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幸せはふとした拍子に舞い降りる

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●白一点
 奴らは屋根裏からやって来た。
 箪笥の影から、押し入れの隙間から、掛け軸の裏から、竈の中からもやって来た。
 ススワタリ。
 民間伝承に語られる、家等の建物を煤だらけにしてしまう、時には集団で行動し人を襲うこともあるという妖怪。
 煤の黒は瞬く間に、とある神社の敷地内に広がっていく。

 ――そこにふわふわと降り立つ、綿胞子のような白があった。
 黒の中に迷い込んだ白。それは一斉に群がる黒によって染め上げられ――、

●白綿、急を告げる
「一大事だよ」
 出会い頭の一声、グリモアベースに緊迫した空気が生まれる。妖狐、徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)は腕を組み、真剣な面持ちで猟兵たちを出迎えた。……だが佇まいこそ真剣そのものな筈なのに、彼女の持つ綿のように白い毛並みの尾はしきりに振られ、まるで緊迫感を払っていくようで。
「出るんだよ、やばいんだよ」
 ……何が? 猟兵の幾人かにはそんな疑問が浮かんだかもしれない。何せ一向に話が進んでいないのだから、重要な部分を早く聞かせて欲しいと、誰かが浮かんだ疑問をそのまま口にすることもまた当然で。
「何って、そりゃあケサランパサランに決まっているだろう」
 他に何があるんだい? そんな口ぶりで出てきた名、ケサランパサラン。サムライエンパイアの民間伝承に登場する謎の生物で、人に纏わりつき、人知れず人間を消滅させてしまうなんて言い伝えもあるのだとか。
 しかし彼女の表情を真剣なものにさせているのは、諸説ある言い伝えの中で最も親しまれているもの――、
「何が何でも、キミたちの手で倒して来てほしい」
 ――倒せば倒すだけその地に幸せが訪れるという、幸福の伝承だった。

●地に、人に、そして猟兵に
「詳しい説明に入る。まず場所ね、キミたちには神社に行ってもらう。ここでケサランパサランが現れる訳なんだけれども……」
 悩ましげに眉間に皺を寄せ、小さく唸るとわ。
「とわさ、さっき『キミたちの手で』って言ったろう? 実は現れるの、他にもいるんだ。ススワタリって言うんだけれどさ」
 ケサランパサランと酷似した外見の妖怪、ススワタリが同じ神社に現れるのだと、彼女は予知した光景を猟兵たちに伝える。
「もしススワタリにケサランパサランが倒されてごらんよ。その地に訪れる幸せが、そこに住まう人々にとってのではなく、オブリビオンにとっての幸せなんて事になりかねない」
 双方のゆるい、ある種愛らしささえ覚えそうな外見とは裏腹に、切迫した状況にあるのだと感じた者も居たかもしれない。思い悩みに比例してか、とわの尾はその振られる速度を僅かに増していた。
「という訳で、まずはススワタリの掃除だ。しかる後にケサランパサランを倒して幸せを呼び込んでくれたまえ」
 頼んだよ、本当に頼んだよ。語るとわの声も表情も変わらず真剣なまま。しかししきりに振られていた尾がふとその動きを弛め、止まり、
「ああ、そうそう。ここからはとわの提案なのだけれどね、事が済んだら向かった先の神社でお参りをしてくるといい。ススワタリの掃除だけで神様も喜んでくれているだろうけど、さらにケサランパサランを倒して幸せが神社を中心に広がる訳だからね、もう……」
 その声も表情も、穏やかなものとなる。
「すごいに違いないよ、ご利益」
 顔に笑顔を、掌にはグリモアを浮かべ、とわは転移の準備に取り掛かるのだった。


芹沢
 ゆるふわってどうしてあんなに魅力的なんでしょう、
 今回はゆるいふわふわを相手に、ゆるくふわふわと進むシナリオ……となるかは、猟兵の皆さん次第。鋭く、荒々しく立ち回ったっていいと芹沢は思います。下地の上に何を塗るかは、皆さん次第。

●各章について
 第一章:ススワタリとの戦闘(集団戦)
 第二章:ケサランパサランとの戦闘(ボス戦)
 第三章:神社でお参り(日常)

 という流れで進行します。
 一章、二章の戦闘に於いてもゆるく、ふわふわと、あまり深く考えなくても平気となっております。

 三章では願い事をするもよし、景観を楽しむもよし、お守りを買ったり出店を楽しむことまで、その組み合わせであっても、およそ神社で出来そうな事であればどの様な事でも出来るでしょう。
 もしプレイング内にお声掛けがあればとわも馳せ参じます。お話しの相手から参拝作法のレクチャーまで、猟兵の皆さんのらしさを表現するのにご入用であれば、お気軽に。

●その他
 スケジュールとキャパシティの都合でプレイングをお返ししてしまう可能性は常に付きまといます。無理のない範囲でより多くの採用をしていきたい所存ですが、予めご了承して頂けますと幸いです。

 以上、芹沢でした。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ススワタリ』

POW   :    まっくろくろすけの通り道
【対象が煤だらけになる集団無差別体当たり 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    かつての住処
【ススワタリがかつて住んでいた巨大な屋敷 】の霊を召喚する。これは【扉から射出した大量のミニススワタリ達】や【窓から射出した巨大ススワタリ】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    煤だらけ
【対象に煤が付くフンワリあたっく 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を煤で黒く塗りつぶし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ティアラ・パリュール
ああっ、神社がススだらけで真っ黒です。お掃除しないといけません!
お掃除道具を持ち出して、ススワタリが汚した神社を普通にお掃除していきます。
バトル・インテリジェンスで効率的に。
もちろん、ケサランパサランを探すのも忘れません。

……あっ、これはススじゃなくってススワタリでした!
フクちゃんそっちのお掃除はお願いね。
ススワタリの相手は、ふくろう型ガジェットのフクちゃんに大体おまかせ。
フクちゃんの攻撃は、シルクハットの下から出す炎や氷などを纏っての体当たり。まっくろになっちゃいますから、あとでメンテナンスしないと。
とりあえず、と雑巾で身体を拭いてイヤそうな顔をされたりも。

えへへ、わたしも汚れちゃいますね。


露霧・霞
ススワタリ、ッスか。名前からしても真っ黒に汚れそうな名前ッスよね
よーっし、こうなれば神社の一斉清掃ッスよ!

薙刀片手に、ススワタリを倒しながら掃除でもするッスかね?
ススワタリが居た所とか、真っ黒になっちゃってそうッスし
そうと決まれば、雑巾とバケツ……箒とかも用意しなくちゃッスね
すすってなかなか取れないッスよねぇ……しっかり水拭きするしかないッスね
ススワタリ自体はそのままぶん殴るとすすが飛びそうッスし、氷力刃舞で凍らせながらなら多少マシッスかね……?
「うわっ、刀身が黒くなっちゃったッス……」
あ、汚れてもいい恰好もしていかないとッスね!
割烹着でも着ていくッス

アドリブや他の人との絡みは歓迎ッス!


四樫・マコル
幸せのケセランパサラン…!実在してたんすね!!
新しいお宝のためにもあたしは幸せになりたいっす!
ガンガン倒してガンガン幸せになるっす!

【SPD】
その前にこの真っ黒けなパチモンを「掃除」してやるっす!!
どんなに大きかろうと小さかろうと所詮はススでしかないっす!!
ならば!ユーベルコード!『ガジェットショータイム』っす!
きっとこのタイミングならお掃除道具が出てきて助けてくれるはずっす!
真っ白いケセランパサランのためにまずはお掃除開始っす!!



 鳥居。神域と俗世とを画する結界であり神域への入り口。
 数刻前まで美しい朱色で佇んでいたそれが、
「ああっ、鳥居が煤だらけで真っ黒です!」
「ススワタリ、ッスもんね。名前からしてって感じだったッスけど、ここまでッスか」
 今は煤の黒に塗れていた。少女たちの悲嘆の声が、唖然の声が、鳥居を潜り、境内へと伝わっていく。
「お掃除……しないといけません!」
 見上げるのは、気合を入れるように大きめのエンジニアキャップをかぶり直すのは、ティアラ・パリュール(黄金と蒼の宝冠・f00015)。足元に置いたバケツで雑巾を軽く濡らし、年代物の機械をメンテナンスするように丁寧に柱を拭きにかかる。
「あたしも負けてらんないッスね! よーっし……」
 意気込むティアラに感化されるように箒と薙刀の二刀流で駆けだす露霧・霞(あたしってば最高ッスよ・f00597)は割烹着姿、今日は桃色の髪も白いほっかむりの中に収めている。
 そんな彼女は箒掛けするべく視線を落とした先、
「…………居たー! ッス!」
 鳥居の根元、その影から覗き込むようにしているススワタリと目が合った。
 すかさず箒で突きを放つ霞であったが、ススワタリはすばしっこく隠れてしまう。手応えも感じられず箒を引くと、
「うわっ、うわー!?」
 まるで栓を抜いたかのようにススワタリの集団が溢れだしてきたではないか。彼らは所も猟兵も構わず縦横無尽に動き回り、無差別に煤を擦り付けようと体当たりを放ってくる。
「フクちゃん、そっちのお掃除はお願いね」
 しかしそんな状況には目もくれずティアラは雑巾がけに専念していた。それはもう一心不乱に、無駄のない動作で効率的に。
 彼女の傍らにはいつの間に宝冠が――否、真鍮を思わせる黄金色のボディに青い回路が走るドローンがふわふわと浮かんでいた。的確な掃除の動作はドローンに搭載されたAIに自身の身体を預けることで得られたもので、最早その姿は清掃業者さながら。
 一方、『フクちゃん』と呼ばれたふくろう型ガジェットはおっかなびっくりながらも周囲を飛び回り、氷を纏った体当たりでススワタリからティアラを守っている。
「なるほど氷ッスか! それならこっちが適任……ッスね!」
 フクちゃんの体当たりを見て、それまでススワタリを箒で払い除けていた霞は薙刀を構える。
「さー、カチコチになれッス!」
 薙ぎ払うでなく撫で触れるように。力に任せながらも汚れを清めるように繊細に。薙刀の一振りはその軌道上にいたススワタリを次々に凍らせ、両断していく。
 どんなもんッスか! と石突で舗装された路面を鳴らす霞。ちらと刃を見上げてみると、
「うわっ、刀身が……うーわー……」
 掃除したススワタリの数だけその身を黒く染めていて、赤い瞳もどんよりと、黒に染まりそうになる。
「ガジェットショータイム! っす!」
 ……そんな霞の耳を、不意に溌剌とした声が揺らした。
「お掃除お掃除ふんふふ~ん♪」
 ……不意に彼女の薙刀へもこもことした繊維の塊が伸びてくる。
 もこもこの先には柄が伸び、それを握るのは黒の指貫グローブをはめた手。手の持ち主、四樫・マコル(フォーエヴァー・f00620)が細い繊維の一本一本で煤を絡め取るように薙刀を綺麗にしていく。
「便利ッスねそれ! ススワタリの煤も怖くないッスよ!」
「大きかろうと小さかろうと須らくススワタリは煤っすからね! これでイチコロっすよ!」
 果たして二人のやり取りに何度『す』が登場したことだろうか。その数を遥かに上回るススワタリが跋扈するこの神社では考えても仕方のない事だろうが。
 マコルは手にしたガジェット、高所清掃用ハンディモップの柄を引き伸ばし、貫や島木、少女たちの背丈では届かない鳥居の高い所の汚れを楽々お手入れしてく。ススワタリを軽々捕まえていく。
 綺麗なものが――きっとそれは、多くの場合ダンジョンに隠されたお宝を指すのだろうが――好きなマコルには、神社の景観が煤に塗れることを我慢できない部分もあったろう。しかし今彼女を突き動かすのは、
「この真っ黒けなパチモンを掃除して! ケセランパサランをガンガン倒して! ガンガン幸せになるっす!」
 幸せを掴み取ること。
 今はそれを目指し、ススワタリたちをもこもこで掴み取っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
※アドリブ歓迎

煤で汚れちゃう……でもこれも猟兵の大事なお仕事だし、マリアは聖者だもの。悪者はきちんとやっつけないと。頑張らなきゃ。

あの黒いのはあんまり怖くなさそうだし、サイコキネシスで汚れごとお掃除するわ。
そぉっと近づいて、見つかる前に念力で捕まえちゃえば体当たりも平気、よね?
強くなったら抑え切れないかもしれないし、煤で塗りつぶされたところに立たれないように、吹き飛ばしていくわ。
おっきいのやいっぱいのが出てきちゃったら……うーん、他にも猟兵は集まってるはずだし、手伝ってもらえば、きっと大丈夫よね。

これが済んだら、次に行く前にお洗濯とお風呂に行く時間、貰えないかしら……だめ?


