策励性ポストウォー
●クリスマスって何?
アポカリプスヘルはオブリビオンによって崩壊した文明の残滓の上に成り立つ世界である。
かつて栄華を極めた人類はオブリビオンに敗北した。
黒き竜巻が齎す破壊は、文明の尽くを破壊したであろう。しかし、その全てが灰燼に帰したわけではない。
人々は『拠点(ベース)』を築き、文明の残滓を取り戻しながら生活している。
厳しい生活であることに変わりはない。
けれど、そこには確かな文明の篝火があった。
「クリスマスって何? 何をすること?」
幼子が尋ねる。
そう、生まれてから一度もクリスマスを経験したことのない子供らのほうがアポカリプスヘルには多い。
それ以前に明日を生きることすら難しいために、そのような文化は長く廃れてきた。
けれど大人たちはクリスマスを知るだろう。同時に歯がゆくも感じているのだ。もしも、黒き竜巻が文明を崩壊させなかったのならば、己等の子どもたちにもクリスマスを教えることができただろう。
「そうだな。年に一度のお祝い……って言えばいいかな。昔は良い子にしていた子どもたちの所にサンタという人がプレゼントをもってきてくれたんだ」
「そうそう、靴下を寝床においてな」
「どうなるの? そうすると」
子供らは皆、興味津々である。
それもそのはずであろう。彼等は漸くにして平和を取り戻しつつあるアポカリプスヘルにとっての希望そのものである。
彼等が作る未来がきっとより良いものになるだろうと大人たちは復興に懸命なのだ。
けれど、復興はまだまだはじまったばかりである。
如何に今日が平和の象徴、誰もが幸せな夢を思いながら眠ることのできる夜であったのだとしても、そのような余裕はない。
だから、こういうしか無いのだ。
「誰かのために何かをしようと思った時、そういう奇跡が起こることもある。お前達が大人になった時、思い出してくれたらいいな。そういう夜が年に一度訪れるって。必ずな――」
●クリスマス・アフター・ランページ
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった――のだが、若干様子がおかしい。
なんというか、その。
テンション高い。
「よくぞお集まり頂きました。みなさん、どうぞ、善きクリスマスを。ですが、アポカリプスヘルのクリスマスは未だ遠き昔。平和という復興に足を踏み出した世界でありますが、『拠点(ベース)』では余裕があまりありません」
静かな言葉遣いはいつもどおりである。
だが、こう言葉の端々から普段とは違うナイアルテ感がすごい。
「どうでしょう、みなさん。なりませんか、サンタクロースに!」
じゃーん、とナイアルテはくるりとその場に一回転してみせる。どうやらサンタコスのようである。コスプレ感すげぇ。とは誰も言ってはならぬことである。
「未だ幾つかの『拠点(ベース)』では復興を叶えていますが、クリスマスを行なう余裕があるところは何処も存在していません」
となれば、猟兵たちは何をするというのだろう。
「『拠点』や周辺地域の再建を手伝いつつ、ささやかなプレゼントやごちそうを差し入れして頂きたいのです。楽しんでもらいましょう、クリスマス気分を!」
みなさんの分もあるんですよ、とナイアルテは嬉々とした様子で何やらいつの間にかおいてある袋ををがさごそやりはじめる。
嫌な予感がすると猟兵たちの誰もが思ったかも知れない。
「じゃーじゃーん。どうでしょう、皆さんのためのサンタクロースさんのお洋服です! さあ、さあ! 皆さんお似合いになると思うのです」
袋から取り出したるはサンタクロース衣装である。
どれもこれも、なんていうか、コスプレ感すごい。生地はテラテラしてるし、付け髭やサンタ帽子、はたまたトナカイのコスチュームも用意してある始末である。
「クリスマスですよ、せっかくの。ですから、皆さんのお力で今宵一夜でも、アポカリプスヘルの皆さんの善い夜を過ごさせてはいただけないでしょうか」
ナイアルテは、今更にちょっと冷静になっていた。
猟兵たちの視線に我に返ったともいえるだろう。そんでもって、今の自分のミニスカサンタコスに羞恥が湧いてきていた。
耳を赤くしながら、ナイアルテは曖昧に微笑む。
最初のテンションの高さはどこに行ったというのであろうか。照れを隠すようにナイアルテは言う。
「えっと、その、ですね、どうか皆さんのお力をお貸しください。きっとアポカリプスヘルの皆さんもより善い明日を夢見るはずです」
今日という一日が、きっとより善い明日を連れてくる。
そう信じることこそが、より善き未来を引き寄せる、たった一つの希望なのだから――。
海鶴
マスターの海鶴です。
今回はアポカリプスヘルでのクリスマスを『拠点(ベース)』の復興を手伝いながら、みなさんがサンタクロースになるんだよっ! というシナリオになります。
アポカリプスヘルは戦争が終わり、平和を目指して復興がはじまっています。
各拠点を巡り、復興を手伝いついでに食べ物やおもちゃなどのプレゼントを配ってあげましょう。
また第一章の【日常】だけで構成されるシナリオとなっておりますので、今回はプレイングを受けつける時間を公開日より2日程長く設けさせていただきます。
リプレイの返却をその分だけおまたせしてしまいます。ご了承くださいますようお願いいたします。
※シナリオ受付締め切り:12月26日 午前12時前後。
締め切り後に順次公開、執筆させて頂きます。
●一章のみ
日常です。
皆さんは拠点の一つを訪れ、住まう人々の困りごとを解決したり、復興作業に手を貸してください。
できれば、サンタクロースっぽい衣装なんかを用意しているとそれっぽくなるでしょうし、指定していなくても多分転移前にナイアルテがぐいぐいしてきます。
せっかくのクリスマスですから、暖かい料理や子供たちへのおもちゃの差し入れなんかも喜ばれるでしょう。
それでは、アポカリプスヘルにおける復興を支援するクリスマス、そのサンタクロースになってみなさんが人々に喜びと安らぎの一夜を運ぶ物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 日常
『フェスティバルをもう一度』
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POW : 住人を励ましてやる気を引き出す
SPD : 行事に必要資材や道具を用意する
WIZ : 資料を調べたり住人に話を聞いたりして再現度を高める
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
村崎・ゆかり
この世界が比較的平穏になったのは、これまでの比較的軽い地獄だったことよりマシなことなのよね。
それじゃ、羅睺。この辺のスクラップからサンタクロースが乗るソリを作り出してちょうだい。
ああ、心配しなくてもあなたにソリを引けなんて言わないわよ。ソリを引くのはこれ。
「式神使い」で、四つ足の草食獣らしい式を作成。別に用意した角を付ければ、立派なトナカイ。それじゃあ行きましょうか。二人組ならサンクト・ニコラウスとクネヒト・ループレヒトがいいわよね。
良い子にはあたしがクッキーを。悪い子には羅睺が石炭やジャガイモをプレゼント。
石炭やジャガイモも、大人に渡せば役立ててもらえるわ。
さあ、フローエ・ヴァイナハテン!
