確な指示を貰い、菘とパルルはすごすごと場所を移す事となった。
「はーあ、温泉にゆっくり浸かれるような仕事だと思ったのになー、ざーんねん」
 湯気が濃くなりつつある温泉の水路、宮殿の廊下を掻い潜るようにしてだらだらと飛んで移動しながら、パルルは人目が無いせいかテンション低めの声で愚痴を洩らす。
「お主、そんな若い身空で簡単に肌をさらすような安売りは、あれだぞ。オススメせんぞ。
 だいたい、そんなメイクバッチリきめた状態で、温泉なんぞ入れんじゃろ」
「チッ……お肌にも賞味期限があんだよ。メイクはほら、浸かんないようにすればヘーキじゃね」
「生き急いでおるのう。でもまぁ、わかるぞ。妾もこういった小さな依頼一つ一つから名を上げて、有名配信者の仲間入りじゃ!」
「えー、後ろの方で騒ぐのがお仕事なのぉ?」
「ふん、言うておれ。もし敵が現れても、妾の邪神パワーで蹴散らしてくれる。お主の出番なぞ、くれてやらんからな」
 厳つい見た目ながらなかなか面倒見のいい菘と、小さな身体ながら物怖じしないパルルは、なんだかんだで話が続く。
 パルルの甘ったるい声と人生を嘗めたような言い回しがポーズと理解していながら、軽くイラッとこないでもないが、そこは動画配信者である菘である。
 煽りに耐性が無くては、動画配信なんてやってられないし、自分に持ち得ない属性を得ているパルルの姿や、そのバイタリティには純粋に尊敬するところもあったりするのである。
 気が付けば、菘は頭の上にパルルを乗せた状態で、温泉の源泉へ通じるとされる祠の、その入り口までやってきていた。
「うーむ、これは……」
「詰まってるねッ、ヘドロ」
 温泉が流れ出る祠の狭まった入り口には、大量のヘドロモンスターが押し固められて、渋滞を起こしていた。
 もはや、ヘドロモンスター自身の能力ではどうにもならないほどの混雑具合である。
 可愛らしく、若干イラッとする声色で元気よく状況を端的に説明するパルルの言葉通りの状況。
 単純に敵の反撃が出来ないというこの状況は好機という外にない。ないのだが。
「……動画栄えするかの、これ」
「しらなーい。邪神パワーとかでちゃっちゃと、やっちゃっていいよ。パルル応援してるッ」
「やる気の方向がおかしいゾッ」
 菘の頭から離れて、その辺の崩れた石柱の上でマイクを取り出すパルルに、思わず同じノリで突っ込みを入れてしまう。
 動画配信者にとってノリ突っ込みは必修科目なのである。
 すっかりやる気の無いパルルはひとまず放っておいて、菘はこれからの事も考えて、後続の為にヘドロ掃除を開始する。
 既に抵抗することもほとんど無いヘドロモンスターは、実のところ本当にたいしたことは無く、わざわざユーベルコードを使用するまでもなく、異形と化した菘の左腕の一撃と、右手から滲み出る謎の漆黒のオーラによって……つまりまぁ、両手で簡単に駆除できてしまう。
 傍から見れば、それはもう掃除夫と変わらない。
「此度の妾は掃除人(スイーパー)……そういうつもりできたつもりだったんだが、まさか本当に掃除人みたいなことをやるとはなぁ……」
 テンションの高い文言は幾つも考えてきたのだが、押し固まってろくに攻撃してこない相手を今更テンション高く掃除していくほどの鋼の精神は持ち合わせていない。
 だが、動画配信者として、何か言っておかなくては、このままでは放送事故になってしまう。
 そうしてしばらく考えながら作業していると、ふと思いついたかのように、自分の行動を撮影している空撮ドローンのほうへと向き直る。
「ふふふ、目指すは討伐数一番。これならば、討伐数一番は間違いあるまい。
 雑魚など一蹴……いや、まさに一薙ぎで掃除……うん、掃除だな!」
 イマイチ絵面がきまらないので、最終的には開き直った様子でヘドロモンスターを潰していく。
 幸いにして、ド派手な演出は何も無いが、真摯にモンスターたちを文字通り掃除していく姿は、それはそれでチャリティー活動の一環のような人の好さの滲み出る雰囲気になっていた。
 邪神を自称する菘にとって、それがはたしてプラスになるかどうかは微妙なところだったが……。
「ふう、しかし本当に数が多いな……む?」
 何気なく汗を拭った菘は、ふとその場所が温泉である事を思い出す。
 けっして短くない時間を温泉に足元を浸かりながら作業していれば、体温も上昇する。
 それでなくとも、温泉の通う宮殿内には常に湯気が漂っている。ほぼ屋外に近いとはいえ、湿度は高い。
 つまり何が言いたいかというと、
「パルルよ。急ぐぞ。どうやら、我等にあまり時間は残されていないようだぞ」
「はぇ? 今、デイリー回してるとこなんだけど」
「いや、応援もしとらんのかい! 違う、遊んでないで手伝わんか。時間が無いのだ!」
「えー、服汚したくないんだけどなー」
「……妾と、そして自分の顔を確認してみよ。メイクが……いや、艶蛇冷粧がもたん時が来ているのだ!」
「は? え、げっ……ギャーッ!!」
 それまでスマホで遊んでいたパルルが、菘の婉曲的な言い回しを何とか噛み砕いて、慌ててセルフカメラでチェックすると、半狂乱になって騒ぎ出す。
 アイドルにとって、メイクは武装!
 そして同時に戦う者でもある猟兵にとって、そのテンションを抱き続けるための武装はなくてはならない。
 アイデンティティといってもいいそれが崩れてしまうのは、戦線からの離脱にも等しい。
 なんてことだ。本当に時間が無かった!
「理解したか? わかったなら、急いでこやつ等を片付けるぞ! 本気を出せ」
「うわああああああ!! もうやだぁぁ!!」
 菘の決死の言葉が耳に届いたかどうかはわからないが、パルルはおおそよ人に見せるようなものではない形相で、小さな壷を取り出してユーベルコード『フェアリーランド』を発動させ、その小さな壷に片っ端からヘドロを吸い込ませ、あっという間に辺りを綺麗にしてしまう。
 それはさながら、妖精の魔法のようでもあったのが、なんとも皮肉な話ではあるのだが、その有様を見た菘は突っ込まざるを得ない。
「最初からそれを使え!」
「うわーん!!」
 ヘドロまみれの両手を所在なさげにする菘は、いつもより若干あどけない顔つきで泣き喚くパルルをどうやってあやしたものかを悩む事となった。
 かくして、温泉のヘドロは完全に排除されたのだった。
 しかし、その被害は決して少なくなかった……。
 負けるな配信者。頑張れアイドル。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 冒険 『スポーン・ルーム』