クロヴィス・オリオール
け、ケ・セラ・セラで、パサパサのパン……?
え、何その長い単語の何かよくわかんねぇパン……。
……まぁいいや、パンだか何だかしらねぇが、倒しゃ幸運がやってくるってンなら、賭博師としちゃ見逃す訳にゃいかねぇ機会だ。

おーおー、もっこもっこわさわさ居やがらァ。このっくらいの大きさなら、オレも相手がしやすいってな。

チビのもこもこは任せとけ。
オレが喚びだすのはトランプの兵隊、呼べるだけ呼んで相手してやる。
「そら、キリキリ働かねェと女王様のお叱りが飛ぶぜ?」

でっけェもこもこは……チビのもこもこがあらかた片付いてりゃトランプどもを合体させるが、そうでなきゃオレよか適任は居るだろうよ。

※連携アドリブ歓迎です


平賀・廣葉
ははぁ、懐かしいものですね
ススワタリですか
昔、父上たちが払っているのを見たことがあります
……今はもう、誰もいませんが

感傷は振り切って戦いましょう

●WIZで挑戦
【神霊体】となって戦いましょう
煤だらけになるのは嫌ですので……
余裕があれば、塗りつぶされた地形も削って……と、すると神社に迷惑がかかりそうですね
こまめに場所を移動して、塗りつぶせないように努力しましょう
あるいは防御力に任せて、あえて受ける方がいいでしょうか



「倒しゃ幸運がやってくるってンなら、賭博師としちゃ見逃す訳にゃいかねぇ機会だよなァ」
 一方、手水舎にもこの先に待つ幸せを欲する者が居た。
「このっ……くらいの大きさ、……ならっ! オレも相手がしやすいってな」
 翅をはためかせ、時折片手剣を振るい、クロヴィス・オリオール(GamblingRumbling・f11262)が小型の、フェアリーである彼の身からすれば中型程度のススワタリを斬り捨てていく。
 ススワタリの集団の中にあってその剣を絶え間なく振り続けずに済んでいるのは、彼の周囲をトランプの兵隊が囲んでいるためだ。剣と杖、金と杯の四隊。Aを刻まれた兵が四名ずつそれぞれに属し、総勢十六名の兵団として戦っている。
 煤を散らしながら霧散していくススワタリたち。そんな彼らの残滓を追う金色の瞳があった。
「(懐かしいものですね。昔、父上たちが祓っていましたっけ)」
 平賀・廣葉(亡国の羅刹姫・f11925)が黒檀のように黒く、そして艶やかな髪を風にそよがせ、同様に風に乗る煤の黒を見つめている。黒はやがて空に舞い上がり、
「(……今はもう、誰も居ませんが)」
 視線もまた、遠く、彼方へ。
 風が一つ吹く間の、ほんのひと時の感傷。
 風が止めば、そこに佇むのは神域である境内の空気とその根源を同一とする姿。廣葉がその身に神霊を宿し、神霊の身体そのものとなって舞うように薙刀を振るう。
「大物は私が祓いますので、クロヴィス様はどうかそのまま多数の相手を」
「ああ、チビ共の相手は任せろ。そら、キリキリ働かねェと神様のお叱りが飛ぶぜ?」
 薙刀の起こす衝撃波が、十六本の槍と一本の剣が、ススワタリたちを次々霧散させていく。
 しかし彼らもそれをただ受け入れるばかりではない。煤を付けて回る、白を黒く染める、そんな本能が煤を着たようなオブリビオンだ。であればその本能の赴くままに、引き寄せられるように綺麗なものへと――廣葉へと向かっていく。
「煤だらけになるのは嫌ですが」
 逃れるのは容易い。
 しかし逃れてしまえば、代わりに煤に塗れるのは境内で、
「あとで清めさせて頂きましょう」
 清らかな水を湛える手水舎で。それを良しとはできず、ススワタリの体当たりを、掌を盾に受けようとする。
 ……が、その手にふわりとした感触が伝わる事はなかった。
 横風にススワタリが流されたわけでもない。前へ前へと踏ん張るように、今もススワタリは懸命に体当たりを敢行している。ただそれがほんの僅かも叶わずに押し留められているだけだ。
「煤で汚れちゃうのは……」
 いつからか、手水舎の影から三角帽子がひょっこりとその姿を覗かせていた。帽子がそっ……と動き、次いで宝石の入り混じる素肌とピンクダイヤの瞳が現れる。
「マリアが、防ぎます。あの……頑張ります」
 おどおどとした調子で、現れた少女、アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(救世の極光・f13378)はぺこりと、誰にでもなく頭を下げる。その拍子に三角帽子がずれ落ちそうになって、わたわたと位置を整えて、きゅ、と宝石を磨くような音が奏でられた。
 そうこうしている間にも二匹、三匹と廣葉に向かっていたススワタリたちが不可視の力に阻まれるように宙で停滞していた。
「(マリアは聖者だもの。悪者はきちんとやっつけないと……)」
 ――頑張らなきゃ。
 ぎゅっと瞼を閉じ、己に言い聞かせるように念じて両手を突き出す。内に向かった念いは宝石に差し込んだ光が乱反射するようにその行先を変え、
「えーいっ」
 力となって両の掌から放たれた。
 その力は今までススワタリたちを阻んでいたものと同じ不可視の念力。だがその強度が違う。アヴァロマリアが自分を奮い立たせた分だけ、念いが強くなった分だけその威力を増し、小型のススワタリたちは抗う術も無く吹き飛ばされていく。
「あンだ、オレお役御免……って訳でもねぇか」
 念力が小型に向かうなら、薙刀が大型を狙い澄まし吹き飛ばすのなら、果たして中型は誰が相手をすべきか。少女たちに足りない手札を誰が補うか。
「しゃァねぇ。なってやるよ、変幻自在のJokerに」
 打ち鳴らされるフィンガースナップ。それを合図に十六の兵隊がスートごとに寄り集れば、刻まれた数字が、中型の相手を出来るだけの姿へとその大きさが、増していく。
 四体のⅣ。ポーカーに於ける役の一つ、フォーカード。
「ショーダウンだ! 総取りに行くぞッ!」
 ――否、そこにJokerを加えたファイブカードが、黒へと斬り込んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
――煤。
サムライエンパイアの化生は一風変わってるのだな。
どうあれ、モンスターならば倒すだけだ。ケセランパサランも興味深い――。

(ザザッ)
SPDを選択。
火線による友軍の援護に主軸を置き行動する。

右腕の砲塔から熱線を敵性存在に複数照射。
適宜対象の急所と思わしき所を狙い撃つ。
基本的に撃破は狙わず、友軍が技を繰り出す為の隙を作る為の物としたい。
(クイックドロウ+スナイパー+二回攻撃+一斉発射+援護射撃)

屋敷が現れた場合は『Craft: Bomb』使用。
開いた扉から爆弾を投擲し屋敷の破壊を目論む。
(スナイパー+投擲)

本機の行動指針は以上、実行に移る。
オーヴァ。
(ザザッ)

*アドリブ・組合せ等歓迎


戎崎・蒼
【Da capo al finЁ】で参加
ようは掃除、って事だよね?ケセランパサランがススワタリに倒される前に、然るべき対処を取るとしようか。……紅、そっちは任せた。

【POW】で判定。
紅が遮蔽物を作ってくれるらしいから、有難くそれを使わせてもらおうかな。相手も範囲攻撃ならこっちも範囲攻撃でいくよ。(スナイパー+援護射撃+範囲攻撃で、全体を狙って射撃する)
そして、UCを使って追い討ちをかけれたらいいな。

………紅、それ僕が全体的に黒いから犠牲になってもどうだとか言ってるんだろ………!
紅は楽し~く真っ黒になればいいと思うよ………本っ当、1回消し炭ぐらい、いや炭になったほうが良いと思う。うん。


宮前・紅
【Da capo al finЁ】で参加
わぁ!ススワタリだね!俺の真っ白な服が汚れそうだけど、楽しそう!
蒼くんも一緒に居るからね!背後は任せたよ♪

【SPD】で判定
ちゃっちゃとお掃除しようかな!Tillie、Lacie、Elsie!お掃除の時間だよ♪
俺の人形ちゃん達と一緒に素早く回避しつつ攻撃をしようっと。
変幻自在の人形で巨大化(武器改造+拠点防御)。
その後、先ずは遮蔽物を作って、蒼くんの援護射撃をしやすいようにしようかな?
俺は回避しつつ、人形を操って踏みつけ攻撃。
攻撃が蒼くんに向いて来たら庇う。

煤だらけになるの楽しいのにな~蒼くんったらノリ悪ーい。
あっ、そう言えば蒼くん真っ黒くろすけだったね♪



 参道に焦げた匂いが漂う。
 それは煤が消し炭となった、そして火薬の爆ぜた匂い。
《サムライエンパイアの化生は一風変わっているのだな。……リロード》
「カバー。姿形、それに成り立ちこそ変わってるけど所詮は煤だよ。掃除するだけさ」
 参道の空気を二つの声が伝う。
 それはノイズ交じりの電子音声にも似た、そして淡々とした語り口の声。
 ジャガーノート・ジャック(OVERKILL・f02381)と戎崎・蒼(暗愚の戦場兵器・f04968)がブラスターとアサルトウェポンで以って代わる代わるにススワタリを焼き払い、撃ち散らしていく。
 片や野性的にして機械的、筋肉質にして金属質。黒豹が如き異形の鎧。
 片や少年時代でその成長を止めてしまったかのような小柄な身体。
 二人が遮蔽物として身体を預けるのは参道を塞ぐように置かれた大岩だった。
「そうそうお掃除! ちゃっちゃと片付けてケサランパサランを倒さなきゃなんだから! Lacie、Elsie!」
 大岩の先で楽しげな声が右へ左へ。軽やかに飛び跳ねる宮前・紅(絡繰り仕掛けの人形遣い・f04970)が両手の指それぞれで操る二体の人形にススワタリを踏み潰させていた。それも一動作で数十匹を纏めて。
 何故それが適うのか。それは紅が操るのは彼の体躯の三倍はあろうかという大型の、いや、この一時だけその身の丈を肥大化させた人形だからだ。ジャガーノートと蒼を庇うように置かれた岩も彼女たちに運ばせたもの。その膂力、脚力は推して知るべし。
「リロード。……紅、僕の方だけ人形を抜けてくるススワタリ……多くないか?」
《カバー。本機もその様に推察する。もっと蒼への支援を厚くしても本機は、》
「え~? だって煤だらけになるの楽しいよ~? 蒼くんったらノリ悪ーい」
《「…………」》
 入れ代わり立ち代わり熱線と銃弾を放つ二人からノイズと溜息が同時に零れ出るが、
「あっ、そう言えば蒼くん真っ黒くろすけだったね♪」
 そんなことはどこ吹く風。紅は纏った真白い上着を所々煤に黒くしながらも参道を駆け回る。
「それ僕が全体的に黒いから犠牲になってもどうだとか言ってるんだろ……!」
《であれば本機の外装も黒、やはりここは本機への支援を最小限にし、相棒をこそ守るべきでは》
「あっははは♪ じゃあみんなで真っ黒になろっか!」
「紅だけ楽し~く真っ黒になればいいと思うよ……。本っ当、一回消し炭ぐらいに、」
 弾倉を取り換え蒼の放った弾丸が、
「いや炭になったほうが良いと思う。うん」
 紅の鼻先に迫っていたススワタリを貫き、散り散りになった煤が白い相貌を際立たせるようにその頬へ乗る。
《……ナイスショット》
「けほっ……あんまりナイスじゃないと思ーう!」
 蒼と紅のやり取りに紛れ小刻みに零れるノイズには、或は喜色が含まれていただろうか。
 しかしそのノイズは微かに音を変える事となる。
《敵拠点の出現を確認。増援が予測される》
 三人の先に突如として巨大な、古ぼけた、そして煤に塗れた屋敷が現れたのだ。
 屋敷の扉が勢いよく開け放たれ、大量のススワタリたちが溢れだしてくる。徐に開いた窓からは身を捩るように、その窓枠を身体全部で黒く汚しながら這い出てくる特大ススワタリの姿。
「随分な大所帯だね。叩き続けてもいいけれど……」
《提案。本機は爆弾の生成が可能、生成量は敵拠点の破壊が叶うだけのものだ。よって扉に辿り着くまでの進路の作成を頼みたい。どうか?》
「……あの黒に風穴を開ければいいんだね」
「わかった! あれでしょ、ピンポンダッシュみたいな!」
 ジャガーノートの提案を冷静に検討し、実行する価値があると頷く蒼。彼は新たな弾倉に加えマスケット銃取り出し、紅は楽しい事が巻き起きると信じて疑わず、三体目の人形、Tillieを操る。
《……ダッシュするのに間違いはない。だが順序は逆になる》
 ノイズには再び喜色が混じったかもしれない。
 傭兵が引き金を引き、人形遣いが糸を躍らせる。
 黒豹は開かれた道に重い足音を響かせ、ただ駆け抜けるのみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラニューイ・エタンスラント
ススワタリ……あんまり可愛くないわね。この子(アイコンのだむぐるみ)の方が可愛いわよ。まぁ、本命がくる前にちゃっちゃと片付けましょうか。ユーベルコードを使って、主に属性魔法で攻撃していくわ。アドリブ等は大歓迎よ。


