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【旅団】OX-MEN:魔獣儀式

#キマイラフューチャー #【Q】 #旅団

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『これは旅団シナリオです。旅団「OX-MEN:フォース・ポジション」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです』

「いずれにせよ、これらの場所をもう一度調べてみる必要があるようだ」
 オックスマンが言う。この短期間では調べられたことは少ない。
 謎のまま終わらせてしまうには気がかりなことも多い。
 これらの出来事を追えば、次なる魔獣儀式の舞台、或いは企み……パラドックスマンの行方を突き止めることができるかもしれない。
「纏めておこう。パラドックスマンの目的は一つ。邪悪な龍の力を復活させること」
 永劫星雲の彼方に封じられた龍の力。青天娘々を含む戦士達の手によって眠りにつかされたという龍の復活は、この世界「パラドックスクリフ」崩壊の序曲。
 即ち、パラドックスマンはこの世界にカタストロフを招くことになるのだ。
 そんな事を許すわけにはいかない。しかし同時に、パラドックスマンはこうも言った。これは賭けだ、と。
「龍の力の復活には俺たちが必要だが――同時に奴を倒せるのも俺たちだけであるらしい」
 封印されたままでもこの世界に悪影響を及ぼし続けて来たその力。
 完全に倒す事ができればその脅威は取り除かれ、平和へと近づくことができることは間違いない。
「先手をうつためにもこの調査は重要だ」
 かつてテンプル・スパイラスで発見した三つの絵の内、一つは双星山であると突き止めた。だが、残り二つは何処に在るのか未だ不明。
 パラドックスマンの計画は終わっていない。

 OX-MENよ! 君たちの足跡を再び辿り、魔獣儀式の真相に迫れ!

『パラドックスクリフ』
 今更明かされる、OX-MENシナリオの舞台となっている世界の名です。
 山は高くそびえ風は強く吹き川は荒れる厳しい環境であったと伝えられていますが、現在はそれを感じませません。
 都市部は工業化や電子化が進んでいる一方、少し離れれば電気も届かぬ地域も多くその発展は極端で大きな隔たりがあります。


納斗河 蔵人
 遅れてすまない。状況はまだ理解してもらっていない。俺の立ち位置はゲームマスターだ。
 前回思わせぶりに示したので気付いている方も多いでしょうが、先に明示しておきます。今回のシナリオが終わったあと、次なる決戦の地はオックスマンションです。

 皆さんにはここまでの戦い(書かれていないものも含む)の地を巡り、パラドックスマンの目的がオックスマンションにあることを突き止める過程を辿ってもらいます。
 何故ここが魔獣儀式の舞台となるのか、ここまでの戦いとの共通点はなんなのか、或いは今までのシナリオで明かされていない秘密はこういう意味があったのか。
 決めるのはオックスメンの皆さんです。
 とはいえ丸投げされても困ると思うので、ここまでの伏線になりそうな展開をずらっと並べておきます。
 行き先については一つに絞る必要はありませんが、「場所1と場所2にはこういう繋がりがありそうだからこの二カ所にいく」みたいな感じだと助かります。
 いわゆる探索系のシナリオですがバトルやりたい人はバトルでもOK。

 どんなものが来たとしてもつじつまを合わせて一本の壮大なストーリーを作り上げる気概で臨みますのでどうぞよろしく。
 今回を含めて残り3シナリオで区切りをつける予定なので是非是非お付き合いくださいませ。
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第1章 冒険 『ライブ!ライブ!ライブ!』

POW   :    肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!

SPD   :    器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!

WIZ   :    知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!

👑1
🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ここまでの戦いとその後、考察の取っ掛かりにナリそうな要素を纏めます。
 これらの情報を元に(或いは無視して)プレイングをかけてください。

1:パラドックス・シティ
 目覚めぬ眠りとタピオカドリンクの事件が繰り広げられた街です(OX-MEN:クラッシュ・オン・ザ・ナイトメア)。

 ・インデックスビル
 オックスメンが激戦を繰り広げたパラドックス社の社屋です。戦いの後、社名がいつの間にかインデックス社に変わっていました。
 社長であったパラドックスマンBFと謎の常務は姿を消しましたが何らかの痕跡やヒントが残っているかもしれません。

 ・パラドックスケイヴ
 パラドックスビルの地下から街全域に伸びる広大な洞窟です。眠りについた人々のエネルギーをビルに送る役目を持っていました。
 事件の際には機械兵達が闊歩したことが確認されており、今回も調査に入れば邪魔をしてくるかもしれません。

 ・テンプル・スパイラス
 訪れた際には朽ち果てていましたが、事件の最中では立派な寺院でした。
 三枚の絵以外にヒントとなるものは発見できませんでしたが、再調査すれば何かが見つかるかもしれません。

2:双星山
 パラドックスマンCHとの戦いが繰り広げられた、二つの峰を持つ山です(OX-MEN:ジェミニスターズ・マウンテン)。
 夜には必ず二つの星が頂上に輝き、何らかの魔術的意味合いを持つと思われます。
 調査をすれば他の事件との共通点や、次の事件のヒントを見つけられるかもしれません。

3:山奥の名もなき村
 かつて美食大乱の舞台となった小さな村です。険しい自然の中で育まれた動物や植物は大変に美味であるとされています(OX-MEN:美食大乱)。

 ・村の食堂
 シャオ・ロンポーが父から受け継いだ食堂は長い時を経た今も繁盛しています。名物はカレービーフン。
 天叢雲包丁はOX-MENの手に渡りましたが、再び包丁に認められる日まで料理を作り続けるようにと伝えられているようです。

 ・暗黒美食料理會
 最高の食材を最高の料理人で提供する、パラドックスクリフでも有数の料理集団です。
 強引な手段をとる場面もあるようですが、目的は最高の美食を提供することだけです。
 今年は大規模な美食大乱が目前に迫っており、優勝を目指す人々が集まりつつあるようです。シャオの食堂も挑戦するとか。

4:チートタウン
 かつて婚活大作戦の舞台となった街です。比較的発展しており、電気も通っています(OX-MEN:婚活大作戦)。

 ・チー家の屋敷
 町長である、フートゥンとディエンの子孫が暮らす屋敷です。
 かつて当主の証とされていた勾玉を持つ者が現われたときには、協力を惜しまぬように、と伝えられています。

 ・ボルケイ火山
 街からそう遠くない地にそびえる死火山です。山の何処かに咲く白い花と、湧き出る水を混ぜ合わせて飲めばどんな病も治ると言われています。
 かつてはこの山に住まう謎の部族がいたようで、儀式などが行われた祭壇などが残されています。しかし、近年その存在は確認されていません。

 ・???
 シーシュオが二つの宝玉を返還するために向かったと思われる場所です。詳細不明。
 しかしながら悪用すれば火山の噴火を引き起こすほどの超エネルギーを、パラドックスマンが見逃すでしょうか?
 
 ・ランザンはどこに?
 OX-MENが去った後、ランザンは街から旅立ったと言われています。
 その足跡を辿ればパラドックスマンに関する何らかの情報を得ることができるかもしれません。
 
5:青天峡
 青天娘々と娘々大戦を繰り広げた例の泉です。「ピチピチギャルになりたーい」と叫びながら酔っ払って落ちた男の呪いは既に失われたようです(OX-MEN:娘々大戦)。

 ・泉
 呪いは消えましたが、ただの泉がそんな呪いを実現する力を持っていたことは事実です。
 詳しく調べればその理由や、戦いに向けての助けとなるものを見つけられるかもしれません。

 ・青天娘々の庵
 薬草が群生する山奥に存在するかつての青天娘々の住まいです。
 既に朽ち果てていますが神気に満ちており、魔獣儀式の阻止に役立つものを得られるかもしれません。

 ・山際の村
 ランとゼンが薬草を届けたと思われる村です。
 村そのものには何もないと思われますが、二人がOX-MENと共に青天娘々の試練を受けることになったのは偶然だったのでしょうか?

 ・青天娘々の行方
 パラドックスマンとの戦いに直接手を出す気はないようですが、見つけ出せれば力を貸してくれるかもしれません。

**********************
 
用語:オックスマンション
 OX-MENが拠点とする大きな屋敷です。周辺にはフリージアの花が咲いています。
 元の持ち主は不明ですが、オックスマン、源次、クロウ、カプラ、新兵が解決したとある事件の結果譲られました(OX-MAN:ファースト・コンタクト)。
 地下には巨大な地下水脈が存在しており、メディック選考会の際には候補者達がマンホールから落とされた事もあります(OX-MEN:メディック・オーディション)。
 オックスじゃんけんの会場としても知られていて(OX-MAN:不敗神話)、近くの街ではオックスコーラやオックス饅頭。最近ではオックスメンチョコなども評判(OX-MEN:オックスコーラ開発秘話)。
 夏には水着宣伝バトルや浴衣宣伝バトル、秋には仮装宣伝バトルなどの催しも行われています(OX-MEN:クラッシュ・スプラッシュ!)。
 
用語:夢幻戦塵
 魔獣儀式の一つ。
 二名一チームとして仲間同士で競い合い、最後に残ったチームだけが術者と戦う資格を得る。術者を倒さぬ限り誰一人として外に出ることはできない。
 この儀式によって発生したエネルギーは、永劫星雲の彼方へと送られる。
 なお、戦いによる負傷は儀式が崩壊した際に回復する。存分にやり合え。
 
用語:邪悪な龍
 この世界のオブリビオンフォーミュラに当たる存在。
 力を封じられながらもパラドックス・シティの事件ではパラドックス社の常務として暗躍(?)していた。
 おそらくは双星山の戦いも何処かで見ていたと思われる。名前も含めて詳細は不明。


【**************重要!**************】
 
 今回のシナリオは全員オーバーロード(プレイング文字数301字以上)でお願いします!!!
 ☆も増えてしまうのですが再送などあるとお互いいろいろ大変なので……よろしくお願いします。

【**************重要!**************】
天王寺・七海
七海ちゃんは、あまり詳しくないのね。
何ていうか、前回は参加してたんだけど、それ以外はわからないのね。
だったら、空から見て何かあるかなのね。
分からないなら、とにかく前に出ようって思うんだけどね。
ここって、どうなってるのかなって思うのね。

ここが過去、何かの遺跡だったとか、可能性あるのね。
至る上で、何するかも考えたんだけど、儀式って所でUDCで言う所の「邪神」が眠っている可能性もあるのね、
さて、何か来たら、シャチホコファンネルで穴だらけにするのね。
問題は、地下なのね。
だって、地上は、ここなんだし。

あと50文字ね、じゃあ、あとは何書こうかしらね。
パラドックスマンの狙い通りであれば、地下通路そのまま使うんじゃないかな?



●相反する謎
 
「……むう」
 オックスマンション。例によってオックスマンは調査に出遅れ、この拠点で各地から送られてくる情報を纏める立ち位置についていた。
 彼が出掛ければ、どうせまた戻ってくる前に事が進んでしまう。そう考えればこの役割は理に適っているのかもしれない。
「七海ちゃんはここまで何が起きたか、あんまり詳しくないのね」
 と、もう一人。天王寺・七海(大海の覇者・f26687)が机をヒレでぺしぺしと叩きながらオックスマンに呼びかける。
「なんというか、パラドックスマンという奴らと戦っているのはわかるけど、それだけなのね」
「ふむ……とは言っても俺も奴らとは二度戦っただけなのだ。一度目は決戦の地に遅れて参戦しただけだし、先日の双星山でも俺は獣壊陣とやらに取り込まれなかった」
「そういえば、何であの時オックスマンだけ無事だったのね?」
 三つの獣壊陣にはその時参戦していたオックスメン全員が取り込まれた。オックスマンを除いて。
 遅れてすまないなどと言っているがあの時の立ち位置は他のメンバーと離れていたわけでもない。
 どれかの獣壊陣に共に送り込まれていてもおかしくはなかったはずだ。
「……偶然ではないのか?」
「そんなわけないのね! 絶対に何かあるに違いないのね」
 オックスマンと他のメンバーの違い。一体何があるだろうか?
 少し考え込むと、何かを閃いたように顔を上げ――
「……状況は理解した。俺はオックスコーラの加護によって」
「何言ってるのね」
 謎は解けなさそうだ。
 オックスマンの状況理解はこういった場面では役に立たない。その本領は戦闘(破壊)に全振りだ。
 ふう、とため息をつくと、七海は次なる質問を投げかける。
「そもそも、あいつらは何をしようとしてるのね?」
「邪悪な龍の復活と聞いているが?」
 魔獣儀式。OX-MENが巻き込まれた一連の事件は全て邪悪な龍の復活のため。
 残された伝承は数少ないが、圧倒的な力で世界を支配し人々を苦しめていたことは間違いない。 
「それはいいけど、その後は何をするのね? 復活しても山奥でスローライフとかなら放っておいていいのね」
「むう、邪悪なスローライフだと……? さすがにそんな事はないだろう」
 武力を用い、策を用いる彼らだ。ろくな事にならないことは推察できる。 
「何が目的にせよ、パラドックスマンの暗躍を許すわけにもいかん。戦いは必然ではある」
「まあ、そこについては全員一致なのね。でも、あいつらの企みもきっと佳境なのね。そこを皆が見つけてきてくれたら助かるのね」
「そうだな……」
 オックスマンは先だっての会合で用いられた地図に触れる。
 パラドックスシティ。双星山。暗黒美食料理會。チートタウン。青天峡。オックスマンション。
 これらは同心円上に位置している。
 まず南東部にオックスマンション。円を時計に見立てると5時の位置だ。
 そのまま反時計回りに進むと1時の位置にパラドックスシティ、0時には暗黒美食料理會。
 更に9時の位置には双星山があり、7時の位置には青天峡が重なる。
 その先、6時の位置にはチートタウンだ。
「玲頼も言ってたけど、こうしてみるとオックスマンションにも何かあるかもしれないのね」
「そうだな、こうして拠点の守りについているのも重要な立ち位置だ」
「アンタはどう考えても守りに向いてないのね」
 ふう、とオックスマンは息を吐く。
 パラドックスマンとの戦い、決着は近い。
 しかしオックスメンは彼らについてまだ知らないことも多い。
「OX-MENよ。これまでの戦いの軌跡を辿り――パラドックスマン、そしてこの世界の謎に迫れ」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

瀬名・カデル
よーしボクはパラドックスシティに行って色々と調べてくるんだよー!
タピオカあの時飲めなかったし(確か)ぜひぜひ飲みたかったんだよね~もう売ってないかなぁ、売ってたらいいな!
だってあちこち見に行くのも大事だけど、街で確認も大事だよね!
街で確認も大事だよね!?
よーし行こう、アーシェ!