POW   :    壊せば止まるでしょ!ひたすら物理で壊していく。

SPD   :    正しく解除する手順があるはず!パズルを解くように止めていく。

WIZ   :    命令を上書きしちゃえ!魔力や科学力で止める。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 どうにも、やはりヘドロの数が多すぎる。
 色々とあったものの、たいして強くもないヘドロモンスター達を排除した猟兵たちは、源泉に至るとされる祠へと歩を進める。
 祠の中は、温泉と化している宮殿の非ではないほどの熱気が立ちこめていた。
 その原因は、祠の奥に見える滝のせいであろう。
 高温の温泉が高い位置から注ぎ、その飛沫が湯気と化して祠一帯を濃い霧で満たしているのだ。
 源泉の温度は高めのようだが、こうして空気に触れることで徐々に温度が下がっていくのだろう。
 そんな自然のメカニズムに謎の感慨を抱くのも束の間、猟兵たちの目に映ったのは、そんな温泉の滝を囲むようにして宙に浮いている、幾つものリングだった。
 おそらくは大きな縄で作られたそれは、宙に浮いている事こそ不可思議ではあったが、その形状自体は見覚えのある者も少なからず居た。
 それは東洋では「しめ縄」と呼ばれるものであった。
 そのしめ縄が何を意味しているのかは不明ではあったが、そのしめ縄が時折光を発し、リングの中からヘドロのような生き物を生み出すのを見るに、それが何をする物であるかは理解できた。
 つまりは、この幾つかある宙に浮いたしめ縄こそが、ヘドロたちを呼び出す原因だったのである。
 いったい、何者が、どんな理由でこんなものを用意したのか。それはわからないが、一つわかるのは、これを破壊する事を優先しなくては、また延々とヘドロ掃除をしなくてはならないということだ。
 災魔を呼ぶスポナー。
 温泉の平和のため、これを破壊しなくてはならない。
リューイン・ランサード
陰陽師でもあるリューインには、しめ縄とは、本来は内側に外界からの
穢れが入らないようにする結界と知っています。
しかし、このしめ縄は内側から外界にヘドロを生み出している。

対処法としては浮かんでいるリング全てを本来のしめ縄の役割に
書き換えてしまえば良い筈。
しめ縄の結び方もきっとおかしい結び方だと思います。

なので、仲間の猟兵さんにもお願いして、しめ縄を正しい結び方に
直しつつ、リューインの【破魔】の力で、しめ縄を本来の姿に
書き換えます。

後は皆さんと協力して、生み出されたヘドロを湯かき棒で一カ所に
追いやり、全員で攻撃してヘドロを全て消去します。
リューインもスターランサーで攻撃する。


アシェラ・ヘリオース
「あれが根源か。上手く処理しなくては難儀だな」
フォースを高め、破壊も考慮したが止めにした。
影響が読めない以上は、物理的な破壊は当座は控えるべきだろう。

「お前たち、まずは偵察だ。情報を集め共有してくれ」
【黒騎招来】で黒騎ユニットを召喚し、散開させて情報収集を行う。
集めた情報は他猟兵とも共有しよう。

「ふむ……ハッキングは可能か」
一頻り調べ、手ごたえを感じると黒騎達にチームでのハッキング作業を命じる。
1チーム25ユニット4チームで作業させ、一つずつ命令を上書きしヘドロの召還を止めさせる。
支障や停滞があれば、その都度に指示を出し落ち着いて作業できるように指揮をとろう。

【アドリブや連携は歓迎します】


才堂・紅葉
「これはまた、珍妙な事になってますね」
手早く済ませて温泉に入りたいのに、面倒はまだ終わらない。
蛇口が開けっ放しだから、締めれば良いと言う話なのだろう。

ひとまずしめ縄について情報収集を行い、他の猟兵と礼儀作法で情報共有をはかろう。
ついで、後はしめ縄の現物の傍にまで行き、メカニックの知識などを活かして、解除方法を探っていきたい。
パズルを解くような作業だが、思考がクリアになってくるので、実はこの手の作業は得意である。
明鏡止水の心持ちで無心で作業を進め、このパズルを解いてヘドロの召還を止めよう。
壊すのは何時でもできるが、やれることはやっておきたい。

【連携やアドリブは歓迎いたします】


御形・菘
さすがにこれだけで帰っては、かなり残念な動画になってしまうのでな(手を洗い、化粧を直しつつ)
さて、気を取り直して次よ!

うーむ、草でできた太いロープか?
何やら凄い技術のようであるが、妾には仕組みがさっぱりだ!
とはいえ解ることもあるぞ
壊し尽くせば必ず止まる! 実に明快だな
まあどこかの場所を優先的にという指示があるなら、ちゃんとそこを優先するがの
撮れ高を稼ぐためにもド派手に壊すとしよう!

尻尾を使って跳び上がり、翼で滑空
UCで攻撃力を強化、風を纏いて片っ端からから爪で切り刻んでくれよう!

はーっはっはっは! 停止狙い組はさっさとした方が良いぞ!
妾が美味しい所をすべて持っていくからな!



