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血と狂宴のアイジス

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●夜会
 夜の帳が降り、月もない夜。
 広々としたパーティフロアに絢爛な衣装に身を包んだ人々が集まっていた。豪奢なシャンデリアが彼らの頭上で蕩けるような琥珀の煌めきでフロアを照らしている。
 黒服の給仕がワイングラスに赤い液体を注ぐ。満足げに頷くのは恰幅の良い壮年の紳士だ。伴ったふくよかな女性は楽しそうに着飾った女性同士で談笑している。
 丸い卓が幾つも配置され、人がそれらを囲む。卓は何れも大輪の薔薇を中央に飾り咲き誇らせ、その周囲を所狭しと贅を極めた大量の料理が埋めていた。
「お集まりいただき、ありがとうございます」
 可憐な声がした。
 よく通る声は幼さの残る少女の声だ。
 人々の注目を集め、視線を集めながら嫣然と微笑むのは、蝋のような白い肌を深紅のドレスに包んだ吸血姫。
 少女は手短に挨拶をすると、一礼して下がる。代わりに人々の前に連れられたのは生贄として用意された年若き乙女たち。震える乙女たちを目にして集まった人々が喜色を浮かべる。


「お集まりいただき、ありがとうございます」
 グリモアベースの一角でルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)が膝を付く。
「ダークセイヴァーで、ヴァンパイアが夜会を催します。
 夜会を主催するのは、ヴァーミリオン家に連なる吸血鬼の少女、リーシャ・ヴァーミリオン。人間のことは玩具としか思っておらず、無邪気に人々を蹂躙するヴァンパイアです。彼女は槍の名手との噂。お気をつけください。
 夜会には他のヴァンパイアも招かれ、生贄を用意し、ヴァンパイア流の宴を楽しもうとしています。夜会に忍び込んで彼らの夜会を潰してください」

 ルベルは猟兵を見上げ、言う。
「会場に集まっている客やスタッフはヴァンパイアとその従者です。
 リーシャ・ヴァーミリオン以外は皆様のお力であれば容易く倒せる雑魚ばかり。生贄の乙女たちを救い、敵を悉く滅ぼして骸の海へと還してくださいますよう、お願いいたします」
 ふと立ち上がり、ルベルは会場のある建物の見取り図を見せた。手に持つ杖が建物の形をなぞる。
「この建築はヴァンパイアにより造られたのですが、要所にヴァンパイアの血を木に吸わせ、ひとつの周囲の生気を吸い取り邪なる気を高めるような呪いを仕掛けを持つ呪われた建築物です。
 おかげで、この建築物の周囲は木々が枯れ、人々が生気を吸われ疫病が流行る呪われた地になっています。そのため、夜会に蔓延るヴァンパイアたちを滅ぼしたのちは、この建物の破壊もお願いいたします」

 そして、補足する。
「皆様が会場へ到着するのは、リーシャ・ヴァーミリオンが夜会に姿を現し、ひとこと会場の来客に挨拶をしたのち、どこかへと姿を消してしまった後となります。
 彼女は好戦的なヴァンパイアゆえ、派手に暴れてやれば武器を持ち喜んで姿を見せることでしょう。
 作戦の流れとしては、夜会を潰して弱きヴァンパイアたちを蹂躙。のち、建物を破壊。そして、出現したリーシャ・ヴァーミリオンを討つ。この流れとなります」

 ルベルは頭を下げた。
「ヴァンパイアたちは、100年ほど前に人類に勝利して以来一方的な支配と搾取を謳歌しています。彼らはそれが当然だと思っている……。
 その鼻っ面を引っ掻いてあげましょう。
 僕は共に戦うことができないのですが、どうか、よろしくお願いいたします」


remo
 おはようございます。remoです。
 初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
 今回はダークセイヴァーでの冒険です。

 1章は夜会に乗り込んでいって雑魚ヴァンパイアやヴァンパイアの従者を狩ったり、生贄の女の子を助けていただきます。
 2章は建物を破壊していただくことになります。
 3章は吸血鬼のリーシャ・ヴァーミリオンとの戦闘です。

 キャラクター様の個性を発揮する機会になれば、幸いでございます。
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第1章 冒険 『ヴァンパイアの夜会』

POW   :    真っ正面から敵に戦いを挑んだり建物等を破壊してまわる。

SPD   :    罠の設置や先回りして生贄のダッシュを行います。

WIZ   :    変装して侵入し話術によって敵を撹乱します。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

オリヴィア・ローゼンタール
よくもここまで醜悪な宴を……
私が前に出て耳目を集めます、救出は皆さんにお願いします

【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】【破魔】で槍に聖なる炎の魔力を纏い攻撃力を増大
聖槍よ――邪悪を討つ力を私に!

真正面から館に乗り込み、攻撃を仕掛ける
敵の注目を集めることで生贄になった方々の救出をし易くする(【パフォーマンス】【存在感】)
【怪力】にて聖槍を【なぎ払い】、【衝撃波】を起こして有象無象をまとめて【吹き飛ばす】
威嚇するように館の柱などに傷を付け(【破壊工作】)、後の建物破壊をし易くする
邪悪な圧制者どもよ!
貴様たちを狩る者が現れたぞ!
この地より生きては帰れぬものと識れ!


蘭・七結
ナユと同じ血のもの達
夜に咲く華。ヴァンパイア
その姿だけは。美しいと感じるのに
仮面を剥げば中身は下劣で、本当に悪趣味ね
ヒトは玩具。その驕りは、命取りだわ
あなたたちは〝玩具〟の血が混ざったナユが散らしてあげる

纏うはワインレッドのベルベットドレス
金装飾の黒い和柄ストールを重ね、ドレスコード
夜会に紛れ込み〝明けぬ黎明〟展開
身体ではなく、精神に呼び掛ける〝毒〟
静かに、然れど確実に。あなた達を蝕むでしょう
ナユの毒のお味は、いかがかしら

纏うドレスの下に潜む『彼岸』と『此岸』の短刀
催眠が掛かった者へ声を掛けて誘惑し、騙し討ち
夜会の中で舞い踊るように
ひとり、またひとりと。散らしていきましょう

✼アドリブ、絡み歓迎


宮落・ライア
深呼吸し、
さてと、ボクは真正面から行くかな!
侵入とか苦手だしね!

建物の外に立ち、大きく大剣を振り上げ、構える。
【怪力・覚悟・鎧砕き・衝撃波・森羅万象断】で
建物の壁ごと盾に切り裂く。
間髪居れずに再度、今度は真横に大きく振りかぶる
吸血鬼が見えれば【殺気】を飛ばして注意を引いてから
【激痛耐性・捨て身の一撃・薙ぎ払い・二回攻撃(森羅万象断)】
で横に薙ぎ払う。
今のボクが斬れるのは、500mそこら程度。
海も山も空も斬れはしないけど、悪は切れる!

え?生贄の子達?大丈夫大丈夫。【野生の感】がそういってる。
うん、ホント、信じてるよ?


ロー・オーヴェル
鼻っ面引っ掻くだけでいいとは
善人だなグリモア猟兵

「まァ、それ以上のことをやるのが……俺達の役目ってことだな」

姿を消した後は一番の上玉の生贄を披露して
夜会をさらに盛り上げるのだろう

生贄という『食糧』は小分けにしないで
食糧庫といえる程度の広さの部屋で保管していると推測

グリモア猟兵からの見取り図を見て生贄救助に行く
(図が貰えなければ頭の中に記憶していく)

娘達の位置は
【聞き耳】【追跡】でその位置や痕跡を探りつつ
居る場所に施錠あれば【鍵開け】
音は立てぬ様【忍び足】

発見後はまずは素性を話して必ず逃がすと告げる
【コミュ力】【優しさ】【勇気】も活用し相手の信を得る
「さて、ここからは……夜会第二章の始まりだな」


レナータ・バルダーヌ
女の子たちが蹂躙されて羨ま…かわいそうな目に遭う前に、なんとしても助けなければいけませんね!
幸い彼女たちとは歳が近そうなので、ここは同じ境遇を装ってヴァンパイアの皆さんの隙を突こうと思います。

わたしは生贄のふりをして、さりげなく夜会に紛れ込み、いたいけな雰囲気を漂わせてヴァンパイアの皆さんの興味を誘います。
そして、ある程度の人数が集まるか、生贄の子たちに危害が及びそうになったら、【ブレイズペタルテンペスト】で一気に焼き払います。

出来るだけたくさんのヴァンパイアを一網打尽にするため、わたし自身は何かされてもギリギリまで抵抗はしません。
……決して他意はありませんよ?


フレミア・レイブラッド
【POW】
露出度高めの華やかなドレスに身を包んでパーティに潜入。
気まぐれな性格故、最初は他の猟兵の動きを見て、破壊等の騒ぎにも動じずにワインや卓の料理を楽しみつつ、生贄として連れて来られた少女達を【サイコキネシス】で保護。
手を出そうとした客を素知らぬ顔で吹き飛ばしたり、破壊の余波から守ったりしてる。

ある程度料理を楽しんだら、【サイコキネシス】で少女達を守りつつも自分も破壊活動に参加。柱をへし折ったり周辺を破壊しつつ、参加者のヴァンパイア達をサイコキネシスで肉塊に変えたり、ランスで串刺しにする等、笑顔でひと暴れして回る。

「これくらいの役得があっても良いわよね。仕事はしてるのだし」

※アドリブ等歓迎


ラスベルト・ロスローリエン
何処の世界も権勢に溺れた暴君の振る舞いは変わらないね。
鼻っ面を引っ掻くか……連中相手なら傲慢の牙を折るというのも捨て難いかな。

◇WIZ 自由描写・連携歓迎◇
古参の大貴族といった風情を装い堂々と出席するよ。
生贄の少女に牙を突き立てようとしている輩を【念動力】で弾き飛ばす。
『遠来の賓客たるこの僕を差し置いて馳走を貪ろうとは何事か――恥を知れ、下郎』
大仰な口調と素振りで嘆き夜会を乱しつつ生贄の身柄を奪い取ろう。
ついでに二、三人ほど天井に放り貴族の癇癪を演じようか。
場の混乱が深まったら少女の手を取り《光精の悪戯》で安全な場所に連れ出す。
『怖がらせてすまない……演技をする内につい興が乗ってしまった』


トリテレイア・ゼロナイン
吸血鬼の夜会に対する強襲作戦ですか
殲滅も大事ですがまずは生贄の乙女たちの安全を確保しておきたいですね

突入は他の猟兵の破壊工作や策が効果を発揮して会場が混乱し始めた直後、機械馬に「騎乗」し「怪力」で振るう槍や馬の「踏みつけ」で立ち塞がるものを排除しながら生贄達の下へ急行
彼女たちを背中に「かばい」ながら奪還を狙う吸血鬼の攻撃を「武器受け」「盾受け」で迎撃、「カウンター」の隠し腕で捕まえ動きを封じ、格納銃で仕留めます