アポカリプスヘルにおいて、文化とは黒き竜巻、オブリビオンストームによって粉々に破壊されたものである。
残るは文明の残滓のみであり、それは生きるために必要不可欠なものを除いては利用することすらできないまでに人々は追い込まれていた。
というのも、過去のことである。
アポカリプス・ランページにおいて猟兵たちはオブリビオンに勝利し、この世界からオブリビオン・フォーミュラを打倒したのだ。
未だ予断を許さない状況ではあるものの、『拠点(ベース)』には平和といっていいほどの時間が流れ始めていた。
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)が訪れた『拠点』もまた同様である。
そこは確かに未だ復興したとは言えない『拠点』であった。
これまで『レイダー』による略奪に耐えてきたが、物資の不足は否めない。
「この世界が比較的平穏になったのは、これまでの比較的軽い地獄だったことよりマシ……程度のことなのよね」
ゆかりは『拠点』の様子を見やる。
住まいは十分であるが、これから本格的な寒波が襲うだろう。そうなったのならば、寒さに凍えて絶える生命だってあるはずだ。
「それじゃ、羅睺。このへんのスクラップからサンタクロースが乗るソリを作り出して頂戴」
羅睺召喚(ラゴウショウカン)によって招来された式神・羅睺が首をかしげる。
ソリを作ってどうするつもりなのだろうか。
もしや、自分にソリを引かせるつもりなのかと警戒した顔をしている。
「ああ、ないない。そんな心配しなくっても。あなたにソリを引けなんて言わないわよ」
ソリを引くのはこれだというようにゆかりは己の手により生み出した四足の草食獣らしい式を作成する。
別に用意した角をつければりっぱなトナカイというわけである。
なんだ、と羅睺が安心したのを見ると、ゆかりは微笑む。
できあがったソリにまたがり、石炭を積み込む。。
「それじゃあ行きましょうか。二人組ならサンクト・ニコラウスとクネヒト・ループレヒトといったところよね」
聖者とその助手になぞらえ、ゆかりは羅睺と共にソリに乗り、『拠点』へと走る。
人々はその姿を見て、滅びた文明の幻をみたような目をしている。
大人たちの大半はそうであったけれど、子供たちは違う。初めて見る光景に首を傾げる子もいれば、興味津々な子もいる。
「はいはい、良い子にはあたしがクッキーを。悪い子には羅睺が石炭やじゃがいもをプレゼント!」
サンタクロースのコスチュームに身を包んだゆかりがほほえみ、子供たちにクッキーを配り始める。
物珍しげに見ていた子供たちであったが、それが今は手に入れることがこんなんな甘いものであると気がつけば目が輝くのだ。
嬉しそうな笑顔。
それあけでゆかりは微笑みを絶やさないだろう。
先程は悪い子には石炭やじゃがいもと言ったが、大人たちにこれを渡せば厳しい冬も越せるであろう。
「悪い子には、なんて言ったけれど、これは内緒ね。羅睺、大人たちにこっそり渡しておいて?」
そのいたずらっぽい微笑みに羅睺は頷き、大人たちに石炭とじゃがいもの入った箱を手渡す。
役立ててて貰えればいい。
そう思って手渡す物資は、彼等にとって明日を生きるために必要なものであった。
未だアポカリプスヘルは復興には遠い。
けれど、着実な一歩を歩み始めていることだけはわかるだろう。
こんな寒さ厳しくなる夜であるけれど、今日はクリスマス。
ならば、ゆかりは最後に告げる言葉を決めていたのだ。
「さあ、フローエ・ヴァイナハテン!」
善きクリスマスの夜を。
そう告げ、ゆかりは羅睺と共にクリスマスの夜を忙しく疾駆するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー
赤くて露出高めで興奮を煽る衣装を着たピンク目の金髪褐色美人ですか。
子供達の性癖に深刻なダメージを与えることが予想されますね。
実に素晴らしい。子供達の将来が期待できますね。
あ、私はトナカイ衣装で結構です。はい。
そんなわけで、夢と希望があふれた日雇いトナカイ参上です。
妙に色気のある我らがサンタ様の命令により、復興をお手伝いいたします。
私自身は器用さも力も何もかも足りませんが、
【念動ハンド】があれば工作も荷運びもちょちょいのちょいです。
サボってるようにしか見えないかもですが、まぁ些細なことです。
…そういえば、この前作ったぬいぐるみが余りまくってましたね。
子供たちへのプレゼントにでもしましょうか。
エリー・マイヤー(被造物・f29376)は実に素晴らしいと紫煙燻らせながら、グリモアベースでくるりと回った例のグリモア猟兵の姿を見ていた。
赤くて露出高めで興奮を煽る衣装を着たピンク目の褐色美人。
誰のことを言っているのかと当グリモア猟兵は首を傾げたことであろうが、エリーの考えは深刻なものであった。
「あんなサンタが着たら子供たちの性癖に深刻なダメージを与えることが予想されますね」
それは非常に不味いことである。
三つ子の魂百まで、とも言う。多感な少年期に、そのんな危険なものを与えてはならない。
エリーはきっと子供らの将来を危惧してくれていたのだろう。
「実に素晴らしい」
あ、違った。
特に気にしてないどころか、子供たちの将来が期待できるとさえ思っていたのだ。
そんな彼女もサンタクロースになるんだよ! と衣装を押し付けられたが、エリーが選んだのはトナカイスーツであった。
りっぱな角と赤い鼻。
そんでもって煙草である。煙草は忘れてはならない。他の何を忘れてもエリーには煙草である。
紫煙を吐き出しながらエリーはアポカリプスヘルの一つの『拠点(ベース)』に降り立つ。
アポカリプス・ランページを経て、この世界には平和が訪れたとは言え、未だ山積している復興までの課題は多い。
「夢と希望が溢れた日雇いトナカイ参上です」
エリーは『拠点』に住まう人々を前に言い放つ。
一瞬、新手の『レイダー』かと人々は警戒したが、エリーは携帯灰皿に煙草を押し付けて火を消す。
ふぅ、と吐き出す煙草の煙が白い息と共に天に登っていく。
「妙に色気のある我等がサンタ様の命令により、復興をお手伝い致します」
もうちょっと登場の仕方があったのではないかと思わないでもなかったが、エリーは気にしなかった。
エリー自身は器用さも力も何もかもが足りないという自負がある。
けれど、彼女の念動力は別である。
彼女の念動力は彼女自身の腕力、器用さを補って有り余るほどの力がある。
煙草にエリーは火を付け、ぷへーと煙を吐き出す。
座っているだけで何をしているのか、大人たちは尋ねられなかった。
一見すると正直言って仕事をしていない……サボっているようにみえるのだが、エリーの念動ハンド(サイ・ハンド)は『拠点』においてどうしても撤去できなかった瓦礫をらくらくと排除していくのだ。
見えない力が働いて、瓦礫が次々と『拠点』の外に放り投げられていく。
「……一体全体どうなっているんだ……?」
「というか、あの人、とな、かい……? トナカイ、だよな? なんであんな格好しているんだ?」
「むしろ、煙草しか吸ってない気がするんだが」
大人たちはエリーの姿に首をかしげる。
瓦礫は撤去されているのは、エリーの仕業なのだろうと彼等は納得する。
よくわからんが、ヨシッ! というやつである。
「おねーさんの口から出る、それはなに?」
「ぷかぷかしてるー」
そんなエリーの周りには物珍しそうに子供らがよってくる。
正直、分煙とかなんとかというのは、この文明が荒廃した世界にあっては存在しない慣習である。
正直、携帯灰皿も持ち歩かなくてもいいんじゃないかと思うほどであるが、エリーは吐き出す煙でドーナツを作ったりすれば、これまた子供らがきゃっきゃしだすのだ。
「すっげー!」
「輪っか! 輪っかになった! どうなってんの!?」
「……あんまり吸い込まないように。それと、これを。明日からも大人たちの言うことをよく聞いて、清く正しく生きてくださいね」
エリーは以前の事件でたくさん作ったぬいぐるみの余りを子供らに配り始める。
これもまた彼女の念動ハンドが作り上げたものだ。
役目を果たすことはなかったけれど、このぬいぐるみたちが集まった子供らのためになるのならば、それは善きことである。
慰めではなく思い出として。
エリーは子供らに人形を配り終え、また紫煙をくゆらせる。
人仕事した後の一服は格別である。やったのは念動ハンドだけれど。それでも子供らの笑顔に囲まれたのは、悪くない。
そんな気分のまま、エリーのクリスマスの夜は更けていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
【旅神】
おー、結構本格的。ナイアルテも気合入ってんなあ。
まあかく言うおれも、クリスマスってことでサンタになりきるわけだけどさ。
詩乃も……言われるまでもねえか。それにしても、ミニスカとか意外にチャレンジャーなのな、詩乃もさ。
んー、トナカイ役は詩乃がどうにかしてくれるみてえだから、こっちは賑やかしを担当するか。
《笛吹き男の凱歌》で道化師を喚んで、クリスマスっぽい音楽をいろいろ演奏させて雰囲気作りさせる。
ここまでやればお膳立ては終わり。あとはプレゼントを配るだけだな。
ん、詩乃寒いんか? その恰好でよく頑張ったな。
ってうわ!? いきなり抱き着いてくるんか?