 まるで締め切った部屋で煮炊きでもしたかのような、そんな高温と湿度だった。
 一行が踏み入った祠にたち篭める霧は、温泉の飛沫によるものであり、高い湿度と気温が、否応もなくかこうとする汗をも押さえ込んでくる。
 常人が長時間居続けたら、熱中症を引き起こしてしまうかもしれない。
 しかしそんなことにかまけている時ではない。
 祠の中に浮かぶ「しめ縄」が侵入者達に応対するかのように淡く光を帯びて、そのリングの内側からヘドロの災魔を吐き出し始める。
「あれは……しめ縄、ですかね……」
 見上げたリングの正体に心当たりのあるらしいリューイン・ランサードが自身なさげに首を傾げつつ、濃い霧の中で目を凝らす。
 いや、しめ縄については間違いないのだろうが、彼の知っているものとは異なることがあるのである。
「知っているのか?」
「ええまぁ、一応、そういうことにも明るい家に生まれてますので……」
「しめ縄って、あれでしょう。神社の鳥居とかそういうところに吊るしてる」
 先ほどまで同行してたアシェラ・ヘリオースと才堂紅葉に言及されても、リューインの言葉はまだ確証を得るものではないようである。
「そう、そのしめ縄で合っている筈なんです。ただ……しめ縄は、本来は内側に外界からの穢れが入らないようにする結界のことで、ああいう風に内側から何かを生み出すように使うのは、見たことがなくて」
 武門の名家に生まれたリューインは、魔術を嗜むに於いても知識の蒐集に妥協はない。
 ましてその長男として生まれ、自身と相性もいい東洋の魔術体系の知識には、少なくともこの場に於いて右に出る者は居ない程度には自身がある。
「よくわからんが、あれが根源である事には違いないんだな。とはいえ、うまく処理せねば難儀だろうな……。ここでまた爆破トラップなど仕掛けたら、祠が吹き飛ぶ可能性がある」
「……これはまた、珍妙な事になりましたね」
 冷静に分析するアシェラの言葉に、紅葉はひとまず直接アプローチにと取り出しかけた手榴弾をこっそり仕舞いこんで、誤魔化すように学園生活で常用するお嬢モードで口元を押さえる。
 さてどうしたものか。
 三人が考え込む合間にも、しめ縄のリングからはゆっくりとだがヘドロモンスターが這い出してきている。
 大した相手ではないから楽観はしていられるが、このまま放置すれば、また最初からやり直しになってしまうことだろう。
「おやおや、さっきまでドンパチやっておったもの共が、雁首揃えて主役の登場を待ってくれているとは、いやー嬉しい嬉しい」
 沈黙の中、ばしゃばしゃと温泉の水路を蛇腹を這わせてやって来たのは、喜色満面の御形菘であった。
「御形……化粧はもういいのか?」
 いち早くその登場に気付いたアシェラがその異形とも言うべき姿に物怖じもせず名前を呼べば、菘はうっと表情を引き攣らせる。
 じつは登場が遅れたのは、手についたヘドロを洗っていたのと、すっかりドロドロになってしまった戦化粧を整えていたからだったりするのだ。
「それを言うでない。まあいい。さすがに、このまま帰ったのでは、ただのお掃除動画になってしまうからな。
 ふん、この邪神がお掃除動画だと? 残念極まるわ」
 鼻を鳴らして肩をすくめる菘に、他の三人の反応は様々だったが、件のお掃除動画パートは、かなり大幅なカット編集を加えられるものの、普段の悪ぶった佇まいも手伝って素朴ながらもそこそこ好評を博したりするのだが、その事を彼女はまだ知らない。
 とにもかくにも、気を取り直して、という具合に周囲を見回す菘もまた、空中に幾つも浮かぶしめ縄の存在に目を留める。
「うーむ、草で編んだロープか? ゲートのような役割をしているみたいだな」
「わかるのか?」
「いや、何やらスゴイ技術がのようであるが、妾にはさっぱりわからん!
 とはいえ、解る事もあるぞ!」
 自信たっぷりに獰猛な笑みを浮かべると、菘は蛇腹をたたむ様に縮めてから一瞬にしてそれを伸ばして、尻尾で地を蹴って飛び上がった。
 それまで浸かっていた温泉がざあっと飛沫となって飛び散り、強靭な筋力で上方へと伸び上がる菘の身体が、祠にたち込める霧を引き裂いていく。
「うわ、ま、まさか……!」
 暴風雨のような飛沫に気圧されつつ、上空で翼を広げる菘を見上げながらリューインが悲鳴のような声を上げる。
「破壊し尽くせば止まる! 実に明快だな!」
 まさに邪神さながらの威容を晒しつつ、その身体に三色の魔力光を帯びて自身の両腕を強化すると、菘はそのまま翼で滑空しつつその腕をしめ縄の一つに叩き込んだ。
 注連縄はまるで稲光のような光の膜を生じさせたものの、菘の強力な一撃の前になす術なく打ち破られ、硬く硬く編み上げられたしめ縄も元の素材を思い出したかのように無残に引き千切れ、ぼろぼろと崩れ落ちていく。
 ……それと同時に、多量のヘドロモンスターを吐き出しながら。
「うげ、こんなに詰まってたのか」
 空中から緩やかに降下しながら、菘は忌々しげに手をプラプラさせる。
 あのヘドロ、落ちにくいんだよなぁ。
 さっきまで熱心に両手を洗っていたので、なるべく近付きたくなかった。
「なるほど、力尽くで破壊すると、ああいうことになるのか……どうにか仕掛けを無効化しなくては、相当面倒な掃除が必要になるところだな……」
 ヘドロを撒き散らすしめ縄の残骸から距離を取りつつ、菘の行動を眺めていたアシェラは、すぐそばまで近寄ってきた黒い人影の方へと視線を向けた。
 黒い甲冑に身を包んだ騎士のような姿をした戦士。それがいつの間にか相当の数でもって、祠のあちこちに浮かぶしめ縄を調べていた。
 先ほどまで黒騎招来で呼び出していた小さな戦士たちだったが、諸々の後始末を終えたのでこちらに呼び戻したのだった。
「何かわかったか?」
「ハッキングハ、ムリッポイッス。電子的ナアプローチガ通用スルヨウナ代物ジャナイッス」
「そうか……では、何体かをあれの清掃に回し、残った数名で引き続きデータの収集を行いつつ指示を待て」
「エー、マタ掃除ッスカー。マア、撃チ合イヨカナンボカマシッスケドネー」
 険しく眉を寄せるアシェラに対し愚痴をこぼしつつも、主のために黒い戦士は湯かき棒を手に残敵処理に向かう。
 それを見送りながら、今度は手近なしめ縄のほうを見上げ、そこによじ登った二人の猟兵に目を向ける。
「そちらはどうか?」
「今見てるところよ、慌てないで。……ここは切っていいの?」
「はい、ここはいわば外装で、呪術的な意味は無いので……。問題はこの……」
 紅葉とリューインが取り付いたのは、しめ縄の結び目の部分である。
 近くに寄れば馬の胴ほどもある立派なしめ縄だが、リューインの言に依れば、本来は外側からの厄を寄せ付けないための用途をもつ結界を、内側から作用するように作り変えている……ということなら、本来の用途に組み直せば、無力化できるのではないかと踏んで取り付いたのである。