生贄の方たちには騎士道物語から模倣した「優しさ」を込めた声で
「皆様、よくぞここまで耐えてこられました。私達がこれよりお救いして差し上げます。暫しの辛抱を」
と声をかけて勇気づけましょう


セシリア・サヴェージ
【POW】

ヴァンパイアやその眷属が一堂に会す。なんとおぞましい光景か。
ですが、人々を苦しめるヴァンパイアたちをまとめて倒すチャンスでもありますね。

ヴァンパイアをいち早く殲滅したいところですが、まずは少女たちの身の安全を確保しなければなりませんね。
会場に突入したら少女の近くにいる敵の撃破を優先し、少女が害されることがないよう護ります。【かばう】
少女の安全が確保されたならば、UC【ブラッドウェポン】で我が暗黒剣を強化し本気を出すとしましょう。
「無辜の民を虐げ、享楽に耽る者どもよ。今こそその罪を、お前たちの血で贖ってもらおう」


リーヴァルディ・カーライル
…ん。任せて
この地に集まった吸血鬼は、一匹たりとも逃しはしない
かつてと同じ滅びの道を歩ませてあげる…。

少女の事は他の猟兵に任せ、私は大仰な振舞で存在感を放ち、
吸血鬼の目を引き付け彼女達に注意がいかないようにする

…覚悟は良い?狩られる恐怖を教えてあげる

呪詛の力を溜めた【影絵の兵団】を二重発動(2回攻撃)
ダメージを受けると自爆して傷口を抉る呪いを付与し、
出入口を塞ぐ事で吸血鬼達の足止めを試みる

…抵抗は無意味。素直に運命を受け入れなさい

敵の攻撃を第六感と【吸血鬼狩りの業】により見切り、
怪力を瞬発力に変えて敵に接近
生命力を吸収する大鎌をなぎ払い仕留める

…今までの悪逆の代価を支払う時よ、吸血鬼



●宴
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が会場に突入するべく準備をしていた。
(「ヴァンパイアやその眷属が一堂に会す。なんとおぞましい光景か。
ですが、人々を苦しめるヴァンパイアたちをまとめて倒すチャンスでもありますね」)
 そっと視線を落とし、指先で優しく撫でるのは母の形見の指輪だ。ふ、と息をつき、再び会場へと視線を戻す。会場には護るべき者がいる。そして、猟兵の仲間がいる。

 リーシャ・ヴァーミリオンが退室した後、黒服が生贄の乙女たちをフロアの中央へと連れて来た。会場中に騒めきの波が立つ。ヴァンパイアたちは爛々とした目で見つめ、1人また1人と乙女のもとへと寄っていく。他者の眼を気にしてか、牙を剥いて躍りかかる者はまだいない。

 煙るようにそれを見ているのは灰銀の髪の可憐な少女だ。ワインレッドのベルベットドレスに金装飾の黒い和柄ストールを重ね静謐に佇む彼女は男性ヴァンパイアに熱心に言い寄られていた。やがて少女は男性を誘い、物陰へと消えていく。
「あの娘、これで5人目だ」
 灰の髪を揺らし呟く男性がいた。
「うまくやるものね」
 美女が感心するように言い。
「生贄、ね」
 2人は瞳を震える乙女たちとそれを取り巻くヴァンパイアの群れへと移した。
「ワインを頂くわ」
 胸元を大胆に開けた華やかなドレスに身を包んだ美女は豪奢な金髪を揺らし目を細める。さして興味はない、と言った様子で美女は卓上へと視線を戻し、ワインを手に取った。
「そちらになさいますか?」
 美女の大胆な衣装に目を奪われていたヴァンパイアの男性が意外そうに尋ねる。
 彼は別のワイングラスを手に、軽く揺らして香りを楽しむ貌をした。
「こちらは今朝採ったばかりの肥えた贄の血。おすすめですよ、レディ」
 美女は軽く首を振る。
「ワインが飲みたい気分の時もあるわ……ほんの気まぐれよ」
 横合いから声がかけられる。ひどく落ち着いた静かな声だ。
「君、無粋な茶々をいれるものではないよ。彼女のしたいようにさせるといい」
 ヴァンパイアの男性は声の主へと視線をやり、畏まった。声の主は灰色の髪をしたひと目で格の違いを感じる吸血貴族であったのだ。
(「機嫌を損ねれば一瞬で首が飛ぶに違いない、古参の貴族だ。こんな貴族が顔を出すとは、さすがヴァーミリオン家といったところか」)
 リーシャ・ヴァーミリオンに感心するヴァンパイアの男性にヴァーミリオン家の侍従の声が届く。

「さあ、最初の贄でございます」

 吸血貴族は視線を移す。美女はその間、気ままに料理を摘まんでいた。
 ヴァンパイアの視線が集まる中、乳白色の髪に雪白の肌をした娘が縄で縛られ最前列へと連れられていた。
「ああ……」
 娘が睫を伏せて切なげに息を吐く。髪には今朝蕾が開いたばかりといった様子の初々しい花が飾られ。その手首は少し力を入れれば容易く手折れそうなほど頼りなくか細い。背には片羽があった。片方しかない羽を震わせている様は手負いの小鳥といった風情で嗜虐心を煽る。
「ほう、これは珍しい贄。さすがはヴァーミリオン家」
 身近にいたヴァンパイアが手を伸ばす。我も我もとヴァンパイアたちが寄って集まり、1人が顎を持ち上げた。
「見よ、この透き通るような柔肌を。瞳はまるで宝石のようだ」
 すん、と香を楽しむように鼻を寄せれば熱い吐息が娘のうなじにかかり、娘が身じろぎする。その様子がまた見る者の欲を駆り立て、ヴァンパイアは我慢できないとばかりに牙を剥く。欲に塗れた唾液を滴らせ、娘のうなじへと突き立てようとし。
「ああっ……」
 どこか期待に満ちた声が生贄に成りすました娘――レナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)から漏れる。彼女は被虐の狂気を有していた。

 と、そんな彼女にヴァンパイアの牙が触れる直前。
「ガッ!?」
 そのヴァンパイアが不可視の力により弾き飛ばされ、壁に激突した。同時に周囲にいた他のヴァンパイアたちも天井まで吹き飛ばされ、シャンデリアに衝突して諸共に落下する。
「キャアアアッ」
「な、なんだ!?」
 悲鳴が起きた。混乱の中、静謐な声が響く。

「遠来の賓客たるこの僕を差し置いて馳走を貪ろうとは何事か」

 ワイングラスを手に下級ヴァンパイアたちを睥睨するのは、灰色の吸血貴族――を装っているラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)だ。
 隣で上品にワインを口に運びながら生贄の乙女たちをサイコキネシスで守る金髪の美女はフレミア・レイブラッド(幼き吸血姫・f14467)だ。
 ヴァンパイアに成りすましていた2人の猟兵は生贄を護りながらヴァンパイアの群れを吹き飛ばしていく。

「実に不快だ。ヴァーミリオン家は子飼いのヴァンパイアに躾をし忘れたと見える。僕が代わりに躾てやろう」
 言いながらワインを口に運ぶ『吸血貴族』のラスベルトの周囲でヴァンパイアたちが次々と吹き飛ばされ天井に磔にされた。
「血を啜るよりもこっちのほうが愉しいわ。ねえ、そう思わない?」
 ほんの戯れと言わんばかりに楽しそうな笑顔を浮かべ、フレイアが柱を折る。同時に柱の近くにいたヴァンパイアの頭が破裂し脳漿が撒き散らされ、ぐしゃりと下の体もひしゃげて肉塊へと姿を変えた。
「お、おお。お気を、お鎮めくださ……、ッグ、ア」
 言いかけた闇の眷属がまた1人吹き飛ばされ、潰される。

「どうした、一体何が?」
 眷属たちが慌てふためいていた。
「古参の吸血鬼の方々がどうも癇癪を起されたようで――」
 返す言葉は最後まで続かなかった。
 バシャ、と血の波が彼が身を寄せていた壁に降りかかる。遅れてゴトリと床に伏すのは猟兵に胴腹を両断されて2つに分かれた上半身と下半身だ。
 床に血がひたひたと染みていく。

 黒く禍々しい暗黒鎧のセシリアは返り血を拭うこともなく冴え冴えとした瞳で会場を見渡し、生贄のもとへと駆ける。
 駆けながら暗黒剣へと自身の血を飲ませれば嘗て聖剣と呼ばれしスレイヤーが禍々しさを増していく。
「無辜の民を虐げ、享楽に耽る者どもよ。今こそその罪を、お前たちの血で贖ってもらおう」
 生贄を確保すべく動いていた闇の眷属たちを凄絶なる一振りで薙ぎ倒し、ちらりと見れば『生贄』のレナータが身近にいたヴァンパイアの群れへと灼熱の花びらを放ち、燃え上がらせていた。
「大勢のお相手は目移りしてしまっていけませんね」
 いつの間にか縄は解けていた。否、味方が解いたのだ。

 会場を出てすぐの茂みで、寄り添う影があった。
「会場が騒がしいな」
 ヴァンパイアの男が言った。
(「味方が動き出したのね」)
「生贄に湧いているのではないかしら。あなたは、ナユよりも生贄に興味があって?」
 蘭・七結(恋一華・f00421)は誘い出した男の胸元へと淑やかに左手の指先を置いた。下等なる家畜に興味を奪われて哀しむかのように、妬心交じりの瞳を魅せれば相手は首を振る。
「まさか。私の眼には貴女しか映っていないよ」
 男がそう言うと七結は夜にひそやかに咲く花の如く微笑み、身を寄せる。右手はドレスの裾を捲り腿を這う。そこに潜めた短刀を。
 鬼殺しの此岸の残華を一瞬で閃かせれば男の首が血を噴いた。声をあげることも叶わず絶命しようとしている男の瞳は呆然とした色を湛えていた。
「ナユの毒のお味は、いかがかしら」
 その瞳に閃く彼岸の残華が映る。七結は物言わぬ骸を見下ろし、此岸と彼岸の血を拭う。
「始まったみたい」
 そう言いながら骸を闇に屠る。
 彼女は精神を静かに冒す毒、〝明けぬ黎明〟にてヴァンパイアを1体ずつ誘惑し、連れ出しては密やかに狩り続けていたのだ。
 闇に葬った骸の山と会場にまだ犇めいているヴァンパイアたちへと七結は呟く。
「ナユと同じ血のもの達、夜に咲く華。ヴァンパイア。
 姿だけは。美しいと感じるのに……仮面を剥げば中身は下劣で、本当に悪趣味ね。ヒトは玩具。その驕りは、命取りだわ」
(「あなたたちは〝玩具〟の血が混ざったナユが散らしてあげる」)

 そっと会場を除けば、今まさにリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が会場の出入り口で大立ち回りを繰り広げている。
 リーヴァルディの呼び出した260体もの小さな影絵の兵団が出入口を塞ぎ脱出しようとする闇の眷属たちと戦い、時折自爆をして敵を巻き添えにしている。
 リーヴァルディ自身へと襲い掛かる窮鼠の如き敵がいればダンピールの紫の瞳が冷たく煌めき大鎌でその命を刈り取っていた。