……まあ、頑張ってたもんな。ご褒美がわりだ。
大町・詩乃
【旅神】
ナイアルテさん可愛い~♪(思わずスマホで連写)
はいはい♪私も行きますよ~と手を挙げて、ナイアルテさんと同じミニスカサンタコスを着用。
あれ?このパターンは前にも有った様な💦
嵐さん、この格好変じゃないですよね?と確認してみます。
神社近くで購入した子供達向けのお菓子(和洋色々)とオモチャをたくさん持参。
UC:神使集結で手があるタイプの眷属神(人型・熊型・龍神型)にも持ち運びを手伝って貰い、トナカイの代わりをシシガミ型の眷属神にやって頂きます。
現地では嵐さんと一緒に子供達にプレゼントしていきますよ~。
(眷属神達は住居復興も手伝います。)
子供達が喜ぶのを見れたら良いなあ。
プレゼントを渡し終えて二人きりになれたら、嵐さんに「この格好は少し寒いので、嵐さんで暖まっても(=抱き着いても)良いですか?」と甘えてみます。
グリモアベースにおいて説明されたアポカリプスヘルにおける『拠点(ベース)』に住まう人々へ送るクリスマスプレゼント。
それは猟兵達がサンタクロースになり、世界中の『拠点(ベース)』の復興の手伝いや、子供らにプレゼントを配るというものであった。
それを説明したグリモア猟兵の姿は、まあ、浮かれた感じであった。
「おー、結構本格的。気合入ってんなあ」
鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はどこか他人事みたいなことを言っていたが君も後でサンタクロースになるんだよ。
そんな隣にある大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)もまた説明するグリモア猟兵に負けじとテンション高めであった。
「可愛い~♪」
かわいい。それは世界において共通の事柄である。
可愛いは世界を救う。多分。そんなふうに詩乃は連呼しながら手にしたスマホをカメラモードで連射しまくっていた。
あとで画像消してください! とか、いえ、これは保存しておきますから、とかまあ、そんなやり取りがあったとかなかったとか。
「私も行きますよ~! 嵐さんも!」
詩乃は手を上げ、袋に入っていたサンタコスを掴む。奇しくもグリモア猟兵の着ていたやつと同じタイプである。
なんとなく前にもあったようなパターンである。神であるがそれ以前に女子である詩乃にとって、サンタコスとは一度は着てみたい衣装であったのかもしれない。
着替えを手にしてルンルン気分な彼女を嵐は見送る。
「ああ、俺もだな。お、男性用のも用意してあるのか」
手際がいいなと、嵐は己もまたサンタクロースに扮して、何かと身支度のかかる女子、詩乃の到着を待つ。
彼女がやってきたらすぐさま転移しアポカリプスヘルに向かわねばならないのだ。
「嵐さん、この格好変じゃないですよね?」
そう言葉を告げられ、振り返った先にあったのは見事なサンタガールであった。
「ミニスカ……それにしても、以外にチャレンジャーなのな、詩乃もさ」
「変じゃないって意味ですよね!? それ!?」
「そうそう、似合ってる。あとはトナカイ役はどうするんだ? どっちもサンタクロースだけど……」
嵐の疑問も尤もである。
ふたりともサンタクロースである。片方はガールであるが。けれど、詩乃は自信満々に眷属神たちを呼び寄せているのだ。
そこに居たのは人型、熊型、竜神型、シシガミ型の眷属神たちであった。
トナカイは……? と嵐は疑問に思ったが、シシガミ型の眷属神の頭にトナカイの角がざっくりと付けられている。
いいのか……? と嵐は思ったが、眷属神たちは言葉無く頷く。みなまで言わないでいいという具合である。
主である詩乃のテンションの高さを見てほしい、と。
なんか違うんじゃない? とは誰も言えないのだ。
「お、おう……じゃあ、おれは賑やかしを担当するか」
嵐と詩乃は二人して仲良くアポカリプスヘルの一つの『拠点』に転移する。
そこは未だ復興の進まぬ『拠点』の一つであった。
しかし、『レイダー』の被害が少なかったのは幸いである。
「笛吹き男の凱歌(ラッテンフェンガー・パラード)といこうか!」
嵐のユーベルコードによって召喚された笛吹き男の奏でる演奏は、嘗て在りし文明を思い起こさせるものであったし、クリスマスを知らぬ子供たちであっても、そのにぎやかな音楽は理屈ではなく体で楽しいものであると思わせるには十分であった。
「なんだろう? この音」
「知らないね、これ。今日は何の日?」
子供らにとって、クリスマスはすでに忘れ去られ、遠き日の残響そのものであった。
けれど、嵐の召喚した笛吹き男の演奏は忘れ去られ、そして心になかったものを湧き上がらせるのは十分なものであった。
「ここまでやればお膳立ては終わり。あとはプレゼントを配るだけだな」
嵐の言葉に詩乃が頷く。
眷属神たちに目配せして、詩乃は神社の近くで購入した子供向けのお菓子とおもちゃを詰め合わせた袋を配り始めるのだ。
「さあ、クリスマスプレゼントですよ! 皆さん、手を出してくださいね」
詩乃は微笑む。
クリスマス知らぬ子供らが喜んでくれたらいい。喜ぶ顔が見たい。
ただその一心で彼女は、次々とよってくる子供たちにプレゼントを手渡していく。彼等の喜ぶ顔は、こんな荒廃した世界にあっても宝物のようにきらめいて見えるのだ。
そんな詩乃と眷属神たちの働きを手伝いながら、嵐もまた微笑む。
誰かの笑顔は心を温めてくれるものである。嵐は、己の心が暖かくなるのを感じたことであろう。
笛吹き男の奏でる音楽は、楽しげな雰囲気ばかり。大人たちも今は明日の暮らしをどうするかという悩みを一端置いて、その音楽に目を細めるのだ。
文明崩壊前を懐かしむようであり、同時にこれまで流れた苦難の月日を思う時間でも在ったのだ。
「これ、あんたたちで分けてくれよ」
嵐はそう言って、詩乃が用意していた和洋様々な菓子を大人たちにも手渡していく。
こんな世界であるからこそ、大人も子供もない。
大人たちも嘗て在りし童心を取り戻したっていいだろう。嵐は笑顔の咲き乱れる『拠点』と、詩乃たちの一生懸命さに己の心を温める。
「ふぅ……」
詩乃の吐き出す息が白い。
二人は用意したプレゼントをなんとか配り終えると、『拠点』で篝火がたかれ、一夜のお祭りを楽しんでいた。
人々が日を囲み、二人に送られた菓子を口に含んでいる。
明日からの生活は楽なものではないだろう。けれど、今日という日があったことを彼等は糧にする。
そうすることで彼等はまた明日を行きていくことがえきるのだ。
「あの、嵐さん……この格好は少し寒いので嵐さんで暖まっても良いですか?」
少しの勇気と踏み出すタイミング。
詩乃の言葉に嵐は首をかしげる。
「ん、詩乃寒いんか? その格好でよく頑張ったな」
その言葉に詩乃は同意と見て抱きついて甘える。なんとも甘い雰囲気である。篝火に照らされながら、二人は距離を縮めるのだ。
「……まあ、頑張ってたもんな」
いきなり抱きつかれたことに嵐は驚いていたが、これもご褒美というやつである。
詩乃の微笑む顔が見られただけでも良いことである。
彼女がこれで良いというのならば、喜んでいるのならば、それもまた良い思い出に変わって行くことだろう。
二人の時間は甘やかに。