ちゃんと真面目に街以外のところも探すからね。
他のOX-MENのメンバーと連携してまだ向かっていない場所に行こうと思うよ。一番情報がありそうなのってやっぱりビルかなー
情報収集しながら考えてるんだけど、
龍の復活も倒すのもボク達OX-MENが必要ってなんでだろう?
でもボク達って色々とパラドックスと戦ってるけど、途中で仲間だって増えたりしてるし最初の事件が問題ってわけじゃないと思う気がするんだよね…。うーん…ボク達が『OX-MEN』な事がカギなのかな?
それならきっと、もっと別の場所が…全員が絶対に関われそうな場所…そこが大事…?
うーん、ムズカシイよーアーシェ―!(頭ショート)



●同じなのに違う街
 
 パラドックスシティ。 
 眠りについた人々と、その調査。街の経済を牛耳るパラドックス社。
 オックスメンはその原因にたどり着き、戦い、そして終わらぬ眠りからこの街を目覚めさせた。
 パラドックスクリフ。パラドックスマン。
 この世界に漂う「闇」との邂逅はあの戦いから始まったのだ。
「あちこち見に行くのも大事だけど、街で確認も大事だよね!」
「全くもってその通りだ」
 ――と、いった真面目なナレーションとは裏腹に、瀬名・カデル(無垢なる聖者・f14401)とミルラ・フラン(Incantata・f01082)はのんびりとした雰囲気で街へと繰り出していた。
 二人の手にあったもの。それはタピオカミルクティー。
「だから私たちのこの調査に、誰も文句はつけさせない」
「タピオカ結局飲めなかったし、是非是非飲んでみたかったんだよね~」
 激甘のドリンクにもちもちとしたタピオカの食感。定期的にブームが来るというのも頷ける。
「しかしおかしいね……」
「え? オカリン美味しいよ?」
「そうじゃなくて」
 正直なことを言えば、事件の後にミルラが街を調べた際には一軒もタピオカを売る店は見つからなかったのだ。
 だからカデルの期待にこの街が応えてくれるとはあまり思っていなかった。
 ところが、街を歩けばすぐに……とまではいかないものの、さして時間もかからず店も見つかった。
「まるでブームが去った後に一部の店だけが残ったみたいじゃないか?」
「んー、そういわれてみればそうかも。あそこも多分タピオカ売ってた店だよね」
 カデルが指さす先にはドーナツ店。しかし店の造りはいかにもタピオカを売っていた店に居抜きで入ったという雰囲気。
 流行り廃りは激しいものだし、この期間で店ができ、撤退し、新たな店が入った。ありえない話ではないのだが、どうにも気にかかる。
「……うーん、何か繋がりそうな気がするんだけど……」
「難しいね、アーシェ」
 答えは出ぬまま二人は街を歩く。
 ……と。
「あれ?」
「ん、どうした?」
 突如としてカデルが足を止める。なんという事はない、一般的な商店に見えるがその目は大きく見開かれ、ある一点に釘付けだ。
 何事か、とミルラがそちらに視線を向ける。
「……どういうことだい、こりゃあ」
 思わず、声が漏れた。

●繋がる糸
 
「……手強いな」
「それ、さっきも聞いたよ」
 叢雲・源次(DEAD SET・f14403)が目を閉じ、支倉・新兵(狙撃猟兵・f14461)がため息をつく。
 パラドックス社と入れ替わるようにして現れたインデックス社。
 ここに何かがあると見込んだ彼らは潜入調査を試みるべくハッキングを仕掛けていた。
「前はセキュリティがなんというか、時代遅れだったんだけど」
「以前よりも厳重……いや、そう表現するのにも違和感がある」
 何かが違う。いや、別物だ。
 パラドックス社の名がインデックス社に変化しているというだけではない、もっと大きな違いが何処かにある。
「何か他の手段を考えたほうが早いかもしれんな」
「本丸は無理でも提携企業とか、そっちのルートでいけないかな」
 顔を付き合わせ、唸りをあげたその時だった。
「大変大変、大変なんだよ!」
「あまりにもおかしいことが多すぎてどうにもわからんね」
 カデルとミルラが帰ってきた。どうやら何かを見つけたらしい。
「コーラ! コーラなんだよ!」
 そこにあったのは、見間違えるはずもない。
 オックスマンがことあるごとに持ち出してくる飲み物……オックスコーラ。
 街でカデルとミルラが見つけたものが、これだ。
 何故、これがこの街で売られているのか。
「……元々オックスマンがここで買ってたってオチはないのかい?」
「いや、パラドックスシティを訪れたのは前回の事件が初めてのはずだ」
 ミルラの当然の疑問に新兵は首を振って答える。
 これまでこの世界を巡ってきた中で他にこのコーラを見つけたこともない。
 いや、よくよく考えてみれば。オックスマンに関わらないところでこのコーラを見たことはあっただろうか?
 このタイミングで、この街で。オックスコーラが現れた。何らかの意図を感じられずにいられない。
「……とりあえず、だ。メロディカがコーラを持ってきてくれたおかげで突破口は開けた」
 考えることは多い。しかし、目の前のことから一つずつ片付けることとする。
「え、どゆこと?」
 新兵が指し示す、コーラの瓶に貼り付けられたシール。
 そこに記されていたのは、インデックス社、会社見学にご招待! の文字であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミルラ・フラン
さーて、中々に状況はヘヴィになってきたようだねぇ
(携帯灰皿を取り出し一服。薔薇とスミレ、それとカシスの甘ったるいフレーバーのタバコだ)

セクシー秘書として潜入してた杵柄だし、インデックスビルにまずは潜入してみるかね
ツラは割れてるはずなんで黒髪のウィッグにメガネ、胸はサラシで潰してナチュラルメイクで地味な取引先社員を装ってくよ
まあ普段は修道女もやってんだ、清楚を気取ることくらいは朝飯前さ

とはいえ地味娘のままでは情報収集も捗らないからねぇ
聞き耳を立てつつ、これは!と情報持ってそうな奴を見つけたら存在感で視線をこちらに向けさせて誘惑発動
清楚スマイルで骨抜きにしてあげるよ!

御社は以前パラドックス社だったと伺ったのですけど、どうしてインデックス社に変わられたのでしょう?
わたくし、小さなことだけど気になってしまって……

あ、社員がこっちを怪しんで襲ってくるなら応戦するよ
ガチの戦闘能力ありならジャッジメント・クルセイドと武器達で
一般人が錯乱してるだけなら肘鉄でね



●インデックス社探訪
 
「……なんだ、その姿は」
「パラドックス社の人間にはツラが割れてる可能性がありますので」
 ミルラがふふ、と小さく笑う。
 黒髪に、メガネ。普段の彼女を知る者でも一目でそうと気付くことは難しいだろう。
 普段は修道女もやってんだ、清楚を気取ることくらいは朝飯前さ――とは彼女の弁である。
 そんな彼女の胸元へ、カデルの視線。
「……」
「ああ、サラシで潰してるんです。メイクもナチュラルで」
 さて、その言葉に対する感情はいかなるものか。
 それはさておき、新兵はあの後キャンペーンシールを元に企画会社へとハッキングを仕掛けた。
 インデックス社そのもののセキュリティは完璧と言ってもよかったが、外部にまでその力は及んでいなかったらしい。 
 結果、3人の手にあるのがこの招待状である。
「将を射るなら馬を射よ、ということですね」 
「……なーんか調子狂うね、アーシェ」
 くい、とメガネをあげたミルラの姿に、カデルがぼやく。
 ともあれ、インデックス社へと乗り込む手段は得た。
「新兵も来ればよかったのに」
(すまないね、前に出るのはどうしても)
 通信の向こうで新兵が答える。
 例によって彼は同行していない。会社見学という名目上、ドローンも飛ばせないので音声だけでサポートとなる。
「パラドックスシティ――全てはここから始まった」
 源次がビルを見上げる。
 戦いの始まりの地。この街で、彼らはこの世界の真実に迫ることになる。

「皆様、本日はインデックス社会社見学ツアーにご参加いただき――」
 案内の声が響く。ビルのエントランスはやはり突入した際と似ているようで何処かが違う。
 やはり仮説は正しいのだろうか。
「当社は飲料を中心に、食品や文化活動など様々な――」
 この会社に怪しいところはない。むしろ優良企業、クリーンなことこの上ない。
 パラドックス社とは無関係……と思うには酷似しているのが気になるだけだ。
「では、主力商品オックスコーラについて説明いたしましょう」
「……きたか」
「名前もそのままなんだね」
 案内は続く。
 曰く、この創業者が独自の製法で作り上げ、名付けたものでかつて恩を受けた人々に因んで名付けられたものであること。
 創業者が去った後製法は失われたが、度重なる研究によって当時の味を再現し、更に美味しくしてきたこと。
 実際にそこに至るまでの苦労が展示と模型で表現され、企業の歴史を物語っていた。
「創業者は女性の方なのですね」
「生まれはチートタウン……だって!」
「……また聞いた名が出てきたな」
 やはりパラドックスマンの目的を掴むためにはこれらの繋がりを追う必要がある。
 そう確信して一行は会社見学を続けるのであった。

「こちらの白い花の成分と、湧き水。これが味の秘訣なのです」
「うーん、オックスマンのコーラとこのコーラが同じなのか、よく分かんないや」
 見学の最後にはコーラが振る舞われ、それでお開きとなった。
「……大抵の場合奴自身が全て飲み干すからな」
「比較のしようもありませんね」
 オックスマンはじゃんけんか、或いは何らかの催しか……そこで結果を残したものにしかコーラを渡さない。
 そして自分が勝ったときは敗者の前で一気に飲み干している。よくよく考えてみれば趣味の悪いことだ。
 まあ、それも彼の味なのだと言えばそれまでなのだが。
「本人か、或いは飲んだことがあるものに試してもらうしかあるまいな」
「サバイバー、トラベラー、リターナー……その辺が飲んだことあるって言ってたよね」
(これだけメンバーが居てそれしかいないのか……)
 ……と。ツアーの終わりに、ミルラが動いた。
「御社は以前パラドックス社だったと伺ったのですけど、どうしてインデックス社に変わられたのでしょう?」
「……はい?」
「わたくし、小さなことだけど気になってしまって……」
「ええと、おっしゃる意味がよく……?」
 案内人はきょとんとした様子だ。その表情はとぼけているようには見えない。
 ここはインデックス社創業の地であり、ビルも近年になって建てられたもの。
 パラドックス社と言うのは聞いたこともない、というのが案内人の答えであった。
「どこで聞かれたのか存じませんが、何か勘違いがあったのかと……」
「そうですか……それは失礼を」
 謎は深まる。一体、パラドックス社とはなんだったのか?
 釈然としない気持ちで仲間の下へと戻ろうとした、その時だった。
「知らないのも当然さ。だが、おかげで君たちを獣壊陣に送り込むことを思いついた」
「!」
 辺りが一瞬にして静寂に包まれる。この声には覚えがある。パラドックス社に潜入したときの――
「この世界では過去が留まり続け、未来は常に手の届くところにある。覚えておきたまえ」
「――っ!」
 服の下に隠した武器に手が伸びる。慌てて振り向くが、そこには誰も居ない。
「お客様、大丈夫ですか?」
「あ、ああ……大丈夫だ」
 ミルラの耳には、突然の動きに驚いた案内人の声だけが響いていた。
 
●過去と今
  
「過去が留まり続け、未来は常に手の届くところにある……ねぇ」
 ふう、とミルラが煙を吐き出した。
 辺りには甘ったるい香りが漂い、空気を重くする。
「ううーん、どういうことなのかわかんないよー!」
 会社見学を終え、一行は新兵と合流する。
 再び現れたあの男――パラドックス社の専務として現れパラドックスマンが『あの方』と呼ぶ男――の言葉。
 収穫はあったが、答えに至るにはまだ足りない。
「アイツ、こうやってあたしたちが頭抱えてるのを見て楽しんでるんだろ」
 復活と打倒というこの相反する力をOX-MENが持つ理由も意味も、まだ不明瞭だ。
「獣壊陣に俺達を送り込むことを思いついた、か」
「あの戦いが起こるまでは別の方法を考えてた、って事だよね」
 新兵にカデルが続く。
 そうなると獣壊陣でオックスメンがしたことを考えるべきだろう。
「過去の世界で宝具を手に入れる……鍵はそこかね」
 宝具が獣壊陣の中にある限りパラドックスマンは手を出すことができないと、青天娘々も言っていた。つじつまは合う。
「……フム。俺は獣壊陣に入りシャオを手伝ったわけだが……俺達があの世界に訪れなかった場合、あの食堂はどうなっていたのだろうな」
「それを言われるとディエンもか。正直、俺達の協力なしに秘薬が手に入ったとは思えないな」
 歴史に「もしも」はないはずだが彼らは実際に過去の世界で行動を起こし、その結果は現代にも残っている。
「もしかしてボク達……過去を変えちゃった!?」
 流行の不可解な移り変わり。次元の違うセキュリティ。その他、街にあふれる説明のつかない変化。
 豪奢な寺院が廃墟と化していたのも、タピオカの違和感もそれで説明がつく。
「俺達にはこの世界の過去を変える力がある……」
「パラドックス社の戦いで、アイツらはそのことに気付いた。そういうことか!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

クーガー・ヴォイテク
最初は場所4のボルケイ火山にいくかね
援護するのとか、マグマから逃げるのに必死だったからよく見れてないしよ
だけど、俺は一度"白い花"は見つけてんだ
前に来た道を通りながら、とりあえず白い花を見つけた所まで行くかね
そこで白い花がまた咲いているか、それが咲いていた祭壇が実はどういう風なのかとかをくまなく調べるぜ
なんてたって俺は聖者だからな、聖なる気持ちと腕力で、そういう祭壇系はたぶんなんとかこうなんかなるきがするぜ?