 生贄と吸血貴族に気を取られていた会場の至る処で新たな悲鳴があがった。
「敵だ!」
「尋常じゃない、只の人間じゃない」
 俄かに会場は恐慌状態に陥った。1人の下級のヴァンパイアは影の兵団に塞がれていない扉を見つけ、従者を盾に逃げようとしていたが、扉へと駆け寄った途端に扉ごと吹き飛んだ。
「なっ!? なんだあれは!」
 目にした者が目を瞠る。
 扉から出現したのは鋼鉄の馬に騎乗した白き鉄人形。彼らの眼にはそう見えた。トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)である。
「仲間の猟兵はうまくやっているようですね」
 呟き、トリテレイアは馬上から槍を振り回す。槍先が丸テーブルを引っ掻けてテーブルごと怪力のまま振り回し馬で駆け、進行途中のテーブルもすべてを薙ぎ倒し、数重のヴァンパイアと眷属を轢き殺した。

 広い会場の至る処で騒動が起きている。
 猟兵が1人剣を振り槍を振れば血飛沫をあげてヴァンパイアと眷属たちが薙ぎ倒されていく。炎もあがっていた。
 会場中に充ちるのは穢れた血と焦げた肉の匂い。凄惨な光景に生贄の乙女たちは震えあがり怯え切っていた。

 トリテレイアはそんな乙女たちのもとへ赴くと優しい声をかけた。言葉を選び、騎士道物語に登場する騎士のようにと意識して紡ぐ。
「皆様、よくぞここまで耐えてこられました。私達がこれよりお救いして差し上げます。暫しの辛抱を」
「怖がらせてすまない……演技をする内につい興が乗ってしまった」
 ラスベルトもそう言うと乙女たちの手を取る。
「殲滅も大事ですが、まずは乙女たちの安全を確保したいですね」
 トリテレイアが言うと、ラスベルトは頷いた。そして、深遠の力の一片を手繰り寄せる。
「遍く大地を照らす無垢なる友。この小さき企みに耳寄せ揺蕩う水晶の羽衣を貸し与え給え」
 声に応えるのは清浄なる気を纏う光精だ。シャンデリアの琥珀光から舞い降りて挨拶をする光精へと若きエルダールは目礼を返し、続ける。
「天与の光逸らし世界の瞳欺きて我は逃れ得たり」
 生贄の乙女のが1人その姿を透明に変えた。制約もあり、疲労もする術だが、ラスベルトは顔に出さずに平然として乙女を導く。
「術だけで全員を守るのは難しいが、ここにいるのは彼女たちの精神的にもよくないだろう。順に避難させようと思う」
「それでは、警護します」
 左右をトリテレイアとセシリアが固め、彼らは会場に捕らわれていた生贄の乙女たちを避難させようと行動を始める。
 震える乙女の手をしっかりと引き、避難させながらラスベルトは呟く。
「何処の世界も権勢に溺れた暴君の振る舞いは変わらないね。
 鼻っ面を引っ掻くか……連中相手なら傲慢の牙を折るというのも捨て難いかな」

 乙女たちが連れ出されようとしている会場では他の猟兵たちが派手に立ち回り、注意を引いていた。

「聖槍よ――邪悪を討つ力を私に!」
 オリヴィアは破邪の聖槍に炎を纏う。魔を祓う聖なる炎が黄金の穂先を包むように燃え盛る。白銀の柄を確りと握りオリヴィアは走る。
「裁きの光は此れに在り!」
 声高く叫ぶ。眠る吸血鬼の棺の蓋すら開けてやろう、と談笑していたヴァンパイアの群れを纏めて槍の一振りで薙ぎ払った。恐るべき膂力で揮われた一撃は衝撃波を起こし近くの卓ごとヴァンパイアたちを吹き飛ばす。
「キャアアアアアッ」
「何事ダッ」
(「よくもここまで醜悪な宴を」)
 思うのはそれだった。
「邪悪な圧制者どもよ!」
 身に纏うストイックなシスター服の裾を翻し、オリヴィアは聖槍で柱に十字を刻んだ。
「貴様たちを狩る者が現れたぞ! この地より生きては帰れぬものと識れ!」
 その声は鮮烈な雷鳴の如くヴァンパイアの耳朶を打つ。滅びの齎し手が来たのだと彼らは識る。
 慄き、血を撒き散らし、肉片へと化していくヴァンパイアたち。
「警備は何をしてるんだ!」
 老年のヴァンパイアが青筋を立てて怒鳴り、直後にオリヴィアの槍にその身を切り刻まれた。

 建物の外を護っていた警備は全滅していた。そして、壁が縦に切り裂かれる。切り裂いたのは宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)の大剣だ。
「警備は全部倒しちゃったよ!」
 言いながら大剣を真横に振り。壁の残骸と共に壁際にいたヴァンパイアたちが身を斬られ血を撒き散らした。
「海も山も空も斬れはしないけど、悪は切れる!」
 爛々と赤い瞳が輝き、殺気を放つ。
 視認している全てのヴァンパイアへと裂帛の気と共に斬撃を放てば、一瞬のちに全てが血溜まりの海に倒れ伏した。

 ライアはきょろきょろと会場を見渡す。生贄の姿はない。いるはずの味方の姿も数人がない。
(「きっと仲間が助けてくれてるに違いない」)
「信じてるよ?」
 呟く声は笑顔と共に。

「さあ、暴れるか!」
 ライアは大剣を振りながら会場を駆ける。

「ハ、ハア、ハァ……ハ」
 血溜まりを這い、逃げようとする手負いのヴァンパイアがいた。
「あ、ぁあ……、ぁあ」
 カクカクと震える手が床に付き、血にずるりと滑りバシャリと血海に倒れながら必死に顔を上げ、息を吸う。吸った弾みで肺がひきつけを起こし咳き込む。込み上げる熱い衝動は喉をせり上がって口から吐かれ、新たな赤雫を床に落とした。
 ヒュウヒュウという喘鳴の中で――背から腹へとランスが貫いた。串刺しになりビクビクと痙攣すること数秒、沈黙し。
 ランスを引き抜くフレミアは笑顔で次の獲物へと走っていく。

(「これはどうしたことか。一体この者たちは何者なのか」)
 テーブルの下からテーブルの下へと震えながら隠れ移動するヴァンパイアは襲撃者の恐るべき戦闘能力に背筋を凍らせる。見つかればひとたまりも、ない。なんとか見つからないように会場を脱出しなければ、と息を殺して潜んでいたテーブルを這い出した時だった。

「……ぁ……」
 彼は、凍り付いた。

 銀色の冷えやかな月の如きダンピールが彼を見下ろし、大鎌を手に。
「覚悟は良い? ……抵抗は無意味。素直に運命を受け入れなさい」
 ヴァンパイアへと大鎌を振りかざす。

 幾多の罪なき人民の命はヴァンパイアの手によりこのようにして摘み取られてきた。その期間は実に100年を数え、今この瞬間にもこの世界のどこかで。至るところで。
 リーヴァルディは冷たく言う。
「……今までの悪逆の代価を支払う時よ、吸血鬼」
 刃が振り下ろされ、断末魔があがる。
 骸に背を向けリーヴァルディは別の獲物へ襲い掛かる。大鎌を薙ぎ払い、胴を飛ばして絶命させ、跳躍すればシャンデリアに震えながらしがみつき、隠れようとしている蝙蝠がいた。
「かくれんぼ?」
 大鎌を振ればシャンデリアごと破壊され、蝙蝠が人型に戻って倒れ伏す。鮮血が床を浸していく。悲鳴をあげて逃げ惑うヴァンパイアの背に次々と刃を揮い、命を狩る。
「この地に集まった吸血鬼は、一匹たりとも逃しはしない。
 かつてと同じ滅びの道を歩ませてあげる……」

●贄
(「鼻っ面引っ掻くだけでいいとは」)
「まァ、それ以上のことをやるのが……俺達の役目ってことだな」
 ロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)は他の猟兵と離れ、ひとり建物内部を進んでいた。
 生贄である『食糧』は小分けにしないで食糧庫といえる程度の広さの部屋で保管していると推測したのだ。
 その手には建物の見取り図があった。敵に見つからぬよう忍び足をし、寄る気配や足音、声に気付いては物陰へと潜み、やり過ごす。建物の闇では時折宴を抜け出した男女が睦みあっていた。

(「それにしても見事にオブリビオンしかいないんだな」)
 ローは感心する。人を攫ってきて働かせているヴァンパイアも多い中、このヴァーミリオン家で働く者はすべてが闇の眷属で揃えられているようだった。詳細は不明だが、どうやら名のある一族であるのか他のヴァンパイアたちも一目置いている様子でもある。
 闇の眷属が犇めく建物をローは単身で探索し、その耳はついに風に攫われた娘の啜り泣きを拾った。

(「いたか……!」)
 途中で何度か闇の眷属をやり過ごし、施錠された扉を鍵開けして辿り着いた部屋は広く、意外にも温かい空気が満ちている。
「こいつは」
 ローは目を瞬かせた。
 室内は姫君の部屋と見まがうほどに高価な家具が取り揃えられ、床には天鵞絨の敷物が敷かれて壁には白薔薇の壁紙が貼られている。窓には鉄格子があるが可憐な薔薇色のカーテンがそれを覆い隠していた。天井には繊細な金細工の証明が煌びやかな光を放つ。壁には風景画が飾られ、中央のテーブルには肉や野菜、果物をふんだんに使った栄養のありそうな料理が並べられていた。
 しかし、部屋の隅で寄り添うようにしてうら若き乙女たちが啜り泣いている。

「おい、助けにきたぞ。俺の言葉がわかるか」
 ローは口元に指を当てて静かにするようにと合図しながら優しく声をかけた。びくりと肩を震わせて警戒する乙女たちへ辛抱強く言葉をかければ、やがて乙女たちは語る。
 ヴァンパイアは彼女らに餌をふんだんに与えて肌を磨き上げ、舌の肥えたヴァンパイアの賞味に値するほどに状態を整えてから順に味わい殺すのだ。

 遠くで騒ぎが起きている。それがローの耳には届いた。
(「味方は派手に暴れてるみたいだな」)
 乙女たちを逃がす準備をしながらローは呟く。
「さて、ここからは……夜会第二章の始まりだな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『創造のための破壊』

POW   :    心を鬼にしてパワフルに破壊だ!

SPD   :    気持ちを切り替えてスピーディーに破壊だ!

WIZ   :    いろいろ考えたけどマジックで破壊だ!