 その為には、結び目を一度ほどいて、正しく結び直し、リューインによって設定を上書きする必要がある。
 だが、それが面倒だった。
「うわ、根性悪い結び方してる……爆弾処理班の気分だわ」
「押さえてますから、千切らないよう、慎重にほどいてください」
「わかってる。わかってるけどさ……」
 結び目を解く役を買って出た紅葉は、その結び目の難解さに思わず愚痴ってしまう。
 ミリタリージャケットの収納をあちこち探して、銃器整備用の精密ドライバーと、傷口縫合用のピンセットを手にして、難解に絡み合った結び目と正対する。
 なんで温泉に来てまで、今な事をやっているんだろう。
 今やろうとしていることが果てしなく馬鹿らしいことに思えなくもないところだが、こんなヘドロなんかでも、放っておけば世界を滅ぼしかねないというのだから、捨て置くわけにはいかないわけで……。
 さりとて、自分がこの場でわざわざやるようなことだろうか……。
 頭が煮立ちつつあるのを、振り切るよう、紅葉は思考をクリアににしていく。
(時見月在晴天影有波……だったかしらね)
 心中は水面。そこに映る月の在り様に波風なく、ただ静かに曇りなく。
 驚異的な集中力で、手先を精妙に、そして慎重に駆使して、そうして淀みなく結び目を一つ一つほぐしていく。
 その紅葉の集中する頭上にヘドロが落ちてくるが……接触する前に赤い閃光が焼き斬る。
「ふふ、大した集中力だ」
 赤いフォースセイバーを手にしたアシェラが、振り抜いた姿勢のまま着地して、二人を見上げる。
 そうして、
「……でき、たぁ……」
 塊のような息が漏れる。
 完全に解けたしめ縄が開きかけると、その隙間から黒い影が亀裂のように伸びるが、完全に伸びきる前に、リューインがしめ縄を押さえ込み、何事かの文言と共に再び強く結びなおすと、結び目はしめ縄全体に光を一瞬だけ這わせると、やがて力を失ったかのように浮力を失って落下し始める。
「うわわっ!?」
「降りるよ、リューイン」
 大きな飛沫を上げて地を打つしめ縄が完全に落ちる前に、紅葉はリューインの襟首を掴んで飛びのいていた。
 体格は似たようなものの筈だが、行動がやけに男前なため、紅葉のほうが若干大きく見えてしまう。
「……何も出てこないな。無力化に成功したということか。しかし……一つ落とすだけで、大仕事だな」
「まったくよ。これじゃ私の目の方が先に参っちゃうわ」
 落下して動かなくなったしめ縄が完全に無害になった事を悟ったアシェラと紅葉だったが、労力を考えると割に合っているのかどうか、わかったものではない。
 肩をすくめる二人を差し置いて、リューインはしめ縄の傍で座り込んで、何やらごそごそとしている。
 その様子を見に行こうとしたところ、忘れていたかのように、上方から激しい打撃音が響き、もう幾つめかの壊れたしめ縄が落ちてきた。
「はーっはっはっは! 停止狙い組はさっさとした方が良いぞ!
 妾が美味しい所をすべて持っていくからな!」
 上の方では、菘が相変わらず力任せの攻撃でしめ縄を破壊しているようだった。
 辺りではヘドロやしめ縄が水しぶきを上げている。この後の片付けの事を考えると、気が重い。
 そんな中、座り込んでいたリューインが立ち上がり、上の方を滑空する菘を見上げる。
「スズナさーん! できれば、高いところにあるものから落としていってください!
 どうせそこら辺は、届かないのでー!」
「んんー? 妾と競争するつもりか? ふははっ、聞いてやらんでもないぞ!
 よかろう、任せるがよいわ!」
 大声で話しかけられたのが嬉しかったのか、ひょっとして疎外感でも感じていたのかは不明だが、菘はテンション高く応じると、スピードを上げて破壊作業を続ける。
 それを見送ると、リューインは今度はアシェラと紅葉に向き直り、
「僕たちは僕たちの仕事をしましょう。
 僕とクレハさんは引き続き、一つずつ無力化します。
 アシェラさんは、黒い人たちにこれを渡してください」
 そう言って、アシェラに手渡したのは、数枚の霊符。
「これは、簡易的ですが、結界の霊符です。僕が直接やるより確度は落ちますが、結びなおしてこれを上から貼り付けるだけで、しばらくはただの綱にしてくれる筈です。
 一つ一つ無力化するより、時間稼ぎにこれを張って、あとから僕が処理する。
 ……っていう、作戦なんですけど……大丈夫だと思います?」
 途中まではすらすらと冷静に説明していたのだが、最後辺りに尻すぼみに自信がしぼんでいくので、聞いていた二人は脱力してしまう。
「……わかった。固定して結び目を解いて結び直すんだったな。それなら、私の部下でも用足りるだろう。
 皆、聞いたな。この札で、命令を上書きする。取りに来い!」
 いち早く復帰したアシェラが鋭い檄を飛ばすと、行動は速かった。
 水浸しの祠で水しぶきをあげつつ、黒い戦士たちがそれぞれの役割を持って行動する。
 そんな中で目立つのは、やはり低くない頻度で菘に叩き落されるしめ縄の残骸と、そこから溢れ出るヘドロだった。
「……あ、後で、皆で片付けましょう」
「そうね、皆で、ね」
「そうだなぁ、皆で、な」
 湯かき棒を手に、フォローしようとするリューインに対し、他の二人は言葉を重ねつつもそれとは裏腹に視線を上に上げているのだった。
 そうして、迅速な無力化作業と破壊活動により、しめ縄はあっという間に全て撤去された。
 そう、撤去である。
「うーむ、おかしいな……なんで妾、また掃除してるんだろ……」
 一箇所に押し込んだヘドロモンスターを漆黒のオーラで除去しつつ、菘は不可思議そうに小首を傾げる。
「そりゃあ、あんたが一番敵をやっつけた功労者だからでしょ。ねぇ?」
「え、あ、ま、まぁ、一番活躍してはいましたね……」
「一番、暴れたとも言うな」
 その様子を他の三人は湯かき棒を手にして、どこか皮肉げに洩らしつつ眺める。
 たしかに、動画的に考えれば、一番派手に動いていたのは菘だった。
 同時に一番散らかしたのも彼女である。
 なら、後片付けもやんなきゃね。
 そう強く言われては、菘も断りきれなかったのである。
 まあいいか。動画ではカットしよう。
 こういった横暴が許されるのが、自分の動画のいいところさ。
 なんだかんだで、すっきりしたし、まあ掃除くらいは大目に見てやろう。
 菘もまた、そういう風に納得しかけたところ、足元の水面がやけに波を作っていることに気がついた。
 揺れている。
 それも、祠全体がだ。
 まだ、何かいるのだろうか……?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『滝業の呪』