後は???の場所でも調べに行くかね
同じ火山が関係するしよ、それに噴火が起こるほどのって話だろ?
超エネルギーってなるとよ、俺はなんかそこを軸に空間が歪んて、同一の別次元と繋がってるとかそういうのもあるんじゃねえかとおもうんだぜ
なら、その先があるのかを知っておきたいのは、俺だけじゃねえと思うんだけどよ
--
話し方とかはいつもみたいなのでええよ



●チー家の今
 
「ふむ、私たちが訪れたときとは随分と様変わりしているようですね」 
 チートタウン。かつて、チー家を巡る婚活騒動が巻き起こった街。
「いやいや、それでも面影はありますよ。例の山も見えていますしね!」
 はるかな時を越えてなお代々続くチー家は、この街の顔として今も商業的にも政治的にも大きな影響力を持ち続けているらしい。
 そんな屋敷に、現れたのは二人。
 アリッサ・ノーティア(旅する雲に憧れて・f26737)と朝倉・くしな(鬼道羅刹僧・f06448)である。
 共にチー家の一人、ランザンとの「婚活」に挑んだ二人が気にかかるのは、当然ランザンのこと。
「気になってはいたのですよね……あの世界は過去の世界であったとの事でしたが」
「行方について、軽く調べた限りではわからなかったそうです」
「っていうか、そもそもランザンさんって本当に居たのでしょうか」
 獣壊陣の世界は不可解なことが多かった。
 そもそも時を越えるなんて出来事自体、ユーベルコードであっても容易ではない。
 儀式によって作られたパラレルワールドなんて説も出てこようものだ。
 しかし、少なくともあの時の出会いは現実であったらしい。
「ま、まさかその勾玉は……!」
 出迎えた男は驚きの顔を隠さない。
「どうも、ランザンさんの結婚相手のくしなんです!」
「ちわーす。配達された荷物のアリッサです」
 二人の手の中にある勾玉。
 ランザンから手渡された「結婚相手」の証は、街を受け継いだディエンとフートゥンの子孫にもしかと伝わっていたのだから。

「まさか私の時代に伝説の方々が現れるとは、思いもよりませんでしたよ」
 屋敷の応接間に通され一息つくと、屋敷の主チー氏はしみじみという。
「伝説て。どれくらい昔なんでしょうね」
「千年とかでしょうか」
 こっそりと囁きあう二人をよそに歴史語りは続く。
「はるか昔、先祖ディエンは邪悪な龍の力により死の淵にありました。この世界の各地に残された龍の呪い、彼女は特にその影響を受けやすかったんですな」
「邪悪な龍の呪い?」
「ええ、彼女の弟が大冒険の末にその事を突き止めたとか」
「それ、ランザンさんでは?」
「おお、よくご存じで!」
 聞くところによるとランザンは婚活事件の後、世界を巡る冒険家として名を馳せたとか。
 しかし、世界各地で名を残したり残さなかったりしているが、その実体は不明瞭とのことであった。
「ほほう……旅に。これは私勝っちゃいましたか」
「いえいえ、そうとは限りませんよ?」
「?」
 チー氏は疑問符を浮かべるが、アリッサとくしなはお互いに視線を送りあい、口元をつり上げる。
「それで、ランザンさんの結婚相手はどんな人だったのです?」
「私やアリッサさん、あるいはこの写真の人に似ているとか……」
「ええ……?」
 二人にとってそれは重要だ。 
「もしかして重婚ですか! だとしたらやりますね!」
「ほらほら、何か知ってるなら教えてくだせーです」
 くしなに迫られ、アリッサに揺さぶられた彼は落ち着けと言わんばかりに手を広げ、告げる。
「わ、私の知っている限りでは冒険の中でロマンスの逸話はありますが、どれも心に決めた人たちがいると別れています! 独身です!」
 叫ぶような答えが部屋に響き渡った。
 そして沈黙。静止する二人。
「……もしかして私たちものすごく悪いことをしてしまったのでは?」
「性癖を破壊してしまったかもしれません……」
 今更言っても仕方のないことであるが、少しなんとも言えない気分になる二人であった。

●ボルケイ火山を目指せ
 
「フーン、結局ランザンのことはよく分からなかったんだね」
「まー、そんなに昔のことじゃーな」
 チー家にて情報収集を終えたアリッサとくしなはマルコ・トリガー(古い短銃のヤドリガミ・f04649)、クーガー・ヴォイテク(自由を愛する聖者・f16704)と合流する。
「勝者のいない戦いですが、私たち3人の勝利ということで!」
「ランザンさんは冒険家となったのですから私の影響が一番強かったのだと思います」
「……そりゃーいいけどよ」
 クーガーが目を細める。彼らが向かっている場所はあの時大冒険を繰り広げた火山である。
 チー家に伝えられていた事柄の中には、これからの戦いのために有益な情報がいくつかあった。
「あの時ディエンに飲ませた薬……あれが邪悪な龍に対抗するために必要だとはなぁ」
「まあ、彼女の病気は呪いによるものだったっていうから納得はできるよ」
 その中の一つがこれだ。あの日、白い花と湧き水、そして宝玉。
 これらを揃えることで作られたあの薬が、邪悪な龍による影響を和らげるための手段の一つであると言うのだ。
「言ってしまえばこの世界のオブリビオン・フォーミュラみたいなものだろうし」
「そりゃーもー、めっちゃ強いこと間違いなしです」
 そんな相手に無策では戦えない。
 こうしてこのパラドックスクリフを巡ることで手段を見つけ出す――その目的は定まった。
 宝玉の在り処はともかく、白い花と湧き水はまだこの地にあるはずだ。
「そういえばマルコさん、もう一つ耳寄りな情報が」
 と、そこでくしながマルコに耳打ちする。シーシュオについてだ。顔にこそ出さなかったが、彼女のことについては気になっていた。
「彼女はなんと、会社を興したそうです。しかもしかも、今もその会社は残っているそうですよ」
「へえ、そりゃすごいね。ってことは宝玉の返還はちゃんとできたってことかな……」
 まさか目的を果たさずに別のことを始めたなどということもあるまい。
 時間が許すなら宝玉をあるべき場所に戻すまで付き合ってもよかったと思っていたが、一人でもやり遂げてくれたらしい。
「ところでその会社、なんて名前だと思います? 知りたいです? 知りたいですよね」
 そこでアリッサも口を挟む。彼女もこのことは言いたくて仕方がなかったのだ。
 マルコの返事を待たず、二人は答えを口にする。
「インデックス社、と言うそうです」
「あん? それってあれだろ、パラドックス社の……」
 パラドックスシティに本社を置くインデックス社。
 その創始者こそがシーシュオであり、現在もチー家と取り引きが続いているのだそうだ。
「……フーン」
「お、マルコさんちょっと笑ってます?」

●邪龍の祭壇
 
「あの時は苦労したってのによ」
「そっちはフートゥンと一緒だったんでしょ? 誰かを守りながらって大変だよね」
 山を登り、洞窟へと潜り込み、一行は白い花が咲いていた祭壇へと向かう。
 火山は活動こそしているものの、暴れ回るように吹き出していたマグマはすっかり落ち着いている。かつての道程を思えば拍子抜けするほどだ。
「マルコさんが回収した宝玉の影響だったのですかね」
「ちなみに溶岩の熱でHPを削られていないのは私のおかげです。ぴーす」
 アリッサの水のヴェールによってそれを無効化できていることも大きかった。
 対策なしで身を焼くような暑さは堪える。
「まずは一つめの目的は達成ってところかな」
「よかったですね、一輪も咲いていないなんてことがなくて」
 そして、目の当たりにした祭壇の周囲には白い花が咲き乱れている。
 これならばメンバー全員分の薬を作ったとしても十分足りるだろう。
「しっかし、これはなんのための祭壇なんだ?」
「そういえば、水が湧き出ていたところにも祭壇がありました」
「……ボクが行った所にもあったね」
 クーガーの疑問ももっともである。
 この火山という過酷な環境下に、少なくとも三つの人工物。偶然という事はないだろう。
「どっちかっつーとこの祭壇は邪気を集める感じだよな」
「そういうの、わかるのですね」
「まあ、俺は聖者だからよ。なんとなく感じるんだぜ」
 と、そこでくしなが気付いた。
「……おや? マルコさん、ちょっとこれを」
 指さすのは祭壇に彫られたレリーフ。言われて確かめてみれば、マルコもすぐに気付く。
「あれ、これって」
「そうですよ! あのタピオカ工場にあった奴です!」
 そこにあったのは、円の中に斜めに三角形が収まった奇怪な図だ。
 あの工場と同じものがここにあると言うことは。
「火山を噴火させることで邪悪な龍を復活させようとしていた、と言うことでしょうか」
「こりゃー、他の二つもちゃんと調べたほうが良さそうだな」
 あの日、シーシュオやマルコを襲った襲撃者。
 既にこの地には存在しないようだが、その目的はパラドックスマンと同じであったのかもしれない。
 
●追憶
 
「たしかこの辺りだったと思うのですが」
 さて、順調であるかに思えた探索であったが長い時の流れはそれを許さない。
 アリッサの記憶によれば位置は間違いないはずなのに、ランザンが見つけた湧き水の祭壇がまるで見つからないのだ。
「随分時間が経っちまってるって話だからなぁ。埋まってんじゃないのか?」
「ありえるかもね」
「でしたらくしなんの出番ですね! そりゃ!」
 クーガーとマルコの推察に、くしなは間髪入れずにその指先を岩肌へと向ける。
 ドスン、と言う鈍い音と共に光が溢れ、マグマが飛び散り、水のヴェールに触れて弾けた。
「無茶をするね」
「ですが見てください。私の記憶は間違っていなかったようです」
 マルコのため息に、アリッサはふふん、と鼻を鳴らす。
 指さす先ではくしなの光で岩が崩れ姿を現した、水の湧き出る祭壇が。
「ふっふっふ、流石は私。徳を積んでいるとこういうこともできてしまうのです」
「わーぱちぱち」
 土埃が落ち着くのを待って湧き水に触れる。
「あの時は気にしていませんでしたが、シュワシュワしていますね」
「炭酸混じりの水なのかもしれねぇな」
 たっぷりと汲み上げた水を背負い、クーガーが答えた。
「ここも同じマークがあるね」
「ちょっと不吉な気もしますが……でも、ここはランザンさんが秘薬の材料を手に入れた場所ですし、きっと大丈夫です!」
 ともあれ、湧き水を手に入れたことで残る祭壇は一つ。捧げられていた宝玉をマルコが手に入れた場所だ。
 
「……どうです? ここにも何かあったりしそうです?」
 今度はさしたる苦労もなく最後の祭壇にたどり着く。
 とはいえ、ここにあった宝玉はマルコが手に入れ、シーシュオが本来あるべき場所へと返したはず。
「さすがにここには何もないようですね」
「まあ、逆にあったら困るからな」
 アリッサが祭壇のレリーフに触れる。そこに刻まれているのは他の2か所と同じ謎のマークだ。
「……フーン」
「おや? 何かあったのですか、マルコさん」
 そんな中でただ一人、マルコは手にした何かを見つめていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

梟別・玲頼
オレはこん中じゃ新参だし、なぁ
軽く聞いただけしか知らねぇけど、みんな色々大冒険してんだなぁ
ま、出来そうな事から始めるか

ひとまず行った事のある先の戦いの舞台、双星山へ
山は大体霊的な何かを抱えてるもんだし
二つの星……まるで竜の目、なんて?
竜の頭がここならどっかに尻尾があるかも知れねぇし
他の面子の調査とか、連絡取りつつ共通点とかねぇか探してみる

地図に付いた丸を眺め、真円になった箇所をなぞり
陣の敷かれた場所に法則とかねぇかな?
等間隔とか、順番とかで他の箇所予想出来ないかと思って

――つーか、さ
やっぱ屋敷が線の上にあるのが気になんだよな
偶然にしちゃ出来過ぎだし
ほら、敵さんの狙いはオレ達の力なんだしさ…?
つまり獣壊陣とやらを仕掛ける段階である程度織り込み済みなんじゃねぇかなぁ…とな

何て事を考えながら、円に沿って実際に一周しとく
屋敷から出発して戻ってくるまでに何か見つかればなぁ

あとはまぁ、何かあれば風が囁いて教えてくれるだろ
戻って来て有事が起きてたら、警戒して構えよう
身がヤバけりゃ半妖態も辞さないつもり



●ふもとにて
 
「ここが激戦の舞台になった双星山か」
 二つの星が浮かぶ山。カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)はふもとから山を見上げ、そうつぶやいた。
「邪龍復活を目論む敵と、その為に必要なOX-MENの力が存分に振るわれた訳だ」
「あれは大変な戦いだったぜ。リーダーに連れられてきてみれば、いきなり敵が分裂してな」
 そんな彼女に答えたのは梟別・玲頼(風詠の琥珀・f28577)だ。
 先の戦いでも弓と風を操り、戦いに大きく貢献した一人。
「激戦に継ぐ激戦だったらしいね。今後のために詳細を聞いておきたいところだ」
 OX-MENとパラドックスマンの戦いは長く続いている。しかし彼が参戦したのは前回が初で、カタリナは戦闘には関わっていない。
「とはいえ、オレもどっちかっていうと新参だし、説明できる程じゃないんだよなぁ」
 概要は聞いているが、戦うからには詳しく知っておかねばなるまい。
 そこで視線を向けた先にいたのが、バイクに跨がったライカ・ネーベルラーベ(りゅうせいのねがい・f27508)であった。 
 話を振られて目を細め、答える。
「わたしも最初の戦いには参加してなかったんだけど」
「それでもオレ達よりは先輩だろ」
「ああ、よろしく頼むよ、先輩」
 そんな軽口を叩きつつ、一行は山へと歩を進める。
 パラドックスマンも無意味にここを戦場にしたわけではあるまい。
 ここで戦った意味を知ることこそが、龍へと至る道。
「それにしても魔獣儀式ねぇ。龍の復活には随分と手間がかかることだ」
「アタシとしてはそんな強大な龍を封じた方法にも興味があるね」
 封印自体もよほど強力なものに違いない。
 逆説的に、こんなにも大がかりで複雑な儀式を用いなければ龍の復活は成せない。
「わたし、謎掛けとかそういうのは苦手だからまずはその辺を走ってみるよ」
「了解だ。じゃあアタシ達は」
「手分けして調査を開始するとするか」
 
●空を見上げる
 
 ガタガタと車体が揺れる。
 人が容易く分け入れぬ双星山は崩れ落ちた岩肌でとても走りやすいとは言えない。
「うーん、調査なんて言っても、いきあたりばったりの勘任せ。ツーリングとでも思ってきたけどやっぱり無茶だったかな」
 ライカが唸る。こんなことならばもう少し人里に近い場所に向かうべきだっただろうか。
 美食大乱事件の村や、婚活事件の村辺りならもっと整備されているだろうし、娘々事件の山にもふもとには村があったというからここよりは走りやすいはずだ。
 もしくはもっと平地の、住みやすいところであるとか。
「……あれ」
 と、そこで気付く。これまでの戦い、いずれも山が関連していることに。
 パラドックスシティは平地だが、あれも高層ビルが戦いの舞台になったと聞いている。
「って事は高いところ?」
 パラドックスマンの言葉を思い返す。
 戦いの決着がついた後だ。
「何か言ってたよね……そうそう、永劫星雲」
 星雲と言うからには宇宙、つまり空の上。
 エネルギーを送ると言っていたから、高いところはアンテナ的な?
「んー……」
 思いつきだが、悪くないかもしれない。双星山を巡った後は、他の山にも行ってみようか。
 そんな事を考えながらライカはバイクの車体を跳ね上げた。

●風の吹くまま
 
「二つの山の頂上に輝く星……ね」
 玲頼はカタリナと別れ、一方の山の頂上に立っていた。
 なるほど、双星山の名の通りあちらの山の頂上には星が一つ輝く。きっと向こうからも同じように見えているに違いない。
「……まるで龍の目、なんてな」
 対になるものといえば、まず思い浮かぶのはそれだ。
 地図を広げ、双星山の場所を確かめる。ここは西部。
 北東を見ればパラドックスシティの街明かりがこうこうと輝いている。 
「邪悪な竜座、なんて星座があればわかりやすかったんだが」
 空を見上げてみるが、地図に記された形に並んだ星は見当たらない。
 地球では季節によって星の見え方は変わってくるが、この世界はどうだろうか。 
「……にしても、やっぱり気になるよな」
 地図に印をつけた、戦いの中で関わった場所。それらを線で繋ぐときれいに円を描いていた。
 線上には彼らが拠点とするオックスマンションもある。
「敵さんの狙いはオレ達の力……って考えるとなぁ」
 とはいえ、彼自身も含めオックスメンには霊的・魔術的現象に詳しかったり敏感だったりするものは多い。
 そんな中であの屋敷について異常を訴えているものは居ないのだから、何かが仕込まれている事はない。
「偶然にしちゃ出来過ぎなのに何もねぇ……少なくとも、今のところは」
 だが、これは儀式なのだ。儀式にはたとえ理不尽に見えても一定の『筋』が通っていなくてはならない。
「敵さんの思い通りじゃあ面白くない。この引っかかりの答えは見つけたいもんだ」
 そんな彼を導くように、一陣の風が吹く。
 風の向かう先では、青天峡とおぼしき霊峰が月明かりに照らされていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナ・フォルトゥス
今回は、ここ、オックスマンションが、よりにもよって、パラドックスマンの狙っている場所だとはね。
だとしても、だからどうしたで言える状況でもないですしね。

ソレとは別に、泉の呪いを魔術的な調査をしてみようかしらね。
パラドックスマンが狙っている何かがあるかも知れないですしね。

魔法を誰かかけたとかかしら?