作図・未来
この地に住む人々が幸せになる為の戦いか。
うん、とても素敵だね。やる気が沸いてくるよ。
大掃除のシーズンからは離れてしまってはいるが、煤払いと行こうか。

敵は集団だね、死者の舞踏で迎え撃とう。
今回は舞台というよりも……まぁ、【掃除】だね。
掃除なら人の手が多いに越したことはないだろうし、この術は丁度いいだろう。

範囲攻撃で一度にやられないようにいくつかのグループに分けて掃除をさせよう。
他の猟兵の手伝いも考えてみるかな。やあ、人手はいるかい?

ああ、でもせっかくのキャストにただ掃除させるだけなのも芸がないな。
どうせならミュージカルのように踊るように、歌うように掃除をさせてみようか。
剣という名の掃除用具でね。



 参道から響く爆音が拝殿に備え付けられた鈴を揺らし、がらんがらんと音を立てさせる
「ススワタリ……あんまり可愛くないわね」
 空気を震わす衝撃と鈴の音の間に立ち、拝殿を、そしてそこを黒く汚していくススワタリたちを望むのは神々しき戦乙女の姿。
 ……しかしその片腕には、
「この子の方が可愛いわよ」
 壮麗な出で立ちとはミスマッチにも思える、白く丸いぬいぐるみが抱えられていた。
 ぬいぐるみを小脇に抱え直し、ラニューイ・エタンスラント(ダンピールの聖者・f05748)が視線の先へ指を伸ばす。
 放たれるは闇を掃う一条の光。照らし出されたススワタリはその身を萎ませていき、終いには散り散りと、漂白されるように霧散してしまう。
 一つ拭い去り、次をなぞり。二つ取り除き、次を追いかけ。
 だが仲間が倒されればススワタリも黙ってはおらず、ラニューイに向かっていく。身を守るために光を向ければ拝殿を染める煤は着実に増える事となり、携えた聖剣を抜くべきかと柄へ伸びるラニューイの手。
「やあ、人では足りているかい?」
 しかしその手は涼やかな声にぴたりと動きを止める。
 彼女の視界に躍り出るのは、――否。踊り出るのは、黒い帽子の少年と戦士たちの御霊。
 作図・未来(朝日の死者のタンツ・f00021)が死霊を指揮し、ラニューイに迫るススワタリを彼らの剣で斬り伏せさせていく。
 彼女の出で立ちに煤の汚れがない事をちらと見て、一つ守る事を成したと、未来は表情を緩めることなく成果の確認を終える。
「いい所に来てくれたわ。少しエスコートして貰ってもいいかしら?」
「いいとも。煤払いの道行きだけれど……」
 膝程まで伸びる巻き髪を揺らし未来に歩み寄るラニューイ。未来は彼女の要請を快く受け入れ、
「傷一つ、汚れ一つ、煤の一粒付けずに送り届けよう」
 ――でも、ただの煤払いでは芸がないね。
 未来は歩み出しながら繊細に指を振るい、死霊たちを四つの集団に分ける。三つは前方で扇状に展開し、一つは後方へ。
 死霊は集団ごとに統率のとれた動きでススワタリと相対し、はたきを使って汚れを浮かせるが如く剣を振るい、箒で塵を掃うように冷気を薙ぎ浴びせていく。行進する足音は壇上からパフォーマンスを魅せるキャストのそれで、勝手知ったる我が家を軽快に掃除する住人のそれで、小気味がいい。
 それもそのはず。彼の死霊術は舞踏なのだから。彼が呼び出したのはこの地で眠った戦士たちの御霊なのだから。
「……綺麗に動かすのね。じゃあこういうのはどうかしら」
 ラニューイが光を操り、キャストを照らすように、黒い観客に壇上のパフォーマンスを誇示するようにスポットライトを走らせる。熱狂したように殺到するススワタリたちは光に目を眩ませ、その身を擦り減らし、パフォーマンスの一部として掃除されていった。
「こんなに盛り上げられたら、彼らもさらに熱が入るというものさ」
 忙しなく、それでいてしなやかに指を振るう未来。彼の口元が穏やかな微笑みを浮かべたのは、彼自身も最も間近な観客としてこの舞台を楽しんでいたからかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白雨・七彩
ススワタリ…、噂に聞いた事はあったがこうして目にするのは初めてだ。
成る程、確かに見た目は可愛らしい。
だが、結果人の子に害を成すようであれば容赦はしない。

家屋の隙間から入り込めるほど本体が小さく捉え辛いのであれば
切ったり叩いたりは効果が薄そうか…。
それに家具の隙間にでも入り込まれたら少々厄介だな。
なら【炎月】の熱風で部屋の中央に集め、その真上から【水刃】同士をぶつけススワタリを水で濡らし、多少動きを鈍らせさせてもらうとしよう。
そうすれば多少は戦い易くなるかも知れんしな。


浅葱・シアラ
ひぅ……!まっくろくろすけ……!
あれ、違う……えっと、そう、ススワタリ……!
怖くないというか、可愛いと思うくらいなんだけど……
でもシア、汚れたくない……!
お気に入りのフェアリードレス、汚されないようにお掃除頑張るよ!


使用するユーベルコードは「エレメンタル・ファンタジア」
えっとね……殺傷力の高い攻撃しちゃうの可哀相だから……
【水属性】と【豪雨】を合成して魔術を生み出すよ
ススワタリの上空に向けて【高速詠唱】で速く、何度も何度も豪雨を降らせるよ
煤が洗い流されて綺麗になるといいなぁ……
暴走しないようにきっちり制御しないとね……!


可愛いけど、ケセランパサランと出会わせるわけにはいかないから頑張るね!


アロンソ・ピノ
刀汚れそうだな……まあ刀身なんぞすぐ交換出来るから良いが。
とりあえずPOWだ。
無心にぶった切っていくぞ。オレの刀は抜く度に形が変わり、鞘に収まらなかったら毎度指で刀身折って鞘に突っ込む。また抜けば元通りだ。
……指が真っ黒になっちまっただ!?
あ、あとバーバリアンだから気合入れる時には脱ぐぞ。上半身だけ。見た目より筋肉は付いてる。
これもまあ、人助けだ。
いっちょ頑張ってやるか。
――春夏秋冬流、参る。



「(ススワタリ……、こうして目にするのは初めてだったが……成る程、確かに見た目は可愛らしい。だが、)」
 琥珀に輝く瞳が四方に視線を走らせ、あちこちのススワタリを捉えている。
「ひぅ……!まっくろくろすけ……! あれ、違う……えっと、そう、ススワタリ……!」
「……人の子に害を為すなら容赦はしない」
 本殿前。そこで零れた浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)のか細い声を白雨・七彩(水狐・f06113)の狐耳は聞き逃さなかった。黄金色の尾をゆらりと波打たせ、妖力を練り上げていく。
「先行くぜ。――春夏秋冬流、参る」
 そんな二人に先駆けて一陣の、桃色の風がススワタリたちへと突き進んでいく。上着の裾と長い髪をはためかせ、ススワタリを間合いに捉えたアロンソ・ピノ(一花咲かせに・f07826)。
 瞬く間もなく化生を襲うは瞬化襲刀。アロンソの腰に携えられた鞘から引き抜かれた刀。
 しかし現れた刀身は鞭のように柔らかで、そして鞘に納められていたとは到底思えないほどの長大さ。
「ッらぁ!」
 一見では細身に見える彼だが、しかし衣服の下は鍛え抜かれた戦士の身体。嘶く筋肉に任せて腕を振るえば切っ先は弧を描き、ススワタリの群れへ鞭激を浴びせていく。
 風を斬る程の剣圧。故に直撃を免れたススワタリが余波に乗って飛び散りもするが、
「――二の舞」
 新たな風、熱風によって押し戻され、ひと所に集められてしまう。
 七彩の放った狐火の数、十。それぞれを十指で操るように舞い踊り、ススワタリたちの周囲を飛び交わせていた。狐火は澄んだ冬の空気を局所的に暖め、気流を生み、指向性の流れを作り出している。
「これでより存分に力を振るえるだろうか。補佐は任せてくれ」
「助かるぜ、そのまま頼む!」
「シアもお気に入りのフェアリードレス、汚されないようにお掃除頑張るよ!」
 男二人の立ち回りを視線の先に、シアラも蓄えた魔力を言の葉に乗せ天へと注いぐ。
 高速で紡がれる詠唱を一つ終えれば、また新たなものを再び、再び、また再び。十重、二十重と幾重にも重ね、一つの力として紡ぎあげていった。
 力は黒雲を呼び、日を翳らせ、本殿に、猟兵に、そしてススワタリたちの黒い身体に影を落とす事となる。狐火を光源にその姿を見失う事はないが、
「……引き寄せられている?」
 暗さが心地よいのか本殿の到る所からススワタリたちが這い出てくる姿を七彩は目にする。今やアロンソが減らした数を補って余りある程のススワタリが群れに合流していた。
「やり応えが出てきたって事だろ」
 気合を入れるようにアロンソは衣服に手をかけ、それを脱ぎ去り、鍛え上げられた上半身を境内に晒す。
「だがこう多いと、そのうち包囲を抜けるものも……水で濡らせば多少は動きも鈍るか?」
 刀を振るい、鬼火を操り、ススワタリを押し留めるアロンソと七彩。二人の肩に雨雫が、ぽつり。妖精の翅音が、ひらり。
「水なら今からくるよ! ……降り注げーっ!」
 シアラはドレスを翻して空へと昇ると黒雲目掛けて腕を掲げ、ススワタリたちへ線を引くようにその腕を降ろした。
 それを号令に始まる、滝のような豪雨。本殿から離れる程その勢力を弱めているものの、その雨は神社一帯に降り注ぎ煤汚れを洗い流していく。
 注がれた力の分だけ雨を降らせた黒雲はその役目を終え、風に立ち消えたあとには再びの陽の光。照らし出された石畳には、多量の水分にその身を溶き流されていくススワタリたちと、
「……さ、流石に寒ぃべ」
 もっとも雨勢強い只中に居たため素肌を震わせるエルフに、
「シア、やりすぎちゃった……?」
 雨とも涙ともつかない雫を目尻に浮かべたフェアリー、
「ふふふ、少し暖を取ろう。火ならある」
 そして濡れそぼった尾を振るい、彼らを暖めるべく狐火を舞い踊らせる妖狐の姿があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ケセランパサラン』

POW   :    分裂
【分裂し、もう1体のケセランパサラン】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD   :    恍惚
【10秒間、ふわふわ浮いている事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【戦意を喪失させるウェーブ】で攻撃する。
WIZ   :    幸福
【可愛い】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【ケセランパサラン】から、高命中力の【敵を庇いたくなる気持ちにさせる光線】を飛ばす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 奴らは何処にもいなかった。
 鳥居の影へ、砂利の隙間へ、岩の裏へ、大気の中へと流れていった。
 猟兵。
 オブリビオンと戦う為、世界に選ばれた存在。
 ススワタリの悉くをとある神社から祓い、今は来るべき時のため神社の方々に散開した者たち。

 ――そんな彼らの居る神社へふわふわと降下してくる、綿胞子のような白があった。
 石畳を濡らした雫が輝く眩い境内、そこへ降り来る白。それは一斉に飛んでくる猟兵たちの視線に射貫かれ――、
戎崎・蒼
【Da capo al finЁ】で参加。
うん、おそらく紅みたいに悪戯とかしなさそうだから、僕としてはこっちの方が愛らしいけど。
あと君は絶対、幸せは運ばないだろ。

【POW】で判定
分裂したケセランパサランを各個撃破したい。
もう一体現れたりした奴は、続けて射撃して狙おうかな(スナイパー+2回攻撃)
たたき落とされたもの、逃しそうになったものが出た時は、強力な一撃を特殊なバレットで加えたい(零距離射撃+捨て身の一撃※再生不可の強力な弾薬の意)

真っ白………というより中途半端な灰色とかになりそうだからあまり近づかないけど、この可愛さは毒されそうだなぁ……。
というか、ケセランパサランって血とかでるの?