POW   :    打ち付けるは神聖なる滝
【畏怖】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【幾重にも巻き付いた縄】から、高命中力の【神聖なる滝】を飛ばす。
SPD   :    水流放出
【激しい水流】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    篠突く雨
【縄】を向けた対象に、【天からの水撃】でダメージを与える。命中率が高い。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はユースティティア・ルザライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 飛沫が、岩石が、まるで意思を持ったかのように流れを変え、形を変えていく。
 温泉がそれでありながら、小規模な瀑布がまるで鶴首を垂れる方角を違えるが如く、ゆるりと空を上滑っていく。
 それはまるで、中空に流れる滝。そう表現する他無かった。
 そうしてその独立した流れを挟み込むかのように、空間から染み出すが如く、禍々しいしめ縄の環が生じ、その奥にはまるで口腔のような後光が空気を震わせた。
 曰く、
「何人も、我が行を抜けること叶わず。
 何人も、我が行から抜けること叶わず。
 試練は悟り、試練は慈愛、試練は道。
 そして、試練こそ行。
 何人も、我が業を抜けること叶わず。
 何人も、我が業から抜けること叶わず」
 暑苦しくすらある呪われた滝行の神が、そこにはあった。
 己に試練を課す者にただただ降り注ぎ続けた自然現象に過ぎぬそれが、いつしか使命に目覚め災魔と化したそれは、温泉郷という湯治の地には、あまりにも似つかわしくない厳しさを以て華を成していた。
 美しくも苛烈、厳しくも壮麗。
 自ら試練であらんとする神は、己を穢す災いをすら生み出し、その存在意義のために、誰彼を問わずに、苛烈な試練を与え続ける。
 試練に死せるは未熟也。
 湯治、慰安、何するものぞ。
 さあ我が行に当ってゆけ。
 我が行に打ち勝てねば、未熟者は死するのみ。
 肺腑を焼くような熱風が吹き抜ける。
 滝壺に注ぐ叫びが、業と鳴く。
 温泉郷最後の敵が、猟兵たちの前に立ちはだかった。
御形・菘
実のところ、雑魚はさっくり倒して、まったり迷宮温泉ロケ動画を作ろうと思っておったのだがな
はーっはっはっは! やはり妾は運命に愛されておる!
試練たるお主に打ち克ち、邪神としての格を爆上げするとしよう!