そしてゆっくりと流れていく。今だけは誰にも邪魔はされない。寒空の下、明日への希望をもたらした一組のサンタクロースは篝火の影でもまた寄り添い、その温もりを共有するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
乱獅子・梓
【不死蝶】サンタのコスチューム
サンタになって子供たちにプレゼントを贈りに行ったことはあるが
実際にサンタのコスプレをしたのはこれが初めてだな…
サンタコス、付け髭、サングラスって我ながら何だこの不審者
せっかくのクリスマスなんだ、ごちそうを振る舞おう
クリスマスといえば…クリームシチュー!
拠点の調理場を借りて、予め用意しておいた材料をコトコト煮込む
ニンジンは星型にくり抜いて
これだけで見た目華やかでクリスマス感が増す
俺はどんどん作っていくから綾は配給を頼む
あとはそうだな…
UCで可愛いミニドラゴンたちを召喚
1人につき1匹、子供たちのもとに向かわせよう
ドラゴンと遊べるだなんて経験、無いだろう?
灰神楽・綾
【不死蝶】トナカイのコスチューム
あはは、クリスマスにそういう格好した銀行強盗いそう
サンタの格好してもグラサンは外さないんだね梓…
いやまぁ俺も人のこと言えないけどさ
やったぁ、梓サンタさんの手料理だ
俺の分も残しておいてねーと梓にお願いしつつ
出来上がったシチューをお皿に盛って人々に差し出していく
サンタさんからの美味しいプレゼントだよ
熱いから気を付けてね~
梓のドラゴンたちと触れ合う子供たちは
みんな表情がいきいきとしていてとっても楽しそう
料理やドラゴンなど、梓は人々を喜ばせる術が色々あってすごい
こういう時、戦いしか出来ない自分がちょっと歯がゆい
昔はこんなこと考えたりしなかったんだけどな
サンタクロースとトナカイ。
それはクリスマスの夜に子供らに夢と希望のたっぷり詰まったプレゼントを配る相棒同士である。
トナカイは空をかけ、サンタクロースはそっと優しいプレゼントを置く。
家から家に。街から街に。そして、世界から世界にと飛ぶのが猟兵という名のサンタクロースであったのならば、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)と灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、まさに息のあった一組であったことだろう。
「あはは、クリスマスにそういう格好した銀行強盗いそう」
なんて笑っているのは綾であった。彼が指差しているのは梓のサンタクロース姿である。普段遣いのサングラスのせいであろうか、たしかに目線を隠して付け髭ついていると、彼の言う通り銀行強盗のように見えただろう。
サンタクロースの格好をしてもグラサンだけは外さない。それが梓のポリシーであったのかもしれない。
「それを言うなよ……不審者だな、我ながら」
梓は己の姿を改めて客観視する。綾の言葉通り、たしかに銀行強盗していそうな出で立ちである。
「いやまぁ俺も人のことは言えないけどさ」
綾も色付きのメガネであることを考えれば怪しさはある。けれど、グラサンよりは若干マシな気がしないでもない。
二人のサンタクロースは自らの姿形でもって不審者だなぁ、とお互いを宮ってまた笑うのだ。
クリスマスの夜。
それは誰もが楽しさを甘受することのできる一夜である。ならばこそ、二人は笑い合いながらアポカリプスヘルの『拠点(ベース)』の一つに向かうのだ。
「ねーあれなに?」
空を見上げる子供たちの声に大人たちは作業を止めて空を見上げる。
そこには梓によって召喚された小さなドラゴンたちの群れであった。梓と綾はそのドラゴンたちをトナカイに見立てて、アポカリプスヘルの空より『拠点』に舞い降りたのだ。
梓はせっかくだからとご馳走を彼等に振る舞おうと思ったのだ。
サンタになって子供たちにプレゼントを送りに行ったことはあるが、サンタのコスプレは初めてだったのだ。
「せっかくのクリスマスなんだ、ご馳走を振る舞いに来たぜ」
そういう梓は『拠点』に降り立ち、ミニドラゴンたちはそれぞれ子供たちの元へと舞い降りる。
「わー! なにこれ!」
子供たちは自分たちの元にやってきたドラゴンたちとじゃれるように遊び始める。
大人たちは皆、突然の出来事に目を丸くするばかりである。とてもじゃないが、現実だとは思えないのだろう。
「い、いったいこれは……? どういう?」
「梓サンタさんの手料理を振る舞いに来たんだよ。今夜はクリスマスでしょう? 美味しいものをさ、皆で食べれば、奇跡だってあるんだって思えるからさ」
綾は微笑んで、人々に声をかける。
『拠点』中の人々が、その言葉に釣られてやってくる。
それ以上に効いたのが梓の作るシチューであった。その甘い芳しい香りは、すぐに『拠点』のあちこちまで風に乗っていく。
めったに食べられないもの。
それを人々は本能で理解出来たのだろう。
「クリスマスといえば……クリームシチュー!」
梓は『拠点』の調理場を借りて、予め用意していた材料をコトコト煮込むのだ。
途中、綾が自分の分ものこしておいて、と頼んできたのは笑ってしまった。わかっていたけれど、やっぱり食べたいんだな、と微笑ましい気持ちになるのだ。
「俺はどんどん作っていくから、綾は配給を頼む」
「おっけー、任せておいてよ。みんな、おいで。サンタさんから美味しいプレゼントだよ」
綾の言葉に子供たちが集まってくる。
彼等に更に盛り付けたシチューと、人参を型で抜いた星を載せて手渡していく。
「熱いから気をつけてね~」
まだ遠くではミニドラゴンたちと子供らの多くがじゃれ合っている。
あんな生き生きとした表情を子供らが浮かべるのは久しいものであったことだろう。
同時に、梓に対しても綾はすごいなと思うのだ。
星型の人参のアイデアだってそうだ。見た目も華やかに。そしてクリスマス感も増す。ドラゴンもそうだ。
人を喜ばせる術が色々ある。
それは自分には難しいことでるからこそ、梓は素直にすごいなと思うのだ。言葉にするのはまた別であったからかもしれない。
「ちょっと歯がゆいな……」
戦うことしか出来ない。昔はこんなことを考えることもなかったはずなのだけれど。それでも綾は歯がゆいと思うのだ。
けれど、梓は人々の手にシチューが配り終えたことを確認して微笑むのだ。
「手伝ってくれてありがとうな、綾。俺一人では多分立ち行かなかっただろうよ。ほら、これ」
そう言って、梓は綾にシチューの入った皿を差し出す。
人参の星が煌めく明るい空のようなシチューは、それだけで綾を笑顔にするだろう。
二人はドラゴンたちが舞う夜空を見上げながら、穏やかな夜を過ごす。
シチューは甘くて、とろりとしていて。
熱々で時々火傷しそうだと笑い合いながら、拠点の中にあふれる暖かな心地よい空気を肺に吸い込んでいく。
いつかまたシチューを食べるときには、この日のことを思い出すのかもしれない。
そんなふうに梓と綾は暖かなクリスマスの夜を過ごすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ゾーヤ・ヴィルコラカ
POWで挑むわね。赤いコートを着て、白いお髭や赤い帽子もつけて、今日はわたしがサンタさんになるわ!