無論。呪いとは祝福の逆転。
確実に何かがあったと言えるものですわね。

だからこそ、何かを突き止めないとですわね。
他にも、どこで何かあるのではないでしょうかんr。
ユーベルコードが無いから、地道に調査させてもらうわね。
オックスコーラ、そう言えば、特殊な製法だったかしらね。

…もしかして、この辺り、マナ濃度高いわね?
そうなら、狙われてもおかしくないわね。



●青天峡
 
「どうしたのかしら、浮かない顔をして」
「いや、ちょっとね……」
 レナ・フォルトゥス(森羅万象爆裂魔人・f09846)の問いかけに、リーオ・ヘクスマキナ(魅入られた約束履行者・f04190)はあいまいに答える。
 青天峡――かつて獣壊陣の中で騒動を引き起こした呪われし泉は静寂に包まれていた。
(なんかあの時の天女……青天さんがらみだとほんのり不機嫌になるんだよねぇ)
 青天娘々の戯れには酷い目に遭わされた。リーオ自身も、彼の背後の邪神『赤頭巾さん』も。
 その記憶が蘇るのか、それとも彼女にしか感じ取れない何かがあるのか。
 赤頭巾さんはフードの奥で不機嫌な様子を隠さない。
 そんな彼女をよそにレナは魔力を展開し、周囲に漂う気配を探る。
「思った通りですわ。この泉を中心とした一帯に溢れるマナ……異常ですわね」
「やっぱりここには何かがあるって事だねぇ」
 その何かを突き止めることができれば、パラドックスマンとの戦いも有利に進めることができるはず。
 先を見通すかのような青天娘々の言葉を思えば、それは確信にも近い。
「……ところで、泉の水に触れても大丈夫なんだよねぇ?」
「ええ、この泉に呪いはかかっていませんわ」
 レナの言うように呪いのようなおどろおどろしい雰囲気はない。
 むしろ清浄な神気に満ちていると言ってもいい。
「呪いとは祝福の逆転。この神気を性別反転の呪いに変えてしまう出来事があったに違いありませんわね」
「そういうものなんだねぇー。赤頭巾さんも何か感じる?」
 話を振ってみると、赤頭巾さんは『待ってて』とプラカードを残し、何処かへ。
 あっけにとられるリーオであったが、レナはふっと息をついて告げる。
「彼女にも考えがあるようね。戻るのを待ちましょうか」
 
●ディープ・スプリング
 
「……で、赤頭巾さん? これは何?」
 ずらり、とリーオの目の前に並べられた謎のアイテム。
 どこからか赤頭巾さんが持ってきたものだ。
「……金色の、ながーい笛と、糸紡ぎ車っぽい装飾のゴーグル」
「それに、櫛っぽい装飾のフィン? これでどうしろというのかしら」
 その様子を見たレナも確かめるが、イマイチ要領を得ない。
「なるほど、使い方は自分で考えなさいと言っている訳ね」
「鉄のハンスもビックリな隠し芸だけどさ。赤頭巾さん、コレをどうやってるのか全然教えてくれないんだよね……」
 どことなくにやりとした雰囲気の赤頭巾さん。『赤■の魔■の加護・「化身の拾弐:鉄王の財宝」(パラサイトアヴァターラ・トレジャー・オブ・ハンス)』の真価を発揮できるかはリ
ーオ次第だ。
 童話に登場しそうな外見のこれらをどう使うか。
 目の前には泉。フィンはつまり足ビレか。
「あ、わかった。この笛っぽいのはシュノーケル。『池にすむ水の妖精』に出てくる道具を象ってるんだねぇ」
 ぽん、と手を叩きリーオは納得顔。
「あら、そんな物語があるのね。……つまり、彼女は泉の中を調べろと言っている訳ね」
 レナもその結論に同意する。
 呪いがないのは確認済み。ならばまた女になるような事態にはならないはずだ。
「寒いけど仕方ない。ちょっと潜るとしようかっ」
「パラドックスマン達が狙ってくる可能性は十分にあるわ。気をつけて」
「あいよっ!」
 と、水中装備を装着したリーオは泉へと飛び込む。
 その姿を見送り、レナが振り向くと突如として頭上から声が響いた。
「おや、一人か? ストレンジャーはどうした?」
 声の主は玲頼。反時計回りで円の上を辿っていたところ、ちょうど青天峡に差し掛かったのだ。
「泉の中を探索に行ったわ。そちらの調査は?」
「それなんだがな――」
 玲頼は双星山での探索と考察について述べる。
「――って訳で、風の導くままにここにやってきたっていうわけだ」
「確かに、魔獣儀式とやらの正体は掴んでおきたいところね」
 パラドックスマンは、魔獣儀式は既に始まっていると言っていた。
 オックスメンが関わった事件の何処かに、その鍵は隠されているに違いない。
「そういえばここの上空からだと、オックスマンションの建ってる山も見えたぜ。インデックスビルらしき建物もな」
「あなたの懸念……当たるかしらね」
 玲頼は、どれも『高さ』と『距離』が同じように見える、と告げた。
 これまでの事件と同様に、オックスマンションが戦場となる可能性。ないとは言えない。
「そうね、パラドックスマンが狙うような何か……ここの調査が終わったらあちらも調べてみましょう」
「肯定するにも否定するにも材料が足らねぇ。現地に向かった奴らが何か見つけてくれてるといいんだが」
 玲頼は頷き、そこではっとする。リーオのことだ。 
「ところで、ここは呪いがかかっていたんだろう? 大丈夫なのか?」
「呪いはないわ」
 呪いの存在を否定しながらも、レナは泉を見つめる。
「でもこの泉は魔力に満ちている」
 ここはあの時と同じようで、違う。
「――あの時よりも、ずっと強く。これはどういうことなのかしら」
 性転換の呪いがかかっていたときよりも、だ。
 あれほどのものが失われたのならば力も消費されているのが道理。
 それなのに溢れんばかりに漂う魔力。
「魔力を産み出す何かがあることは間違いないわね」
「ストレンジャーに期待、って訳だな」
 さてはて、リーオはそれを見つけることができるだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライカ・ネーベルラーベ
わたし、謎掛けとかそういうのは苦手なんだけど、さてどうしようか
「調査なんて言っても、いきあたりばったりの勘任せ。まぁツーリングだと思って前に戦ったところに行ってみようか」
というわけで2:双星山とか3:山奥の名もなき村とかにレッツゴー

「うーん。人が生活してるとはいえ、やっぱり山道は狭くて運転しづらい……」
もっと平地の住みやすいところに行けばよかった……あれ?

「たしか他の調査候補地も山が多かったよな……街中の候補も大きなビルが目印だった……」
高いところ、がなにか意味がある?
思いつきだけど、他に手がかりもないし確かめてみようか

幸い霊的なものへの感受性はそこそこある方だし
双星山の山頂付近を蛇行運転したり、名もなき村のある山を他に怪しいところがないか爆走してみたり。

「本当にこの思いつきが正しかったら、あのとき描いた円の上で、背の高いものを探せばいいんじゃないかな」



●包丁の輝き
 
 ライカは双星山を出発し、北回りでオックスマンションを目指してバイクを走らせていた。
 とある山奥でバイクを停め辺りを見渡すと、周りに視界を遮るものはない。この辺りで一番高い場所はここのようだ。
「おや、リターナーではありませんか。こちらに来られていたのですね」
 そんな彼女に声をかけたのは、聖護院・カプラ(旧式のウォーマシン・f00436)であった。
「……あれ、キャスターじゃん」
 そう、ここはかつてシャオ・ロンポーとマンカン・ゼンセキによる美食大乱が巻き起こった地。
 彼は先行してここを調査していたのだ。
「これまで関わったのはどこも高い場所だったからさ。ここも関係あるんじゃないかって」
「なるほど。それはいい考察ですね」
 カプラがゆっくりと頷く。
「……で、そっちはなんでここにいたわけ?」
 各地に散ったオックスメンは、それぞれパラドックスマンとの戦いに備えて情報収集をしているはず。
 カプラも何らかの目算があってここにいるのだ。
「先の簡単な調査ではこちらの詳細まではわかりませんでしたから」
 二人が振り返れば目に入るのは、暗黒美食料理會の大仰な門。
 美食大乱の騒動の際、ここの主マンカンは天叢雲包丁を欲していた。
 シャオが対決に勝利したことで一旦手を引いたわけだが――その後、包丁はオックスメンに預けられている。
「彼は何故この包丁を求めたのでしょう?」
「……まあ、ただ切れ味がいいとかそういう理由じゃなさそうだよね」
「パラドックスマンのユーベルコードをも抑えこんだ力。その正体を知れば戦いにも役立つと思うのです」
 ――と。
「お待たせしました、マンカン師がお会いになるそうです」
 門が開き、一人の男が二人を招く。
 カプラが包丁の件を出していたのがよかったのか、ここの主にすんなりと会うことができそうだ。
 
●マンカン・ゼンセキ
 
「――お目通りが叶い、光栄です」
「……ども」
 カプラが鷹揚に、ライカが小さく頭を下げた。
 暗黒美食料理會、その頂点だけが名乗ることを許される名を受け継いだ男。
「よくぞ参った! 天叢雲包丁を持つ者たちよ!」
 当代のマンカン・ゼンセキである。
「初代より伝えられし、禊ぎの時がついにやってきたということであるな!」
 初代。あの時戦った、マンカン・ゼンセキのことだろう。
 だが、禊ぎとは一体何であろうか?
「初代が偉大なる冒険家、ランザン・チーに委ねられし約束通り。天叢雲包丁と、うけつがれし技。そして最高の食材をもって神の国に至る料理……振る舞わせてもらおう!」
「……何言ってるかよく分からないんだけど?」
「むう?」
 マンカンは意外そうな顔をする。こちらが全てわかった上で尋ねてきたのだと思っていたのだろう。
「私たちはマンカンさんにお目にかかったことはありますが、その目的を聞かされたわけではないのです」
「ていうか、敵みたいなものだったしね」
 あくまでオックスメンが手を貸したのはシャオだ。
 あの短時間でもマンカンの人となりはしれたが、その多くを知っているわけではない。
「ならば語らせてもらおうか、初代が食を極めた、その理由を!」
 
●パラドックスクリフに迫る危機
 
「世界の、滅亡ですと?」
「そうだ。龍が封印されたことでその脅威は去ったが、そのせいで今度は未来を失ったというのだ、この世界は」
 当代のマンカン・ゼンセキが告げたのは驚くべき言葉であった。
「なんでさ。襲ってくる奴がいなくなったのに、どうしてそうなっちゃうの」
 ライカが首をかしげる。邪悪な龍の復活を阻止するという話だったはずなのに、封印のせいで世界が滅びるとはどう言うことなのか。
「詳細は我らにも伝わってはいない。しかし――」
 龍の封印によってこの世界はバランスを崩し、未来へと進む力を生み出せなくなったのだと伝えられている、とマンカンは続けた。
 世界のバランス。未来へと進む力。
「んー、それって何処かで聞いた話のような……」
 時間質量論。
 あまりに当たり前すぎて意識していなかったが、骸の海に浮かぶ世界は時間をエネルギーとして排出して未来を産み出す。
 それが理だ。
「邪悪な龍は人類にとっては脅威であると同時に、世界を守る存在であったと……」
 カプラがつぶやく。おそらく龍は何らかの形で、時間をエネルギーとして骸の海へと放出していた。
 いびつな形であるが、このパラドックスクリフは邪悪な龍によって維持されていたという事。
 その龍が封印されたことで未来を産み出す力を失いつつあるこの世界は、停滞しようとしているのだ。
「初代が汝らと出会ったのも過去が世界に留まり続けているから。もっとも、そうして時を越えられるのはこの世界の外からやってきた者だけだがな」
「あー、だから私たちの力が必要って」
 パラドックスマン達は、邪悪な龍の復活にオックスメンの力を欲していた。
 龍を封じた獣壊陣に入り込み宝具を回収するのは、パラドックスマンには不可能だったというわけだ。
「だが、龍の復活は人類の破滅。封印を続けても世界は滅ぶ。どちらも受け入れるわけには行かぬ……」
「そりゃそうだよね。それで、どうすればいいの?」
 こうして彼らも動いている以上、手段はあるはず。ライカの言葉にマンカンはにやりと笑い、告げた。
「単純だ。龍の世界に乗り込み、奴を討つのだ。封印ではなく……その存在を過去にする」
「つまり、やることは変わらない、と言うことですか」
「わかりやすくていいや」
 戦って勝てばいい。それで世界はバランスを取り戻し、邪悪な龍の脅威からも救われる。
 時が経てば他の世界のようにオブリビオンが現れ始めるかもしれないが……
 その時は猟兵、ひいてはオックスメンの出番だ。
「さて、話を戻そう! 我らの役目は料理にある!」
 明日行われる美食大乱。これも重要な儀式であるらしい。
 その勝者が、天叢雲包丁を以て、龍の世界の食べ物を作る。
 それを食すことで、龍の世界に乗り込んでも戦う事ができるのだという。
「美食大乱が終わったとき、その包丁は光を放ち資格持つ者を祝福する! 無論選ばれるのは私だ!」
 彼が自信に見合うだけの実力者であることは間違いない。
 邪悪な龍と戦う為の手段を受け継いだ自負もあるのだろう。
「さて、我らに伝えられし策はそれだけだが……汝らならば他にも龍と戦う手段、かの世界に乗り込む手段も見つけ出せるであろう! 明日の美食大乱を期待して待つがよい!」
 マンカンが笑い声をあげる。どちらにせよ、明日を待たねばならないようだ。
「……残りは他の面子に期待ってところかな」
「そうですね。この暗黒美食料理會の料理を持ち帰る……それが我々の役目のようです」

大成功 🔵​🔵​🔵​

朝倉・くしな
分かっていますとも
私が調べるべき場所はひとつ

4:チートタウン
・ランザンはどこに?