妾にできるのはド派手に一撃ぶちかますことよ
ブラッド・ガイストで邪神のオーラ(凌源貪夢)を強化!
さあ、邪神の一撃に喰われて果てよ!

同時に、格を見せつけ此奴の攻撃を引きつけてやろう
存在感、殺気に挑発とガンガン発揮するぞ!
試練とやらを妾に存分にぶつけてみるが良い!
命中率が高いようであるから、急所は避けるにせよ攻撃は防御するぞ
……熱っ、あっちちち!(表情変えずに小声)
さあ皆の衆は(切実に)フォローよろしく!


アシェラ・ヘリオース
小なりとは言え神の風格を感じる。
神とは柱。天と地を繋ぐ者の総称であり、そこに大小はない。
本来畏怖すべき対象だが、自らの存在意義の為に動くならば、そこに天との繋がりはない。

「試練を一手、教授願う」
洗練された礼儀作法を持って対峙し、畏怖ではなくただ祈りを持って応じよう。
畏怖に勝る祈りがあれば、飛来する滝の威力も自ずと減じるだろう。
「では、参る」
オーラ防御と念動力で身を守り。
静かに赤光の剣を持ち上げ、巨大な刃を形作り、幾重にも巻きついた縄ごと一閃したい。

「これが終れば温泉に入って、熱燗がしたい。スペースでは疲れた。ゆっくりしたい。汗も流したいし、くつろぎたいのだ……分かるな?」

【アドリブ、連携歓迎】


リューイン・ランサード
なな、何か恐ろしそうな存在が迫ってきています<汗>。
皆さん温泉でまったりしたいのに、無理やり命がけの修行を強制
しようという、傍迷惑な存在ですね。

今回は力強い仲間と一緒なので、僕も及ばずながら頑張ります!
最初にUC:存在希薄化で姿を消します。
その上で相手の弱点はどこなのか観察します。

姿を観察する限りでは、相手は上部と下部のしめ縄の間しか
存在していません。
なので、上部のしめ縄→下部のしめ縄の順で攻撃。
UC:スターランサーに【光の属性攻撃】【破魔】【全力魔法】
を付与して一気にしめ縄を攻撃します。

しめ縄が弱点と判明すれば同行の皆さんに教えて、全員でしめ縄
を攻撃して、ボス敵を倒します。


才堂・紅葉
「あのね……悪いんだけど。私が欲しいのは温泉であって試練じゃないの。分かる?」
さんざんヘドロの相手をさせられたら、今度は試練の押し売りと来た。
そろそろキレても許されるだろう。いや、私が許す。

やる手順は簡単。
情報収集で地形を把握すると、野生の勘と見切りで【激しい水流】を回避しながら、味方の援護射撃の意味も篭めてアサルトライフルで【制圧射撃】。
弾幕と榴弾を持って。滝の根源と思しき注連縄を損傷させたい。
こちらに意識を向けさせれば、他の面子の仕事もはかどるでしょう。

とりあえず、いい加減体がベタベタして気持ち悪いので、さっさと温泉に入りたい。
この滝、早く黙らせないと......