宮前・紅
【Da capo al finЁ】で参加。
今度は真っ白!ほら見て見て!俺みたいに愛らしいよ!蒼くん!
しかも幸せを呼ぶなんて、最高だよね♪
本っ当俺みた~い!

【SPD】で判定
浮いてるやつを片っ端から叩き落とそう♪
怖くないよ~(恐怖を与える)
戦意喪失させられちゃったら大変だもん。またまた俺のお人形ちゃんたちの出番だよ!
取り敢えず、俺達で叩き落として、そこを蒼くんとか他の猟兵さんに狙って貰おっかな♪
どうにもならなそうだったら、もう突っ込もうか!(捨て身の一撃)
もほもほしてそうだし、少し位突っ込んでも大丈夫だよね!

誰が先にもほもほをぶっぱ出来るか競おうよ♪
さてと、ボッコボコの血みどろフルコンボ目指すよ!


ティアラ・パリュール
うわぁ、ふわふわです!
えへへ、倒しちゃうのがちょっとだけ勿体ないくらいですね。

……調べたところによると、ケサランパサランはおしろいを食べるみたい。
なので、わたしも無添加のおしろいを用意してみました!
神社の何か所かに、箱に入れたおしろいを置いておびき寄せてみましょう。

フクちゃんにも、おしろいを塗ってから送り出します。
皆さんの幸せのために、いっぱい倒してきてね。
他の猟兵の皆さんと、どれだけ倒せるか競争です!



「あっ、来ました! 来ましたよっ!」
 拝殿の物陰からひそひそと、しかし隠し切れない喜色で跳ねた少女の声が聞こえる。
 物陰からひょこっと、頭の半分程を出して様子を窺うティアラ。彼女の視線の先には彼女の設置したおしろいが収められた箱と、そこへ目掛けてふわりふわりと舞い降りるケセランパサランの姿があった。
 そしてティアラの頭のすぐ上。串に刺さった団子のように、並んで出ている頭がもう一つ。
「わぁ~真っ白! ほら見て見て、俺みたいに愛らしいよ蒼くん! しかも幸せを呼ぶなんて、最高だよね♪ 本っ当俺みた~い!」
 紅もまた、ティアラ以上に声を跳ねさせてケセランパサランの様子を見ていた。
 しかし相方の蒼はといえば、
「……うん、おそらく紅みたいに悪戯とかしなさそうだから、僕としてはこっちの方が愛らしいけど。あと君は絶対、幸せは運ばないだろ」
 一度ちらりと様子を窺ったきり拝殿の壁に背中を預け、紅の言葉に呆れたように。
「にしても……ここから見ているだけでふわふわなのが伝わってきますね」
「ほんとほんと! でもふわふわってよりもほもほって感じじゃない?」
「えー、もほもほですかー? でも……ふふ、それも柔らかそうですね。じゃあ二つ合わせてふわもほとか!」
「いいねふわもほ! いいとこ取りだ♪」
「……ねえ二人とも。お喋りはその辺にしてそろそろ、」
 意気投合したのかふわもほトークで盛り上がるティアラと紅。弛緩し続ける空気をそろそろ引き締めねばと溜息混じりに言葉を差し込む蒼であったが、
「えへへ、倒しちゃうのがちょっと勿体ないくらいですね」
「そうだねー。なんだかもう見てるだけで幸せって感じだしこのまま観賞会にしよっか♪」
 二人はまるでそれが耳に届いていないかのようで、ここに来た目的さえ喪失してしまったようで。
「……っ!」
 蒼は少女の事をそう多くは知らない。しかし男の事は、相棒の事は多くを知っているつもりだ。軽口をよく叩く相棒だが、ある種嗜虐的とも言える好戦性を持っている事も、知っている。そんな彼がここで口にするのは、「ふわもほをボッコボコにしよう♪」、なんてセリフの筈だ。
 嫌な予感を覚えた蒼はティアラと紅の肩を掴み物陰に引き込むと、やや強引に壁に抑えつける。
「きゃっ……、……あれ? 私……あれ?」
「いったーい! ちょっと何するのさ蒼くん! ……ん? んん???」
「……もう何かされてたみたいだね。アレ……もしかしたら結構厄介な相手かもしれない」
 衝撃が気付けとなったのだろうか、はっとして顔を見合わせる二人。それを見て、やはりつい今しがたまでの様子はおかしかったのだと、既に攻撃をされていたのだと蒼は確信し、懐から取り出した手鏡に物陰の外とケセランパサランの姿を映す。
「しかも、増えてる。早く仕掛けないと不味そうだ」
 そこに見えたのは、猟兵の存在に反応してか、はたまたおしろいを食べたからか、一匹が二匹、二匹が四匹と増殖したケセランパサランたち。
「僕は鏡越しでも弾を当てられる。紅もこれを見ながらなら人形、行けるよね?」
「まっかせてよ! 蒼くんより華麗にやるもんね♪ ティアラちゃんはー……」
「わたしも大丈夫です。わたしが見えていなくたって……フクちゃんがやってくれますから!」
 ティアラは揚々と、数刻前までは煤に塗れて黒くなっていた、今はおしろいによって白化粧を施されたふくろう型ガジェットを示すのだった。
「よし。それじゃあ……先手は取られたけれど、ここから反撃開始だ」
「みんなでふわもほをボッコボコにしよう♪」
「それじゃあフクちゃん、皆さんの幸せのために、いっぱい倒してきてね!」
 物陰から飛び出る三人の声。続くのは銃弾と、操り人形と、ガジェット。白い綿胞子、増えゆく幸せ目掛けて突き進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
――これがケセランパサラン。
一部のRPGでは多量の経験値を持つモンスター。
――倒すと幸せになるというが、さて。

(ザザッ)
SPDを選た……

――浮かんでいるだけだな。
戦意はあるのか、アレは?

アレを見ているとこちらまで
(ウェーブを浴びる)
……なんだかもう
『僕』も勝負とかどうでもよくなってく……

ハッ!?
ぼ、いや『本機』は何を――!!

お、思った以上に厄介な敵と再認識!思考補助AIを再インストールする!


(ザザッ)

――行動規範再インストール完了。

熱線チャージ、照射。
(クイックドロウ+二回攻撃+スナイパー+力溜め+殺気)

ケセランパサラン、難敵だった。ミッション完了、オーヴァ。
(ザザッ)

*アドリブ歓迎


クロヴィス・オリオール
お、よーしよしよし出てきたな。こいつが例の、倒すと幸せが舞い込んでくるっつー………お、おう…また……なんつーか、また攻撃しづれー見た目してンなぁおい……幸運はそう簡単にゃ手に入ンねぇってことか…?

……まぁいい、オレは賭博師だ。どんな相手の勝負だろうがリスクのねぇギャンブルなんて面白くも何ともねぇ。例えそれがモケモケした良くわかんねぇ白い塊だったとしてもだ。
自分の勝ちに、…….あいつを倒して幸運つかんでやるっつー気持ちを失わない方に賭けて、敢えてあの白いモケモケと目を合わしてやらぁ。


あん?
賭けに負けた時のことなンて考えてねぇよ、ギャンブラーってのはそーいう生き物だからな。


ヴィクティム・ウィンターミュート
おーおー、おいでなすった。こいつが幸運をもたらすとかいう奴か?
気が抜けそうな見た目しやがって。
こちとら仕事だからな!容赦も加減もしない。...しっかし、幸運がどうとか眉唾もんじゃねーの?スピリチュアル関係は魔術や超能力なら分かるけど、「幸運」だけじゃ漠然とし過ぎててわかんねーわ。

戦意喪失に寝返りに...こいつの攻撃めんどくせーな。ユーベルコードの障壁使うか。【見切り】で予備動作を察知、【早業】で素早く障壁を展開だ。どの攻撃もトリガーが分かりやすいし、インターセプトも楽だろう。
とにもかくにも、味方が攻撃できる【時間稼ぎ】しねーとな。

幸運の女神は、間抜けな奴には微笑まない。上手くやろうぜ、チューマ



 時間を少し巻き戻そう。後手番となった猟兵たちが最初の一手を放つその少し前に。
 場所も少し変えるのが適当だ。何故なら猟兵たちは境内の中で散開していたわけで、拝殿を望む参道に設置された即席のカバーポイント、大岩に潜む猟兵たちも居るわけで。
 数刻前までそこには機械の黒豹が身を隠していたが……、
《……なんだかもう、僕勝負とかどうでもよくなってきた……。だって彼ら、ふわふわ浮かんでるだけだよ?》
 今居るのは戦意を喪失し、ノイズ交じりに話す一人の少年と、
「ああ……あンな白いモケモケ、攻撃したら可哀想だろ……。はぁ……なンかもう見てるだけで満足するし。勝負事なー……この際ギャンブルからも……」
 戦意どころか色々喪失しかかっている賭博師、
「ビフ……! お前らしっかりしろって! ジャック!おいジャーック!どうしたジューヴみてーになってるぞ! クロヴィスもおま……帰って来ーい!」
 そして二人をこんな状態にしたケセランパサランにスラングを吐き捨て、状況打開の術を模索する工作員だった。
 結局、スピリチュアルな部分を刺激されたのだろう二人に「訳が分からねー……」と黒い鎧に機械化した腕をぶつけ、妖精の身体を指で小突くわけだが、
《ハッ!? ぼ、いや『本機』は何を――!!》
「んァ……!? オレ今何口走ろうとしてたッ!?」
 機械と機械がぶつかる甲高い音と身体を揺する感触はジャガーノートとクロヴィスを復調させることとなる。
《お、思った以上に厄介な敵と再認識! 思考補助AIを再インストールする!》
 ジャガーノートは大岩に全身を隠し、揺るがぬ決定事項のように報告を済ませれば声も、ノイズも、眼に灯った赤まで消して沈黙し、
「攻撃しづれー見た目だとか一瞬でも考えたオレが、」
「間抜けだった、か?」
 クロヴィスが忌々しげに吐き出した言葉を、工作員が引き継ぐ。
「ギャンブラーはポーカーフェイスでシャグキメるもんだろ? 上手くやろうぜ、チューマ」
「……ったく、ガキが一丁前言いやがって。ンなこたァわかってンだよ。まだ勝負は付いちゃいねぇ、次勝って負け分を取り返してやらぁ」
「へへ、その意気だ。……おいジャック、そろそろ行けるだろ」
《――行動規範再インストール完了。敵脅威度上方修正。ああ、いつでも行ける》
「スロット・アンド・ランだ、自慢の熱線を拝ませてくれよ」
《任せろ。牙は研ぎ澄ませた》
 ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)、工作員にして超一流の端役。
 不敵な笑みを浮かべ、黒豹が再起動するまでの時間を寸分の狂い無く使って主役たちの心に戦意を灯し、
「あのナリだ、ロックし甲斐もあるってもんだろ! いくぜ!」
 舞台の幕を上げる。
 大岩に飛び乗り、境内という名の壇上に展開するのは主役たちを引き立たせる小道具。敵性存在から放たれるあらゆる攻撃を阻む障壁プログラム。
《データリンク確認。障壁、疑似視認。感謝する、ヴィム》
 その配置データは瞬く間もなくジャガーノートに送信され、立ち並ぶスクリーンのように彼の視界の中で映し出された。
《本機はこれよりミッションを再開する。オーヴァ》
 ヴィクティムの操作で自在に操られる障壁。それを盾に機械の黒豹が駆け、異形の中でも一際目を引く右の巨碗から熱の咆哮が解き放たれる。
「そっちは要らねぇよな?」
「ったりめェだ。リスクのねぇギャンブルなんて面白くも何ともねぇ」
「頼んだぜ。奴らにとってのエースオブスペーズになってきてくれ」
 一枚のトランプが忍んだ左胸を叩くクロヴィス。彼は自然体……賭博師として、一切の力みなく、白い綿胞子との二度目の勝負に挑むのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