まあ気になってはいたのですよね
ランザンさんはどうなったのか……
そもそもランザンさんって本当に居たのでしょうか

そういう所を確認しにいくのも楽しいでしょう
そう、ランザンさんの結婚相手が、
アリッサさんかアマータさんか私か、
誰に似ているのかを調べなくては!
もしや重婚と言う可能性も!

まずはご実家に挨拶ですね
結婚式の写真とか残っていたら完璧なんですが
勾玉と『徳』の力で乗り切りましょう


(なんやかんやでランザンさんの足取りを追って
曰くの場所にいったり、他の人に合流したりすると思います)

(その際は羅刹パワーか、ジャッジメントか、徳パワーでなんとかします)

例1:
閉ざされた扉を秒で開ける事に定評のあるくしなんです
『徳』を積んでおくとそういった事も出来るようになるのです
我が前に開けっ!オープンザドアー(羅刹パワーでバキリ)
ほら開きました

例2:
えい
(おもむろに発射されるジャッジメントクルセイド)
(単純で重い一撃は地形を破壊する)



 ●帰還
 
「あら、お早いお帰りなのね」
 七海が意外そうに言う。
「ああ、俺達はひとまず目的を果たしたんでな」
「このしゅわしゅわと花、それに宝玉が揃えば龍の呪いを無効化できるそうなのです」 
 クーガー、くしな、アリッサの三人が、ボルケイ火山で入手した白い花と湧き水を手にオックスマンションへと帰還したのだ。
「でも、一人足りないのね。マルコはどうしちゃったのね」
「マルコさんは行きたいところがあると。きっとシーシュオさんの痕跡を探しに行ったに違いありません!」
「そうですね、きっとそうなのです」
 一行と別れ足早に立ち去ったマルコの姿を想い、くしなとアリッサは口元を緩ませる。
 その隣で荷物を下ろし、クーガーは辺りを見渡すと残っていたはずのもう一人の姿が見えない事に気付いた。
「ところでオックスマンはどうした?」
「なんかどっかいなくなっちゃったのね」
 が、薬を作る上では問題ないだろう。屋敷の施設はメンバーならば誰でも自由に使える。
「まあいいか。宝玉はねーけど、まずはこの二つだけで試作してみるとすっか」
 かつてディエンの呪いを打ち払った秘薬。オックスメン全員分を作るとなればぶっつけ本番というわけにもいくまい。
 
●ランザンの物語
 
「ふむふむ」
「おや、アリッサさん。一体何を読んでるんですか?」
 クーガーを手伝えることはしばらくなさそうだ、と厨房を離れたくしなは本を開いていたアリッサに気付いた。
「どうやらランザンさんの冒険が本になっていたようで」
「おおっ、その後のランザンさんの足取りが掴めそうなのですね!」
 アリッサが手にしていたのはランザンの手記を基にした小説であり、そのまま全てが事実というわけではなさそうだ。
 しかし、くしなの言うように彼の足跡を知ることはできるに違いない。
「ええ、なかなかに面白いですよ。婚活事件の後ランザンさんは旅に出て、一人の料理人見習いと出会いました」
「ほうほう、それでそれで?」
「待ってください、まだ読み始めたばかりなのです」
 ページをめくり、一文一文を噛みしめる。
「ゼンセキという青年と共に旅をすることになったランザンさんは、とある村で病気の子どもに出会います。その子を治せるのは山奧に生える薬草だけ……」
 そんな二人の様子を見ていた七海はうーん、と唸る。
「なーんかどっかで聞いた話の気がするのね」
「薬草を採りに向かった二人の前に現れたのは、邪悪な仙女。勝手に山に立ち入る者に呪いを、と二人は女の子の姿に変えられてしまいました」
「あー、いけませんいけません。それTSって奴じゃないですか」
 読み上げるアリッサにくしなが声をあげる。
「あ、でもくしなんは百合とかもありですけど!」
「って、待つのね待つのね!」
 そして、七海もまた声をあげた。どう聞いたってそれは、彼女が青天娘々と出会ったときの話……娘々大戦ではないか!
「つまり、七海さんは女の子になったランザンさんに会っていたと?」
「そうに違いないのね。ランザンに、ゼンセキ……ランとゼン、そのままなのね!」
 
●オックスメンの物語
 
 読み進めていく内に見覚えのある名前が次々と出てきた。
 サンダン・ロンポーとの出会い。マンカン・ゼンセキとの別れ。
 二つの星が輝く山での冒険記。
 青天娘々との再会と、託された宝玉。
 パラドックスシティにおける姉との再会。
 そして。
「この世界の未来のため、ここに最後の宝玉を封印する。あの日出会った三人の力となれるように」
「ランザンさん……」
「アンタ達の事をずっと忘れてなかったのね」
 何処かの遺跡へと宝玉を封じた後、屋敷を建ててそれを見守る、といったところで物語は終わっていた。
 そうなれば、もう彼女たちのやることは決まっている。
「ランザンさんの残した宝玉を見つけ出しましょう!」
「おー」
「それはいいけど、遺跡がどこなのか書いてないのね」
 しかし場所については抽象的で、七海の言うように簡単には見つからなさそうだ。
「でも、ヒントらしきものはありますよ。ほら、かつて登った双星山が見えるとか……」
「読み返していけば他にも見つかるかもしれません! アリッサさん、頑張ってください!」

「……あら、どこ行ってたのね?」
 盛り上がっている二人から離れた七海はいつの間にかオックスマンが現れていたことに気付く。
 いつもの黒鎧に黒兜だが……どことなく湿っぽい。
「この屋敷を守る結界に異常を感じたのでな。俺は破壊することしかできないが、これくらいは調べられる」
「そんなものがあったのね。七海ちゃん知らなかったのね」
 このオックスマンションには外敵を退ける結界が張られている。
 メンバーでもこのことを意識しているものは数少ないかもしれないが、別に隠しているわけではない。
「地上に不審なところはなかった。それで地下を調べようと思って戻って来たのだ」
「地下があったのも七海ちゃん初耳なのね」
「普段は塞いでいるからな。オーディションの際に怒られたのだ」
 メディックオーディション。OX-MENのメンバーを大々的に募集する為に開催された催しだ。
 集まった面々を地下水脈に落として反応を見るというオックスマンの審査方法に多大な抗議が寄せられた、というのは余談である。
「ちょっと面白そうなのね。水が流れているっていうのなら、七海ちゃんも一緒に見に行ってあげるのね」
「そうか、助かる。流れが速いから気をつけろよ」
 そういうとオックスマンはオックスマンホールの蓋をずらし、地下へと続く通路を指し示した。

●オックスアンダーグラウンド
 
 ジャバジャバと水流をさかのぼり、七海は地下水脈を探索する。
 外敵の侵入を防ぐ結界の範囲は予想よりも広い。
「地下ってわりには結構明るいのね」
「ああ、言われてみればそうだな」
 何か光を蓄える植物でも生えているのだろうか。
 最初に降りてきた地点から四方に伸びた水路。更にはそれぞれの終点を繋ぐように円形に繋がっている。
「地下水脈っていうけれど、こんなの自然にできるわけがないのね」
 この形も結界を維持するための陣なのだろう。壁面にはところどころレンガのようなものも存在する。
「そうなのか?」
 陸路を行くオックスマンが首をかしげるが、今まで気づかなかったのか。
 まあ防御用の結界は専門外だし仕方ないだろう。
「実は古代遺跡だったとか、可能性あるのね」
「ふむ……」
 なんだかそんな言葉を聞いたような。それも、つい最近。
 のんびりと、しかし着実に探索を続けていた七海だったが、彼女の感覚器が突如として謎の反応を察知した。
「どうした?」
「……気をつけるのね。何かこっちに来るのね!」
 人と同程度のサイズの何かが、水路を進んでくる。それも、複数だ。
 これはのんびりしている場合ではない。敵であるならば迎撃しなければ。
 七海はシャチホコファンネルを展開し、反応のある方向へ向けて発射。
 狙いは違わず命中し、水路にバラバラになった機械がぷかりと浮かぶ。
「まずいのね、オックスマンションが狙われてるのね!」
「いかんな。俺が遅れずに先陣を切ると、ろくな事がないぞ」
 オックスマンが漆黒剣を抜き放ち、水路へと飛び込んだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーオ・ヘクスマキナ
調査対象
5:青天峡・泉

なんかあの時の天女……青天さんの庵とか、本人を探しに行こうとすると赤頭巾さんがほんのり不機嫌になるんだよねぇ
まぁ気にもなってたし、泉の調査と行きますかー
結局、「酔っ払って落ちた人」が凄かったのか。泉に「何か特殊な力orモノがある」のかがハッキリしてなかった気がするし

とはいえ、殆ど赤頭巾さん頼りにはなるんだけども……
って事で、諦めて赤頭巾さんから『鉄王の財宝』で水中調査用のアイテムを借りてみよー!

……金色の、ながーい笛と、糸紡ぎ車っぽい装飾のゴーグル。あと櫛っぽい装飾のフィン?
成程、「池にすむ水の妖精」に出てくる道具を象ったシュノーケルかぁ
寒いけど仕方ない。ちょっと潜るとしようかっ


ウェポン・アクセサリの中のフラッシュライト(水中でも一応使える)を頼りに水中を探索
こういうのは大抵一番深いところに大事な物があるってのがお約束だけど、この泉には一体何が……

……え?
なんで、こんなモノが此処に?

(具体的な内容はお任せ。便利に使って頂ければ幸い)



●水底の扉
 
 水の泡が弾けて消える。
 赤ずきんさんの道具の力を得て泉へと飛び込んだリーオはゆっくりと深部へと潜っていく。
(こういうのは大抵一番深いところに大事な物があるってのがお約束だけど)
 泉の中は明るく、手にしたフラッシュライトも今のところ必要ない。
 もちろん日の光が届かないところまで潜れば話は違うのだろうが、この規模の泉がそこまで深いことはないだろう……と、思っていたのだが。
(どこまで潜るの、コレ?)
 予想以上の深さだ。ぐらぐらぬるぬる神獣橋の時に落ちた面々(赤頭巾さん含む)はすぐ上がってこられたが、よく事故が起こらなかったものだ。
 しかも不思議なことに、周囲の明るさは減らない。いや、むしろ潜るほどに明るくなっていく。
 おまけに水の冷たさもいつの間にか和らいでいる気がする。
 そんな潜水を続けていくうち、リーオは驚くべきものを目にすることとなった。
(……え?)
 それは、扉である。そして大きく刻まれたOXの文字と、鳥の意匠。
(なんで、こんなモノが此処に?)

「戻って来たわね」
 しばらくして。帰還したリーオをレナと玲頼が出迎える。
「あれ、来てたんだね、玲頼さん」
「お疲れ。ここは冷えるからな、大変だっただろう?」
「いや、それがやっぱりこの泉、不思議でねぇ」
 ぐっしょりと濡れた服を絞りつつ、リーオは答える。
「見た目よりもずっと深いし、なのに明るくなるわ水温も上がるわで……」
「興味深いわね」
「流石は仙女が住んでた泉ってところかな」
 そして、泉の底で見つけた扉の話に移る。
「びっくりしたよ、まさかそんなものがあるなんて思わなかったから」
 リーオは地面を削るように扉の絵を描く。
 OXの紋様、その下に描かれた鳥。
「で、押しても引いても動かないんだよねぇ。それで一度戻ってきたってワケ」
「なるほど、そうなると……封印が施されていると考えるのが妥当かしらね」
 随分と厳重な隠し方だ。よほどのものが隠されているに違いない。
「っていうか、これOX-MENのマークなんだよな?」
「どう見てもそうなんだよねー」
 OXが刻まれた扉。模様の下に描かれた鳥。
「この絵に何も意味がないとは思えないわ」
「でも、鳥だよ? 水の底まで連れて行くわけ?」
 封印を解くための鍵は鳥、とでも言うのだろうか。
 リーオは頭をひねるが、レナと玲頼は平然と言ってのけた。
「そこにいるじゃない」
「まずは試してみないとな。俺と一緒にその扉まで行ってみるとしようぜ」
 そう、玲頼はコタンクルカムイ――鳥の姿も持っているのだ、と。

●宝玉に宿るもの
 
(あっれー? なんだかさっきよりあっさり着いちゃったぞ)
 泉へと飛び込んだ一行は、リーオの先導で扉の前へとたどり着いていた。
(この泉自体に空間をねじ曲げる魔法が……? いえ、そういうわけではなさそうね。あるとしたら扉の中)
 レナが顎に手をあて、考える。リーオがどこまでも深く潜っていたように感じたのも、幻覚か何かであったのだろうか。
 その源とおぼしき力は、確かに扉の奥から感じ取ることができた。
(導かれた、ってところかな)
 玲頼が小さく笑う。ここまで近づけばわかる。
 この扉の先で、何かが待っているのだ。
(あれ、どうしたの?)
 と、ここまで動きを見せなかった赤頭巾さんがリーオの傍を離れ、扉へと触れた。
 ちら、と首を傾け玲頼へと視線を向けているようにも見える。
(俺にも手伝えってことかね)
 言われるがままに彼も扉に触れると、辺りに金色の光が溢れ、そして。
「お? あれ? 空気がある」
「どうやら、目的のものはあれのようね」
 気がつけば、小さな神殿のような場所に三人は立っていた。
 中央には祭壇。金色の光を放つ宝玉が祀られている。
「よく分からんが重要そうだ。持っていくとしようぜ」
 そうして玲頼が宝玉へと手を延ばす。
 ――と。
「玲頼さん、大丈夫?」
 突如としてその動きが止まった。彼らは知る由もなかったが、宝玉は手にした者へと語りかける事ができる。
 玲頼はその声を聞いているのだ。
 