こんばんは! 寒い中、お仕事お疲れ様。聖夜にサンタさんのゾーヤさんが、みんなのお手伝いに来たわ! わたしの〈怪力〉でどんな重い物でも軽々運んじゃうんだから、じゃんじゃん頼ってね! 夜が更ける前に作業完了目指して頑張るわ。
寒い中での作業が終わったら、身体が暖まる手作りボルシチをプレゼントよ! 他にも、いろんな食材を持ってきたから、腕によりをかけて〈料理〉して、〈優しさ〉満点の味わいを振舞うわね!
それじゃあみんな、メリークリスマス! 善い明日を!
(テンション高め、アドリブ連携等々全て歓迎です)
オブリビオンストームに人類は敗北を喫した。
それは紛れもない事実である。けれど、人々は今も生きているし、猟兵たちはアポカリプス・ランページに勝利した。
紡いだ軌跡が導く未来は輝かしいものであるべきである。
されど、未だ文明の復興は遠く。
今宵がクリスマスであることも久しく忘れていた人々にとって、今日は変わらぬ一日でしかなかったことであろう。
特別な日には、特別なことを。
これは世界が変わっても変わらぬことであろう。ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は赤いコートを身にまとい、白い付け髭と赤い帽子を被ってアポカリプスヘルの『拠点(ベース)』に足を踏み出す。
「今日はわたしがサンタさんになるわ!」
彼女の意気込みは凄まじいものであった。
グリモアベースで説明を聞いて居た時から彼女のテンションは高かった。説明をしたグリモア猟兵のテンションがそのまま乗り移ったかのようでもあった。
彼女が降り立った『拠点』は『レイダー』による略奪の激しかった場所である。
物資を奪われるだけではなく、人の生命も奪われたことであろう。失意と絶望だけが毎日訪れる日々に心は疲れ切っていた。
だからこそ、復興への道は遠い。
「こんばんは!」
しかし、ゾーヤの声は明るかった。
人はどれだけ打ちのめされたとしても、己の足で立ち上がらなければならない。
二本の足があるからではない。人が人たらしめる意志があればこそ、立ち上がらなければならないのだ。
「あ、ああ……あんたは?」
大人たちであろう、彼等を前にゾーヤの出で立ちはあまりにも奇異であったことだろう。
彼等が崩壊した文明の残滓を覚えていたのならば、彼女がサンタクロースに扮していることを理解できたかも知れない。
けれど、長く荒廃の日々を送った彼等には今日がクリスマスだということも忘れていたことだろう。
「寒い中、お仕事お疲れ様。聖夜にサンタさんのゾーヤさんが、みんなのお手伝いに来たわ!」
ゾーヤの言葉に人々は漸くにして、今日がクリスマスであることを思い出すだろう。
ゾーヤはいつもよりもテンション高めであるからか、即座に人々が担っていた力作業を変わって、力技のゴリ押しであらゆる作業を推し進めてしまった。
それはアポカリプスヘルに生きる人々にとってあまりにも快刀乱麻なやり口であったことだろう。
なんでもかんでも力技で解決してしまう。
瓦礫も、重たい柱も、何もかも赤い服を来たゾーヤが片付けてしまうのだ。
「じゃんじゃん頼ってね! 終わらせてしまうわ、夜が更ける前にね!」
ゾーヤの赤い服が揺れる度に人々の顔が明るくなっていく。
それは絶望ばかりであった毎日に差し込む光のようなものであったことだろう。僅かに指した光であったのかもしれない。
けれど、ゾーヤの振る舞いは人々に勇気を与えたことだろう。
そして、ここからがゾーヤの本領である。
夜が更ける前に作業を終わらせたかったのは、彼女が皆に手作りのボルシチを振る舞いたかったからだ。
持ち込んだ材料を大鍋で煮込んでいく。
「さあ、腕によりを掛けて作るから、ゾーヤさんがね!」
彼女は優しさを料理に込める。
寒い空の下作業をしている人々にとって、それは何物にも代えがたい贈り物であったことだろう。
久方ぶりに匂いをかぐ。
温かみのある食事。それは否応なしに人々の生存本能を沸き立たせることだろう。
「出来たわ、優しさ満点のボルシチよ! これを食べて今日はお腹いっぱいに、そして暖かくなって眠ってちょうだいね!」
ゾーヤは微笑む。
それは聖母と呼ぶにはあまりにも闊達であったし、朗らかなものであった。人が思い浮かべる慈愛と安らかさとは違うものであったかもしれない。
けれど、『拠点』の人々にとっては、ゾーヤの優しさがあふれる暖かい食事は、他の何物にも代えがたい贈り物と成ったのだ。
「ありがとう……!」
「おねーちゃん、美味しかったよ!」
大人も子供も同じようにお腹が膨れている。それをゾーヤは笑顔で満足気に頷くのだ。
「それじゃあみんな、メリークリスマス! 善い明日を!」
ゾーヤの優しさが一つの拠点に温もりをもたらした。
それはきっと今日という日を忘れさせぬ思い出となって、人々の中に息づくことだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
【理緒(f06437)さんと】
お呼びとあらばごふっ
そ、そういうところやぞナイアルテさん…(萌え死にダイイングメッセージ)
理緒さん後でコピーください(安らかな死に顔)
一回死んで復活したところで!
お呼びとあらば参じましょう
私はサンタ、今日は忍んでる場合じゃないもん!
ええ、アポヘルの子供たちのためにきよ今日の私はアイデンティティを捨てました!
というわけで理緒さんとサンタ頑張りまーす!
(ミニスカひらひらクノイチサンタ)
理緒さんが食べ物メインなので
私は娯楽メインでいきましょう
電源使わないタイプで
トランプとかヨーヨーとか何でもできちゃうブロック(LE○O的な)とか
フハハハ、サンタの洗礼を受けるといいです!