白雨・七彩
あの綿帽子がとても人の子を知れず消し去るような物怪には見えないが、見た目だけで判断するのは早計に失するか。
であれば気を抜かず、この地とこの地の人の子に幸福が訪れるよう存分に励むとしよう。

敵が分裂してくるようであれば弐の舞【炎月】で燃やし
それ以外の行動であれば、壱の式【縛】で動きを一つ拘束する。
縛るだけでは決定打にはならないだろうが…。
なに、多少なりとも他の者が動き易くなる助け位にはなるだろう。

それにしても、降りてくる様はまるで雪のようだったな
放っておいたらひょっとして降り積もったりするんだろうか
それとも風に乗って何処かへ渡って行くんだろうか



(※アドリブ大歓迎です‼︎)


ラニューイ・エタンスラント
さっきのススワタリよりは可愛いわね。少し心苦しいけど、倒さなきゃいけないみたいだから倒すわね。とにかくユーベルコードを使ってケサランパサランを手当たり次第に攻撃するわ……相手のユーベルコードをガンガン使わせたら、その分幸せがいっぱいになるのかしら?アドリブ等は大歓迎よ。



 そして時間は現在に戻る。
 場所はといえば、拝殿の正面。猟兵とオブリビオンによる戦闘の中心地。
「にしても、降りてくる様はまるで雪のようだったな。放っておいたら、ひょっとして降り積もったりしたのだろうか」
「放っておかなくても、……! 積もりそうだけれどね。この分幸せがいっぱいになるというのならいいのだけれど」
 ぽこぽこと数を増やし続ける、今は数多となったケセランパサラン。放たれる攻撃もまた、数多。宙を舞い飛ぶ式神と綿胞子を散らす掌底も、そのバラエティを豊かにする攻撃の一つ一つ。
「気を抜かず励むしかあるまいか」
 七彩の放つ式神がケセランパサランを、そのふわりふわりと宙を漂う動きを空間に固定するように縛り付け、
「最初は少し心苦しい気もしたけれど、この増えようだもの。放……ッて!」
 ラニューイの掌底がその衝撃で以って綿胞子を内から爆ぜさせる。
 次の標的を探すついでに視線を巡らせてみれば徐々に、粉雪が街路を染めるような緩慢さではあるが、視界内を漂う白はその面積を増やしていて。
「……おいたら、積もるどころか埋まりそうな気さえしてきたわ、私たちが」
「見た目だけで判断するのは早計に失するというものよな」
「違いないわね。まぁ、さっきのススワタリよりは……」
 ――可愛いと思うけれど。
 ふと、綿胞子によってラニューイの胸に浮かんだ一つの感情。
 しかしそれを言葉にする時間は、
「危ない」
 彼女が視界の端に捉えた一筋の光線、七彩へ向かうその波動を阻むために消費される。
 掌底ではなく、仲間の身体を突き飛ばすために延ばした腕を、ケセランパサランの光線が掠めていった。
 二つ三つと踏鞴を踏み、金の毛並みの尾を波打たせる七彩。彼の目に映ったのは、
「……っ。すまない、怪我は……、」
 怪我どころか、ドレスの袖すら傷一つ無いものの、
「……ラニューイ?」
 綿胞子を背にし、紫の瞳に妖狐を映す聖者の姿だった。


「或いは……このようにして従え、連れ去る事が人の子を消し去るなどという伝承になったのかも知れぬな」
 掌底に撃ち落された式神はさて、何体目だろうか。光線を放ったケセランパサランを縛ればラニューイを開放できるのでは、そんな推測による七彩の行動はしかし、ラニューイの掌によってその全てを阻まれていた。
「他に手は無し、か。……すまない」
 であれば、阻む掌をこそ縛らねばならない。人の子を守るためにと、七夜は式神をラニューイへと差し向ける。一つを片腕で落とされるなら二つ。二つを両の腕に払われるなら四つ。四つを四肢で振りほどかれるなら、五つ。ついにはラニューイの五体に式神が辿り着く。
 手剣で描くは五芒の星。一筆書きの、桔梗の花。
 一際強く妖力を籠めれば、ラニューイの身体から力が抜け、
「……はぁ、はぁ……ごめんなさい、手間をかけたわね」
 綿胞子を守らねばならないという衝動もまた、抜けていた。
「気にすることはない。元はといえば俺の不手際だ。……加減はしたつもりなのだが、まだ戦えるか?」
「当然。手当たり次第……いいえ、掌当たり次第に行くわよ」
 駆け寄る七彩を片手で制し、両の足に力を籠めて立ち上がるラニューイ。
 琥珀と紫、二組の瞳は揃って漂う白を映していた。
「……ユーベルコード、リベレイション」
 風を切る掌。
「オーヴァードライブ」
 触れたケセランパサランの内側からは四方にエネルギーが広がり、
「――ブラッドクロス!」
 周囲の綿胞子を諸共に霧散させる、血の十字架を生み出す。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

作図・未来
よし、煤払いは上手くいったようだね
あとはケセランパサランを倒すだけだ。皆で幸せを掴み取ろう

相手は攻撃を喰らわないことに特化しているみたいだね……
なんとか、無防備になるチャンスを作れないだろうか

よし、ここは模倣の舞踏で相殺を狙ってみよう
この地には過去にもケセランパサランないしそれに準ずる何かはいただろうからね。有効な霊は召喚できそうだ

庇わせる光線が一番厄介だろうか。あれを上手く止めたいね
そうなるとこちらの呼び出した霊も可愛さで戦うことになるが……
どうだろう、できるだろうか?
なら、相手を上回る可愛さを見せてあげてくれ!

……これ、役には立ってるんだろうけど、絵的には戦ってるのかわからなくなりそうだね


四樫・マコル
【アドリブ歓迎】
お~!!これが幸せのケセランパサラン!!
モッコモコっすね!
そしてこれを倒せば倒すほどあたしたちは幸せになれるんすね!
幸せを掴み取るっすよ!!

【SPD】
いっぱい倒すためにはあたしだけじゃ手が足りないっす!
だから仲間を呼ぶっす!
ユーベルコード『七匹の仔山羊』を発動して仔山羊たちを召喚するっす!
これで数はあたし含めて8!
ガンガン見つけてガンガン倒していくっすよー!
ウェーブも回避するか、仔山羊をぶつけておくっす!


露霧・霞
掃除が終わったと思ったら、今度は本命がやってきたッスね!
そういやケサランパサランを倒すと、その地に幸せが……って言ってたッスけど、あたしたちにもご利益とかあるものッスかね?

ススワタリもそうだったッスけど、なんかこうフワフワしてて刃じゃ斬りにくそうッスよねぇ
結局さっきと同じように、凍らせてから斬るしかないッスかねー……さっきと違って、汚れない分いいッスけど
あー、それにしても幸せってこう……具体的にどんなのッスかね
身長がぐんぐん伸びるー! とか、ぼんきゅっぼんのナイスバディに成長ー! とかみたいなわかりやすいのだったらいいッスけど、そんなに効能あるものッスかね?

アドリブ可、他の人との絡みも歓迎ッス



 可愛さに当てられた……いや、当てられている者たちは他にも居た。
「ケセランパサラン、モッコモコっすよー。あー……なんて可愛いんすかねー……」
「こっちのタヌキだって負けてないッスよ。毛並みがフワフワで……おーよしよし……」
 マコルと霞。二人の少女は二つの可愛いに挟まれていた。
 一つは白い綿胞子、ケセランパサラン。
 そしてもう一つは赤い衣を纏った三匹の仔狸、名を赤殿中。愛くるしい見た目で人前に現れ、つぶらな瞳でおんぶをねだる歴とした妖怪だ。
 「…………これ、役には立ってるんだろうけど、絵的には戦ってるのかわからなくなりそうだね……」
 この場に居るはずの無い新たなる妖怪。それを喚び出した未来が、頭を抱える代わりに帽子のつばを軽く撫でた。
 「も、も言う一息……だと思うんだ。何とか相手を上回る可愛さを見せてあげてくれ……! この際少しくらい強引でも……っ」
 彼の呼びかけが通じたのか、或は少女たちが気を許したからか、赤殿中は短い足でとことこと走り、マコルと霞の背におぶさる。更にそれだけには飽きたらず、柔かな毛並みが生え揃う前足二人の肩を優しく叩くではないか。それはまるで孫が祖母の肩を……失敬、未だ十台の少女たちに使う喩えとしては不適切極まりないものであった。
 ――とにかく。その優しい感触は、そして暖かな光景は、
「もう、もうタヌキの勝ちっす……」
「なんなんスか、この可愛らしいあんよは……」
「「はっ!?」」
 少女と綿胞子たちに『赤殿中が可愛い』という感情を抱かせるには余りある物で、
「……おかえり、二人とも。気に入ってもらえたなら……うん、よかった。本当に」
 正気に戻ったマコルと霞を前にして、気を緩めるように未来は長く息を吐き出す。目の前の光景も、それはもう緩々だった。
「この後もその子たちが二人を守ってくれるはずだ。ケセランパサラン退治、本番と行こう」
「任されたっす! さぁさぁお前たち!」
 マコルの呼びかけに応え、どこからともなく現れるのは仔山羊型の七体のガジェット。
「これで数はあたし含めて八! 未来くんと霞さんを入れて十人力っすよ! 敵の足止めは任せて欲しいっす!」
「あたしだって負けないッスよー! ススワタリと違って汚れなさそうッスからね、思う存分こいつを振るえるってもんッス!」
 霞は演武のように薙刀を振り、回し、刀身から放たれる冷気で周囲をきらきらと輝かせる。
 それを瞳に映した赤殿中たちがはしゃぐように二人の肩をとんとんと叩き、
「それにこの子たちもいるッスから!」
 それに気を良くした少女たちは揃って笑顔爛漫。
「「ねー!」」
 顔を見合わせ笑い合い、
「それじゃあ、幸せを掴み取りに行くっすよ! あたしの新しいお宝ーっ!!」
 マコル声高らかにケセランパサランたちへガジェットを差し向け、眩い閃光や猛烈な突進で動きを妨げていく。
「身長ぐんぐんー! ぼんきゅっぼんのナイスバディー!!」
 そこへ霞が意気揚々と薙刀を閃かせ、凍り付いた綿胞子を両断していった。
 拝殿前、可愛いを背に緩々とした空気を広げ続ける少女たち。
「……僕らも行こうか」
 少年は足元に一匹残った仔狸を抱きかかえ、背におぶる。
「………………かわいい」
 繰り広げられる戦闘の最中。誰が見て居るわけでもないが、気恥ずかしそうに帽子を目深にかぶり直すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
マリアはもじゃもじゃしてるのは好きじゃないから、あんまり可愛いとは思えないんだけど……倒すと幸せにしてくれるなんて、不思議な生き物ね。
神様からの贈り物みたい。

きっと、あなた達は、望んで倒されてるわけじゃないのよね?
じゃないと身を護る事もない筈だもの。
でも、オブリビオンに倒されちゃったら、きっと良くないことが起こるから……マリアはあなた達を倒して、幸せを呼ぶわ。
だから、ごめんなさい。マリアは聖者だけど、あなた達は救え……ううん、救わ、ない。

せめて痛くないように、光の速さで眠らせるわ。
数が増えても、何をしてきても、関係ない。
あなた達の犠牲の分だけ、この世界に幸せを、「祈り」を込めて……『光あれ』


浅葱・シアラ
ひう……今度はケセランパサラン……幸福を呼ぶ妖怪だって呼ばれてるけれど……ごめんね、お掃除しなきゃ……
せめて綺麗にしてあげるから、ね……!