「……あー、とりあえず俺は大丈夫。この仕掛けを作ったのは青天娘々、だとさ」
 しばらくして、玲頼は告げる。この神殿を作った者の名を。
「そうではないかと思っていたわ」
「まあ、思い当たるのはあの人ぐらいだよねぇ」
 ある意味では予想通りか。本人に会うことはできなかったが、彼女なりに力を貸していてくれたらしい。
「彼女は封印を強固なものとするために宝玉を隠した。そういうことでしょう」
「ご明察。それと、宝玉に宿ってるのは一緒に龍を封印した人の魂だとさ」
「へぇー。赤頭巾さん、ひょっとして感づいてた?」
 リーオが視線を後ろに向けるが、赤頭巾さんはしらない、とだけ反応を示す。
 いずれにせよ、彼女の力もあってここにたどり着けたのだ。感謝しなくてはなるまい。
「で、この宝玉がいろいろ教えてくれたんだが……まず、どうやら邪悪な龍の封印と魔獣儀式は別物らしい」
「と、いうと?」
 邪悪な龍の封印は青天娘々とその仲間達によって行われた。それ自体は彼女も語っていたことだし、間違いはない。
 四つの宝玉と獣壊陣。これらの力によって龍の封印は維持されてきた。
「だが、少なくとも双星山での戦いは封印には関係ない」
 そして、獣壊陣以外でオックスメンが関わった場所はもう一つある。
「パラドックスシティはどうなのかしら?」 
「あそこにも宝玉はあるらしいが……ストレンジャー、何か知ってるか?」
「うーん、あの時は眠りから得られるエネルギーにしか興味がなかったように思うよ」
 実際に参戦したリーオへと水を向けるが、どう思い起こしても宝玉の存在を知っていたようには見えなかった。
「と、なるとこの2カ所か……ん?」
「どうしたのかしら?」
 改めて地図に印をつけた玲頼は、懸念を強くする材料をもう一つ見つけてしまう。
「この2カ所とオックスマンションを線で繋ぐと……正三角形になるな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

マルコ・トリガー
フーン、調査ねぇ。
パラドックスマンの思い通りにはさせたくないし、気になる事もあるし、あの場所を探してみようか。
シーシュオの足取りは掴めてないんだよね。
二つの宝玉を返還する場所って結局わからないままだし。
あの時、すぐに元の世界に戻らなきゃいけなかったから手伝えなかったけど、時間があったら宝玉返還するまで付き合っても良かったけどね。ま、シーシュオなら一人でもやり遂げたとは思うけど。

宝玉が喋ってた事を思い出そう。何かのヒントが隠れてるかもしれないし。
結局、宝玉を狙ってた連中の事もよくわからないんだよね。
今この現代のチートタウンで痕跡を探して見つかるかわからないけど、屋敷とか火山を見回ってみようか。
【雲竜風虎】で猫たちにも協力してもらおうかな。

しかし、
自分の事より家族のためにって思えるって、なんかすごいね。
ボクには兄弟はいないけど、もし姉って存在がいたなら、シーシュオみたいな人だったら面白い日常が送れたかもね。
あの後、シーシュオの人生がどうなったかわからないけど、また家族と再会出来てたらいいね。



●運命を引き寄せよ
 
「うん、この辺でいいかな」
 一人双星山に残っていたカタリナは山肌へと手を触れ、神秘の気配を辿る。
「地には二勢力の力の残滓、天にはお誂え向きの双つ星……」
 パラドックスマンの目的は邪悪な龍の復活。
 とはいえ、ここまでに得られた情報から察するに、まだ終わりではない。
「やっぱりね、これはわかりやすい。この二つの山は竜穴だ」
 同様に、力を留め放出しやすい場所。それこそがここまでの戦いの舞台となってきたのだろう。
 詳しく調べてみなければわからないが、円状に並んでいるというのも龍脈に添っていると推測できる。
「この感じは仙術、道術……ちがうな、どちらかといえば星の巡り……」
 だが、どうにもおかしい。この術式は邪悪な龍を復活させるもののはずだ。
 しかし、どう解釈してみても封印を解くとか、エネルギーを送るとか。そういう形にはなり得ない。
「どういうことだい? まさか前提が間違っているとでも言うのかな?」
 もう一度、考え直してみる。
 暗黒美食料理會、チートタウン、青天峡。
 この三つはいい。獣壊陣というのは確かに封印で、それを解除するのが目的だったのだろう。状況とも一致する。
 だがパラドックスシティと双星山における、オックスメンとパラドックスマンの戦い。
 この二つはそれとは別の目的があって行われたとしか思えない。
 その事を前提に、力の巡りを辿る。
 解き放たれた力は一点に集中し、特殊な力場を作り出す。それは時間と空間に影響を及ぼし――
「そうか、魔獣儀式とはこの世界と、別の世界を繋ぐ為の儀式……! パラドックスマンの目的はそこにあったんだ」
 これは大きな気付きだ。早く知らせるべきだ、とも思う。
 だが、気にかかることがもう一つ。 
「双星山が封印に関わっていないのなら、他にも調べなきゃいけない場所があるね。まずはそっちだ」
  
●キミにだけ見えるもの
 
 カタリナは双星山の調査を終え、とある場所を訪れていた。
 地図に記された円で言うならば11時の位置。パラドックスクリフの北西部だ。
「想像通りならば、この場所にも竜穴が存在するはずだけど……」
 既に「何か」が存在するであろう場所にはそれぞれ他のメンバーが向かっている。
 だが、ここは特に事件が起きたわけでもなく、ノーマークの場所。
 応援を呼んでいる時間はない。探索するなら自分でやってしまうべきだ。
 ――と、思っていたのだが。
「あれ、トリガーじゃないか」
「やあ」
 なんと、チートタウンの一行と別れたマルコがいたのだ。
「どうしたのかな。何かここに気になることでも」
「ちょっと捜し物でね」
 捜し物。ボルケイ火山でかつて宝玉が捧げられていた祭壇を訪れたマルコは、あの日彼女から託された四魂の勾玉がぼんやりと光を放っている事に気付いた。
 その光に導かれるまま、やってきたのがこの山だったのだ。
「アタシも捜し物があるんだ。きっと同じものだと思うな」
「フーン。ボクが探してるのは、扉とその奧にある祭壇」
「おや、人工物なんだ?」
 その言葉はカタリナには少々意外だった。何しろここまでの調査で魔力の強さや風水的な価値は見出していたものの、人の手が入ったと思われる場所は発見していなかったからだ。
「仕掛けがあるみたいでね。多分ボクが居ないと見つけることもできないみたい」
「へえ、ずいぶんな事だね。でも、詳細な位置はわからない、と?」
「うん、だから人手が欲しいな。君たちも、手伝ってくれるかい?」
 そうマルコが告げると、辺りからにゃあ、と鳴き声がいくつも響く。
 どこからともなく現れた猫たちが彼の願いに応え、散り散りに走り出した。

「いやはや、まさかこんなに大がかりなものを見逃すとは」
「やっぱりボクが来る必要があったみたいだね」
 猫海戦術とカタリナの調査の賜物か、時間こそかかったもの装飾が施された扉は確かにこの山にあった。
 だが、問題はその装飾だ。
「どういうことだい? これ」
「彼女にオックスメンって名乗った覚えは無いんだけどな」
 OとXを象ったような意匠。即ち、オックスメンのマーク。そしてその下に刻まれている猫らしき彫刻。
「どこで知ったんだろう」
 扉に触れ、力をこめる。
「……あれ」
 しかし、びくともしない。これでは中には入れないではないか。
「うん? 鍵でもかかってるのかな。アタシが調べてみよう」
 他にも仕掛けがあるのだろうか。
 立ち位置を変えたカタリナが掌で扉に触れる。
 マネをしているのか、野良猫達もカリカリと爪を立てはじめた。
「おっと?」
 すると、OXの紋様に光が走る。それと同時、びくともしなかった扉が音を立てて動き出す。
「よく分からないけど、入れるならいいか」
「こういうのをわからないままにしておくのはあまり気に入らないけどね」
 マルコの言葉に、カタリナがため息をついた。
 
●彼女の流儀

「へえ、魔獣儀式と封印は別物だったんだ」
「ああ、その視点で考え直してみたらこの山に行き着いたって訳さ」
 扉の奧へと足を踏み入れ進んでいくと、二人の前に現れたのは扉と同じくOXの紋様が刻まれた祭壇であった。
「お、あれかな? 宝玉も封印を構成する要素。どうやらアタシの勘は正しかったらしいね」 
 そして、その中心で青い光を放つもの。
「シーシュオはここに届けたって訳だね」
 色は違うが、かつてマルコ自身も手にした宝玉であった。
「キミが獣壊陣の中で出会った人か。人のために力を尽くせる人だと聞いてるよ」
「うん、自分の事より家族のためにって思えるって、なんかすごいね」
 語りつつ、マルコは一度会っただけのシーシュオのことを思い起こす。
(ボクには兄弟はいないけど、もし姉って存在がいたなら、シーシュオみたいな人だったら面白い日常が送れたかもね)
 そんな事を考えながら宝玉に触れると、彼女のその後の姿が流れ込んでくる。
 そこにはディエンや、ランザンの姿もあった。
「……フーン」
 そういえば、この青い宝玉はシーシュオのものであった。マルコのちょっとした願いは通じていたらしい。
 そんな彼の様子にカタリナが口元を緩ませ、問う。
「何かいいことでも教えてもらったのかな?」
「いや、それほどでもないよ」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

叢雲・源次
調査箇所>インデックスビル→パラドックスケイヴ

すべては此処から始まった。
パラドックスシティに足を踏み入れる。いつぞやのタピオカ騒動もついこの間の事のように感じるがあれから幾分時が経っている。
「あまり、様変わりしたようには見受けられんが…」
まずはインデックスビルへ向かうとする。
あの時は潜入、という形になったが今回はどうするべきか。
しばし考えた後、インターセプター起動。
ハッキング開始。
対象、インデックス社メインサーバ―…アポイントメント予約改竄…完了
「正面から不意を打つとする。」
堂々とビルへ入ったならば、内部の様子を探りつつ、パラドックスマンBFと常務の痕跡を辿るとしよう。

一通りの情報を集めたならば、その後パラドックスケイブへ向かう。後ろめたい場所には、それなりの警備が敷かれているか。邪魔が入るのならば、押し通る。やはり、最後に物を言うのは暴力というのはいささか穏やかではないが…

「是非もあるまい。」



●閉ざされた世界
  
「ひとまず敵の姿はなし、と」
 ミルラがふう、と息をつく。
 パラドックスケイヴ。かつての戦いで源次達が脱出した経路を逆にたどり、一行はパラドックスビルの直下を目指していた。
「なんだか探検みたいでちょっとワクワクするね」
「だが、俺の予想通りならば機械兵がまだ健在のはずだ。油断はするなよ」
 カデルの言葉に、源次は刀の鍔に手をかけながら周囲を注意深く探る。
(俺の方でも周囲の索敵はしてる。……あ、次の分岐を右だ)
 辺りにあるのは暗闇と静寂だけ。新兵のドローンから放たれる光と、カデルの持つランタンが彼らの周囲をぼんやりと照らしていた。
「それにしても」
 と、カデルが口を開く。
「龍の復活も、倒すのもボクたちOX-MENが必要なのってなんでなんだろう?」
「アイツらは13の光……とか言ってたっけね」
 パラドックスビルの戦いにて鍵となった童歌。
 あの時は新たな仲間が増えたこと、そしてオックスマンが目覚めたことで14人となりその予言めいた結末は覆された。
「……確かに、奴らは俺達の来訪を事前に知っていた節がある」
(俺達の力を利用する、と言うことを前提に計画が立てられていることは間違いない)
「ボク達って色々とパラドックスと戦ってるけど、最初の事件が切っ掛けってわけじゃない気がするんだよね……」
 パラドックスマンはOX-MENが現れることを知っていた。
「……この世界では過去が留まり続け、未来は常に手の届くところにある……癪だけど、あの男の言葉がヒントになりそうだね」
 ミルラがタバコに火をつけようとして……やめる。流石に洞窟では危険だ。
「つまり、アイツらは未来を知ることができるってことさ」
 それはまるでグリモアの予知のように、だ。
 そして逆に、OX-MENの中にも複数いるグリモア猟兵達は一人としてこの世界に関する予知を得ていない。
「この辺りにこの状況をひっくり返す鍵がある気がするんだが……」
「難しいね、アーシェ」
 こうなってくると他のメンバーの意見も聞きたいところだ。あちらが手に入れた情報もあるはずだし。
 そんな事を話ながら歩を進めていく内、源次が突如として構えをとる。
「スナイパー、ここは俺の落下した地点で間違いないな?」
(ああ、間違いない)
「わあー、すっごく大きな扉!」
 三人の眼前に現れたのは巨大な扉。
「ちょっと待ちなよ、これはどういうことだい?」
 しかも、その扉にはOXの紋様とその下に描かれた人形の彫刻。
「脱出時とはいえこんなものを見逃したとは思えん」
(つまり、前の戦いよりも後に作られた、ってことかな)
 源次は慎重に警戒を重ねる。
 パラドックスマンが拠点としていた地の直下。眠りのエネルギーを収拾していた洞窟にこのようなものが現れるとは。
「あたしが調べる。二人はちょっと離れてな」
「気をつけてね、ミルラ」
「頼む。こんな意味有り気な扉を放置していくわけにもいかん」
 なんとかして扉を開き、中を調べたいところだが。

●キミへの忘れ物
 
「……ふむ」
 ミルラが調べたところ、罠の類いは確認できなかった。
 源次もアナライザーを起動し調査を開始する。
 素材は石だが、押し開こうとしても動く気配はない。また、扉の奥のスキャンを試みるが視界には何も映らない。相当に分厚いのだろうか。
「物理的なロックじゃなくて、魔術的なロックだね、こりゃ」
 ミルラが肩をすくめる。こういったものは何らかの手順を踏むことで封印を解くのが相場だが、ヒントとなりそうなものは――
「この人形の彫刻くらいか」
「なんだかちょっと可愛いよね。どことなくマルコに似てない? ね、アーシェ」
 可愛らしいデザイン、ぬいぐるみのようだ。カデルの言うように銃を手にした少年の姿はマルコのようにも見える。
 そこで彼女は自らの人形と顔を見合わせた。
「……あ」
「あー、意外と単純な話だったかね?」
「試してみてくれ」
 この扉を開く鍵は人形。彫刻はそれを示しているのかもしれない。
 糸を操り、アーシェの手を扉に触れさせる。
「アーシェ、頼むよ!」
 そして小さな体で押すと、これまでが嘘のように軽い動きで扉が動き出した。
「やったっ!」
(なんだ、この光は)
 奥から赤い光が放たれる。
 それと同時、新兵が声をあげた。光の中にあるのは、祭壇と赤い宝玉。
(あれは、ボルケイ火山で見た……)
 その光景には覚えがあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

支倉・新兵
過去のおさらい、って所かな。
とは言えどうするか……一度行った事がある方が都合はいいけれど……やはりパラドックスシティ辺りになるか。
チートタウンの…彼等のその後も多少気にならない訳でもないけれど、本人ならまだしも子孫に俺が会うのも野暮だろう、そっちに向かう他のメンバーに後で聞こう。