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●破壊
 パーティフロアは血の海と化していた。蠢く闇はもはやいない。猟兵たちは互いに目を合わせ、頷く。
「建物を破壊し尽そう」
 ヴァンパイアの呪いによる呪われた建物がある限り、周囲の地は生気を吸われた呪われた地のままだ。破壊し、この地を解放すること。
 そして、建物の主であり好戦的なリーシャ・ヴァーミリオンを派手に暴れることで誘き寄せること。
 そのために彼らは各々の武器を持ち、足早に動き出す。

 外では昏雲が穏やかな風にゆっくりと押し流され、月が仄かに顔を覗かせていた。冬月はひんやりとした光で地上を見守っている。
フレミア・レイブラッド
【POW】

一章に引き続き、【サイコキネシス】で楽し気に破壊して回る。
まるで踊るかの様に楽し気にステップを踏んで周りの柱をへし折ったり。
目的としては建物の建築上、重要な支柱となる柱。
破壊すれば後は自重で崩壊する様にそちらを目指し、破壊する。
握りつぶす様に【サイコキネシス】でへし折った後は、脱出ついでに楽し気についでとばかりに周囲を破壊して立ち去る。

リーシャと遭遇した際は、ニコッと笑顔を見せた後、サイコキネシスを駆使しつつ、ランスで近接戦闘。
これまた楽し気に交戦する。

「さて、これで後はこの館も終わりね♪」
「もう少し、パーティの料理も眷属達も楽しみたかったかしらね~…♪」

※アドリブ、絡み等歓迎


宮落・ライア
壊すだけなら耕すよりも数倍楽だね!
いや!数百倍は楽だね!

鼻歌交じりに【怪力・薙ぎ払い・衝撃波・グラウンドクラッシャー】でテキトーに振るう。

別段、血の海とか死体とかを気にするような素振りもなく諸共叩き壊す。
それにしても…もちょっと壊すのにあった武器持ってくれば良かったなー。失敗失敗。


セシリア・サヴェージ
【WIZ】

――ヴァンパイアどもを皆殺しにしてやった…いい気味だ。やつらが憎い…母を奪ったあいつらを、全て殺し尽くすまで…全て全て全て――
「くっ…いけない…抑えなければ…」
ヴァンパイア相手だとどうしても感情が昂り、『暗黒』に呑まれそうになる…。まだまだ未熟ですね…任務に集中しましょう。

UC【ダークフレイム】を使って建物を燃やし尽くしましょう。
ただ破壊しただけでは呪いが残る可能性もありますし、皆さんが破壊し終わったら火を放ち全てを灰にします。
しかし、主催である件のヴァンパイアは一体どこへ…。騒ぎを聞きつけ戻ってくればよいのですが。


蘭・七結
人々や自然から生気を奪う呪詛
この呪詛が、彼女たちの美しさの要だったり
衰弱してゆく人々を眺めるのが心地よかったのかしら。どこまでも悪趣味、ね
この建物を破壊すれば、この周囲の活気が戻るのかしら

味方を巻き込まぬよう離れへ
目には目を、呪詛には呪詛を
月明かりが降り注ぐ夜闇のなか
呪いを込め、美しい〝あか〟を咲かせましょう
〝紅恋華〟展開
さあ、〝あか〟に歪(ひず)め。

破壊されてゆく建物
奪い取られた生気を、生命力吸収
降り注ぐ月光と舞い踊る〝あか〟を眺め、美しいと
さあ、おいでなさい。吸血姫


リーヴァルディ・カーライル
…ん。屋敷を破壊する前に、保護した少女達の安全を確保しよう。
装備類に【常夜の鍵】を刻み、彼女らを中に避難させる。
他に同じことを考えている猟兵がいたら相談して決めよう。

まだ生き残りの吸血鬼がいる可能性もあるし、ここより安全だから…。
…ただ、あまり出入り口の魔法陣には近づかない方が良い。
私が良いと言うまで、ここから出たら駄目…わかった?

安全を確保したら【常夜の鍵】で屋敷の柱等を収納して回る。
これから本命の戦いが待ち受けている以上、あまり消耗はしたくない。
派手かどうかは分からないけど、これなら確実に屋敷を破壊できる。

…あ、前の戦いで召喚した影兵達。結局、まだ半数近く残っていた。

……ん。自爆して。


トリテレイア・ゼロナイン
この館では数多くの惨劇が起こったのでしょうね
その中で失われた命に報いることはもはや出来ませんが、建物を破壊して呪われたこの地を開放することはいまからでも出来ます

……その前に館を物色して、持ち運びやすくて比較的高価な装飾品を集めましょう。解放された生贄の乙女たちはこれからも私達の手から離れ、自力で生きる必要があります。その際に路銀や蓄えとして使える換金物を持たせてあげたいですね。集めたものは「全て」彼女たちに分配します
…火事場泥棒の誹りは甘んじて受けましょう。

自前の「怪力」で破壊しつつ「世界知識」で構造を把握
仕上げは効果的な箇所と木に焼夷弾を撃ちこみ派手に燃やします
この炎を魂の送り火としましょう


オリヴィア・ローゼンタール
血と呪詛に塗れた悍ましい館、跡形も残さず焼き払い、叛逆の烽火としましょう

【紅炎灼滅砲】の火力を【全力魔法】【属性攻撃】【破魔】により底上げ
聖なる炎ならば、邪悪に染まった樹木に効果は覿面でしょう
先の闘いの中で柱などを斬りつけた【破壊工作】により効率的に破壊できるはず
余波で自分がダメージを受けないように【オーラ防御】【火炎耐性】で耐熱防御も完備
両の掌中に太陽の如き熱と光の塊を生成、数にして125に及ぶ
そのひとつひとつが、絶大な威力を齎す破壊の奔流と化して建物に降り注ぐ
この世に存在した痕跡すら残さず【吹き飛ばし】てやります
射線良し、照準良し、魔力充填完了――灼滅砲、撃ちます!


ラスベルト・ロスローリエン
絢爛豪華に飾ろうと漂う陰気を隠せる筈もなし。
土地を細らせ木々を枯死させる蝙蝠のねぐら……毀つに躊躇う理由が無いね。

◇WIZ 自由描写歓迎◇
先ず彼らの血を吸って呪いの基点と化した箇所を探そうか。
“エゼルオール”を屋敷に灯る火に振るい《神秘の焔》で炎の鎌鼬と成し、切り刻みながらに燃やしてしまおう。
『傲れる夜の貴族の羽を焦がすと思えば、火付けの罪悪感も減ろうものさ』
仲間が火の粉を被らぬよう配慮しつつ要所を焼き切って回るよ。

屋敷が崩れた後は右手の中指に煌めく“カラドベリア”を掲げ土地に染み付いた魔を【破魔】の光で浄化する。
『これだけ派手に狼煙を上げれば、屋敷の主も青白い肌を紅潮させ駆け付けるだろうか』


ロー・オーヴェル
俺の手にはダガーとウィップ
無機物を攻撃するのにこの二つか……

ユーベルコードもそれ向きのがない……
もしかして俺はお呼びじゃないのかも


そんな鬱屈した思いをぶつけて破壊しよう
窓ガラスを落ちている瓦礫を投げつけ割ったり
崩れそうな柱に鞭を巻いて引っ張って倒したり

そして高価そうな物があれば懐に……いや壊そう
盗賊の本能に負けるところだった

にしても普段破壊できない物を
思う存分破壊できるのはある意味快感だな
いい経験になった


それにしてもぞっとしない光景だ
破壊された瓦礫が血の海に漂う岩の様で

「『骸の海』ってやつもこんな光景なのかね……」

だとしたら実に結構なことだ
あのヴァンパイアを葬るには……絶好の舞台じゃないか



●喪失世界
 灰交じりの風が虚空を躍る。
 
 炎。

 醜悪なる建物は灯籠のように緋を燈しやがて炎に呑み込まれた。夥しく立ち上る黒煙が夜気に溶けるように闇を侵食し風と共に舞いのぼり、けれど月に届くことは叶わぬ。

 暗黒。
 昂り。

 仄暗く湧く情動。鼻腔を擽るのは凄烈なる血の饗宴の匂い。爆ぜ燃える音とともに紅焔と黒煙に呑まれるのは。

 ――ヴァンパイアどもを皆殺しにしてやった……いい気味だ。
 やつらが憎い……母を奪ったあいつらを、全て殺し尽くすまで……

 全て、全て、 全て――

「くっ…いけない…抑えなければ…」
 銀の瞳が衝動を抑えるように歪む。狂おしい衝動。其の鎧は返り血に濡れていた。渇望を呑み込んでセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が頭を振る。瞳には理性が濃く浮上する。
(「まだまだ未熟ですね……任務に集中しましょう」)

 視界の端では助けた乙女が蒼い顔で身震いしている。仲間が対応している彼女らの中、1人が瞳をセシリアに向けているのを感じてセシリアは視線を移す。
「……っ」
 酷く怯えた気配を見せて瞳は逸らされた。全身を血に染めたダンピールの黒騎士は死を振りまく幽鬼の如く映ったのだろう。
「一般人への対処は任せます」
 仲間へ託し、セシリアは背を向ける。

●収集
 瓦礫が放たれ、硝子が割れていく。
 扉が引き倒され、カーテンはずたずたに裂かれる。
「普段破壊できない物を思う存分破壊できるのはある意味快感だな。いい経験になった」
 硝子窓が高い音を立てて割れた。破片が宝石のように輝き、散る。黒色の鞭が頭上のペンダントライトを絡め取り床へと叩き落した。衝撃で破損してコロリと転がる装飾に目を留め、ロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)が拾い上げる。輝きを放つ石は希少な緋のベリル。其れが幾つも飾られているのだ。
「もったいねえ。こんな部位にこんなもん飾っても誰も気付かないだろうに」
 呆れながらも手はお宝を回収し、燦めく石を懐へ入れようとし――逡巡。刹那の葛藤。
「いや。壊そう」
 ローは首を振る。
「いえ、集めましょう」
 声に振り返れば、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が装飾品を手に抱えて立っていた。
 彼はローに提案する。値打ち品を集め、保護した娘たちに分配しよう、と。ローは頷き、2人は手分けして値打ちの品を集めて回った。
 
●夜気
 建物の外へと誘導され、保護された娘たちの周囲には複数の猟兵がいる。

 床に集められたのは極上の煌めきを湛える装飾品やひと目で逸品と判る陶品の数々。ひとつひとつが万金に値する至高品ばかりだ。
「ああ、いい品だ。このカフスなんて馬鹿みたいに値が張るだろうな」
 ローとトリテレイアが集めたのである。
 ローは盗賊の本能に誘われ手を伸ばして懐に一品忍ばせそうになり、しかし誘惑を振り切って頭を振る。
「ちょっとくらい貰っちゃえば? 仕事はしてるのだし役得があっても良いと思うわよ」
 フレミア・レイブラッド(幼き吸血姫・f14467)が不思議そうに言う。赤い瞳があどけない色を見せていた。幼さが滲み、けれど妖艶さが溢れる妖姿。
「たくさんあるんだもん」
 口を窄めてウインクひとつ。それきり興味を失ったとばかりにフレミアは気まぐれな猫のように離れていく。ランスを携え、舞踏を楽しむように楽し気にステップを踏みながら建物内へと入っていく。破壊に行くのだ。
「楽しそうだな……」
 見送るローの手にはダガーとウィップがあった。複雑な心境が目から溢れる。
「もちょっと壊すのにあった武器持ってくれば良かったなー。失敗失敗」
 明るい声がして視線を向ければ、宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)が大剣を携えて肩を竦ませている。
「その気持ち、わかるぜ」
 ローが煙草を取り出しながら思わず同意すると、ライアは無造作に大剣を振った。轟音と共に建物の壁が破壊されて吹き飛ぶ。
「失敗失敗」
 言いながらライアは走っていった。
「……もしかして俺はお呼びじゃないのかも」
 ローは思わず呟いた。煙草は美味い。