使用するユーベルコードは「神薙胡蝶蘭」
鉄塊剣を白い胡蝶蘭の花弁に変えて、花弁の刃を嵐に乗せて
そのままケセランパサランへと放つよ

技能【属性攻撃】で風属性を、【全力魔法】で魔法そのものの威力を引き上げて、【高速詠唱】で速く、何度も何度も胡蝶蘭の嵐を放っていくよ

ねえ、ケセランパサランさん……
もし、散ってしまうのだとしても、その間際に、この声、聞こえててほしいな……
「胡蝶蘭の花言葉は『幸せが飛んでくる』
白い胡蝶蘭はまるであなたたちみたいだね―――」


レイラ・エインズワース
ワァ、なんて幻想的な景色
モコモコふわふわの見た目に、綺麗な光
デモ、あれもヒトを消しちゃう過去の夢ナラ
ここで綺麗に祓わないとネ

角灯を揺らして、朗々と歌い上げる詩は呪文の【高速詠唱】
あまり、こういう場所には似合わない魔法だケド
私にはこういうコトしかできないから
仕方ないヨネ
【全力】の魔力をこめた槍の雨は
【呪詛】はこめず逆にそれを浄化するように持って行かせネ

どうせナラ、みんなに幸せになってほしいカラ
私にできるお手伝い、させてほしいナ

アドリブも絡みも大歓迎ダヨ
好きにかいてもらえたら、嬉しいナ



 ――ワァ、なんて幻想的な景色。
 ……ヤドリガミの少女がそんな感慨を抱いてからどれくらいの時間が経っただろうか。
 レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)は増え続けるケセランパサランを相手に魔力の槍を放ち、時には長杖を振るい、一つ、また一つと綿胞子を霧散させていた。
「ひう……倒しても倒しても、どんどん増えてる……!」
 シアラも身の丈ほどある剣を振り上げ、その重さを存分に活かして綿胞子を両断する。
 シアラ剣にあしらわれた胡蝶の光、レイラの杖に提げられた角灯が放つ明り。揺れ動き、交差し、離れ……二つの紫は持ち主の苦労を他所に境内を幻想的に照らしていた。
「アハハハ……参ったネ、きりがないヨ。モコモコふわふわなのは良いんだけどナー」
「マリアはもじゃもじゃしてるのは好きじゃないから、あんまり可愛いとは思えないんだけど」
 つるりとした、両生類や爬虫類の方が良い――そんな事を頭の片隅に浮かべながら、アヴァロマリアは光で形作られた剣を綿胞子舞う宙空に煌めかせる。
「……でも、不思議な生き物ね。倒すと幸せにしてくれるなんて、神様からの贈り物みたい」
 見た目こそ彼女の趣味嗜好に合うものではなかったが、しかしその存在については思う所もある。
「幸福を呼ぶ妖怪、だもんね……」
 それは多かれ少なかれシアラにも、
「そうだね」
 レイラにもあって。
「……それに、ヒトを消しちゃう過去の夢でもある。ここで綺麗に祓わないと、」
 みんなに幸せになってほしい、みんなを守りたい。その気持ちもきっと三人が共有するものだろう。
 ――ネ?
 だからレイラは微笑んで、手に負えるうちにこの戦いを終わらせようと二人を促す。
 大きなつばを持つとんがり帽子と、緑と赤の瞳を携えた相貌。二つは静かな頷きを以ってその意志を角灯のヤドリガミに示すのだった。
 少女たちが綿胞子に捧げるのは二つの詠唱と一つの祈り。三つの、思い。
 ――どうせナラ、みんなに幸せになってほしいカラ。私にできるお手伝い、させてほしいナ
 ――もし、散ってしまうのだとしても、その間際に、この声、聞こえててほしいな……。
 ――ごめんなさい。マリアは聖者だけど、貴方たちは救え……ううん、救わ、ない。
 思いはケセランパサランたちに届いただろうか。
 ……或いは、拝殿を通じて聞き届けた存在が居たかもしれない。少女たちの背を押す存在が居たかもしれない。三人の背に穏やかな追い風が吹いたのは、偶然ではないのかもしれない。
 冥府に誘う送り火を纏い、百を超える槍が降り注ぐ。
 剣は解けるように胡蝶蘭の花弁に形を変え、風に乗って境内を行き交い、
「せめて痛くないように、光の速さで眠らせるわ」
 聖者はその身を輝きそのものへと転じ、溢れんばかりの眩さを解き放って幾筋もの光の軌跡を描くのだった。
 後に残るのは送り火と聖者の光。混ざり合って淡藤色。
「……胡蝶蘭の花言葉は、『幸せが飛んでくる』」
 舞い散るのは、
「白い胡蝶蘭は、まるであなたたちみたいだね――」
 この地に幸せが訪れた事を知らせる、白い便り。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『神社仏閣での祈祷』

POW   :    情熱をこめて祈願する。

SPD   :    礼節を重んじて祈祷する。

WIZ   :    心のそこから祈願する。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちが戦いの後始末を終える事には神社には参拝客が数多く訪れていた。
 拝殿から響く鈴の音も、賽銭箱の中で小銭同士が触れあう澄んだ音もひっきりなしに響いている。

 ケセランパサランの出現。そしてそれが数えきれないほど倒されたという情報は瞬く間にこの地の人々に伝わり、境内を賑わせる事となったのだ。
 その活気はこの地で幸福の伝承が根強く信じられている事の証明であり、それを猟兵たちへ伝えるものでもある。

 彼らに倣って参拝し、それぞれが望む幸せを祈ってみるのもいいだろう。
 神社ならではの楽しみに興じる事も出来るし、穏やかな時間を過ごすことも出来る。
 猟兵たちが呼び込んだのは幸せだけではないのだから。
 例え幸せの存在が不確かに思えても、境内に溢れる賑わいは紛れもなく猟兵たちが呼び込んだものなのだから。
アロンソ・ピノ
ケサランパサランとの闘い中は……すまんかったな…風邪引きそうだったし替えの服も無かったから身体乾かしていたら終わってたべ……
だから今回は真面目にお祈りするだ!半裸だが!
情熱を込めてお祈りするべ!お祈りのやり方は良く分からんから見よう見まねだがな!
声は出さないように、かつ情熱を込める為にも小銭を全力投球だ!
後はもし上着の替えが見つかったら探すくらいか…?他の猟兵を労いつつな。
幸福ってのは結局、自分が幸福だと思えているかどうかだ。オレは少なくとも今は幸福だと思うし、幸福になろうと努力もする。だから神様は、出来る範囲で見守っていてくれ。ってな具合だな。祈る内容としては。


レイラ・エインズワース
神社で参拝、なんて
そういうのがあるのは知ってたケド、
自分が来ることになるとは思わなかったヨ
でも、せっかくならいってみても罰は当たらないヨネ

神社に並んでお参りを
作法は調べてきたカラ、なんとカ……!
手を合わせて願うのハ、周りのヒトたちの幸せ
所有者を悉く不幸にしてきた曰くつきの品物デモ
せめて、このくらいのお願い事は、してもいいヨネ
許されるヨネ
どうかどうか、大事な周りのみんなが末永く幸せであるヨウニ
どこからデモ、無事に帰ってこれるヨウニ

お参りをした後はおみくじでもひいて行ってみようカナ
せっかくだカラ、何が出るかは神頼み
書かれてるコト、しっかり心に刻んでおきたいナ

絡みとアドリブは歓迎ダヨ
好きに動かしてネ


作図・未来
うん、この境内の活気を見ると、今回の依頼は大成功という感じがするね。本当によかった。
さて、願いが叶うということだったね。折角だし僕も何か願ってみようか。

さて、どんな願い事にするか。
そうだね、天命座君を守れるような力が欲しい……いや、これは違うな。
願うのではなく、自分自身の積み上げた力で守れるようにならないと。

でも、そうだね。
天命座君ともっと仲良くなりたいなって願うくらいは……考えてもいいよね。

さて、残りの時間はゆったりと境内を回ることにしようか。
うん、こういった平和な時間は大切にしたい。
戦いの先にこういった幸せな景色があるということを覚えておけば、戦う力も沸いてくるからね。

※アドリブ、絡み歓迎



 拝殿へ続く参拝客の列は時間の経過と共に少しずつ増しているように見える。最前列の顔ぶれは目まぐるしく入れ替わっているが、それでも人によって、願うものによって、祈る時間はまちまちで。
 せめてお祈りを終えた後は円滑に場所を空けようと、足早に列を離れてくる者たちが居た。
「フー……。大丈夫だったカナ?」
「わからねぇ……未来のを見様見真似でやってみたけどよ」
「そんなにおかしな所はなかった……と思うよ、うん。ピノ君、随分気合入れていたみたいだしきっと届くと思う」
 レイラ、アロンソ、未来の三名が談笑しながら、拝殿を背にして歩いている
「あれは気合というか、情熱というか。作法がよく分からなかったからな、せめて気持ちだけでも。あと小銭も」
「アハハハ、確かにジャラジャラすごかったもんネ。たっぷり情熱を籠めて、何をお願いしたノ?」
「出来る範囲で見守っていてくれ……ってな具合だな。神様に。オレは少なくとも今は幸福だと思うし、そのための努力もするし。だから具体的な何かは他の人に回してくれ、みたいな……? レイラは?」
「私はネ、んー……周りのヒトたちの幸せ、カナ。戦いに赴く事もやっぱりあるカラ、無事に帰ってこれますヨウニ、とかも」
 思い思いの願った事を語り合うアロンソとレイラ。その表情はどこか穏やかで、『他の人』や『周りのヒト』を想うようで。
「素敵なお願い事だね。……うん、周りの人には幸せでいて欲しい。僕もそう思うよ」
「そういう未来はなんてお願いしたんだ?」
「僕かい? 僕のは……二人の後だと少しスケールが小さくなってしまうかもしれないけれど、……て……あー……ある人と、もっと仲良くなりたいな、って……うん、そういうの」
 生来の口下手もあってか、或は言葉を選びながら故か、未来は気恥ずかしそうにしながら、それでも問われれば願い事の内容を口にした。
「女か? 相手は女か? 女だよな?」
「いや、それはだね……別にそういうのではなく……ただ、その、守りたい、……と僕が思っている人というか……」
 愉快そうに更なる問いかけをアロンソが飛ばせば、未来も答えに窮してしまう。
「……そうダ。私おみくじ引いてみたいんだケド、いいカナ? あとピノサンも服も一緒に探さナイ?」
「……そういやそうだべ! レイラのカンテラで寒いの和らいでて忘れるところだった!」
 そんな男二人を微笑ましそうに眺めていたレイラ。ふと思いついて提案すれば、未だ服が乾ききっていないため半裸であったアロンソが力強く頷く。
「じゃあ行先は社務所かな。僕も少し散策しようと思ってたんだ、付き合うよ。……こういった平和な時間は大切にしたいからね」
 訪れた……否、呼び込んだハッピーエンドの光景。愛おしむように細めた目を境内に向け、未来が歩き出す。
 程なくして辿り着いた社務所にてアロンソは幸運にも余っていた法被と半纏を、神社からの礼も兼て受け取る事となった。
 レイラはといえば目当てのおみくじ、選び取った一枚を広げ、内容を丁寧に視線でなぞっている。
「ヤッタ、中吉。どれどれ……?」
 ○願望 他人を助けよ 人の助けありて叶う。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宮前・紅
【Da capo al finЁ】
はああ、疲れたぁ~ふわもほが見れたのは良かったけど、結構大変だったね?