パラドックス――今はインデックスか――ビルのセキュリティや内部は一度ある程度把握してある(仮に会社が完全に別物でもまあ、パラドックスマンが仕切ってた頃に比べれば甘いだろうし再掌握に支障はないだろう、多分きっと)からね。

社内はジャックしたセキュリティやネットワーク、地下へは社内を通じ送り込んだドローン越しの調査、自分は待機……身を隠せる場所で待機し、デバイスから送られる各種情報を分析……余程の事が無ければ大丈夫だろうけれど一応狙撃準備もしておこうか。
他のメンバーも調査に来ているのなら通信も駆使しつつサポート(戦闘が発生した場合のそれも含む)……俺じゃ直接の調査は難しいから誰か着てるなら望ましいけれどね。



●開かれた世界

 宝玉はこのパラドックスクリフの現状について語りかける。
 この世界に過去が積もり積もっていることを。
(世界が未来に進むには過去を消費していかなきゃならない……時間質量論、ってやつだ)
「それができないからこの世界はピンチって事なんだね」
 本来、この世界ではその役目を龍が担っていた。だが、龍を封印したことによって法則が狂ってしまったのである。
 その事に気付いたときにはもう遅かった。
「獣壊陣とは、過去の一部を一種の異世界とすることで、龍の封印に手出しをさせない術……術者でさえ、手出しできなくなっちまったんだとさ」
 龍の復活は人類にとっても必要な事となってしまった。だが、この世界の人間には誰も手出しができない。
「そこに現れたのが俺達だったと言うわけか」
 オックスメンは過去を変え、封印を解いた。
 そして、獣壊陣の中で過去を変えたのと同様に。OX-MENの力は、この世界に未来を変えることができるらしい。
「龍を倒せば、この世界も正常に未来を生み出せる。そういう風になってるってこいつは言ってる」 
「でも、その為にはまず龍の封印を解かなきゃいけないんだよね……」 
 かつてこの世界を支配した龍の力。どれほどの脅威であるかは想像に難くない。
 だが、ミルラはにやりと笑い、告げるのだ。
「そこまではアイツらの思惑通りに動いてやろうじゃないか。でも、最後まで思い通りになんてさせてはやらないよ」
 龍の封印を解いた後。
 龍の支配する未来を目論むのがパラドックスマンであり、人の手に未来をもたらすのがオックスメン。
 両者が戦う理由はここにある。
 
 ともあれ、宝玉を手に入れたことで目的は達成したと言っていいだろう。
 新たに浮かんだ疑問も他の場所へ向かった仲間と情報を付き合わせればきっと解けるはず。
「しかし、ここまで機械兵が見当たらなかったことが気にかかるな」
 祭壇から離れ、扉へと歩み出しながら源次がつぶやく。
(確かにその謎は放置できないな)
 そして扉から三人が一歩足を踏み出した瞬間。
 ミルラが二人を手で制し、そして。
「静かに。源次、アンタのお目当てが見つかったようだよ」
 目の当たりにしたのは、次々と消えていく機械兵の群れであった。

●彼方より
 
「あのね、覚えてる? メディックオーディションの時のこと」
 カデルの言葉に、新兵は思い起こす。オックスマンがやらかした事態を。
「機械兵を追いかけたら、パラドックスケイヴからオックスマンションの地下水脈に転移しちゃったみたいなんだ!」
(螺旋魔空回廊か!)
 パラドックスマンとの戦いの際に展開されるその領域では距離や方角が混ざり合い、空間がねじ曲がる。
 パラドックスケイヴと地下水脈は、その力によって繋がっているようだ。
「奴らの狙いはオックスマンションで間違いないだろう。俺達はこのまま奴らを追撃する」
 源次は刀に手をかけ、機械兵の群れへと一気に踏み込む。
「ま、ここはアタシらに任せな」
「新兵はこれ以上オックスマンションに敵が来ないように、転移を止める方法を考えて!」
 ミルラも武器を構え、カデルも糸を繰り始める 
(了解した、無理はするなよ!)
 
「――と、新兵には言ったものの、この数はなかなかにヘヴィだね」
 ミルラが指を指すと同時、光に包まれて機械兵がはじけ飛んだ。
 その光の陰から、アーシェが源次を後方から狙っていた一体を打ち倒す。
「アーシェ、次は左だよ!」
 カデルの指示に応え、アーシェは次なる敵へ。
「――そこは俺の間合いだ」
 前に立つ源次に機械兵が殺到する。青白い光と共に神速の居合い斬りが群がる敵をなぎ倒す。
 しかし、後方にはまだまだ敵が控えている。
「まったく、キリがないね! ここで決着でもつけようってのかい?」
「最後に物を言うのは暴力というのはいささか不満ではあるが……是非もあるまい」
 源次がもう一歩踏み込み敵を斬り捨てると、どこからともなく覚えのある声が聞こえてきた。
 
「あっ、玲頼さん。もう始まってるみたいだよ」
 リーオが慌てた声をあげる。その隣ではレナが既に魔術の詠唱を開始している。
「まさかオックスマンションと青天峡が地下で繋がっていたとはね」
 オックスマンションの危機を予測していた彼らは、地下水脈を辿り一気にここまでたどり着いていたのだ。
「遅れてすまねぇ! こっちは俺達に任せてくれ!」
 銃弾と矢が宙を駆け、赤い炎が空気を焼き焦がす。 
 そして、もう一つ。
「なんだと! グオオオオオーッ!!!」
「何やってるのねオックスマン!」
 オックスマンと七海だ。どうやら既に彼らも機械兵達と交戦していたらしい。 
「これならば……俺達が逆に奴らを包囲する形になるな」
 源次は油断なく刀を構え、じりじりと戦線を押し上げる。
 となれば、後は増援さえ止めてしまえば問題ない。
「新兵! 状況はどうだい?」

 パラドックスケイヴ内を慌ただしくドローンが飛び回る。
 無数に蠢く機械兵の中で。ぼろきれのようなローブを纏った男が立っている。
「……見つけた!」
 新兵は過去に二度螺旋魔空回廊を体験しているが、そのどちらもこれを展開していたのはパラドックスマンであった。
 今パラドックスケイヴとオックスマンションを繋いでいるのは奴に違いない。
 フードをすっぽりとかぶったその表情は窺い知れない。
 だが、ためらう必要はない。瞬時に軌道を計算し、引き金を引く。
 数秒もしない内に、銃弾は狙いを違わず、その頭部を撃ち抜いた……
「っ!?」
 が、倒れない。そればかりか、フードの下から覗かせた金色の瞳がドローンのカメラを真っ直ぐと見つめている。
 そして、しばらくそうした後。
 パラドックスマンはそのまま何処かへと歩き去って行った。
 
(……遅れてすまない、司令塔らしき個体を撃退した)
 新兵からの返答があったのは、それから間もなくのことだった。
「……? 新兵、大丈夫?」
(ああ、問題ない。状況はどうだい?)
 その言葉からしばらく経っても増援は送られてこない。
 螺旋魔空回廊は閉ざされたと考えて良さそうだ。
「よくやってくれた。後は残った敵を殲滅するのみだ」
 もう一歩、力強く踏み込む。瞬時に斬り捨てられた機械兵が一瞬で崩れ落ちる。
「派手にもう一暴れしてやろうじゃないかい!」
「アーシェ、もう一息だよ!」
 ぱっ、と周囲に薔薇の花びらが舞った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

聖護院・カプラ
あの時、獣壊陣に含まれていたオックスマンション――何らかの縁が結ばれたと見ます。
解決するには先手を打って魔獣儀式を阻止せねばなりませんが、その行動が既に魔獣儀式の……いえ、私の勝手な推測で混乱させたくはありません。

さて、私が向かうのは【3:山奥の名もなき村】。
村の様子を探り、村の食堂のシャオさんにご挨拶、暗黒美食料理會も見ておきます。
ここは美食大乱が迫っている以外に別段気をかける点等ないように思えます。

が、美食大乱に賞品……それも技の伝授が謳われていたとしたら。
それが神速の包丁術。超高速かつ精密な動きを伝えようとするものだとしたら。
お気付きですね、パラドックスマンの分身が用いていた七天抜刀術に似ているのです。

パラドクs……ユーベルコードを伝授する事自体に問題はないと思います。猟兵が再現可能な範囲の技ですから。
ただ、この技を天叢雲包丁を持って振るうのは良くはない気がします。
元は獣壊陣の維持に使っていた物ですから。



……む。
ではオックスマンションをどうにかする事で儀式が進行してしまうのでは?



●料理は愛情
 
 明くる日。
 龍の世界で戦う為に必要だという、暗黒美食料理會の料理。
 それを作るための最後の儀式、美食大乱を見物にカプラとライカは会場へと向かっていた。
「タイグー、いい加減戻ってきなさい!」
「何度言われても俺の意思は変わらない!」
 ふと、何やら言い争う声がする。そこにいたのは一人の青年と、その母親らしき女性。
「家出してどこに行ったのかと思ったら、よりにもよって暗黒美食料理會だなんて……ご先祖さまが何されたか知ってるだろう?」
「何百年前の話をしてるのさ。食を極めるのにここほど優れたところはないよ!」
 ライカがその様子を横目に、つぶやく。
「揉めてるね」
「時に言い争うことも相互理解のためには、いい行いです」
 気にならないわけではないが、口を挟まない方がいいだろう。
「あんな閑古鳥が鳴いた食堂に戻る気はない!」
「代々続いてきたロンポー食堂を潰す気かい!」
 だが、出てきた言葉。さすがにこれは聞き逃せない。
 ロンポー食堂。シャオの店だ。 
「ふーん、じゃああの二人はシャオの子孫か」
「……この時代ではあまりうまくいっていないようですね」
 とはいえ、これはあくまで家族の問題。
 無関係な彼らが割って入れば、余計にこじれてしまうこともままあることだ。
 状況がわからない内から口を出すことはいい行いとは言えない。
「いい方向に向かうといいのですが」
「まあ、一度助けた店が潰れたら気分悪いしね」
 カプラが手を合わせ、祈りを捧げる。
 その願いは届くのであろうか?
 
●ふたたびの美食大乱
 
「さあ! やって参りました! 暗黒美食料理會主催、究極至高の料理対決! 美食大乱!」 
 広々とした市場の道に、ずらりと並ぶ人々。
 パラドックスクリフの各地から集った料理人達がその腕前を披露する大舞台だ。
「これほどの規模で開催されるのは実に200年ぶりとのこと! 総勢1万人を勝ち抜いた、4人の料理人がマンカン・ゼンセキに挑む!」
 わぁっ、と歓声が上がる。料理の場に、勝ち上がってきた面々が並ぶ。
「あれ?」
 ……と、そこでライカが気付いた
「さっき言い争ってた人じゃん」
「おや、本当ですね。たしかタイグーさんとおっしゃいましたか」
 どうやら彼はこの美食大乱を勝ち上がってきていた一人らしい。
 カプラが見るに、緊張こそしているものの自信に満ちあふれたいい表情だ。
「さあ、ついに始まりますよ! 華麗なる美食の世界に酔いしれよ!」
 司会の言葉を皮切りに、料理人達は一斉に動き出した。
 食材へと駆け出す者。火をおこす者。そして、包丁を手にする者。
 それぞれが自慢の料理を集まった人々に振る舞うべく、その腕を尽くすのだ。

「ここでルールのおさらいをしておきましょう! 勝敗はシンプル、一番多くの人を満足させた者の勝ち!」
「シンプルといいますが、これがなかなか難しい」
 司会の言葉に、カプラがつぶやく。
 ここまで勝ち上がってきた面々、腕も味も一級品なのは間違いない。
 更には当代のマンカン・ゼンセキ。
 美食大乱で勝利したものだけが名乗ることができる栄誉を受けた男が、そう易々とその座を譲るはずがないのだ。
「……むっ」
「ん、どしたの?」
 そんなマンカンに目を向けたカプラが驚くべき事に気付く。
「リターナー、あの方の動きに覚えがありませんか」
「えー?」
 包丁を手に、素早い動きで食材を刻む。
 まさしく神速と呼ぶべき速さと正確さ。確かに高度な技術だが、動きに覚えがあるかと言われるとすぐには思い当たらない。
「わたしたちが会ったマンカンもあんな感じじゃなかったっけ」
「それもそうなのですが、先日の、双星山での戦いの時です。私も今気づきました」
「は? 双星山?」
 そういわれて、動きをもう一度観察する。
 静止した状態から、一瞬で振るわれる刃。それはまるで、食材ではなく人を斬るような――
「……ああ」
「お気付きですね、パラドックスマンの分身が用いていた七天抜刀術に似ているのです」
 そこでカプラは考え込む。
 パラドックスマンとマンカンの技術の共通点。
「あちら側の技術を取り入れることで、龍の世界に乗り込む術になるのでしょうか」
「だとしたら他にもそういうのがあるのかもね」

●彼女の伝えたかったもの
 
「さあ、美食大乱も佳境だ! まだ食べていない料理はないか? 君を一番満足させたのはどの料理人だ?」
 そうする間にも美食大乱は進む。
 流石と言うべきか、人の集まりや評価に大きな差はないように見える。
 当代のマンカンも圧倒的というわけではなさそうだ。
「……おや」
 そんな賑わいの中一人の女性が、浮かない顔である料理人を遠くから見つめていることにカプラが気付く。
「何か、迷っていられるようですね」
「えっ……はい」 
 見れば、どことなくシャオに似ている気もする。予想通り彼女はシャオの子孫なのだろう。
「お話をしませんか。何か力になれるかもしれません」
 カプラの圧倒的存在感の前には、誰もが心を開かずにはいられない。
『説得(セットク)』によって、彼女はぽつりぽつりと話し始める。
 ロンポー食堂を代々守り続けて来たこと。
 先祖の教えを守り、食べてくれる人々のことを想い料理に愛情を注ぎ続けて来たこと。
 しかし食堂も流行っているとは言えず、息子のタイグーが家を飛び出してしまったこと。
「怖いんですよ。あの子の料理を食べるのが」
 カプラの言葉に導かれるようにその思いを吐き出す。
「食を追求する暗黒美食料理會で変わってしまったんじゃないかって。あの子の料理を『満足した』って言えないんじゃないかって」
「……なるほど、そのお気持ちわかりますよ」
 おおよそ状況は察した。これは小さなすれ違いだ。
 ならば、かけるべき言葉は一つ。
「怖いかもしれませんが、彼の料理を食べてあげてください。きっとタイグーさんの気持ちがわかりますよ」