 その耳にはトリテレイアが話す声が聞こえる。
「元居た村へ戻られる方は事が終わった後でお送りします。身寄りのない方は縁故ある村へとお連れし、受け入れを打診しましょう。此の宝物をおひとり一品持っていってお役立てください」
 娘たちが順番におそるおそる品を手に取る。
「準備ができたら、こっちに」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が守護のルーンが刻まれた短剣に自身の血液で魔法陣を作成していた。触れた対象を常世の世界の古城へと転移させる其れは、常夜の鍵。
「まだ生き残りの吸血鬼がいる可能性もあるし、ここより安全だから……。
 ……ただ、あまり出入り口の魔法陣には近づかない方が良い。
 私が良いと言うまで、ここから出たら駄目……わかった?」
 娘たちはコクリと頷き、1人また1人と宝を手に常夜の鍵に吸い取られていく。
 ローが紫煙をくゆらせながら見守っていると、最後尾の1人が振り返り頭を下げた。そして、鍵の中へと消えていく。

「さて、あとは破壊か」
 こうしている間にも建物の至る処から火の手があがり、倒壊する音が聞こえてくる。
「ん。私は柱を収納して回る」
 リーヴァルディが短剣を手に歩き出した。これから本命の戦いが待ち受けている以上、あまり消耗はしたくない、と考えながら。其の背後では召喚した影の兵が未だ半数近く残り侍っていた。
「そいつらはどうするんだ」
「……ん」
 ローが尋ねると、リーヴァルディは初めて気づいたような顔をした。そして、軽く手を振りながら言葉をかける。
「自爆して」
 影兵たちは静々と建物の奥へと進んでいく。やがて爆音が轟いた。
「……」
 自爆を命じた少女は満足そうに頷くと自身も目的の為に働くべく其の場から歩み去る。ローは無言で背を見送った。

「魔法の力というのは本当に便利ですね」
 しみじみといった風情のトリテレイアに共感を示そうとローが目を向けると、機械騎士は硬質な音を立てて格納していた武装を起動させていた。
「幻想の力には叶わないなと常々思うのですよね」
 言いながらトリテレイアは淡々と焼夷弾を撃ち込んだ。
「この炎を魂の送り火としましょう」
 着弾するやいなや火炎があがる。
「この弾は中に焼夷剤が含まれておりまして、このように対象を燃焼させるための……ロー様?」
 ローは遠い目をしていた。
「いや、いい。続けてくれ」
 ふ、と息を吐けば煙が白くふわりと夜の空気に広がって掻き消える。

(「それにしてもぞっとしない光景だ。破壊された瓦礫が血の海に漂う岩の様で」)
 刻々と破壊され、赤に染まる建物に呟く。
「『骸の海』ってやつもこんな光景なのかね……」

 だとしたら実に結構なことだ。
 あのヴァンパイアを葬るには……絶好の舞台じゃないか。

●破壊
「絢爛豪華に飾ろうと漂う陰気を隠せる筈もなし。
 土地を細らせ木々を枯死させる蝙蝠のねぐら……毀つに躊躇う理由が無いね」
 ラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)が呟く。
 魔力の流れを追跡し、ラスベルトは呪いの基点である箇所を順に燃やしていた。
 小振りなトネリコのワンドはエルフの夢の意味を成すエゼルオールの音で呼ばれる。其れを屋敷を照らす灯火へと振るえば神秘なる創造の焔が蜷局を巻き炎の鎌鼬へと変じ、其の紅蓮の鮮火は呪いを焼切り、延焼していく。

「傲れる夜の貴族の羽を焦がすと思えば、火付けの罪悪感も減ろうものさ」
 炎が燃え広がり建物を呑み込んでいく。煙があがる。火の粉が舞っている。パチパチと火焔の爆ぜる音とゴトリと燃え尽きた柱の倒れる音がして、ラスベルトはそっと瞑目する。愁傷がほんの刹那。
 花咲く森の古都ロスローリエン。彼の故郷も炎に包まれて灰燼に帰したのだった。無意識に左手が撫でるのは右の中指に填めた指輪だった。清澄な金剛石の煌めく白き指輪、カラドベリアは灰より見出された森の都の至宝であった。

 一方、同じく建物の内部を巡っていたフレミアは破壊を進めていた。時折床が大きく振動して味方の破壊活動の大きさを物語る。
 揺れる床をものともせず、フレミアはまるで踊るかの様に楽し気にステップを踏んで周りの柱をへし折り、進む。特に要となる支柱を見咎めては嬉しそうに破壊した。
 通路の向こうからは味方であるライアが青いリボンを揺らしながら鼻歌交じりに破壊をしている。
「壊すだけなら耕すよりも数倍楽だね! いや! 数百倍は楽だね!」
 フレミアに気付いたライアが闊達に手を振り、挨拶代わりに身近な壁を破壊する。フレミアも笑顔で反対側の壁を破った。
「そろそろ脱出したほうがよさそうだね」
 階上から降りて来たラスベルトが2人に声をかけた。煙が凄まじい勢いで彼らを取り巻こうとしている。
「さて、これで後はこの館も終わりね♪」
 フレミアは伸びをすると少し物足りないといった様子で呟いた。
「もう少し、パーティの料理も眷属達も楽しみたかったかしらね~……♪」
 建物から脱出すると、緑玉の瞳でしかと建物を見つめてラスベルトが指輪を閃かす。眩い破魔の光が溢れて土地を浄化していく。
「これだけ派手に狼煙を上げれば、屋敷の主も青白い肌を紅潮させ駆け付けるだろうか」

●灼滅
「皆さん、ご無事でなによりです」
 脱出してきた味方と合流し、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が柔らかな微笑みを浮かべる。そして、呪われた建物へと視線を向けた。
「血と呪詛に塗れた悍ましい館、跡形も残さず焼き払い、叛逆の烽火としましょう」
 オリヴィア自身も宴の最中から脱出までの間に多数の破壊工作を施していたが、味方の手もあり建物はすでに赤と黒の炎をあげて燃え上がっている。
 あわせてラスベルトが浄化の光を指環から放っているのを見て、オリヴィアは作戦の順調な様子に安堵する。そして、厳かに告げた。
「聖なる炎をもち、邪悪を討ちましょう――この世に存在した痕跡すら残さず、悉く」
 オリヴィアは仲間たちへと火焔に対するオーラの盾を纏わせ余波に備えながら、破魔の力を高め、練る。
 両の掌中に太陽の如き熱と光の塊が生成されていく。其の数は125にも及ぶ。
「射線良し、照準良し、」
 呟く声は凄みを帯び、常の柔らかなるシスター姿からはかけ離れた空気を纏っていた。
「魔力充填完了」
 光が夜を灼き切らんとばかりに眩く耀く。オリヴィアは峻烈に吠える。
「灼滅砲、撃ちます!」
 邪悪なる者は震えあがり、そうでない者は永き夜を生きる者への救済の降臨を知る。天から下された劣悪なる者への裁きの光が放たれた。
 轟音。
 爆音。
 放たれた光はひとつひとつが絶大な威力を齎す破壊の奔流と化して建物に降り注ぎ、灼滅した。
「お見事ね♪」
 フレミアが幼子のように手を叩き、讃えた。

 ひときわ大きな火焔と共に崩れ落ちていく建物を見てセシリアは息を吐く。息は白く夜へ染みて溶けていく。
「罪と共に……灰燼と化すがいい」
 もはや遮るものなく吹き荒んでいた。煌々と燃える赤き炎は仲間の放ったものだ。昏き暗黒の炎は赤き炎から獲物を奪うように舐めるように這い、侵食していく。夥しい黒煙が足元にも低く這い纏うかと思えば誘うような風に攫われて天にのぼり、夜に溶けるようだ。
 低き夜空が朱に染まり、けれど高空は変わらずの漆黒。漆黒をそこだけ切り取ったかのような月は地上を見下ろしている。其れが視える。
(「しかし、主催である件のヴァンパイアは一体どこへ……」)

 と、その瞬間にゾクりと数人の猟兵に悪寒が襲った。
「あっちですね」
 猟兵たちは第六感に導かれるままに走る。行き先は離れだ。

●離れ
 味方の手により既に本邸から火の手があがっていた。青の薔薇が咲き誇る庭を少女は歩く。麗しい薔薇は、けれど濃厚な屍臭と怨念を纏う毒薔薇だ。
「人々や自然から生気を奪う呪詛。
 この呪詛が、彼女たちの美しさの要だったり衰弱してゆく人々を眺めるのが心地よかったのかしら。どこまでも悪趣味、ね」
 青薔薇で尚際立つ美貌の少女、蘭・七結(恋一華・f00421)は離れへと赴いていた。
「この建物を破壊すれば、この周囲の活気が戻るのかしら」
 聞く者も応える声はない。ただ、毒に充たされ茹だるような静謐が在った。夜闇に少女が吐息を零す。月明かりが降り注ぎ遠き其の姿を照らしていた。冠するはあかい深紅の一花。
 七結は宝石めいた瞳をそっと瞬かせる。其の瞬きは星々が煌めくにも似て、瞳が映し出すのはあかい花時雨、牡丹一花の紅恋華。呪いの籠められた美しい〝あか〟が咲き零れて舞い降りる。

 さあ、〝あか〟に歪め

 月下地表をあかに染めるは月華血氷の恋一華。
 触れた建物は音もなく火焔に包まれ、燃え上がる。見守る先で炎勢に耐え兼ねて倒壊する呪木の柱が横倒しのままに炭と化していく。灰が火の粉と共に巻き上がり煙がもうもうと立ち上る。
 七結は堪能するように夜気を吸う。花の唇が幽かに弧を描けば青の薔薇園にもあかが舞い降りて残らず冒していく。青があかに染まり、燃えて。

 〝あか〟が世界を冒していた。

 降り注ぐ月光と舞い踊る〝あか〟を美しいと七結は思うのだった。
 絹のような灰白の髪は音もなく風を孕み揺れている。

「さあ、おいでなさい。吸血姫」

 呟くと、ふわり、と風が吹いた。

 クスクス、

 嗤い声が響く。

「いいわ。遊んであげる」
 
 炎熱を一瞬で凍結させるような殺気が周囲に充ちた。
 視線の先には赤のドレスに身を包んだ華奢な少女が佇んでいた。背にばさりと開くのは蝙蝠の羽か。肌は蝋のようだ。目は爛々と赤く輝き、手には業物と知れる長槍を携えていた。
 リーシャ・ヴァーミリオン。
 口をカパリと開き笑みを作れば、獰猛な牙が月明かりに光る。

「現れたのね!」
 駆けつけたフレミアが嬉々として飛び掛かる。戦端は開かれた。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『リーシャ・ヴァーミリオン』

POW   :    魔槍剛撃
単純で重い【鮮血槍】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ブラッディ・カーニバル
自身に【忌まわしき血液】をまとい、高速移動と【血の刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    魔槍連撃
【鮮血槍による連続突き】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。

イラスト:楽

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レティシア・クルテル
「貴女たちは、もう一度眠らなければならないの」
キッとヴァンパイアを睨みつけて告げるわ。
恐怖の染み付いた身体が目の前の強敵に震えるけれど、今の私は猟兵、ただのレジスタンスじゃない。
攻撃を捌き、反撃しながらリーシャの10メートル範囲内に近づくと
「吸血鬼を狩る品よ。ここに、降り注げ」
ユーベルコード、杭の雨を発動。白木の杭を雨アラレと降らすわ。
「今まで犠牲になった人たちの無念も晴らすわ。懺悔なさい」


宮落・ライア
よし!でてきた!しょーぶしょーぶ!
戦うのが好きなら戦うぞー。

力比べじゃー!
【ダッシュ】で近づき勢いを乗せて
【怪力・鎧砕き・衝撃波・グラウンドクラッシャー】を叩きこむ。
少しの体の軋みは【激痛耐性】で耐える!