【アドリブ、連携OK】



 ごうごうと遠吠えのような轟音が祠の中に響き渡る。
 宙に浮いた滝の奔流がうねり、中空を這うようにねじれ、鎌首をもたげるかのごとく、猟兵たちを見下ろした。
『なかなかよ、我が行に挑むに足るものと見受けた』
 水流のうねりの奥からやって来る後光のような何かが空気を震わせる。
 それが轟くような声となって降り注いでくる。
 あまりにも荒唐無稽。こと、アルダワ魔法学園の地下迷宮が不可思議と理不尽をない交ぜにした坩堝だとしても、いざ物理法則や何やらをひとまず投げ捨てたような現象をいざ目にしてしまうと、呆気にとられてしまうものである。
「あわ、あわわわ……な、なんなんですか、あれは……」
 明らかに狼狽した様子で最初に反応を示したのは、リューイン・ランサードであった。
 これまでの戦い、というかほぼお掃除とパズル作業と打って変わって、明らかに戦闘の意思を持って迫る相手に、やや気圧されている。
「さあ? さっき片付けた縄の親戚か何かでしょ。ったくもー、次から次へと……」
 律儀にリューインの言葉に答えるとも言わないようなドライな反応を示しつつ、面倒そうに嘆息しながら、才堂紅葉は肩に下げたアサルトライフルの銃把を握り、レシーバーを稼動させ、速やかに戦闘態勢をとる。
「ふ、ふふふ……はーっはっはっは! やはり妾は運命に愛されておる!
 実のところ、雑魚はさっくり倒して、まったり迷宮温泉ロケ動画を作ろうと思っておったのだがな。
 最初はどこぞの妖精アイドル崩れなんぞと、キャッキャしながら普通にお掃除してるだけの、慈善家のアホみたいなことをやっておったが、洞窟で宙に浮くしめ縄が現れて今度こそワクワク無双動画になるかと思えば、またもいつのまにかお掃除動画になっておるし、本当にもうどうして邪神たる妾が……というか、あいつ、湯冷めなんぞしとらんだろうな……
 まあそれはよい! 試練たるお主に打ち克ち、邪神としての格を爆上げするとしよう!」
 すごい早口で言ってそう。という突っ込みが喉から口をついて出そうになったところで、びしぃっとカッコイイポーズをとりながら滝業の呪を指差した御形菘は、その指先に漆黒のオーラを纏わせて、いかにもこれからやるぞー!という意気込みを全身から溢れさせる。
 そんな一人と一柱とを見比べ、
「なるほど……邪神か。たしかに相違ない。小なりとはいえ神の風格を感じる」
 神とは柱。天と地を繋ぐ者の総称であり、そこに大小はない。
 本来畏怖すべき対象だが、自らの存在意義の為に動くならば、そこに天との繋がりはない。
 と続けたアシェラ・ヘリオースは、ふとこの世界にも柱の先、即ち天があり、そこにもまた神なる存在がおはすのだろうか、などと益体もないことまで考えたあたりで、自嘲気味に口の端を歪め、改めてこちらも戦闘態勢をとろうと腰の得物に手を伸ばしかけ、ふと思い出したかのように中断する。
「相手が神を自称するならば、礼を払うが倣いだろうな」
 薄く微笑み、優雅な仕草で一礼する。
 文化は違えど、洗練された佇まいやその所作というのは、人を魅了する。
「試練を一手、教授願う」
 その動きにつられた様にすぐそばのリューインもまた慌てて一礼し、それを紅葉は奇妙なものでも見るかのように怪訝な顔をする。
 菘はそもそも見ていなかった。目の前の強敵に夢中なようである。
「では……参る」
 流れるような動き。おそらくは、幾千幾万と繰り返したであろう抜刀の動き。
 あまりにも自然体のままフォースセイバーを手に取り、構え、抜刀……光刃を灯すその一連の動きは、礼儀作法とおそらくは同等に堂に入っていた。
「クレハ」
「なに?」
「援護を頼む」
「そうくると思ったよ……。よし、行けぇ!」
 短い会話を挟んだかと思うと、紅葉はおもむろにアサルトライフルのセレクターをフルオートに切り替え、うねる滝へそれこそ幕のように銃弾をばら撒いた。
 それと同時に、アシェラが弾かれたように黒い残像を残して素早く踏み込む。
 中空をうねる滝の奔流には目もくれない。狙うは、先ほども処理した上下のしめ縄。その下の部分だ。
「ああー! お主ら、抜け駆けしおってからにー! んもー!」
 その二人の様子を遅れて発見した菘が地団太を踏むように尻尾の先端で温泉の水面をバシャバシャと波立てる。
 そして自身もまた遅れぬようにと、すぐさま立ち直って、自慢の蛇腹を伸ばし姿勢を高く取ると、自身のユーベルコード「ブラッド・ガイスト」によって血を滾らせ供物とすることで腕に纏う漆黒のオーラを凶悪な形状へと変化させる。
 滝の奔流と対峙した姿は、まさに二匹の蛇と言ったところだが、規模の大きさではやや滝業の呪に分があるようだ。
 しかし、そこは役者で勝つ。
「やはり、気持ちのいい一撃に勝るもの無し……受けてみよーっ!!」
 サイズ差は歴然。しかし、怯む事もなく菘は変貌したオーラを纏った凶悪な腕を滝の奔流に叩きつける。
 ざぱあ!と、盛大な飛沫が上がる。
「ぬぅ!?」
 驚くほど手応えがない。それこそ、川面を思い切り殴りつけたような、強い反動こそあるものの、命の躍動を刈り取るような、そんな手応えが一切感じられない。
 或は、自然そのものが相手というのは、こういう感覚を言うのだろうか。
「くっ、なんだこのしめ縄は……」
 丁度同じタイミングで下の方のしめ縄までたどり着いていたアシェラが、踏み込みのままの加速を加えた一撃を加えたところだったのだが、燐光の様なものに覆われたしめ縄には、フォースセイバーの切っ先の一片とて届かずに居た。
「やっぱりだ……」
 数撃、続けざまに赤黒い剣閃を迸らせるも、その刃がしめ縄の燐光を突破することはなく、ふと攻撃を止めたアシェラの耳に聞き慣れた声が響く。
「リューインか。何かわかったのか? というか、どこにいる?」
「あ、ごめんなさい。今はちょっと姿を消しているので……あ、ちょっと作戦を思いついたんですけど……」
「っ、待て! 何か来るぞ!」
 姿の無いリューインを探す最中で、アシェラは周囲に光をまとうしめ縄が新たに生成された事に気付いた。
 その存在に気付いたのはアシェラだけではなく、滝の奔流を相手にしていた菘もまたおなじであった。
「むむ、そちらもただでは受けてくれぬようだなあ。さあ、何がくるんだ?」
 不敵な笑みを崩さず、しかし周囲に浮かぶしめ縄の挙動に目を配る。
 菘の体は、既に何度も高温の源泉で構成された滝と打ち合ったため、赤みを帯びるほど上気しており、表皮は火で炙られたように熱を持っていた。
 熱により感覚を奪われつつある菘は内心で焦っているものの、それを表に出しては役者が廃る。
 規模では負けている。だからこそ、意気では勝つ。
 上方に幾つか生成された光るしめ縄のリングから溢れ出たのは、それもまた滝だった。
 生きているかのようにうねるそれではなく、直線的に水流を飛ばすそれはまるで温泉の蛇口のようであった。
「あっつ! いや、熱くない! 熱っ、あっちちち!」
 角度を変え、まるでレーザー砲台のように打ち付ける高温の滝の直撃を受け、菘はたまらず腕のオーラを展開して直接触れないようにするが、それでも徐々に押し戻されつつある。
 凄まじい水流の轟音に、彼女の声はほどんどかき消されてしまうが、その矜持もまた凄まじく、熱いという表現は極めて小声に留めていた。
「すまぬ菘。少しの間でいい。時間を稼いでほしい」
「うぬぬ、お、お主らいつの間に……」
 今や祠中を埋め尽くさん勢いで温泉のレーザーが駆け巡る。その中で一行が安全地帯として見出したのは、唯一レーザー水流の直撃を受け止め続けている菘の後ろだけだった。
 そのわずかな影の中に転げ込んだアシェラと紅葉、そして、影から染み出すようにして、今の今までユーベルコード「存在希薄化」で隠れていたリューインが姿を現し、一堂に会す。
「なにそれ、すごい便利じゃない。どこにでも忍び込み放題じゃない?」
「こ、こんなときにやめましょうよ……と、とにかく、あのはた迷惑な存在をなんとかする作戦ですよ!」
 今まで隠れていたことよりも、その手法に興味を抱くのはいかにも紅葉らしいことではあるのだが、今はそれどころではない。
 矢除けを買って出てくれている(?)菘もいつまで瀑布のレーザーを受け止め続けていられるか、わかったものではないのだ。
「やはり、あの存在は、上下にあるしめ縄の間にしか出てこないんです。アレがどんな存在であれ、攻略するなら、やはりしめ縄を破壊する事だと思うんですよ」
「しかしな。あのしめ縄を斬ろうとしてみたんだが、フォースセイバーの刃が通らなかったんだぞ……私にも奥の手はあるとはいえ、それも通らない可能性がある」
「お、おおい、皆の衆、そろそろフォローを、だな……」
 熱弁を振るう時だけは自信に満ちたリューインと、あくまでも冷静なアシェラ。
 そして、未だ戦線を維持し続ける菘に、紅葉は持ってきた水筒を取り出し、よく冷えた水をその背にかけてやる。
「おひょ!? ふわわ、気持ちいい……いやいやいや、はようせんかぁ!」
「まあまあ、焦らないで。まぁ、一緒にやりゃ、なんとかなんでしょ。たぶん」
 菘の身体を冷やしてやりつつ、紅葉は自分にできそうなことを心中で考える。
 恐らく、リューインが言うあの滝業の呪の本体はあのしめ縄ということで間違いはないんだろう。
 中央のうねる滝や後光というのは、その威光に過ぎないのだ。
 だとするなら、尚更、物理的なアプローチでどこまで対抗できるのだろうか。
「しめ縄は、それそのものが結界になっているんです。外側から内側へ害をなすものを阻む……恐らく、あのしめ縄そのものにも強力な結界が張られているのでしょう。
 この温泉が吹き乱れる状況で、さっきみたいにゆっくり解体なんて、できやしないので……今度は力技でやるしかないです」
「手があるのか?」
「……ちょっと時間を頂く事になります。僕自身は、また存在感を消して、遠距離からのスターランサーに、ありったけの破魔術式を込めます。
 これで、結界を破壊することはできないにしても、少しの間だけなら、中和できる、筈です」
「その間に、あれを破壊しろということか……しかし」
「タイミングと時間の勝負になるってことね」
 リューインの作戦に対する問題点、その端的な部分で口を濁すアシェラを補足するように紅葉が口を挟む。
 短時間で決めた作戦はツギハギのようなものだ。穴もあれば水漏れもしようというものだ。
 しかしそれにしても、たった四人でできるようなことなのだろうか。
 浅い沈黙。
「……役割を決めよう」
 重い口を最初に開いたのは、アシェラだった。
 これまでに、厄介な決断はいくつもこなしてきた。
 スペースシップワールドは、隔壁を越えた先は真空の宇宙空間だ。一瞬の油断が命取りになる場所なのだ。
 このような重責は今に始まったことではない。
 彼女の一言に、皆意志を固めた。
「僕はここで、結界の中和のための一撃を加えます」
「スズナはここでリューインを守る壁となり、引き続き温泉を受け止めておいてくれ」
「なぁにぃ? 妾が、ただの壁役だとぉ?」
「不満か?」
「ふ、ふはっ、いい加減、熱さでどうにかなってきたところよ。邪神に不可能は無い! でも、できるだけはようしとくれよ」
「は、はい!」
 体中から湯気を上げつつ顧みる菘の必死の形相に、リューインは慌てて姿勢を正し、さっそくスターランサーの準備に入る。
 光を放ち始めると同時に、リューインの姿や存在が希薄になって認識が難しくなっていく。
「じゃあ、私は牽制に回ろうかな。敵をひきつけるのもそうだけど、折角時間をかけてぶっ放したものが無効化されちゃ困るからね。
 確実に命中させるために、爆薬で撹乱するよ」
「そうか。たしかに、それは必要だな……とすれば。しめ縄を破壊するのは、私の役目という事になるか」
 アシェラは手に握ったままのフォースセイバーの柄に視線を落とす。
 さっきはまるで届かなかった光の刃だが、次こそは出し惜しみ無しだ。
 今度こそ、
「ちゃんと二つ一気に斬れる算段があるわけ?」
「……ああ。今度こそ、奴を斬る。行こう!」
 そうして、四人は最後にもう一度だけ視線を通わせて、各々の行動に移った。