●包丁を受け継ぐもの
 
「どこ行ってたの?」
 カプラの帰還にライカは退屈そうに問う。
「いい行いをしてきました」
「ふーん」
「さあ、ついに結果発表の時間だ! マンカン師がその座を守り抜くのか! それとも新たな頂点が生まれるのか!」
「あ、ようやくか」
 規模が大きすぎて集計に時間がかかっていたようだが、これで美食大乱も決着だ。
「勝者は……なんと、一票差! タイグー・ロンポーだ!」
「へぇ」
 うおおおお、と歓声が上がり、タイグーが頂点として檀上に上がる。
 と、同時。カプラの懐にあった天叢雲包丁が光り始めた。
「……どうやら、あるべき場所に返すべき時が来たようですね」
「まあ、預かり物だし。必要だって言うんならいいんじゃない」
 シャオから預かった宝具は、今日その子孫の手元へと戻ることになりそうだ。

「よもやこの我が敗北を喫するとはな。客人、次のマンカン・ゼンセキに伝えねばならぬ事がある故しばし待たれよ」
「はいはい」
 マンカン・ゼンセキ――の名を失った男が厨房へと消える。
 タイグーへと七天抜刀術の技を伝授するのだろう。 
 それが済んだら、後は料理をもらってオックスマンションに帰還するだけだ。
「あの、ありがとうございました」
「……お話はできましたか?」
 そんな二人のもとへ、タイグーの母がやってくる。
「はい、私も過去の教えばかりに囚われず、もっと頑張らなくちゃって思いましたよ」
「そうですか、それはいい行いです」
 どうやら和解することができたらしい。タイグーの勝利にもその事は大きな力となったに違いない。
 ――しばらくすると天叢雲包丁の光が強くなった。大きく扉が開かれ、タイグーの声がする。
「さあ、入ってくれ! このタイグー・ロンポー……いや、マンカン・ゼンセキが最高の食材と技術、そして想いを乗せて龍の世界の料理を振る舞わせてもらう!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリッサ・ノーティア
遅れてしまい申し訳ありません。話しは聞かせて頂きました。
ひとまず今回は、以前関わりのある婚活会場に行ってみます。

という事で行く場所はチー家の屋敷とボルケイ火山にごーです。
まずは屋敷に行きましょう。
ちわーす。配達された荷物のアリッサです。今回は何か情報とか転がってないか教えてくださいです。知らない?あの勾玉の事とかなんか知っている事でもいいんで教えて下せーです。ほらランザンさんも何か知っているのならくーだーさーいーでーす。

さてきっとチー家の方々の事ですから、しっかり何か教えてくださるはずです。きっと。
なのでその情報があろうがなかろうが、今度は火山に行きましょー。きっと何かお宝とか綺麗な景色とかが眠っているはずです。あの湧き水の事とか割と気になりますし。
でもあっついのでパプン扱き使って宙に引き摺られ空中浮遊しながら行きましょう。溶岩とかも踏まずに済みますし。それはそれとして熱すぎてHPも削られますし、同行者ごとUCで召喚した水のヴェール纏いながら行きましょう。ところでHPって何です?



●秘薬の正体
 
「いろいろ話していたら喉が渇きました」
 ふらふらと、アリッサがオックスマンションの厨房へと足を踏み入れる。
 クーガーはちょうど何処かへ出て行ったところのようで、中には誰も居ない。
 冷蔵庫を開け、中を見ると泡を立てる白色の液体。
「……おお? これは私に飲んでくれと言っているのですね」
 栓がされていないのは気になるが、冷えたサイダーは体にしみるに違いない。
 ためらうことなく手に取り、一気に流し込む。
「ぷはー」
 だが、飲みきったところで違和感を覚える。この味は何処かで飲んだような気がする。
 そう、これはオックスコーラの味だ。色が違うからオックスコーラの新製品だろうか? 
「あっ、それ飲んじまったのか?」
 と、そこで戻ってきたクーガーが焦りの声をあげる。
「おやクーガーさん、残念でしたね。オックスコーラの新製品は私がいただいてしまいました」
 そんなアリッサの言葉に、彼はあっけにとられた顔で言うのだ。
「はぁ? お前が今飲んだのは例の秘薬の試作品だぞ」

●魔獣儀式
 
「確かにこれはオックスコーラだね」
「ですよね」
 しばらく後。作り直した試作品をちょうど帰還したライカに試してもらったところ、彼女もまた同じ感想であった。
「秘薬とはオックスコーラだった。そういうことなのでしょう」
「いやいや、いくら何でもそれは面白すぎません?」
 カプラの言葉にくしなが思わずツッコミを入れる。
 白い花と、炭酸を含んだ湧き水。この二つを合わせるとオックスコーラになる。
 理屈としてはおかしくないが、いろいろとおかしい。色も白いし。
「でも、わたしたちが持ってきた料理も予想外だったもんね」
「はい、私もまさかオカリンが勝利の鍵になるとは思いませんでした」
 暗黒美食料理會でライカとカプラが目にした、龍の世界の食べ物。それはキャッサバに似た植物であった。
 マンカン・ゼンセキがそれを加工した結果、二人に預けたのはタピオカドリンク。
 確かにタピオカが龍の世界の食べ物だと言う話が出たことはあったが、まさかこんな事になろうとは。
「コーラにタピオカ。今度はなんだ? 饅頭も食えばいいのか?」
「ひょっとしたらチョコかもしれません」
 クーガーのジョークにアリッサが真面目に返す。
「と、いうかオックスマンさんはどこに行ってしまったのでしょうか」
 いつの間にか姿を消したオックスマンは未だに見あたらない。
 コーラの話を確かめたかったのだが。 
「戻ったよ。皆揃って何してるのかな?」
 と、そこでカタリナも帰還。
「おや、マルコさんも一緒だったのですね」
「シーシュオさんの手がかりは掴めました?」
 アリッサとくしなの言葉にマルコが首をかしげる。
「何を言ってるのかよく分からないけど、宝玉は一つ回収したよ。秘薬を作るのに必要でしょ」
「おっ、やるじゃねーか。流石はマルコだぜ」
 にっ、とクーガーが笑う。
 ……と、そこで。突然部屋の隅から何やら音が鳴り始めた。
「何事?」
 一気に緊張感が走る。そして、何かを引きずるような音。全員の視線が一点に集まる。
「遅れてすまない。この屋敷を狙う敵は俺達が排除した」
 と、同時。マンホールが開かれ、オックスマンが顔を出したのであった。
 
「いやー、まさかオックスマンションが元々ランザンさんの屋敷でしたとは」
「灯台下暗しとはこのことなのです」
 地下水脈には最後の扉が隠されていた。
 OXの紋様。仏のレリーフ。
 他の場所と同じく、カプラとくしなが触れればあっさりと開く。
 その奧で待っていたのは黒い光を放つ宝玉。
 マルコ、ミルラ、玲頼がそれぞれ回収したものと合わせて、四つの宝玉がここに揃ったのだ。
 オックスマンが告げる。パラドックスマンとの最終決戦の幕開けを。
「状況を整理しよう。各自、集めた情報を報告してもらいたい」

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
双星山……前に激戦があったところだね
邪龍復活を目論む敵と、その為に必要なOX-MENの力が存分に振るわれた訳だ
復活の条件自体はそれだけで満たされる筈もないけど
地には二勢力の力の残滓、天にはお誂え向きの双つ星……
規模を縮小した類似術式の行使、本番前の余興には十分って事さ

《第六感》で概観を掴み《竜脈使い・仙術・道術・占星術》の心得を元に術式構築、
《地形の利用+ハッキング+結界術》の要領でアレンジ
【征服の聖印】、魔力刻印を刻み天地に宿る力を掌握して紡ぐ儀式は
架空錬成術“善龍降臨”とでも名付けようか
世界の敵は慣れっこな魔神の化身なんてやってる所為か、
対抗概念を仕立て上げるのはお手の物でね
仮定した邪龍の力を反転させ仮想の天敵を作り出す
本来の邪龍復活に比べれば粗製不正もいいところ、決戦に際し
仮称“善龍”の力を皆に宿す事で短時間の相性有利を得るのが限度だろうけど

ああ、当然妨害も想定内
現れた敵の手勢は十八番の《空中戦》で翻弄し《蹂躙》しようか
OX-DESIRE、渇望者のカタリナさ。以後お見知りおきを♪



●夢幻戦塵
 
「まずは、この世界について纏めておこう」
 オックスマンが促すと、それぞれが調査によって手に入れた情報を語り出す。 
 元々このパラドックスクリフは邪悪な龍に支配されていた。
 人々はそんな中でも細々と生き抜き、そして龍と戦うものが現れた。
「それが青天娘々と四人の仲間ね。彼らは協力し、龍を永劫星雲と呼ばれる龍の世界に封印することに成功したという話よ」
 こうして世界に平和が訪れたのだ、とレナは言う。
「で、龍を封印した面々の内四人は、宝玉に魂を宿して封印を続けていた、って訳だ」
 玲頼が金の宝玉を手に告げれば、マルコが続く。
「まあ、一度盗まれたらしいんだけどね。ボルケイ火山にあったのはその時の話らしいよ」
「青天さんもその時には焦ったらしいね」
 そう言ってリーオが笑う。
 その後シーシュオの持っていた二つを含め、封印を強固にする為に祭壇とあの扉を作り上げたという。
 
「平和は訪れましたが……新たな問題が生まれました」
 カプラが暗黒美食料理會に伝わる伝承から、この世界が抱える問題について話し出す。
 この世界には本来当たり前にできるはずの、時間をエネルギーとして未来へ進む、という仕組みが備わっていなかった。
「それをどうにかしてたのが、例の邪悪な龍って奴だったんだってさ」
 龍が過去を喰らい、未来を産み出すエネルギーとして変換することでこの世界は未来を産み出してきた。
 だが、龍を封印したことでこの法則が崩れてしまったのである。
「結果、パラドックスクリフには過去が山のように積み上がり、変化の余地がない未来しか存在しなくなってしまったのだ」
 この世界を守る為にしたことが、新たな危機を招いてしまった。皮肉なことだ、と源次が目を伏せる。
 変化がない、と言う事は滅亡へ向かって突き進んでいるのと変わらない。
「その事を、龍も、その信奉者であるパラドックスマン達も知っていたらしいね」
 だから彼らは動き出したのだ、と新兵は纏めた。
 
 最初の計画はパラドックスシティ。
 パラドックスマンは眠りの力を集めることで龍の復活を為そうとしたが、OX-MENによって阻止されてしまう。
「だがそのことでアイツらは、アタシ達の力に気付いたのさ」
「獣壊陣の中に入り込んで、過去を変える……宝具を回収できるのは、ボク達オックスメンだけ、って事にね!」
「……それで、パラドックスマンはオックスメンを利用したんだ。封印を解き、龍を復活させる為に」
 この世界に新たな未来を産み出す力を取り戻す。目的は、オックスメンもパラドックスマンも同じである。
「でも、龍が復活したら絶対に人類を滅ぼすのね。邪悪なスローライフなんかで満足するはずがないのね」
「しかし、そうさせずに未来をもたらす方法はあります。龍を復活させた上で、この世界に帰還する前に倒してしまうのです」
  
 戦う為に必要なのものは三つ。
 一つは、龍の世界の食べ物。
 永劫星雲と呼ばれる龍の封印された地は特殊な空間で、OX-MENといえども生身では戦うことなどできない。
 だが、これを口にすれば永劫星雲の中でも、普段通りに活動することができるようになるという。
「これは暗黒美食料理會でもらってきたよ。タピオカドリンク」
「オックスマンが眠りについてしまったものとは違い、副作用はありません、マンカン氏の研究の賜物と言ったところでしょう」
  
 一つは、秘薬。
 近づくこともできぬ強力な呪いを纏った竜であるが、これを口にすれば対抗することができるという。
「白い花と、湧き水。これを調合したのがこいつだ」
 クーガーがドン、と白い液体の入った瓶を並べる。
「だがこれはまだ完成じゃねぇ。おめーらの持ってきた宝玉を近づけてくれ」
 促され、まずはミルラが進み出る。宝玉をかざすと白かった秘薬が赤く染まった。
「あ、それ前にボクが見つけた奴だね。何処にあったの?」
「パラドックスビルの地下さ」
 マルコが青い宝玉をかざしながら問う。その答えにフーン、とだけ返している内に秘薬は深い青に変わっていく。
「次は俺か。こいつに金が合わされば、っと」
 玲頼の宝玉は金色。色を変えていた秘薬は、黒に変わる。
「最後はランザンさんの宝玉なのです」
「これは私たちの宝玉ですからね。誰か一人のものではありません!」
 アリッサとくしなが同時に進み出れば、黒色の宝玉から放たれた光が秘薬を照らす。
 そして、その光が消えると、そこにあったのは泡を立てる漆黒の液体。
「……まさしくオックスコーラだな」
「はい、味もそのままだったのです」
 それにしても、いつもオックスマンが飲んでいるコーラが秘薬と同じものだったとは。不思議なこともあったものである。
「ちなみに、インデックス社が販売していたコーラについても調べてみたよ」
「今完成したものには遠く及ばないけれど、僅かながら魔力を宿しているわ。弱い呪いならこれでも対抗できるでしょうね」

 そして最後の一つは、永劫星雲へといたる鍵。 
 パラドックスシティや双星山のように、大きな力同士をぶつけることで作り出されるエネルギー。
「魔獣儀式とはこのエネルギーを用いて、別の世界――即ち、龍の封じられし永劫星雲への道を開く事を目的としているようだね」
「パラドックスマンはこっちの準備が整う前に儀式を完成させて龍を呼び戻すつもりだったみたいだが……オックスマンションを狙ってるのには予想がついたからな」
 指で三角形を描きながら玲頼が地図を指すと、リーオが頷きつつ返す。
「おかげで敵が戦力を整える前に撃退できたからねぇー。儀式の完成にはエネルギーが足りなかったみたいだよ」
 あの襲撃にはそういう意味があったのか。源次がフム、と唸る。
「あれ、円にその三角形……ボルケイ火山の祭壇にあったものと同じですね」
「おお、そうなんだぜ。やっぱあそこで龍の復活を企んでたんだな」
 くしなの気付きにクーガーが納得して頷くと、七海が続いた。
「で、逆に乗り込んで龍をぶっ潰してやるには、どうすればいいのね?」
「これはアタシが説明しよう。世界の敵は慣れっこな魔神の化身なんてやってる所為か、対抗概念を仕立て上げるのはお手の物でね」
 カタリナが告げる。既に次元の穴は開いていて、広さも十分。
 しかし実際に行き来するためにはふたつの世界の間にある障壁を破壊する必要があるという。
 そこで必要になるのが最後の魔獣儀式、夢幻戦塵だ。
 障壁を破壊し、龍がパラドックスクリフに帰還する前に永劫星雲へと乗り込み、そして倒す。
 この方法ならばこの世界は龍に滅ぼされることもなく、未来を産み出す力を手に入れることができる。
「これまでは奴らの動きに対応し、企みを潰す戦いだった。だが、ここからは違う。俺達の意思で行う、この世界を守る為の戦いだ」
 オックスメンとパラドックスマンの戦い、終わりは近い。

 to be continued 『OX-MEN:夢幻戦塵』

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月03日


挿絵イラスト