勝負といったなら(自分でだけど)負けられないぞ!
自分を【鼓舞】し【覚悟】で競り合う。

なんと言うか、かんと言うか…
戦うスタイルがボクに似てる気がする!
わーなんか嬉しいのだよ!

そういえば、夜会開きながら自分はすぐに姿消したりしてたけど…
もしかして猟兵の噂が耳に入って戦いたかったから
夜会開いてたとか…ないかー。考えすぎかな。
前からやってたみたいだし。


セシリア・サヴェージ
【POW】

怖れられることには慣れています。ヴァンパイアからも、人々からも。
この姿や力が怖れられようとも、人々を護ることができるのならば私はそれでも構わない。

この吸血姫…先ほどの下級ヴァンパイアなどとはまるで格が違う。
ならばこちらも真なる力を解放する。
UC【アンリーシュ】で抑えていた鎧の呪いを解き放ち、暗黒の力を最大限に高めます。
その上で、吸血姫の魔槍技と我が暗黒剣技、どちらが勝るか勝負といきましょう。
【武器受け】【二回攻撃】【怪力】などを攻撃・防御に使い、多少のダメージは【激痛耐性】【気合い】で耐えます。

「我が姿を怖れよ吸血姫。暗黒に呑まれ、骸の海へと還るがいい」


蘭・七結
あかいドレス。あかい、瞳
月明かりを浴びる美しき吸血姫
その姿だけは、とても美しいと感じるのに
その美しさ、今まで何人の生気を屠ってきたのかしらね
あなたの罪、ナユが奪ってあげるわ

さあ、踊りましょう。ナーシャ
同じ血、同じ時間を刻んで生きるもの同士だもの
あなたも、退屈はキライでしょう
連ねた柘榴石の指輪に口付け
ナユが屠った清廉なるあなた
その名を、呼んで
〝かみさまの言うとおり〟

携えた『彼岸』と『此岸』を手に
攻撃を見切りながら、2回攻撃とフェイントを重ね舞い踊る
鴾鼠の髪が、あかい羽織が宙を舞う
あなたの罪に、〝果て〟という罰をあげる

夜に咲く花。あかい花
あなたの散り際は、さぞ美しいのでしょうね

✼アドリブ歓迎です


トリテレイア・ゼロナイン
現れましたね、吸血鬼
これ以上無辜の人々の血を貴女によって流させるわけにはいきません、ここで果てていただきましょう

猟兵達や自分の過去の戦闘記録、「世界知識」から吸血鬼の能力を身体強化に割り振ったタイプのオブリビオンと思われます
その膂力で振るわれる剛槍はまともに受け止めれば脅威です

ですがここには吸血鬼殺しに相応しい猟兵達がいます。私の役割は彼らを「かばい」攻撃に集中してもらうこと

上空に飛ばれれば「スタイパー」格納銃で牽制し、急降下攻撃の対象を「見切った」らスラスターを点火し「スライディング」で急行、「怪力」「盾受け」「武器受け」で守ります

まともにぶつかるのは上策ではありませんが周りの方々に託します


リーヴァルディ・カーライル
…ん。ようやく本命の登場ね。
屋敷の解体が済んだ今、後はこの狂った宴の幕引きだけ…。
吸血鬼、お前には今までの悪逆の代償を支払ってもらう。

事前に防具を改造して第六感を強化
殺意の存在感を可視化する呪詛を付与し敵の攻撃を見切り、
【吸血鬼狩りの業】を応用して大鎌を盾に武器で受け、
大振りの一撃を誘惑し、大鎌をなぎ払いカウンターを試みる

敵が隙を見せたら【限定解放・血の魔剣】を二重発動(2回攻撃)
自身の生命力を吸収して魔力を溜め黒炎の剣を召喚
過去の存在を傷口を抉るように消滅させる黒炎を身に纏い、
吸血鬼化した怪力を瞬発力に変え、黒炎の剣を構え突撃する

…骸の海へ還るが良い、リーシャ・ヴァーミリオン…!


ロー・オーヴェル
巨大な力を持つ者がいて
それに従う者がいるのは確かに当然の事

だが支配する者がいれば
それに反抗する者がいるのも……


「もう鼻っ面引っ掻くだけじゃ済まないぜ」
全てをその衣装の如く
赤く染めて終わりにしてやる

戦闘初期は遠距離より
ナイフを投げ攻撃

敵が傷つき弱体化し
後は高威力攻撃で討てると判断可能時は
ゴーストザッパー使用

その際は【ダッシュ】で一気に迫り
【二回攻撃】で威力を増し
【フェイント】で相手が防御困難になる様留意し攻撃


戦闘後は煙草を一服

俺もいずれコイツのように
『狩られる』日がくるのだろう
それも世界の理からすれば当然だ

でもその時までは
「お前さんみたいにあがくとするさ」
死という支配にも……反抗したいんでね


オリヴィア・ローゼンタール
現れましたね、吸血鬼
仲間も牙城も焼き尽くしました、あとは――貴様だけだ

【血統覚醒】により吸血鬼を狩る吸血鬼と化し戦闘力を増大させる
【属性攻撃】【破魔】で槍に聖なる炎の魔力を纏う
槍よ、血よ、私に力を――!

【怪力】を以って聖槍を縦横無尽に振るう
斬り打ち穿ち薙ぎ払い、怒涛の如く攻め立て主導権を握る
吸血鬼の腕力による絶大な破壊力を持っているようだが、単純な一撃であったり連撃を中断できないのなら、
その技の起こりを強化された【視力】で【見切り】、【武器で受け】流して【カウンター】

全霊を以って投擲し、心臓を穿つ(【怪力】【投擲】【槍投げ】【串刺し】【鎧砕き】)
これでトドメだ――!


ラスベルト・ロスローリエン
暴君が暴君足り得るのは、民を屈服させる恐ろしき力があればこそ。
その暴威が通じぬ相手には、如何振る舞うのだろうね。

◇WIZ 自由描写歓迎◇
【高速詠唱】と共に“エレンナウア”を抜剣し《散華の騎士》を解き放つ。
『ひとつ月下の舞踏の相手をお願いしたい……嗜みは当然あるだろう?』
光の霊槍の投擲で相手の間合いの外から攻めると同時に【援護射撃】で風切矢を羽に射掛けよう。
槍の連撃を仕掛けてきたら【破魔】の光と【念動力】で怯ませ槍捌きを誤らせる。
大きな隙を狙い闇の鋭剣の一突きで心臓を穿ちたい。

血族一つを過去に還したところで世界の闇尚昏く、か。
……いや。星の瞬きも集えば星天となり、やがて暁天を迎えると信じよう。


フレミア・レイブラッド
喜々としてランスを構えて襲撃!

敵の攻撃は【見切り】で回避し、【2回攻撃、串刺し】でランスを駆使して戦闘。
敵が長物のランスの弱点を突いて、小回りの利かない懐まで入り込んできたら、隠し玉として所持していたフォースセイバーを起動してそのまま斬りつける。
リーシャの意表をついて動揺させた瞬間、再度ランスに持ち替え、そのまま【串刺し】にし、【ドラゴニック・エンド】発動。必殺の一撃を叩き込む。

ちなみに途中の交戦中にリーシャを傷つけたら、ペロリと妖艶に【吸血】で血を舐めて取り込み、更に肉体を活性化。自身を強化して交戦を継続する。

「アハハ♪楽しいわ楽しいわ楽しいわ!」
「さぁ、もっともっと踊りましょう♪」



●其の世界の人類は敗北していた
 ふわり、と地に足が着く。
 戦場では既に猟兵とヴァンパイアの戦いが始まっていた。

 戦場にいるのは紛れもなく強敵。
 駆けつけたレティシア・クルテル(ダンピールのウィザード・f13757)の身体が震える。

(「……ヴァンパイア」)

 城塞都市と呼ばれた街があった。
 此の世界に夜が君臨し、人類敗北した後も何とか街の体裁を維持していたその都市は、しかしある時、強力なヴァンパイアの侵略を受け滅びた。
 ヴァンパイアの悪夢。レティシアには恐怖があった。
 しかし。
(「今の私は猟兵、ただのレジスタンスじゃない」)

 武器を手に、猟兵は駆ける。

●支配者蝙蝠は戯れる
 吸血姫リーシャ・ヴァーミリオンは愉しそうに槍を振っていた。周囲には8人の猟兵が各々の武器を手に戦っている。其処へ、もう1人が加わる。

「また増えた! どうしたの、どこから来たの?」

 玩具が大量に湧いてじゃれてくるのだ。次々。次々と。
 全く、楽しくて仕方がない。チロリと赤い舌を出し、リーシャは槍に付いた血を舐めた。
 リーシャの血の瞳が燃える。バサリ、と皮膜の羽を羽ばたかせ、リーシャは空へと舞う。

 トリテレイアはここまでの戦闘で得た情報を淡々と分析する。
「身体強化に割り振ったタイプのオブリビオン。その膂力で振るわれる剛槍は脅威。ですが彼女を狩るための戦力は揃っているように思います」

 上空。
「嗚呼、月が出ているのね」
 月が近く感じられる。
 美しい。

 リーシャは手を伸ばす。
 だが、其れに届くことは決して、ない。
 感傷を抱きながらリーシャは地上を睥睨する。
 飛行ができる者はいないらしい。
 
「しょーぶしょーぶ!」
 地上で宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)が声をあげている。
 黒炭と化した園の真ん中に猟兵が9人。
 リーシャは微笑み、闇を切り裂くように降下した。両手で凶槍を構え――降りるうちに左は外す。視界の隅に銃で自身の隙を狙うトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)を見咎めたからだ。