「あのね……悪いんだけど。私が欲しいのは温泉であって試練じゃないの。分かる?」
 漆黒のオーラから真っ先に転げ出た紅葉が、滝業の呪を見上げ、よく通る声で言い放った。
 直後に、中空からの水流が紅葉を両断するように薙ぎ払う。
 姿勢を低く横っ飛びにそれをかわし、ついでにアサルトライフルで攻撃を行う。
 うねる滝の水面に撃ち付ける銃弾は、僅かに波紋を残すのみで、たいした効果は見られない。
 だが、それでいい。
 浅い温泉の中を転げ回り、全身をずぶ濡れにしつつも、紅葉は動きを止めず、中空でうねる滝業の呪だけを見据え、なるべく視線がしめ縄に向かないよう意識しつつ一定の距離を保ちながら、大きく周回するように駆けずり回る。
「ふはははっ! どうした、滝の神とやら! 試練とやらをもっと存分にぶつけてみるがよい!
 妾はまだまだ、ピンピンしておるぞ!」
 紅葉が一定の距離まで離れたのを確認したところで、菘もまた相手を挑発するように両手と翼を大きく広げて、大声を上げる。
 しかしこちらはその場から一歩も動かない。
 それをいいことに、高温のレーザー水流が菘に殺到する。
 動く事のできない菘はそれをまた、黒いオーラ凌源貪夢を展開させる事で受ける。
「ぬぐ、くう……っはっは、どうしたどうしたぁ! この温泉ヌルいぞ!」
「菘さん、そんなに挑発したら……」
「お前は黙って、さっさと術を完成させろ」
「でも……」
「お主は、この邪神の影におるのだ。これ以上の安心はあるまい。さあ、やるのだ!」
 口ごもるリューインの言葉にも、菘は高温の水流に晒されながら暴力的な笑みを崩さない。
 リューインは更に決意を固める。
 彼の周りにやってきた猟兵は、いずれも強い女性ばかりだった。
 不甲斐ない自分は尻込みしているばかりだというのに、この人たちは命懸けで自分の立案した作戦に乗ってくれている。
 ここでやらねば、男が廃る!
「ヘイ、水漏れ野郎! こっちの相手もしておくんなよ!」
 そして、タイミングを見計らったかのように、紅葉の声が爆音と共に響いてくる。
 紅葉の投げつけた手榴弾が、滝業の呪の奔流を歪ませる。
 それにより、今度は注意が紅葉に向いた。
「悪いね、それは目潰しなんだ。そして、こっちも!」
 不敵な笑みと共に、周囲各所で水柱が上がる。
 最初の手榴弾で注意を逸らし、更にダメ押しで仕掛け爆弾により爆炎で、周囲の視界が奪われる。
 タイミングは今しかない。
「天空の光よ、我が元に来りて敵を貫く槍と成れ!」
 存在希薄化を脱ぎ去ったリューインの身体が光に包まれる。
 ありったけの破魔の印を刻んだ光の矢が上下に撃ち放たれた。
 視界を封じられ、爆炎入り乱れる中で尚、その光線は滝業の呪の上下に広がるしめ縄に食らい付き、それが帯びる燐光を吹き消すかのように削り取っていく。
 燐光を失ったしめ縄は、見るからにその威光を失っていくかのようにその存在感を尋常のものへと変じていく。
「よく、やってくれた……!」
 黒い残像が大きく飛び上がる。
 銀髪をなびかせ、大きく跳躍したアシェラが最上段に構えたフォースセイバーがその柄から赤黒い刃を伸ばし、更に伸ばし、おおよそ十倍出力で太く長く形状を変えて顕現する。
 ユーベルコード「黒王刃」この強大なな一撃で、しめ縄ごと滝業の呪を両断しようというのだ。
「こいつの力加減は苦手でな……消えてもらう」
 祠を引き裂かんばかりの巨大なフォースセイバーをありったけの膂力でもって振り下ろす。
 赤い輝きがしめ縄へと、今度こそ食らいつき……そして、それが半ばで止まる。
「な、馬鹿な……!」
 結界は一つではなかった。
 かの者の本体であるそのしめ縄の結界は厳重であり、物理的な攻撃を阻害する働きをもつ結界とは別に、純粋に物理結界も同時に展開していたのである。
「くそ、このままでは……!」
 しめ縄の燐光が徐々に回復しつつある。
 リューインによる結界の中和は長くは持たない。
 なんとしても、このまま両断せしめなければ、このしめ縄の化け物を退治することは難しくなろう。
 焦りが顔に出るアシェラのその背後に、一際黒い影が翼を広げた。
「ふふん、どうした漆黒の騎士よ!」
 フォースセイバーを握るアシェラのてを覆うように、もう一人の手が重なる。
「妾の力が必要なようじゃのう! ふはは!」
「スズナ!?」
 黒い邪神の漆黒の霧が、その手を伝い、赤黒い光と交わって禍々しい輝きを帯びていく。
 そうして、二人分の力の込められた刃が、徐々にしめ縄を切り裂いていく。
「ははっ、邪神の力を嘗めるなよ!」
「ああ……人の力、嘗めるな!」
 裂帛の気迫と共に、滝業の呪が、その本体とも言うべきしめ縄諸共に真っ二つに両断された。
 後光のようなものがひび割れて、まるで巨大な排水溝のように中空の滝を吸い込んで消えていく。
『お、お、お……これが……業、行を越えて行く者か……美しい、なんと、美しい光景だろう……』
 空気が振動して、何かに反響するような声が徐々に薄れていき、やがて完全にそれが消えていくと、後に残ったのは小さな小さな瀑布のささやかな水音だけだった。
「っはー、やっと終わったか。もう、体中ベタベタだわ。温泉入って帰りたい」
 敵の完全な沈黙を確認すると、紅葉は服が濡れるのもかまわずその場に身を投げ出した。
 祠の中は未だに流れる温泉が、足先が埋まる程度の水位を保っている。
 こんなところで大立ち回りを演じた手前、もう衣服を気にするまでも無く全身びしょ濡れなのである。
「は、はしたないですよ、紅葉さん……でも、本当、疲れました。現場、もう出たくないです」
 リューインも控えめに近くの岩場に腰を下ろして嘆息する。
 やっぱり後方で文字仕事とかしているほうが、自分にはあっている気がする。こういうスリルは、過ぎ去った今なら少しは心地よいかもしれないが、こんなものが毎日やってきていたら、身が持たないと思う。
 それにしても、敵さえ居なければ、足湯も悪くないかな。
「おい、もう、その、なんだ……離れてくれていいのだぞ。ていうか、妾から離れろ」
「何を言う、友よ。最後の一撃。あれはなかなか気分がよかった」
 少し離れたところから、アシェラが菘の肩を担ぎながらやってきた。
 かなりの間、高温の温泉を受け止めていた菘の体は疲労困憊状態で、最後の一撃でユーベルコードを使用したのが本当に体力の限界だったようで、動けなかったところをアシェラに捕まったようである。
「なに、また動画のこととか考えてんの、あんた?」
「ふん、それ以外ないわ。こんな情けないシーンなど、カットじゃカット」
「私なら、とっとくけどなー。あ、そうだ。ドローンまだあるんでしょ? 記念撮影していく? リューイン君もさ」
「ええい、お主ら、離れんか!」
 色々とボロボロになりながらも、妙なテンションになってしまった女性陣に、リューインはどうしたものかと、結局そわそわするだけで何一つ口を挟むことは出来なかった。
 ちなみに、動画上ではこのシーンはカットしたらしいが、バックアップはちゃんととっているらしい。
 その後、このちいさな温泉郷は営業を再開し、その最初の来場客として、彼らは再びやって来たらしい。
 祠に行こうと言い出すものは、さすがに居なかったそうだが……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月25日


挿絵イラスト