あ、参拝出来るみたいだよ蒼くん!
【SPD】で判定
(蒼くんが俺に優しくなりますように、あと、蒼くんの身長がこれ以上伸びませんように、蒼くんの服装がかっちりしてて触り心地が固くって最悪なのでふわふわな服装に変えてくれますように、あと蒼くんが俺の料理(蛍光色)を食べてくれないのでどうにかして下さい!)
……よし!お願いしたよ♪
蒼くんは何をお願いしたのかな♪
え?俺が失礼なことお願いしてないかって?そんなことないよ!ていうか、そんな風に疑う方が失礼だよ!うわーん(嘘泣き)!!!
ちゃんと礼節は守ってるよ♪


戎崎・蒼
【Da capo al finЁ】で参加。
どうにかこうにか、ケセランパサランを倒せてよかったよ。……僕も魅了される前に撃破出来たから安心、かな。

【SPD】で判定
何も願い事がない訳じゃないし、せっかくだから祈願しようかな。
(最近不発弾とかに当たっちゃうことが多いから、特に弾込め式の銃ではそういう事が起きないように、………あとは紅のひねくれた所が直りますように)
いや、素直な紅もなんか気持ち悪いか………?
(えーっと………取り敢えず無茶振りとか変な要求、変な食べ物を食べたくはないから、どうにかして下さい、お願いします………!)
…うん、こんなもんかな。
はぁ…本当に祈祷でどうにかなったら苦労しないんだけど



「(蒼くんが俺に優しくなりますようにあと蒼くんの身長がこれ以上伸びませんように蒼くんの服装がかっちりしてて触り心地が固くって最悪なのでふわふわな服装に変えてくれますようにあと蒼くんが俺の料理を食べてくれないのでどうにかして下さい!)」
 それは一息に願われた想い。流れ星相手にするように、彼の戦場での振る舞いのように軽妙な祈念。
「よし!」
 一仕事終えたとばかりに紅は満足げな笑顔を浮かべ、隣の蒼を見やる。
 ……が、彼は未だ手を合わせ瞼を閉じ、願い事の真っ最中。
「(最近不発弾とかに当たっちゃうことが多いから、特に弾込め式の銃ではそういう事が起きませんように)」
「俺はお願いしたよ蒼くん♪」
「(……あとは紅のひねくれた所が直りますように)」
「蒼くーん? おーい」
「(いや、素直な紅もなんか気持ち悪いか………?)」
「ねーねー、俺終ったよー?」
「(えーっと………取り敢えず無茶振りとか変な要求、変な食べ物を食べたくはないから、……蛍光色の料理は本当に、命の危険を覚えるから……どうにかして下さい、お願いします……!)」
 一つ一つを丁寧に。遠間の標的に狙いを定め、そっと引き金を引くように、蒼は願い事を重ね、瞼を開ける。
「……うん、こんなもんかな」
 最後に一度念を押すように拝殿を見上げちらと隣を確認すれば、相棒が唇を尖らせていた。
「もー、後ろつっかえてるよ蒼くん!」
「半分くらい紅のせいなんだけれどね」
「えぇー!? どういうことさそれー!?」
 お待たせしましたと軽く頭を下げ、蒼は唇の鋭さを増した紅を引っ張って拝殿から離れていく。
「……で? で? 蒼くんは何をお願いしたのかな♪」
 道すがら、話題になるのはやはり願い事。僅かな距離の移動であったが冬の涼やかな空気が気を落ち着けたか、それとも気分がころりと変わったか、紅は軽快に疑問を飛ばした。
「さっき言ったとおりだよ」
「さっき? ……俺何にも聞いてないんだけど!」
 蒼の言葉に、またころり。何か聞き逃しただろうかと、慌ててここ数分の記憶を掘り起こしている。
「いや、だからさ……、……まあいいや。銃の事とかちょっとね。そういう紅の方はどうなんだよ。何か失礼なこと願ってないだろうね」
「そんなことないよ! ていうか、そんな風に疑う方が失礼だよ! 蒼くんちっとも優しくなってなーい! うわーん!!!」
 黒から白。雨のち晴れ。様々に様相を変えた今日の神社のように、紅の機嫌も目まぐるしく変わっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅葱・シアラ
これでおしまい……えへ……後は神社でお祈り、していこうね……
ケセランパサランさんの犠牲の上に立ってる幸せ、って思うと、ちょっと複雑だけど……えへ……きっと、皆の幸せ、祈っててくれるよね……


【WIZ】で判定
シアもお祈りする……!
この世界は、色んな世界がまだまだオブリビオンに脅かされてる……だから、シアのお願いは「皆が笑って暮らせる世界になってほしい」
声に出さず、態度に出さず、ただひたすらに、心からお祈りするね……

気が付けば「紫光蝶」を知らず知らずのうちに発動しちゃってたみたいで……
周りには紫色に光る蝶々さん達

えへ……蝶々さんたちも、一緒に祈ってくれるよね……


四樫・マコル
【アドリブ歓迎】

あ~フワフワ気持ちよかったっす。
全部倒しちゃうのはちょっと名残惜しい気もするっすが
まぁ、幸せのためには犠牲は必要っすよね。
【POW】

それで最後は神社で参拝っすか!
やり方ってどうやるんっすっけ?全然思い出せないっす?
まぁ、あたしらしくやれば大丈夫っすよね!
(手をパンパンして一礼する)
「新しいお宝を発見できそうなダンジョンが見つかりますよーに!」
「あと、全ての世界が面白おかしく自由に過ごせますよーにっす!」
はぁ~!馴れないことすると肩が凝るっすねー!
マコルちゃんは先に一抜けっす~!


アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
すごい賑やかさね……あの子達のご利益、もう発揮されてるのかしら?
神社って、神様が住んでいるのよね? なら、マリアもお祈りしていくわ。

この世界にもっと幸せが溢れますように。
それともし良かったら、ほんの少しでも、他の世界にも幸せが届きますように。
神様が此処にいるなら、お願いします。
マリアは聖者だから、いつかきっと全ての世界を救うけれど、
今はまだマリアの手は遠くまで届かないし、マリアの光も遠くまでは照らせない。
だから、お願いします。
マリアがもっと聖者として強く、大きくなって、世界を救える日まで、手伝って。

そうしたら、神様。マリアは、きっとあなたにも救いと幸せを届けてみせるわ。


白雨・七彩
【WIZ】
こうして人の子達の活気溢れる様子を見ているとつられて嬉しくなってしまうな。
本当に、皆それぞれに良い顔をしている。

参拝祈願は今までは見守る側だったのでな。
折角の機会だ。俺も参列させてもらおう。

…これはまた、祈願する側になると意外と緊張するものだな。
つい勢いに任せて参列しまったが、何を願おうか肝心の内容を考えていなかったな。
年甲斐も無く大分浮かれていたようだ。

うん……そうだな…。願わくば来年もケセランパサラン達が
この地を訪れるようにと願っておこうか。



 参拝客の列の中、足並みを揃えてゆっくりと進んでいく四人の猟兵の姿があった。
「すごい賑やかさね……あの子達のご利益、もう発揮されてるのかしら?」
「こうして人の子達の活気溢れる様子を見ているとつられて嬉しくなってしまうな」
 前後は勿論、参拝を終えた人々が折り返してくることで左右までも賑やかさと活気に溢れ。そんな光景をアヴァロマリアは三角帽子の奥から観察するように、七彩は目を細めて見守っている。帽子のつばで、或は変化の乏しい表情で隠れ気味ではあるが、しかし二人とも心穏やかなのだろうことを声音が伝えている。
「えへ……みんな嬉しそう。……でも、ケセランパサランさんの犠牲の上に立ってる幸せ、って思うと……」
 幸福が訪れる事を知った人々と、幸福を呼び込んだ者たち。今こうして立つ場所は同じであっても、湧き出す感慨は異なる。
 己が為したことを思い、シアラは眉尻を下げ、困ったような笑みを浮かべた。
「うーん。まぁ、幸せのためには犠牲も必要ってことっスかね。相手がオブリビオンだったってのもあるっすけど」
 ――全部倒しちゃったのはちょっと名残惜しかった気もするっすが。
 心地よいフワフワの感触を、愛らしい外見を思い出して語るマコル。溢れない程度に延々と倒し続けたらどれ程の幸せが訪れるのだろうか、そんな興味も目に見える幸運を探して日夜ダンジョンをひた走る彼女にはあったり、なかったり。
「今はまだマリアの手は遠くまで届かないし、マリアの光も遠くまでは照らせない」
 そ、と帽子のつばを指で引いてマリアは一層表情を隠す。
「だからこれで沢山の人が幸せになれるのなら、……マリアは救わない事も選ぶわ」
 それは自分の事を、自分が為したい事をきちんと見ている故の言葉なのかもしれない。だからこそ、自分なりの手段で身を守った、決して望んで倒されるわけではなかった彼らを犠牲にしてでも、彼女はこの地の幸福を選び取った。
「あたしらはあたしららしくやるしかないっすよ。ケセランパサランもほら……『折角俺たちを倒して得た幸せなんだからちゃんと受け取れー』、なんて言うかも知れないっすし」
「そう、だね。ちょっと複雑だけど……えへ……きっと、皆の幸せ、ケセランパサランさんも祈っててくれるよね」
 想像をふんだんに交え、イメージで声真似さえしてみるマコル。彼女の剽軽な振る舞いにシアラの表情も笑顔となって、空気が和らいでいく。
 思い思いに語り、行動と結果を飲み込もうとする少女たち。それを見て妖狐は何を思うだろうか。ただ、見守る視線は穏やかで、一先ずの纏まりを見た様子に口を開く。
「……話していると存外早いものだな。つい勢いに任せて参列しまったが、さて何を願ったものか」
 気付けば列の最前はすぐそこ。参拝に向けて彼女たちの心持ちを変えるように、少し大げさに言って考える七彩。顎に指を添える姿は、童そのものの外見に反して老成円熟の翁を髣髴とさせていた。
「七彩さんまだ決めてなかったんすか? 早くしないと……あ、お賽銭準備しないとっす!」
 楽しげに財布を開くマコル、
「シアはもう決まってるよ……!」
 シアラは明るい笑顔で翅をはためかせ、
「マリアもお願い事、ちゃんと考えました」
 真剣そうに頷くマリアもピンクダイアの瞳を輝かせている。
 三人が浮かべる、あどけない、それぞれの良い顔。
「皆準備がいいな。参拝祈願、俺は今までは見守る側だったのでな……。……そうだな、よし」
 七彩が嬉しさを覚えてしまうものは、そこかしこにあった。
 程なくして、がらんがらんと鈴の音。少し間を置いて、二度手を叩く音。
 トレジャーハンターに蝶翅の妖精、御使、そして聖者の祈りが静かに紡がれる。
 ――新しいお宝を発見できそうなダンジョンが見つかりますよーに! あと、全ての世界が面白おかしく……、
 ――……皆が笑って暮らせる世界になりますように。
 ――願わくば来年も、ケセランパサラン達が……幸せが、この地に訪れるように。
 ――……もし良かったら、ほんの少しでも、他の世界にも幸せが届きますように。
 いつしかそこには、藤の花を思わせる紫の蝶が静かに舞っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
おーおー、こりゃすげーな。ケサランパサラン倒しただけでこんなに人が集まるかね。エンパイアじゃ、結構神頼みって一般的なのかねぇ...
...ご利益だの何だの、スピリチュアルなことはよくわかんねーけど...まぁ、郷に入っては郷に従え、か。
参拝くらいはしてもいいか。

正直作法とか全然わかんねーし、とわを頼るか。...あー、でもアイツ、この前のこと根に持ってドヤ顔でマウント取って来たりとか..んー、まあそりゃいいわ。どんな態度でも俺は気にしない。どの道教えは乞う方が良さそうだし、本職陰陽師なら丁寧に教えてくれるだろうさ。

あー、んー...何を願おうかな。
あー、そうだ。

主役どもが今後も健勝でいますように


ラニューイ・エタンスラント
さて、お参り、お参り……どうしたらいいのかしら?ちょっとよくわからないわね……徒梅木・とわさん、だったかしら?教えてくれると、嬉しいわ?■アドリブ大歓迎です。