菫宮・理緒
【サージェさん(f24264)と】
ファンクラブ副会長としては、これは見逃せないね!
と、ブリーフィング中にSDカードのメモリを使い切る勢いで撮影。
説明が終わったら、ほくほく顔で帰ろうとして、
涙目のナイアルテさんにツッコ……んでほしいなー?
だいじょぶ。ちゃんと準備はしてるよ!
まずは、サージェさんとサンタコス。
今日は忍ばないからだいじょぶだよね!
ベースには、美味しいお料理を持って行くことにするよ。
あんまりたくさん持って行くとストームっちゃうけど、
1回のパーティ分くらいならだいじょぶだよね。
基本のケーキとチキン、あとはクッキーやマジパンとか、
ちょっと日持ちするお菓子、かな!
「お呼びとあらばごふっ」
開幕吐血クノイチ、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はグリモアベースで行われた説明を前に早速ダメージを受けていた。なんで?
「そ、そういうところやぞ……」
えぇ……。
謎のダイイングメッセージを残しながらサージェは吐血っていうか、鼻血っていうか、よくわかんない感じに早速残機を一減らしている。
そんな隣で菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はまあ、いつものことだしなぁって顔で平然とシャッターを切っていた。
なんで写真撮ってるの? と思わないでもなかったが、彼女のカメラのSDカードのメモリは速攻で使い切られていた。まじでなんで?
「ファンクラブ副会長としては、これは見逃せないね!」
いや、会長すでに残機一減らしてるんですがそれは。
理緒にとって大切なことはミニスカサンタコスに身を包んだグリモア猟兵の姿をカメラのファインダーに納めることであった。
覗く生足魅惑のなんちゃらかんちゃら。いや、いつも大体素足であるのだが、それはそれであるということであろうか。
「はふー……これは大収穫だねー」
「理緒さん後でコピーください」
理緒とサージェはそんなやり取りをしながらグリモアベースを後にしようとしていた。やりたい放題である。
だが、そんな彼女らを逃さないのがグリモア猟兵である。
むしろ、理緒的にはそこまでワンセットである。涙目で訴えてくる姿もカメラに収めようとしていたのだ。人の心とか無いんです?
「だいじょぶ。ちゃんと準備はしてるよ!」
じゃーん、と理緒とサージェは同じサンタコスに身を包んでいた。赤と白が眩しく、そんでもって緑のワンポイントが最高にクリスマスって感じだ。
「というわけで理緒さんとサンタ頑張りまーす!」
ミニスカをひらひらさせながらサージェと理緒はいざ行けアポカリプスヘルのクリスマスである。
二人が降り立ったのは『拠点(ベース)』の一つであった。
これまで『レイダー』たちに追われて荒野をさまよっていた人々が見つけた文明の残滓。そこにたどり着いたばかりの人々は、未だ文明の復興など考えられない明日を生きるだけで精一杯の者たちであった。
「お呼びとあらば参じましょう。私はサンタ、今日は忍んでる場合じゃないもん!」
いつもの前口上、メリークリスマスバージョン。
サージェの褐色肌が寒空の下に咲く。
そんないつもの忍び……いやまあ、あんま忍んでないか。サージェの姿に人々は驚愕するだろう。一体何が起こったのかと警戒するのも無理なからぬことであろう。
理緒はそんな反応を織り込み済みで頷く。
まあ、わかる、と。今日は忍ばないサージェである。大抵忍べてないけど、今日ばかりは忍ぶ必要がないからだいじょぶだと太鼓判を押すのだ。
「ええ、アポヘルの子供たちのために今日の私はアイデンティティを捨てました!」
それって毎回じゃないかなーって思わないでもなかった。
しかし、その忍べなさがこと今日に限っては善い方に反応してくれた。子供らがサージェたちの姿を見て寄ってきたのだ。見るからにお祝いムードな服装。なにこれーってスカートの裾をグイグイされたり、飾りを引っ張る拍子に、あくまでコスプレ感ある衣装の糸がほつれてしまったりとかまあ、そんな感じ。
「ちょ、ちょっとまってー! お、美味しい料理を持ってきたからね!? あ、そこは引っ張らないで!」
理緒が子供らに翻弄されているのを見たサージェは理緒が用意してきた料理の邪魔をさせぬと声を張り上げるのだ。
「フハハハ、サンタの洗礼を受けるといいです!」
なんか悪役っぽいがいいのか? いいんだろうか?
子供らはサージェに標的を変える。あっちのほうが絶対面白いことに成ると子供らは直感したのだ。
手強そうに見えて、あれは結構ちょろい大人だぞ、と。
「あっー!? 待ってください! プレゼント、プレゼントありますから!?」
サージェに群がる子供ら。
手にした袋からプレゼントをばらまく、というか強奪される姿に理緒は世の厳しさを知る。
サージェの尊い犠牲を無駄にしないために理緒はオブリビオン・ストームに影響されない程度の物資を運び込み、一回のパーティ分の料理を大人たちに手渡すのだ。
「基本のケーキとチキン、あとはクッキーとかマジパンとかあるから、皆で食べてねー」
理緒はほほえみながら、これが一夜限りのクリスマスだからこそできる贈り物だと言う。
人々は明日を生きることも難しい。
けれど、希望を喪うことがあってはならない。また一年後、今日のような日が来ると思えば、つなぐ希望もあるだろう。
そんなふうに理緒はうまく締めようとしていたが、背後からサージェの悲鳴が聞こえる。
子供らにクリスマスプレゼントをばらまいていたサージェが子供らに追いかけ回されているのだ。
電源使わないタイプのおもちゃをプレゼントしていたのだが、ヨーヨーとかなりきり忍者セットとか、そういうのを装備した子供らとじゃれているというか、こう、同レベルの遊びに追いやられている。
「さ、サンタはそういうものじゃないんですがー!?」
サージェの悲鳴と子供らの歓声を理緒は聞いたことだろう。
暫くあのままでいいかと、荒野に響く平和な歓声は、寒空に一幕の暖かさを齎すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
さてさて
サンタさんになるお役目いただいたわけですし頑張りますか
いつも持ち歩いてる★Candy popの他に
流石に大量持ち込みは出来ないけど少しだけ
得意な薔薇のアップルパイを作って持ち込ませてもらおうかな
クリスマスで思い浮かぶ料理は色々あれど
やっぱりパイも外せないよね
保温ケースに入れて来たからあったかいよ
それと、僕は他の猟兵に比べて非力だし
色んな技術があるわけでもないけど
足場に魔力の★花園を広げて彩ろうか
ここにあるのは一時的だけど、摘めば一生ものにできるよ
それからクリスマスを祝うための【歌唱】を
僕だから出来ること
子供たちの心を色鮮やかに彩れるように
サンタさんから贈る幸せの魔法
メリークリスマス
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は奮起していた。
何故かと問われれば、澪はサンタとなる役目を帯びてアポカリプスヘルへと降り立ったからである。
身に包んだサンタクロース服。オラトリオの翼と相まって幻想的な姿を荒廃した大地に晒すことだろう。