「よし! 降りて来た!」
 嬉しそうに目を輝かせ、ライアは地を蹴り助走する。地上と天と互いの赤の眼が交差する。猛進する猟兵の眼が力比べだ、と訴えかけているのを感じてリーシャは優しく微笑んだ。
「狗が何か言っている、わ」
 そして、左腕をサッと振り赤爪を閃かせた。衝撃の波が走り弾かれたのは降下するリーシャを狙っていた銃弾とナイフだ。

(「銃弾はあの鋼鉄の人形。ナイフは?」)
 リーシャは警戒しながら降下する。

「勝負だ!」
 ライアは嬉々として大剣の大振りを叩きこむ。同時にリーシャもまた鮮血槍の剛撃を撃ち込んでいた。大剣と槍は互いに地を砕くほどの威力を秘めている。

 一瞬の攻防。

 純粋な威力を競い火花を散らし、降下の勢い、重力を味方につけた分リーシャが勝った。圧し潰すように地へと叩きつけ、大地が大きく抉れて周囲に衝撃の波が奔る。
 衝撃で瓦礫が掠めたのか頭から流血しながらライアが笑う。
「……ははは! あははは!」
 訝しむ空気が流れる中、ライアは嬉しそうに言った。
「なんと言うか、かんと言うか……戦うスタイルがボクに似てる気がする!」
 目はキラキラと輝いていた。
「……なんか嬉しいのだよ!」

 リーシャは左の爪をぺろりと舐めた。爪が割れて血が流れていた。周囲を探る。
「さっきの、銀色のナイフ」
(「もう1人いる気がするわ」)
 猟兵は10人いるらしい、とリーシャは数える。
 放ったロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)は巧みに闇に姿を潜め、気配を殺している。

「――ヴァンパイア!」 
 勇ましく声をあげ、レティシアが一撃を加えんと試みる。
「――お前、震えていたわね。見ていたわ」
 舞踏のステップを踏むように避け、優しささえ感じられる声でリーシャは言った。
「見ていたわ、見ていたわ。
 お前は、ヴァンパイアを恐れている。ヴァンパイアを怖れている。そうではなくて? そうではなくて?」
 クスクス、と嗤いながら耳元で囁くようにすれば、その身が一瞬震え。
 だが。
 色の異なる双眸は逃げずにキッと『ヴァンパイア』を睨みつけた。

「貴女たちは、もう一度眠らなければならないの」
 猟兵レティシアの目には戦う意思が強く浮かんでいた。

 其処へ走り寄りランスを振るのはフレミア・レイブラッド(幼き吸血姫・f14467)だ。
「もっと踊りましょう?」
 目は爛々と輝いていた。
「ええ、そうね。いいわ」
 リーシャが友人に向けるかのように愛おしそうにフレミアに微笑みながら槍を薙いだ。薙ぎ払いを身を沈めて避け、フレミアは嬉々としてランスを突く。その身には幾つか小さな傷を負っていたが、大きな傷はない。致命的な一撃は悉く避けているのだ。
(「こいつ、結構避けるわね」)
 ランスを避けながらリーシャは眉を寄せた。
(「隙を見てさっさと沈めてしまいたいけれど」)
 敵の数は多い。敵はひとりひとりが高い戦闘力を有していた。対吸血鬼用の戦闘に特化している者もいる。だが、こうして1人1人と戦っている時の介入は少ない。仲間同士庇い合い助ける動きを見せる場面もあるが、どうも特に打ち合わせをしていない即興の連携のようだ、とリーシャは踏む。

 それでも、敵は強く、多い。
 リーシャはふ、と息を吐く。悩まし気に、けれど瞳は煌々と戦意に猛り、口は笑む。
「難しい遊戯だわ」
 悉くを槍に貫き沈めるイメージをしながらリーシャは其のイメージを現実にするべく舞う。
 けれど、敵はなかなかイメージ通りには命を散らしてくれない。
 其れは愉しく、楽しく、

 リーシャは槍を携え、地に水平に体勢取り地表すれすれを低く疾く飛行する。彼女が優先して狙うのはダンピール。
「たくさんいるわ、たくさんいるわ。血が匂うのよ」
 再びナイフが飛んできた。リーシャはひらりと回避する。回避しつつ投擲した敵を探るが、見つからない。
「イライラするわ」
 吐息を零し、リーシャはふるりと首を振り言い直す。
「狩り甲斐のある獲物たちだわ」

 飛び回るリーシャを見ながらセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が暗黒剣を握る手に力を籠める。
(「この吸血姫…先ほどの下級ヴァンパイアなどとはまるで格が違う」)

 リーシャが小刻みに軌道を変えれば一瞬後を弾丸が過ぎていく。
「吸血鬼。
 これ以上無辜の人々の血を貴女によって流させるわけにはいきません、ここで果てていただきましょう」
 トリテレイアの銃撃がリーシャを追う。
「邪魔ね、先に壊すには頑丈そうだし」
 リーシャは鋼鉄の人形を最後に調理する事にしていた。斬りつけても血を流すことのない鋼鉄はいまいち食指が動かないのだ。
 けれど、とリーシャは人形がバラバラになる姿をイメージしてクスリと嗤う。
「あの頑丈そうなのをバラバラに解体していくのは、それはそれで楽しいかもしれないわね! アハハハハ!」
 その時はまた宴を催して派手に。そう思いながらリーシャは飛ぶ。

 と、前に立ち塞がる光影があった。

「ひとつ月下の舞踏の相手をお願いしたい……嗜みは当然あるだろう?」
 凛々しくも麗しい戦乙女が立ち塞がる。
 ラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)が召喚した戦乙女だ。
 手に闇の鋭剣と光の霊槍を携えた戦乙女はリーシャに光の霊槍を投擲する。
「これは何? 精霊? 異形?」
 戸惑いながらリーシャが宙を舞い光を避けながら戦乙女に肉薄。ひと突きにする瞬間に羽を目掛けて風を切り矢が飛んでくる。リーシャは慌てて距離を取った。
 黒炭の山からリーシャを狙う弓手は戦乙女を召喚したラスベルトだ。月桂樹の精が化した弦無き大弓を心で引き絞り、もう一矢を射る。

「暴君が暴君足り得るのは、民を屈服させる恐ろしき力があればこそ。
 その暴威が通じぬ相手には、如何振る舞うのだろうね」
 リーシャは矢を避けながらラスベルトに接近しようとした。其の背を苛烈に襲うのはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)だ。
「現れましたね、吸血鬼」
 待ちわびた、というように言う瞳の奥で燃え上がるのは猛き戦意。ひと目で聖なる力の繰り手と判る聖衣装。

(「同時に相手取るには厳しい組み合わせだわ」)
 リーシャ・ヴァーミリオンは好戦的であったが、自殺趣味はなかった。戦いは勝ってこそ愉しいのだ。
 リーシャは焦りながら空へ舞い上がる。
 月明かりを背に高き空を高速で旋廻し、夜の園を見る。他の猟兵からかなり距離を取り、孤立している猟兵を見つけてリーシャは獲物と定め、降下した。

●血と狂宴のアイジス
 あかいドレス。あかい、瞳。
 月明かりを浴びる美しき吸血姫。

 その姿だけは、とても美しいと感じるのに
 その美しさ、今まで何人の生気を屠ってきたのかしらね。

 蘭・七結(恋一華・f00421)が風に鴾鼠の髪を靡かせて佇んでいた。あかい羽織がふわり、と風を孕む。其の佇まいはあまりに静かで、まるでほんのひととき気まぐれに月の精が地上に舞い降りたかのようだ。
 月を背に『落ちてくる』吸血姫が目に映り、七結は首に連ねた赤い鎖の先、褪せた柘榴石が鈍く輝く指輪をそっと握りしめる。
「つきが、綺麗ね」
 槍を避けながら呟くのはそんな言葉だった。
 リーシャは興味深げな顔をして槍を地に立てて地上に静止し、七結を見る。

 だって、自分もまさにそう思っていたのだ。

 七結の紫晶石の瞳が周囲を彷徨う。暗澹満ちる黎明なき世界を象徴するような庭と夜だった。そして、頭上で見下ろす月は。
「おおきな月は、まるで手が届きそうに思えて。手を伸ばしたくなるわ」
 けれど、其の手が届くことはないのだった。
 其れは、残酷なほど美しく、とおい存在。

 風が2人の間を吹き抜けた。
「あなたの罪、ナユが奪ってあげるわ」
 さあ、踊りましょう。と七結はあかいろが滲む紫の瞳を向ける。

 同じ血、同じ時間を刻んで生きるもの同士だもの。
 あなたも、退屈はキライでしょう。

 声なき声が伝わる。リーシャは槍を握り直した。その視線の先で七結は連ねた柘榴石の指輪に口付ける。黒炭と化した薔薇の中、月明かりが照らす其れは神聖な絵画のような光景。
 退屈で、然れど愛おしい現を見映す毒の紫晶石は嘗て其の清廉さを屠った『かみさま』へ盲目的な恋慕を抱いていた。

 ふと襲うのは衝動。渇望。

「――『かみさま』、」
 其の名を呼んで、七結は鮮明な猩々緋の双眸に覚醒する。『かみさま』を降ろした吸血鬼と変じた七結は月光の中で妖しく微笑む。
『彼岸』と『此岸』を手に。

「夜に咲く花。あかい花。
 あなたの散り際は、さぞ美しいのでしょうね」

 リーシャは少し躊躇い、槍を構える。激しく切り結びながら頭の中では戦術を練っていた。
 鴾鼠の髪が、あかい羽織が宙を舞う。舞い踊りながらふわり、と七結が幽遠な瞳に色を湛えた。明確なる殺意の色。
「あなたの罪に、〝果て〟という罰をあげる」
 声は、囁くように。
 刃は冷たくリーシャの腕を切り裂いた。血を撒き散らしながらもリーシャは槍を手放さない。
 侮っていた。
 思うのはそれだった。

 と、其の耳に足音と声が届く。
 他の猟兵が駆けつけてきたのだ。

「仲間も牙城も、既に焼き尽くしました、」
 オリヴィアが柔らかに言う。気配は氷のように鋭く殺気を放つ。
「あとは――貴様だけだ」
眼鏡の奥の瞳は覚醒して血の緋色に変じ、鮮烈に戦気を放つ。纏う空気が変わっていた。ヴァンパイアへと変じたのだ。

「屋敷の解体が済んだ今、後はこの狂った宴の幕引きだけ……。吸血鬼、お前には今までの悪逆の代償を支払ってもらう」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が告げる。