「……で、最後は柄杓を立てて、残りの水で柄を清めて……そう、そうだ。上手だよ、二人とも。手水はこれでお終い」
 こんこんと清水が湧きでる手水舎ではグリモア猟兵が参拝作法を教えている最中だった。
「なんというか、ややこしいのな。ざぶざぶ手を洗うんじゃだめなのか」
 とわの手順を真似て手水を終えたヴィクティムが柄杓を元あった場所に戻す。形式の塊のような工程にこの時点で疲労感を覚えたか、肩をぐるりと回している。
「簡略化されているとはいえ儀式は儀式、……よね? 郷に入ってはなんとやら、こういうものと思いましょう」
 ラニューイもとわから作法を教わっていた一人。ぎこちないながらも手と口を洗い清め、涼しい顔でさらりとヴィクティムを諭す。
「オーケーオーケー。教えを乞いといてそれに習わねぇことはねぇよ。効率的な手順を考えちまうのは何つーか、習慣とか習性みてぇなもんだ」
「くふふ、今日の所はそれでいいんじゃあないかな。話しだすと長いからね。興味があるなら今度ゆっくり教えてあげよう」
「それも楽しそうね。もしまた神社に来ることがあれば役に立つかもしれないし」
 じゃあ次に行こうか。言ってとわは先導するように歩き出す。残った水分を肌に馴染ませるように、手指を摩りながらラニューイが続き、ヴィクティムは機械の掌を清潔な布で拭ってラニューイに歩幅を合わせた。
「……しっかしすげー人の集まり方だな。エンパイアじゃ結構神頼みって一般的なのかねぇ」
「のようね。信仰というのは。……こういう信仰というのは、好ましいものじゃない」
 行き交う人々をしげしげと眺めるヴィクティム。彼の網膜には神社は勿論のこと、こうして参拝のために人が集まるという事すら新鮮に映っている。
 応じるラニューイは人々の笑顔と活気にこそ新鮮さを感じていた。
 聖者である彼女には――聖者であったが故に幽閉されていた過去を持つ彼女には――聖なるもの、場所にこうして人が集う姿にどこか安堵も覚えて。
「信仰だのご利益だの、スピリチュアルなことはよくわかんねー。俺リアリスト寄りだからな」
「あら、それなら出店で食べ歩きでもする方が好みなんじゃないかしら?」
「さっき言ってたろ。郷に入っては何とやら、ってやつだよ。別に気持ちまで分からねぇって訳じゃねぇし」
 語らいながら進む二人。その進行方向ではとわが立ち止まり、笑顔で白い尾を揺らしていた。
「関心関心。その地の人々の行いや考え方、文化というものに触れてみるというのは、中々どうして楽しいものだろう? さ、それじゃあ参拝の説明を始めていくよ。神様に願いを聞いて貰えるようにしっかり覚えようじゃあないか」
「……あ。ごめんなさい、作法に興味が行ってしまって願い事の方を忘れていたわ」
 すぐに考えるわね。そう言ってラニューイは思案を始める。
「別にいいさ、ゆっくり考えてくれ給えよ。ヴィクティム、キミの方は?」
 彼女を待つ間とわはヴィクティムへと向き直って。
「ああ、考えてあるよ。主役どもが今後も健勝でいますように、ってな」
 秘する事も無く、当たり前のように言ってみせるヴィクティム。何故ならそれは常日頃から彼が取るスタンスの延長でしかなく、
「呆れた。相変わらずだね、キミってやつは。端役と言ったってこういう時くらい自分の事を願ってもばちは当たらないだろうに」
 ――だからこそ、口にした言葉とは裏腹にとわが感じたのは、強く押し出された彼らしさであった。
「待たせたわね、いいわよ」
「ん。じゃあね、二拝二拍手一拝と言うのだけれど……あの並びの最前列まで進んだら――」
 ラニューイが思案の時を終えて願い事を携えれば、作法の……この地の文化の教示が再び始まる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティアラ・パリュール
ふぅ、ケセランパサラン……恐ろしい相手でした。
えへへ、でもこれでご利益がいっぱいです!

まずはお参りをすませてしまいます。
『世界が平和でありますように』
フクちゃんは、なにをお願いするの?
でも、幸せ……幸せって、なんでしょうね?
わたし自身は、もともと幸せなのかもしれません。

それから、たこ焼きの屋台があったので、ちょっと買ってきました。
この前知り合った方に、教えて頂いたんですよ。
これを食べて、少しのんびりしていきましょう。

そうしてたこやきを食べながら、人でいっぱいの景色を眺めています。
たこ焼きは美味しいし、皆さんに喜んで頂けましたし……これが『幸せ』かもしれませんね!


露霧・霞
参拝ッスかー。ケセランパサランを倒したあとッスし、ご利益あるッスかね?
急にすっごい人が来たッスし、これは期待してもいいッスよね!

どうせなので、これからの成長をご祈願するッスよ。これであたしもみるみるうちに急成長、大人のれでぃの仲間入りッス!
あとはそうッスねぇ……ここは定番の健康祈願でもしておくッスかね。
猟兵なんてやってたら怪我なんて日常茶飯事ッスし、修行中の怪我とかも怖いッスからね。安全第一ッスよ。
はー、一仕事終えたらお腹すいてきたッス。これだけ人増えてきたことッスから、待ってたら屋台の一つや二つ開店しないッスかね。あまーいおやつが食べたいッスよ。

アドリブ可、他の人との絡みも歓迎ッス!



 恙なく参拝を済ませた少女が二人、鳥居へと向かって歩いている。
「えへへ、ご利益いっぱいですかね、願い事叶いますかね!」
 世界が平和でありますように――そんな願いを込めて祈りを捧げたティアラは清々しく笑っている。
「あれだけケセランパサランを倒したあとッスからね。それにすっごい人が来てるッスし! これは期待していい筈ッス!」
 朗らかな声音でティアラに応じるのは霞だ。彼女が願ったのはこれからの成長と健康の祈願。
「これであたしもみるみるうちに急成長、ドーンッと大人のれでぃの仲間入りっスよ!」
「ふふふっ、次に霞さんと会う時には、ぐーんと身長が伸びちゃってたりして。フクちゃんはなにをお願いしたの?」
 大きな怪我も無く健康的に成長した自分の姿に思いを馳せ、満面の笑みを浮かべる霞。ティアラは目元を細め、傍らを飛ぶフクちゃんにも語り掛けている。
 ……しかし、ふと過った疑問に瞬きを一つ二つ。誰に向けるでもなく首を傾げる。
「(でも幸せって……なんでしょうね?)」
 彼女の祈りは世界に、他者に対してのもの。それは無自覚にだが自分自身は幸せだと感じていたからこそ生まれた祈り。そして無自覚故に、幸せの具体例を思い浮かべられない。
「んー! いい匂い! 神社の外も賑やかになってるッスねー! あたしもうお腹ぺこぺこッスよ、一緒に何か食べないッスか?」
 霞の元気な声にはっとした頃には既に鳥居を潜った先。そこでは神社の外周に沿うように出店が並んでいた。
「いいですね。あ、たこ焼きっ! 前に教えてもらって買ったんですけど、美味しいんですよー、あれ」
「じゃあそのたこ焼から攻めてくッスか! おじさーん! 一つ下さいッス!」
 屋台に赴きたこ焼を一舟購入する二人、漂う香ばしい香りと立ち昇る湯気に思わず喉が鳴ってしまう。口に入れればとろりと暖かな出汁の味が広がり、蛸を噛む感触が心地よい。
「はふ……うまーい……。これ止まらないッスね……」
「えへへ……美味しいですよねぇ……」
 それぞれの瞳に映る互いの表情も、とろり。
「(……そっか)」
 口いっぱいに広がる味に、目の前の少女の顔に、そして瞳に映る自分に、
「(こういうのが……幸せ、なのかもしれませんね)」
 ティアラはそれを感じた気がした。
「……これ、これ罠ッスよ」
「えっ?」
 そんな彼女を現実に引き戻したのは、やはり霞の声。
「こんなに美味しいごはん食べたら……んぐ、あまーいデザートが食べたくなるじゃないッスか! はふはふ」
 彼女はとろりから一転して真剣な面持ちを浮かべている。食べる手は止まらないまま、しかし視線は次の屋台を探していて。
「ふっ、ふふふっ……そうですね。うん、その通りです。他のも食べましょうか!」
 そんな霞の様子にティアラは満面の笑顔で、また一つ幸せを見つけるのだった。
 そして少女たちは更なる幸せを求め、屋台の並ぶ通りを歩いて行いく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロヴィス・オリオール
あー、びっくりした。まさかこのオレがギャンブルから手を引こうなんざ考えちまう日がくるとはな…っと、おーおーすげぇ人。ともあれ一件落着ってところかね。

さてさて、オレの元にも幸せが舞い込んでくンのを楽しみにしながら……そういや石階段降りたトコに甘いモン売ってる出店とかあったな。
その辺りで飴でもつまんで帰るとするか。

……ん?祈ったり願ったりしないのかって?
ははっ、面白ぇこと訊くのな。神社ってのはアレだ、その名の通り神様のいる所なんだろ?
だったらオレには用のない場所だ、ケセ…んぁ、何だっけ…そいつが居るって聞いたから来ただけさ。

(……オレにとっての神様は、こんな所にゃ居ねェからな)

※アドリブ等歓迎です


ジャガーノート・ジャック
(野伏の外套を被り技能【目立たない】を使用。)

(いかな姿でも、普通の人は猟兵の事に違和感を覚えない。然し)
(鉄の豹鎧はこの場には相応しくない、とは思う。)

(なので、『本機』ではなく、『僕』の姿で。)
(身の丈は五尺と少し、外套の中は、見た目だけは只の、極々普通の、少年として。)

(ひっそりとしずかに、誰にもばれないよう参拝しよう。)


【WIZ】
(鈴を鳴らす。)
えぇと、"Lvが上がりますように"……いや、何か違うか。……

……どうか、"人"らしくなれますように。
なりたい『僕』らしくなれますように。

……交わした『約束』を、果たせますように。

(二礼二拍手一礼をして、兵士より子供に近くある『僕』は去ってく。)



 かり、と小気味の良い音。それは決して大きな音ではないが、一人の男に大きな幸せを感じさせていた。
「あーうめ……。しっかしすげぇ人だな」
 神社へと続く石段の袂。出入りする人々を脇目にクロヴィスが舌鼓を打つのは小さな砂糖の花、金平糖。極小の甘味ではあるが妖精の身では一口に頬張る事は難く、しかしてそう硬い品でもなく、齧るようにして食べていた。
「……何だっけ、ケ・セラ・セラ? パサパサのパン? あいつの話、よっぽど信じられてンのな」
 どこか興味無さそうに人々を追う瞳。それがはたと止まる。視線の先には石段を降りて来る、野伏の外套を被った少年が一人。
「よお、お前も参拝帰りか?」
「……えっ」
 その声は少年にとっては思わぬものだったのだろう。クロヴィスの五倍程の背丈の身体を分かりやすく跳ねさせ、声を漏らしている。
「(おかしいな……目立たないようにしてたつもりなのに)」
 ひっそりと、しずかに。それを望んでいた筈であったが、賭博師の目には――テーブルを挟んで座る相手を観察し続けてきた者の目には――目立たないようにする振舞いこそが目立って見えたようで。
「え、じゃねぇよ、え、じゃ。なぁ、エンパイアのやつってのはどういう事を願うんだ。神社で」
 動揺した様子にも興味は無さそうに、クロヴィスは気になる一点にだけ問いを投げる。
「エンパイア……。ああ、えっと……僕、は……なりたい『僕』らしくなれますように、って」
 彼の言葉に少年は心中で一息ついていた。それは自分の事がただ目についただけなのだろうと、何かがばれたわけではないのだろうという安堵の吐息。
「ふーん。らしく、ねぇ」
「……君の方は、どういう事を?」
 そういうもんか、とまた金平糖を齧るクロヴィスに、少年は投げられたのと同じ問いを投げ返す。
「ははっ、面白ぇこと訊くのな」
「僕も訊かれたんだけれど?」
「神社ってのはアレだ、その名の通り神様のいる所なんだろ?」
 狙撃のような狙いすました指摘をするりと躱し、妖精は言葉を続ける。
「だったらオレには用のない場所なんだよ、ハナから願う事なんてねェ。ケセなんとかのために来ただけさ」
「……ふーん?」
 解答とも説明とも付かない、吐露のようなそれを聞いて、少年は小首を傾げる。
「さっ、て。呼び止めて悪かったな。用も済んだしオレは行くわ」
 金平糖の収められた巾着袋を大型のトートバッグのように肩にかけ、
「(……オレにとっての神様は、こんな所にゃ居ねェからな)」
 クロヴィスがゆらりと動き出す。
「じゃ、またな」
 それはただの別れの挨拶か、はたまた。
「え、……うん。また」
 その意味するところは誰にも、当然少年にもわからず。
 動揺した吐息はノイズのように僅かな淀みを作ったかもしれない。
「(……全部言わないで正解、だったかな)」
 ――交わした『約束』を、果たせますように。
 神様にだけ伝えた願い事は胸に秘めたまま、少年は神社を後にする。

 戦いからどれ程の時間が経っただろう。
 神社から漏れ伝わる活気は衰える気配を見せない。
 幸福の予感が彼らを沸かせるから。幸福へ進む足音がそこを満たしているから。
 訪れるだろう幸福は、白い綿胞子ではなく、神社を賑わす人々の――いや、きっとこの地に住まう人々の数だけ。
 いつしか地には、暮れゆく陽の紅が舞い降りていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月21日


挿絵イラスト