アポカリプスヘルに物資を大量に持ち込むことはできない。
オブリビオン・フォーミュラを打倒しても、未だこの世界には黒き竜巻が発生する。大量の物資を運び込めば、そこにオブリビオンストームはやってきて、無機物有機物問わずにオブリビオン化してしまうからだ。
「流石に大量には持ち込めないけど」
いつも持ち歩いている飴玉の詰まった小瓶を澪は軽くふって音を鳴らす。
カラコロと可愛らしい音を立てて、飴玉が幸せの音色を鳴らす。それに澪は得意のアップルパイを持ち込んでいた。
薔薇の模様をパイ生地で表現した逸品である。
「クリスマスで思い浮かぶ料理は色々あれど、やっぱりパイも外せないよね」
大切に保温ケースに入れてもってきたから、まだ暖かい。
これを食べた人々の笑顔を思い浮かべるだけで、心の中にあふれる暖かさがある。
そんな澪が降り立った『拠点(ベース)』は比較的平和な場所であった。
人々は各々が農作業や、新たな居住区を拓くためにと忙しく働いていた。こんな日にあっても人々は手を休めることをしていなかった。
きっと今日という日がクリスマスであるということも忘れていたのだろう。
「なら、思い出してもらおう。今日がとくべつな日だってこと」
澪の瞳がユーベルコードに輝く。
心に灯す希望の輝き(シエル・ド・レスポワール)は、澪の心より発する光。この世のものとは思えない光に人々は作業の手を止めるだろう。
澪の足元から広がる魔力は、それだけで天上世界のような荒野とは思えぬ光景に様変わりしていくのだ。
「僕だから出来ること」
澪にとって、それは唯一のことであったかもしれない。けれど、人々にとっては、最上のものであったことだろう。
「そうか、今日は」
「ええ、クリスマスだったわね。久しく忘れていたわ」
大人たちは皆広がる花園を見て、今日という日の特別を思い出す。
崩壊した文明は人々の心から余裕を失わせるだろう。けれど、時に思い出すこともできるはずだ。
子供らにつなぐのは、何も生きる術だけではないことを。
「貴方の闇に、希望の輝きを――」
澪の歌声が荒野に響く。
明日を望むことで精一杯であった人々に一年後を望ませるだけの力。それが澪にはあるのだ。
子供たちもまた澪の歌声に顔を上げる。
そこにあったのは絶望に塗れた表情ではない。彼等の心を色鮮やかに彩るものであった。
ゆえに澪は歌声と共に子供らに魔法の飴玉を手渡していく。
口に含めばカロカロと幸せの音が響き、甘さが広がっていく。
それはきっと幸せの音と味。
大人たちには暖かいパイを。切り分け、分け合うことを前提とした料理。助け合い、奪い合うことを忘れる暖かさを澪は齎すのだ。
「ありがとう! ……えっと」
「サンタさん、でいいんだよ」
そう告げる大人と子供。
澪は微笑むだろう。感謝の言葉にではない。彼等の瞳に一年後の今日へと思いを馳せる色が宿ったことに、澪は微笑むのだ。
彼等の一年が、今日という日を境に変わる。
辛く苦しいことも多い。けれど、それでも一年後にやってくる今日という日を楽しみに生きることができるのならば、艱難辛苦が続く日々もきっと乗り越えられる。
だからこそ、澪は告げるのだ。
サンタから贈る幸せの魔法を。
その言葉は。
「メリークリスマス――」
大成功
🔵🔵🔵
柊・はとり
うわコスプレ感すげえ
押しに負けてサンタ衣装を着たものの
物凄く居心地が悪い
俺はナイアルテの後ろに隠れて
ひっそりプレゼント配る係やるんで
ていうか寒くね?カイロ持っとけよ
クリスマスといえば…
痴情のもつれによる殺人…
物心ついた時には俺は既に
サンタの正体を推理していた…
特殊すぎる人生の事は一旦忘れ
未来の為にこの力を活かそう…
プレゼントは色々用意したんで
相手が何を欲しがってるか
直感で推理して渡してく
愛想担当はナイアルテに任せた
メリークリスマス(棒読み
包みが開かれる瞬間
推理が当たったかどうかは
やっぱり気になる
喜んで貰えれば嬉しいな
一個余ったやつはナイアルテにやるよ
多分欲しいものが入ってる筈だ
いつもありがとな
赤と白の衣装。
それは冬の風物詩でもあったし、ある意味で使い古されたものであった。
だからこそ、柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)はそれを身にまとった己の姿を評してこう言ったのだ。
「うわコスプレ感すげえ」
姿見で自身の姿を確認する。
どう考えてもコスプレである。ぬぐえないものがそこにあったし、なんというかこういう事をしている自分がどうにもむず痒く感じたかもしれない。
普段なら嫌だと突っぱねるところであったが、押しに負けてサンタ衣装を身にまとったのだ。
実に居心地が悪いものである。
グリモア猟兵が全部悪い。
アポカリプスヘルにクリスマスを齎すだけでいいのなら、別にサンタに扮する必要など何処にもなかったのだ。証明終了というやつである。
しかしながら、ぐいぐいといつものテンション以上で猟兵たちにサンタ衣装を押し付けてくる豪腕ぶりにはとりもまた押し切られてしまったのである。
「クリスマスと言えば……」
思い出すのは痴情のもつれによる殺人。
まあ、高校生探偵としてはある意味定番であろう。定番かな? そうかな? と思わないでもなかったが、物心つくときにはすでに、はとりはサンタの正体を推理していたのだ。
「いや、そんな驚いた顔をされても……わかるだろう? 様々な物的証拠、状況証拠……統合すればサンタクロースの正体なんてのは……あっ」
はとりはそこで気がついたのだ。
もしかして、グリモア猟兵はサンタクロースは、それとは別にいると思っているのかも知れないと。
「……俺の人生は特殊すぎるからな。一旦忘れてくれ。さあ、未来のためにこの力を活かそう」
誤魔化すように、はとりはその瞳をユーベルコードに輝かせる。
どう考えても、おかしなタイミングで話を切り上げたが、そろそろグリモア猟兵は自分の背後から出て、自分でプレゼントを配ってほしいなと転移を維持しながら思うのだ。
はとりは愛想をグリモア猟兵に担当してもらいながら、自分はプレゼントを子供らに手渡していく。
アポカリプスヘルの『拠点(ベース)』の一つに彼は降り立ち、子供らとついでに大人にもプレゼントを配っていた。
しかも、相手が何を欲しがっているのかを直感で推理し、彼等の望むものを手渡そうとしているの。プレゼントの貯蔵はたっぷりある。そこから人々の顔を見て、プレゼントを手渡す。謂わば、作者への挑戦状(アンフェア)ならぬ、プレゼントを渡される側への挑戦状である。
ただし、直接手渡すのが気恥ずかしいものもあるのかもしれない。
愛想担当を任せて、メリークリスマスと棒読みである。
「ていうか寒くね? カイロ持っとけよ」
そういう気遣いできるのならば、自分で手渡した方がきっといいと思うのにと思わないでもなかったけれど。
それでもはとりは頑として壁にしたグリモア猟兵の背後で人々の顔を見やる。
「推理ショーならぬ、プレゼントショーってやつだ。これは俺の探偵としての意地でもある」
はとりは次々と『拠点』の人々にプレゼントを渡していく。
彼にはこれを。彼女にはあれを。あの子にはこれがいい。