 セシリアが闇の解放を執行する。
「全てを護ると誓ったのだ……そのためならどんな力でも受け入れよう!」
 鎧の暗黒を解き放てば禍々しく呪いが溢れて着用者を包み込む。
 濃厚な闇の気配が息を吸うごとに深まり、膨れ上がる。其れを纏うのは死を振り撒く闇の化身――真の姿となったセシリアだ。膨大な力の代償は、刻一刻と削られる己が寿命。
 其の刹那、セシリアが思い出すのは彼女を恐れる人々の眼であった。

 怖れられることには慣れていた。ヴァンパイアからも、人々からも。
(「この姿や力が怖れられようとも、人々を護ることができるのならば私はそれでも構わない」)

「我が姿を怖れよ吸血姫。暗黒に呑まれ、骸の海へと還るがいい」
 闇が其の意志を伝えると、リーシャは息を呑む。その時、彼女は間違いなく恐怖を感じたのだ。

 トリテレイアはそんな猟兵たちの傍に佇む。
 トリテレイアは周囲を見る。吸血鬼殺しに相応しい猟兵達が揃っている、と彼は考える。そして、自らの役割を他猟兵の盾と定めた。

 フレミアがランスを手に笑顔で立っている。同じような笑顔でライアが大剣を手に立っていた。逃す気はないのだとそれぞれの瞳が語っていた。

 戦乙女を従えたラスベルトが後方から矢を撃とうと狙っている。
 レティシアがその隣で凛とした声をあげた。
「ヴァンパイア。貴女たちは、もう一度眠らなければならないの」
 そして、告げる。
「吸血鬼を狩る品よ。ここに、降り注げ」

 狩りの始まりを告げる声。
 レティシアが凛とした声で告げれば白木の杭が雨のように降り注いだ。
「今まで犠牲になった人たちの無念も晴らすわ。懺悔なさい」

(「この状況は、よくない!」)
 リーシャは上空からの雨を掻い潜ろうとし――、闇に紛れるように放たれていたナイフの光が閃く。銀灰の刃は羽を斬る。

 其れは、『束縛されぬ者の刃』。

「クッ」
 バランスを崩し地に堕ちたリーシャをレティシアの白木の杭が撃つ。
「もう飛べないな」
 ナイフを投げたローは姿を見せて呟く。
「狩りの時間だ」

「――まだっ」
 リーシャは狂乱の叫びと共に地を蹴る。駆けながら身に纏うのは忌まわしき血。放射するのは赤き血の刃。手は変わらずの魔槍を携えて。

 乱れ飛ぶ赤き血の刃の幾つかにラスベルトの矢が降り注ぎ、打ち消した。
 セシリアは暗黒剣を鋭く撃ち込み、赤き血の刃を切り裂いた。
 ライア、七結、ロー、リーヴァルディは見切って避けた。
 レティシアとオリヴィアをトリテレイアが庇い、盾が半数を受け止め、剣は半数を切り落とした。
「あとは、攻めるのみ」
 トリテレイアが言えば、オリヴィアは頷く。

「吸血鬼化は、寿命を削る技でもある。早く終わらせよう」
「賛成ね」
 同じ技を使う者たちが呟き、武器を握る力を強めて囲うように陣を作る。

(「先ほどよりも足並みが揃いつつある……!」)
 協力姿勢を強める猟兵の姿にリーシャは戦慄した。
 戦慄しつつも、リーシャの尋常ならざる脚力に軽い身が弾丸のようにリーヴァルディに迫り稲妻の如き槍撃を繰り出す。

(「ん。視える……」)
 戦いに挑む前、リーヴァルディは防具に殺意の存在感を可視化する呪詛を付与していた。効果はあり、強力な一撃をリーヴァルディは回避することに成功している。大鎌で槍を受け止めればその背に仲間が躍りかかる。

「もう鼻っ面引っ掻くだけじゃ済まないぜ」
 全てをその衣装の如く赤く染めて終わりにしてやる。そう呟いてローは音もなく影のように走り寄り、ダガー『Outsiders Edge』の疾風のような一撃を放つ。
「お前! お前ね!」
 抉るように背を斬られながらリーシャが殺意の漲る瞳でローを見る。影から狙っていたナイフの主をやっと見つけたのだ。ローは素早くダガーを二度閃かす。
「アアアアッ」
 悲鳴と共に鮮血が散る。完全に羽を斬り取られ、背に深き傷を負ったリーシャが荒い息を吐く。双眸からはギラギラと憎しみと殺意が溢れた。

「巨大な力を持つ者がいて
 それに従う者がいるのは確かに当然の事」
 月明かりは男を照らしていた。
 目深に被ったフードから覗いた口元が言葉を紡ぐ。
「だが支配する者がいればそれに反抗する者がいるのも……」
 示すように視線を周囲へと巡らせてみせる。

 リーシャはハッとした。
 今や彼女は完全に猟兵に包囲されていた。

「もう一回勝負しよっか!」
 ライアが飛び掛かる。リーシャは死に物狂いで回避し、身近にいたフレミアを狙う。囲いを突破するために。

 長物の弱点は小回りの利かない点だ。リーシャは鋭く踏み込むとフレミアの懐に潜り込む。その瞬間、
『……アッ!?』
 闇を斬り取るように光の刃が閃いた。
 フレミアが隠し持っていたフォースセイバーを起動し、斬りつけたのだ。

(「最初から――狙って!」)
 リーシャは戦慄する。
 動揺を嘲笑うかのようにフレミアはランスに持ち替え諸手突きをする。その突きは余りにも自然でさりげない動作で繰り出され。
『くぅ……ッ』
 狼狽して身を捩るリーシャの脇腹を抉った。鮮血が沫く。フレミアは濡れたランスへと指を滑らせ、拭い取った鮮血に妖艶に舌を這わせた。
「んゥ、美味しい」
 ぺろり、と舐めとり味わいに嬉しそうに目を細める。取り込んだ血に肉体が活性化され、高揚に頬を染めてフレミアは愉しそうに笑った。
「アハハ♪楽しいわ楽しいわ楽しいわ!
 ――さぁ、もっともっと踊りましょう♪」
 どうしたの、楽しくないの? と嗤えばリーシャは悔し気に奥歯を噛み、牙が口の端を傷つけて一条の血を流した。

 リーシャの楽しい遊戯が詰みかけていた。打開策はあるのか、とリーシャは頭を回転させながらよろよろと後退した。其のリーシャの後ろにリーヴァルディが迫っている。リーヴァルディは大鎌を大きく振り上げ、跳ぶ。

(「1人1人、捌いていくしかない」)
 人間は空中で体勢を変えることは困難だ。リーシャは避けずにリーヴァルディへと槍を繰り出した。
 単純で重い剛撃。だが、繰り出した瞬間にトリテレイアの銃撃が槍へと集中された。槍先を襲う衝撃にリーシャの体勢が崩れ、思わず槍を手放してしまう。

「……限定解放」
 空中で跳躍しながら自身の生命力を吸収して魔力を溜め、リーヴァルディは其の瞬間、吸血鬼と化した。
「顕現せよ、血の魔剣……!」
 召喚された黒炎の剣がリーシャの全身を包み込む。其れは、過去を世界の外側に排出する黒い炎。

「槍よ、血よ、私に力を――!」
 オリヴィアが槍を手に疾駆する。今や槍全体を眩い聖気が覆い包んでいた。迸る闘気。戦気。
 苦しみながらリーシャは身を捩り驚異的な回避力と生命力を見せるが、聖槍を縦横無尽に振るい怒涛の如く攻め立てれば、徐々に、しかし確実にリーシャは追い立てられていった。

 覚悟。気勢。想い。熱量。
 情念。執念。狂気。鬼気。

 魂からの熱が理も技も凌駕する暴力となる。
 其れは、戦場ではよくある風景だった。

 リーシャ・ヴァーミリオンは気付いた。
 自分は今、玩具に狩られようとしている。

「……そんな、はずは、ない」
 リーシャは炎に包まれながら獣のように吠えた。其の身をまるごと弾丸に変えたかのように最後の力を振り絞りオリヴィアへと躍りかかり、鋭く血色の爪を閃かす。牙を剥きうなじへと突き立てようと獰猛に襲いかかる。

「否。お前は滅ぶのだ」
 冷酷な声がした。闇が蠢いた。そして、セシリアが闇を放つ。暗黒の剣が真っ直ぐにリーシャへと奔る。
「絶望と共に散るがいい」
 オリヴィアも全霊を以って聖槍を投擲し、心臓を穿つ。
「これでトドメだ――!」

 断末魔をあげてリーシャは滅びを迎えた。
 致命傷にビクビクと痙攣しながら炎に灼滅されて灰となる姿を猟兵たちは冷たく見下ろし、歓声をあげることすらない。

 頭上では月が血戦の一部始終を見下ろしていた。風に流された雲がふと月を覆い、隠す。
「ヴァンパイアを、倒したのね」
 ぽつり、とレティシアが呟いた。

 と、その足元にぽつ、ぽつ、と水滴が落ちて地に染みを作った。
 黒炭を濡らし地に染み入り、雨が呪われた地を洗い流すかのように降り注ぐ。

●宴の終わり
「血族一つを過去に還したところで世界の闇尚昏く、か。
 ……いや。星の瞬きも集えば星天となり、やがて暁天を迎えると信じよう」
 ラスベルトが木の下に入り、パイプを蒸かし呟く。

「この更地にした土地は今後どうなるのでしょう。
 血族のヴァンパイアが復讐に来る可能性もあるでしょうか」
 トリテレイアが疑念を零す。

「そうしたら、また遊べるわね」
 フレミアが笑った。
「どんどん倒す!」
 ライアが大剣を振り回した。

「ん。私は保護した子たちを元いた村に帰したり、身寄りのない子を受け入れてくれるところに連れていく」
 リーヴァルディが踵を返す。

 セシリアは雨に濡れながらいつまでもリーシャの倒れた地を見ていた。灰は雨に流され、もはや、かのヴァンパイアの居た形跡すらない。
 呟く――、
「正しき闇の力を以て、弱き者を護る剣となり盾となろう」
 ――言葉は、指環に誓うように。

 オリヴィアは獲物を仕留めた聖槍を大切そうに拭い、踵を返す。銀髪金瞳のシスター。其の出自は誰も知らない。
 身に宿るのは神殺しの力。携えるのは破邪の聖槍。
「ああ、……邪悪を狩るにはいい夜ですね」
 柔和な笑みと共に彼女は次なる闇を狩るべく歩み出す。

 ローは仲間と同じ木の下で紫煙を燻らせていた。

(「俺もいずれアイツのように『狩られる』日がくるのだろう。
 それも世界の理からすれば当然だ。
 でもその時までは」)
 すでに骸の海へ還ったであろう敵。其の姿。
 ローは目を細める。
「お前さんみたいにあがくとするさ」
(「死という支配にも……反抗したいんでね」)

 大きく煙を吸い込むと、夜が一段を冷えた気がした。

 掌を天に向け、七結は雨を感じる。
 ぽつ、ぽつと雫を垂らして白い掌が濡れていく。
「月が隠れてしまったわ」

 宴は、終ったのだ。

●結

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月19日


挿絵イラスト