そんなふうにはとりは、誰かのことだけを考えて推理をしていく。それはいつもの事件とは異なるものであったけれど、楽しさを覚えるかも知れない。
「推理が当たったかどうかは、やっぱり気になる」
なら、自分で確かめればいいとグリモア猟兵がくるりとはとりの背後に回ってその背を押す。
あ、と思う間もなくはとりは見ただろう。
そこにあったのは人々の笑顔であった。推理の正誤は言うまでもない。あの笑顔が全てを物語っている。
胸からあふれるものがあったかもしれない。
すでに一度は死した肉体。
けれど、胸にあふれる暖かな感情は朽ちたものではなかっただろう。
プレゼントを入れた袋をしまう。最後の一つが余っていた。ならば、これは自分のものではない。
そう言って手伝ってくれた壁、もとい助手、もとい愛想担当に差し出すのだ。
「やうりょ。多分欲しい物が入っているはずだ。いつもありがとな」
礼を告げるはとり。
しかし、これでは、はとりにプレゼントはない。
「いいや、俺はもうもらっているさ」
探偵は己の推理で泣くものの居ない景色を見やる。そこにあったのは人々の笑顔。それが今回の報酬にして、クリスマスの奇跡だと微笑むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
城野・いばら
まぁ素敵!ありがとう、グリモアのアリス
サンタないばらで
夢を届けるお手伝い、頑張ってくるね
私もね去年初めてクリスマスを経験したの
きらきらとわくわくがいっぱいの日
言葉だけでは難しいから…ふふ、作っちゃいましょ
【UC】で大きなクリスマスツリーを創造
魔力の糸で紡いだ、今日限りの一時の魔法だけれど
明日を、未来を、想う希望の一つになれたなら
オーナメントもあるから飾って遊びましょうと
小さなアリス達を手招いて
クリスマスのお歌を歌うのもきっと楽しいわ
【小さなうたごえ】開いて、愉快な仲間の皆と歌唱
勿論、プレゼントもあるよ
ドライフルーツやお花の砂糖漬け
色鮮やかな、食べられる宝石さんを今年一年頑張ってきた皆に
大きなアリスには、暖かい生地や清潔な布を
持てるだけの僅かな資材だけれど、
私も裁縫で服や家具生地の補修でお手伝いが出来れば
飾ったり、歌ったり、プレゼント交換したり
過ごし方は皆其々
この世界らしい聖夜になるといいね
メリークリスマス
その衣装は赤と白に彩られた聖者の姿。
サンタクロースと呼ばれる御伽の世界に在りし存在のような伝承。それを身にまとうことで城野・いばら(白夜の揺籃・f20406)は、その頬にほほえみを湛えた。
「まぁ素敵! ありがとう、グリモアのアリス。サンタないばらで夢を届けるお手伝い、頑張ってくるね」
彼女はいつもとは違う赤と白のサンタクロース……もといサンタガールとなってグリモアベースからアポカリプスヘルへと転移する。
グリモア猟兵が用意した衣装であったが、彼女は見事に着こなしていた。
彼女の中のクリスマスの思い出は去年が初めてである。けれど、そこに浅い深いの貴賤はない。
彼女は去年の今日、たくさんのきらきらとわくわくを感じた。
それが彼女にとってのクリスマスである。
あのきらきらとわくわくを他の人にも伝えることができたのならば、それはどんなに素敵なことであろうかと彼女は思ったのだ。
「言葉だけでは難しいから……ふふ、作っちゃいましょ」
彼女の瞳がアポカリプスヘルの『拠点(ベース)』の一つで輝く。
「紡いで、結んで、おおきな緑になぁれ」
Wonder and Imagination(ワンダー・アンド・イマジネーション)。
彼女のユーベルコードは、彼女自身の想像から創造される。いばらの中にあるあの日の煌きを彼女は創り上げるのだ。
大きな大きなクリスマスツリーは、魔力の糸で紡いだ一日限りの魔法であったけれど、それは人々の目に奇跡として映ったことだろう。
「なにあれ、なにあれ!」
子供たちは突如として現れたクリスマスツリーにはしゃいでいる。大人たちだってあまりのことに言葉を失っているだろう。
いばらは降り立つ。
ふわりと音も立てずに寒空の下に集った人々を見やる。手にしていたのは数々のオーナメント。
「さあ、小さなアリス達。おいで」
いばらが子供らに手招き、その手にオーナメント、クリスマスツリーに飾り付ける大小様々な装飾品を手渡す。
それは星の形をしていたり、色とりどりの楽しげなものばかりであった。
「これをつければいいの?」
「ええ、おじょうず。こちらをごらんになって」
いばらの手にした絵本。それは飛び出す絵本であり、小さな歌声がかすかに響いてくる。それは嘗て在りし失われた文明の残滓の歌声。
クリスマスの夜に謳われる歌。
それをいばらは子供らに聞かせる。けれど、聞くだけじゃない。大人たちは、その嘗て在りし歌声を聞き、思い出すのだ
自分たちはこの歌を聞いたことがあると。
そして、口ずさむのだ。それをいばらは微笑み、ともに歌う。きっと楽しい。
「歌いましょう、歌を。そうすれば心に灯るでしょう、燈火が」
いばらの言葉とともに歌声が重なっていく。
大人も、子供も、皆が歌を重ねていく。知らなくてもいい。今から覚えればいいし、一年後にまた思い出せばいい。
明日を望むことすら難しい世界にあって、一年後を想うことにどれほどの意味を見出すことができるだろうか。
それはいばらにとって大きな輝きのようにも思えたことだろう。
人々が明日ではなく、遠い一年後を想うこと。それがこの荒廃した世界アポカリプスヘルに灯る燈火にして篝火であった。
「素敵、とても。勿論、プレゼントもあるよ」
そう言っていばらは共に歌い、クリスマスツリーに飾り付けした子供たちにドライフルーツやお花の砂糖漬け、色鮮やかな食べられる宝石たちをくバウr野田。
今年一年を懸命に生きてきた人々に。
いばらは、そう思って手渡していく。子供らは見たこともない鮮やかな菓子に目を輝かせる。
その輝きこそが宝石に勝るものであるといばらは知るだろう。
「大きなアリスには、こちらを」
大人たちには今直ぐ必要なものを。暖かい生地や清潔な布を。消耗品ばかりであるが、それでも明日に必要なものである。
いばらは少しだけ申し訳無さそうにしていた。オブリビオン・ストームがやってくるといけないから、持てる物資は僅かであった。
けれど、いばらはそれでもいいと思った。
彼女自身も裁縫や洋服を修繕することができる。
クリスマスツリーの近くに暖かい火が灯る。皆、笑顔になっている。奇跡が起きたと大人たちも子供たちも日々の生活を僅かに忘れている。
「飾ったり、歌ったり、プレゼント交換したり、過ごし方は皆其々……」
全てが間違いなんてことはない。
全てが正解ということもない。
けれど、いばらの瞳に映る人々の笑顔は本物だ。
たとえ、文明が荒廃した世界であったとしても。それでも特別な日はやってくる。明日に続く一年後にまたやってくるのだ。
だからこそ、いばらは微笑み、人々に告げる。
それはささやかだけれど、それでも人の心の暖かさを伝える言葉。
「メリークリスマス」
短いけれど、己の心に灯った燈火をおすそ分けする言葉。
また一年後に思い出してほしい。
そんな願いを込めて、いばらは小さなアリスと大きなアリス。彼等がまた再びこの日を迎えることを望む。
だから、もう一度つぶやいたメリークリスマスは雪のように口の中に溶けて――。
大成功
🔵🔵🔵